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特許7349311周波数変調連続波レーダユニットにおける干渉低減のための方法、デバイス、およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】周波数変調連続波レーダユニットにおける干渉低減のための方法、デバイス、およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/34 20060101AFI20230914BHJP
   G01S 7/36 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
G01S13/34
G01S7/36
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019181098
(22)【出願日】2019-10-01
(65)【公開番号】P2020098189
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】18200055.4
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502208205
【氏名又は名称】アクシス アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンナシュテン, ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ロイド, アンデシュ
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-021784(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163677(WO,A1)
【文献】特開2013-015454(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0010344(US,A1)
【文献】特表2001-502425(JP,A)
【文献】国際公開第2006/123499(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/039043(WO,A1)
【文献】特開2002-156444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数変調連続波(FMCW)タイプの静止レーダユニット(201)における干渉低減のための方法であって、
レーダユニット(201)によって送信された信号の第1のシーケンス(203)に対応するビート信号のシーケンス(210a、210b)を受信すること(S02)であって、各ビート信号が複数の時間サンプルを有し、各ビート信号が、前記レーダユニット(201)によって送信された信号の前記第1のシーケンス(203)中の、各ビート信号の対応する信号と、送信された信号の前記第1のシーケンスに応答して前記レーダユニット(201)の受信アンテナ(206a、206b)によって受信された信号(207a、207b)との混合である、ビート信号のシーケンス(210a、210b)を受信すること(S02)と、
ビート信号の前記シーケンス中の現在処理されているビート信号について、
複数の前記ビート信号の対応する時間サンプルの平均またはメジアンとして基準ビート信号の時間サンプルが計算されるように、ビート信号の前記シーケンス(210a、210b)中の前記複数のビート信号間の平均またはメジアンとして基準ビート信号(305、1103)を計算すること(S04、S04a、S04b)と、
前記レーダユニット(201)とは別個である送信機からの干渉を受ける前記現在処理されているビート信号の1つまたは複数の連続時間サンプルのセグメント(307)を識別すること(S06)であって、前記セグメント(307)が、前記現在処理されているビート信号と前記基準ビート信号との間の差(804、920)および前記差の導関数(807a、807b)のうちの少なくとも1つを、1つまたは複数のしきい値(809a、809b、930)と比較することによって識別され、前記基準ビート信号の各時間サンプルが、前記複数のビート信号の対応する時間サンプルの平均またはメジアンとして計算される、前記現在処理されているビート信号の1つまたは複数の連続時間サンプルのセグメント(307)を識別すること(S06)と、
前記現在処理されているビート信号(602、910、1101)の前記セグメント(307)の前記1つまたは複数の連続時間サンプルを、ビート信号の前記シーケンス中の隣接するビート信号の対応する時間サンプルによって、または前記基準ビート信号の対応する時間サンプルによって交換することによって前記現在処理されているビート信号中の前記干渉を低減すること(S08)であって、前記隣接するビート信号(1102)が、ビート信号の前記シーケンス(210a、210b)のオーダー中の前記現在処理されているビート信号(602、910、1101)の隣にある、前記干渉を低減すること(S08)と
を含む、干渉低減のための方法。
【請求項2】
ビート信号の前記シーケンス(210a、210b)を連続的に処理することをさらに含み、前記基準ビート信号を計算すること、前記現在処理されているビート信号の1つまたは複数の連続時間サンプルのセグメント(307)を識別すること、および前記現在処理されているビート信号中の前記干渉を低減することが、ビート信号の前記シーケンス(210a、210b)中のビート信号に連続的に適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ビート信号の前記シーケンスを連続的に処理することが、基準ビート信号(305、1103)を計算することを連続的に繰り返すことをさらに含み、前記基準ビート信号が、ビート信号の前記シーケンス中の現在処理されているビート信号に先行するか、またはビート信号の前記シーケンス中の現在処理されているビート信号に先行し且つ現在処理されているビート信号を含むかのいずれかであるビート信号の平均またはメジアンとして計算される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ビート信号の前記シーケンス中の第1のビート信号を処理するとき、前記基準ビート信号(305、1103)が、ビート信号の前記シーケンス(210a、210b)中の前記第1のビート信号に等しくなるように設定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
信号の前記第1のシーケンスが、時間フレーム内で前記レーダユニットによって送信された複数の信号を含み、ビート信号の前記シーケンスが、前記時間フレーム内で前記レーダユニットによって送信された前記複数の信号に対応する複数のビート信号を含み、前記基準ビート信号(305、1103)が、ビート信号の前記シーケンス中の前記複数のビート信号のすべての平均として計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記識別することにおいて、前記セグメント(307)が前記現在処理されているビート信号の一部として識別され、前記差(804、920)および前記差の前記導関数(807a、807b)のうちの少なくとも1つが、それぞれ、第1のしきい値および第2のしきい値を超えるだけ0からそれる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記干渉を低減することにおいて、前記ビート信号(602、910、1101)の前記セグメント(307)の前記1つまたは複数の連続時間サンプルは、隣接するビート信号(1102)の前記対応する時間サンプルが、前記レーダユニット(201)とは別個である送信機からの干渉を受けているものとして識別されていない場合は、前記隣接するビート信号の前記対応する時間サンプルによって交換され、そうでない場合は、前記ビート信号(602、910、1101)の前記1つまたは複数の連続時間サンプル(307)が前記基準ビート信号(305、1103)の前記対応する時間サンプルによって交換される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記干渉を低減することにおいて、前記現在処理されているビート信号(602、910、1101)の前記セグメント(307)の1つまたは複数の連続時間サンプルが、前記隣接するビート信号(1102)の対応する時間サンプルによって交換され、前記現在処理されているビート信号(602、910、1101)の前記セグメント(307)の1つまたは複数の連続時間サンプルが、前記基準ビート信号(305、1103)の対応する時間サンプルによって交換される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記隣接するビート信号(1102)が、前記レーダユニットとは別個である送信機からの干渉を受けるものとして識別される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が前記レーダユニット(201)の各受信アンテナ(206a、206b)について実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
周波数変調連続波(FMCW)タイプの静止レーダユニット(201)によって生成されたビート信号中の干渉を低減するためのデバイス(212a、212b)であって、
前記レーダユニット(201)によって送信された信号の第1のシーケンス(203)に対応するビート信号のシーケンス(210a、210b)を受信するように設定された受信機(302)であって、各ビート信号が複数の時間サンプルを有し、各ビート信号が、前記レーダユニット(201)によって送信された信号の前記第1のシーケンス(203)中の、各ビート信号の対応する信号と、送信された信号の前記第1のシーケンスに応答して前記レーダユニット(201)の受信アンテナ(206a、206b)によって受信される信号(207a、207b)との混合である、受信機(302)と、
ビート信号の前記シーケンス中の現在処理されているビート信号について、複数の前記ビート信号の対応する時間サンプルの平均またはメジアンとして基準ビート信号の時間サンプルが計算されるように、ビート信号の前記シーケンス(210a、210b)中の前記複数のビート信号間の平均またはメジアンとして基準ビート信号(305、1103)を計算するように設定された計算器(304)と、
ビート信号の前記シーケンス(210a、210b)中の現在処理されているビート信号(602、910、1101)について、前記レーダユニット(201)とは別個である送信機からの干渉を受ける前記現在処理されているビート信号(602、910、1101)の1つまたは複数の連続時間サンプルのセグメント(307)を識別するように設定された識別器(306)であって、前記識別器(306)が、前記現在処理されているビート信号と前記基準ビート信号との間の差(804、920)および前記差の導関数(807a、807b)のうちの少なくとも1つを、1つまたは複数のしきい値(809a、809b)と比較することによって前記セグメント(307)を識別するように設定された識別器(306)と、
ここで、前記計算器が、前記複数のビート信号の対応する時間サンプルの平均またはメジアンとして前記基準ビート信号の各時間サンプルを計算するように設定されており、
前記現在処理されているビート信号(602、910、1101)の前記セグメント(307)の前記1つまたは複数の連続時間サンプルを、ビート信号の前記シーケンス中の隣接するビート信号の対応する時間サンプルによって、または前記基準ビート信号の対応する時間サンプルによって交換することによって前記現在処理されているビート信号中の前記干渉を低減するように設定された干渉低減器(308)であって、前記隣接するビート信号(1102)が、ビート信号の前記シーケンス(210a、210b)のオーダー中の前記現在処理されているビート信号(602、910、1101)の隣にある、干渉低減器(308)と
を備える、ビート信号中の干渉を低減するためのデバイス(212a、212b)。
【請求項12】
干渉低減のための周波数変調連続波(FMCW)レーダシステム(200)であって、
信号の第1のシーケンス(203)を送信するように設定された送信アンテナ(204)と、
前記送信アンテナによって送信された信号の前記第1のシーケンスに応答して信号の第2のシーケンス(207a、207b)を受信するように設定された受信アンテナ(206a、206b)と、
ビート信号のシーケンス(210a、210b)を生成するために信号の前記第1のシーケンス(203)と信号の前記第2のシーケンス(207a、207b)とを混合するように設定されたミキサ(208a、208b)と
を備える静止レーダユニット(201)を備え、
前記レーダシステム(200)は、請求項11に記載のデバイス(212a、212b)をさらに備え、前記デバイスが、前記ミキサ(208a、208b)によって生成されるビート信号の前記シーケンス(210a、210b)中の干渉を低減するために前記レーダユニット(201)の下流に配置された、干渉低減のための周波数変調連続波(FMCW)レーダシステム(200)。
【請求項13】
コンピュータコード命令を記憶した非一時的コンピュータ可読媒体であって、処理能力を有するデバイスによって実行されたときに、周波数変調連続波(FMCW)タイプの静止レーダユニット(201)における干渉低減のための請求項1に記載の方法を実行させる命令を当該デバイスに実行させる、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項14】
各ビート信号が、ビート信号の前記シーケンス中の前記ビート信号の前記オーダーを示す第1の指数と第2の指数によってインデックスされた複数の時間サンプルを有し、ビート信号の前記シーケンス中の前記複数のビート信号が、前記現在処理されているビート信号よりも低い第2の指数を有するものであり、ビート信号の前記シーケンス中の前記複数のビート信号間の平均またはメジアンとして前記基準ビート信号を計算することが、前記基準ビート信号のn番目の時間サンプルを前記複数のビート信号のn番目の時間サンプルの平均またはメジアンとして計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
各ビート信号が、ビート信号の前記シーケンス中の前記ビート信号の前記オーダーを示す第1の指数と第2の指数によってインデックスされた複数の時間サンプルを有し、ビート信号の前記シーケンス中の前記複数のビート信号が、前記現在処理されているビート信号よりも低い第2の指数を有するものであり、ビート信号の前記シーケンス中の前記複数のビート信号間の平均またはメジアンとして前記基準ビート信号を計算することが、前記基準ビート信号のn番目の時間サンプルを前記複数のビート信号のn番目の時間サンプルの平均またはメジアンとして計算することを含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項16】
各ビート信号が、ビート信号の前記シーケンス中の前記ビート信号の前記オーダーを示す第1の指数と第2の指数によってインデックスされた複数の時間サンプルを有し、ビート信号の前記シーケンス中の前記複数のビート信号が、前記現在処理されているビート信号よりも低い第2の指数を有するものであり、ビート信号の前記シーケンス中の前記複数のビート信号間の平均またはメジアンとして前記基準ビート信号を計算することが、前記基準ビート信号のn番目の時間サンプルを前記複数のビート信号のn番目の時間サンプルの平均またはメジアンとして計算することを含む、請求項12に記載のレーダシステム。
【請求項17】
各ビート信号が、ビート信号の前記シーケンス中の前記ビート信号の前記オーダーを示す第1の指数と第2の指数によってインデックスされた複数の時間サンプルを有し、ビート信号の前記シーケンス中の前記複数のビート信号が、前記現在処理されているビート信号よりも低い第2の指数を有するものであり、ビート信号の前記シーケンス中の前記複数のビート信号間の平均またはメジアンとして前記基準ビート信号を計算することが、前記基準ビート信号のn番目の時間サンプルを前記複数のビート信号のn番目の時間サンプルの平均またはメジアンとして計算することを含む、請求項13に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数変調連続波(FMCW)レーダの分野に関する。特に、本発明は、FMCWタイプの静止レーダユニットにおける干渉低減のための方法、デバイス、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
監視モニタリングのために車両中でレーダを使用することは、物体の距離、速度、および角度を測定することを可能にするので、ますます普及している。たとえば、レーダユニットは、シーン中の物体に関する情報を提供するために監視カメラの補完物として使用され得る。レーダの使用がより一般的になるにつれて、異なるレーダが互いに干渉し始めるリスクが増加している。例示すると、交通をモニタするために使用されるレーダは、そばを通過する車両中に取り付けられたレーダから干渉を受け得る。干渉の結果として、レーダの機能が悪化し得るか、または最悪の場合には完全に故障し得る。
【0003】
干渉を低減する手法は、ベースバンドレーダデータ中のすべての妨害されたデータサンプルを0に設定することである。しかしながら、その手法は、物体の距離、速度、および角度を計算するためにレーダデータが周波数領域中で変換され、処理される際に、アーチファクトをもたらす。これらのアーチファクトは、結局、物体の誤検出につながり得る。したがって、改善の余地がある。
【発明の概要】
【0004】
したがって、上記に鑑みて、本発明の目的は、上記の問題を緩和し、できる限り少ないアーチファクトを生じるFMCWタイプのレーダユニットにおける干渉を低減する方法を提供することである。
【0005】
第1の態様によれば、上記の目的は、周波数変調連続波(FMCW)タイプの静止レーダユニットにおける干渉低減のための方法であって、
レーダユニットによって送信された信号の第1のシーケンスに対応するビート信号のシーケンスを受信することであって、
各ビート信号が、レーダユニットによって送信された信号の第1のシーケンス中の、各ビート信号の対応する信号と、送信された信号の第1のシーケンスに応答してレーダユニットの受信アンテナによって受信される信号との混合である、ビート信号のシーケンスを受信することと、
ビート信号のシーケンス中のビート信号のうちの1つまたは複数の平均またはメジアンとして基準ビート信号を計算することと、
ビート信号のシーケンス中のビート信号について、レーダユニットとは別個である送信機からの干渉を受けるビート信号のセグメントを識別することであって、セグメントが、ビート信号と基準ビート信号との間の差および差の導関数のうちの少なくとも1つを、1つまたは複数のしきい値と比較することによって識別される、ビート信号のセグメントを識別することと、
ビート信号のセグメントを交換することによってビート信号中の干渉を低減することであって、ビート信号のセグメントが、ビート信号のシーケンス中の隣接するビート信号の対応するセグメントおよび基準ビート信号の対応するセグメントのうちの1つまたは複数によって交換される、ビート信号中の干渉を低減することとを含む、静止レーダユニットにおける干渉低減のための方法によって達成される。
【0006】
図1は、それぞれs個の時間サンプル3を有するc個のビート信号2のシーケンスを概略的に示す。c個のビート信号2は、第1の信号で始まり、図1の水平軸に沿って互いに隣り合って編成され、各ビート信号の時間サンプルは垂直軸に沿って構成される。レーダユニットが干渉を受けた場合、各ビート信号2は各ビート信号2のセグメント中で妨害される。しかしながら、異なるビート信号2は異なるセグメント中で妨害される。ビート信号2が図1の様式で編成されるとき、干渉は、一般に、図1に示されているように帯域1として出現する。帯域1は、干渉信号の特性に関して、レーダユニットによって送信された信号の特性に応じて異なる形状を有する。
【0007】
異なるビート信号は異なるセグメント中で妨害されるので、ビート信号の妨害された値は、ビート信号の対応する時間サンプルに対して計算される平均またはメジアンにほとんど影響を及ぼさない。さらに、レーダユニットは静止しているので、シーケンス中のビート信号間の変化は適度に小さい。それにより、ビート信号は、ビート信号が妨害されている時間間隔を除いて、計算された平均またはメジアンに類似すると予想され得る。
【0008】
したがって、そのような平均またはメジアンを計算し、そのような平均またはメジアンを、ビート信号の妨害されたセグメントを識別する目的で基準信号として使用することが提案される。そのようにして、ビート信号の妨害されたセグメントは高い精度で識別され得る。
【0009】
さらに、シーケンス中の基準信号または隣接するビート信号は、ビート信号の妨害されたセグメントを交換するために使用され得る。そのようにして、ビート信号の妨害されたセグメントは、ビート信号にかなり類似すると予想され得る信号の対応するセグメントによって交換される。これにより、ビート信号が周波数領域中で処理されるとき、妨害されたサンプルを0と交換するときと比較すると、あまりアーチファクトが生じなくなる。
【0010】
さらに、干渉低減のための基準ビート信号の計算および使用は、実行することが容易であり、計算複雑性が低いことに留意されたい。したがって、提案される方法は、低い計算コストで干渉低減を可能にする。
【0011】
レーダユニットにおける干渉を低減することとは、一般に、レーダユニットとは別個であるユニットの送信機によって引き起こされた妨害を低減することを意味する。
【0012】
FMCWレーダの分野で知られているように、ビート信号は、レーダユニットによって送信された信号と、送信された信号に応答してレーダユニットによって受信される信号との混合である。ビート信号は中間周波数(IF)信号とも呼ばれることがある。
【0013】
レーダユニットによって送信された信号の第1のシーケンスは時間フレームに対応し得る。FMCWレーダによって送信された信号はチャープと呼ばれることがある。したがって、このタイプのレーダは、チャープシーケンスFMCWと呼ばれることがある。
【0014】
ビート信号のうちの1つまたは複数の平均またはメジアンは、1つまたは複数のビート信号間で計算される平均またはメジアンを指す。より詳細には、平均またはメジアンは、1つまたは複数のビート信号の対応する時間サンプルに対して計算される。
【0015】
レーダユニットとは別個である送信機は別のレーダユニットの送信機であり得る。しかしながら、同じ周波数帯域中でレーダユニットとして動作している他のタイプの送信機も干渉を引き起こし得る。
【0016】
差の導関数は、1次導関数、2次導関数、3次導関数などを含む、差のいかなる導関数であってもよい。
【0017】
ビート信号のセグメントとは、ビート信号の時間期間を意味する。したがって、ビート信号は時間サンプルを含むので、ビート信号のセグメントは、1つまたは複数の連続時間サンプルを含む。別の信号の対応するセグメントは、対応する時間期間、すなわち、他の信号の同じ時間期間を指す。ビート信号は2つ以上のセグメント中の干渉を受け得ることを理解されたい。本方法は、各そのようなセグメントを識別し、交換することを含み得る。
【0018】
シーケンス中のあるビート信号の隣りにあるビート信号は、シーケンス中の隣接するビート信号と呼ばれる。隣接するビート信号は、シーケンス中の、あるビート信号の前または後のいずれであってもよい。
【0019】
レーダ信号の処理は、しばしば、リアルタイムで行われる。したがって、オンザフライで動作することができる干渉低減方法を有することが望ましい。その目的で、提案される方法は、システム中の最小遅延をもたらすように連続的に実行され得る。特に、干渉を受けるセグメントの識別、およびこれらのセグメントの交換は、ビート信号が受信される際に、連続的に実行され得る。より詳細には、本方法は、ビート信号のシーケンスを連続的に処理することをさらに含み得、識別するステップおよび低減するステップは、ビート信号のシーケンス中のビート信号に連続的に適用される。連続処理とは、シーケンス中のビート信号が、それらがシーケンス中に現れる順序で順次処理されることを意味する。
【0020】
基準ビート信号は、ビート信号のシーケンス中のすべてのビート信号の平均またはメジアンとして計算され得る。基準ビート信号を計算するときにすべてのビート信号を含めることによって、基準ビート信号への任意の妨害された信号値の影響が最小化される。しかしながら、これには、基準信号が計算され得る前にシーケンス中のすべてのビート信号が利用可能であることが必要である。したがって、すべてのビート信号が受信されるまで、干渉を受けるビート信号セグメントの識別および交換を開始することができない。
【0021】
代替として、平均またはメジアンがそれまでに受信されているビート信号から計算されるように、基準ビート信号の計算をビート信号の連続処理中に含めることができる。より詳細には、ビート信号のシーケンスを連続的に処理することは、基準ビート信号を計算するステップを連続的に繰り返すことをさらに含み得、基準ビート信号は、ビート信号のシーケンス中の現在処理されているビート信号に先行するか、またはビート信号のシーケンス中の現在処理されているビート信号に先行し、現在処理されているビート信号を含むかのいずれかであるビート信号の平均またはメジアンとして計算される。そのようにして、基準信号の計算、ならびに干渉を受けるビート信号セグメントの識別および交換は、ビート信号が受信されるとすぐに開始され得る。したがって、データをオンザフライで処理することができる。
【0022】
基準ビート信号の計算がビート信号の連続処理中に含まれる場合、シーケンス中の第1のビート信号のための基準ビート信号をどのように計算するかについて、異なる手法が取られ得る。
【0023】
第1の手法によれば、レーダユニットは、信号の第1のシーケンスの前の信号のさらなるシーケンスを送出し得る。信号のさらなるシーケンスは信号のプリシーケンスと呼ばれることがある。信号のプリシーケンスは信号の第1のシーケンスの延長として見られ得る。実際には、レーダユニットは、プリシーケンスと、それに続く信号の第1のシーケンスとを含む信号の単一のシーケンスを送出する。信号のさらなるシーケンスに応答して、レーダユニットはビート信号のさらなるシーケンスを受信する。基準ビート信号は、ビート信号のさらなるシーケンスから計算され、シーケンス中の第1のビート信号のための基準ビート信号として使用され得る。より詳細には、本方法は、レーダユニットによって送信された信号の第1のシーケンスの前の、それに直接接続された、レーダユニットによって送信された信号のさらなるシーケンスに対応するビート信号のさらなるシーケンスを受信することをさらに含み得、ビート信号のシーケンス中の第1のビート信号を処理するときに、基準ビート信号は、ビート信号のさらなるシーケンス中のビート信号の平均またはメジアンとして計算される。このようにして、シーケンス中の第1のビート信号が処理されるべきときに、基準ビート信号のための良好な開始値がすでに達成される。
【0024】
第2の手法によれば、ビート信号のシーケンス中の第1のビート信号を処理するときに、基準ビート信号が、ビート信号のシーケンス中の第1のビート信号に等しくなるように設定される。この手法を用いると、レーダユニットが信号のさらなるシーケンスを送信する必要がない。しかしながら、干渉の識別および低減は、一般に、上記で説明した第1の手法と比較して、ビート信号のシーケンス中の第1のいくつかのビート信号について、より悪くなる。
【0025】
上記で説明したように、干渉を受けるビート信号のセグメントの識別はビート信号と基準信号との間の差に基づき得る。そのようなセグメントは、差自体の絶対値をしきい値処理することによって、および/または差の導関数の絶対値をしきい値処理することによって見つけられ得る。たとえば、セグメントは、差の絶対値および差の導関数の絶対値のいずれかが、それぞれ第1および第2のしきい値を超える、ビート信号の時間期間として識別され得る。言い換えれば、識別するステップにおいて、セグメントは、差および差の前記導関数のうちの少なくとも1つが、それぞれ第1のしきい値および第2のしきい値を超えるだけ0からそれる、ビート信号の一部として識別される。
【0026】
干渉を受けるビート信号のセグメントは、シーケンス中の隣接するビート信号の対応するセグメントによって、および/または基準信号の対応するセグメントによって交換され得る。隣接するビート信号の対応するセグメントによるビート信号のセグメントの交換は、隣接するビート信号が対応するセグメント中の干渉を受けないという条件で行われ得る。より詳細には、セグメントは、隣接するビート信号の対応するセグメントが、レーダユニットとは別個である送信機からの干渉を受けているものとして識別されていない場合に、隣接するビート信号の対応するセグメントによって交換されるのみであり得る。このようにして、欠陥セグメントが別の欠陥セグメントによって交換されることが回避される。
【0027】
干渉を低減するステップにおいて、隣接するビート信号の対応するセグメントが、レーダユニットとは別個である送信機からの干渉を受けているものとして識別されていない場合は、ビート信号のセグメントは隣接するビート信号の対応するセグメントによって交換され得、そうでない場合は、ビート信号のセグメントは基準ビート信号の対応するセグメントによって交換され得る。したがって、レーダ隣接するビート信号の対応するセグメントによる交換は、隣接するビート信号が関係するセグメント中の干渉を受けない限り、基準ビート信号の対応するセグメントによる交換に優先し得る。この手法は、最終的にアーチファクトの減少につながることが分かっている。
【0028】
また、隣接するビート信号による交換と、干渉を受けるセグメント中の基準信号による交換とを組み合わせることが可能である。より詳細には、干渉を低減するステップにおいて、ビート信号のセグメントの第1の部分は、隣接するビート信号の対応する第1の部分によって交換され得、ビート信号のセグメントの第2の部分は、基準ビート信号の対応する第2の部分によって交換され得る。このようにして、隣接するビート信号による交換と基準ビート信号による交換との間の選択における柔軟性が高まる。
【0029】
たとえば、隣接するビート信号は、第2の部分に対応するセグメント中にはあるが、第1の部分に対応するセグメント中にはない、レーダユニットとは別個である送信機からの干渉を受けているものとして識別され得る。したがって、隣接するビート信号は、有利には、セグメントの第1の部分中にはあるが、セグメントの第2の部分中にはない、ビート信号を交換するために使用され得る。
【0030】
レーダユニットは2つ以上の受信アンテナを有し得る。その場合、本方法はレーダユニットの各受信アンテナについて実行され得る。したがって、本方法は、受信アンテナの各々に対応するビート信号中の干渉を低減するために効率的に使用され得る。
【0031】
第2の態様によれば、上記の目的は、周波数変調持続波(FMCW)タイプの静止レーダユニットによって生成されるビート信号中の干渉を低減するためのデバイスであって、
レーダユニットによって送信された信号の第1のシーケンスに対応するビート信号のシーケンスを受信するように設定された受信機であって、
各ビート信号が、レーダユニットによって送信された信号の第1のシーケンス中の、各ビート信号の対応する信号と、送信された信号の第1のシーケンスに応答してレーダユニットの受信アンテナによって受信される信号との混合である、受信機と、
ビート信号のシーケンス中のビート信号のうちの1つまたは複数の平均またはメジアンとして基準ビート信号を計算するように設定された計算器と、
ビート信号のシーケンス中のビート信号について、レーダユニットとは別個である送信機からの干渉を受けるビート信号のセグメントを識別するように設定された識別器であって、識別器が、ビート信号と基準ビート信号との間の差および差の導関数のうちの少なくとも1つを、1つまたは複数のしきい値と比較することによってセグメントを識別するように設定された、識別器と、
ビート信号のセグメントを交換することによってビート信号中の干渉を低減するように設定された干渉低減器であって、干渉低減器が、ビート信号のセグメントを、ビート信号のシーケンス中の隣接するビート信号の対応するセグメントおよび基準ビート信号の対応するセグメントのうちの1つまたは複数によって交換するように設定された、干渉低減器とを備える、ビート信号中の干渉を低減するためのデバイスによって達成される。
【0032】
第3の態様によれば、上記の目的は、干渉低減のための周波数変調持続波(FMCW)レーダシステムであって、
信号の第1のシーケンスを送信するように設定された送信アンテナと、
送信アンテナによって送信された信号の第1のシーケンスに応答して信号の第2のシーケンスを受信するように設定された受信アンテナと、
ビート信号のシーケンスを生成するために信号の第1のシーケンスと信号の第2のシーケンスとを混合するように設定されたミキサと
を備えるレーダユニットと、
第2の態様によるデバイスであって、デバイスが、ミキサによって生成されたビート信号のシーケンス中の干渉を低減するためにレーダユニットの下流に配置された、第2の態様によるデバイスと
を備える、干渉低減のための周波数変調持続波(FMCW)レーダシステムによって達成される。
【0033】
第4の態様によれば、処理機能を有するデバイスによって実行されたときに、第1の態様による方法を実行するように適応されたコンピュータコード命令を記憶した非一時的コンピュータ可読媒体が提供される。
【0034】
第2の態様、第3の態様、および第4の態様は、一般に、第1の態様と同じ特徴および利点を有し得る。さらに、本発明は、別段に明記されていない限り、特徴のすべての可能な組合せに関することに留意されたい。
【0035】
上記、ならびに本発明の追加の目的、特徴および利点は、同じ参照番号が同様の要素のために使用される添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態の以下の例示的で非限定的な詳細な説明を通じて、より良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】干渉を受けるビート信号のシーケンスを概略的に示す図である。
図2】実施形態による、レーダシステムを概略的に示す図である。
図3】実施形態による、ビート信号中の干渉を低減するためのデバイスを概略的に示す図である。
図4】実施形態による、FMCWタイプの静止レーダユニット中の干渉低減のための方法のフローチャートである。
図5】ビート信号が連続的に処理される、実施形態による、FMCWタイプの静止レーダユニット中の干渉低減のための方法のフローチャートである。
図6】実施形態による、基準ビート信号がどのように計算され得るかを概略的に示す図である。
図7】実施形態による、レーダユニットによって送信された信号の第1のシーケンス、および信号の第1のシーケンスの前の、それに直接接続されて送信された信号のさらなるシーケンスを概略的に示す図である。
図8】実施形態による、干渉を受けるビート信号のセグメントがどのように識別され得るかを示す図である。
図9】実施形態による、ビート信号と基準ビート信号との間の差のしきい値処理を示す図である。
図10】実施形態による、干渉を受けるセグメントを識別するために使用されるビットベクトルの修正を示す図である。
図11】a~cは、実施形態による、隣接するビート信号によるおよび/または基準ビート信号によるビート信号のセグメントの交換を概略的に示す図である。
図12】実施形態による、干渉を受けるビート信号のセグメントがどのように交換され得るかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
次に、本発明の実施形態が示されている添付の図面を参照しながら、本発明について以下でより十分に説明する。本明細書で開示するシステムおよびデバイスについて、動作中で説明する。
【0038】
図2はFMCWレーダシステム200を示す。レーダシステム200はビデオカメラの補完物として使用され得る。たとえば、レーダシステム200はビデオカメラ中に含まれ得る。レーダシステム200は、レーダユニット201と、1つまたは複数の干渉低減デバイス212a、212bとを備える。レーダシステムはまた、レーダ処理デバイス214を備え得る。レーダユニット201は、1つまたは複数の送信アンテナ204と、1つまたは複数の受信アンテナ206a、206bと、1つまたは複数のミキサ208a、208bとを備える。レーダユニット201はまた、シンセサイザ202を備え得る。
【0039】
送信アンテナ204は、信号のシーケンスを送信するように設定される。信号のシーケンスはフレーム中で送信され得る。たとえば、送信アンテナ204は第1のフレーム中の信号のシーケンスを送出し得る。次いで、送信アンテナ204は、第2のフレーム中の信号のさらなるシーケンスを送出する前に、しばらくの間、無信号になり得る。図7は、第1のフレーム702中で送信される信号のシーケンス701、および第2のフレーム704中で送信される信号の別のシーケンス203を示す。
【0040】
特に、送信アンテナ204は信号の第1のシーケンス203を送出し得る。信号の第1のシーケンス203はフレーム704に対応し得る。信号の第1のシーケンス203はシンセサイザ202によって生成され得る。第1のシーケンス203中の各信号は、周波数が時間とともに直線的に増加する、チャープと呼ばれることもある正弦曲線であり得る。
【0041】
送信された信号の第1のシーケンス203中の信号は、シーン中の物体から反射される。反射信号205は、次いで、各受信アンテナ206a、206bによって異なる角度で受信される。したがって、各受信アンテナ206a、206bは、送信アンテナ204によって送信された信号の第1のシーケンス203に応答して信号のシーケンス207a、207bを受信する。反射信号205に加えて、受信アンテナ206a、206bは、他のレーダユニットの送信機など、レーダユニット201の一部でない送信機から送信された信号を受信し得る。それらの信号は、受信アンテナ206a、206bにおいて反射信号205と重畳される。したがって、信号の各受信されたシーケンス207a、207bは、反射信号205に由来する成分と、干渉する送信機に由来する別の成分とを有し得る。本明細書には、2つの受信アンテナ206a、206bが示されている。しかしながら、実際には、レーダシステム200は任意の数の受信アンテナを有し得る。
【0042】
受信アンテナ206a、206bによって受信された信号のシーケンス207a、207bの各々は、次いで、対応するミキサ208a、208bによって信号の第1のシーケンス203と混合される。原則として、各ミキサ208a、208bは、入力信号の積を計算することによって各ミキサ208a、208bの入力信号を混合する。ミキサ208a、208bによって生成された出力信号はビート信号または中間周波数信号のシーケンスと呼ばれる。したがって、ビート信号のシーケンス210a、210bは各受信アンテナ206a、206bごとに生成される。ミキサ208a、208bは、ミキサ208a、208bの入力信号の周波数帯域を変化させる働きをする。送信機204によって送出される信号203はGHzレンジ内であり得るが、ビート信号は一般にMHzレンジ内である。ビート信号のシーケンス210a、210bは、レーダシステム200のベースバンドデータを構成すると言われ得る。図1に示されているように、ビート信号の各シーケンス210a、210bは干渉を受け得る。
【0043】
受信アンテナに対応するビート信号の各シーケンス210a、210bは、次いで、干渉低減デバイス212a、212bに入力される。干渉低減デバイス212a、212bの役割は、レーダユニット201とは別個である送信機によって引き起こされる干渉を低減することである。干渉低減デバイス212a、212bは、干渉の影響が低減されたビート信号のシーケンス213a、213bを出力する。
【0044】
干渉低減デバイス212a、212bがビート信号のシーケンス210a、210b中の干渉の影響を低減すると、レーダ処理デバイス214は、干渉の影響が低減されたビート信号のシーケンス213a、213bを処理することに進む。レーダ処理デバイス214は、シーン中の物体の距離、速度、および角度を計算するための周波数分析など、任意の知られているタイプのレーダ処理を実行し得る。これは、距離およびドップラーFFT(高速フーリエ変換、FFT)、および角度デジタルビームフォーミングを含む。レーダ処理デバイス214の処理は、適切に除去されていない、ビート信号のシーケンス210a、210b中の干渉がある場合に、得られた距離信号、速度信号、および角度信号中にアーチファクトを生じ得る。しかしながら、本明細書で説明する干渉低減デバイス212a、212bは、レーダ処理デバイス214の処理中にもたらされるアーチファクトの量ができる限り低く保たれるように、ビート信号のシーケンス210a、210b中の干渉を効率的に低減する。
【0045】
図3は干渉低減デバイス212aをより詳細に示す。干渉低減デバイス212aは、受信機302と、基準ビート信号計算器304と、干渉セグメント識別器306と、干渉低減器308とを備える。
【0046】
したがって、干渉低減デバイス212aは、デバイス212aの機能を実装するように設定された様々な構成要素302、304、306、308を備える。特に、各示された構成要素はデバイス212aの機能に対応する。一般に、デバイス212aは、構成要素302、304、306、308、より詳細には、それらの機能を実装するように設定された回路を備え得る。
【0047】
ハードウェア実装では、構成要素302、304、306、308の各々は、専用であり、構成要素の機能を与えるように特に設計された回路に対応し得る。回路は、1つまたは複数の特定用途向け集積回路など、1つまたは複数の集積回路の形態であり得る。したがって、例として、干渉低減器308は、使用時に、シーケンス210a中のビート信号中の干渉を低減する回路を備え得る。
【0048】
ソフトウェア実装では、回路は、代わりに、不揮発性メモリなど、(非一時的)コンピュータ可読媒体上に記憶されたコンピュータコード命令に関連して、本明細書で開示するいずれかの方法をデバイス212aに実行させる、マイクロプロセッサなど、プロセッサの形態であり得る。したがって、その場合、構成要素302、304、306、308は、それぞれ、プロセッサによって実行されたときに、構成要素の機能をデバイス212aに実行させる、コンピュータ可読媒体上に記憶されたコンピュータコード命令の部分に対応し得る。
【0049】
また、いくつかの構成要素302、304、306、308の機能がハードウェア中に実装され、他の構成要素の機能がソフトウェア中に実装されることを意味する、ハードウェア実装とソフトウェア実装との組合せを有することも可能であることを理解されたい。
【0050】
次に、図3ならびに図4および図5のフローチャートを参照しながら、干渉低減デバイス212aの動作についてより詳細に説明する。
【0051】
ステップS02において、受信機302はビート信号のシーケンス210aを受信する。上記で説明したように、ビート信号のシーケンス210aは、レーダユニット201の送信アンテナ204によって送信された信号の第1のシーケンス203に対応する。たとえば、ビート信号の受信されたシーケンス210a中の各ビート信号は、信号の第1のシーケンス203中の対応する信号と、それに応答して受信アンテナ206a、206bのうちの1つによって受信された信号との混合であり得る。以下において、表記法xn,m、n=1、...、s、m=1、...、cはビート信号のシーケンス210aのために使用され、ここで、nは、ビート信号中の時間サンプルの指数であり、mは、シーケンス210a中のビート信号の指数であり、sは、ビート信号の時間サンプルの数であり、cは、シーケンス210a中のビート信号の数である。したがって、xn,mはビート信号mの時間サンプルnを指す。
【0052】
ステップS04において、基準ビート信号計算器304は、ビート信号のシーケンス210a中のビート信号のうちの1つまたは複数の平均またはメジアンとして基準ビート信号305を計算する。一般に、基準ビート信号305の時間サンプルnは、ビート信号のシーケンス210a中のビート信号のすべてまたはサブセットの時間サンプルnの平均またはメジアンとして計算され得る。基準ビート信号の時間サンプルnが
によって示される場合、基準ビート信号305は、
のうちの1つに従って計算され得る。
【0053】
実施形態の第1のグループでは、基準ビート信号305は1回計算され、同じ基準ビート信号305は、シーケンス210a中の各ビート信号を処理するときに干渉セグメント識別器306および干渉低減器308によって使用される。その状況では、基準ビート信号305は、一般に、シーケンス210a中のすべてのビート信号の平均またはメジアンとして計算される。実施形態の第2のグループでは、基準ビート信号305はシーケンス210a中のビート信号ごとに計算される。たとえば、ビート信号mに対応する基準ビート信号305は、シーケンス210a中の先行するビート信号1、...、m-1に基づいて計算され得るか、またはビート信号mに先行し、ビート信号mを含むビート信号1、...、mに基づいて計算され得る。これらの2つの場合のうちの後者において、ビート信号mに対応する基準ビート信号
の時間サンプルnは、
のうちの1つとして計算され得る。
【0054】
シーケンス210a中のビート信号ごとに基準ビート信号305を計算することは、ビート信号が連続的に処理される場合に有利であり得る。ビート信号の連続処理は、図5のフローチャートにさらに示されている。より詳細には、ビート信号210aは、シーケンス中で受信される順序で1度に1つずつ処理される。ステップS05aでは、シーケンス中のすべてのビート信号が処理されたかどうかが検査される。そうでない場合、干渉低減デバイス212aは、シーケンス210a中の次のビート信号を処理するステップS05bに進む。上記で参照した実施形態の第1のグループでは、基準ビート信号計算器304は、ステップS04aにおいて、連続処理を開始する前に基準ビート信号305を計算し得る。上記で参照した実施形態の第2のグループでは、基準ビート信号計算器304は、代わりに、ステップS04bにおいて、シーケンス210a中の各ビート信号が処理される際に、シーケンス210a中の各ビート信号ごとに基準ビート信号305を計算し得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、デバイス212aはシーケンス210a中の各ビート信号を処理しない。たとえば、デバイス212aは、場合によっては、シーケンス210a中の1つおきのビート信号を処理し得る。処理されないビート信号は、干渉を受ける処理されたビート信号中のセグメントを交換する目的で依然として使用され得る。
【0056】
図6は、指数mを持つビート信号が処理されようとするときに、ステップS04bを実行するための基準ビート信号計算器304の可能な実装を示す。基準ビート信号計算器304は、メモリ中に記憶された現在処理されているビート信号602から時間サンプル604を読み込み得る。一般に、時間サンプル604はビート信号mの時間サンプルn、すなわち、xn,mに対応し得る。次いで、基準ビート信号計算器304は、シーケンス中の前に処理されたビート信号1、...、m-1からの対応する時間サンプルnの累積和606を更新するために時間サンプル604を使用し得る。より詳細には、基準ビート信号計算器304は、
に従って和608を計算するためにxn,mを使用し得る。各処理されるビート信号mごとに、基準ビート信号計算器304は、次のビート信号を処理するときに累積和sumn,mが使用され得るように、累積和sumn,mをメモリに書き込み得る。基準ビート信号計算器304は、次いで、現在処理されているビート信号mに対応する基準ビート信号305を
として計算するために、更新された累積平均sumn,mを使用し得る。図6は、基準ビート信号計算器304の1つの可能な実装を示すのみであることを理解されたい。平均が、代わりに、現在処理されているビート信号に先行するが、現在処理されているビート信号を含まないビート信号に基づくことになる場合、図6において出力される基準ビート信号305は、代わりに、基準ビート信号m+1を処理することに関係して使用され得る。さらに、平均が、代わりに、シーケンス210a中のすべてのビート信号に対して計算されることになる場合、累積和606は、累積和をビート信号の数cによって除することによって平均を計算するより前に、c個のビート信号の各々に対して最初に更新され得る。
【0057】
上記で与えられた例では、シーケンス210a中の先行するビート信号には、基準ビート信号305を計算するときに同じ重みが与えられる。しかしながら、基準ビート信号305を計算するときに、先行するビート信号に異なる重みを与えることも可能である。言い換えれば、基準ビート信号305は加重平均として計算され得る。重みは、たとえば、より最近のビート信号がより古いビート信号よりも高い重みを与えられるように、崩壊関数に従って設定され得る。
【0058】
実際には、これは、
ここで、w+w=1
に従って和608を計算するために累積和606を更新するときに重みを使用することによって実装され得る。
【0059】
基準ビート信号305を計算するときに、先行するビート信号のうちのいくつかを含めるのみであることも可能である。スライディングウィンドウ手法は、基準ビート信号305を計算するために所定の数のもっとも最近のビート信号を含むウィンドウが使用される場合に、使用され得る。たとえば、指数mをもつビート信号に対応する基準ビート信号305は、ある事前決定された数Mについての指数mまでの、場合によってはそれを含む、指数m-Mをもつビート信号から計算され得る。
【0060】
上記で説明したように、基準ビート信号計算器304は、ビート信号のシーケンス210aの連続処理中に、シーケンス210a中のより前のビート信号に対してメジアンまたは平均として基準ビート信号305を計算し得る。基準ビート信号305がシーケンス210a中の第1のビート信号に対して計算されるとき、基準ビート信号計算器304は、一般に、シーケンス210a中の第1のビート信号に等しくなるように基準ビート信号305を設定する。結局、これにより、シーケンス210a中の最初のいくつかのビート信号について、干渉識別および干渉低減の動作が悪化する。
【0061】
動作を改善するために、レーダユニット201の送信アンテナ204は、信号の第1のシーケンス203の前の、それに直接接続されて送信される信号のさらなるシーケンスを用いて、信号の第1のシーケンス203を延長し得る。したがって、さらなるシーケンスは、第1のシーケンス203に対するプリシーケンスとして見られ得る。このことは図7にさらに示されている。時間フレーム702と時間フレーム704との間には、送信アンテナ204が通常無信号である時間間隔706があり得る。信号のさらなるシーケンス703は、第1のシーケンス203に対応するフレーム704の前のそのような無信号時間間隔706中で送信される。さらなるシーケンス703中の信号の形状および信号間の時間的距離は第1のシーケンス203の場合と同じであり得る。また、さらなるシーケンス703の最後の信号と第1のシーケンス203の第1の信号との間の時間的距離は、第1のシーケンス203の信号間の時間的距離と同じであり得る。この意味で、さらなるシーケンス703は、第1のシーケンス203の前に、それに直接接続して送信される。
【0062】
信号の第1のシーケンス203が、各受信アンテナ206a~206bごとにビート信号の対応するシーケンス210a~210bを有するのと同様に、信号の送信されたさらなるシーケンス703は、各受信アンテナ206a~206bごとにビート信号の対応するさらなるシーケンスを有する。
【0063】
図3に示されているように、干渉低減デバイス212aの受信機302は、ビート信号のシーケンス210aに加えて、ビート信号のそのようなさらなるシーケンス310aを受信し得る。基準ビート信号計算器304は、ステップS04bにおいて、ビート信号のシーケンス210a中の第1のビート信号とともに使用されるべき基準ビート信号305を計算するために、ビート信号のさらなるシーケンス310aを使用し得る。たとえば、基準ビート信号計算器304は、
または
のうちの1つに従ってさらなるシーケンス310a中の信号のメジアンまたは平均としてビート信号のシーケンス210a中の第1のビート信号について基準ビート信号305を計算し得る。上式で、yn,jは、ビート信号のさらなるシーケンス310a中のビート信号jの時間サンプルnを示す。
【0064】
基準ビート信号計算器304が基準ビート信号305を計算すると、干渉セグメント識別器306は、干渉する送信機からの干渉を受ける、ビート信号中の1つまたは複数のセグメント307を識別することに進む。図5のフローチャートに示されているように、干渉セグメント識別器306は、シーケンス210a中のビート信号がシーケンス210a中に現れる順序で、シーケンス210a中のビート信号が1度に1つずつ処理されるように、連続的に動作し得る。
【0065】
一般に、干渉セグメント識別器306は、1)ビート信号と基準ビート信号との間の差、および2)差の導関数のうちの少なくとも1つを、1つまたは複数のしきい値と比較することによって、1つまたは複数のセグメント307を識別する。例として、図9は、ビート信号910を一点鎖線として示し、ビート信号910と基準ビート信号305との間の差920を実線920として示している。ビート信号910は2つの時間期間912および914中で干渉を受けている。差信号920をしきい値930と比較することによって、セグメント307が識別され得る。特に、ビート信号910から基準ビート信号305を最初に除去することなしにセグメント307を識別することははるかに困難であろう。
【0066】
図8は、指数mをもつビート信号602が処理されようとするときに、ステップS06を実行するための干渉セグメント識別器306の可能な実装を示す。
【0067】
干渉セグメント識別器306は、減算ブロック803中で、ビート信号602と基準ビート信号305との間の差信号804を計算することから開始し得る。ビート信号xn,m,n=1、...、sと、対応する基準ビート信号
,n=1、...、sとの間の差信号am,n,n=1、...、sは、
に従って計算され得る。
【0068】
ビート信号602と対応する基準ビート信号305とが減算ブロック803において時間同期して到着することを確実にするために、ビート信号602は、上記で説明したように基準ビート信号計算器304が基準ビート信号305を計算する間、遅延ブロック802中で遅延され得る。
【0069】
次のステップでは、干渉セグメント識別器306は、導関数ブロック806a、806b中で、差信号804自体の絶対値または差信号804の1つまたは複数の導関数の絶対値を計算し得る。計算されるべき導関数の次数は、導関数ブロック806a、806bへの入力として与えられる、本明細書で「dsel」と呼ぶ、入力パラメータ805a、805bによって制御される。たとえば、dsel=0は差信号自体を示し得、dsel=1は1次導関数を示し得、dsel=2は2次導関数示し得るなど。図8に2つの導関数ブロックが示されている場合でも、干渉セグメント識別器306は、任意の数の導関数ブロックを含むように拡張され得ることを理解されたい。
【0070】
導関数ブロック806a、806bは、差信号an,m中の連続時間サンプル間の差を計算することによって導関数を計算し得る。表記法bn,m=an+1,m、cn,m=an+2,m、dn,m=an+3,mを使用して、1次導関数a’は、
に従って計算され得、
2次導関数a’’は、
に従って計算され得、
3次導関数a’’’は、
に従って計算され得る。入力パラメータ805a、805bの値に応じて、導関数ブロック806a、806bは、以下の信号値
を取り得る信号807a、807bを出力する。たとえば、ある導関数ブロック806aについてはdselを0に設定し、別の導関数ブロック806bについてはdselを1、2、または3に設定することによって、干渉セグメント識別器306は、差の絶対値および1次またはより高次の差の導関数の絶対値を計算する。
【0071】
次に、干渉セグメント識別器306は、導関数ブロック806a、806bから出力された信号807a、807bの各々をそれぞれのしきい値809a、809bと比較することに進む。これは図8中のしきい値処理ブロック808a、808bによって実行される。より詳細には、しきい値処理ブロック808a、808bは、それぞれ、(パラメータ805a、805bによって示されるように)差信号の絶対値および差信号の導関数の絶対値がそれぞれのしきい値を超えるセグメントを示す信号810a、810bを出力し得る。たとえば、出力信号810a、810bは、それぞれ、(パラメータ805a、805bによって示されるように)差信号の絶対値および差信号の導関数の絶対値がそれぞれのしきい値を超える時間サンプルnを示すビットベクトルin,m、n=1、...、sの形態であり得る。たとえば、ビットベクトルin,m、n=1、...、sは、しきい値が超えられた時間サンプルnの場合は値「1」を取り得、他の場合は値「0」を取り得る。
【0072】
干渉識別をよりロバストにするために、干渉セグメント識別器306は、修正された信号812a、812bを与えるように信号810a、810bを随意に修正し得る。
【0073】
たとえば、干渉セグメント識別器306は、信号810a、810bによって示される識別されたセグメントが最小長さを有することを必要とし得る。干渉セグメント識別器306は、信号810a、810b中に示されているセグメントの長さを検査し、最小長さよりも短いセグメントを除去し得る。図10はビットベクトルの形態の信号810aを示す。ビットベクトルは、2つのセグメント、すなわち、1サンプル長である第1のセグメント307a、2サンプル長である第2のセグメント307b、および3サンプル長である第3のセグメント307cを示す。最小長さが2サンプルに設定されると仮定する。その場合、図10の例では、干渉セグメント識別器306は、1サンプル長であるサンプル307aを除去することになる。
【0074】
干渉セグメント識別器306は、一定数のサンプルよりも互いに近いセグメントを相互接続し得る。たとえば、一定数のサンプルが2つのサンプルであると仮定する。図10の例では、第2のセグメント307bおよび第3のセグメント307cは単一の時間サンプル812によって分離されている。したがって、干渉セグメント識別器306は、たとえば、時間サンプル812の値を0の代わりに1に変更することによって、セグメント307bとセグメント307cとを相互接続して共通セグメント307dとすることになる。
【0075】
干渉セグメント識別器306は、信号810a中に示されている任意のセグメントを、あらかじめ定義された数のサンプルだけ、さらに短縮または延長し得る。延長は、延長されるべきセグメントに隣接する要素に値1を割り当てることによって実行され得る。
【0076】
干渉セグメント識別器306によって行われる修正動作の順序は任意の順序で実行され得る。
【0077】
干渉セグメント識別器306は、さらに、ブロック813中で、信号812a、812b(または、修正ブロック811a、811bが存在しない場合は810a、810b)を論理的に結合して、干渉を受ける1つまたは複数のセグメント307を示す信号814にし得る。特に、ブロック813中で、干渉セグメント識別器306は入力信号812a、812bに対して論理「AND」演算または論理「OR」演算を実行し得る。たとえば、出力信号814は、入力信号812aと入力信号812bの両方がセグメントを示す時間サンプルについてのセグメントを示し得る。代替的に、出力信号814は、入力信号812aおよび/または入力信号812bがセグメントを示す時間サンプルについてのセグメントを示し得る。特に、2つのビットベクトルin,m(dsel0)とin,m(dsel1)とは結合されて、in,m(dsel0)およびin,m(dsel1)のうちの少なくとも1つが値「1」を取る場合はそれが値「1」を取り、他の場合はそれが値「0」を取るような結合ビットベクトルになり得る。
【0078】
したがって、結合ビットベクトルは、(パラメータ805a、805bによって示されるように)差信号の絶対値および差信号の導関数の絶対値のうちの少なくとも1つがそれぞれのしきい値809a、809bを超える、ビート信号xn,mの1つまたは複数のセグメント307を識別するインジケータとして働き得る。
【0079】
ステップS08において、干渉低減器308は、ステップS06中で干渉識別器によって識別された1つまたは複数のセグメント307を交換することによってビート信号中の干渉を低減することに進む。
【0080】
ステップS06と同様に、および図5のフローチャートに示されているように、干渉低減器306は、シーケンス210a中のビート信号が、それらのビート信号がシーケンス210a中に現れる順序で1度に1つずつ処理されるように、連続的に動作し得る。
【0081】
一般に、1つまたは複数のセグメント307は、シーケンス210a中の隣接するビート信号の対応するセグメント、基準ビート信号305の対応するセグメント、またはそれらの組合せによって交換され得る。いくつかのセグメント307がビート信号中で識別されたとき、異なるセグメントに異なる交換方針が適用され得ることを理解されたい。たとえば、第1のセグメントは基準ビート信号の対応するセグメントによって交換され得るが、第2のセグメントは隣接するビート信号によって交換され得る。特定のセグメントのための交換方針の選択は、隣接するビート信号が対応するセグメント中で干渉を受けるか否かに依存し得る。
【0082】
図11a~図11cは、出現し得る3つの状況を示す。図11a~図11cの各々は、現在処理されているビート信号1101、ビート信号のシーケンス210a中のビート信号1101に隣接する(すなわち、シーケンス110a中のビート信号1102の直前または直後の)ビート信号1102、および基準ビート信号1103を示す。ビート信号1101はセグメント307中で干渉を受けている。
【0083】
干渉低減器308は異なるモードで動作し得る。第1のモードでは、干渉低減器308は、ビート信号1101のセグメント307を隣接するビート信号1102の対応するセグメントによって交換する。第1のモードで動作しているとき、干渉低減器308は、図11a、図11b、図11cの各々において、ビート信号1101のセグメント307を隣接するビート信号1102の対応するセグメントと交換することになる。第1のモードでは、セグメント307は隣接するビート信号1102の対応するセグメントによって常に交換される。このことは、図11bおよび図11cの場合にそうである、隣接するビート信号1102がセグメント307中でも干渉を受ける場合に問題になり得る。
【0084】
したがって、第2のモードでは、干渉低減器308は、隣接するビート信号1102がセグメント307中で干渉を受けないという条件で、ビート信号1101を隣接するビート信号1102と交換するのみであり得る。隣接するビート信号1102がセグメント307中で干渉を受ける場合、干渉低減器308は、第2のモードで動作しているとき、代わりに、セグメント307中のビート信号1101に対して有限インパルス応答(FIR)フィルタを実行し得る。FIRフィルタは、たとえば、セグメント307中の干渉を平滑化することによって干渉を低減する平滑化フィルタであり得る。したがって、第2のモードで動作しているとき、干渉低減器308は、図11aの例では隣接するビート信号1102の対応するセグメントによってセグメント307を交換することになるが、図11bの例では、代わりにFIRフィルタを実行することになる。
【0085】
干渉低減器308はまた、単一のセグメント内で、隣接するビート信号1102による交換とFIRフィルタの適用とを組み合わせ得る。図11cに示されているように、セグメント307は、第1の部分3071と、第2の部分3072とに分割され得る。第1の部分3071中では、ビート信号1101が隣接するビート信号1102によって交換され得、第2の部分3072中では、FIRフィルタが使用され得る。このことは、隣接するビート信号1102が、第2の部分3072に対応する部分中では干渉を受けるが、第1の部分3071に対応する部分中では干渉を受けないことが分かっている場合に、特に当てはまり得る。
【0086】
いくつかのセグメントがビート信号について識別されたとき、セグメントは、それぞれ、セグメント中のどこで隣接するビート信号が干渉を受けるかに応じて、部分に分割され得ることを理解されたい。したがって、ビート信号について、異なるセグメントに対応する複数の部分3071、3072があり得る。
【0087】
第3のモードでは、干渉低減器308は、隣接するビート信号1102がセグメント307中で干渉を受けないという条件で、ビート信号1101を隣接するビート信号1102と交換するのみである。隣接するビート信号1102がセグメント307中で干渉を受ける場合、干渉低減器308は、代わりに、ビート信号1101を基準ビート信号1103の対応するセグメントと交換する。したがって、第3のモードで動作しているとき、干渉低減器308は、ビート信号1101のセグメント307を、図11A中では基準ビート信号1102の対応するセグメントによって交換し、図11b中では基準ビート信号1103の対応するセグメントによって交換することになる。
【0088】
干渉低減器308はまた、単一のセグメント中で隣接するビート信号1102による交換と基準ビート信号1103による交換とを組み合わせ得る。図11cに示されているように、ビート信号1101は、第1の部分3071中では隣接するビート信号1102によって交換され得、第2の部分3072中では基準ビート信号1103によって交換され得る。このことは、隣接するビート信号1102が、第2の部分3072に対応する部分中では干渉を受けるが、第1の部分3071に対応する部分中では干渉を受けないことが分かっている場合に、特に当てはまり得る。
【0089】
第4のモードでは、干渉低減器308は、常に、ビート信号1101のセグメント207を基準ビート信号1103の対応するセグメントと交換する。したがって、第4のモードで動作しているとき、したがって、干渉低減器308は、図11a、図11b、および図11cの各々において、ビート信号1101のセグメント307を基準ビート信号1103の対応するセグメントと交換することになる。
【0090】
図12は、第3のモードで動作しているときの干渉低減器308の可能な実装を示す。
【0091】
干渉低減器308は、ビート信号1101および隣接するビート信号1102が干渉を受けるセグメントをそれぞれ示す信号1201、1202を受信し得る。信号1201は図8の信号814に対応する。
【0092】
信号1201は、ビート信号1101が干渉を受けることを示すが、信号1202は、隣接するビート信号1102が干渉を受けないことを示す時間サンプルについて、干渉低減器208は、出力ビート信号1204中でビート信号1101の時間サンプルを隣接するビート信号1102の時間サンプルと交換する。信号1201は、ビート信号1101が干渉を受けることを示し、信号1202は、隣接するビート信号1102も干渉を受けることを示す時間サンプルについて、干渉低減器208は、出力ビート信号1204中でビート信号1101の時間サンプルを基準ビート信号1103の時間サンプルと交換する。
【0093】
得られた出力ビート信号1204は、一般に、干渉の影響が低減され、干渉低減デバイス212aから出力されたビート信号の出力シーケンス213aに加えられ得る。
【0094】
当業者は、上記で説明した実施形態を多くの方法で変更し、上記の実施形態に示されているように本発明の利点を依然として使用することができることが諒解されよう。たとえば、レーダユニットがいくつかの送信アンテナと受信アンテナとを有するとき、説明した方法は、送信アンテナと受信アンテナとの各組合せごとに実行され得る。したがって、本発明は、示された実施形態に限定されるべきでなく、添付の特許請求の範囲によって定義されるのみであるべきである。さらに、当業者が理解するように、示された実施形態は組み合わせられ得る。
図1
図2
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図10
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図12