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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】ピボットアッシー軸受装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 21/02 20060101AFI20230914BHJP
   F16C 35/063 20060101ALI20230914BHJP
   F16C 35/067 20060101ALI20230914BHJP
   F16C 25/08 20060101ALI20230914BHJP
   F16F 15/10 20060101ALI20230914BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20230914BHJP
   G11B 25/04 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
G11B21/02 601M
F16C35/063
F16C35/067
F16C25/08 Z
F16F15/10 A
F16C19/18
G11B25/04 101D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019166354
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2020095769
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2018225817
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】土屋 邦博
(72)【発明者】
【氏名】金子 淳
(72)【発明者】
【氏名】内田 正
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06603640(US,B1)
【文献】特開2009-217928(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0358038(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0358039(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0374513(US,A1)
【文献】特開2010-190403(JP,A)
【文献】特開2003-187540(JP,A)
【文献】特開2002-171718(JP,A)
【文献】特開昭59-188535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 21/02
F16C 35/063
F16C 35/067
F16C 25/08
F16F 15/10
F16C 19/18
G11B 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延在するシャフトと、
前記シャフトの軸方向に配設された第1軸受部および第2軸受部と
を備え、
前記第1軸受部は、
前記シャフトに嵌合された第1内輪と、前記第1内輪の外側に配設された第1外輪と、前記第1外輪および前記第1内輪の間に配設された複数の第1転動体とをそれぞれ有し、前記シャフトの軸方向に配設された一対の第1転がり軸受と、
前記一対の第1転がり軸受のそれぞれの前記第1外輪の外周面に固定された第1スリーブと
を有し、前記一対の第1転がり軸受には予圧が加えられており、
前記第2軸受部は、
前記シャフトに嵌合された第2内輪と、前記第2内輪の外側に配設された第2外輪と、前記第2外輪および前記第2内輪の間に配設された複数の第2転動体とをそれぞれ有し、前記シャフトの軸方向に配設された一対の第2転がり軸受と、
前記一対の第2転がり軸受のそれぞれの前記第2外輪の外周面に固定された第2スリーブと
を有し、前記一対の第2転がり軸受には予圧が加えられており、
前記シャフトの軸方向における前記第1軸受部の固有振動数と前記第2軸受部の固有振動数とが2kHz以上異なっていて、
前記一対の第1転がり軸受が受けている予圧と、前記一対の第2転がり軸受が受けている予圧とが同じであり、且つ、前記一対の第1転がり軸受の前記第1外輪および前記第1内輪の内外輪曲率比と、前記一対の第2転がり軸受の前記第2外輪および前記第2内輪の内外輪曲率比とが同じであることを特徴とするピボットアッシー軸受装置。
【請求項2】
前記シャフトの外周面には、前記第1軸受部と前記第2軸受部との間に互いに対向する前記第1転がり軸受の第1内輪の端面と前記第2転がり軸受の第2内輪の端面とが当接するカラー部が配設されていることを特徴とする請求項1に記載のピボットアッシー軸受装置。
【請求項3】
前記第1スリーブの内周面には、前記一対の第1転がり軸受の間に互いに対向する一対の前記第1外輪の端面が当接する第1スペーサ部が配設され、
前記第2スリーブの内周面には、前記一対の第2転がり軸受の間に互いに対向する一対の前記第2外輪の端面が当接する第2スペーサ部が配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載のピボットアッシー軸受装置。
【請求項4】
前記一対の第1転がり軸受の第1外輪および前記第1スリーブの合計質量と、前記一対の第2転がり軸受の第2外輪および前記第2スリーブの合計質量とが異なっていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のピボットアッシー軸受装置。
【請求項5】
前記一対の第1転がり軸受のラジアル隙間と、前記一対の第2転がり軸受のラジアル隙間とが異なっていることを特徴とする請求項に記載のピボットアッシー軸受装置。
【請求項6】
前記一対の第1転がり軸受の前記第1外輪および前記第1スリーブの合計質量と、前記一対の第2転がり軸受の前記第2外輪および前記第2スリーブの合計質量とが異なっていることを特徴とする請求項またはに記載のピボットアッシー軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピボットアッシー軸受装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク駆動装置のスイングアームを揺動可能に支持するためにピボットアッシー軸受装置が用いられている。ピボットアッシー軸受装置は、例えば、円筒状のスリーブと、スリーブの内周側に配設された円筒状のシャフトと、スリーブおよびシャフトの間に配設されて、シャフトに対してスリーブを相対回転自在に支持する一対の転がり軸受とを有している。転がり軸受の各々は、シャフトの延在方向において離間して配設され、シャフトおよびスリーブと接着されている。
【0003】
また、ピボットアッシー軸受装置として、複数のスイングアームを一組とした複数のアーム部をそれぞれ独立に揺動可能に支持する複数のアクチュエータブロックを有するものが開示されている。これによれば、アクチュエータブロックごとにスイングアーム先端に配置された磁気ヘッドを磁気ディスクにアクセスさせて、書き込みおよび読み出しを個別に行うことができる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-100128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数のアクチュエータブロックのそれぞれの軸受部を構成する転がり軸受の固有振動数が同じ又は近い場合には、ハードディスク駆動装置の駆動時において、軸受部同士が共振してしまうおそれがある。ここで、軸受部同士の共振を低減することができれば、各々のアクチュエータブロックの振動を低減してスイングアームを更に安定して揺動することが可能となる。
【0006】
本発明の目的は、転がり軸受の共振による軸受部の振動を低減してスイングアームを安定して揺動させることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るピボットアッシー軸受装置は、軸方向に延在するシャフトと、前記シャフトの軸方向に配設された第1軸受部および第2軸受部とを備え、前記第1軸受部は、前記シャフトに嵌合された第1内輪と、前記第1内輪の外側に配設された第1外輪と、前記第1外輪および前記第1内輪の間に配設された複数の第1転動体とをそれぞれ有し、前記シャフトの軸方向に配設された一対の第1転がり軸受と、前記一対の第1転がり軸受のそれぞれの前記第1外輪の外周面に固定された第1スリーブとを有し、前記一対の第1転がり軸受には予圧が加えられており、前記第2軸受部は、前記シャフトに嵌合された第2内輪と、前記第2内輪の外側に配設された第2外輪と、前記第2外輪および前記第2内輪の間に配設された複数の第2転動体とをそれぞれ有し、前記シャフトの軸方向に配設された一対の第2転がり軸受と、前記一対の第2転がり軸受のそれぞれの前記第2外輪の外周面に固定された第2スリーブとを有し、前記一対の第2転がり軸受には予圧が加えられており、前記シャフトの軸方向における前記第1軸受部の固有振動数と前記第2軸受部の固有振動数とが異なっている。
【0008】
また、本発明の一態様に係るピボットアッシー軸受装置の製造方法は、軸方向に延在するシャフトと、前記シャフトの軸方向に配設された第1軸受部および第2軸受部とを備えるピボットアッシー軸受装置の製造方法において、前記第1軸受部は、前記シャフトに嵌合された第1内輪と、前記第1内輪の外側に配設された第1外輪と、前記第1外輪および前記第1内輪の間に配設された複数の第1転動体とをそれぞれ有し、前記シャフトの軸方向に配設された一対の第1転がり軸受と、前記一対の第1転がり軸受のそれぞれの前記第1外輪の外周面に固定された第1スリーブとを有しており、前記第2軸受部は、前記シャフトに嵌合された第2内輪と、前記第2内輪の外側に配設された第2外輪と、前記第2外輪および前記第2内輪の間に配設された複数の第2転動体とをそれぞれ有し、前記シャフトの軸方向に配設された一対の第2転がり軸受と、前記一対の第2転がり軸受のそれぞれの前記第2外輪の外周面に固定された第2スリーブとを有しており、前記一対の第1転がり軸受に予圧を加える第1予圧工程と、前記一対の第2転がり軸受に予圧を加える第2予圧工程とを含み、前記第1予圧工程で加える予圧と、前記第2予圧工程で加える予圧とを異ならせて、前記シャフトの軸方向における前記第1軸受部の固有振動数と前記第2軸受部の固有振動数とを異ならせる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るピボットアッシー軸受装置によれば、転がり軸受の共振による軸受部の振動を低減してスイングアームを安定して揺動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置を有するハードディスク駆動装置の概略構成を示すための斜視図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係るハードディスク駆動装置の複数のアクチュエータブロックの概略構成を示すための斜視図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置の概略構成を示すための断面図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置の各軸受部の軸方向の振動モデルを説明するための図である。
図5】本発明の第1の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置の各軸受部の固有振動数特性の測定方法を説明するための断面図である。
図6】本発明の第1の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置の各軸受部の固有振動数特性の算出方法を説明するためのグラフである。
図7】本発明の第1の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置の各軸受部の固有振動数特性を表すグラフである。
図8】本発明の第1の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置の各軸受部の予圧と固有振動数との関係を表すグラフである。
図9】本発明の第2,3の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置の概略構成を示すための断面図である。
図10】本発明の第2の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置の各軸受部の予圧と固有振動数との関係を表すグラフである。
図11】本発明の第3の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置の変形例の概略構成を示すための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1を有するハードディスク駆動装置100の概略構成を示すための斜視図である。図2は、ハードディスク駆動装置100の複数のアクチュエータブロックの概略構成を示すための斜視図である。図1,2に示すように、ピボットアッシー軸受装置1は、ハードディスク駆動装置100のハウジング101の底部に固定されており、スイングアーム102を揺動可能に支持している。ハードディスク駆動装置100は、スイングアーム102の先端部に、磁気ヘッドが先端に設けられているヘッド部103を有している。ハードディスク駆動装置100では、ヘッド部103が、回転している磁気ディスク104上を移動することによって、磁気ディスク104に情報を記録し、また、磁気ディスク104に記録されている情報を読み出すようになっている。
【0013】
ハードディスク駆動装置100は、図2に示すように、複数(例えば8つ)のスイングアーム102を有している。ハードディスク駆動装置100は、複数(例えば8つ)のスイングアーム102のうち、所望の数(例えば4つ)のスイングアーム102とそれ以外の数(例えば4つ)のスイングアーム102とを後述する上側軸受部20と下側軸受部60とによって独立して揺動することができるようになっている。
【0014】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1の概略構成を示すための断面図である。以下、説明の便宜上、図3におけるピボットアッシー軸受装置1の軸Y1の方向(以下、軸Y1方向ともいう)における一方(矢印a方向)を上側とし、他方(矢印b方向)を下側とする。また、図3におけるピボットアッシー軸受装置1の軸Y1に直交して延在する半径方向における一方(矢印c方向)を半径方向内側とし、他方(矢印d方向)を半径方向外側とする。以下の説明において、各部材の位置関係や方向を上下を用いて説明するときは、あくまで図面における位置関係や方向を示し、実際の機器に組み込まれたときの位置関係や方向を示すものではない。
【0015】
本発明の第1の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1は、軸Y1方向に延在するシャフト10と、シャフト10の軸Y1方向の一方側(上側)端部に配設された第1軸受部としての上側軸受部20と、シャフト10の軸Y1方向の他方側(下側)端部に配設された第2軸受部としての下側軸受部60とを備えている。そして、シャフト10の軸Y1方向における上側軸受部20の固有振動数と下側軸受部60の固有振動数とが異なっている。以下、ピボットアッシー軸受装置1の構成について具体的に説明する。
【0016】
図3に示すように、ピボットアッシー軸受装置1において、上側軸受部20は、第1内輪としての内輪32,42と、第1外輪としての外輪31,41と、複数の第1転動体としての転動体33,43(玉)とをそれぞれ有し、シャフト10の軸Y1方向に配設された一対の第1転がり軸受としての上側上部転がり軸受30,上側下部転がり軸受40を有している。内輪32,42は、シャフト10に嵌合されている。外輪31,41は、内輪32,42の半径方向外側に配設されている。転動体33,43は、外輪31,41および内輪32,42の間に配設されている。また、上側軸受部20は、上側上部転がり軸受30,上側下部転がり軸受40のそれぞれの外輪31,41の外周面31d,41dに固定された第1スリーブとしての上側スリーブ50を有している。上側上部転がり軸受30,上側下部転がり軸受40には予圧が加えられている。シャフト10の半径方向外側には、上側上部転がり軸受30および上側下部転がり軸受40を介して上側スリーブ50が回動自在な状態でシャフト10の上側(矢印a方向)に保持されるようになっている。
【0017】
ピボットアッシー軸受装置1において、上側スリーブ50の内周面には、上側上部転がり軸受30,上側下部転がり軸受40の間に互いに対向する外輪31,41の端面(下面31b,上面41a)が当接する第1スペーサ部としてのスペーサ部52が配設されている。具体的に、上側スリーブ50は、軸Y1方向と平行に延在する円筒状の部分である円筒部51と、上側スリーブ50の内周面における軸Y1方向の中央、すなわち上側内周面50caと下側内周面50cbとの間から半径方向内側に向かって突出する円環状の部分であるスペーサ部52とを有している。円筒部51およびスペーサ部52は、同軸に配設されており、軸Y1を中心軸としている。円筒部51およびスペーサ部52は一体に形成されている。
【0018】
円筒部51およびスペーサ部52は、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS300系)である。なお、円筒部51およびスペーサ部52は、マルテンサイト系ステンレス鋼(SUS400系)、フェライト系ステンレス鋼等のステンレス鋼、アルミ材、チタン材等であってもよく、これらを組み合わせてもよい。また、円筒部51およびスペーサ部52は、各々別体であってもよく、各々別材料で形成されていてもよい。
【0019】
上側軸受部20において、上側転がり軸受は、2つの転がり軸受を有している。すなわち、上側転がり軸受は、軸Y1方向において上側に位置する上側上部転がり軸受30と、軸Y1方向において上側上部転がり軸受30よりも下側に離間して位置する上側下部転がり軸受40とを有している。
【0020】
上側上部転がり軸受30および上側下部転がり軸受40は、例えば、同じ種類の玉軸受である。上側上部転がり軸受30および上側下部転がり軸受40は、同軸に配設されており、軸Y1を中心軸(回転軸)としている。上側上部転がり軸受30および上側下部転がり軸受40は、上側スリーブ50と同軸に配設されている。
【0021】
上側上部転がり軸受30は、中空環状の外輪31と、外輪31の半径方向内側に配設された中空環状の内輪32と、外輪31および内輪32の間において転動可能に配設された複数の転動体33とを有している。上側上部転がり軸受30の外輪31における外周面31dの直径は、上側スリーブ50の上側内周面50caよりも僅かに小さくなっており、上側上部転がり軸受30は、上側スリーブ50に隙間嵌めされるようになっている。上側上部転がり軸受30の外輪31の外周面31dは、エポキシ系接着剤やアクリル系接着剤等の嫌気性接着剤によって上側スリーブ50の上側内周面50caに接着固定されている。
【0022】
上側上部転がり軸受30の外輪31は、上側スリーブ50のスペーサ部52における上面52aにおいて当接されるようになっている。上側上部転がり軸受30の外輪31および内輪32は、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS300系)であり、上側スリーブ50と同じ材料で形成されている。なお、上側上部転がり軸受30の外輪31および内輪32は、マルテンサイト系ステンレス鋼(SUS400系)、フェライト系ステンレス鋼等のステンレス鋼、アルミ材、チタン材等であってもよく、これらを組み合わせてもよい。
【0023】
上側下部転がり軸受40は、中空環状の外輪41と、外輪41の半径方向内側に配設された中空環状の内輪42と、外輪41および内輪42の間において転動可能に配設された複数の転動体43とを有している。上側下部転がり軸受40の外輪41における外周面41dの直径は、上側スリーブ50の下側内周面50cbよりも僅かに小さくなっており、上側下部転がり軸受40は、上側スリーブ50に隙間嵌めされるようになっている。上側下部転がり軸受40の外輪41の外周面41dは、エポキシ系接着剤やアクリル系接着剤等の嫌気性接着剤によって上側スリーブ50の下側内周面50cbに接着固定されている。
【0024】
上側下部転がり軸受40の外輪41は、上側スリーブ50のスペーサ部52における下面52bにおいて当接されるようになっている。上側下部転がり軸受40の外輪41および内輪42は、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS300系)であり、上側スリーブ50と同じ材料で形成されている。なお、上側下部転がり軸受40の外輪41および内輪42は、マルテンサイト系ステンレス鋼(SUS400系)、フェライト系ステンレス鋼等のステンレス鋼、アルミ材、チタン材等であってもよく、これらを組み合わせてもよい。
【0025】
図3に示すように、ピボットアッシー軸受装置1において、シャフト10の外周面(円筒部11の外周面11d)には、上側軸受部20と下側軸受部60との間に互いに対向する上側下部転がり軸受40の内輪42の端面(下面42b)と下側上部転がり軸受70の内輪72の端面(上面72a)とが当接するカラー部13が配設されている。シャフト10は、円筒部11と、フランジ部12とを有している。円筒部11は、軸Y1方向と平行に延在する円筒状の部分である。フランジ部12は、円筒部11の外周面11dにおける軸Y1方向の下側(矢印b方向)の端から半径方向外側に向かって突出する円環状の部分である。カラー部13は、円筒部11の外周面11dにおける軸Y1方向の中央で半径方向外側に配設される円環状の部材である。
【0026】
円筒部11、フランジ部12およびカラー部13は、同軸に配設されており、軸Y1を中心軸としている。円筒部11、フランジ部12およびカラー部13は、上側上部転がり軸受30および上側下部転がり軸受40と同軸に配設されている。円筒部11およびフランジ部12は一体に形成されている。
【0027】
円筒部11、フランジ部12およびカラー部13は、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS300系)であり、上側スリーブ50と同じ材料で形成されている。なお、上側下部転がり軸受40の外輪41および内輪42は、マルテンサイト系ステンレス鋼(SUS400系)、フェライト系ステンレス鋼等のステンレス鋼、アルミ材、チタン材等であってもよく、これらを組み合わせてもよい。
【0028】
シャフト10の円筒部11における外周面11dの直径は、上側上部転がり軸受30の内輪32における内周面32cの直径および上側下部転がり軸受40の内輪42における内周面42cの直径よりも僅かに小さくなっている。シャフト10の円筒部11は、上側上部転がり軸受30および上側下部転がり軸受40に隙間嵌めされるようになっている。上側上部転がり軸受30および上側下部転がり軸受40の内輪32,42の内周面32c,42cは、エポキシ系接着剤やアクリル系接着剤等の嫌気性接着剤によってシャフト10の円筒部11の外周面11dの上側(矢印a方向)に接着固定されている。シャフト10のカラー部13における上面13aは、上側下部転がり軸受40の内輪42と当接するようになっている。
【0029】
一方、図3に示すように、ピボットアッシー軸受装置1において、下側軸受部60は、第2内輪としての内輪72,82と、第2外輪としての外輪71,81と、複数の第2転動体としての転動体73,83とをそれぞれ有し、シャフト10の軸Y1方向に配設された一対の第2転がり軸受としての下側上部転がり軸受70,下側下部転がり軸受80を有している。内輪72,82は、シャフト10に嵌合されている。外輪71,81は、内輪72,82の半径方向外側に配設されている。転動体73,83は、外輪71,81および内輪72,82の間に配設されている。また、下側軸受部60は、下側上部転がり軸受70,下側下部転がり軸受80のそれぞれの外輪71,81の外周面71d,81dに固定された第2スリーブとしての下側スリーブ90を有している。下側上部転がり軸受70,下側下部転がり軸受80には予圧が加えられている。
【0030】
シャフト10の半径方向外側には、下側上部転がり軸受70および下側下部転がり軸受80を介して下側スリーブ90が回動自在な状態でシャフト10の下側(矢印b方向)に保持されるようになっている。下側軸受部60は、シャフト10の下側(矢印b方向)に上側軸受部20と軸Y1方向に並んで配設されている。下側軸受部60は、上側軸受部20と同じ構造を有しており、同じ材質で構成されている。下側スリーブ90は、上側スリーブ50と所定の隙間を有して配置されており、上側スリーブ50とは独立して揺動することができるようになっている。
【0031】
ピボットアッシー軸受装置1において、下側スリーブ90の内周面には、下側上部転がり軸受70,下側下部転がり軸受80の間に互いに対向する外輪71,81の端面(下面71b,上面81a)が当接する第2スペーサ部としてのスペーサ部92が配設されている。具体的に、下側スリーブ90は、軸Y1方向と平行に延在する円筒状の部分である円筒部91と、下側スリーブ90の内周面における軸Y1方向の中央、すなわち上側内周面90caと下側内周面90cbとの間から半径方向内側に向かって突出する円環状の部分であるスペーサ部92とを有している。円筒部91およびスペーサ部92は、同軸に配設されており、軸Y1を中心軸としている。円筒部91およびスペーサ部92は一体に形成されている。
【0032】
円筒部91およびスペーサ部92は、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS300系)である。なお、円筒部91およびスペーサ部92は、マルテンサイト系ステンレス鋼(SUS400系)、フェライト系ステンレス鋼等のステンレス鋼、アルミ材、チタン材等であってもよく、これらを組み合わせてもよい。また、円筒部91およびスペーサ部92は、各々別体であってもよく、各々別材料で形成されていてもよい。
【0033】
下側軸受部60において、下側転がり軸受は、2つの転がり軸受を有している。すなわち、下側転がり軸受は、軸Y1方向において上側(矢印a方向)に位置する下側上部転がり軸受70と、軸Y1方向において下側上部転がり軸受70よりも下側(矢印b方向)に離間して位置する下側下部転がり軸受80とを有している。
【0034】
下側上部転がり軸受70および下側下部転がり軸受80は、例えば、同じ種類の玉軸受である。下側上部転がり軸受70および下側下部転がり軸受80は、同軸に配設されており、軸Y1を中心軸(回転軸)としている。下側上部転がり軸受70および下側下部転がり軸受80は、下側スリーブ90と同軸に配設されている。
【0035】
下側上部転がり軸受70は、中空環状の外輪71と、外輪71の半径方向内側に配設された中空環状の内輪72と、外輪71および内輪72の間において転動可能に配設された転動体73とを有している。下側上部転がり軸受70の外輪71における外周面71dの直径は、下側スリーブ90の上側内周面90caよりも僅かに小さくなっており、下側上部転がり軸受70は、下側スリーブ90に隙間嵌めされるようになっている。下側上部転がり軸受70の外輪71の外周面71dは、エポキシ系接着剤やアクリル系接着剤等の嫌気性接着剤によって下側スリーブ90の上側内周面90caに接着固定されている。
【0036】
下側上部転がり軸受70の外輪71は、シャフト10のカラー部13の下面13bにおいて当接されるようになっている。下側上部転がり軸受70の外輪71および内輪72は、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS300系)であり、下側スリーブ90と同じ材料で形成されている。なお、下側上部転がり軸受70の外輪71および内輪72は、マルテンサイト系ステンレス鋼(SUS400系)、フェライト系ステンレス鋼等のステンレス鋼、アルミ材、チタン材等であってもよく、これらを組み合わせてもよい。
【0037】
下側下部転がり軸受80は、中空環状の外輪81と、外輪81の半径方向内側に配設された中空環状の内輪82と、外輪81および内輪82の間において転動可能に配設された転動体83とを有している。下側下部転がり軸受80の外輪81における外周面81dの直径は、下側スリーブ90の下側内周面90cbよりも僅かに小さくなっており、下側下部転がり軸受80は、下側スリーブ90に隙間嵌めされるようになっている。下側下部転がり軸受80の外輪81の外周面81dは、エポキシ系接着剤やアクリル系接着剤等の嫌気性接着剤によって下側スリーブ90の下側内周面90cbに接着固定されている。
【0038】
下側下部転がり軸受80の内輪82は、シャフト10のフランジ部12における上面12aにおいて当接されるようになっている。下側下部転がり軸受80の外輪81および内輪82は、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS300系)であり、下側スリーブ90と同じ材料で形成されている。なお、下側下部転がり軸受80の外輪81および内輪82は、マルテンサイト系ステンレス鋼(SUS400系)、フェライト系ステンレス鋼等のステンレス鋼、アルミ材、チタン材等であってもよく、これらを組み合わせてもよい。
【0039】
シャフト10の円筒部11における外周面11dの直径は、下側上部転がり軸受70の内輪72における内周面72cの直径および下側下部転がり軸受80の内輪82における内周面82cの直径よりも僅かに小さくなっている。シャフト10の円筒部11は、下側上部転がり軸受70および下側下部転がり軸受80に隙間嵌めされるようになっている。下側上部転がり軸受70および下側下部転がり軸受80の外輪71,81の外周面71d,81dは、エポキシ系接着剤やアクリル系接着剤等の嫌気性接着剤によってシャフト10の円筒部11の外周面11dの下側(矢印b方向)に接着固定されている。
【0040】
図3に示すように、ピボットアッシー軸受装置1の組み立て状態において、上側軸受部20および下側軸受部60は、それぞれ所定の予圧を加えられつつ軸Y1方向にカラー部13を介して所定の間隔で位置決めされている。具体的には、上側軸受部20の上側下部転がり軸受40の内輪42における下面42bが、シャフト10のカラー部13における上面13aに当接し、上側下部転がり軸受40の外輪41における上面41aが、上側スリーブ50のスペーサ部52の下面52bに当接している。また、上側軸受部20の上側上部転がり軸受30の外輪31における下面31bが、上側スリーブ50のスペーサ部52の上面52aに当接している。
【0041】
また、下側軸受部60の下側上部転がり軸受70の内輪72における上面72aが、シャフト10のカラー部13における下面13bに当接し、下側上部転がり軸受70の外輪71における下面71bが、下側スリーブ90のスペーサ部92の上面92aに当接している。また、下側軸受部60の下側下部転がり軸受80の外輪81における上面81aが、下側スリーブ90のスペーサ部92の下面92bに当接し、下側下部転がり軸受80の内輪82における下面82bが、シャフト10のフランジ部12における上面12aに当接している。
【0042】
このような構成において、本発明の第1の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1では、上側軸受部20の上側上部転がり軸受30,上側下部転がり軸受40が受けている予圧と、下側軸受部60の下側上部転がり軸受70,下側下部転がり軸受80が受けている予圧とが異なっている。言い換えると、ピボットアッシー軸受装置1における上側軸受部20および下側軸受部60では、後述する固有振動数に影響する予圧以外の条件、例えば転がり軸受の寸法、材質などの他の条件が同じとなっている。具体的に、本発明の第1の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1では、上側軸受部20の上側上部転がり軸受30,上側下部転がり軸受40に1000(gf)の予圧が加えられており、下側軸受部60の下側上部転がり軸受70,下側下部転がり軸受80に150(gf)の予圧が加えられている。これにより、本発明の第1の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1では、シャフト10の軸Y1方向における上側軸受部20の固有振動数と下側軸受部60の固有振動数とを2kHz以上異ならせることができる。
【0043】
以下、上側軸受部20および下側軸受部60の固有振動数の定義、上側軸受部20および下側軸受部60の固有振動数特性、測定方法および算出方法、ならびに上側軸受部20および下側軸受部60の予圧と固有振動数との関係について詳述する。
【0044】
まず、ピボットアッシー軸受装置1における上側軸受部20および下側軸受部60の固有振動数の定義について説明する。図4は、ピボットアッシー軸受装置1の上側軸受部20および下側軸受部60の軸Y1方向の振動モデルを説明するための図である。図4に示すように、上側軸受部20および下側軸受部60の軸Y1方向の振動は、上側軸受部20および下側軸受部60を質量-ばね系の振動モデルとして表すことができる。
【0045】
すなわち、上側軸受部20の軸Y1方向のばね定数をkとし、上側軸受部20の上側上部転がり軸受30の外輪31、上側下部転がり軸受40の外輪41および上側スリーブ50の合計質量をmとする。このとき、軸Y1方向の荷重Laが加えられた場合の上側軸受部20の軸Y1方向の固有振動数Fnは次の式(1)により表すことができる。
【0046】
また、下側軸受部60の軸Y1方向のばね定数をkとし、下側軸受部60の下側上部転がり軸受70の外輪71、下側下部転がり軸受80の外輪81および下側スリーブ90の合計質量をmとする。このとき、軸Y1方向の荷重Laが加えられた場合の下側軸受部60の軸Y1方向の固有振動数Fnについても次の式(1)により表すことができる。
【0047】
なお、ばね定数kは、上側軸受部20および下側軸受部60に加えられる予圧や上側軸受部20および下側軸受部60の材質、転がり軸受30,40,70,80の各種パラメータ(諸元(ラジアル隙間、内外輪曲率比))等から算出される。
【0048】
【数1】
【0049】
このようにして、ピボットアッシー軸受装置1における上側軸受部20および下側軸受部60の固有振動数Fnを定義することができる。
【0050】
次に、ピボットアッシー軸受装置1における上側軸受部20および下側軸受部60の固有振動数特性の測定方法について説明する。図5は、ピボットアッシー軸受装置1における上側軸受部20および下側軸受部60の固有振動数特性の測定方法を説明するための断面図である。まず、ピボットアッシー軸受装置1における上側軸受部20の固有振動数特性の測定方法について説明する。
【0051】
図5(A)に示すように、上側軸受部20の固有振動数特性の測定方法では、ピボットアッシー軸受装置1のシャフト10のフランジ部12の下面12bが加振器110に載置されて固定される。加振器110は、ピボットアッシー軸受装置1を軸Y1方向に加振可能となっている。
【0052】
また、図5(A)に示すように、上側軸受部20の固有振動数特性の測定方法では、ピボットアッシー軸受装置1のシャフト10の円筒部11の上面11aの上側(矢印a方向)に速度センサ111が配置されている。また、上側軸受部20の上側スリーブ50の上面50aの上側(矢印a方向)に速度センサ112が配置されている。
【0053】
まず、加振器110は、振動周波数を徐々に上げながらピボットアッシー軸受装置1に振動を加える。続いて、速度センサ111は、例えば波長が630nm程度のヘリウムネオン(He-Ne)のレーザ光をシャフト10の円筒部11の上面11aに照射し、その反射光からのドップラ周波数を電気信号(速度データV1)に変換する。また、速度センサ112は、例えば波長が630nm程度のヘリウムネオン(He-Ne)のレーザ光を上側軸受部20の上側スリーブ50の上面50aに照射し、その反射光からのドップラ周波数を電気信号(速度データV2)に変換する。
【0054】
続いて、FFT(高速フーリエ変換)アナライザは、速度センサ111から受領した速度データV1にFFT解析を実施し、FFTデータF1に変換すると共に、速度センサ112から受領した速度データV2にFFT解析を実施し、FFTデータF2に変換する。そして、FFT(高速フーリエ変換)アナライザは、FFTデータF1およびFFTデータF2に対してゲイン計算を実施し、ゲインG1に変換する。
【0055】
図6は、ピボットアッシー軸受装置1の上側軸受部20および下側軸受部60の固有振動数特性の算出方法を説明するためのグラフである。図6において、横軸は振動周波数(kHz)を示しており、左側の縦軸は速度(m/s)を示しており、右側の縦軸はゲイン(dB)を示している。図6において、F1は速度データV1にFFT解析を実施したFFTデータF1を示しており、F2は速度データV2にFFT解析を実施したFFTデータF2を示しており、G1は上側軸受部20のゲインG1を示している。このとき、上側軸受部20のゲインG1は次の式(2)により表すことができる。
【0056】
dB=10Log10(F2/F1) …(2)
【0057】
このようにして、ピボットアッシー軸受装置1における上側軸受部20のゲインG1、すなわち、上側軸受部20の固有振動数特性を算出することができる。
【0058】
なお、例えば加振器110や治具に共振が発生した場合にも、図6に示すようにFFTデータF1およびFFTデータF2の双方に同様の波形Rが表れるため、上述のように(2)式によるゲイン計算を実施することで、加振器110や治具に基づく共振を除外することができる。
【0059】
次に、ピボットアッシー軸受装置1における下側軸受部60の固有振動数特性の測定方法について説明する。図5(B)に示すように、下側軸受部60の固有振動数特性の測定方法では、ピボットアッシー軸受装置1を軸Y1方向(矢印a方向、b方向)において逆向きに置き換える、すなわち、ピボットアッシー軸受装置1のシャフト10の円筒部11の上面11aが加振器110に載置されて固定される。
【0060】
また、図5(B)に示すように、下側軸受部60の固有振動数特性の測定方法では、ピボットアッシー軸受装置1のシャフト10のフランジ部12の下面12bの下側(矢印b方向)に速度センサ111が配置されている。また、下側軸受部60の下側スリーブ90の下面90bの下側(矢印b方向)に速度センサ112が配置されている。
【0061】
まず、加振器110は、振動周波数を徐々に上げながらピボットアッシー軸受装置1に振動を加える。続いて、速度センサ111は、例えば波長が630nm程度のヘリウムネオン(He-Ne)のレーザ光をシャフト10のフランジ部12の下面12bに照射し、その反射光からのドップラ周波数を電気信号(速度データV3)に変換する。また、速度センサ112は、例えば波長が630nm程度のヘリウムネオン(He-Ne)のレーザ光を下側軸受部60の下側スリーブ90の下面90bに照射し、その反射光からのドップラ周波数を電気信号(速度データV4)に変換する。
【0062】
続いて、FFT(高速フーリエ変換)アナライザは、速度センサ111から受領した速度データV3にFFT解析を実施し、FFTデータF3に変換すると共に、速度センサ112から受領した速度データV4にFFT解析を実施し、FFTデータF4に変換する。そして、FFT(高速フーリエ変換)アナライザは、FFTデータF3およびFFTデータF4に対してゲイン計算を実施し、ゲインG2に変換する。このようにして、ピボットアッシー軸受装置1における下側軸受部60のゲインG2、すなわち、下側軸受部60の固有振動数特性を算出することができる。
【0063】
図7は、ピボットアッシー軸受装置1の各軸受部の固有振動数特性を表すグラフである。図7において、横軸は振動周波数(kHz)、縦軸はゲイン(dB)を示している。図7において、G1は上述の上側軸受部20のゲインG1、すなわち、上側軸受部20の固有振動数特性を示しており、G2は下側軸受部60のゲインG2、すなわち、下側軸受部60の固有振動数特性を示している。なお、上述したように、上側軸受部20に1000(gf)の予圧が加えられており、下側軸受部60に150(gf)の予圧が加えられている。すなわち、上側軸受部20および下側軸受部60に加えられた予圧が異なっている。
【0064】
図7からも分かるように、上側軸受部20の固有振動数、すなわち、上側軸受部20のゲインG1のピーク(最大値)と、下側軸受部60の固有振動数、すなわち、下側軸受部60のゲインG2のピークとが2kHz異なっている。このように、上側軸受部20に1000(gf)の予圧が加えられており、下側軸受部60に150(gf)の予圧が加えられている場合、上側軸受部20の固有振動数と、下側軸受部60の固有振動数とが2kHz異なっていることが分かる。
【0065】
また、図7において、G3,G4は上側軸受部20および下側軸受部60に150(gf)の予圧が加えられた場合、すなわち、上側軸受部20および下側軸受部60に加えられた予圧が同じ場合の上側軸受部20および下側軸受部60のゲインG3,G4を示している。図7において、G3は上側軸受部20および下側軸受部60に加えられた予圧が同じ場合の上側軸受部20のゲインG3、すなわち、上側軸受部20の固有振動数特性を示している。また、G4は上側軸受部20および下側軸受部60に加えられた予圧が同じ場合の下側軸受部60のゲインG4、すなわち、下側軸受部60の固有振動数特性を示している。
【0066】
図7からも分かるように、上側軸受部20および下側軸受部60に加えられた予圧が同じであるゲインG3,G4は、上側軸受部20および下側軸受部60に加えられた予圧が異なるゲインG1,G2よりもピーク(最大値)が大きくなっている。これは、上側軸受部20および下側軸受部60のゲインG3,G4には共振が発生しているためである。
【0067】
一方、上側軸受部20および下側軸受部60に加えられた予圧が異なるゲインG1,G2は、上側軸受部20および下側軸受部60に加えられた予圧が同じであるゲインG3,G4と異なりピーク(最大値)が大きくなっていないことから、共振が発生していない。このように、上側軸受部20の固有振動数と、下側軸受部60の固有振動数とが2kHz以上異なっている場合には、共振が発生しないことが分かる。
【0068】
続いて、ピボットアッシー軸受装置1の製造方法について、図3を参照して説明する。ピボットアッシー軸受装置1の製造方法は、上側軸受部20の上側上部転がり軸受30,上側下部転がり軸受40に予圧を加える第1予圧工程と、下側軸受部60の下側上部転がり軸受70,下側下部転がり軸受80に予圧を加える第2予圧工程とを含んでいる。ピボットアッシー軸受装置1の製造方法では、第1予圧工程で加える予圧と、第2予圧工程で加える予圧とを異ならせて、シャフト10の軸Y1方向における上側軸受部20の固有振動数と下側軸受部60の固有振動数とを異ならせている。
【0069】
概略すると、まず、シャフト10の下側(矢印b方向)の端部に下側軸受部60を組み立てた後、シャフト10の上側(矢印a方向)の端部に上側軸受部20を組み立てる。下側軸受部60の組立工程には、一対をなす下側上部転がり軸受70および下側下部転がり軸受80に予圧を加える工程が含まれる。また、上側軸受部20の組立工程には、一対をなす上側上部転がり軸受30および上側下部転がり軸受40に予圧を加える工程が含まれる。
【0070】
具体的に、まず、下側下部転がり軸受80をシャフト10に嵌め込んでフランジ部12の上面12aに内輪82の下面82bを当接させた状態で、シャフト10の外周面11dと内輪82の内周面82cとを接着する。下側上部転がり軸受70をシャフト10に嵌め込む前に、下側上部転がり軸受70を下側スリーブ90に嵌め込んでスペーサ部92の上面92aに外輪71の下面71bを当接させた状態で、外輪71の外周面71dと下側スリーブ90の上側内周面90caとを接着させておく。この下側スリーブ90と接着された下側上部転がり軸受70をシャフト10に嵌め込んで下側下部転がり軸受80の外輪81の上面81aにスペーサ部92の下面92bを当接させる。さらに、下側上部転がり軸受70の内輪72を上側から下側に押して所定の荷重をかけた状態で、シャフト10の外周面11dと下側上部転がり軸受70の内輪72の内周面72cとを接着し、また下側下部転がり軸受80の外輪81の外周面81dと下側スリーブ90の下側内周面90cbとを接着する。これにより、一対をなす下側上部転がり軸受70および下側下部転がり軸受80に予圧が加えられる。
【0071】
次いで、カラー部13をシャフト10に嵌め込んで下側上部転がり軸受70の内輪72の上面72aにカラー部13の下面13bを当接させた状態で、シャフト10の外周面11dとカラー部13の内周面13cとを接着する。
【0072】
次いで、上側下部転がり軸受40をシャフト10に嵌め込んでカラー部13の上面13aに内輪42の下面42bを当接させた状態で、シャフト10の外周面11dと内輪42の内周面42cとを接着する。上側上部転がり軸受30をシャフト10に嵌め込む前に、上側上部転がり軸受30を上側スリーブ50に嵌め込んでスペーサ部52の上面52aに外輪31の下面31bを当接させた状態で、外輪31の外周面31dと上側スリーブ50の上側内周面50caとを接着させておく。この上側スリーブ50と接着された上側下部転がり軸受40をシャフト10に嵌め込んで上側下部転がり軸受40の外輪41の上面41aにスペーサ部52の下面52bを当接させる。更に、上側上部転がり軸受30の内輪32を上側から下側に押して所定の荷重(前述のカラー部13にかけた荷重とは異なる)をかけた状態で、シャフト10の外周面11dと上側上部転がり軸受30の内輪32の内周面32cとを接着し、上側下部転がり軸受40の外輪41の外周面41dと上側スリーブ50の下側内周面50cbとを接着する。これにより、一対をなす上側上部転がり軸受30および上側下部転がり軸受40に予圧が加えられる。
【0073】
このような組立工程においては、一対をなす上側上部転がり軸受30および上側下部転がり軸受40に加える予圧と、一対をなす下側上部転がり軸受70および下側下部転がり軸受80に加える予圧とを異ならせて、シャフト10の軸Y1方向における上側軸受部20の固有振動数と下側軸受部60の固有振動数とを異ならせている。このようにして、ピボットアッシー軸受装置1を製造することができる。
【0074】
このようにして、本発明の第1の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1では、上側軸受部20と下側軸受部60とが同じ構造を有しており、同じ材質で構成されている。また、上側軸受部20の上側上部転がり軸受30,上側下部転がり軸受40が受けている予圧と、下側軸受部60の下側上部転がり軸受70,下側下部転がり軸受80が受けている予圧とを異ならせている。具体的に、ピボットアッシー軸受装置1では、上側軸受部20に1000(gf)の予圧が加えられており、下側軸受部60に150(gf)の予圧が加えられている。このため、ピボットアッシー軸受装置1では、シャフト10の軸Y1方向における上側軸受部20の固有振動数と下側軸受部60の固有振動数とを2kHz以上異ならせることができる。
【0075】
図8は、ピボットアッシー軸受装置1の上側軸受部20および下側軸受部60の予圧と固有振動数との関係を表すグラフである。図8において、横軸は予圧(gf)を示しており、縦軸は上側軸受部20および下側軸受部60の固有振動数(上側軸受部20のゲインG1のピーク(最大値)および下側軸受部60のゲインG2のピーク(最大値))を示している。図8において、C1は上側軸受部20および下側軸受部60の予圧と固有振動数との関係を表す曲線C1である。
【0076】
図8からも分かるように、上側軸受部20に加えられている予圧が1000(gf)であり、下側軸受部60に加えられている予圧が150(gf)である場合、上側軸受部20の固有振動数と下側軸受部60の固有振動数とが2kHz異なっている。従って、ハードディスク駆動装置100の駆動時において、上側軸受部20および下側軸受部60が共振してしまうのを低減することができ、この結果、上側軸受部20および下側軸受部60に振動が生じるのを更に低減してスイングアームを安定して揺動させることができる。
【0077】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置200の構成を説明する。図9は、本発明の第2の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置200の概略構成を示すための断面図である。
【0078】
以下、上述の第1の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1と同一のまたは類似する構成に対しては同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。本発明の第2の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置200は、上述の本発明の第1の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1に対して下側軸受部の構成が異なる。具体的に、ピボットアッシー軸受装置200においては、下側軸受部60に代えて下側軸受部210が設けられている。
【0079】
下側軸受部210は、下側上部転がり軸受220と、下側下部転がり軸受230と、下側上部転がり軸受220および下側下部転がり軸受230の外周面に配設された軸Y1方向に延在する下側スリーブ240とを有している。シャフト10の半径方向外側には、下側上部転がり軸受220および下側下部転がり軸受230を介して下側スリーブ240が回動自在な状態でシャフト10の下側(矢印b方向)に保持されるようになっている。下側軸受部210は、上側軸受部20と同じ構造を有しており、異なる材質で構成されている。
【0080】
ピボットアッシー軸受装置200において、上側軸受部20の上側上部転がり軸受30,上側下部転がり軸受40の外輪31,41および上側スリーブ50の合計質量と、下側軸受部210の下側上部転がり軸受220、下側下部転がり軸受230の外輪221,231および下側スリーブ240の合計質量とが異なっている。具体的に、上側軸受部20の上側上部転がり軸受30、上側下部転がり軸受40および上側スリーブ50は、アルミ材(A6061系)であり、同じ材料で形成されている。上側軸受部20はアルミ材(A6061系)であり、比重は2.7である。下側軸受部210はオーステナイト系ステンレス鋼(SUS300系)であり、比重は7.9である。このように、上側軸受部20と下側軸受部210は比重が異なっている。
【0081】
また、ピボットアッシー軸受装置200では、上側軸受部20に1000(gf)の予圧が加えられており、下側軸受部210に1100(gf)の予圧が加えられている。これにより、本発明の第2の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置200では、シャフト10の軸Y1方向における上側軸受部20の固有振動数と下側軸受部210の固有振動数とを2kHz以上異ならせることができる。
【0082】
このようにして、本発明の第2の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置200では、上側軸受部20と下側軸受部210とが同じ構造を有しており、異なる比重で構成されている。また、上側軸受部20の上側上部転がり軸受30,上側下部転がり軸受40が受けている予圧と、下側軸受部210の下側上部転がり軸受220,下側下部転がり軸受230が受けている予圧とを異ならせている。具体的に、ピボットアッシー軸受装置1では、上側軸受部20の上側上部転がり軸受30,上側下部転がり軸受40に1000(gf)の予圧が加えられており、下側軸受部210の下側上部転がり軸受220,下側下部転がり軸受230に1100(gf)の予圧が加えられている。このため、ピボットアッシー軸受装置1では、シャフト10の軸Y1方向における上側軸受部20の固有振動数と下側軸受部210の固有振動数とを2kHz以上異ならせることができる。
【0083】
図10は、ピボットアッシー軸受装置200の上側軸受部20および下側軸受部210の予圧と固有振動数との関係を表すグラフである。図10において、横軸は予圧(gf)を示しており、縦軸は上側軸受部20および下側軸受部210の固有振動数(上側軸受部20のゲインG1のピーク(最大値)および下側軸受部210のゲインG2のピーク(最大値))を示している。図10において、C1は上側軸受部20の上側上部転がり軸受30,上側下部転がり軸受40の予圧と固有振動数との関係を表す曲線C1であり、C2は下側軸受部210の下側上部転がり軸受220,下側下部転がり軸受230の予圧と固有振動数との関係を表す曲線C2である。上側軸受部20および下側軸受部210は比重が異なるため、予圧と固有振動数との関係を表す曲線が異なっている。
【0084】
図10からも分かるように、上側軸受部20および下側軸受部210の比重が異なっており、上側軸受部20に加えられている予圧が1000(gf)であり、下側軸受部210に加えられている予圧が1100(gf)である場合、上側軸受部20の固有振動数と下側軸受部210の固有振動数とが2kHz異なっている。従って、ハードディスク駆動装置100の駆動時において、上側軸受部20および下側軸受部210が共振してしまうのを低減することができ、この結果、上側軸受部20および下側軸受部210に振動が生じるのを更に低減してスイングアームを安定して揺動させることができる。
【0085】
次に、本発明の第3の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置300の構成を説明する。図9は、本発明の第3の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置300の概略構成を示すための断面図である。
【0086】
以下、上述の第1の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1と同一のまたは類似する構成に対しては同一の符号を付してその説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。本発明の第3の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置300は、上述の本発明の第1の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置1に対して下側上部転がり軸受および下側下部転がり軸受の構成が異なる。
【0087】
すなわち、ピボットアッシー軸受装置300では、上側上部転がり軸受30および上側下部転がり軸受40の諸元と下側軸受部310の下側上部転がり軸受320および下側下部転がり軸受330の諸元とが異なっている。具体的に、上側上部転がり軸受30および上側下部転がり軸受40の諸元であるラジアル隙間は、下側上部転がり軸受320および下側下部転がり軸受330の諸元であるラジアル隙間よりも大きくなっている。すなわち、上側上部転がり軸受30および上側下部転がり軸受40の外輪31,41と転動体33,43との径方向における隙間は、下側上部転がり軸受320および下側下部転がり軸受330の外輪321,331と転動体323,333との径方向における隙間よりも大きくなっている。
【0088】
また、上側上部転がり軸受30および上側下部転がり軸受40の諸元である内外輪曲率比は、下側上部転がり軸受320および下側下部転がり軸受330の諸元である内外輪曲率比よりも大きくなっている。すなわち、外輪31,41および内輪32,42において転動体33,43の直径と軌道溝の半径との比は、外輪321,331および内輪322,332において転動体323,333の直径と軌道溝の半径との比よりも大きくなっている。これにより、本発明の第3の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置300では、上側軸受部20および下側軸受部310に同じ予圧を加えつつ、上側軸受部20の固有振動数と下側軸受部310の固有振動数とを2kHz以上異ならせることができる。
【0089】
【表1】
【0090】
表1は、ピボットアッシー軸受装置300における、上側上部転がり軸受30および上側下部転がり軸受40を含む上側軸受部20の諸元および下側上部転がり軸受320および下側下部転がり軸受330を含む下側軸受部310の諸元の一例を示す表である。上述のように、ピボットアッシー軸受装置300は、上側軸受部20および下側軸受部310に同じ予圧を加えつつ、上側軸受部20の諸元と下側軸受部310の諸元とを異ならせることにより、上側軸受部20の固有振動数と下側軸受部310の固有振動数とを2kHz以上異ならせている。ここで、ピボットアッシー軸受装置300において、上側軸受部20と下側軸受部310とは、例えば、表1に示す具体例1~6に示す異なる諸元のうち、上側軸受部20の固有振動数と下側軸受部310の固有振動数との差が2kHz以上となる組み合わせを適宜選択することができる。なお、上側軸受部20の諸元および下側軸受部310の諸元の具体例は、上述の例に限定されない。
【0091】
また、上側上部転がり軸受30および上側下部転がり軸受40の内外輪曲率比と、下側上部転がり軸受320および下側下部転がり軸受330の内外輪曲率比は同じ値とすることが望ましい。この場合において、上側軸受部20の諸元と、下側軸受部310の諸元とのうち、例えば、ラジアル隙間や質量などを互いに異ならせることにより、上側軸受部20の固有振動数と下側軸受部310の固有振動数との差が2kHz以上となるように設定すればよい。
【0092】
なお、ピボットアッシー軸受装置300では、上側軸受部20の上側上部転がり軸受30,上側下部転がり軸受40に1000(gf)の予圧が加えられており、下側軸受部310の下側上部転がり軸受320,下側下部転がり軸受330に1000(gf)の予圧が加えられている。すなわち、ピボットアッシー軸受装置300では、上側軸受部20および下側軸受部60に同じ予圧が加えられている。
【0093】
このようにして、本発明の第3の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置300では、上側上部転がり軸受30および上側下部転がり軸受40のラジアル隙間が、下側上部転がり軸受320および下側下部転がり軸受330のラジアル隙間よりも大きくなっている。また、上側上部転がり軸受30および上側下部転がり軸受40の内外輪曲率比が、下側上部転がり軸受320および下側下部転がり軸受330の内外輪曲率比よりも大きくなっている。このため、上側軸受部20の固有振動数と下側軸受部310の固有振動数とが2kHz異なっている。従って、ハードディスク駆動装置100の駆動時において、上側軸受部20および下側軸受部310が共振してしまうのを低減することができ、この結果、上側軸受部20および下側軸受部310に振動が生じるのを更に低減してスイングアームを安定して揺動させることができる。
【0094】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題および効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0095】
例えば、本発明の第2の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置200においては、上側軸受部20の上側上部転がり軸受30、上側下部転がり軸受40および上側スリーブ50がアルミ材(A6061系)である場合を一例に本発明の実施の形態について説明した。しかしながら、本発明はこれに限らず、例えば、上側スリーブ50のみがアルミ材(A6061系)であってもよい。このような場合であっても、上側軸受部20および下側軸受部210に加えられる予圧等を変更することで、上側軸受部20の固有振動数と下側軸受部210の固有振動数とを2kHz以上異ならせることができる。
【0096】
図11は、本発明の第2の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置400の変形例の概略構成を示すための断面図である。本発明の第2の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置200においては、上側軸受部20の材質と下側軸受部210の材質とが異なっていることにより、上側軸受部20の質量と下側軸受部210の質量が異なっている場合を一例に本発明の実施の形態について説明した。しかしながら、本発明はこれに限らず、例えば、図11に示す変形例のピボットアッシー軸受装置400のように、上側軸受部20Aの上側スリーブ450の形状と下側軸受部210の下側スリーブ440の形状とが異なっていることにより、上側スリーブ450の質量と下側スリーブ440の質量が異なっているものであってもよい。
【0097】
ピボットアッシー軸受装置400は、シャフト10の先端側である軸Y1方向上側の上側スリーブ450よりも、シャフト10の付け根側である軸Y1方向下側の下側スリーブ440の質量の方が重くなるような形状となっている。具体的には、下側スリーブ440の下側スペーサ部492は、上側スリーブ450の上側スペーサ部452よりも径方向の長さが長くなるような形状とすることで、上側スリーブ450よりも下側スリーブ440の質量が重くなっている。ピボットアッシー軸受装置400は、下側スペーサ部492の方が上側スペーサ部452よりも重いと、重心が下側に位置するため、装置全体をより安定させることができる。
【0098】
また、本発明の第3の実施の形態に係るピボットアッシー軸受装置300においては、上側上部転がり軸受30および上側下部転がり軸受40の諸元と下側上部転がり軸受320および下側下部転がり軸受330の諸元とが異なっている場合を一例に本発明の実施の形態について説明した。しかしながら、本発明はこれに限らず、例えば、これに加えて、上側軸受部20および下側軸受部310に加えられる予圧や上側軸受部20および下側軸受部310の材質等を変更して上側軸受部20の固有振動数と下側軸受部310の固有振動数とを2kHz以上異ならせてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1,200,400,300…ピボットアッシー軸受装置、10…シャフト、11…円筒部、11d…外周面、12…フランジ部、12a…上面、12b…下面、13…カラー部、13a…上面、13b…下面、13c…内周面、20,20A…上側軸受部、30…上側上部転がり軸受、31…外輪、31b…下面、31d…外周面、32…内輪、32c…内周面、33…転動体、40…上側下部転がり軸受、41…外輪、41a…上面、41d…外周面、42…内輪、42b…下面、42c…内周面、43…転動体、50,450…上側スリーブ、50a…上面、50ca…上側内周面、50cb…下側内周面、51…円筒部、52,452…スペーサ部、52a…上面、52b…下面、60,210,310…下側軸受部、70,220,320…下側上部転がり軸受、71,221,321…外輪、71b…下面、71d…外周面、72,322…内輪、72c…内周面、73,323…転動体、80,230,330…下側下部転がり軸受、81,231,331…外輪、81a…上面、81d…外周面、82…内輪、82b…下面、82c…内周面、83,333…転動体、90,240,440…下側スリーブ、90b…下面、90ca…上側内周面、90cb…下側内周面、91…円筒部、92,492…スペーサ部、92a…上面、92b…下面、100…ハードディスク駆動装置、101…ハウジング、102…スイングアーム、103…ヘッド部、104…磁気ディスク、110…加振器、111,112…速度センサ、Y1…軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11