(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】床材プレカッティングシステム、床材プレカッティング方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
E04F 15/02 20060101AFI20230914BHJP
A47G 27/02 20060101ALI20230914BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20230914BHJP
【FI】
E04F15/02 Z
A47G27/02 106Z
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2020003002
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100132506
【氏名又は名称】山内 哲文
(72)【発明者】
【氏名】西山 知也
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-213916(JP,A)
【文献】特開平11-210151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/02
E04B 5/00
G06Q 50/04
A47G 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床材を敷く床を特定する床特定情報の入力を受け付ける受付部と、
前記床特定情報で特定される前記床の形状を示す床形状データを取得する床データ取得部と、
前記床に敷く床材の1枚あたりの寸法を示す床材データを取得する床材データ取得部と、
前記床材データで示される寸法の前記1又は複数の床材を前記床形状データが示す形状の床に敷く場合の前記1又は複数の床材のカッティングラインを決定し、前記カッティングラインを示すカッティングラインデータを生成するカッティングライン決定部と、
前記カッティングラインデータを出力する出力部と、
前記カッティングライン決定部が決定した床材のカッティングライン、又は、実際に床に合わせて床材又は型紙をカットした場合のカッティングラインを示すカットデータを、床材を敷く床を特定する床特定情報に対応付けて記録部に記録する蓄積部と、を備え、
前記カッティングライン決定部は、前記受け付けた床特定情報に対応するカットデータが前記記録部に記録されている場合に、前記記録部に記録されているカットデータを用いて、前記カッティングラインデータを生成する、
床材プレカッティングシステム。
【請求項2】
前記カッティングライン決定部は、前記床材データで示される寸法を持つ床材を1枚又は複数枚並べた領域内に、前記床形状データで示される床の領域を重ねて配置した場合の前記床材に重なる前記床の領域の縁のラインに相当するラインを前記カッティングラインに決定する、請求項1に記載の床材プレカッティングシステム。
【請求項3】
前記カッティングライン決定部は、前記床形状データで示される前記床の領域における基準線を決定し、前記基準線を基に決定される前記床の領域に対する前記複数の床材の配置を基に、前記カッティングラインを決定する、請求項1又は2に記載の床材プレカッティングシステム。
【請求項4】
コンピュータが、床材を敷く床を特定する床特定情報の入力を受け付ける受付工程と、
コンピュータが、前記床特定情報で特定される前記床の形状を示す床形状データを取得する床データ取得工程と、
コンピュータが、前記床に敷く床材の1枚あたりの寸法を示す床材データを取得する床材データ取得工程と、
コンピュータが、前記床材データで示される寸法の前記1又は複数の床材を前記床形状データが示す形状の床に敷く場合の前記1又は複数の床材のカッティングラインを決定し、前記カッティングラインを示すカッティングラインデータを生成するカッティングライン決定工程と、
裁断機が、前記カッティングラインデータに基づいて、前記1又は複数の床材を裁断する裁断工程と
コンピュータが、前記カッティングライン決定工程で決定した床材のカッティングライン、又は、実際に床に合わせて床材又は型紙を裁断した場合のカッティングラインを示すカットデータを、床材を敷く床を特定する床特定情報に対応付けて記録部に記録するカットデータ蓄積工程と、を有し、
前記カッティングライン決定工程では、前記受け付けた床特定情報に対応するカットデータが前記記録部に記録されている場合に、前記記録部に記録されているカットデータを用いて、前記カッティングラインデータを生成する、プレカットされた床材の製造方法。
【請求項5】
床材を敷く床を特定する床特定情報の入力を受け付ける受付処理と、
前記床特定情報で特定される前記床の形状を示す床形状データを取得する床データ取得処理と、
前記床に敷く床材の1枚あたりの寸法を示す床材データを取得する床材データ取得処理と、
前記床材データで示される寸法の前記1又は複数の床材を前記床形状データが示す形状の床に敷く場合の前記1又は複数の床材のカッティングラインを決定し、前記カッティングラインを示すカッティングラインデータを生成するカッティングライン決定処理と、
前記カッティングラインデータを出力する出力処理と、
前記カッティングライン決定処理で決定した床材のカッティングライン、又は、実際に床に合わせて床材又は型紙をカットした場合のカッティングラインを示すカットデータを、床材を敷く床を特定する床特定情報に対応付けて記録部に記録するカットデータ蓄積処理と、をコンピュータに実行させ、
前記カッティングライン決定処理は、前記受け付けた床特定情報に対応するカットデータが前記記録部に記録されている場合に、前記記録部に記録されているカットデータを用いて、前記カッティングラインデータを生成する処理を含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床に敷く床材を、敷設現場に搬入する前に、床の形状に合わせてプレカッティングする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
商業施設をはじめとする各種施設から一般住宅の床に使用する床材としては、様々な種類の床材が広く用いられている。主な床材としては、樹脂製床材、木質フローリング、石材、セラミック床材といったものが存在する。樹脂製床材には、樹脂製床タイル、樹脂製床シート、タイルカーペットなどがある。樹脂製床材は、床材を人力で曲げることができる程度の柔軟性を有する。樹脂製床材は、木質フローリング、石材、セラミック床材と比べても、搬送や搬入がしやすく、切断もしやすい。そのため、樹脂製床材は、狭い場所に対しても施工性がよい。
【0003】
部屋やバス・トイレのユニット等の床に、床材を敷く場合には、敷設現場にて、矩形の床材を床の形状に合わせて切断し、敷設している。この切断作業には、熟練の技が要求される。しかし、このような技を持つ職人は減少傾向にある。そこで、特開2018-82756号公報(特許文献1)には、タイルカーペットを、熟練を要せず簡単に隙間なく床面に敷設できるように、予め裁断調製して提供することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
敷設現場への搬入前に、床の形状に合わせて、予め床材を裁断(以下、プレカッティングと称する)するには、正確な床の形状を示す情報が必要である。しかし、例えば、作業コスト等の観点から、床の形状を実測するのは困難である場合がある。正確な床の形状の情報を用いずにプレカッティングした床材は、敷設現場において、床の形状に合わない事態が生じ得る。
【0006】
そこで、本発明は、床の形状に基づいて床材をプレカッティングすることができる床材カッティングシステム、床材プレカッティング方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの観点による床材プレカッティングシステムは、床材を敷く床を特定する床特定情報の入力を受け付ける受付部と、前記床特定情報で特定される前記床の形状を示す床形状データを取得する床データ取得部と、前記床に敷く床材の1枚あたりの寸法を示す床材データを取得する床材データ取得部と、前記床材データで示される寸法の前記1又は複数の床材を前記床形状データが示す形状の床に敷く場合の前記1又は複数の床材のカッティングラインを決定し、前記カッティングラインを示すカッティングラインデータを生成するカッティングライン決定部と、前記カッティングラインデータを出力する出力部と、前記カッティングライン決定部が決定した床材のカッティングライン、又は、実際に床に合わせて床材又は型紙をカットした場合のカッティングラインを示すカットデータを、床材を敷く床を特定する床特定情報に対応付けて記録部に記録する蓄積部と、を備える。前記カッティングライン決定部は、前記受け付けた床特定情報に対応するカットデータが前記記録部に記録されている場合に、前記記録部に記録されているカットデータを用いて、前記カッティングラインデータを生成する。
【0008】
上記構成によれば、床特定情報で特定される床に施工する床材のカッティングラインを生成できるとともに、過去のカッティングラインを床特定情報に対応付けてカットデータとして蓄積することができる。カッティングラインを決定する際に、対象となる床に対応するカットデータがあれば、これを利用して、カッティングラインを決定することができる。カットデータは、過去に生成された床材のカッティングライン若しくは実際に床に合わせて裁断された床材又は型紙のカッティングラインを示す。そのため、カットデータを用いることで、カッティングラインの精度を高めることができる。これにより、床材のカッティンラインの生成、カッティングラインの実績データの蓄積、及びその利用が促進される。その結果、床の形状に基づいて床材をプレカッティングすることができる。
【0009】
前記床材データ取得部は、前記床に敷く床材の物性データをさらに取得し、前記カッティングライン決定部は、前記物性データを用いて、前記カッティングラインデータを修正する構成であってもよい。これにより、より正確なカッティングデータを生成することができる。物性データは、例えば、床材の材料を示すデータ又は、床材の材料の性質を示す値であってもよい。
【0010】
前記カッティングライン決定部は、前記床材データで示される寸法を持つ床材を1枚又は複数枚並べた領域内に、前記床形状データで示される床の領域を重ねて配置した場合の前記床材に重なる前記床の領域の縁のラインに相当するラインを前記カッティングラインに決定してもよい。すなわち、前記床材に重なる前記床の領域の縁のラインに基づいて、カッティングラインを決定することができる。これにより、床の形状に基づいて床材のカッティングラインを決定することができる。なお、前記床の領域の縁のラインに相当するラインは、下記例のように縁のラインを基に決定されるラインを含む。
【0011】
前記カッティングライン決定部は、前記カッティングラインの少なくとも一部を、前記床材データで示される寸法を持つ床材を1枚又は複数枚並べた領域内に、前記床形状データで示される床の領域を重ねて配置した場合の前記床材に重なる前記床の領域の縁のラインから一定量ずれた位置に設定してもよい。
【0012】
このように、カッティングラインを決定する際に、床形状データから得られる床の形状の縁に対して床材のカッティングラインをずらすことで、実際の床の形状との差を考慮したカッティングラインを設定することができる。
【0013】
例えば、前記カッティングライン決定部は、前記カッティングラインの少なくとも一部を、前記床材データで示される寸法を持つ床材を1枚又は複数枚並べた領域内に、前記床形状データで示される床の領域を重ねて配置した場合の前記床材に重なる前記床の領域の縁のラインから一定量だけ外側に設定してもよい。これにより、床材の領域が、床面の領域より大きくなるように裁断することができる。この場合、敷設現場で、床材の縁の少なくとも一部を裁断して、床面の縁に合わせることができる。すなわち、床材を床面に合わせて微妙に調整することができる。
【0014】
また、前記カッティングラインの少なくとも一部を、前記床材データで示される寸法を持つ床材を1枚又は複数枚並べた領域内に、前記床形状データで示される床の領域を重ねて配置した場合の前記床材に重なる前記床の領域の縁のラインから一定量だけ内側に設定してもよい。これにより、床材の領域が床の領域より小さくなるよう裁断することができる。この場合、敷設現場で、床材と床面との隙間を、例えば、巾木等の他の部材で調整することができる。
【0015】
カッティングライン決定部は、前記1又は複数の床材を並べた領域内における前記床の領域の配置を、ユーザの入力に基づいて決定してもよい。この場合、ユーザの入力に基づいて前記床材の領域に配置された床の領域の縁のラインに基づいて、カッティングラインが決定される。これにより、ユーザが、例えば、敷設現場で床材を配置しやすいように、床の領域に対する1又は複数の床材の配置を調整することができる。
【0016】
カッティングライン決定部は、ユーザの入力に基づいて、前記カッティングラインの少なくとも一部を、前記床材データで示される寸法を持つ床材を1枚又は複数枚並べた領域内に、前記床形状データで示される床の領域を重ねて配置した場合に前記床材に重なる前記床の領域の縁のラインからずらして設定してもよい。これにより、ユーザは、例えば、実際の床の形状と床材との差又は現場での作業効率等を考慮した、適切なカッティングラインを設定することができる。例えば、カッティングライン決定部は、ユーザから、前記床材に重なる前記床の領域の縁のラインのうちカッティングラインをずらす部分の指定、ずらす方向の指定及び、ずらす量の指定の少なくともいずれかを受け付けてもよい。
【0017】
前記カッティングライン決定部は、前記床形状データで示される前記床の領域における基準線を決定し、前記基準線を基に決定される前記床の領域に対する前記複数の床材の配置を基に、前記カッティングラインを決定するよう構成されてもよい。これにより、複数の床材を床に配置する際に基準となる基準線を決定することができる。そのため、現場における敷設作業を行う上で適切な位置に基準線を設定することができる。なお、基準線は、ユーザの入力に基づいて決定されてもよい。この場合、ユーザが、床の形状に合わせて、基準線を決定することができる。
【0018】
前記床材プレカッティングシステムは、前記床への床材の施工に関連する床設計データを取得する床設計データ取得部をさらに、備えてもよい。前記カッティングライン決定部は、前記床設計データを用いて、前記カッティングラインを決定してもよい。
【0019】
前記床設計データは、前記床の縁部における床材の施工を示す縁部施工データを含んでもよい。この場合、前記カッティングライン決定部は、前記床材データで示される寸法を持つ床材を1枚又は複数枚並べた領域内に、前記床形状データで示される床の領域を重ねて配置した場合の前記床材に重なる前記床の領域の縁のラインに相当するラインに対するカッティングラインの位置を、前記縁部施工データが示す床の縁部における床材の施工に応じて決定することができる。
【0020】
前記床設計データは、前記床の凹部及び凸部の少なくとも一方の縁のラインを示す床凹凸データを含んでもよい。前記カッティングライン決定部は、前記床凹凸データで示される凹部及び凸部の少なくとも一方の縁のラインに基づいて、前記カッティングラインを決定することができる。
【0021】
前記床設計データは、前記床の目地を示す目地データを含んでもよい。前記カッティングライン決定部は、前記目地データが示す床の目地を用いてカッティングラインを決定することができる。
【0022】
前記床設計データは、複数の床材の間の施工を示す床材間施工データを含んでもよい。前記カッティングライン決定部は、前記床材間施工データが示す床材の間の施工に基づいて、前記床材のカッティングラインにおける床材の端部の加工を示す端部加工データを生成することができる。
【0023】
前記床材プレカッティングシステムは、前記カッティングライン決定部により生成されたカッティングラインデータを基に、前記カッティングラインデータが示すカッティングラインで切断された床材を前記床に敷く施工を支援する施工支援データを生成する施工支援データ生成部をさらに備えてもよい。
【0024】
前記床材プレカッティングシステムは、前記カッティング決定部により生成されたカッティングラインデータを基に、前記カッティングラインデータが示すカッティングラインで切断される床材の製造に用いられる製造連携データを生成する製造連携データ生成部をさらに備えてもよい。
【0025】
前記カッティングライン決定部は、前記カッティングラインの少なくとも一部を、学習済みモデルを用いて決定してもよい。学習済みモデルは、前記床形状データを入力とし、カッティングラインを出力とする演算モデルであってもよい。学習済みモデルは、床形状データの他、例えば、床材データ及び床設計データのうち少なくとも1つを入力としてもよい。
【0026】
床材プレカッティングシステムは、学習済みモデルを生成する学習部を備えてもよい。学習部は、カッティングライン決定部が、カッティングラインを決定するのに用いたデータと、カッティングラインデータに基づいて実際にカットした床材のカッティングラインデータを教師データとして、例えば、ニューラルネットワークを用いたディープラーニングにより学習済みモデルを生成してもよい。
【0027】
本実施形態におけるプレカットされた床材の製造方法は、コンピュータが、床材を敷く床を特定する床特定情報の入力を受け付ける受付工程と、コンピュータが、前記床特定情報で特定される前記床の形状を示す床形状データを取得する床データ取得工程と、コンピュータが、前記床に敷く床材の1枚あたりの寸法を示す床材データを取得する床材データ取得工程と、コンピュータが、前記床材データで示される寸法の前記1又は複数の床材を前記床形状データが示す形状の床に敷く場合の前記1又は複数の床材のカッティングラインを決定し、前記カッティングラインを示すカッティングラインデータを生成するカッティングライン決定工程と、裁断機が、前記カッティングラインデータに基づいて、前記1又は複数の床材を裁断する裁断工程と、コンピュータが、前記カッティングライン決定工程で決定した床材のカッティングライン、又は、実際に床に合わせて床材又は型紙を裁断した場合のカッティングラインを示すカットデータを、床材を敷く床を特定する床特定情報に対応付けて記録部に記録するカットデータ蓄積工程と、を有する。前記カッティングライン決定工程では、前記ユーザから受け付けた床特定情報に対応するカットデータが前記記録部に記録されている場合に、前記記録部に記録されているカットデータを用いて、前記カッティングラインデータを生成する。
【0028】
本実施形態におけるプログラムは、床材を敷く床を特定する床特定情報の入力を受け付ける受付処理と、前記床特定情報で特定される前記床の形状を示す床形状データを取得する床データ取得処理と、前記床に敷く床材の1枚あたりの寸法を示す床材データを取得する床材データ取得処理と、前記床材データで示される寸法の前記1又は複数の床材を前記床形状データが示す形状の床に敷く場合の前記1又は複数の床材のカッティングラインを決定し、前記カッティングラインを示すカッティングラインデータを生成するカッティングライン決定処理と、前記カッティングラインデータを出力する出力処理と、前記カッティングライン決定処理で決定した床材のカッティングライン、又は、実際に床に合わせて床材又は型紙をカットした場合のカッティングラインを示すカットデータを、床材を敷く床を特定する床特定情報に対応付けて記録部に記録するカットデータ蓄積処理と、をコンピュータに実行させる。前記カッティングライン決定処理は、前記ユーザから受け付けた床特定情報に対応するカットデータが前記記録部に記録されている場合に、前記記録部に記録されているカットデータを用いて、前記カッティングラインデータを生成する処理を含む。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、床の形状に基づいて床材をプレカッティングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】床材プレカッティングシステムの構成例を示す機能ブロック図
【
図2】床材プレカッティングシステムの動作例を示すフローチャート
【
図5】床特定情報と床材の識別情報を対応付けるデータの例を示す図
【
図6】床特定情報とカットデータとを対応付けるデータの例を示す図
【
図8】
図7に示す床を1枚の床材の領域の中に重ねた場合を示す図
【
図9】床の縁のラインから一定量だけ外側にカッティングラインを設定した例を示す図
【
図10】床の縁のラインから一定量だけ内側にカッティングラインを設定した例を示す図
【
図11】カッティングラインの一部を、床の縁のラインから一定量だけずらした例を示す図
【
図12】複数の床材を並べた領域内に、床の領域を重ねた場合の例を示す図
【
図13】床材プレカッティングシステムの変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0031】
本実施形態は、床材プレカッティングシステムに関する。床材のプレカッティングは、床に敷く床材を、敷設現場に搬入する前に、床の形状に合わせて裁断することである。床材プレカッティングシステムは、床材のカッティングラインを示すカッティングラインデータを生成し、出力する。
【0032】
(床材)
本明細書において、床材は、商業施設をはじめとする各種施設から一般住宅などの建築物の部屋、浴室、廊下、バルコニーなどに敷設される床材を含む。床材は、例えば、樹脂や木材などの有機物材料、セラミックや石などの無機材料で形成されるものを含む。主な床材としては、樹脂製床材、カーペット、木質フローリング、石材、セラミック床材といったものが存在する。床材の材料は、特に限定されないが、無機材料は硬すぎ、木材は湿度による寸法変化が大きいことから、有機物材料の中でも樹脂を主原料とする樹脂製床材が、本発明に好適に用いられる。樹脂を主原料とする樹脂製床材の例としては、タイルカーペットやロールカーペットなどのカーペット、JIS A 5705に規定される床タイルや床シートを含む各種のビニル系床材が挙げられる。
【0033】
樹脂製床材は、木質フローリング、石材、セラミックなどを材料とする床材に比べて、床材を人力で曲げることができる程度の柔軟性を有する。そのため、樹脂製床材は、搬送や搬入がしやすく、切断もしやすい。樹脂製床材は、施工性がよく、狭い場所にも施工することができる。樹脂製床材の例として、樹脂製床タイルおよび樹脂製床シートが挙げられる。樹脂製床タイルは、通常、1辺が400~1000mmの板状の樹脂製床材である。樹脂製床シートとしては、一方向の長さが他方向(他方向は一方向に対して直交する方向)の長さに比して十分に長い長方形状をした樹脂製床材である。例えば、樹脂製床シートの一方向の長さは、他方向の長さの2倍以上、好ましくは4倍以上である。樹脂製床シートは、通常、ロールに巻かれて保管及び運搬に供され、施工現場において、所望の形状に裁断して使用される。
【0034】
樹脂製床材の施工方法としては、接着タイプおよび置敷タイプが挙げられる。接着タイプの樹脂製床材は、モルタルやコンクリート面にしっかり固定することでき、剥がれにくいので耐久性にも優れる。一方、置敷タイプの樹脂製床材は、既存の床の上にそれらを貼着して、簡易リフォーム、模様替え、又は広告等の目的で使用することも可能である。置敷タイプの樹脂製床材は、例えば、リフォームの際に補修が必要なとき等に、全面貼り替えは不要である。補修を必要とする箇所のシートを剥離して新しいシートに交換するような部分貼替工法を採用することも可能である。
【0035】
樹脂製床材の樹脂は、非発泡でもよいし、或いは、発泡されていてもよい。樹脂層を発泡樹脂で形成すると発泡良好なクッション性を床材に付与できる。樹脂製床材の樹脂成分としては、一般的には熱可塑性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂;オレフィン樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル樹脂;エチレン-メタクリレート樹脂などのアクリル樹脂;アミド樹脂;エステル樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの各種エラストマーなどの各種エラストマー;ゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を、床材の樹脂成分に採用できる。
【0036】
また、樹脂製床材には、樹脂以外に各種添加剤が含まれてもよい。添加剤としては、従来公知のものを使用でき、例えば、充填剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、発泡剤などが挙げられる。樹脂製床材には、主成分とは別に他の樹脂を積層して用いることもできる。これらの別成分として用いられる樹脂としては、主に、紫外線硬化型樹脂、硬質塩化ビニル、塩化ビニル以外の樹脂などが挙げられる。これらの樹脂を表層に積層することによって、耐久性、耐摩耗性、防汚性、防滑性などの優れた特性を付与することもできる。
【0037】
樹脂製床材として広く一般に用いられているものとしては、塩化ビニル樹脂を主な樹脂成分とするビニル系床材が挙げられる。ビニル系床材は、塩化ビニル樹脂が優れた可撓性を有する為、耐久性に優れ、曲げたり、巻いたりすることができるので搬送や搬入がしやすく、狭い場所であっても施工性がよい。また、塩化ビニル樹脂は、柔軟性にも優れているので、歩行感が良好であり、さらに、施工時に切断しやすく、複雑な形状にも容易に切断することができる。その上、湾曲させながら床面(床材を敷設する施工面)に施工できるので、取り扱いも容易である。また、塩化ビニル樹脂は、安価である上、これを用いた床材の製造も容易である。
【0038】
発泡層のないビニル系床シートとしては、単層ビニル床シート、複層ビニル床シートが挙げられる。ビニル系床材は、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂等のビニル樹脂、ジオクチルフタレート、ジノニルフタレート等の可塑剤および安定剤を含み、必要に応じて充てん剤、着色剤、発泡剤、織布、不織布、リサイクル材等を含む。
【0039】
添加剤としては、従来公知のものを使用でき、例えば、充填剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、発泡剤などが挙げられる。充填材は特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク、マイカなどが挙げられる。
【0040】
可塑剤は特に限定されず、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ブチルオクチルフタレート(BOP)などが挙げられる。
【0041】
織布としては、ガラス繊維、合成繊維、天然繊維等を材料成分とするものが挙げられる。リサイクル材としては、ビニル系床材の生産段階で発生する不適合製品等;流通段階で発生するものおよび施工時に発生する端材、余材等;使用済みビニル系床材等が挙げられる。
【0042】
(システム構成)
図1は、本実施形態における床材プレカッティングシステムの構成例を示す機能ブロック図である。
図1に示す例では、床材プレカッティングシステム1は、受付部11、床データ取得部12、床材データ取得部13、カッティングライン決定部14、出力部15及び蓄積部16を備える。床材プレカッティングシステム1は、記録部2にアクセス可能である。
【0043】
受付部11は、床材を敷く床を特定する床特定情報の入力をユーザから受け付ける。床特定情報は、例えば、床の場所及び床の型の少なくとも一方を特定するものであってもよい。床の場所を特定する床特定情報の例として、建物、階及びエリアを特定する情報が挙げられる。床の型を特定する床特定情報の例として、床材を敷く床を有するバス又はトイレ等のユニットの型番、又は、部屋のタイプを特定するものが挙げられる。受付部11は、ユーザから床特定情報のデータの入力を受け付けてもよいし、記録部2のユーザが指定する場所に記録された床特定情報のデータを取得してもよい。
【0044】
床データ取得部12は、受付部11が受け付けた床特定情報で特定される床の形状を示す床形状データを取得する。床形状データは、床材を敷く領域の縁(輪郭)の形状を示すデータとすることができる。床形状データには、床材を敷く領域の寸法を示す情報も含まれる。床データ取得部12は、例えば、ユーザから、床形状データの入力を受け付けてもよいし、記録部2から、床特定情報に対応する床形状データを取得してもよい。記録部2には、例えば、様々な床の床形状データを、床特定情報と対応付けて記録しておくことができる。
【0045】
床材データ取得部13は、床に敷く床材の1枚あたりの寸法を示す床材データを取得する。床材データは、1枚の床材が示す領域の縁(輪郭)の各辺の寸法を示すデータとすることができる。例えば、床材が正方形又は長方形の場合、床材の縦の寸法と横の寸法を示すデータを、床材データとすることができる。床材データ取得部13は、例えば、ユーザから、床材データの入力を受け付けてもよいし、記録部2から、床材データを取得してもよい。記録部2には、例えば、様々な床材の床材データを、床材識別情報と対応付けて記録しておくことができる。例えば、床材データ取得部13は、ユーザから指定された床材識別情報又は、受付部11が受け付けた床特定情報に対応する床材識別情報に対応する床材データを、記録部2から取得することができる。
【0046】
カッティングライン決定部14は、床材データが示す寸法の1又は複数の床材におけるカッティングラインを、床材データ取得部13が取得した床材データで示される寸法の1又は複数の床材を、床データ取得部12が取得した床形状データが示す形状の床に敷く場合の1又は複数の床材のカッティングラインを決定する。これにより、カッティングラインデータが生成される。すなわち、カッティングライン決定部14は、床データ取得部12が取得した床形状データ及び、床材データ取得部13が取得した床材データを用いて、カッティングラインデータを生成する。
【0047】
一例として、カッティングライン決定部14は、床材データで示される寸法を持つ床材を1枚又は複数枚並べた領域内に、床形状データで示される床の領域を重ねて配置した場合の床の領域の縁のラインに相当する床材上のラインをカッティングラインとして決定することができる。この場合、カッティングラインの少なくとも一部は、床の領域の縁のラインに対して、ずれていてもよい。
【0048】
また、カッティングライン決定部14は、受付部11が受け付けた床特定情報に対応するカットデータが記録部2に記録されている場合に、記録部2に記録されているカットデータを用いて、カッティングラインデータを生成することができる。カットデータは、例えば、カッティングライン決定部14が、過去に、同じ床及び床材について決定したカッティングライン、又は、実際に床に合わせて床材又は型紙をカットした場合の裁断線であるカッティングラインを示すデータである。
【0049】
カッティングライン決定部14は、床データ取得部12が取得した床形状データ及び床材データ取得部13が取得した床材データに基づいて生成したカッティングラインデータを、記録部2から取得したカットデータを用いて補正してもよい。或いは、カッティングライン決定部14は、床形状データ及び床材データに基づいてカッティングラインデータを生成する代わりに、記録部2から取得したカットデータを用いてカッティングラインデータを生成してもよい。
【0050】
カットデータは、蓄積部16によって、床特定情報と対応付けて記録部2に記録される。蓄積部16は、カッティングライン決定部14が生成したカッティングデータと、その生成の基となった床特定情報とを対応付けて、記録部2に記録してもよい。また、蓄積部16は、裁断機3で裁断した床材の裁断線すなわちカッティングラインを示すデータを、その床材を敷く床を特定する床特定情報と対応付けて記録部2に記録してもよい。或いは、蓄積部16は、敷設現場のカッティングラインデータ入力システム4から入力された、実際の床材のカッティングラインを示す実績データを、その床材を敷く床を特定する床特定情報とともに取得して、カットデータとして床特定情報に対応付けて、記録部2に記録してもよい。なお、記録部2に記録される床特定情報のデータ形式は、受付部11がユーザから受け付ける床特定情報のデータ形式と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0051】
出力部15は、カッティングライン決定部14が生成したカッティングラインデータを、出力する。出力部15は、例えば、裁断機3に、カッティングラインデータを出力する。裁断機3は、カッティングラインデータが示す線に沿って床材を裁断することができる。この場合、出力部15は、カッティングデータを、裁断機3の制御装置が処理可能な形式にして出力することができる。或いは、出力部15は、カッティングラインに沿って床材を裁断する命令を、裁断機3に対して出力してもよい。すなわち、床材プレカッティングシステム1が、裁断機3を制御する構成としてもよい。
【0052】
床材プレカッティングシステム1は、プロセッサ及びメモリを備えたコンピュータにより構成される。受付部11、床データ取得部12、床材データ取得部13、カッティングライン決定部14、出力部15及び蓄積部16の機能は、プロセッサが、メモリに記録されたプログラムを実行することで実現可能である。受付部11、床データ取得部12、床材データ取得部13、カッティングライン決定部14、出力部15及び蓄積部16を実現するための処理をプロセッサに実行させるプログラム及びそのプログラムを記録する非一時的(non-transitory)な記録媒体も、本発明の実施形態に含まれる。また、床材プレカッティングシステム1は、複数のコンピュータによって構成されてもよい。記録部2は、床材プレカッティングシステム1を構成するコンピュータからアクセス可能な1又は複数の記録装置で構成される。
【0053】
床材プレカッティングシステム1では、蓄積部16によって、過去に実績のある床材のカッティングラインを示すカットデータが、床特定情報と対応付けて記録部2に記録される。カッティングライン決定部14は、カットデータにアクセスすることにより、カッティングライン決定に用いることができる過去のカッティングラインを示すデータを、カットデータから抽出することができる。このように、床材プレカッティングシステム1は、カッティングラインの生成、蓄積及び利用を組み合わせることで、過去の実績を利用した、精度及び効率のよいカッティングラインの決定を可能にしている。すなわち、様々な床に対するカッティングラインの生成、実績情報の集積、及びその利用が促進される。これにより、様々な床に対する適切なカッティングラインの生成が可能になる。ひいては、施工作業効率を向上させることができる。
【0054】
さらに、上記のカッティングラインの生成、蓄積及び利用を可能にするシステムは、後述する、施工支援データを施工現場に提供するシステムや、施工現場においてカッティングラインを取得するためのシステム、又は、実績データを用いてカッティングラインを学習するシステムと組み合わせることができる。このシステムの組み合わせにより、カッティングライン生成及び施工の効率及び精度をより向上させることができる。
【0055】
(動作例)
図2は、床材プレカッティングシステム1の動作例を示すフローチャートである。
図2に示す例では、受付部11が、ユーザからの床特定情報の入力を受け付ける(S1)。ここでは一例として、床材を敷こうとするユニットバス(トイレ付き)の型番、及びそのユニットバスの場所を示す情報が、床特定情報として、入力される場合を説明する。場所を示す情報には、一例として、ビル、フロア、及びフロアにおけるエリアを特定する情報が含まれるとする。
【0056】
床データ取得部12は、ユーザから入力された床特定情報を示す床の床形状データを取得する(S2)。本例では、記録部2には、床特定情報が床形状データと対応付けて記録される。
図3は、記録部2に記録される床特定情報を含むデータの例を示す図である。
図3に示す例では、床の場所を特定するデータとして、ビル、フロア(階)、エリアを示すデータと、床の型を特定するデータとして、ユニットの型番、部屋タイプを示すデータが、床IDに対応付けて記録される。ここで、床IDは、床特定情報の一例である。床IDにより、床の場所と、床の型が特定される。また、床IDには、床形状データの格納場所を示すデータが対応付けて記録される。床データ取得部12は、
図3に示すデータを参照することにより、S1でユーザから入力されたビル、フロア、エリア、及びユニットバスの型番に対応する床形状データの場所にアクセスし、床形状データを記録部2から取得することができる。このように、予め床特定情報と対応付けて記録された床形状データを取得する構成とすることにより、様々な床の形状に関する情報の管理と、要求に応じた床形状データの迅速な提供が可能になる。
【0057】
なお、本例では、予め記録部2に記録されている床形状データを取得する例を挙げているが、床データ取得部12は、ユーザからの入力により、床形状データを取得してもよい。例えば、S2において、床データ取得部12は、ユーザから、ユニットバスの床の形状を示すCADデータ又は型紙データの入力を受け付けてもよい。
【0058】
床材データ取得部13は、床材データを取得する(S3)。床材データ取得部13は、例えば、ユーザから床に敷く床材の識別情報(ID)である品番の入力を受け付け、入力された品番に対応する床材データを記録部2から取得する。記録部2には、予め、床材の品番とその品番の床材の床材データが対応付けられて記録される。
【0059】
図4は、記録部2に記録される床材データの例を示す図である。
図4に示す例では、床材の品番に対応付けて、床のサイズ(縦、横、厚み)、重量、品種、材料、及び床材データを格納する場所を示すデータが記録される。
【0060】
床材プレカッティングシステム1は、ユーザがS1で入力した床特定情報と、S3で入力した床材の品番とを対応付ける情報を記録部2に記録してもよい。例えば、
図5に示すように、S1でユーザが入力した情報から特定される床IDと、S3でユーザが入力した品番とを対応づけて、記録部2に記録することができる。これにより、どの場所に、どの床材が敷設されるかを示す情報を効率よく管理できる。
【0061】
カッティングライン決定部14は、S2で取得された床形状データ及びS3で取得された床材データを用いて、床に敷く床材のカッティングラインを決定する(S4)。カッティングライン決定部14は、例えば、床材データが示す寸法を有する1又は複数の床材を隙間なく並べた領域に、床形状データが示す形状の床を重ねた場合に、各床材に重なる床の縁のラインを基にカッティングラインを決定することができる。
【0062】
図7は、床形状データが示す床の形状の例を示す図である。
図7は、トイレ付きユニットバスの床の形状を示す。
図7においてドットでしめす領域A1が、床材が敷かれる領域である。この例では、床に敷かれる床材には、排水口の穴A1aと、便器の穴A1bを設ける必要がある。
図8は、
図7に示す形状の床を、1枚の床材(床シート)の領域の中に重ねた場合を示す図である。
図8に示す例では、床材の領域を破線B1で示している。
【0063】
図8に示す例において、カッティングライン決定部14は、破線B1で示す床材の領域の内部において床材に重なる床の縁のライン、すなわち実線A11で示すラインをカッティングラインに決定することができる。ここで、床の縁のラインには、便器のための穴の縁や、排水口のための穴の縁も含まれる。また、カッティングライン決定部14は、床の外周の縁と穴の縁とを結ぶ線(一点鎖線で示す線)C1を、カッティングラインに含める。これにより、便器や柱や据え付け家具などにより生じる、床材を敷くことができない孤立した領域の周りに床材を敷くことができるよう、床材のカッティングラインを決定することができる。
【0064】
上記の例では、床材に重なる床の縁のラインをカッティングラインとする例である。これに対して、床材に重なる床の縁のラインから一定の距離だけ離れたラインをカッティングラインとすることもできる。
【0065】
図9は、床材の領域に重なる床の縁のラインから一定量だけ外側にカッティングラインを設定した例を示す図である。
図9では、一点鎖線C2で示すカッティングラインが、実線A11で示す床の縁のラインに対して一定量だけ外側に配置されている。
【0066】
図10は、床材の領域に重なる床の縁のラインから一定量だけ内側にカッティングラインを設定した例を示す図である。
図10では、一点鎖線C2で示すカッティングラインが、実線A11で示す床の縁のラインに対して一定量だけ内側に配置されている。
【0067】
カッティングラインの一部を、床の縁のラインから一定量だけずらし、他の部分を床の縁のラインに合わせることもできる。
図11は、カッティングラインの一部を、床の縁のラインから一定量だけずらした例を示す図である。
図11では、一点鎖線C3で示すカッティングラインが、実線A11で示す床の縁のラインに対して一定量だけ外側に配置されている。
図11に示す例のように、床の外周の縁のラインのうち、対向する一対の辺にカッティングラインを合わせ、他の辺においては、縁のラインから一定量ずれた位置にカッティングラインを設定することができる。また、便器の穴の縁のように、床の縁の曲線を含む部分では、カッティングラインを床の縁から一定量ずれた位置に配置することもできる。
【0068】
また、図示しないが、1つの床材において、カッティングラインの一部を、床の縁のラインに対して一定量だけ外側にずらし、他の部分を、床の縁のラインに対して一定量だけ内側にずらしてもよい。すなわち、床の縁のラインに対して外側にずらす部分と、内側にずらす部分とが、カッティンラインに混在していてもよい。例えば、カッティングライン決定部14は、床の外周の縁を内側にずらし、穴の縁を外側にずらしてカッティングラインを決定してもよい。
【0069】
床の縁のラインからカッティングラインをずらす部分及びずらす量は、予め設定された基準に基づいてカッティングライン決定部14が自動的に決定してもよい。或いは、ユーザの入力に基づいて、床の縁のラインからカッティングラインをずらす部分、ずらす方向及びずらす量の少なくとも一方を決定することができる。例えば、
図8~
図11に示すように、床材の領域と床の領域を重ねた画像を、ディスプレイの画面に表示させ、画面上で、ユーザが、カッティングラインを床の縁からずらす部分の指定をできるようにしてもよい。例えば、カッティングラインを床の縁からずらしたい部分の始点と終点の入力をユーザから受け付けることができる。また、床材の領域と床の領域との相対位置を指定する入力をユーザから受け付けてもよい。
【0070】
カッティングライン決定部14は、カッティングラインを床の縁からずらす量を、床材データから得られる床材の物性データに基づいて決定してもよい。例えば、床材の材料又は、熱膨張率などの物性値に基づいて、ずらす量を決定することができる。これにより、床材の物性に応じて、床材を床に合いやすくするカッティングラインを決定することができる。
【0071】
また、カッティングライン決定部14は、カッティングラインをずらす量を、床形状データから得られる床の部位に応じて決定してもよい。例えば、床の外周の縁では、ずらす量を大きくし、穴の縁では、ずらす量を小さくすることができる。これによって、床の外周の縁を巾木で処理し、穴の縁はシーリング材で処理するなど、部屋の部位に応じた施工が行い易くなる。
【0072】
図12は、複数の床材を並べた領域内に、床の領域を重ねた場合の例を示す図である。
図12に示す例では、複数の床材(例えば、タイルカーペット)の縁が破線B2、B2aで示され、床の領域の縁が実線A2で示される。床材の縁に沿う1本の基準線が太い破線B2aで示される。基準線は、床材を敷設する際に、敷設現場で設定する線である。敷設現場では、基準線に沿って床材を並べることになる。カッティングライン決定部14は、
図12に示すように基準線を含む床材の縁と床の領域の縁を重ねて画面に表示し、基準線の、床の領域に対する相対位置をユーザの入力に応じて調整可能とすることができる。これにより、ユーザは、床材を敷く床に対する基準線を任意に設定することが可能になる。なお、
図12に示す例でおいても、上記例と同様に、床材と重なる床の縁のラインに相当するラインをカッティングラインに決定することができる。
【0073】
図12では、基準線が横方向の1本の例を示したが、横方向の基準線に直交する縦方向の基準線を加えて、合計2本の基準線としてもよい。特に、タイルカーペットや床タイルでは、縦横の2本の基準線を設定するほうが、綺麗に施工することができるので好ましい。例えば、基準線は、現場において、初めに敷設する床材の位置を決めるために用いられる。一例として、直行する2本の基準線の交点の位置に、初めに敷設する床材の位置を合わせ、2本の基準線に対して初めに敷設する床材の向きを合わせることができる。
【0074】
基準線は、原則として、部屋の床面の中心を通るように設定することができる。また、床面に複数の床材を施工する場合、壁際の床材は、床の外周に沿ってカットされる。そこで、床の外周に沿ってカットされる床材の寸法(例えば、基準線の方向における床材の幅、又は面積)が、予め決められた条件を満たすように、基準線が設定されることが好ましい。例えば、床面の壁際の床材に、カット前の床材の1/3以下の寸法のものが入らないように、基準線を設定することができる。これによって、床面の端に床材の小さな端物が施工されることがなくなり、綺麗な仕上がりにすることができる。このように、基準線の位置により、床面の端の床材の寸法を調整することができる。カッティングライン決定部14は、このような基準線の設定を、床形状データ、床材データ、及び予め決められた条件に従って自動的に行ってもよく、ユーザの入力に基づいて行ってもよい。
【0075】
再び、
図2を参照し、S5において、蓄積部16は、S4で決定されたカッティングラインを示すカッティングラインデータを、S1で入力された床特定情報と対応付けて、カットデータとして記録部2に記録する。
図6は、床特定情報とカットデータとを対応付けるデータの一例を示す図である。
図6に示す例では、床IDと、床IDで特定される床に敷く床材のカッティングラインを示すカットデータの保存場所とが対応付けて記録される。
【0076】
このようにして、蓄積されたカットデータは、上述のS4のカッティングライン決定処理で用いられる場合がある。S4において、カッティングライン決定部14は、S1で入力された床特定情報で特定される床に対応するカットデータが記録部2に記録されているか否かを判断する処理を実行してもよい。例えば、カッティングライン決定部14は、入力された床特定情報で特定される床の場所及び型の少なくとも一方が一致する床特定情報を検索してもよい。該当する床特定情報を抽出した場合は、抽出した床特定情報に対応するカットデータを記録部2から取得する。カッティングライン決定部14は、まず、ユーザに入力された床特定情報の全てが一致する床特定情報を検索し、見つかれなければ、入力された床特定情報のうち床の型が一致する床特定情報を検索することができる。これにより、例えば、床材の敷設対象の床と同じ型のユニットバス又は同じタイプの部屋のカットデータを取得することができる。
【0077】
カッティングライン決定部14は、対応するカットデータがすでに記録部2に記録されている場合は、このカットデータを用いて、カッティングラインを決定することができる。カッティングライン決定部14は、取得したカットデータをそのまま、カッティングラインデータとして採用してもよい。或いは、カッティングライン決定部14は、取得したカットデータが示すカッティングラインを、床材の領域と床の領域に重ねて画面に表示し、ユーザからの編集を受け付けてもよい。また、カッティングライン決定部14は、記録部2から取得したカットデータのカッティングラインと、S2で取得した床形状データ及びS3で取得した床材データに基づいて決定したカッティングラインとを、画面に表示し、ユーザにいずれを採用するかを選択させることもできる。カッティングライン決定部14は、カットデータを用いることで、床材がより床に合いやすくなるカッティングラインを決定することできる。
【0078】
図2のS6において、出力部15は、S4で生成されたカッティングラインデータを裁断機3へ出力する(S6)。裁断機3は、カッティングラインデータを示すカッティングラインで、床材を裁断する。これにより、床材がプレカッティングされる。プレカッティングされた床材は、敷設現場へ運ばれる。
【0079】
(敷設現場における裁断情報の収集)
敷設現場において、プレカッティングされた床材が床に合わない場合には、床材をさらに裁断して調整される。本実施形態では、敷設現場における床材の裁断のカッティングラインに関する情報を収集するためのカッティングラインデータ入力システム4(
図1参照)が設けられる。
【0080】
カッティングラインデータ入力システム4は、敷設現場において、床材の画像、測定結果、又はユーザからの裁断情報の入力を受け付ける携帯端末を含んでもよい。携帯端末は、敷設現場における床材のカッティングラインの情報を得るカメラその他のセンサ(測定装置)を内蔵又は接続可能とすることができる。
【0081】
例えば、敷設現場で裁断した後の床材をカメラで撮影して得られる画像を解析して、敷設現場での床材のカッティングラインを示すデータを得ることができる。或いは、ユーザが敷設現場で裁断した寸法を、携帯端末に入力することで、敷設現場での床材のカッティングラインを示すデータを得ることができる。
【0082】
敷設現場での床材のカッティングラインを示すデータは、敷設現場の床を特定する床特定情報とともに、床材プレカッティングシステム1へ供給される。供給された敷設現場での床材のカッティングラインを示すデータは、蓄積部16により、カットデータとして、床特定情報を対応付けて記録部2に記録する。なお、床材の画像や測定値等、敷設現場で得られたデータを、床材プレカッティングシステム1において、解析し、カッティングラインデータを生成してもよい。
【0083】
カッティングラインデータ入力システム4により、敷設現場における床材の裁断によるカッティングラインの情報が、記録部2に供給される。そのため、カッティングライン決定部14は、実際の敷設現場における裁断の実績に基づいて、カッティングラインを決定することができる。その結果、より床材が床に合いやすいカッティングラインを決定することができる。
【0084】
(敷設現場における床情報の収集)
敷設現場において床の形状を測定する測定システム5が設けられてもよい。測定システム5は、床を採寸する測定器を有する。測定器は、例えば、カメラによって撮影した画像から床の形状及び寸法を算出するものであってもよい。或いは、測定器は、レーザーによる距離測定計を用いて床の寸法を取得するものであってもよい。なお、測定器は、例えば、測定専用機器であってもよいし、カメラ付きのスマートフォンのように、携帯型汎用コンピュータの機能の一部として実現されてもよい。
【0085】
測定システム5の測定器により得られた床の測定データは、測定対象の床を特定する床特定情報とともに、床材プレカッティングシステム1へ供給される。供給された床の測定データは、床形状データとして、床特定情報と対応付けて記録部2に記録される。測定システム5により、敷設現場における測定により得られた床形状データが記録部2に供給される。そのため、より正確な床形状データを用いて、カッティングラインを決定することが可能になる。
【0086】
(変形例)
図13は、床材プレカッティングシステムの変形例を示す図である。
図13に示す例では、床材プレカッティングシステム1aは、
図1に示す構成に加えて、床設計データ取得部21、施工支援データ生成部22、製造連携データ生成部23、及び学習部24をさらに備える。
【0087】
(床設計データの例及びその使用例)
床設計データ取得部21は、床設計データを取得する。床設計データは、床形状データ及び床材データの他の床材の施工に関する情報を含む。床設計データ取得部21は、受付部11が受け付けた床特定情報で特定される床への床材の施工に関連する床設計データを取得することができる。記録部2には、例えば、様々な床の床設計データを、床特定情報と対応付けて記録しておくことができる。床設計データは、例えば、Building Informaion Modeling(BIM)で用いられるデータベースから取得されるデータであってもよい。また、床設計データ取得部21は、ユーザから床設計データの入力を受け付けることができる。なお、蓄積部16は、床設計データを、カッティングラインデータ又は床特定情報に対応付けて、カットデータとして記録部に記録してもよい。床設計データをカットデータとして蓄積することで、カットデータを用いたカッティングラインの決定処理において、床の施工に関する情報を用いることができる。そのため、現場での施工に適したカッティングラインデータを生成することができる。
【0088】
(床の縁部の施工情報とそれを用いた処理の例)
床設計データは、例えば、床の縁部における床材の施工を示す縁部施工データを含んでもよい。床の縁部における床材の施工には、様々な方法がある。床の縁と床材の端を合わせる施工の他、例えば、次のような施工方法がある。
図14(a)に示すように、床の縁の壁50に巾木40を設ける場合がある。施工順序は、例えば、床材30を敷設した後、床材30の端を覆うように、巾木40を壁50に貼り付ける。床材30の端は、壁50との間に所定の間隔W0を空けて、または間隔を空けずに敷設される。一般的に巾木は、下端が湾曲形状であることが多く、巾木40の下端の厚み寸法をW1とする。カッティングラインを決定する際、W0<W1にすることで、床材30の端の壁50との間隔W0を、巾木40で隠すことができ、綺麗で迅速に仕上げることができる。
【0089】
図14(b)に示すように、壁50と床材30の端との間にシーリング材等の防水部材41を設ける場合もある。この場合、床材30の端は、壁50との間に所定の間隔W2を空けて敷設される。シーリング材は、硬化すると弾性体に変化する不定形シーリングや、部材などで隙間を塞ぐ定型シーリングなどが好適に用いられる。カッティングラインを決定する際、シーリング材の種類に応じて、最適な間隔W2を設定することで、現場での施工を容易に行うことができる。
【0090】
図15に示すように、床の縁の壁50に床材30を巻上げる立上げ施工がされる場合もある。この場合、床材30の立ち上げ部分の端にシーリング材又はモール材等の端部処理部材42が設けられる場合がある。又は、床材30の端に見切り材が設けられる場合もある。
【0091】
他の例として、
図16に示すグレーチング43や、
図17に示す溝45の部分の床の縁部では、床材30の端部にシーリング材、モール材又はパテ等の防水部材41が設けられる場合がある。
図16に示す例では、グレーチング枠44と床材30の間に防水部材41が設けられる。
【0092】
縁部施工データは、例えば、巾木、立上げ、又はシール等、床の縁における床材の施工方法を示す情報が含まれてもよい。縁部施工データは、施工における寸法(例えば、床の縁から床材の端までの寸法)を示す情報が含まれてもよい。例えば、
図14(a)(b)に示す例では、巾木の厚みW1、及び防水部材41の幅W2が縁部施工データに含まれてもよい。また、
図15に示す立上げ施工における立上げ部分の高さH1、
図16、
図17に示す防水部材41の幅W3、W4が、縁部施工データに含まれてもよい。このように、縁部施工データに、巾木、立上げ、又はシール等、床の縁における床材の施工方法を示す情報が含まれていると、施工方法を踏まえた位置に床材の縁部が配置されるようにカッティングラインを決定することができる。そのため、効率的で精度の良い施工が可能となる。
【0093】
カッティングライン決定部14は、縁部施工データを用いて、カッティングラインを決定することができる。例えば、カッティングライン決定部14は、床材データで示される寸法を持つ床材を1枚又は複数枚並べた領域内に、床形状データで示される床の領域を重ねて配置した場合の床材に重なる床の領域の縁のラインに相当するラインに対するカッティングラインの位置(例えば、ずれ量)を、縁部施工データを基に決定することができる。
【0094】
床材のカッティングラインを床の縁に対して外側にずらすか、内側にずらすか、又は、合わせるかを、縁部施工データを基に決定することができる。また、その場合のずれ量を、縁部施工データを基に決定することができる。
【0095】
床面に対して床材を小さめにカットする場合、床面の縁からのずれ量は、幅木又は防水部材で隠せる範囲としてもよい。例えば、
図10に示すようなケースで、床材の領域に重なる床の縁のラインA11と、その内側にずらしたカッティングラインC2との距離を、縁部施工データを基に決定することができる。この場合、縁部施工データとして、例えば、
図14、
図16、及び
図17に示される、幅木の厚みW1、及び、防水部材の幅W2~W4を用いて、上記の距離を決定することができる。
【0096】
また、床面に対して床材を大きめにカットする場合、床面の縁からのずれ量を立上げ高さに相当する寸法とすることができる。例えば、
図9に示すようなケースで、床材の領域に重なる床の縁のラインA11と、その外側にずらしたカッティングラインC2との距離を、縁部施工データを基に決定することができる。この場合、縁部施工データとして、例えば、
図15に示される、床材を立上げ施工する際の立ち上げ部分の高さH1を用いて、上記の距離を決定することができる。
【0097】
このように、床材のカッティングラインの床面の縁に対する相対位置を、縁部施工データを用いて決定することで、床材の縁部の施工に適したカッティングラインを決定することができる。そのため、効率的で精度の良い施工が可能となる。
【0098】
(床の縁部の施工情報とそれを用いた処理の例)
床設計データは、床の凹部及び凸部の少なくとも一方を示す床凹凸データを含んでもよい。ここで、床凹凸データの示す凹部には、例えば、溝、又は、排水口等の穴が含まれる。凸部には、例えば、床の出っ張り、柱、又は、床に設けられる設置物等が含まれる。これらの凹部又は凸部は、床材が敷かれない領域となる。床凹凸データは、凹部又は凸部の縁の形状を示すデータを含んでもよい。例えば、
図7に示す例において、排水口(A1a)及び便器(A1b)の縁の形状を示すデータが、床凹凸データとして取得されてもよい。
【0099】
カッティングライン決定部14は、床凹凸データを基に、カッティングラインを決定してもよい。例えば、カッティングライン決定部14は、床形状データが示す床の縁を基に決定されるカッティングラインに、床凹凸データが示す凹部又は凸部の縁に対応するカッティングラインを追加することができる。これにより、床の凹部及び凸部を避ける形状に、床材をカットするカッティングラインを生成することができる。カッティングラインを、床凹凸データを用いて決定することで、床の溝、穴、出っ張り、柱又は設置物等の床の凹凸に対して床材の縁が合うようにカッティングラインを決定することができる。これにより、現場での施工効率を向上できる。
【0100】
(目地の情報とそれを用いた処理の例)
床設計データは、床の目地を示す目地データを含んでもよい。例えば、床が複数のコンクリートパネル(板材)を敷き詰めて構成される場合や、複数の床上げ部材で二重床が構成される場合に、床を構成する複数の部材の境に目地が存在する。目地データは、床の目地の位置を示す情報を含む。カッティングライン決定部14は、目地データが示す床の目地と重なりが少なくなるようなカッティングラインを決定することができる。
【0101】
例えば、
図12に示す例において、基準線B2aの、床の縁A2に対する相対位置を決定する際に、カッティングラインと床の目地との重なりが少なくなくなるよう基準線B2aの位置を決定することができる。例えば、互いに平行なカッティングラインと床の目地とが重ならないように、カッティングラインを決定してもよい。或いは、
図12に示す例において、床の目地を表示してもよい。互いに平行なカッティングラインと床の目地が重なる場合に、ユーザに、これを注意喚起する情報を出力してもよい。これにより、床材の目地と、床材の目地が重ならないように割付をすることができる。このように、目地データを用いてカッティングラインを決定することで、施工現場では、床の目地と床材の目地の重なりを少なくするような床材の施工が効率よくできる。
【0102】
(床材の端部処理の情報とそれを用いた処理の例)
床設計データは、複数の床材の間の施工を示す床材間施工データを含んでもよい。床材間施工データは、例えば、複数の床材の間の継ぎ目処理を示すデータであってもよい。例えば、溶接棒を用いて床材間の継ぎ目を溶接する場合、継ぎ目の断面がV字又はU字になるよう床材の端部をカットする必要がある。このような場合、カッティングライン決定部14は、床材間施工データに基づいて、床剤の端部の加工を指示する端部加工データを生成することができる。すなわち、カッティングライン決定部14は、床材間施工データが示す床材の間の施工に基づいて、決定したカッティングラインにおける床材の端部の加工を示す端部加工データを生成してもよい。なお、蓄積部16は、端部加工データを、カッティングラインデータ又は床特定情報に対応付けて、カットデータとして記録部に記録してもよい。
【0103】
床設計データは、床材の外観デザインを示す外観デザインデータを含んでもよい。例えば、外観の異なる複数の床材を床に並べることで、床に所定の外観デザインを施すことができる。外観デザインデータは、床材を敷く床の色又は模様を表すデータであってもよい。外観デザインデータは、外観の異なる複数の床材の形状及び配置を示すデータであってもよい。
【0104】
カッティングライン決定部14は、外観デザインデータに基づいて、カッティングラインを決定することができる。例えば、外観の異なる複数の床材のそれぞれに対するカッティングラインを、外観デザインデータを基に決定することができる。カッティングラインでカッティングされた外観の異なる複数の床材を、施工現場で組み合わせて床に敷くことで、外観デザインデータで示されるデザインを床に出現させることができる。
【0105】
(施工支援データ生成部の例)
施工支援データ生成部22は、カッティングラインデータが示すカッティングラインで切断された床材を床に敷く施工を支援する施工支援データを生成する。施工支援データは、カッティングライン決定部14により生成されたカッティングラインデータを基に生成される。なお、蓄積部16は、施工支援データを、カッティングラインデータ又は床特定情報に対応付けて、カットデータとして記録部に記録してもよい。
【0106】
施工支援データは、例えば、カッティングラインデータの決定の基になった基準線を示す基準線データを含んでもよい。基準線データは、例えば、床の形状に対する基準線の位置を示す情報を含んでもよい。例えば、
図12に示す例で決定された基準線の位置を示す基準線データが施工支援データとして生成される。基準線の位置は、例えば、床の基準となる位置(例えば、角等)に対する相対位置で示される。
【0107】
基準線データの形式は、特に限定されないが、例えば、施工現場における基準線の墨出しを可能にする形式とすることができる。例えば、施工現場において、タブレットやパソコン等の表示機能付きコンピュータで、床に対する基準線の位置を示す情報を表示することができる。また、自動墨出し装置を用いることもできる。この場合、基準線データとして、例えば、墨出しの基準点の位置、及び基準点に対する基準線の位置を含む自動墨出し装置用データが生成されてもよい。自動墨出し装置は、例えば、床を自走可能な構成とすることができる。この場合、自動墨出し装置は、装置の基準点に対する相対位置を計測して現在位置を判断し、基準線データが示す位置において、床に線を引くよう構成される。なお、自動墨出し機に限らず、例えば、レーザー墨出し装置等、その他の装置を用いて基準データを示す基準線を現場で再現することができる。このように、基準線データを生成し、施工現場のコンピュータ又は装置にて基準線を再現することで、施工を行う場合に、作業者が基準線を目視で確認しながら施工することができる。その結果、より効率的かつ精度の良い施工を実現することができる。
【0108】
また、基準線データは、施工現場でARやVRの技術を用いて作業者が基準線の位置を把握できる形式としてもよい。また、施工現場で取得される床の形状を示す画像その他測定結果データと、基準線データとを用いて、基準線の位置を作業者に視認可能に出力するアプリケーションが提供されてもよい。この場合、現場のコンピュータでアプリケーションを実行することで、基準線の位置が、作業者に対して出力される。これにより、作業者は基準線の位置を把握しながら施工することができ、現実に基準線を設けることなく確実に施行を行うことができる。
【0109】
基準線は、例えば、施工現場において、タイル又はシート等の床材の施工(設置)の開始位置を決めるために用いられる。決定されたカッティングラインに沿って予め切断された床材であっても、床の端から床材を施工していくより、床の中央から床材を施工していく方が好ましい。床材を床の中央から施工することによって、端部の隙間が均等に近づけることができる。その結果、端部の隙間が、一部において大きくなり許容範囲を超えること起こりにくくなる。また、一度に床材を施工する床の面積が大きい(例えば、施工するシートやタイルの枚数が多い)ほど基準線の位置の精度が重要になる。
【0110】
なお、施工支援データは、基準線データに限られず、その他、床材を敷くために利用可能なデータが含まれてもよい。例えば、上記のカッティングラインにおける床材の端部の加工を示す端部加工データが、施工支援データに含まれてもよい。端部加工データは、例えば、施工現場のコンピュータにより、作業者に対して出力される。作業者は、床材の端部の加工方法を把握できる。例えば、複数の床材の継ぎ目の断面をV字になるよう床材の端部をカットし、溶接棒を用いて床材間の継ぎ目を溶接する、といった端部加工を示す情報を、現場にて作業者に提供することができる。これにより、施工効率及び精度を向上させることができる。
【0111】
施工支援データは、例えば、床材を床に接着する接着剤の量を示す情報を含んでもよい。施工支援データ生成部22は、カッティングラインデータで切断された床材の面積に基づいて、接着剤の量を計算することができる。また、床設計データ取得部21が取得する床設計データに、接着剤を示すデータが含まれてもよい。この場合、床設計データとカッティングラインデータに基づいて、接着剤の量を計算することができる。これにより、あらかじめ準備する接着剤に無駄が生じることが少なくなり、費用的な効果も生じる。
【0112】
(製造連携データ生成部の例)
製造連携データ生成部23は、カッティングラインデータが示すカッティングラインで切断される床材の製造に用いられる製造連携データを生成する。製造連携データは、カッティングライン決定部14により生成されたカッティングラインデータを基に生成される。なお、蓄積部16は、製造連携データを、カッティングラインデータ又は床特定情報に対応付けて、カットデータとして記録部に記録してもよい。製造連携データを床特定情報に対応付けて記録しておくことで、同様の床に対する床材の製造又は施工時に、製造連携データを利用できる。また、他の床の製造又は施工現場における計算等にも製造連携データを利用することができる。これにより、製造又は施工の効率及び精度を向上させることができる。
【0113】
製造連携データ生成部23は、例えば、床材のカットで生じた余剰の端材を示す余剰端材データを参照し、余剰の端材のうちカッティングラインデータで切断される床材として使用可能な端材を抽出してもよい。抽出された使用可能な端材を示す情報は、製造連携データに含められる。余剰端材データは、例えば、記録部2に予め記録されてもよいし、外部のシステムに記録されていてもよい。余剰端材データは、余剰の端材の型番、形状、厚み、材料及び外観(色、模様)等の少なくとも1つを含んでもよい。余剰の端材は、例えば、過去に行われたカッティングによって生じた端材であって用途が未定の端材である。
【0114】
製造連携データ生成部23は、例えば、床材データ取得部13が取得した床材データが示す床材の厚みと同じ厚みを有する端材を、余剰端材データから抽出することができる。また、製造連携データ生成部23は、カッティングラインで切断されてできる床材の形状を実現可能なサイズの端材を、余剰端材データから抽出することができる。製造連携データ生成部23は、抽出した端材を示す情報の情報を、使用可能な端材の情報として製造連携データに含ませることができる。製造連携データは、例えば、カッティングラインデータとともに裁断機3に提供される。この場合、裁断機3では、製造連携データが示す端材を切断する。これにより、端材の有効利用が可能になる。
【0115】
製造連携データ生成部23は、カッティングラインデータが示すカッティングラインに基づいて、床材の印刷領域を決定し、決定した印刷領域を示す情報を製造連携データに含めてもよい。製造連携データ生成部23は、例えば、カッティングラインの内側の領域を、印刷領域と決定してもよい。印刷領域の情報を含む製造連携データは、印刷工程を含む床材の製造ラインに提供される。これにより、床材に必要な部分のみに印刷をすることが可能になる。例えば、切断して使わない床材の部分には印刷をしないようにすることができる。これにより、印刷効率を向上させることができる。床材の印刷は、特定の形態に限定されないが、例えば、インクジェット、グラビア印刷、ロータリースクリーン等の形態が挙げられる。本実施形態は、インクジェットを用いる印刷に好適に用いられる。
【0116】
また、カッティングライン及び製造連携データを床材の製造ラインに提供してもよい。この場合、製造ラインでは、カッティングライン及び製造連携データに基づいて、必要なサイズの床材を製造し、必要な領域に印刷し、切断することができる。
【0117】
また、施工支援データを、床材の製造ラインに提供してもよい。この場合、製造ラインでは、例えば、施工支援データが示す施工支援情報を、床材に対して、印刷、エンボス加工、凹凸形状加工、その他加工等により付加することができる。或いは、床材に施工支援データを記録したマイクロチップを埋め込んでもよい。これにより、施工現場のコンピュータで、マイクロチップのデータを読み出すことで、床材の識別情報、床材の施工位置、又は、作業手順等の施工支援情報を作業者に提供することができる。施工支援情報の提供は、例えば、コンピュータを用いたVR、AR、又は投影装置による投影等により実行できる。また、床材にマイクロチップを設ける形態の他、例えば、バーコードその他記号を紫外線で発行するインクで床材の表面に印刷し、これらを施工現場の読み取り装置で、読み取って変換し、作業者に表示する形態も可能である。或いは、施工現場で接着剤を塗る代わりに、予め接着剤を床材に塗ってその上から離型紙を貼っておいてもよい。この場合、離型紙に施工支援情報を表示してもよい。
【0118】
(人工知能(AI)を用いたカッティングライン生成の例)
カッティングライン決定部14は、カッティングラインの少なくとも一部を、学習済みモデルを用いて決定してもよい。学習済みモデルは、例えば、床形状データを入力とし、カッティングラインを出力とする演算モデルである。学習済みモデルは、床形状データの他、例えば、床材データ及び床設計データのうち少なくとも1つを入力としてもよい。学習済みモデルは、例えば、記録部2に予め記録される。
【0119】
これにより、カッティングラインの少なくとも一部を、AIを用いて決定できる。また、カッティングライン決定部14は、AIにより決定されたカッティングラインをユーザに対して出力し、ユーザからの選択又は修正を受け付けることができる。また、カッティングラインの決定の他、施工支援データ又は製造連携データの生成に、学習済みモデルすなわちAIを用いることができる。
【0120】
この場合、床材プレカッティングシステム1aは、学習済みモデルを生成する学習部24を備えてもよい。学習部24は、カッティングライン決定部14が、カッティングラインを決定するのに用いたデータと、カッティングラインデータに基づいて実際にカットした床材のカッティングラインデータを教師データとして、例えば、ニューラルネットワークを用いたディープラーニングにより学習済みモデルを生成してもよい。
【0121】
教師データとなる実際の床材のカッティングラインデータは、施工現場で計測された実際のカッティングラインでもよいし、裁断機3でカットされた床材の実際のカッティングラインであってもよい。また、ユーザから実際のカッティングラインを示す情報として入力されたデータに基づくカッティングライを教師データとすることもできる。例えば、教師データとして、蓄積部16により記録部2に記録されたカットデータを用いてもよい。
【0122】
学習部24による学習処理は、例えば、教師データに基づく学習データセットの準備、学習前モデル(学習用プログラム)の準備、及び、学習データセットを用いた学習前モデルのパラメータの調整(学習済みモデル生成)を含む。学習データセットの準備では、例えば、教師データを加工し学習データセットを生成する。学習データセットの基になる教師データは、例えば、カッティングラインを決定するのに用いたデータとすることができる。例えば、床形状データ、床材データ、床設計データの少なくとも1つを教師データとすることができる。学習前モデルの準備では、例えば、学習前パラメータ及びハイパーパラメータが決定される。学習済みモデル生成では、学習データセットを学習前モデルに入力して得られた出力結果と、教師データとを照合し、学習前モデルのパラメータを調整する。ここで、出力結果と照合される教師データとしては、例えば、カットデータが示すカッティングラインの実績データが用いられる。この調整処理を繰り返し実行し、所定の精度の出力結果が得られるように、学習済みパラメータを決定する。
【0123】
学習済みモデルは、例えば、対象とする床及び床材に関するデータを入力とし、カッティングラインを出力する推論プログラムとして用いられる。例えば、床形状データ、床材データ、及び床設計データの少なくとも1つを学習済みモデルに入力し、学習済みモデルの出力として、カッティングラインを得ることができる。
【0124】
例えば、カッティングライン決定部14が、学習済みモデルを用いて決定したカッティングラインをユーザに提示してもよい。この場合、ユーザからの採否、修正結果を蓄積し、教師データとして学習部24が用いることができる。また、施工支援データ生成部22及び製造連携データ生成部23も、学習済みモデルを用いて生成した施工支援データ及び製造連携データをユーザに提示してもよい。ユーザからの採否、修正結果を、教師データとして、学習部24が用いることができる。このように、AIを用いたカッティングラインや施工方法に関する提案を行い、これに対する採否と、修正結果を入力してフィードバックをかけていくシステム構成が可能である。提案及びその結果を用いた学習を繰り返すことで、AIの判断の質が向上して、施工現場の特徴に応じたより良いカッティングラインや施工に関する提案が可能になる。
【0125】
(本実施形態の適用例)
上記の実施形態は、一例として、集合住宅又はホテルにおける浴室・トイレのユニットの床のプレカッティングに適用することができる。多くの集合住宅又はホテルの浴室及びトイレは、ユニットとなっている。1つの建物において、同じユニットが多数の部屋に用いられることが多い。近年、浴室又はトイレのユニットの傷んだ床材の改修工事が増えている。この改修工事では、ユニットの既存の床材を新しい床シートに貼り替えたり、既存の床材の上に新しい床シートを貼ったりする施工が行われている。そこで、本実施形態を、複数の同じ型のユニットの床材を改修する際のプレカッティングに好適に利用することができる。これにより、複数のユニットの床シートの改修工事において、敷設現場での床シートの裁断作業を大幅に軽減することができる。ユニットの床を対象とする場合、床形状データとして、例えば、ユニットの設計データであるCADデータを用いることができる。
【0126】
他の例として、上記の実施形態を、ホテルや学校等のような同じ間取りや形の部屋(エリア)を複数有する建物における各部屋(エリア)の床材のプレカッティングに適用することができる。例えば、ホテルではフロアごとに改修が行われる。稼働率の落とさないためには、改修の工期は短いことが好ましい。同じ形の複数のエリアに対して、同じ形状の床材を複数用意する必要がある。そこで、本実施形態を用いて床材のプレカッティングを行うことで、改修にかかる工期及び作業量を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0127】
1 床材プレカッティングシステム
2 記録部
3 裁断機
4 カッティングラインデータ入力システム
5 測定システム5
11 受付部
12 床データ取得部
13 床材データ取得部
14 カッティングライン決定部
15 蓄積部