(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】クロストリジウム類毒素を含むワクチン
(51)【国際特許分類】
A61K 39/08 20060101AFI20230914BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20230914BHJP
A61K 39/10 20060101ALI20230914BHJP
A61K 39/102 20060101ALI20230914BHJP
A61K 39/02 20060101ALI20230914BHJP
A61K 39/118 20060101ALI20230914BHJP
A61K 39/05 20060101ALI20230914BHJP
A61K 39/106 20060101ALI20230914BHJP
A61K 39/108 20060101ALI20230914BHJP
A61K 39/095 20060101ALI20230914BHJP
A61K 39/104 20060101ALI20230914BHJP
A61K 39/112 20060101ALI20230914BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20230914BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20230914BHJP
A61K 39/145 20060101ALI20230914BHJP
A61K 39/23 20060101ALI20230914BHJP
A61K 39/225 20060101ALI20230914BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230914BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230914BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230914BHJP
C07K 14/33 20060101ALN20230914BHJP
C12N 7/04 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
A61K39/08
A61K39/39
A61K39/10
A61K39/102
A61K39/02
A61K39/118
A61K39/05
A61K39/106
A61K39/108
A61K39/095
A61K39/104
A61K39/112
A61K39/215
A61K39/12
A61K39/145
A61K39/23
A61K39/225
A61P37/04
A61P31/04 171
A61P43/00 121
C07K14/33 ZNA
C12N7/04
(21)【出願番号】P 2019564131
(86)(22)【出願日】2018-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2018065025
(87)【国際公開番号】W WO2018224595
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-05-13
(32)【優先日】2017-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517209868
【氏名又は名称】ヒプラ シエンティフィック エセ.エレ.ウ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジベール ペレス,ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】シティア アルナウ,マルタ
【審査官】平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-516721(JP,A)
【文献】特表2008-536936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K39/00~39/44
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)クロストリジウム・ディフィシルA類毒素(TcdA)、クロストリジウム・ディフィシルB類毒素(TcdB)、及びこれらの混合物からなる群から選択される1又は複数のクロストリジウム・ディフィシル類毒素と、並びに
(b)1又は複数のクロストリジウム・パーフリンジェンスA型類毒素と、
を含む、
子孫の出生前に、免疫原性組成物を妊娠している雌のブタに投与することを含む、クロストリジウム種によって引き起こされる疾病に対する母性受動免疫を雌のブタの子孫へ付与する方法において使用するための免疫原性組成物。
【請求項2】
クロストリジウム・ディフィシルA類毒素、クロストリジウム・ディフィシルB類毒素、及びクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素を含む、請求項1に記載の
使用のための免疫原性組成物。
【請求項3】
1又は複数の追加の抗原を更に含み、前記追加の抗原が、アクチノバチルス、ボルデテラ、ボレリア、ブラキスピラ、ブルセラ、カンピロバクター、クラミジア及びクラミドフィラ、クロストリジウム、コリネバクテリウム、エンテロコッカス、エリシペロスリクス、エシェリキア、フランシセラ、ヘモフィルス、ヘリコバクター、イソスポラ、ローソニア、レジオネラ、レプトスピラ、リステリア、マイコバクテリウム、マイコプラズマ、ナイセリア、パスツレラ、シュードモナス、リケッチア、サルモネラ、シゲラ、スタフィロコッカス、ストレプトコッカス、トレポネーマ・ビブリオ及びエルシニア属、ブタ繁殖及び呼吸障害症候群ウイルス、ブタインフルエンザウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス、ブタパルボウイルス、脳心筋炎ウイルス、コロナウイルス、ロタウイルス、ブタ離乳後成長不全症候群因子、古典的ブタ熱ウイルス、アフリカブタ熱ウイルス、カリシウイルス、トルクテノウイルス(TTV)、伝染性胃腸炎コロナウイルス(TGEV)、ブタ流行性下痢ウイルス(PED)、ブタサーコウイルス、並びにこれらの組み合わせからなる微生物の群から選択される、請求項1~2のいずれか1項に記載の
使用のための免疫原性組成物。
【請求項4】
前記1又は複数の追加の抗原が、イー・コリF4ab、F4ac、F5及びF6線毛アドヘシン、イー・コリLTエンテロトキソイド、クロストリジウム・パーフリンジェンスC型類毒素、クロストリジウム・ノービイB型類毒素、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載の
使用のための免疫原性組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の
使用のための免疫原性組成物と薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体と、を含む、
子孫の出生前に、ワクチンを妊娠している雌のブタに投与することを含む、クロストリジウム種によって引き起こされる疾病に対する母性受動免疫を雌のブタの子孫へ付与する方法において使用するためのワクチン。
【請求項6】
アジュバントを更に含む、請求項5に記載の
使用のためのワクチン。
【請求項7】
クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・パーフリンジェンス、及びこれらの混合物から選択されるクロストリジウム種による腸管感染症及び/又は腸疾患の予防及び/又は治療において使用するための、請求項
1~
6のいずれか1項に記載の免疫原性組成物
又はワクチン
。
【請求項8】
母性受動免疫を付与する前記方法が妊娠した雌の
ブタへの少なくとも2回の投与を含む、請求項
1~7のいずれか1項に記載の使用のための免疫原性組成物
又はワクチン
。
【請求項9】
鼻内に、皮内に、経粘膜的に、皮下に、エアロゾルを用いて、筋肉内に、静脈内に又は経口に使用するための、請求項
1~9のいずれか1項のいずれか1項に記載の使用のための免疫原性組成物
又はワクチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年6月9日に出願された欧州特許出願第17382358.4号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、免疫学的組成物及びワクチンの分野に関する。より具体的には、本発明は、クロストリジウム類毒素、特に、クロストリジウム・ディフィシル類毒素及びクロストリジウム・ディフィシル類毒素とクロストリジウム・パーフリンジェンスA型類毒素との混合物を含む免疫学的組成物及びワクチン、並びにクロストリジウム症に対して動物を保護するための免疫学的組成物及びワクチンの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
クロストリジウムは、芽胞を形成するグラム陽性嫌気性細菌である。クロストリジウムは、細菌のあらゆる種類のなかで、最も多くの毒素を産生する。クロストリジウムは、家畜及び野生動物の両方の病原体として広く認知されている。現在公知のクロストリジウム種のうち、クロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)及びクロストリジウム・パーフリンジェンス(C.perfringens)は、最も広く発生する細菌性病原体であるとしばしば考えられており、家畜の腸疾患の原因因子として特に意味がある。これらの病原性は、多数の外毒素の産生によるものである。
【0004】
クロストリジウム・ディフィシル感染は、ヒト、ブタ、ウマ、ヒト以外の霊長類、ウサギ、ラット、イヌ、ハムスター、及びネコで記載されている(Arroyo L.G.ら、2005;Debast S.B.ら、2009)。抗生物質治療又は細菌叢が未発達な新生仔動物において一般的に観察され得るように、症例の大半は、腸の細菌叢の破壊を伴う(Lawley T.D.ら、2009)。
【0005】
外毒素A(TcdA、エンテロトキシン)及びB(TcdB、サイトトキシン)は、疾病と関連する主な病原性因子であると考えられている(Carter G.P.ら、2010;Voth D.E.ら、2005)。TcdA及びTcdB毒素は、巨大なクロストリジウム糖鎖付加毒素ファミリーに属し、それぞれ、308及び269kDAの分子量を有する。毒素産生性タンパク質A及びBの両方をコードする遺伝子配列が明らかとなっている(Barrosoら、1990;Doveら、1990)。クロストリジウム・ディフィシルは、二元毒素(CDT)等のその他の毒素も産生し、これはクロストリジウム・ディフィシル感染の重症度の増加と関連している。
【0006】
クロストリジウム・ディフィシルは、生後一週間、ブタにおける重要な腸の病原体でもある。クロストリジウム・ディフィシル関連疾患(CDAD)は、未経産ブタ又は2回以上出産経験がある雌ブタから生まれた1~7日齢の仔ブタに発症する。経過としては、早期に下痢が始まり、呼吸不全を伴うことはまれで、突然死が起こる。通常、結腸間膜の浮腫が存在し、結腸は、ペースト状ないし水状の黄色っぽい内容物を有することがある。Songerらは、クロストリジウム・ディフィシルに侵されたブタの群れでは、同腹仔の最大2/3が発症し、同腹仔の中では、死亡率は97~100%にも達し得ることを示した(Anderson M.A.ら、2008;Songer J.G.ら、2004)。仔ブタにおけるクロストリジウム・ディフィシル感染症に伴う一般的な肉眼的及び組織学的な病変には、それぞれ、結腸間膜の浮腫及び化膿性の潰瘍性大腸炎が含まれる。
【0007】
ここ10年にわたり、この疾病に対する注目が養豚において高まっているが、疫学、予防、及び治療の理解を深めるために更なる研究が必要とされている。クロストリジウム・ディフィシルに対する実験用ワクチンが、様々な動物で調べられてきた。例えば、特許文献1は、クロストリジウム・ディフィシル類毒素A及びBを不活化する方法並びにハムスターでの免疫化のための、得られた類毒素を含む組成物の使用を開示している。現在、クロストリジウム・ディフィシルに対して、ブタ等の家畜を保護するために利用可能な市販のワクチンは存在しない。
【0008】
他方、クロストリジウム種のうち、クロストリジウム・パーフリンジェンスは、主要な毒素産生菌であり、最も広く蔓延している菌でもあるため、動物及びヒトの細菌叢の一部として見出され、土壌中にも見出される。クロストリジウム・パーフリンジェンスは、グラム陽性・嫌気性・発酵性・芽胞形成桿菌であって、主要な毒素:α毒素、β毒素、ε毒素、及びι毒素の産生によってAからEと表記される異なる生物型に分類される。β-2毒素、θ毒素、μ毒素、δ毒素、κ毒素、λ毒素、クロストリジウムエンテロトキシンCPE、壊死性腸炎B様毒素(NetB)等のその他の毒素も、クロストリジウム・パーフリンジェンス株によって産生される。獣医学において、クロストリジウム・パーフリンジェンスは、幾つかの疾病、多くは腸の疾病の原因である。クロストリジウム・パーフリンジェンスA型感染症は、ブタにおける腸疾患、新生仔ブタ及びその他の動物における下痢の主な原因である。クロストリジウム・パーフリンジェンスA型は、一部の研究者によって、仔ブタにおける早発性下痢の主要な原因と考えられている(Songer J.G.ら、2005;Chanら、2012)。過去10年間、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型を原因とする新生仔ブタの下痢の診断が増加しており、離乳前死亡率の増加と関連している。クロストリジウム・パーフリンジェンスA型は、一般に、生後1週目の新生仔を侵す。この疾病は、非出血性の粘液性下痢として記載されており、微生物による付着及び侵入がなく、粘膜の壊死及び絨毛の萎縮が特徴である(Songer J.G.ら、2005)。幾つかの研究によると、病変が存在しないこともあり得、これを踏まえて、幾つかのグループは、新生仔ブタにおけるクロストリジウム・パーフリンジェンス下痢は分泌性の可能性があると述べている(Songer J.G.ら、2005;Cruz-Junior E.C.ら、2013)。病原性のクロストリジウム・パーフリンジェンスA型と共生しているクロストリジウム・パーフリンジェンスA型とを識別することができないために、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型の診断は極めて困難である(Songer J.G.ら、2005)。β-2毒素は、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型に罹患しているブタに対する具体的なブタ病原因子と想定されたが、この事実にはなお議論がある。
【0009】
クロストリジウム・パーフリンジェンスのα毒素は、巨大な公知の毒素であり、その配列と構造は解明されている。成熟したタンパク質は370アミノ酸長であり、43kDaの分子量を有する(Justin N.ら、2002)。
【0010】
クロストリジウム・パーフリンジェンスを駆除するための現行の努力は、衛生上の措置及び動物の餌での抗生物質の使用に基づいている。クロストリジウム・パーフリンジェンスA型に対してブタを保護するためのワクチンは希である。現在市販されているワクチンは1つだけしか存在しない(ClostriporcA,IDT Biologika GmbH,Germany)。この理由の1つは、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型が通常の細菌叢を構成しているという事実であろう。例えば、家禽等の他の動物種に対して、特許文献2に詳述されているような類毒素又は組換え毒素を用いた、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型に対するワクチン接種が記載されている。しかしながら、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型は、ブタにおける下痢を予防し、抑制するほど効果のある十分な免疫刺激を誘導することはないようである。
【0011】
養豚場生産の分野では、クロストリジウム症は、しばしば同時に発生し、従って、数種の細菌種から動物を同時に保護するのが極めて望ましいことに留意することが重要である。しかしながら、数種のワクチンの投与は、しばしば複数回の注射を伴い、例えば、投与手法の複雑さや注射容量がより多くなる等、このアプローチには、幾つかの問題が付随する。通常の容量の1つのワクチンに入った全ての必要な抗原を注射し、これにより、ワクチン接種手法が動物にとって傷害と痛みを軽減したものとなり、施行者にとってより効率的で容易に取り扱えるようになることが、動物及び施行者の両者にとって望ましい。
【0012】
更に、新生仔はより脆弱であることにかんがみると、新生仔を感染症から保護することは極めて重要である。実際に、仔ブタの離乳前死亡率は、養豚業にとって重要な損失を占めている。仔ブタは、しばしば、抗生物質で治療されるが、抗生物質は価格が高く、治療中止後の疾病再発の度合いが高い、細菌耐性の増大に関連する懸念の高まりが存在するなど、この治療法には、幾つかの問題が伴う。従って、食用動物での抗生物質治療を低減するための新しいアプローチが望ましい。
【0013】
ワクチンを通じて仔ブタにクロストリジウムの能動免疫化を行うことは、現在実施されていない。仔ブタの免疫系が未成熟であるため、仔ブタは効果的な免疫応答を開始することができない。1日齢の仔ブタに、即ち仔ブタの生後第一日目からワクチンを投与することを目指す場合、この事実は特に困難である。但し、仔ブタのワクチン接種は、雌ブタの初乳を通じて起こる受動免疫を出生後に母親から供給されることを利用し得ることが知られている。従って、仔ブタに授乳している雌ブタを能動的に免疫化することによって、所定の病原体に対して仔ブタを間接的に免疫化することが可能である。このプロセスは極めて複雑で、複数の要因が重要である。雌ブタの乳汁分泌物は、十分な量の適切な免疫グロブリン(即ち、腸管閉鎖前はIgG、腸管閉鎖後はIgA)を含有しなければならない。免疫グロブリンは、吸収部位又は機能的に活動する部位まで無傷で送達されなければならない。最後に、IgGの場合には、免疫グロブリンは無傷で吸収され、仔ブタの血液循環中に送達されなければならない。その結果、生後第一日目から、雌ブタの初乳を通じた仔ブタの受動免疫化に効果を有する新規ワクチンを開発する必要が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】国際公開第2014/144567A2号
【文献】米国特許出願公開第2015/0140033A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
現在、クロストリジウム・ディフィシルに対する特異的なワクチンは市場に存在しない。より重要なことには、単一のワクチンでクロストリジウム・ディフィシルとクロストリジウム・パーフリンジェンスA型に対するブタ用の混合ワクチンは存在しない。その結果、ブタ等の家畜を保護するために、クロストリジウム・ディフィシルとクロストリジウム・パーフリンジェンスに対する新しい有効なワクチンが必要とされている。特に、仔ブタの死亡率を低下させ、人畜共通感染症を介したクロストリジウムのヒトへの伝達リスクを低下させる必要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、クロストリジウムの異なる種から得られた類毒素の投与が、ブタ等の家畜に効果的な免疫応答を惹起し、家畜をクロストリジウム症から保護することを見出した。予想外のことに、クロストリジウムの類毒素を含むこれらのワクチンによる保護は、更に、動物の子孫に効率的に伝達され、子孫は、既に出生後第一日目に授乳を通じて母性受動免疫を獲得する。
【0017】
従って、第一の態様において、本発明は、家畜において医薬として使用するための、1又は複数のクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)類毒素を含む免疫原性組成物を提供する。
【0018】
第二の態様において、本発明は、家畜において医薬として使用するためのワクチンであって、(a)1又は複数のクロストリジウム・ディフィシル類毒素を含む免疫原性組成物と、(b)薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体と、を含むワクチンも提供する。
【0019】
驚くべきことに、本発明者らは、クロストリジウム・ディフィシル類毒素を含む免疫原性組成物が上記細菌による感染症からブタを保護できることを発見した。動物の糞はこの疾病の主な人畜共通感染源であるので、これは、養豚業にとってだけでなく、人間の集団の健康にとっても極めて重要である。本発明者らの知る限り、これは、クロストリジウム・ディフィシルに対して家畜を効果的に免疫化する能力を有する最初のワクチンである。更に、本発明の組成物は、治療された動物の子孫に伝達されるのにも適しており、子孫は出生後1日目から効果的な受動免疫を獲得する。
【0020】
本発明の第三の態様は、(a)クロストリジウム・ディフィシルA類毒素(TcdA)、クロストリジウム・ディフィシルB類毒素(TcdB)、及びこれらの混合物からなる群から選択される1又は複数のクロストリジウム・ディフィシル類毒素と、(b)1又は複数のクロストリジウム・パーフリンジェンスA型類毒素とを含む、免疫原性組成物に関する。
【0021】
本発明の第四の態様は、本発明の第三の態様に規定されている免疫原性組成物と、薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体とを含むワクチンに関する。
【0022】
これらの第三及び第四の態様は、クロストリジウム・ディフィシルの類毒素とクロストリジウム・パーフリンジェンスの類毒素の組み合わせが、家畜、特にブタに効果的な免疫応答を惹起し、抗原干渉さえ回避するという知見から得られた。実際に、クロストリジウム・ディフィシル及びクロストリジウム・パーフリンジェンス毒素に対して活性を有する抗体が、ワクチン接種された検体の血清中に存在し、妊娠した家畜雌の場合には、これらの移行抗体が、授乳を通じて、活性を有する形態で子孫に移行する。従って、全ての検体での効果的な免疫化(ワクチン接種を受けた雌及び授乳を通じた子孫の免疫化)が推定されるので、出生後第一日目でさえ、子孫の死亡率を最小化し、これにより、家畜の生産、特にブタの生産を増加させるために、及び人畜共通感染症のリスクを低減するために、本発明のワクチンは、家畜の飼育、特にブタの飼育の分野において好評を博すると推測される。
【0023】
従って、本発明の第五の態様は、医薬として使用するための、本発明の第三の態様において規定された免疫原性組成物又は本発明の第四の態様において規定されたワクチンであって、子孫の出生前に、免疫原性組成物又はワクチンを妊娠している雌の家畜動物に投与することを含む、特に授乳によって家畜の雌の子孫へ母性受動免疫を付与する方法において使用するための免疫原性組成物又はワクチンに関する。
【0024】
本発明の第六の態様は、本発明のワクチンを製造する方法であって、上記免疫原性組成物を薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体と混合する工程を含む方法に関する。
【0025】
本発明の第七の態様は、
(a)上記免疫原性組成物と、
(b)薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体と、
を備え、
(c)アジュバントと、
(d)キットの使用説明書と、
を備えてもよい、ワクチン接種キットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施例2に関連する
図1は、クロストリジウム・ディフィシル類毒素A TdcA(A)及び類毒素B TcdB(B)に対するブタ、群A~Cの血清学的応答を示している。群Aは、クロストリジウム・ディフィシル類毒素A及びBを(9.4CPEで)接種されたブタに対応し、群Bは、クロストリジウム・ディフィシル類毒素A及びBを(8.4CPEで)接種されたブタに対応し、群Cは、プラセボワクチンを摂取されたブタに対応する。IgG抗体応答の指標として、O.D.(ELISA光学密度、群の平均)がy軸に表示されている。
【
図2】実施例3に関連する
図2は、初回注射から44日後に異なる混合ワクチンによって免疫化した雌ブタ、群A~Dの血清学的応答を示す棒グラフである。群A及びBは、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型、クロストリジウム・パーフリンジェンスC型、クロストリジウム・ノービイB型及びイー・コリを接種された雌ブタに対応し、群Cは、クロストリジウム・ディフィシルとクロストリジウム・パーフリンジェンスA型を接種された雌ブタに対応し、群Dは、プラセボワクチンを接種された雌ブタに対応する。 イー・コリF4ab線毛アドヘシン(A)、F5線毛アドヘシン(B)、F4ac線毛アドヘシン(C)、LTエンテロトキシン(D)及びF6線毛アドヘシン(E);クロストリジウム・パーフリンジェンスC型類毒素(F);並びにクロストリジウム・ノービイB型類毒素(G)に対するIgG抗体応答の指標として、ELISAのIRPC(相対指数×100)がy軸に表示されている。
【
図3】実施例3に関連する
図3は、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型CpA(A)並びにクロストリジウム・ディフィシルTcdA(B)及びTcdB(C)類毒素に対する血清学的応答を示している。群A~Dは、
図2において定義されているとおりである。IgG抗体応答の指標として、ELISAのIRPC(相対指標×100)がy軸に表示されている。
【
図4】実施例3に関連する
図4は、ワクチン接種された雌ブタの初乳中のクロストリジウム・パーフリンジェンスA型CpA(A)並びにクロストリジウム・ディフィシルTcdA(B)及びTcdB(C)類毒素の抗原に対する抗体力価を示している。群A~Dは
図2に定義されているとおりである(群Aは左側第一列、群Bは第二列、群Cは第三列、Dは第四列)。ELISAのIRPC(相対指標×100)がy軸に表示されている。
【
図5】実施例4に関連する
図5は、異なる混合ワクチンで受動的に免疫化された後、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型(A)、クロストリジウム・ディフィシル(B)で攻撃誘発されるか、又は攻撃誘発されなかった(C)仔ブタの生存曲線を示しており、群A~Dは
図2に定義されているとおりである。仔ブタの分娩後の日数がx軸に、生存率がy軸に表示されている。
【
図6】実施例4に関連する
図6は、異なる混合ワクチンで受動的に免疫化された後、クロストリジウム・ディフィシル又はクロストリジウム・パーフリンジェンスA型の何れかで攻撃誘発され、最後に、攻撃誘発の5日後に、分析のために人道的に安楽死させた仔ブタの肉眼的病変分析の結果を示す棒グラフである。群A~Dは
図2に定義されているとおりである(群Aは左側第一列、群Bは第二列、群Cは第三列、Dは第四列)。x軸は攻撃誘発の種類を表し、y軸は(実施例4に定義されているように)肉眼による病変を定量するために用いられたスコアを示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
別段の定義が為されていなければ、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、フィリング(filling)の時点で本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されているものと同一の意味を有する。但し、何らかの潜在的な多義性が生じた場合には、本明細書中に与えられた定義があらゆる辞書又は外部の定義に優越する。更に、文脈によって別段要求されていなければ、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0028】
本明細書において使用される「免疫原性」又は「免疫学的組成物」という用語は、ヒトを含む脊椎動物に投与したときに、組成物に対して、細胞性又は抗体媒介性免疫応答タイプの免疫学的応答を宿主中に惹起する物質を表す。免疫原性組成物は、免疫原性ポリペプチド等、抗原特性を有する分子を含む。免疫原性ポリペプチドは、一般に、抗原性と称される。ある分子が免疫グロブリン(抗体)又はT細胞抗原受容体などの免疫系の抗原認識分子と特異的に相互作用できるとき、その分子は「抗原性」である。抗原性ポリペプチドは、少なくとも約5、特に少なくとも約10、少なくとも15、少なくとも20、又は少なくとも50のアミノ酸のエピトープを含有する。ポリペプチドの抗原性部分は、エピトープとも称され、抗体若しくはT細胞受容体認識に関して免疫優性である部分であり得、又は免疫化のために担体ポリペプチドに抗原性部分を結合することによって、その分子に対する抗体を生成するために使用される部分であり得る。本記述による免疫原性組成物は、活性分子、該分子を含む組成物、又はその分子への免疫反応が所望される2以上の抗原性分子を含む組成物に関する。免疫原性組成物の例には、細菌、原生動物、及びウイルス等の微生物培養物の上清が含まれる。上記上清は、当該分子への免疫応答を開始するための目的の抗原性分子であって、微生物の細胞又は粒子(ウイルス)が分離された後で、微生物がその中で増殖されていた培地に放出(外毒素)又は送達されている抗原性分子を含有する。上清は、これにより、無細胞調製物とも称される。
【0029】
「抗原」という用語は、対象がその分子に対する免疫応答、例えば、液性及び/又は細胞性免疫応答を開始することができる分子を表す。組成物の意図される機能に応じて、1又は複数の抗原を含めることができる。
【0030】
「免疫学的有効量」又は「免疫学的有効用量」という表現は、疾病の治療又は予防のために、感染の発生を抑制し、又は感染の重度若しくは疾病の発生を低減する免疫応答を動物中に惹起し又は惹起することができる抗原の量又は用量を単回又は一連の一部として投与することを意味する。免疫学的有効量又は有効用量は、疾病の治療又は予防のために抗体の産生を誘導することもできる。この量は、対象の身体的条件等の様々な要因に応じて変動し、当業者によって容易に決定することができる。
【0031】
本明細書において使用される「医薬」という用語は、広く受け入れられているように、ヒトを含む動物の疾病を治癒、治療、又は予防するために使用される医薬品又は獣医薬(医薬、薬剤、又は単に薬とも称される。)と同義である。薬は、様々な様式で分類される。1つの主要な区別は、通常化学合成によって得られる伝統的な小分子薬とバイオ医薬品との区別であり、バイオ医薬品には、組換えタンパク質、ワクチン、治療に使用される血液製剤(静注免疫グロブリン(IVIG)等)、遺伝子治療、モノクローナル抗体、及び細胞治療(例えば、幹細胞治療)が含まれる。本発明において、医薬は、好ましくは、獣医用医薬、より好ましくは、獣医用ワクチンである。
【0032】
本明細書において使用される「ワクチン」という用語は、十分な賦形剤及び/又は担体を伴った本発明の免疫原性組成物であって、動物に投与したときに、該動物中に免疫応答を直接的に又は間接的に惹起し又は惹起することができる免疫原性組成物を意味する。特に、本発明のワクチンは、保護対象に投与した際に、細胞性又は抗体媒介性タイプの免疫学的応答を宿主中に惹起する。ワクチンは、「混合ワクチン」であり得る。「混合ワクチン」という用語は、ワクチンが、単一の調製物中に様々な抗原を含有し、2以上の疾病に対して又は2以上の微生物によって引き起こされる1つの疾病に対して保護するものを意味する。このため、このワクチンは、本発明の「免疫原性組成物」を「活性成分」として含む。
【0033】
本明細書において使用される「類毒素」という用語は、化学的、分子的、又は熱処理のいずれかによってその毒性が不活化又は抑制されているが、他の特性、典型的には免疫原性が維持されている細菌の毒素を意味する。従って、ワクチン接種の際に使用されると、毒素によって誘発される病気をもたらすことなく、免疫応答が開始され、類毒素の分子マーカーに対して免疫記憶が形成される。細菌毒素由来の類毒素を取得するための手法の具体例には、ホルムアルデヒドを含む組成物で細菌培養物を処理することが含まれる。更に、不活化された類毒素は、(例えば、遠心手段によって)細胞から分離され得る。次いで、上清は、得られた溶液を所望の類毒素において濃くするために又は濃縮するために、所望の分子量カットオフを有するフィルターを通して濾過(即ち、タンジェンシャル限外濾過)される。この方法によって、精製された不活化毒素(類毒素)を含有する濃縮された上清が得られる。但し、分離又は更なる精製工程なしに細菌増殖培地中(特に、本発明においては、クロストリジウム培地中)に存在する類毒素も、本発明の範囲に及び本明細書において使用される「類毒素」の定義に包含される。
【0034】
類毒素の大部分は、その類毒素が由来する毒素と同じポリペプチド配列を有する。従って、本発明において特定の配列が記されている場合には、毒素又は類毒素という用語を混然と表す。
【0035】
「家畜」という用語は、食品等の産品を生産するために育てられる飼育された又は飼育場の動物に関する。特に、家畜という用語は、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、家禽(産卵する家禽を含む。)、及びウマ動物等の食品を生産する動物に関する。より具体的には、家畜という用語は、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、及びウマ動物等の食品を生産する動物に関する。更により具体的には、本発明においては、ブタ種に関する。
【0036】
「担体」という用語は、免疫原性成分以外の薬学的に許容される成分として理解されるべきである。担体は、有機性、無機性、又は両方であり得る。当業者に周知の適切な担体には、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸共重合体、脂質凝集物(油滴又はリポソーム等)及び不活性なウイルス粒子等、大きくて、ゆっくり代謝される高分子が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
「薬学的に許容される賦形剤又は担体」という表現は、薬学的に許容される物質、組成物、又は溶媒を表す。各成分は、医薬組成物のその他の成分と適合性があるという意味において、薬学的に許容されなければならない。各成分は、合理的な有益性/リスク比に見合って、過剰な毒性、刺激作用、アレルギー反応、免疫原性、又はその他の問題若しくは困難なしに、ヒト及び動物の組織又は器官と接触して使用するのにも適していなければならない。
【0038】
本明細書において使用される「宿主」又は「対象」という用語は、本発明の免疫原性組成物又はワクチンが投与される、本発明の免疫原性組成物又はワクチンを必要としている標的個体、とりわけヒト、哺乳動物、家畜、又は本発明の組成物を用いて予防接種しやすい他のあらゆる動物種を表すものとする。好ましくは、哺乳動物は、ブタ種、より好ましくはブタ、より好ましくは、妊娠した雌ブタ、未経産ブタ、又は仔ブタである。
【0039】
本明細書において使用される「ブタ(pig)」又は「ブタ(swine)」という用語は、あらゆる年齢の又は生産サイクルのあらゆる段階にある、とりわけブタ、雄ブタ、雌ブタ、未経産ブタ、及び仔ブタを含むブタ種を表すものとし、特に、雌ブタ及び未経産ブタ、より具体的には、仔ブタを表すものとする。未経産ブタとは、年齢がおよそ1歳未満の雌ブタである。この用語は、出産を経験していない、即ち、同腹仔又は子孫を生んだことがないブタを表す。あるブタが同腹仔又は子孫を持ち、およそ1年を過ぎると、そのブタは雌ブタとして知られる。
【0040】
本明細書において区別されずに使用される「母性受動免疫化」及び「母性受動免疫」という用語は、伝達の結果として、感染の発生を低下させ又は感染の重度若しくは疾病の発生を軽減する免疫保護応答又は受動保護が子孫において惹起されるように、一般的には感染因子に対して特異的な移行抗体の伝達によって、免疫原性組成物又はワクチンの免疫学的応答が母親から子孫に伝達されることを表す。母性受動免疫は、哺乳動物で生じるように、とりわけ、授乳による初乳及び/若しくは乳の摂取を通じて、又は例えば、胎盤を通じた、あるいは、鳥類では卵を介した血流中の抗体の吸収を通じて達成され得る。母性受動免疫化は、妊娠している雌の家畜、特に未経産ブタ又は雌ブタに、出産前に、即ち、同腹仔又は子孫の出生前に、免疫原性組成物又はワクチンを投与することによって達成される。あるいは、鳥類では、子孫への移行抗体(MAb)の伝達は卵黄を通じて行われ、抗体は卵黄において吸収されて循環系に入る。
【0041】
上述したように、本発明者らは、家畜において医薬として使用するための、特にブタにおいて使用するための、少なくとも1つのクロストリジウム・ディフィシル類毒素、即ち、1又は複数のクロストリジウム・ディフィシル類毒素を含む免疫原性組成物及び該免疫原性組成物を含むワクチンを初めて提案する。
【0042】
本明細書で開示されている医薬として使用するための免疫原性組成物の特定の実施形態は全て、該免疫原性組成物を含む、医薬として使用するためのワクチンにも適用される。
【0043】
特定の実施形態において、免疫原性組成物又は該組成物を含むワクチンは、ブタにおいて医薬として使用するための免疫原性組成物又はワクチンである。より具体的には、ブタ、雄ブタ、雌ブタ、未経産ブタ、及び仔ブタからなる群から選択されるブタに使用するための免疫原性組成物又はワクチンである。
【0044】
上記又は下記のいずれの実施形態と組み合わせてもよい別の特定の実施形態において、免疫原性組成物及び該組成物を含むワクチンは、家畜におけるクロストリジウム種によって引き起こされる疾病の予防及び/又は治療において使用するための免疫原性組成物又はワクチンである。この実施形態は、クロストリジウム種によって家畜に引き起こされる腸管感染症又は腸疾患の治療及び/又は予防のための、医薬の製造のための、上記免疫原性組成物の又はワクチンの使用として記述することもできる。この実施形態は、特にクロストリジウム種によって引き起こされる腸管感染症又は腸疾患を治療及び/又は予防するために、上記免疫原性組成物又はワクチンの免疫学的有効量を用いて、免疫化を必要としている家畜を免疫化する方法として記述することもできる。特に、家畜がブタである場合。より具体的には、免疫原性組成物又はワクチンは、クロストリジウム・ディフィシルによって引き起こされる腸管感染症又は腸疾患の予防及び/又は治療において使用するための免疫原性組成物又はワクチンである。
【0045】
具体的には、免疫原性組成物及びワクチンは、クロストリジウム種、特にクロストリジウム・ディフィシルによって引き起こされる腸管感染症又は腸疾患の予防及び/又は治療において使用するための免疫原性組成物又はワクチンである。
【0046】
別の特定の実施形態では、第一の態様の免疫原性組成物のクロストリジウム・ディフィシル類毒素は、クロストリジウム・ディフィシルA類毒素、クロストリジウム・ディフィシルB類毒素、クロストリジウム・ディフィシル二元類毒素(CDT)、及びこれらの混合物からなる群から選択される。より具体的には、免疫原性組成物の類毒素は、クロストリジウム・ディフィシルA類毒素、クロストリジウム・ディフィシルB類毒素、及びこれらの混合物からなる群から選択される。より具体的には、免疫原性組成物の類毒素は、クロストリジウム・ディフィシルA類毒素及びクロストリジウム・ディフィシルB類毒素である。即ち、免疫原性組成物は、1つのクロストリジウム・ディフィシルA類毒素及び1つのクロストリジウム・ディフィシルB類毒素を含む。
【0047】
上記又は下記のいずれの実施形態と組み合わせてもよい第一の態様の特定の実施形態において、上記のように使用するための免疫原性組成物は、クロストリジウム・ディフィシル株に由来するA毒素、A毒素に由来するA類毒素、及び/又はA毒素若しくはA類毒素の免疫原性断片を含み、類毒素及び類毒素の断片は免疫学的に有効である、即ち、免疫応答を惹起できる。
【0048】
上記又は下記のいずれの実施形態と組み合わせてもよい第一の態様の別の特定の実施形態において、上記のように使用するための免疫原性組成物は、クロストリジウム・ディフィシル株に由来するB毒素、B毒素に由来するB類毒素、及び/又はB毒素若しくはB類毒素の免疫原性断片を含み、類毒素及び類毒素の断片は免疫学的に有効である、即ち、免疫応答を惹起できる。
【0049】
上記又は下記のいずれの実施形態と組み合わせてもよい第一の態様の特定の実施形態において、上記のように使用するための免疫原性組成物は、配列番号1又は配列番号1と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、クロストリジウム・ディフィシルA毒素由来のクロストリジウム・ディフィシルA類毒素を含む。より具体的には、クロストリジウム・ディフィシルA毒素は配列番号1を含む。更に具体的には、クロストリジウム・ディフィシルA毒素は配列番号1からなる。
【0050】
別の特定の実施形態において、クロストリジウム・ディフィシルA類毒素は、配列番号1と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するクロストリジウム・ディフィシルA毒素に由来する。
【0051】
上記又は下記のいずれの実施形態と組み合わせてもよい第一の態様の別の特定の実施形態において、上記のように使用するための免疫原性組成物は、配列番号2又は配列番号2と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、クロストリジウム・ディフィシルB毒素由来のクロストリジウム・ディフィシルB類毒素を含む。より具体的には、クロストリジウム・ディフィシルB毒素は配列番号2を含む。更に具体的には、クロストリジウム・ディフィシルB毒素は配列番号2からなる。
【0052】
別の特定の実施形態において、クロストリジウム・ディフィシルB類毒素は、配列番号2と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するクロストリジウム・ディフィシルB毒素に由来する。
【0053】
免疫原性組成物の更なる特定の実施形態において、免疫原性組成物は、少なくとも、配列番号1の毒素配列からなるクロストリジウム・ディフィシルA類毒素と、及び少なくとも、配列番号2の毒素配列からなるクロストリジウム・ディフィシルB類毒素とを含む。より具体的には、類毒素AとBは、99:0.1~0.1:99、具体的には50:0.5~0.5:50、更に具体的には10:1~1:10の比で存在する。具体的には、5:1~1:5、更に具体的には、2.5:1~1:2.5。更に具体的には、類毒素A及びBは、2.5:1の比で存在する。
【0054】
上記又は下記のいずれの実施形態と組み合わせてもよい第一の態様の特定の実施形態において、免疫原性組成物は、少なくともクロストリジウム・パーフリンジェンス類毒素を更に含む。即ち、これは、1又は複数のクロストリジウム・パーフリンジェンス類毒素と同義である。特に、類毒素は、α類毒素、β類毒素、β-2類毒素、ε類毒素、θ類毒素、μ類毒素、δ類毒素、ι類毒素、κ類毒素、λ類毒素、CPEエンテロトキソイド、NetB類毒素、及びこれらの混合物からなる群から選択される。特に、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型類毒素、特にα類毒素、β-2類毒素、θ類毒素、μ類毒素、CPEエンテロトキソイド、NetB類毒素、及びこれらの混合物。より具体的には、類毒素は、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素である。
【0055】
上記又は下記のいずれの実施形態と組み合わせてもよい第一の態様の別の特定の実施形態において、上記のように使用するための免疫原性組成物は、クロストリジウム・パーフリンジェンス株に由来するα毒素、該毒素に由来するα類毒素、及び/又はα毒素若しくはα類毒素の免疫原性断片を更に含み、類毒素及び類毒素の断片は免疫学的に有効である、即ち、免疫応答を惹起できる。
【0056】
単一の免疫原性組成物中に又は該免疫原性組成物を含むワクチン中に様々な抗原を組み合わせることは、免疫化の分野において一般的に試みられている。それに対する保護が追及されている病原体が感染症において一般に一緒に見出される場合には、このことは特に重要である。しかしながら、混合された免疫原性組成物又は混合ワクチンの開発は単純ではない。あらゆる抗原を効果的に混合できるわけではないという事実のため、混合免疫原性組成物又はワクチンの成分を単に混ぜるのは困難であることが明らかとなっている。特定の抗原が単独で投与された場合と比べて、他の成分と混合したときに抗原の免疫原性が低下することは、干渉として知られている。混合ワクチンの調合において遭遇する更なる問題は、複合抗原に内在する経時的安定性である。溶液中のワクチンは、時間と共に、その抗原成分の免疫原性を減少させる過程、例えば、抗原の分解又は抗原が吸着されているアジュバントからの抗原の脱離を経験することがある。
【0057】
本分野の技術水準を考慮すると、異なるクロストリジウム種の類毒素を単一の免疫原性組成物中に混合することが、対象の有効で安全な免疫化をもたらすとは予想できなかった。様々な動物種において長期にわたって試みられていたクロストリジウム・ディフィシルに対する免疫化については、このことが特に当てはまる。更に重要なことに、混合免疫原性組成物(即ち、免疫原性組成物を有する混合ワクチン)によって達成された免疫化が新生仔に受動的に伝達され、新生仔ブタでの効果的な保護も生後1日目から取得され得ることは極めて予想できないことであった。
【0058】
従って、第二の態様において、本発明は、家畜において医薬として使用するためのワクチンであって、(a)1又は複数のクロストリジウム・ディフィシル類毒素を含む免疫原性組成物と、(b)薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体とを含むワクチンを提供する。
【0059】
上記又は下記のいずれの実施形態と組み合わせてもよい第一及び第二の態様の特定の実施形態において、上記のように使用するための免疫原性組成物又はワクチンは、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・パーフリンジェンス、及びこれらの混合物によって引き起こされた腸管感染症又は腸疾患を予防及び/又は治療する上で使用するための免疫原性組成物又はワクチンである。
【0060】
上記又は下記のいずれの実施形態と組み合わせてもよい第一及び第二の態様の別の特定の実施形態において、上記のように使用するための免疫原性組成物又はワクチンは、配列番号3又は配列番号3と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α毒素由来のクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素を含む。より具体的には、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型α毒素は配列番号3を含む。更に具体的には、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型α毒素は配列番号3からなる。
【0061】
別の特定の実施形態において、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素は、配列番号3と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α毒素に由来する。
【0062】
第一及び第二の態様の別の特定の実施形態において、免疫原性組成物及び該組成物を含むワクチンは、1つのクロストリジウム・ディフィシルA類毒素と、1つのクロストリジウム・ディフィシルB類毒素と、及び1つのクロストリジウム・パーフリンジェンスA型類毒素、特に1つのクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素とを含む。
【0063】
第一及び第二の態様の更なる特定の実施形態において、免疫原性組成物又は該組成物を含むワクチンは、配列番号1の毒素配列からなるクロストリジウム・ディフィシルA類毒素と、配列番号2の毒素配列からなるクロストリジウム・ディフィシルB類毒素と、配列番号3の毒素配列からなるクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素と、を含む。
【0064】
本発明の全ての態様の毒素のアミノ酸配列が、表1に記載されている。
【表1】
【0065】
本発明において、配列との(特に、アミノ酸配列間の)同一性が言及される場合、これは、好ましくは、Altschul,S.F.ら、「Gapped BLAST and PSI-BLAST:a new generation of protein database search programms」,Nucleic Acids Research-1997,Vol.No.25,pp.3389-3402に開示されているBLASTPアルゴリズム及びNCBI http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLASTを使用することによって決定される。同一性の百分率には、1又は複数のアミノ酸の保存的変異による配列の変動であって、なお有効性を保ち、このため、毒性なしに免疫応答を惹起することができるタンパク質をもたらす変動が包含される。タンパク質の変動は、1又は複数のアミノ酸の挿入又は欠失によるものでもある。
【0066】
本発明の態様の何れかの免疫原性組成物のα類毒素は、クロストリジウム・パーフリンジェンス細胞によって天然にコードされるα毒素に由来することができ、A類毒素は、クロストリジウム・ディフィシル細胞によって天然にコードされるA毒素に由来することができ、B類毒素は、クロストリジウム・ディフィシル細胞によって天然にコードされるB毒素に由来し得る。特に、A(TcdA)及びB(TcdB)毒素を産生するクロストリジウム・ディフィシルのあらゆる株及びα毒素を産生するクロストリジウム・パーフリンジェンスのあらゆる株、特にクロストリジウム・パーフリンジェンスA型を本発明の方法において使用することができる。即ち、株は、とりわけ、野外株、収集株、又は遺伝子改変株から選択され得る。異なる類毒素は、同じ株から又は異なる株から取得され得る。微生物学の技法を定型的に使用することによって、クロストリジウム種の株が特定の毒素を産生するかどうかを同定する方法は、当業者に周知である。
【0067】
あるいは、本発明の免疫原性組成物又はワクチンの類毒素は、組換えポリペプチドである、即ち、遺伝子操作された遺伝子によってコードされる毒素に由来する。
【0068】
更に、類毒素は、全細胞調製物中に又は無細胞調製物中に含まれ得る。全細胞調製物とは、細胞成分も含む組成物中に類毒素が含まれていることと理解されるべきであり、通常、類毒素は細胞可溶化物の形態のこれらの細胞成分中に含まれる。他方、無細胞調製物とは、類毒素を含む組成物として理解され、その後、類毒素は細胞が従前にその中で増殖していた培地から精製(単離)されてもよい。好ましくは、無細胞調製物は、類毒素を含む無細胞調製物である。
【0069】
類毒素は、化学的処理、プロテアーゼ切断、毒素の断片若しくは変異(例えば、点変異)を作製することによる組換えDNA法、又は当業者に公知の定型的な手段による対応する毒素の熱処理によって取得され得る。特に、BEI(バイナリーエチレンイミン)、アセチルエチレンイミン、β-プロピオラクトン、界面活性剤(TWEEN(登録商標)、TRITON(登録商標)X又はアルキルトリメチルアンモニウム塩等)、及びグルタルアルデヒドでの処理が、本発明の細菌性類毒素を不活化する際に使用するための適切な化学的不活化剤の例である。他の化学的不活化剤は、ホルマリン又はホルムアルデヒドである。不活化は、当業者に公知の標準的な方法を用いて行うことができる。一実施形態では、類毒素の調製において、好ましくは、ホルムアルデヒドが使用される。一実施形態は、クロストリジウム毒素を不活化するために、ホルムアルデヒドの約0.1~1%溶液を使用する。
【0070】
本発明の態様のいずれかに対する特定の実施形態において、クロストリジウム・ディフィシルの類毒素は、以下の工程(a)及び(b)を含み、工程(c)及び(d)を含んでもよい方法によって取得することができる。
(a)目的の1又は複数の毒素を産生する、特に、クロストリジウム・ディフィシルA毒素及び/又はクロストリジウム・ディフィシルB毒素を産生するクロストリジウム・ディフィシルの少なくとも1つの株を嫌気性条件下で増殖すること;
(b)クロストリジウム・ディフィシル培養物を不活化すること;
(c)上清からクロストリジウム・ディフィシル細胞を分離すること;並びに
(d)濃縮された上清を得るために、工程(c)の上清を濃縮すること。
【0071】
本発明の態様のいずれかに対する特定の実施形態において、クロストリジウム・ディフィシルの類毒素は、以下の工程を含む方法によって取得することができる。
(a)目的の1又は複数の毒素を産生する、特に、クロストリジウム・ディフィシルA毒素及び/又はクロストリジウム・ディフィシルB毒素を産生するクロストリジウム・ディフィシルの少なくとも1つの株を嫌気性条件下で増殖すること;並びに
(b)クロストリジウム・ディフィシル培養物を不活化すること。
【0072】
本発明の態様のいずれかに対する特定の実施形態において、クロストリジウム・ディフィシルの類毒素は、以下の工程を含む方法によって取得することができる。
(a)目的の1又は複数の毒素を産生する、特に、クロストリジウム・ディフィシルA毒素及び/又はクロストリジウム・ディフィシルB毒素を産生するクロストリジウム・ディフィシルの少なくとも1つの株を嫌気性条件下で増殖すること;
(b)クロストリジウム・ディフィシル培養物を不活化すること;
(c)上清からクロストリジウム・ディフィシル細胞を分離すること;並びに
(d)濃縮された上清を得るために、工程(c)の上清を濃縮すること。
【0073】
本発明の態様のいずれかに対する特定の実施形態において、クロストリジウム・ディフィシルの類毒素は、以下の工程を含む方法によって取得することができる。
(a)目的の1又は複数の毒素を産生する、特に、クロストリジウム・ディフィシルA毒素及び/又はクロストリジウム・ディフィシルB毒素を産生するクロストリジウム・ディフィシルの少なくとも1つの株を嫌気性条件下で増殖すること;
(b)上清からクロストリジウム・ディフィシル細胞を分離すること;
(c)濃縮された上清を得るために、工程(b)の上清を濃縮すること;並びに
(d)上清中のクロストリジウム・ディフィシル毒素を不活化すること。
【0074】
同様に、本発明の態様のいずれかに対する別の特定の実施形態において、クロストリジウム・パーフリンジェンスの類毒素は、以下の工程(a)及び(b)を含み、工程(c)及び(d)を含んでもよい方法によって取得することができる。
(a)目的の1又は複数の毒素を産生する、特にクロストリジウム・パーフリンジェンスA型毒素、より具体的にはクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α毒素を産生するクロストリジウム・パーフリンジェンスの少なくとも1つの株を嫌気性条件下で増殖すること;
(b)クロストリジウム・パーフリンジェンス培養物を不活化すること;
(c)上清からクロストリジウム・パーフリンジェンス細胞を分離すること;並びに
(d)濃縮された上清を得るために、工程(c)の上清を濃縮すること。
【0075】
本発明の態様のいずれかに対する別の特定の実施形態において、クロストリジウム・パーフリンジェンスの類毒素は、以下の工程を含む方法によって取得することができる。
(a)目的の1又は複数の毒素を産生する、特にクロストリジウム・パーフリンジェンスA型毒素、より具体的にはクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α毒素を産生するクロストリジウム・パーフリンジェンスの少なくとも1つの株を嫌気性条件下で増殖すること;並びに
(b)クロストリジウム・パーフリンジェンス培養物を不活化すること。
【0076】
本発明の態様のいずれかに対する別の特定の実施形態において、クロストリジウム・パーフリンジェンスの類毒素は、以下の工程を含む方法によって取得することができる。
(a)目的の1又は複数の毒素を産生する、特にクロストリジウム・パーフリンジェンスA型毒素、より具体的にはクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α毒素を産生するクロストリジウム・パーフリンジェンスの少なくとも1つの株を嫌気性条件下で増殖すること;
(b)クロストリジウム・パーフリンジェンス培養物を不活化すること;
(c)上清からクロストリジウム・パーフリンジェンス細胞を分離すること;並びに
(d)濃縮された上清を得るために、工程(c)の上清を濃縮すること。
【0077】
本発明の態様のいずれかに対する別の特定の実施形態において、クロストリジウム・パーフリンジェンスの類毒素は、以下の工程を含む方法によって取得することができる。
(a)目的の1又は複数の毒素を産生する、特にクロストリジウム・パーフリンジェンスA型毒素、より具体的にはクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α毒素を産生するクロストリジウム・パーフリンジェンスの少なくとも1つの株を嫌気性条件下で増殖すること;
(b)上清からクロストリジウム・パーフリンジェンス細胞を分離すること;
(c)濃縮された上清を得るために、工程(b)の上清を濃縮すること;並びに
(d)上清中のクロストリジウム・パーフリンジェンス毒素を不活化すること。
【0078】
上記又は下記のいずれの実施形態と組み合わせてもよい別の特定の実施形態において、第一の態様にしたがって使用するための免疫原性組成物及び第二の態様にしたがって使用するためのワクチンは、0.1~100%(v/v)、特に0.5~50%(v/v)、更に具体的には1~25%(v/v)、更に具体的には1~10%のクロストリジウム・ディフィシルA類毒素の免疫学的有効量を有する。
【0079】
上記又は下記のいずれの実施形態と組み合わせてもよい別の特定の実施形態において、第一の態様にしたがって使用するための免疫原性組成物及び第二の態様にしたがって使用するためのワクチンは、0.1~100%(v/v)、特に0.5~50%(v/v)、更に具体的には1~25%(v/v)、更に具体的には1~10%のクロストリジウム・ディフィシルB類毒素の免疫学的有効量を有する。
【0080】
上記又は下記のいずれの実施形態と組み合わせてもよい別の特定の実施形態において、第一の態様にしたがって使用するための免疫原性組成物及び第二の態様にしたがって使用するためのワクチンは、不活化工程の前に細胞傷害効果に基づいて滴定したときに、少なくとも5.0の細胞傷害力価(CPE、log10CPE/mL)のクロストリジウム・ディフィシル類毒素A及びB(TcdA/TcdB)の免疫学的有効力価を有する。特に、少なくとも5.5の、少なくとも6.0の、少なくとも6.5の、少なくとも7.0の、少なくとも7.5の、少なくとも8.0の、少なくとも8.5の、少なくとも9.0の、少なくとも9.5の、少なくとも10.0の、少なくとも10.5の、又は少なくとも11.0のCPE。好ましくは、5.0~11.0のCPE、より好ましくは6.5~9.5のCPE。CPEアッセイは、毒性効果の滴定のための定型的な方法である。この手法の詳細は以下に記載されており、当業者に周知である。
【0081】
上記又は下記のいずれの実施形態と組み合わせてもよい更に別の特定の実施形態において、第一の態様にしたがって使用するための免疫原性組成物及び第二の態様にしたがって使用するためのワクチンは、99:0.1~0.1:99、特に50:0.5~0.5:50、より具体的には10:1~1:10、具体的には5:1~1:5、より具体的には2.5:1~1:2.5、より具体的には2.5:1の比で、クロストリジウム・ディフィシル類毒素A及びB(TcdA/TcdB)が存在する。
【0082】
上記又は下記のいずれの実施形態と組み合わせてもよい更に別の特定の実施形態において、第一の態様にしたがって使用するための免疫原性組成物及び第二の態様にしたがって使用するためのワクチンは、0.1~100%(v/v)、特に0.5~50%(v/v)、更に具体的には1~25%(v/v)のクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素の免疫学的有効量を有する。更に具体的には、8~10%(v/v)。
【0083】
上記又は下記のいずれの実施形態と組み合わせてもよい別の特定の実施形態において、第一の態様にしたがって使用するための免疫原性組成物及び第二の態様にしたがって使用するためのワクチンは、不活化工程の前に溶血活性に基づいて滴定したときに、少なくとも8.0の溶血力価(HA、log2HA50%/mL)のクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素の免疫学的有効力価を有する。特に、少なくとも8.5の、少なくとも9.0の、少なくとも9.5の、少なくとも10.0の、少なくとも10.5の、少なくとも11.0の、少なくとも11.5の、少なくとも12.0の、少なくとも12.5の、少なくとも13.0の、少なくとも13.5の、少なくとも14.0の、少なくとも14.5の、少なくとも15.0の、少なくとも15.5の、少なくとも16.0の、少なくとも16.5の、少なくとも17.0の、少なくとも17.5の、又は少なくとも18.0のHA。好ましくは、8.0~18.0のHA、より好ましくは11.0~17.5のHA。HAアッセイは、毒性効果の滴定のための定型的な方法である。この手法の詳細は以下に記載されており、当業者に周知である。
【0084】
特に、第一の態様にしたがって使用するための免疫原性組成物及び第二の態様にしたがって使用するためのワクチンにおいて、クロストリジウム・ディフィシル類毒素A及びB(TcdA/TcdB)とクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素は、0.1:99~99:0.1、好ましくは0.5:50~50:0.5、より好ましくは20:1~1:20、より好ましくは10:2~2:10の比で存在する。より具体的には、2:10。
【0085】
更に別の実施形態において、第一及び第二の態様にしたがって使用するための免疫原性組成物又は該組成物を含むワクチンは、1又は複数の追加の抗原を更に含み、追加の抗原は、アクチノバチルス(Actinobacillus)、ボルデテラ(Bordetella)、ボレリア(Borrelia)、ブラキスピラ(Brachyspira)、ブルセラ(Brucella)、カンピロバクター(Campylobacter)、クラミジア及びクラミドフィラ(Chlamydia and Chlamydophila)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、エンテロコッカス(Enterococcus)、エリシペロスリクス(Erysipelothrix)、エシェリキア(Escherichia)、フランシセラ(Francisella)、ヘモフィルス(Haemophilus)、ヘリコバクター(Helicobacter)、イソスポラ(Isospora)、ローソニア(Lawsonia)、レジオネラ(Legionella)、レプトスピラ(Leptospira)、リステリア(Listeria)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、ナイセリア(Neisseria)、パスツレラ(Pasteurella)、シュードモナス(Pseudomonas)、リケッチア(Rickettsia)、サルモネラ(Salmonella)、シゲラ(Shigella)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、トレポネーマ・ビブリオ(Treponema Vibrio)及びエルシニア属(Yersinia genus)、ブタ繁殖及び呼吸障害症候群ウイルス(porcine reproductive and respiratory syndrome virus)、ブタインフルエンザウイルス(swine influenza virus)、伝染性胃腸炎ウイルス(contagious gastroenteritis virus)、ブタパルボウイルス(porcine parvovirus)、脳心筋炎ウイルス(encephalomyocarditis virus)、コロナウイルス(coronavirus)、ロタウイルス(rotavirus)、ブタ離乳後成長不全症候群因子(porcine periweaning failure to thrive syndrome agent)、古典的ブタ熱ウイルス(classical swine fever virus)、アフリカブタ熱ウイルス(African swine fever virus)、カリシウイルス(calicivirus)、トルクテノウイルス(TTV)、伝染性胃腸炎コロナウイルス(TGEV)、ブタ流行性下痢ウイルス(PED)、及びブタサーコウイルス(porcine circovirus)、並びにこれらの組み合わせからなる微生物の群から選択される。
【0086】
特に、第一及び第二の態様にしたがって使用するための免疫原性組成物又は該組成物を含むワクチンは、イー・コリF4ab、F4ac、F5及びF6線毛アドヘシン、イー・コリLTエンテロトキソイド、クロストリジウム・パーフリンジェンスC型類毒素、クロストリジウム・ノービイB型類毒素、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される抗原を更に含む。特に、免疫原性組成物又は該組成物を含むワクチンは、抗原、イー・コリF4ab、F4ac、F5及びF6線毛アドヘシン、イー・コリLTエンテロトキソイド、クロストリジウム・パーフリンジェンスC型類毒素、クロストリジウム・ノービイB型類毒素を含む。特に、本発明の免疫原性組成物は、SUISENG(登録商標)、RHINISENG(登録商標)、ERYSENG(登録商標)、ERYSENG(登録商標)PARVO、ERYSENG(登録商標)PARVO LEPTO、PARVOSENG(登録商標)、VPURED(登録商標)(Laboratorios HIPRA,S.A.)の抗原を更に含む。従って、より具体的には、上に開示されているように使用するための、クロストリジウム・ディフィシル及びクロストリジウム・パーフリンジェンスから選択される微生物によって引き起こされる腸管感染症又は腸疾患の予防及び/又は治療において使用するための免疫原性組成物及びワクチンは、更に、クロストリジウム・ノービイ、イー・コリ及びこれらの混合物から選択される微生物によって引き起こされる感染症又は疾病の予防及び/又は治療において使用するための免疫原性組成物及びワクチンである。
【0087】
別の特定の実施形態において、第一の態様に係る免疫原性組成物又は第二の態様に係る該組成物を含むワクチンは、特に授乳によって、家畜の雌の子孫に母性受動免疫化を与える方法において使用するための免疫原性組成物又はワクチンである。
【0088】
本発明にしたがって使用するためのワクチンを調製するための適切な担体、賦形剤等は、標準的な薬学の教科書に見出すことができ、例として、防腐剤、凝集剤(agglutinants)、湿潤剤、保湿剤(emollients)、及び抗酸化剤が含まれる。
【0089】
上記又は下記のいずれの実施形態と組み合わせてもよい特定の実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、免疫原性成分以外のあらゆる薬学的に許容される成分を含む。担体は、有機性、無機性、又は両方であり得る。当業者に周知の適切な担体には、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸共重合体、脂質凝集物(油滴又はリポソーム等)、及び不活性なウイルス粒子等、大きくて、ゆっくり代謝される高分子が含まれるが、これらに限定されない。
【0090】
更に、所望であれば、担体は、例えば、湿潤剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液)、キレート剤(例えば、EDTA、クエン酸、酢酸)、炭水化物(例えば、グルコース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、又はデキストラン)等の安定化剤、又はタンパク質(例えば、アルブミン、カゼイン、ウシ血清、又は脱脂粉乳)等、薬学的に許容される補助物質を含有し得る。
【0091】
第一及び第二の態様によって提案される用途のための本発明の組成物は、本分野の技術水準において周知の方法にしたがって調製することができる。適切な賦形剤及び/又は担体並びにこれらの量は、調製されている組成物の種類にしたがって、当業者によって容易に決定され得る。
【0092】
ワクチンにおいて通常使用される賦形剤には、あらゆる溶媒、分散媒、湿潤剤、キレート剤、乳化剤、コーティング、免疫調節剤、免疫賦活物質、アジュバント、炭水化物(例えば、グルコース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、又はデキストラン)等の安定化剤、希釈剤、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液)、タンパク質(例えば、アルブミン、カゼイン、ウシ血清、又は脱脂粉乳)、防腐剤、等張剤、吸着遅延剤等が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態、特に凍結乾燥された免疫原性組成物を含む実施形態において、本発明において使用するための安定化剤には、凍結乾燥又はフリーズドライ用の安定化物質が含まれる。賦形剤の物理化学的特徴及び市販されている製品の販売名は、書籍、R.C.Roweら、Handbook of Pharmaceutical Excipients,4th edition,Pharmaceutical Press,London,2003[ISBN:0-85369-472-9]に見出すことができる。
【0093】
本発明のワクチンの有効性を強化するために、本発明のワクチンには、アジュバントを取り込ませることもできる。あるいは、アジュバントは、本発明のワクチンの投与前又は投与後に投与され得る。
【0094】
このように、上記又は下記のいずれの実施形態と組み合わせてもよい別の実施形態において、本発明の第二の態様にしたがって使用するためのワクチンは、更にアジュバントを含む。本分野において周知であるように、アジュバントは、免疫系の非特異的刺激物質であり、抗原と共に投与されて、免疫学的応答を増強する。特に、本発明において使用されるアジュバントには、水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、ムラミルジペプチド、ビタミンE、スクアレン、スクアレン、サポニン、例えば、QuilA、QS-21、人参、ザイモサン、グルカン、非イオン性プロックポリマー、モノホスホリルリピドA、植物油、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、W/O、O/W、W/O/W型エマルジョン、Ribiアジュバントシステム(Ribi Inc.)、イー・コリ由来の熱不安定性エンテロトキシン(組換え又は組換えでないもの)、コレラ毒素、ジメチルアミノエチルデキストラン、デキストラン、又はこれらの類縁体若しくは混合物が含まれ得る。特定の実施形態において、アジュバントは、水酸化アルミニウム、ジエチルアミノエチルデキストラン、及び人参を含む。
【0095】
別の実施形態において、本発明の第二の態様にしたがって使用するためのワクチンは、家畜におけるクロストリジウム種腸管感染症及び/又は腸疾患を予防及び/又は治療するためのワクチンである。特にブタであり、ブタは、ブタ、雄ブタ、雌ブタ、未経産ブタ、及び仔ブタからなる群から選択される。より具体的には、出産の前に、即ち、分娩又は子孫の出生の前に、未経産ブタ又は雌ブタの子孫に母性受動免疫を与えるためである。
【0096】
特定の実施形態において、本発明にしたがって使用するためのワクチンは、授乳を通じて、家畜の雌の、特に繁殖可能な及び/又は妊娠している家畜の雌の子孫(progeny)(子孫(offspring)又は同腹仔(litter)とも称される。)に母性受動免疫を与えるためのワクチンである。より具体的には、子孫の母性受動免疫又は保護は、繁殖可能な及び/又は妊娠している家畜の雌からその子孫へ、当該雌の同腹仔を受動的に保護する初乳抗体の形態で、特異的な抗体を伝達することに依存している。
【0097】
以下の実施例に記載されているように、雌の血清及び初乳中にも検出される抗体は授乳を通じて子孫に渡され、効果的に子孫に到達するという事実のため、雌の免疫化によって、雌の子孫の受動的免疫化が可能になった。これにより、クロストリジウム種での攻撃誘発後に子孫の保護が可能となった。
【0098】
更なる特定の実施形態において、本発明の免疫学的組成物又はワクチンは、雌ブタ若しくは未経産ブタの子孫に又はあらゆる家畜の雌の子孫にクロストリジウム症に対する母性受動免疫を与える方法であって、出産前に雌ブタ又は未経産ブタに(又はあらゆる家畜の雌に)前記免疫学的組成物又はワクチンの免疫学的有効量を投与することを含み、仔ブタ(即ち、子孫)に、特に授乳を通じて母性受動免疫が付与される方法において使用するための免疫学的組成物又はワクチンである。更に別の特定の実施形態において、クロストリジウム症(即ち、クロストリジウム種によって引き起こされる疾病)は、腸管感染症及び/又は腸疾患である。更に別の特定の実施形態において、クロストリジウム種は、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・パーフリンジェンス、及びこれらの混合物から選択され、腸管感染症又は腸疾患はこれらのクロストリジウム種によって引き起こされる。更に特定の実施形態において、特に授乳によって、母性受動免疫を与える上記方法は、家畜の雌に本発明の免疫学的組成物又はワクチンの免疫学的有効量を少なくとも2回投与することを含む。
【0099】
あるいは、これは、特に授乳によって、クロストリジウム種によって引き起こされる疾病に対して妊娠した雌の家畜動物の子孫に母性受動免疫を与える方法であって、子孫の出生前に、本発明の免疫原性組成物又はワクチンの免疫学的有効量を妊娠している雌の家畜動物に投与することを含む方法として記述することができる。特定の実施形態において、この方法は、妊娠した雌の家畜動物に本発明の免疫学的組成物又はワクチンの免疫学的有効量を少なくとも2回投与することを含む。別の特定の実施形態において、妊娠した雌の家畜はブタである。更に別の特定の実施形態において、クロストリジウム種によって引き起こされる疾病は、腸管感染症及び/又は腸疾患である。更に別の特定の実施形態において、クロストリジウム種は、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・パーフリンジェンス、及びこれらの混合物から選択され、腸管感染症又は腸疾患はこれらのクロストリジウム種によって引き起こされる。より具体的には、クロストリジウム種は、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型、及びこれらの混合物から選択され、腸管感染症又は腸疾患はこれらのクロストリジウム種によって引き起こされる。
【0100】
また、あるいは、これは、クロストリジウム種によって引き起こされる腸管感染症及び/又は腸疾患に対する母性受動免疫を付与するための医薬の製造のための、上記本発明の免疫原性組成物又はワクチンの免疫学的有効量の使用として記述することができる。より具体的には、クロストリジウム種は、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・パーフリンジェンス、及びこれらの混合物から選択され、腸管感染症及び/又は腸疾患はこれらのクロストリジウム種によって引き起こされる。より具体的には、クロストリジウム種は、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型、及びこれらの混合物から選択され、腸管感染症又は腸疾患はこれらのクロストリジウム種によって引き起こされる。
【0101】
本発明のワクチンは、典型的には、溶液、エマルジョン、又は懸濁液の形態で、非経口ワクチンとして調製される。本発明のワクチンは、注射前に、液体賦形剤中に溶解又は懸濁されるのに適した固体形態で調製することも可能である。
【0102】
特に、本発明のワクチンは、
(a)液体形態、又は
(b)凍結乾燥された、フリーズドライされた、噴霧乾燥された、若しくは泡沫乾燥された乾燥粉末形態
である。
【0103】
本発明の注射ワクチンの1回分の典型的な容量は、0.1mL~5mL、特に0.15mL~3mL、より具体的には0.2mL~2mLである。一般に、筋肉内投与の場合、0.5mL~5mL、特に1mL~3mL、より具体的には1mL~2mLで使用される。
【0104】
本発明のワクチンを調製するために使用することができる液体賦形剤には、例えば、水(特に、注射用の水)、生理学的な塩濃度を有する生理的食塩水溶液又は細菌がその中で培養される培養液が含まれる。
【0105】
本発明の第一の態様の免疫学的組成物又は本発明の第二の態様のワクチンは、様々な投与経路によって投与することができる。具体的な経路には、経口、経皮、経粘膜(即ち、粘膜に及び/又は粘膜下に)、皮内、皮下、筋肉内、鼻内、エアロゾルを用いて、腹腔内又は静脈内経路が含まれるが、これらに限定されない。特に、これらの免疫学的組成物又はワクチンは、筋肉内経路によって投与される。所望される治療期間及び有効性に応じて、本発明の組成物及びワクチンは、1回又は数回、また断続的に、例えば、数日間、数週間、又は数カ月間日常的に及び/又は異なる投与量で投与され得る。投与のタイミングは、本分野で周知の要素に依存する。初回投与後に、初回投与の有効性を維持及び/又は強化するために、1回又は複数回の追加の投与を行ってもよい。具体的には、本発明の免疫原性組成物又はワクチンは、数回投与される。より具体的には、ワクチン接種計画は、出産前に2回投与することを含み、最初の投与は出産の約6週前に行われ、2回目の投与は出産の約3週前に行われる。一実施形態において、2回投与のワクチン接種計画が動物に初めて与えられた場合には、次の出産では単回投与のみが必要である。従って、本発明の免疫原性組成物又はワクチンは、単回投与で投与することもできる。本発明のワクチンは、例えば、マニュアル、Remington The Science and Practice of Pharmacy,20thedition,Lippincott Williams&Wilkins,Philadelphia,2000[ISBN:0-683-306472]に記載されているように、様々な投与形態に適した薬学的製剤の調製のために当業者によって使用される標準的な方法にしたがって調製することができる。より具体的には、ワクチンは、筋肉内経路によって使用するためのワクチンである。
【0106】
上に開示されているように、本発明の第三の態様は、
(a)クロストリジウム・ディフィシルA類毒素、クロストリジウム・ディフィシルB類毒素、及びこれらの混合物からなる群から選択される1又は複数のクロストリジウム・ディフィシル類毒素と、
(b)1又は複数のクロストリジウム・パーフリンジェンスA型類毒素
を含む、免疫原性組成物に関する。
【0107】
本発明の第三の態様の一実施形態は、
(a)クロストリジウム・ディフィシルA類毒素、クロストリジウム・ディフィシルB類毒素、及びこれらの混合物からなる群から選択される1又は複数のクロストリジウム・ディフィシル類毒素と、更にクロストリジウム・ディフィシル二元類毒素(CDT)とを含み、並びに
(b)1又は複数のクロストリジウム・パーフリンジェンスA型類毒素
を含む、免疫原性組成物に関する。
【0108】
本発明の第三の態様の一実施形態は、
(a)クロストリジウム・ディフィシルA類毒素、クロストリジウム・ディフィシルB類毒素、及びこれらの混合物からなる群から選択される1又は複数のクロストリジウム・ディフィシル類毒素を含み、更にクロストリジウム・ディフィシル二元類毒素(CDT)を含んでもよく、並びに
(b)1又は複数のクロストリジウム・パーフリンジェンスA型類毒素
を含む、免疫原性組成物に関する。
【0109】
第三の態様の別の実施形態は、クロストリジウム・ディフィシルA類毒素及びクロストリジウム・ディフィシルB類毒素及びクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素を含む。より具体的には、クロストリジウム・ディフィシルA類毒素は、配列番号1又は配列番号1と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むクロストリジウム・ディフィシルA毒素に由来する。更に具体的には、クロストリジウム・ディフィシルA毒素は配列番号1を含み、更に具体的には、クロストリジウム・ディフィシルA毒素は配列番号1からなる。また、より具体的には、免疫原性組成物は、配列番号2又は配列番号2と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むクロストリジウム・ディフィシルB毒素に由来するクロストリジウム・ディフィシルB類毒素を含む。更に具体的には、クロストリジウム・ディフィシルB毒素は配列番号2を含み、更に具体的には、クロストリジウム・ディフィシルB毒素は配列番号2からなる。
【0110】
別の特定の実施形態において、クロストリジウム・ディフィシルA類毒素は、配列番号1と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するクロストリジウム・ディフィシルA毒素に由来する。
【0111】
別の特定の実施形態において、クロストリジウム・ディフィシルB類毒素は、配列番号2と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するクロストリジウム・ディフィシルB毒素に由来する。
【0112】
上記又は下記の実施形態と組み合わせてもよい第三の態様の別の特定の実施形態において、免疫原性組成物は、配列番号3又は配列番号3と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α毒素由来のクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素を含む。更に具体的には、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型α毒素は配列番号3を含み、更に具体的には、クロストリジウム・パーフリンジェンスα毒素は配列番号3からなる。
【0113】
別の特定の実施形態において、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素は、配列番号3と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α毒素に由来する。
【0114】
上記又は下記のいずれの実施形態と組み合わせてもよい更に別の実施形態において、本発明のこれらの新規免疫原性組成物は、1又は複数の追加の抗原を更に含み、追加の抗原は、アクチノバチルス(Actinobacillus)、ボルデテラ(Bordetella)、ボレリア(Borrelia)、ブラキスピラ(Brachyspira)、ブルセラ(Brucella)、カンピロバクター(Campylobacter)、クラミジア及びクラミドフィラ(Chlamydia and Chlamydophila)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、エンテロコッカス(Enterococcus)、エリシペロスリクス(Erysipelothrix)、エシェリキア(Escherichia)、フランシセラ(Francisella)、ヘモフィルス(Haemophilus)、ヘリコバクター(Helicobacter)、イソスポラ(Isospora)、ローソニア(Lawsonia)、レジオネラ(Legionella)、レプトスピラ(Leptospira)、リステリア(Listeria)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、ナイセリア(Neisseria)、パスツレラ(Pasteurella)、シュードモナス(Pseudomonas)、リケッチア(Rickettsia)、サルモネラ(Salmonella)、シゲラ(Shigella)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、トレポネーマ・ビブリオ(Treponema Vibrio)及びエルシニア属(Yersinia genus)、ブタ繁殖及び呼吸障害症候群ウイルス(porcine reproductive and respiratory syndrome virus)、ブタインフルエンザウイルス(swine influenza virus)、伝染性胃腸炎ウイルス(contagious gastroenteritis virus)、ブタパルボウイルス(porcine parvovirus)、脳心筋炎ウイルス(encephalomyocarditis virus)、コロナウイルス(coronavirus)、ロタウイルス(rotavirus)、ブタ離乳後成長不全症候群因子(porcine periweaning failure to thrive syndrome agent)、古典的ブタ熱ウイルス(classical swine fever virus)、アフリカブタ熱ウイルス(African swine fever virus)、カリシウイルス(calicivirus)、トルクテノウイルス(TTV)、伝染性胃腸炎コロナウイルス(TGEV)、ブタ流行性下痢ウイルス(PED)及びブタサーコウイルス(porcine circovirus)、並びにこれらの組み合わせからなる微生物の群から選択される。
【0115】
より具体的には、追加の抗原は、イー・コリF4ab、F4ac、F5及びF6線毛アドヘシン、イー・コリLTエンテロトキソイド、クロストリジウム・パーフリンジェンスC型類毒素、クロストリジウム・ノービイB型類毒素、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。特に、免疫原性組成物又は該組成物を含むワクチンは、抗原、イー・コリF4ab、F4ac、F5、及びF6線毛アドヘシン、イー・コリLTエンテロトキソイド、クロストリジウム・パーフリンジェンスC型類毒素、及びクロストリジウム・ノービイB型類毒素を含む。特に、本発明の免疫原性組成物は、SUISENG(登録商標)、RHINISENG(登録商標)、ERYSENG(登録商標)、ERYSENG(登録商標)PARVO、ERYSENG(登録商標)PARVO LEPTO、PARVOSENG(登録商標)、VPURED(登録商標)(Laboratorios HIPRA,S.A.)の抗原を更に含む。
【0116】
類毒素は、上記のように取得することが可能であり、全細胞調製物中に、無細胞調製物(上清)中に、又は完全に精製されたタンパク質として含めることができ、後者は類毒素が前記上清から単離され、最終組成物が溶媒と類毒素を含むことを意味する。タンパク質を完全に精製する方法は、例えば、とりわけ、サイズ排除クロマトグラフィー、SDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動)、又は高速液体クロマトグラフィー若しくは逆相クロマトグラフィーによる、あるいは透析による等、当業者に公知の方法である。
【0117】
上記又は下記のいずれの実施形態と組み合わせてもよい別の特定の実施形態において、第三の態様に係る免疫原性組成物は、0.1~100%(v/v)、特に0.5~50%(v/v)、更に具体的には1~25%(v/v)、更に具体的には1~10%(v/v)のクロストリジウム・ディフィシルA類毒素の免疫学的有効量を有する。
【0118】
上記又は下記のいずれの実施形態と組み合わせてもよい別の特定の実施形態において、第三の態様に係る免疫原性組成物は、0.1~100%(v/v)、特に0.5~50%(v/v)、更に具体的には1~25%(v/v)、更に具体的には1~10%(v/v)のクロストリジウム・ディフィシルB類毒素の免疫学的有効量を有する。
【0119】
上記又は下記のいずれの実施形態と組み合わせてもよい別の特定の実施形態において、第三の態様に係る免疫原性組成物は、不活化工程の前に細胞傷害効果に基づいて滴定したときに、少なくとも5.0の細胞傷害力価(CPE、log10CPE/mL)のクロストリジウム・ディフィシル類毒素A及びB(TcdA/TcdB)の免疫学的有効力価を有する。特に、少なくとも5.5の、少なくとも6.0の、少なくとも6.5の、少なくとも7.0の、少なくとも7.5の、少なくとも8.0の、少なくとも8.5の、少なくとも9.0の、少なくとも9.5の、少なくとも10.0の、少なくとも10.5の、又は少なくとも11.0のCPE。好ましくは、5.0~11.0のCPE、より好ましくは6.5~9.5のCPE。CPEアッセイは、毒性効果の滴定のための定型的な方法である。この手法の詳細は以下に記載されており、当業者に周知である。
【0120】
上記又は下記のいずれの実施形態と組み合わせてもよい更に別の特定の実施形態において、第三の態様に係る免疫原性組成物は、99:0.1~0.1:99、好ましくは50:0.5~0.5:50、より好ましくは10:1~1:10、より好ましくは5:1~1:5、より好ましくはは2.5:1~1:2.5、より好ましくは2.5:1の比で、クロストリジウム・ディフィシル類毒素A及びB(TcdA/TcdB)が存在する。
【0121】
上記又は下記のいずれの実施形態と組み合わせてもよい更に別の特定の実施形態において、第三の態様に係る免疫原性組成物は、0.1~100%(v/v)、好ましくは0.5~50%(v/v)、より好ましくは1~25%(v/v)のクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素の免疫学的有効量を有する。更により好ましくは、8~10%(v/v)。
【0122】
上記又は下記のいずれの実施形態と組み合わせてもよい別の特定の実施形態において、第三の態様に係る免疫原性組成物は、不活化工程の前に溶血活性に基づいて滴定したときに、少なくとも8.0の溶血力価(HA、log2HA50%/mL)のクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素の免疫学的有効力価を有する。特に、少なくとも8.5の、少なくとも9.0の、少なくとも9.5の、少なくとも10.0の、少なくとも10.5の、少なくとも11.0の、少なくとも11.5の、少なくとも12.0の、少なくとも12.5の、少なくとも13.0の、少なくとも13.5の、少なくとも14.0の、少なくとも14.5の、少なくとも15.0の、少なくとも15.5の、少なくとも16.0の、少なくとも16.5の、少なくとも17.0の、少なくとも17.5、又は少なくとも18.0のHA。好ましくは、8.0~18.0のHA、より好ましくは11.0~17.5のHA。HAアッセイは、毒性効果の滴定のための定型的な方法である。この手法の詳細は以下に記載されており、当業者に周知である。
【0123】
特に、本発明の第三の態様に係る免疫原性組成物において、クロストリジウム・ディフィシルA(TcdA)/B(TcdB)類毒素及びクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素は、0.1:99~99:0.1、好ましくは0.5:50~50:0.5、より好ましくは20:1~1:20、より好ましくは10:2~2:10の比で存在する。更により好ましくは、2:10。
【0124】
上記のように、本発明の第四の態様は、本発明の第三の態様の免疫原性組成物と薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体とを含むワクチンにも関する。本発明の第三の態様の免疫原性組成物の全ての具体的な実施形態は、本発明の第四の態様のワクチンにも当てはまる。
【0125】
特定の実施形態において、本発明のワクチンは、アジュバントを更に含む。
【0126】
本発明の第四の態様のワクチンに含まれ得る賦形剤、担体、及びアジュバントは、上に記載されている。投与の経路及びワクチン接種計画も同様。具体的な経路には、経口、経皮、経粘膜(即ち、粘膜に及び/又は粘膜下に)、皮内、皮下、筋肉内、鼻内、エアロゾルを用いて、腹腔内又は静脈内経路が含まれるが、これらに限定されない。特に、これらの免疫学的組成物又はワクチンは、筋肉内経路によって投与される。所望される治療の期間及び有効性に応じて、本発明の組成物は、1回又は数回、また断続的に、例えば、数日間、数週間、又は数カ月間日常的に及び/又は異なる投与量で投与され得る。投与のタイミングは、本分野で周知の要素に依存する。初回投与後に、初回投与の有効性を維持及び/又は強化するために、1回又は複数回の追加の投与を行ってもよい。具体的には、本発明の免疫原性組成物又はワクチンは、数回投与される。より具体的には、ワクチン接種計画は、出産前に2回投与することを含み、最初の投与は出産の約6週前に行われ、2回目の投与は出産の約3週前に行われる。一実施形態において、2回投与のワクチン接種計画が動物に初めて与えられた場合には、次の出産では単回投与のみが必要である。従って、本発明の免疫原性組成物又はワクチンは、単回投与で投与することもできる。本発明のワクチンは、例えば、マニュアルRemington The Science and Practice of Pharmacy,20thedition,Lippincott Williams&Wilkins,Philadelphia,2000[ISBN:0-683-306472]に記載されているように、様々な投与形態に適した薬学的製剤の調製のために、当業者によって使用される通常の方法にしたがって調製することができる。より具体的には、ワクチンは、筋肉内経路によって使用するためのワクチンである。
【0127】
本発明の第三の態様に係る免疫原性組成物及び該組成物を含むいずれのワクチンも、第四の態様に関して開示されているように、医薬として使用するための免疫原性組成物又はワクチンである。より具体的には、対象中の腸管感染症又は腸疾患を予防及び/又は治療のため。従って、免疫原性組成物又はワクチンは、クロストリジウム種によって引き起こされる腸管感染症又は腸疾患を予防及び/又は治療する方法において、免疫学的有効量で、免疫原性組成物又はワクチンを必要とする対象に投与することができる。即ち、上に定義されている免疫原性組成物又はワクチンは、クロストリジウム種によって引き起こされる腸管感染症又は腸疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造のための免疫原性組成物又はワクチンである。より具体的には、クロストリジウム種は、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・パーフリンジェンス、及びこれらの混合物から選択され、腸管感染症及び/又は腸疾患はこれらのクロストリジウム種によって引き起こされる。より具体的には、クロストリジウム種は、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型、及びこれらの混合物から選択され、腸管感染症又は腸疾患はこれらのクロストリジウム種によって引き起こされる。特定の実施形態において、本発明の第四の態様にしたがって使用するためのワクチンは、家畜におけるクロストリジウム種腸管感染症及び/又は腸疾患を予防及び/又は治療するためのワクチンである。特にブタであり、ブタは、ブタ、雄ブタ、雌ブタ、未経産ブタ、及び仔ブタからなる群から選択される。より具体的には、特に授乳によって、出産の前に、即ち、分娩又は子孫の出生の前に、未経産ブタ又は雌ブタの子孫に母性受動免疫を与えるためである。
【0128】
本発明の第五の態様において、免疫原性組成物又は該組成物を含むワクチンは、本発明の前記態様のいずれかに定義又は記載されているように、医薬として使用するための免疫原性組成物又はワクチンであり、該医薬は、子孫の出生前に、前記免疫原性組成物又は前記ワクチンを妊娠している雌の家畜動物に投与することを含む、特に授乳によって家畜の雌の子孫へ母性受動免疫化を付与する方法において使用するための医薬である。特に、子孫の受動免疫又は保護は、繁殖可能な及び/又は妊娠している家畜の雌からその子孫へ、当該雌の同腹仔を受動的に保護する初乳抗体の形態で、特異的な移行抗体を伝達することに依存している。
【0129】
以下の実施例に示されているように、雌の血清及び初乳中にも検出される抗体は授乳を通じて子孫に渡され、効果的に子孫に到達するという事実のため、雌の免疫化によって、雌の子孫の母性受動免疫化が可能になった。これにより、クロストリジウム種での攻撃誘発後に子孫の保護が可能となった。
【0130】
本発明の第五の態様の更なる特定の実施形態において、雌ブタ若しくは未経産ブタの子孫に又はあらゆる家畜の雌の子孫にクロストリジウム症に対する母性受動免疫を与える方法であって、出産前に雌ブタ又は未経産ブタに(又はあらゆる家畜の雌に)前記免疫学的組成物又はワクチンの免疫学的有効量を投与することを含み、特に授乳を通じて仔ブタ(即ち、子孫)に母性受動免疫が付与される方法において使用するためのものである。更に別の特定の実施形態において、クロストリジウム種によって引き起こされる疾病は、腸管感染症及び/又は腸疾患である。更に別の特定の実施形態において、クロストリジウム種は、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・パーフリンジェンス、及びこれらの混合物から選択され、腸管感染症又は腸疾患はこれらのクロストリジウム種によって引き起こされる。更に特定の実施形態において、特に授乳によって、母性受動免疫を与える上記方法は、家畜の雌に本発明の免疫学的組成物又はワクチンの免疫学的有効量を少なくとも2回投与することを含む。
【0131】
あるいは、上記は、特に授乳によって、クロストリジウム種によって引き起こされる疾病に対して妊娠した雌の家畜動物の子孫に母性受動免疫を与える方法であって、子孫の出生前に、免疫原性組成物又は該組成物を含むワクチンの免疫学的有効量を妊娠している雌の家畜動物に投与することを含む方法として記述することができる。特定の実施形態において、この方法は、妊娠した雌の家畜動物に少なくとも2回投与することを含む。別の特定の実施形態において、妊娠した雌の家畜はブタである。更に別の特定の実施形態において、クロストリジウム種によって引き起こされる疾病は、腸管感染症及び/又は腸疾患である。更に別の特定の実施形態において、クロストリジウム種は、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・パーフリンジェンス、及びこれらの混合物から選択され、腸管感染症又は腸疾患はこれらのクロストリジウム種によって引き起こされる。また、あるいは、これは、クロストリジウム種によって引き起こされる腸管感染症又は腸疾患に対する母性受動免疫を付与するための医薬の製造のための、免疫原性組成物又は該組成物を含むワクチンの免疫学的有効量の使用として記述することができる。より具体的には、クロストリジウム種は、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・パーフリンジェンス、及びこれらの混合物から選択され、腸管感染症又は腸疾患はこれらのクロストリジウム種によって引き起こされる。より具体的には、クロストリジウム種は、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型、及びこれらの混合物から選択され、腸管感染症又は腸疾患はこれらのクロストリジウム種によって引き起こされる。
【0132】
前述されているように、本発明の第七の態様は、
(a)第三の態様にしたがって上述した免疫原性組成物と、
(b)薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体と、
を備え、
(c)アジュバントと、
(d)キットの使用説明書と、
を備えてもよい、ワクチン接種キットである。
【0133】
上記のこのワクチン接種キットは、特に、クロストリジウム種によって引き起こされる疾病の予防及び/又は治療において使用するためのワクチン接種キットである。更に、このワクチン接種キットは、ワクチン接種キット・オブ・パーツ(kit-of-parts)でもあり得る。
【0134】
クロストリジウム種によって引き起こされる感染症又は疾病に対して対象にワクチン接種するためのその他のワクチン接種キットも本発明の一部である。特に、本発明の第四の態様のワクチンと、微生物によって引き起こされる別の疾病又は病的状態に対するさらなる免疫性組成物及び/又はワクチンとを含むワクチン接種キット。特に、本発明のワクチンと混合されたときに、家畜中の疾病、特にクロストリジウム・ディフィシルによって引き起こされる疾病及びその他の疾病の予防及び/又は治療において使用するための指示が書かれた指示書(冊子等)と共に、本発明の免疫原性組成物及び/又は該組成物を含むワクチンを有し、他の疾病に対する他のワクチンを有してもよい1又は複数のバイアルを備えたキットも本発明の一部である。ワクチン接種キットは、投与されるべき最終組成物を再構成するための水溶液を含有する別の容器も更に含有し得る。ワクチン接種キットは、投与用の1又は複数の(医療)器具を含んでもよい。別の特定の実施形態では、ワクチン接種キットは、クロストリジウム・ディフィシル及びクロストリジウム・パーフリンジェンスによって家畜に引き起こされる疾病において使用するためのワクチン接種キットである。別の特定の実施形態では、ワクチン接種キットは、クロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・パーフリンジェンス、及びこれらの混合物によって引き起こされる腸管感染症又は腸疾患において使用するためのワクチン接種キットである。
【0135】
本明細書及び特許請求の範囲を通じて、「含む」という用語及びその変形語は、他の技術的特徴、付加物、成分、又は工程を除外することを意図していない。更に、「含む」という用語は、「からなる」の場合を包含する。本発明の更なる目的、利点、及び特徴は、本明細書を検討することによって当業者に明らかとなり、又は本発明の実施によって知ることができるであろう。以下の実施例は、例示のために提供されており、本発明を限定することを意図するものではない。更に、本発明は、本明細書中に記載されている特定の及び好ましい実施形態のあらゆる可能な組み合わせを網羅する。
【0136】
更なる実施形態
【0137】
本発明は、以下の項目1~27に規定された以下の実施形態も提供する。
1.家畜において医薬として使用するための、1又は複数のクロストリジウム・ディフィシル(C.difficile)類毒素を含む免疫原性組成物。
2.家畜がブタである、項目1に記載の使用のための免疫原性組成物。
3.クロストリジウム種によって引き起こされる疾病の予防及び/又は治療において使用するための、項目1~2のいずれか1つの項目に記載の使用のための免疫原性組成物。
4.クロストリジウム種腸管感染症及び/又は腸疾患を予防及び/又は治療するための、項目1~3のいずれか1つの項目に記載の使用のための免疫原性組成物。
5.類毒素がクロストリジウム・ディフィシルA類毒素、クロストリジウム・ディフィシルB類毒素、クロストリジウム・ディフィシル二元類毒素、及びこれらの混合物からなる群から選択される、項目1~4のいずれか1つの項目に記載の使用のための免疫原性組成物。
6.クロストリジウム・ディフィシルA類毒素及びクロストリジウム・ディフィシルB類毒素を含む、項目1から5の何れか一つの項目に記載の使用のための免疫原性組成物。
7.1又は複数のクロストリジウム・パーフリンジェンス(C.perfringens)類毒素を更に含む、項目1~6のいずれか1つの項目に記載の使用のための免疫原性組成物。
8.1又は複数のクロストリジウム・パーフリンジェンス類毒素がクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素である、項目7に記載の使用のための免疫原性組成物。
9.1又は複数の追加の抗原を更に含み、追加の抗原が、アクチノバチルス、ボルデテラ、ボレリア、ブラキスピラ、ブルセラ、カンピロバクター、クラミジア及びクラミドフィラ、クロストリジウム、コリネバクテリウム、エンテロコッカス、エリシペロスリクス、エシェリキア、フランシセラ、ヘモフィルス、ヘリコバクター、イソスポラ、ローソニア、レジオネラ、レプトスピラ、リステリア、マイコバクテリウム、マイコプラズマ、ナイセリア、パスツレラ、シュードモナス、リケッチア、サルモネラ、シゲラ、スタフィロコッカス、ストレプトコッカス、トレポネーマ・ビブリオ及びエルシニア属、ブタ繁殖及び呼吸障害症候群ウイルス、ブタインフルエンザウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス、ブタパルボウイルス、脳心筋炎ウイルス、コロナウイルス、ロタウイルス、ブタ離乳後成長不全症候群因子、古典的ブタ熱ウイルス、アフリカブタ熱ウイルス、カリシウイルス、トルクテノウイルス(TTV)、伝染性胃腸炎コロナウイルス(TGEV)、ブタ流行性下痢ウイルス(PED)ブタサーコウイルス、並びにこれらの組み合わせからなる微生物の群から選択される、項目1~8のいずれか1つの項目に記載の使用のための免疫原性組成物。
10.1又は複数の追加の抗原が、イー・コリF4ab、F4ac、F5及びF6線毛アドヘシン、イー・コリLTエンテロトキソイド、クロストリジウム・パーフリンジェンスC型類毒素、クロストリジウム・ノービイB型類毒素、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、項目9に記載の使用のための免疫原性組成物。
11.授乳を手段として用いてもよい、家畜の雌の子孫に母性受動免疫化を与える方法において使用するための、項目1~10のいずれか1つの項目に記載の使用のための免疫原性組成物。
12.(a)項目1~10のいずれかに規定された1又は複数のクロストリジウム・ディフィシル類毒素を含む免疫原性組成物と、並びに(b)薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体と、を含む、家畜において医薬として使用するためのワクチン。
13.アジュバントを更に含む、項目12に記載の使用のためのワクチン。
14.授乳を手段として用いてもよい、家畜の雌の子孫に母性受動免疫を与えるための項目12~13のいずれか1つの項目に記載の使用のためのワクチン。
15.鼻内に、皮内に、経粘膜的に(粘膜に及び/又は粘膜下に)、皮下に、エアロゾルを用いて、筋肉内に、静脈内に、又は経口に使用するための、項目12~14のいずれか1つの項目に記載の使用のためのワクチン又は項目1~11のいずれか1つの項目に記載の使用のための免疫原性組成物。
16.(a)クロストリジウム・ディフィシルA類毒素(TcdA)、クロストリジウム・ディフィシルB類毒素(TcdB)、及びこれらの混合物からなる群から選択される1又は複数のクロストリジウム・ディフィシル類毒素と、並びに(b)1又は複数のクロストリジウム・パーフリンジェンスA型類毒素と、を含む、免疫原性組成物。
17.クロストリジウム・ディフィシルA類毒素、クロストリジウム・ディフィシルB類毒素、及びクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素を含む、項目16に記載の免疫原性組成物。
18.1又は複数の追加の抗原を更に含み、追加の抗原が、アクチノバチルス、ボルデテラ、ボレリア、ブラキスピラ、ブルセラ、カンピロバクター、クラミジア及びクラミドフィラ、クロストリジウム、コリネバクテリウム、エンテロコッカス、エリシペロスリクス、エシェリキア、フランシセラ、ヘモフィルス、ヘリコバクター、イソスポラ、ローソニア、レジオネラ、レプトスピラ、リステリア、マイコバクテリウム、マイコプラズマ、ナイセリア、パスツレラ、シュードモナス、リケッチア、サルモネラ、シゲラ、スタフィロコッカス、ストレプトコッカス、トレポネーマ・ビブリオ及びエルシニア属、ブタ繁殖及び呼吸障害症候群ウイルス、ブタインフルエンザウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス、ブタパルボウイルス、脳心筋炎ウイルス、コロナウイルス、ロタウイルス、ブタ離乳後成長不全症候群因子、古典的ブタ熱ウイルス、アフリカブタ熱ウイルス、カリシウイルス、トルクテノウイルス(TTV)、伝染性胃腸炎コロナウイルス(TGEV)、ブタ流行性下痢ウイルス(PED)、ブタサーコウイルス、並びにこれらの組み合わせからなる微生物の群から選択される、項目16~17のいずれか1つの項目に記載の免疫原性組成物。
19.1又は複数の追加の抗原、イー・コリF4ab、F4ac、F5及びF6線毛アドヘシン、イー・コリLTエンテロトキソイド、クロストリジウム・パーフリンジェンスC型類毒素、クロストリジウム・ノービイB型類毒素、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、項目18に記載の免疫原性組成物。
20.項目16~19のいずれか1つの項目に規定された免疫原性組成物と、薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体とを含むワクチン。
21.アジュバントを更に含む、項目20に記載のワクチン。
22.項目16~19のいずれか1つの項目に規定された免疫原性組成物を薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体と混合する工程を含む、項目20~21のいずれか1つの項目に記載のワクチンを製造するための方法。
23.(a)項目16~19のいずれかに規定された免疫原性組成物と、(b)薬学的に許容される賦形剤及び/又は担体と、を備え、(c)アジュバントと、(d)キットの使用説明書と、を備えてもよい、ワクチン接種キット。
24.クロストリジウム種がクロストリジウム・ディフィシル、クロストリジウム・パーフリンジェンス、及びこれらの混合物から選択される、クロストリジウム種腸管感染症及び/又は腸疾患であり得るクロストリジウム種によって引き起こされる疾病の予防及び/又は治療において使用するための項目23に規定されたワクチン接種キットであって、 25.子孫の出生前に、前記免疫原性組成物又は前記ワクチンを妊娠している雌の家畜動物に投与することを含み、授乳を手段として用いてもよい、家畜の雌の子孫へ母性受動免疫を付与する方法において使用するための、
項目1~10のいずれか1つの項目に記載の使用のための免疫原性組成物、項目16~19のいずれか1つの項目に規定された免疫原性組成物、項目12~15のいずれか1つの項目に記載の使用のためのワクチン、及び項目20~21のいずれかに規定されたワクチン。
26.母性受動免疫を付与する前記方法が妊娠した雌の家畜動物への少なくとも2回の投与を含む、項目25に記載の使用のための免疫原性組成物又はワクチン。
27.鼻内に、皮内に、経粘膜的に(粘膜に及び/又は粘膜下に)、皮下に、エアロゾルを用いて、筋肉内に、静脈内に、又は経口に使用するための、項目25~26のいずれか1つの項目に記載の使用のための免疫原性組成物又はワクチン。
【実施例】
【0138】
実施例1
本発明のワクチンの作製
【0139】
異なるワクチン組成物を調製した。ワクチン組成物を調合する前に、不活化された毒素、即ち、類毒素を以下に記載されているようにして得た。
【0140】
1.1.クロストリジウム・ディフィシル不活化TcdA及びTcdB毒素の作製
TcdA及びTcdB毒素を得るために、クロストリジウム・ディフィシル株B-7727を使用した。この株は、Laboratorios HIPRA,S.A.から得た野生分離株(field isolate)であり、TcdA及びTcdB毒素を両方産生する。5%CO2:5%H2:90%N2の雰囲気下で、20×150mmのHungate管中の、0.5%酵母抽出物(Becton Dickinson#212750)及び0.05%L-シスチン(Amresco#0206)が補充された36g/LのBHI(Brain Heart Infusion、Becton Dickinson#237500)ブロスを含有する10mL中にクロストリジウム・ディフィシルのコロニーを播種し、37℃で一晩温置した。0.5%酵母抽出物と0.05%L-シスチンが補充されたBHIブロス4Lを含有する4L三角フラスコ中に懸濁された状態で、透析チューブの輪(MWカットオフ10kDA、SpectrumLabs#132129)に播種するために、この一晩培養物1~2mLの量を使用した。嫌気的恒温槽の中で、このフラスコを37℃で温置した。5~7日後に、透析チューブ中の物質を集め、遠心(15,000×g、20分)によって上清を清澄化し、0.22μmの細孔径を有する濾過によって滅菌した。滅菌濾過後、0.8%w/vの最終濃度になるようにホルムアルデヒドの溶液を加え、上清を不活化するために、撹拌しながら6日間37℃に保った。最後に、残存するホルムアルデヒドを除去するために、PBSを用いて透析を行った。
【0141】
次いで、将来のワクチンの調製のために、精製されたTcdAとTcdB類毒素を含有する上清を4℃で保存した。不活化工程の前に、その細胞傷害効果(CPE)を定量することによって、TcdA/TcdB毒素の定量を行った。活性アッセイのために、アフリカミドリザル腎臓(Vero)細胞を以下のように使用した。105個Vero細胞/mLを、10%(v/v)胎児ウシ血清を含有する無菌GlasgowMEM(ThermoFisher)100μL中、96ウェル組織培養プレート中に播種し、細胞の接触を可能にするために3~4時間温置した。培養濾液の10倍系列希釈を無菌GlasgowMEM+10%FBS中に、二つ組で調製し、Vero細胞に10μLを添加した。対照ウェルには、希釈液のみを加えた。プレートを4日間温置し(37℃及び5%CO2)、標準的な手法を用いてクリスタルバイオレットで染色し、96ウェルプレートリーダーを用いて、595nmで光学密度(OD)を測定した。細胞毒性力価は、50%の細胞毒性を与えた試料希釈の逆数として定義した(CPE;log10CPE/mL)。上清中の比率TcdA:TcdBは、約2.5:1であった。
【0142】
1.2.クロストリジウム・パーフリンジェンスA型不活化α毒素の作製
α毒素を作製するために、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型株4476を使用した。この株は、Laboratorios HIPRA,S.A.から得た野生分離株である。製造業者の説明書にしたがって調製されたCooked Meat Medium(Becton Dickinson #226730)中において、嫌気性条件下で、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型培養物を増殖させた。37℃で、約4~5時間、厳格な嫌気状態下においてこれを培養した。クロストリジウム・パーフリンジェンスA型細胞(沈査)を分離するために遠心(15,000×g、20分)によって上清を清澄化し、0.22μmの細孔径を有する濾過によって滅菌した。培養物を不活化するために、0.8%w/vの最終濃度になるようにホルムアルデヒドとグリシン溶液を上清に加えた。撹拌しながら、上清を8日間、4℃に保った。不活化が完了したら、10kDaの孔径を有する限外濾過後に、PBSを用いたダイアフィルトレーション工程を使用して、得られた上清を濃縮した。濃縮後、滅菌濾過の最終工程を行った。次いで、将来のワクチンの調製のために、精製されたα類毒素を含有する濃縮された上清を4℃で保存した。
【0143】
不活化工程の前に、以下のようにその溶血活性(HA)を定量することによって、毒素の定量を行った。溶血活性は、0.5%でPBS中に懸濁された採取直後の洗浄されたマウス赤血球を使用することによって測定した。生理的食塩水溶液0.9%中への毒素の2倍系列希釈の等しい容量に、赤血球懸濁物の容量(0.1mL)を加えた。37℃で1時間温置した後、プレートを遠心し、405nmで上清の光学密度(OD)を測定した。溶血力価(HA,log2HA50%/mL)は、50%の細胞溶血を与えた試料希釈の逆数として定義した。
【0144】
本発明の類毒素は、合成的手法等の別の手法、例えば、断片を化学的に合成し、類毒素の完全な配列を得るために、更に連結することによって、取得することもできる。本発明の類毒素は、細菌中又は酵母中に産生された組換えペプチドとして、DNA組換え技術を用いて取得することもできる。これらの別の方法を知っている当業者は、本発明のワクチン又は免疫原性組成物中の類毒素は配列番号1、2、及び3又は配列番号1、2、及び3と少なくとも80%の配列同一性を有する配列から選択される配列を有し得るが、実施例1に記載されているものとは別の方法によって取得された場合に免疫応答を惹起するという点で同じく効果的であることを認めるであろう。
【0145】
1.3.ワクチン組成物
様々なワクチン組成物及び本発明の類毒素の様々な力価を含有する、を以下のように調製した。
【0146】
1.3.1.ワクチンA:クロストリジウム・ディフィシル類毒素製剤
不活化の前に得られた細胞傷害効果(CPE;log10CPE/mL)に基づいて、項1.1に記載されているものと類似の手法にしたがって取得されたクロストリジウム・ディフィシルTcdA及びTcdB類毒素を滴定した。9.4CPEの力価を得るように、ワクチンAを調合した。TcdA/TcdB類毒素の比は2.5:1であった。
【0147】
以下のように、ワクチンAを調合した。TcdA/TcdB類毒素(抗原相(antigenic phase))25%(v/v)を、4%(w/v)で、PBS及び人参溶液5%(w/v)と混合し、次いで、この溶液を均質化した。その後、水酸化アルミニウムゲル25%(w/v)を添加し、容量の100%が達成されるまで、PBSで容量を調整し、注射用懸濁液を得た。最後に、7.4~7.8になるようにワクチン製剤のpHを調整した。
【0148】
このワクチン製剤Aは、その後、実施例2において使用した。
【0149】
1.3.2.ワクチンB:クロストリジウム・ディフィシル類毒素製剤
不活化の前に得られた細胞傷害効果(CPE;log10CPE/mL)に基づいて、項1.1に記載されているものと類似の手法にしたがって取得されたクロストリジウム・ディフィシルTcdA/TcdB類毒素を滴定し、8.4CPEの力価を有するワクチンBを得るために、10倍希釈した。TcdA/TcdB類毒素の比は2.5:1であった。
【0150】
以下のように、ワクチンBを調合した。次いで、TcdA/TcdB類毒素(抗原相)2.5%(v/v)を、4%(w/v)で、PBS及び人参溶液5%(w/v)と混合し、次いで、この溶液を均質化した。その後、水酸化アルミニウムゲル25%(w/v)を添加し、容量の100%が達成されるまで、PBSで容量を調整し、注射用懸濁液を得た。最後に、7.4~7.8になるようにワクチン製剤のpHを調整した。
【0151】
このワクチン製剤Bは、その後、実施例2において使用した。
【0152】
1.3.3.ワクチン1:クロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素及びその他の抗原と混合されたクロストリジウム・ディフィシル類毒素製剤
【0153】
不活化の前に得られた細胞傷害効果(CPE;log10CPE/mL)に基づいて、項1.1に記載されているものと類似の手法にしたがって取得されたクロストリジウム・ディフィシルTcdA/TcdB類毒素を滴定し、ワクチン1を調合するために、8.8CPEの力価を達成するまで希釈した。TcdA/TcdB類毒素の割当量(ration)は2.5:1であった。
【0154】
不活化の前に得られた溶血活性(HA、log2HA50%/mL)に基づいて、項1.2に記載されているものと類似の手法にしたがって取得されたクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素を滴定した。クロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素の14.5HAの力価を得るように、ワクチン1を調製した。
【0155】
ワクチン1は、ワクチンAと同じように調合した。この場合には、抗原相は、25%(v/v)のTcdA/TcdBクロストリジウム・ディフィシル類毒素及び25%(v/v)のクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素を含有した。クリストリジウム・ディフィシルTcdA/TcdB類毒素及びクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素は、1:1の比率で存在した。この抗原相を、2%(w/v)DEAE-デキストランと、及び人参の10%(w/v)溶液と、4%(w/v)及び30%(w/v)水酸化アルミニウムゲルで混合した。製剤を均質化し、容量の100%が達成されるまで、PBSを用いて注射用懸濁液を完成させた。最後に、7.4~7.8になるようにpHを調整した。
【0156】
その他の抗原:
次いで、予め取得した注射用懸濁液を、「SUISENG()登録商標)(LABORATORIOS HIPRA,S.A.)と1:1の比率で混合した。SUISENG(登録商標)は、新生ブタ大腸菌症及びクロストリジウム感染症に対する市販のワクチンであり、以下の抗原:イー・コリのF4ab、F4ac、F5及びF6線毛アドヘシン並びにLTエンテロトキソイド、クロストリジウム・パーフリンジェンスC型類毒素及びクロストリジウム・ノービイB型類毒素を含んでいる。
【0157】
「SUISENG」(登録商標)と混合されたワクチン製剤1は、その後、実施例3において使用した。
【0158】
1.3.4.ワクチン2:クロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素及びその他の抗原と混合されたクロストリジウム・ディフィシル類毒素製剤
【0159】
クロストリジウム・ディフィシル抗原:
不活化の前に得られた細胞傷害効果(CPE;log10CPE/mL)に基づいて、項1.1に記載されているものと類似の手法にしたがって取得されたクロストリジウム・ディフィシルTcdA/TcdB類毒素を滴定し、ワクチン2を調合するために、8.5CPEの力価を達成するまで希釈した。TcdA/TcdB類毒素の比は2.5:1であった。
【0160】
クロストリジウム・パーフリンジェンス抗原:
不活化の前に得られた溶血活性(HA、log2HA50%/mL)に基づいて、項1.2に記載されているものと類似の手法にしたがって取得されたクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素を滴定し、ワクチン2を調合するために、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素の13.5HAの力価を達成するように希釈した。
【0161】
ワクチン2は、ワクチン1のように調合した。この場合には、抗原相は、クロストリジウム・ディフィシルTcdA/TcdB類毒素12.5%(v/v)とクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素12.5%(v/v)を含有していた。これは、1:1のクロストリジウム・ディフィシルTcdA/TcdB類毒素とクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素の比に対応する。この混合物を、2%(w/v)DEAE-デキストランと、10%(w/v)人参溶液と共に、4%(w/v)及び30%(w/v)水酸化アルミニウムゲルで均質化した。容量の100%が達成されるまで、得られた注射用懸濁液をPBSで完成させ、最後に、7.4~7.8になるようにpHを調整した。
【0162】
その他の抗原:
次いで、予め取得した注射用懸濁液を、「SUISENG」(登録商標)(LABORATORIOS HIPRA,S.A.)と1:1の比率で混合した。「SUISENG」(登録商標)は、新生ブタ大腸菌症及びクロストリジウム感染症に対する市販のワクチンであり、以下の抗原:イー・コリのF4ab、F4ac、F5及びF6線毛アドヘシン並びにLTエンテロトキソイド、クロストリジウム・パーフリンジェンスC型類毒素及びクロストリジウム・ノービイB型類毒素を含んでいる。
【0163】
単独の又は「SUISENG」(登録商標)と混合されたワクチン製剤2は、その後、実施例3において使用した。
【0164】
実施例2
本発明のワクチンによって免疫化されたブタの、クロストリジウム・ディフィシルTcdA及びTcdB類毒素に対する血清学的応答
【0165】
12週齢で、クロストリジウム・ディフィシル毒素に対する抗体が存在しない合計24匹のブタを、1つの群につき8匹のブタからなる3つの群に分けた。第一の群(A)には項1.3.1に記載されたワクチンA(9.4CPEのTcdA/TcdB力価を含有)を与え、第二の群(B)には項1.3.2に記載されたワクチンB(8.4CPEのTcdA/TcdB力価を含有)を与え、第三の群(C)にはPBS溶液を含有するプラセボワクチンを与えた。ブタには、筋肉内経路によってワクチン2mLを2回投与し、一回目(0日目)と二回目の投与(21日目)の間に3週間の間隔を空けた。
【0166】
免疫化された動物中に誘導された血清学的応答を測定するために、研究の異なる日(ワクチンの第一回の投与の7日前(-7)、ワクチンの第一回の投与から20日、44日及び55日後)に動物から血清試料を採取し、クロストリジウム・ディフィシルTcdA/TcdB毒素に対する抗体の存在を検出するためにELISAによって分析した。
【0167】
結果は、対照群と比べて、ワクチン接種された群では、両抗原に対する抗体のレベルが増加していることを明確に実証した(
図1、A及びB)。従って、本発明のワクチンは、クロストリジウム・ディフィシルのTcdA及びTcdB毒素に対する明確な免疫応答を示し、更に、抗体は中和抗体であることが観察された。
【0168】
実施例3
様々な混合ワクチンで免疫化された雌ブタの血清学的応答
【0169】
出産の6週前で、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型α毒素並びにクロストリジウム・ディフィシルTcdA及びTcdB毒素に対する抗体が存在しない妊娠した雌ブタ合計16匹を、この研究のために選択した。雌ブタを、1つの群につき4匹の動物からなる4つの異なる群(A~D)に分けた。各群は、異なる処置を受けた。
【0170】
・群A:項1.3.3に記載されているように「SUISENG」(登録商標)と混合されたワクチン1
・群B:項1.3.4に記載されているように「SUISENG」(登録商標)と混合されたワクチン2
・群C:ワクチン2のみ(「SUISENG」(登録商標)なし)。
・群D:プラセボワクチン(抗原相なしのアジュバント)。
【0171】
全ての群は、同じ投与計画を用いて免疫化した。投与計画は、筋肉内経路によって投与された2mLの2回投薬からなり、2回の投薬には3週の間隔を空けた。1回目の投薬は分娩(0日)の6週前に投与し、2回目の投薬は分娩の3週前(21日)に投与した。1回目の投薬は首の右側に与え、2回目の投薬は左側に与えた。「SUISENG」(登録商標)は実験用ワクチンと1:1の比で混合され、ワクチンプロトコールでは、各ワクチンにつき2mLの注射を使用したので、SUISENG(登録商標)(A、B群)もワクチン接種された群は、4mLの注射を受けた。
【0172】
クロストリジウム・ディフィシル及びクロストリジウム・パーフリンジェンス抗原に対する雌ブタの血清学的応答
【0173】
2つの技術、ELISA及び血清中和を用いて、本発明のワクチン中に存在する抗原に対する血清学的応答の分析を開発した。最初のワクチン接種の日(0日)並びに最初のワクチン接種から20日及び44日後に、血清を抽出した。
【0174】
対照群と比べて、免疫化された全ての動物で、クロストリジウム・ディフィシルとクロストリジウム・パーフリンジェンスの両方について、全ての抗原に対する明確な抗体陽転が観察された(
図3)。
【0175】
混合ワクチンで免疫化された雌ブタの血清学的応答
「SUISENG」(登録商標)によって誘導された血清学的応答を測定するために、最初のワクチン接種から44日後に、4つの群すべての雌ブタの血清を抽出し、「SUISENG」(登録商標)抗原に対する抗体の存在を検出するためにELISAによって分析した(
図2)。
【0176】
群A及びBについては、全ての抗原に対しても明確な抗体陽転が観察された。
【0177】
これらの結果は、本発明のワクチンと「SUISENG」(登録商標)の連携が良好に機能したこと、及び本発明のワクチンを混合したときの「SUISENG」(登録商標)の有効性も満足できるものであることを示している。
【0178】
初乳中の抗体
母性免疫の伝達を測定するために、出産日に、全ての雌ブタの初乳を収集した。クロストリジウム・パーフリンジェンスA型α毒素並びにクロストリジウム・ディフィシルTcdA及びTcdB毒素に対する特異的抗体を検出するために、ELISA及び血清中和によって血清学的応答を分析した。
【0179】
免疫化された動物から収集された初乳の試料は、プラセボ群と比較すると、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型α毒素並びにクロストリジウム・ディフィシルTcdA及びTcdB毒素に対する特異的抗体の極めて高い力価を含有することが観察された(
図4)。
【0180】
実施例4
仔ブタへの受動免疫化による本発明のワクチンの有効性
【0181】
本実施例では、初乳を介して受動的に免疫化された仔ブタにおいて、実験的感染後にワクチンの有効性を評価した。
【0182】
本研究では、合計98匹の新生仔ブタを使用した。仔ブタは、実施例3において免疫化された雌ブタから生まれた。各雌ブタの新生仔ブタを3つの群に分けた。各群は、異なる攻撃誘発を受けた。分配は、表2に記載されている。
【0183】
【0184】
実験的攻撃誘発は、2mLの注射を用いて、腹腔内経路により、1日齢の仔ブタに与えた。予め滴定された各毒素のDL100%用量によって、仔ブタに攻撃誘発を行った。毒素は、実施例1に記載されたものと同様の方法によって取得したが、不活化工程は行わなかった(相同的(homologous)攻撃誘発)。
【0185】
実施例3で雌ブタに実施したように、血清を取得して、ELISA及び血清中和によって血清学的に分析するために、出生日に、仔ブタから血液を抽出した。免疫化された雌ブタから生まれた全ての動物が、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型α毒素及びクロストリジウム・ディフィシルTcdA/TcdB毒素に対する特異的移行抗体の高い水準を含有することが観察された。本実施例は、初乳を介した抗体伝達が免疫化された全ての群で効率的に起こったことを実証している。
【0186】
仔ブタでのワクチンの有効性を測定するために、死亡した仔ブタ及び生存している仔ブタを全て剖検した(生存している仔ブタは、研究の終了時点、攻撃誘発の5日後に剖検した。)。全ての実験群で、死亡率及び肉眼的病変スコアを測定した。
【0187】
肉眼的病変スコアは、水胸症及び腹水スコアの合計によって算出した。これらのスコアは、病変の不存在、軽度、又は重度が観察されたことに基づいて、それぞれ、0、1又は2を割り当てた。
【0188】
生存評価は、有効性を評価するための最も適切な変数であった。実験群間で有意な差が観察された。本発明のワクチンを用いて免疫化された雌ブタから生まれた仔ブタにおいて、生存の有意な増加が観察された(
図5)。
【0189】
免疫化された群(A、B、C)の間で、プラセボ群(D)に対して、肉眼的病変スコアの有意な低下も観察された(
図6)。
【0190】
本発明の更なる多価ワクチンもブタにおいて試験され、これらの動物は、異種のクロストリジウム・ディフィシル及びクロストリジウム・パーフリンジェンスA型株によっても攻撃誘発を行った。クロストリジウム・ディフィシルのTcdA及びTcdB類毒素についてはCPEの様々な力価、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型のα類毒素についてはHAの様々な力価でアッセイを行った。アッセイは、6.7、7.0、7.3、7.8、及び8.0のCPEという低いクロストリジウム・ディフィシルTcdA/TcdB類毒素のCPE力価を含んでいた。同様に、クロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素のHA力価は、11.0及び12.0のHAという低いものであった。更に、クロストリジウム・ディフィシルTcdA/TcdB類毒素にクロストリジウム・パーフリンジェンスA型α類毒素を混合したものについても、15.3、16.3、及び17.3の活性が試験された。これらの追加にワクチンは、上記実施例で記載されているものと同じプロトコールにしたがって作製した。また、これらのワクチンには、上記実施例で記載されているものと同じアジュバントを調合した。試験されたワクチンには、先述されているように、1:1の比で「SUISENG」(登録商標)(LABORATORIOS HIPRA,S.A.)を混合したものも含まれていた。
【0191】
それぞれ、クロストリジウム・ディフィシル及びクロストリジウム・パーフリンジェンスA型に対して異なるCPE及びHA活性で試験された全ての追加の製剤を用いて得られた結果は、血清学的応答で有意に差を示した。特に、ワクチン接種された妊娠している雌ブタ中の抗体力価は、ワクチン接種されていないものより有意に高かった。更に、ワクチン接種された及びワクチン接種されていない妊娠している雌ブタから生まれた仔ブタ間で、生存に関して有意な差が観察された。観察された生存率も、前者の群で有意に高かった。
【0192】
試験された全ての製剤を用いて得られた結果から、これらの製剤の全てが有効であったと結論付けることができる。両攻撃誘発に関して、50%を上回る生存率及び/又は1を下回る病変の平均(水胸症と腹水スコアの合計)は、試験されたワクチンの有効性の優れた指標であった。更に、実施例の実験用ワクチンに、「SUISENG」(登録商標)中に存在する抗原等の他の抗原を加えても、有効性の有意な減少は観察されず、「SUISENG」(登録商標)と本発明のワクチンの間には優れた適合性があることが実証された。
【0193】
得られた全ての結果は、ワクチン接種された妊娠した雌ブタにおける本発明のワクチンの免疫応答は、前記ワクチンの保護効果が出生の第一日目から仔ブタにおいて取得されるように、子孫に伝達される母性受動免疫応答と完全に相関していることを裏付けている。
【配列表】