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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】ロールフィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/18 20060101AFI20230914BHJP
   F24F 11/39 20180101ALI20230914BHJP
   F24F 1/0073 20190101ALI20230914BHJP
【FI】
B01D46/18 B
F24F11/39
F24F1/0073
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019123889
(22)【出願日】2019-07-02
(65)【公開番号】P2021009001
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岸本 宏俊
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 一平
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-037086(JP,A)
【文献】特公昭46-014194(JP,B1)
【文献】特公昭54-028994(JP,B2)
【文献】特開平06-031122(JP,A)
【文献】特開2007-298206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/00-46/90
F24F 1/0007;1/0059-1/008;1/02;
1/032-1/0355
F24F 11/00-11/89
F24F 8/00-8/99
B05B 12/16-12/36;14/00-16/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状フィルタから所定長のフィルタ材を巻き取り、この所定長を検出するための停止位置検出用スイッチと、未使用のロール状フィルタの巻き径を検出する濾材終了検出用スイッチとを備えたロールフィルタ装置において、
圧縮空気を導入した制御用流路に接続し、かつ第1電磁弁、第2電磁弁、並びに第3電磁弁を収納した制御ユニットと、圧縮空気を導入した駆動用流路に接続し、かつ駆動用エアー制御バルブ、エアーモータ、停止位置検出用スイッチ、並びに濾材終了検出用スイッチを収納した本体ユニットとを備え、
前記制御ユニットと前記本体ユニットは、離間配置しており、
前記制御用流路は2方向に分岐し、そのうちの一方は前記第1電磁弁に圧縮空気を供給し、他の一方は第2電磁弁並びに第3電磁弁に圧縮空気を供給し、
前記第2電磁弁は前記濾材終了検出用スイッチに、及び前記第3電磁弁が前記停止位置検出用スイッチに各々接続され、しかも前記第1電磁弁は前記駆動用エアー制御バルブに制御接続されており、かつ、
前記駆動用流路は前記駆動用エアー制御バルブを介して前記エアーモータに駆動接続されてなることを特徴とするロールフィルタ装置。
【請求項2】
前記停止位置検出用スイッチと前記濾材終了検出用スイッチとの下流側には、前記制御ユニット内に設けた第1圧力スイッチ、並びに、第2圧力スイッチに各々接続されてなることを特徴とする請求項1に記載のロールフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は雰囲気を連続的に濾材交換しながら浄化するロールフィルタ装置に関し、特に、使用環境として塗料に含まれる溶剤などに起因する発火要因が少なく、簡易な構成で防爆構造を実質的に必要としないロールフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ビルなどの建築構造物の空調設備として、例えば、特開2007-298206号公報(以下、特許文献1)に提案されるように、空気濾過を長時間に渡って行うために長尺の濾材を巻いたロール状のフィルタを備え、所定の条件で濾過面を交換しながら稼働させることが可能なロールフィルタ装置が知られている。以下、この文献に開示される技術を例示し、図1を参照して説明する。
【0003】
図1は、上述した特許文献1の公報に図1として開示される装置構成を模式的に示す線図であり、濾過空気の流路(白抜きの矢印A)を図示下から上とした装置構成を断面により示し、断面を表すハッチング並びに構成成分の符号は、一部省略して示す。まず、ロールフィルタ装置11(以下、単に「装置」と称する場合もある)は、未使用のフィルタ材が巻回されたロール状フィルタ材13aをケーシング15の一方の端部側に収容する。このロール状フィルタ材13aは、ケーシング15の他方の端部側に配設された巻取り手段を駆動させ、図示していない検出機構で所定長の送り出しを検知しながら、フィルタ材を巻取りロール13bとして巻き取る。この際、ロール状フィルタ材13aから巻き出されたフィルタ材(一点鎖線で示す)を巻取りロール13bに巻き取るまでに濾過を行うため、ケーシング15を貫く開口(点線で示す)が設けられている。この開口の領域に差し掛かったフィルタ材を支持するため、通気性を備えた金網部材17と抑え枠部材19が設けられている。さらに、この金網部材17に面するケーシング15の一方の面側には、開口領域のフィルタ材に濾過空気の流路Aをケーシング15内に通過させるためのファン(不図示)が設けられる。
【0004】
次いで、図1の一部構成成分を拡大した図2並びに図3により、上述したロールフィルタ材13aの交換について説明する。図2は、図1のロール状フィルタ材13aに着目した説明図、図3は、図1の巻取りロール13bに着目する説明図である。これら図には、同一の機能を有する構成成分に同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。装置11を初めて稼働させる際、ロール状フィルタ材13aを装置11に装着し、フィルタ材を巻き出して開口領域を通過させた後に巻取りロール13bで巻取り可能な状態にセットする。この際、ロール状フィルタ材13aの送り出し部分には、歯車ロール21に一体的に備えられるカム23、及び当該カム23と接触可能なリミットスイッチ25が設けられ、フィルタ材の送り出しに伴い、歯車ロール21とカム23とが一体的に連れ回りで動作するように構成されている。後段の説明の理解を容易とするため、種々の構成成分とカムとの組合せを単にカム機構と称する場合がある。
【0005】
他方、図3に示すフィルタ材の他端である巻取りロール13bは、その巻取り軸にフィルタ材の送りの駆動源となる電気モータが組み込まれており、図2に示すリミットスイッチ25の検出信号に連動して、塵埃を補修した開孔領域のフィルタ材をモータ駆動で所定長だけ巻取り、フィルタ材が弛まず、かつ、使用可能なフィルタ材を常に開口領域に供給する構成となっている。この巻取り動作は、例えば一定時間、或いは別途設けた圧力損失の検出器によって、所定の間隔で行い、この巻取り動作の合計回数とフィルタ材の送り長との積が、ロール状フィルタ材13aから巻取りロール13bに巻回されたフィルタ材の長さに達した時、新たなロール状フィルタ材への交換を検出する構成としている。
【0006】
このようなカム機構を利用した検知手段は、例えば特公昭54-28994号公報(以下、特許文献2)の第6図などに開示されている。特許文献2の技術では、カム軸が支点となるように取り付け、略「へ」字形のパネルの一端をロール状フィルタ材に当接させ、他の一端にスプリングを取付ける。このような梃の原理を組み合わせたカム機構により、フィルタ材使用に伴い減少するロール状フィルタ材の巻径を検知する技術が知られる。また、同様な技術として、特公昭46-14194号公報(以下、特許文献3)では、当該公報第2図に示されるように、上記パネルに相当する構成成分を「腕」と称する棒状部材にし、梃の原理を利用して巻径を検出している。
【0007】
本発明に係る出願人にあっても、例えば特開平6-31122号公報(以下、特許文献4)で、この種のロールフィルタ装置を提案してきた。詳細な説明は省略するが、係る装置は一般的なビル空調に用いるほか、例えば、塗装環境や粉塵が多い火気厳禁とする使用環境でも利用されている。係る用途では装置内部で電気信号のやり取りを行うため、装置の筐体に防爆構造を施す必要がある。この防爆構造として、装置内で必須となっている電気信号のやり取りでスパークが発生しても、使用環境の溶剤等に引火しない構造としているが、装置内に導入する濾過空気自体に引火性があるため、完全な対策とはなっていないのが現状である。
【0008】
このような防爆を要する使用環境対策として、例えば特開平7-108200号公報(以下、特許文献5)では、航空機を塗装するための塗装用喚気装置が提案され、ハンガー天井部に配設した給気ダクトから外気を供給し、排気ダクトから航空機を収容するハンガー内空気を排出することによりハンガー内に格納した航空機を塗装する際の換気を行う技術が知られている。ハンガー内への空気の取り入れ口となる排気ターミナルをハンガー床面上に移動自在に複数設け,それら排気ターミナルと排気ダクトとを取り外し可能なフレキシブルダクトにより連通させる構成としている。この技術では、塗装用換気装置の給気ダクトに、下方に向かって比較的高速の空気を幕状に吹き出す複数の下給気吹出口と,水平方向に向かって比較的低速の空気を吹き出す複数の横給気吹出口を設けた形態を開示し、大容量を必要とする塗装ブースに補助的な空調機器を追加するための装置を例示している。この装置にはダンパーとして空気圧で動作するものを採用し、スパーク対策が施されているが、送風するためのファンに電気を用いた駆動系が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2007-298206号公報([特許請求の範囲]、[図2]、[図3]、[図5]など)
【文献】特公昭54-28994号公報([特許請求の範囲]、第6図など)
【文献】特公昭46-14194号公報([特許請求の範囲]、第2図など)
【文献】特開平6-31122号公報([特許請求の範囲]、[図1]など)
【文献】特開平7-108200号公報([特許請求の範囲]、[0018]など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した背景技術でも説明した通り、ロール状のフィルタ材を利用した特許文献1~特許文献4の各技術では、使用環境内にある装置からスパークの原因となる電気的な機構を排除できていない。また、特許文献5の技術では、ダンパーの空気圧動作は着想されているが、送風に用いるモータ(ファンモータ)は高価な防爆構造を有する物を備えており、これら従来の技術では、防爆構造を具備することなく、様々な使用環境に耐えるロールフィルタ装置は着想されていないという問題点があった。従って、本発明の目的は、係る装置において、空気圧を利用した機構を組み込んだ装置を提供し、以て防爆構造のように高価な技術を利用せずに発火のリスクを低減することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的の達成を図るため、本発明のロールフィルタ装置の構成によれば、
ロール状フィルタ材から所定長のフィルタ材を巻き取り、この所定長を検出するための停止位置検出用スイッチと、未使用のロール状フィルタ材の巻き径を検出する濾材終了検出用スイッチとを備えたロールフィルタ装置において、
圧縮空気を導入した制御用流路に接続し、かつ第1電磁弁、第2電磁弁、並びに第3電磁弁を収納した制御ユニットと、圧縮空気を導入した駆動用流路に接続し、かつ駆動用エアー制御バルブ、エアーモータ、停止位置検出用スイッチ、並びに濾材終了検出用スイッチを収納した本体ユニットとを互いに離間して備えており、
前述した制御用流路は2方向に分岐し、そのうちの一方は前述の第1電磁弁に圧縮空気を供給し、他の一方は第2電磁弁並びに第3電磁弁に圧縮空気を供給し、
上述の第2電磁弁は前述した濾材終了検出用スイッチに接続し、及び上述の第3電磁弁が前述の停止位置検出用スイッチに接続されており、しかも前述の第1電磁弁は前述した駆動用エアー制御バルブに制御接続されており、
かつ、
前述した駆動用流路は前述の駆動用エアー制御バルブを介して前述のエアーモータに駆動接続されてなることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の実施に当たり、前述の停止位置検出用スイッチと前述の濾材終了検出用スイッチとの下流側には、前述の制御ユニット内に設けた第1圧力スイッチ、並びに、第2圧力スイッチに各々接続されている構成が好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の構成を適用することにより、本体ユニットは電気的な制御を実質的に空気圧制御のみに代替実施でき、電気的な全体操作を制御する制御ユニットとは離間配置することで、スパーク等の発火要因を生じることがなく、使用環境内で引火リスクのない安全な装置動作を実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】背景技術を説明するため、従来のロールフィルタ装置を装置断面により示す説明図である。
図2】背景技術に係る図1のロール状フィルタ材を装着する部分の概要を拡大して示す説明図である。
図3】背景技術に係る図1の巻取りロールを設けた部分の概要を拡大して、図2と同様に示す説明図である。
図4】本発明の基本構成を説明するため、電力に代えて用いる圧縮空気の流路と各構成成分の配置関係とを中心に示す説明図である。
図5A】各スイッチの動作原理を説明するため、ロール状フィルタ材装着直後の各構成成分との配置関係を模式的に示す説明図である。
図5B図5Aと同様に、ロール状フィルタ材の交換を検出した状態の配置関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施に好適な形態について説明する。本発明に係るロールフィルタ装置の主たる構成は、ロール状フィルタ材から巻取りと送り出しとの動作を行う本体ユニットと、これら動作を制御するための制御ユニットとの2つの筐体からなる。ここで、例えば特許文献1などに採用された電気的な検出動作を行うリミットスイッチのように、スパークの原因となり得る構成成分は制御ユニットに収納し、発火原因となり得る電気モータはエアーモータとして、並びに従来のリミットスイッチはメカニカルバルブからなるスイッチとして本体ユニットに収納する構成としている。また、本発明の特徴となる各ユニットはこの種の一般的な、防爆構造が不要な空調装置に通常求められる程度の気密性をもたせれば良いことから、圧縮空気の流路となる配管を各ユニットの筐体隔壁に貫通させて配設するフランジ等の図示は省略する。
【0016】
図4は、本発明の基本原理を説明するため、圧縮空気の流路と、この空気圧を利用して各機能を果たす構成成分を概略的な回路記号で示す説明図である。説明の理解を容易とするため、同図には圧縮空気の流路のみを実線で示し、電気的な配線は省略する。まず、本発明に係る装置の主たる構成は、図示していないコンプレッサから圧縮空気を装置内に供給するための、制御用流路27と駆動用流路29とを備えている。この制御用流路27は制御ユニット31(二点鎖線)内に、及び駆動用流路29は本体ユニット33内に、各々、接続導入される。この制御ユニット31には、従来と同様に電気配線を備えるため、当該制御ユニット31と本体ユニット33とは、制御ユニット31からの引火リスクが小さくなる距離、少なくとも10m以上、より好ましくは15m以上の距離だけ離間配置するのが好適である。つまり、給電を要する構成成分を排除した本体ユニット33は塗装作業などの使用環境内に設置し、制御ユニット31は、種々の警告灯やタイマー類、給電が必要なセンサーなどを収納するために、双方のユニットは引火の恐れがない上述の距離を以て離間設置する。
【0017】
未使用のフィルタ材を巻回したロール状フィルタ材35は、その一端を巻き出してエアーモータ37で巻取り可能なように設置する。この際、ロール状フィルタ材35の表面には、ローラーレバー付きのメカニカルバルブたる濾材終了検出用スイッチ39が交換検知カム機構を介して間接的に当接配置され、巻き出されたフィルタ材は、送り量を検出するための送りカム機構を介して、一方向作動ローラーレバー付のメカニカルバルブたる停止位置検出用スイッチ41が動作可能な位置に配設される(後段で詳述)。
【0018】
(全体構成)
次に、装置の原理を説明するため、概略的な全体構成を図4によって説明する。2つの主な流路のうち、制御用流路27は制御ユニット31内で2方向に分岐される。そのうちの一方は、給電を要する市販の3ポート電磁弁である第1電磁弁43の給気ポートに接続され、他の一方は、さらに分岐を設けて、各々、市販の給電型2ポート電磁弁である第2電磁弁45と第3電磁弁47の給気ポートとに接続される。まず、上述の第1電磁弁43の出力ポートは駆動制御用流路49を経由して、本体ユニット33内に備えられた無給電型の駆動用エアー制御バルブ51のパイロットポートに制御接続される。そして駆動用流路29は駆動用エアー制御バルブ51の給気ポートに接続され、その出力ポートにはエアーモータ37が駆動接続されている。このエアーモータ37は、駆動用エアー制御バルブ51のパイロットポートへの圧縮空気の流入を受けて給気ポートが開き、その駆動用エアー制御バルブ51の出力ポートから送り出される圧縮空気により回転し、例えば所定の運転時間の経過後に濾過済みとなったフィルタ材を巻き取る構成となっている。
【0019】
(フィルタ材の送り動作を中心としたカム機構の動作)
次に、他図をも参照して、2組のスイッチ及びカム機構の協働について詳細に説明する。図5Aは、背景技術として説明した図2と同様に、ロール状フィルタ材からのフィルタ材巻き出し動作における2つのカム機構の配置関係、特に、通常の濾過運転中にフィルタ材が前述のエアーモータで巻き出されている状態を表し、図5Bはフィルタ材の巻径が減少した状態を表す。これら図では、既に説明した構成成分と同一のものには同一の符号を付してあり、停止位置検出用スイッチ41に連関する送りカム機構53と、濾材終了検出用スイッチ39に連関する交換検知カム機構55とを設けた場合を図示してある。まず、装置を始めて動かす場合、未使用のロール状フィルタ材35からフィルタ材(何れも破線で図示)を引き出し、ローラー状の送りカム機構53を介して前述の開口領域、更には、図4で説明したエアーモータ37に巻取り可能な装着状態にセットする。この送りカム機構53は、フィルタ材よりも大きな幅を持つローラーの端部に、図示例では略菱形のカム57を取り付けて構成し、矢印Bとして示す反時計回り方向に、エアーモータの駆動に従うフィルタ材の送り出しと同調して連れ回りするように配設されている。この送りカム機構53は、フィルタ材の送り出し方向C(白抜き矢印)に対応して回転するよう構成される。このようにロール状フィルタ材35の装着が完了した後、濾過運転を行うが、その制御順は以下のとおりである。図4に示す制御ユニット31内に設置した不図示の自動運転タイマーが、装置の濾過運転開始に連動してカウントを始める。濾過運転開始の後、所定の濾過運転時間が経過すると、自動運転タイマーの電気信号は第3電磁弁47に送られ、停止位置検出用スイッチ41への流路を開く。それと同時にエアーモータの駆動タイマーがカウントを始め、その設定時間の経過に続いて、第1電磁弁43が通電され、駆動用エアー制御バルブ51を介してエアーモータ37を駆動させてフィルタ材を巻き取る。この巻取りによって、図5Aに示す送りカム機構53が連れ回りによって矢印B方向に回転する。フィルタ材の送り出しに連れ回りする送りカム機構53の回転に伴い、カム57が停止位置検出用スイッチ41のローラーレバーに接触して押圧して、停止位置検出用スイッチ41が作動(給気ポート閉、排気ポート開)する。さらに送りカム機構53が回転すると、このカム57がローラーレバーを乗り越えて、停止位置検出用スイッチ41が復帰(給気ポート閉、排気ポート開)する。この時の停止位置検出用スイッチ41と第2圧力スイッチ63b間の管内圧力変化「高→低→高」が図4で説明した第2圧力スイッチ63bで検知される。この圧力変化の検知を受けて、第1電磁弁43への通電を止め、当該電磁弁43を切換える。これにより駆動制御用流路49の管内圧力が下がり、駆動用エアー制御バルブ51が切換わり、駆動源となる圧縮空気の供給が止まることでエアーモータ37の駆動が停止する。このような制御によって、送りカム機構53が矢印B方向に回転するのみで1回のフィルタ材の送り動作が実現される。
【0020】
(交換検知カム機構の動作)
また、このような図5Aの初期装着状態で、ロール状フィルタ材35の表面には略「へ」の字形のプレート59の一端側が当接されている。このプレート59は、円柱状の交換検知カム機構55の回転軸を支点として、当該プレートの他端側はスプリング61によって付勢された状態でロール状フィルタ材35のロール表面に接触当接される。交換検知カム機構55は円柱の表面に「かまぼこ」型の突起部分(ハッチングで示す)が形成されている。図5Aのように、ロール状フィルタ材35の装着直後は、上述したフィルタ材の開口領域への供給が繰り返し行なわれる。これに伴い、徐々にロール状フィルタ材35の巻径が小さくなると、プレート59によって交換検知カム55が時計回り方向(矢印D)にゆっくりと回転し、やがて濾材終了検出用スイッチ39のローラーレバーを突起部分が乗り越えるような挙動を示す。この挙動で濾材終了検出用スイッチ39が作動(給気ポート閉、排気ポート開)して一定時間の経過後に再び圧縮空気で内圧が上がる構成としておく。この濾材終了検出用スイッチ39と第1圧力スイッチ63a間の管内圧力変化は第1圧力スイッチ63aで検知され、装置に備えられたロール状フィルタ材の交換を促すランプが点灯表示される構成となっている。この濾材終了に関わる交換表示は、新たなロール状フィルタ材35を装着するまでリセットされない構成としてある。
【0021】
以上に例示したように、この好適例の構成では、主に停止位置検出用スイッチ41と交換検知カム機構55との協働によってフィルタ材を所定寸法だけ送り出し、濾材終了検出用スイッチ39と交換検知カム機構55との協働によって濾材交換を知らせることができ、ロール状フィルタ材を利用した濾過運転を比較的長時間にわたって連続実施することができる。しかし、メカニカルバルブを利用した停止位置検出用スイッチ41及び濾材終了検出用スイッチ39は、上述した2種類のカム機構と協働し、ローラーレバーによる外力で作動し、外力がなくなると復帰する。この中間時には、各々のカム機構に設けたカムの曲面部分、換言すれば「乗り越える」と表現した時間間隔にわたって、ノーマルオープンの給気ポートとノーマルクローズの排気ポートの両方が半開状態となって意図しない異常動作を示し、しかも、圧縮空気が給気ポートから排気ポートに流れ込み、無駄に圧縮空気を消費してしまう。このような状態への対処について説明する。
【0022】
この異常状態は、カム機構が徐々にスイッチ側のローラーレバーを押さえていくため、2値的に作動させたいにもかかわらず発生する現象である。このような異常状態による無駄な圧縮空気の消費を防止するため、送りカム機構53、交換検知カム機構55による検出が不要な比較的長時間にわたる巻取りの待機時には、第2電磁弁45と第3電磁弁47との双方への通電をやめ、濾材終了検出用スイッチ39と停止位置検出用スイッチ41との双方への流路を閉じ、無駄な圧縮空気の消費を防止すれば良い。そして、送りカム機構53、交換検知カム機構55による検出が必要な巻取り運転時のみ、第2電磁弁45と第3電磁弁47に通電し、双方へのスイッチへの流路を開く構成とすれば異常現象を解消することができる。
【0023】
以上の好適形態に説明したとおり、本発明に係るロールフィルタ装置では、発火原因となる構成成分を制御ユニットに収納し、実質的に給電を必要としない構成成分のみを本体ユニットに収納することで、引火の可能性がある作業環境でも安全に濾過運転を行うことができる。しかしながら、本発明は上述の形態にのみ限定されるものではない。例えば、図4に示した停止位置検出用スイッチ41と第2圧力スイッチ63bとを接続する間の配管流路の途中であって、第2圧力スイッチ63b付近、制御用ユニットの筐体外にハンドバルブを設けることができる。装置の運転に不可欠な圧縮空気の供給と排出とに伴い、各流路内で圧縮空気の膨張と圧縮が繰り返される。このような状態では断熱膨張により発生する霧が結露し、流路内に蓄積する場合がある。この結露水を装置外に排出するため、上述したハンドバルブを設けるのが好ましい。また、同様な結露水の排出を図るため、濾材終了検出用スイッチ39と第1圧力スイッチ63とを結ぶ流路の第1圧力スイッチ63付近や駆動制御用流路29の駆動用エアー制御バルブのパイロットポート付近にもハンドバルブを設けるのが好適である。この他、カムの形態(形状)、上述した自動運転タイマー及びエアーモータの駆動タイマー、運転時間やフィルタ材の送り速度など、本発明は上記好適例のみに限定されるものではなく、この発明の目的の範囲内で種々の設計変更を行い得ることは明らかである。
【符号の説明】
【0024】
11:ロールフィルタ装置、
13a,35:ロール状フィルタ材、13b:巻取りロール、
15:ケーシング、17:金網部材、19:抑え部材、
21:歯車ロール、23:カム、25:リミットスイッチ、
27:制御用流路、29:駆動用流路、31:制御ユニット、33:本体ユニット、
37:エアーモータ、39:濾材終了検出用スイッチ、41:停止位置検出用スイッチ、
43:第1電磁弁、45:第2電磁弁、47:第3電磁弁、49:駆動制御用流路、
51:駆動用エアー制御バルブ、53:送りカム機構、55:交換検知カム機構、
57:カム、59:プレート、61:スプリング、
63a:第1圧力スイッチ、63b:第2圧力スイッチ、
A:濾過空気の流路、B:(送りカム機構の)回転方向、
C:(フィルタ材の)送り出し方向、D:(交換検知カム機構の)回転方向。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B