(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】住宅の耐水害構造及びこの構造を用いた耐水害住宅
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20230914BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20230914BHJP
E04B 1/66 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
E04F13/08 X
E04B1/66 A
(21)【出願番号】P 2019115223
(22)【出願日】2019-06-21
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】502025473
【氏名又は名称】エイチ・アール・ディー・シンガポール プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094156
【氏名又は名称】稲葉 民安
(72)【発明者】
【氏名】萩原 浩
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-319675(JP,A)
【文献】特開2003-020777(JP,A)
【文献】特開2006-161326(JP,A)
【文献】特開2014-066132(JP,A)
【文献】特開2006-118305(JP,A)
【文献】米国特許第04916875(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00- 9/16
E04B 1/62- 1/99
E04F 13/08-13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤から起立して形成された基礎部と、この基礎部上に固定された土台と、上記基礎部上又は土台上に配置され壁の一部を構成する壁構成材と、この壁構成材の外側に配置される外壁下地と、この外壁下地の外側に配置される外壁材と、を備えた住宅の耐水害構造であって、
上記壁構成材と外壁下地との間には、防水シートが配置され、
上記基礎部の外側面と上記壁構成材の外側面とは、互いに面一とされてなるとともに、
上記防水シートの下端側背面と上記基礎部の外側面とは、高弾性防水塗料により互いに貼付されてなり、
上記基礎部上であって上記土台の外側には、土台水切下地が固定され、上記壁構成材の一部は、上記土台上に配置されてなるとともに、該壁構成材の他の一部は、上記土台水切下地上に配置され、
上記防水シートは、該土台上に配置された壁構成材の一部の壁構成材と上記土台水切下地上に配置された他の一部の壁構成材との間に配置されてなるとともに、上記土台水切下地の外側面と上記基礎部の外側面とは、互いに面一とされてなり、
上記防水シートの下端側中途部は、上記壁構成材の一部の外側から上記土台水切下地の上面
に至るとともに該土台水切下地の上面から該土台水切下地の外側面に至り、該防水シートの更に下端側背面と、該土台水切下地の外側面並びに基礎部の外側面とは、高弾性防水塗料により互いに貼付されなることを特徴とする住宅の耐水害構造。
【請求項2】
前記住宅の正面、背面、左側面及び右側面のそれぞれには、該住宅の正面、背面、左側面又は右側面の幅よりも短い幅に成形された複数の前記防水シートが配置され、
これら隣り合う防水シート同士は、一側側と他側側とが互いに重ね合わされ、これら互いに重ね合わされた各防水シート同士は、前記高弾性防水塗料により貼付されなるとともに、
上記住宅の正面又は背面の最も左側又は右側に貼付された一方の防水シートと、該住宅の左側面又は右側面の最も左側又は右側に貼付された他方の防水シートとの何れかの一部は、上記左側面側又は右側面側若しくは正面側又は背面側に延出され、該延出された部位の背面は、前記基礎部の左側面又は右側面若しくは正面又は背面に、上記高弾性防水塗料により貼付されてなるとともに、
これら延出された一方の防水シートと上記他方の防水シート、又は延出された他方の防水シートと一方の防水シートとは、上記高弾性防水塗料により互いに貼付されてなることを特徴とする請求項1記載の住宅の耐水害構造。
【請求項3】
前記請求項1又は2記載の何れかの住宅の耐水害構造を備えてなることを特徴とする耐水害住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洪水や津波等の際に、水害等の被害を防止することができる住宅の耐水害構造及びこの構造を用いた耐水害住宅に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、台風による大雨や集中豪雨等により洪水が発生したり地震により津波等が発生したりすることにより、住宅に大きな被害(水害)が発生する場合が多い。こうした洪水等の発生による水害の一つとして、住宅の外側から居住空間である内側に水が侵入し、居住できない状態となる事態を挙げることができる。なお、これまで、雨の侵入の防止を目的に、外壁材に防水シートを配置する構造が提案されている。例えば、特開平07-158228号公報(特許文献1)には、壁パネルの外面側に防水シート設け、防水性を高める技術が開示され、さらに、特許第5639253号公報(特許文献2)には、壁パネル同士の接合部における防水性を高める施工方法が提案されている。
【0003】
上記特許文献1に開示された壁パネルを用い、また、上記特許文献2に開示された施工方法を採用することにより、雨水が壁パネルや壁パネルの接合部から上記居住空間内に侵入することは防止できる可能性は高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平07-158228号公報
【文献】特許第5639253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、冒頭に記載したように、台風による大雨や集中豪雨等により洪水が発生したり地震により津波等が発生したりした場合においては、住宅を取り巻く水の量ばかりではなくその水圧は、上記雨水のそれとは全く比較できない程のものであり、こうした水の量や水圧により、住宅の外側から居住空間に多量の水が侵入し、居住空間内が浸水してしまう危険性が極めて高い。特に、上記壁パネル等の外装材同士の接合部から水が侵入する場合以外に、コンクリートで成形された基礎部の上端と土台との間の僅かな隙間から水が侵入する場合が多く、こうした部位からの水の侵入は、上記特許文献1や2に開示された技術では全く防止することができない。
【0006】
そこで、本発明は、洪水や津波等の際に、少なくとも基礎部と土台等との間から居住空間内に水が侵入する事態を有効に防止するために採用される住宅の耐水害構造及びこの構造を用いた耐水害住宅を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであり、第1の発明(請求項1記載の発明)は、住宅の耐水害構造に係るものであって、地盤から起立して形成された基礎部と、この基礎部上に固定された土台と、上記基礎部上又は土台上に配置され壁の一部を構成する壁構成材と、この壁構成材の外側に配置される外壁下地と、この外壁下地の外側に配置される外壁材と、を備えた住宅の耐水害構造であって、上記壁構成材と外壁下地との間には、防水シートが配置され、上記基礎部の外側面と上記壁構成材の外側面とは、互いに面一とされてなるとともに、上記防水シートの下端側背面と上記基礎部の外側面とは、高弾性防水塗料により互いに貼付されてなり、上記基礎部上であって上記土台の外側には、土台水切下地が固定され、上記壁構成材の一部は、上記土台上に配置されてなるとともに、該壁構成材の他の一部は、上記土台水切下地上に配置され、上記防水シートは、該土台上に配置された壁構成材の一部の壁構成材と上記土台水切下地上に配置された他の一部の壁構成材との間に配置されてなるとともに、上記土台水切下地の外側面と上記基礎部の外側面とは、互いに面一とされてなり、上記防水シートの下端側中途部は、上記壁構成材の一部の外側から上記土台水切下地の上面に至るとともに該土台水切下地の上面から該土台水切下地の外側面に至り、該防水シートの更に下端側背面と、該土台水切下地の外側面並びに基礎部の外側面とは、高弾性防水塗料により互いに貼付されなることを特徴とするものである。
【0008】
この第1の発明に係る住宅の耐水害構造では、先ず、上記基礎部の外側面と上記壁構成材の外側面とは、互いに面一とされてなることから、該壁構成材の外側に配置された防水シートの下端側を折曲したり湾曲させたりすることなく、そのまま垂直方向(鉛直方向)に貼付することができ、該基礎部の上端と土台等との間に形成された僅かな隙間から水が居住空間内に侵入することを有効に防止することができる。換言すれば、この発明によれば、上記構成により、作業者により行われる防水シートと基礎部との貼付作業は極めて容易なものとなるばかりか、該防水シートの中途部が折曲されたり湾曲されたりした状態で配置されることにより、該防水シートが一部剥離し、又は施工途中において破れたりすることにより、防水効果が著しく減殺されることを有効に防止することができる。次に、上記防水シートの下端側背面と上記基礎部の外側面とは、高弾性防水塗料により互いに貼付されてなることから、コンクリートで成形された基礎部の表面の微細な凹凸は、この高弾性防水塗料により吸収され、より一層安定した状態で防水シートを貼付することが可能となる。
【0009】
なお、上記壁構成材は、少なくとも住宅の壁を構成する一部の部材であるとともに、上記基礎部上又は土台上に配置される部材を言う。そして、この壁構成材は、枠組壁工法に基づいて形成された壁を構成する部材は、勿論、軸組壁工法(在来軸組工法)に基づいて形成された壁を構成する部材であり、具体的には、荷重を支持する構造材(スタッド、柱等)や、これらの構造材間に配置された断熱材等を言う。また、この発明では、外壁下地や外壁材(サイディング)は、壁を構成する壁構成材ではあるが、基礎部上又は土台上に配置される部材ではないことから、該壁構成材には含まれない。また、上記防水シートは、少なくとも雨水ばかりではなく、大雨等による洪水や地震による津波等の水が居住空間内に侵入することを防止できるものであれば良く、更に透湿機能を備えたものであっても良い。
【0010】
また、上記第1の発明では、上記基礎部上であって前記土台の外側には、土台水切下地が固定され、前記壁構成材の一部は、上記土台上に配置されてなるとともに、該壁構成材の他の一部は、上記土台水切下地上に配置されてなり、上記防水シートは、該土台上に配置された壁構成材の一部の壁構成材と上記土台水切下地上に配置された他の一部の壁構成材との間に配置されてなるとともに、上記土台水切下地の外側面と上記基礎部の外側面とは、互いに面一とされてなり、上記防水シートの下端側中途部は、上記壁構成材の一部の外側から上記土台水切下地の上面から該土台水切下地の外側面に至り、該防水シートの更に下端側背面と、該土台水切下地の外側面並びに基礎部の外側面とは、高弾性防水塗料により互いに貼付されている。
【0011】
すなわち、この第1の発明では、上記基礎部上には、土台と土台水切下地が配置されている。上記土台水切下地は、土台の外側に配置されている。そして、上記土台上には、壁構成材の一部が配置され、上記土台水切下地上には、壁構成材の他の一部が配置されている。そして、上記防水シートは、上端側から下端側中途部までは、上記壁構成材の一部と該壁構成材の他の一部との間に配置され、上記土台水切下地の上面を通過するとともに、該土台水切下地の外側面に至り、該防水シートの更に下端側は、この土台水切下地の外側面及び基礎部の外側面に、上記高弾性防水塗料により貼付されている。そして、この防水シートが貼付される上記土台水切下地の外側面と基礎部の外側面とは互いに面一とされている。
【0012】
したがって、基礎部の上端と土台水切下地との間や土台水切下地と上記他の壁構造材との間に形成された僅かな隙間から水が居住空間内に侵入することを一層有効に防止することができ、また、作業者により行われる防水シートと基礎部との貼付作業は極めて容易なものとなる等、上記第1の発明と同じ作用効果を奏することができる。
【0013】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、前記住宅の正面、背面、左側面及び右側面のそれぞれには、該住宅の正面、背面、左側面又は右側面の幅よりも短い幅に成形された前記複数の防水シートが配置され、これら隣り合う防水シート同士は、一側側と他側側とが互いに重ね合わされ、これら互いに重ね合わされた各防水シート同士は、前記高弾性防水塗料により貼付されなるとともに、上記住宅の正面又は背面の最も左側又は右側に貼付された一方の防水シートと、該住宅の左側面又は右側面の最も左側又は右側に貼付された他方の防水シートとの何れかの一部は、上記左側面側又は右側面側若しくは正面側又は背面側に延出され、該延出された部位の背面は、前記基礎部の左側面又は右側面若しくは正面又は背面に、上記高弾性防水塗料により貼付されてなるとともに、これら延出された一方の防水シートと上記他方の防水シート、又は延出された他方の防水シートと一方の防水シートとは、上記高弾性防水塗料により互いに貼付されてなることを特徴とするものである。
【0014】
上記第2の発明に係る住宅の耐水害構造では、先ず、住宅の正面、背面、左側面及び右側面のそれぞれには、該住宅の正面、背面、左側面又は右側面の幅よりも短い幅に成形された前記複数の防水シートが配置されている。住宅の正面を例に挙げて説明すれば、この住宅の正面には、先に説明した耐水害構造により左右方向に複数の防水シートが配置されている。そして、これらの防水シート同士は、一側側と他側側とが一部重ね合わされており、この重ね合わされた部位は、上記高弾性防水塗料により互いに貼付されている。こうした構造は、上記住宅の正面ばかりではなく、背面、左側面及び右側面も同様の構造とされている。次に、こうした住宅の角部では、次の構造とされている。例えば、住宅の正面の最も左側に貼付された防水シートを一方の防水シートとし、住宅の左側面の最も右側(正面側)に貼付された他方の防水シートとした場合、この一方の防水シートは住宅の正面ばかりではなく、その一部は左側面に延出された状態で貼付され、この延出された部位は、上記他方の防水シートに重ね合わされた状態で貼付されている。この場合、逆に、上記他方の防水シートの一部が正面側に延出された状態で貼付され、この延出された部位は、上記一方の防水シートに重ね合わされた状態で貼付されていても良い。こうした構造は、住宅の背面の最も左側又は右側に貼付された防水シートと、左側面又は右側面に貼付された防水シートとが貼付された構造、右側面の最も左側(正面側)又は右側(背面側)に貼付された防水シートと、上記背面側又は正面側の最も左側又は右側に貼付された防水シートとが貼付された構造も同様である。
【0015】
したがって、上記第2の発明に係る住宅の耐水害構造では、住宅の角部は、基礎部の外側面の一部を含めて上記一方の防水シート又は他方の防水シートにより必ず覆われてなるとともに、住宅の正面、背面、左側面又は右側面のそれぞれ左側及び右側は、該一方の防水シートと他方の防水シートとが一部互いに重ね合わされた状態で高弾性防水塗料により貼付されていることから、より一層高い防水効果を上げることができる。
【0016】
また、第3の発明(請求項3)の発明は、耐水害住宅に係るものであって、上記第1又は第2の発明の何れかに係る住宅の耐水害構造を備えてなることを特徴とするものであり、該第1又は第2の発明と同じ作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0017】
上記第1の発明に係る住宅の耐水害構造及び第3の発明(請求項3記載の発明)に係る耐水害住宅によれば、少なくとも基礎部と土台等との間から居住空間内に水が侵入する事態を有効に防止することができ、特に、洪水や津波等により住宅に高い水圧が作用した場合であっても、その水圧により僅かな隙間から居住空間内に水が侵入することを効果的に防止することができる。
【0018】
また、上記第2の発明(請求項2記載の発明)に係る住宅の耐水害構造及び第3の発明(請求項3記載の発明)に係る耐水害住宅によれば、住宅の角部は、基礎部の外側面の一部を含めて上記一方の防水シート又は他方の防水シートにより必ず覆われてなるとともに、住宅の正面、背面、左側面又は右側面のそれぞれ左側及び右側は、該一方の防水シートと他方の防水シートとが一部互いに重ね合わされた状態で高弾性防水塗料により貼付されていることから、より一層高い防水効果を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】耐水害住宅の耐水害構造を示す断面図である。
【
図2】基礎部の外側面にマスキングテープが貼付された状態を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す状態から、基礎部の上面に壁用パネルを固定する前の状態を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示す状態から壁用パネルが土台等の上に固定された状態を示す斜視図である。
【
図5】防水透湿シートの下端側が貼付された状態を示す斜視図である。
【
図6】隣り合う防水シート同士が高弾性防水塗料により貼付される過程を示す斜視図である。
【
図7】他の実施の形態に係る耐水害住宅の耐水害構造を示す断面図である。
【
図8】一方の防水シートの右端側の正面と他方の防水シートの左端側の裏面とが互いに貼付される工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。この実施の形態に係る耐水害住宅の耐水害構造は、枠組壁工法に基づいて形成された壁に本発明を適用したものであり、
図1に示すように、地盤Gから起立して形成されたコンクリート製の基礎部1と、この基礎部1上に固定された土台2と、上記基礎部1上又は土台2上に配置され壁の一部を構成する壁構成材4と、を備えている。上記(正面側の)基礎部1は、住宅として建築された場合に該住宅の居住空間の囲むように、他の基礎部である背面側の基礎部、左側面側の基礎部及び右側面側の基礎部(それぞれ符号は省略する。)とそれぞれ一体化されてなるものである。また、上記土台2は、図示しないボルト挿通穴が形成され、上記基礎部1内に下端側が埋設され該基礎部1の上面から起立し上記ボルト挿通穴に挿通されてなる図示しない固定ボルトに螺着された図示しないナットにより締結されることによって、該基礎部1の上面に固定されてなるものである。なお、この実施の形態では、上記基礎部1上であって、上記土台2の外側には、土台水切下地3が固定されている。
【0021】
そして、上記壁構成材4は、上記土台2及び土台水切下地3上に支持・配置されるものであり、住宅の壁の全てを構成するものではなく、その一部を構成するものであって、本実施の形態においては、上記外断熱材5と、この外断熱材5の内側(居住空間側)に配置された構造用壁合板6と、この構造用壁合板6の内側に配置された下部内断熱材7と、この下部内断熱材7の内側に配置された石膏ボード8とから構成されている。そして、上記外断熱材5は、上記土台水切下地3と同じ幅に成形されたものであり、該土台水切下地3に支持されている。また、上記構造用壁合板6は、上記外断熱材5と上記下部内断熱材7とにより挟まれている。また、上記土台2上には、合板スペーサー9と、この合板スペーサー9と同じ肉厚とされた剛床合板10の端部側が固定されており、この剛床合板10の下方であって、上記土台2の背面側には、床断熱材11が配置されている。また、上記合板スペーサー9と剛床合板10の一部の上には、上記土台2の幅と同じ幅に成形された壁下枠12が配置されている。なお、上記外断熱材5の下方には、該外断熱材5と同じ肉厚に成形された下部外断熱材13が配置され、この下部外断熱材13の下面は、上記土台水切下地3の上面に当接されている。換言すれば、上記壁構成材4を構成する上記外断熱材5の外側面と、上記下部外断熱材13の外側面と、上記土台水切下地3の外側面とは、互いに面一とされている。また、上記下部内断熱材7は、後述する上部内断熱材17と同じ肉厚に成形されている。
【0022】
そして、互いに面一とされた上記外断熱材5の外側面から基礎部1の外側面の上端側中途部には、防水透湿シート21が、上記基礎部1に塗布された高弾性防水塗料22により貼付されている。なお、上記高弾性防水塗料は、具体的には、特殊塗料高弾性防水被膜自己形成塗料である。この特殊塗料高弾性防水被膜自己形成塗料は、一般的な刷毛塗りによる簡易施工で厚塗りが可能な粘性度を持ち、硬化後、基材である上記基礎部1と密着し、塗料自身が防水被膜として機能する塗料である。そして、上記防水透湿シート21は、それぞれ本発明を構成する防水シートである。なお、
図1中、上記防水透湿シート21と、高弾性防水塗料22は、分かり易いようにそれぞれ太線で示されている。また、これらの防水透湿シート21は、この耐水害住宅の(図示しない)正面、左側面、右側面及び背面に、それぞれ横方向(水平方向)に、互いに一部が重なり合った状態で貼付されている。また、これらの防水透湿シート21の上端位置は、二階建ての住宅であれば一階から二階まで、或いは一階と二階との間付近まで、または一階建ての住宅(平屋住宅)であれば、屋根した付近まで位置するなど、少なくとも人の背丈よりも上方に位置している。そして、こうしたそれぞれの防水透湿シート21の外側には、複数の外壁下地14が所定間隔を隔てて互いに平行に配置され、さらにこれらの外壁下地14の外側には外壁材(サイディング)15が固定されている。なお、これら外壁下地14及び外壁材15は、それぞれ住宅の壁を構成するものであるが、上記壁構成材4の構成要素ではない。そして、この実施の形態では、上記外壁材15の外側面には、多数の外壁タイル15aが貼付され、また、上記外壁下地14の下端には、土台水切金具16が固定されている。なお、上記外壁下地14は、
図1中において、上下方向に一体とされた(一本の)ものを図示したが、後述するように、この外壁下地14は、下端側中途部が継ぎ足されているものであっても良い。また、上記外壁材15は、この耐水害住宅の(図示しない)正面、左側面、右側面及び背面において、それぞれ上下方向及び左右方向に並べて配置・固定されている。
【0023】
以下、上述した耐水害住宅の耐水害構造の施工工程を、図面を参照しながら順を追って詳細に説明する。
【0024】
先ず、
図2に示すように、成形された上記基礎部1の外側面であって、該基礎部1の上端よりもやや下方(基礎部1の上端よりも60~90cm下方)にマスキングテープTを水平方向に貼付する。なお、こうしたマスキングテープTを貼付する際は、予め基礎部1の外側面であって、貼付されるマスキングテープTの上端又は下端位置に、図示しないマーキングを水平に施す。なお、こうしたマスキングテープTを貼付する作業を行う際には、既に、上記基礎部1上には、上記土台2、土台水切下地3、下部外断熱材13、合板スペーサー9、剛床合板10、床断熱材11が施工されている。
【0025】
そして、上記マスキングテープTの貼付作業が終了すると、次いで、
図3に示すように、以下に説明するプリセット型の壁パネル31を施工現場に搬入し、
図4に示すように、この壁パネル31を、上記土台2上に固定する。上記壁パネル31は、上記外断熱材5、構造用壁合板6、上記下部内断熱材7と同じ肉厚とされた上部内断熱材17、上記壁下枠12及び上記複数の外壁下地14、上記外壁材15及び上記複数枚の防水透湿シート21から構成されている。なお、上記上部内断熱材17の下面と上記壁下枠12との間には、先に説明した下部内断熱材7が後に配置される配置用空間(符号は省略する。)が形成されている。また、上記それぞれの防水透湿シート21は、上記外断熱材5の外側面に対して図示しない複数の両面テープにより貼付されており、また、該防水透湿シート21のそれぞれ左端21Aは、外側に折り返されてなるとともに、この左端21Aが折り返された状態で該防水透湿シート21の下端側から上端側に巻回された巻回部21Bが形成されている。また、上記防水透湿シート21の外側面には、複数の上記外壁下地14が固定されている。なお、これらの外壁下地14の下端は、上記外断熱材5の下端よりも上方に位置しており、後述する防水透湿シート21の貼付工程が終了した後に、該外壁下地14の下端から継ぎ足されて
図1に示す外壁下地14が固定される。また、この壁パネル31を構成する上記外壁材15の下方は固定されておらず、防水透湿シート21の貼付作業や上記外壁下地14の継ぎ足し作業が終了した後に、図示しない外装材が固定される。
【0026】
そして、上述した壁パネル31の搬入が終了すると、次いで、
図4に示すように、この壁パネル31を、上記下部外断熱材13、合板スペーサー9、剛床合板10の一部の上に載置し、上記配置用空間から上記壁下枠12、上記合板スペーサー9又は剛床合板10並びに土台2に図示しない複数の釘を打ち込むことにより、この壁パネル31を固定する。そして、こうした壁パネル31の固定作業が終了すると、次いで、上記マスキングテープTの上端辺りから上記基礎部1や土台水切下地3の外側面に、高弾性防水塗料22を塗布する。そして、この塗布作業が終了すると、次いで、上記巻回部21Bとして巻回された防水透湿シート21の下端側を下方に展開し、該防水透湿シート21を上記土台水切下地3や基礎部1の外側面に貼付する。なお、こうした防水透湿シート21の下端側の貼付作業は、上記壁パネル31を構成する全ての防水透湿シート21について行われる。そして、こうしたそれぞれの防水透湿シート21の下端側の貼付作業が終了すると、次いで、上記折り返された左端21Aの左隣に配置された防水透湿シート21の右端21Cから中途部に亘る幅(隣り合う防水透湿シート21同士が重ね合わされる重ね代)に高弾性防水塗料22を貼付し、次いで、
図5に示す折り返された左端21Aを有する防水透湿シート21の左側の一部と上記隣の防水透湿シート21とが互いに重なり合うように展開し、上記高弾性防水塗料22により、互いに貼付する。すなわち、上記壁パネル31にそれぞれ隣り合った状態で配置されたそれぞれの防水防湿シート21の下端側を上記基礎部1等に高弾性防水塗料22を用いて貼付するとともに、それぞれの左端側と右端側とが一部重なり合うように該高弾性防水塗料22を用いて貼付する(
図6参照)。なお、こうした防水透湿シート21の貼付作業が終了した後、上記マスキングテープTは取り除く。
【0027】
そして、こうした防水透湿シート21の貼付作業が終了すると、次いで、上記各外壁下地14の下端に
図1に示す外壁下地14を継ぎ足し、さらに、これらの外壁下地14の外側に上記外壁材15を固定する。また、上記上部内断熱材17の下面と上記壁下枠12との間に形成された上記配置空間内には、先に説明した下部内断熱材7を配置する。以上の工程により、
図1に示す耐水害住宅の耐水害構造が完成する。
【0028】
したがって、上述した実施の形態に係る耐水害住宅の耐水害構造や、こうした耐水害構造を備えた耐水害住宅によれば、少なくとも上記基礎部1と土台2等との間から居住空間内に水が侵入する事態を有効に防止することができ、特に、洪水や津波等により住宅に高い水圧が作用した場合であっても、その水圧により僅かな隙間から居住空間内に水が侵入することを効果的に防止することができる。
【0029】
なお、
図1を参照しながら説明した耐水害住宅の耐水害構造では、上記壁構成材4を構成する外断熱材5の外側面から上記基礎部1の外側面に亘って鉛直方向に貼付されたものであるが、本発明に係る耐水害住宅の耐水害構造は、
図7に示す構造であっても良い。
【0030】
この耐水害住宅の耐水害構造は、
図7に示すように、防水透湿シート21は、その上端側から下端側中途部までは、上記構造用壁合板6と、外断熱材5及び下側外断熱材13との間に配置され、一部は上記下側外断熱材13と土台水切下地3との間を通って、該土台水切下地3の外側面に至り、そのまま該土台水切下地3の外側面から基礎部1の外側面に貼付されてなるものであり、該土台水切下地3の外側面から基礎部1の外側面と防水透湿シート21の裏面とは高弾性防水塗料22により貼付されてなるものである。したがって、この例において、(本発明を構成する)壁構成材4は、上記構造用壁合板6、上部内断熱材7及び下部内断熱材7、並びに石膏ボード8となる。
【0031】
次に、上述した防水防湿シート21による耐水害住宅の角部の耐水害構造を説明する。なお、この角部とは、住宅の正面と右側面との間、右側面と背面との間、背面と左側面との間、左側面と正面との間に形成された部位を言い、ここでは、上記正面と右側面との間の角部に、上記防水防湿シート21を施工・貼付する工程を説明する。また、以下では、上記住宅の正面の最も右側に貼付される防水透湿シート21を一方の防水透湿シート21Xとし、右側面の最も左側(正面側)に貼付される防水透湿シート21を他方の防水透湿シート21Yとする。
【0032】
そして、上記住宅の正面の最も右側に貼付される一方の防水透湿シート21Xは、
図8に示すように、上記該住宅の右側面側に延出され、先に説明したように、その殆どは図示しない両面テープを介して外断熱材5に貼付され、下端側は上記高弾性防水塗料22により、上記延出部も含めて上記基礎部1及び土台水切下地3の外側面に貼付されている。また、上記他方の防水透湿シート21Yの左端は、上記角部に位置した状態で上記両面テープや高弾性防水塗料22により貼付されている。そして、この他方の防水透湿シート21Yの左端側の裏面は、上記一方の防水透湿シート21の延出部の外側面に貼付されている。言うまでもなく、上記他方の防水透湿シート21Yに延出部が形成され、この延出部が、上記一方の防水透湿シート21Xの外側面に上記高弾性防水塗料22により貼付されているものであっても良い。
【0033】
したがって、上述した住宅の耐水害構造では、住宅の角部は、基礎部1の外側面の一部を含めて上記一方の防水透湿シート21X又は他方の防水透湿シート21Yにより必ず覆われてなるとともに、住宅の右側面の左側又は住宅の正面の右側は、該一方の防水透湿シート21Xと他方の防水透湿シート21Yとが一部互いに重ね合わされた状態で高弾性防水塗料により貼付されていることから、より一層高い防水効果を上げることができる。
【0034】
なお、上述した各実施の形態に係る耐水害構造は、冒頭で説明したように枠組壁工法に基づいて形成された壁に本発明を適用したものであるが、本発明は、こうした枠組壁工法に基づいて形成された壁ばかりではなく、軸組壁工法に基づいて形成された壁に適用されたものであっても良い。また、木造だけに限らず、鉄骨造、鉄筋コンクリート造やプレハブ工法等に基づいて形成された壁に適用されるものであっても良い。
【符号の説明】
【0035】
1 基礎部
2 土台
3 土台水切下地
4 壁構成材
14 外壁下地
15 外壁材
21 防水透湿シート
21X 一方の防水透湿シート
21Y 他方の防水透湿シート
22 高弾性防水塗料