(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】防水型信号制御機
(51)【国際特許分類】
G08G 1/095 20060101AFI20230914BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
G08G1/095 D
H05K5/02 H
(21)【出願番号】P 2019174602
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】千葉 知明
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-130178(JP,A)
【文献】特開2018-022431(JP,A)
【文献】特開2014-228994(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0674178(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00-99/00
G08G 1/00-99/00
H05K 5/00- 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に起立した縦枠及び該縦枠間に架け渡す横枠から成る枠部と、該枠部内に収納する制御箱体と、前記枠部の下端に固定し、支柱に取り付け可能な基台部と、下部を開放し、該下部以外は密閉構造であり、前記枠部を上方から覆う角筒状の覆体部とから成る防水型信号制御機であって、
前記制御箱体には、前面に上下に摺動可能な操作部を備えており、
前面の下端側の前記横枠には、柱体及び該柱体に軸支されたシーソー辺部から成る一対の昇降部が固定されており、
前記操作部の前面下方には、外側に向けて一対の外側突部が設けられており、
前記覆体部の前面下方には、内側に向けて一対の内側突部が設けられており、
前記昇降部の前記シーソー辺部の一端に前記外側突部が当接可能であり、前記シーソー辺部の他端に、前記内側突部が当接可能であ
り、
前記覆体部により前記枠部を完全に覆った施錠可能状態では、前記シーソー辺部の一端は前記外側突部と当接して上方に位置し、前記シーソー辺部の他端は前記内側突部と当接して下方に位置することで、前記操作部は上方に保持されることを特徴とするの防水型信号制御機。
【請求項2】
前記覆体部を完全に覆った施錠可能状態から前記覆体部を上方に移動させた状態では、前記シーソー辺部の一端は前記外側突部と当接して
下方に位置し、前記シーソー辺部の他端は前記内側突部と当接して
上方に位置
することで、前記操作部は下方に保持されることを特徴とする請求項
1に記載の防水型信号制御機。
【請求項3】
前記制御箱体は、上方に電子機器を収納した制御ユニット
を配置し、下方に前記操作部を配置したことを特徴とする請求項
1又は2に記載の防水型信号制御機。
【請求項4】
鉛直方向に起立した縦枠及び該縦枠間に架け渡す横枠から成る枠部と、該枠部内に収納され、上下に摺動可能な制御箱体と、前記枠部の下端に固定し、支柱に取り付け可能な基台部と、下部を開放し、該下部以外は密閉構造であり、前記枠部を上方から覆う角筒状の覆体部とから成る防水型信号制御機であって、
前面及び後面の下端側の前記横枠には、柱体及び該柱体に軸支されたシーソー辺部から成る一対の昇降部がそれぞれ固定されており、
前記制御箱体の前面下方及び後面下方には、外側に向けて一対の外側突部がそれぞれ設けられており、
前記覆体部の前面下方及び後面下方には、内側に向けて一対の内側突部がそれぞれ設けられており、
前記昇降部の前記シーソー辺部の一端に前記外側突部が当接可能であり、前記シーソー辺部の他端に、前記内側突部が当接可能であり、
前記覆体部により前記枠部を完全に覆った施錠可能状態では、前記シーソー辺部の一端は前記外側突部と当接して上方に位置し、前記シーソー辺部の他端は前記内側突部と当接して下方に位置することで、前記制御箱体は上方に保持されることを特徴とするの防水型信号制御機。
【請求項5】
前記覆体部を完全に覆った施錠可能状態から前記覆体部を上方に移動させた状態では、前記シーソー辺部の一端は前記外側突部と当接して下方に位置し、前記シーソー辺部の他端は前記内側突部と当接して上方に位置することで、前記制御箱体は下方に保持されることを特徴とする請求項4に記載の防水型信号制御機。
【請求項6】
前記制御箱体は、上方に電子機器を収納した制御ユニットを配置し、下方に操作部を配置したことを特徴とする請求項4又は5に記載の防水型信号制御機。
【請求項7】
前記覆体部の下端が前記基台部の上端に当接することで前記覆体部が施錠可能状態となることを特徴とする請求項
1~
6の何れか1項に記載の防水型信号制御機。
【請求項8】
前記縦枠には、所定の上下位置に前記覆体部を保持するストッパを配置したことを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の防水型信号制御機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点等に設置され、信号灯器の点灯制御を行う防水型信号制御機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、交差点の信号灯の支柱等に取り付けられる信号制御機が開示されている。この信号制御機は、交差点に配置される車両用信号灯器や歩行者用信号灯器を制御する制御ユニットを内蔵し、この制御ユニットが記憶する点灯制御プログラムに基づいて、接続される各信号灯器の点灯制御を行っている。
【0003】
信号制御機は特許文献1の
図2に示すように、保守等のために開口部を備える筐体に扉部が蝶番を介して取り付けられており、通常時は扉部を閉じて密閉状態となっている。保守作業時には、扉部を作業員が開放して筐体内の機器の修理、点検作業を行っている。
【0004】
扉部の内側縁部及び開口部の周縁には、防水対策として合成ゴム等の防水用パッキンが取り付けられており、外部から雨水等が筐体内に浸入することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
信号制御機は雨水等の水滴に対して不具合が生じないように防滴構造が採用されているが、洪水等により水中に水没した場合には、たとえ防水用パッキンでシールされていても、時間経過と共に徐々に信号制御機内の空気が筐体上方から抜け出て浸水してしまい、筐体内の電子機器に対してショート等による破損等が発生し、信号灯器の制御が不可能になるという問題が生ずる。
【0007】
また、筐体が気密状態を維持できたとしても、信号制御機は特許文献1の
図1に示すように、下方から電力線や信号線等の各種配線を引き込んで筐体内の電子機器に接続しているため、筐体の底面には引き込み用の孔が開いているため、水没する深さによっては水圧により筐体内の空気が圧縮され、筐体下端が浸水してしまうことがある。
【0008】
信号制御機が浸水により故障すると、電子機器又は信号制御機自体を新しいものに交換しなければならない。そのため、災害の復旧時において交換作業が完了するまで信号灯器が点灯しないという問題が生ずる。
【0009】
本発明の目的は、上述の課題を解決し、筐体が水没しても筐体内の電子機器に対して浸水することのない防水型信号制御機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る防水型信号制御機は、鉛直方向に起立した縦枠及び該縦枠間に架け渡す横枠から成る枠部と、該枠部内に収納する制御箱体と、前記枠部の下端に固定し、支柱に取り付け可能な基台部と、下部を開放し、該下部以外は密閉構造であり、前記枠部を上方から覆う角筒状の覆体部とから成る防水型信号制御機であって、前記制御箱体には、前面に上下に摺動可能な操作部を備えており、前面の下端側の前記横枠には、柱体及び該柱体に軸支されたシーソー辺部から成る一対の昇降部が固定されており、前記操作部の前面下方には、外側に向けて一対の外側突部が設けられており、前記覆体部の前面下方には、内側に向けて一対の内側突部が設けられており、前記昇降部の前記シーソー辺部の一端に前記外側突部が当接可能であり、前記シーソー辺部の他端に、前記内側突部が当接可能であり、前記覆体部により前記枠部を完全に覆った施錠可能状態では、前記シーソー辺部の一端は前記外側突部と当接して上方に位置し、前記シーソー辺部の他端は前記内側突部と当接して下方に位置することで、前記操作部は上方に保持されることを特徴とする。
本発明に係る防水型信号制御機は、鉛直方向に起立した縦枠及び該縦枠間に架け渡す横枠から成る枠部と、該枠部内に収納され、上下に摺動可能な制御箱体と、前記枠部の下端に固定し、支柱に取り付け可能な基台部と、下部を開放し、該下部以外は密閉構造であり、前記枠部を上方から覆う角筒状の覆体部とから成る防水型信号制御機であって、前面及び後面の下端側の前記横枠には、柱体及び該柱体に軸支されたシーソー辺部から成る一対の昇降部がそれぞれ固定されており、前記制御箱体の前面下方及び後面下方には、外側に向けて一対の外側突部がそれぞれ設けられており、前記覆体部の前面下方及び後面下方には、内側に向けて一対の内側突部がそれぞれ設けられており、前記昇降部の前記シーソー辺部の一端に前記外側突部が当接可能であり、前記シーソー辺部の他端に、前記内側突部が当接可能であり、前記覆体部により前記枠部を完全に覆った施錠可能状態では、前記シーソー辺部の一端は前記外側突部と当接して上方に位置し、前記シーソー辺部の他端は前記内側突部と当接して下方に位置することで、前記制御箱体は上方に保持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る防水型信号制御機によれば、下方のみを開口した覆体部により、枠部及び制御箱体を上方から覆うことで、雨水が浸入することはなく、また水没したとしても空気漏れが発生することがない。また、覆体部で密閉した通常運用時では、制御箱体の操作部は制御箱体内で上昇するため、水没時の水圧により覆体部内の空気が圧縮され、枠部の下端が浸水したとしても、操作部の故障及び制御箱体の損傷に至る破損が発生することはない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1の防水型信号制御機の分解斜視図である。
【
図4】更に覆体部を下降させた状態の操作部の説明図である。
【
図5】覆体部により密閉した状態の操作部の説明図である。
【
図6】覆体部を途中まで持ち上げて係止した状態の斜視図である。
【
図7】実施例2の防水型信号制御機の分解斜視図である。
【
図8】基台部に枠部及び制御箱体を載置した状態の斜視図である。
【
図9】覆体部の下降途中の制御箱体の説明図である。
【
図10】覆体部により密閉した状態の制御箱体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は実施例1の防水型信号制御機の分解斜視図であり、
図2は通常運用時の状態の斜視図である。
【0015】
防水型信号制御機は、縦枠1a及び横枠1bとから成る枠部1と、この枠部1内に収納する制御箱体2と、枠部1の下端に固定し、支柱Pに取り付け可能な基台部3と、制御箱体2を収納した枠部1を上方から覆う覆体部4とから構成されている。
【0016】
枠部1は金属製であり、鉛直方向に起立した4本の断面L字状の縦枠1aと、これらの縦枠1aの上下の両端同士を架け渡す8本の断面L字状の横枠1bとから構成されている。それぞれの縦枠1aの側面側には、構状のレール部1cが上下方向に設けられている。
【0017】
また、覆体部4を所定位置で保持するための下位ストッパ1d、上位ストッパ1eが、枠部1の正面側の2本の縦枠1aの前面側に一対ずつ配置されており、これらのストッパ1d、1eは必要時に手動で突出させることができる。或いは、覆体部4がストッパ1d、1eの位置から外れていると、ばね等を利用して自動的に突出するようにしてもよい。これらのストッパ1d、1eを配置することで、不時に覆体部4が降下して指等を怪我することなく、安全に作業をすることができる。
【0018】
また、枠部1の底面には、ボルト等を挿入することにより固定するボルト孔1fが設けられており、前面の下端側の横枠1bには、一対の薄板状の昇降部1gが取り付けられている。
【0019】
枠部1内に収納する制御箱体2は、上方に図示しないが通信基板、配線接続部や信号制御プログラムを書き込んだROMを搭載した基板等の電子機器を収納した制御ユニットを有しており、背景技術に開示された信号制御機と同機能を備えている。
【0020】
制御箱体2の前面上方には、信号灯器の点灯ステップや点灯ステップの点灯秒数、保守作業時のメッセージ等を表示する表示部及びこれら表示の指示や収納した電子機器の操作を行う表示指示部から成る操作パネル2aが配置されている。
【0021】
また、制御箱体2の前面下方には、操作部2bが上下方向に摺動可能に設けられている。この操作部2bは、略中央に内側に凹んだ凹部2cと、この凹部2c内に磁石により吸着される操作ボタン2dと、この操作ボタン2dを内側に配置された制御ユニットに接続する延長ケーブル2eとを備えている。また、操作部2bの前面下方には、外側に向けて一対の外側突部2fが突出して設けられている。
【0022】
更に、制御箱体2の前面中央には、操作部2bの凹部2cを挿入して、上下に摺動可能とする空隙窓2gと、この空隙窓2gの両側に上下方向に平行に配置されたガイド溝部2hが設けられている。操作部2bの裏面両端に設けた図示しない係止条部をガイド溝部2hに係合させることで、操作部2bは揺動することなく空隙窓2g内に摺動可能となる。また、制御箱体2の底部は空隙を有しており、この空隙に浸水する可能性があるので、電子機器等を配置することはない。
【0023】
基台部3は支柱Pの地上から1m程度の位置に、一対のリング状の取り付け金具Tを介して取り付けられている。直方体である基台部3の上部は開放され、この開口部に、中央に矩形窓3aを設けた頂板部3bが取り付けられている。そして、頂板部3bには枠部1を固定するための複数個のボルト孔3cが設けられている。頂板部3bを設けずに、基台部3の上端部近傍の内周壁に横枠1bの幅よりも大きい突出幅を有する凸状部を設け、この凸状部に枠部1を載置してボルト等により固定してもよい。
【0024】
なお、頂板部3bの大きさは、枠部1の底面より若干大きくなっており、覆体部4が枠部1を覆い、
図2に示す状態になると基台部3の側面と覆体部4の側面とが平面状になる。
【0025】
覆体部4は金属材又は合成樹脂材から成り、枠部1を上方から覆う中空の角筒状とされ、開放した下部以外は密閉構造とされている。覆体部4の前面には把持部4aが設けられ、この把持部4aにより覆体部4を上方に持ち上げ可能とされている。なお、把持部4aは覆体部4の両側面に一対で設けるようにしてもよい。
【0026】
覆体部4の左右の両内側部には、上下方向に凸状のレールガイド部4bがそれぞれ2本ずつ、計4本が設けられており、これらのレールガイド部4bが枠部1のレール部1cに嵌合するようにされている。なお、レール部1cを覆体部4に設け、レールガイド部4bを枠部1に設けるようにしても支障はない。
【0027】
或いは、枠部1の縦枠1aに上下方向に段階的に延びる延長レールを取り付け、この延長レールに摺動するレールガイドを覆体部4の内側に配置するようにしてもよい。このようにすることで、覆体部4を上方へ持ち上げると延長レールが段階的に延び、枠部1上端へ覆体部4が移動したとしても、延長レールにレールガイドが安定して嵌合しているので、ぐらつくことがない。
【0028】
覆体部4の前面の内側部の下方には、内側に向けて一対の内側突部4cが突出して設けられている。また、覆体部4は基台部3又は枠部1に対して施錠可能とし、解錠しない限り、覆体部4を上方へ持ち上げることができないようにすることが好ましい。
【0029】
このように構成された防水型信号制御機を組み立てて、支柱Pに取り付ける際には、先ず、枠部1内の空隙に制御箱体2を配置し、ねじ、ボルト等によって固定する。次に、支柱Pに取り付けた基台部3の頂板部3bの上に、制御箱体2を収納した枠部1を載置し、頂板部3bのボルト孔3cと、枠部1の底面のボルト孔1fとをボルト等により固定する。
【0030】
そして、固定後に各種配線は矩形窓3aを通って枠部1の接続端子と接続した後に、覆体部4のレールガイド部4bと、枠部1のレール部1cとを嵌合させて、覆体部4を下降させる。覆体部4の下端が頂板部3bと当接することで防水型信号制御機は密閉され、施錠することで
図2に示す通常時の運用状態となる。
【0031】
図3は覆体部4の下降途中の操作部2bの説明図であり、
図4は更に覆体部4を下降させた状態の操作部2bの説明図であり、
図5は覆体部4により枠部1を密閉した状態の操作部2bの説明図である。
【0032】
前面の下端側の横枠1bに設けた昇降部1gは、横枠1bに固定した柱体1hと、この柱体1hの上端の軸部1iを介して軸支されたシーソー辺部1jとから構成されている。シーソー辺部1jは、略中央が軸部1iにより軸支され、一端の上辺には第1の凹部1kが設けられている。また、他端の上辺には第2の凹部1lが設けられている。
【0033】
図3~
図5に示すようにシーソー辺部1jは、第1の凹部1kが下降すると第2の凹部1lが上昇し、第1の凹部1kが上昇すると第2の凹部1lが下降する構造をしている。なお、シーソー辺部1jは、作用点に対して力点側を長くすることで、より小さい力で持ち上げることが可能となるが、筐体が若干大きくなる。
【0034】
操作部2bの前面に設けた外側突部2fは、第2の凹部1lに常時当接しており、
図3に示すように、覆体部4を上方に持ち上げている場合には、操作部2bの自重により第2の凹部1lは下降した状態となる。
【0035】
そして、覆体部4のレールガイド部4bが縦枠1aのレール部1cに嵌合した状態で覆体部4を下降させると、覆体部4の内側の突出した内側突部4cが第1の凹部1kに当接する。第1の凹部1kに覆体部4の内側突部4cが当接することで、第1の凹部1kの下降が開始される。同時に第2の凹部1lの上昇が開始し、併せて操作部2bが上昇する。
【0036】
更に覆体部4を下降させた
図4に示す状態を経て、覆体部4が枠部1を完全に覆った
図5に示す密閉状態に至ることになる。
図5に示す密閉状態では、操作部2bが最も上昇した状態となり、洪水等の災害で防水型信号制御機が水没し、下方から水圧により浸水した場合であっても、操作部2bが上方にあることで水没を免れることになる。
【0037】
図6は、災害や事故発生等に信号灯器を手動で介入制御するために、解錠後に把持部4aにより覆体部4を下位ストッパ1dにより係止可能な位置まで持ち上げて、操作部2bを操作可能とした状態の斜視図である。この状態で、覆体部4の下縁は突出した下位ストッパ1dにより係止され、覆体部4はこの位置で保持される。
【0038】
覆体部4を持ち上げることで、操作部2bは
図5、
図4、
図3の順で下降することになる。従って、下位ストッパ1dは操作部2bが下降した位置に合わせて設ければよく、覆体部4を持ち上げる移動量は少なくて済む。
【0039】
凹部2cの図示しない手動切替スイッチを手動で自動モードから手動モードに切替えた後に、操作ボタン2dにより信号灯器を手動で介入操作することができるようにされており、操作者は延長ケーブル2eを介して引き出した操作ボタン2dを手動で操作する。
【0040】
操作ボタン2dは操作する毎に、交差点の信号灯器の点灯ステップを進めることが可能である。操作ボタン2dを1回押圧することで、例えば自動車用灯器の青灯器点灯が黄灯器点灯に切換わる点灯制御を行うことができる。
【0041】
手動介入終了後、再び自動で点灯制御を行う通常運用に戻すときには、前述の手動切替スイッチを手動モードから自動モードに切替える。そして、下位ストッパ1dを縦枠1aに収納してから、把持部4aを持って覆体部4を上方から下方へ引き下げることにより、覆体部4を
図2に示す元の位置まで戻すことができる。覆体部4を元の位置まで戻した後に施錠して作業は終了する。
【0042】
また、制御箱体2の電子機器等を保守、点検する際には、覆体部4の把持部4aを持って、覆体部4を上位ストッパ1eの係止位置まで持ち上げて、上位ストッパ1eにより覆体部4の下縁を係止する。これにより、操作パネル2aを操作しながら、枠部1内の制御箱体2の電子機器の調整や点検等を行うことができる。
【0043】
このように、覆体部4はレール部1c、及びレールガイド部4bにより揺動することなく上下動させることができ、制御箱体2の必要個所を露出させることができる。また、覆体部4により枠部1を覆った状態では、少なくとも覆体部4の上方から雨水等が浸入する虞れは全くない。
【0044】
仮に、洪水等の災害で防水型信号制御機が水没した場合には、覆体部4が十分な密閉構造を有しているため、覆体部4内の空気が抜け出すことはない。防水型信号制御機が水没して水深が深くなり、水圧が高くなった場合には、覆体部4内に空気が圧縮されて、制御箱体2の下方から浸水することがあるが、制御箱体2は底部が空隙であり、かつ覆体部4が下降する際のシーソー辺部1jの作用により操作部2bが上昇状態となることから、電子機器が浸水により破壊されることはない。
【0045】
また、解錠後に覆体部4を容易に上下へ摺動可能とするために、枠部1の上端にコイルばね、油圧シリンダ等の上方へ付勢する付勢部材を設けてもよい。或いは、電動による上下動を可能とすることもできる。
【0046】
これらの付勢部材等は覆体部4の内側上面に取り付けてもよい。また、付勢手段等を設けることで、覆体部4の施錠手段を解錠した際に、徐々に覆体部4は上方へ移動することになり安全性が確保される。また、覆体部4を戻す際は、付勢手段等はクッションとして作用して、徐々に下降して施錠位置まで戻すことができる。
【実施例2】
【0047】
図7は実施例2の防水型信号制御機の分解斜視図であり、
図8は制御箱体2’を枠部1’内に収納した状態の分解斜視図である。なお、実施例1と同一の部材は同一の符号を付している。
【0048】
実施例2の防水型信号制御機の枠部1’には、前面の下端側の横枠1bだけではなく、後面の下端側の横枠1bにも、同一構造とされる一対の薄板状の昇降部1gが取り付けられている。そして、前面の昇降部1gと後面の昇降部1gは、前面と後面の中立面に対して対称の位置に配置されている。
【0049】
また、縦枠1a’は、実施例1の縦枠1aに比べて長く、枠部1’内に制御箱体2’を設置する際は、固定せずに設置する。
図8に示すように制御箱体2’の上方には若干の空隙が存在し、制御箱体2’は枠部1’に対して上下に摺動可能としている。
【0050】
枠部1’内に収納する制御箱体2’の前面下方には、固定された操作部2b’が設けられている。この操作部2b’の凹部2cの前面には、密閉可能な右開きの扉部2iが取り付けられている。凹部2c内の構成は、実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0051】
また、制御箱体2’の前面下方及び後面下方には、各々、外側に向けて一対の外側突部2fが突出して設けられている。これらの外側突部2fは、前面と後面とで対称の位置に配置されている。なお、制御箱体2’のその他の構成は、実施例1の制御箱体2と同様である。
【0052】
更に、枠部1’を上方から覆う覆体部4’の内側部の前面下方及び後面下方には、各々、内側に向けて一対の内側突部4cが突出して設けられている。そして、前面下方の一対の内側突部4cと後面下方の一対の内側突部4cは、前面と後面とで対称の位置に配置されている。覆体部4’のその他の構成は、実施例1の覆体部4と同様である。
【0053】
実施例2の防水型信号制御機のその他の構成についても実施例1と同様であるので説明を省略する。このように構成された実施例2の防水型信号制御機は、実施例1と同様に組み立てられて支柱Pに取り付けられ、
図2に示す通常時の運用状態となる。
【0054】
図9は覆体部4’の下降途中の制御箱体2’の説明図であり、
図10は覆体部4’により枠部1’を密閉した状態の制御箱体2’の説明図である。
【0055】
制御箱体2’の前面下方及び後面下方に設けた外側突部2fは、それぞれ枠部1’の前面及び後面の下端側の横枠1bに設けた第2の凹部1lに常時当接している。そして、
図9に示すように覆体部4’を上方に持ち上げている場合には、制御箱体2’の自重により第2の凹部1lは下降した状態となる。
【0056】
そして、覆体部4’のレールガイド部4bが縦枠1aのレール部1cに嵌合した状態で覆体部4’を下降させると、覆体部4’の前面及び後面の内側部に設けた内側突部4cが、それぞれ枠部1’の前面及び後面の下端側の横枠1bに設けた第1の凹部1kに当接する。第1の凹部1kに覆体部4’の内側突部4cが当接することで、第1の凹部1kの下降が開始される。同時に第2の凹部1lの上昇が開始し、併せて制御箱体2’が上昇する。
【0057】
更に覆体部4’を下降させると、覆体部4’が枠部1’を完全に覆った
図10に示す密閉状態に至る。
図10に示す密閉状態では、制御箱体2’が最も上昇した状態となり、洪水等の災害で防水型信号制御機が水没し、下方から水圧により浸水した場合であっても、制御箱体2’が上方にあることで水没を免れることになる。
【0058】
実施例2の防水型信号制御機において信号灯器の手動介入制御や制御箱体2’の電子機器等の保守点検を行う際の手順や動作は、実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0059】
このように、実施例2の防水型信号制御機では覆体部4’が枠部1’を完全に覆った通常の運用時には、制御箱体2’の全体を上方に配置させることができ、実施例1の操作部2bのみを上方に配置させる場合よりも、更に洪水等による水没の危険性を低減させることができる。
【0060】
本発明に係る防水型信号制御機によれば、下方のみを開口した覆体部4、4’により、枠部1、1’及び制御箱体2、2’を上方から覆うことで、雨水が浸入することはなく、また水没したとしても空気漏れが発生することがない。また、覆体部4で密閉した通常運用時では、制御箱体2の操作部2b又は制御箱体2’が枠部1、1’内で上昇するため、水没時の水圧により覆体部4内の空気が圧縮され、枠部1、1’の下端が浸水したとしても制御箱体2の操作部又は制御箱体2’が破損することはない。
【符号の説明】
【0061】
1、1’ 枠部
1a 縦枠
1b 横枠
1c レール部
1d 下位ストッパ
1e 上位ストッパ
1g 昇降部
1h 柱体
1i 軸部
1j シーソー辺部
2、2’ 制御箱体
2a 操作パネル
2b、2b’ 操作部
2c 凹部
2d 操作ボタン
2f 外側突部
3 基台部
4、4’ 覆体部
4a 把持部
4b レールガイド部
4c 内側突部