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特許7349310仕切壁、該仕切壁の施工方法及び仕切壁を備える建物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】仕切壁、該仕切壁の施工方法及び仕切壁を備える建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/74 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
E04B2/74 511L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019180922
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021055455
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】小濱 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】牛山 歩
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-064611(JP,U)
【文献】特開2008-240355(JP,A)
【文献】特開2019-065688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/72-2/82
E04B 1/62-1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の仕切壁であって、
前記仕切壁を構成するランナーを前記建物の柱に対して固定するためのランナー固定部品を有し、
前記柱には、前記ランナー固定部品と係合する係合部が形成されており、
前記ランナー固定部品は、
前記係合部に着脱可能に取り付けられる係止部と、
前記ランナーが固定される固定部と、
前記係止部と前記固定部を連結する連結部と、を備えており、
前記係合部は、板状部材を折り曲げることにより複数の受容部が形成されるよう前記柱の側面に取り付けられており、
前記係止部は、前記複数の受容部に挿入される複数の係止片を備えていることを特徴とする仕切壁。
【請求項2】
前記複数の係止片は、前記複数の受容部に挿入された状態で前記柱の側面から離間する方向に突出する突部を備えており、
前記複数の係止片は、弾性変形可能であることを特徴とする請求項に記載の仕切壁。
【請求項3】
前記係止部、前記固定部及び前記連結部は、一つの金属板によって構成されており、一体化していることを特徴とする請求項1又は2に記載の仕切壁。
【請求項4】
建物の仕切壁であって、
前記仕切壁を構成するランナーを前記建物の柱に対して固定するためのランナー固定部品を有し、
前記柱には、前記ランナー固定部品と係合する係合部が形成されており、
前記ランナー固定部品は、
前記係合部に着脱可能に取り付けられる係止部と、
前記ランナーが固定される固定部と、
前記係止部と前記固定部を連結する連結部と、を備えており、
前記固定部には複数の前記ランナーが前記ランナー間に隙間を空けて並んだ状態で固定されており、
前記固定部は、複数の前記ランナーを固定する際に、隣接する前記ランナーの間に隙間を確保するためのガイド部を備えることを特徴とする仕切壁。
【請求項5】
建物の仕切壁であって、
前記仕切壁を構成するランナーを前記建物の柱に対して固定するためのランナー固定部品を有し、
前記柱には、前記ランナー固定部品と係合する係合部が形成されており、
前記ランナー固定部品は、
前記係合部に着脱可能に取り付けられる係止部と、
前記ランナーが固定される固定部と、
前記係止部と前記固定部を連結する連結部と、を備えており、
前記柱の外周には、耐火被覆材が巻き付けられており、
前記柱の側面と前記固定部の間には、前記耐火被覆材の厚みに対応する厚みの空間が形成されていることを特徴とする仕切壁。
【請求項6】
建物の仕切壁であって、前記仕切壁を構成するランナーを前記建物の柱に対して固定するためのランナー固定部品を有し、前記柱には、前記ランナー固定部品と係合する係合部が形成されており、前記ランナー固定部品は、前記係合部に着脱可能に取り付けられる係止部と、前記ランナーが固定される固定部と、前記係止部と前記固定部を連結する連結部と、を備えている仕切壁の施工方法であって、
前記柱の前記係合部に前記ランナー固定部品の前記係止部を係合することと、
前記柱及び前記ランナー固定部品の上から耐火被覆材を巻き付けることと、
前記耐火被覆材のうち、前記固定部に対応する部分を取り除くことで前記固定部を露出させることと、
前記耐火被覆材から露出した前記固定部に前記ランナーを固定することと、を含むことを特徴とする仕切壁の施工方法。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の仕切壁を、住戸間を仕切るための界壁として備えることを特徴とする建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕切壁、該仕切壁の施工方法及び仕切壁を備える建物に係り、特に、建物の仕切壁を構成するランナーを建物の柱に対して固定するためのランナー固定部品を用いた仕切壁、該仕切壁の施工方法及び仕切壁を備える建物に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅や長屋等の建物において住戸間を仕切るための仕切壁(界壁)を設ける場合、通常、ランナー等の仕切壁を構成する部品を建物の梁や柱に対して固定する。また、仕切壁が設けられた建物において耐火性能を確保するために、角形鋼管の鉄骨柱の周りに耐火被覆を設けることがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、柱の側面に沿って垂直鋼材が配置されており、垂直鋼材の垂直かつ平坦な支持面に帯板形態の壁内耐火材が取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-64804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建物内に仕切壁を設ける作業において柱周りに、仕切壁を構成する部品、例えば、柱の延在方向に沿って延在する部材である縦ランナーを配置する際には、より簡単に、かつ、適切な位置に縦ランナーを配置し固定することが求められる。また、仕切壁を設ける作業において、耐火性能を確保するために柱周りに耐火被覆材を配置する際には、柱の周囲に耐火被覆材のための所定の間隔を確保する必要がある。
【0005】
従来、仕切壁を構成する部品である縦ランナーを柱の周囲に配置する場合、工場において、事前に柱の側面に、耐火被覆材を配置するために所定の間隔を空けるようにしてランナー固定部品としてのプレート部材を溶接しておき、現場でプレート部材に縦ランナーを固定していた。しかし、柱の側面に、ランナー固定部品としてプレート部材を溶接した場合、柱の運搬工程などにおいて、プレート部材や、プレート部材を柱に接続する接続部に外力が加わることで変形してしまうことがあった。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ランナー固定部品を現場で容易かつ適切に柱に取り付けることができ、柱に対してランナーを適切に配置することが可能な仕切壁、該仕切壁の施工方法及び仕切壁を備える建物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の仕切壁によれば、建物の仕切壁であって、前記仕切壁を構成するランナーを前記建物の柱に対して固定するためのランナー固定部品を有し、前記柱には、前記ランナー固定部品と係合する係合部が形成されており、前記ランナー固定部品は、前記係合部に着脱可能に取り付けられる係止部と、前記ランナーが固定される固定部と、前記係止部と前記固定部を連結する連結部と、を備えており、前記係合部は、板状部材を折り曲げることにより複数の受容部が形成されるよう前記柱の側面に取り付けられており、前記係止部は、前記複数の受容部に挿入される複数の係止片を備えていることにより解決される。
【0008】
上記のように構成された本発明の仕切壁は、ランナー固定部品の係止部を柱の係合部に取り付けるという容易な方法により、柱に対して適切な位置に取り付けることができるため、柱に対してランナーを適切に配置することが可能となる。
また、上記の構成では、複数の受容部に複数の係止片が挿入されることで、柱に対するランナー固定部品の取り付け状態が安定したものとなる。
【0010】
また、上記の仕切壁に関してより好適な構成を述べると、前記複数の係止片は、前記複数の受容部に挿入された状態で前記柱の側面から離間する方向に突出する突部を備えており、前記複数の係止片は、弾性変形可能であるとよい。
上記の構成では、係止片が受容部に挿入された状態で突部が受容部と接して弾性変形することで、ランナー固定部品の柱に対する係合状態が安定に維持される。
【0011】
また、上記の仕切壁に関して好適な構成を述べると、前記係止部、前記固定部及び前記連結部は、一つの金属板によって構成されており、一体化しているとよい。
上記の構成では、前記係止部、前記固定部及び前記連結部が一つの金属板によって構成されていて一体化しているのでランナー固定部品が簡素な構造となり、より取り扱い易くなる。
【0012】
また、前記課題は、本発明の仕切壁によれば、建物の仕切壁であって、前記仕切壁を構成するランナーを前記建物の柱に対して固定するためのランナー固定部品を有し、前記柱には、前記ランナー固定部品と係合する係合部が形成されており、前記ランナー固定部品は、前記係合部に着脱可能に取り付けられる係止部と、前記ランナーが固定される固定部と、前記係止部と前記固定部を連結する連結部と、を備えており、前記固定部には複数の前記ランナーが前記ランナー間に隙間を空けて並んだ状態で固定されており、前記固定部は、複数の前記ランナーを固定する際に、隣接する前記ランナーの間に隙間を確保するためのガイド部を備えるとよい。
上記の構成では、複数のランナーを固定部に固定する際、ガイド部を挟んで互いに反対の位置にランナーを固定することで、遮音性能を確保する上で必要な隙間を容易に確保することが可能となる。
【0013】
また、前記課題は、本発明の仕切壁によれば、建物の仕切壁であって、前記仕切壁を構成するランナーを前記建物の柱に対して固定するためのランナー固定部品を有し、前記柱には、前記ランナー固定部品と係合する係合部が形成されており、前記ランナー固定部品は、前記係合部に着脱可能に取り付けられる係止部と、前記ランナーが固定される固定部と、前記係止部と前記固定部を連結する連結部と、を備えており、前記柱の外周には、耐火被覆材が巻き付けられており、前記柱の側面と前記固定部の間には、前記耐火被覆材の厚みに対応する厚みの空間が形成されているとよい。
上記の構成では、耐火性能を確保するために柱周りに耐火被覆材を配置する際に、柱の周囲に耐火被覆材のための適切な間隔を確保することが可能となる。
【0014】
また、前記課題は、本発明の仕切壁の施工方法によれば、建物の仕切壁であって、前記仕切壁を構成するランナーを前記建物の柱に対して固定するためのランナー固定部品を有し、前記柱には、前記ランナー固定部品と係合する係合部が形成されており、前記ランナー固定部品は、前記係合部に着脱可能に取り付けられる係止部と、前記ランナーが固定される固定部と、前記係止部と前記固定部を連結する連結部と、を備えている仕切壁の仕切壁を施工する方法であって、前記柱の前記係合部に前記ランナー固定部品の前記係止部を係合することと、前記柱及び前記ランナー固定部品の上から耐火被覆材を巻き付けることと、前記耐火被覆材のうち、前記固定部に対応する部分を取り除くことで前記固定部を露出させることと、前記耐火被覆材から露出した前記固定部に前記ランナーを固定することと、を含むことにより解決される。
【0015】
また、前記課題は、本発明の建物によれば、上記の仕切壁を、住戸間を仕切るための界壁として備えることにより解決される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の仕切壁によれば、ランナー固定部品を現場で容易かつ適切に柱に取り付けることができ、柱に対してランナーを適切に配置することが可能となる。したがって、仕切壁の施工や建物の施工を効率的かつ適切に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】界壁及びその周辺の構成を示す模式図である。
図2】鉄骨柱と係合部の構成及び下地金物(ランナー固定部品)の構成を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る下地金物(ランナー固定部品)の斜視図である。
図4】下地金物(ランナー固定部品)の正面図である。
図5】下地金物(ランナー固定部品)の側面図である。
図6】下地金物(ランナー固定部品)の上面図である。
図7図4のA-A断面図である。
図8】鉄骨柱に下地金物が取り付けられた状態を示す正面図である。
図9】鉄骨柱に下地金物が取り付けられた状態を示す側面図である。
図10図8のB-B断面図であり、鉄骨柱に取り付けられた下地金物の固定部に縦ランナーを固定した状態を示す説明図である。
図11】変形例に係る下地金物(ランナー固定部品)を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係るランナー固定部品、仕切壁、仕切壁の施工方法及び建物について、図1乃至図11を参照して、その構成を説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例であり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得る。また、当然ながら、本発明にはその等価物が含まれ得る。
【0019】
以下の説明中、「厚み方向」とは、界壁1の厚み方向である。また、厚み方向における一端側を「表側」と呼ぶこととし、他端側を「裏側」と呼ぶこととする。さらに、以下の説明中、下地金物10について、図3に示すように各方向を定義する。なお、以下において各部材の位置、姿勢及び状態について説明する際には、特に断る場合を除き、当該各部材が建物内の正規の設置位置に配置された状況を想定して説明することとする。
【0020】
<界壁1>
本実施形態に係る仕切壁としての界壁1及びその周辺の構成について図1を参照しながら説明する。図1は、界壁1及びその周辺の構成を示す模式図である。界壁1は、集合住宅や長屋等の建物において住戸間を仕切る仕切壁である。界壁1は、図1に図示するように、鉄骨柱2と、耐火被覆材3と、縦ランナー4と、断熱材5と、スタッド6と、面材ボード7と、後述する下地金物10と、によって主に構成されている。
【0021】
(鉄骨柱2)
鉄骨柱2は、図1及び図2に示すように断面矩形の角柱(例えば、200mm×200mmの角形鋼管)であり、鉄骨柱2の側面2aには、足場として仮設される作業床を設置するためにも利用される係合部Kが取り付けられている。係合部Kは、図2に示すように板状部材を折り曲げることにより形成され、溶接等により鉄骨柱2の側面2aに取り付けられている。
【0022】
鉄骨柱2の外周面である側面2aと係合部Kとの間には、鉄骨柱2の延在方向(上下方向)に延びる隙間である受容部Kaが2か所形成されおり、上下の端部に開口部が形成されている。なお、係合部Kは、鉄骨柱2の延在方向(つまり、上下方向)において、所定の間隔をあけて複数設けられている(図2)。
【0023】
(耐火被覆材3)
鉄骨柱2の周囲には、建物の耐火性能を確保するために耐火被覆材3が配置されている。この耐火被覆材3は、耐火材の一例であり、鉄骨柱2の周囲に巻き付け可能な構成となっている。より詳しく説明すると、耐火被覆材3は、巻き付け耐火被覆材であり、具体的には、耐熱性ロックウールからなるフェルトと可撓性有機質表面材(たとえば不織布)との積層物である。耐火被覆材3は、耐火性能上必要とされる所定の厚み(例えば、約20mm)を有し、図1に示すように、鉄骨柱2の外周を取り巻くように配置され、不図示の溶接ピンによって鉄骨柱2に留められている。
【0024】
(縦ランナー4及び断熱材5)
縦ランナー4は、断面コの字状の溝形鋼によって構成されたレール状の鋼材であり、鉄骨柱2の延在方向に沿って(つまり、上下方向に沿って)配置されている。縦ランナー4は、厚み方向において二つの縦ランナー4が縦ランナー4間に隙間Sを設けた状態で並ぶように配置されている。なお、厚み方向における縦ランナー4間の隙間Sは、遮音上必要なサイズ(例えば、約10mm)に設定されている。
【0025】
縦ランナー4は、その溝部の間にグラスウールなどで形成された断熱材5を保持している。断熱材5は、縦ランナー4に保持されることで、断熱性能上必要な厚み(例えば、約45mm)が維持されており、界壁1の断熱性能が確保される。
【0026】
(スタッド6)
スタッド6は、上下方向に長く延びた鋼材である。スタッド6は、スタッド6を設置するために用いられる断面コの字状の溝形鋼によって構成されたレール状の鋼材である不図示のランナー(横ランナー)の延出方向に沿って一定間隔毎に配置されている。
【0027】
また、スタッド6は、図1に示すように、厚み方向において二つのスタッド6がスタッド6間に隙間(例えば、約10mm)を設けた状態で並ぶように配置されている。また、厚み方向において並ぶ二つのスタッド6のうち、表側に位置するスタッド6の表側の端面に面材ボード7が取り付けられており、同様に、裏側に位置するスタッド6の裏側の端面に面材ボード7が取り付けられている。
【0028】
そして、鉄骨柱2の側面2aに設けられた係合部Kには、本実施形態のランナー固定部品である下地金物10が着脱可能に取り付けられている。横並び状態にある二つの縦ランナー4の各々は、その長手方向が鉄骨柱2の延在方向に沿った状態でこの下地金物10にビスBにて固定されることになる。
【0029】
<下地金物10(ランナー固定部品)>
次に、ランナー固定部品としての下地金物10の構成について、図2乃至図7を参照しながら説明する。図2は、鉄骨柱2の係合部Kに下地金物10が係合した状態を示す斜視図である。図3乃至図7は、下地金物10の外観を示す図であり、図3が斜視図、図4が正面図(前側から見た図)、図5が側面図、図6が上面図、図7図4のA-A断面図である。
【0030】
下地金物10は、鋼板(金属板に相当)を打ち抜いて、折り曲げ(曲げ絞り)加工することで構成されており、本実施形態では、薄板(例えば、約0.8mm)によって構成されている。なお、下地金物10の材質は、特に限定されるものではないが、本実施形態のように薄板状の金属部材が望ましい。
【0031】
下地金物10は、下地金物10の高さ方向(上下方向)が鉄骨柱2の延在方向(つまり、上下方向)に沿い、かつ、下地金物10の横幅方向が界壁1の厚み方向に沿い、さらに下地金物10の前後方向が鉄骨柱2の側面2aに対して直交するように、鉄骨柱2に複数設けられた係合部Kのそれぞれに取り付けられる。
【0032】
本実施形態に係る下地金物10は、図2乃至図7に示すように、主構成要素として、鉄骨柱2の係合部Kに着脱可能に取り付けられる係止部11と、縦ランナー4が固定される固定部12と、係止部11と固定部12を連結する連結部13と、を備えている。より詳細には、本実施形態に係る下地金物10は、係止部11、固定部12、連結部13、立壁部14及び当接部15を有しており、係止部11、固定部12、連結部13、立壁部14及び当接部15は、一枚の鋼板を加工成形することで構成されており、一部品として一体化している。
【0033】
以下、詳述するように、本実施形態の下地金物10(ランナー固定部品)は、建物の界壁1(仕切壁)を構成する縦ランナー4(ランナー)を、建物の鉄骨柱2に対して固定するための下地金物10(ランナー固定部品)であって、鉄骨柱2の側面2aに形成された係合部Kに着脱可能に取り付けられる係止部11と、縦ランナー4が固定される固定部12と、係止部11と固定部12を連結する連結部13と、を備えていることを特徴とする下地金物10(ランナー固定部品)である。
【0034】
(係止部11)
係止部11は、鉄骨柱2の係合部Kが備える複数の受容部Kaに挿入される2つの係止片11aを備えている。各係止片11aが対応する受容部Kaに挿入されることで、下地金物10が鉄骨柱2の側面2aに取り付けられる。
【0035】
各係止片11aは、図3乃至図5に示されるように、連結部13から所定の角度(例えば、約75°(75°±5°))で折り曲げられて下方に向かって延出し、下方に向かうにつれて固定部12に近づくように折り曲げられており、その先端には固定部12から離間する方向に屈曲した屈曲部11b(屈曲角度は、例えば、約135°(135°±5°))が形成されている。屈曲部11b(突部)は、各係止片11aが連結部13と接続された基端部を起点として、連結部13に対する傾斜角度が変わるように弾性変形することが可能である。
【0036】
(固定部12)
固定部12は、上下方向において連結部13よりも下方に位置し、縦ランナー4が固定される上下方向及び幅方向に広がる面を備える部分である。固定部12は、図2乃至図5に示すように、薄厚(例えば、厚みが約0.5mm)の鋼板からなり、正面視で矩形形状をなしている。固定部12の前面には、縦ランナー4の底面がビスBによって固定される。
【0037】
また、本実施形態では、図1に示すように、二つの縦ランナー4が下地金物10の幅方向において縦ランナー4間に隙間Sを空けて並んだ状態で固定部12の前面に対して固定されることになっている。ここで、縦ランナー4間の隙間Sについては、界壁1における遮音性能を確保するのに必要な量(約10mm)に設定されている。すなわち、本実施形態では、遮音性能を確保するのに必要な隙間を縦ランナー4間に確保した状態で各縦ランナー4が固定部12に固定されている。
【0038】
また、図3及び図6に示すように、下地金物10は、二つの縦ランナー4を固定部12に固定する際にガイドとして機能するガイド部12aを備えている。具体的には、図6に示すように、固定部12の横幅方向における中央位置に、連結部13の前端部から前方へ延出する突起であるガイド部12aが形成されている。下地金物10を作製する際に、鋼板(金属板に相当)を打ち抜いて、連結部13及び係止部11に相当する部分と共に折り曲げ加工することで、前方に立て起こされるようにしてガイド部12aが形成される。
【0039】
下地金物10の横幅方向におけるガイド部12aの幅は、固定部12の幅方向に横並び状態で固定される二つの縦ランナー4の間の隙間(後述する図10の隙間S)の設計値(例えば約10mm)に対応するように設定されている。後述するように、二つの縦ランナー4を固定部12に並ぶように固定する際、ガイド部12aを挟んで互いに反対の位置に縦ランナー4を固定することで、隣接する二つの縦ランナー4の間の隙間(すなわち、遮音上必要となる隙間)の設計値に相当する隙間Sを容易に確保することが可能となる。
【0040】
なお、下地金物10の横幅方向におけるガイド部12aの幅を、固定部12に横並び状態で固定される二つの縦ランナー4の間の隙間の設計値(例えば約10mm)よりも若干小さく(例えば約8乃至9mm)することも可能である。ガイド部12aの幅を、縦ランナー4の間の隙間Sの設計値よりも若干小さくすることで、下地金物10の寸法に誤差が生じたり、各部材の配置位置がずれたりしたとしても、二つの縦ランナー4の位置を適宜調整して、二つの縦ランナー4の間の隙間Sを設計値に合わせることで、各縦ランナー4を本来の設置位置に精度よく配置することが可能となる。
【0041】
(連結部13)
連結部13は、薄厚の鋼材からなり、下地金物10の上面を形成し、上面視で矩形形状をなしている。連結部13は、下地金物10を鉄骨柱2の係合部Kに係合させたときに、係止部11の基端部及び固定部12の間(換言すると、鉄骨柱2の側面2a及び固定部12の間)に空間Vが形成されるように係止部11と固定部12を連結する部分である。ここで、空間Vが形成されることで、鉄骨柱2の側面2aから固定部12が空間Vの厚みだけ離間することとなる。つまり、鉄骨柱2の周囲を囲むように巻き付けた耐火被覆材3のうち、下地金物10の固定部12に対応する部分を取り除くことで、縦ランナー4を固定するために固定部12を露出させることができる。
【0042】
(立壁部14及び当接部15)
立壁部14(側壁)は、固定部12の横幅方向の端部から後方に向かうように略垂直に立ち上がった部分である。立壁部14の立ち上がり量(換言すると、下地金物10の前後方向の長さd)は、耐火被覆材3の厚み(例えば、20mm)に対応して設定されている。
【0043】
当接部15は、立壁部14の後端から略垂直に曲がって下地金物10の横幅方向外側に向かう方向に屈曲している。当接部15は、下地金物10が係合部Kに取り付けられたときに、係合部Kの両側部において、鉄骨柱2の側面2aに当接することで、縦ランナー4を固定部12に固定する際に下地金物10を後方から前方に向かうように支持する役割を果たす。
【0044】
本実施形態では、係止部11、固定部12、連結部13、立壁部14及び当接部15が一つの鋼板(金属板)を加工することで構成されているため、これらの部分が一部品として一体化している。このため、本実施形態の下地金物10は、簡素な構造となり、また、より取り扱い易いものとなっている。ただし、これに限定されるものではなく、各部分が、元々は互いに別パーツからなり、下地金物10を組み立てる際に各パーツを連結して一体化させてもよい。かかる場合、各パーツを構成する鋼板が十分な肉厚を有していればパーツ同士を溶接にて連結してもよい。
【0045】
<界壁1の施工方法>
以下、上述した下地金物10を用いて、鉄骨柱2に対して縦ランナー4を固定することを含む、界壁1の施工方法について説明する。本実施形態の界壁1(仕切壁)の施工方法は、鉄骨柱2の係合部Kに下地金物10(ランナー固定部品)の係止部11を係合することと(ステップS1)、鉄骨柱2及び下地金物10の上から耐火被覆材3を巻き付けることと(ステップS2)、耐火被覆材3のうち、下地金物10の固定部12に対応する部分を取り除くことで固定部12を露出させることと(ステップS3)、耐火被覆材3から露出した固定部12に縦ランナー4を固定することと(ステップS4)、を含むことを特徴とする。
【0046】
先ず、下地金物10を用意し、鉄骨柱2の側面2aに設けられた係合部Kの2つの受容部Kaに、下地金物10の係止部11の2つの係止片11aを上方から近付ける。そして、受容部Kaに係止片11aを挿入する。このとき、係止片11aの屈曲部11b(突部)が、受容部Kaの内壁に当接するため、係止片11aが弾性変形する。
【0047】
連結部13が受容部Kaの上端に当接した状態となるまで、下地金物10を下方へと移動させることで、係止部11が受容部Kaに係止される。この結果、下地金物10が鉄骨柱2の側面2aに取り付けられる(ステップS1)。図8乃至図10は、鉄骨柱2の側面2aに下地金物10が取り付けられた状態を示す図であり、図8は正面図、図9は側面図である。図10は、図8のB-B断面図であり、鉄骨柱2に取り付けられた下地金物10の固定部12に縦ランナー4をその底面においてビスBで固定した状態を示す説明図である(図10において、耐火被覆材3は、仮想的に示されている)。なお、下地金物10は、鉄骨柱2の延在方向に沿って一定間隔毎に複数配置された受容部Kaに対して、それぞれ取り付けられる(図2)。
【0048】
このとき、図9に示すように、下地金物10の係止部11が備える係止片11aは、受容部Kaと鉄骨柱2の側面2aの間に挿入された状態で、屈曲部11b(受容部Kaに挿入された状態で鉄骨柱2の側面2aから離間する方向に突出する突部)が受容部Kaの内壁に当接するため、係止片11aが連結部13と接続された基端部を起点として撓むようにして弾性変形する。これにより、受容部Ka内で係止片11aが弾性変形する結果、係止部11が受容部Kaに保持されるようになる。このように本実施形態の下地金物10は、係止部11を上記の手順にて受容部Kaに係止させることにより、ワンタッチで鉄骨柱2の側面2aに取り付けることが可能である。
【0049】
次に、鉄骨柱2及び下地金物10の上から耐火被覆材3を巻き付ける(ステップS2)。耐火被覆材3は、例えば、耐熱性ロックウールからなるフェルトと可撓性有機質表面材との積層物である。このとき、下地金物10、特に固定部12には、鉄骨柱2の側面2aに押し付けられる方向に荷重がかかるため、下地金物10に変形(湾曲)が生じてしまう可能性がある。
【0050】
本実施形態に係る下地金物10では、上述した通り、立壁部14及び当接部15が形成されていることで、係合部Kの両側部において、当接部15が鉄骨柱2の側面2aに当接して下地金物10を支持する。さらに、連結部13の後端部も、鉄骨柱2の側面2aに当接して下地金物10を支持する。したがって、作業者が、耐火被覆材3を鉄骨柱2及び下地金物10の上から巻き付ける際に、下地金物10が湾曲して変形してしまうことが抑制される。つまり、鉄骨柱2の側面2aから固定部12の間における空間Vの厚みが適切に保持される。
【0051】
次に、鉄骨柱2の周囲を囲むように巻き付けた耐火被覆材3のうち、下地金物10の固定部12に対応する部分を取り除き、固定部12を露出させる(ステップS3)。このとき、固定部12に対応する部分は耐火被覆材3が膨らんでいるため、作業員は目視で固定部12の大まかな位置を確認した上で、手で耐火被覆材3を軽く押さえることで固定部12の正確な位置を把握することができる。
【0052】
次に、耐火被覆材3から露出した下地金物10の固定部12に縦ランナー4を固定する(ステップS4)。より詳しく説明すると、下地金物10の横幅方向において二つの縦ランナー4を縦ランナー4間に隙間Sが設けられるように並べ、各々の縦ランナー4をビスBによって固定部12に固定する。このとき、図10に示すように、ガイド部12aを挟んで互いに反対の位置に縦ランナー4を固定することで、隣接する二つの縦ランナー4の間に遮音上必要となる隙間S(例えば、約10mm)を容易に確保することが可能となる。また、鉄骨柱2と縦ランナー4の間(換言すると、鉄骨柱2の側面2aと下地金物10の固定部12の間)に耐火被覆材3を配置するための空間Vが適切に確保される(図10)。
【0053】
以上のように、本実施形態のランナー固定部品及び仕切壁の施工方法によれば、ランナー固定部品を現場で容易かつ適切に柱に取り付けることができ、かつ、柱に対してランナーを適切に配置することが可能となる。このとき、本実施形態のランナー固定部品を用いることで、柱の表面とランナーの間に耐火被覆材を配置するための空間V(クリアランス)を確保することができる。したがって、仕切壁の施工や建物の施工を効率的かつ適切に行うことが可能となる。
【0054】
そして、本実施形態のランナー固定部品は、現場で柱の係合部に着脱可能に取り付けられるため、事前に柱の側面に所定の間隔を空くようにランナー固定部品としてのプレート部材を溶接した場合のように、柱の運搬工程などにおいて、ランナー固定部品としてのプレート部材が変形してしまうことはない。
【0055】
<変形例>
以上までに本発明のランナー固定部品及び界壁に関して、その構成及び利用方法についての一実施形態を例に挙げて説明してきたが、上述の実施形態は、あくまでも一例に過ぎず、他の例も考えられる。
【0056】
以下、図11を参照して、変形例に係るランナー固定部品である下地金物10Xの構成について説明をする。なお、上述の実施形態に係る下地金物10と重複する部分は説明を省略し、下地金物10と異なる部分を中心に説明を行う。図11は、下地金物10Xの斜視図である。
【0057】
図11に示すように、変形例に係るランナー固定部品である下地金物10Xは、固定部12に開口12Xbが形成されており、開口12Xbから後方へ向かう方向に折り曲げられた連結部13Xが延在している。そして、連結部13Xの後端部から下方に向かって係止部11Xが設けられている。
【0058】
係止部11Xは、2つの係止片11Xaを有している。各係止片11Xaは、図11に示されるように、下方に向かうにつれて固定部12Xに近づくように突出し、その先端には固定部12Xから離間する方向に屈曲した屈曲部11Xbが形成されている。また、各係止片11Xaには、その下端から上方に向かう切り欠き11Xcが形成されている。このような構成により、連結部13Xと接続された基端部を起点として、各係止片11Xaの前端部(屈曲部11Xb)が後方に撓むように弾性変形することが可能となっている。
【0059】
なお、下地金物10Xは、鋼板(金属板に相当)を打ち抜き加工して、全体の輪郭及び係止部11X及び連結部13Xに相当する箇所を形成し、固定部12と接続されている箇所を起点として連結部13Xを内側に折り返すことで形成される。なお、図11では、図示を省略したが、固定部12Xの上端の中央部に、下地金物10のガイド部12aと同様のガイド部を設けることも可能である。
【0060】
下地金物10Xの係止片11Xaを鉄骨柱2の係合部Kが備える受容部Kaに挿入すると、係止片11Xaの後端が鉄骨柱2の側面2aと当接し、係止片11Xaの屈曲部11Xbが受容部Kaの内壁に当接することで、係止片11Xaが弾性変形する。このようにして、下地金物10Xは鉄骨柱2の側面2aに対して固定される。
【0061】
上記の実施形態では、下地金物10を鉄骨柱2の係合部Kに係止する例を示したが、鉄骨柱2の延在方向において、係合部Kが設けられていない位置において、縦ランナー4と鉄骨柱2の側面2aの間に、空間Vの厚みと同じ間隔を保持するためのスペーサーとなる追加の部材を配置しても良い。スペーサーとなる追加の部材として、下地金物10や下地金物10Xを用い、その当接部15,15Xの裏面側に両面テープを貼着して鉄骨柱2の側面2aに貼り付けることが可能である。このようにすることで、鉄骨柱2の延在方向において、縦ランナー4と鉄骨柱2の側面2aの間に耐火被覆材3のための空間Vを適切に確保することが可能となる。
【0062】
上記の実施形態及び変形例に係る下地金物10,10Xは、立壁部14、14Xの後端から屈曲して設けられた当接部15,15Xを有していたが、当接部15,15Xを設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 界壁(仕切壁)
2 鉄骨柱(柱)
2a 側面
K 係合部
Ka 受容部
3 耐火被覆材(耐火材、巻き付け耐火被覆材)
4 縦ランナー(ランナー)
5 断熱材
6 スタッド
7 面材ボード
10,10X 下地金物(ランナー固定部品)
11,11X 係止部
11a,11Xa 係止片
11b,11Xb 屈曲部(突部)
11Xc 切り欠き
12,12X 固定部
12a ガイド部
12Xb 開口
13,13X 連結部(上壁)
14,14X 立壁部(側壁)
15,15X 当接部
B ビス
V 空間
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11