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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】電動弁及び冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
F16K31/04 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020197354
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085592
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100182545
【弁理士】
【氏名又は名称】神谷 雪恵
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100213757
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 詩人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 達也
(72)【発明者】
【氏名】中野 誠一
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-119613(JP,A)
【文献】特開2007-255573(JP,A)
【文献】特開2000-179705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/00-31/05
F25B 31/00-31/02
39/00-41/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁ハウジングと、前記弁ハウジングに設けられた弁室の弁ポートの開度を変更する弁体と、ロータ軸を回転させる回転駆動手段と、前記ロータ軸の回転運動を直進運動に変換することで前記弁体を軸方向に進退移動させるねじ送り機構と、を備えた電動弁であって、
前記ねじ送り機構を構成する回転側部材を含む回転側ユニットと、
前記ねじ送り機構を構成する固定側部材を含む固定側ユニットと、
前記回転側ユニットと前記固定側ユニットとを、前記軸方向に直交する平面内において互いに遠ざけるように付勢力を付与する付勢部材と、を備え、
前記付勢部材は、前記軸方向と交差するように延在するとともに前記回転側ユニットと前記固定側ユニットとのうち一方に取り付けられる被取付部と、前記回転側ユニットと前記固定側ユニットとのうち他方に摺接する摺接部と、前記被取付部と前記摺接部との間において前記軸方向に沿って延在する変形部と、を有することを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記被取付部は、前記ロータ軸が通過可能な通過部を有するとともに、前記回転側ユニットを構成する少なくとも2部品によって前記軸方向から挟み込まれることにより、前記回転側ユニットに取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記回転側ユニットは、筒状のマグネット収容部の内周面に沿うように設けられたマグネットを含み、
前記被取付部は、前記マグネットのうち、前記軸方向における弁閉側の端面に固定されることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項4】
前記被取付部は、前記固定側ユニットに取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項5】
前記付勢部材は、全体が板金により形成され、前記摺接部のうち前記変形部とは反対側の端部に連続するとともに摺接対象から離れるように延びる離隔部を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の電動弁。
【請求項6】
圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1~5のいずれか1項に記載の電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁及び冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、弁体を進退移動させることで弁ポートの開度を調整する電動弁において、ステッピングモータ等の回転駆動力を発生する手段が設けられるとともに、回転運動を直進運動に変換するねじ送り機構が設けられることがある。このような電動弁として、回転駆動部と固定駆動部とのうち一方に配置されて他方に接触する接触部が設けられたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された電動弁では、接触部を設けることにより、ねじ送り機構における雄ねじと雌ねじとの間のクリアランスを確保しつつ、このクリアランスによって生じる振動を吸収させて作動音の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-119613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された電動弁では、接触部を設ける際の組立性が低くなりやすいという不都合があった。例えば、回転駆動部と固定駆動部とが径方向において対向する位置に接触部を設けようとすると、取付位置が外部から見て隠れた位置となりやすく、取付作業が困難となる場合があった。
【0005】
本発明の目的は、作動音を低減しつつ組立性を向上させることができる電動弁及び該電動弁を備えた冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動弁は、弁ハウジングと、前記弁ハウジングに設けられた弁室の弁ポートの開度を変更する弁体と、ロータ軸を回転させる回転駆動手段と、前記ロータ軸の回転運動を直進運動に変換することで前記弁体を軸方向に進退移動させるねじ送り機構と、を備えた電動弁であって、前記ねじ送り機構を構成する回転側部材を含む回転側ユニットと、前記ねじ送り機構を構成する固定側部材を含む固定側ユニットと、前記回転側ユニットと前記固定側ユニットとを、前記軸方向に直交する平面内において互いに遠ざけるように付勢力を付与する付勢部材と、を備え、前記付勢部材は、前記軸方向と交差するように延在するとともに前記回転側ユニットと前記固定側ユニットとのうち一方に取り付けられる被取付部と、前記回転側ユニットと前記固定側ユニットとのうち他方に摺接する摺接部と、前記被取付部と前記摺接部との間において前記軸方向に沿って延在する変形部と、を有することを特徴とする。
【0007】
以上のような本発明によれば、付勢部材が設けられていることで、ねじ送り機構における作動音を低減することができる。また、被取付部が軸方向に交差するように延在していることで、例えば軸方向から取付対象に被取付部を重ねて取り付けることができる。従って、被取付部が軸方向に延在する構成と比較して、取付対象に対する取付作業が容易となり、組立性を向上させることができる。
【0008】
この際、本発明の電動弁では、前記被取付部は、前記ロータ軸が通過可能な通過部を有するとともに、前記回転側ユニットを構成する少なくとも2部品によって前記軸方向から挟み込まれることにより、前記回転側ユニットに取り付けられることが好ましい。このような構成によれば、接着や溶接等の作業が必要なく、組立性をさらに向上させることができる。
【0009】
また、本発明の電動弁では、前記回転側ユニットは、筒状のマグネット収容部の内周面に沿うように設けられたマグネットを含み、前記被取付部は、前記マグネットのうち、前記軸方向における弁閉側の端面に固定されてもよい。マグネットのうち弁閉側の端面では、他の部材との干渉が生じにくく、組立性を向上させやすい。また、変形部が被取付部と摺接部との間において軸方向に沿って延在していることにより、被取付部と摺接部とを軸方向において適宜にずらして配置することができ、摺接部を固定側ユニットのうち所望の位置に摺接させやすくすることができる。
【0010】
また、本発明の電動弁では、前記被取付部は、前記固定側ユニットに取り付けられてもよい。このような構成によれば、ロータ軸が直進運動しても、付勢部材は直進運動せず、ねじ送り機構における噛み合い部分と付勢部材(特に摺接部)との相対位置が変化しない。即ち、噛み合い部分に作用する付勢力が変化しにくく、弁体の位置が変化しても作動音を抑制しやすい。
【0011】
また、本発明の電動弁では、前記付勢部材は、全体が板金により形成され、前記摺接部のうち前記変形部とは反対側の端部に連続するとともに摺接対象から離れるように延びる離隔部を有することが好ましい。このような構成によれば、付勢部材が離隔部を有することで、付勢部材を構成する板金の端縁が摺接対象に摺接することを抑制することができる。従って、摺接時に生じる摩擦力を低減し、摩耗や騒音を抑制することができる。
【0012】
本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、上記いずれかに記載の電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする。以上のような本発明によれば、上記のように、作動音を低減しつつ組立性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電動弁及び冷凍サイクルシステムによれば、作動音を低減しつつ組立性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一例である実施形態に係る電動弁を示す断面図である。
図2】前記電動弁の付勢部材を示す斜視図である。
図3】前記電動弁が設けられた冷凍サイクルシステムを示すシステム図である。
図4】第1の変形例に係る電動弁を示す断面図である。
図5】第2の変形例に係る電動弁を示す断面図である。
図6】第3の変形例に係る電動弁を示す断面図である。
図7】前記電動弁の要部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の電動弁1は、パッケージエアコンやルームエアコン等の空気調和機の冷凍サイクルシステムに用いられるものであって、弁ハウジング2と、弁体3と、弁ホルダ4と、支持部材5と、ステッピングモータ6と、付勢部材7と、を備える。
【0016】
弁ハウジング2は、弁ハウジング本体20Aと、上蓋20Bと、からなり、上蓋20Bは、弁ハウジング本体20Aの後述する上側の端部にろう付けによって固定されている。弁ハウジング本体20Aは、円筒状に形成され、その内側の弁室2A内に弁体3および弁ホルダ4を収容する。以下では、弁ハウジング本体20Aの軸方向をZ方向とし、Z方向に直交する2方向をそれぞれX方向及びY方向とする。また、以下ではZ方向における上下は図1を基準とし、上側が弁開側となり、下側が弁閉側となる。弁ハウジング本体20Aには、弁室2Aに連通する継手管21が側面に取り付けられるとともに、下端部には筒状開口部22が形成されている。筒状開口部22には、Z方向に延びる継手管23の端部が挿通されて接続されるとともに、弁座部24が一体に形成されている。継手管23は、弁座部24の弁ポート25に連通している。
【0017】
弁体3は、弁ホルダ4と嵌合して吊り下げられており、弁ホルダ4から下方に向かって延び、先端にニードル弁31を有している。ニードル弁31が弁座部24の後述するシール部26に対して着座又は離座する。
【0018】
弁ホルダ4は、Z方向に沿って延びる円筒状に形成され、その上端部が、ステッピングモータ6の後述するロータ軸61の下端部に係合されている。即ち、弁ホルダ4は、ロータ軸61によって吊り下げられており、ロータ軸61に対して回転可能となっている。また、弁ホルダ4内には、圧縮コイルバネ41が設けられ、弁体3に対して下方への荷重が与えられている。尚、圧縮コイルバネ41は説明の都合上、図1において破線によって省略して図示している。
【0019】
支持部材5は、弁ハウジング2における上蓋20Bの上方開口を塞ぐように、フランジ部51において上蓋20Bに固定されている。支持部材5には、弁ホルダ4を収容するとともにZ方向に案内する案内凹部52と、ロータ軸61が螺合する雌ねじ部53と、案内凹部52とステッピングモータ6の後述するケース62内の空間とを連通する連通孔(不図示)と、が形成されている。
【0020】
ステッピングモータ6は、ロータ軸61と、ケース62と、マグネットロータ63と、ステータコイル64と、によって構成されている。ケース62内には、外周部を多極に着磁されたマグネットロータ63が回転可能に設けられ(即ち、ケース62には、マグネットとしてのマグネットロータ63が収容され)、このマグネットロータ63にはロータ軸61が固着されている。さらに、ケース62は、弁ハウジング2における上蓋20Bの上方開口を塞ぐように、上蓋20Bに固定されている。ステータコイル64は、ケース62の外周に配設されている。ステッピングモータ6は、ステータコイル64にパルス信号が与えられることにより、そのパルス数に応じてマグネットロータ63を回転させる。
【0021】
ロータ軸61の外周面には、支持部材5の雌ねじ部53と螺合する雄ねじ部611が形成されている。ステッピングモータ6が駆動することで、マグネットロータ63及びロータ軸61が回転し、雄ねじ部611と雌ねじ部53とにより構成されるねじ送り機構により、ロータ軸61がZ方向に移動する。これにより、ロータ軸61に吊り下げられた弁ホルダ4が、支持部材5の案内凹部52に案内されつつZ方向に移動し、弁体3のニードル弁31がシール部26に対して着座又は離座し、弁ポート25が開閉される。そして、弁体3のZ方向の位置(リフト量)に応じて弁ポート25の開度が制御され、弁ポート25を流れる流体の流量が制御される。
【0022】
尚、上記の構成では、支持部材5及びケース62が、弁ハウジング2における上蓋20Bの上方開口を塞ぐものとしたが、これらは弁ハウジングの上方開口を塞ぐものであればよい。例えば、弁ハウジングが上蓋を有しておらず、弁ハウジング本体のみによって構成される場合には、支持部材及びケース62は、弁ハウジング本体に直接固定されることにより、弁ハウジングの上方開口を塞いでもよい。
【0023】
以上のように、電動弁1は、回転駆動手段としてのステッピングモータ6と、ロータ軸61の回転運動を直進運動に変換することで弁体3を軸方向に進退移動させるねじ送り機構と、を備える。ねじ送り機構を構成する回転側部材としてのロータ軸61と、マグネットロータ63と、が回転側ユニットを構成する。ねじ送り機構を構成する固定側部材(回転しない部材)としての支持部材5と、その他の回転しない部材と、が固定側ユニットを構成する。尚、電動弁1において、ロータ軸61及びマグネットロータ63以外の部材は回転しない(弁ホルダ4は多少の連れ回りをしてもよい)ことから、これらの回転しない部材も固定側ユニットに含まれる。尚、本実施形態では、回転側部材としてのロータ軸61に雄ねじ部611が形成されるとともに固定側部材としての支持部材5に雌ねじ部53が形成されるものとしたが、回転側部材に雌ねじ部が形成されるとともに固定側部材に雄ねじ部が形成される構成であってもよい。
【0024】
付勢部材7は、例えば全体が1枚の帯板状の板金によって一体に形成された板ばねであって、図2にも示すように、被取付部71と、一対のアーム部72と、一対の離隔部73と、を有する。被取付部71は、軸方向であるZ方向と直交する(交差する)平面であるXY平面に沿って延在するとともに、長方形状に形成され、後述するように回転側ユニットに取り付けられる。固定部71の中央部(長方形の対角線同士が交差する位置)には、通過部としての貫通孔711が形成されている。
【0025】
一対のアーム部72は、径方向(Z方向に直交する方向)に対向するように配置され、被取付部71からZ方向下側に向かって延びる長方形板状に形成されている。アーム部72は回転側ユニットとともに回転するものの、常にZ方向を含む平面に沿って延在するとともに径方向と略直交する。アーム部72は、下端部において後述するように固定側ユニットに摺接し、この摺接する部分が摺接部721となる。アーム部72のうち摺接部721よりも上側の部分が変形部722となる。即ち、変形部722は、被取付部71と摺接部721との間においてZ方向に沿って延在する。
【0026】
離隔部73は、摺接部721のうち変形部722とは反対側の端部である下端部に連続し、径方向外側に向かって延びることで、摺接対象である支持部材5から離れるように延びている。離隔部73は、例えばXY平面に沿って延びる。
【0027】
ここで、付勢部材7と他の部材との詳細な関係について説明する。被取付部71は、マグネットロータ63のうちロータ軸61と固定される中央部631の下面に重なるように配置される。さらに、被取付部71の貫通孔711には、ロータ軸61のうち小径部612が挿通され、即ちロータ軸61が通過部を通過する。ロータ軸61は、中央部631と所定の間隔を開けた位置に、貫通孔711を通過不能な大径部613を有する。これにより、被取付部71のうち貫通孔711の周囲の部分が、中央部631の下面と大径部613とによってZ方向から挟み込まれる。このようにして、付勢部材7が被取付部71において回転側ユニットに取り付けられる。尚、付勢部材7は、回転側ユニットに固定されることにより、ロータ軸61及びマグネットロータ63が回転した際に同時に回転するようになっていてもよいし、回転側ユニットに対して単に取り付けられることにより、ロータ軸61及びマグネットロータ63の回転が付勢部材7に伝達されない(あるいは伝達されにくい)ようになっていてもよい。
【0028】
支持部材5には、雌ねじ部53が形成された小径部55と、小径部55よりも基端側(下側)に位置する大径部56と、が形成されている。一対のアーム部72は、支持部材5を径方向から挟み込むとともに、その先端部(下端部)である摺接部721が、大径部56の外周面に摺接する。尚、アーム部72のうち大径部56の外側に位置する部分の全体が大径部56に摺接してもよいし、一部のみが摺接してもよい。
【0029】
自然状態の付勢部材7において、一対の摺接部721同士の間隔は、大径部56の外径よりも小さくなっている。従って、大径部56を一対の摺接部721同士の間に配置した際、アーム部721が径方向外側に押し広げられて撓み変形し、付勢部材7は、大径部56に対して径方向内側への付勢力を付与する。即ち、回転側ユニットに取り付けられた付勢部材7は、回転側ユニットと固定側ユニットとをXY平面内において(好ましくは径方向において)互いに遠ざけるように付勢力を付与する。このような付勢力が付与されることで、ねじ送り機構において雄ねじ部611と雌ねじ部53との間にクリアランスを形成しても、これらが互いに接触した状態を維持しつつ相対回転することができ、がたつきを生じにくくして作動音を低減することができる。
【0030】
離隔部73は、マグネットロータ63の下端部よりも下側に配置され、且つ、その先端がケース62から離隔するように配置されている。
【0031】
次に、図3に基づいて本実施形態の電動弁1が設けられる冷凍サイクルシステムの一例について説明する。この冷凍サイクルシステムは、例えば、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる。電動弁1は、室内熱交換器101と室外熱交換器104との間に設けられている。そして、電動弁1、室内熱交換器101、四方切換弁102、圧縮機103及び室外熱交換器104は、冷凍サイクルを構成している。室内熱交換器101及び電動弁1は室内に設置され、四方切換弁102、圧縮機103及び室外熱交換器104は室外に設置されていて冷暖房装置を構成している。
【0032】
以上の本実施形態によれば、付勢部材7が設けられていることで、ねじ送り機構における作動音を低減することができる。また、被取付部71がZ方向に直交するように延在していることで、Z方向から取付対象である中央部631に被取付部71を重ねて取り付けることができる。従って、被取付部がZ方向に延在する構成と比較して、取付対象に対する取付作業が容易となり、組立性を向上させることができる。
【0033】
また、被取付部71に貫通孔711が形成され、被取付部71がロータ軸61とマグネットロータ63とによって挟み込まれて取り付けられることで、接着や溶接等の作業が必要なく、組立性をさらに向上させることができる。
【0034】
また、付勢部材7が離隔部73を有することで、付勢部材7を構成する板金の端縁が摺接対象である支持部材5に摺接することを抑制することができる。従って、摺接時に生じる摩擦力を低減し、摩耗や騒音を抑制することができる。
【0035】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。以下に説明する各変形例では、前記実施形態と同様の構成には共通の符号を付すとともに説明を省略する。前記実施形態では、被取付部71が、固定側ユニットを構成する2部品であるロータ軸61とマグネットロータ63とによって挟み込まれるものとしたが、固定側ユニットのうち被取付部71を挟み込む部材は、これらに限定されない。図4に示す第1の変形例では、ロータ軸61にリング65が取り付けられ、被取付部71が中央部631とリング65とによってZ方向から挟み込まれている。即ち、リング65は、ロータ軸61の小径部612よりも大径に形成されるとともに貫通孔711を通過不能となっており、大径部613と同様の機能を有している。また、被取付部71は、固定側ユニットを構成する3部品以上によって挟み込まれていてもよい。
【0036】
上記のようにロータ軸61とは別部品のリング65を用いる場合、リング65は、ロータ軸61に接着等により固定されてもよいし、以下のように螺合により固定されてもよい。即ち、リング65の内周面に雌ねじを形成するとともに、ロータ軸61の外周面に雄ねじを形成し、これらを螺合させてもよい。このとき、ロータ軸61をマグネットロータ63に固着しておき、このロータ軸61を貫通孔711に通過するようにして付勢部材7を設けた後に、リング65をロータ軸61に対して締結すればよい。
【0037】
また、前記実施形態では、被取付部71には、ロータ軸61が通過可能な通過部として貫通孔711が形成されているものとしたが、被取付部には通過部として切り欠き等が形成されていてもよい。
【0038】
また、前記実施形態では、付勢部材7が回転側ユニットに取り付けられるものとしたが、付勢部材は固定側ユニットに取り付けられてもよい。例えば第2の変形例として図5に示すように、固定側ユニットに取り付けられるとともに回転側ユニットに摺接する付勢部材8を設けてもよい。付勢部材8は、例えば帯板状の板金によって形成された板ばねであって、被取付部81と一対のアーム部82と離隔部83と摺接部84とを一体に有する。
【0039】
被取付部81は、XY平面に沿って延在しており、例えばZ方向から見て円環状又はC字状となっている。被取付部81は、支持部材5のフランジ部51の上面に重なるように配置され、例えば溶接等によって固定されることにより、固定側ユニットに取り付けられている。一対のアーム部82は、被取付部81の内周縁からZ方向上側に向かって延び、Z方向上側に向かうにしたがって径方向外側に向かうように(即ち互いに離れるように)傾斜している。離隔部83は、アーム部82の上端に連続し、Z方向上側に向かうにしたがって径方向内側に向かうように(回転側ユニットを構成するマグネットロータ63から離れるように)傾斜している。摺接部84は、アーム部82と離隔部83との間に形成された角部であって、マグネットロータ63の内周面に接触することにより、回転側ユニットに摺接する。アーム部82は、被取付部81と摺接部84との間に形成された変形部である。
【0040】
自然状態の付勢部材8において、一対の摺接部84同士の間隔は、マグネットロータ63の内径よりも大きくなっている。従って、一対の摺接部84をマグネットロータ63の内側に配置した際、アーム部82が径方向内側に向かって縮むように撓み変形し、付勢部材8は、マグネットロータ63に対して径方向外側への付勢力を付与する。即ち、付勢部材8は、回転側ユニットと固定側ユニットとを径方向において互いに遠ざけるように付勢力を付与する。
【0041】
このような第2の変形例によれば、ロータ軸61が直進運動しても、付勢部材8は直進運動せず、ねじ送り機構における噛み合い部分と付勢部材8(特に摺接部84)との相対位置が変化しない。即ち、噛み合い部分に作用する付勢力が変化しにくく、弁体3の位置が変化しても作動音を抑制しやすい。
【0042】
また、前記実施形態では、付勢部材7の被取付部71に通過部としての貫通孔711が形成され、被取付部71が2部品によってZ方向から挟み込まれることで取り付けられるものとしたが、被取付部の取付位置及び取付方法はこれに限定されない。例えば第3の変形例として図6、7に示すように、マグネットロータ63の下端面に取り付けられる付勢部材9を用いてもよい。付勢部材9は、例えば帯板状の板金によって形成された板ばねであって、被取付部91と一対のアーム部92と離隔部93と摺接部94とを一体に有する。
【0043】
被取付部91は、XY平面に沿って延在しており、例えばZ方向から見て円環状又はC字状となっている。被取付部91は、マグネットロータ63の下端面に重なるように配置され、例えば熱カシメ等によって固定されることにより、回転側ユニットに取り付けられている。ここで、マグネットロータ63は、筒状のマグネット収容部としてのケース62の内周面に沿うように設けられ、下端面632とは、マグネットロータ63のうちケース62の内周面に沿った磁極部の下面を指す。
【0044】
一対のアーム部92は、被取付部91の内周縁からZ方向上側に向かって延び、Z方向上側に向かうにしたがって径方向内側に向かうように(即ち互いに近づくように)傾斜している。離隔部93は、アーム部92の上端に連続し、Z方向上側に向かうにしたがって径方向外側に向かうように(固定側ユニットを構成する支持部材5から離れるように)傾斜している。摺接部94は、アーム部92と離隔部93との間に形成された角部であって、支持部材5の大径部56の内周面に接触することにより、固定側ユニットに摺接する。アーム部92は、被取付部91と摺接部94との間に形成された変形部である。
【0045】
自然状態の付勢部材9において、一対の摺接部94同士の間隔は、大径部56の外径よりも小さくなっている。従って、一対の摺接部94の間に支持部材5を配置した際、アーム部92が径方向外側に押し広げられるように撓み変形し、付勢部材9は、支持部材5に対して径方向内側への付勢力を付与する。即ち、付勢部材9は、回転側ユニットと固定側ユニットとを径方向において互いに遠ざけるように付勢力を付与する。
【0046】
このような第3の変形例によれば、マグネットロータ63のうち下端面の近傍では、他の部材との干渉が生じにくく、組立性を向上させやすい。また、アーム部92が被取付部91と摺接部94との間においてZ方向に沿って延在していることにより、被取付部91と摺接部94とをZ方向において適宜にずらして配置することができ、摺接部94を固定側ユニットのうち所望の位置に摺接させやすくすることができる。
【0047】
また、付勢部材の被取付部の取付位置及び取付方法や、摺接部の摺接対象は上記に限定されない。特に、被取付部の取付方法については、取付対象の形状や材質等に応じて適宜に選択されればよい。また、被取付部は、軸方向に交差していればよく、軸方向との直交面に対して多少の傾きを有していてもよい。
【0048】
また、前記実施形態では、付勢部材7の全体が板金によって形成され、離隔部73が形成されているものとしたが、このような形態に限定されない。即ち、付勢部材は複数部材(例えば弾性部材及び剛体)によって構成されていてもよいし、離隔部が形成されていなくてもよい。例えば、板金の端縁にフッ素樹脂製の摺動部材を設けるとともこの部分を摺接部としてもよい。また、所定の厚さを有する板金を用いたり、板金の端縁に面取り加工を施したりすることにより、端縁を摺接部としつつ摺接時に生じる摩擦力を低減してもよい。これは、第1~第3の変形例についても同様である。
【0049】
また、前記実施形態では、付勢部材7が一対の摺接部721及び一対の変形部722を有するものとしたが、摺接部及び変形部の数は任意である。これは、第1~第3の変形例についても同様である。このとき、複数の摺接部及び変形部を均等に設けることで付勢力の合力が0となるようにしてもよいし、1つの摺接部及び変形部を設けたり、複数の摺接部及び変形部を不均等に設けたりすることで、付勢力の合力が0とならないようにしてもよい。即ち、ねじ送り機構において、雄ねじ部と雌ねじ部との中心軸同士が一致してもよいし、中心軸同士に多少のずれが生じてもよい。
【0050】
また、前記実施形態及び第1~第3の変形例では、電動弁1が1つの弁体3のみを有するものとしたが、例えば主弁と副弁とを有し弁開度を二段階で調整可能な電動弁に付勢部材を設けてもよい。その他、付勢部材が設けられる電動弁は、ステッピングモータ等の回転駆動手段及びねじ送り機構を備えたものであればよく、上記の形態に限定されない。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1…電動弁、2…弁ハウジング、2A…弁室、25…弁ポート、3…弁体、5…支持部材(固定側部材)、6…ステッピングモータ(回転駆動手段)、61…ロータ軸(回転側部材)、62…ケース(マグネット収容部)、63…マグネットロータ(マグネット)、7~9…付勢部材、71,81,91…被取付部、711…貫通孔(通過部)、721,84,94…摺接部、722,82,92…変形部、73,83,93…離隔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7