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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】エミッタおよび点滴灌漑用チューブ
(51)【国際特許分類】
   A01G 25/02 20060101AFI20230914BHJP
   B05B 1/32 20060101ALI20230914BHJP
   B05B 1/20 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
A01G25/02 601K
B05B1/32
B05B1/20 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020532303
(86)(22)【出願日】2019-07-16
(86)【国際出願番号】 JP2019027851
(87)【国際公開番号】W WO2020022115
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2018140276
(32)【優先日】2018-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018222273
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 好貴
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-042106(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0164185(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 25/02
B05B 1/32
B05B 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
灌漑用液体を流通させるチューブの内壁面における、前記チューブの内外を連通する吐出口に対応する位置に接合されて前記チューブ内の前記灌漑用液体を前記吐出口から定量的に前記チューブ外に吐出するためのエミッタであって、
エミッタ本体と、前記エミッタ本体に収容される台座部とを有し、
前記エミッタ本体は、
前記灌漑用液体を取り入れるための取水部と、
前記取水部に連通し、前記灌漑用液体を減圧させながら流す減圧流路を形成するための減圧流路溝と、
前記減圧流路溝に連通し、前記台座部を収容するための収容部と、
可撓性を有し、前記台座部を前記収容部に収容した状態で、前記チューブ内の灌漑用液体の圧力を受けたときに前記台座部に向かって変形するダイヤフラム部と、
前記吐出口から排出するための前記灌漑用液体を一時的に貯留するための吐出部と、を含み、
前記台座部は、
前記チューブ内の灌漑用液体の圧力を受けた前記ダイヤフラム部が接触する台座と、
一方の開口部が前記台座に開口し、他方の開口部が前記台座と反対側の面に開口し、前記減圧流路溝から前記収容部内に流入した灌漑用液体を前記吐出口に向けて排出するための連通孔と、
灌漑用液体の圧力を受けて変形した前記ダイヤフラム部が接触する前記台座と反対側の面から突出して配置され、前記ダイヤフラム部が灌漑用液体の圧力を受けて前記台座に接触しているときに、前記チューブに接触して、前記台座の前記灌漑用液体の圧力による変形を抑制する、前記連通孔の開口部の周囲に配置されている変形抑制部と、を有
前記変形抑制部は、変形抑制部本体と、排出溝とを含み、
前記排出溝の一方の端部は前記連通孔に連絡しており、他方の端部は前記変形抑制部本体の前記吐出部とは反対側の側面に到達している、
エミッタ。
【請求項2】
前記台座部は、前記台座に配置され、前記ダイヤフラム部が灌漑用液体の圧力を受けて前記台座に接触したときに前記ダイヤフラム部側の開口部が完全に塞がれるように構成されている連通溝をさらに有する、請求項1に記載のエミッタ。
【請求項3】
前記エミッタは、前記エミッタ本体から前記台座部に亘って配置され、前記減圧流路溝と、前記ダイヤフラム部および前記台座の間の空間とを接続する接続流路を有し、
前記エミッタ本体と前記台座部との境界において、前記台座部における前記接続流路の前記エミッタ本体側の開口部は、前記エミッタ本体における前記接続流路の前記台座部側の開口部よりも大きい、請求項1または請求項2に記載のエミッタ。
【請求項4】
灌漑用液体を吐出するための吐出口を有するチューブと、
前記チューブの内壁面の前記吐出口に対応する位置に接合された、請求項1~のいずれか一項に記載のエミッタと、を有する、
点滴灌漑用チューブ。
【請求項5】
前記変形抑制部は、前記ダイヤフラム部が灌漑用液体の圧力を受けていない状態において、前記チューブの内壁面に接触している、請求項に記載の点滴灌漑用チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エミッタおよび当該エミッタを有する点滴灌漑用チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
以前から、植物の栽培方法の一つとして点滴灌漑法が知られている。点滴灌漑法とは、植物が植えられている土壌に点滴灌漑用チューブを配置し、点滴灌漑用チューブから土壌へ、水や液体肥料等の灌漑用液体を滴下する方法である。近年、点滴灌漑法は、灌漑用液体の消費量を最小限にすることが可能であるため、特に注目されている。
【0003】
点滴灌漑用チューブは、灌漑用液体が吐出される複数の貫通孔が形成されたチューブと、当該チューブの内壁面に接合され、各貫通孔から灌漑用液体を吐出するための複数のエミッタ(「ドリッパ」ともいう)とを有する(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
特許文献1には、本体と、ヒンジを中心として本体に対して移動可能なフラップとを含むエミッタが記載されている。このエミッタは、本体と、フラップとが同一の材料で一体成形されている。また、このフラップは、フレーム内に配置された膜(ダイヤフラム)を有する。エミッタが組み立てられた作動状態において、本体の凹部がヒンジを中心に回転したフラップの膜によって覆われる。凹部は、フレームハウジングに設けられたリムを周縁部として本体に形成される。フラップの膜がリムに押しつけられることによって、圧力調整チャンバが形成される。圧力調整チャンバから流出する液体の流量は、圧力変動に起因して膜が弾性的に撓むことによって調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/093882号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のエミッタは、製造コストを抑える観点から、硬度の低い樹脂材料で成形されることがある。この場合、液体の圧力が高いときには、液体の圧力により変形した膜が凹部の底面に接触することで、当該凹部の底面が変形してしまい、圧力調整チャンバから流出する液体の流量を適切に制御できないことがある。
【0007】
本発明の目的は、硬度の低い樹脂材料で成形された場合であっても流量調整機能を適切に発揮できるエミッタおよび点滴灌漑用チューブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエミッタは、灌漑用液体を流通させるチューブの内壁面における、前記チューブの内外を連通する吐出口に対応する位置に接合されて前記チューブ内の前記灌漑用液体を前記吐出口から定量的に前記チューブ外に吐出するためのエミッタであって、エミッタ本体と、前記エミッタ本体に収容される台座部とを有し、前記エミッタ本体は、前記灌漑用液体を取り入れるための取水部と、前記取水部に連通し、前記灌漑用液体を減圧させながら流す減圧流路を形成するための減圧流路溝と、前記減圧流路溝に連通し、前記台座部を収容するための収容部と、可撓性を有し、前記台座部を前記収容部に収容した状態で、前記チューブ内の灌漑用液体の圧力を受けたときに前記台座部に向かって変形するダイヤフラム部と、を含み、前記台座部は、前記チューブ内の灌漑用液体の圧力を受けた前記ダイヤフラム部が接触する台座と、一方の開口部が前記台座に開口し、前記減圧流路溝から前記収容部内に流入した灌漑用液体を前記吐出口に向けて排出するための連通孔と、灌漑用液体の圧力を受けて変形した前記ダイヤフラム部が接触する前記台座と反対側の面から突出して配置され、前記ダイヤフラム部が灌漑用液体の圧力を受けて前記台座に接触しているときに、前記チューブに接触して、前記台座の前記灌漑用液体の圧力による変形を抑制する変形抑制部と、を有する。
【0009】
本発明に係る点滴灌漑用チューブは、灌漑用液体を吐出する吐出口を有するチューブと、前記チューブの内壁面の前記吐出口に対応する位置に接合された、本発明に係るエミッタと、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、硬度の低い樹脂材料で成形された場合であっても流量調整機能を適切に発揮できるエミッタおよび点滴灌漑用チューブを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る点滴灌漑用チューブの断面図である。
図2図2A~Dは、台座部を収容部に収容した後の実施の形態1に係るエミッタの構成を示す図である。
図3図3A、Bは、台座部を収容部に収容した後の実施の形態1に係るエミッタの構成を示す他の図である。
図4図4A~Dは、台座部を収容部に収容する前の実施の形態1に係るエミッタの構成を示す図である。
図5図5A~Dは、実施の形態1の変形例に係るエミッタの構成を示す図である。
図6図6A~Dは、実施の形態1の変形例に係るエミッタの構成を示す他の図である。
図7図7A~Dは、実施の形態1の変形例に係るエミッタの構成を示す他の図である。
図8図8A~Cは、実施の形態1の変形例に係るエミッタの構成を示す他の図である。
図9図9A~Dは、台座部を収容部に収容した後の実施の形態2に係るエミッタの構成を示す図である。
図10図10A、Bは、台座部を収容部に収容した後の実施の形態2に係るエミッタの構成を示す他の図である。
図11図11A~Eは、台座部を収容部に収容する前の実施の形態2に係るエミッタの構成を示す図である。
図12図12A、Bは、台座部を収容部に収容する前の実施の形態2に係るエミッタの構成を示す他の図である。
図13図13A~Cは、台座部を収容部に収容した後の実施の形態3に係るエミッタの構成を示す図である。
図14図14A~Fは、実施の形態3の変形例1~3に係るエミッタの構成を示す図である。
図15図15A~Dは、台座部を収容部に収容した後の実施の形態4に係るエミッタの構成を示す図である。
図16図16A~Eは、実施の形態4の変形例1に係るエミッタの構成を示す図である。
図17図17A~Eは、実施の形態4の変形例2に係るエミッタの構成を示す図である。
図18図18A~Eは、実施の形態4の変形例3に係るエミッタの構成を示す図である。
図19図19A~Dは、台座部を収容部に収容する前の実施の形態5に係るエミッタの構成を示す図である。
図20図20A、Bは、台座部を収容部に収容した後の実施の形態6に係るエミッタの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明における実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
[実施の形態1]
(点滴灌漑用チューブおよびエミッタの構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る点滴灌漑用チューブ100の断面図である。
【0014】
図1に示されるように、点滴灌漑用チューブ100は、チューブ110およびエミッタ120を有する。
【0015】
チューブ110は、灌漑用液体を流すための管である。灌漑用液体の例には、水、液体肥料、農薬およびこれらの混合液が含まれる。チューブ110において、灌漑用液体を流す方向については、特に限定されない。また、チューブ110の材料は、特に限定されない。本実施の形態では、チューブ110の材料は、ポリエチレンである。
【0016】
チューブ110の管壁には、チューブ110の軸方向において所定の間隔(例えば、200mm以上500mm以下)で灌漑用液体を吐出するための複数の吐出口111が形成されている。吐出口111の開口部の直径は、灌漑用液体を吐出できれば特に限定されない。本実施の形態では、吐出口111の開口部の直径は、1.5mmである。内壁面112の吐出口111に対応する位置には、エミッタ120がそれぞれ接合される。チューブ110の軸方向に垂直な断面形状および断面積は、チューブ110の内部にエミッタ120を液漏れなく配置できれば特に限定されない。
【0017】
点滴灌漑用チューブ100は、エミッタ120の裏面125(図2参照)を内壁面112に接合することによって作製される。チューブ110とエミッタ120との接合方法は、特に限定されない。チューブ110とエミッタ120との接合方法の例には、チューブ110またはエミッタ120を構成する樹脂材料の溶着、接着剤による接着が含まれる。吐出口111は、チューブ110とエミッタ120とを接合した後に形成されてもよいし、接合前に形成されてもよい。
【0018】
図2A~D、図3A、Bは、台座部122を収容部135に収容した後のエミッタ120の構成を示す図である。図2Aは、エミッタ120の平面図であり、図2Bは、底面図であり、図2Cは、左側面図であり、図2Dは、右側面図である。図3Aは、正面図であり、図3Bは、図2Aに示されるA-A線の断面図である。図4A~Dは、台座部122を収容部135に収容する前のエミッタ120の構成を示す図である。図4Aは、エミッタ120の底面図であり、図4Bは、平面図であり、図4Cは、図4Aに示されるA-A線の断面図であり、図4Dは、正面図である。
【0019】
図1に示されるように、エミッタ120は、吐出口111を覆うようにチューブ110の内壁面112に接合されている。エミッタ120の形状は、内壁面112に密着して、吐出口111を覆うことができれば特に限定されない。本実施の形態では、チューブ110の軸方向に垂直なエミッタ120の断面における、内壁面112に接合する裏面125の形状は、内壁面112に沿うように、内壁面112に向かって凸の略円弧形状である。エミッタ120の平面視形状は、図2Aに示されるように、四隅がR面取りされた略矩形状である。エミッタ120の大きさは、特に限定されず、吐出口111から吐出される灌漑用液体の所望の量に基づいて、適宜決定されればよい。本実施の形態では、エミッタ120の長辺方向の長さは19mmであり、短辺方向の長さは8mmであり、高さは2.7mmである。
【0020】
本実施の形態において、エミッタ120は、弾性を有する材料で成形されている。エミッタ120の材料の例には、樹脂、エラストマーおよびゴムが含まれる。樹脂の例には、ポリエチレンおよびシリコーンが含まれる。エミッタ120の可撓性は、弾性を有する材料の使用によって調整できる。エミッタ120の可撓性の調整方法の例には、弾性を有する樹脂の選択、硬質の樹脂材料に対する弾性を有する樹脂の混合比の調整が含まれる。エミッタ120の材料の硬度を示す指標としては、JIS K6253-3(2012年)において規定されているデュロメータ硬さが含まれる。エミッタ120の材料の硬さは、デュロメータ硬さで表すと、D60程度である。なお、デュロメータ硬さは、測定に使用するデュロメータの種類によって、タイプA、タイプD、およびタイプEなどがある。例えば、タイプDデュロメータを使用して硬さ60を示した場合、デュロメータ硬さD60となる。そして、デュロメータ硬さは、各タイプにおける数値が同じ場合、タイプDが最も硬く、タイプA、タイプEの順に柔らかくなる。本実施の形態では、デュロメータ硬さがD60以下である材料において、台座161の変形抑制の効果がより発現する。
【0021】
図1図2A~D、図3A、Bおよび図4A~Dに示されるように、エミッタ120は、エミッタ本体121と、エミッタ本体121に収容される台座部122とを有する。台座部122は、エミッタ120がチューブ110に接合される前に、吐出口111と対向する裏面125側から、エミッタ本体121の収容部135に収容される。エミッタ本体121および台座部122は、一体として成形されてもよいし、別体として成形されてもよい。本実施の形態では、エミッタ本体121および台座部122は、ヒンジ部123を介して接続された状態で成形される。そして、エミッタ本体121とヒンジ部123との境界を切断し、収容部135に台座部122が収容される。エミッタ本体121と、台座部122と、ヒンジ部123とを一体成形する方法は、特に限定されない。本実施の形態では、エミッタ本体121と、台座部122と、ヒンジ部123とは、射出成形により一体成形されている。
【0022】
エミッタ本体121は、取水部131と、第1接続流路142となる第1接続溝132と、減圧流路143となる減圧溝(減圧流路溝)133と、第2接続流路144となる第2接続溝134と、流量調整部136とを有する。エミッタ本体121の収容部135に台座部122が収容されることによって、流量調整部136および吐出部137が形成される。エミッタ本体121の表面124には、取水部131が開口している。一方、エミッタ本体121の裏面125には、第1接続溝132、減圧溝133、第2接続溝134および収容部135が開口している。
【0023】
エミッタ120がチューブ110に接合されることにより、第1接続溝132、減圧溝133および第2接続溝134は、それぞれ第1接続流路142、減圧流路143および第2接続流路144となる。これにより、取水部131、第1接続流路142、減圧流路143、第2接続流路144、流量調整部136および吐出部137によって構成され、取水部131と吐出部137とを繋ぐ流路が形成される。この流路は、取水部131から吐出部137まで灌漑用液体を流通させる。
【0024】
取水部131は、エミッタ本体121の表面124の半分の領域に配置されている。取水部131の数は、特に限定されない。本実施の形態では、1つの取水部131が、エミッタ120の長軸方向の一方の半面に配置されている(図2A)。取水部131が配置されていない表面124の領域には、流量調整部136が配置されている(図1)。取水部131は、取水側スクリーン部146および取水用貫通孔147を有する。
【0025】
取水側スクリーン部146は、エミッタ120に取り入れられる灌漑用液体中の浮遊物が取水用貫通孔147内に侵入することを防止する。取水側スクリーン部146は、チューブ110内に対して開口しており、取水用凹部148および凸条149を有する。
【0026】
取水用凹部148は、エミッタ120の表面124において、ダイヤフラム部153が配置されていない一方の半面の領域のほぼ全体に形成されている凹部である。取水用凹部148の深さは特に限定されず、エミッタ120の大きさによって適宜設定される。取水用凹部148の底面上には凸条149が形成されている。また、取水用凹部148の底面には取水用貫通孔147が形成されている。
【0027】
凸条149は、取水用凹部148の底面上に配置されている。凸条149の配置および数は、取水用凹部148の開口部側から灌漑用液体を取り入れつつ、灌漑用液体中の浮遊物の侵入を防止できれば特に限定されない。本実施の形態では、複数の凸条149が取水用凹部148の長軸方向に配列されている。また、凸条149は、エミッタ120の表面124から取水用凹部148の底面に向かうにつれて幅が小さくなるように形成されていてもよいし、エミッタ120の表面124から取水用凹部148の底面まで同じ幅に形成されていてもよい。
【0028】
取水用貫通孔147は、取水用凹部148の底面に形成されている。取水用貫通孔147の形状および数は、取水用凹部148の内部に取り込まれた灌漑用液体をエミッタ本体121内に取り込むことができれば特に限定されない。本実施の形態では、取水用貫通孔147は、取水用凹部148の底面の長軸方向に沿って形成された1つの長孔である。長孔は、複数の凸条149により覆われているため、表側から見た場合、1つの取水用貫通孔147は、多数の貫通孔に分かれているように見える。
【0029】
チューブ110内を流れてきた灌漑用液体は、取水側スクリーン部146によって浮遊物が取水用貫通孔147内への侵入が防止されつつ、エミッタ120内に取り込まれる。
【0030】
第1接続溝132(第1接続流路142)は、取水用貫通孔147(取水部131)と、減圧溝133とを接続する。第1接続溝132は、エミッタ120の裏面125の外縁部に沿って形成されている。第1接続溝132の一方の端部には、減圧溝133が接続されている。チューブ110およびエミッタ120が接合されることにより、第1接続溝132とチューブ110の内壁面112とにより、第1接続流路142が形成される。取水部131から取り込まれた灌漑用液体は、第1接続流路142を通って、減圧流路143に流れる。
【0031】
減圧溝133(減圧流路143)は、第1接続溝132(第1接続流路142)と、第2接続流路144とを接続する。減圧溝133(減圧流路143)は、取水部131から取り入れられた灌漑用液体の圧力を減圧させて、当該灌漑用液体を流量調整部136に導く。減圧溝133は、裏面125の短軸方向の一方の端部に、長軸方向に沿って配置されている。減圧溝133の上流端は第1接続溝132に接続されており、下流端には流量調整部136に連通した第2接続溝134が接続されている。減圧溝133の形状は、前述の機能を発揮できれば特に限定されない。本実施の形態では、減圧溝133の平面視形状は、ジグザグ形状である。減圧溝133は、内側面から突出する略三角柱形状の凸部139が灌漑用液体の流れる方向に沿って交互に配置されている。凸部139は、平面視したときに、先端が減圧溝133の中心軸を超えないように配置されている。チューブ110およびエミッタ120が接合されることにより、減圧溝133とチューブ110の内壁面112により、減圧流路143が形成される。取水部131から取り込まれた灌漑用液体は、減圧流路143により減圧されて流量調整部136に導かれる。
【0032】
第2接続溝134(第2接続流路144)は、減圧溝133(減圧流路143)と、流量調整部136とを接続する。第2接続溝134は、エミッタ120の裏面125側においてエミッタ120の長軸方向に沿って直線状に形成された溝である。第2接続溝134の上流端は減圧溝133に接続されており、第2接続溝134の下流端は流量調整部136(収容部135)に接続されている。チューブ110とエミッタ120とが接合されることにより、第2接続溝134とチューブ110の内壁面112とによって、第2接続流路144が形成される。減圧流路143により減圧された灌漑用液体は、第2接続流路144を通って、流量調整部136に流れる。
【0033】
流量調整部136は、流れてきた灌漑用液体の流量を調整する。流量調整部136は、エミッタ120の取水部131が配置されていない領域に配置されている。流量調整部136は、収容部135と、台座161と、連通孔151と、変形抑制部152と、ダイヤフラム部153とを含む。また、台座部122は、台座161と、連通孔151と、連絡溝162と、変形抑制部152と、突起163を有する。
【0034】
収容部135は、略円柱形状の第1凹部155と、第1凹部155と隣接して配置された、略四角柱形状の第2凹部156とを有する。第1凹部155には、第2接続流路122から流れてきた灌漑用液体がチューブ110の吐出口111から吐出される量を調整するために台座161(図1を参照)が配置される。第2凹部156には、台座161に隣接した突起163が嵌合される。第1凹部155に台座161が配置されるとともに、第2凹部156に突起163が嵌合された後に、エミッタ120は、チューブ110の内壁面112に接合される。
【0035】
台座161は、灌漑用液体の圧力により変形したダイヤフラム部153が接触する領域である。台座161の形状は、特に限定されない。台座161の形状は、曲面であってもよいし、平面であってもよい。本実施の形態では、台座161の形状は、平面である。台座161が配置された平面の一部には、切り欠き溝150が形成されている。
【0036】
切り欠き溝150は、第2接続流路134からの灌漑用液体を第1凹部155に適切に導くために使用される。切り欠き溝150の形状は、上記機能を発揮できれば、特に限定されない。本実施の形態では、切り欠き溝150は、直線状に形成されている。
【0037】
連通孔151は、減圧流路143から収容部135内に流入した灌漑用液体を吐出口111に向けて排出するために使用される。本実施の形態では、連通孔151は、台座161の中央部分に開口している。連通孔151の開口部の大きさも特に限定されず、適宜設定できる。
【0038】
連絡溝162は、台座161にダイヤフラム部153が接触した状態でも灌漑用液体を連通孔151に導くための溝である。連絡溝162の一方の端部は、連通孔151に連絡している。連絡溝162の他方の端部は、ダイヤフラム部153が台座161している状態における台座161の接触領域の外縁部の外側に配置されている。
【0039】
変形抑制部152は、ダイヤフラム部153が灌漑用液体の圧力を受けて台座161に接触しているときに、チューブ110に接触して、台座161の変形を抑制する。変形抑制部152は、灌漑用液体の圧力を受けて変形したダイヤフラム部153が接触する台座161の面と反対側の面から突出して配置されている。変形抑制部152は、吐出口111側の連通孔151の開口部の周囲に配置されている。変形抑制部152の形状は、台座161の変形を抑制できれば特に限定されない。本実施の形態では、変形抑制部152の形状は、柱状の変形抑制部本体171と、変形抑制部本体171に形成された排出溝172とを有する。本実施の形態において、変形抑制部本体171の平面視形状は、対向する2つの円弧とこれらの円弧の両端を繋ぐ平行な2つの直線とにより構成される形状である。変形抑制部本体171の高さは、台座161の変形を抑制できれば特に限定されない。変形抑制部本体171の高さは、チューブ110に配置したときに、チューブ110の内壁面に接触する高さであってもよいし、チューブ110の内壁面に接触しない高さであってもよい。
【0040】
排出溝172は、変形抑制部152がチューブ110に接触した状態であっても灌漑用液体を適切に吐出口137に導くことができる。排出溝172は、変形抑制部本体171の底面に形成されている。排出溝172の一方の端部は連通孔151に連絡しており、他方の端部は変形抑制部本体171の側面に到達している。図2Bに示されるように、排出溝172は、変形抑制部本体171の吐出部137とは反対側の側面に到達していることが好ましい。この向きで排出溝172が形成されていることで、チューブ110の外部から砂や木の根などの異物が侵入した場合において、排出溝171が詰まりにくくなる。
【0041】
図1に示されるように、エミッタ120がチューブ110の内壁面112に接合されたとき、収容部135に配置された台座部122と、台座161に対向したダイヤフラム部153とによって、チューブ110内の灌漑用液体の圧力に応じて、エミッタ120(台座161)の連通孔151から吐出される灌漑用液体の流量を調整するための流量調整部136が構成される。本実施の形態では、ダイヤフラム部153の平面視形状は、円形状である。本実施の形態において、ダイヤフラム部153は、エミッタ本体121の他の構成(取水部131、第1接続流路142、減圧流路143、第2接続流路144)と一体に成形されている。
【0042】
ダイヤフラム部153は、エミッタ本体121の他の構成と一体に成形されているため、可撓性を有する。ダイヤフラム部153は、エミッタ120がチューブ110の内壁面112に接合された状態において、チューブ110内の灌漑用液体の圧力によって台座161へ向かって変形する。
【0043】
本実施の形態では、前述したように、エミッタ本体121および台座部122がヒンジ部123を介して接続された状態で製造される。ヒンジ部123は、エミッタ120の製造時において、エミッタ本体121および台座161を接続する。ヒンジ部123の形状および大きさは、前述の機能を発揮できる範囲内において適宜に設定できる。本実施の形態では、ヒンジ部123は、裏面125と連続した側面126に接続されている。ヒンジ部123は、エミッタ本体121の長軸方向(灌漑用液体が流れる方向における)の両端に位置する側面に配置されていてもよいし、エミッタ本体121の短軸方向の両端に位置する側面126に配置されていてもよい。ヒンジ部123は、灌漑用液体の流れを阻害しない観点から、灌漑用液体が流れる方向における上流側または下流側の側面126に接続されていることが好ましい。
【0044】
ヒンジ部123は、台座部122を収容部135に収容するとき、折り曲げられもよいし、エミッタ本体121および台座161から切り離されてもよい。本実施の形態では、ヒンジ部123は、エミッタ本体121から切断される。ヒンジ部123は、エミッタ本体121の裏面125に形成された溝164に収容される。ヒンジ部123がエミッタ本体121の裏面125に形成された溝164に収容された状態で、エミッタ120の裏面125がチューブ110の内壁面112に対して適切に接合される。
【0045】
溝164は、台座部122を収容部135に収容する際に、切断されたヒンジ部123を収容される。溝164の形状は、ヒンジ部123を収容でき、かつ灌漑用液体が漏れ出さなければ特に限定されない。本実施の形態では、溝164は、ヒンジ部123よりも僅かに小さく形成されている。エミッタ120をチューブ110に接合するときには、台座161を収容部135に収容するとともに、ヒンジ部123を溝164に収容する。このとき、溝164はヒンジ部123よりも僅かに小さく形成されているため、溝164に対してヒンジ部123を圧入しながら収容する。
【0046】
吐出部137は、排出溝172からの灌漑用液体を一時的に貯留する。吐出部137に到達した灌漑用液体は、吐出口111から外部に排出させる。
【0047】
ここで、チューブ110内の灌漑用液体の圧力に応じたダイヤフラム部153の動作について説明する。
【0048】
チューブ110内に灌漑用液体が送液される前は、ダイヤフラム部153に灌漑用液体の圧力が加わらないため、ダイヤフラム部153は変形していない(図1を参照)。
【0049】
チューブ110内に灌漑用液体が送液され始めると、チューブ110内の灌漑用液体の圧力が上昇し始め、ダイヤフラム部153が変形し始める。灌漑用液体の圧力が比較的低い場合は、ダイヤフラム部153の変形は比較的小さく、ダイヤフラム部153は、台座161に接触しない。この状態では、台座161の連通孔151が閉塞されないため、第2接続流路144からダイヤフラム部153と台座161の間の空間に流れてきた灌漑用液体は、連通孔151から吐出部137へ吐出される。
【0050】
灌漑用液体の圧力が設定値を超えると、さらにダイヤフラム部153の変形量が増大し、ダイヤフラム部153が台座161と密着する。ただし、ダイヤフラム部153が台座161に密着している場合であっても、連絡溝162は閉塞されない。そのため、第2接続流路144から空間に流れてきた灌漑用液体は、連絡溝162を流れて連通孔151から吐出部137へ吐出される。よって、ダイヤフラム部153が台座161に密着している場合であっても、一定量以上の灌漑用液体が吐出部137へ吐出される。
【0051】
ここで、本実施の形態のように、エミッタ120の硬度が低い場合、ダイヤフラム部153の変形量が増大するにつれて、ダイヤフラム部153による台座161への圧力が高くなる。この場合、圧力が高くなりすぎると、台座161が吐出口111に向けて変形する場合がある。本実施の形態に係るエミッタ120は、このような台座161の変形を抑制するために変形抑制部152を有している。
【0052】
本実施の形態では、ダイヤフラム部153の変形量が増大しても変形抑制部152により台座161の変形が抑制される。具体的には、変形抑制部152の底面がチューブ110の内壁面に接触することにより生じる反力で、ダイヤフラム部153による台座161への圧力を打ち消している。
【0053】
このような構成により、チューブ110内の灌漑用液体の圧力に関わらず、連通孔151から吐出される灌漑用液体の量を一定量以上確保できる。すなわち、本実施の形態に係る点滴灌漑用チューブ100は、灌漑用液体の圧力が低圧および高圧のいずれの場合であっても、一定量以上の灌漑用液体をチューブ110外に吐出できる。
【0054】
(効果)
以上のように、本実施の形態に係るエミッタ120は、変形抑制部152を有しているため、灌漑用液体の圧力により変形したダイヤフラム部153が接触することによる台座161の変形を抑制できる。よって、エミッタ120の流量調整機能を適切に発揮できる。
【0055】
(変形例)
変形抑制部152は、前述の機能を発揮できれば、特に限定されない。
図5A、Bに示されるように、エミッタ220における変形抑制部252は、平面視形状が円形状の変形抑制部本体271と、変形抑制部本体271に形成された排出溝272とを有していてもよい。
図5C、Dに示されるように、エミッタ320における変形抑制部352は、変形抑制部本体371と、排出溝372とを有していてもよい。変形抑制部本体371は、入れ子状に配置された複数の輪環状の凸部である。複数の輪環状の凸部は、それぞれ切り欠き部を有している。複数の切り欠き部は、排出溝372として機能する。
【0056】
図6A、Bに示されるように、エミッタ420における変形抑制部452は、変形抑制部本体471と、排出溝472とを有していてもよい。変形抑制部本体471は、中心角が90°の扇形の底面を有する複数の凸部である。複数の凸部は、連通孔151を中心に互いに離間して配置されている。離間した2つの凸部間の領域は、排出溝472として機能する。
図6C、Dに示されるように、エミッタ520における変形抑制部552は、変形抑制部本体571と、排出溝572とを有していてもよい。変形抑制部本体571は、複数の凸部を有する。複数の凸部は、連通孔151が開口した平面において、矩形格子状に配置されている。複数の凸部の間の領域は、排出溝572として機能する。
【0057】
図7A、Bに示されるように、エミッタ620における変形抑制部652は、変形抑制部本体671と、排出溝672とを有していてもよい。変形抑制部本体672は、複数の凸部を有する。複数の凸部は、底面が正方形の柱形状である。排出溝672は、正方形の隣接する2つの辺の中央部分同士を繋ぐ複数の第1溝と、溝の一方の端部とを繋ぐ第2溝と、を有する。
図7C、Dに示されるように、エミッタ720における変形抑制部752は、変形抑制部本体771と、排出溝772とを有していてもよい。変形抑制部本体771は、複数の凸部を有する。複数の凸部は、連通孔151が開口した平面において、短軸方向に沿って延在しており、かつ長軸方向に配列されている。複数の凸部の間の領域は、排出溝772として機能する。
【0058】
図8A、Bに示されるように、エミッタ820における変形抑制部852は、変形抑制部本体871と、排出溝872とを有していてもよい。
図8Cに示されるように、本変形例に係るエミッタ920におけるヒンジ部923は、エミッタ本体121の短軸方向の両端に位置する側面126に配置されていてもよい。
【0059】
[実施の形態2]
実施の形態2に係る点滴灌漑用チューブは、エミッタ1120の構成のみが実施の形態1に係る点滴灌漑用チューブ100と異なる。そこで、実施の形態2に係る点滴灌漑用チューブのエミッタ1120について説明する。
【0060】
(エミッタの構成)
図9A~D、図10A、Bは、台座部1122を収容部1127に収容した後の実施の形態2に係るエミッタ1120の構成を示す図である。図9Aは、エミッタ1120の平面図であり、図9Bは、底面図であり、図9Cは、左側面図であり、図9Dは、右側面図である。図10Aは、正面図であり、図10Bは、図9Aに示されるA-A線の断面図である。図11A~Eおよび図12A、Bは、台座部1122を収容部1127に収容する前の実施の形態2に係るエミッタ1120の構成を示す図である。図11Aは、エミッタ1120の底面図であり、図11Bは、台座部1122の左側面図であり、図11Cは、台座部1122の右側面図であり、図11Dは、エミッタ本体1121の左側面図であり、図11Eは、エミッタ本体1121の右側面図である。図12Aは、エミッタ1120の平面図であり、図12Bは、エミッタ本体1121の正面図である。
【0061】
図9A~D、図10A、B、図11A~Eおよび図12A、Bに示されるように、エミッタ1120は、エミッタ本体1121と、エミッタ本体1121に収容される台座部1122とを有する。台座部1122は、エミッタ1120がチューブ110(図1参照)に接合される前に、吐出口111と対向する裏面1125側から、エミッタ本体1121の収容部1127に収容される。エミッタ本体1121および台座部1122は、一体として成形されてもよいし、別体として成形されてもよい。本実施の形態では、エミッタ本体1121および台座部1122は、ヒンジ部1123を介して接続された状態で成形される。そして、エミッタ本体1121とヒンジ部1123との境界を切断し、収容部1127に台座部1122が収容される。エミッタ本体1121と、台座部1122と、ヒンジ部1123とを一体成形する方法は、特に限定されない。本実施の形態では、エミッタ本体1121と、台座部1122と、ヒンジ部1123とは、射出成形により一体成形されている。
【0062】
エミッタ本体1121は、取水部1131と、第1接続流路1152となる第1接続溝1132と、第1減圧流路1153となる第1減圧溝1133と、第2接続流路1154となる第2接続溝1134と、第2減圧流路1155となる第2減圧溝1135と、第3接続流路1156となる第3接続溝1136と、流量調整部1137と、流路開閉部1138とを有する。エミッタ本体1121の収容部1127に台座部1122が収容されることによって、流量調整部1137、流路開閉部1138および吐出部1139が形成される。エミッタ本体1121の表面1124には、取水部1131が開口している。一方、エミッタ本体1121の裏面1125には、第1接続溝1132、第1減圧溝1133、第2接続溝1134、第2減圧溝1135、第3接続溝1136および収容部1127が開口している。台座部1122の裏面1125には、第4接続流路1161となる第4接続溝1141と、バイパス流路1162となるバイパス溝1142が開口している。
【0063】
エミッタ1120がチューブ110に接合されることにより、第1接続溝1132、第1減圧溝1133、第2接続溝1134、第3接続溝1136、第2減圧溝1135、第4接続溝1141およびバイパス溝1142は、それぞれ第1接続流路1152、第1減圧流路1153、第2接続流路1154、第2減圧流路1155、第3接続流路1156、第4接続流路1161およびバイパス流路1162となる。これにより、取水部1131、第1接続流路1152、第1減圧流路1153、第2接続流路1154、第4接続流路1161、流量調整部1137および吐出部1139によって構成され、取水部1131と吐出部1139とを繋ぐ第1流路が形成される。また、取水部1131、第1接続流路1152、第2減圧流路1155、第3接続流路1156、流路開閉部1138、バイパス流路1162、流量調整部1137および吐出部1139によって構成され、取水部1131と吐出部1139とを繋ぐ第2流路が形成される。第1流路および第2流路は、取水部1131から吐出部1139まで灌漑用液体を流通させる。
【0064】
取水部1131は、エミッタ本体1121の表面1124の半分の領域に配置されている。取水部1131の数は、特に限定されない。本実施の形態では、1つの取水部1131が、エミッタ1120の長軸方向の一方の半面に配置されている(図9A)。取水部1131が配置されていない表面1124の領域には、流量調整部1137および流路開閉部1138が配置されている(図9A)。取水部1131は、取水側スクリーン部1171および取水用貫通孔1172を有する。
【0065】
取水側スクリーン部1171は、エミッタ1120に取り入れられる灌漑用液体中の浮遊物が取水用貫通孔1172内に侵入することを防止する。取水側スクリーン部1171は、チューブ110内に対して開口しており、取水用凹部1173および凸条1174を有する。
【0066】
取水用凹部1173は、エミッタ1120の表面1124において、第1ダイヤフラム部1184および第2ダイヤフラム部1188が配置されていない一方の半面の領域のほぼ全体に形成されている凹部である。取水用凹部1173の深さは特に限定されず、エミッタ1120の大きさによって適宜設定される。取水用凹部1173の底面上には凸条1174が形成されている。また、取水用凹部1173の底面には取水用貫通孔1172が形成されている。
【0067】
凸条1174は、取水用凹部1173の底面上に配置されている。凸条1174の配置および数は、取水用凹部1173の開口部側から灌漑用液体を取り入れつつ、灌漑用液体中の浮遊物の侵入を防止できれば特に限定されない。本実施の形態では、複数の凸条1174が取水用凹部1173の長軸方向に配列されている。また、凸条1174は、エミッタ1120の表面1124から取水用凹部1173の底面に向かうにつれて幅が小さくなるように形成されていてもよいし、エミッタ1120の表面1124から取水用凹部1173の底面まで同じ幅に形成されていてもよい。
【0068】
取水用貫通孔1172は、取水用凹部1173の底面に形成されている。取水用貫通孔1172の形状および数は、取水用凹部1173の内部に取り込まれた灌漑用液体をエミッタ本体1121内に取り込むことができれば特に限定されない。本実施の形態では、取水用貫通孔1172は、取水用凹部1173の底面の長軸方向に沿って形成された2つの長孔である。長孔は、複数の凸条1174により覆われているため、表側から見た場合、2つの取水用貫通孔1172は、それぞれ多数の貫通孔に分かれているように見える。
【0069】
チューブ110内を流れてきた灌漑用液体は、取水側スクリーン部1171によって浮遊物が取水用貫通孔1172内への侵入が防止されつつ、エミッタ1120内に取り込まれる。
【0070】
第1接続溝1132(第1接続流路1152)は、取水用貫通孔1172(取水部1131)と、第1減圧溝1133および第2減圧溝1135とを接続する。第1接続溝1132は、エミッタ1120の裏面1125の外縁部に沿って形成されている。第1接続溝1132の一方の端部には、第1減圧溝1133が接続されており、第1接続溝1132の中央部分には、第2減圧溝1135が接続されている。チューブ110およびエミッタ1120が接合されることにより、第1接続溝1132とチューブ110の内壁面112とにより、第1接続流路1152が形成される。取水部1131から取り込まれた灌漑用液体は、第1接続流路1152を通って、第1減圧流路1153および第2減圧流路1155に流れる。
【0071】
第1減圧溝1133(第1減圧流路1153)は、第1接続溝1132(第1接続流路1152)と、第2接続流路1154とを接続する。第1減圧溝1133(第1減圧流路1153)は、取水部1131から取り入れられた灌漑用液体の圧力を減圧させて、当該灌漑用液体を流量調整部1137に向けて導く。第1減圧溝1133は、裏面1125の短軸方向の一方の端部に、長軸方向に沿って配置されている。第1減圧溝1133の上流端は第1接続溝1132に接続されており、下流端には流量調整部1137に連通した第2接続溝1134が接続されている。第1減圧溝1133の形状は、前述の機能を発揮できれば特に限定されない。本実施の形態では、第1減圧溝1133の平面視形状は、ジグザグ形状である。第1減圧溝1133は、内側面から突出する略三角柱形状の凸部1175が灌漑用液体の流れる方向に沿って交互に配置されている。凸部1175は、平面視したときに、先端が第1減圧溝1133の中心軸を超えないように配置されている。チューブ110およびエミッタ1120が接合されることにより、第1減圧溝1133とチューブ110の内壁面112により、第1減圧流路1153が形成される。取水部1131から取り込まれた灌漑用液体は、第1減圧流路1153により減圧されて流量調整部1137に導かれる。
【0072】
第2接続溝1134(第2接続流路1154)は、第1減圧溝1133(第1減圧流路1153)と、第4接続溝1141(第4接続流路1161)を接続する。第2接続溝1134は、エミッタ1120の裏面1125側においてエミッタ1120の長軸方向に沿って直線状に形成された溝である。第2接続溝1134の上流端は第1減圧溝1133に接続されており、第2接続溝1134の下流端は第4接続溝1141(第4接続流路1161)に接続されている。チューブ110とエミッタ1120とが接合されることにより、第2接続溝1134とチューブ110の内壁面112とによって、第2接続流路1154が形成される。第1減圧流路1153により減圧された灌漑用液体は、第2接続流路1154を通って、流量調整部1137に導かれる。
【0073】
第2減圧溝1135(第2減圧流路1155)は、第1接続溝1133(第1接続流路1153)と、第3接続溝1136(第3接続流路1156)とを接続する。第2減圧溝1135(第2減圧流路1155)は、取水部1131から取り入れられた灌漑用液体の圧力を減圧させて、当該灌漑用液体を流路開閉部1138に向けて導く。第2減圧溝1135は、裏面1125の短軸方向の中央部分に、長軸方向に沿って配置されている。第2減圧溝1135の上流端は第1接続溝1132に接続されており、下流端には流路開閉部1138に連通した第3接続溝1136が接続されている。第2減圧溝1135の形状は、前述の第1減圧溝1133と同じ形状である。チューブ110およびエミッタ1120が接合されることにより、第2減圧溝1135とチューブ110の内壁面112により、第2減圧流路1155が形成される。取水部1131から取り込まれた灌漑用液体は、第2減圧流路1155により減圧されて流路開閉部1138に導かれる。
【0074】
第3接続溝1136(第3接続流路1156)は、第2減圧溝1135(第2減圧流路1155)と、流路開閉部1138とを接続する。第3接続溝1136は、台座部1122の裏面1125側において台座部1122の長軸方向に沿って直線状に形成された溝である。第3接続溝1136の上流端は第2減圧溝1135に接続されており、第3接続溝1136の下流端は流路開閉部1138(収容部1127)に接続されている。チューブ110とエミッタ1120とが接合されることにより、第3接続溝1136とチューブ110の内壁面112とによって、第3接続流路1156が形成される。第2減圧流路1155から流れてきた灌漑用液体は、第3接続流路1156を通って、流路開閉部1138に流れる。
【0075】
第4接続溝1141(第4接続流路1161)は、第2接続溝1134(第2接続流路1154)と、流量調整部1137とを接続する。第4接続溝1141は、台座部1122の裏面1125側において台座部1122の長軸方向に沿って直線状に形成された溝である。第4接続溝1141の上流端は第2接続流路1154に接続されており、第4接続溝1141の下流端は流量調整部1137(収容部1127)に接続されている。チューブ110とエミッタ1120とが接合されることにより、第4接続溝1141とチューブ110の内壁面112とによって、第4接続流路1161が形成される。第2接続流路1154から流れてきた灌漑用液体は、第4接続流路1161を通って、流量調整部1137に流れる。
【0076】
流量調整部1137は、流れてきた灌漑用液体の流量を調整する。流量調整部1137は、エミッタ1120の取水部1131が配置されていない領域に配置されている。流量調整部1137は、収容部1127と、第1台座1181と、連通孔1182と、変形抑制部1183と、第1ダイヤフラム部1184とを含む。また、台座部1122は、第1台座1181と、連通孔1182と、連絡溝1185と、変形抑制部1183と、第4接続溝1141とを有する。
【0077】
収容部1127は、凹部1186を有する。凹部1186には、第2接続流路1154から流れてきた灌漑用液体がチューブ110の吐出口111から吐出される量を調整するための第1台座1181と、第2流路を開閉するための第2台座1187とが配置される。凹部1186に第1台座1181および第2台座1187が配置された後に、エミッタ1120は、チューブ110の内壁面112に接合される。
【0078】
第1台座1181は、灌漑用液体の圧力により変形した第1ダイヤフラム部1184が接触する領域である。第1台座1181の形状は、特に限定されない。第1台座1181の形状は、曲面であってもよいし、平面であってもよい。本実施の形態では、第1台座1181の形状は、平面である。
【0079】
連通孔1182は、収容部1127内に流入した灌漑用液体を吐出口111に向けて排出するために使用される。本実施の形態では、連通孔1182は、第1台座1181の中央部分に開口している。連通孔1182の開口部の大きさも特に限定されず、適宜設定できる。
【0080】
連絡溝1185は、第1台座1181に第1ダイヤフラム部1184が接触した状態でも灌漑用液体を連通孔1182に導くための溝である。連絡溝1185の一方の端部は、連通孔1182に連絡している。連絡溝1185の他方の端部は、第1ダイヤフラム部1184が第1台座1181している状態における第1台座1181の接触領域の外縁部の外側に配置されている。
【0081】
変形抑制部1183は、第1ダイヤフラム部1184が灌漑用液体の圧力を受けて第1台座1181に接触しているときに、チューブ110に接触して、第1台座1181の変形を抑制する。変形抑制部1183は、灌漑用液体の圧力を受けて変形した第1ダイヤフラム部1184が接触する第1台座1181の面と反対側の面から突出して配置されている。変形抑制部1183は、吐出口111側の連通孔1182の開口部の周囲に配置されている。変形抑制部1183の形状は、第1台座1181の変形を抑制できれば特に限定されない。本実施の形態では、変形抑制部1183の形状は、連通孔1182の周りの領域と、第2台座1187の裏側の領域である。変形抑制部1183の高さは、第1台座1181の変形を抑制できれば特に限定されない。変形抑制部1183の高さは、チューブ110に配置したときに、チューブ110の内壁面に接触する高さであってもよいし、チューブ110の内壁面に接触しない高さであってもよい。
【0082】
エミッタ1120がチューブ110の内壁面112に接合されたとき、収容部1127に配置された台座部1122と、第1台座1181に対向した第1ダイヤフラム部1184とによって、チューブ110内の灌漑用液体の圧力に応じて、エミッタ1120(第1台座1181)の連通孔1182から吐出される灌漑用液体の流量を調整するための流量調整部1137が構成される。本実施の形態では、第1ダイヤフラム部1184の平面視形状は、円形状である。本実施の形態において、第1ダイヤフラム部1184は、エミッタ本体1121の他の構成と一体に成形されている。
【0083】
第1ダイヤフラム部1184は、エミッタ本体1121の他の構成と一体に成形されているため、可撓性を有する。第1ダイヤフラム部1184は、エミッタ1120がチューブ110の内壁面112に接合された状態において、チューブ110内の灌漑用液体の圧力によって第1台座1181へ向かって変形する。
【0084】
流路開閉部1138は、チューブ110内の圧力に応じて第2流路を閉塞して、第2流路を介しての灌漑用液体の流量調整部1137への送液を停止する。流路開閉部1138は、エミッタ1120の取水部1131と、流量調整部1137とが配置されていない領域に配置されている。流路開閉部1138は、収容部1127と、第2台座1187と、変形抑制部1183と、第2ダイヤフラム部1188とを含む。
【0085】
第2台座1187は、灌漑用液体の圧力により変形した第2ダイヤフラム部1188が接触する領域である。第2台座1187の形状は、特に限定されない。第2台座1187の形状は、曲面であってもよいし、平面であってもよい。本実施の形態では、第2台座1187の形状は、平面である。第2台座1187が配置された平面の一部には、切り欠き溝1190が形成されている。
【0086】
切り欠き溝1190は、第3接続流路1156からの灌漑用液体を凹部1186に適切に導くために使用される。切り欠き溝1190の形状は、上記機能を発揮できれば、特に限定されない。本実施の形態では、切り欠き溝1190は、直線状に形成されている。
【0087】
エミッタ1120がチューブ110の内壁面112に接合されたとき、収容部1127に配置された台座部1122と、第2台座1187に対向した第2ダイヤフラム部1188とによって、チューブ110内の灌漑用液体の圧力に応じて、第2流路を開閉するための流路開閉部1138が構成される。本実施の形態では、第2ダイヤフラム部1188の平面視形状は、円形状である。本実施の形態において、第2ダイヤフラム部1188は、エミッタ本体1121の他の構成と一体に成形されている。また、流量調整部1137と、流路開閉部1138とは、バイパス流路1162で接続されている。
【0088】
第2ダイヤフラム部1188は、エミッタ本体1121の他の構成と一体に成形されているため、可撓性を有する。第2ダイヤフラム部1188は、エミッタ1120がチューブ110の内壁面112に接合された状態において、チューブ110内の灌漑用液体の圧力によって第2台座1187へ向かって変形する。
【0089】
本実施の形態では、前述したように、エミッタ本体1121および台座部1122がヒンジ部1123を介して接続された状態で製造される。ヒンジ部1123は、エミッタ1120の製造時において、エミッタ本体1121および台座部1122を接続する。ヒンジ部1123の形状および大きさは、前述の機能を発揮できる範囲内において適宜に設定できる。本実施の形態では、ヒンジ部1123は、裏面1125と連続した側面1126に接続されている。ヒンジ部1123は、エミッタ本体1121の長軸方向(灌漑用液体が流れる方向における)の両端に位置する側面に配置されていてもよいし、エミッタ本体1121の短軸方向の両端に位置する側面1126に配置されていてもよい。ヒンジ部1123は、灌漑用液体の流れを阻害しない観点から、灌漑用液体が流れる方向における上流側または下流側の側面1126に接続されていることが好ましい。
【0090】
吐出部1139は、連通孔1182からの灌漑用液体を一時的に貯留する。吐出部1139に到達した灌漑用液体は、吐出口111から外部に排出させる。
【0091】
ここで、チューブ110内の灌漑用液体の圧力に応じた第1ダイヤフラム部1184および第2ダイヤフラム部1188の動作について説明する。
【0092】
チューブ110内に灌漑用液体が送液される前は、第1ダイヤフラム部1184および第2ダイヤフラム部1188に灌漑用液体の圧力が加わらないため、第1ダイヤフラム部1184および第2ダイヤフラム部1188は変形していない。
【0093】
チューブ110内に灌漑用液体を送液し始めると、流量調整部1137の第1ダイヤフラム部1184は、第1台座1181に向かって変形し始める。また、流路開閉部1138の第2ダイヤフラム部1188は、第2台座1187に向かって変形し始める。しかしながら、この状態では、第1ダイヤフラム部1184が第1台座1181に接触しておらず、かつ第2ダイヤフラム部1188が第2台座1184に接触していないため、取水部1131から取り入れられた灌漑用液体は、第1流路および第2流路の両方を通って、チューブ110の吐出口111から外部に吐出される。このように、チューブ110内への灌漑用液体の送液開始時や、チューブ110内の灌漑用液体の圧力が極めて低圧の場合などでは、取水部から取り入れられた灌漑用液体は、第1流路および第2流路の両方を通って吐出される。
【0094】
チューブ110内の灌漑用液体の圧力が所定の第1圧力に到達すると、第2ダイヤフラム部1188が第2台座1187に接触して、第2流路を閉塞する。このとき、第1ダイヤフラム部1184は、第1台座1181に接触していない。このように、チューブ110内の灌漑用液体の圧力が第2ダイヤフラム部1188を変形させるほど高くなると、第2ダイヤフラム部1188が第2台座1187に近接するため、第2流路を通って吐出される灌漑用液体の液量は減少する。そして、チューブ110内の灌漑用液体の圧力が所定の第1圧力に到達すると、第2流路内の灌漑用液体は、吐出口111から吐出されなくなる。その結果、取水部1131から取り入れられた灌漑用液体は、第1流路のみを通って、チューブ110の吐出口111から外部に吐出される。
【0095】
チューブ110内の灌漑用液体の圧力がさらに高まると、第1ダイヤフラム部1184は、第1台座1181に向かってさらに変形する。灌漑用液体の圧力が比較的低い場合は、第1ダイヤフラム部1184の変形は比較的小さく、第1ダイヤフラム部1184は、第1台座1181に接触しない。この状態では、第1台座1181の連通孔1182が閉塞されないため、第4接続流路1161から第1ダイヤフラム部1184と第1台座1181の間の空間に流れてきた灌漑用液体は、連通孔1182から吐出部1139へ吐出される。
【0096】
灌漑用液体の圧力が設定値を超えると、さらに第1ダイヤフラム部1184の変形量が増大し、第1ダイヤフラム部1184が第1台座1181と密着する。ただし、第1ダイヤフラム部1184が第1台座1181に密着している場合であっても、連絡溝1185は閉塞されない。そのため、第4接続流路1161から空間に流れてきた灌漑用液体は、連絡溝1185を流れて連通孔1182から吐出部1139へ吐出される。よって、第1ダイヤフラム部1184が第1台座1181に密着している場合であっても、一定量以上の灌漑用液体が吐出部1139へ吐出される。
【0097】
なお、本実施の形態でも、エミッタ1120は、このような第1台座1181の変形を抑制するために変形抑制部1183を有しており、第1ダイヤフラム部1184の変形量が増大しても変形抑制部1183により第1台座1181の変形が抑制される。具体的には、変形抑制部1183の底面がチューブ110の内壁面に接触することにより生じる反力で、第1ダイヤフラム部1184による第1台座1181への圧力を打ち消している。また、エミッタ1120は、このような第2台座1187の変形を抑制するために変形抑制部1183を有しており、第2ダイヤフラム部1188の変形量が増大しても変形抑制部1183により第2台座1187の変形が抑制される。具体的には、変形抑制部1183の底面がチューブ110の内壁面に接触することにより生じる反力で、第2ダイヤフラム部1188による第2台座1187への圧力を打ち消している。
【0098】
このような構成により、チューブ110内の灌漑用液体の圧力に関わらず、連通孔1182から吐出される灌漑用液体の量を一定量以上確保できる。すなわち、本実施の形態に係る点滴灌漑用チューブ100は、灌漑用液体の圧力が低圧および高圧のいずれの場合であっても、一定量以上の灌漑用液体をチューブ110外に吐出できる。
【0099】
(効果)
以上のように、本実施の形態に係るエミッタ1120は、実施の形態1に係るエミッタ120と同様の効果を有する。
【0100】
[実施の形態3]
実施の形態3に係る点滴灌漑用チューブは、エミッタ1220の構成のみが実施の形態1に係る点滴灌漑用チューブ100と異なる。そこで、実施の形態3に係る点滴灌漑用チューブのエミッタ1220について説明する。
【0101】
(エミッタの構成)
図13A~Cは、台座部122を収容部135に収容した後の実施の形態3に係るエミッタ1220の構成を示す図である。図14A~Fは、台座部122を収容部135に収容した後の実施の形態3の変形例1~3に係るエミッタ1220の構成を示す図である。図13Aは、実施の形態3に係るエミッタ1220の平面図であり、図13Bは、底面図であり、図13Cは、右側面図である。図14Aは、実施の形態3の変形例1に係るエミッタ1220の平面図であり、図14Bは、変形例1に係るエミッタ1220の右側面図であり、図14Cは、変形例2に係るエミッタ1220の平面図であり、図14Dは、変形例2に係るエミッタ1220の右側面図であり、図14Eは、変形例3に係るエミッタ1220の平面図であり、図14Fは、変形例3に係るエミッタ1220の右側面図である。
【0102】
図13A~Cに示されるように、実施の形態3に係るエミッタ1220は、エミッタ本体1221と、エミッタ本体1221に収容される台座部122とを有する。エミッタ本体1221は、取水部131と、第1接続溝132と、減圧溝133と、第2接続溝134と、流量調整部136と、に加え、第1突起部1231を有する。
【0103】
第1突起部1231は、点滴灌漑用チューブの作製時において、エミッタ1220とパーツフィーダとの接触面積を少なくするために機能する。点滴灌漑用チューブは、例えばチューブを連続して成形しながら、予め成形されたエミッタ1220を連続してチューブの内面に接合することで作製される。このとき、予め成形されたエミッタ1220は、パーツフィーダ内に貯留され、当該パーツフィーダから連続してチューブ内に送り込まれる。しかしながら、エミッタとパーツフィーダの内面との摩擦により静電気が発生し、パーツフィーダの内面にエミッタが貼り付いてしまい、生産効率が低下することがあった。そこで、本実施の形態に係るエミッタ1220は、その表面124に第1突起部1231が配置されている。
【0104】
第1突起部1231の形状および配置は、上記のように、パーツフィーダの内面との接触面積を減らすことができれば特に限定されない。本実施の形態では、第1突起部1231は、エミッタ1220の長軸に沿って配置されており、かつ短軸方向の一方の端部の全体に亘って配置されている。言い換えると、第1突起部1231は、エミッタ1220を平面視したときに、一方の長辺の全体に亘って配置されている。第1突起部1231の高さは、表面124とパーツフィーダの内面との接触面積を減らすことができれば特に限定されず、適宜設定できる。
【0105】
第1突起部1231の形状は、図13A~Cに示される例に限定されない。たとえば、図14A、Bに示されるように、第1突起部1331は、エミッタ1320(エミッタ本体1321)の一方の長辺の中央部分の一部のみに配置されていてもよい。また、図14C、Dに示されるように、第1突起部1431は、エミッタ1420(エミッタ本体1421)の一方の長辺の両端部のみに配置されていてもよい。また、図14E、Fに示されるように、第1突起部1531は、エミッタ1520(エミッタ本体1521)の両方の長辺に配置されていてもよい。
【0106】
(効果)
以上のように、本実施の形態に係るエミッタ1220、1320、1420、150は、実施の形態1に係るエミッタの効果に加え、パーツフィーダとの接触面積を減らすことができるため、生産性を向上させることができる。
【0107】
[実施の形態4]
実施の形態4に係る点滴灌漑用チューブは、エミッタ1620の構成のみが実施の形態1に係る点滴灌漑用チューブ100と異なる。そこで、実施の形態4に係る点滴灌漑用チューブのエミッタ1620について説明する。
【0108】
(エミッタの構成)
図15A~Dは、実施の形態4に係るエミッタ1620の構成を示す図である。図16A~E、図17A~E、図18A~Eは、実施の形態4の変形例1~3に係るエミッタ1620の構成を示す図である。図15Aは、実施の形態4に係るエミッタ1620の平面図であり、図15Bは、第2突起部1631の他の配置を示した図であり、図15Cは、第2突起部1631の形状を示す断面図であり、図15Dは、第2突起部1631の他の形状を示す断面図である。図16Aは、実施の形態4の変形例1に係るエミッタ1620の平面図であり、図16Bは、正面図であり、図16Cは、底面図であり、図16Dは、左側面図であり、図16Eは、右側面図である。図17Aは、実施の形態4の変形例2に係るエミッタ1620の平面図であり、図17Bは、正面図であり、図17Cは、底面図であり、図17Dは、左側面図であり、図17Eは、右側面図である。図18Aは、実施の形態4の変形例3に係るエミッタ1620の平面図であり、図18Bは、正面図であり、図18Cは、底面図であり、図18Dは、左側面図であり、図18Eは、右側面図である。
【0109】
図15A~Dに示されるように、実施の形態4に係るエミッタ1620は、エミッタ本体1621と、エミッタ本体1621に収容される台座部122とを有する。エミッタ本体1621は、取水部131と、第1接続溝132と、減圧溝133と、第2接続溝134と、流量調整部136と、に加え、複数の第2突起部1631を有する。
【0110】
複数の第2突起部1631は、点滴灌漑用チューブの作製時において、ガイドレールとの接触面積を少なくする。前述したように、点滴灌漑用チューブは、例えばチューブを連続して成形しながら、予め成形されたエミッタ1620を連続してチューブの内面に接合することで作製される。このとき、エミッタ1620は、ガイドレールと呼ばれるレールによって、チューブまで運ばれる。エミッタ1620が送られる方向に直交するガイドレールの断面形状は、エミッタ1620の当該断面と略相補的な形状であり、一部が外部と連通している。この場合、エミッタ1620がガイドレールの内面と接触することで、エミッタ1620が詰まったり、エミッタ1620が一定の速度で送れなくなったりするという問題がある。そこで、本実施の形態に係るエミッタ1620は、その表面124に第2突起部1631が配置されている。
【0111】
複数の第2突起部1631の形状および配置は、上記のように、ガイドレールの内面との接触面積を減らすことができれば特に限定されない。本実施の形態では、複数の第2突起部1631は、エミッタ1620の長軸に沿って配置されており、かつ表面の全体に亘り間隔を空けて配置されている。第2突起部1631の高さは、表面124とガイドレールの内面との接触面積を減らすことができれば特に限定されず、適宜設定できる。第2突起部1631の延在方向に直交する断面の形状は、特に限定されない。たとえば、当該断面形状は、三角形(図15C参照)でもよいし、半円形状(図15D参照)でもよい。
【0112】
複数の第2突起部1631の位置は、図15A、Bに示される例に限定されない。たとえば、図16A~Eに示されるように、第2突起部1631は、エミッタ1620の側面の全周に亘って配置されていてもよい。また、図17A~Eに示されるように、第2突起部1631は、エミッタ1620の側面の一部にのみ配置されていてもよい。また、図18A~Eに示されるように、第2突起部1631は、エミッタ1620の裏面125に配置されていてもよい。
【0113】
(効果)
以上のように、本実施の形態に係るエミッタ1620は、実施の形態1に係るエミッタの効果に加え、ガイドレールとの接触面積を減らすことができるため、生産性を向上させることができる。
【0114】
[実施の形態5]
実施の形態5に係る点滴灌漑用チューブは、エミッタ1720の構成のみが実施の形態1に係る点滴灌漑用チューブ100と異なる。そこで、実施の形態5に係る点滴灌漑用チューブのエミッタ1720について説明する。
【0115】
(エミッタの構成)
図19A~Dは、台座部122を収容部135に収容する前のエミッタ1720の構成を示す図である。図19Aは、エミッタ1720の底面図であり、図19Bは、平面図であり、図19Cは、図19Aに示されるA-A線の断面図であり、図19Dは、正面図である。
【0116】
図19A~Dに示されるように、実施の形態5に係るエミッタ1720は、エミッタ本体1721と、エミッタ本体1721に収容される台座部122とを有する。エミッタ1720は、取水部131と、第1接続溝132と、減圧溝133と、第2接続溝134と、流量調整部1736とを有する。
【0117】
流量調整部1736は、収容部135と、台座161と、連通孔151と、変形抑制部152と、ダイヤフラム部153とを含む。また、台座部122は、台座161と、連通孔151と、連通溝1762と、変形抑制部152と、突起163を有する。
【0118】
本実施の形態における連通溝1762は、実施の形態1に係るエミッタ120における連絡溝162より短い。これにより、連通溝1762は、ダイヤフラム部153が灌漑用液体の圧力を受けて台座161に接触したときにダイヤフラム部153側の開口部が完全に塞がれる。
【0119】
このエミッタ1720を有する点滴灌漑用チューブでは、チューブ110内に灌漑用液体が送液され始めると、チューブ110内の灌漑用液体の圧力が上昇し始め、ダイヤフラム部153が変形し始める。灌漑用液体の圧力が比較的低い場合は、ダイヤフラム部153の変形は比較的小さく、ダイヤフラム部153は、台座161に接触しない。この状態では、台座161の連通孔151が閉塞されないため、第2接続流路144からダイヤフラム部153と台座161の間の空間に流れてきた灌漑用液体は、連通孔151から吐出部137へ吐出される。
【0120】
灌漑用液体の圧力が設定値を超えると、さらにダイヤフラム部153の変形量が増大し、ダイヤフラム部153の中央部が台座161と密着する。ただし、ダイヤフラム部153の中央部が台座161に密着した場合、連通孔151のダイヤフラム部153側の開口部が閉塞されるが、連通溝1762のダイヤフラム部153側の開口部は閉塞されない。そのため、第2接続流路144から空間に流れてきた灌漑用液体は、連通溝1672を流れて連通孔151から吐出部137へ吐出される。よって、ダイヤフラム部153の中央部が台座161に密着している場合であっても、一定量の灌漑用液体が吐出部137へ吐出される。
【0121】
灌漑用液体の圧力がさらに高くなると、さらにダイヤフラム部153の変形量が増大し、ダイヤフラム部153が連通溝1762のダイヤフラム部153側の開口部の全体を覆うように台座161に密着する。この状態では、第2接続流路144から空間に流れてきた灌漑用液体が吐出部137へ吐出されない。すなわち、このエミッタ1720を有する点滴灌漑用チューブでは、チューブ110内の灌漑用液体の圧力が過剰になると、チューブの吐出口111からの灌漑用液体の吐出が停止される。
【0122】
(効果)
以上のように、本実施の形態に係るエミッタ1720は、実施の形態1に係るエミッタの効果に加え、チューブ110内の灌漑用液体の圧力が過剰な場合に、灌漑用液体の吐出を停止させることができる。
【0123】
[実施の形態6]
実施の形態6に係る点滴灌漑用チューブは、エミッタ1820の構成のみが実施の形態1に係る点滴灌漑用チューブ100と異なる。そこで、実施の形態6に係る点滴灌漑用チューブのエミッタ1820について説明する。
【0124】
図20A、Bは、実施の形態6に係るエミッタ1820の構成を示す図である。図20Aは、実施の形態6に係るエミッタ1820の平面図であり、図20Bは、エミッタ本体121の第2接続流路144と台座部122の切り欠き溝150との接続部における、図20Aに示されるA-A線の部分拡大断面図である。
【0125】
図20A、Bに示されるように、本実施の形態に係るエミッタ1820は、エミッタ本体121と、台座部122とを有する。
【0126】
エミッタ本体121は、取水部131と、第1接続流路142となる第1接続溝132と、減圧流路143となる減圧溝133と、第2接続流路144となる第2接続溝134と、収容部135とを有する。台座部122は、切り欠き溝150(図4B参照)と、台座161と、連通孔151と、連絡溝162と、変形抑制部152と、突起163を有する。エミッタ本体121の収容部135に台座部122が収容されることによって、流量調整部136および吐出部137が形成される。また、エミッタ本体121から台座部122に亘って配置され、減圧溝133と、流量調整部136(ダイヤフラム部153および台座161の間の空間)とを接続する接続流路が形成される。この接続流路は、エミッタ本体121の第2接続流路144と、台座部122の切り欠き溝150とにより構成される。
【0127】
エミッタ1820がチューブ110に接合されることにより、第1接続溝132、減圧溝133および第2接続溝134は、それぞれ第1接続流路142、減圧流路143および第2接続流路144となる。これにより、取水部131、第1接続流路142、減圧流路143、上記接続流路(第2接続流路144および切り欠き溝150)、流量調整部136および吐出部137によって構成され、取水部131と吐出部137とを繋ぐ流路が形成される。この流路は、取水部131から吐出部137まで灌漑用液体を流通させる。
【0128】
減圧溝133と、流量調整部136(ダイヤフラム部153および台座161の間の空間)とを接続する上記接続流路について、第2接続流路144はエミッタ本体121により構成されているのに対し、切り欠き溝150は台座部122により構成されている。上述したように、エミッタ1820は、台座部122をエミッタ本体121の収容部135内に収容することで構成される。したがって、台座部122と収容部135との間には、わずかな隙間がある。よって、エミッタ本体121の第2接続流路144の下流端となる開口部と、台座部122の切り欠き溝150の上流端となる開口部とが位置ずれして、これらの接続部を流れる灌漑用液体が意図せずに減圧されてしまうことがある。そこで、本実施の形態では、エミッタ本体121と台座部122との境界において、台座部122の切り欠き溝150の上流端となる開口部(台座部122における上記接続流路のエミッタ本体121側の開口部)を、エミッタ本体121の第2接続流路144の下流端となる開口部(エミッタ本体121における上記接続流路の台座部122側の開口部)よりも大きくすることで、第2接続流路144の下流端と切り欠き溝150の上流端とが位置ずれしても、接続部における流路の断面積が低減しないようにしている。したがって、第2接続流路144の下流端と切り欠き溝150の上流端とが位置ずれしても、これらの接続部を流れる灌漑用液体の意図しない減圧は抑制される。
【0129】
(効果)
以上のように、本実施の形態に係るエミッタ1820は、実施の形態1に係るエミッタの効果に加え、灌漑用液体の流量調整を高精度に行うことができる。
【0130】
本出願は、2018年7月26日出願の特願2018-140276および2018年11月28日出願の特願2018-222273に基づく優先権を主張する。当該出願明細書および図面に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明によれば、流出する液体の流量を調整できるエミッタを、製造コストを抑えて提供できる。したがって、点滴灌漑や耐久試験等の、長期の滴下を要する技術分野への上記エミッタの普及および当該技術分野のさらなる発展が期待される。
【符号の説明】
【0132】
100 点滴灌漑用チューブ
110 チューブ
111 吐出口
112 内壁面
120、220、320、420、520、620、720、820、920、1120、1220、1320、1420、1520、1620、1720、1820 エミッタ
121、1121、1221、1321、1421、1521、1621、1721 エミッタ本体
122、1122 台座部
123、923、1123 ヒンジ部
124、1124 表面
125、1125 裏面
126、1126 側面
131、1131 取水部
132、1132 第1接続溝
133 減圧溝
134、1134 第2接続溝
135、1127 収容部
136、1137、1736 流量調整部
137、1139 吐出部
139、1175 凸部
142、1152 第1接続流路
143 減圧流路
144、1154 第2接続流路
146、1171 取水側スクリーン部
147、1172 取水用貫通孔
148、1173 取水用凹部
149、1174 凸条
150、1190 切り欠き溝
151、1182 連通孔
152、252、352、452、552、652、752、852、1183 変形抑制部
153 ダイヤフラム部
155 第1凹部
156 第2凹部
161 台座
162、1185 連絡溝
163 突起
164 溝
171、271、371、471、571、671、771、871 変形抑制部本体
172、272、372、472、572、672、772、872 排出溝
1133 第1減圧溝
1135 第2減圧溝
1136 第3接続溝
1138 流路開閉部
1141 第4接続溝
1142 バイパス溝
1153 第1減圧流路
1155 第2減圧流路
1156 第3接続流路
1161 第4接続流路
1162 バイパス流路
1181 第1台座
1184 第1ダイヤフラム部
1188 第2ダイヤフラム部
1186 凹部
1187 第2台座
1231、1331、1431、1531 第1突起部
1631 第2突起部
1762 連通溝
図1
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