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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20230914BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20230914BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20230914BHJP
   F02D 29/04 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
E02F9/20 N
E02F9/26 A
F02D29/00 B
F02D29/04 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020002166
(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公開番号】P2021110134
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】柴森 一浩
(72)【発明者】
【氏名】荒張 正士
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-075500(JP,A)
【文献】特開2017-008524(JP,A)
【文献】特開2019-173731(JP,A)
【文献】特開2007-239683(JP,A)
【文献】特開2019-124000(JP,A)
【文献】特開2002-088821(JP,A)
【文献】特開2003-040051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/26
F02D 29/00
F02D 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンにより駆動されるポンプと、前記ポンプから吐出される作動流体により駆動されるアクチュエータと、流体を冷却風によって冷却する熱交換器と、冷却風の流れ方向に対し前記熱交換器の上流側に設けられ前記冷却風に混入した粉塵を捕捉するフィルタと、前記エンジンの出力を制御する制御装置と、を備えた作業機械において、
前記制御装置は、
当該作業機械の作業環境が粉塵の多い環境であるか否かを表す作業環境情報を取得し、
取得した前記作業環境情報に基づいて、前記エンジンの出力を制する、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記作業環境情報には、少なくとも、当該作業機械を使用する使用者の業種、当該作業機械の作業内容、及び、当該作業機械が使用される場所のいずれかが含まれる、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
運転室内に設けられオペレータによって操作される入力装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記入力装置から前記作業環境情報を取得する、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項3に記載の作業機械において、
前記制御装置は、
当該作業機械の位置情報を取得し、当該作業機械の現在の位置が登録位置から所定距離以上離れた場合、オペレータに対して前記作業環境情報を前記入力装置によって入力させるように促す情報を報知装置によって報知させる、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項4に記載の作業機械において、
前記制御装置は、
前記入力装置から前記作業環境情報を取得したときの前記作業機械の位置を前記登録位置として記憶装置に記憶させる、
ことを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項1に記載の作業機械において、
前記制御装置は、
当該作業機械の外部に設置される管理サーバから前記作業環境情報を取得する、
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンによって油圧ポンプを駆動し、油圧ポンプから吐出される作動油によってアクチュエータを駆動することにより作業装置等、作業機械の各部を動作させる油圧ショベル等の作業機械が知られている。
【0003】
作業機械は、金属スクラップの解体、廃棄作業といった粉塵が多い環境下で作業を行うことがある。粉塵によって、ラジエータ等の熱交換器の冷却風上流側に設けられるフィルタに目詰まりが発生すると、熱交換器の冷却性能が低下し、オーバーヒートが発生するおそれがある。
【0004】
特許文献1には、エンジン冷却水の温度または作動油の温度に基づいてオーバーヒートが発生したか否かを判断し、所定期間内にオーバーヒートの発生履歴に応じてエンジンの出力制限の度合いを段階的に強くする出力制御部を備えた作業機械が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-200160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、作業機械が粉塵の多い環境下で用いられる場合、その作業環境に適した出力制限の度合いとなるまでに時間がかかるおそれがある。このため、作業環境に適した出力制限の度合いとなるまでの間は、フィルタの目詰まりの進行速度が速く、短時間でオーバーヒートが発生することになる。その結果、フィルタの清掃・交換作業を頻繁に行う必要が生じ、作業効率が低下してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、作業環境に応じてエンジンの出力を制御することにより、作業機械の作業効率を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による作業機械は、エンジンと、前記エンジンにより駆動されるポンプと、前記ポンプから吐出される作動流体により駆動されるアクチュエータと、流体を冷却風によって冷却する熱交換器と、冷却風の流れ方向に対し前記熱交換器の上流側に設けられ前記冷却風に混入した粉塵を捕捉するフィルタと、前記エンジンの出力を制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、当該作業機械の作業環境が粉塵の多い環境であるか否かを表す作業環境情報を取得し、取得した前記作業環境情報に基づいて、前記エンジンの出力を制する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業環境に応じてエンジンの出力を制御することにより、作業機械の作業効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】作業機械の管理システムの構成を示す図。
図2】管理サーバの記憶装置に記憶されている作業環境情報テーブルの一例について示す図。
図3】油圧ショベルの油圧システムをメインコントローラと共に示す図。
図4図1のIV-IV線に沿う断面模式図。
図5】油圧ショベルの制御装置の構成を示す図。
図6】表示装置の表示画面に表示される作業環境情報の設定画面の一例について示す図。
図7】第1実施形態に係る制御装置の機能ブロック図。
図8】目標回転数演算テーブルについて示す図。
図9】作動油温と、フィルタの目詰まりの度合い(進行度)との関係を示す図。
図10】第1制限モード設定テーブルについて示す図。
図11】第2制限モード設定テーブルについて示す図。
図12】表示装置の表示画面に表示される出力制限画面について示す図。
図13】メインコントローラにより実行される環境制限モード設定処理の内容について示すフローチャート。
図14】第2実施形態に係る制御装置の一部を構成する情報コントローラの機能ブロック図。
図15】情報コントローラにより実行される作業環境情報の設定処理の内容について示すフローチャート。
図16】表示装置の表示画面に表示される作業環境情報の設定画面の別の例について示す図。
図17】業種と、補正量とが対応付けられたデータテーブルについて示す図。
図18】作業内容と、補正量とが対応付けられたデータテーブルについて示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
図1図13を参照して、本発明の第1実施形態に係る作業機械の一例である油圧ショベル100及びその管理システム10について説明する。図1は、作業機械の管理システム10の構成を示す図である。図1に示すように、管理システム10は、管理センタ40に設置される管理サーバ41と、作業現場で作業を行う作業機械としての油圧ショベル100と、を含む。管理センタ40は、例えば、油圧ショベル100の製造業者(メーカー)の本社、支社、工場等の施設、油圧ショベル100のレンタル会社、サーバの運営を専門的に行うデータセンタ等に設置される。管理サーバ41は、油圧ショベル100から離れた位置に設置され、油圧ショベル100と情報(データ)の送受信を行う。管理サーバ41は、油圧ショベル100の状態を遠隔で管理(把握、監視)する管理装置として機能する。
【0012】
油圧ショベル100は、その製造業者の工場から出荷され、作業現場(工事現場)で稼働している。油圧ショベル100は、作業現場において、土木作業、建設作業、解体作業、浚渫作業等の種々の作業を行う。なお、図1では、図面の簡略化のために、1台の油圧ショベル100のみを示しているが、複数の油圧ショベル100が作業現場で稼働している場合もある。
【0013】
管理システム10は、油圧ショベル100と管理サーバ41との間で通信回線70を介して双方向通信を行うことができるように構成されている。すなわち、油圧ショベル100と管理サーバ41とは、通信回線70を介して情報(データ)の送信、受信を行うことができる。例えば、図示するように、油圧ショベル100と無線基地局71とが携帯電話通信網(移動通信網)の無線通信回線で接続されている場合、無線基地局71が油圧ショベル100から受信した情報をインターネット回線を介して管理サーバ41に送信する。
【0014】
管理サーバ41は、油圧ショベル100から受信した稼働情報、警告情報等の車体情報を受信することにより、油圧ショベル100の状態を把握することができる。また、管理サーバ41の記憶装置42には、作業環境情報テーブル42aが記憶されている。
【0015】
図2は、管理サーバ41の記憶装置42に記憶されている作業環境情報テーブル42aの一例について示す図である。図2に示すように、作業環境情報テーブル42aは、油圧ショベル100を識別するための情報である製造番号と、その油圧ショベル100の作業環境情報と、が対応付けられたデータテーブルである。本実施形態では、作業環境情報として、油圧ショベル100を使用する使用者の業種と、油圧ショベル100によって行われる作業内容と、がある。
【0016】
油圧ショベル100の使用者の業種には、例えば、建設業、林業、解体業、廃棄物処理業などがある。また、作業環境情報である、油圧ショベル100によって使用者が行う作業内容には、道路工事、造成工事、伐倒作業、造材作業、解体作業、産業廃棄物処理などがある。作業環境情報である使用者の業種及び作業内容の情報は、図示しないその他の使用者の情報(例えば、使用者の会社、作業地域等の情報)とともに、作業環境情報テーブル42aに記憶されている。作業環境情報テーブル42aに記憶されている作業環境情報は、作業環境情報に対応付けられた製造番号を有する油圧ショベル100に送信され、後述する情報コントローラ150の記憶装置159に記憶される。
【0017】
図1に示すように、管理サーバ41は、通信回線70を介して、社内コンピュータ44に接続されている。社内コンピュータ44は、製造業者の本社、支社、工場等の施設に設置され、製造業者によって使用されるコンピュータである。管理サーバ41の記憶装置42に記憶されている作業環境情報テーブル42aは、社内コンピュータ44から所定の情報(データ)を管理サーバ41に送信することにより、更新することができる。例えば、製造業者は、製造した油圧ショベル100を出荷する際、その油圧ショベル100の製造番号と、その油圧ショベル100の作業環境情報(使用者の業種及び作業内容)とを対応付けた情報(データ)を社内コンピュータ44から管理サーバ41に送信し、作業環境情報テーブル42aに登録する。
【0018】
油圧ショベル100は、車体9と、車体9に取り付けられる作業装置13と、を備える。車体9は、走行体11と、走行体11上に旋回可能に設けられた旋回体12と、を備える。旋回体12の前部には作業装置13が取り付けられている。
【0019】
作業装置13は、回動可能に連結される複数のフロント部材を有する多関節型の作業装置である。本実施形態では、3つのフロント部材として、ブーム14、アーム15及びバケット16が、直列的に連結される。ブーム14は、その基端部が旋回体12のフレーム12bの前部に回動可能に連結される。アーム15は、その基端部がブーム14の先端部に回動可能に連結される。バケット16は、アーム15の先端部に回動可能に連結される。ブーム14は、ブームシリンダ14aを伸縮させることによって、旋回体12に対して回動する。アーム15は、アームシリンダ15aを伸縮させることによって、ブーム14に対して回動する。バケット16は、バケットシリンダ16aを伸縮させることによって、アーム15に対して回動する。
【0020】
走行体11は、左右一対のクローラを走行用油圧モータ11a(左走行用油圧モータ11al及び右走行用油圧モータ11ar)によって駆動することにより走行する。旋回体12は、旋回用油圧モータ12aを駆動することにより旋回する。旋回体12の前部左側には運転室17が設けられ、運転室17の後部にはエンジン80(図4参照)が収容されるエンジン室18が設けられている。エンジン室18の後部には、作業時の機体のバランスをとるためのカウンタウエイト19が取り付けられている。
【0021】
運転室17内には、走行体11、旋回体12及び作業装置13を操作するための操作装置64~69(図3参照)と、エンジン回転数を設定するためのエンジンコントロールダイヤル83(図5参照)と、表示装置190(図5参照)と、入力装置180(図5参照)と、が設けられる。
【0022】
図3は、油圧ショベル100の油圧システムをメインコントローラ110と共に示す図である。図3に示すように、エンジン80は、油圧ポンプであるメインポンプ171及びパイロットポンプ172を駆動する。メインポンプ171はレギュレータ171aによって容量が制御される可変容量型ポンプであり、パイロットポンプ172は固定容量型ポンプである。本実施形態においては、パイロットライン144~149の途中にシャトルブロック173が設けられている。操作装置64~69から出力された油圧信号が、このシャトルブロック173を介してレギュレータ171aにも入力される。シャトルブロック173の詳細構成は省略するが、油圧信号がシャトルブロック173を介してレギュレータ171aに入力されており、メインポンプ171の吐出流量が当該油圧信号に応じて制御される。
【0023】
パイロットポンプ172の吐出配管であるポンプライン170にはロック弁174が設けられる。ポンプライン170におけるロック弁174の下流側は、複数に分岐されて操作装置64~69、及び作業装置13を制御するための油圧ユニット160内の複数の電磁弁161(図5参照)に接続されている。ロック弁174は本例では電磁切換弁であり、その電磁駆動部は運転室17に配置されたゲートロックレバー(不図示)の位置検出器と電気的に接続されている。ゲートロックレバーのポジションは位置検出器で検出され、その位置検出器からロック弁174に対してゲートロックレバーのポジションに応じた信号が入力される。ゲートロックレバーのポジションがロック位置にあればロック弁174が閉じてポンプライン170が遮断され、ロック解除位置にあればロック弁174が開いてポンプライン170が開通する。つまり、ポンプライン170が遮断された状態では操作装置64~69による操作が無効化され、旋回、掘削等の動作が禁止される。
【0024】
操作装置68は、走行右レバー53aを有し右走行用油圧モータ11ar(走行体11)を操作するための操作装置である。操作装置69は、走行左レバー53bを有し左走行用油圧モータ11al(走行体11)を操作するための操作装置である。操作装置64は、操作右レバー52aを共有しブームシリンダ14a(ブーム14)を操作するための操作装置である。操作装置66は、操作右レバー52aを共有しバケットシリンダ16a(バケット16)を操作するための操作装置である。操作装置65は、操作左レバー52bを共有しアームシリンダ15a(アーム15)を操作するための操作装置である。操作装置67は、操作左レバー52bを共有し旋回用油圧モータ12a(旋回体12)を操作するための操作装置である。以下では、走行右レバー53a及び走行左レバー53bを総称して操作レバー53とも記し、操作右レバー52a及び操作左レバー52bを総称して操作レバー52とも記す。
【0025】
操作装置64~69は、それぞれ油圧パイロット方式の一対の減圧弁を含んでいる。これら操作装置64~69は、パイロットポンプ172の吐出圧を元圧として、それぞれオペレータにより操作される操作レバー52,53の操作量(例えば、レバーストローク)と操作方向に応じたパイロット圧(操作圧と称することもある)を発生する。このように発生したパイロット圧は、コントロールバルブユニット50内の対応する流量制御弁55a~55fの油圧駆動部150a~155bにパイロットライン144a~149bを介して供給され、これら流量制御弁55a~55fを駆動する制御信号として利用される。
【0026】
メインポンプ171から吐出される作動流体としての作動油(圧油)は、流量制御弁55a~55fを介して、アクチュエータ(ブームシリンダ14a、アームシリンダ15a、バケットシリンダ16a、旋回用油圧モータ12a、右走行用油圧モータ11ar、左走行用油圧モータ11al)に供給される。供給される圧油によって、作業装置13のアクチュエータであるブームシリンダ14a、アームシリンダ15a及びバケットシリンダ16aが伸縮駆動されると、ブーム14、アーム15及びバケット16がそれぞれ回動する。これにより、バケット16の位置及び作業装置13の姿勢が変化する。供給される圧油によって、アクチュエータである旋回用油圧モータ12aが回転駆動されると、走行体11に対して旋回体12が旋回する。供給される圧油によって、アクチュエータである右走行用油圧モータ11ar及び左走行用油圧モータ11alが回転駆動されると、走行体11が走行する。
【0027】
図1に示すように、旋回体12のフレーム12bには、エンジン室18の外郭を構成する建屋カバー20が設けられている。建屋カバー20の左側の側部20aには、外気を取り入れるための開口部である通気孔18aが複数形成されている。
【0028】
図4は、図1のIV-IV線に沿う断面模式図であり、エンジン室18の内部を示す。エンジン室18には、エンジン80と、エンジン80により駆動され冷却風を発生させる冷却ファン22と、エンジン80により駆動され作動油を吐出する油圧ポンプ(メインポンプ171及びパイロットポンプ172(図4において不図示))と、複数の熱交換器を有する熱交換ユニット21と、冷却風内の異物を捕捉するフィルタ23と、が収容されている。エンジン80は、冷却ファン22、メインポンプ171及びパイロットポンプ172の動力源であり、例えば、ディーゼルエンジン等の内燃機関により構成される。
【0029】
フィルタ23は、冷却風の流れ方向(矢印F参照)に対し、熱交換ユニット21の上流側に設けられている。本実施形態では、フィルタ23は、建屋カバー20の側部(側板)20aと対向するように設けられている。フィルタ23は、冷却風に混入した粉塵等の異物を捕捉する部材であり、例えば、多孔板、金網、ネット等、複数の開口を有する部材である。
【0030】
冷却ファン22がエンジン80により回転駆動されると、矢印Fで示すように、通気孔18a及びフィルタ23を通じてエンジン室18の内部に外気が吸い込まれ、外気が冷却風として熱交換ユニット21に供給される。なお、冷却ファン22は、エンジン80によって駆動される場合に限定されず、例えば電動モータによって駆動されるように構成してもよい。
【0031】
熱交換ユニット21は、冷却ファン22と旋回体12の左右方向で対面した状態で、旋回体12のフレーム12bに固定されている。熱交換ユニット21は、複数の熱交換器21aを含む。例えば、熱交換ユニット21は、熱交換器21aとして、エンジン冷却水(流体)を冷却風によって冷却するラジエータ、作動油(流体)を冷却風によって冷却するオイルクーラ、ターボ過給機からエンジン80に供給される吸気(流体)を冷却風によって冷却するインタクーラ、及び、エアコンの冷媒(流体)を冷却風によって冷却するコンデンサと、を有する。
【0032】
熱交換ユニット21は、冷却ファン22によって生じる冷却風の流れ方向(矢印F方向)において冷却ファン22よりも上流側、即ちフィルタ23と冷却ファン22との間に配置されている。熱交換ユニット21は、各熱交換器(ラジエータ、オイルクーラ、インタクーラ、エアコンのコンデンサ)21aの熱を、建屋カバー20内に供給された冷却風中に放熱することにより、エンジン冷却水、作動油、吸気、エアコンの冷媒等の流体を冷却する。つまり、熱交換ユニット21の各熱交換器21aは、熱交換器21a内を流れる流体と冷却風とを熱交換させることによって流体を冷却する。
【0033】
図5は、油圧ショベル100の制御装置101の構成を示す図である。なお、油圧ユニット160には複数の電磁弁161が設けられるが、図5では一つの電磁弁161を代表して図示している。図5に示すように、制御装置101は、メインコントローラ110と、エンジンコントローラ120と、情報コントローラ150と、を備える。各コントローラ110,120,150は、例えば、CAN(Controller Area Network)と呼ばれる車載ネットワークを介して、相互に情報(データ)の授受を行う。
【0034】
メインコントローラ110は、動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)111と、記憶装置としてのROM(Read Only Memory)112と、記憶装置としてのRAM(Random Access Memory)113と、入力インタフェース(入力部)114と、出力インタフェース(出力部)115と、その他の周辺回路を備えたマイクロコンピュータで構成される。メインコントローラ110は、複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。なお、図示は省略するが、エンジンコントローラ120及び情報コントローラ150も、メインコントローラ110と同様、動作回路としてのCPU、記憶装置としてのROM及びRAM、並びに、入出力インタフェース、その他の周辺回路を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ110,120,150は、その機能の一部、または全部を他のコントローラ110,120,150に持たせてもよい。各コントローラ110,120,150の記憶装置には、各種演算が実行可能なプログラムが格納されている。すなわち、各コントローラ110,120,150の記憶装置は、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体である。
【0035】
メインコントローラ110のROM112は、EEPROM等の不揮発性メモリであり、後述するエンジン出力制限制御を含む各種制御を実行するための制御プログラムと、当該処理の実行に必要な各種情報(データ)と、が記憶された記憶媒体である。RAM113は揮発性メモリであり、CPU111との間で直接的にデータの入出力を行うワークメモリである。RAM112は、CPU111がプログラムを演算実行している間、必要なデータを一時的に記憶する。
【0036】
CPU111は、ROM112に記憶された制御プログラムをRAM102に展開して演算実行する処理装置であって、制御プログラムに従って入力インタフェース114及びROM112,RAM113から取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。出力インタフェース115は、CPU111での演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号を油圧ユニット160の電磁弁161、エンジンコントローラ120及び情報コントローラ150に出力し、各機器を制御する。なお、記憶装置は、ROM112,RAM113に限定されず、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置であってもよい。
【0037】
メインコントローラ110は、メインポンプ171の吐出圧、各アクチュエータの負荷圧、操作装置64~69の操作量、油圧ショベル100の姿勢等に基づいて、メインポンプ171から各アクチュエータへの油圧分配を調整するための演算処理を実行し、その演算結果に基づいて、メインポンプ171の流量、吐出圧及び各アクチュエータの作動速度等を制御する。また、本実施形態に係るメインコントローラ110は、作動環境情報に応じてエンジン80の出力の制限も行う。エンジン80の出力の制限制御の詳細については後述する。
【0038】
メインコントローラ110の入力インタフェース114には、エンジン回転数を設定するための設定装置であるエンジンコントロールダイヤル83からの信号と、作動油の温度(作動油温)を検出する作動油温センサ84からの信号と、エンジンコントローラ120及び情報コントローラ150からの信号と、が入力され、入力された信号をCPU111で演算可能なように変換する。
【0039】
情報コントローラ150には、通信端末140、入力装置180及び表示装置190が接続される。通信端末140は、通信アンテナ141を介して、外部のコンピュータと情報の授受を行うための無線通信装置である。情報コントローラ150は、通信端末140を介して、管理サーバ41、社内コンピュータ44等の外部のコンピュータと情報の授受を行う。入力装置180は、オペレータによって操作され、オペレータの操作に応じた操作信号を情報コントローラ150に出力する装置である。入力装置180としては、キーボード、マウス、各種ボタンを有する操作パネル、タッチパネル等を採用することができる。情報コントローラ150は、入力装置180からの信号をEEPROM等の記憶装置159に記憶させる。表示装置190は、液晶ディスプレイなどであり、情報コントローラ150からの表示制御信号に基づき、所定の表示画像を表示画面に表示する。表示装置190は、例えば、エンジン80の駆動状態、車両の走行状態、旋回体12の旋回状態、作業装置13の姿勢等を表す表示画像を表示画面に表示する。
【0040】
オペレータは、表示装置190の表示画面の案内にしたがって入力装置180を操作することにより、作業環境情報を設定することができる。図6は、表示装置190の表示画面に表示される作業環境情報の設定画面198の一例について示す図である。図6に示すように、表示装置190の表示画面には、基本画面を構成するエンジン冷却水の温度を表す水温メータ191と、燃料の残量を表す燃料メータ192の画像が表示されている。
【0041】
図6に示す作業環境情報の設定画面198は、オペレータが入力装置180を操作することにより、表示装置190の表示画面に表示させることができる。設定画面198は、作業環境情報(使用者の業種及び作業内容)の設定を促す案内画像193と、業種の選択状態を示す業種選択画像194と、作業内容の選択状態を示す作業内容選択画像195と、設定ボタン画像199と、を有する。このように、設定画面198には、オペレータに対して作業環境情報を入力装置180によって入力させるように促す情報が含まれている。
【0042】
案内画像193は、例えば、「業種、作業内容を選択してください。」といった文の画像である。業種選択画像194は、建設業、林業、解体業、廃棄物処理業などの中からオペレータによって選択された業種を表す画像である。業種選択画像194は、オペレータが入力装置180を操作することにより変更される。作業内容選択画像195は、道路工事、造成工事、伐倒作業、造材作業、解体作業、産業廃棄物処理などの中からオペレータによって選択された作業内容を表す画像である。作業内容選択画像195は、オペレータが入力装置180を操作することにより変更される。設定ボタン画像199は、例えば、オペレータが入力装置180を操作して表示画面上のポインタ画像を設定ボタン画像199に重ねた状態で決定ボタンを操作するといった設定操作に用いられる画像である。オペレータが入力装置180を操作して、複数の業種の中から一の業種(図6に示す例では建設業)を選択し、かつ、複数の作業内容の中から一の作業内容(図6に示す例では道路工事)を選択した状態で設定操作を行うと、情報コントローラ150の記憶装置159に作業環境情報(使用者の業種及び作業内容)が記憶される。
【0043】
情報コントローラ150の記憶装置159に記憶される作業環境情報(使用者の業種及び作業内容)は、上述した管理サーバ41の記憶装置42に記憶される作業環境情報テーブル42aの作業環境情報(使用者の業種及び作業内容)と同じである。なお、説明の便宜上、入力装置180によってオペレータにより設定される作業環境情報については第1作業環境情報と記し、製造業者により管理サーバ41に設定される作業環境情報については第2作業環境情報と記し、両者を区別する。
【0044】
図5に示すように、エンジンコントローラ120には、エンジン80の燃料噴射装置81及び回転数センサ82が接続されている。燃料噴射装置81は、エンジン80のシリンダ内に燃料を噴射する装置であり、エンジンコントローラ120によって燃料の噴射量が調整される。回転数センサ82は、エンジン80の回転数(回転速度)を検出し、検出信号をエンジンコントローラ120に出力する。なお、図示しないが、エンジンコントローラ120には、エンジン冷却水の温度を検出する冷却水温センサが接続され、冷却水温センサで検出された冷却水温を表す検出信号がエンジンコントローラ120に出力される。
【0045】
メインコントローラ110は、油圧ユニット160の電磁弁161に制御信号(励磁電流)を出力して電磁弁161を作動させることにより、作業装置13を構成する各アクチュエータ(ブームシリンダ14a、アームシリンダ15a及びバケットシリンダ16a)の制御を行う。また、メインコントローラ110は、情報コントローラ150に制御信号を出力することにより、情報コントローラ150を用いて表示装置190の制御を行う。表示装置190は、情報コントローラ150からの信号(表示制御信号)が入力されると、その信号に基づいて、表示画面に表示画像を表示する。さらに、メインコントローラ110は、エンジンコントローラ120に制御信号を出力することにより、エンジンコントローラ120を用いてエンジン80の制御を行う。
【0046】
エンジンコントローラ120は、燃料噴射装置81により、エンジン80のシリンダ内に噴射する燃料の噴射量を調整してエンジン回転数を制御する。つまり、エンジン80は、エンジンコントローラ120により所定の回転数で回転するように制御される。
【0047】
メインコントローラ110は、目標回転数の情報(データ)をエンジンコントローラ120に出力する。エンジンコントローラ120は、回転数センサ82の検出信号から演算したエンジン80の回転数(実回転数)を、メインコントローラ110から取得した目標回転数に一致させるように燃料噴射装置81を制御する。
【0048】
メインコントローラ110には、エンジン80の目標回転数を設定するためのエンジンコントロールダイヤル83が接続される。エンジンコントロールダイヤル83からの指令値は、メインコントローラ110に入力される。オペレータは、エンジンコントロールダイヤル83を操作することにより、エンジン80の目標回転数を調整することができる。
【0049】
本実施形態に係る制御装置101は、フィルタ23の目詰まり状態(目詰まりの度合い)に基づいて、エンジンの出力を制御する。また、制御装置101は、油圧ショベル100の作業環境情報(使用者の業種及び作業内容)を取得し、取得した作業環境情報に基づいて、エンジン80の出力を制御する。図7図9を参照して、フィルタ23の目詰まりの度合い及び作業環境情報に基づく、エンジン80の出力の制限制御の内容について、詳しく説明する。図7は、制御装置101の機能ブロック図である。図8は、メインコントローラ110のROM112に記憶されている目標回転数演算テーブルについて示す図である。
【0050】
図7に示すように、メインコントローラ110は、ROM112に記憶されているプログラムを実行することにより、目標回転数演算部181、モード設定部182、及び、補正部183として機能する。
【0051】
目標回転数演算部181は、フィルタ23の目詰まりの度合い(目詰まりの進行度)に基づいて、図8に示す複数の目標回転数演算テーブルT0,T1,T2,T3の中からエンジン回転数の制御に用いる目標回転数演算テーブルを選択する。
【0052】
メインコントローラ110のROM112には、複数の目標回転数演算テーブルT0,T1,T2,T3が記憶されている。本実施形態では、目標回転数演算テーブルとして、標準テーブルT0と、第1制限テーブルT1と、第2制限テーブルT2と、第3制限テーブルT3と、がある。なお、目標回転数演算テーブルの数は、4つに限定されるものではない。
【0053】
目標回転数演算テーブルは、エンジンコントロールダイヤル83からの指令値(横軸)に対するエンジン80の目標回転数(縦軸)を表すテーブルである。目標回転数演算テーブルは、エンジンコントロールダイヤル83からの指令値(出力値)が増加するにしたがって目標回転数が直線的に増加する特性を有している。第1制限テーブルT1は、標準テーブルT0よりもエンジンコントロールダイヤル83からの指令値(出力値)に応じた目標回転数が小さくなる特性を有し、第2制限テーブルT2は、第1制限テーブルT1よりもエンジンコントロールダイヤル83からの指令値(出力値)に応じた目標回転数が小さくなる特性を有し、第3制限テーブルT3は、第2制限テーブルT2よりもエンジンコントロールダイヤル83からの指令値(出力値)に応じた目標回転数が小さくなる特性を有する。本実施形態では、各目標回転数演算テーブルの特性を表す直線の傾き(エンジン80の目標回転数/エンジンコントロールダイヤル83からの指令値)は、いずれも同じである。
【0054】
ところで、熱交換ユニット21は、フィルタ23の目詰まりが進行すると、熱交換ユニット21に供給される冷却風の流量が減少し、熱交換器21a内の流体(エンジン冷却水、作動油等)を冷却する能力が低下するので、熱交換器21a内の流体の温度が上昇する。このため、所定の運転条件下において、熱交換器21a内の流体の温度を監視することにより、フィルタ23の目詰まりの度合い(進行度)を推定することができる。本実施形態では、フィルタ23の目詰まりの度合いを作動油温センサ84で検出された作動油温Toの温度により推定する。
【0055】
図9は、作動油温Toと、フィルタ23の目詰まりの度合い(進行度)Dfとの関係を示す図である。この図9に示す特性は、実験等により得られる。目詰まりの度合い(進行度)Dfは、例えば、異物によって遮蔽されているフィルタ23の開口部の面積(総面積)を、目詰まりが全くないときのフィルタ23の開口部の面積(総面積)によって除した値で表される((遮蔽されている開口面積/目詰まりが全くないときの開口面積)×100%)。目詰まり度合いDfは、目詰まりが全く無い状態では0%であり、目詰まりの進行とともに増加し、異物によってフィルタ23の開口が全て塞がれると100%となる。
【0056】
図9に示すように、作動油温Toは、フィルタ23の目詰まりの度合いDfが高くなるにしたがって上昇する。図9に示す例では、フィルタ23の目詰まりの度合いDfがDf0であるとき作動油温ToはTo0であり、フィルタ23の目詰まりの度合いDfがDf1であるとき作動油温ToはTo1であり、フィルタ23の目詰まりの度合いDfがDf2であるとき作動油温ToはTo2である。
【0057】
図7に示す目標回転数演算部181は、作動油温Toが予め定めた閾値To0未満である場合には、フィルタ23の目詰まりの度合いDfがDf0未満であると判定し、目標回転数演算テーブルとして、標準テーブルT0(図8参照)を選択する。目標回転数演算部181は、作動油温Toが予め定めた閾値To0以上To1未満である場合には、フィルタ23の目詰まりの度合いDfがDf0以上Df1未満であると判定し、目標回転数演算テーブルとして、第1制限テーブルT1(図8参照)を選択する。目標回転数演算部181は、作動油温Toが予め定めた閾値To1以上To2未満である場合には、フィルタ23の目詰まりの度合いDfがDf1以上Df2未満であると判定し、目標回転数演算テーブルとして、第2制限テーブルT2(図8参照)を選択する。目標回転数演算部181は、作動油温Toが予め定めた閾値To2以上である場合には、フィルタ23の目詰まりの度合いDfがDf2以上であると判定し、目標回転数演算テーブルとして、第3制限テーブルT3(図8参照)を選択する。
【0058】
目標回転数演算部181は、選択した目標回転数演算テーブルを参照し、エンジンコントロールダイヤル83から入力される指令値(入力値)に基づいて、エンジン80の目標回転数を演算する。目標回転数演算テーブルが、第1制限テーブルT1、第2制限テーブルT2及び第3制限テーブルT3のいずれかに設定された場合、標準テーブルT0が設定されているときよりもエンジン80の目標回転数が低く制限されることになる。その結果、エンジン80の出力が低く制限される。本実施形態では、第1制限テーブルT1が設定された場合、標準テーブルT0が設定されているときに比べて、エンジン80の出力が10%程度低下する。第2制限テーブルT2が設定された場合、標準テーブルT0が設定されているときに比べて、エンジン80の出力が20%程度低下する。第3制限テーブルT3が設定された場合、標準テーブルT0が設定されているときに比べて、エンジン80の出力が30%程度低下する。
【0059】
モード設定部182は、情報コントローラ150に第1作業環境情報を取得するための要求指令を出力する。情報コントローラ150の記憶装置159に第1作業環境情報が記憶されていない場合、情報コントローラ150は、第1作業環境情報が記憶装置159に記憶されていないことを表す信号をメインコントローラ110に出力する。情報コントローラ150の記憶装置159に第1作業環境情報が記憶されている場合、情報コントローラ150は、第1作業環境情報をメインコントローラ110に出力する。
【0060】
モード設定部182は、情報コントローラ150から第1作業環境情報を取得した場合、作業環境情報がオペレータによって設定済みであると判定する。モード設定部182は、情報コントローラ150から第1作業環境情報が記憶装置159に記憶されていないことを表す信号を取得した場合(すなわち、第1作業環境情報を取得することができなかった場合)、作業環境情報がオペレータによって設定されていないと判定する。
【0061】
作業環境情報がオペレータによって設定されていないと判定された場合、モード設定部182は、情報コントローラ150に第2作業環境情報を取得するための要求指令を出力する。これにより、情報コントローラ150は、第2作業環境情報をメインコントローラ110に出力する。
【0062】
モード設定部182は、第1作業環境情報を取得した場合、制限モード設定テーブルを参照し、取得した第1作業環境情報に基づいて、環境制限モードを有効または無効に設定する。モード設定部182は、第2作業環境情報を取得した場合、制限モード設定テーブルを参照し、取得した第2作業環境情報に基づいて、環境制限モードを有効または無効に設定する。
【0063】
図10は、メインコントローラ110のROM112に記憶されている第1制限モード設定テーブル113aについて示す図である。図10に示すように、第1制限モード設定テーブル113aは、業種と、その業種が制限業種であるか、あるいは非制限業種であるかを表す情報と、が対応付けられたデータテーブルであり、予めメインコントローラ110のROM112に記憶されている。ここで、制限業種とは、粉塵の多い環境下で作業を行うことが多く、エンジン80の出力を制限することが好ましい業種のことを指し、非制限業種とは、粉塵の多い環境下で作業を行うことが少なく、エンジン80の出力を制限することが好ましくない業種のことを指す。
【0064】
図10に示す例では、建設業、林業は、粉塵の多い環境下で作業を行うことは少ない業種であることから非制限業種としてROM112に記憶され、解体業及び産業廃棄物処理業は、粉塵の多い環境下で作業を行うことが多い業種であることから制限業種として、ROM112に記憶されている。
【0065】
図11は、メインコントローラ110のROM112に記憶されている第2制限モード設定テーブル113bについて示す図である。図11に示すように、第2制限モード設定テーブル113bは、作業内容と、その作業内容が制限作業内容であるか、あるいは非制限作業内容であるかを表す情報と、が対応付けられたデータテーブルであり、予めメインコントローラ110のROM112に記憶されている。ここで、制限作業内容とは、粉塵の多い環境下で行われることが多い作業内容であり、エンジン80の出力を制限することが好ましい作業内容のことを指し、非制限作業内容とは、粉塵の多い環境下で行われることが少ない作業内容であり、エンジン80の出力を制限することが好ましくない作業内容のことを指す。
【0066】
図11に示す例では、道路工事、造成工事、伐倒作業、造材作業は、粉塵の多い環境下で行われることが少ない作業内容であることから非制限作業内容としてROM112に記憶され、解体作業及び産業廃棄物処理は、粉塵の多い環境下で行われることが多い作業内容であることから制限作業内容として、ROM112に記憶されている。
【0067】
図7に示すモード設定部182は、第1制限モード設定テーブル113a(図10参照)を参照し、取得した業種が制限業種であるか否かを判定する。取得した業種が制限業種であると判定されると、モード設定部182は、環境制限モードを有効に設定する。取得した業種が制限業種でない(非制限業種である)と判定された場合、モード設定部182は、第2制限モード設定テーブル113b(図11参照)を参照し、取得した作業内容が制限作業内容であるか否かを判定する。取得した作業内容が制限作業内容であると判定されると、モード設定部182は、環境制限モードを有効に設定する。取得した作業内容が制限作業内容でない(非制限作業内容)と判定された場合、モード設定部182は、環境制限モードを無効に設定する。
【0068】
環境制限モードが有効に設定されると、補正部183は、目標回転数演算部181で演算された目標回転数から予め定められた補正量Nc(>0)を減算し、目標回転数を補正し、補正後の目標回転数をエンジンコントローラ120へ出力する。補正量Ncは、作業環境を考慮して設定される値であり、予めメインコントローラ110のROM112に記憶されている。補正部183は、環境制限モードが無効に設定されると、目標回転数演算部181で演算された目標回転数を補正することなく、そのままエンジンコントローラ120へ出力する。
【0069】
したがって、環境制限モードが有効に設定されている状態では、メインコントローラ110は、フィルタ23の目詰まり状態にかかわらず、エンジンコントロールダイヤル83で設定されている目標回転数(指令値)よりも低い回転数を目標回転数としてエンジンコントローラ120に出力し、エンジン80の出力を制限する。
【0070】
モード設定部182は、環境制限モードが有効に設定されている場合、そのことを表す信号を情報コントローラ150に出力する。環境制限モードが有効に設定されている場合、情報コントローラ150は、表示装置190に表示制御信号を出力し、表示装置190によって、エンジン80の出力が制限されいていることを表す情報を報知させる。
【0071】
図12は、表示装置190の表示画面に表示される出力制限画面197について示す図である。図12に示すように、環境制限モードが有効に設定されている場合、情報コントローラ150は、表示装置190の表示画面に、エンジン80の出力が制限されている状態であることを表す出力制限画像196を有する出力制限画面197を表示させる。出力制限画像196は、例えば、「出力制限中です。」といった文の画像である。このように、表示装置190によって、エンジン80の出力が制限されている状態を報知することにより、オペレータに対して、エンジン80の出力が制限されている状態であることを容易に認識させることができる。
【0072】
図13は、メインコントローラ110により実行される環境制限モード設定処理の内容について示すフローチャートである。図13に示すフローチャートの処理は、イグニッションスイッチ(不図示)がオンされることにより開始され、図示しない初期設定が行われた後、実行される。
【0073】
図13に示すように、ステップS110において、メインコントローラ110は、第1作業環境情報(業種及び作業内容)を取得するための要求指令を情報コントローラ150に出力する。情報コントローラ150は、第1作業環境情報が記憶装置159に記憶(設定)されている場合、第1作業環境情報をメインコントローラ110に出力する。この場合、ステップS110において、メインコントローラ110は、情報コントローラ150から第1作業環境情報(業種及び作業内容)を取得する。情報コントローラ150は、第1作業環境情報が記憶装置159に記憶(設定)されていない場合、そのことを表す信号(未設定信号)をメインコントローラ110に出力する。この場合、ステップS110において、メインコントローラ110は、情報コントローラ150から未設定信号を取得する。ステップS110において、メインコントローラ110が第1作業環境情報または未設定信号を取得すると、ステップS120へ進む。
【0074】
ステップS120において、メインコントローラ110は、情報コントローラ150から出力される情報に基づいて、作業環境情報がオペレータにより設定済みであるか否かを判定する。ステップS120において、メインコントローラ110は、ステップS110において第1作業環境情報を取得した場合、作業環境情報がオペレータにより設定済みであると判定し、ステップS140へ進む。ステップS120において、メインコントローラ110は、ステップS110において第1作業環境情報を取得しなかった場合、すなわち未設定信号を取得した場合、作業環境情報がオペレータにより設定済みでないと判定し、ステップS130へ進む。
【0075】
ステップS130において、メインコントローラ110は、第2作業環境情報(業種及び作業内容)を取得するための要求指令を情報コントローラ150に出力する。情報コントローラ150は、記憶装置159に記憶(設定)されている第2作業環境情報をメインコントローラ110に出力する。ステップS130において、メインコントローラ110が情報コントローラ150から第2作業環境情報(業種及び作業内容)を取得すると、ステップS140へ進む。
【0076】
ステップS140において、メインコントローラ110は、ステップS110またはステップS130で取得した作業環境情報に含まれる業種が制限業種であるか否かを判定する。ステップS140において、取得した作業環境情報に含まれる業種が制限業種であると判定されるとステップS160へ進み、取得した作業環境情報に含まれる業種が制限業種でないと判定されるとステップS150へ進む。
【0077】
ステップS150において、メインコントローラ110は、ステップS110またはステップS130で取得した作業環境情報に含まれる作業内容が制限作業内容であるか否かを判定する。ステップS150において、取得した作業環境情報に含まれる作業内容が制限作業内容であると判定されるとステップS160へ進み、取得した作業環境情報に含まれる作業内容が制限作業内容でないと判定されるとステップS170へ進む。
【0078】
ステップS160において、メインコントローラ110は、環境制限モードを有効に設定し、図13のフローチャートに示す処理を終了する。ステップS170において、メインコントローラ110は、環境制限モードを無効に設定し、図13のフローチャートに示す処理を終了する。
【0079】
本実施形態の動作の一例について説明する。油圧ショベル100が製造工場から出荷される際、製造業者は、その油圧ショベル100の製造番号と、その油圧ショベル100の作業環境情報(使用者の業種及び作業内容)とを対応付けた情報(データ)を社内コンピュータ44から管理サーバ41に送信し、作業環境情報テーブル42aを更新する。
【0080】
例えば、使用者の業種が解体業である場合、作業環境情報テーブル42aには、その油圧ショベル100の製造番号、業種として「解体業」が対応付けられて登録されている。オペレータが作業環境情報を設定せずに油圧ショベル100によって作業をする場合、制御装置101は、油圧ショベル100の外部に設置される管理サーバ41から作業環境情報を取得し、エンジン80の出力を一律に制限した状態(例えば、エンジン出力が5%~10%低下した状態)でエンジン80を駆動する(図13のS120でN→S130→S140でY→S160)。粉塵の多い環境下において、エンジン80の回転数を低く制限することにより、フィルタ23を通過する外気の流量を減少させることができるので、フィルタ23の目詰まりの進行を抑制することができる。これにより、フィルタ23の清掃間隔及び交換間隔を延ばすことができ、油圧ショベル100によって行われる作業の効率の向上を図ることができる。
【0081】
なお、作業を継続して行う場合、フィルタ23の目詰まりが進行するにしたがって、エンジン80の出力が段階的に制限されるため、オーバーヒートの発生を抑制することができる。
【0082】
また、例えば、使用者の業種が解体工事を請け負う建設業である場合であって、油圧ショベル100を解体作業に用いる場合、管理サーバ41の作業環境情報テーブル42aには、その油圧ショベル100の製造番号、業種として「建設業」、及び、作業内容として「解体作業」が対応付けられて登録されている。オペレータが作業環境情報を設定せずに油圧ショベル100によって作業をする場合、制御装置101は、油圧ショベル100の外部に設置される管理サーバ41から作業環境情報を取得し、エンジン80の出力を一律に制限した状態でエンジン80を駆動する(図13のS120でN→S130→S140でN→S150でY→S160)。粉塵の多い環境下において、エンジン80の回転数を低く制限することにより、フィルタ23を通過する外気の流量を減少させることができるので、フィルタ23の目詰まりの進行を抑制することができる。これにより、フィルタ23の清掃間隔及び交換間隔を延ばすことができ、油圧ショベル100によって行われる作業の効率の向上を図ることができる。
【0083】
解体作業に使用していた油圧ショベル100を別の作業(例えば、粉塵が比較的少ない環境で行われる作業である道路工事)に使用する場合、オペレータは、入力装置180によって作業環境情報の設定を行う。制御装置101は、入力装置180から作業環境情報を取得し、取得した作業環境情報に基づいてエンジン80の出力を制御する。例えば、オペレータが、作業環境情報として、業種に「建設業」を設定し、作業内容に「道路工事」を設定した場合、制御装置101は、作業環境情報に基づくエンジン80の出力の制限制御を実行しない(図13のS110→S120でY→S140でN→S150でN→S170)。
【0084】
油圧ショベル100が用いられる作業環境が変わったときに、エンジン80の出力が一律に制限されたままであると、エンジン80の出力が制限されていない場合に比べて作業効率が低下してしまうという問題が生じる。これに対して、本実施形態では、作業環境が、粉塵の多い環境から粉塵の少ない環境に変更になった場合、作業環境情報に基づく出力制限制御を解除することができるので、油圧ショベル100によって行われる作業の効率を向上することができる。
【0085】
また、本実施形態では、作業環境が、粉塵の少ない環境から粉塵の多い環境に変更になった場合、オペレータが入力装置180によって作業環境情報を設定することにより、制御装置101によって、再び出力制限制御を実行させることができる。
【0086】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0087】
(1)油圧ショベル(作業機械)100は、エンジン80と、エンジン80により駆動されるメインポンプ(ポンプ)171と、メインポンプ171から吐出される作動油(作動流体)により駆動されるアクチュエータ(ブームシリンダ14a、アームシリンダ15a及びバケットシリンダ16a等)と、流体(エンジン冷却水、作動油等)を冷却風によって冷却する熱交換器(ラジエータ、オイルクーラ等)21aを有する熱交換ユニット21と、冷却風の流れ方向に対し熱交換ユニット21の上流側に設けられ冷却風に混入した異物を捕捉するフィルタ23と、フィルタ23の目詰まりの度合い(目詰まり状態)に基づいてエンジン80の出力を制御する制御装置101と、を備える。制御装置101は、油圧ショベル100の作業環境情報を取得し、取得した作業環境情報に基づいて、エンジン80の出力を制御する。本実施形態によれば、作業環境に応じてエンジン80の出力を制御(調整)することにより、油圧ショベル100の作業効率を向上することができる。
【0088】
(2)油圧ショベル100は、運転室17内に設けられオペレータによって操作される入力装置180を備え、制御装置101は、入力装置180から作業環境情報を取得する。したがって、オペレータは、容易に作業環境情報を設定することができる。
【0089】
(3)油圧ショベル100の外部に設置される管理サーバ41から作業環境情報を取得する。これにより、製造業者等は、容易に作業環境情報を設定することができる。
【0090】
<第2実施形態>
図14及び図15を参照して、第2実施形態に係る油圧ショベル200について説明する。なお、図中、第1実施形態と同一もしくは相当部分には同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。図14は、第2実施形態に係る制御装置201の機能ブロック図である。なお、図14において、メインコントローラ110及びエンジンコントローラ120の図示は省略している。
【0091】
第2実施形態に係る制御装置201は、情報コントローラ250と、メインコントローラ110(図14において不図示)と、エンジンコントローラ120(図14において不図示)と、GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球衛星測位システム)用の複数の衛星通信アンテナを有するGNSS受信装置230と、を備えている。GNSS受信装置230は、衛星通信アンテナで受信した信号に基づき、地理座標系(グローバル座標系)における油圧ショベル200の位置(例えば、アンテナの位置)を演算し、演算した油圧ショベル200の位置に関する情報を情報コントローラ250に出力する。つまり、GNSS受信装置230は、油圧ショベル200の位置を検出する位置検出装置として機能する。
【0092】
第1実施形態では、油圧ショベル100を別の作業に使用する場合、オペレータが任意のタイミングで、入力装置180により作業環境情報の設定を行う例について説明した。これに対して、第2実施形態では、制御装置201は、油圧ショベル200の位置を取得し、当該油圧ショベル200の現在の位置が登録位置から所定距離以上離れた場合、オペレータに対して作業環境情報を入力装置180によって入力させるように促す情報を表示装置190によって報知させる。以下、詳しく説明する。
【0093】
情報コントローラ250は、EEPROM等の記憶装置259に記憶されているプログラムを実行することにより、位置情報取得部251、距離演算部252、判定部253、表示制御部254、作業環境情報取得部255、及び、登録位置設定部256として機能する。
【0094】
位置情報取得部251は、GNSS受信装置230から油圧ショベル200の位置に関する情報(アンテナの位置に関する情報)を取得し、取得した位置情報に基づいて油圧ショベル200の基準位置(例えば、旋回中心軸上の任意の位置)の地理座標系(グローバル座標系)における座標値を算出する。位置情報取得部251は、イグニッションスイッチ(不図示)がオンされた後、油圧ショベル200の基準位置を所定の制御周期で繰り返し、あるいは所定のタイミングで演算する。
【0095】
距離演算部252は、記憶装置259に記憶されている登録位置と、位置情報取得部251で演算された油圧ショベル200の基準位置(現在位置)までの距離D(登録位置と現在位置とを直線で結んだ距離)を演算する。
【0096】
判定部253は、距離演算部252が演算した距離Dが所定距離D0以上であるか否かを判定する。所定距離D0は、登録位置を有する作業現場とは異なる作業現場に油圧ショベル200が位置しているか否かを判定するための閾値であり、予め記憶装置259に記憶されている。所定距離D0としては、任意の距離(例えば、1~数km程度)が設定される。つまり、判定部253は、距離Dに基づいて、作業現場が変更されたか否かを判定する作業現場判定部として機能する。判定部253は、距離Dが所定距離D0未満である場合には、作業現場は変更されていないと判定し、距離Dが所定距離D0以上である場合には、作業現場が変更されたと判定する。
【0097】
表示制御部254は、表示装置190によって所定の情報を報知させる報知制御部として機能する。表示制御部254は、判定部253により作業現場が変更されたと判定された場合、作業環境情報の設定画面198(図6参照)を表示装置190に表示させる。すなわち、表示制御部254は、オペレータに対して作業環境情報を入力装置180によって入力させるように促す情報を表示装置190によって報知する。
【0098】
作業環境情報取得部255は、オペレータによって操作される入力装置180から第1作業環境情報を取得し、記憶装置259に記憶させる。
【0099】
登録位置設定部256は、作業環境情報取得部255が作業環境情報を取得した場合、位置情報取得部251で演算された油圧ショベル200の基準位置を、登録位置(作業環境情報が登録されたときの位置)として記憶装置259に記憶させる。登録位置設定部256は、作業環境情報取得部255によって作業環境情報が取得されるたびに、作業環境情報を取得したときの油圧ショベル200の基準位置を登録位置として記憶装置259に記憶させ、登録位置を更新する。
【0100】
図15は、情報コントローラ250により実行される作業環境情報の設定処理の内容について示すフローチャートである。図15に示すフローチャートの処理は、イグニッションスイッチ(不図示)がオンされることにより開始され、図示しない初期設定が行われた後、実行される。
【0101】
図15に示すように、ステップS220において、情報コントローラ250は、作業環境情報がオペレータにより設定済みであるか否かを判定する。ステップS220において、記憶装置259に第1作業環境情報が記憶(設定)されていない場合、情報コントローラ250は、作業環境情報がオペレータにより設定済みでないと判定し、ステップS235へ進む。ステップS220において、記憶装置259に第1作業環境情報が記憶(設定)されている場合、情報コントローラ250は、作業環境情報がオペレータにより設定済みであると判定し、ステップS265へ進む。
【0102】
ステップS235において、情報コントローラ250は、作業環境情報の設定画面198(図6参照)を表示装置190に表示させ、ステップS245へ進む。
【0103】
ステップS245において、情報コントローラ250は、オペレータにより操作される入力装置180からの信号に基づき、作業環境情報を記憶装置259に記憶させ、ステップS255へ進む。
【0104】
ステップS255において、情報コントローラ250は、GNSS受信装置230から取得した位置情報に基づいて、地理座標系(グローバル座標系)における油圧ショベル200の基準位置を演算し、演算した基準位置を登録位置として記憶装置259に記憶させ、図15のフローチャートに示す処理を終了する。
【0105】
ステップS265において、情報コントローラ250は、GNSS受信装置230から取得した位置情報に基づいて、地理座標系(グローバル座標系)における油圧ショベル200の基準位置を演算し、ステップS275へ進む。
【0106】
ステップS275において、情報コントローラ250は、記憶装置259に記憶されている登録位置から、ステップS265で演算された位置(現在位置)までの距離Dを演算し、ステップS285へ進む。
【0107】
ステップS285において、情報コントローラ250は、ステップS275で演算された距離Dに基づいて、作業現場が変更されたか否かを判定する。ステップS285において、情報コントローラ250は、距離Dが予め定めた所定距離D0未満である場合には、作業現場は変更されていないと判定し、図15のフローチャートに示す処理を終了する。ステップS285において、情報コントローラ250は、距離Dが予め定めた所定距離D0以上である場合には、作業現場は変更されていると判定し、ステップS235へ進む。
【0108】
このような第2実施形態に係る油圧ショベル200の制御装置201は、当該油圧ショベル(作業機械)200の位置情報を取得し、当該油圧ショベル(作業機械)200の現在の位置が登録位置から所定距離D0以上離れた場合、オペレータに対して作業環境情報を入力装置180によって入力させるように促す情報を表示装置(報知装置)190によって報知させる。
【0109】
これにより、粉塵の少ない環境の作業現場から粉塵の多い環境の別の作業現場に移動した場合、あるいは粉塵の多い環境の作業現場から粉塵の少ない環境の別の作業現場に移動した場合において、オペレータが作業環境情報の更新を忘れてしまうことに起因して、作業現場に適していない設定で油圧ショベル100が稼働してしまうことを防止できる。つまり、第2実施形態によれば、作業現場が別の作業現場に変更した場合に、オペレータによって確実に作業環境情報を入力させることができるので、作業環境に応じてエンジンの出力を調整し、作業効率を向上することができる。
【0110】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、上述の異なる実施形態で説明した構成同士を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせることも可能である。
【0111】
<変形例1>
上記実施形態では、油圧ショベル100,200を使用する使用者の業種及び油圧ショベル100,200の作業内容を作業環境情報の例として説明したが、本発明はこれに限定されない。作業環境情報は、油圧ショベル100,200が使用される場所であってもよい。図16は、表示装置190の表示画面に表示される作業環境情報の設定画面298の別の例について示す図である。図16に示すように、本変形例では、設定画面298には、オペレータに対して作業環境情報として、油圧ショベル100,200を使用する場所である作業現場を入力装置180によって入力させるように促す情報が含まれている。
【0112】
設定画面298は、作業現場の設定を促す案内画像293と、作業現場の選択状態を示す現場選択画像296と、設定ボタン画像299と、を有する。案内画像293は、例えば、「作業現場を選択してください。」といった文の画像である。現場選択画像296は、現場A、現場B、現場Cなどの中からオペレータによって選択された作業現場を表す画像であり、オペレータが入力装置180を操作することにより変更される。設定ボタン画像299は、設定ボタン画像199(図6参照)と同様、設定操作に用いられる画像である。オペレータが入力装置180を操作して、複数の作業現場の中から一の作業現場(図16に示す例では現場A)を選択した状態で、設定操作を行うと、情報コントローラ150,250の記憶装置159,259に作業環境情報(作業現場)が記憶される。
【0113】
メインコントローラ110のROM112には、作業現場と、その作業現場が制限作業現場であるか、あるいは非制限作業現場であるかを表す情報とが対応付けられたデータテーブルが記憶されている。ここで、制限作業現場とは、粉塵の多い環境となることが多く、エンジン80の出力を制限することが好ましい作業現場のことを指し、非制限作業現場とは、粉塵の多い環境となることが少なく、エンジン80の出力を制限することが好ましくない作業現場のことを指す。
【0114】
メインコントローラ110は、このデータテーブルを参照し、設定された作業現場が制限作業現場であるか否かを判定する。メインコントローラ110は、情報コントローラ150,250から取得した作業環境情報に含まれる作業現場が制限作業現場であると判定されると、環境制限モードを有効に設定し、情報コントローラ150,250から取得した作業環境情報に含まれる作業現場が制限作業現場でないと判定されると、環境制限モードを無効に設定する。
【0115】
なお、作業環境情報には、少なくとも、当該油圧ショベル100,200を使用する使用者の業種、当該油圧ショベル100,200の作業内容、及び、当該油圧ショベル100,200が使用される場所のいずれかが含まれることが好ましい。これにより、作業環境に応じてエンジン80の出力の調整をし、作業効率の向上を図ることができる。
【0116】
<変形例2>
上記実施形態では、設定された作業環境情報(例えば、業種)が、作業環境情報に基づいてエンジン80の出力を制限することが好ましい業種(制限業種)であるか、制限することが好ましくない(非制限業種)であるかを示す情報が対応付けられて記憶されている例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0117】
図17及び図18に示すように、業種、作業内容等の作業環境情報ごとに補正量Ncを設定してもよい。図17は、業種と、補正量Ncとが対応付けられたデータテーブル213aについて示す図であり、このデータテーブル213aは、予めROM112に記憶されている。図18は、作業内容と、補正量Ncとが対応付けられたデータテーブル213bについて示す図であり、このデータテーブル213bは予めROM112に記憶されている。
【0118】
メインコントローラ110は、情報コントローラ150から第1作業環境情報(使用者の業種及び作業内容)を取得し、データテーブル213a,213bを参照し、補正量Ncを取得する。メインコントローラ110は、取得した業種に対応する補正量Ncと作業内容に対応する補正量Ncのうち大きい方の補正量Ncを選択する。メインコントローラ110は、目標回転数演算部181で演算された目標回転数から、選択された補正量Nc(>0)を減算し、目標回転数を補正し、補正後の目標回転数をメインコントローラ110に出力する。これにより、作業環境に応じて、より適切なエンジン80の出力制限を行うことができる。
【0119】
<変形例3>
第2実施形態では、制御装置201は、入力装置180から作業環境情報を取得した場合に、油圧ショベル200の位置情報を取得し、取得した油圧ショベル200の位置を登録位置として記憶装置259に記憶させる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。管理サーバ41が、通信回線70を介して登録位置を油圧ショベル200に送信し、情報コントローラ250の記憶装置259に記憶させるようにしてもよい。社内コンピュータ44、あるいはサービス員が用いる情報端末から通信回線70を介して登録位置を油圧ショベル200に送信し、情報コントローラ250の記憶装置259に記憶させるようにしてもよい。
【0120】
<変形例4>
上記実施形態では、作動油温センサ84で検出された作動油温に基づいて、フィルタ23の目詰まりの度合いを推定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。エンジン冷却水の温度に基づいて、フィルタ23の目詰まりの度合いを推定してもよい。また、作動油温及び冷却水温の双方に基づいて、フィルタ23の目詰まりの度合いを推定してもよい。この場合、作動油温に基づいて推定されたフィルタ23の目詰まりの度合いDf、及び、冷却水温に基づいて推定されたフィルタ23の目詰まりの度合いDfのうち、高い方のDfに基づいて、目標回転数演算テーブルを選択する。なお、作動油温、冷却水温によってフィルタ23の目詰まりの度合いを推定する場合に限定されることもなく、例えば、フィルタ23の前後差圧によってフィルタ23の目詰まりの度合いを推定してもよい。
【0121】
<変形例5>
第2実施形態では、GNSS受信装置230から取得した位置情報に基づいて、油圧ショベル200の位置を演算する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。携帯電話通信網(移動通信網)の無線通信回線で接続されている無線基地局71からの情報に基づいて、油圧ショベル200の位置を演算するようにしてもよい。
【0122】
<変形例6>
上記実施形態では、所定の情報を報知する報知装置が表示装置190である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。所定の情報を報知する報知装置には、音声により所定の情報を報知するスピーカ等の音声出力装置を採用してもよい。
【0123】
<変形例7>
上記実施形態では、作業機械がクローラ式の油圧ショベル100,200である場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。ホイール式の油圧ショベル、ホイールローダ、クローラクレーン、ダンプトラック等、熱交換器21aに供給する冷却風に混入した異物を捕捉するフィルタ23を備える種々の作業機械に本発明を適用することができる。
【0124】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0125】
14a…ブームシリンダ(アクチュエータ)、15a…アームシリンダ(アクチュエータ)、16a…バケットシリンダ(アクチュエータ)、21…熱交換ユニット、21a…熱交換器、22…冷却ファン、23…フィルタ、41…管理サーバ、80…エンジン、100,200…油圧ショベル(作業機械)、101,201…制御装置、171…メインポンプ(ポンプ)、180…入力装置、190…表示装置(報知装置)
図1
図2
図3
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