(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】組成物、転写シート、メラミン化粧板及びメラミン化粧板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20230914BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230914BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230914BHJP
C08L 33/00 20060101ALI20230914BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20230914BHJP
E04B 1/92 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C08L83/04
B32B27/00 101
B32B27/30 A
B32B27/00 E
C08L33/00
C08K3/36
E04B1/92
(21)【出願番号】P 2021031988
(22)【出願日】2021-03-01
(62)【分割の表示】P 2021510488の分割
【原出願日】2020-10-06
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2020076030
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】草深 一真
(72)【発明者】
【氏名】塚本 雅大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
(72)【発明者】
【氏名】士反 慶介
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-124501(JP,A)
【文献】特開2005-314616(JP,A)
【文献】特開2016-135838(JP,A)
【文献】特開2012-176515(JP,A)
【文献】特開2012-082287(JP,A)
【文献】国際公開第2019/074121(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
B32B 1/00-43/00
E04F 13/00-13/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物と、
(B)親水性溶媒に分散されたオルガノシリカゾルと、
(C)親水基と疎水基とを有するアクリルポリマーと、
(m)消臭性物質、(n)抗ウイルス性物質、及び(o)抗アレルゲン性物質から成る群から選ばれる少なくとも一種の物質と、
を含み、
前記(B)親水性溶媒に分散されたオルガノシリカゾルは、前記(A)ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物の固形分換算での1質量部に対して0.5~12質量部配合され、 前記(C)親水基と疎水基とを有するアクリルポリマーは、前記(B)親水性溶媒に分散されたオルガノシリカゾルの固形分換算での1質量部に対して0.005~0.3質量部配合され
、
前記(m)消臭性物質の配合量が、前記(A)ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物、前記(B)親水性溶媒に分散されたオルガノシリカゾル、及び前記(C)親水基と疎水基とを有するアクリルポリマーの固形分100質量部に対して30~60質量部である、
組成物。
【請求項2】
(A)ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物と、
(B)親水性溶媒に分散されたオルガノシリカゾルと、
(C)親水基と疎水基とを有するアクリルポリマーと、
(m)消臭性物質、(n)抗ウイルス性物質、及び(o)抗アレルゲン性物質から成る群から選ばれる少なくとも一種の物質と、
を含み、
前記(B)親水性溶媒に分散されたオルガノシリカゾルは、前記(A)ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物の固形分換算での1質量部に対して0.5~12質量部配合され、 前記(C)親水基と疎水基とを有するアクリルポリマーは、前記(B)親水性溶媒に分散されたオルガノシリカゾルの固形分換算での1質量部に対して0.005~0.3質量部配合され、
前記(n)抗ウイルス性物質の配合量が、前記(A)ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物、前記(B)親水性溶媒に分散されたオルガノシリカゾル、及び前記(C)親水基と疎水基とを有するアクリルポリマーの固形分100質量部に対して、35~75質量部である、
組成物。
【請求項3】
(A)ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物と、
(B)親水性溶媒に分散されたオルガノシリカゾルと、
(C)親水基と疎水基とを有するアクリルポリマーと、
(m)消臭性物質、(n)抗ウイルス性物質、及び(o)抗アレルゲン性物質から成る群から選ばれる少なくとも一種の物質と、
を含み、
前記(B)親水性溶媒に分散されたオルガノシリカゾルは、前記(A)ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物の固形分換算での1質量部に対して0.5~12質量部配合され、 前記(C)親水基と疎水基とを有するアクリルポリマーは、前記(B)親水性溶媒に分散されたオルガノシリカゾルの固形分換算での1質量部に対して0.005~0.3質量部配合され、
前記(o)抗アレルゲン性物質の配合量が、前記(A)ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物、前記(B)親水性溶媒に分散されたオルガノシリカゾル、及び前記(C)親水基と疎水基とを有するアクリルポリマーの固形分100質量部に対して、3~50質量部である、
組成物。
【請求項4】
前記(m)消臭性物質を含み、
前記(m)消臭性物質は、化学吸着型の消臭性物質を含む、請求項1~請求項3
のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
前記化学吸着型の消臭性物質は、酸化亜鉛、シリカ、ゼオライト、酸化銅、及び酸化ジルコニムから成る群から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項
4記載の組成物。
【請求項6】
前記(n)抗ウイルス性物質を含み、
前記(n)抗ウイルス性物質は、トリアジン-チアゾール-イミダゾール系物質、アミノ変性ポリビニルアルコール、及びアミノ変性アクリルポリマーから成る群から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1~請求項
5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
(o)抗アレルゲン性物質を含み、
前記(o)抗アレルゲン性物質は、アニオン変性された有機化合物と担持体との複合物を含む、請求項1~請求項
6いずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
前記アニオン変性された有機化合物は、アニオン変性直鎖アルカン、及びアニオン変性ポリビニルアルコールから成る群から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項
7記載の組成物。
【請求項9】
前記担持体は、スチレン粒子、及び酸化銀粒子から成る群から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項
7又は請求項
8記載の組成物。
【請求項10】
メラミン化粧板用である、請求項1~請求項
9いずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
シート状基材と、
前記シート状基材の片面に形成された、請求項1~請求項
10いずれか1項記載の組成物の硬化層と、
を有する、転写シート。
【請求項12】
コア層と、
メラミン樹脂の硬化物を含む化粧層と、
請求項1~
10いずれか1項記載の組成物の硬化層と、をこの順に含む、メラミン化粧板。
【請求項13】
メラミン化粧板の製造方法であって、
前記メラミン化粧板は、コア層と、メラミン樹脂の硬化物を含む化粧層と、表層と、をこの順に含み、
請求項1~
10いずれか1項記載の組成物を硬化させて前記表層を形成することを含む、メラミン化粧板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本国際出願は、2020年4月22日に日本国特許庁に出願された日本国特許出願第2020-76030号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2020-76030号の全内容を本国際出願に参照により援用する。
【0002】
本開示は、組成物、転写シート、メラミン化粧板及びメラミン化粧板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
メラミン化粧板は、メラミン樹脂含有パターン紙を意匠層とし、当該メラミン樹脂含有パターン紙と、コア材、例えばフェール樹脂含浸紙とを、プレス機で加熱加圧することにより得られる。メラミン化粧板は、パターン紙の絵柄、色調等を変えることにより多様な仕上がりとなる。
【0004】
このようなメラミン化粧板は表面硬度、耐熱性、耐摩耗性等の諸物性に優れることからカウンター、机等の家具、壁面、床等の内装材等に広く用いられている。
【0005】
近年では、メラミン化粧板は指紋の付着が目立ちやすい、油汚れが目立つといった問題や、家屋の気密性の高まりに伴い生活臭が気になるといった問題が出てきており、病院等の公共施設ではより清潔な環境が必要とされるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-176515号公報
【文献】特開2017-205928号公報
【文献】特開2018-27694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
出願人は、耐指紋性、油払拭性を備える化粧板(特許文献1)を開示しているが、特許文献1の組成物には消臭性を付与する物質を均一に分散しにくく、消臭性が十分に得られない場合があった。また、出願人は、消臭性能を付与し、生活臭、薬品臭を低減する化粧板(特許文献2)を開示しているが、特許文献2の方法では抗ウイルス性又は抗アレルゲン性を付与する物質を均一に塗工するのが難しく、抗ウイルス性又は抗アレルゲン性が十分に得られない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、組成物であって、(A)ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物と、(B)親水性溶媒に分散されたオルガノシリカゾルと、(C)親水基と疎水基とを有するアクリルポリマーと、(m)消臭性物質、(n)抗ウイルス性物質、及び(o)抗アレルゲン性物質から成る群から選ばれる少なくとも一種の物質と、を含む。
【0009】
本開示の一態様は、転写シートであって、シート状基材と、シート状基材の片面に形成された、上述した組成物の硬化層と、を有する。
【0010】
本開示の一態様は、メラミン化粧板であって、コア層と、化粧層と、上述した組成物の硬化層と、をこの順に含む。化粧層は、メラミン樹脂層の硬化物を含む。
【0011】
本開示の一態様は、メラミン化粧板の製造方法であって、メラミン化粧板は、コア層と、メラミン樹脂の硬化物を含む化粧層と、表層と、をこの順に含む。メラミン化粧板の製造方法は、上述の組成物を硬化させて表層を形成することを含む。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様によれば、消臭性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性等の機能性を示す物質(以下、機能発現物質という。)を均一に分散することができ、機能性に優れた組成物が提供される。
【0013】
また、本開示の一態様によれば、このような組成物の硬化物を含み、機能性に優れた転写シート及びメラミン化粧板、並びに当該メラミン化粧板の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示について詳細に説明する。
【0016】
(A)ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物は格子状の骨格を形成しており、後述する機能発現物質を配合すると均一に分散させ、少量の機能発現物質の添加量で効果を発揮する。具体的なケイ素アルコキシドとしては、下記化学式1で示される構造(nは整数)を有するものが挙げられ、より具体的には、オルトケイ酸テトラメチル(Si(OCH3)4)、オルトケイ酸テトラエチル(Si(OC2H5)4)及びオルトケイ酸テトラプロピル(Si(OC3H7)4)等が挙げられる。ケイ素アルコキシドは、主に四塩化ケイ素とアルキルアルコールとの反応、或いは金属ケイ素とアルキルアルコールとの反応により合成される。
<化学式1>
【0017】
【化1】
ケイ素アルコキシドと水とを混合させ反応させると、化学式2に示す反応式(mは整数)に従って加水分解が進行する。加水分解液を安定させるために、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチルセロソルブ、混合アルコール等が溶媒として用いられる。
<化学式2>
【0018】
【化2】
ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物の市販品としては、「HAS-1」(SiO
2含有量20.7~21.5質量%、エタノール/イソプロパノール/メタノール混合溶媒)、「HAS-6」(SiO
2含有量17.6~18.4質量%、エタノール/メタノール混合溶媒)、「HAS-10」(SiO
2含有量10.0~10.4質量%、エタノール/イソプロパノール/メタノール混合溶媒)(以上は商品名であり、コルコート株式会社製である。)が挙げられる。
【0019】
(B)成分のオルガノシリカゾルとしては、例えば、平均粒子径1~40nm(更に好ましくは平均粒子径7~30nm)のコロイダルシリカを有機溶媒に安定的に分散させたコロイド溶液が挙げられる。シリカ濃度は1~50質量%の範囲が好ましく、ゲル化防止のために40質量%以下のものがより好ましい。尚、コロイダルシリカの平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法で求めた粒度分布における積算値50%での粒子径である。
【0020】
オルガノシリカゾルの市販品としては、日産化学工業株式会社製の「IPA-ST」、「IPA-ST-ZL」、「メタノールシリカゾル」、「NPC-ST-30」、「MEK-AC-2140Z」、「EG-ST」、「DMAC-ST」等、触媒化成工業株式会社製の「OSCAL」、扶桑化学工業株式会社製の「クォートロン(登録商標)」、クラリアントジャパン株式会社製の「Highlink(登録商標)OGシリカオルガノゾル」等が挙げられる。
【0021】
有機溶媒の中でも親水性溶媒に分散されたオルガノシリカゾルは、シリカ粒子表面の水酸基量が十分であり、シリカ粒子表面の水酸基がメラミン樹脂と密着し、化粧板の表面耐久性に優れたものになる。疎水性溶媒に分散されたオルガノシリカゾルでは、シリカ表面の水酸基量が不十分であり、メラミン樹脂層の密着性が劣りやすくなる。
【0022】
ここで、親水性(極性)溶媒とは、水との親和性を有する溶媒であり、例えば、分子内に水酸基、カルボキシル基、カルボニル基等の親水基を有する親水性有機溶媒である。親水性(極性)溶媒としては、プロトン性極性溶媒及び非プロトン性極性溶媒が挙げられる。プロトン性極性溶媒の具体例として、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノール、エチレンジアルコール、プロパノール等のアルコール系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、n-プロピルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒が挙げられる。非プロトン性極性溶媒としては、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ピリジン等が挙げられる。
【0023】
(C)成分のアクリルポリマーは、顔料との親和性を発揮する親水基を有する単量体と、相溶性をコントロールし立体障害を形成する疎水基を有する単量体との共重合体が好ましい。このようなアクリルポリマーは、親水基が機能発現物質を吸着し、疎水基が凝集を抑制することにより、機能発現物質を均一に分散できる。実際、20~30nm程度の粒子径を有するオルガノシリカゾルは、凝集して600~1000nmと粒子径が大きな集合体を形成するが、均一に分散されることにより、機能性組成物の硬化層の光散乱性が高まり、光の干渉による外観不良を低減することができる。
【0024】
親水基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等のアニオン性基、アミノ基、アンモニウム基等のカチオン性基が挙げられ、親水基有する単量体として、具体的に、アクリル酸、アクリルアミド、メタクリル酸、ポリ(エチレングリコール)アクリレート及びメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、t-ブチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、メタクリルアミド、ジメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、エチレングリコールメタクリレートホスフェート、2-(メタクリロイルオキシ)メチルフタレート、2-(メタクリロイルオキシ)エチルスクシネート、3-スルホプロピルメタクリレート、3-スルホプロピルアクリレート等が挙げられる。
【0025】
疎水基としては、アルキル基、フェニル基等が挙げられる。具体的には、疎水基を有する単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘキシルエチル、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、それらの混合物等が挙げられる。
【0026】
上述した組成物において、(B)成分のオルガノシリカゾルは(A)成分のケイ素アルコキシドの加水分解縮合物1質量部(固形分換算)に対して0.5~12質量部、より好ましくは1~9質量部配合されることが好ましい。(B)成分の配合割合が当該下限以上であることにより機能性発現効果が向上し、当該上限以下であることにより耐溶剤性が向上する。
【0027】
(C)成分の親水基と疎水基とを有するアクリルポリマーは、(B)成分1質量部(固形分換算)に対して0.005~0.3質量部、より好ましくは0.01~0.07質量部(固形分換算)配合されることが好ましい。(C)成分の配合割合が当該上限を超えるとコロイダルシリカの凝集性が高くなるため、上記(C)成分の配合割合が当該上限以下であると、低屈折率層の光の干渉による外観不良を抑制することができる。また、上記(C)成分の配合割合が当該下限以上であると、配合液が適度な粘度となり均一な低屈折率層の成形が可能となり、指紋が一層目立ちにくく、印刷紙の絵柄が一層鮮明なメラミン化粧板になる。
【0028】
(A)ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物と、(B)親水性溶媒に分散されたオルガノシリカゾルと、(C)親水基と疎水基とを有するアクリルポリマーと、を含む組成物は、添加する機能発現物質の分散性を向上させる。具体的には、(A)成分の格子状の塗膜構造内に機能発現物質が入り込むため、機能発現物質を均一に塗工でき、また、少量の添加量でも効率的な機能の発現が可能になる。特に、機能発現物質が、固体、具体的には、平均粒子径が200~5000nmの固体粒子を含有する場合には、このような効果が得られやすい。ここでいう平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法で求めた粒度分布における積算値50%での粒子径である。
【0029】
機能発現物質は、(m)消臭性物質、(n)抗ウイルス性物質、(o)抗アレルゲン性物質から成る群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。上述の組成物に機能発現物質を配合して、ホモジナイザーにより6000~10000rpmで5~10分撹拌することが好ましい。ホモジナイザーは、組成物を高圧に加圧し、スリット(隙間)を抜ける際に強い剪断力が組成物にかかるため、ディスパーで撹拌することにより均一に分散することが可能となる。
【0030】
次に機能発現物質の例として消臭性を発現する(m)消臭性物質について述べる。多孔質材料、例えば活性炭等の物理吸着型の消臭性物質は、多孔質材料の細孔に臭い(ガス)が吸着して消臭効果を発揮する。物理吸着型の消臭性物質では、常温でガスを吸着した後に高温の熱、摩擦熱等の熱に触れると、吸着性能が低下することにより、吸着したガスが再放出される可能性がある。
【0031】
一方、化学吸着型の消臭性物質は、臭いを酸・アルカリによる中和作用、酸化・還元作用等の化学反応により他の物質に変化させて除去するものであり、一旦臭い(ガス)が吸着され、他の物質に分解されると、再放出されにくいため、好適に用いることができる。化学吸着型の消臭性物質としては、シリカ(二酸化ケイ素)、酸化銅、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、水酸化ジルコニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第一鉄、水酸化銅等の金属水酸化物が挙げられる。
【0032】
これらの消臭性を発現する(m)消臭性物質は、耐熱性、耐摩耗性に優れるメラミン化粧板が、更に、住宅内で発生する生活臭、すなわち、酸性臭気、中性臭気、及び塩基性臭気の複合臭に対応できるため、上述の化学吸着型の消臭性物質を用いるのが好ましい。近年の住宅は、従来に比べて高気密、高断熱を謳った仕様になっており、隙間がない密閉空間になっている。そのため、生活臭がより感じられやすくなっている。このような生活臭を抑えるため、一般的には、販売されている消臭剤製品が使用される。しかし、メラミン化粧板自体が消臭性を有することで、生活臭をより低減することができる。
【0033】
化学吸着型の消臭性物質としては、具体的には、酸化亜鉛、シリカ、ゼオライト、酸化銅、及び酸化ジルコニウムから成る群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。例えば金属酸化物として酸化亜鉛とシリカとを併用して、配合比率を質量比で前者:後者=45~85:55~15とするのが好ましい。消臭性物質はとりわけ微粒子状のもの、具体的には平均粒子径が0.2~10μmのものが、組成物中での分散性がよく好ましい。ここでいう平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法で求めた粒度分布における積算値50%での粒子径である。特にアセトアルデヒド、ホルムアルデヒド等の中性臭及びアンモニアトリメチルアミン等の塩基性臭には変性シリカ、例えばアミノ変性シリカが、硫化水素、メルカプタン類等の硫黄系ガス、酢酸イソ吉草酸、酪酸等の酸性臭には酸化亜鉛が、消臭効果が高いため好ましい。また、ゼオライトとしては、ゼオライト銀含有物質(すなわち、銀を含有するゼオライト)であってもよい。
【0034】
組成物中の(m)消臭性物質の配合量は、組成物の固形分100質量部に対して、30~60質量部(固形分換算)であることが好ましい。(m)消臭性物質が当該下限に満たないと、消臭効果が少なくなりやすくなり、当該上限を超えるとメラミン化粧板表面に白化ムラが生じやすくなる。ここでいう白化ムラとは、メラミン化粧板表面に部分的に白っぽくぼやけた部分が生じている状態をいう。
【0035】
次に機能発現物質の例として抗ウイルス性を発現する(n)抗ウイルス性物質について詳しく述べる。抗ウイルス性物質としては、酸化チタン等が主流である、光触媒がある。光触媒は、光の励起光から活性酸素を発生させウイルスを不活化し、原理的に半永久的に効果を発揮できるが、光の照射がないと性能を発揮できないといった欠点がある。
【0036】
一方、有機系抗ウイルス性物質はウイルスのタンパク質の外壁膜を破壊し、外壁膜を破壊されたウイルスはタンパク質の合成が阻害される。或いは有機系抗ウイルス性物質はタンパク質を変性しウイルスを不活化する。有機系抗ウイルス性物質は、光触媒系と比較して効果の発現が早いという特徴がある。
【0037】
有機系抗ウイルス性物質としては、トリアジン-イミダゾール-チアゾール系物質、アミノ変性ポリビニルアルコール、及びアミノ変性アクリルポリマーから成る群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。これらの有機系抗ウイルス性物質は、耐溶剤性、耐汚染性が要求されるメラミン化粧板には好都合である。有機系抗ウイルス性物質は、とりわけ微粒子状のもの、具体的には、トリアジン-イミダゾール-チアゾール系物質が担持された粒子、アミノ変性ポリビニルアルコール粒子、及びアミノ変性アクリルポリマー粒子から成る群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。粒子状の有機系抗ウイルス性物質の平均粒子径は、組成物中での分散性がよいため、0.5~3μmが好ましい。尚、ここでいう平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法で求めた粒度分布における積算値50%での粒子径である。
【0038】
組成物中の(n)抗ウイルス性物質の配合量は、組成物の固形分100質量部に対して、35~75質量部(固形分換算)であることが好ましい。(n)抗ウイルス性物質の配合量が当該下限に満たないと、抗ウイルス効果が少なくなりやすくなり、当該上限を超えるとメラミン化粧板表面に白化ムラが生じる。
【0039】
次に機能発現物質の例として抗アレルゲン性を発現する(o)抗アレルゲン性物質について詳しく述べる。空気中には目に見えないほこりが漂っており、ほこりの中にはスギ花粉やダニの死骸やふん等のアレルゲン物質が含まれ、アレルギーを引き起こす原因となっている。(o)抗アレルゲン性物質としては、アニオン変性された有機化合物と担持体との複合物が好ましい。複合物がアレルゲン物質のタンパク質に化学吸着反応することにより、アレルゲン物質の低減効果を発揮する。
【0040】
(o)抗アレルゲン性物質を構成するアニオン変性された有機化合物のみでも同様の低減効果を発揮するが、アニオン変性された有機化合物のみではメラミン化粧板表面に固着させることが困難であり抗アレルゲン性の耐久性が乏しくなりやすくなる。そのため、アニオン変性された有機化合物を、固体成分である担持体との複合体にして含ませると良い。担持体との複合体は、メラミン化粧板表面に物理的に固着することが出来るため、耐久性が求められるメラミン化粧板には特に好ましい。
【0041】
アニオン変性された有機化合物としては、例えば、アニオン変性直鎖アルカン、アニオン変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。アニオン変性直鎖アルカンとしては、具体的には、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等の酸性アニオン基によって変性された直鎖アルカンが挙げられる。酸性アニオン基のカウンターイオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が挙げられる。アニオン変性ポリビニルアルコールとしては、カルボキシル基、スルホン酸基等の酸性アニオン基によって変性されたポリビニルアルコールが挙げられる。また、担持体としては、無機粒子又は有機粒子、例えば、塩基変性アクリル粒子等のアクリル粒子、塩基変性スチレン粒子等のスチレン粒子、酸化銀粒子等が挙げられる。担持体としては、スチレン粒子及び酸化銀から成る群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。(o)抗アレルゲン性物質は、とりわけ微粒子状のもの、具体的には平均粒子径が1~8μmのものが好ましい。尚、ここでいう平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法で求めた粒度分布における積算値50%での粒子径である。
【0042】
組成物中の(o)抗アレルゲン性物質の配合量は、組成物の固形分100質量部に対して、3~50質量部(固形分換算)であることが好ましい。(o)抗アレルゲン性物質の配合量が当該下限に満たないと、抗アレルゲン効果が少なくなりやすくなり、当該上限を超えるとメラミン化粧板表面に白化ムラが生じやすくなる。
【0043】
次に、これらの機能発現物質、すなわち、(m)消臭性物質、(n)抗ウイルス性物質、(o)抗アレルゲン性物質を組み合わせて用いる場合の配合量について説明する。
【0044】
(m)消臭性物質と(n)抗ウイルス性物質とを組み合わせる場合は、配合比率が質量比で(m)消臭性物質:(n)抗ウイルス性物質=1:0.5~2.50であることが好ましく、より好ましくは1:0.60~2.0である。配合比率が当該下限未満の場合、及び当該上限を超える場合は、消臭性と抗ウイルス性とを兼ね備えた製品としてバランスがやや劣る。
【0045】
また、組成物中における(m)消臭性物質及び(n)抗ウイルス性物質の合計配合量は、組成物の固形分100質量部に対して、60~150質量部であることが好ましく、より好ましくは75~115質量部である。合計配合量がこの範囲であれば、外観、消臭性、抗ウイルス性に特に優れた化粧板となる。すなわち、合計配合量が当該下限未満の場合は消臭性、抗ウイルス性がやや劣り、当該上限を超える場合は、外観においてやや白化ムラが生じやすくなる。
【0046】
(m)消臭性物質と(o)抗アレルゲン性物質とを組み合わせる場合は、配合比率が質量比で(m)消臭性物質:(o)抗アレルゲン性物質=1:0.03~2.0であることが好ましく、より好ましくは1:0.08~1.8である。配合比率が当該下限未満の場合及び当該上限を超える場合は、消臭性と抗アレルゲン性とを兼ね備えた製品としてバランスがやや劣る。
【0047】
また、組成物中における(m)消臭性物質及び(o)抗アレルゲン性物質の合計配合量は、組成物の固形分100質量部に対して30~160質量部であることが好ましく、より好ましくは35~110質量部である。合計配合量がこの範囲であれば、外観、消臭性、抗アレルゲン性に特に優れた化粧板となる。すなわち、合計配合量が当該下限未満の場合は消臭性、抗アレルゲン性がやや劣り、当該上限を超える場合は、外観においてやや白化ムラが生じやすくなる。
【0048】
(n)抗ウイルス性物質と(o)抗アレルゲン性物質とを組み合わせる場合は、配合比率が質量比で(n)抗ウイルス性物質:(o)抗アレルゲン性物質=1:0.01~2.0であることが好ましく、より好ましくは1:0.06~1.50である。配合比率が当該下限未満の場合及び当該上限を超える場合は、抗ウイルス性と抗アレルゲン性とを兼ね備えた製品としてバランスがやや劣る。
【0049】
また、組成物中における(n)抗ウイルス性物質及び(o)抗アレルゲン性物質の合計配合量は、組成物の固形分100質量部に対して15~200質量部であることが好ましく、より好ましくは35~125質量部である。合計配合量がこの範囲であれば、外観、抗ウイルス性、抗アレルゲン性に特に優れた化粧板となる。すなわち、合計配合量が当該下限未満の場合は抗ウイルス性、抗アレルゲン性がやや劣り、当該上限を超える場合は、外観においてやや白化ムラが生じやすくなる。
【0050】
(m)消臭性物質と(n)抗ウイルス性物質と(o)抗アレルゲン性物質とを組み合わせる場合は、配合比率が質量比で、(m)消臭性物質:(n)抗ウイルス性物質:(o)抗アレルゲン性物質=1:0.20~7.0:0.05~5.5が好ましく、より好ましくは1:0.6~4.5:0.15~3.0である。また、組成物中における(m)消臭性物質、(n)抗ウイルス性物質、及び(o)抗アレルゲン性物質の合計配合量は、組成物の固形分100質量部に対して30~170質量部であることが好ましく、より好ましくは50~120質量部である。配合比率及び合計配合量がこの範囲であれば、外観、消臭性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性がバランス良く優れ、相乗効果によって少ない塗布量でも単独で発揮する機能よりも同等以上の機能を発揮する化粧板となる。勿論所望の範囲で各機能を際立たせるため(m)消臭性物質、(n)抗ウイルス性物質、(o)抗アレルゲン性物質の配合量を適宜調整することができる。
【0051】
化粧層は、メラミン樹脂の硬化物を含む。化粧層は、坪量が80~140g/m2程度の化粧紙にメラミン樹脂を主成分とする樹脂液(以下、メラミン樹脂液という。)が含浸、乾燥されたメラミン樹脂含浸パターン紙を含む。メラミン樹脂含浸パターン紙の上には、化粧紙の絵柄を保護するため坪量が16~60g/m2程度オーバーレイ紙にメラミン樹脂液を含浸、乾燥したメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙が配され、オーバーレイ層が設けられていても良い。オーバーレイ層にもメラミン樹脂の硬化物を含む。化粧層の表面、或いはオーバーレイ層の表面には、表層として、上述の組成物や更に機能発現物質を含有した組成物(以下、機能性組成物という。)の硬化層が形成される。硬化層を形成する手段としては、メラミン樹脂液を化粧紙或いはオーバーレイ紙に含浸する際に、メラミン樹脂液を含浸した後に、表面に組成物や機能性組成物を含む塗工液を塗布する塗工法、シート状基材に機能性組成物を塗布した転写シートを用いる転写法等が採用される。例えば、転写法では、まず、シート状基材の片面に機能性組成物の硬化層が形成された転写シートと、メラミン樹脂含浸パターン紙と、コア材とを、この順に有する積層物を、熱圧成形する。或いは、メラミン樹脂含浸オーバーレイ紙を用いる場合は、メラミン樹脂含浸パターン紙の上にメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙を更に配置して熱圧成形する。積層物では、転写シートにおける硬化層側がメラミン樹脂含浸パターン紙或いはメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙と向かい合っている。その後、シート状基材を除去する。
【0052】
メラミン樹脂液の数式1で定義される含浸率は、70~160%の範囲が好ましい。
<数式1>
【0053】
【数1】
転写法で用いるシート状基材としては、プラスチックフィルム、金属箔等が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリルフィルム等を使用することができる。
【0054】
金属箔としては金箔、銀箔、銅箔、亜鉛箔、インジウム箔、アルミニウム箔、錫箔、鉄箔(ステンレス(SUS)箔を含む)、チタン箔等が挙げられる。
【0055】
転写法でシート状基材に機能性組成物を含む塗工液を塗布する場合は、公知の方法、例えば、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、カーテンコート法、リバースコート法、コンマコート法等を用いることができる。このような方法で得られた転写シートは、最上層となるメラミン樹脂含浸紙に塗布面、すなわち、機能性組成物の硬化層側の面が当接するようにメラミン樹脂含浸紙上に積層され、コア層を形成するコア材とともに熱圧成形される。
【0056】
機能性組成物を含む塗工液の塗布厚みについて詳述する。(m)消臭性物質を含有する場合の機能性組成物(以下、消臭性機能発現組成物という。)を含む塗工液の塗布厚みは、塗工法、転写法いずれも、乾燥状態で2.0~6.5μmが好ましい。塗布厚みが当該下限以上であると、消臭性能が一層発揮される。塗布厚みが当該上限を超えると外観の白化ムラとなりやすい。(n)抗ウイルス性物質を含有する場合の機能性組成物(以下、抗ウイルス性機能発現組成物という。)を含む塗工液の塗布厚みは、塗工法、転写法いずれも、乾燥状態で1.5~3.5μmが好ましい。塗布厚みが当該下限に満たないと、抗ウイルス性能が発揮されにくい。塗布厚みが当該上限を超えると外観の白化ムラとなりやすい。上述の(o)抗アレルゲン性物質を含有する場合の機能性組成物(以下、抗アレルゲン性機能発現組成物という。)を含む塗工液の塗布厚みは、塗工法、転写法いずれも、乾燥状態で2.0~8.0μmが好ましい。塗布厚みが当該下限に満たないと、抗アレルゲン性能が発揮されにくい。塗布厚みが当該上限を超えると外観の白化ムラとなりやすい。
【0057】
また、機能性組成物を含む塗工液のpHは、塗工法、転写法いずれも、3以上が好ましい。pHが3に満たないと(A)成分の格子構造が破壊され、化粧板の表面に白化ムラが生じやすくなる。塗工液のpHとは、固形分濃度(機能性組成物に含まれる上述した固形分の塗工液中における濃度)が20質量%となるように調整された塗工液において測定されるpHをいう。また、pHの値は、JIS Z8802:2011「pH測定方法」に準拠し、ガラス電極法の操作に基づいて求められる。
【0058】
尚、機能発現物質を含まない組成物を含む塗工液の塗布厚みは、塗工法、転写法いずれも、乾燥状態で2.0~8.0μmが好ましく、塗布厚みが当該下限に満たないと、指紋の付着が目立ちやすく、塗布厚みが上限を超えると外観の白化ムラとなりやすい。また、塗工液のpHは、機能発現物質を含む場合と同様に3以上が好ましい。pHの測定方法も機能発現物質を含む場合と同様である。
【0059】
コア材には、クラフト紙、晒しクラフト紙等の有機繊維質基材に、バインダーとなる樹脂、例えば、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルヒアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂液を含浸し、乾燥させて得られた熱硬化性樹脂含浸コア紙を用いることができる。
【0060】
また、上述の熱硬化性樹脂含浸コア紙の他に、ガラス繊維、ロックウール、炭素繊維、セラミック繊維等の無機繊維からなる不織布、織布等を基材とし、無機充填材及びバインダー成分を含むスラリーを含浸し、乾燥したプリプレグを用いてもよい。不燃性を付与することができるためである。特に、耐熱性、耐炎性に優れ、スラリーの含浸性が優れるガラス繊維不織布が好ましい。
【0061】
無機充填材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の吸熱性金属水酸化物、吸熱性金属水酸化物以外の無機物質としては、炭酸カルシウム、タルク、フライアッシュ等が挙げられ、これらは一種以上を用いることができる。吸熱性金属水酸化物としては、結晶水を含み、高温時に分解されて吸熱し結合水を放出することにより、不燃性に優位であるため、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムを用いることが好ましい。
【0062】
吸熱性金属水酸化物と吸熱性金属水酸化物以外の無機物質とを併用する場合、吸熱性金属水酸化物以外の無機物質1質量部に対して、吸熱性金属水酸化物の配合量が2~15質量部であると、平滑で良好な表面外観が得られるため、好ましい。また、吸熱性金属水酸化物以外の無機物質1質量部に対して、吸熱性金属水酸化物の配合量が2質量部以上であることにより、不燃性能に優れる。また、吸熱性金属水酸化物以外の無機物質1質量部に対して、吸熱性金属水酸化物の配合量が15質量部以下であることにより、スラリー中の金属水酸化物が沈降しにくくなり、その結果、スラリーの含浸量のコントロールが容易になる。また、吸熱性金属水酸化物以外の無機物質1質量部に対して、吸熱性金属水酸化物の配合量が15質量部以下であることにより、化粧板の切削に用いる刃物の摩耗を低減できる。
【0063】
バインダーとしては、アミノ-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、これらの混合樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。バインダー成分と無機充填材との固形分の配合比率は質量比で5~20:95~80とするのが望ましい。バインダー成分が多いと不燃性能が低下しやすく、少ないとプリプレグ同士の密着性が劣りやすくなる。
【0064】
無機繊維基材へのスラリーの含浸率(%)は、上述の数式1で示される算出方法で、500~3000%の範囲が好ましい。含浸率が当該上限を超えると固形分の脱落が多くなり取り扱いにくく、また含浸率が当該下限に満たないと層間剥離しやすくなる。
【0065】
その他コア材として、珪酸カルシウム、合板、中密度繊維板、パーティクルボード等を用いることができ、コア材については特に制約はない。
【0066】
バッカー材はメラミン化粧板の収縮による反りを抑制する場合に、コア材の裏面に配して積層され熱圧成形される。バッカー材の例としては、基材に繊維質基材を用いた、メラミン含浸紙、フェノール含浸紙等が挙げられる。繊維質基材としては、α-セルロース紙、チタン紙、クラフト紙、晒しクラフト紙等を用いることができる。
【実施例】
【0067】
以下、本開示を実施例、実験例、及び比較例により説明するが、本開示は以下に示される例に何ら限定されるものではない。
【0068】
[実施例1]
1.(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含む組成物の製造
(A)ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物として、オルトケイ酸テトラエチル(エチルシリケート)加水分解液(商品名「HAS-1」、コルコート株式会社製)100質量部(固形分換算)と、(B)親水性溶媒に分散されたオルガノシリカゾルとして、「NPC-ST-30」(商品名、日産化学工業株式会社製、平均粒子径10~15nm、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル分散シリカゾル、SiO230質量%)を600質量部(固形分換算)と、(C)親水基と疎水基とを有するアクリルポリマーとして、「DISPERBYK-2009」(アクリルコポリマーの溶液、アクリルコポリマー44質量%、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル)(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)を13.2質量部(固形分換算)を含む組成物を得た。
【0069】
2.消臭性機能発現組成物の製造
上記1.で製造した、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含む組成物の固形分100質量部に対して、酸化亜鉛74質量%及びアミノ変性シリカ質量26%を含み、平均粒子径が350nmの(m)消臭性物質を40質量部配合し、ホモジナイザーで、8100rpmで10分撹拌して消臭性機能発現組成物(M)を得た。
【0070】
3.転写シートの製造
消臭性機能発現組成物(M)を含む塗工液をプラスチックフィルムに乾燥後の膜厚が4.5μmとなるように塗工して転写シート(M)を得た。尚、塗工液は、固形分濃度、すなわち、機能性組成物に含まれる上述した固形分の塗工液中における濃度が20質量%となるように調製された。また、塗工液のpHは5.8であった。塗工液のpHはガラス電極式pHメーター(製品名:LAQUA 型番 F-71、株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。以下、他の実施例、比較例、及び実験例においても同様である。
【0071】
4.メラミン樹脂含浸パターン紙(M)の製造
坪量100g/m2の茶色の化粧板用の化粧紙に、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液(AA)を含浸し、メラミン樹脂含浸パターン紙(M)を得た。メラミン樹脂含浸パターン紙(M)の数式1で定義される含浸率は140%であった。尚、化粧紙の表面には、導管部を有する木目模様の絵柄が印刷されていた。
【0072】
5.プリプレグの製造
50g/m2のガラス繊維基材に、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂とフェノール-ホルムアルデヒド樹脂とをバインダー成分とし、無機充填剤として水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等の無機充填材を含むスラリーを、数式1に基づく含浸率が1200%となるように浸し、乾燥し、プリプレグを得た。スラリー中のバインダー成分と無機充填材との固形分の質量比は、8:92であった。
【0073】
6.バッカーの製造
80g/m2の化粧板用化粧紙に、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液を数式1で示される含浸率が150%となるように含浸し、乾燥してバッカーを得た。
【0074】
7.化粧板の製造
下から順に、バッカーを1枚、プリプレグを5枚、メラミン樹脂含浸パターン紙(M)を1枚、転写シート(M)を1枚積層し、積層物をフラット仕上げプレートを用いて140℃、100kg/cm2、90分間の条件で熱圧成形し、プラスチックフィルムを剥がしてメラミン化粧板を得た。
【0075】
[実施例2]
実施例1において、(m)消臭性物質を60質量部配合した以外は同様に実施した。
【0076】
[実施例3]
実施例1において、(m)消臭性物質を30質量部配合した以外は同様に実施した。
【0077】
[実施例4]
実施例1において、(C)成分の「DISPERBYK-2009」を9.3質量部配合した以外は同様に実施した。
【0078】
[実施例5]
実施例1において、(C)成分の「DISPERBYK-2009」を16.8質量部配合した以外は同様に実施した。
【0079】
[実施例6]
実施例1において、(B)成分の「NPC-ST-30」を400質量部配合した以外は同様に実施した。
【0080】
[実施例7]
実施例1において、(B)成分の「NPC-ST-30」を900質量部配合した以外は同様に実施した。
【0081】
[実施例8]
実施例1において、(m)消臭性物質の平均粒子径を200nmにした以外は同様に実施した。
【0082】
[実施例9]
実施例1において、(m)消臭性物質の平均粒子径を1000nmにした以外は同様に実施した。
【0083】
[実施例10]
実施例1において、消臭性機能発現組成物(M)を含む塗工液の乾燥後の膜厚が2.0μmとなるように塗工した以外は同様に実施した。
【0084】
[実施例11]
実施例1において、消臭性機能発現組成物(M)を含む塗工液の乾燥後の膜厚が6.5μmとなるように塗工した以外は同様に実施した。
【0085】
[実施例12]
実施例1において、酸化亜鉛を45%、アミノ変性シリカを55%含む(m)消臭性物質を用いた以外は同様に実施した。
【0086】
[実施例13]
実施例1において、酸化亜鉛を85%、アミノ変性シリカを15%含む(m)消臭性物質を用いた以外は同様に実施した。
【0087】
[実施例14]
1.抗ウイルス性機能発現組成物の製造
実施例1の(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含む組成物の固形分100質量部に対して、トリアジン-イミダゾール-チアゾール系の有機系合成抗ウイルス性物質であって、平均粒子径が1000nm、(n)抗ウイルス性物質を50質量部配合して、ホモジナイザーで、8100rpmで10分撹拌して抗ウイルス性機能発現組成物(N)を得た。
【0088】
2.転写シートの製造
抗ウイルス性機能発現組成物(N)を含む塗工液をプラスチックフィルムに乾燥後の膜厚が2.2μmとなるように塗工して転写シート(N)を得た。塗工液のpHは8.3であった。
【0089】
3.化粧板の製造
実施例1において、転写シート(M)の代わりに、上記転写シート(N)を用いた以外は同様に実施した。
【0090】
[実施例15]
実施例14において、(C)成分の「DISPERBYK-2009」を26.4質量部配合し、(n)抗ウイルス性物質を35質量部配合した以外は同様に実施した。
【0091】
[実施例16]
実施例14において、(C)成分の「DISPERBYK-2009」を26.4質量部配合し、(n)抗ウイルス性物質を75質量部配合した以外は同様に実施した。
【0092】
[実施例17]
実施例14において、(C)成分の「DISPERBYK-2009」を9.3質量部配合した以外は同様に実施した。
【0093】
[実施例18]
実施例14において、(C)成分の「DISPERBYK-2009」を16.8質量部配合した以外は同様に実施した。
【0094】
[実施例19]
実施例14において、(C)成分の「DISPERBYK-2009」を26.4質量部配合し、抗ウイルス性機能発現組成物を含む塗工液を乾燥後の膜厚が3.5μmとなるように塗工した以外は同様に実施した。
【0095】
[実施例20]
実施例19において、抗ウイルス性機能発現組成物を含む塗工液を乾燥後の膜厚が1.5μmとなるように塗工した以外は同様に実施した。
【0096】
[実施例21]
実施例19において、(n)抗ウイルス性物質の平均粒子径を3000nmにし、抗ウイルス性機能発現組成物を含む塗工液を乾燥後の膜厚が2.2μmとなるように塗工した以外は同様に実施した。
【0097】
[実施例22]
実施例21において、(n)抗ウイルス性物質の平均粒子径を500nmにした以外は同様に実施した。
【0098】
[実施例23]
1.抗アレルゲン性機能発現組成物の製造
実施例1の(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含む組成物の固形分100質量部に対して、(o)抗アレルゲン性物質として、平均粒子径が2000nm、酸性アニオン基変性直鎖アルカンのナトリウム塩とスチレン粒子との複合体である有機系合成抗アレルゲン性物質(「アレルバスターBV」、積水マテリアルソリューションズ株式会社製)を10質量部配合して、ホモジナイザーで、8100rpmで10分撹拌して抗アレルゲン性機能発現組成物(O)を得た。
【0099】
2.転写シートの製造
抗アレルゲン性機能発現組成物(O)を含む塗工液をプラスチックフィルムに乾燥後の膜厚が4.0μmとなるように塗工して転写シート(O)を得た。尚、塗工液のpHは6.8であった。
【0100】
3.化粧板の製造
実施例1において、転写シート(M)の代わりに、上記転写シート(O)を用いた以外は同様に実施した。
【0101】
[実施例24]
実施例23において、(o)抗アレルゲン性物質を3質量部配合した以外は同様に実施した。
【0102】
[実施例25]
実施例23において、(o)抗アレルゲン性物質を50質量部配合した以外は同様に実施した。
【0103】
[実施例26]
実施例23において、(o)抗アレルゲン性物質の平均粒子径を5000nmの酸性アニオン基変性直鎖アルカンのナトリウム塩とスチレン粒子との複合体である有機系合成抗アレルゲン性物質(「アレルバスターBV」、積水マテリアルソリューションズ株式会社製)を用いた以外は同様に実施した。
【0104】
[実施例27]
実施例23において、(o)抗アレルゲン性物質として、平均粒子径が1000nmの酸性アニオン基変性直鎖アルカンのナトリウム塩とスチレン粒子との複合体である有機系合成抗アレルゲン性物質(「アレルバスターBV」、積水マテリアルソリューションズ株式会社製)を用いた以外は同様に実施した。
【0105】
[実施例28]
実施例23において、抗アレルゲン性組成物を含む塗工液を乾燥後の膜厚が2.0μmとなるように塗工した以外は同様に実施した。
【0106】
[実施例29]
実施例23において、抗アレルゲン性組成物を含む塗工液を乾燥後の膜厚が8.0μmとなるように塗工した以外は同様に実施した。
【0107】
[実施例30]
実施例23において、(B)成分の「NPC-ST-30」を900質量部配合した以外は同様に実施した。
【0108】
[実施例31]
実施例23において、(B)成分の「NPC-ST-30」を300質量部配合した以外は同様に実施した。
【0109】
[実施例32]
1.熱硬化性樹脂含浸コア紙の製造
坪量200g/m2のクラフト紙に、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液を、数式1で定義される含浸率が50%となるように含浸し、乾燥して、熱硬化性樹脂含浸コア紙としてのフェノール樹脂含浸コア紙を得た。
【0110】
2.化粧板の製造
下から順に、フェノール樹脂含浸コア紙を5枚、実施例1と同様のメラミン樹脂含浸パターン紙(M)を1枚、転写シート(M)を1枚積層し、積層物をフラット仕上げプレートを用いて140℃、100kg/cm2、90分間の条件で熱圧成形し、プラスチックフィルムを剥がしてメラミン化粧板を得た。
【0111】
[実施例33]
実施例2において、プリプレグの代わりにフェノール樹脂含浸コア紙を用い、バッカーを用いなかった以外は同様に実施した。
【0112】
[実施例34]
実施例3において、プリプレグの代わりにフェノール樹脂含浸コア紙を用い、バッカーを用いなかった以外は同様に実施した。
【0113】
[実施例35]
実施例32において、(m)消臭性物質の平均粒子径を200nmにした以外は同様に実施した。
【0114】
[実施例36]
実施例32において、(m)消臭性物質の平均粒子径を1000nmにした以外は同様に実施した。
【0115】
[実施例37]
実施例32において、消臭性機能発現組成物を含む塗工液を乾燥後の膜厚が2.5μmとなるように塗工した以外は同様に実施した。
【0116】
[実施例38]
実施例32において、消臭性機能発現組成物を含む塗工液を乾燥後の膜厚が6.5μmとなるように塗工した以外は同様に実施した。
【0117】
[実施例39]
実施例14において、プリプレグの代わりにフェノール樹脂含浸コア紙を用い、バッカーを用いなかった以外は同様に実施した。
【0118】
[実施例40]
実施例15において、プリプレグの代わりにフェノール樹脂含浸コア紙を用い、バッカーを用いなかった以外は同様に実施した。
【0119】
[実施例41]
実施例16において、プリプレグの代わりにフェノール樹脂含浸コア紙を用い、バッカーを用いなかった以外は同様に実施した。
【0120】
[実施例42]
実施例19において、プリプレグの代わりにフェノール樹脂含浸コア紙を用い、バッカーを用いなかった以外は同様に実施した。
【0121】
[実施例43]
実施例20において、プリプレグの代わりにフェノール樹脂含浸コア紙を用い、バッカーを用いなかった以外は同様に実施した。
【0122】
[実施例44]
実施例39において、(n)抗ウイルス性物質の平均粒子径を3000nmにした以外は同様に実施した。
【0123】
[実施例45]
実施例39において、(n)抗ウイルス性物質の平均粒子径を500nmにした以外は同様に実施した。
【0124】
[実施例46]
実施例23において、プリプレグの代わりにフェノール樹脂含浸コア紙を用い、バッカーを用いなかった以外は同様に実施した。
【0125】
[実施例47]
実施例24において、プリプレグの代わりにフェノール樹脂含浸コア紙を用い、バッカーを用いなかった以外は同様に実施した。
【0126】
[実施例48]
実施例25において、プリプレグの代わりにフェノール樹脂含浸コア紙を用い、バッカーを用いなかった以外は同様に実施した。
【0127】
[実施例49]
実施例26において、プリプレグの代わりにフェノール樹脂含浸コア紙を用い、バッカーを用いなかった以外は同様に実施した。
【0128】
[実施例50]
実施例27において、プリプレグの代わりにフェノール樹脂含浸コア紙を用い、バッカーを用いなかった以外は同様に実施した。
【0129】
[実施例51]
実施例28において、プリプレグの代わりにフェノール樹脂含浸コア紙を用い、バッカーを用いなかった以外は同様に実施した。
【0130】
[実施例52]
実施例29において、プリプレグの代わりにフェノール樹脂含浸コア紙を用い、バッカーを用いなかった以外は同様に実施した。
【0131】
[実施例53]
実施例1において、(m)消臭性物質としてゼオライトを用いた以外は同様に実施した。
【0132】
[実施例54]
実施例1において、(m)消臭性物質として酸化銅を用いた以外は同様に実施した。
【0133】
[実施例55]
実施例1において、(m)消臭性物質として酸化ジルコニウムを用いた以外は同様に実施した。
【0134】
[実施例56]
実施例14において、(n)抗ウイルス性物質としてアミノ変性ポリビニルアルコール粒子を用いた以外は同様に実施した。
【0135】
[実施例57]
実施例14において、(n)抗ウイルス性物質としてアミノ変性アクリル粒子を用いた以外は同様に実施した。
【0136】
[実施例58]
実施例23において、(o)抗アレルゲン性物質のアニオン変性された有機化合物として、酸性アニオン基変性直鎖アルカンのナトリウム塩の代わりに酸性アニオン基変性ポリビニルアルコールを用いた以外は同様に実施した。
【0137】
[実施例59]
実施例23において、(o)抗アレルゲン性物質の担持体として、スチレン粒子の代わりに酸化銀粒子を用いた以外は同様に実施した。
【0138】
[実施例60]
実施例1において、消臭性機能発現組成物(M)の代わりに実施例1で得た(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含む組成物を用いた以外は同様に実施した。
【0139】
[実施例61]
実施例1において、下記メラミン樹脂含浸パターン紙(Mt)を用い、下記の製造方法を用いた以外は同様に実施した。
【0140】
<メラミン樹脂含浸パターン紙(Mt)の製造>
坪量100g/m2の茶色の化粧板用の化粧紙に、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液(AA)を、数式1で定義される含浸率が140%になるように含浸した。そして、当該化粧紙に、実施例1の消臭性機能発現組成物(M)を含む塗工液を乾燥後の膜厚が4.5μmとなるように塗工してメラミン樹脂含浸パターン紙(Mt)を得た。尚、化粧紙の表面には、導管部を有する木目模様の絵柄が印刷されていた。
【0141】
<化粧板の製造>
下から順に、バッカーを1枚、プリプレグを5枚、メラミン樹脂含浸パターン紙(Mt)を1枚積層し、フラット仕上げプレートを用いて140℃、100kg/cm2、90分間の条件で熱圧成形してメラミン化粧板を得た。
【0142】
[実施例62]
実施例14において、下記メラミン樹脂含浸パターン紙(Nt)を用い、下記の製造方法を用いた以外は同様に実施した。
【0143】
<メラミン樹脂含浸パターン紙(Nt)の製造>
坪量100g/m2の茶色の化粧板用の化粧紙に、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液(AA)を、数式1で定義される含浸率が140%になるように含浸し含浸紙を得た。そして、当該含浸紙の表面に、実施例14の抗ウイルス性機能発現組成物(N)を含む塗工液を乾燥後の膜厚が2.2μmとなるように塗工してメラミン樹脂含浸パターン紙(Nt)を得た。尚、化粧紙の表面には、導管部を有する木目模様の絵柄が印刷されていた。
【0144】
<化粧板の製造>
下から順に、バッカーを1枚、プリプレグを5枚、メラミン樹脂含浸パターン紙(Nt)を1枚積層し、フラット仕上げプレートを用いて140℃、100kg/cm2、90分間の条件で熱圧成形してメラミン化粧板を得た。
【0145】
[実施例63]
実施例23において、下記メラミン樹脂含浸パターン紙(Ot)を用い、下記の製造方法を用いた以外は同様に実施した。
【0146】
<メラミン樹脂含浸パターン紙(Ot)の製造>
坪量100g/m2の茶色の化粧板用の化粧紙に、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする樹脂液(AA)を、数式1で定義される含浸率が140%になるように含浸し含浸紙を得た。そして、当該含浸紙の表面に、実施例23の抗アレルゲン性機能発現組成物(O)を含む塗工液を乾燥後の膜厚が4.0μmとなるように塗工してメラミン樹脂含浸パターン紙(Ot)を得た。尚、化粧紙の表面には、導管部を有する木目模様の絵柄が印刷されていた。
【0147】
<化粧板の製造>
下から順に、バッカーを1枚、プリプレグを5枚、メラミン樹脂含浸パターン紙(Ot)を1枚積層し、フラット仕上げプレートを用いて140℃、100kg/cm2、90分間の条件で熱圧成形してメラミン化粧板を得た。
【0148】
[比較例1]
実施例1において、(A)ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物の代わりに、アクリル樹脂とシロキサンとが複合化されたシロキサングラフト型ポリマー(商品名「ZX-036」、水酸基価119、溶剤種 酢酸ブチル/2-プロパノール、富士化成工業株式会社製)を用いた以外は同様に実施した。
【0149】
[比較例2]
実施例1において、(B)親水性溶媒に分散されたオルガノシリカゾルの代わりに、疎水性シリカゾル(商品名「サイロホービック」、富士シリシア化学株式会社製)を用いた以外は同様に実施した。
【0150】
[比較例3]
実施例1において、(C)親水基と疎水基とを有するアクリルポリマーの代わりに、(x)反応性(メタ)アクリルポリマーとしてメタクリロイル官能基含有アクリルポリマー(商品名「RA-3705MB」、根上工業株式会社製)100質量部を用い、熱重合開始剤として、1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン(商品名「カヤレン6-70」、化薬アクゾ株式会社製)0.4質量部配合した以外は同様に実施した。
【0151】
[比較例4]
比較例3において、機能発現物質を含有しない以外は同様に実施した。
【0152】
[比較例5~比較例9]
比較例3において、表4-1及び表4-2に示す条件に変更した以外は同様に実施した。
【0153】
[実施例64~実施例78]
実施例1において、表5-1及び表5-2に示す条件に変更した以外は同様に実施した。尚、実施例64~実施例78においては、(m)消臭性物質として実施例1と同様の消臭性物質を、(n)抗ウイルス性物質として実施例14と同様の抗ウイルス性物質を、(o)抗アレルゲン性物質として実施例23と同様の抗アレルゲン性物質を、それぞれ使用した。
【0154】
[実施例79~実施例93]
実施例1において、表6-1及び表6-2に示す条件に変更した以外は同様に実施した。尚、実施例79~実施例93においては、(m)消臭性物質として実施例1と同様の消臭性物質を、(n)抗ウイルス性物質として実施例14と同様の抗ウイルス性物質を、(o)抗アレルゲン性物質として実施例23と同様の抗アレルゲン性物質を、それぞれ使用した。
【0155】
ただし、実施例88においては、(A)成分として、「HAS-1」の代わりに、オルトケイ酸テトラエチル(エチルシリケート)の加水分解縮合物である「HAS-6」を用いた。実施例89においては、(A)成分として、「HAS-1」の代わりに、オルトケイ酸テトラエチル(エチルシリケート)の加水分解縮合物である「HAS-10」を用いた。実施例90においては、(B)成分として、「NPC-ST-30」の代わりに、「IPA-ST」(商品名、日産化学工業株式会社製、平均粒子径10~15nm、イソプロピルアルコール分散シリカゾル、SiO230質量%)を用いた。実施例91においては、(B)成分として、「NPC-ST-30」の代わりに、「MEK-AC-2140Z」(商品名、日産化学工業株式会社製、平均粒子径10~15nm、メチルエチルケトン分散シリカゾル、SiO240質量%)を用いた。実施例92においては、(C)成分として、「DISPERBYK-2009」の代わりに、「DISPERBYK-2000」(アクリルコポリマーの溶液、アクリルコポリマー40質量%、1-メトキシ-2-プロピルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテル)(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)を用いた。実施例93においては、(C)成分として、「DISPERBYK-2009」の代わりに、「DISPERBYK-2008」(アクリルコポリマーの溶液、アクリルコポリマー60質量%、ポリプロピレングリコール40%、商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)を用いた。
【0156】
[実施例94]
<メラミン樹脂含浸オーバーレイ紙の製造>
坪量22g/m2のオーバーレイ紙に実施例1と同様の樹脂液(AA)を含浸し、メラミン樹脂含浸オーバーレイ紙を得た。メラミン樹脂含浸オーバーレイの数式1で定義される含浸率は260%であった。
【0157】
<化粧板の製造>
実施例79と同様の転写シートを用意した。
【0158】
また、数式1で定義される含浸率が100%となるようにした以外は実施例1と同様に、メラミン樹脂含浸パターン紙を得た。
【0159】
また、実施例32と同様のフェノール樹脂含浸コア紙を用意した。
【0160】
下から順に、フェノール樹脂含浸コア紙を5枚、メラミン樹脂含浸パターン紙を1枚、メラミン樹脂含浸オーバーレイ紙を1枚、転写シートを1枚積層し、積層物をフラット仕上げプレートを用いて140℃、100kg/cm2、90分間の条件で熱圧成形し、プラスチックフィルムを剥がしてメラミン化粧板を得た。
【0161】
[実施例95]
実施例94において、実施例80の転写シートを用いた以外は同様に実施した。
【0162】
[実施例96]
実施例94において、実施例81の転写シートを用いた以外は同様に実施した。
【0163】
[実験例1~実験例6]
実施例1において、表7-1及び表7-2に示す条件に変更した以外は同様に実施した。
【0164】
[実験例7~実験例10]
実施例1において、表8-1及び表8-2に示す条件に変更した以外は同様に実施した。
【0165】
[実験例11~実験例22]
実施例1において、表9-1及び表9-2に示す条件に変更した以外は同様に実施した。
【0166】
上記実施例、実験例、及び比較例について、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含む組成物及び機能性組成物の配合割合、機能発現物質の粒子径及びpH、塗布量、並びにコア層のコア材の種類を、表1-1~表9-2に示す。
【0167】
尚、表中A、B、C、m、n、及びoは、それぞれ以下の通りである。
【0168】
A:ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物
B:親水性溶媒に分散されたオルガノシリカゾル
C:親水基と疎水基とを有するアクリルポリマー
m:消臭性物質
n:抗ウイルス性物質
o:抗アレルゲン性物質
また、表中のA、B、及びCの質量部の数値は固形分を基準とする値である。
【0169】
また、m、n、及びoの配合量の数値は、組成物の固形分100質量部に対する固形分の配合割合である。
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
【表9-2】
[評価方法]
上記実施例、実験例、及び比較例に係るメラミン化粧板を、以下の方法により、外観、機能性(消臭性、抗ウイルス性、又は抗アレルゲン性)、耐薬品性、及び不燃性の観点から評価した。
【0188】
(1)外観
メラミン化粧板の外観を、JIS K 6902:2007「熱硬化性樹脂高圧化粧板試験方法」に基づき検査した。また、併せて、手のひらで5秒間メラミン化粧板の表面に触れた後に手を離し、表面を目視で観察することにより、指紋が目立つか否かを評価した。メラミン化粧板の外観の評価は、以下の基準で行った。
【0189】
○:異常なし(表面に白化ムラが生じておらず、指紋も目立たない)。
【0190】
△1:僅かに表面に白化ムラが生じるが、化粧層の木目模様の絵柄の導管部は認識できる。指紋は目立たない。
【0191】
△2:表面に白化ムラは生じてはいないが指紋がやや目立つ。
【0192】
×:著しく表面に白化ムラが生じ、化粧層の木目模様の絵柄が不鮮明で導管部が認識できない。指紋は目立たない。
【0193】
尚、表面に白化ムラが生じると指紋は目立ちにくくなる。
【0194】
(2)消臭率(%)
(2-1)硫化水素消臭性能:100mm×200mmに切り出した試験片を、有効面積が200cm2になるように、アルミテープで裏面と側面とを被覆した。試験片をテドラーバッグの中に入れた後、袋内において濃度が4ppmになるように硫化水素ガス3Lを注入し、24時間経過後の硫化水素残存濃度を測定した。この測定値により、消臭された硫化水素の総量を算出し、硫化水素ガスの消臭率(%)とした。
【0195】
(2-2)アンモニア消臭性能:100mm×200mmに切り出した試験片を、有効面積が200cm2になるように、アルミテープで裏面と側面とを被覆した。試験片をテドラーバッグの中に入れた後、袋内において濃度が100ppmになるようにアンモニアガス3Lを注入し、24時間経過後のアンモニア残存濃度を測定した。この測定値により、消臭されたアンモニアの総量を算出し、消臭率(%)とした。
【0196】
(3)抗ウイルス性能ファージ試験
試験ウイルス:バクテリオファージQβ
試験規格:JIS R 1756:2020「ファインセラミックス―可視光応答形光触媒材料の抗ウイルス性試験方法―バクテリオファージQβを用いる方法」
測定時間:24時間
50mm×50mmに切り出した試験片に試験菌ウイルスバクテリオファージQβを接触させ、24時間後に試験菌溶液を回収し、ウイルス感染価を算出した。算出したウイルス感染価により、抗ウイルス活性値を下記算出式に基づいて算出した。
【0197】
抗ウイルス活性値=log(未加工品のウイルス感染価)-log(加工品のウイルス感染価)
尚、未加工品とは、組成物の硬化層が形成されていないメラミン化粧板であり、加工品とは各実施例、各実験例及び各比較例に係るメラミン化粧板である。
【0198】
(4)抗アレルゲン性能
試験菌:ダニアレルゲン(Der fII)、スギアレルゲン(Cry jI)
測定時間:24時間
測定方法:ELISA法
50mm×50mmに切り出した試験片に、接着剤で40mm×40mmの枠を作製した。枠内に一定濃度に調製したアレルゲン溶液を0.4ml滴下し、フィルムを密着させた。
【0199】
24時間経過後の溶液を回収しELISA法(酵素免疫測定法)でアレルゲン濃度を測定した。
【0200】
その測定値と未加工品の濃度差を算出し、アレルゲンの低減率(%)とした。
【0201】
(5)耐薬品性
<使用薬品>
q:オスバン液 0.025%溶液
r:クレゾール石鹸水 5.0%溶液
s:次亜塩素酸ナトリウム 6.0%溶液
t:1%塩酸水溶液
u:1%水酸化ナトリウム水溶液
<試験方法>
試験片を洗浄後乾燥し、試験液0.2mlを試験片に滴下し、24時間放置した後、試験液を水で洗い落とし、試験片の変化を肉眼で観察し、以下の評価方法により評価した。
【0202】
<評価方法>
○:変化なし
△:侵食は無いが色調、艶が変化
×:侵食している
(6)不燃性
ISO5660に準拠したコーンカロリーメーターによる20分試験の発熱性試験を行った。評価方法において、総発熱量が8MJ/m2以下であり、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えておらず、試験後の試験体において裏面まで貫通する割れ、ひび等がない場合を○とした。この3条件を一つでも満たさないものを×とした。
【0203】
評価結果を表10-1~表18-2に示す。
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
【表18-2】
[考察]
表16-1に示すように、実験例1では、(m)消臭性物質の配合量が少なく消臭性能がやや劣っていた。実験例2では、(m)消臭性物質の配合量が多く、外観において僅かに白化ムラが生じた(△1)。実験例3では、(n)抗ウイルス性物質の配合量が少なく抗ウイルス性能がやや劣っていた。実験例4では、(n)抗ウイルス性物質の配合量が多く、外観において僅かに白化ムラが生じた(△1)。実験例5では、(o)抗アレルゲン性物質の配合量が少なく抗アレルゲン性がやや劣っていた。実験例6では、(o)抗アレルゲン性物質の配合量が多く、外観において僅かに白化ムラが生じた(△1)。
【0222】
表17-1に示すように、実験例7では、機能性組成物が(A)成分、(B)、及び(C)成分を含むものの、(A)成分の固形分1質量部に対して(B)成分の配合量が0.5質量部未満であり、消臭性能がやや劣り、耐薬品性もやや劣っていた。実験例8では、機能性物組成物が(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含むものの、(A)成分の固形分1質量部に対して(B)成分の配合量が12質量部を超えており、外観において、指紋は目立たないものの、僅かに白化ムラが生じた(△1)。実験例9では、機能性組成物が(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含むものの、(B)成分の固形分1質量部に対して(C)成分の配合量が0.005質量部未満であり、白化ムラは生じてはいないものの、指紋がやや目立った(△2)。実験例10では、機能性組成物が(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含むものの、(B)成分の固形分1質量部に対して(C)成分の配合量が0.3質量部を超えており、外観において、指紋は目立たないものの、僅かに白化ムラが生じた(△1)。
【0223】
表18-1に示すように、実験例11では、消臭性がやや劣っていた。実験例12では、外観において、指紋は目立たないものの、僅かに白化ムラが生じた(△1)。実験例13では、抗ウイルス性がやや劣っていた。実験例14では、外観において、指紋は目立たないものの、僅かに白化ムラが生じた(△1)。実験例15では、消臭性がやや劣っていた。実験例16では、外観において、指紋は目立たないものの、僅かに白化ムラが生じた(△1)。実験例17では、抗アレルゲン性がやや劣っていた。実験例18では、外観において、指紋は目立たないものの、僅かに白化ムラが生じた(△1)。実験例19では、抗ウイルス性がやや劣っていた。実験例20では、外観において、指紋は目立たないものの、僅かに白化ムラが生じた(△1)。実験例21では、抗アレルゲン性がやや劣っていた。実験例22では、外観において、指紋は目立たないものの、僅かに白化ムラが生じた(△1)。
【符号の説明】
【0224】
2 機能性組成物の硬化層
3 メラミン樹脂含浸パターン紙
4 プリプレグ
5 フェノール樹脂含浸コア紙
6 コア層
7 バッカー
8 メラミン樹脂含浸オーバーレイ紙
11 メラミン化粧板
12 メラミン化粧板
13 メラミン化粧板