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  • 特許-車両案内システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】車両案内システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20230914BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20230914BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/00 A
G08G1/0969
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019156331
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021032829
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】蛸井 宏和
(72)【発明者】
【氏名】糸永 勝悟
(72)【発明者】
【氏名】照内 啓太
(72)【発明者】
【氏名】神田 征司
(72)【発明者】
【氏名】佐敷 敦
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-059834(JP,A)
【文献】特開2019-091167(JP,A)
【文献】特開2018-061126(JP,A)
【文献】国際公開第2010/070147(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/157015(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気中の微粒子分布に応じて車両を案内するための車両案内システムであり、
大気中の微粒子分布を示す微粒子マップを作成するマッピング手段と、
微粒子マップに基づいて、運転経路を運転者に通知するナビゲート手段と
を備え、
前記マッピング手段は、
車両の進行方向を検出する方向センサと、
車両が遭遇する微粒子の数を検知する微粒子センサと、
同一の地点における、複数の車両の進行方向、および、車両が遭遇する微粒子の数に基づいて、いずれの地点をいずれの進行方向で通過した場合にどの程度の数量の微粒子と遭遇するかを相対的に示す微粒子マップを作成するデータ処理部と
を備え、
前記ナビゲート手段は、
車両が遭遇する微粒子を低減するように、微粒子マップに基づいて、車両の進行方向を選択する
ことを特徴とする、車両案内システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両案内システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、スギ花粉、ヒノキ花粉、イネ花粉などの花粉、例えば、PM2.5、黄砂など、種々の微粒子が大気中に浮遊している。大気中の微粒子は、例えば、生物のアレルギー症状、精密機械の故障など、様々な不具合を惹起する。
【0003】
そのため、車両の運転に際して、微粒子の分布状況を取得し、微粒子を回避する経路で移動することが要求される。
【0004】
微粒子の分布状況を取得する方法としては、例えば、自動車などに搭載される移動端末装置によって、粒子状物質(例えば、PM2.5)の濃度、花粉の飛散状況などのセンサデータを取得し、サーバに送信する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、微粒子を回避する経路で移動する方法としては、例えば、自動車などの移動において、現在日時、現在位置および地図データに基づいて、現在位置から目的地までのリンクコストに従って経路を探索し、遭遇または接触に注意を要する注意対象(花粉など)が出現しやすい注意領域を地図データに表示し、迂回経路を選択する方法が、提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-61126号公報
【文献】国際公開WO2012/157015号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、微粒子は風などによって大気中を移動するため、自動車に搭載されたセンサによって検知される微粒子の量は、センシング地点が同一であっても、その地点の風向きと自動車の進行方向とよって異なる。
【0008】
より具体的には、センシング地点が同一であっても、風向きに逆らい、向かい風を受けるように移動する自動車のセンサでは、微粒子が比較的多く検知され、また、風向きに沿って、追い風を受けるように移動する自動車のセンサでは、微粒子が比較的少なく検知される場合がある。
【0009】
このような場合、微粒子の分布状況として検知量の平均値を採用すると、その分布状況は、実際に遭遇する微粒子の量と異なるという不具合がある。
【0010】
そのため、自動車の経路案内においては、自動車の遭遇する微粒子の量を精度よく予測して、経路選択することが要求されている。
【0011】
本発明は、自動車の遭遇する微粒子の量を精度よく予測して、経路選択できる車両案内システムである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明[1]は、大気中の微粒子分布に応じて車両を案内するための車両案内システムであり、大気中の微粒子分布を示す微粒子マップを作成するマッピング手段と、微粒子マップに基づいて、運転経路を運転者に通知するナビゲート手段とを備え、前記マッピング手段は、車両の進行方向を検出する方向センサと、車両が遭遇する微粒子の数を検知する微粒子センサと、車両の進行方向、および、車両が遭遇する微粒子の数に基づいて微粒子マップを作成するデータ処理部とを備え、前記ナビゲート手段は、車両が遭遇する微粒子を低減するように、微粒子マップに基づいて、車両の進行方向を選択する、車両案内システムを含んでいる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両案内システムでは、マッピング手段が、車両の進行方向と、車両が遭遇する微粒子の数とに基づいて、微粒子マップを作成する。そして、ナビゲート手段が、その微粒子マップに基づいて、車両の進行方向を選択する。
【0014】
このような車両案内システムによれば、車両の遭遇する微粒子の量を精度よく予測して、車両の経路を選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の車両案内システムの一実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.車両案内システムの全体構成
図1において、車両としての自動車10は、カーナビゲーション装置11を備えている。カーナビゲーション装置11は、例えば、自動車10の現在地を検出するGPS装置と、自動車10の現在地に応じた案内情報(例えば、走行ルート、交通法規など)を運転者に通知するための通知装置とを備えている。このようなカーナビゲーション装置は、自動車10の運転者に対して、案内情報(交通法規、走行ルートなど)を通知し、その結果、自動車10の運転者は、任意の走行ルートを交通法規に従って運転する。なお、詳しくは後述するように、カーナビゲーション装置11は、車両案内システム1(後述)の一部を構成しており、例えば、マッピングシステム2の方向センサ21(後述)と、ナビゲートシステム3の表示部32(後述)とを、兼ね備えている。
【0017】
図1において、自動車10の走行地域には、大気中に微粒子が浮遊している場合がある。微粒子としては、例えば、スギ花粉、ヒノキ花粉、イネ花粉などの花粉、例えば、PM2.5、黄砂などが挙げられ、好ましくは、花粉が挙げられる。
【0018】
これら微粒子は、例えば、生物のアレルギー症状、精密機械の故障など、様々な不具合を惹起する場合がある。
【0019】
そのため、自動車10には、大気中の微粒子分布に応じて、それら微粒子を回避する経路で移動することが要求される。
【0020】
そこで、図1では、自動車10の遭遇する微粒子の数(以下、遭遇微粒子数)を低減するために、自動車10の運転経路を案内する車両案内システム1が設備されている。
【0021】
より具体的には、車両案内システム1は、大気中の微粒子分布に応じて自動車10を案内するためのシステムである。車両案内システム1は、大気中の微粒子分布を示す微粒子マップを作成するマッピング手段としてのマッピングシステム2と、微粒子マップに基づいて自動車10の運転経路を運転者に通知するナビゲート手段としてのナビゲートシステム3とを備えている。
【0022】
マッピングシステム2は、自動車10の進行方向を検出する方向センサ21と、自動車10が遭遇する微粒子の数を検知する微粒子センサ22と、これら自動車の進行方向と微粒子の数とを記憶するデータサーバ23と、微粒子マップを作成するデータ処理部24とを備えている。
【0023】
方向センサ21は、自動車10の運転中において、自動車10の進行方向を検知するために備えられている。方向センサ21は、例えば、公知のGPS装置であり、上記のカーナビゲーション装置11に備えられている。
【0024】
また、方向センサ21は、無線通信などによりデータサーバ23に接続されており、自動車10の進行方向を、方向データとして送信可能としている。
【0025】
微粒子センサ22は、自動車10の運転中において、自動車10が遭遇する微粒子の数を検知するために備えられている。微粒子センサ22としては、公知のセンサが挙げられ、例えば、自動車10の前側の吸気口などに、フィルターとともに配置されている。
【0026】
また、微粒子センサ22は、無線通信などによりデータサーバ23に接続されており、自動車10の遭遇する微粒子の数を、数量データとして送信可能としている。
【0027】
データサーバ23は、方向データおよび数量データを記憶可能な装置である。データサーバ23は、無線通信などにより方向センサ21および微粒子センサ22に接続されており、方向データおよび数量データを受信可能としている。
【0028】
データ処理部24は、方向データおよび数量データに基づいて微粒子マップを生成するために備えられている。データ処理部24は、データサーバ23と通信可能に接続されており、例えば、任意の地域における方向データおよび数量データをデータサーバ23から抽出可能としている。また、データ処理部24は、方向データおよび数量データから微粒子マップを生成する所定のプログラムを有している。
【0029】
微粒子マップは、例えば、いずれの地点を、いずれの進行方向で通過した場合に、どの程度の数量の微粒子と遭遇するかについて、相対的に示すマップである。
【0030】
データ処理部24で生成した微粒子マップは、例えば、データサーバ23に記憶される。
【0031】
ナビゲートシステム3は、自動車10の運転経路を選択するルート選択部31と、選択された運転経路を自動車10の運転者に表示する表示部32とを備えている。
【0032】
ルート選択部31は、ナビゲーション装置11と無線通信などにより接続されており、自動車10の現在地および目的地を受信可能としている。また、ルート選択部31は、データサーバ23と接続されており、例えば、任意の地域の微粒子マップを、データサーバ23から抽出可能としている。
【0033】
そして、ルート選択部31は、自動車10の現在地および目的地と、微粒子マップとに基づいて、自動車10が遭遇する微粒子の数(遭遇微粒子数)を低減するように、自動車10の進行方向を選択するプログラムを有している。このプログラムにより、自動車10の現在地から目的地までの運転経路が、遭遇微粒子数が少なくなるように選択可能とされる。
【0034】
表示部32は、上記で選択された運転経路を表示するために備えられている。表示部32は、例えば、公知のディスプレイ装置であり、上記のカーナビゲーション装置11に備えられている。
【0035】
また、表示部32は、無線通信などによりルート選択部31に接続されており、自動車10の運転経路を、受信可能としており、これにより、表示部32は、自動車10の運転経路を、運転者に表示可能としている。
【0036】
なお、車両案内システム1において、データサーバ23、データ処理部24およびルート選択部31は、例えば、同一の管理施設8内に配置される。
【0037】
2.車両案内システムによる車両案内
上記の車両案内システム1では、まず、大気中の微粒子分布と、自動車10の進行方向との相関を示す微粒子マップを作成する。
【0038】
より具体的には、任意の地域において、複数の自動車10によって微粒子の数を検知するとともに、それら自動車10の進行方向を検出する。
【0039】
このとき、図1に示されるように、同一の地点であっても、風向きに逆らい、向かい風を受けるように移動する自動車10Aの微粒子センサ22では、微粒子が比較的多く検知される。一方、風向きに沿って、追い風を受けるように移動する自動車10の微粒子センサ22では、微粒子が比較的少なく検知される。
【0040】
このようにして検知される微粒子の数は、数量データとしてデータサーバ23に送信される。また、自動車10の進行方向は、方向データとしてデータサーバ23に送信される。
【0041】
そして、車両案内システム1では、データ処理部24が、方向データおよび数量データから、微粒子マップを生成する。
【0042】
なお、微粒子マップは、上記の通り、いずれの地点を、いずれの進行方向で通過した場合に、どの程度の数量の微粒子と遭遇するかについて、相対的に示すマップである。つまり、微粒子マップを用いれば、特定の地点を通過する自動車10が、その進行方向によって、どの程度の数量の微粒子と遭遇するかについて、予測することができる。
【0043】
微粒子マップは、データサーバ23に送信および記憶される。
【0044】
そして、この車両案内システム1では、ルート選択部31が、自動車10の現在地および目的地をカーナビゲーション装置11を介して受信し、上記の微粒子マップに基づいて運転経路を選択する。
【0045】
つまり、ルート選択部31では、所定のプログラムに従い、自動車10の遭遇微粒子数を低減するように、微粒子マップに基づいて、自動車10の進行方向を選択する。
【0046】
例えば、ルート選択部31は、自動車10の遭遇微粒子数が比較的少なくなる進行方向および運転経路(図1の自動車10B参照)を優先的に選択する。これにより、ルート選択部31は、自動車10の遭遇微粒子数が比較的多くなる進行方向および運転経路(図1の自動車10A参照)を低減する。
【0047】
そして、選択された進行方向および運転経路は、ルート選択部31から表示部32(カーナビゲーション装置11)に送信され、自動車10の運転者に表示される。
【0048】
これにより、自動車10は、遭遇微粒子数を低減しながら、現在地から目的地まで運転される。
【0049】
3.作用・効果
上記の車両案内システム1では、マッピングシステム2が、自動車10の進行方向と、自動車10が遭遇する微粒子の数とに基づいて、微粒子マップを作成する。そして、ナビゲートシステム3が、その微粒子マップに基づいて、自動車10の進行方向を選択する。
【0050】
このような車両案内システム1によれば、自動車10の遭遇する微粒子の量を精度よく予測して、自動車10の経路を選択できる。
【符号の説明】
【0051】
1 車両案内システム
2 マッピングシステム
3 ナビゲートシステム
10 自動車
図1