IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オーバスネイチ・メディカル・プライベート・リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】モジュール式血管カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
A61M25/00 624
A61M25/00 612
A61M25/00 620
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019518306
(86)(22)【出願日】2017-10-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 US2017055351
(87)【国際公開番号】W WO2018067824
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-09-11
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】62/404,552
(32)【優先日】2016-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518440682
【氏名又は名称】オーバスネイチ・メディカル・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】コットーネ,ロバート・ジェイ
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】佐々木 正章
【審判官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5656011(US,A)
【文献】米国特許第5507731(US,A)
【文献】特開2007-260403(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0121080(US,A1)
【文献】特開昭62-147108(JP,A)
【文献】特開昭61-294206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の管状モジュールと、前記第1の管状モジュールと継手によって連結された第2の管状モジュールとを備えるカテーテルであって、前記継手が、(a)前記第1の管状モジュール上の少なくとも1つのスナップ嵌合接続部と、前記第2の管状モジュールに配置されたスナップ嵌合受け部とを備え;前記スナップ嵌合接続部は、ステム部分によって前記第1の管状モジュールの本体に接続された円形係止部分を含み、前記スナップ嵌合受け部は、前記円形係止部分を受容するための円形部分および前記ステム部分を受容するための長方形部分を含み;前記第1の管状モジュールと前記第2の管状モジュールが互いに連結した際に、前記スナップ嵌合接続部と前記スナップ嵌合受け部は、前記第1の管状モジュールと前記第2の管状モジュールの内面および外面と同じ高さであり、同一の径を有する連続的なルーメンを画定し;前記スナップ嵌合接続部は、弾性変形可能な片持ち継手を有し;および、前記第1の管状モジュールと前記第2の管状モジュールが互いに異なるトルク性を有し、さらに、
(b)前記第1の管状モジュールに配置された舌片要素と、前記第2の管状モジュールに配置された溝要素とを含む少なくとも1つの安定化要素を備え;前記舌片要素は、前記溝要素に嵌合し;前記安定化要素は、前記第1および第2の管状モジュールが前記継手において円周方向に回転するのを防止し;前記継手は、前記第1および第2の管状モジュールが互いに回転するのを防止する、
カテーテル。
【請求項2】
前記第1又は第2の管状モジュールにおける少なくとも1つの部分が、複数の分断された螺旋状切込みを備える、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記第2の管状モジュールがニチノールから形成される、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記第1の管状モジュールが、304、316、402および440から選択されるSAEグレードのステンレス鋼、17-7析出硬化系ステンレス鋼(PH)またはニッケルコバルト合金(MP35N)から形成される、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記継手の少なくとも一部が管状カバーによって囲まれる、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項6】
少なくとも2つの切込み開口部、第1および第2の切込み開口部をさらに備え、前記切込み開口部が、前記第1の管状モジュールまたは前記第2の管状モジュールのうちの少なくとも1つに配置される、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
フィラメントが前記第1の管状モジュールまたは前記第2の管状モジュールのうちの1つ以上の周りに螺旋状に螺合され、前記フィラメントの一端が前記第1の切込み開口部に配置され、前記フィラメントの他端が前記第2の切込み開口部に配置される、請求項6に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記フィラメントが時計回りの螺旋状に螺合される、請求項7に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記フィラメントが反時計回りの螺旋状に螺合される、請求項7に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記フィラメントが、少なくとも1つのリングによって前記第1または第2の管状モジュールに固定される、請求項8に記載のカテーテル。
【請求項11】
2~20個の管状モジュールを備える、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記2~20個の管状モジュールのうちの1つ以上の少なくとも一部が、ジャケットを形成するポリマーによって覆われる、請求項11に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記ポリマージャケットが、ナイロン、ポリエーテルブロックアミド、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(フッ化エチレンプロピレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)またはPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)から形成される、請求項12に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記第1または第2の管状モジュールの内側ルーメンの少なくとも一部が内側ライニングによって被覆される、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項15】
前記内側ライニングが、ナイロン、ポリエーテルブロックアミド、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(フッ化エチレンプロピレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)またはPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)から形成される、請求項14に記載のカテーテル。
【請求項16】
前記第1の管状モジュールがステンレス鋼から形成され、前記第2の管状モジュールがニチノールから形成される、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項17】
前記スナップ嵌合接続部と前記スナップ嵌合受け部の少なくとも1つの縁部が、5°~90°の範囲の角度で面取りされている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項18】
少なくとも1つの前記スナップ嵌合接続部が、前記第1の管状モジュールから伸び、前記第1の管状モジュールと同じ壁厚を有する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項19】
前記安定化要素が、互いに連結した際の前記第1の管状モジュールと前記第2の管状モジュールの内面および外面と同じ高さである、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項20】
前記舌片要素が長方形の形状である、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項21】
前記第1又は第2の管状モジュールが曲線形状をとる際に、前記連続的なルーメンの径が中心ルーメン軸の周りに維持される、請求項1に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年10月5日に出願された米国仮特許出願第62/404,552号の利益および優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
現在、血管系内の様々な解剖学的部位へのアクセスを可能にするようにそれぞれ設計された多数の様々な血管カテーテルおよびマイクロカテーテルが存在する。カテーテルの設計が直面する重要な問題が、カテーテルの長さにわたって押し込み性および柔軟性を制御することである。医師が、心血管系または神経血管系に見られることが多い様々な複雑かつ多くの場合蛇行した解剖学的血管系を通してアクセスすることを可能にするために、押し込み性および柔軟性を制御することが重要である。柔軟性を調整するための1つの方法が、異なる種類の材料、例えば、それぞれ異なる機能性を有するステンレス鋼および/またはポリマーからカテーテル本体を形成することである。これらの材料は、層状ポリマー組成物内に配置されたコイル状または編組ワイヤパターンを介して、管状構造に組み合わせることができる。別の方法が、カテーテルの円筒直径および壁厚を変えることである。あるいは、カテーテルの壁に様々な異なる螺旋状切込みを導入し、それによって柔軟性を増大させることができる。これらの螺旋状切込みは、本質的に連続的でも不連続的でもよい。しかし、組み立てが容易なモジュール内に異なる種類の材料とともに異なる切込みパターンを組み合わせたカテーテルは目下存在しない。それぞれが異なる材料から作製されている複数のモジュールからカテーテルを組み立てることは、これらの材料の物理的性質が機能的な組合せを問題にする、すなわちニチノール管にステンレス鋼管を直接融着することができないため困難であり得る。しかし、それぞれが異なる性質を有する異なるモジュールからカテーテルを組み立てれば、様々な種類の血管の解剖学的構造の特定の要件を満たすようにカテーテルを調整することが可能になるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、それぞれが異なる物理的性質を有するカテーテルモジュールを組み立てる方法を提供する。特定の解剖学的必要性を満たすように、カテーテルの性質を直接調整することができる。したがって、解剖学的に特有の方法で、カテーテルの柔軟性、塑性変形に対する抵抗、軸方向トルク伝達、およびカラム強度を特に制御することが可能である。本発明のモジュール式カテーテルは、ガイドワイヤを支持し、および/または心血管系または神経血管系で多くの場合遭遇するように血管狭窄または蛇行した解剖学的構造を通して薬剤を送達するのに特に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態は、少なくとも1つの近位管状モジュールと遠位管状モジュールとを備えるカテーテルを提供し、各管状モジュールは螺旋状切込みを有する少なくとも1つの部分を有し、隣接する管状モジュールの各対は継手によって連結され、継手は、(a)第1の管状モジュール上の少なくとも1つのスナップ嵌合接続部と、隣接する管状モジュールに配置されたスナップ嵌合受け部とを備え、ここでスナップ嵌合接続部は係合時に弾性変形可能であり、さらに、(b)第1の管状モジュールまたは隣接する管状モジュールに配置された舌片要素と、反対側の第1の管状モジュールまたは反対側の隣接する管状モジュールに配置された溝要素とを含む少なくとも1つの安定化要素を備える。
【0005】
いくつかの実施形態では、螺旋状切込みは、複数の分断された螺旋状切込みを備える。
【0006】
スナップ嵌合接続部は片持ち継手を形成してもよい。さらなる実施形態では、スナップ嵌合接続部はステム構造および係止構造を備え、係止構造の対辺の間で測定した場合の最も広い点での係止構造の幅は、ステム構造の幅よりも大きく、スナップ嵌合受け部はステム空洞部および係止空洞部を備え、係止空洞部の対辺の間で測定された最も広い点での係止空洞部の幅は、ステム空洞部の幅よりも大きい。特定の実施形態では、係止構造は楕円形に形成することができ、スナップ嵌合受け部は円形に形成された係止空洞部を備える。スナップ嵌合接続部は、少なくとも1つの近位管状モジュールまたは遠位管状モジュールのうちの1つと平行に延びる長手方向軸に平行な線に対して約0.1~約90°の範囲の角度で、片持ち継手で屈曲することができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、スナップ嵌合接続部は、スナップ嵌合受け部に挿入された際に、次いで挿入後に横方向に展開し、挿入中および挿入後に少なくとも1つの近位管状モジュールまたは遠位管状モジュールのうちの1つの長手方向軸に平行な線に対して平行のままである返し構造を形成する。いくつかの実施形態では、返し構造は、2本のシャフトから形成された矢状構造を備える。
【0008】
いくつかの実施形態では、遠位管状モジュールはニチノールから形成される。あるいは、遠位モジュールは、304、316、402および440から選択されるSAEグレードのステンレス鋼、17-7析出硬化系ステンレス鋼(PH)またはニッケルコバルト合金(MP35N)から形成することができる。
【0009】
隣接する管状モジュール間の継手を保護するために、管状カバーによって継手の少なくとも一部を囲むことができる。
【0010】
カテーテルは、少なくとも1つの近位管状モジュールまたは遠位管状モジュールに配置されている第1および第2の切込み開口部である少なくとも2つの切込み開口部を備えることができる。いくつかの実施形態では、両方の切込み開口部が遠位管状モジュールに配置される。他の実施形態では、1つの切込み開口部が遠位管状モジュールに配置され、第2の切込み開口部が少なくとも1つの近位管状モジュールのうちの1つに配置される。いくつかの実施形態では、管状モジュールの外側の周りにフィラメントが螺旋状に螺合される。フィラメントの一端は第1の切込み開口部に配置され、フィラメントの他端は第2の切込み開口部に配置される。
【0011】
フィラメントは、第1および第2の開口部で定位置に固定することができる。また、フィラメントは、含まれている1つ以上の管状モジュールの周りに時計回りまたは反時計回りの構成で螺合することができる。フィラメントは、少なくとも1つのリングによって、近位管状モジュールまたは遠位管状モジュールのうちの1つ以上に固定することができる。さらに、フィラメントの断面領域は、円形、正方形、三角形、長方形、半円形または台形とすることができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、カテーテルは、2~20個の管状モジュールを備える。
【0013】
いくつかの実施形態では、ジャケットを形成するポリマーを使用して、少なくとも1つの近位管状モジュールまたは遠位管状モジュールのうちの1つ以上の少なくとも一部を覆ってもよい。いくつかの実施形態では、ポリマージャケットは、ナイロン、ポリエーテルブロックアミド、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(フッ化エチレンプロピレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)またはPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)から形成されてもよい。
【0014】
本発明によるカテーテルのいくつかの実施形態では、少なくとも1つの近位管状モジュールと遠位管状モジュールとは内側ルーメンを含み、近位または遠位管状モジュールの内側ルーメンの少なくとも一部は内側ライニングによって被覆される。いくつかの実施形態では、内側ライニングは、ナイロン、ポリエーテルブロックアミド、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(フッ化エチレンプロピレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)またはPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)から形成されてもよい。
【0015】
スナップ嵌合接続部とスナップ嵌合受け部とを固定して、隣接する管状モジュール間の確実な接続を確保する方法がいくつか存在する。例えば、スナップ嵌合接続部とスナップ嵌合受け部とを互いに接着し、互いに溶接し、互いにはんだ付けすることができる。
【0016】
少なくとも1つの近位管状モジュールと遠位管状モジュールとは、同じ材料から、あるいは異なる材料から形成することができる。特定の実施形態では、少なくとも1つの近位管状モジュールのうちの1つ以上はステンレス鋼から形成され、遠位管状モジュールはニチノールから形成される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの管状モジュールおよび遠位管状モジュールのうちの1つ以上はポリマーから形成される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの近位管状モジュールおよび遠位管状モジュールのうちの1つ以上は、金属とポリマーとの編組複合体から形成される。
【0017】
いくつかの実施形態では、遠位管状体に隣接する近位管状モジュールの外径は、遠位管状モジュールの外径と同じである。代替の実施形態では、隣接する近位管状モジュールの外径は、遠位管状モジュールの外径よりも大きい。
【0018】
いくつかの実施形態では、遠位管状モジュールの内径は、隣接する近位管状モジュールの内径よりも小さい。あるいは、隣接する近位管状モジュールの内径は、遠位管状モジュールの内径と等しくてよい。
【0019】
少なくとも1つの近位管状モジュールのうちの1つ以上は、遠位管状モジュールと同じ柔軟性を有することができる。あるいは、遠位管状モジュールは、少なくとも1つの近位管状モジュールのうちの1つ以上の柔軟性よりも高い柔軟性を有することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、遠位管状モジュールの遠位端はクラウンを有する。いくつかの実施形態では、クラウンは複数の曲線要素を備える。特定の実施形態では、クラウンは5~20個の曲線要素を備える。曲線要素は、正弦波形状であってよい。
【0021】
本発明のカテーテルの実施形態では、カテーテルは、遠位管状モジュールのクラウンに取り付けられている先端部をさらに備える。いくつかの実施形態では、先端部はテーパ状であり、先端部材料内に含浸された放射線不透過性材料をさらに備える。先端部は、限定するものではないが、金などの金属から得られ得る。先端部は、円錐状にテーパ状になっている中空管状体として実装することができる。遠位管状モジュールの遠位部分と先端部との周りに螺旋状にフィラメントを巻き付けてもよく、ジャケットによってフィラメントおよび先端部の両方を覆うことができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、カテーテルは親水性潤滑ポリマーによって被覆される。
【0023】
本発明のカテーテルの実施形態はまた、少なくとも1つの近位管状モジュールと遠位管状モジュールとを備えるカテーテルを提供し、各管状モジュールは螺旋状切込みを有する少なくとも1つの部分を有し、隣接する管状モジュールの各対は継手によって連結され、継手は、複数の突出部と、突出部と嵌合する受け部とを有する連結形状を備え、一対の隣接する管状モジュールの各々は、複数の突出部および複数の受け部のうちの1つ以上を有する。
【0024】
いくつかの実施形態では、継手の連結形状はジグザグのパターンを備える。あるいは、継手の連結形状は波形を備える。カテーテル継手はジャケットによって覆われていてもよい。
【0025】
本発明のカテーテルのいくつかの実施形態では、遠位管状モジュールは、螺旋状切込みを有する少なくとも1つの部分を備え、遠位管状モジュールは形状記憶金属から形成され、管状モジュールの中心ルーメン軸に沿って曲線形状に遠位管状モジュールの区画または部分が設定され、遠位管状モジュールが曲線形状をとる際に、一定の断面ルーメンが中心ルーメン軸の周りに維持されるようにする。いくつかの実施形態では、遠位管状モジュールの少なくとも一部はニチノールから形成されてもよい。他の実施形態では、遠位管状モジュールは、304、316、402および440から選択されるSAEグレードのステンレス鋼、17-7析出硬化系ステンレス鋼(PH)、ニッケルコバルト合金(MP35N)ならびにそれらの混合物からなる群から選択されるステンレス鋼材料から形成される。あるいは、遠位管状モジュールはポリマーから形成することができる。いくつかの実施形態では、曲線形状に設定された遠位管状モジュールの部分は、曲線形状に設定されていない遠位管状モジュールの区画に対して約0°~約90°の範囲の角度を維持する。他の実施形態では、曲線形状に設定された遠位管状モジュールの部分は、曲線形状に設定されていない遠位管状モジュールの区画に対して約0°~約180°の範囲の角度を維持する。曲線部分はガイドワイヤを使用して真っ直ぐにされる。いくつかの実施形態では、使用されるガイドワイヤはテーパ状である。いくつかの実施形態では、曲線形状に予め設定された遠位管状モジュールの部分は、ガイドワイヤが管状モジュールから引き抜かれた際に、曲線形状に設定されていない遠位管状モジュールの区画に対して約45°の角度に移行する。他の実施形態では、曲線形状に予め設定された遠位管状モジュールの部分は、ガイドワイヤが管状モジュールから引き抜かれた際に、曲線形状に設定されていない遠位管状モジュールの区画に対して約180°の角度に移行する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1(a)】本発明のモジュール式カテーテルの一実施形態の正面図を示す。
図1(b)】図1(a)に示す実施形態の一部の拡大図を示す。
図2(a)】図1(a)に示す実施形態の側面図を示す。
図2(b)】本発明による近位および遠位管状モジュールの一方または両方に組み込まれた分断された螺旋状切込みパターンの一実施形態を示す。
図2(c)】本発明による分断された螺旋状切込みパターンの別の実施形態を示す。
図2(d)】本発明による分断された螺旋状切込みパターンの別の実施形態を示す。
図2(e)】本発明による管状モジュールを連結するために使用されるスナップ嵌合継手の平面図を示す。
図2(f)】本発明による分断された螺旋状切込みパターンの別の実施形態を示す。
図2(g)】本発明による分断された螺旋状切込みパターンの別の実施形態を示す。
図2(h)】本発明による分断された螺旋状切込みパターンの別の実施形態を示す。
図2(i)】本発明による分断された螺旋状切込みパターンの別の実施形態を示す。
図3】本発明による分断された螺旋状切込みパターンの一実施形態の平坦図を示す。
図4(a)】本発明の一実施形態によるスナップ嵌合接続部およびスナップ嵌合受け部を有するスナップ嵌合継手の一実施形態の係合平坦二次元図を示す。
図4(b)】分離された図4(a)のスナップ嵌合継手を示す。
図5(a)】本発明によるスナップ嵌合接続部とスナップ嵌合受け部とを含むスナップ嵌合継手の別の実施形態の第2の実施形態の平坦二次元図を示す。
図5(b)】図5(a)に示すスナップ嵌合継手のスナップ嵌合接続部の図を示す。
図6(a)】本発明による近位管状モジュール、遠位管状モジュールおよびスナップ嵌合継手の一実施形態の斜視図を示す。
図6(b)】図に示す実施形態の別の角度の斜視図を示す。
図6(c)】本発明の一実施形態による管状モジュールの端部にあるスナップ嵌合接続部の拡大平面図を示す。
図6(d)】2つの管状モジュールを接続している図6(a)~図6(c)に示すスナップ嵌合継手の斜視図を示す。
図6(e)】本発明の一実施形態による管状モジュール間のスナップ嵌合継手を固定するために使用される安定化要素の斜視図を示す。
図6(f)】非連結状態の図6(a)~図6(d)のスナップ嵌合継手の斜視図を示す。
図6(g)】本発明の一実施形態によるスナップ嵌合継手の別の正面図を示す。
図6(h)】安定化要素が明確に描かれている図6(g)のスナップ嵌合継手の側面図(約90°回転)を示す。
図6(i)】図6(g)および図6(h)のスナップ嵌合継手の別の側面図(約270°回転)を示す。
図6(j)】図6(g)~図6(i)のスナップ嵌合継手の底面図(約180°回転)を示す。
図6(k)】本発明の一実施形態の本発明による管状モジュールの一実施形態の長手方向軸に垂直な平面における断面図を示す。
図6(l)】組み立て過程でスナップ嵌合受け部が本発明の一実施形態によるモジュールの長手方向軸に対してある角度で片持ち状に支持されている、本発明による管状モジュール間のスナップ嵌合継手の側面平坦図を示す。
図6(m)】図6(l)のスナップ嵌合継手の斜視平坦図と、組み立て過程での図6(l)のスナップ嵌合継手の底面平坦図とを示す。
図6(n)】組み立て過程での図6(l)および図6(m)のスナップ嵌合継手の上面平坦図を示す。
図6(o)】組み立て過程での図6(l)~図6(n)に示すスナップ嵌合の底面反転図を示す。
図6(p)】組み立て過程での本発明の一実施形態による、図6(l)~図6(o)に示す片持ち状に支持されたスナップ嵌合継手の拡大側面図を示す。
図6(q)】組み立て過程での図6(l)~図6(q)の片持ち状に支持されたスナップ嵌合継手の拡大斜視図を示す。
図6(r)】組み立て過程での図6(l)~図6(q)の片持ち状に支持されたスナップ嵌合継手の分解斜視図を示す。
図6(s)】組み立て過程での図6(r)に示す図に対して反時計回りに90°の角度から見た、片持ち状に支持されたスナップ嵌合継手の別の分解斜視図を示す。
図6(t)】係止された位置でのスナップ嵌合接続部および受け部の面取りを示す、カテーテルの長手方向軸に垂直な平面におけるスナップ嵌合継手の断面図を示す。
図7(a)】本発明の一実施形態による、2つの管状モジュールを連結しているスナップ嵌合継手の側面の顕微鏡写真を示す。
図7(b)】図7(a)に示す写真に対して長手方向軸の周りで約60°回転させた場合の図7(a)のスナップ嵌合継手の顕微鏡写真を示す。
図7(c)】図7(b)に示す写真に対して長手方向軸の周りで約60°回転させた場合の図7(a)および図7(b)のスナップ嵌合継手の顕微鏡写真を示す。
図7(d)】図7(a)~図7(c)のスナップ嵌合継手の上面図の顕微鏡写真を示す。
図7(e)】図7(d)に示す写真に対して長手方向軸の周りで約60°回転させた場合の図7(a)~図7(d)のスナップ嵌合継手の顕微鏡写真を示す。
図7(f)】図7(d)に示す写真に対して長手方向軸の周りで約30°回転させた場合の図7(a)~図7(d)のスナップ嵌合継手の顕微鏡写真を示す。
図8(a)】連結正弦波形状を使用する、本発明による2つの管状モジュールを連結するための(わずかに分離された)継手の別の実施形態の一図を示す。
図8(b)】長手方向軸の周りで約30°回転させた場合の図8(a)に示す継手の別の図を示す。
図8(c)】図8(a)および図8(b)の(分離された)継手の斜視図を示す。
図8(d)】連結状態にある図8(a)~図8(c)に示す継手の斜視図を示す。
図8(e)】連結三角形状を使用する、本発明による2つの管状モジュールを連結するための(わずかに分離された)継手の別の実施形態の側面図を示す。
図8(f)】長手方向軸の周りで約30°回転させた場合の図8(e)に示す継手の別の図を示す。
図8(g)】図8(e)および図8(f)の(分離された)継手の斜視図を示す。
図8(h)】連結状態にある図8(e)~図8(g)に示す継手の斜視図を示す。
図9(a)】本発明の一実施形態による、長手方向軸の平面における本発明による2つの接続管状モジュールの壁厚を示す断面図を示す。
図9(b)】本発明の一実施形態による2つの接続管状モジュールの壁厚の別の実施形態の断面図を示す。
図9(c)】本発明の一実施形態による2つの接続管状モジュールの壁厚のさらに別の実施形態の断面図を示す。
図10(a)】一方の管状モジュール(近位側)の外径が、それが接続されている管状モジュール(遠位側)の外径よりも大きい一実施形態の側面図を示す。
図10(b)】図10(a)に示す実施形態の長手方向断面図を示す。
図10(c)】図9(c)に示す管状モジュールの実施形態の側面図を示す。
図10(d)】図9(c)および図10(c)の実施形態の斜視長手方向断面図を示す。
図11(a)】本発明の一実施形態によるフィラメントが管状モジュールの周りに巻き付けられている側面図を示す。
図11(b)】本発明の一実施形態による、巻き付けられたフィラメントを有する管状モジュールの側面図の写真を示す。
図11(c)】本発明の一実施形態による、巻き付けられたフィラメントを有する湾曲した管状モジュールの写真を示す。
図11(d)】図11(a)に示す実施形態の断面図を示す。
図11(e)】図11(a)および図11(d)の実施形態の斜視断面図を示す。
図12(a)】本発明の一実施形態による切込み開口部を含む管状モジュールの側面図を示す。
図12(b)】切込み開口部を横切る垂直平面における12(a)に示す実施形態の斜視断面図を示す。
図12(c)】本発明の一実施形態による切込み開口部を有する管状モジュールの写真を示す。
図12(d)】切込み開口部の縁部を描くために回転させた図12(c)に示す管状モジュールの写真を示す。
図13】切込み開口部を終結させる巻き付けられたフィラメントを有する管状モジュールの別の図を示す。
図14】略L字形の第2の切込み開口部とクラウンとを有する遠位管状モジュールの端部の側面図を示す。
図15(a)】図14の遠位管状モジュール、および第2の切込み開口部に挿入されたフィラメントを有する先端部の斜視図を示す。
図15(b)】図15(a)の破線で囲まれた部分の拡大図である。
図15(c)】第2の切込み開口部に挿入されたフィラメントを有する図14の遠位管状モジュールの別の斜視図を示す。
図16(a)】本発明の一実施形態による遠位管状モジュールに取り付けられた細長い先端部を有するモジュール式カテーテルの断面図を示す。
図16(b)】図16(a)の破線で囲まれた部分の拡大図である。
図16(c)】図16(a)および図16(b)に示す実施形態の側面図である。
図16(d)】本発明によるモジュール式カテーテルとともに使用することができる先端部の別の実施形態の斜視図を示す。
図16(e)】遠位管状モジュールのクラウン面の斜視図を示す。
図16(f)】付加的な表面特徴を伴わず取付部分の減少した表面積を示す斜視図を示す。
図17(a)】管状モジュールの周りにフィラメントが巻き付けられ、管状モジュールに取り付けられた先端部にねじが切られ、ガイドワイヤが先端部から出ている一実施形態の斜視端面図を示す。
図17(b)】図17(a)に示す実施形態の側面図を示す。
図17(c)】図17(b)に示す断面図を示す。
図18(a)】本発明によるリエントリーカテーテル血管切開先端部の一実施形態の斜視図を示す。
図18(b)】本発明によるリエントリーカテーテル血管切開先端部の別の実施形態の斜視図を示す。
図18(c)】本発明によるリエントリーカテーテル血管切開先端部の別の実施形態の斜視図を示す。
図18(d)】本発明によるリエントリーカテーテル血管切開先端部の別の実施形態の斜視図を示す。
図19(a)】本発明による、サイドポート出口を有し、上から下に向けた配向でウイングを有する血管切開先端部に連結された遠位管状モジュールの一実施形態の側面図を示す。
図19(b)】90°回転させた場合の図19(a)に示す実施形態の斜視図を示す。
図19(c)】図19(b)の破線で囲まれた部分の拡大図を示す。
図19(d)】本発明の一実施形態による、サイドポート出口を有する遠位管状モジュールの側面図を示す。
図19(e)】図19(d)に示す遠位管状モジュールの上面図を示す。
図19(f)】図19(d)および図19(e)に示す遠位管状モジュールの底面図を示す。
図19(g)】図19(d)~図19(f)の遠位管状モジュールの斜視図を示す。
図20(a)】本発明の一実施形態による、形状記憶を有する柔軟な引掛部分を有する遠位管状モジュールの側面図を示す。
図20(b)】図20(a)の遠位管状モジュールの端面図を示す。
図21(a)】本発明の別の実施形態による、材料形状記憶を用いた柔軟な曲線部分を有する遠位モジュールの側面図を示す。
図21(b)】図21(a)の遠位管状モジュールの端面図を示す。
図22】本発明の一実施形態による、材料形状記憶を用いた柔軟な曲線部分を有する遠位管状モジュールの一部の側面図を示す。
図23】管状モジュールおよび先端部を貫通するガイドワイヤによって真っ直ぐにされた曲線部分を有する遠位管状モジュールを示す断面図である。
図24】曲線部分がその曲線形状をとり始めることを可能にする、ガイドワイヤの引き抜きを示す断面図である。
図25図24に続く断面図であり、側枝アクセスに適合した曲線部分を示す。
図26】形状記憶曲線部分が側枝にアクセスする、動脈内の本発明の一実施形態による遠位管状モジュールの一部を示す断面図である。
図27】形状記憶曲線部分が側枝にアクセスする、動脈内の本発明の一実施形態による遠位管状モジュールの一部を示す動脈の断面図である。
図28(a)】大動脈および側枝動脈を有する動脈系の例示的な部分の断面図を示し、本発明による形状記憶曲線部分とガイドワイヤとを有するモジュール式カテーテルが大動脈内に配置されている。
図28(b)】ガイドワイヤが引き抜かれて、曲線部分が屈曲形状をとることを可能にする図28(a)の図を示す。
図28(c)】側枝内にアクセスするためにガイドワイヤと先端部とが整列している図28(b)の図を示す。
図28(d)】側枝に挿入されたカテーテルの先端部および側枝を通ってカテーテルの先端部から延出するガイドワイヤの側面図を示す。
図28(e)】カテーテルがガイドワイヤを介して側枝を通って前進した図28(d)の図を示す。
図29(a)】大動脈および側枝動脈を有する動脈系の例示的な部分の断面図を示し、本発明による屈曲形状の形状記憶曲線部分とガイドワイヤとを有するモジュール式カテーテルが大動脈内に配置されている。
図29(b)】カテーテルが後方に引き抜かれ、側枝の開口部に向かって先端部を曲げるようにトルクをかけられた後の図29(a)の図を示す。
図29(c)】カテーテルの先端部が側枝内にさらに前進した図29(b)の図を示す。
図29(d)】ガイドワイヤが挿入され、カテーテルがガイドワイヤを介して側枝を通って前進した後の図29(c)の図を示す。
図30(a)】大動脈と、大動脈から離れた側枝動脈と、第1の側枝から離れた第2の側枝とを有する動脈系の例示的な部分の断面図を示す。動脈系を通るカテーテルの経路を示す。
図30(b)】図30(a)の断面図を示し、本発明によるモジュール式カテーテルが第2の側枝の開口部を越えて第1の側枝を通って前進した図30(a)の図を示す。
図30(c)】ガイドワイヤが引き抜かれた後に、遠位管状モジュールの曲線部分が屈曲することを可能にしている図30(b)の断面図を示す。
図30(d)】第2の分岐部にモジュール式カテーテルの先端部と曲線部分の一部とが進入している断面図を示す。
図30(e)】ガイドワイヤを介して第2の分岐部を通って前進したカテーテルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1(a)および図1(b)を参照すると、カテーテル100は、概して近位110および遠位120の管状モジュールと呼ばれる少なくとも2つの管状モジュール110、120から形成される。各管状モジュールは、少なくとも1つの螺旋状切込み部分を有することができる少なくとも1つの部分を有する。螺旋状切込み部分は、管状モジュールの全長に沿って延びてもよく、または管状モジュールの1つ以上の部分に沿ってのみ配置されてもよい。螺旋状切込みは、連続的でもよく、または分断された螺旋状パターンを形成してもよい。特定の実施形態では、2つよりも多い管状モジュール、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20~、または最大n個の管状モジュールが互いに連結されてもよい。複数の管状モジュール、例えば、2つよりも多い管状モジュールが存在する場合、追加の管状モジュールは、近位管状モジュールの延長部として機能するか作用する。管状モジュールはハイポチューブから形成されてもよく、ハイポチューブは特定の実施形態では管状モジュールの一端に配置された模様付き切込みを含んでもよい。管状モジュールは、同じまたは異なる材料から形成されてもよく、同じまたは異なる外径または内径を有してもよい。例えば、管状モジュールは、類似の金属(類似の物理的性質、例えば、最大引張強度(UTS)、%伸び率または弾性率を有する金属)、2種類の金属、ポリマーから作製することができるか、ポリマーと金属との組合せから形成することができる。
【0028】
一実施形態では、管状モジュールは、同じまたは異なる隣接する管状モジュールの一端に配置された複数のスナップ嵌合接続部およびスナップ嵌合受け部によって、互いに接合されてもよい。
【0029】
スナップ嵌合接続部の構造は様々であってよい。例えば、一実施形態では、スナップ嵌合接続部は、ステム構造および係止構造を備える。係止構造の対辺の間で測定した場合の最も広い点での係止構造の幅は、ステムの対辺の間で測定した場合のその最も広い点でのステム構造の幅よりも大きい。係止構造の形状は様々であってよい。一実施形態では、係止構造は楕円形であるが、第2の実施形態では、その形状は円形または半円形である。正方形、長方形、台形、菱形または三角形を含む係止構造の他の形状も本発明に包含される。
【0030】
スナップ嵌合受け部は、ステム空洞部と係止空洞部とを備え、反対側の管状モジュールまたは隣接する管状モジュール上のスナップ嵌合接続部の反対側に配置される。スナップ嵌合受け部の構造は、スナップ嵌合接続部の幾何学的構造に対応する切出し像である。
【0031】
図1(a)および(b)は、カテーテル100の構造の概要を示す。図示の実施形態では、2つの管状モジュール、近位管状モジュール110および遠位管状モジュール120が存在する。本明細書で使用される場合、用語「近位」および「遠位」は、管状モジュールのハブ190への近さまたは心血管系への近さを意味する。言い換えれば、近位管状モジュールが、カテーテルの長さに沿って測定した場合に、ハブ190に比較的近く、心臓から比較的遠くに配置されるのに対して、遠位モジュールは、心臓ひいては冠動脈に対して比較的近くに配置される。しかし、これらの用語は相対位置を示すに過ぎず、管状モジュールの構造、長さ、形状または数に関して限定するものではない。
【0032】
近位および遠位管状モジュールは、類似の金属、異なる金属、ポリマー、またはポリマーと金属との組合せから作製することができる。使用され得る材料の例には、ステンレス鋼(SST)、ニッケルチタン(ニチノール)またはポリマーが挙げられる。使用され得る他の金属の例には、超弾性ニッケルチタン、形状記憶ニッケルチタン、Ti-Ni、ニッケルチタン、約55~60重量%のNi、Ni-Ti-Hf、Ni-Ti-Pd、Ni-Mn-Ga、300~400シリーズ、例えば304、316、402、440のSAEグレードのステンレス鋼(SST)、MP35Nおよび17-7析出硬化系(PH)ステンレス鋼、他のバネ鋼もしくは他の高張力材料または他の生体適合性金属材料が挙げられる。好ましい一実施形態では、材料は超弾性または形状記憶ニッケルチタンであり、別の好ましい実施形態では、材料はステンレス鋼である。
【0033】
本発明の近位および遠位モジュールは、全体として、または選択された部分に限り、一般に「形状記憶合金」と呼ばれる超弾性合金を含むことができる。そのような形状記憶合金から作製された要素は、それらが普通の金属から作製された場合に永久変形するであろう程度まで変形された後に、それらの元の形状を回復する能力を有する。本発明に有用な超弾性合金には、Elgiloy(登録商標)およびPhynox(登録商標)バネ合金(Elgiloy(登録商標)合金は、ペンシルベニア州レディングのCarpenter Technology Corporationから入手可能、Phynox(登録商標)合金は、フランス、アンフィーのMetal Imphyから入手可能)、Carpenter Technology corporationおよびペンシルベニア州ラットローブのLatrobe Steel Companyから入手可能なSAEグレード316ステンレス鋼およびMP35N(ニッケルコバルト)合金、ならびにカリフォルニア州サンタ・クララのShape Memory Applicationsから入手可能な超弾性ニチノールが挙げられる。これらの合金のうちの1つ以上に関する詳細情報は、米国特許第5,891,191号に開示されている。
【0034】
用語「超弾性」は、比較的低い引張強度を有し、比較的低い温度で安定であるマルテンサイト相と、比較的高い引張強度を有し、マルテンサイト相よりも高い温度で安定であるオーステナイト相との少なくとも2つの相を含む超弾性の性質を有する合金を指す。超弾性特性は、一般に、金属を潰し変形させ、ニチノールをマルテンサイト相に変化させる応力を生じさせることによって金属を変形させることを可能にする。さらに正確には、マルテンサイト相からオーステナイト相への変態が完了する温度以上の温度で超弾性特性を示すニチノールなどの金属の試験片に応力が加えられると、試験片は、合金にオーステナイト相からマルテンサイト相への応力誘起相変態が起こる特定の応力レベルに達するまで弾性的に変形する。相変態が進行するにつれて、合金では歪みが著しく増加するが、対応する応力の増加はほとんどまたは全く伴わない。オーステナイト相からマルテンサイト相への変態が完了するまで、応力は本質的に一定のままであるが、歪みは増加する。その後、さらに変形を引き起こすためには、さらに応力を増加させる必要がある。マルテンサイト金属は、さらに応力を加えるとまず弾性的に降伏し、次に永久的な残留変形を伴って可塑的に降伏する。永久変形が生じる前に試験片にかかる負荷が取り除かれると、マルテンサイト試験片は弾性的に回復し、オーステナイト相に戻る。応力の減少は、まず歪みを減少させる。応力の減少がマルテンサイト相がオーステナイト相に戻るレベルに達すると、試験片の応力レベルは本質的に一定のままである(しかし、オーステナイト相に完全に戻るまでは、オーステナイト結晶構造がマルテンサイト結晶構造に変態する一定の応力レベルよりも低い)。すなわち、対応する応力がごくわずかに減少すると歪みが著しく回復する。オーステナイトに完全に戻った後、さらに応力が減少することにより弾性歪みが減少する。負荷がかかると比較的一定の応力で著しい歪みを生じ、負荷が取り除かれると変形から回復するこの能力は、一般に超弾性と呼ばれる。
【0035】
上述のように、好適な超弾性合金には、本質的に49~53原子%のNiからなるニッケルチタン(ニチノール)、本質的に38.5~41.5重量%のZnからなるCu-Zn合金、1~10重量%のX(X=Be、Si、Sn、AlまたはGa)を含むCu-Zn-X合金、および本質的に36~38原子%のAlからなるNi-Al合金が挙げられる。ニチノールが特に好ましい。ニチノールの機械的性質は、Ti-Ni合金の一部を0.01~30.0原子%の別の元素X(X=Cu、PdまたはZr)で置き換えること、または冷間加工の縮小率および/または最終熱処理の条件を選択することによって、所望通りに変えることができる。使用される超弾性合金の座屈強度(負荷が増加した際の降伏応力)は5~200kg/mm(22℃)、好ましくは8~150kg/mmであり、回復応力(負荷が減少した際の降伏応力)は3~180kg/mm(22℃)、好ましくは5~130kg/mmである。あるいは、管状モジュールはポリマーから形成されてもよい。ポリマーの例には、ポリイミド、PEEK、ナイロン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ラテックス、HDHMWPE(高密度高分子量ポリエチレン)および熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0036】
管状モジュールは、例えば、超弾性金属のパイプを形成し、次いで、ノッチまたは穴が形成されることになっているパイプの部分を除去することによって作製されてもよい。レーザ(例えば、YAGレーザ)、放電、化学エッチング、機械的切断、またはこれらの技術のいずれかを組み合わせて使用することによって、ノッチ、穴または切込みをパイプに形成することができる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるMoriuchiらの米国特許第5,879,381号を参照されたい。
【0037】
加熱による変形、および所定の形状、例えば曲線形状への変形の後、管状モジュールを冷却することができる。次いで、管状モジュールをデリバリーシステム内で変形状態に拘束して、動脈内への挿入を容易にする。超弾性管状モジュールは、管状モジュールに対する物理的拘束を取り除くと、その元の変形していない形状、すなわち曲線に戻ることができる。
【0038】
一実施形態では、近位管状モジュール110は316SSTから作製され、遠位管状モジュール120は17-7SSTから作製される。別の実施形態では、近位管状モジュール110は17-7SSTから作製され、遠位管状モジュール120はニチノールから作製される。近位管状モジュール110または遠位管状モジュール120のいずれも、同様に材料の編組組成物から作製されてもよい。他の実施形態では、近位管状モジュール110または遠位管状モジュール120のいずれも、ケーブルまたは編組ワイヤから作製されてもよい。
【0039】
各管状モジュール110、120は、連続的および不連続的な螺旋状切込みパターンの両方を含むいくつかの異なる種類の螺旋状切込みパターンを有してもよい。同じまたは異なる管状モジュール上に、異なる螺旋状切込みパターンが分布されてもよい。
【0040】
螺旋状切込み部分は、押し込み性、耐キンク性、回転応答性のための軸方向トルク伝達、および/または破損までのトルクによって測定した場合、屈曲柔軟性の段階的な移行をもたらす。例えば、螺旋状切込みパターンは、管状モジュールの1つ以上の領域の柔軟性を増加させるように変化するピッチを有してもよい。螺旋状切込みのピッチは、2つの隣接するねじ山の同じ半径方向位置にある点の間の距離によって測定することができる。一実施形態では、螺旋状切込みがカテーテルの近位位置から遠位端へと進むにつれてピッチが増大してもよい。別の実施形態では、螺旋状切込みがカテーテル上の近位位置からカテーテルの遠位端へと進むにつれてピッチが減少してもよい。この場合、カテーテルの遠位端は比較的柔軟性であり得る。螺旋状切込みのピッチおよび切込みならびに切り込まれていない経路を調整することによって、カテーテル、すなわち管状モジュールの押し込み性、耐キンク性、トルク、柔軟性および耐圧縮性が調整されてもよい。このように、異なる剛性または柔軟性を有する管状モジュールを組み合わせることができる。例えば、比較的剛性の管状モジュールと、比較的柔軟な管状モジュールとを組み合わせることができる。この組合せと、比較的剛性または比較的柔軟な管状モジュールとをさらに組み合わせることができる。
【0041】
様々な剛性(逆に、柔軟性)を有する管状モジュールを組み合わせることによって、特に血管の解剖学的構造が蛇行している場合に、または慢性完全閉塞(CTO)など、血管系の内腔が部分的もしくは完全に損なわれているか閉塞している場合に、カテーテルが多種多様な血管系内を行き来することができる。モジュール構造はまた、管状モジュールのルーメンのキンクまたは狭窄または崩壊を伴うことなく、カテーテルの長さにわたってトルクを効果的に伝達する能力をもたらす。様々な剛性または柔軟性を有する管状モジュールのこの組合せにより、カテーテルの柔軟性をその長さにわたって調整することが可能になる。さらに、様々な剛性によって、モジュール部分の柔軟性をより剛性の高いものからより柔軟性の高いものへと変化させてから、再び剛性へと戻すことができる。カテーテルの長さにわたって柔軟性/剛性をこのように調整することによって、カテーテルが様々な解剖学的内腔内へ、および内腔閉塞部を横切って前進し、機能することが可能になる。
【0042】
カテーテルの長さにわたる柔軟性/剛性の調整は、いくつかの方法で達成することができる。例えば、螺旋状切込みパターン変数(ピッチ、分断)を変化させ、螺旋状切込みパターン間で推移させることによって、管状モジュールの柔軟性/剛性を制御してもよい。さらに、螺旋状切込みパターンは、管状モジュールが屈曲しているか湾曲している際に、ルーメンの断面径を維持することを可能にする。異なる切込みパターンを有する螺旋状切込み部分が、管状モジュールの長さに沿って分布されてもよい。螺旋状切込みパターンは、モジュールの長さに沿って連続的または不連続的であってよい。例えば、モジュールの長さに沿って1、2、3、4、5、6、7~n個の螺旋状切込み部分があってもよい。螺旋状切込み部分は連続的でも分断されてもよい。各部分内に一定の切込みパターンが存在してもよいが、管状モジュール内の様々な部分にわたって、例えばピッチに関して、切込みパターンが変化してもよい。各部分はまた、特定の部分内に可変ピッチパターンを含んでもよい。各螺旋状切込み部分は、例えば、約0.05mm~約10mmの範囲内、例えば、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mmなどの一定のピッチを有してもよい。ピッチはまた各部分内で異なっていてもよい。異なる螺旋状切込み部分のピッチは同じでも異なっていてもよい。あるいは、カテーテルは、カテーテルの長さに沿って連続的に変化する螺旋状切込みパターンを有する管状モジュールから形成されてもよい。モジュール内の螺旋状切込み部分の向きまたは巻き方もまた、螺旋状切込み部分内で異なっていてもよい。
【0043】
螺旋状切込みの幅は、例えば、約1ミクロン~約100ミクロンの範囲で変えることができる。
【0044】
分断された螺旋状切込み部分では、螺旋の各旋回または回転が特定の数の切込み(Nc)(例えば、1.5、2.5、3.5、4.5、5.5など)を含むように、分断された螺旋状パターンを設計することができる。Ncは、2、3、4、5~nなどの整数、ならびに2.2、2.4、2.7、3.1、3.3などの他の実数にすることもできる。所与のNcでは、各回転が、範囲αの切込みのない部分に隣接する範囲βの切込み部分をそれぞれ備えるNc個の反復パターンを有するように、切込みのない範囲αおよび切込み範囲βをα=(360-(β×Nc))/Ncとして選択することができる。例えば、Nc=1.5、2.5および3.5では、以下の表がαおよびβについて様々な実施形態の選択例を示す。
【表1】
【0045】
図1(a)は、2つの管状モジュール、すなわち近位管状モジュール110および遠位管状モジュール120が互いに接合されているカテーテルの一実施形態を示す。図示の実施形態では、先端部170が、遠位管状モジュール120の遠位端でクラウン160に取り付けられている。2つの管状モジュールは継手130で互いに接続される。継手130は、図1(b)に示すようにスナップ嵌合接続部140とスナップ嵌合受け部150とによって形成され、スナップ嵌合接続部140は、スナップ嵌合受け部150内に係止されるかスナップ嵌めされる。管状モジュールは中空であり、内側ルーメンおよび外壁を有する。カテーテル100の一端にハブ190を配置することができ、中間管状部分180がハブ190と近位管状モジュール110とを接続する。任意の種類のハブをカテーテルとともに使用することができる。
【0046】
図2(b)~(i)は、図2(a)に示す近位および遠位管状モジュールの様々な部分に使用され得る管状モジュールの螺旋状切込み部分の実施形態を示す。遠位管状モジュール120は、分断された螺旋状切込み部分210(図2(b)に拡大して示す)、220(図2(c)に拡大して示す)および230(図2(d)に拡大して示す)を備える。近位管状モジュール110は、分断された螺旋状切込み部分240(図2(f)に拡大して示す)、250(図2(g)に拡大して示す)、260(図2(h)に拡大して示す)および270(図2(i)に拡大して示す)を備える。近位管状モジュールと遠位管状モジュールとの間の継手130を図2(e)に示す。図示の実施形態では、スナップ嵌合接続部およびスパン嵌合受け部は管状モジュールの外面と面一であり、すなわち、スナップ嵌合接続部および受け部の外側部分は、管状モジュールの外径を越えて突出していないことに留意されたい。
【0047】
図2(a)~図2(i)に示す実施形態では、分断された螺旋状切込みは不連続的なものとして表されている。これらの螺旋状切込みの一実施形態の詳細図が図3に示されており、図3は、分断された螺旋状切込みパターンを有する広げられた(または平坦化された)管状モジュールの一部を示している。管状モジュールの螺旋状切込み管部分は、分断された螺旋状切込み経路幅330によって実質的に画定され分離された隣接する旋回310、320を有する単一の螺旋状リボン部分を示す。螺旋状切込み経路幅330は、開放または切込み部分340および切込みのない部分350を交互に含む。螺旋状経路幅330は、切込み部分340と切込みのない部分350とから交互に構成され、管状部分の円周に対して角度が付けられている(言い換えれば、図3に示すピッチ角φは90°未満である)。
【0048】
図3に示すように、螺旋状に配向された切込みのない部分350はそれぞれ弧状の範囲「α」を有し、螺旋状に配向された切込み部分はそれぞれ弧状の範囲「β」を有する。角度αおよびβは、度で表すことができる(各完全な螺旋状の旋回は360°である)。切込みのない部分は、隣接する切込みのない部分350が長手方向軸Lに平行な方向に沿って互いに軸方向に整列しないように(または「互い違いになるように」)分布させることができる。図3に示すように、分断された螺旋状切込み幅330の一旋回おきの切込みのない部分350は、軸方向に整列させることができる。
【0049】
各管状モジュールの螺旋状切込みパターンは、連続的な螺旋状切込み部分、分断された螺旋状切込み部分、または両方の種類の螺旋状切込みパターンの混成から形成することができ、様々なパターンが任意の順序で配置される。分断された切込み螺旋状モジュールは、屈曲構成にある間、小さな半径の鋭い屈曲であっても、同心のルーメン領域を維持する能力を有する。同心のルーメンを維持する能力により、ルーメンを変形させることなく、管状ルーメン内のいずれの方向でも滑らかなワイヤ移動が可能になる。さらに、螺旋状切込み区画にニチノールなどの超弾性材料を使用することにより、ルーメンを永久変形させることなく、様々な血管経路を通して区画が急な曲線で屈曲することが可能になる。
【0050】
各管状モジュールの長さは様々であってよい。例えば、近位管状モジュール110の長さは、約100cm~約140cm、約120cm~約140cm、約125cm~約135cmまたは約50cm~100cmの範囲であってよい。遠位管状モジュール120の長さは、約15cm~約35cm、約10cm~約25cm、約20cm~約45cm、約30cm~約50cm、約5cm~約15cmまたは約1~5cmの範囲であってよい。
【0051】
特定の実施形態では、遠位管状モジュールはマイクロカテーテルに形成されてもよい。マイクロカテーテルは、ガイドワイヤを介して遠隔血管系にナビゲートすることができる。マイクロカテーテルは、病変部を横切り、病変部を横切ってガイドワイヤおよび/または造影剤を送達し、続いて、例えば、病変部を横切って介入治療要素を展開し、血流を直ちに回復させることができ得る。介入治療要素は、ステント、コイル、フローダイバーター、血流回復要素、血栓除去要素、回収要素、吸引器またはスネアであってよい。
【0052】
図4(a)~(b)および図5(a)~(b)は、本発明による管状モジュールを連結するために使用することができるスナップ嵌合接続部およびスナップ嵌合受け部の2つの異なる好ましい実施形態を示す。実施形態は、管状モジュールが平面的に平坦化されている二次元表示で示されている。図4(a)では、スナップ嵌合接続部140およびスナップ嵌合受け部150によって、この実施形態ではSSTから形成されている近位管状モジュール110が、この実施形態ではニチノールから形成されている隣接する遠位管状モジュールに継手130で接続されている。スナップ嵌合接続部140およびスナップ嵌合受け部150に加えて、スナップ嵌合接続部/スナップ嵌合受け部140、150の両側に2つの安定化要素450、451が配置されてもよい。図示の実施形態では、安定化要素は長方形の形状であるが、安定化要素の形状は長方形の形状に限定されない(例えば台形、正方形または三角形)。
【0053】
2つの隣接する管状モジュールを接続する複数のスナップ嵌合接続部およびスナップ嵌合受け部が1、2、3、4、5、6、7、8、9、10~n個の範囲で存在してもよい。スナップ嵌合接続部および/またはスナップ嵌合受け部は、近位および/または遠位管状モジュールのいずれかに配置することができる。例えば、スナップ嵌合接続部が遠位管状モジュール上にあり得、スナップ嵌合受け部が近位管状モジュール上にあり得るか、あるいは、スナップ嵌合接続部が近位管状モジュール上にあり得、スナップ嵌合受け部が遠位管状モジュール上にあり得る。スナップ嵌合接続部とスナップ嵌合受け部とは、隣接する管状モジュール上で対を形成する。
【0054】
安定化要素は、管状モジュールが独立して回転するのを防ぎ、同心整列を維持し、カテーテルの長さに沿って近位および遠位モジュールを横切るトルクの伝達を可能にすることができる。それによって、モジュール式カテーテルのねじれおよび剪断応力の管理が改善される。材料の剪断応力と歪みとの比は、モジュールの弾性定数(G)である。加えられたトルクが材料の内部応力によって均衡化される場合、剪断応力から生じる断面上のトルクは以下の通りである。
【0055】
トルク(T)=Gθ/L×J
式中、θは回転角であり、Lは部分の長さであり、Jは「断面二次極モーメント(polar second moment of area)」として知られている。
【0056】
カテーテルなどの中空シャフトに関して、Jの式は以下の通りである。
【0057】
J=π(D-d)/32
式中、Dおよびdはカテーテル(すなわち管状モジュール)の外径および内径である。これらの方程式は、カテーテルに沿って安全に伝達されて過度のねじれを防ぐことができるトルクの量の指標をもたらす。
【0058】
安定化要素は、反対側の管状モジュール上の対応する溝460、461に嵌合する舌片要素450、451として実装することができる。またこの実施形態では、スナップ嵌合接続部140は、遠位管状モジュール120上に形成された片持ち継手を形成する。図示の実施形態では、スナップ嵌合接続部140は、ステム部分420によって近位管状モジュールの本体に接続された円形係止部分410を含む。近位管状モジュール110は、円形部分410を受容するための円形部分430およびステム部分420を受容するための長方形440部分を含む空間または受け部である対応するスナップ嵌合受け部150を含む。図4(b)は、図4(a)の2つの管状モジュール110、120および継手130を分解図で示す。スナップ嵌合受け部150にスナップ嵌合接続部140を挿入することによって、管状モジュールが互いに接合される。
【0059】
図5(a)および(b)は、スナップ嵌合継手の別の実施形態を示す。この実施形態では、スナップ嵌合接続部510は2つのアーム530、540を有し、各アーム530、540は、一端に配置されたそれぞれ三角形または台形形状のヘッド(矢印または返し形とも呼ばれる)550、560を有する。アーム530、540は弾力性を有し、管状モジュールの長手方向軸570に対して横方向に枢動する余裕を有する。図5(b)では、スナップ嵌合接続部510は、アーム530、540が管状モジュールの長手方向軸570に対して横方向に変位している開位置に示されている。アーム530、540は、スナップ嵌合受け部520に挿入されると内側に枢動し、アームと管状モジュールの長手方向軸との間の角度が減少する。挿入後、三角形状のヘッド550、560は、図5(a)に示すように再び外側に移動するか撓み、スナップ嵌合受け部520にスナップ嵌合接続部510を固定する。他の実施形態では、ねじり継手および環状スナップ継手を含むスナップ嵌合継手用の他の設計を使用することができる。
【0060】
図6(a)~図6(j)は、図4(a)および(b)に示す実施形態の様々な斜視図を示し、ここで近位管状モジュール110および遠位管状モジュール120は、安定化舌片および溝要素450、460とともに、スナップ嵌合接続部140およびスナップ嵌合受け部150を使用して互いに連結されている。図6(a)~図6(j)に示す実施形態では、安定化要素450およびスナップ嵌合接続部140は、単一の管状モジュール120の一端に配置されている。他の実施形態では、スナップ嵌合接続部140および安定化要素450は、複数の管状モジュールに配置され使用される。あるいは、各管状モジュールは、様々な異なるスナップ嵌合接続部を含むことができる。例えば、図4(a)に示すスナップ接続部140は、図5(b)に示すスナップ接続部510と組み合わせることができる。さらに、図6(g)に示す実施形態は、継手130全体またはその一部のみのための管状カバー445を示し、管状カバー445は、ポリマーまたは他の材料、例えば金属から作製することができる。
【0061】
上述のように、遠位または近位管状モジュール110、120のいずれかに配置することができるスナップ嵌合接続部140は、近位または遠位管状モジュールのいずれかの一端に片持ち継手610で取り付けることができるステム構造420(図6(c))から形成されてもよい。取付部は、弾性変形可能な片持ち継手610を形成し、図6(l)にさらに示すように、その周りで、ステム構造420および係止構造410が、第1または第2の管状モジュールの長手方向軸620に平行な線に対して約0°~約90°の範囲の角度θで屈曲することができる。図6(l)~(o)は、持ち上げられた位置にある片持ち継手610のスナップ嵌合接続部410の平坦図(管状モジュールが切断され、広げられ、平らに置かれている)を示す。図6(l)は、持ち上げられた片持ち継手の側面図または矢状図である。図6(m)は、管状モジュールの外面を斜めから見た継手を示す。図6(n)は上面外部から見た継手を示し、図6(o)は管状モジュールの内面から見た継手を示す。図6(p)~(s)は、スナップ嵌合接続部140が持ち上げられた位置にある片持ち継手610の斜視図を示す。
【0062】
スナップ嵌合接続部140に加えて、少なくとも1つの安定化要素は、管状モジュールの1つに450のような舌片要素と、接続モジュールに460のような溝要素とを備える。安定化要素450は、近位または遠位管状モジュール110、120の端部の円周の周りでスナップ接続部に対して横方向に配置されてもよい(舌片要素451および溝要素461を含む第2の安定化要素も、いくつかの図に示されている(例えば図6(s))。安定化要素は、限定するものではないが、長方形、台形、正方形、円形または三角形を含む様々な異なる形状をとってもよい。機能的には、安定化要素450の役割は図6(d)~(j)に示されている。スナップ嵌合接続部およびスナップ嵌合受け部140、150が互いに接合されると、安定化要素の形状は、近位および遠位管状モジュール110、120が、管状モジュールが接続された継手130で円周方向に回転するのを防止するように機能する。1つの安定化要素があってもよく(図6(e))、あるいは2つ以上の安定化要素(図6(j))、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10~n個までの安定化要素があってもよい。安定化要素は、カテーテルの長手方向の長さに沿った力(トルク)の伝達を可能にする。
【0063】
2つの管状モジュールを互いに固定するために使用されるスナップ嵌合接続部の形状は様々であってよい。例えば、一実施形態では、近位管状モジュール110のスナップ嵌合接続部150は、ステム構造440とともに楕円形の形態の受け部430を有し、スナップ嵌合接続部140は、楕円形の形態の相補的形状410と、スナップ嵌合受け部150に直接嵌合するステム構造420とを有する。この接合は、管状モジュール110、120が互いに接続されている図6(d)~図6(j)、および2つの管状モジュールが分解図で示されているか、互いに分離されている図6(a)~図6(b)に示されている。図6(d)~(j)は、いくつかの異なる図からスナップ嵌合継手を示す。図6(d)~(j)では、安定化要素450およびスナップ接続部140は、遠位管状部材の周りに互いに対して横方向に配置されている。
【0064】
スナップ嵌合接続部のための他の形状は、個々にまたは他の形状と組み合わせて、半円形、長円形、三角形、台形または不規則を含めて本明細書に包含される。これらの設計では、対辺の間で測定された係止構造410の最大幅は、ステム構造420の幅よりも大きい。この構成は、スナップ嵌合受け部内にスナップ嵌合接続部140を固定し、まずスナップ嵌合接続部を外すことなくそれらが互いから引き離されるのを防止する。
【0065】
遠位管状モジュール120のスナップ嵌合接続部140の縁部および近位管状モジュール110のスナップ嵌合受け部150の縁部は、図6(t)に示すように、スナップ嵌合接続部およびスナップ嵌合受け部が確実に接続され、患者に挿入された後に分離したり外れたりしないように面取りされてもよい。面取りの角度θは、近位および遠位管状モジュールの長手方向軸に沿って形成された線に対して約0°~約90°の範囲であってよい。角度θは、約5°~約90°、約20°~約70°または40°~約60°の範囲であってよい。スナップ嵌合接続部およびスナップ嵌合受け部はまた、接着剤、はんだ付け、レーザ溶接、リング内への溶接もしくは封入、または継手を覆うジャケット(管状)の固定によって接合することができる。これらの改造により、スナップ嵌合が面外に持ち上がるのを防止する。
【0066】
本発明の実施形態によるスナップ嵌合接続部とスナップ嵌合受け部との間の継手の顕微鏡写真を示す図7(a)~(f)に示すように、スナップ嵌合接続部140とスナップ嵌合受け部150との間の継手は面一であってよく、すなわち、スナップ嵌合接続部の表面は、スナップ嵌合受け部の外面(外径)よりも上には突出せず、管状モジュールの外面と同じ高さである。
【0067】
図8(a)~(h)は、近位管状モジュール110と遠位管状モジュール120との間の継手の種類の他の実施形態を示す。これらの実施形態では、近位および遠位管状モジュール110、120は、継手135で互いに連結する突出部810、830および受け部820、840を含む連結形状を有する。図8(a)~(d)に示す実施形態では、突出部810、830および受け部820、840は、波、正弦波、蛇行または曲線要素の形態をとる。別の実施形態、図8(e)~(h)では、連結形状137は、三角形またはジグザグパターンの形態の突出部815、835および受け部825、845を備える。使用される突出部および受け部の連結形状はいずれも同じであり得るか、あるいは近位および/または遠位管状モジュール上に複数の種類の突出部および受け部が存在してもよい。
【0068】
一般に、実施形態は、1つ以上、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10~n個の突出部および受け部を含むことができる。例えば、図8(a)~(h)に示す実施形態では、3つの突出部と対応する受け部とが存在する。機能的には、突出部、例えば810、830および受け部、例えば820、840は、近位および遠位管状モジュール110、120が、管状モジュールが接続された継手で円周方向に回転するのを防止する。管状のジャケットによって連結形状の継手を覆って、継手を固定するのを助けることができる。
【0069】
図9(a)~(c)の断面図に示すように、近位および遠位管状モジュール110、120は、同じまたは異なる内径または外径を有してもよい。近位管状モジュール110または遠位管状モジュール120の外径は、約0.5mm~約1mmの範囲であってよい。近位管状モジュール110または遠位管状モジュール120の内径は、約0.10mm~約3.5mmの範囲であってよい。
【0070】
図9(a)に示すように、近位管状モジュール110の内径910と遠位管状モジュール120の内径920とは、同じでもほぼ同じでもよい。さらに、近位管状モジュール110の外径930と遠位管状モジュール120の外径940とは、同じでもほぼ同じでもよい。
【0071】
あるいは、図9(b)に示すように、近位管状モジュール110および遠位管状モジュール120は、同じ内径911、921を有してもよいが、それぞれ異なる外径931、941を有する(図9(b))。この特定の実施形態では、近位管状モジュール110は、遠位管状モジュール120の外径941よりも大きい外径931を有する。これは、図10(a)および図10(b)に示す実施形態で、さらに説明される。この実施形態では、近位管状部材110と遠位管状部材120との間の継手では、近位管状部材110および遠位管状部材120は、それらの外径931、941の差により、互いに対して90°の角度を形成する。図10(a)は、遠位管状モジュール120の外径941と比較した場合の近位管状モジュール110の外径931の差を示す。図10(b)は、図10(a)の断面図を示す。ここに示す実施形態では、近位細管911と遠位管状モジュール921の両方の内径は同じである。
【0072】
さらに別の実施形態では、近位管状モジュール110は、遠位管状モジュール120の内径922および外径942それぞれよりも大きい内径912および外径932の両方を有することができる(図9(c))。この差は図10(c)および図10(d)にさらに示されており、これらは図9(c)に示す実施形態の部分および拡大断面図を示している。この実施形態では、近位管状部材110と遠位管状部材120との間の継手130では、継手130での遠位管状モジュール120の内径922および外径942は、近位管状モジュール110の内径912および外径932と最初は同じである。継手では、遠位管状モジュール120の内径922および外径942が近位管状モジュール110の内径912および外径932よりも小さくなるまで、遠位管状モジュール120の内径922および外径942の大きさが減少する。内径922および外径942の大きさの減少は、線形または非線形であってよい。
【0073】
近位管状モジュール110または遠位管状モジュール120は、その長さにわたって変化する直径、例えばテーパ状構成を有することができる。任意の方向にテーパ成形することができるか、管状モジュールの一部に沿ってのみテーパが存在してもよい。
【0074】
近位管状モジュール110および遠位管状モジュール120の壁厚は、例えば、遠位先端部に向かって柔軟性を増大させるように変化してもよい。図9(a)に示す実施形態では、近位管状モジュール110の壁厚950は、遠位管状モジュール120の壁厚960と同じでよい。図9(b)および図10(b)に示す実施形態では、近位管状モジュール110の壁厚951は、遠位管状モジュール120の壁厚961よりも大きい。しかし、この実施形態では、近位および遠位管状モジュール110、120の内径911、921が同じままであるのに対して、近位および遠位管状モジュール110、120の外径931、941は異なっている。図9(c)、図10(c)および図10(d)では、近位管状モジュールの壁厚952は、遠位管状モジュールとの継手でテーパ状になっている。同様に、遠位モジュールの壁厚962は、近位管状モジュールとの継手でテーパ状になっている。壁の厚さはテーパ状であってよい。例えば、壁厚952、962は、継手130から離れるにつれて大きくなり、互いに同じでも異なってもよい。1つの管状モジュールからの内径または外径のいかなる変化にも、1つの管状モジュールから次の管状モジュールへのテーパ状であってよい移行を組み入れる。
【0075】
材料、および柔軟性に関する構造的要件に応じて、任意の点での管状モジュールの壁厚は、例えば、約0.05mm~2mm、例えば、0.05mm~約1mm、約0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mmなど、様々であってよい。管状モジュールの内径は、例えば、約0.1mm~約2mm、または約0.25mm~約1mm、例えば、約0.2mm、約0.3mm、約0.4mm、約0.5mm、約0.6mm、約0.7mm、約0.8mm、約0.9mm、約1mm、約2mm、約2.5mm、約3mmの厚さなど、様々であってよい。管状モジュールの外径もまた、例えば、約0.2mm~約3mm、例えば、約0.2mm、約0.3mm、約0.4mm、約0.5mm、約0.6mm、約0.7mm、約0.8mm、約0.9mm、約1mm、約1.1mm、約1.2mm、約1.3mm、約1.4mm、約1.5mm、約1.6mm、約1.7mm、約1.8mm、約1.9mm、約2.0mm、約2.5mm、約3mmの厚さを含め、様々であってよい。管状モジュール壁の壁厚、内径および外径はそれぞれ、管状モジュールの長さにわたって一定であるか、管状モジュールの長さに沿って変化してもよい。
【0076】
管状モジュール間の継手は、ポリマーなどのジャケットまたはスリーブによって被覆されるか覆われてもよい。図10(a)~図10(d)は、コーティングが2つの別個の部分、近位管状モジュール110の遠位端、および継手130を覆うコーティング1010と、遠位管状モジュール120の遠位部分を覆うか被覆する第2のコーティング1020とを備える実施形態を示す。コーティング1010、1020は、同じでも異なってもよい。他の実施形態では、単一のコーティング(すなわち、ジャケットコーティングまたはスプレーコーティング)を使用することができる。このジャケットまたはスリーブはさらに、継手の要素を互いに接合し、近位管状モジュール110および遠位管状モジュール120が互いに分離するのを防止する。カテーテル100全体またはカテーテル100の一部のみ、例えば、近位または遠位管状モジュールを被覆することができる。コーティングまたはジャケットは、カテーテルの長さに沿って流体用の導管を提供することができる。コーティングはまた、2つの管状モジュールが互いに接続されている継手130のみを覆うように制限されてもよい。あるいは、リングによって継手を覆って、継手130を固定することができる。図10(e)および図10(f)に概略的に示すように、継手はまた、接続された管状モジュールをしっかり覆い接合する圧着金属によって覆われてもよい。図10(e)は圧着金属1035によって覆われた継手135を示し、図10(f)は圧着金属1036によって覆われた継手137を示す。
【0077】
さらに、近位および遠位管状モジュールの内壁、すなわちルーメンは、管状モジュールを保護し、ガイドワイヤおよびバルーンなどの追加の器具装置をカテーテルの管を通して遠位位置まで搬送するのを容易にする内側ライニングによって被覆することができる。内側ライニングは、近位または遠位管状モジュールの一部に沿って延びることができるか、管状モジュールの全長にわたって延びることができる。
【0078】
ジャケットおよび内側ライニングは、例えば、多層の単一の共押出ポリマー管状構造によって管壁を囲み、管状構造を熱収縮させるか、浸漬塗布法を介して管壁を被覆することによって、ポリマーから作製することができる。ポリマージャケットの材料は、ナイロン、ポリエーテルブロックアミド、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(フッ化エチレンプロピレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)またはPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)であってよい。さらに、遠位管部分120(またはカテーテル100の全長)は、親水性ポリマーコーティングによって被覆されて、潤滑性および追従性(trackability)を向上させてもよい。親水性ポリマーコーティングは、限定するものではないが、高分子電解質および/または非イオン性親水性ポリマーを含むことができ、高分子電解質ポリマーは、ポリ(アクリルアミド-コ-アクリル酸)塩、ポリ(メタクリルアミド-コ-アクリル酸)塩、ポリ(アクリルアミド-コ-メタクリル酸)塩などを含むことができ、非イオン性親水性ポリマーは、ポリ(ラクタム)、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリウレタン、アクリル酸およびメタクリル酸のホモポリマーおよびコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、シナピン酸無水物系コポリマー(snapic anhydride based copolymer)、ポリエステル、ヒドロキシプロピルセルロース、ヘパリン、デキストラン、ポリペプチドなどであってよい。例えば、米国特許第6,458,867号および米国特許第8,871,869号を参照されたい。浸漬塗布法によって、または管の外面および内面にコーティングをスプレーすることによって、コーティングを施すことができる。
【0079】
スプレーコーティング法では、ノズル装置を使用して装置の表面にコーティング製剤が塗布される。この装置は、コーティング製剤を収容するためのチャンバと、チャンバと流体連通する開口部とを有し、開口部を通してコーティング製剤を分注し、表面に堆積させることができる。カテーテルの管状モジュールの表面にコーティング製剤を塗布するために、ノズル装置のチャンバに配合物を入れ、導体を用いて高電圧を用いて帯電させる。チャンバ内のコーティング製剤が帯電すると、導体と同じ電荷を帯びる。その結果、配合物と導体とは互いに反発する。この反発力により、ノズルの開口部を通してコーティング製剤を放出して、液滴の流れを作り出す。コーティング製剤を噴霧するために、追加のガス源を使用することができる。
【0080】
管状モジュール110、120の一方または両方は、フィラメント1100をさらに含むことができる。図11(a)~図11(e)は、遠位管状モジュール120の周りに巻き付けられたフィラメント1100を描いている。図11(a)~図11(c)では、フィラメント1100は遠位管状モジュール120の周りに螺旋状に巻き付けられている。図11(a)および図11(b)は、カテーテル、すなわち管状モジュールを真っ直ぐな構成で示し、図11(c)は、カテーテル、すなわち管状モジュールを湾曲した構成で示す。一般に、フィラメント1100は、遠位管状モジュール120の外面に配置され、遠位管状モジュール120の全部または一部を取り囲む。フィラメント1100は、遠位管状モジュール120の周りを螺旋状に進み、管状モジュールの外面に螺旋構造を形成する。特定の実施形態では、近位管状モジュールの周りに螺旋状フィラメントを巻き付けることができる。フィラメントは、管状モジュールの周りに時計回りまたは反時計回りに巻き付けられてもよい。
【0081】
フィラメント1100は、様々な異なる方法で管状モジュールに接着するか取り付けることができる。一実施形態では、フィラメント1100は、管状モジュールにしっかりと連結され、その周りの1つ以上のバンドまたはカバーと管状モジュールとを適合させる。他の実施形態は、管状モジュールの中または上にフィラメントを楔で留めるか、引っ掛けるか、取り付けるか、接合するか、接着することを含むことができる。図11(a)は、遠位管状モジュール120にフィラメント1100をしっかりと固定するバンド1102、1104を示す。さらに、いくつかの実施形態では、管状モジュールのうちの1つ以上を覆うジャケットは、フィラメント1100も同様に覆う。このカバーは、管状モジュールに対してフィラメントを定位置にしっかりと固定する。
【0082】
ジャケットの上に滑らかなコーティングまたはフィルムを追加して、血管を通るカテーテルの移動を容易にしてもよい。滑らかなコーティングは、例えば、シリコーンまたはヒドロゲルポリマーなど、例えば、ビニルポリマー、ポリアルキレングリコール、アルコキシポリエチレングリコールまたは未架橋ヒドロゲル、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)のポリマーネットワークから構成することができる。
【0083】
図11(d)および図11(e)などの他の実施形態では、フィラメント1100は、管状モジュールのうちの1つ以上のコーティング1020に螺合されている。図11(d)および図11(e)は、遠位管状モジュール120の外面に取り付けられたフィラメントの断面図を示す。図11(d)および(e)に示すように、フィラメント1100の断面図は円形であってよい。あるいは、フィラメント1100の断面は、異なる形状、例えば、正方形、長方形、三角形、六角形、半円形または長円形を有してもよい。フィラメント1100は、例えば、新生プラーク領域および標的血管の再狭窄区画など、細いテーパ直径の血管、または動脈壁内の閉塞区画を通してねじ込む(またはねじって外す)ために使用されてもよい。フィラメント1100が血管および/または閉塞区画と接触し、カテーテルにトルクが加えられると、フィラメントは、標的血管に到達するために、中間血管およびプラークを通るカテーテルの前進運動を容易にする。例えば、カテーテルシステム100を回転させる際に、フィラメント1100を使用して、石灰化したアテローム性プラークの穿孔または削孔を容易にすることができる。フィラメント1100は、回転運動を直線運動に変換し、トルクを直線力に変換し、それによって、特に比較的石灰化が進んだ領域に、カテーテルが血管を通って進むことをさらに容易にする。フィラメント1100はまた、血管の壁に対して締付力を作り出すことによって、血管内の特定の位置にカテーテルを固定するなどの固定機構として使用することもできる。カテーテルを除去するには、血管の壁が剥がれないようにするために、カテーテルを同じねじ様の動きを用いて反対方向に後退させなければならない。円形断面は、その丸みを帯びた表面のために、動脈壁への損傷を最小限に抑える。螺旋状ねじ山のピッチ角は一定のままであってよい。螺旋状ねじ山区画をモジュールの外側に接着させることにより、螺旋状区画の長さにわたってピッチ角を一定に保つことが可能になる。
【0084】
フィラメントは、管状モジュール110、120と同じ材料でも異なる材料でもよい。あるいは、いくつかの実施形態では、フィラメント1100はポリマー製であり得る。
【0085】
近位管状モジュール110および遠位管状モジュール120は、図12(a)~図12(d)および図14に示すように、壁を貫通する少なくとも1つの追加の切込み開口部を含むことができる。切込み開口部は、同じまたは異なる管状モジュール上にあってよい。
【0086】
図12(a)~(d)に示される第1の切込み開口部1200は、分断された螺旋内に配置することができる。第1の切込み開口部1200は、管状モジュールの長手方向軸1400に対して直角に配向され得るか、または長手方向軸1400に対してある角度で配置され得る。図13に示すように、フィラメント1100は、第1の切込み開口部1200で管状モジュールに取り付けることができる。
【0087】
図14に示すように、第2の切込み開口部1300は、概して「L」の形態に成形されてもよく、先端部170が管状モジュール120に固定されるクラウン160の近くまたはクラウン160に隣接して、管状モジュール120の遠位端に配置される。一実施形態では、第1の切込み開口部1200および第2の切込み開口部1300は、同じ管状モジュールに配置される。図15(a)~(c)に示すように、フィラメント1100は、第2の切込み開口部1300に取り付けることができる。
【0088】
切込み開口部1200、1300の壁は面取りされるか、角が削られてもよい。面取りの角度θは、管状モジュールの長軸1400に対して約20°~約70°または約40°~約60°の範囲であってよい。切込み開口部1200、1300の形状は様々であってよく、楕円形、正方形、L字形(図14の1300を参照)、V字形、曲線状または円形であってよい。
【0089】
図14図15(a)~図15(c)および図16(a)~図16(f)は、遠位管状モジュール120の遠位端がクラウン160を有する一実施形態を示す。クラウン160は、正弦波形状または概して波形(蛇行)形状とすることができる複数の閉じた曲線要素から作製されてもよい。一実施形態では、例えば、5~20個の範囲の複数の曲線要素があってよい。図15(a)~(c)は、先端部170が遠位管状モジュール120に取り付けられている実施形態を示す。フィラメント1100は、遠位管状モジュール120の遠位端160の切込み開口部1300に取り付けられる。遠位管状モジュール120および先端部170は、ジャケット175によって覆われてもよい。ジャケットは、遠位管状モジュール120の遠位端160に先端部170を固定するように作用することができる。
【0090】
図16(a)~(d)に示す一実施形態では、先端部170に遠位管状モジュール120の遠位端160を取り付けることができる。先端部は、中空管状体を備えてもよく、図16(a)および図16(b)に示すように円錐状にテーパ状になっていてもよい。さらに、先端部の中空管状体にねじを切ることができる。先端部170はジャケット175によって被覆されてもよい。図16(c)は比較的細長い先端部171の図を示し、図16(d)は比較的短い先端部172の図を示す。先端部は、カテーテルまたは近位もしくは遠位管状モジュールと比較して、テーパ状、デュロメータ、剛性、形状、長さ、放射線不透過性、輪郭および組成の点で異なるように構成されてもよい。先端部は、形状記憶を有する超弾性合金から作製することができる。先端部の形状は熱処理により設定することができる。例えば、先端部は、金などの放射線不透過性材料から作製されてもよいか、放射線不透過性材料を組み込んでもよい。
【0091】
図16(e)および(f)に示すように、クラウン160の曲線構造(例えば、突起)により、クラウンの表面積(SA1)は、遠位管状モジュールの遠位端の表面積(SA2)よりも大きくなり得る。クラウンの比較的大きな表面積は、クラウン160と先端部170との間の比較的大きな表面積の接触、ひいては結合を可能にする。
【0092】
図17(a)~(c)に示すように、フィラメント1100は、近位または遠位管状モジュール110、120の両方の周りに螺旋状に巻き付けることができ、また先端部170の周りに螺旋状に巻き付け続けることができる。図17(b)に示すように、先端部がねじ山を含む中空管である実施形態では、フィラメントは先端部のねじ山に嵌合することができる。フィラメント1100は、先端部170の全部または一部のみの周りを進んでもよい。フィラメントは、モジュールの周りに時計回りまたは反時計回りの螺旋状に巻き付けられてもよい。他の実施形態では、それ自体のねじ構造を有する先端部が製造されてもよい。先端部のフィラメントはジャケットによって覆われてもよい。
【0093】
図19(a)および図19(b)に示す別の実施形態では、クラウン160の突起と直接係合するかどうかにかかわらず、遠位管状モジュールの遠位端にリエントリー先端部を連結することができる。カテーテルリエントリーの詳細な説明は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる「Vascular Re-entry Catheter」と題され、共同所有および譲渡された米国特許出願第14/854,242号に見出される。モジュール式カテーテルをリエントリー先端部とともに使用すると、切開面の作成後に真腔にリエントリーすることを含む処置に使用することができる。
【0094】
リエントリー先端部の例を図18(a)~図18(d)に示す。図18(a)は、滑らかな表面と、リエントリー先端部の両側に配置された2つのウイングとを有するリエントリー先端部1810である。図18(b)は、先端部の全体直径の周りのその表面にくぼみを有するリエントリー先端部1820である。図18(c)は、先端部の全体直径の周りのその表面のくぼみと、リエントリー先端部の両側に配置された2つのウイングとを有するリエントリー先端部1830である。図18(d)1840は、滑らかな表面を有し、ウイングがないリエントリー先端部である。
【0095】
図19(b)~図19(c)に示すように、モジュール式カテーテルシステム100は、少なくとも1つのサイドポート1900をさらに備えることができる。図19(a)および図19(d)に示すように、いくつかの実施形態は、2つのサイドポート1900a、1900bを有する。3つ以上のサイドポートを使用することができる。複数のサイドポートを有する実施形態では、サイドポートはいずれも、カテーテルシステム100の長さに沿って直線的に整列させることができる。他の実施形態では、サイドポートはカテーテルシステム100の直径の周りに整列させることができる。サイドポートは、カテーテルシステム100の長さに沿って均等に離間させることができるか、特定の位置に離間させることができる。別の実施形態では、サイドポートは遠位管状モジュール120上にのみ配置される。
【0096】
図19(a)を参照すると、サイドポート1900aおよび1900bは、互いに約180°、例えば約180°(±10°)離れて、半径方向にずらして配置され得る。リエントリー先端部1810も、約180°の間隔を置いて配置されたウイング1811、1812を含む。一般に、ウイングに対するサイドポートの半径方向の変位は、約0°~90°、例えば、10°、20°、30°、50°、70°および80°の範囲であってよい。一実施形態では、サイドポートの位置は、ウイングから約90°半径方向にずれていてもよい。このようにして、2つのウイング1811および1812が動脈の内膜下空間内に安定した構成で配置された際に、ポート1900aは動脈の真腔に向いているか対向してもよく、ポート1900bが反対側に面してもよい。
【0097】
サイドポートは、形状が対称であってよく、円形、半円形、卵形、半卵形、長方形または半長方形であってよい。サイドポートは、同じ形状および大きさ(すなわち、表面積)を有してもよいか、互いに異なっていてもよく、リエントリーワイヤまたは別の医療装置がポートを通過することを可能にするように構成される。ポートの寸法は、例えば、約0.05mm~約1.0mmの範囲の直径を有する様々な種類の医療装置またはワイヤを収容するように調整されてもよい。Erglisら、Eurointervention 2010:6,1-8。遠位管部分120は、所望に応じて、その長さ方向に沿って半径方向に分布された3、4、5、6、7、8~n個のポートなどの3つ以上の出口ポートを含むことができる。
【0098】
サイドポートは面取りされてもよい。サイドポートの面取りされた構成は、屈曲した先端部を有するリエントリーワイヤがサイドポートから滑らかに出て後退するのを容易にすることができる。面取りの角度θは、10°~約90°、約20°~約70°または40°~約60°を含む約0°~約90°の範囲であってよい。
【0099】
一実施形態では、血管内腔内でのカテーテル100の位置決めをX線撮影によって視覚化するのを支援するために、少なくとも2つの放射線不透過性マーカーが遠位管状部分120に沿って配置される。マーカーは、放射線不透過性材料、例えば、ワイヤコイルまたはバンドの形態の金属白金、白金-イリジウム、Ta、金など、蒸着堆積物、ならびに放射線不透過性粉末または充填剤、例えば、ポリマーマトリックス中に包埋または封入された硫酸バリウム、三酸化ビスマス、次炭酸ビスマスなどを含むことができる。あるいは、マーカーは、放射線不透過性ポリウレタンなどの放射線不透過性ポリマーから作製することができる。マーカーは、遠位管状部分の外側シースを取り囲むためのバンドの形態であってよい。
【0100】
バンドとして構成された放射線不透過性マーカーを使用して、遠位管部分120が対象の解剖学的構造内で操作されている間にサイドポートの位置を決定するのを容易にすることができる。マーカーはまた、対応するサイドポートとの特定の整列を形成する部分的なバンドまたはパッチとして構成することができる。例えば、1つのマーカーをサイドポート1900aと軸方向に整列させることができ、第2のマーカーをサイドポート1900bと軸方向に整列させることができる。したがって、サイドポート1900aおよび1900bの半径方向に対向する構成と同様に、マーカーも互いに半径方向に対向している。このようにして、マーカーの視覚化を使用して、それぞれのサイドポートの向きを決定することができる。マーカーは、ポートの向きの決定を容易にするために、異なる形状、例えば、部分的に円周状のバンド、または任意の他の所望の形状に構成することができる。
【0101】
マーカーはまた、それぞれのサイドポート1900aおよび1900bの周囲を囲む表面パッチとして構成することもできる。そのような実施形態では、視覚化することができるマーカーの位置はサイドポートの位置に直接対応する。
【0102】
マーカーは、それらが適切なX線撮影による支援によって視覚化することができるように、十分な大きさおよび好適な構成/構造(例えば、放射線不透過性材料の種類、放射線不透過性材料の充填量など)を有する必要がある。
【0103】
管状モジュールの部分の可変性の柔軟性はまた、側枝アクセスが必要とされるか、中枢神経系などで蛇行した血管系に遭遇する外科的処置を容易にする。素管の材料の機械的性質、管の寸法(OD/ID)、壁厚、管に沿った切込みパターンから生じる切込み管の機械的性質(材料組成、UTS、%伸び率、弾性率)からの多種多様な組合せと、材料と機械的性質との他の組合せ(UTS、切込みピッチ角、切込み幅、螺旋状切込み円弧長、および次の螺旋状円弧切込みとの間の切り込まれていない螺旋状間隔を定義する式)とを使用する能力を考えると、これらはいずれも、設計者が切込み管の走行長にわたって規定された様々な機械的性質を調整できるようにする。剛性、柔軟性、および形状記憶性の使用などの結果として得られるそのような性質は、予め設定された曲線形状を画定し、プログラム可能かつ変更可能である。
【0104】
さらに、そのような誘導された形状記憶形態は、遠位管状区画の切込みおよび形状処理部分に沿って抵抗負荷力を介して真っ直ぐにするか縮小し、維持して、管の形状設定部分を配向させて、カテーテルを血管標的まで前進させることを可能にするであろう直線状の同心同軸構成に戻すために、さらに大きな力を必要とするであろう。
【0105】
管状モジュールの多種多様な構造的形状の組合せを作り出すために一緒に構築されたそのような変数。これらの構造的形状は、曲線形状のバネ定数を超える機械的変形特性を示すワイヤ追従、例えばガイドワイヤを介して管状モジュールを前進させることによって、容易に一時的に直列に縮小させることができる。この一時的な変形は、ガイドワイヤを介して、血管の解剖学的構造を通してカテーテル(管状モジュール)を前進させることを可能にする。簡単に言えば、成形曲線部分のバネ定数は、それが追従しているワイヤ区画のそれよりも小さい。保持ガイドワイヤ区画のバネ定数が設定された曲線形状のバネ定数よりも小さくなると、追加の他の外力または血管の閉じ込めによる影響を受けない限り、切込み形状の管区画はその所定の形状に戻る。
【0106】
本発明の遠位モジュールは、形状記憶を適用することによって、屈曲したり、引っ掛かったり、あるいは曲線形状の定位置に設定されたりする部分を含むことができる。上述したように、ニチノールを含む超弾性合金は、この性質を有し、加熱によって変形することができる。図20(a)および図20(b)は、この特徴を含む本発明によるカテーテルの遠位端の側面図および端面図をそれぞれ示す。側面図に示すように、遠位管状モジュール2020の一部は、その遠位端で屈曲する曲線部分2030を含む。屈曲部は、湾曲、正弦曲線、非線形部分、角状、山、谷、波状、曲線および螺旋状のうちの少なくとも1つであってよい。屈曲部は可変剛性を有することができる。屈曲部は、細長部材の残りの部分よりも大きい剛性係数を有することができる。
【0107】
曲線部分は、管状モジュールの長手方向軸(L、図21(a))に対して約0°~約180°屈曲することができる。この部分の曲線形状は様々であってよく、平坦、単純湾曲、複雑湾曲、逆湾曲または二重湾曲を含んでもよい。曲線部分の長さは様々であってよく、管状モジュールの一部のみまたは全体の長さを包含してもよい。図20(a)に示す実施形態では、曲線部分2030は、ガイドワイヤなどの力を加えてその構成を真っ直ぐにするか、そうでなければその構成を変化させない限り45°をとる。管状モジュールのルーメンに挿入され管状モジュールのルーメンと同軸であるガイドワイヤなどの様々な手段を介して力が加えられてもよい。図20(b)の端面図は、遠位管状モジュールのルーメン2050を示す。ルーメンのこの断面は、曲線部分2030の屈曲中に一定のままである。この一定の断面ルーメンは、血管系を通るワイヤおよび他の装置の通過を容易にする。
【0108】
カテーテルは、管状モジュールのルーメンを通過することができるガイドワイヤを含むことができる。管状モジュールは、ガイドワイヤを介して動脈内に通すことができる。ガイドワイヤは典型的には比較的細く、約0.254mm~0.457mmほどの直径を有する。ガイドワイヤは、ガイドワイヤの近位端からガイドワイヤの遠位端へ回転を伝達することができる。この伝達により、医師が、患者の動脈の分岐部を通してガイドワイヤを制御可能に操縦し、冠動脈内の目的の標的部位までカテーテルを操作することが可能になる。さらに、ガイドワイヤの遠位端は、ガイドワイヤの遠位部分が、鋭く湾曲し蛇行した冠状の解剖学的構造を通過することを可能にするのに十分に柔軟である必要がある。
【0109】
血管形成術に使用される一般的なガイドワイヤ構成の中には、米国特許第4,545,390号に示されている種類のガイドワイヤがある。そのようなワイヤは、テーパ状の遠位部分と、テーパ状の遠位部分の周りに取り付けられた螺旋状コイルとを有する、典型的にはステンレス鋼から形成された細長い可撓性シャフトを含む。シャフトの略テーパ状の遠位部分は、コイルのためのコアとして作用し、医師が患者の血管を通してガイドワイヤを制御可能に操縦することができるように、血管の解剖学的構造の曲線をたどりながら、ガイドワイヤの近位端から遠位端まで依然として回転を伝達することができるように構成された、遠位部分の柔軟性が増大したガイドワイヤをもたらす。ガイドワイヤの特性は、ガイドワイヤの遠位先端部としての構造の詳細の影響を著しく受ける。例えば、ある種類の先端部構造では、テーパ状コアワイヤは、螺旋状コイルを貫通してコイルの遠位先端部まで完全に延び、コイルの遠位先端部で滑らかに丸みを帯びた先端溶接部に直接取り付けられる。そのような構造は、典型的には、狭い狭窄部を通してガイドワイヤを押し込もうと試みる際に使用するのに特に適した比較的堅い先端部をもたらす。高度なカラム強度に加えて、そのような先端部はまた優れたねじり特性を示す。
【0110】
別の種類の先端部構造では、テーパ状コアワイヤは先端溶接部の手前で終端する。そのような構造では、一方の(近位)端部でコアワイヤに、他方の(遠位)端部で先端溶接部に、非常に薄い金属リボンを取り付けるのが一般的である。リボンは、コイルが破損した場合に、コアワイヤと遠位先端溶接部との間の接続を維持するための安全要素として機能する。リボンはまた、ガイドワイヤを操作し操縦する際に望ましいように、リボンに形成された屈曲部を保持して、先端部を屈曲構成に維持するのに役立つ。さらに、先端溶接部の手前でコアワイヤを終端させることによって、コアワイヤの遠位端部と先端溶接部との間の螺旋状コイルの区画が極めて柔軟かつ可撓性に富むものとなる。可撓性先端部は、血管系が高度に蛇行し、ガイドワイヤが血管への外傷を最小限に抑えながら蛇行した解剖学的構造に順応しかつ追従することができなければならない状況に望ましい。別の種類の先端部構造では、成形リボンと同じ機能を果たすがコアワイヤと一体の単一片として機能するように、コアワイヤの最も遠位の区画を平らに打ち伸ばす(平らに落とし込む)。平らに落とし込まれた区画の先端部は先端溶接部に取り付けられる。
【0111】
ガイドワイヤは当技術分野で周知であり、本発明のカテーテルを使用するためのガイドワイヤの適切な選択は、介入的心臓病専門医または介入的放射線科医などの医療専門家によって行われ得る。
【0112】
図21(a)および図21(b)は、本発明によるカテーテルの遠位端の別の実施形態の側面図および端面図を示す。この実施形態では、遠位管状モジュール2120は、その遠位端に、曲線部分2130が遠位管状モジュールの残りの部分(すなわち、水平軸)に接続する点から先端部2140まで自然に90°屈曲する曲線部分2130を含む。曲線部分は、力を加えてその構成を真っ直ぐにしたり、他の方法で変化させたりしない限り、90°屈曲する。図21(b)の端面図は、遠位管状モジュールのルーメン2150を示す。このルーメンは、遠位管状モジュール内で一定の断面を維持することができ、ルーメンは曲線部分2130内で維持される。
【0113】
図22は、本発明によるカテーテルの遠位端のさらに別の実施形態の側面図を示す。この実施形態では、遠位細管モジュール2220の曲線部分2230は、先端部2240が遠位管状モジュールの方を向き、遠位管状モジュールの長手方向軸Lとほぼ平行に整列するように、さらに約180°まで屈曲する。
【0114】
図23図25は、管状モジュールがガイドワイヤとともに曲線部分を含む手順の3つの部分を示す。本発明とともに任意の従来のガイドワイヤが使用されてもよい。例えば、ガイドワイヤの中心コアは、ステンレス鋼、Durasteel(商標)またはニチノール/Lastinite(登録商標)から形成されてもよい。ガイドワイヤをポリマースリーブまたはコイルバネ先端部によって覆い、滑らかなコーティングによって被覆してもよい。
【0115】
図23は、管状モジュール2320および先端部2340を貫通するガイドワイヤ2310上に遠位管状モジュール2320を通すことによって真っ直ぐにされた曲線部分2330を有する遠位管状モジュールを示す断面図である。示されるように、ガイドワイヤ2310は、遠位管状モジュール2320の端部を貫通し、形状記憶曲線部分2330を通過し、管状モジュールの先端部2340を越える。この位置では、ガイドワイヤ2310は、遠位管状モジュール2320の長手方向軸(L)に対して曲線部分2330を整列させるか真っ直ぐに保ち、曲線部分がその形状記憶に従って屈曲するのを防止する。言い換えれば、曲線部分2330のバネ定数は、遠位管状モジュール2320が追従しているガイドワイヤ2310区画のバネ定数のそれよりも小さい。保持ガイドワイヤ2330区画のバネ定数が曲線部分2330のバネ定数よりも小さい場合、曲線部分2330は、追加の他の外力または血管の閉じ込めによる影響を受けない限り、その所定の形状に戻る。
【0116】
図24では、ガイドワイヤ2310は、先端部2340から、遠位管状モジュール2320の予め設定された曲線部分2330内の距離(L1)を左方向に(矢印で示すように)引き抜かれている。図24に示すように、ガイドワイヤ2310が引き抜かれると、予め設定された曲線部分2330は屈曲し始め、上述のようにその所定の形状をとる。
【0117】
図25では、ガイドワイヤ2310は、曲線部分2330内の図24に示す位置からさらに引き抜かれている(すなわち、L2>L1)。その結果、曲線部分2330は、先端部2340が向く方向と遠位管状モジュール2320の長手方向軸Lとの間の角度(Ψ)が90°よりも大きくなるように、その形状記憶に従って屈曲し続ける。屈曲の範囲は、長手方向軸Lに対して約0°~約180°の範囲である。この実施形態では、この位置にある遠位管状モジュールの遠位端は、「シェパードフック」の形状に構成され、この構成では、動脈系の側枝にアクセスするように、または蛇行した血管系内にアクセスするように良好に適合される。
【0118】
図26は、側枝動脈アクセスに適用することができるような形状記憶を有する曲線部分を有するカテーテルおよび遠位管状モジュールの一例を示す。図には、大動脈分岐部2602と、大動脈2602に合流し分岐する側枝動脈2604とが示されている。遠位管状モジュール2620を含むカテーテルの遠位端が、予め設定された曲線部分2630および先端部2640とともに示されている。図では、ガイドワイヤ2610は曲線部分2630から引き抜かれており、曲線部分が管状モジュールの長手方向軸に対して約180°まで屈曲することを可能にしている(前出の図23図25のLを参照)。
【0119】
遠位管状モジュール2620を含むカテーテルが動脈内で横方向に動かされると、曲線部分2630は側枝2604に入ることができる。ハブを回転させることによってカテーテルにトルク力を加えてもよく、それによって近位および遠位管状モジュールを中心軸の周りで回転させることができることに留意されたい。
【0120】
図28(a)は、単一の側枝動脈(側枝とも呼ばれる)2804とともに主血管2802を備える動脈系の断面図を示す。図示の例では、大動脈2802の直径は、第1の側枝2804の直径よりも大きい。遠位管状モジュール2820が動脈2802内に配置されて示されており、ここで遠位管状モジュールは側枝動脈2804を越えて延びる。ガイドワイヤ2810は、遠位管状モジュール2820の端部と先端部2840とを越えて延びる。ガイドワイヤ2810はテーパ部2814を含む。上述のように、ガイドワイヤ2810は、遠位管状モジュール2820の予め設定された曲線部分2830を真っ直ぐにする。
【0121】
図28(b)は、ガイドワイヤ2810が遠位管状モジュール2820から部分的に引き抜かれ、曲線部分2830が屈曲するのを可能にすることを示す。先端部2840とガイドワイヤ2810のテーパ状端部2814とは、曲線部分2830の屈曲に従って位置を変え、動脈2804の側枝に入るか、側枝2804に入ることができるように先端部2840を配置する。
【0122】
図28(c)では、ガイドワイヤ2810が遠位管状モジュール2820からさらに引き抜かれている。先端部2840とガイドワイヤ2814のテーパ状端部とは、側枝2804の軸と整列している。
【0123】
図28(d)では、ガイドワイヤ2814のテーパ状端部は、先端部2840を越えて側枝2804内に延びている。次いで、図28(e)では、遠位管状モジュール2820がガイドワイヤ2810を介して側枝2804を通って下方に進められる。
【0124】
図29(a)は、動脈側枝へのアクセスを可能にするための別の方法を示す。示されるように、予め設定された曲線部分2930と先端部2940とを含む遠位管状モジュール2920が、ガイドワイヤが引き抜かれた状態で大動脈2902内に配置されている。予め設定された曲線部分2930と先端部2940とは、大動脈2902と側枝2904との接合部を越えて(前進方向に)配置されている。予め設定された曲線部分2930の形状記憶のため、この部分と先端部とは、屈曲して、またはシェパードフック位置に示されている。図示の例では、先端部は長手方向軸と平行に、後進方向に180°屈曲している。予め設定された屈曲は、他の角度(例えば、45°、90°、120°など)でもあり得る。この位置から遠位管状モジュール2920を引き抜くと、トルク力2945を加えて、遠位管状モジュール2920を時計回りまたは反時計回りに回転させることができる。次いで、遠位管状モジュール2920を側枝2904に挿入することができる。
【0125】
図29(c)は、図29(b)に示す位置から側枝2904内にさらに進入した遠位管状モジュール2920および先端部2940を示す。図29(c)では、先端部は側枝2904の軸との整列に近づく。
【0126】
図29(d)は、第1の側枝2904を通る遠位管状モジュール2920の継続的な前進を示す。ガイドワイヤ2910を使用して、曲線部分2930を真っ直ぐにして、カテーテルが側枝2804の内腔を通って進むことを可能にすることができる。遠位管状モジュールの設計された柔軟性のために、遠位管状モジュールは鋭い回転角度2924に適応するように屈曲することができる。
【0127】
要するに、両方の単一側枝アクセス方法では、遠位管状モジュールの予め設定された曲線部分がフックのように使用されて、側枝内へ前進するための確実な固定を作り出し、最終的に複数の動脈血管および側枝を通してカテーテルを前進させることを可能にする。
【0128】
図30(a)は、大動脈3002、側枝動脈3004、および側枝3004から出てくる副側枝3006を含む動脈系を示す。大動脈3002および2つの側枝3004、3006を通してカテーテルを前進させるための経路3008が示されている。図30(b)は、図28(a)~図28(e)および図29(a)~図29(d)に関して上述した方法で側枝3004を貫通する遠位管状モジュール3020を示す。先端部3040とガイドワイヤ3014のテーパ状端部とは、第2の分岐部3006の軸に対してほぼ直角に延びる。図30(c)では、ガイドワイヤ3010は部分的に引き抜かれており、トルク力3045、3046が遠位管状モジュール3020に加えられている。カテーテルの構造のために、先端部3040および曲線部分3030に(湾曲した矢印3046によって示されるように)トルクが伝達される。トルク力は、第1の分岐部3004の軸から離れる方向に先端部3040を曲げる。図30(d)に示すように、トルク力と横方向運動との組合せにより、先端部3040が第2の側枝3006にアクセスすることができる。図30(e)では、ガイドワイヤ3010は遠位管状モジュール3020および先端部3040を通って前進し、遠位管状モジュール3020が、ガイドワイヤ3010によって画定された経路を介して搬送されることを可能にする。
【0129】
本発明によるカテーテルシステムのモジュール構造のため、様々な処置に使用するためにカテーテルシステムの遠位管状モジュールを変えることによって、一群のマイクロカテーテルを作り出すことができる。マイクロカテーテルとは、典型的には、標的病変までガイドワイヤを追従するためにガイドワイヤに装着することができるシングルルーメン装置である。典型的な外径(OD)は、シャフトの近位部分の約1.30mmからシャフトの遠位部分または先端部の約0.70mmまでの範囲である。遠位管状モジュールのルーメンの内径は様々であってよく、マイクロカテーテルとして使用される場合、テーパ状であってよい。遠位管状モジュールの追従性および押し込み性は、上記のように変動し得る。遠位管状モジュールは、順行性手技または逆行性手技での使用、末梢血管アクセス手技での使用、またはリエントリーカテーテルとしての使用など、特定の解剖学的課題に対処するように設計することができる。遠位管状モジュールおよび近位管状モジュールは、近位管状モジュールが様々な遠位管状モジュールのうちの1つに取り付けられている状態で事前に組み立てることができる。あるいは、遠位管状モジュールと近位管状モジュールとを別個にし、使用直前に組み立てることができる。
【0130】
製造に異なる材料を使用することなどによって、遠位管状モジュールの設計を変えることができる。また、一定の内径を維持しながら外径を単純に直列段階的に減少させることによって、管状モジュール材料を機械加工または研削して管状モジュールの長さに沿って壁厚を変えることによって、または管状モジュール材料をレーザ切断、除去、機械加工もしくは研削して管状モジュール表面に沿って特定の設計特徴、例えば、特定の位置でもしくは規定された長さに沿って管状モジュール材料から彫り込まれたねじ山設計を作成することによって、直列に積層された可変壁厚を変えることができる。遠位管状モジュール120の設計はまた、管状モジュールの長さに沿って積層された分断された螺旋状切込みパターンを使用することによって変えることができる。これらの分断された螺旋状切込みパターン式変数は、例えば、螺旋状切込みに沿った切込みおよび非切込み角度の分断された螺旋状切込みパターンの式を有する、切込みピッチ角、レーザ切込み経路幅、または管状モジュールの長さに沿った積層可変切込みパターンを含むことができる。
【0131】
モジュール式カテーテルシステムの使用の別の特定の例は、マイクロカテーテル装置を作製するためのものであろう。そのようなマイクロカテーテルは、管状モジュールの1つとしてベースマイクロカテーテルを備え得る。このベースマイクロカテーテルは順行性アプローチのために使用することができ、狭い病変部にアクセスし、バックアップワイヤによる支持を有する。第2の管状モジュールは、様々なマイクロカテーテルのうちの1つであり得る。これらの装置は末梢血管および神経血管の動脈にアクセスすることができ、多くの疾患管理用途に使用することができ、本明細書に提供される例のみに限定されるべきではない。
【0132】
[実施例]
試験方法
近位管状モジュールおよび遠位管状モジュールは、様々な柔軟性、キンク性(kinkability)、破損までのトルク、トルク性(torqueability)、追従性、押し込み性、通過性および回転応答性を有することができる。柔軟性、キンク性、破損までのトルク、トルク性、追従性、押し込み性、通過性および回転応答性を試験するための様々な試験がある。当技術分野で既知のこれらの性質に関する様々な標準試験が、例えば、http://www.protomedlabs.com/medical-device-testing/catheter-testing-functional-performanceに開示されている。
【0133】
近位管状モジュールおよび遠位管状モジュールは、同じ柔軟性または異なる柔軟性を有することができる。柔軟性とは、折れずに屈曲する性質である。管状モジュールの柔軟性は、使用される材料、分断された螺旋状パターン、壁厚、内径および外径ならびに他の変数に依存する。柔軟性は、以下の試験方法のうちの1つによって決定することができる。柔軟性を試験する1つの方法では、近位ロードセルを使用して、特定の屈曲角度にわたって、機能を喪失することなく、または蛇行した解剖学的構造を損傷することなく、前進および後退する装置の能力を測定する。あるいは、ローラシステムを使用して、装置がキンクせずに耐えることができる最小の曲率半径を決定することができる。さらに、片持ち梁を用いて試験を実施して、50°の傾斜度でF=[M×(%SR)]/(S×100)(式中、F=柔軟性、M=総曲げモーメント、%SR=スケール読取平均およびS=スパン長さ)を計算することによって、力および曲げ角度を測定することができる。柔軟性を試験するもう1つの方法は、1点および4点屈曲試験を使用して、装置の一端が焼き付けられ、他端が一定速度で移動するプレートによって押された際に力Fおよび曲げ変位fを検出するZWICK005試験機を使用して変位制御下で柔軟性を評価することである。最も高い測定データは、方程式E×I=(F×L)/(3×f)(Nmm)(式中、I=慣性モーメント、E=ヤング率、L=屈曲長、f=曲げ変位およびF=点力およびE×I=柔軟性)によって決定された柔軟性を表す。
【0134】
近位管状部材および遠位管状部材は、同じまたは異なる破損までのトルクまたは破断までのトルクを有することができる。破損までのトルクとは、カテーテル構成要素の塑性変形、破壊または破断が生じる前に管状部材が耐えることができるねじり力または回転力の量である。破損までのトルクを試験する1つの方法は、装置を比較的近位の位置で回転させ、装置が蛇行した解剖学的構造を通して導かれる間に遠位端を固定することによって、装置の破損までのトルク量および回転数を測定する近位および遠位トルクセンサの使用によるものである。破損までのトルクを計算する別の試験方法は、37±2℃の水中に設定した時間浸漬した直後のトルク強度を試験することによる。ガイドワイヤを定位置に配置した状態で、二次元形状に拘束されている適合するガイディングカテーテルに装置を挿入して、カテーテルの最遠位10cmがガイド先端部を越えて露出され、トルクゲージに取り付けられて回転を防止するまでの冠動脈の解剖学的構造へのアクセスを再現することができる。カテーテル本体の残りの部分は、歪み、破損、破断、破壊、キンクまたはその他の損傷がカテーテルに沿ってもしくはカテーテル先端部に生じるまで、または設定された回転数の間、360°ずつ回転させる。
【0135】
近位管状部材および遠位管状部材は、同じまたは異なるトルク性を有することができる。トルク性とは、回転力が一端に加えられた際に、管状モジュールの一端から管状モジュールの他端までに失われるトルクまたは回転の量である。トルク性を試験する1つの方法は、近位および遠位トルクセンサを使用して、装置を比較的近位の位置で回転させ、装置が蛇行した解剖学的構造を通して導かれる間に遠位端を固定することによって、装置を通して伝達されるトルクの量を測定することである。トルク性を試験する別の方法は、臨床的な蛇行した経路をシミュレートする、医学博士Shinsuke Nantoによって設計されたPTCAトレーナー、T/N:T001821-2などのPTCAトレーニング用の動脈シミュレート装置を使用することによる。カテーテル先端部に取り付けられ、ダイヤルの穴を通して挿入されたインジケータ。カテーテル本体を回転子、例えばT/N:T001923に接続し、時計回りに90°ずつ1080°まで回転させる。カテーテル先端部のインジケータに取り付けられたダイヤルによって測定された角度を使用して、本体の回転角と先端部の回転角との比を計算する。これは、回転中に失われるトルクの量に相当する。
【0136】
近位管状モジュールおよび遠位管状モジュールは、同じ追従性または異なる追従性を有することができる。追従性を試験する1つの方法は、近位ロードセルを使用して、ガイド付属品に支持されてまたは支持されることなく、蛇行した解剖学的構造を通して装置を前進させる力を測定することである。
【0137】
近位管状モジュールおよび遠位管状モジュールは、同じまたは異なる押し込み性を有することができる。押し込み性を試験する1つの方法は、近位および遠位ロードセルを使用して、既知の力が近位端に加えられている際に装置の遠位先端部が受ける力の量を測定することである。
【0138】
近位管状モジュールおよび遠位管状モジュールは、同じまたは異なる通過性を有することができる。通過性を試験する1つの方法は、近位ロードセルを使用して、機能を喪失することなく、または蛇行した解剖学的構造を損傷することなく、特定の病変部位を前進および後退するカテーテル装置の能力を測定することである。さらに、ローラシステムは、装置が損傷なく耐えることができる最悪の障害を決定することができる。
【0139】
近位管状モジュールおよび遠位管状モジュールは、同じまたは異なる回転応答性を有することができる。回転応答性を試験する1つの方法は、近位および遠位回転エンコーダを使用して、装置を比較的近位の位置で回転させ、装置が蛇行した解剖学的構造を通して導かれる間に遠位端を自由に保つことによって、装置を通して伝達される回転量を測定することである。
【0140】
本発明の範囲は、上記に具体的に示され記載されたものによって限定されない。当業者は、構成、構造および寸法ならびに材料の図示された例に対する好適な代替物があることを認識するであろう。本出願における任意の参考文献の引用および考察は、単に本発明の説明を明確にするために提供されており、任意の参考文献が本明細書に記載の本発明に対する先行技術であることを承認するものではない。本明細書において引用され考察された参考文献はいずれも、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本発明の特定の実施形態を示し説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく変更および修正を加えることができることが当業者には明らかであろう。前述の説明および添付の図面に記載された事項は、例示としてのみ提供され、限定としては提供されない。
図1(a)-(b)】
図2(a)-(i)】
図3
図4(a)】
図4(b)】
図5(a)】
図5(b)】
図6(a)】
図6(b)】
図6(c)】
図6(d)】
図6(e)】
図6(f)】
図6(g)】
図6(h)】
図6(i)】
図6(j)】
図6(k)】
図6(l)】
図6(m)】
図6(n)】
図6(o)】
図6(p)】
図6(q)】
図6(r)】
図6(s)】
図6(t)】
図7(a)-(f)】
図8(a)】
図8(b)】
図8(c)】
図8(d)】
図8(e)】
図8(f)】
図8(g)】
図8(h)】
図9(a)】
図9(b)】
図9(c)】
図10(a)】
図10(b)】
図10(c)】
図10(d)】
図10(e)】
図10(f)】
図11(a)】
図11(b)】
図11(c)】
図11(d)】
図11(e)】
図12(a)】
図12(b)】
図12(c)】
図12(d)】
図13
図14
図15(a)-(c)】
図16(a)-(b)】
図16(c)】
図16(d)】
図16(e)】
図16(f)】
図17(a)】
図17(b)】
図17(c)】
図18(a)-(d)】
図19(a)-(c)】
図19(d)-(g)】
図20(a)-(b)】
図21(a)-(b)】
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28(a)】
図28(b)】
図28(c)】
図28(d)】
図28(e)】
図29(a)】
図29(b)】
図29(c)】
図29(d)】
図30(a)】
図30(b)】
図30(c)】
図30(d)】
図30(e)】