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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】防汚組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/04 20060101AFI20230914BHJP
   C09D 143/04 20060101ALI20230914BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20230914BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20230914BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230914BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20230914BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230914BHJP
【FI】
C09D133/04
C09D143/04
C09D5/16
C09D7/65
C09D7/63
C09D7/40
C09D7/61
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020526564
(86)(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 EP2018081425
(87)【国際公開番号】W WO2019096928
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】1718898.8
(32)【優先日】2017-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515168776
【氏名又は名称】ヨトゥン アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンセン, ヘニング
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン, シェイマス マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ダーリン, マリト
(72)【発明者】
【氏名】グランスバリ, カーリン
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-534543(JP,A)
【文献】特表2010-532402(JP,A)
【文献】特開2003-261816(JP,A)
【文献】国際公開第2008/105122(WO,A1)
【文献】特表2016-501951(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094767(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/046086(WO,A1)
【文献】特開2018-59073(JP,A)
【文献】特開2014-58304(JP,A)
【文献】国際公開第2005/116155(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
C09D 1/00- 10/00
C09D 10/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋防汚コーティング組成物であって、
(i)(メタ)アクリレートおよび/またはシリル(メタ)アクリレートモノマーを含む少なくとも1つのポリマーを含むアクリルバインダー5.0質量%から40質量%と、
(ii)1つ以上のロジンまたはその誘導体0.5質量%から30質量%と、
(iii)1つ以上の海洋防汚剤0.5質量%から70質量%と、
(iv)液体の非環式飽和C12-C24モノカルボン酸あるいはその塩または、液体の非環式分岐C12-C24モノカルボン酸あるいはその塩から選択される1つ以上のモノカルボン酸あるいはその塩0.5質量%から10質量%と、
を含む組成物。
【請求項2】
前記モノカルボン酸が、14-20の炭素原子を含む、請求項1に記載の海洋防汚コーティング組成物。
【請求項3】
前記モノカルボン酸成分(iv)の分岐度が70%よりも大きい、請求項1または2に記載の海洋防汚コーティング組成物。
【請求項4】
前記モノカルボン酸が、イソパルミチン酸またはイソステアリン酸を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の海洋防汚コーティング組成物。
【請求項5】
乾燥質量に基づく(ii):(iv)の比が、90:10から40:60の範囲にある、請求項1から4のいずれか一項に記載の海洋防汚コーティング組成物。
【請求項6】
前記ロジンが、ガムロジンまたはその誘導体である、請求項1から5のいずれか一項に記載の海洋防汚コーティング組成物。
【請求項7】
成分(ii)が、組成物の0.5質量%から20質量%の量で存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の海洋防汚コーティング組成物。
【請求項8】
前記アクリルバインダー成分(i)が、少なくとも1つの以下のモノマー:(メタ)アクリル酸、メチルメタクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートおよびトリイソプロピルシリル(メタ)アクリレートの残基を含む少なくとも1つのポリマーを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の海洋防汚コーティング組成物。
【請求項9】
成分(i)が、組成物の5.0質量%から20質量%の量で存在する、請求項1から8のいずれか一項に記載の海洋防汚コーティング組成物。
【請求項10】
前記海洋防汚剤(iii)が、酸化第一銅、銅ピリチオンまたはエチレンビス(ジチオカルバミド酸)亜鉛の少なくとも1つを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の海洋防汚コーティング組成物。
【請求項11】
前記組成物が、400g/L未満のVOCを有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の海洋防汚コーティング組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の海洋防汚コーティング組成物を基材に塗布する工程を含む方法。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の海洋防汚コーティング組成物でコーティングした基材。
【請求項14】
(i)(メタ)アクリレートおよび/またはシリル(メタ)アクリレートモノマーを含む少なくとも1つのポリマーを含むアクリルバインダー5.0質量%から40質量%と、
(ii)ロジンおよび/またはその誘導体0.5質量%から30質量%と、
(iii)海洋防汚剤0.5質量%から70質量%と、
を含む海洋防汚コーティング組成物中の溶脱層の厚さを減少させるための請求項1から11のいずれか一項に記載の液体の非環式飽和C12-C24モノカルボン酸あるいはその塩または、液体の非環式分岐C12-C24モノカルボン酸あるいはその塩から選択される1つ以上のモノカルボン酸0.5質量%から10質量%の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚コーティング組成物、より具体的には、ロジンおよび特定のモノカルボン酸を含む海洋防汚コーティング組成物に関する。本発明はさらに、防汚コーティング組成物を基材に塗布する方法、および防汚コーティング組成物でコーティングした基材に関する。
【背景技術】
【0002】
海水に沈んだ面は、例えば、緑藻および褐藻、フジツボ、ムール貝、ハオリムシなどの海洋生物による汚損を受ける。例えば、船舶、石油プラットフォーム、ブイなどの海洋構造物では、このような汚損は、望ましくなく、経済的影響がある。汚損(ファウリング)は、表面の生分解、負荷の増加、および腐食促進につながる可能性がある。船舶では、汚損は、摩擦抵抗を増加させ、それは、減速および/または燃料消費の増加を引き起こすであろう。それはまた、操作性の低下をもたらす可能性がある。
【0003】
海洋生物の定着と成長を防ぐために、防汚塗料が使用される。これらの塗料は、一般に、顔料、充填剤、溶媒および生理活性物質などの種々の成分とともにフィルム形成バインダーを含む。
【0004】
汚損を防ぐために防汚コーティング組成物に使用されるバインダーが良好な研磨特性を有することは重要である。バインダーが研磨を示さない場合、殺生物剤があまり放出されず、防汚コーティングとして効果がない。しかし、研磨が速すぎないことも重要である。
【0005】
ほとんどすべての市販の防汚塗料は、ロジンをバインダー系の一部として組み込んでいる。このようなシステムでは、過剰な溶脱層の形成は、望ましくないプロセスである。溶脱層は、殺生物剤などの可溶成分がコーティングから放出された塗料表面に向かうエリアである。したがって、溶脱層の組成物は、残りの防汚塗料フィルムと比べて変更される。
【0006】
この溶脱層は、塗料フィルムのそのままの/根本的な領域からの領域殺生物剤に対する拡散バリヤの機能を果たす。溶脱層の厚さが増えるにつれて殺生物剤の放出の速度が落ち、汚損の確率が上がる。溶脱層は、非常に厚い可能性があるためコーティングの完全な失敗になり、汚損が進展するであろう。本発明者らは、この問題に対処しようと努めている。
【0007】
本発明者らは、意外なことに、ここで特定の液体のモノカルボン酸を使用してバインダー系のロジン成分に部分的に取って代わることにより、溶脱層形成の程度を低減できることを立証した。これは、コーティング組成物の粘度を維持するか、減らしさえする間に達成される。粘度の低下は、より低いレベルの溶媒の使用を可能にする。本発明者らはまた、コーティング組成物を基材に塗布することにより製造されたコーティングは、硬度と柔軟性との間の良好なバランスを有することを立証した。
【0008】
ロジンおよび任意にモノカルボン酸を含む防汚塗料組成物が以前に記載されている。
【0009】
欧州特許出願公開第1342756号明細書は、(a)不飽和カルボン酸シリルエステルモノマーを含むシリルエステル共重合体と、(b)カルボン酸と、(c)二価または三価の金属化合物と、(d)脱水剤とを含む防汚コーティング組成物を記載している。一実施形態では、カルボン酸(b)は、樹脂酸またはその誘導体であってもよいことが教示されている。別の実施形態では、カルボン酸(b)は、樹脂酸の代わりに、イソノナン酸、バーサティック酸、ナフテン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、トール油脂肪酸およびダイズ油脂肪酸から選択される有機酸であってもよいことが教示されている。実施例では、酸成分(b)は、イソノナン酸、バーサティック酸またはロジンのうちの1つである。この参考文献は、ロジンおよび有機(非ロジン)酸の混合物を含む組成物を教示していない。
【0010】
欧州特許出願公開第0289481号明細書は、(i)(a)1つ以上のロジン系成分、(b)飽和C6-C12分岐あるいは脂環式脂肪酸またはその混合物の1つ以上の金属塩から選択される第1の成分と、(ii)環状アミド、アクリルコモノマーと、メタクリレートまたはスチレンコモノマーとの共重合体であるバインダーと、(iii)金属を含む顔料と、(iv)顔料と同一であり得る少なくとも1つの殺生物剤とを含む共重合体海洋塗料組成物を記載している。
【0011】
国際公開第95/10568号公報は、1質量%から20質量%のウッドロジン、20質量%から70質量%の酸化第一銅、1質量%から25質量%の亜鉛ピリチオン、および0.3質量%から15質量%のシュウ酸または式(HOOC)nRCOOH(式中、nは0または1であり、Rは、C1-C20アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基、アラルキル基および、その組合せである。)で表されるカルボン酸を含む塗料組成物を記載している。好ましいカルボン酸は、RがC3-C10であるものである。このような組成物は、強化された殺生物効果および強化されたゲル化耐性を有するといわれている。配合物例2および配合物例12を除いては、例示の塗料組成物はまた、塩化ビニル-酢酸ビニル-ビニルアルコールターポリマーであるVAGH樹脂を含む。配合物例2および配合物例12は、アクリル酸/メチルメタクリレート共重合体ACRYLOID B48Mおよびナフテン酸を含む。配合物12は、ウッドロジンを含まないため、比較例である。
【0012】
本発明者らは、意外なことに、ここで請求項1の特徴、特に、(メタ)アクリレートバインダー、ロジン、液体のC12-C24モノカルボン酸成分および殺生物剤を有するコーティング組成物が、薄い溶脱層を示す有効な防汚コーティング組成物であることを立証した。さらに、薄い溶脱層は、所与のVOC(揮発性有機化合物)で塗料粘度を維持するか、減らしさえする間に達成される。これにより、高固形分量およびより低いレベルのVOCを有する防汚塗料を製造することが可能になる。これは、塗料製造効率の改善と塗布方法の改善と環境影響の低下をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】欧州特許出願公開第1342756号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0289481号明細書
【文献】国際公開第95/10568号公報
【発明の概要】
【0014】
第1の態様から見ると、本発明は、海洋防汚コーティング組成物であって、
(i)(メタ)アクリレートおよび/またはシリル(メタ)アクリレートモノマーを含む少なくとも1つのポリマーを含むアクリルバインダーと、
(ii)1つ以上のロジンまたはその誘導体と、
(iii)1つ以上の海洋防汚剤と、
(iv)液体の非環式飽和C12-C24モノカルボン酸あるいはその塩または、液体の非環式分岐C12-C24モノカルボン酸あるいはその塩から選択される1つ以上のモノカルボン酸と、
を含む組成物を提供する。
【0015】
別の態様から見ると、本発明は、海洋防汚コーティング組成物であって、
(i)(メタ)アクリレートおよび/またはシリル(メタ)アクリレートモノマーを含む少なくとも1つのポリマーを含む少なくとも5質量%のアクリルバインダーと、
(ii)1つ以上のロジンまたはその誘導体と、
(iii)1つ以上の海洋防汚剤と、
(iv)液体の非環式飽和C12-C24モノカルボン酸あるいはその塩または、液体の非環式分岐C12-C24モノカルボン酸あるいはその塩から選択される1つ以上のモノカルボン酸と、
を含む組成物を提供する。
【0016】
一実施形態では、成分(iv)は、組成物の0.5質量%から10質量%の量で存在する。
【0017】
一実施形態では、成分(iv)は、C14-C20モノカルボン酸あるいはその塩、例えば、C16-C20モノカルボン酸あるいはその塩である。
【0018】
さらなる実施形態では、モノカルボン酸成分(iv)の分岐度は、70%よりも大きい。
【0019】
さらなる実施形態では、モノカルボン酸は、イソパルミチン酸またはイソステアリン酸から選択される少なくとも1つである。
【0020】
さらなる実施形態では、乾燥質量に基づく(ii):(iv)の比は、90:10から40:60の範囲にある。
【0021】
さらなる実施形態では、ロジンは、ガムロジンまたはその誘導体である。
【0022】
さらなる実施形態では、成分(ii)は、組成物の2.5質量%から20質量%の量で存在する。
【0023】
さらなる実施形態では、アクリルバインダー成分(i)は、以下のモノマー:(メタ)アクリル酸、メチルメタクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、およびトリイソプロピルシリル(メタ)アクリレートのうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つのポリマーを含む。
【0024】
さらなる実施形態では、成分(i)は、組成物の0.5質量%から20質量%の量で存在する。
【0025】
さらなる実施形態では、海洋防汚剤(iii)は、酸化第一銅、銅ピリチオンまたはジネブのうちの少なくとも1つを含む。
【0026】
さらなる実施形態では、防汚コーティング組成物は、400g/L未満のVOCを有する。
【0027】
別の態様から見ると、本発明は、物体を汚損から保護する方法であって、汚損を受ける前記物体の少なくとも一部を上記の防汚コーティング組成物でコーティングする工程を含む方法を提供する。
【0028】
別の態様から見ると、本発明は、上記の防汚コーティング組成物でコーティングした物体を提供する。
【0029】
別の態様から見ると、本発明は、
(i)(メタ)アクリレートおよび/またはシリル(メタ)アクリレートモノマーを含む少なくとも1つのポリマーを含むアクリルバインダーと、
(ii)ロジンおよび/またはその誘導体と、
(iii)海洋防汚剤と、
を含む海洋防汚コーティング組成物中の溶脱層の厚さを減少させるための上記の液体の非環式飽和C12-C24モノカルボン酸あるいはその塩または、液体の非環式分岐C12-C24モノカルボン酸あるいはその塩から選択される1つ以上のモノカルボン酸の使用を提供する。
【0030】
定義
文脈からそうでない場合を除き、以下の用語法が、全体を通して使用される。
【0031】
(メタ)アクリル酸という用語は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
【0032】
(メタ)アクリレートという用語は、メタクリレートまたはアクリレートを含む。
【0033】
液体という用語は、モノカルボン酸が23℃および大気圧(1atm)で液状であることを意味する。
【0034】
「海洋防汚剤」という用語は、海洋生物の表面への定着を防いだり海洋生物の表面での成長を防いだり海洋生物の表面からの除去を促進したりする化合物または化合物の混合物を指す。
【0035】
成分のパーセントは、乾燥固形物として計算され得る。これは、コーティングのいかなる溶媒の重み寄与も無視されることを意味する。しかし、乾燥固形物に言及されない場合には、溶媒が存在すると仮定して質量パーセントが一般に引用される。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の防汚コーティング組成物は、上記の少なくとも4つの成分(i)-(iv):アクリルバインダー(i)、ロジンまたはその誘導体(ii)、海洋防汚剤(iii)、および1つ以上のモノカルボン酸(iv)またはその塩を含む。本明細書に記載のモノカルボン酸のすべての実施形態は、酸の塩バーションにもあてはまる。しかし、好ましくは、モノカルボン酸は、その遊離酸形で使用される。
【0037】
成分(i)-アクリルバインダー
バインダーの目的は、組成物の成分を一緒に結合することである。その後、組成物が表面に塗布されるときに、バインダーは、徐々に分解または溶解し、殺生物剤の放出につながるため、海洋生物による表面の汚損を防ぐ。
【0038】
成分(i)は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレートおよび/またはシリル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1つのモノマーの重合により調製されるホモポリマーまたは共重合体である。好ましくは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレートおよび/またはシリル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも2つのモノマーを含む共重合体である。
【0039】
本発明の好ましいアクリルバインダーは、式(III):
【0040】
【化1】
【0041】
(式中、R1は、HまたはCH3であり、
2は、H、CH2CH(2-a)[CH3aO)n3、ベンジル基、C5-C10シクロアルキル基、及び任意に置換C1-C18アルキル基であり、前記置換基は、OH、ヘテロシクリル基およびXR4から選択され、
3は、H、C1-C8アルキル基、C5-C10シクロアルキル基またはフェニル基から選択され、
4は、C1-C6アルキル基であり、
Xは、ヘテロ原子、好ましくはOであり、
aは、0または1であり、
nは、1から20、好ましくは1から6の整数である。)
で表される少なくとも1つのモノマー、好ましくは、少なくとも2つのモノマーの残基を含む。
【0042】
アルキル基は、直鎖であっても分岐であってもよい。好ましいアルキル基は、1-10の炭素原子を含む。好ましいシクロアルキル基は、5-10の炭素原子を含む。シクロアルキル基は、架橋されていても多環系を含んでいてもよい。好ましいシクロアルキル基は、単環式である。
【0043】
ヘテロシクリル基は、好ましくは、3員環から10員環または3員環系から10員環系であり、より具体的には、5員環から6員環であり、それは、飽和していても飽和していなくてもよい。好ましくは、ヘテロシクリル基は飽和している。好ましいヘテロ原子は、酸素である。ヘテロシクリル基で置換され存在し得るアルキル基の代表例は、テトラヒドロフリル基である。
【0044】
任意の置換基が存在する場合、好ましくは、このような1つの置換基が存在する。
本発明のアクリルバインダーに存在するモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、トリメチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、トリ(エチレングリコール)エチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、およびイソプロピリデングリセロール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0045】
好ましい実施形態では、モノマーは、式(IIIa):
【0046】
【化2】
【0047】
(式中、R1は、HまたはCH3であり、
2は、H、-(CH2CH2O)n3、テトラヒドロフリル基、または任意に置換C1-C18アルキル基であり、前記置換基は、-OR4から選択され、
3は、H、C1-C8アルキル基から選択され、
4は、C1-C6アルキル基であり、
nは、1から20、好ましくは1から6の整数である。)
で表される。
【0048】
式(III)で表される好ましい(メタ)アクリレートモノマーは、式(I)
【0049】
【化3】
【0050】
(式中、R1'は、HまたはCH3であり、R2'は、Hまたは直鎖あるいは分岐C1-C10アルキル基、好ましくは1から4のヘテロ原子を含む直鎖C1-10アルキル基、または直鎖C2-C10アルキル基である。)
で表されるものである。
【0051】
2'は、より特には、直鎖C1-6アルキル基であり、または、基R2'は、1から3のヘテロ原子、特に1から2のヘテロ原子、特に1のヘテロ原子を含む直鎖C2-C10であってもよい。ヘテロ原子は、好ましくはOである。一実施形態では、R2'は、炭素鎖中に1から3の酸素ヘテロ原子を含む直鎖C2-C8アルキル基である。R2'は、最も特には、1から3の酸素ヘテロ原子を含むC1-4アルキル基、直鎖C2-C8アルキル基である。あるいは、R2'はHであり得る。
【0052】
特に好ましいモノマーは、(メタ)アクリル酸、メチルメタクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、およびテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートである。特に好ましいモノマーは、メタクリル酸、メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレートおよびテトラヒドロフルフリルアクリレートである。
【0053】
特に好ましくは、本発明のアクリルバインダーに存在するモノマーは、メタクリル酸、メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-メトキシエチルメタクリレートおよびテトラヒドロフルフリルアクリレートから選択される。
【0054】
さらに好ましい実施形態では、本発明のバインダーは、一般式(III)で定義される1つ以上のモノマーを、モノマーの混合物合計の10質量%から100質量%の量で、より好ましくは40質量%から90質量%の量で、最も好ましくは50質量%から85質量%で含む。
【0055】
さらなる実施形態では、アクリルバインダーでの使用に適したモノマーとしては、シリル(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0056】
好ましい実施形態では、本発明のアクリルバインダーポリマーは、式(IV)
【0057】
【化4】
(IV)
【0058】
(式中、R5は、HまたはCH3であり、
6は、各々独立して直鎖または分岐C1-4アルキル基から選択され、
7は、各々独立して直鎖または分岐C1-20アルキル基、C3-12シクロアルキル基、C6-20アリール基および-OSi(R83基からなる群から選択され、
各R8は、独立して直鎖または分岐C1-4アルキル基であり、
pは、0から5の整数である。)
で表される少なくとも1つのモノマーの残基を含む。
【0059】
「アルキル基」という用語は、メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基などの直鎖アルキル基も分岐アルキル基も含むことを意図している。特に好ましいシクロアルキル基としては、シクロヘキシル基および置換シクロヘキシル基が挙げられる。
【0060】
置換アリール基の例としては、フェニル基が挙げられる。
【0061】
さらに好ましい実施形態では、本発明のバインダーは、一般式(IV)で定義されるシリルエステル官能性を有する1つ以上のモノマーを、モノマーの混合物合計の1質量%から80質量%の量で、より好ましくは20質量%から70質量%の量で、最も好ましくは40質量%から65質量%で含む。
【0062】
一般式(IV)で定義されるシリル(メタ)アクリレートモノマーの例としては、国際公開第2014/064048号公報に記載のトリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ-n-ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリイソブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-tert-ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ-sec-ブチルシリル(メタ)アクリレート、tert-ブチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、テキシルジメチル(メタ)アクリレート、tert-ブチルジフェニルシリル(メタ)アクリレート、1,1,3,3,5,5,7,7,7-ノナメチル-1-テトラシロキサニル(メタ)アクリレート、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0063】
好ましいシリル(メタ)アクリレートモノマーは、式(II)
【0064】
【化5】
(II)
【0065】
(式中、R10は、HまたはCH3であり、R9は、各々独立して直鎖あるいは分岐C1-C10アルキル基、好ましくは直鎖あるいは分岐C1-C6アルキル基、またはフェニル基である。)
で表される。
【0066】
好ましいモノマーは、アルキルシリル(メタ)アクリレートであり、より好ましくは、トリアルキルシリル(メタ)アクリレートであり、1つ以上のアルキル基は、分岐している。
【0067】
特に好ましいモノマーとしては、トリイソプロピルシリル(メタ)アクリレート、トリイソブチルシリル(メタ)アクリレート、テキシルジメチルシリル(メタ)アクリレートおよびtert-ブチルジフェニルシリル(メタ)アクリレートが挙げられる。トリイソプロピルシリルアクリレートおよびトリイソプロピルシリルメタクリレートが特に好ましい。
【0068】
成分(i)は、好ましくは、2つ以上のモノマーの共重合体である。一実施形態では、アクリルバインダーは、いかなるシリル基も有しない。別の実施形態では、アクリルバインダーは、1つ以上のシリル(メタ)アクリレートモノマーと1つ以上の(メタ)アクリレートモノマーとの共重合体である。別の実施形態では、アクリルバインダーは、1つのシリル(メタ)アクリレートモノマーと2つ以上の(メタ)アクリレートモノマーとの共重合体である。好ましいモノマーは、式(I)および/または(II)で表される。トリイソプロピルシリルアクリレートまたはトリイソプロピルシリルメタクリレートと式(IIIa)で表される少なくとも1つのモノマーとに基づく共重合体の使用が特に好ましい。
【0069】
特に好ましいバインダーは、
メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートおよびメタクリル酸;
メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートおよび2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート;
メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレートおよび2-メトキシエチルメタクリレート;
メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリイソプロピルシリルアクリレートおよびトリイソプロピルシリルメタクリレート
から選択される1つ以上、例えば2つ以上のモノマーのポリマーである。
【0070】
好ましくは、アクリルバインダーは、環状アミドモノマー、特に、構造A-CONR-A(2つのA基が、CONR環(RがH、アルキル基またはアルケニル基)を含む置換もしくは無置換の環を一緒に形成する)の環を含む環状アミドモノマーを含まない。
【0071】
好ましくは、バインダー(i)は、式(I)で表される2つ以上のモノマー単位の共重合体からなるか、または式(I)および(II)で表されるモノマー単位の共重合体からなる。
【0072】
適切なアクリルポリマーは、付加重合または連鎖成長重合などの当該技術分野で知られている重合反応を使用して調製され得る。
【0073】
適切な付加重合技術の例としては、フリーラジカル重合、アニオン重合および適切な制御重合技術が挙げられる。例えば、アクリルポリマーは、モノマー混合物を重合開始剤の存在下で、従来の方式の溶液重合、バルク重合、乳化重合、および懸濁重合などの種々の方法のいずれかにより、重合させることにより、取得され得る。上記のアクリルポリマーを使用してコーティング組成物を調製するときに、ポリマーは、好ましくは、有機溶媒で希釈されて適切な粘度を有するポリマー溶液をもたらす。この観点から、溶液重合を使用してアクリルポリマーを調製することが望ましい。
【0074】
適切なフリーラジカル重合の開始剤の例としては、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)および1,1’-アゾビス(シアノシクロヘキサン)などのアゾ化合物、およびtert-ブチルペルオキシピバル酸、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシドジエチルアセテート、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、ジ-tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、およびtert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-アミルペルオキシピルベート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1’-ジ(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサンおよびジベンゾイルペルオキシドなどの過酸化物が挙げられる。これらの化合物は、単独で、またはその2つ以上の混合物として使用されてもよい。
【0075】
適切な有機溶媒の例としては、キシレン、トルエン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン;ブチルアセテート、tert-ブチルアセテート、アミルアセテート、エチレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル;n-ブタノール、イソブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール;ブトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノールなどのエーテルアルコール;揮発油などの脂肪族炭化水素、および任意に2つ以上の溶媒の混合物が挙げられる。これらの化合物は、単独で、またはその2つ以上の混合物として使用される。
【0076】
アクリルバインダー成分(i)は、上記の1つのポリマーまたは2つ以上のポリマーの混合物を含んでもよい。
【0077】
このように取得されたアクリルバインダーは、好ましくは、3,000から100,000、好ましくは10,000から50,000の質量平均分子量(Mw)を有する。典型的には、数平均分子量(Mn)の値は、1,500から25,000、例えば2,000から15,000である。ポリマーの溶液は、好ましくは、23℃で50P以下、好ましくは20P以下、例えば10P以下の粘度を有する(毎分12回転のLV-2スピンドルまたはLV-4スピンドルを備えたBrookfield DV-1粘度計を使用するASTM D2196-10による)。ポリマー溶液は、好ましくは、5質量%から90質量%、好ましくは15質量%から85質量%、より好ましくは40質量%から75質量%の固形分を有するように調節される。
【0078】
アクリルバインダー成分(i)は、好ましくは、コーティング組成物全体中に乾燥質量に基づいて5.0質量%から40質量%、好ましくは5.0質量%から30質量%、特に10質量%から25質量%の量で存在する。
【0079】
アクリルバインダー成分(i)は、好ましくは、組成物中に合計で2.0質量%から30質量%、好ましくは5.0質量%から30質量%、特に7.5質量%から25質量%の量で存在する。
【0080】
成分(i)がアクリルバインダーの混合物である場合、上記質量パーセントおよび質量比は、アクリルバインダーの合わせた合計を指す。
【0081】
成分(ii)-ロジン成分
バインダー系でのロジンの使用は、十分に確立されている。「ロジン」という用語は、加熱されていかなる揮発成分も蒸発させた植物樹脂抽出物の一般名称である。ロジンの主成分は、樹脂酸、特にアビエチン酸である。ロジン酸は、通常環状である。
【0082】
ロジンは、防汚コーティングの自己研磨特性と機械的特性を調整するために使用できる。本発明の防汚コーティング組成物は、好ましくは、少なくとも0.25質量%、例えば少なくとも1.0質量%のロジンを含む。
【0083】
本発明に使用されるロジンは、下記のように、ロジンまたはその誘導体、例えばその塩などであり得る。
【0084】
ロジン酸の例としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマル酸、ピマル酸、イソピマル酸、サンダラコピマリン酸、コミュン酸、メルクス酸、セコデヒドロアビエチン酸、およびサンダラコピマリン酸を含むサンダラック樹脂、ジヒドロアガタリック酸、ジヒドロアガソリック酸、メチルピニホル酸、コミュン酸およびジヒドロアガト酸が挙げられる。
【0085】
好ましくは、存在するロジンは、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、セコデヒドロアビエチン酸、ピマル酸、イソピマル酸、レボピマル酸、パラストリン酸、サンダラコピマリン酸、コミュン酸およびその誘導体から選択されるロジン酸を含む。
【0086】
本発明で使用され得るロジン誘導体としては、国際公開第97/44401号公報に記載の水添ロジンおよび部分水添ロジン、不均化ロジン、二量体化ロジン、高分子化ロジン、ロジンのマレイン酸エステル、ロジンのフマル酸エステル、ロジンのグリセロールエステル、ロジンのメチルエステル、ロジンのペンタエリスリトールエステルおよびロジンの他のエステルおよび水添ロジン、およびロジン酸銅塩、ロジン酸亜鉛塩、ロジン酸カルシウム塩、ロジン酸マグネシウム塩などのロジンの金属塩およびロジンの他のロジン酸金属塩および高分子化ロジンなどが挙げられる。
【0087】
好ましくは、本発明の防汚コーティング組成物中に存在するロジンまたはロジン誘導体は、ガムロジンである。
【0088】
防汚組成物全体は、好ましくは、0.5質量%から30質量%(乾燥固形物)、好ましくは0.5質量%から20質量%、より好ましくは1.0質量%から15質量%(乾燥固形物)のロジン材料を含む。
【0089】
防汚組成物全体は、好ましくは、合計で0.25質量%から20質量%、好ましくは0.5質量%から15質量%のロジン材料を含む。
【0090】
乾燥質量に基づく成分(i):(ii)の質量比は、好ましくは、95:5から50:50の範囲にある。
【0091】
乾燥質量に基づく成分(ii):(iv)の質量比は、好ましくは、95:5から30:70、特に90:10から30:70、例えば85:15から35:65の範囲にある。いくつかの実施形態では、成分(ii)は、好ましくは、成分(iv)に対して過剰である、すなわち成分(ii):(iv)の質量比は>50:50である。
【0092】
成分(ii)がロジンまたはロジン誘導体の混合物である場合、上記質量パーセントおよび質量比は、このような成分の合わせた合計を指す。
【0093】
成分(iii)-海洋防汚剤
成分(iii)は海洋防汚剤である。防汚剤、生理活性物質、防汚剤、殺生物剤、毒物という用語は、業界では、表面の海洋汚損を防止するために作用する既知の化合物を説明するために使用される。本発明の防汚剤は海洋防汚剤である。無機海洋防汚剤の例としては、酸化第一銅および酸化第二銅などの酸化銅、銅ニッケル合金などの銅合金、チオシアン酸銅、硫化銅などの銅塩などの銅および銅化合物、およびメタほう酸バリウムが挙げられる。
【0094】
酸化第一銅材は、0.1μm-70μmの一般的な粒径分布および1μm-25μmの平均粒度(d50)を有する。酸化第一銅材は、表面酸化および表面固化を防止するための安定化剤を含んでもよい。市販の酸化第一銅の例としては、Nordox AS製のNordox Cuprous Oxide Red Paint Grade, Nordox XLT、Furukawa Chemicals Co., Ltd.製のCuprous oxide、American Chemet Corporation製のRed Copp 97N、Purple Copp、Lolo Tint 97N、Chemet CDC、Chemet LD、Spiess-Urania製のCuprous Oxide Red、Taixing Smelting Plant Co., Ltd.製のCuprous oxide Roast、 Cuprous oxide Electrolyticが挙げられる。
【0095】
有機金属海洋防汚剤の例としては、亜鉛2-ピリジンチオール-1-オキシド[亜鉛ピリチオン];銅2-ピリジンチオール-1-オキシド[銅ピリチオン]、酢酸銅、ナフテン酸銅、8-ヒドロキシキノリンド[銅オキシン銅]、ノニルフェノールスルホン酸銅、ビス(ドデシルベンゼンスルホン酸)ビス(エチレンジアミン)銅、銅(II)ビス(ペンタクロロフェノラート)などの有機銅化合物;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛[ジラム]エチレンビス(ジチオカルバミド酸)亜鉛[ジネブ]、エチレン-ビス-ジチオカルバシン酸マンガン[マネブ]、亜鉛塩で錯体化したエチレン-ビス-ジチオカルバシン酸マンガン[マンコゼブ]などのジチオカルバメート化合物が挙げられる。
【0096】
有機海洋防汚剤の例としては、2-(tert-ブチルアミノ)-4-(シクロプロピルアミノ)-6-(メチルチオ)-1,3,5-トリアジン[シブトリン]、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンゾイソチアゾ-ル-3-オン[DCOIT]、2-(チオシアナートメチルチオ)-1,3-ベンゾチアゾール[ベンゾチアゾール]、3-ベンゾ[b]チエン-2-イル-5,6-ジヒドロ-1,4,2-オキサチアジン4-オキシド[ベトキサジン]、および2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルホニル)ピリジンなどの複素環化合物;3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素[ジウロン]などの尿素誘導体;N-(ジクロロフルオロメチルチオ)フタルイミド、N-ジクロロフルオロメチルチオ-N’、N’-ジメチル-N-フェニルスルファミド[ジクロロフルアニド]、N-ジクロロフルオロメチルチオ-N’、N’-ジメチル-N-p-トリルスルファミド[トリルフルアニド]およびN-(2,4,6-トリクロロフェニル)マレイミドなどのカルボン酸、スルホン酸、スルフェン酸のアミドおよびイミド;ピリジン-トリフェニルボラン、アミントリフェニルボラン、3-ヨード-2-プロピニル=N-ブチルカルバマート[ヨードカルブ]、2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル[クロロタロニル]、ジヨードメチル(4-メチルフェニル)スルホンおよび4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル[トラロピリル]などの他の有機化合物が挙げられる。
【0097】
海洋防汚剤の他の例は、テトラアルキルホスホニウムハロゲン化物、グアニジン誘導体、4-[1-(2,3ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール[メデトミジン]および誘導体などのイミダゾール含有化合物、アベルメクチンおよびその誘導体、例えばイベルメクチン、スピノサドおよびその誘導体、例えばスピノサド、カプサイシンおよびその誘導体、例えばフェニルカプサイシンなどの大環状ラクトン、およびオキシダーゼ、タンパク分解性、ヘミセルロース分解性、セルロース分解性、脂肪分解性、およびデンプン分解性の活性酵素などの酵素であってもよい。
【0098】
好ましい防汚剤は、酸化第一銅、チオシアン酸銅、亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン、エチレンビス(ジチオカルバミド酸)亜鉛[ジネブ]、2-(tert-ブチルアミノ)-4-(シクロプロピルアミノ)-6-(メチルチオ)-1,3,5-トリアジン[シブトリン]、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン[DCOIT]、N-ジクロロフルオロメチルチオ-N’、N’-ジメチル-N-フェニルスルファミド[ジクロロフルアニド]、N-ジクロロフルオロメチルチオ-N’、N’-ジメチル-N-p-トリルスルファミド[トリルフルアニド]、4-[1-(2,3ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール[メデトミジン]および4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル[トラロピリル]である。
【0099】
特に好ましい防汚剤は、酸化第一銅、チオシアン酸銅、亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン、エチレンビス(ジチオカルバミド酸)亜鉛[ジネブ]、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン[DCOIT]、4-[1-(2,3ジメチルフェニル)エチル]-1H-イミダゾール[メデトミジン]および4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリル[トラロピリル]である。
【0100】
海洋防汚剤は、単独で、または種々の海洋汚損生物に対して作用する種々の防汚剤の混合物として使用されてもよい。防汚剤の混合物が一般に好ましい。1つの好ましい防汚剤の混合物は、フジツボ、ハオリムシ、コケムシおよびヒドロ虫などの海洋無脊椎動物、および藻類(海藻および珪藻)などの植物およびバクテリアに対して活性である。これらの海洋防汚剤の使用は、防汚コーティングで知られており、それらの使用は、当業者になじみがあるであろう。
【0101】
本発明の一実施形態では、好ましくは、防汚剤としては、銅含有殺生物剤が挙げられる。このような組成物は、好ましくは、酸化第一銅および/またはチオシアン酸銅と、銅ピリチオン、エチレンビス(ジチオカルバミド酸)亜鉛および4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オンから選択される1つ以上の薬剤との組合せを含む。
【0102】
本発明の別の実施形態では、防汚コーティング組成物は、無機銅防汚剤を含まない。このような組成物は、好ましくは、4-ブロモ-2-(4-クロロフェニル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ピロール-3-カルボニトリルおよび/またはメデトミジンと、亜鉛ピリチオン、エチレンビス(ジチオカルバミド酸)亜鉛および4,5-ジクロロ-2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オンから選択される1つ以上の薬剤との組合せを含む。
【0103】
本発明の防汚組成物中の海洋防汚剤の(乾燥質量に基づく)総量は、好ましくは、0.1質量%から70質量%、例えば5質量%から55質量%、特に15質量%から50質量%の範囲にある。これらの多くの量は、酸化第一銅が成分(iii)の一部(または全部)として含まれる場合に特に適切である。
【0104】
本発明の防汚組成物中の海洋防汚剤の量は、好ましくは、20質量%から60質量%、例えば20質量%から55質量%、特に20質量%から50質量%(すなわち溶媒も存在する場合)の範囲にある。これらの量は、酸化第一銅が成分(iii)の一部(または全部)として含まれる場合に特に適切である。
【0105】
成分(iii)の量は、最終用途と使用される海洋防汚剤に応じて変化するであろうことが理解されよう。無機銅化合物が回避される場合に必要な防汚剤の量(質量%)は、はるかに少ない。
【0106】
実質的に無機銅化合物を含まない、本発明の防汚組成物中の海洋防汚剤の量は、好ましくは、0.1質量%から20質量%、例えば0.2質量%から15質量%(乾燥固形物)の範囲にある。
【0107】
実質的に無機銅化合物を含まない、本発明の防汚組成物中の海洋防汚剤の量は、好ましくは、0.1質量%から30質量%、例えば0.2質量%から20質量%の範囲にある。
【0108】
成分(iii)が防汚剤の混合物である場合、上記質量パーセントおよび質量比は、防汚剤の合わせた総質量を指す。
【0109】
場合により、海洋防汚剤は、カプセル化されるか不活性担体に吸着されるか制御放出のための他の材料に結合されてもよい。これらのパーセントは、存在する活性防汚剤の量を指し、したがって使用されるいかなる担体も指さない。
【0110】
成分(iv)-モノカルボン酸
成分(iv)は、液体のC12-C24モノカルボン酸またはその塩、すなわち、単一の-COOH部分を分子またはその塩内に含む酸である。このような酸は、酸の「頭部基」および非極性の「尾部基」を含み、それらは、好ましくは、炭素原子の分岐鎖である。モノカルボン酸は、好ましくは、C、HおよびOの原子のみを含む。
【0111】
本発明者らは、酸の適切な選択により、上記セクションに記載のロジンの存在と組み合わせて、酸成分(iv)を含まない比較組成物よりも溶脱層形成の制御が改善された(薄い)防汚組成物を取得できることを立証した。さらに、酸成分を含む組成物は、塗料の粘度を維持するか、減らしさえする間に同様のレベルの研磨を示す。
【0112】
成分(iv)は、液体の非環式飽和C12-C24モノカルボン酸または液体の非環式分岐C12-C24モノカルボン酸から選択される1つ以上のモノカルボン酸を含んでもよい。したがって、酸は、直鎖不飽和カルボン酸であってはいけない。好ましくは、酸は、飽和している。
【0113】
モノカルボン酸は、理想的には、式R11COOH(式中、R11は、C11-23非環式分岐アルキル基あるいはアルケニル基またはC11-23非環式飽和直鎖あるいは分岐アルキル基である。)で表される。好ましくは、R11は、C11-23非環式分岐アルキル基である。
【0114】
最も好ましくは、モノカルボン酸は、分岐C12-24脂肪酸またはその混合物である。
【0115】
酸は、室温と室圧(23℃および1atm)で液体である。酸の混合物が使用される場合、それは、室温と室圧(23℃および1atm)で液体である必要がある混合物である。ロジンは室温で固体であるため、成分(iv)はロジンであるはずがないことが理解されよう。
【0116】
好ましくは、酸成分は、分岐している。分岐酸は、その尾部基に第3級炭素原子または第4級炭素原子を含む必要がある。本発明で使用される酸の多くは、天然源由来であり、その場合、遊離形では、それらは通常、種々の分岐度を有する異なる鎖長の酸の混合物として存在することが理解されよう。使用される酸が成分の混合物である場合、酸は、50%よりも大きな分岐度、好ましくは70%よりも大きな分岐度、80%よりも大きな分岐度、またはさらに90%よりも大きな分岐度を有してもよい。ここで、パーセントは、質量%である。例として、少なくとも50%の分岐度を有するC18酸成分は、直鎖C18酸(n-ステアリン酸、n-オレイン酸、n-リノール酸など)の50%以下を含み、残りは、分岐C18酸(一般に「イソステアリン酸」、「イソオレイン酸」、「イソリノール酸」など)であろう。
【0117】
好ましい態様では、酸は、C14-C20モノカルボン酸、好ましくはC16-C20モノカルボン酸、特にC16-18モノカルボン酸である。好ましくは、炭素鎖は、偶数個の炭素原子を含む。好ましくは、酸は、350g/mol未満、特に320g/mol未満、特に300g/mol未満の分子量を有する。
【0118】
好ましい態様では、酸は、310未満、特に290未満、例えば250未満、またはさらに230未満の酸価を有する。「酸価」は、周知のパラメータであり、1グラムの酸を中和するために必要なKOHのミリグラムの質量である(ISO 660:2009)。
好ましい態様では、酸は、50未満、例えば40未満、30未満、または20未満のヨウ素価を有する。いくつかの実施形態では、酸は、0のヨウ素価を有する飽和酸であってもよい。「ヨウ素価」は、周知のパラメータであり、100グラムの酸と反応するヨウ素のグラムの質量である(AOCS Tg 1a-64)。
【0119】
本発明で使用するための特に好ましい酸としては、イソパルミチン酸またはイソステアリン酸またはその混合物からなる群から選択される1つ以上が挙げられる。各場合、酸は、天然であってもよく、または合成であってもよい。イソステアリン酸とイソパルミチン酸のブレンドが、Oleon製のRadiacid 0906、Radiacid 0907およびRadiacid 0909という名の下に適切な分岐度で入手可能である。分岐イソステアリン酸の特に高いグレードは、Nissan Chemicals製の製品「Isostearic acid N」である。
【0120】
特に好ましい酸は、イソステアリン酸およびイソパルミチン酸であり、各場合、70%よりも大きな分岐度と30未満のヨウ素価を有する。特に適切な成分は、Nissan Chemicals製の製品のIsostearic acid NおよびOleon製の製品のRadiacid 0906、0907または0909である。
【0121】
イソステアリン酸またはイソパルミチン酸は、異なる分岐度を有し得る。より高分岐のイソステアリン酸は、非常に低い融点を示す。CAS番号2724-58-5の16-メチルヘプタデカン酸は、低い分岐度と非常に高い融点を有する。多くの市販の(専門的な)イソステアリン酸は、異なる分岐度を有するイソステアリン酸(分岐C18酸)の混合物であるため液体である。本発明に使用されるイソステアリン酸としては、CAS番号30399-84-9下のものが挙げられる。
【0122】
本発明に使用されるイソパルミチン酸としては、CAS番号25354-97-6下のものが挙げられる。
【0123】
成分(iv)が酸の混合物である場合、上記質量パーセントおよび質量比は、酸の合わせた合計を指す。しかし、これらの比率はロジン成分(ii)を含まない。
【0124】
金属塩が存在する場合、いかなる酸も塩を形成できることが理解されよう。本発明者らは、酸をその酸形で添加することを提案しているが、酸をその塩形で添加することもできる。好ましい酸塩は、Cu塩およびZn塩である。また好ましくは、防汚組成物は、実質的にモノカルボン酸の銀塩を含まない。実質的にないとは、防汚組成物が酸の銀塩を1000ppm未満、好ましくは500ppm未満含むことを意味する。最も好ましくは、防汚組成物は、モノカルボン酸の銀塩が完全にない。酸はまた、組成物中で塩形に変換してもよい。組成物に添加された酸/組成物中の酸の質量%は、酸が酸形にあると仮定して計算されるべきである。酸塩が組成物の成分(iv)として使用される場合、23℃および1atmで液体であるにちがいないのは、塩の対応する遊離酸である。
【0125】
本発明では、防汚組成物全体は、好ましくは、成分(iv)の0.25質量%から7.5質量%、好ましくは0.5質量%から7.0質量%、好ましくは0.5質量%から5.0質量%、例えば0.75質量%から3.0質量%を含む。
【0126】
したがって、別の態様から見ると、本発明は、
(i) 5.0質量%から40質量%のアクリルバインダーと、
(ii) 0.5質量%から30質量%のロジンまたはその誘導体と、
(iii) 0.5質量%から70質量%の海洋防汚剤成分と、
(iv) 0.5質量%から10質量%のモノカルボン酸成分と、
を含む上記の海洋防汚コーティング組成物を提供する。
【0127】
さらなる実施形態では、モノカルボン酸成分(iv)は、ロジン成分に完全に置き換えることができることが想定される。別の態様から見ると、本発明は、
(i) (メタ)アクリレートおよび/またはシリル(メタ)アクリレートモノマーを含む少なくとも1つのポリマーを含むアクリルバインダーと、
(iii) 1つ以上の海洋防汚剤と、
(iv) 液体の非環式飽和C12-C24モノカルボン酸または液体の非環式分岐C12-C24モノカルボン酸から選択される1つ以上のモノカルボン酸と、
を含む、ロジンまたはその誘導体を含まない、海洋防汚コーティング組成物を提供する。
【0128】
上記の好ましい限定が、この実施形態にあてはまる。
【0129】
他の組成物成分
本発明の防汚コーティング組成物は、好ましくは、45質量%超、例えば50質量%超、例えば60質量%超の固形分を有するべきである。いくつかの実施形態では、固形分は、75質量%超、例えば80質量%超であってもよい。
【0130】
好ましくは、本発明の防汚コーティング組成物は、420g/L未満、より好ましくは400g/L未満、例えば380g/L未満、特に350g/L未満の揮発性有機化合物(VOC)の含有量を有するべきである。VOC含有量は、計算(ASTM D5201-01)または測定(EPA法24)され得る。
【0131】
本発明による防汚コーティング組成物は、任意に、他のバインダー、顔料、増量剤および充填剤、安定剤、脱水剤および乾燥剤、添加剤、溶媒およびシンナーの中から選択される1つ以上の成分を含む。
【0132】
追加のバインダーを使用して防汚コーティングフィルムの自己研磨特性および機械的特性を調整できる。本発明による防汚コーティング組成物にバインダー(i)に加えて使用できるバインダーの例としては、炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、またはジシクロペンタジエン系炭化水素樹脂;
【0133】
酸基が、一価の有機残基に結合した二価金属または水酸基残基に結合した二価金属で塞がれている酸官能性ポリマー;
ポリ(N-ビニルピロリドン)共重合体などの親水性共重合体;
ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリ(エチルビニルエーテル)、ポリ(イソブチルビニルエーテル)、ポリ(塩化ビニル-コ-イソブチルビニルエーテル)などのビニルエーテルポリマーおよびビニルエーテル共重合体;
ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(2-ヒドロキシ酪酸)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)、ポリ(4-ヒドロキシ吉草酸)、ポリカプロラクトンなどの脂肪族ポリエステル、および上記単位から選択される単位の2つ以上を含む脂肪族ポリエステル共重合体;金属含有ポリエステルおよびポリオキサレートが挙げられる。しかし、好ましくは、バインダーは、本発明によるアクリルポリマー(およびロジン成分)のみから形成される。
【0134】
本発明の防汚コーティング組成物は、任意に、水捕捉剤または乾燥剤とも呼ばれる脱水剤を含む。好ましくは、脱水剤は、水が存在する組成物から水を除去する化合物である。脱水剤は、顔料および溶媒などの原材料から導入された水分、または防汚コーティング組成物中のカルボン酸化合物と二価および三価金属化合物との間の反応により形成された水を除去することにより、防汚コーティング組成物の貯蔵安定性を改善する。防汚コーティング組成物に使用され得る脱水剤および乾燥剤としては、有機および無機の化合物が挙げられる。
【0135】
脱水剤は、水を吸収するか、水を結晶水として結合し、よく乾燥剤とも呼ばれる吸湿材であり得る。乾燥剤の例としては、硫酸カルシウム半水和物、無水硫酸カルシウム、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸亜鉛、モレキュラーシーブおよびゼオライトが挙げられる。
【0136】
脱水剤は、水と化学的に反応する化合物であり得る。水と反応する脱水剤の例としては、トリメチルオルトギ酸、トリエチルオルトギ酸、トリプロピルオルトギ酸、トリイソプロピルオルトギ酸、トリブチルオルトギ酸、トリメチルオルト酢酸、トリエチルオルト酢酸、トリブチルオルト酢酸、トリエチルオルトプロピオン酸などのオルトエステル;ケタール;アセタール;エノールエーテル;トリメチルホウ酸、トリエチルホウ酸、トリプロピルホウ酸、トリイソプロピルホウ酸、トリブチルホウ酸およびトリ-tert-ブチルホウ酸などのオルトホウ酸塩;トリメトキシメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、テトラエトキシシランおよびエチルポリケイ酸などのオルガノシランが挙げられる。
【0137】
防汚コーティング組成物の貯蔵安定性に寄与する他の安定剤は、特許出願国際公開第2014/064049号公報に記載のビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドおよびポリ(1,3,5-トリイソプロピルフェニレン-2,4-カルボジイミド)などの単量体カルボジイミド化合物および高分子カルボジイミド化合物などが挙げられる。
【0138】
好ましい脱水剤は、水と化学的に反応するものである。特に好ましい脱水剤は、オルガノシランである。
【0139】
顔料の例は、二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、グラファイトおよびカーボンブラックなどの無機顔料、フタロシアニン化合物およびアゾ顔料などの有機顔料である。
【0140】
増量剤および充填剤の例は、ドロマイト、プラストライト、方解石、石英、重晶石、マグネサイト、霰石、シリカ、ウォラストナイト、タルク、亜塩素酸塩、雲母、カオリンおよび長石などの鉱物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウムおよびシリカなどの合成無機化合物;コーティングありなしの中空ガラスビーズおよび中実ガラスビーズ、コーティングありなしの中空セラミックビーズおよび中実セラミックビーズ、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート-コ-エチレングリコールジメタクリレート)、ポリ(スチレン-コ-エチレングリコールジメタクリレート)、ポリ(スチレン-コ-ジビニルベンゼン)、ポリスチレン、ポリ(塩化ビニル)などの高分子材料のコーティングありなしの中空ビーズ、多孔性ビーズおよびコンパクトビーズなどの高分子無機微粒子である。
【0141】
防汚コーティング組成物に添加され得る添加剤の例は、強化剤、チキソトロープ剤、増粘剤、沈降防止剤、可塑剤および溶媒である。
【0142】
強化剤の例は、フレークおよび繊維である。繊維としては、国際公開第00/77102号公報に記載のシリコン含有繊維、炭素繊維、酸化物繊維、カーバイド繊維、窒化物繊維、硫化物繊維、リン酸塩繊維、鉱物繊維などの天然無機繊維および合成無機繊維;金属繊維;セルロース繊維、ゴム繊維、アクリル繊維、ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、ポリエステル繊維、ポリヒドラジド繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエチレン繊維などの天然有機繊維および合成有機繊維などが挙げられる。好ましくは、繊維は、25μmから2,000μmの平均長さと1μmから50μmの平均厚さを有し、平均長さと平均厚さとの間の比率は、少なくとも5である。
【0143】
チキソトロープ剤、増粘剤、沈降防止剤の例は、ヒュームドシリカ、有機変性粘土、アミドワックス、ポリアミドワックス、アミド誘導体、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、水添ヒマシ油ワックス、エチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムおよびそれらの誘導体などのシリカである。
【0144】
可塑剤の例は、塩素化パラフィン、フタル酸、リン酸エステル、スルホンアミド、アジピン酸およびエポキシ化植物油である。
【0145】
一般に、これらの任意の成分のいずれかは、防汚組成物の0.1質量%から50質量%、通常0.20質量%から20質量%、好ましくは0.50質量%から15質量%の量で存在し得る。これらの任意の成分の量は、最終用途に応じて変化するであろうことが理解されよう。
【0146】
非常に好ましくは、防汚組成物は溶媒を含む。この溶媒は、好ましくは揮発性であり、好ましくは有機である。それは、0.05超(n-BuAc=1)の蒸発速度を有してもよい。
【0147】
適切な有機溶媒の例としては、キシレン、トルエン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン;ブチルアセテート、tert-ブチルアセテート、アミルアセテート、エチレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル;n-ブタノール、イソブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール;ブトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノールなどのエーテルアルコール;揮発油などの脂肪族炭化水素;および任意に2つ以上の溶媒の混合物が挙げられる。これらの化合物は、単独で、またはそれらの2つ以上の混合物として使用される。
【0148】
好ましい溶媒は、任意に1-メトキシ-2-プロパノールまたはブチルアセテートとともに芳香族溶媒、特にキシレンと1-メトキシ-2-プロパノールである。
【0149】
溶媒の量は、好ましくは、できるだけ少ない。溶媒含有量は、組成物の最大50質量%、好ましくは組成物の最大45質量%、例えば最大40質量%であってもよいが15質量%以下、例えば10質量%以下であってもよい。この場合も、当業者は、溶媒含有量が、存在する他の成分とコーティング組成物の最終用途に応じて変化することを理解するであろう。
【0150】
あるいは、コーティングは、コーティング組成物中のフィルム形成成分用有機非溶媒または水性分散液に分散され得る。
【0151】
本発明の防汚コーティング組成物は、汚損を受ける任意の物体の表面の全部または一部に塗布され得る。表面は、永久にまたは断続的に水面下(例えば潮の動き、種々の積荷作業またはうねりにより)にあり得る。物体の表面は、通常、船舶の船体または石油プラットフォームあるいはブイなどの固定した海の物体の表面であり得る。コーティング組成物の塗布は、任意の便利な手段により、例えばコーティングを物体に塗装(例えばブラシまたはローラーで)またはスプレーすることにより達成され得る。典型的には、表面は、コーティングを可能にするために海水から分離される必要があるであろう。コーティングの塗布は、当該技術分野で従来知られているように達成され得る。
【0152】
防汚コーティングを物体(船体など)に塗布するときに、物体の表面は、通常単一の防汚コーティングのみでは保護されない。表面の性質に応じて、防汚コーティングは、既存のコーティングシステムに直接適用され得る。このようなコーティングシステムは、種々の一般タイプ(例えばエポキシ、ポリエステル、ビニルまたはアクリル、またはそれらの混合物)の塗料の数層を含んでもよい。
【0153】
表面が以前の塗布から、きれいでそのままの防汚コーティングである場合、新たな防汚塗料は、直接、通常1つまたは2つ、例外的な場合にはより多くのコーティングとして塗布され得る。
【0154】
あるいは、当業者は、コーティングされていない表面(例えばスチール、アルミニウム、プラスチック、複合材、ガラス繊維または炭素繊維)で始めてもよい。このような表面を保護するために、フルコーティングシステムは、通常、防食コーティングの1つまたは2つの層、タイコートの1つの層および防汚塗料の1つまたは2つの層を含むであろう。当業者は、これらのコーティング層になじみがあるであろう。
【0155】
例外的な場合には、追加の防汚塗料層が塗布されてもよい。
【0156】
したがって、さらなる実施形態では、本発明は、そのうえにコーティングされたエポキシプライマーなどの防食コーティング層、タイ層および上記の防汚コーティング組成物を有する基材を提供する。
【0157】
実験セクションに記載の「溶脱層」試験に従って基材に塗布されると、12か月後の溶脱層は、好ましくは、75μm未満、好ましくは70μm未満、より好ましくは65μm未満であり、場合によっては、さらに60μm未満であり得る。
【0158】
実験セクションに記載の「研磨」試験に従って基材に塗布されると、12か月後のフィルム厚さ減少量は、好ましくは、10μmから250μm、例えば10μmから150μm、例えば15μmから100μm、例えば20μmから80μmの範囲にある。
【0159】
本発明は、ここで以下の非限定的な実施例を参照して定義されるであろう。
【0160】
測定法
ポリマー溶液の粘度の測定
ポリマーの粘度は、毎分12回転のLV-2スピンドルまたはLV-4スピンドルを備えたBrookfield DV-I Prime viscometerを使用するASTM D2196:15試験法Aに従って測定される。ポリマーは、測定前に23.0℃±0.5℃に調整される。
【0161】
ポリマー溶液の固形分の測定
ポリマー溶液の固形分は、ISO3251:2008に従って測定される。0.5g±0.1gの試験サンプルを取り出し、105℃の換気オーブンで3時間乾燥させる。残留物質の質量は、不揮発性物質(NVM)であるとみなす。不揮発性物質の含有量は、質量パーセントで表現される。示した値は、3つの類例の平均値である。
【0162】
ポリマーの平均分子量分布の測定
ポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により特徴付けられる。分子量分布(MWD)は、Agilent製のシリーズの2つのPLgel5μmMixed-D columnsを備えたMalvern Omnisec Resolve and Reveal systemを使用して測定された。カラムは、narrowポリスチレン標準を使用する従来の較正により較正された。
【0163】
サンプルを、25mgの乾燥ポリマーに対応する量の5mLTHFポリマー溶液に溶解することにより調製した。サンプルを、GPC測定のためのサンプリングの前に室温で最小3時間維持した。分析の前に、サンプルを0.45μmナイロンフィルターで濾過する。質量平均分子量(Mw)およびMw/Mnとして示した多分散性指数(PDI)を記載する。
【0164】
分析条件を以下に示す。
【0165】
【表1】
【0166】
ガラス転移温度の測定
ガラス転移温度(Tg)を示差走査熱量計(DSC)測定により取得する。DSC測定をTA Instruments製DSC Q200で実行した。サンプルを100μmの間隙サイズのアプリケーターを備えたガラスパネル上へのドローダウンにより調製した。ガラスパネルを加熱キャビネットで、23℃で24時間乾燥させ、50℃で24時間乾燥させた。乾燥ポリマー材料をガラスパネルから削り取り、非密閉蓋で密封する前に約10mgをアルミ製のパンに移した。測定の間、空き缶を参照として20℃/分の加熱速度と10℃/分の冷却速度でスキャンを記録した。データを、TA Instruments製Universal Analysis softwareを使用して処理した。
【0167】
第2の加熱の、ASTM E1356-08で定義されるガラス転移範囲の変曲点を、ポリマーのTgとして記載する。
【0168】
防汚コーティング組成物の調製のための一般手順
表3から表7に示した比率で成分を混合した。250mlの塗料缶内でガラスビーズ(直径約2mm)の存在下振動シェーカーを使用して混合物を15分間分散させた。試験前にガラスビーズを濾過した。
【0169】
Solvesso100をBrenntagから購入した。
【0170】
VOCの測定
ASTM D5201-01に従って防汚コーティング組成物のVOC(g/L)を計算した。
【0171】
円錐平板粘度計を使用した塗料粘度の測定
10000s-1の剪断速度で動作し0Pから10Pの粘度測定範囲を提供する23℃の温度に設定した円錐平板粘度計を使用してISO 2884-1:1999に従って防汚コーティング組成物の粘度を測定した。示した結果は、3つの測定値の平均値である。結果を表8から表10に示す。
【0172】
コーティングフィルムの硬度-Konig振り子硬度
ASTM D4366-95試験法Aに従って振り子硬度試験を実行した。防汚コーティング組成物の各々を300μmの間隙サイズのフィルムアプリケーターを使用して透明なガラス板(75mm×150mm×2mm)に塗布した。コーティングフィルムを23℃で3日間、50℃のオーブンで3日間乾燥させた。得られた乾燥コーティングフィルムのコーティングフィルム硬度を、Erichsen299/300振り子硬度試験器を使用して23℃で測定した。結果(カウント数)を表8に示す。
【0173】
海中の防汚コーティングフィルムの研磨量と溶脱層形成量の測定
コーティングフィルムのフィルム厚さの減少を測定することにより研磨量を測定する。この試験のためにPVCディスクが使用される。コーティング組成物は、フィルムアプリケーターを使用して、放射ストライプとしてディスクに塗布される。非研磨塗料の小さなエリアを塗布して研磨量の測定のための参照として使用する。PVCディスクをシャフトに取り付け、海水が流れる容器内で回転させる。一定の温度(25℃±2℃)の天然の濾過海水が使用される。
【0174】
12か月の回転後、各塗料フィルム(なおPVCに付着している)のサンプルを切り抜いてエポキシ樹脂に埋め込む。硬化後、コーティングフィルム(非研磨参照エリアを含む)の断面が光学顕微鏡で調べられ得るようにサンプルを研磨する。研磨量は、非研磨参照下のエリアと比較してフィルム厚さの減少として測定される。溶脱層は、そのままの塗料フィルムとは明白な色差を有し、また測定される。色変化は、溶脱層からの可溶性顔料の溶解および放出による。すべての測定は、デジタルカメラと調整されたソフトウェアを使用して行われる。結果を表8から表10に示す。
【0175】
実施例
アクリル共重合体溶液A-1の調製
19.20部のキシレンと7.70部の1-メトキシ-2-プロパノールを、撹拌機、リフラックスコンデンサー、窒素注入口および供給口を備えた温度制御反応容器に充填した。反応容器を加熱して85℃に維持した。53.80部のn-ブチルアクリレート、3.40部のn-ブチルメタクリレート、2.40部のメチルメタクリレート、0.40部のメタクリル酸、0.93部の2,2’-アゾジ(2-メチルブチロニトリル)および8.00部のキシレンのプレミックスを調製して窒素雰囲気下2時間と30分にわたって一定速度で反応容器に充填した。さらに1時間の反応後、0.20部の2,2’-アゾジ(2-メチルブチロニトリル)および4.00部のキシレンの追加開始剤溶液の後添加を15分にわたって一定速度で反応容器に充填した。反応容器を反応温度でさらに1時間維持し、次いで室温に冷却した。成分量を質量部で示す。
【0176】
共重合体溶液A-1は、327cPの粘度、61.7質量%の不揮発分、Mw36200、PDI3.23およびTg-39℃を有していた。
【0177】
アクリル共重合体溶液A-2の調製
28.80部のキシレンと6.80部の1-メトキシ-2-プロパノールを、撹拌機、リフラックスコンデンサー、窒素注入口および供給口を備えた温度制御反応容器に充填した。反応容器を加熱して95℃に維持した。9.80部のn-ブチルアクリレート、29.50部のメチルメタクリレート、9.80部の2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、0.75部の2,2’-アゾジ(2-メチルブチロニトリル)、5.80部のキシレンおよび4.00部の1-メトキシ-2-プロパノールのプレミックスを調製して窒素雰囲気下2時間と30分にわたって一定速度で反応容器に充填した。さらに1時間の反応後、0.20部の2,2’-アゾジ(2-メチルブチロニトリル)および4.60部のキシレンの追加開始剤溶液の後添加を15分にわたって一定速度で反応容器に充填した。反応容器を反応温度でさらに1時間維持し、次いで室温に冷却した。成分量を質量部で示す。
【0178】
共重合体溶液A-2は、557cPの粘度、51.9質量%の不揮発分、Mw28500、PDI2.88およびTg19℃を有していた。
【0179】
アクリル共重合体溶液A-3の調製
26.10部のキシレンと6.10部の1-メトキシ-2-プロパノールを、撹拌機、リフラックスコンデンサー、窒素注入口および供給口を備えた温度制御反応容器に充填した。反応容器を加熱して105℃に維持した。29.90部のメチルメタクリレート、22.90部の2-メトキシエチルアクリレート、1.65部のジベンゾイルペルオキシド(ジシクロヘキシルフタル酸中50%)、5.90部のキシレンおよび2.90部の1-メトキシ-2-プロパノールのプレミックスを調製して窒素雰囲気下2時間と30分にわたって一定速度で反応容器に充填した。さらに1時間の反応後、0.35部のジベンゾイルペルオキシド(ジシクロヘキシルフタル酸中50%)および4.20部のキシレンの追加開始剤溶液の後添加を15分にわたって一定速度で反応容器に充填した。反応容器を反応温度でさらに1時間維持し、次いで室温に冷却した。成分量を質量部で示す。
【0180】
共重合体溶液A-3は、945cPの粘度、55.5質量%の不揮発分、Mw23600、PDI2.60およびTg23℃を有していた。
【0181】
アクリル共重合体溶液A-4の調製
35.00部のキシレンを、撹拌機、リフラックスコンデンサー、窒素注入口および供給口を備えた温度制御反応容器に充填した。反応容器を加熱して85℃に維持した。16.50部のメチルメタクリレート、3.50部の2-メトキシエチルアクリレート、30.00部のトリイソプロピルシリルアクリレート、0.50部の2,2’-アゾジ(2-メチルブチロニトリル)および5.00部のキシレンのプレミックスを調製して窒素雰囲気下2時間にわたって一定速度で反応容器に充填した。さらに1時間の反応後、0.10部の2,2’-アゾジ(2-メチルブチロニトリル)および5.00部のキシレンの追加開始剤溶液の後添加を15分にわたって一定速度で反応容器に充填した。反応容器を反応温度でさらに2時間維持した。反応容器の温度を120℃に上げ、30分間維持し、次いで室温に冷却した。成分量を質量部で示す。
【0182】
共重合体溶液A-4は、152cPの粘度、50.5質量%の不揮発分、Mw28000、PDI3.61およびTg35℃を有していた。
試験した酸化合物の概観を表2に示す。
【0183】
【表2】
【0184】
【表3】
【0185】
【表4】
【0186】
【表5】
【0187】
【表6】
【0188】
【表7】
【0189】
Coat#1-11、Coat#12-#17およびCoat#18-#20についての溶脱層の結果が、100%ロジンを含む同じタイプの塗料(CE#1、CE#8およびCE#15)についての溶脱層の結果と比較される。他のCE#塗料は、本発明外の酸とともにあるため、比較例である。
【0190】
【表8】
【0191】
表8の結果は、Coat#1からCoat#11で使用された液体のモノカルボン酸が、一般に、CE#1からCE#7で使用されたモノカルボン酸と比較して、より低い塗料粘度を示し、薄い溶脱層を示すことを示す。
【0192】
【表9】
【0193】
表9の結果は、Coat#12からCoat#17で使用された液体のモノカルボン酸が、一般に、CE#8からCE#14で使用されたモノカルボン酸と比較して、より低い塗料粘度を示し、薄い溶脱層を示すことを示す。
【0194】
【表10】
【0195】
表10の結果は、Coat#18からCoat#20で使用された液体のモノカルボン酸が、一般に、CE#15からCE#19で使用されたモノカルボン酸と比較して、より低い塗料粘度を示し、薄い溶脱層を示すことを示す。