IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイノバ メディカル ピーティーワイ リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-経皮ドレナージ装置 図1
  • 特許-経皮ドレナージ装置 図2
  • 特許-経皮ドレナージ装置 図3
  • 特許-経皮ドレナージ装置 図4
  • 特許-経皮ドレナージ装置 図5
  • 特許-経皮ドレナージ装置 図6
  • 特許-経皮ドレナージ装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】経皮ドレナージ装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/34 20060101AFI20230914BHJP
   A61M 1/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
A61B17/34
A61M1/00 161
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2019548500
(86)(22)【出願日】2017-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 AU2017051312
(87)【国際公開番号】W WO2018094478
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-11-13
(31)【優先権主張番号】2016904884
(32)【優先日】2016-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519191064
【氏名又は名称】アイノバ メディカル ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィラ ラミレズ,ナルシソ
(72)【発明者】
【氏名】ユー,ミン クーン
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,メラニー
(72)【発明者】
【氏名】アフジャ,ナターシャ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイス,アレックス
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0109111(US,A1)
【文献】特開昭57-043726(JP,A)
【文献】特開2003-116862(JP,A)
【文献】特開平08-052220(JP,A)
【文献】特開平07-023967(JP,A)
【文献】米国特許第05735867(US,A)
【文献】特表2010-517682(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0089180(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/34
A61M 1/00
27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カニューレと摺動可能に係合し、細長いシャフト及び穿刺端を備え、患者の組織を貫通して前記カニューレの開口端を皮下の流体堆積部位に導入するように配置された、前記穿刺端又は前記穿刺端及び前記穿刺端に隣接するねじ部、を有する貫通要素を含む経皮ドレナージ装置であって、前記カニューレが前記患者から流体の堆積を排出することができる通り道を備え、
前記貫通要素が、前記貫通要素が前記カニューレ内に前記カニューレの内面と前記貫通要素の外面とが同心円状に配置されている第1の位置と、前記貫通要素が前記カニューレから後退され分離される第2の位置と、の間で移動可能であり、
前記細長いシャフトは、細長いシャフトの残りの部分よりも大きい外径を有するバルジ部を有し、
前記カニューレから前記貫通要素を後退させる間に陰圧を発生させ、それによって前記カニューレの中への前記流体堆積の最初の吸引が生じるように、前記穿刺端又はそれに隣接する前記ねじ部を除く貫通要素が前記第1の位置にあるときに前記カニューレの管腔内に配置され、前記管腔と前記バルジ部との間でシールを形成するように前記細長いシャフトの前記バルジ部の外面が前記管腔の内面との間に狭い公差を有する、
経皮ドレナージ装置。
【請求項2】
前記貫通要素が、前記穿刺端に又はそれに隣接する前記ねじ部を有し、それにより前記貫通要素の回転が、前記穿刺端が皮下の流体堆積部位に向かって前記患者の前記組織内に向かうのを補助する、請求項1に記載の経皮ドレナージ装置。
【請求項3】
前記ねじ部が前記穿刺端に向かって先細になっている、請求項2に記載の経皮ドレナージ装置。
【請求項4】
前記ねじ部が1つ又は複数のねじ山を有する、請求項2又は3に記載の経皮ドレナージ装置。
【請求項5】
前記貫通要素が、固定手段によって前記管腔の内側で回転するのを防止される、請求項1に記載の経皮ドレナージ装置。
【請求項6】
前記固定手段が、前記管腔の表面に配置された1つ以上の溝を含み、前記1つ以上の溝が前記貫通要素の1つ又は複数の対応するリブと係合するように構成される、請求項5に記載の経皮ドレナージ装置。
【請求項7】
前記穿刺端が切断具を備える、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の経皮ドレナージ装置。
【請求項8】
前記切断具が前記カニューレに対して後退可能又はそこから取り外し可能である、請求項7に記載の経皮ドレナージ装置。
【請求項9】
前記穿刺端が前記貫通要素の回転によって患者の組織内に向かわされる、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の経皮ドレナージ装置。
【請求項10】
ハンドルの回転操作によって回転が作動する、請求項9に記載の経皮ドレナージ装置。
【請求項11】
前記カニューレが、前記貫通要素の回転によって患者の組織内に向かわされる、請求項9又は10に記載の経皮ドレナージ装置。
【請求項12】
前記カニューレの外面の少なくとも一部にねじが切られている、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の経皮ドレナージ装置。
【請求項13】
前記カニューレの長さが調節可能である、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の経皮ドレナージ装置。
【請求項14】
前記カニューレの長さが切断によって調整可能である、請求項13に記載の経皮ドレナージ装置。
【請求項15】
前記カニューレの前記長さが、脆弱な部分に沿って壊すことによって調整可能である、請求項13に記載の経皮ドレナージ装置。
【請求項16】
係留手段をさらに備え、前記係留手段が、前記経皮ドレナージ装置を前記患者に固定するように配置されている、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の経皮ドレナージ装置。
【請求項17】
前記係留手段が、前記患者から突き出ている前記カニューレの部分の外周の周りにクランプするように適合されたクランプを備える、請求項16に記載の経皮ドレナージ装置。
【請求項18】
前記係留手段が、前記患者の皮膚に取り付けるように構成された接着部分をさらに含む、請求項16又は17に記載の経皮ドレナージ装置。
【請求項19】
前記カニューレと流体連通する収集容器をさらに備える、請求項1から請求項18のいずれか一項に記載の経皮ドレナージ装置。
【請求項20】
前記収集容器が、コネクタ手段によって前記係留手段に取り付けられている、請求項16~18のいずれか一項を引用する請求項19に記載の経皮ドレナージ装置。
【請求項21】
前記収集容器が前記係留手段からコネクタ手段によって引き離し可能である、請求項16~18のいずれか一項を引用する請求項19又は請求項20に記載の経皮ドレナージ装置。
【請求項22】
前記収集容器が、前記収集容器に陰圧を発生させるための圧力調整手段を有する、請求項19から21のいずれか一項に記載の経皮ドレナージ装置。
【請求項23】
前記圧力調整手段が弁を含む、請求項22に記載の経皮ドレナージ装置。
【請求項24】
前記貫通部材と前記カニューレの一方又は両方の少なくとも一部が放射線不透過性材料からなる、請求項1から請求項23のいずれか一項に記載の経皮ドレナージ装置。
【請求項25】
1つ又は複数の放射線不透過性の深さのマーキングをさらに含む、請求項1から請求項24のいずれか一項に記載の経皮ドレナージ装置。
【請求項26】
前記流体堆積が液体及び/又は気体である、請求項1から請求項25のいずれか一項に記載の経皮ドレナージ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は経皮ドレナージ用の装置に関する。特に、本開示は、患者の皮膚の下に位置する流体の堆積にアクセスしてそれを排出するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
毎年数百万人の患者が皮膚や軟組織の感染症に対する医療の補助を求めて緊急治療室に来ている。これらの感染症の大部分は皮下の膿瘍であり、これは皮膚の下の膿及び死んだ組織の蓄積または堆積に限定される。この一般的な皮膚の状態を呈する患者は通常痛みを経験し、さらに発熱または悪寒を呈することがある。
【0003】
膿瘍の治療は最も一般的に行われている病院の処置の1つである。一部の膿瘍は「単純」であるか「尖って」おり、ほぼ皮膚を突き破る態勢になっている。これらの膿瘍は通常、切開を介する局所麻酔と排出の処置を伴った外来の状況で、治療することができる。局所麻酔薬の投与後、皮膚を穿刺するためにその部位に小さな切開が作られる。その後、膿瘍の内容物は、切開口から排出することによって出ることができ、時には臨床医による内容物の手での表出により補助される。切除されると、膿瘍の内容物が上方や外側に突き出ることがあるため、臨床医は通常、己が汚れるリスクを軽減するために個人用保護具を使用している。
【0004】
広範に大きく、深く、または厚くもしくは不均一な内容物を有する膿瘍は、排出するのがより困難なことがある。一部のものは、画像化ガイダンスを利用して、皮膚から膿瘍の中に針、カテーテル、または他の適切なドレインを配置して体液の堆積を除去または排出することによって、排出することができる。しかし、最も一般的に挿入されているドレインは、膿瘍内容物で頻繁に塞がれ、内容物全体が除去される前に流れを止める。その後、患者はさらに大きな切開を利用しながら膿瘍を開く手術が必要となる。
【0005】
現在、病院に提示されている複雑な膿瘍の症例の大部分は、手術室にて全身麻酔下で治療されている。外科的な治療は、一般に膿瘍の問題を解決しているが、それは一連の新たな問題を生み出している。外科的な膿瘍の治療を受けている患者は、通常1~2日の入院が必要となる。患者は手術の前に絶食しなければならず、全身麻酔薬の投与に関連するリスクに直面しなければならない。膿瘍の外科的治療は切開することが必要となるが、その切開は膿瘍腔へのアクセスを可能にするのに十分な長さと深さである必要がある。典型的には、切開部が膿瘍の直径全体にわたって延在し、その結果、瘢痕化が患者にとって問題になる可能性がある。さらに、皮膚及び組織を貫通して膿瘍に到達させるべく長手方向の力を利用することは、下にある組織構造を不注意で穿刺するリスクを伴う。
【0006】
したがって、膿瘍の外科的治療は、ヘルスケアシステム及び患者にとって経済的に費用がかかり、その上外科手術及び全身麻酔薬の投与に関連するリスクも伴う。
【0007】
他の医療処置も同様に、液体または気体であり得る流体を排出するために患者の体の流体収集部位へアクセスすることが必要となり得る。それらの医療処置の少なくとも一部は、膿瘍ドレナージ処置に対する同様の問題やリスクを共有している。
【0008】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、装置、物品などのいかなる論述も、これらの事項の一部または全部が従来技術の基礎の一部を形成するということ、またはそれらは添付の特許請求の範囲のそれぞれの優先日より前に存在していたような本開示に関連する分野における共通の一般的な知識であったということを承認するものとしてみなされるべきではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
第1の態様によれば、カニューレと摺動可能に係合される貫通要素を備える経皮ドレナージ装置が開示されている。貫通要素は、患者の組織を貫通してカニューレの開口端を皮下の流体堆積部位に導入するように適合された穿刺端を有しており、カニューレが患者から流体の堆積を排出することができる通り道を備える。
【0010】
貫通要素は、カニューレに摺動可能に配置でき貫通要素がカニューレに対して同心円状に配置されている第1の位置と、貫通要素がカニューレから後退され分離される第2の位置との間で移動可能であり得る。一実施形態では、貫通要素は第1の位置にあるときに、カニューレの管腔に配置される。
【0011】
貫通要素は、穿刺端に、または穿刺端に隣接するねじ部を有することができる。ねじ部は、穿刺端に向かって先細になっていてよい。ねじ部は、皮下の流体堆積部位の方へ、使用中に患者の組織内に貫通要素を向かわせるまたは穿孔するのを補助する。ねじ部は、1つまたは複数のねじ山を有することができる。
【0012】
穿刺端は、患者の組織への最初の切開を作出するために、切断具または尖った先端を任意に備えてもよい。切断具または尖った先端は、貫通要素を患者の組織内へ向かわせるか穿孔する前に、取り外すまたは後退させることができる。
【0013】
穿刺端は、その長手方向軸の周りで貫通要素を回転させることによって、患者の組織内に向かわせることができる。回転は、穿刺端とは反対側の貫通要素の端部に配置されたハンドルの回転操作によって作動させることができる。患者の組織内へと穿刺端が回転することは、組織が徐々に伸張すること、及びカニューレの一端が組織内へ、また皮下の流体堆積部位の方へと円滑に入ることを可能にする。
【0014】
貫通要素は固定手段によってカニューレの管腔の内側で回転するのを防止することができる。カニューレはまた、ハンドルの回転操作によって貫通要素と共に回転することができ、それによって、貫通要素とカニューレの両方を患者の組織内へと向かわせることができる。
【0015】
貫通要素は、カニューレから貫通要素が後退している間に陰圧を発生させるように、カニューレの管腔との狭い公差を有してもよい。これは、流体の堆積の最初の吸引を補助し得る。
【0016】
カニューレの外面の少なくとも一部は、穿孔し、それによって経皮ドレナージ装置を患者の組織の中へ、また流体収集部位の方へ向かわせるのを補助するためにねじが切られていてもよい。
【0017】
貫通要素とカニューレの一方または両方の少なくとも一部は、放射線不透過性材料からなっていてもよい。経皮ドレナージ装置は、1つまたは複数の放射線不透過性の深さのマーキングを備えることができる。
【0018】
カニューレの長さは、脆弱な部分を切断またはスナップすることによって、貫通要素を取り除いた後に調整することができる。カニューレの一部は、カニューレの長さの任意の調整後に患者の皮膚から突き出てもよい。カニューレは、貫通要素の除去後に患者から取り外されても、ある期間にわたりインサイチュに留まってもよい。
【0019】
カニューレは、係留手段により患者にインサイチュで固定してもよい。係留手段は、患者から突き出ているカニューレの部分の外周の周りにクランプする、ヒンジ付きクランプなどのクランプを備えることができる。係留手段はまた、カニューレを直接取り囲む患者の皮膚に直接付着し得る接着部分を有し得る。
【0020】
経皮ドレナージ装置は、収集管理構成要素または収集容器を備えることができる。収集容器は、使用時にカニューレと流体連通するように配置され、患者からカニューレを通して排出される流体の堆積物を受け取る。
【0021】
収集容器は、必要に応じた収集容器の取り付け、取り外し及び交換を可能にするために、コネクタ手段によって係留手段に取り付けられてもよい。
【0022】
収集容器は、収集容器内に陰圧を発生させるための圧力調整手段を含むことができ、それは弁手段を含むことができる。
【0023】
本明細書を通じて、単語「comprise(含む)」、または「comprises(含む)」もしくは「comprising(含む)」などの変形は、既定された要素、整数またはステップ、または要素群、整数群またはステップ群を包含するが、いかなる他の要素、整数またはステップ、または要素群、整数群またはステップ群をも排除することを意味するものではないことが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
これより本開示の実施形態を、添付の図面を参照しながら単なる例として説明する。
図1】本開示の一実施形態による経皮ドレナージ装置である。
図2図1の経皮ドレナージ装置の貫通要素の一実施形態である。
図3図1の経皮ドレナージ装置の貫通要素のさらなる実施形態である。
図4図1の経皮ドレナージ装置のカニューレの正面斜視図及び背面斜視図である。
図5図5aは、開位置にある経皮ドレナージ装置の係留手段の実施形態である。図5bは、閉位置にある係留手段である。
図6】経皮ドレナージ装置の流体収集容器の正面斜視図及び背面斜視図である。
図7】本開示の経皮ドレナージ装置の使用の一連のステップを表したものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面において、同様の参照番号は類似した部分を示している。
【0026】
経皮ドレナージ装置の実施形態を、これから例としてのみ説明する。
【0027】
最初に図1を参照すると、患者からの皮下の流体の堆積の排出に適用される経皮ドレナージ装置10が示されている。経皮ドレナージ装置10は膿瘍の排出に有用であり、主に膿瘍を排出する状況に関して説明される。しかし、本開示の経皮ドレナージ装置10は、任意の皮下の流体の堆積に対する接近及びそれらの排出を得ることにおいて有用性があり、皮下の流体の堆積は液体及び/または気体であり得るということが理解されるべきである。膿瘍の排出という状況において、「流体の堆積」とは、膿瘍の壁の範囲内に保持されている膿、液状の組織及び他のいずれかの関連する液体の集まりを示す。
【0028】
経皮ドレナージ装置10は、管腔24と、第1の開口端28と、反対側の第2の開口端30とを有するカニューレ14を備える。カニューレ14は、一端部のハンドル18と、反対側の穿刺または穿孔端20とを有する細長いシャフト16を備える貫通要素12と摺動可能に係合し得る。貫通要素12は、カニューレ14が貫通要素12の細長いシャフト16と同心である第1の位置と、貫通要素12がカニューレ14から後退されて分離される第2の位置との間を、図2及び図3に示すように、移動可能である。第1の位置では、貫通要素12は、図1に示すように、カニューレ14の管腔24の内側に実質的に配置することができる。
【0029】
図面に示されている実施形態では、第1の位置にあるときに、貫通要素12が固定手段によってカニューレ14の管腔24の内側で回転するのを防止することができる。図2図4に示す実施形態では、固定手段は、カニューレ14の第2の開口端30に隣接する管腔24の表面に配置された1つまたは複数の溝32を含む。1つまたは複数の溝32は、ハンドル18に隣接して貫通要素12の端部に配置されている、対応する1つまたは複数のリブ34と係合する。
【0030】
貫通要素12の第1の実施形態が図2に示されている。この実施形態では、貫通要素12は、一端部のハンドル18と、反対側の穿孔または穿刺端20とを有する細長いシャフト16を備える。図2に示している実施形態では、穿刺端20は小さな刃などの切断具である。
【0031】
貫通要素12の第2の実施形態が図3に示されており、穿刺端20は尖った先端を備える。穿刺端20は、患者の皮膚や組織内へと穿刺して、または最初の切開を実行して、最初の開口部を作出するために、使用することができる。切断具または尖った先端は、経皮ドレナージ装置10を、患者の組織内へ、また皮下の流体堆積部位の方へ向かわせるか、さもなければさらに導入する前に後退させるか、さもなければ取り外すことができる。
【0032】
貫通要素12の細長いシャフト16は、穿刺端20に、または穿刺端20に隣接するねじ部22を有する。示している実施形態では、ねじ部22は、穿刺端20に向かって先細になっており、その表面に螺旋形のねじ山のある先細の先端を備える。貫通要素12が第1の位置にあるとき、ねじ部22の少なくとも一部は、カニューレ14の第1の開口端28から外向きに延びる。ねじ部22は、1つまたは複数のねじ山を有することができる。
【0033】
ねじ部22は、貫通要素12が長手方向軸の周りを回転するときに患者の体内に穿孔して向かわせることができるようにする。貫通要素12のねじ部22のこの回転及び最初の駆動は、着実にかつ徐々に広がって、最初の切開の開口部を増大させる。貫通要素12が穿孔され、患者の体内に向かわされると、最初の切開の開口部は、カニューレ14の円滑な導入が可能になる大きさまで増大することができる。
【0034】
ねじ部22は、細長いシャフト16の回転により、穿孔して組織内に向かわせることが可能である。回転は、ハンドル18の回転操作によって作動される。この機構は、有利にも、膿瘍の上にある組織を経る通り道を作り出すべく低いまたは最小限の長手方向の力が必要となる。最小限の長手方向の力を適用することで、患者に偶発的に穿刺するリスク、または損傷を与えるリスクを軽減することができる。
【0035】
貫通要素12は、使用時に、カニューレ14から貫通要素12が後退している間に陰圧を発生させるように、カニューレ14の管腔24との狭い公差を有してもよい。貫通要素12の細長いシャフト16の一部は、カニューレ14との公差をさらに減少させ、その中にシールを形成するために、細長いシャフト16の残りの部分に対してより大きい外径を有するバルジ部(図示せず)を有することができる。バルジ部は、ねじ部22に隣接して配置することができる。バルジ部は、使用時、貫通要素12をカニューレ14から後退させるときの陰圧の発生を、さらに補助することができる。このことは、経皮ドレナージ装置10が患者の組織及び流体堆積部位に適切に配置されると、流体の堆積の最初の吸込みを助力するようにし得る。
【0036】
その実施形態が図4に示されているカニューレ14は、可撓性または硬質であり得る細長い中空シリンダ26を含む。カニューレ14は、はさみなどの標準的な外科用切断器具によって切断することができる生体安定材料または生体吸収性材料から作製することができる。あるいは、カニューレ14は、スナップまたは壊すことができる材料から作製してもよい。カニューレ14は、細長い中空シリンダ26の全長に沿って間隔を置いて配置された1つまたは複数の脆弱な部分に沿って、スナップまたは壊すことができる。したがって、カニューレ14の全長は必要に応じて細長い中空シリンダ26の全長に沿って切断またはスナップすることで調整できる。
【0037】
カニューレ14の管腔24は、貫通要素12の細長いシャフト16の直径に匹敵する直径を有し得る。管腔24の直径は、最小限の閉塞のリスクで、患者の身体から出る流体の堆積が流れて排出されるのを可能にするのに十分に大きくすることができる。
【0038】
カニューレ14は、貫通要素12の細長いシャフト16と同心であり得る。第1の位置にあるとき、細長いシャフト16は管腔24の内側に位置することができ、貫通要素12の穿刺先端20の少なくとも一部は、図1に示すように、第1の開口端28から外向きに延びることができる。第1の開口端28は、第1の位置にあるとき、及び経皮ドレナージ装置10が患者の組織に向かわされるかさもなければ導入されるときに、貫通要素12に滑らかな移行をもたらすように、斜面または面取り部を有することができる。
【0039】
カニューレ14の外面の少なくとも一部にねじを切って、ねじ面27を設けることができる。図面に示す実施形態では、外面の大部分にねじが切られている。ねじ面27は、経皮ドレナージ装置10の患者の組織への穿孔及び駆動を補助することができる。固定手段によって内部に配置及び固定された貫通要素12を有するカニューレ14は、ハンドル18の回転操作によって、組織内へと向かわせることができる。
【0040】
カニューレ14は、カニューレ14が組織と接触しているときに真空のシールを防止するために、第1の開口端28に隣接している1つまたは複数のキャスタレーションまたはオリフィス29を備えていてもよい。カニューレ14はまた、膿瘍の深さの位置に関するガイダンスを提示するために、外面にマーキング36を備えることができる。マーキング36は、カニューレ14の表面にエッチング、印刷、刻み目を設ける、または他の方法で設けることができる。
【0041】
貫通要素12とカニューレ14の一方または両方の少なくとも一部は、放射線不透過性材料からなっていてもよい。カニューレ14の表面には、1つまたは複数の放射線不透過性の深さのマーク(図示せず)が存在してもよい。したがって、経皮ドレナージ装置10は、超音波などの画像化ガイダンスを用いて、患者の体内及び皮下の流体堆積部位に導入及び誘導され得る。
【0042】
経皮ドレナージ装置10は、係留手段38または固定サブアセンブリをさらに備えることができる。図5a及び図5bに示す実施形態では、係留手段38はヒンジ付きクランプ40を備え、これは互いにヒンジで連結された一対の半円筒形または半円形部分または半部42を備える。半円筒形部分42は、図5aに示す開位置と図5bに示す閉位置または係止位置との間で移動可能である。
【0043】
半円筒形部分42は、単純なラッチ機構などの固定手段によって閉位置に係止することができる。一旦係止されると、半円筒形部分42は、カニューレ14の外周と同じくらいの円周を有する境界面または内面44を有する円筒または円を形成する。半円筒形部分42は硬質の材料で作成でき、それによって、ヒンジ付きクランプ40が閉位置にあるとき、内面44は硬質の境界面を備える。
【0044】
係留手段38は、半円筒形部分42から半径方向外向きに延びる接着部分46をさらに含む。示している実施形態では、接着部分46は、半円筒形部分42の軸に対して垂直に配置された接着パッドを含む。接着パッドは可撓性であってよく、患者の皮膚に直接付着する。
【0045】
内面44を有するヒンジ付きクランプ40は、カニューレ14の細長い中空シリンダ26の周りをクランプすることができる。ヒンジ付きクランプ40は、摩擦嵌合または接着剤などの適切な手段によってカニューレ14の周りの適所に固定することができる。あるいは、内面44は、カニューレ14に機械的に取り付けることができるように、ねじを切っても、他の適切な構成を有してもよい。
【0046】
係留手段38は、係留手段38が収集管理構成要素または収集容器48に接続することを可能にするためにコネクタ手段をさらに備えることができる。図5a、図5b及び図6に示す実施形態では、コネクタ手段は、一対のフランジ50を備え、これは半円筒形部分42が閉位置にあるときに形成される円筒または円の端部から半径方向外向きに延びる。フランジ50は、収集容器48の壁の対応する開口部52に入り込むように適合されている。フランジ50が開口部52を通って収集容器48の内部に挿入されると、ツイストロック機構によって、収集容器48を回転させて収集容器48を係留手段38に固定することができる。収集容器48は、反対方向に回転し、フランジ50を開口部52から引き出すことによって取り外すことができる。したがって、収集容器48は、必要に応じて交換または置換えることができる。
【0047】
収集容器48の一実施形態を図6に示す。この実施形態では、収集容器48は、開口部52が配置される後壁54を有する中空の容器またはリザーバを含む。収集容器48の前壁56は、その外面にマーキング58を有することができ、これは、膿瘍から排出される堆積量に関する誘導を成すために印刷、エッチングまたはラベル付けすることができる。収集容器48は、患者の身体からの突出量を最小限にするために、細いまたは平らな構成を有する。一実施形態では、収集容器48は、患者の体から約40mm以下、理想的には35mm以下突出するような大きさ及び構成を有する。
【0048】
収集容器48は、硬質、半硬質または吸収性のリザーバであり得る。硬質または半硬質の場合、経皮ドレナージ装置10が患者に適切に配置されると、収集容器48は、陰圧を供給して患者からの流体の堆積の吸込みを助力するための手段を有することができる。収集容器48は、収集容器48の気圧を均一にするために1つまたは複数の開口部58を備えることができる。
【0049】
収集容器48は、収集容器48内に陰圧を発生させるための圧力調整手段(図示せず)を含むことができる。一実施形態では、圧力調整手段は弁60を含むことができる。弁60は一方向弁であってもよい。臨床医または他の作業者は、収集容器48の変形可能な部分またはその一部を圧縮するか内側に押圧して、ガスを収集容器48から弁60を介して放出させることができる。収集容器48またはその一部が変形されていない状態に戻り始めると、陰圧が収集容器48の内側に生成されて、堆積した流体を、カニューレ14を通って収集容器48内に吸引することを実現する。
【0050】
図7を参照すると、本開示の経皮ドレナージ装置10の使用の一連のステップが示されているが、一連のステップは臨床医の好みに応じて変わり得るということを理解されたい。患者に存在する膿瘍または他の体液の堆積は、まず臨床医によって突き止められる。標的部位の周囲に局所麻酔薬を投与した後、通例の外科用メス(ステップ2a)または貫通要素12の穿刺先端20のいずれかによって、最初の切開が組織に施される。一旦最初の切開が施されると、経皮ドレナージ装置10を患者の組織に向かわせる前に、穿刺先端20を後退させるか、そうでなければ取り外すことができる。
【0051】
次に、臨床医は、ハンドル18及び貫通要素12を周囲のカニューレ14と共に手動で回転させることによって、経皮ドレナージ装置10の組織内への駆動を開始することができる(ステップ3a及び3b)。患者における経皮ドレナージ装置10の駆動及び位置決めは、超音波または蛍光透視法などの画像化ガイダンスにより補助し得る。貫通要素12のねじ部22は、経皮ドレナージ装置10の駆動機能を補助し、ねじりのエネルギーを直線運動に変換する。有利なことに、このことはより大規模な位置の制御をもたらしながら、同時に組織内への下向きの力の必要性を減らすことができる。貫通要素12が組織内に向かわされると、ねじ部22は皮膚組織をカニューレ14上に穏やかに引き伸ばし、このことが部位の罹患を減少させるのに役立ち得る。カニューレ14の表面にねじを切ることはまた、経皮ドレナージ装置10が組織の中へ、また標的の流体堆積部位の方へさらに向かうのに助力し得る。
【0052】
臨床医は、画像化ガイダンスによって、カニューレ14の第1の開口端28が標的の流体堆積部位に到達したと判断することができる。カニューレ14の第1の開口端28が膿瘍または標的の流体堆積部位に到達すると、臨床医は、貫通要素12のハンドル18を握り、患者の身体から引き離して貫通要素12を後退させ、それをカニューレ14(ステップ4)から第2の開口端30を経て除去することができる。臨床医は、貫通要素12の後退時に膿または他の流体が存在していることを視覚的に見ることによって、カニューレ14の第1の開放端28が標的の流体堆積部位に適切に配置されていることをさらに確認することができる。貫通要素12とカニューレ14との間の公差が狭いことは、貫通要素12がカニューレ14から後退している間に陰圧を発生させて、膿瘍からカニューレ14の管腔24内への流体の堆積の吸引及び流れを開始させることができる。これにより、カニューレ14は、膿瘍内容物が患者の体から排出され得る抽出経路を備える。
【0053】
斜面のある、または面取りされた第1の開放端28が膿瘍または標的の流体の堆積にインサイチュで配置された状態でカニューレ14を適所に保持して、必要に応じてカニューレ14の長さをトリミングすることができる。カニューレ14は、はさみを使用して大きさを合わせるように切断しても(ステップ5)、適切な脆弱な部分に沿ってスナップ止めしてもよい。カニューレ14はトリミングすることができ、その結果小さな部分が患者の皮膚から突出したままであるようにする。患者の皮膚から突き出ているカニューレ14の部分は、係留手段38の取り付けを可能にするのに十分な長さであり得る。
【0054】
カニューレ14は定位置に保持され、患者の皮膚から突出しているカニューレ14の部分に取り付けられる係留手段38によって、患者に固定される。図面に示す実施形態では、硬質内面44を有するヒンジ付きクランプ40が、患者の皮膚から突出しているカニューレ14の部分に取り付けられている。ヒンジ付きクランプ40は、一対のフランジ50がカニューレ14の最外端から半径方向に延びるように、カニューレ14に位置決めすることができる。係留手段38の接着部分46は患者の皮膚に直接取り付けることができる。
【0055】
カニューレ14と患者の皮膚の両方へ係留手段38を二重に取り付けることで、適宜カニューレ14を定位置に維持して収集容器48を取り付けるための係留が設けられる。収集容器48は、コネクタ手段によって係留手段38に取り付けることができる。示している実施形態では、突出カニューレ14の最外端から半径方向に延びる係留手段38のフランジ50は、収集容器48の壁の対応する開口部52と一直線になっており、それを通って押される。次いで、収集容器48は、約90°回転させて収集容器48を係留手段38上に係止する。
【0056】
臨床医は、圧力調整手段を作動させて収集容器48の内側に陰圧を発生させることができる。臨床医は、収集容器48の変形可能な部分を圧縮し、収集容器48の内側の容積部を減少させ、弁60を通して空気を放出し、陰圧を発生させることができる。収集容器48が変形していない状態に戻り、収集容器48内で圧力が均一になり始めると、流体が流体堆積部位からカニューレ14内に吸引される。
【0057】
収集容器48がそのように取り付けられて開口部52を介してカニューレ14と流体連通している状態で、堆積している流体は患者の体からカニューレ14を通って収集容器48の中へ移動することができる(ステップ6)。カニューレ14は、典型的には最大7日間、または流体の堆積が適切に排出されたとみなされるまでの間などの期間にわたり、インサイチュで経皮的に留まることができる。したがって、カニューレ14は、皮膚及び皮下脂肪の開口部を維持するように作用して、経時的な流体の堆積の排出を可能にする。
【0058】
代替として、カニューレ14は、貫通要素12を取り外した直後に取り外すことができる。取り外す前に、カニューレ14は、液体及び/または気体を含む流体が患者から出るまたは排出できる通り道を設けることができる。カニューレ14を取り外した後、経皮ドレナージ装置10を導入することによって組織内に作出される通り道は、依然として患者からの流体のドレナージを可能にし得る。
【0059】
収集容器48の外面のマーキング58から、どれだけの量の流体が患者から排出されたかの指標が得られる。所望であれば、収集容器48を係留手段38から引き離す及び取り外すことができる。収集容器48は廃棄しても、内容物の分析のために実験室に送ってもよい。さらなる流体が排出されるべきである場合、取り外された収集容器48は新しい収集容器48と換えることができる。したがって、本開示の経皮ドレナージ装置10は、膿瘍の経皮的なアクセス及びドレナージ、ならびに治癒の間の継続的な膿瘍内容物の管理を組み合わせる。
【0060】
膿瘍が十分に排出されたと判断されたら、カニューレ14を患者から取り外すことができる。経皮ドレナージ装置10のすべての構成要素は使用後に廃棄してもよい。
【0061】
本開示の経皮ドレナージ装置10は、実質的に上述のように経皮的に配置されると、皮下の膿瘍の内部から流出させるための、膿、デブリ、及び死んだ組織の任意の組み合わせを含む厚い複雑な堆積物用の低圧チャネル及び通り道を有利にも備える。
【0062】
本開示の経皮ドレナージ装置10は、膿瘍を治療するために使用することができる低侵襲性の療法を提供するのに必要なすべての構成要素を好都合にも提供する。経皮ドレナージ装置10を使用する臨床医は、入院を必要としない状況で膿瘍または他の類似する皮下の流体の堆積を、迅速かつ容易に排出することができる。したがって、本開示の経皮ドレナージ装置10は、有利にも、膿瘍及び他の皮下の流体の堆積の処置を、入院患者の入院、手術、及び関連する患者のリスクを必要とするコストの高い状況から、臨床的な治療時間とそれに伴う患者のリスクの減少を伴う比較的低コストの外来処置にシフトさせる。
【0063】
実施例
以下の表1に示される仕様を有する貫通要素12の実施形態を使用して、以下の一連の試験が行われた。
【表1】
【0064】
各貫通要素A~Dを試験して、(i)回転力を加えたときに組織に進入して向かわせる能力;(ii)最初の切開が必要かどうか;(iii)皮膚の損傷またはねじれの程度;及び(iv)貫通要素を組織からいかに容易に取り外すことができるかを判定した。また、これらの試験の結果は上記の表1に含まれる。各貫通要素を新鮮な凍結させた死体の大腿上部領域で試験した。
【0065】
それぞれの場合において、皮膚への最初の切開は、貫通要素の貫通点を導入する前に必要とされた。試験用の貫通要素A及びCは進入時に皮膚のねじれを生じ、それらが周囲の組織に損傷を与え得ることを示している。試験用の貫通要素B及びDは皮膚への損傷が少なく、試験用の貫通要素Dが最小の損傷を生じたことを示している。
【0066】
試験用の貫通要素A及びBは、軸方向の圧力を加えた後にのみ組織内に向かわせることができた。試験用の貫通要素Aは、著しい軸方向の圧力を加えることを必要とし、3cmの深さのみに達した。試験用の貫通要素Bは、軸方向の圧力を最初に加えることを必要としたが、約1cmの深さに達すると、組織内に駆動され始めた。試験用の貫通要素Cは、回転力のみを加えることによって、約1cmの深さまで組織内に侵入することができた。測定された約3cmの深さまでさらに向かわせるためには最小の軸方向の圧力が必要であった。試験用の貫通要素Dは、組織内への駆動を開始して続けるのにほとんどまたはまったく軸方向の圧力を必要としなかった。
【0067】
多数の変形及び/または修正は、本開示の広い一般的な範囲から逸脱することなく、上述した実施形態になされ得ることが当業者によって理解されるであろう。したがって、本実施形態は、あらゆる点で説明するものであり、限定するものと見なされるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7