(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】グリッパ、及びシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
B25J15/08 C
B25J15/08 L
(21)【出願番号】P 2020553847
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2019041909
(87)【国際公開番号】W WO2020090655
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2018205754
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】大塚 誠
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-15905(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0066109(US,A1)
【文献】特表2018-527210(JP,A)
【文献】特開2001-105376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリッパであって、
開閉可能な少なくとも一対の可動部を備え、その開閉に基づいて被挟持物を挟持又は開放するように構成され、
前記一対の可動部は、その間においてセンサー収容空間の少なくとも一部を形成するように構成され、
前記センサー収容空間は、
前記被挟持物が非侵入に構成され、
所定のセンサーを収容可能に構成され、前記所定のセンサーは、前記一対の可動部間の距離に依存する所定の長さを測定
し、
前記一対の可動部の少なくとも一方の長手方向に形成された穴を含む、
グリッパ。
【請求項2】
請求項
1に記載のグリッパにおいて、
プランジャをさらに備え、
前記可動部は、トップジョーを着脱可能なマスタージョーであり、
前記プランジャは、
前記マスタージョーが配置される面に平行な所定の面上で変位可能に構成され、
前記マスタージョーと凹凸構造に沿って嵌合されることで前記マスタージョーと連動して摺動し、これにより前記マスタージョーを開閉可能に構成される、
グリッパ。
【請求項3】
システムであって、
グリッパと、センサーとを備え、
前記グリッパは、開閉可能な少なくとも一対の可動部を備え、その開閉に基づいて被挟持物を挟持又は開放するように構成され、
前記一対の可動部は、その間においてセンサー収容空間の少なくとも一部を形成するように構成され、
前記センサー収容空間は、前記被挟持物が非侵入に、且つ前記センサーを収容可能に構成され、
前記センサーは、
前記一対の可動部間の距離に依存する所定の長さを測定することにより、前記被挟持物の大きさを測定可能に構成され、
細長部材と、前記細長部材を挿通可能に構成される環状部材とを有し、
前記環状部材に設けられた受信機が、前記環状部材に挿通された前記細長部材の長手方向の変位を読み取り可能に構成され、
前記細長部材の一端が前記一対の可動部の一方に固定され、前記環状部材が前記一対の可動部の他方に固定され、
前記センサー収容空間は、さらに、前記一対の可動部の少なくとも一方の長手方向に形成された穴を含み、
前記細長部材の一端及び前記環状部材の少なくとも一方が前記穴の内部に固定され、
前記グリッパが前記被挟持物を挟持することによって、前記被挟持物の運搬とその大きさの測定とを実施可能に構成される、
システム。
【請求項4】
請求項
3に記載のシステムにおいて、
前記可動部はマスタージョーであり、
前記グリッパは、プランジャと、トップジョーとをさらに備え、
前記プランジャは、
前記マスタージョーが配置される面に平行な所定の面上で変位可能に構成され、
前記マスタージョーと凹凸構造に沿って嵌合されることで前記マスタージョーと連動して摺動し、これにより前記マスタージョーを開閉可能に構成され、
前記トップジョーは、前記マスタージョーに着脱可能に構成され、前記マスタージョーに取り付けられた状態において、前記被挟持物を挟持可能に構成される、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリッパ、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットのハンドとしてアーム先端部に取り付けられ、被挟持物であるワークを挟持する際に使用されるグリッパがある(特許文献1)。このようなグリッパでは、マスタージョーとプランジャとが連動して摺動することでマスタージョー及び、マスタージョーに接合されているトップジョーが開閉される。そして、トップジョーの開閉により被挟持物であるワークを挟持・開放することができる。このようなグリッパが、工場の生産ライン等において、ワークの運搬に用いられている。
【0003】
ところで、工場の生産ライン等において、品質維持のためワーク外径の測定は不可欠である。設計寸法に満たないワークを使用することは製品の不具合を誘発する。そのため生産ラインでは、ワーク外径の寸法を測定する測定工程が必要となるが、測定のための専用機器を用意することとなり、生産コストが増大する。また、測定工程そのものにも余分な時間がかかってしまい、生産リードタイムが長尺化してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、工場の生産ライン等においてコストと時間とを節約することができるグリッパ及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、グリッパであって、開閉可能な少なくとも一対の可動部を備え、その開閉に基づいて被挟持物を挟持又は開放するように構成され、前記一対の可動部は、その間においてセンサー収容空間の少なくとも一部を形成するように構成され、前記センサー収容空間は、前記被挟持物が非侵入に構成され、所定のセンサーを収容可能に構成され、前記所定のセンサーは、前記一対の可動部間の距離に依存する所定の長さを測定する、グリッパが提供される。
【0007】
本発明に係るグリッパでは、一対の可動部の間には、センサー収容空間が設けられ、かかるセンサー収容空間は、被挟持物(ワーク)が非侵入に且つ所定のセンサーを収容可能に構成され、かかる所定のセンサーは、一対の可動部間の距離に依存する所定の長さを測定するように実施される。このような構成により、グリッパに所定のセンサーを導入することでワークを運搬するためにグリッパがワークを挟持する工程において前述の測定工程をも同時に行うことができ、コストと時間とを節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】[
図1A]本発明の実施形態に係る摺動構造体の一例であるグリッパの全体斜視図、[
図1B]
図1Aとは異なる角度からの全体斜視図。
【
図3】[
図3A]
図2のA-A断面図であって、プランジャが-y方向に変位している状態、[
図3B]
図2のA-A断面図であって、プランジャが+y方向に変位している状態。
【
図5】グリッパに含まれるマスタージョーの斜視図。
【
図7】センサーの概要図であり、上部に示されるものはマスタージョーが離間している状態に対応し、下部に示されるものはマスタージョーが近接している状態に対応する。
【
図8】センサーをグリッパに取り付けた状態での
図2のB-B断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
1.全体構成
第1節では、グリッパ1の全体構成を説明する。
図1A及び
図1Bは、それぞれグリッパ1の全体斜視図であり、
図2は、グリッパ1の平面図である。また、
図3A及び
図3Bは、
図2のA-A断面図を示している。グリッパ1は、産業用ロボット(不図示)を用いてワーク(不図示)を運搬等する際に、当該ワークをトップジョー(不図示)によって支持するように構成される。
図1A及び
図1Bに示されるよう、グリッパ1は、本体10と、リアカバー11と、マスタージョー13と、カバー14とを外観から目視可能に有する。また、
図3A及び
図3Bに示されるように、グリッパ1は、ピストン15と、プランジャ16とを、本体10の内部に備えている。
【0011】
図4は、グリッパ1における本体10を示す斜視図である。本体10には、段差10Taを有するような逆T字形状の溝10Tが、正面側から背面側にすなわちx軸方向に沿って形成されている。
図1A及び
図1Bに示されるように、溝10Tには、一対のマスタージョー13が摺動可能に嵌合するように設けられる。また、本体10には、溝10Tに直交し且つ面10Tbを彫り込むように円筒状の止まり穴10hが設けられ、
図3A及び
図3Bに示されるように、プランジャ16が止まり穴10hに嵌合するように設けられる。
【0012】
図5は、グリッパ1に含まれるマスタージョー13を示す斜視図である。
図5では、一対のマスタージョー13のうちの右側のマスタージョー13rが示されている。なお、
図1A及び
図1Bからも明らかなように、左側のマスタージョー13lは、右側のマスタージョー13rとyz平面に平行な対称面に対して対称に構成される。マスタージョー13は、溝10Tに嵌合するように、+x方向に見て段差130を有するような逆T字形状に構成される。そして、一対のマスタージョー13が、xy平面に平行な面上である面10Tbに配置される。マスタージョー13を本体10に嵌合させると、本体10における段差10Taとマスタージョー13における段差130とが互いに係止されることにより、マスタージョー13がz方向には変位せず、またy方向にも変位せず、x方向にのみ変位可能に構成される。
【0013】
また、マスタージョー13の矩形状の裏面131には、平行溝132が2箇所設けられている。平行溝132は、裏面131の一方の長辺131aから他方の長辺131bに向かって貫通し、且つ長辺131a、131bと非垂直な角α(例えば、約45度)を成すように斜めに形成されている。平行溝132は、後述するプランジャ16における凸部162(
図6参照)と嵌合可能に構成される。
【0014】
さらに、左右のマスタージョー13(13r、13l)の壁面135には、マスタージョー13が開閉する方向(±x方向)に延在する挿通孔134(特許請求の範囲における「穴」の一例)が設けられている。また、グリッパ1において左右の壁面135に囲まれた空間104が形成されていることに留意されたい。空間104及び挿通孔134は、特許請求の範囲における「センサー収容空間」の一例に相当する。これについては、第2節においてさらに詳述する。
【0015】
図6は、グリッパ1に含まれるプランジャ16を示す斜視図である。一対のマスタージョー13に対応するように一対のプランジャ16が設けられ、
図6では、右側のマスタージョー13rに対応する右側のプランジャ16rが示されている。なお、
図1A及び
図1Bからも明らかなように、左側のプランジャ16lは、右側のプランジャ16rとyz平面に平行な対称面に対して対称に構成される。プランジャ16は、全体的に円筒状に形成され、その先端部(+y側)が切り取られて-z方向に見て矩形状の平板部161が形成されている。平板部161には、凸部162が2箇所設けられている。凸部162は、矩形状の平板部161の一方の長辺161aから他方の長辺161bに向かい、且つ長辺161a、161bと非垂直な角β(例えば、約45度)を成すように斜めに形成されている。このような構成により、マスタージョー13における平行溝132と、プランジャ16における凸部162が摺動可能に嵌合することとなり、これらが特許請求の範囲における「凹凸構造」の一例に相当する。
【0016】
プランジャ16の根元部(-y側)の基端には、螺合孔163が設けられている。
図3A及び
図3Bに示されるように、ピストン15は、取付孔15aを有し、取付孔15aにボルト15bを挿通させるとともに、その軸部を螺合孔163に螺合させることで、ピストン15とプランジャ16とを一体的に固定することができる。また、ピストン15は、本体10の内部において、ピストン15が有するシリンダ室にエアを給排させることによって、±y方向に変位可能(スライド動作)に構成される。そして、プランジャ16は、溝10Tに直交し且つ面10Tbを彫り込むように形成された円筒状の止まり穴10hに嵌合されている。このような構成により、ピストン15のy方向の変位に連動して、ピストン15に固定された一対のプランジャ16が止まり穴10hに沿ってy方向に変位可能に構成される。
【0017】
ここで、前述の角αと角βの和が90度となるように実施することで、マスタージョー13とプランジャ16とが直交して相対変位可能に構成されることに留意されたい。前述の通り、本体10における溝10Tに嵌合されたマスタージョー13は、溝10Tが延在しているx方向にのみ変位可能に構成される。そのため、ピストン15をy方向に変位させることによりプランジャ16をy方向に往復的に変位させると、凸部162の側壁162aが平行溝132の側壁132aを押圧して(又は、凸部162の側壁162bが平行溝132の側壁132bを押圧して)、マスタージョー13をx方向に往復的に変位させることができる。また、グリッパ1において、プランジャ16は、一対のマスタージョー13が配置される面(xy平面に平行な面)に平行な所定の面上に変位可能に構成されるといえる。
【0018】
具体的には、右側のプランジャ16rを+y方向に変位させると、右側のマスタージョー13rが-x方向に変位する。右側のプランジャ16rを-y方向に変位させると、右側のマスタージョー13rが+x方向に変位する。左側のプランジャ16lを+y方向に変位させると、左側のマスタージョー13lが+x方向に変位する。左側のプランジャ16lを-y方向に変位させると、左側のマスタージョー13lが-x方向に変位する。つまり、一対のプランジャ16を+y方向に変位させると、一対のマスタージョー13が互いに近接し、一対のプランジャ16を-y方向に変位させると、一対のマスタージョー13が互いに離間するように構成される。このようにして、一対のマスタージョー13を開閉させることができる。
【0019】
以上説明した主たる構成要素を本体10に組み込んだ上で、リアカバー11と、カバー14とを
図1に示されるように取り付けることにより、グリッパ1が構成される。なお、マスタージョー13の中心側の高さは、低部133として低く形成されているため、カバー14をした状態でも、低部133がカバー14の下方(-z方向)に潜り込むことで一対のマスタージョー13を互いに近接させることができる。そして、マスタージョー13の上方(+z方向)にトップジョー(不図示)が着脱可能に構成され、かかるトップジョーによって所望のワークが支持される。このとき、トップジョーによって支持されるワークが、マスタージョー13の間に形成される空間104に侵入しないことに留意されたい。
【0020】
2.グリッパ1に取付可能なセンサー2
第2節では、グリッパ1に取付可能なセンサー2について説明する。第1節において説明した通り、マスタージョー13の間に形成される空間104と、マスタージョー13に設けられた挿通孔134は、センサー2を取付可能なセンサー収容空間として構成される。
図7は、センサー2の概要図であり、上部に示されるものはマスタージョー13が離間している状態に対応し、下部に示されるものはマスタージョー13が近接している状態に対応する。また、
図8は、センサー2をグリッパ1に取り付けた状態での、
図2のB-B断面図を示している。
【0021】
図7に示されるように、センサー2は、細長形状のスケールロッド21(特許請求の範囲における「細長部材」の一例)と、円筒状(環状)の読み取り部22(特許請求の範囲における「環状部材」の一例)とを備える。スケールロッド21を読み取り部22に挿通させた状態で、スケールロッド21と読み取り部22とをスケールロッド21の長手方向に相対的に変位させると、読み取り部22の内部に設けられた不図示の受信機がその変位を測定する。なお、このような構成を有するセンサー2は、あくまでも好ましい一例でありこの限りではない。例えば、円筒状ではなく平板状に形成された読み取り部22の上をスケールロッド21が長手方向に変位するようにセンサー2を構成してもよい。あるいは、平板状に形成された読み取り部22を2個対向するように配置し、その間をスケールロッド21が長手方向に変位するようにセンサー2を構成してもよい。さらには、円筒以外の環状に形成された読み取り部22を採用してもよい。本実施形態では、このようなセンサー2をグリッパ1におけるマスタージョー13の内部に組み込んだシステムを構成することで、ワークの運搬と、ワークの外径の正確な測定とを同時に実現することができる。以下、かかるシステムの態様について詳述する。
【0022】
左側のマスタージョー13lの挿通孔134lの中心と、右側のマスタージョー13rの挿通孔134rの中心とはx方向に沿って略一直線状に位置するものの、両挿通孔134の形状はセンサー2の構造上異なるものとすることが好ましい。
図8に示されるように、右側のマスタージョー13rの挿通孔134rの内部には、スケールロッド21の一端21aが固定されている。一方、左側のマスタージョー13lの挿通孔134lの内部には、読み取り部22が固定されている。すなわち、スケールロッド21は、一端21aから挿通孔134r及び空間104を通過するように延在し、さらに左側のマスタージョー13lに設けられた挿通孔134lに進入するとともに、その内部に固定された読み取り部22に挿通される。なお、スケールロッド21及び読み取り部22それぞれの固定方法は特に限定されず、嵌め込み等の機構的な方法でもよいし、接着剤を用いる等、他の物質を介してもよい。
【0023】
すなわち、マスタージョー13が開閉することにより、右側のマスタージョー13rに固定されたスケールロッド21と、左側のマスタージョー13lに固定された読み取り部22との相対的位置が、
図7の上部に示される状態から下部に示される状態に、又は下部に示される状態から上部に示される状態に変化し、これを読み取り部22が具備する不図示の受信機が読み取ることで、マスタージョー13間の距離に依存する所定の長さを正確に測定することができる。なお、
図7においては、マスタージョー13が近接する方向にそれぞれ距離d変位する態様が示されている。こうして、マスタージョー13のx方向における変位(いわゆる開閉の度合い)を正確に測定することができ、マスタージョー13の上側(+z方向)に取り付けられた不図示のトップジョーのx方向における変位も、間接的に測定することができる。その結果、当該トップジョーが挟持しているワーク(不図示)の外径をさらに測定することができる。換言すると、マスタージョー13の開閉度合いに依存する所定の長さをセンサー2が測定することによって、同じくマスタージョー13の開閉度合いに依存するワークの外径を測定することができる。
【0024】
このような構成では、トップジョーがマスタージョー13に直接取り付けられていることから、センサー2によって測定されたマスタージョー13の開閉度合いと、それに基づいて測定されるワークの外径との誤差が小さいことに留意されたい。従来のグリッパ(不図示)では、プランジャ等の他の部材がマスタージョーの間に入り込む構成になっており、センサー2を取り付けることができなかった。また、ワークから遠い位置においてワークの外径に依存する所定の長さを測長手段で測定しようとしても、その誤差が大きく実用的ではなかった。本実施形態では、前述のような発明者らによる創意工夫により、別途の測定工程を経ることなく、運搬工程中に同時に正確なワークの外径測定を行うことを可能とした。
【0025】
3.変形例
なお、次のような態様によって、本実施形態に係るグリッパ1をさらに創意工夫してもよい。
【0026】
第一に、本実施形態では、右側のマスタージョー13rの挿通孔134rの内部にスケールロッド21の一端21aを固定し、左側のマスタージョー13lの内部に読み取り部22を固定するように実施しているが、逆に、左側のマスタージョー13lの挿通孔134lの内部にスケールロッド21の一端21aを固定し、右側のマスタージョー13rの内部に読み取り部22を固定するように実施してもよい。かかる場合、適宜、挿通孔134の形状を決定することが好ましい。
【0027】
第二に、マスタージョー13に代えて、不図示のトップジョーや当該トップジョーに連動する一対の可動部にセンサー2を取り付けられるように実施してもよい。かかる場合、一対の可動部が、その間にセンサー収容空間の少なくとも一部を形成するように構成されればよい。さらに必要に応じて当該可動部の少なくとも一方に挿通孔134に相当する穴を設け、スケールロッド21の一端21a及び読み取り部22の少なくとも一方を当該穴の内部に固定してもよい。換言すると、可動部の開閉度合いに依存する所定の長さをセンサー2が測定することによって、同じく可動部の開閉度合いに依存するワークの外径を測定することができる。
【0028】
第三に、本実施形態では、マスタージョー13における平行溝132及びプランジャ16における凸部162が2個ずつ設けられているが、これらの個数を例えば、1個や3~5個等、適宜変更してもよい。
【0029】
第四に、角αと角βの和を90度に代えて、例えば、角α及び角βともに135度とする等、角αと角βの和を270度となるように実施してもよい。かかる場合、プランジャ16と連動するマスタージョー13の動きが前述の実施形態と逆になることに留意されたい。すなわち、右側のプランジャ16rを+y方向に変位させると、右側のマスタージョー13rが+x方向に変位する。右側のプランジャ16rを-y方向に変位させると、右側のマスタージョー13rが-x方向に変位する。左側のプランジャ16lを+y方向に変位させると、左側のマスタージョー13lが-x方向に変位する。左側のプランジャ16lを-y方向に変位させると、左側のマスタージョー13lが+x方向に変位する。つまり、一対のプランジャ16を+y方向に変位させると、一対のマスタージョー13が互いに離間し、一対のプランジャ16を-y方向に変位させると、一対のマスタージョー13が互いに近接するように構成される。このようにして、一対のマスタージョー13を開閉させることができる。
【0030】
4.結言
以上のように、本実施形態によれば、工場の生産ライン等においてコストと時間とを節約することができるグリッパ1を実施することができる。
【0031】
かかるグリッパ1は、開閉可能な少なくとも一対の可動部(マスタージョー13)を備え、その開閉に基づいて被挟持物を挟持又は開放するように構成され、一対の可動部(マスタージョー13)は、その間においてセンサー収容空間の少なくとも一部(空間104)を形成するように構成され、センサー収容空間(空間104及び挿通孔134)は、被挟持物が非侵入に構成され、所定のセンサー2を収容可能に構成され、所定のセンサー2は、一対の可動部(マスタージョー13)間の距離に依存する所定の長さを測定する。
【0032】
次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記グリッパにおいて、前記センサー収容空間は、前記一対の可動部の少なくとも一方の長手方向に形成された穴を含む、グリッパ。
前記グリッパにおいて、プランジャをさらに備え、前記可動部は、トップジョーを着脱可能なマスタージョーであり、前記プランジャは、前記マスタージョーが配置される面に平行な所定の面上で変位可能に構成され、前記マスタージョーと凹凸構造に沿って嵌合されることで前記マスタージョーと連動して摺動し、これにより前記マスタージョーを開閉可能に構成される、グリッパ。
システムであって、グリッパと、センサーとを備え、前記グリッパは、開閉可能な少なくとも一対の可動部を備え、その開閉に基づいて被挟持物を挟持又は開放するように構成され、前記一対の可動部は、その間においてセンサー収容空間の少なくとも一部を形成するように構成され、前記センサー収容空間は、前記被挟持物が非侵入に、且つ前記センサーを収容可能に構成され、前記センサーは、前記一対の可動部間の距離に依存する所定の長さを測定することにより、前記被挟持物の大きさを測定可能に構成され、前記グリッパが前記被挟持物を挟持することによって、前記被挟持物の運搬とその大きさの測定とを実施可能に構成される、システム。
前記システムにおいて、前記センサーは、細長部材と、前記細長部材を挿通可能に構成される環状部材とを有し、前記環状部材に設けられた受信機が、前記環状部材に挿通された前記細長部材の長手方向の変位を読み取り可能に構成され、前記細長部材の一端が前記一対の可動部の一方に固定され、前記環状部材が前記一対の可動部の他方に固定される、システム。
前記システムにおいて、前記センサー収容空間は、前記一対の可動部の少なくとも一方の長手方向に形成された穴を含み、前記細長部材の一端及び前記環状部材の少なくとも一方が前記穴の内部に固定される、システム。
前記システムにおいて、前記可動部はマスタージョーであり、前記グリッパは、プランジャと、トップジョーとをさらに備え、前記プランジャは、前記マスタージョーが配置される面に平行な所定の面上で変位可能に構成され、前記マスタージョーと凹凸構造に沿って嵌合されることで前記マスタージョーと連動して摺動し、これにより前記マスタージョーを開閉可能に構成され、前記トップジョーは、前記マスタージョーに着脱可能に構成され、前記マスタージョーに取り付けられた状態において、前記被挟持物を挟持可能に構成される、システム。
もちろん、この限りではない。
【0033】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0034】
1 :グリッパ
104 :空間
13 :マスタージョー
134 :挿通孔
15 :ピストン
16 :プランジャ
2 :センサー
21 :スケールロッド
22 :読み取り部