(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】鉱山車両および鉱山車両のAC電気モーターを起動するための方法
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20230914BHJP
B60L 9/24 20060101ALI20230914BHJP
B60L 50/53 20190101ALI20230914BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
B60L3/00 J
B60L9/24
B60L50/53
B60L9/18 J
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019187403
(22)【出願日】2019-10-11
【審査請求日】2022-08-12
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515277780
【氏名又は名称】サンドヴィック マイニング アンド コンストラクション オーワイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ティーホネン, トンミ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァタネン, ハッリ
(72)【発明者】
【氏名】リスティマキ, ヴィッレ
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-515888(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03037297(EP,A1)
【文献】米国特許第04908565(US,A)
【文献】特開2017-184549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-58/40
B60W 10/00-20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱山車両(300)において、
- 鉱山車両の移動および穿孔機能の少なくとも一方の機能において電力供給するためのAC電気モーター(104)と、
- 外部グリッド(203)から第1のAC電圧を受け取るための外部グリッドコネクタ(106)と、
- 電池(101)、および、第2のAC電圧を提供するための、前記電池(101)と前記AC電気モーター(104)との間に結合されたインバーター(102)と、
- 前記外部グリッドコネクタ(106)と前記AC電気モーター(104)との間の第1の制御可能スイッチ(201)と、
- 前記インバーター(102)と前記AC電気モーター(104)との間の第2の制御可能スイッチ(202)と、
- 制御コンピュータ(305)とを備え、前記制御コンピュータ(305)は、前記第1の制御可能スイッチ(201)および前記第2の制御可能スイッチ(202)に結合され、前記AC電気モーター(104)に対する前記第1および第2のAC電圧の結合を制御するように構成される、鉱山車両(300)であって、
- 鉱山車両は、前記第1のAC電圧の位相を検出するように構成される第1の検出器(402)を備え、
- 鉱山車両は、前記第2のAC電圧の位相を検出するように構成される第2の検出器(403)を備え、
- 鉱山車両は、同期比較器(401)を備え、前記同期比較器(401)は、第1の検出器(402)および第2の検出器(403)に結合され、前記第1
のAC電圧と第2のAC電圧の間の位相差を示す同期信号(411)を生成するように構成され、
- 前記制御コンピュータ(305)は、モーター起動シーケンスを実装するように構成され、前記モーター起動シーケンスは、
- 前記第2のAC電圧を前記AC電気モーター(104)に結合させるために前記第2のスイッチ(202)を閉鎖すること、
- 前記第1のAC電圧と前記第2のAC電圧との間の前記位相差が所定の限度より小さくなることを通知するために前記同期信号(411)をモニターすること、
- 前記第2のスイッチ(202)を開放すること、および、
- 前記第1のAC電圧を前記AC電気モーター(104)に結合させるために前記第1のスイッチ(201)を閉鎖すること
を含む、鉱山車両(300)。
【請求項2】
- 前記制御コンピュータ(305)は、前記インバーター(102)の第1の制御入力に結合され、前記インバーター(102)に速度基準信号(412)を提供するように構成され、
- 前記AC電気モーター(104)の速度検出器は、前記インバーター(102)の第2の制御入力に結合され、前記インバーター(102)に速度フィードバック信号(413)を提供するように構成され、
- 前記インバーター(102)は、前記速度フィードバック信号(413)を前記速度基準信号(412)に一致させるために、前記第2のAC電圧の提供を制御するように構成される、請求項1に記載の鉱山車両(300)。
【請求項3】
- 前記インバーター(102)は、前記制御コンピュータ(305)の入力に結合され、前記制御コンピュータ(305)にモーター速度インジケータ信号(414)を提供するように構成される、請求項1または2に記載の鉱山車両(300)。
【請求項4】
前記制御コンピュータ(305)とユーザーとの間で情報が交換されることを可能にするために前記制御コンピュータ(305)に結合されたユーザーインタフェース(406)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の鉱山車両(300)。
【請求項5】
穿孔機能の手段として岩石穿孔
機械を備えた、請求項1から
4のいずれか一項に記載の鉱山車両(300)。
【請求項6】
鉱山車両(300)のAC電気モーター(104)を起動させるための方法であって、
- 前記鉱山車両(300)のオンボード電池式インバーター(102)によって提供される第2のAC電圧によって、前記AC電気モーター(104)を第1の速度まで加速させる(501)こと、
- 外部グリッド(203)から取得される第1のAC電圧の位相を前記第2のAC電圧の位相と比較する
(502)こと、
- 前記第1
のAC電圧と第2のAC電圧の前記位相の間の差が所定の限度より大きいことに対する応答として、前記
オンボード電池式インバーター(102)が前記AC電気モーター(104)を回転させる速度を変更する(503)こと、および、
- 前記第1
のAC電圧と第2のAC電圧の前記位相の間の前記差が前記所定の限度より小さいことに対する応答として、前記第2のAC電圧によって前記AC電気モーター(104)を回転させることから前記第1のAC電圧によって前記AC電気モーター(104)を回転させることに変更する(504,505)ことを含む、方法。
【請求項7】
- 前記第2のAC電圧を制御可能周波数で発生するために、前記
オンボード電池式インバーター(102)を使用すること、
- 前記
オンボード電池式インバーター(102)において、前記AC電気モーター(104)の所望の回転速度を示す速度基準信号(412)および前記AC電気モーター(104)の検出された回転速度を示す速度フィードバック信号(413)を受信すること、および、
- 前記速度フィードバック信号(413)を前記速度基準信号(412)に一致させるために、前記第2のAC電圧の前記
制御可能周波数を制御することを含む、請求項
6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、電動式鉱山車両に関係する。特に、本発明は、外部電気グリッドの過剰な負荷が最小化または回避されるように、鉱山車両のAC電気モーターを起動するタスクに関係する。
【背景技術】
【0002】
穿孔リグ、掘削機、ローダー、トラック、および同様なものなどの鉱山車両は、伝統的に、それら自身の内燃機関によって電力供給された。最近、開発トレンドは、電動式鉱山車両であって、鉱山車両によって保持される電池と外部電気グリッドの両方から電力供給され得る強力な電気モーターを備える、電動式鉱山車両に向けられている。電動式鉱山車両の利点は、例えば、少ないノイズ、少ない排ガス、少ない廃熱、およびサイトに対する燃料分配の少ない要求を含む。
【0003】
例として、電動式穿孔リグを考えることができる。そのような穿孔リグは、参照指標100で
図1に概略的に示される。穿孔リグ100は、電池101、インバーター102、切り換えブロック103、および主電気モーター104を備える。制御コンピュータ105は、少なくともインバーター102および切り換えブロック103であって、外部グリッドコネクタ106から切り換えブロック103への接続部が同様に存在する、切り換えブロック103を制御するように構成される。
【0004】
穿孔リグ100の主電気モーター104によって生成される電力は、穿孔アクチュエータの油圧ポンプを運転することまたは車両を移動させることに向けられ得る。穿孔しまた移動させるための別個の電気モーターを有することも可能である。通常、モーター4の電力は、穿孔リグ100がトンネルの端の所定の場所にある間に、穿孔するために使用される。穴が、装填され(charged)発破される(blasted)準備ができると、穿孔リグ100のホイールまたはトラックを移動させる駆動機構に電力を向け直すためにかかる時間の間、電気モーター104は停止する。その後、モーター104は、穿孔リグ100を安全なロケーションに駆動するために再び起動されて、装薬(charge)を発破し、発破された石を取り除くために待つ。
【0005】
電動式穿孔リグ100の電池101は、通常、穿孔の長い期間について必要とされることになるすべての電力を単独で供給するのに十分に大きくない。代わりに、電動式穿孔リグ100は、電動式穿孔リグ100が1つの場所から別の場所に移動する期間以外の全ての期間、通常、サイト上の電気グリッドに結合される。
【0006】
強力な電気モーターを起動させることは、問題の考えられる根源であることが分かっており、その原因は、いわゆる突入電流(inrush current)である。起動時の短期間の間に、モーターは、通常動作中にモーターが引き出す定常状態電流より著しく高い電流を引き出すことができる。
【0007】
図2は、従来技術による、電気モーター104を起動することにおいて役割を有する幾つかの部品を概略的に示す。スイッチ201および202は、
図1の切り換えブロック103に属する。外部電気グリッド203は、概略的に示され、グリッド内と穿孔リグ100内の両方に過負荷回路ブレーカ204および205が存在する。モーター104を起動する典型的な方法は、スイッチ202を閉鎖してかつスイッチ201を開放して維持することを含み、インバーター102を通して電池101から取得される電力を用いて、モーター104のいわゆる予備加速(pre-acceleration)を行うことができる。モーターが十分に高速に回転すると、スイッチ202は開放し、スイッチ201は閉鎖する。こうして、電気グリッド203は、どんな長い期間でも、過剰な突入電流を提供する必要がなく、なぜならば、モーター104が既に回転しているときに電気グリッド203が働き始めるだけであるからである。
【0008】
それでも、電気モーター104の駆動をスムーズに外部電気グリッド203に引き継がせることが難しいことが示されている。例えば、より古い鉱山において、電気グリッド203は、非常に小さい最大電流について寸法決定されるため、上述した種類のモーター起動手順が試みられるときに、グリッドの過負荷回路ブレーカ204が遮断する(trip)。
【0009】
従来技術の文書、欧州特許出願公開第3037297号明細書は、電動式鉱山車両を開示し、その電動式鉱山車両において、電力エレクトロニクスデバイスによって供給される無効電流の量および補助エネルギー源を充電または放電させるための有効充電電流の量は、給電ケーブルの最大電流値に関して制御される。
【0010】
従来技術の文書、米国特許出願公開第2012/298004号明細書は、主機能を働かせるための1つの電気モーターおよび補助機能を働かせるための別の電気モーターを有する電動式鉱山車両を開示する。さらに、その車両は、電力が、そこから電気モーターのうちの任意の電気モーターに供給され得る発電補助ユニットを備える。
【0011】
本発明の目的は、外部電気グリッドの電流提供能力に対してごく控えめな要求をするように設計されるような、鉱山車両および鉱山車両のAC電気モーターを起動するための方法を提示することである。本発明の別の目的は、従来技術の鉱山車両が、オーバーホールまたは更新作業のごく控えめな要求によって、本発明による鉱山車両に変換され得ることである。
【発明の概要】
【0012】
これらのまた他の有利な目的は、適切なAC電圧の位相比較を電気モーターの起動手順と組み合わせることによって達成される。
【0013】
第1の態様によれば、鉱山車両が提供される。鉱山車両は、鉱山車両の移動および穿孔機能の少なくとも一方の機能において電力供給するためのAC電気モーターと、外部グリッドから第1のAC電圧を受け取るための外部グリッドコネクタとを備える。鉱山車両は、電池、および、第2のAC電圧を提供するための、上記電池と上記AC電気モーターとの間に結合されたインバーターを備える。鉱山車両は、上記外部グリッドコネクタと上記AC電気モーターとの間の第1の制御可能スイッチと、上記インバーターと上記AC電気モーターとの間の第2の制御可能スイッチとを備える。鉱山車両は、制御コンピュータを備え、制御コンピュータは、上記第1の制御可能スイッチおよび上記第2の制御可能スイッチに結合され、上記AC電気モーターに対する上記第1および第2のAC電圧の結合を制御するように構成される。鉱山車両は、上記第1のAC電圧の位相を検出するように構成される第1の検出器および上記第2のAC電圧の位相を検出するように構成される第2の検出器を備える。鉱山車両は、同期比較器を備え、同期比較器は、上記第1および第2の検出器に結合され、上記第1および第2のAC電圧との間の位相差を示す同期信号を生成するように構成される。制御コンピュータは、上記同期信号に基づいて上記第1および第2のスイッチの切り換えを制御するように構成される。
【0014】
第1の態様の一実施形態によれば、制御コンピュータは、インバーターの第1の制御入力に結合され、インバーターに速度基準信号を提供するように構成される。AC電気モーターの速度検出器は、インバーターの第2の制御入力に結合され、インバーターに速度フィードバック信号を提供するように構成される。インバーターは、上記速度フィードバック信号を上記速度基準信号に一致させるために、上記第2のAC電圧の提供を制御するように構成される。これは、本発明が、インバーターに対して同様の接続を既に有する既存の鉱山車両に対するアップグレードとして容易に適用され得るという利点を含む。
【0015】
第1の態様の一実施形態によれば、インバーターは、制御コンピュータの入力に結合され、制御コンピュータにモーター速度インジケータ信号を提供するように構成される。これは、制御コンピュータが、モーター速度に関する情報を装備したその動作を実施し得るという利点を含む。
【0016】
第1の態様の一実施形態によれば、鉱山車両は、制御コンピュータとユーザーとの間で情報が交換されることを可能にするために上記制御コンピュータに結合されたユーザーインタフェースを備える。これは、ユーザーが、電気モーターの起動位相の良好な制御および起動位相に関する最新の情報を与えられることができるという利点を含む。
【0017】
第1の態様の一実施形態によれば、制御コンピュータは、モーター起動シーケンスを実装するように構成され、モーター起動シーケンスは、上記第2のAC電圧を上記AC電気モーターに結合させるために上記第2のスイッチを閉鎖すること、上記第1および第2のAC電圧の間の上記位相差が所定の限度より小さくなることを通知するために上記同期信号をモニターすること、上記第2のスイッチを開放すること、および、上記第1のAC電圧を上記AC電気モーターに結合させるために上記第1のスイッチを閉鎖することを含む。これは、過剰な突入電流の全ての発生を回避するシステム的方法が提供されるという利点を含む。
【0018】
第1の態様の一実施形態によれば、制御コンピュータは、上記第1および第2のAC電圧の間の位相差が、所定の遅延より長い時間の間、上記所定の限度より小さいままであったことを通知することに対する応答として、上記同期信号を上記モニターすることから上記第2のスイッチを上記開放することに進むように構成される。これは、スイッチの動作が、過剰に短い時間窓内で試みられないという利点を含む。
【0019】
第1の態様の一実施形態によれば、上記鉱山車両は岩石穿孔リグである。これは、本発明の有利な特徴が、外部電気グリッドが常に可能な限り強力であるわけではない鉱山内の深いロケーションで利用可能にされ得るという利点を含む。
【0020】
第2の態様によれば、鉱山車両のAC電気モーターを起動させるための方法が提供される。方法は、上記鉱山車両のオンボード電池式インバーターによって提供される第2のAC電圧によって、上記AC電気モーターを第1の速度まで加速させること、外部グリッドから取得される第1のAC電圧の位相を上記第2のAC電圧の位相と比較すること、上記第1および第2のAC電圧の上記位相の間の差が所定の限度より大きいことに対する応答として、上記インバーターが上記AC電気モーターを回転させる速度を変更すること、および、上記第1および第2のAC電圧の上記位相の間の上記差が上記所定の限度より小さいことに対する応答として、上記第2のAC電圧によって上記AC電気モーターを回転させることから上記第1のAC電圧によって上記AC電気モーターを回転させることに変更することを含む。
【0021】
第2の態様の一実施形態によれば、方法は、上記第2のAC電圧を制御可能周波数で発生するために、上記電池式インバーターを使用すること、上記電池式インバーターにおいて、上記AC電気モーターの所望の回転速度を示す速度基準信号および上記AC電気モーターの検出された回転速度を示す速度フィードバック信号を受信すること、および、上記速度フィードバック信号を上記速度基準信号に一致させるために、上記第2のAC電圧の上記周波数を制御することを含む。これは、過剰な突入電流の全ての発生を回避するシステム的方法が提供されるという利点を含む。
【0022】
第2の態様の一実施形態によれば、上記第2のAC電圧によって上記AC電気モーターを回転させることから上記第1のAC電圧によって上記AC電気モーターを回転させることに前記変更することは、上記第1および第2のAC電圧の間の位相差が、所定の遅延より長い時間の間、上記所定の限度より小さいままであったことを通知することに対する応答として行われる。これは、スイッチの動作が、過剰に短い時間窓内で試みられないという利点を含む。
【0023】
本発明のさらなる理解を可能するために含まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の実施形態を示し、また、説明と共に、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】穿孔リグの幾つかの電気部品および接続を概略的に示す図である。
【
図4】電動式鉱山車両の幾つかの電気部品および接続を概略的に示す図である。
【
図5】方法およびコンピュータプログラム製品を示す図である。
【
図6】2つの異なる場合において2つのAC電圧の間の位相差を検出することの比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図3は、電動式鉱山車両300を概略的に示す。電動式鉱山車両300が電動式であることは、鉱山車両300が、鉱山車両の主要な機能の少なくとも幾つかの機能に電力供給するのに十分に強力である少なくとも1つの電気モーター104を備えることを意味する。
図3の例において、鉱山車両300は岩石穿孔リグであり、その主要な機能は、岩石内に穴を穿孔することおよび車両を動き回らせることを含む。これらの機能のうちの少なくとも1つの機能に電力供給するために、電気モーター104は、少なくとも数十キロワット、好ましくは、数百キロワットの電力を有するべきである。さらに強力な電気モーターは排除されない。
【0026】
電気モーター104は、好ましくは、AC電気モーターであり、なぜならば、AC電気モーターが、頑健性、信頼性、速度の比較的簡単な制御、および良好な効率のような多くの有利な特徴を有するからである。AC電気モーター104の出力電力が鉱山車両300においてどのようにさらに伝達されるかは、本発明にとって重要ではない。一例として、AC電気モーター104は、穿孔機内のアクチュエータに油圧作動油を圧送する1つまたは複数の油圧ポンプ、ホイールハブモーター、および同様なものを動作させることができる。
【0027】
図4は、移動および/または穿孔機能のようなその主要な機能に電力供給することにおいて役割を有する鉱山車両300の或る部分の略ブロック図である。同じ参照指標は、同じまたは本質的に同様の部品のために図面で使用される。
【0028】
鉱山車両300は、外部グリッド203から第1のAC電圧を受け取るための外部グリッドコネクタ106を備える。過負荷回路ブレーカ204および205は、外部グリッド203か、鉱山車両300か、または両方で使用されて、潜在的に危険な過電流状況に対する保護を提供する。外部グリッド203は、鉱山またはトンネル工事サイトなどの穿孔サイトにおける給電グリッドであることができる。
【0029】
鉱山車両は電池101を備え、電池101の貯蔵容量および放電電流定格は、電池101からの電気エネルギーを使用することが、AC電気モーター104を少なくとも制限された期間の間、動作させることを可能にするのに十分に高い。インバーター102は、電池101とAC電気モーター104との間に結合されて、第2のAC電圧を提供する。2つの制御可能スイッチが
図4に示される。第1の制御可能スイッチ201は、外部グリッドコネクタ106とAC電気モーター104との間に設けられ、第2の制御可能スイッチ202は、インバーター102とAC電気モーター104との間に設けられる。
図3の略図において、第1の制御可能スイッチ201および第2の制御可能スイッチ202は切り換えブロック303に属する。
【0030】
第1および第2のAC電圧の振幅は同じである必要はない。鉱山車両の典型的な動作環境において、外部グリッド203から入手可能であるAC電圧の振幅は、380から690ボルトの間で変動することができる。電池101およびインバーター102によって提供され得るAC電圧の振幅は、450ボルトのような或る最大値を有する。
【0031】
制御コンピュータ305は、第1の制御可能スイッチ201および第2の制御可能スイッチ202に結合される。制御コンピュータ305は、第1および第2のスイッチ201および202をそれぞれ使用して、AC電気モーターに対する第1および第2の電圧の結合を制御するように構成される。制御コンピュータ305の部品、および、そのような制御を可能にする制御可能スイッチ201および202に対するその結合は、
図3および
図4により詳細に示されず、なぜならば、ここで関係する種類の電圧および電流の定格を持つスイッチの状態を制御コンピュータが制御させられ得る多数の方法を当業者が容易に提示し得るからである。
【0032】
鉱山車両300は、第1のAC電圧の位相を検出するように構成される第1の検出器402および第2のAC電圧の位相を検出するように構成される第2の検出器403を備える。検出器402および403が位置する電圧ラインに沿う場所が重要であるのではなく、第1および第2のAC電圧の位相が別々に検出され得ることを保証するために、検出器の間に少なくとも1つの制御可能スイッチを有することが有利である。
図4の例において、第1の検出器402は、外部グリッドコネクタ106と第1の制御可能スイッチ201との間に位置し、第2の検出器403は、第2の制御可能スイッチ202とAC電気モーター104との間に位置する。
図3の略図において、第1の検出器402および第2の検出器403は、切り換えブロック303に含まれてもよい。
【0033】
鉱山車両は、第1および第2の検出器402および403に結合され、第1および第2のAC電圧の間の位相差を示す同期信号411を生成するように構成される同期比較器401を備える。同期比較器401は、位相比較器とも呼ばれる可能性がある。同期信号411は、1ビットフラグ信号程度に単純であることができるため、或るデジタル値は、第1および第2のAC電圧の位相が或る所定の限度より小さく異なることを意味し、一方、他のデジタル値は、両者の位相がそれより大きく異なることを意味する。より精巧な実施形態において、同期信号411は、例えば、第1および第2のAC電圧の間の一時的位相差の尺度、および/または、位相差の変化のレートおよび方向、第1および第2のAC電圧の周波数差、および/または他のもののような何らかの他の情報を含む可能性がある。
【0034】
制御コンピュータ305は、同期信号411に基づいて第1のスイッチ201および第2のスイッチ202の切り換えを制御するように構成される。これは、制御コンピュータ305が、AC電気モーター104の起動中に、突入電流の短いバーストが大幅に低減されるように切り換えを実施することを可能にする。
【0035】
電池から取得される電気エネルギーによって電気モーターを予備加速し、その後にのみ、グリッドの使用に切り換える従来の方法が、突入電流の主要部分を回避するのに役立つが、再磁化電流の問題が残ったままであることが見出された。従来技術によれば、異なるAC電圧の間の位相差を考慮することなく、インバーターとAC電気モーターとの間のスイッチは開放し、外部グリッドコネクタとAC電気モーターとの間のスイッチは、その後、閉鎖する。これは、AC電気モーター内のローターの一時的回転位置が、第1のAC電圧が接続された時点で最適でなかった状況につながる可能性がある。これは、次に、突入電流スパイクをもたらす可能性があり、突入電流スパイクは、数ミリ秒または数十ミリ秒だけの間、続くが、皮相電力において数百キロボルトアンペアを一時的に含む可能性がある。
【0036】
第1のスイッチ201と第2のスイッチ202の切り換えが同期信号411に基づいて達成されると、第1のスイッチ201は、AC電気モーター104内のローターの回転位置にとって最適な関係の時点に閉鎖し得る。最も有利には、切り換え時点は、第1および第2のAC電圧の間の位相差が所定の限度より小さくなるように選択される。こうして、外部グリッドからの電気エネルギーによるACモーターの継続動作は、AC電気モーター104内のローターの残留磁化を最大限利用することができ、それは、次に、さらにミリ秒タイムスケールのどんな突入電流スパイクをも抑制するのに役立つ。
【0037】
全ての突入電流バーストが完全になくされるべきであることを要求することは、幾つかの理由で合理的でない。一部の突入電流は、グリッドのAC電圧と、インバーターが鉱山車両上で生成するAC電圧との振幅差から生じる場合がある。同様に、第1および第2のスイッチ201および202を物理的に実装する接触器においてある程度の機械的遅延が存在する。この機械的遅延によって、AC電気モーター104は、AC電圧を全く受け取らない短期間の間、わずかに減速する場合がある。これは、位相差を引き起こし、或る突入電流を生じさせる。
【0038】
制御コンピュータ305は、インバーター102の第1の制御入力に結合され、インバーター102に速度基準信号412を提供するように構成されることができる。インバーター102の制御が実装される方法に応じて、速度基準信号412はアナログ信号またはデジタル信号であることができる。AC電気モーター104の速度検出器(別に示されない)は、インバーター102の第2の制御入力に結合され、インバーター102に速度フィードバック信号を提供するように構成することができる。インバーター102は、速度フィードバック信号413を速度基準信号412に一致させるために、AC電気モーター104に対する第2のAC電圧の提供を制御するように構成することができる。
【0039】
AC電気モーターの回転速度は、AC電気モーターを回転させるために使用されるAC電圧の周波数に依存する。したがって、速度フィードバック信号413を速度基準信号412に一致させるためにインバーター102が有する自由に使える手段は、インバーター102が生成するAC電圧の周波数を動的に変更することを含む。この変更することは、例えば、比例制御、比例積分制御、または比例積分微分制御のような既知の制御ループメカニズムの幾つかを適用することによって達成され得る。
【0040】
インバーター102は、同様に、制御コンピュータ305の入力に結合され、制御コンピュータ305にモーター速度インジケータ信号414を提供するように構成することができる。モーター速度インジケータ信号414は、単に速度フィードバック信号413のコピーであることができる、および/または、モーター速度インジケータ信号414は、速度基準信号412と速度フィードバック信号413との間の一時的な差または速度フィードバック信号413が速度基準信号412に近づくレートまたは同様なもののようなさらなる情報を含むことができる。
【0041】
鉱山車両は、制御コンピュータ305と鉱山車両のユーザーとの間で情報が交換されることを可能にするために制御コンピュータ305に結合されたユーザーインタフェース406を備えることができる。鉱山車両が有人タイプでありかつコックピットを備える場合、ユーザーインタフェース406はコックピット内に位置することができる。鉱山車両が遠隔制御式タイプである場合、ユーザーインタフェース406は、鉱山車両がそこで制御されるリモートワークステーションの一部であることができる。ユーザーは、ユーザーインタフェース406を使用して、例えば、AC電気モーター104の起動を開始することができる。制御コンピュータ305は、同様にユーザーインタフェース406を使用して、起動シーケンスがどのように進むかに関する一部の最新情報をユーザーに与えることができる。
【0042】
制御コンピュータ305が、モーター起動シーケンスを実装するように構成されることができる有利な方法は、第2のスイッチ202を最初に閉鎖することを含む。これは、インバーター102が発生した(第2の)AC電圧を、AC電気モーター104に結合させる。モーターは、回転し始め、電池101からインバーター102を通して電気エネルギーを引き出す。モーターが加速するレートは、その慣性および負荷、ならびに、インバーター102がモーターを加速するために送出し得る電力およびインバーター102が生成するAC電圧の周波数に依存する。
【0043】
加速フェーズの目標は、電気グリッド203から入手可能である(第1の)AC電圧と同期している速度および位相でAC電気モーター104を回転させることである。そのような同期がどれほどうまく達成されたかについての指標は、上記第1および第2のAC電圧の間の位相差を示す同期信号411の形態で制御コンピュータ305にとって入手可能である。したがって、モーター起動シーケンスは、第1および第2のAC電圧の間の上記位相差が所定の限度より小さくなることときを通知するために同期信号411をモニターすることを含むことができる。それが起こると、第2のスイッチ202は開放することができ、第1のスイッチ201は、第2のAC電圧の代わりに第1のAC電圧をAC電気モーター104に結合させるために閉鎖することができる。
【0044】
この種の起動シーケンスは、
図5の方法の形態で示される。代替的に、
図5を、1つまたは複数の機械可読命令の1つまたは複数のセットを含むコンピュータプログラム製品の図として調べることができ、1つまたは複数の機械可読命令は、制御コンピュータ305の1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、対応する方法の実装をもたらす。
【0045】
方法のステップ501は、鉱山車両300のオンボード電池式インバーター102によって提供される第2のAC電圧によって、AC電気モーター104を第1の速度まで加速させることを含む。この第1の速度は、上記第1の速度が達成されることになる第2のAC電圧の周波数が、第1のAC電圧の既知の周波数に対応するように選択されるべきである。換言すれば、ステップ501は、代わりに第1のAC電圧が加速のために使用された場合にAC電気モーター104が最終的にとることになる速度までAC電気モーター104を加速するために第2のAC電圧を使用することを含むと考えることができる。
【0046】
方法のステップ502は、(外部グリッド203から取得される)第1のAC電圧の位相を第2のAC電圧の位相と比較することを含む。位相が一致しない限り、モーター速度(すなわち、第2のAC電圧の周波数)は変更されなければならない。そのため、第1および第2のAC電圧の位相の間の差が所定の限度より大きいことに対する応答として、方法は、ステップ503にて、インバーター102がAC電気モーター104を回転させる速度を変更することを含む。
【0047】
2つのAC電圧の位相が一致すると、AC電気モーター104を回転させるために、第2のAC電圧を使用することから、第1のAC電圧を使用することへの切り換えが実施され得る。そのため、第1および第2のAC電圧の位相の間の差が所定の限度より小さいことに対する応答として、方法は、第2のAC電圧によってAC電気モーター104を回転させることから上記第1のAC電圧によって上記AC電気モーター104を回転させることに変更することを含む。これは、ステップ504にて第2のスイッチ202を開放し、ステップ505にて第1のスイッチ201を閉鎖することによって起こる。
【0048】
ステップ504および505は、
図5において、別個のステップとしてかつこの順序で示されている。実際には、外部グリッド203およびインバーター102の出力の互いに対する結合を回避するために、第1および第2のスイッチ201および202が同時に導電性でないことを保証することが賢明である。しかしながら、同時に、AC電気モーター104が、その間、動作電圧がない状態である時間を最小にすることが賢明であり、関係するコンポーネントの電気特性および機械特性が考慮されるべきである。第1のスイッチが開放するのが、第2のスイッチ202が閉鎖するより早い可能性が非常に高く、その場合、制御コンピュータ305は、コマンド「第1のスイッチ201を開放する(open first switch 201)」および「第2のスイッチを閉鎖する(close second switch)」を同時に出すように仕組まれるであろう。上記コマンドは、関係するコンポーネントの電気特性および機械特性が、実際には、第2のスイッチ202が閉鎖する前に、第1のスイッチ201がとにかく開放するようなものである場合、さらに逆順で出される可能性がある。
【0049】
インバーター102の動作において、方法は、最も有利には、上記第2のAC電圧を制御可能周波数で発生するために、電池式インバーター102を使用するステップと、上記電池式インバーター102において、上記AC電気モーター104の所望の回転速度を示す速度基準信号412および上記AC電気モーター104の検出された回転速度を示す速度フィードバック信号413を受信するステップと、上記速度フィードバック信号413を上記速度基準信号412に一致させるために、上記第2のAC電圧の上記周波数を制御するステップとを含む。
【0050】
図6は、2つのAC電圧が実際に同期することを保証するために講じることが有利である場合がある対策を示す。すなわち、周波数の有意の差を有する2つのAC電圧さえも、反復される比較的短い期間の間、ほぼ等しい位相を一時的に有することになることが留意されるべきである。
図6のグラフの下側セットは、周波数のかなりの差を有する2つのAC電圧AC♯1およびAC♯2を示す。デジタル同期信号の値は、第1および第2のAC電圧の間の位相差が所定の限度より小さいとき高く、そうでない場合、低い。グラフの上側セットは、同様であるが、互いに近い2つのAC電圧の周波数を有する場合を示す。この場合、同期信号411は、その高い値をめったにとらないことになるが、長い時間にわたって高いままであることになる。
【0051】
図6に示す現象を考慮するために、制御コンピュータ305は、第1および第2のAC電圧の間の位相差が、所定の遅延より長い時間の間、所定の限度より小さいままであったことを通知することに対する応答として、同期信号411をモニターすることから第2のスイッチ202を開放することに進むように構成することができる。別の可能性は、別の測定であって、周波数の差のみを測定し、周波数の差が或る所定の限度より小さいときを制御コンピュータに知らせた、別の測定によって位相比較を強化することである。周波数差と位相差の両方の測定の結果は、単一ビット同期信号になるように依然として結合され得るため、例えば、同期比較器401は、周波数測定と位相差測定の両方が予め規定された限度より小さい差を示すときに同期信号411をアクティブ化するだけであることになる。
【0052】
図4と
図2を比較すると、過去に製造された電動式鉱山車両に対するアップグレードとして本発明がどのように適用され得るかを確認することが容易である。電池101、インバーター102、AC電気モーター104、外部グリッドコネクタ106、スイッチ201および202、過負荷回路ブレーカ205、およびこれらの間の接続は同じままであることができる。第1および第2の検出器402および403ならびに同期比較器401および同期信号411のためのラインのみが付加される必要がある。第1および第2の検出器402および403は、例えば、誘導検出器またはその他の手段であることができ、それにより、検出器は、それぞれのAC電圧ラインに対するガルバニック接続を全く必要とせず、同期比較器401は、鉱山車両内の適したロケーションにおいて小さい信号処理ボックスとして付加され得る。多くの工業グレード制御コンピュータは、どんな場合でも空いた入力/出力ラインを有するため、制御コンピュータ305が同期信号411を受信できるようにするために、1つのそのような入力ラインが使用される必要があるだけである。一部の更新は、制御コンピュータ305が実行するソフトウェアにとって必要とされるが、工業グレード制御コンピュータは、通常、ソフトウェア更新をいずれにしても受け付けるために装備され、そのような更新を簡単な方法で実施するための手順が存在する。
【0053】
技術の進歩によって、本発明の基本的考えを種々の方法で実装することができることが当業者に明らかである。そのため、本発明およびその実施形態は、上述した例に限定されず、代わりに、特許請求項の範囲内で変動する場合がある。例として、同期比較器401ならびに位相検出器402および403は
図4において別個の実体として示される場合でも、対応する機能を結合して、単一コンポーネントであって、検査される2つのAC電圧の位相が互いに十分に近いときはいつでも同期信号を与える、単一コンポーネントにすることが可能である。