(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】アンドロゲン除去療法随伴症状の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4439 20060101AFI20230914BHJP
A61P 5/26 20060101ALI20230914BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20230914BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230914BHJP
A61P 15/10 20060101ALI20230914BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20230914BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230914BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61P5/26
A61P19/08
A61P21/00
A61P15/10
A61P15/00
A61P35/00
A61P13/08
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021142082
(22)【出願日】2021-09-01
(62)【分割の表示】P 2019009535の分割
【原出願日】2015-09-08
【審査請求日】2021-09-29
(32)【優先日】2014-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100176094
【氏名又は名称】箱田 満
(72)【発明者】
【氏名】ベンソン,チャールズ トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】リッチー,レイチェル
【審査官】平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-527584(JP,A)
【文献】特表2010-510231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00~33/44
A61P 1/00~43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S)-(7-シアノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)-カルバミン酸イソプロピルエステルの化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を含む医薬組成物であって、アンドロゲン除去療法により誘導された続発性性腺機能低下症の結果としての症状の治療に用いるためのものであり、前記化合物が(S)-(7-シアノ-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)-カルバミン酸イソプロピルエステルと2-ブロモメチルピリジンまたは2-クロロメチルピリジンから調製されたものである、医薬組成物。
【請求項2】
前記化合物が以下の工程:
(a)(S)-(7-シアノ-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)-カルバミン酸イソプロピルエステルのDMFの溶液を、40℃で提供すること、
(b)前記溶液に炭酸セシウムを加えて混合物を形成すること、
(c)2-ブロモメチルピリジン臭化水素酸塩を前記混合物に分割して添加し、40℃で撹拌することで溶液中の生成物をもたらすこと、
(d)前記溶液中の生成物を0℃~5℃で冷却水に加え、撹拌することで固形物を形成すること、
(e)ろ過により前記固形物を単離し、乾燥することで(S)-(7-シアノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)-カルバミン酸イソプロピルエステルの化合物を得ること、
を含む方法で調製されるものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記方法が、CH
2Cl
2/EtOAcで溶出させながら前記化合物をシリカゲルで精製する工程をさらに含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記方法がエタノールからの前記化合物の再結晶工程をさらに含む、請求項2または3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記症状が、骨量、骨強度、筋肉量、または筋力の低下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記症状が、性欲の減退及びホットフラッシュである、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
(S)-(7-シアノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)-カルバミン酸イソプロピルエステルの化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を含む医薬組成物であって、アンドロゲン除去療法を受けている前立腺癌患者の除脂肪筋肉量の増
加のための、医薬組成物。
【請求項8】
(S)-(7-シアノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)-カルバミン酸イソプロピルエステルの化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を含む医薬組成物であって、アンドロゲン除去療法を受けている前立腺癌患者の筋肉量、筋力、骨量もしくは骨強度の減少の治療もしくは増加のための、医薬組成物。
【請求項9】
アンドロゲン除去療法を受けている前立腺癌患者の除脂肪筋肉量の増
加のための医薬の製造のための、(S)-(7-シアノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)-カルバミン酸イソプロピルエステルの化合物、またはその薬学的に受容可能な塩の使用。
【請求項10】
アンドロゲン除去療法を受けている前立腺癌患者の筋肉量、筋力、骨量もしくは骨強度の減少の治療または増加のための医薬の製造のための、(S)-(7-シアノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)-カルバミン酸イソプロピルエステルの化合物、またはその薬学的に受容可能な塩の使用。
【請求項11】
前記化合物が1日当たり1mg~100mgの用量で投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記化合物が1日当たり1mg、5mg、25mgまたは75mgの用量で投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記化合物が1日当たり5mgの用量で投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記化合物が経口投与によって投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記経口投与がカプセルによるものである、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記化合物が1日当たり1mg~100mgの用量で投与される、請求項9または10に記載の使用。
【請求項17】
前記化合物が1日当たり1mg、5mg、25mgまたは75mgの用量で投与される、請求項9または10に記載の使用。
【請求項18】
前記化合物が1日当たり5mgの用量で投与される、請求項9または10に記載の使用。
【請求項19】
前記化合物が経口投与によって投与される、請求項9または10に記載の使用。
【請求項20】
前記経口投与がカプセルによるものである、請求項19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(S)-(7-シアノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,4-
テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)-カルバミン酸イソプロピル
エステル、またはその薬学的に受容可能な塩を用いたアンドロゲン除去療法随伴症状の治
療に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、アンドロゲン除去療法に随伴する症状の治療に関する分野にある。アンドロ
ゲン除去療法(ADT:Androgen Deprivation Therapy)
またはアンドロゲン抑制療法は、癌の根絶に焦点を当てた他の治療選択と併せて、前立腺
癌の攻撃性を低下させるために用いられている普遍的な療法である。ADTが行われる間
、アンドロゲン値または男性ホルモン値は身体内で低下し、前立腺癌細胞にまで届かない
。たとえばテストステロン及びジヒドロテストステロン(DHT:dihydrotes
tosterone)などのアンドロゲンは、前立腺癌細胞の増殖を刺激する。しかし、
前立腺癌は、アンドロゲン値が低い場合には、よりゆっくりと増殖し、または縮小さえし
得ることが見いだされた。米国において、前立腺癌の患者のおよそ3分の1が、その疾患
治療の間のあるポイントで、ADTを受けていると試算されている。
【0003】
たとえば精巣摘除術または去勢手術、たとえばロイプロリド(米国では、Lupron(登録
商標)、Eligard(登録商標)として販売されている)、ゴセレリン(米国では、Zoladex
(登録商標)として販売されている)、トリプトレリン(米国では、Trelstar(登録商標
)として販売されている。)、及びヒストレリン(米国では、Vantas(登録商標)として
販売されている)などの黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アナログ、ならびに
たとえばデガレリクス(米国では、Firmagon(登録商標)として販売されている)及びア
ビラテロン(米国では、Zytiga(登録商標)として販売されている)などのLHRHアン
タゴニストなど、アンドロゲン値を低下させるために利用し得る数種の治療選択がある。
【0004】
進行性前立腺癌の男性のほとんどは、ADTに対し良好に反応する。ADTは、通常、
転移性前立腺癌の第一選択がGnRHアゴニスト/アンタゴニストまたは化学的去勢であ
る場合で、臨床病期に基づき、前立腺被膜を超えて前立腺癌が広がったとき(T3疾患)
に適応される。
【0005】
生活の質に有害な作用をもたらし得るホルモン療法に伴う潜在的副作用があり、患者が
ADT療法を中断するというリスクが上昇する。たとえば副作用は、ホルモンのテストス
テロン及びエストロゲンのレベルの変化により、性欲の減退または消失、勃起障害、男性
性器の縮小、ホットフラッシュ、骨粗鬆症、貧血、筋肉量の減少、筋力の低下、体脂肪の
増加、及び体重の増加を誘導し得る。ADTに随伴する副作用に対する最新の治療法は、
当分野に公知である。たとえば、US2009/0143344(ホットフラッシュ-5HT2Aまたは
D2Rアンタゴニスト)、US2007/0281977(ホットフラッシュ-ムスカリン受容体アンタゴ
ニスト)、US2008/0080143(骨粗鬆症、骨折、BMDの消失、ホットフラッシュ、女性化
乳房、脱毛-トリミフェン(torimifene))を参照のこと。しかし、ADTの
特定の副作用を減じることができる別の療法に対するニーズが当分野には依然として存在
する。事実、近年まで、医学的去勢の有害作用を最小化させる試みで、ADTに反応性の
患者に治療を中止させ、再発または進行性疾患の兆候が表れた際にADTを再開させるこ
とによる、間欠的アンドロゲン除去(IAD:intermittent androg
en deprivation)が推奨されていた。しかし、継続的ADTとIADに無
作為に割り当てられた1749名の患者の、追跡期間中央値が9.8年の試験は、IAD
よりも継続的ADTが優れていることを明らかにした。ADTの副作用に対する忍容性を
改善させるための治療は、コンプライアンスを改善させ、患者のより良い転帰をもたらす
であろう。
【0006】
選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARM:Selective andr
ogen receptor modulator)は、アンドロゲン性組織において分
化型活性プロファイルを示すことが判明している。特に、かかる剤は、好ましくは、たと
えば筋肉または骨などの同化組織においてはアンドロゲンアゴニスト活性を示し、一方で
たとえば前立腺または精嚢などの他のアンドロゲン性組織においては部分的アゴニストの
み、またはアンタゴニストでさえある。従って、アンドロゲン受容体(AR)モジュレー
ターの使用は、前立腺癌患者のADT症状を軽減し得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例1が、8週間の精巣摘除術を受けたラットにおいて、8週間の治療後の精嚢重量の有意な増量をもたらさなかったこと、及びラットがアンドロゲン性刺激のすべてに対し、高い反応性であったことを図示する。
【0008】
【
図2】実施例1が、8週間の精巣摘除術を受けたラットにおいて、8週間の治療後、腰椎骨梁ミネラル密度(LV-TBMD:lumbar vertebra trabecular bone mineral density)の有意な増量をもたらしたこと、及び腰椎骨梁ミネラル含有量(LV-TBMC:lumbar vertebra trabecular bone mineral content)及び断面積(LV-TA)における増加の傾向を示したことを図示する。
【0009】
【
図3】エナント酸テストステロン(TE)(1mg/KG-日)と様々な投与量の実施例1との併用は、体重(g)に対し標準化された精嚢湿重量(mg)を低下させる傾向を示唆するものであり、この傾向はTE単独で誘導されることを図示する。
【0010】
【
図4】SDラットに対し、実施例1と1mg/Kg TEの併用治療を行ったところ、体重(g)に対し標準化された前立腺湿重量(mg)において用量依存性の低下が生じたことを図示する。
【0011】
【
図5】様々な投与量の実施例1とTE(1mg/Kg-日)の併用は、体重(g)に対して標準化された精嚢湿重量(mg)を低下させる傾向を示唆するものであり、この傾向はTE単独で誘導されることを図示する。
【0012】
【
図6】SDラットに対し、実施例1と1mg/Kg TEの併用治療を行ったところ、体重(g)に対し標準化された前立腺湿重量(mg)において用量依存性の低下が生じたことを図示する。
【0013】
【
図7】健康なヒトボランティアに対する実施例1の投与後の、腓腹筋束(腓腹筋領域)での末梢骨コンピューター断層撮影法に基づいた画像解析により測定された腓腹筋領域における増加を図示する。
【0014】
【
図8】健康なヒトボランティアに対する実施例1の投与後の、DEXAにより測定された全身除脂肪筋肉量における増加を図示する。ダネット検定(p<0.05)を使用したところ、0mgのプラセボ投与と比較し、5mgの投与レベルでの男性における効果(青いバー)は統計学的に有意である。
【0015】
【
図9】プラセボと比較し、いずれの時点、またはいずれの実施例1の投与量でも、前立腺特異抗原(SPA)の基準値からの統計学的変化は無かったことを図示する。
【0016】
【
図10】性腺機能の正常な健康なヒトボランティアに対する実施例1の投与後の、血清テストステロン値の低下を図示する。治療後の低下は、比較的高い血清テストステロン値であった男性においてより顕著である。右側の表は、5mgの投与量での、Ph1a試験後の曝露評価を反映している。
【0017】
【
図11】性腺機能の正常な健康なヒトボランティアに対する実施例1の投与後の、骨同化のバイオマーカーである1型プロコラーゲンのN末端プロペプチド(P1NP:N-terminal propeptide of procollagen type 1)に対する、正の曝露-反応の相関性を図示する。
【発明の概要】
【0018】
(S)-(7-シアノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テトラヒド
ロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)-カルバミン酸イソプロピルエステル、
あるいはカルバミン酸,N-[(2S)-7-シアノ,-1,2,3,4-テトラヒドロ
-4-(2-ピリジニルメチル)シクロペンタ[b]インドール-2-イル]-,1-メ
チルエチルエステルとしても表されるARモジュレーター化合物は、構造式Iにより表さ
れ、健康なボランティアにおいて、除脂肪筋肉量を増加させ、脂肪量を低下させることが
示されている。さらに、健康なボランティアにおいて、(S)-(7-シアノ-4-ピリ
ジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール
-2-イル)-カルバミン酸イソプロピルエステルを用いた12週間の治療後、ヘマトク
リットにおける統計学的変化、または前立腺特異抗原(PSA)における統計学的変化は
観察されなかった。さらには、(S)-(7-シアノ-4-ピリジン-2-イルメチル-
1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)-カルバミ
ン酸イソプロピルエステルを用いた精巣摘除ラットの治療は、精嚢湿重量の有意な増量を
示さなかった。
【化1】
【0019】
従って、本発明は、ADTにより誘導される続発性性腺機能低下症の結果としての症状
の治療法を提供するものであり、当該方法は、式Iの化合物の有効量を、かかる治療の必
要のある患者に対し投与することを含む。さらなる実施形態において、当該患者は、前立
腺癌の患者である。さらなる実施形態において、本発明は、ADTにより誘導される続発
性性腺機能低下症の結果としての骨量、骨強度、筋肉量、または筋力の低下を治療する方
法を提供する。他のさらなる実施形態において、本発明は、ADTにより誘導される続発
性性腺機能低下症の結果としての性欲の減退及びホットフラッシュを治療する方法を提供
する。
【0020】
さらに、本発明は、その必要のある患者に対する療法における、特にADTの症状の治
療のための療法における、式Iの化合物、またはその薬学的に受容可能な塩の使用を提供
するものである。さらなる実施形態において、当該患者は、前立腺癌の患者である。さら
に本発明は、ADTにより誘導される続発性性腺機能低下症の結果としての症状の治療に
おける、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩の使用を提供する。さらには、本
発明は、前立腺癌患者に対するADT症状の治療における、式Iの化合物またはその薬学
的に受容可能な塩の使用を提供する。さらなる実施形態において、本発明は、前立腺癌患
者に対するADT症状の治療のための医薬の製造のための、本発明化合物またはその薬学
的に受容可能な塩の使用を提供する。さらなる実施形態において、本発明は、ADTによ
り誘導される続発性性腺機能低下症の結果としての症状の治療のための医薬の製造のため
の、本発明化合物またはその薬学的に受容可能な塩の使用を提供する。
【0021】
さらに、本発明は、療法における、特にADTにより誘導される続発性性腺機能低下症
の結果としての骨量、骨強度、筋肉量、または筋力の低下の治療のための療法における、
式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩の使用を提供する。さらに、本発明は、A
DTにより誘導される続発性性腺機能低下症の結果としての骨量、骨強度、筋肉量、また
は筋力の低下の治療における、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩の使用を提
供する。さらなる実施形態において、本発明は、ADTにより誘導される続発性性腺機能
低下症の結果としての骨量、骨強度、筋肉量、または筋力の低下の治療のための医薬の製
造のための、本発明化合物またはその薬学的に受容可能な塩の使用を提供する。
【0022】
さらに、本発明は、療法における、特にADTにより誘導される続発性性腺機能低下症
の結果としての性欲の減退またはホットフラッシュの治療のための療法における、式Iの
化合物またはその薬学的に受容可能な塩の使用を提供する。さらに、本発明は、ADTに
より誘導される続発性性腺機能低下症の結果としての性欲の減退またはホットフラッシュ
の治療における、本発明化合物またはその薬学的に受容可能な塩の使用を提供する。さら
なる実施形態において、本発明は、ADTにより誘導される続発性性腺機能低下症の結果
としての性欲の減退またはホットフラッシュの治療のための医薬の製造のための、本発明
化合物またはその薬学的に受容可能な塩の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
たとえば性腺機能低下症、骨量または骨密度の低下、及び筋肉量または筋力の低下など
の治療適用症に対する有用な治療剤としての、式Iのアンドロゲン受容体モジュレーター
化合物、ならびに当該化合物の作製方法及び使用方法は、2010年3月18日に公開さ
れたUS-2010-0069404に列記されており、参照により本明細書に援用される。また、WO200
8/063867も参照のこと。式Iのアンドロゲン受容体(AR)モジュレーター化合物は、ア
ンドロゲン受容体の強力かつ選択的なモジュレーターである。
【0024】
より具体的には、本発明は、前立腺癌患者に対する、ADTの症状を治療する方法を提
供するものであり、当該方法は、以下:
【化2】
として構造的にあらわされる式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩の有効量を、
かかる治療を必要としている患者に投与することを含む。
【0025】
本明細書において用いられる場合、「患者」という用語は、ヒトを指す。
【0026】
本明細書において用いられる場合、「治療すること(treating)」、「治療す
るための(to treat)」、または「治療(treatment)」という用語は
、既存の症状、障害、状態もしくは疾患の進行または重篤度を抑えること、減速させるこ
と、止めること、低下させること、または反転させることを含む。
【0027】
本明細書において用いられる場合、「T1~T4」という用語は、どの程度まで癌が拡
散しているかを表すための米国癌合同委員会(AJCC:American Joint
Committee on Cancer)のTNM病期分類システムのTカテゴリー
を指す。Tカテゴリーは、腫瘍の存在を示し、及び原発腫瘍の広がりを表現する。数値が
大きくなると、大きさ、広がり、または浸潤の程度が上昇したことを示す。癌のタイプご
とに、この数値での分類を行うための細目がある。前立腺癌に対しては、T1は、医師が
腫瘍に触れることができないこと、またはたとえば経直腸超音波などの画像解析で腫瘍を
視認できないことを示す。T2は、医師が直腸指診(DRE)で癌に触れることができる
、またはたとえば経直腸超音波などの画像解析を用いた癌を視認できるが、前立腺内に留
まっていると思われることを示す。T3は、癌が増殖を開始し、前立腺の外側まで拡がっ
たこと、及び精嚢に浸潤し得たことを示す。T4は、癌が、たとえば尿道括約筋(排尿制
御を補助する筋肉)、直腸、膀胱及び/または骨盤壁などの前立腺に隣接する組織(精嚢
以外の組織)へと増殖したことを示す。
【0028】
本明細書において用いられる場合、「有効な量」という用語は、患者への投与で、診断
された患者または治療中の患者に望ましい効果をもたらす式Iの化合物またはその薬学的
に受容可能な塩の量を指す。患者に対する有効量の決定において、限定されないが、患者
の大きさ、年齢、及び一般健康状態;関与する特定の疾患または障害;疾患または障害の
程度、または関与、または重篤度;個々の患者の反応性;投与される特定の化合物;投与
方法;投与される製剤の生体利用効率の特徴;選択される用法;併用薬の使用;及び他の
関連状況をはじめとする多くの因子が担当診断医により考慮される。
【0029】
式Iの化合物及びその薬学的に受容可能な塩は、一般的に広範な用量域で有効である。
たとえば、個々の剤の1日当たりの用量は、通常、約1mg/日~約1000mg/日、
好ましくは約1mg/日~約500mg/日、約1mg/日~約250mg/日、約1m
g/日~約100mg/日、1mg/日~約75mg/日、及び1mg/日~約25mg
/日の範囲内である。最も好ましくは、個々の剤の1日当たりの用量は、通常、約1mg
/日~約5mg/日の範囲内である。最も好ましくは、式Iの化合物は、1日当たり1m
g、5mg、25mg、及び75mgから選択される投薬量で用いられる。
【0030】
式Iのアンドロゲン受容体モジュレーター化合物は、好ましくは、当該化合物が体内吸
収され利用されうる任意の経路により投与される医薬組成物として製剤化される。投与経
路は、当該薬剤の物理的特性ならびに患者及び介護者の利便性により制限され、何らかの
点で変化し得る。好ましくは、式Iのアンドロゲン受容体モジュレーター化合物は、経口
投与用、または静脈内投与もしくは皮下投与をはじめとする非経口投与用に製剤化される
。かかる医薬組成物及び同組成物の調製方法は、当分野に公知である(たとえば、Reming
ton: The Science and Practice of Pharmacy (D.B. Troy, Editor, 21st Edition, Lipp
incott, Williams & Wilkins, 2006を参照のこと)。
【0031】
式Iの化合物は遊離塩基であることが好ましい。
【実施例】
【0032】
調製及び実施例
以下の方法、調製物、及び実施例は、本発明をさらに解説するものであり、本発明化合
物の典型的な合成を提示するものである。試薬及び開始材料は、容易に入手可能であり、
または当分野の当業者により容易に合成され得る。この調製及び実施例は、解説を目的と
して記載されているものであり、限定ではなく、様々な改変が当分野の当業者により行わ
れ得ることを理解されたい。式Iの化合物またはその塩を調製するための記載される各経
路の特定の合成工程は、別の方法で組合せることもでき、または異なる手順の工程と組み
合わせることもできる。各工程の産物は、抽出、蒸着、沈殿、クロマトグラフィー、ろ過
、粉砕及び結晶化をはじめとする当分野に公知の標準的な方法により回収することができ
る。加えて、別段の記載がない限り、すべての置換基は、従前に定義されるとおりである
。
【0033】
真逆の記載がない限り、本明細書に解説される化合物は、Accelrys(登録商標)Draw v
ersion 4.0 (Accelrys, Inc., San Diego, CA.)、IUPACNAME ACDLABS、またはChemDraw(
登録商標)Ultra 12.0を用いて命名され、番号付けされる。本発明化合物のR立体配置ま
たはS立体配置は、たとえばX線解析及びキラル-HPLC保持時間との相関などの標準
的な技術により決定され得る。個々の異性体、鏡像異性体及びジアステレオマーは、たと
えば選択的結晶化技術またはキラルクロマトグラフィー(たとえば、J. Jacques, et al.
, "Enantiomers, Racemates, and Resolutions", John Wiley and Sons, Inc., 1981、及
びE.L. Eliel and S.H. Wilen,” Stereochemistry of Organic Compounds”, Wiley-Int
erscience, 1994を参照のこと)などの方法により、式Iの化合物の合成における任意の
都合のよいポイントで、当分野の当業者により分離または分割されてもよい。「異性体1
」及び「異性体2」という記号はそれぞれ、キラルクロマトグラフィーから1番目、及び
2番目に溶出された化合物を指し、キラルクロマトグラフィーが合成の早い段階で開始さ
れた場合、この同じ記号は、以下の中間体及び実施例に適用される。さらに、以下のスキ
ームに記載されるある中間体は、1つ以上の窒素保護基を含有してもよい。実施される特
定の反応条件及び特定の変換様式に従い、各場合で様々な保護基が同じであっても、異な
っていてもよい。保護及び脱保護の条件は当業者に公知であり、文献(たとえば、“Gree
ne’s Protective Groups in Organic Synthesis”, Fourth Edition, by Peter G.M. Wu
ts and Theodora W. Greene, John Wiley and Sons, Inc. 2007を参照のこと)に記載さ
れている。
【0034】
試薬及び開始材料は、当分野の当業者に容易に入手可能である。参照により本明細書に
援用される米国特許第7,968,587号には、(S)-(7-シアノ-4-ピリジン
-2-イルメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2
-イル)-カルバミン酸イソプロピルエステルの合成が開示されている。
【0035】
本明細書において用いられる場合、以下の用語は、以下に示される意味を有する:「A
DME」とは、吸収、分布、代謝及び排泄を指す。「DMAC」とは、N,N-ジメチル
アセトアミドを指す。「DMF」とは、ジメチルホルムアミドを指す。「ECG」とは、
心電図を指す。「EDTA」とは、エチレンジアミン四酢酸を指す。「ee」とは、鏡像
体過剰率を指す。「EtOAc」とは、酢酸エチルを指す。「EtOH」とは、エタノー
ルを指す。「HOAc」とは、酢酸を指す。「HPLC」とは、高速液体クロマトグラフ
ィーを指す。「LCMS」とは、液体クロマトグラフ質量分析を指す。「LY」とは、実
施例1を指す。 「MeOH」とは、メタノールを指す。「min」とは、分を指す。「
MS」とは、質量分析を指す。「MTBE」とは、tert-ブチルメチルエーテルを指
す。「NOAEL」とは、無毒性量を指す。「Orx」とは、精巣摘除されたことを指す
。「SE」とは標準誤差を指す。「TE」とは、エナント酸テストステロンを指す。「T
FA」とは、トリフルオロ酢酸を指す。「THF」とは、テトラヒドロフランを指す。及
び「UV」とは紫外線を指す。
【0036】
中間体1
(±)-2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-1
,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-7-カルボニトリル
(±)-2-(3-オキソ-シクロペンチル)-イソインドール-1,3-ジオン(1
2.7g、55.3mmol)及び4-シアノフェニルヒドラジン-HCl(8.53g
、50.3mmol)を、HOAc(200mL)及び4N HClジオキサン(50m
L)中で混合させる。機械的に攪拌させながら、反応物を90℃まで18時間加熱し、次
いで、さらに4N HClジオキサン(20mL)を加える。反応物を100℃まで18
時間加熱する。反応混合物を水(600mL)で希釈し、真空ろ過により黒色固形物を採
取する。固形物を、MeOH(200mL)を用いてソニケートし、次いで回収し、真空
オーブン中で乾燥させ、10.94g(66%)の灰色-茶色固形物を得る。MS(m/
z):328(M+H)、326(M-H)。
【0037】
中間体2
(±)-2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-4
-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]イン
ドール-7-カルボニトリル
【化3】
2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-1,2,
3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-7-カルボニトリル(5g、1
5.3mmol)の混合物をDMF(25ml)中で40℃まで加熱する。炭酸セシウム
(10.4g、32.4mmol)及び2-ブロモメチルピリジンヒドロブロミド(4.
05g、16mmol)を加える。混合物を40℃まで24時間攪拌する。混合物に水(
250mL)を加え、1時間攪拌する。固形物をろ過し、回収した物質を真空下で乾燥さ
せる。EtOH(25mL)に固形物を加え、30分間還流させる。混合物を22℃まで
冷却し、ろ過する。固形物を真空下で恒量まで乾燥させ、4.8g(75%)の表題化合
物を得る。MS(m/z):419(M+H)。
【0038】
中間体3
(±)-2-アミノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-
シクロペンタ[b]インドール-7-カルボニトリル塩酸塩
【化4】
2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-4-ピリ
ジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール
-7-カルボニトリル(77g、184mmol)を、THF(1.3L)及びEtOH
(230mL)に加える。混合物を10分間攪拌し、次いで、ヒドラジン一水和物(20
mL、400mmol)を加える。混合物を22℃で16時間攪拌する。混合物をろ過し
、母液を蒸発させる。残留物をジクロロメタン(300mL)に溶解させる。4M HC
lのジオキサン溶液(50mL)を加え、2時間混合物を攪拌する。ろ過し、単離された
固形物を真空下で恒量まで乾燥させ、54g(90%)の表題化合物を得る。MS(m/
z):289(M+H)。
【0039】
実施例1
(S)-(7-シアノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ
-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)-カルバミン酸イソプロピルエステル
【化5】
【0040】
工程1:(±)-(7-シアノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テト
ラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)-カルバミン酸イソプロピルエス
テル
【化6】
(±)-2-アミノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テトラヒド
ロ-シクロペンタ[b]インドール-7-カルボニトリル(2.32g、8.05mmo
l)及びジイソプロピルエチルアミン(9.65mmol、1.68mL)のジクロロメ
タン溶液(10mL)に、クロロギ酸イソプロピル(8.86mmol、8.9mL)を
加え、室温で一晩攪拌する。酢酸エチルで希釈し、10% K
2CO
3溶液(2×)で洗
浄する。Na
2SO
4上で有機部分を乾燥させ、ろ過し、濃縮し、3.3gを得る。カラ
ムクロマトグラフィーにより精製し(0-100% 酢酸エチル/ジクロロメタン)、2
.48 g(82%)のラセミ産物を得る。LCMS 375.2(M+H)。
【0041】
他の方法
(±)2-アミノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-
シクロペンタ[b]インドール-7-カルボニトリル塩酸塩(35g、108mmol)
を、ジクロロメタン(350mL)とピリジン(70mL)の混合物に加える。窒素雰囲
気下で混合物を攪拌し、5℃まで冷却する。クロロギ酸イソプロピル(1Mのトルエン溶
液、162mL、162mmol)を加える。氷槽を取り除き、混合物を22℃で攪拌す
る。16時間後、溶媒を蒸発させる。得られた残留物を水(350mL)に加え、2時間
攪拌する。ろ過し、回収した固形物を真空下、45℃で乾燥させる。固形物を酢酸エチル
(400mL)に加え、混合物を加熱して還流させる。次いで、22℃まで冷却し、固形
物をろ過する。酢酸エチル(200mL)に湿性固形物を加え、加熱し、30分間還流す
る。1時間の間に混合物を22℃まで冷却し、5分間の間に0~5℃まで冷却する。混合
物をろ過し、真空下で単離された固形物を恒量まで乾燥させ、23g(62%)の表題化
合物を得る。MS(m/z): 374(M+H)。
【0042】
工程2:(R)-及び(S)-(7-シアノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,
3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-yl)-カルバミン酸イソ
プロピルエステル
100%EtOHを用いて375mL/分、及び250nmで溶出するChiralp
ak ADカラム(8×33cm)を用いた分取キラルクロマトグラフィーにより実施例
1の鏡像異性体を分離する。異性体1(R):1.14g、99.9% ee(分析条件
:Chiralpak AD-Hカラム、100% EtOH/0.2%ジメチルエチル
アミンで溶出;LCMS 375.2(M+H)。異性体2(S):1.67g、99.
4% ee;LCMS 375.2(M+H)。
【0043】
実施例1に対する別経路、異性体2:(S)-(7-シアノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)-カルバミン酸イソプロピルエステル
(S)-7-シアノ-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)-カルバミン酸イソプロピルエステル(13g、41.3mmol)をDMF(100mL)に加え、溶液を40℃まで温める。一度で炭酸セシウム(42g、129mmol)を加え、40℃で30分間、混合物を攪拌する。2-ブロモメチルピリジン臭化水素酸塩(21g、83mmol)を4時間かけて分割して添加する。混合物を40℃で18時間、攪拌する。0℃~5℃で混合物を冷却水(1L)に加え、30分間、攪拌する。ろ過により固形物を単離し、真空下で恒量まで乾燥させる。CH2Cl2/EtOAc(7/3)で溶出させながら物質をシリカゲルパッドに通す。産物を含有する分画を1つにまとめ、溶媒を蒸発させ、薄茶色の固形物を得る。酢酸エチルから再結晶化させ、15.3g(77%)の表題化合物を得る。LC/MS(m/z)375(M+H)。
【0044】
第二の別経路:
(HPLC条件-カラム:Zorbax(登録商標)SB-Phenyl、Rapid
Resolution、4.6×75mm、3.5ミクロン;溶媒:10%アセトニト
リル/0.05% TFAを有する90%の水;230nmのUV)
【0045】
工程1:(±)-(7-シアノ-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]イ
ンドール-2-イル)-カルバミン酸 tert-ブチルエステル
12Lの3首丸底フラスコに、オーバーヘッドアジテーション、熱電温度計、添加漏斗
、窒素入口、及び冷却槽を備え付ける。フラスコに、(±)-2-(1,3-ジオキソ-
1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロ-シク
ロペンタ[b]インドール-7-カルボニトリル(500g、1.53モル)及びTHF
(5L)を満たす。得られたスラリーを大気温度で攪拌する。ヒドラジン一水和物(18
5.6mL、3.82モル)を、添加漏斗からゆっくりとした流れで10分かけて加える
。得られた混合物を大気温度で一晩(約18時間)攪拌する。冷水を槽に加え、添加漏斗
にジ-t-ブチルジカーボネート(875.1g、4.01モル;従前に液体に溶かして
おく)を満たす。反応混合物に2時間かけて加え、ポットの温度を30℃未満に維持する
。15分後、HPLCにより解析し、中間体アミンの完全な消費を確認する。反応混合物
を、ステンレススチールのテーブルトップフィルター中、ポリプロピレンパッド上でろ過
し、得られたろ過ケークを酢酸エチル(2x1L)で洗浄する。ろ過物を真空下で濃縮し
、THFのほとんどを除去する。得られた混合物(約1L)を、シリカゲル(4Kg K
ieselgel-60)のプラグ上で、酢酸エチルで溶出しながら精製する。回収した
溶出物を真空下で暗色油状物まで濃縮する。ヘプタン(2L)と酢酸エチル(350mL
)を加え、大気温度で2時間、ロータリーエバポレーター上で内容物を遠心させる。槽に
氷を加え、得られたスラリーを5℃でさらに2時間、遠心させる。固形物をろ過し、90
/10ヘプタン/酢酸エチル(2×500mL)でリンスし、35℃で真空乾燥させる。
黄褐色の固形物として、91.6%の収率で表題化合物を得る。
【0046】
工程2:(±)-(7-シアノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テト
ラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)-カルバミン酸tert-ブチル
エステル
20Lの底に口のあるフラスコに、オーバーヘッドアジテーション、熱電温度計、及び
窒素入口を備え付ける。フラスコに、(±)-(7-シアノ-1,2,3,4-テトラヒ
ドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)-カルバミン酸tert-ブチルエス
テル(500g、1.68モル)とジクロロメタン(5L)を満たす。攪拌を開始し、テ
トラn-ブチルアンモニウム重硫酸塩(58.9g、0.168mol)を加え、次いで
、2-(ブロモメチル)ピリジンヒドロブロミド(510.4g、2.02モル)を加え
る。脱イオン水(2L)を加え、次いで、50% NaOH溶液(445.3mL、8.
41モル)を加える。得られた混合物をしっかりと一晩(約21時間)攪拌する。攪拌を
停止し、層を分離させ、水層(上層)を廃棄する。有機層を脱イオン水(3x4L)で洗
浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空下で約500mLまで濃縮する。粗物質を、溶
離液として1:1の酢酸エチル/ヘプタンを用いて、シリカゲルプラグ(7Kg Kei
selgel 60)上で精製する。真空下で溶離物を濃縮し、オフホワイトの固形物と
して560グラムの表題化合物を得る。(81.4%)。
【0047】
工程3:異性体1、(R)-、及び異性体2、(S)-(7-シアノ-4-ピリジン-2
-イルメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イ
ル)-カルバミン酸 tert-ブチルエステル
鏡像異性体を分析するために、以下の分析的キラルHPLC法を用いる:4.6×15
0mm Chiralpak AD-Hカラム(Chiral Technologie
s社)、20:80:0.2のアセトニトリル/3Aグレードの変性エタノール/ジメチ
ルエチルアミン移動相、0.6mL/分の流速、UV検出@255nm。鏡像異性体1は
4.0分で溶出し、鏡像異性体2は5.2分で溶出する。8%の不純物(255nm)は
3.6分で溶出する。(±)-(7-シアノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,
3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)-カルバミン酸te
rt-ブチルエステル(528g)を、分取キラルHPLCにより、以下の条件を用いて
精製する:8×33cm Chiralpak ADカラム、分析的HPLCと同じ移動
相、375mL/分の流速、UV検出は270nm。移動相中に試料108gを、最終濃
度75mg/mLで溶解させる。鏡像異性体1の分画を3.5~5.5分の間に溶出させ
、及び鏡像異性体2の分画6~10分の間に溶出させながら、4.0g/投入でロードす
る。溶媒消費量を低下させる各投入の直後に鏡像異性体2のプロファイルの部分的スタッ
キングを溶出させながら、最終実行時間を7.5分/投入で設定する。1:2:7のジク
ロロメタン/ヘプタン/メチルt-ブチルエーテル溶媒システムで溶出させながら、Me
rck社の9385 60 Angstrom 230~400メッシュシリカゲルを用
いて、シリカプラグ上で残りの420gを精製する。140g試料/プラグでの真空ろ過
で3.5kgシリカパッドを用いる。ラセミ化合物は、5カラム体積後に出現し始める。
100%メチルt-ブチルエーテル、次いで100%アセトンを用いて、残りのラセミ化
合物をプラグから押し出す。この方法で、98+%の純度、総量で358.5gのラセミ
化合物を得る。この物質を上述のように分取キラルHPLCにより分割させる。208.
8g(99.9% ee)の鏡像異性体1(R異性体)、197g(99.6% ee)
の鏡像異性体2を得る。
【0048】
工程4:(S)-2-アミノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テトラ
ヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-7-カルボニトリル塩酸塩
3Lの3首丸底フラスコに、加熱マントル、エアー撹拌機、温度プローブ、窒素入口、
及び添加漏斗を備え付ける。フラスコに、(S)-(7-シアノ-4-ピリジン-2-イ
ルメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)
-カルバミン酸tert-ブチルエステル(85.0g、0.22モル)とEtOH(8
50mL)を満たす。濃HCl(180mL、2.20モル)を一度に加える。得られた
溶液を45~50℃に加熱し、90分間攪拌し、その後、HPLCで分析し、開始材料が
完全に消費されたことを確認する。混合物をBuchiフラスコに移し、脱イオン水(5
95mL)で希釈し、真空下で濃縮し、EtOHを除去する。二度に分けてEtOAc(
2x170mL)を加え、EtOAcと残留EtOHの両方を取り除くために再度揮散さ
せる。水性濃縮物を5Lの反応フラスコに移し、10~15℃まで冷却する。反応温度を
30℃未満に維持しながら、溶液のpHを、5M NaOH(950mL)を滴下して加
えることにより11~12まで調節する。得られた混合物を、CH2Cl2(1300m
L、800mL)を用いて抽出する。混合CH2Cl2抽出物を脱イオン水(500mL
)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、真空下で濃縮し、薄緑固形物として表題化合物
を得る(65.0g、103%)。
【0049】
工程5:(S)-(7-シアノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テト
ラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)-カルバミン酸イソプロピルエス
テル
【化7】
2Lの反応フラスコに、冷却槽、エアー撹拌機、温度プローブ、及び添加漏斗を備え付
ける。フラスコに、(S)-2-アミノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,
4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-7-カルボニトリル塩酸塩(62.
8g、0.218モル)、DMF(188mL)及びトリエチルアミン(33.4mL、
0.240モル)を満たす。得られた溶液を、氷/アセトン槽を用いて0℃まで冷却する
。温度を10℃未満に維持しながら、クロロギ酸イソプロピル(218mL、0.218
モル、1Mのトルエン溶液)を、添加漏斗を介して滴下して添加する。添加が終了したら
、冷却槽を取り除き、混合物を大気温度まで温める。1時間後、反応が完了したことを確
認するためにHPLCにより分析し、混合物を脱イオン水(1256mL)及びEtOA
c(1884mL)の溶液に注ぐ。層を分離させ、有機層をろ過し、1:1の水:ブライ
ン溶液を用いて再度洗浄し、次いで、Na
2SO
4上で乾燥させる。真空下、約15体積
まで55℃で濃縮させ、得られた物質を大気温度まで冷却し、白色沈殿物を得る。ヘプタ
ン(628mL)を添加し、20分間攪拌する。混合物を約15体積まで濃縮して戻す。
固形物をろ過し、ヘプタンで洗浄し、乾燥させ、フワフワした白色固形物(68.9g、
84.5%)として表題化合物を得る。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d
6), ・ 8.49 (dd, 1H),
7.86 (d, 1H, J = 1.5), 7.71-7.75 (m, 1H), 7.60 (d, 1H, J = 9.0), 7.57 (d, 1H, J
= 9.0), 7.36 (dd, 1H), 7.28-7.26 (m, 1H), 7.14 (d, 1H, J=7.5), 5.44 (s, 2 H), 4
.79-4.72 (m, 1H), 4.71-4.66 (m, 1H), 3.22-3.20 (m, 1H), 3.16-3.12 (m, 1 H), 2.73
-2.66 (m, 2 H), 1.16 (dd, 6 H)。
【0050】
【0051】
(7-ブロモ-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インド-2-イル
)-カルバミン酸イソプロピルエステル(I)を、Zn(CN)2、Zn(OAc)2、
Zn、及びPd(dppf)2Cl2・CH2Cl2を用いて、DMAC中で処置し、(
7-シアノ-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル
-カルバミン酸イソプロピルエステル(II)を得る。水を加え、技術グレードIIを沈
殿する。MTBEとアセトンの混合物中で、中間体IIを再溶解させ、得られたスラリー
をろ過し、無機成分を取り除く。IIを含有するろ過物を、木炭、MgSO4、及びFL
ORISIL(商標)を用いて処置し、ヘプタン結晶化で、結晶固形物としてIIを単離
する。
【0052】
工程2
【化9】
中間体IIと、2-ピコリル塩化物塩酸塩(III)及びK
2CO
3を、DMAC中で反応させ、技術グレード実施例1を得る。水を添加し、ろ過することにより技術グレード実施例1を単離する。EtOHから3回再結晶化を行い、実施例1を得る。
【0053】
アッセイ、in vivo試験、及び臨床試験
精巣摘除ラットアッセイ
総数で86匹の未交尾のオスのSprague-Dawleyラット(Harlan
Sprague Dawley Inc)を用いる。14匹のラットには偽(Sham)
手術を行い、72匹のラットは6か月齢で去勢する。ラットは、22℃、12時間の明/
暗サイクルで、食物(0.5%Caと0.4%Pを補充したTD 89222、Tekl
ad社、Madison、WI)と水にはいつでもアクセスできる状態で飼育される。O
rxラットは、2か月間、骨を取り除かせ、体重を計測し、以下の表1に詳述されるよう
に治療群に無作為に割り当てる。群1及び群2は、基準対照として一日目にと殺され、群
3及び群4の偽(Sham)及びOrx対照は、ビヒクル(0.25% CMC/Twi
n80)を投与される。群5は、PTH(1~38)を注射としてsc投与される。群6
~13は、強制経口投与によりSARMを投与される。すべての治療は、2か月間、1日
に1回行われる。
【表1】
【0054】
動的な組織形態計測に関し、基準用を除くすべてのラットは、治療が開始された最初の
日にキシレノール・オレンジ(90mg/kg sc)を投与される。すべてのラットは
、14日目、13日目、及びと殺の4日前、3日前に、カルセイン(10mg/kg s
.c)を投与される。
【0055】
試料調製
PTH(1~38)(Zeneca(Cambridge Research Bio
chemicals)参照番号 DG-12-14071、Batch 14071):
2%不活化ラット血清を補充した酸性生理食塩水ビヒクル
実施例1:1% CMC/0.25% Tween80 0.5ml/ラット、体重に基
づく。
【0056】
エンドポイント及び測定されたパラメーター
1.体重:適切に調節された量を投与する前、及び週に2回
2.NMR:試験の開始時、及び終了時
3:筋肉:湿重量は、左腓腹筋、大腿四頭筋、ヒラメ筋、肛門挙筋、精嚢(SV)、前立
腺、及び心臓から得て、次いで、RNAまたは組織学的分析のために回収される。
4.最終血清試料はすべての動物から採取され、1x100μl(OCN)、2x150
(IGF-1及び保存)、1x300μl(Chem18)、2x500μl(1つはB
SALP、及び保存)にて、-80℃で保存される。
5.骨の採取:CT及び生体力学的試験のために1本の大腿骨及び腰椎骨を固定(50/
50のエタノール/生理食塩水中)し、PALP/カルセイン解析のために1本の脛骨を
、骨端をはぎ取って採取(70%エタノール中)し、他の脛骨は組織形態計測分析のため
に採取される(70%エタノール)。
4.PK測定:採取する数日前、以下の時点で各投与量群(被験物質群のみ、n=3)の
3匹のラットを尾出血させ、およそ0.2mlの血液をEDTA試験管に採取する:0.
25、0.5、1、2、3、4,8及び24時間。試料は、血漿濃度解析のためにADM
Eへと移送させる。
【表2】
【0057】
原則的に上述のプロトコールに従い、8週間、精巣摘除されたラットにおいて、8週間
の治療を行った後、精嚢重量に実施例1による有意な増加は生じず、すべてのアンドロゲ
ン性刺激に対し高度に反応性であった。
【表3】
【0058】
図2及び表3に示されるように、8週間、精巣摘除を受けたラットにおいて8週間の治
療を行った後、実施例1を用いて治療したところ、腰椎骨梁のミネラル密度(LV-TB
MD)の有意な増加が生じ、腰椎骨梁のミネラル含有量(LV-TBMC)、及び断面積
(LV-TA)において増加の傾向が示された。
【0059】
TEの存在下での実施例1の直接的なアンタゴニスト作用を探索するためのin viv
o試験
総数で36匹のORX、及び6匹の偽(Sham)手術が行われたWistarのオス
ラットを用いる(8週齢で精巣摘除され、4週間、放置される)。ラットは、22℃、1
2時間の明/暗サイクルで、食物(0.95%Caと0.67%Pを補充したTD 50
01、Teklad社、Madison、WI)と水にはいつでもアクセスできる状態で
飼育される。ラットは無作為化され、体重に基づき治療群(n=6)に配置される。TE
を除く全群に対する投与経路は経口である。TEは皮下に投与される。毎日投与を行った
8週間の最後に、ラットを安楽死させ、体重を計測し、組織を採取する。肛門挙筋、前立
腺、及び精嚢が各動物から採取される。結果は、平均±SEとしてプロットされる。
【表4】
【0060】
エナント酸テストステロン(1mg/Kg-日)と、様々な投与量の実施例1の組み合
わせから、体重(gm)に対して標準化された精嚢湿重量(mg)の減少傾向が示唆され
、
図3及び表4に示されるように、それらはTE単独で誘導されている。
【0061】
精嚢湿重量の平均の比較
ダネット法を用いた対照との比較
対照群=d-ORX+TE、1mg/kg/日
|d| アルファ
2.69715 0.05
【表5】
【0062】
正の値は、有意に異なる平均の対を示す。
【0063】
図4及び表5に示されるように、SDラットに対し、1mg/KgのTEと共に実施例
1を共処置することにより、体重(g)に対して標準化された前立腺の湿重量(mg)に
おいて、用量依存性の減少が生じた。
【0064】
前立腺重量の平均の比較
ダネット法を用いた対照との比較
対照群=d-ORX+TE、1mg/kg/日
|d| アルファ
2.69715 0.05
【表6】
【0065】
正の値は、TE単独群とは有意に異なる平均の対を示す。
【表7】
【表8】
【0066】
合成テストステロンであるR1881と実施例1との比較から、ヒト前立腺癌細胞を用
いたin vitro実験で、実施例1はR1881よりもアンドロゲン性が低いことが
示される。対照的に、ヒトアンドロゲン受容体に対する生化学的結合アフィニティ(Ki
(nM))は、多少低下したのみである。
【0067】
ラットにおける4週の経口毒性試験
この試験は、ラットにおける4週曝露後の実施例1の潜在毒性及び毒物動態(toxi
cokinetics)を評価するために行われる。10匹のオスと10匹のメスのCD
(登録商標)[Crl:CD(登録商標)(SD)]ラットの3つの治療群に、15、1
50及び1500mg/kg/日の各投与レベルで被験物質を投与する。10匹/性別の
追加の1つの群は対照として用いて、5%ビタミンE TPGS、1%ヒドロキシエチル
セルロース、0.05%Dow Corning Antifoam 1510-USを
逆浸透精製水に溶解させたビヒクルを投与する。被験物質またはビヒクルは、経口強制投
与により、連続した28日間、1日に1度、15mL/kgの投与量で全群に投与される
。さらに、18匹/性別/群の3群は毒物動態(TK)動物として用いられ、15、15
0及び1500mg/kg/日の各投与レベルで、主要被験群と同じ方法及び同じ投与量
で、被験物質を投与される。3匹/性別の1つの追加の群は毒物動態の対照として用いら
れ、治療群と同じ方法、同じ投与量で、ビヒクルを投与される。
【0068】
罹患率、死亡率、負傷、及び食物と水の利用可能度の観察は、すべての動物に対し1日
に2回行われる。臨床兆候の観察は、主要被験動物に対してのみ、週に1度行われる。体
重はすべての動物に対し週に1度測定、記録され、食物消費量は主要被験動物に対して週
に1度測定、記録される。検眼鏡検査は、予備試験ですべての動物に対し行われ、最終解
剖の前に主要被験動物に対してのみ行われる。臨床病理評価のための血液試料は、解剖時
にすべての主要被験動物から採取される。尿試料は、投与の最終日に採取される。被験物
質の血漿濃度測定のための血液試料は、1日目及び28日目の指定された時点でTK動物
から採取される。最後の血液採取の後、TK動物は安楽死され、死体はさらなる評価を行
うことなく破棄される。肝酵素誘導解析のための肝臓試料は、主要被験動物から最終解剖
で採取される。試験終了時、解剖検査が行われ、器官の重量が記録され、前立腺及び精嚢
組織は顕微鏡で検査される。追加の顕微鏡検査は、解剖時に最初の5匹のオスラット/群
からの左精巣で行われる。メスの卵巣、子宮頚付きの子宮、膣、及び乳腺は、標的器官で
あると決定される。
【0069】
原則的に上述のプロトコールに従ったところ、全身曝露(AUC0-24時間)は大き
なばらつきがあり、曝露に伴いメスにおいてオスで観察されたものを超え、用量比例的で
はなく上昇した。投与の28日後の肝ミクロソーム酵素誘導の証拠はなかった。
【0070】
試験の間、予定外の死亡は無く、被験物質が関連した臨床兆候もなかった。体重及び食
物消費量は、対照と比較し、150mg/kg/日以上を投与されたメスの間で高かった
。これらの作用は、動物の健康全般に対し影響を与えず、有害であるとはみなされない。
オスにおいて、体重または食物消費量への明白な作用は無かった。
【0071】
オス、メスのいずれにおいても、血液検査パラメーター、凝固検査パラメーター、また
は尿検査パラメーターに対し、被験物質関連作用は無く、及びオスにおいて、臨床化学パ
ラメーターに対する被験物質関連作用は無かった。メスにおける臨床化学パラメーターの
被験物質関連作用は、150及び1500mg/kg/日の用量で、アルカリホスファタ
ーゼの増加(それぞれ、1.33及び1.45倍の増加)、150及び1500mg/k
g/日の用量で、総タンパク質の低下(それぞれ、9%及び10%の低下)、150及び
1500mg/kg/日の用量で、アルブミンの低下(両用量で12%の低下)、ならび
に1500mg/kg/日のみでグロブリンの低下(対照と比較し11%の低下)に限定
された。これらの変化は、最小度であり、有害であるとはみなされない。
【0072】
オス、メスのいずれにおいても被験物質関連の肉眼的変化または器官重量変化は無く、
及びオスにおいて、被験物質関連の顕微鏡的変化は無かった。被験物質関連の顕微鏡的変
化は、15mg/kg/日以上の投与レベルで、メスの乳腺及び卵巣において存在し、1
50mg/kg/日以上の投与レベルで子宮(子宮頚付き)及び膣に存在していた。これ
ら顕微鏡的変化は、150mg/kg/日以上の投与レベルのメスラットにおける生殖周
期の用量関連性の長期化と一致しており、被験物質の薬理作用と関連しているとみなされ
るが、有害であるとはみなされない。
【0073】
上記の結果に基づき、本試験のNOAELは、最も高い投与量である1500mg/k
g/日であるとみなされる。1500mg/kg/日のNOAEL投与量での平均定常状
態全身曝露(AUC0-24時間)は、オスで102337ng*時/mL、メスで21
6853ng*時/mLであった。
【0074】
ラットにおける6か月経口毒性
本試験の目的は、Sprague-Dawleyラットにおいて、26週間連日の経口
強制投与後の実施例1の毒性を探索すること、及び毒物動態を決定すること、ならびに1
2週の回復期間後のすべての結果に対する可逆性を評価することである。治療動物は、5
%ビタミンE TPGS、1%ヒドロキシエチルセルロース、0.05%Dow Cor
ning Antifoam 1510-USの精製水に溶解した実施例1を、15、1
50、または1500mg/kg/日の1日用量で経口強制投与により投与される。ビヒ
クル対照(主要試験では15匹のラット/性別、回復試験では5匹のラット/性別)は、
5%ビタミンE TPGS、1%ヒドロキシエチルセルロース、0.05%Dow Co
rning Antifoam 1510-USの精製水溶液を毎日、強制経口投与され
る。15匹のオスと15匹のメスを各治療主要試験群に割り当てる。回復試験に対し、5
匹のオスと5匹のメスを、ビヒクル対照群と150mg/kg/日の群に割り当てる。6
匹のラット/性別のビヒクル対照群、及び12匹のラット/性別の実施例1治療群の追加
のサテライト群は、毒物動態に関し評価される。すべての投与は、15mL/kgの量で
与えられる。
【0075】
連日の経口強制投与を行った後、実施例1に対する曝露はすべての投与量で大きなばら
つきがあった一方、非重複平均AUC(0-24時間)値は、最も低い投与量と最も高い
投与量の間で、特に91日目と182日目で、オスとメスの両方で観察された。概略する
と、単回投与と反復投与の曝露(Cmax及びAUC(0-24時間))は、オスとメス
の両方に関し、15~1500mg/kg/日で比例的よりは小さく増加した。メスは、
すべての日でオスよりも高い暴露を示した。1日目、メスの曝露はオスの7倍まで高かっ
たが、この差は182日目で1~3倍にまで低下した。反復投与後、実施例1の蓄積は、
182日目までいずれの投与群に対しても観察されなかった。
【0076】
原則的に上述のプロトコールに従ったところ、試験の過程で実施例1の投与による死亡
は無かった。眼科検査、または尿検査パラメーターに対する化合物関連作用は無かった。
【0077】
実施例1が関連する臨床兆候は、治療されたメスにおいて用量依存性に記録され、油性
被毛の発現率の増加、及び薄被毛の発現率の低下が記録された。回復期間の最初の6週間
、従前に150mg/kg/日で治療されたメスにおいて、油性被毛が再び記録されたが
、12週の回復期間後半では、これらの動物にはもはや確認されなかった。回復期間の終
了時、治療群のメスと対照群のメスで、薄被毛の発現率に差異は無かった。
【0078】
実施例1で治療されたオスにおいて、すべての投与レベルで体重の低下が見られ、治療
期間の終了時、対照群のオスと比較し、-12%にまで達した。メスにおいては真逆の傾
向がみられ、治療期間の終了時、同時対照群よりも治療群のメスは、体重は22%高かっ
た。オスにおける変化は回復期間の終了時にもまだ記録されたが、メスでは記録されなか
った。
【0079】
試験期間を通じて、対照群よりも、治療群のオスは食物消費量が低く、治療群のメスは
多くの場合で食物消費量が高かったことから、体重に対する治療関連作用との相関性があ
る。治療群のオスの食物消費量は回復期間中、対照群よりも低いまま維持されたが、12
週間の最後には、その差の程度は無視できるほど小さくなった。回復期間中、対照群と比
較し、治療群のメスの食物消費量の差は無かった。
【0080】
150mg/kg/日以上の用量での実施例1の投与は、メスにおいて、好中球数の増
加、絶対網状赤血球数の増加、アルカリホスファターゼの上昇、カリウムの上昇、及びグ
ロブリンの低下と関連していた。1500mg/kg/日のオスにおいて、アスパラギン
酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、ガンマグルタミルト
ランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、及び総ビリルビンの上昇が認められた。す
べての投与レベルのメスにおいて、総タンパク質及びアルブミンの最小低下が観察された
。12週の回復期間後、150mg/kg/日で投与されたラットにおいて、血液検査パ
ラメーター、臨床生化学検査パラメーター、及び尿検査パラメーターにおいて差は無かっ
たことから、これら結果の可逆性が示唆される。
【0081】
実施例1を用いた治療に関連した所見は、主にオスとメスの生殖組織に関連しており、
概して、この分子の薬理作用によるものであった。有害所見は、精巣に限局され、すべて
の実施例1治療群において発生した。1500mg/kg/日において、及び精巣病変が
あった15または150mg/kg/日を投与された群、および個々のオスにおいて、精
巣及び精巣上体の重量の低下が確認された。実施例1の投与に関連したオス生殖組織の肉
眼的所見は、精巣及び精巣上体において観察された。柔らかく及び/または小さな精巣、
ならびに小さな精巣上体が、50mg/kg/日以上を投与されたオス、及び15mg/
kg/日を投与された1匹のオスに観察された。精巣における顕微鏡検査所見は、すべて
の投与レベルで見られ、退行性の性質であり、伸長精細胞の枯渇、間質細胞の萎縮、及び
精母細胞の単一細胞ネクローシスが含まれた。精巣の所見は、間質細胞レベルでのLHシ
グナル伝達の低下を生じさせる循環黄体形成ホルモン(LH)の低下と一致していた。さ
らに、循環LH値の低下は、精巣からのテストステロン分泌の低下をもたらし、それによ
って、輸精管レベルでのアンドロゲンシグナル伝達の低下がもたらされる。実施例1を用
いた治療はまた、150mg/kg/日以上を投与されたオスにおいて観察された前立腺
重量の低下とも相関していた。これらオスにおける生殖機能変化及び内分泌変化は、実施
例1の薬理作用と関連し得るが、4週試験ではこれまで特定されていなかった。実施例1
関連薬理作用と一致しているが、すべての投与レベルで見られた精巣における形態的所見
の程度に基づき、有害であるとみなされた。オスの生殖組織及びLH及びテストステロン
に対する作用は、12週の回復期間の終了時までに回復した。
【0082】
実施例1の投与は、すべての投与レベルのメスにおいて、卵巣重量の低下及び肉眼的検
査での小卵巣と関連していた。下垂体重量の低下、及びLH循環レベルの低下が、150
mg/kg/日を投与されたメスにおいて観察された。顕微鏡検査所見は、実施例1の投
与と関連し、メスの生殖組織に観察された。150mg/kg/日以上の投与レベルで子
宮及び膣において顕微鏡検査所見が観察された一方、すべての投与レベルで卵巣及び乳腺
の所見が観察された。メスの生殖組織で観察された顕微鏡検査所見、及び循環LHレベル
の低下は、実施例1の薬理学的活性と関連した可能性があった。乳腺を含むメスの生殖組
織における所見は、4週反復投与毒性試験において従前に報告された結果と一致していた
。メスの生殖的変化は、生殖能力に影響を与える可能性があるが、動物の全般的な健康状
態には影響を与えない。メスの生殖組織及びLHに対する作用は、12週の回復期間の終
了時までに回復した。
【0083】
実施例1の投与は、すべての投与レベルでのメス、及び150mg/kg/日以上を投
与されたオスにおいて、胸腺重量の低下と関連していた。小胸腺の肉眼的所見が、150
0mg/kg/日を投与されたオスに観察された。実施例1の投与に関連したさらなる顕
微鏡検査所見は、150mg/kg/日以上の投与レベルで、肝臓、脾臓、胸腺(オス)
、及び皮膚(メス)に観察された。皮膚の顕微鏡検査所見は、すべての投与レベルで観察
された。これら変化のすべては、12週の回復期間の終了時には消失した。実施例1の投
与に関連した他の顕微鏡検査所見、器官重量変化、及び肉眼的所見は無かった。
【0084】
結論として、0、15、150、及び1500mg/kg/日の投与レベルで26週間
、毎日の強制経口投与による実施例1の投与は、オス及びメスの生殖組織における形態変
化及びホルモン変化と関連しており、それらは多くの場合、この分子の薬理作用に起因す
るものであり、150mg/kg/日で従前に治療された動物において、12週後には可
逆的であった。有害所見は精巣に限局され、すべての実施例1治療群で発生した。これら
退行性の精巣変化の程度に基づき、無有害作用量(NOAEL:no observab
le adverse effect level)は、本試験において確立し得、15
mg/kg/日未満であるとみなされる。
【0085】
ラットにおける、オスの生殖能力及び毒物動態
本試験の目的は、交配期間の前、及び交配期間中にオスのラットを処置したことにより
生じる生殖プロセスにおける潜在的有害作用を決定することである。これには、オスにお
ける機能的生殖効果の特定を含む。さらに、実施例1の血漿レベルの毒物動態評価がサテ
ライト動物において行われる。
【0086】
実施例1は、0、3、30、及び1000mg/kgの投与量で、強制経口投与により
与えられる。オスのラット(20匹/群)に、交配前の10週、3週の交配期間の間、及
びその後の安楽死の前日まで、毎日治療を行う(総数で100~101回の投与)。メス
には治療を行わない。すべての動物は、瀕死状態及び死亡に関し、1日に2回観察される
。臨床観察はオスのラットに対して毎日記録され、体重及び食物消費量はオスに対して週
に2回記録される。すべてのオスは最終用量投与の1日後に安楽死される。すべてのオス
に対し行われる精子形成エンドポイント評価は、運動性及び形態及び精巣上体精子の濃度
を含む。すべてのオスの精巣、精巣上体、前立腺、及び精嚢/凝固腺/分泌液が重量測定
され、保持される。生き延びたオスの精巣、精巣上体、前立腺、精嚢及び凝固腺は顕微鏡
検査が行われる。交配の証拠がある各メスに対し、妊娠15日目に腹式子宮摘出術が行わ
れる。さらに3匹、18匹、18匹、及び18匹のオスが毒物動態フェーズに割り当てら
れ、それぞれ、0、3、30、及び1000mg/kgの用量の化合物が与えられ、試験
0日目及び70日目に用量投与が行われた後、適切な間隔で毒物動態評価のための試料採
取が行われる。
【0087】
オスラットに対し実施例1の経口投与が毎日行われた後、Cmaxまでの時間は、0日
目で2~8時間、70日目で0.5~2時間である。平均曝露(AUC0-24時間によ
り測定)は、3~30mg/kgの間で、0日目及び70日目にそれぞれおよそ7.8倍
と4.5倍まで増加したが、30~1000mg/kg投与量の間ではほぼ変わらないま
まであったことから、曝露におけるプラトーは、30mg/kg超であることが示唆され
る。曝露は多くの場合、単回投与と反復投与の間で類似している。
【0088】
原則的に上述のプロトコールに従ったところ、毒物動態フェーズの30mg/kg群の
1匹のオス、及び主要フェーズのビヒクル対照群の1匹のオスが、それぞれ試験24日目
及び70日目に死亡したことが判明した。1000mg/kg群での死亡は無かったこと
から、30mg/kgでの死亡は化合物関連ではないとみなされた。日々の検証で、片方
の目、または両目の周囲の赤み(red material)の発現率の上昇が、30m
g/kg群の4匹のオス、及び1000mg/kg群の3匹のオスに対し記録され、それ
ぞれ早ければ試験8日目及び20日目に始まっていた。3、30及び1000mg/kg
群のオスに対し、毎日の検査、または用量投与のおよそ1時間後で、他の化合物関連の臨
床所見は記録されなかった。平均体重、体重増加、及び食物消費量は、すべての投与量レ
ベルで化合物投与により影響を受けなかった。
【0089】
精巣、精巣上体(全体及び尾部)、前立腺、及び精嚢/凝固腺/付随する分泌液を含む
オス生殖器官の絶対重量及び相対重量の用量依存性の低下が、30及び1000mg/k
g群において記録された。間質性ライディッヒ細胞と生殖上皮の萎縮を特徴とする組織学
的変化に相当する器官重量の作用が精巣において観察された。両群における精巣上体中の
成熟精子群の低下、及び1000mg/kg群において記録された副性腺中の分泌液の低
下と併せ、これらの所見は、ライディッヒ細胞によるアンドロゲン(テストステロン)合
成及び/もしくは分泌の下方制御、または標的器官におけるホルモン受容体の阻害による
下方制御と一致するとみなされた。1000mg/kg群において、生殖器官で記録され
た効果は、生殖機能の低下と対応していた。30及び1000mg/kg群において、副
性腺(前立腺、精嚢、及び凝固腺)で記録された器官重量への効果は、化合物の薬理作用
に関連しているとみなされた。
【0090】
精子形成エンドポイントに対する化合物関連作用は、1000mg/kg群において記
録された。精巣上体重量の低下は、1000mg/kg群において記録され、この群にお
ける平均精巣上体精子濃度の低下と対応していた。さらに、1000mg/kgで、頭部
が無いまたは頭部が鞭毛から離れた精子の数が多く、その結果として、化合物に関連した
正常形態精子の割合低下が観察された。これらの作用は、1000mg/kg群のオスに
おいて、交配行動、受精、及び交尾指数の低下と関連した。さらに、ビヒクル対照群と比
較し、1000mg/kg群において、交尾前の間隔の若干の長期化が観察された。3及
び30mg/kg群における精子形成エンドポイント及び生殖行動は化合物投与により影
響を受けなかった。
【0091】
3、30、及び1000mg/kgの投与レベルでのオスへの化合物投与により胚の子
宮内生存は影響を受けなかった。
【0092】
結論として、いずれの用量レベルでもオスの体重または食物消費量または有害化合物関
連臨床所見に対する効果は存在しなかった。オスの生殖組織及び精子形成パラメーターに
対する化合物関連有害作用は、30及び1000mg/kgで発生した。オスの生殖器官
重量の低下は、1000mg/kgで発生し、精巣上体精子の濃度と形態に対する効果と
対応していた。さらに、顕微鏡検査での変化が、1000mg/kgで精巣、精巣上体、
前立腺、精嚢、及び凝固腺において観察され、それらはこの群における交配行動、受精、
及び交尾指数の低下と対応していた。多くの場合、群ベースでは繁殖行動の低下とオスの
生殖組織における組織学的変化は対応していたが、個々の動物ベースでの相関は必ずしも
明白ではなかった。30mg/kg群において、生殖器官重量の低下と、精巣及び精巣上
体の形態変化は記録されなかった。30mg/kgでは生殖機能に対する対応作用が記録
されなかったことから、薬理作用シグナルは存在しているが、機能的生殖に影響を与える
までには大きくなかったことが示唆される。これらの所見に基づき、オスの生殖毒性及び
オスの全身毒性に対するNOAELは、3mg/kgであった。3mg/kgの投与レベ
ルは、試験70日目の曝露(AUC0-24時間)値の10,954ng・時/mLに相
当する。
【0093】
イヌにおける4週経口毒性試験
本試験は、イヌにおける、4週間の1日2回の経口カプセル投与を行った後の、選択的
アンドロゲン受容体モジュレーター(SARM)である実施例1の潜在毒性及び毒物動態
を評価するために行われる。3匹のオスと3匹のメスのビーグル犬の3つの治療群に、被
験物質を6、60、または300mg/kg/日の各投与レベルで投与する。3匹/性別
の追加の1つの群は対照として用いて、80%PEG 3350/20%ビタミンE T
PGS(V/V)のビヒクルを、経口カプセルを介して投与する。被験物質またはビヒク
ルは、連続した28日間、1日に2回、1.5mL/kg/1回分の投与量で、経口カプ
セルを介して全群に投与される。
【0094】
死亡率、罹患率、負傷、及び食物と水の利用可能度の観察は、すべての動物に対し1日
に2回行われる。詳細な臨床観察は、週に1度行われる。体重は、受領の翌日、無作為化
の前、及び試験期間中は週に1度、測定され、記録される。食物消費量は週に1度測定さ
れ、記録される。検眼鏡検査は、予備試験、及び最終解剖の前に行われる。身体検査は予
備試験で行われる。神経学的検査は1週目と4週目の間に行われる。ECG検査は投与開
始前に2回、ならびに3日目及び26日目の朝の被験物質投与後およそ2時間(±15分
)で行われる。血液試料は予備試験で2回採取され、臨床病理学的評価のための血液試料
と尿試料は最終解剖の前にすべての動物から採取される。被験物質の血漿濃度測定のため
の血液試料は、1日目及び28日目の指定された時点ですべての動物から採取される。毒
物動態パラメーターは、被験種における濃度-時間データから、被験物質に対し測定され
る。試験終了時、解剖検査が行われ、器官重量が記録され、精巣、精巣上体及び前立腺は
顕微鏡で検査される。実施例1がチトクロームP450を誘導する可能性については、凍
結肝臓試料を総チトクロームP450含有量に関し解析を行うことで決定される。
【0095】
原則的に上述のプロトコールに従ったところ、対照動物の血漿試料すべてにおいて、実
施例1は計測不可能な濃度(1ng/mL未満)であったことが判明した。実施例1の血
漿濃度において、オスとメスの間に差は記録されなかったことから、曝露に対するジェン
ダー効果は無いことが示唆される。6及び60mg/kg/日を投与された動物において
、実施例1の曝露は用量比例的よりも小さく増加し、300mg/kg/日の血漿濃度と
60mg/kg/日の血漿濃度は類似していたことから、60mg/kg/日でプラトー
に達したと思われた。
【0096】
イヌにおける52週の毒性試験及び毒物動態試験
本試験の目的は、少なくとも52週間、カプセルでイヌに毎日投与した場合の被験物質
である実施例1の毒性を評価し、及び毒物動態を決定することであり、ならびに13週の
回復期間後の何らかの効果の可逆性、持続性、または遅延型の発生を評価することである
。
【0097】
オス及びメスの純血種ビーグル犬を群に割り当て、0[1%(w/v)カルボキシメチ
ルセルロースナトリウム(低粘性/25-50cps)、0.5%(w/v)ラウリル硫
酸ナトリウム、及び0.05%(v/v)Dow Corning(登録商標)Anti
foam 1510-USの逆浸透水溶液]、3、10、または100mgの実施例1/
体重kgの1mL/kgを含有する経口カプセルを介して、表9に従い投薬する。すべて
の動物が同じ数のカプセルを投与され、1群の動物は、ビヒクル対照物質のみを含有する
カプセルを投与される。1群及び4群から、性別当たり3匹の動物を回復動物と指定する
。
【表9】
【0098】
毒性評価は、死亡率、臨床兆候、体重及び体重変化、食物消費、眼科評価及び神経学的
評価、ECG測定、ホルモン分析(テストステロン、プロゲステロン、黄体形成ホルモン
、及び卵胞刺激ホルモン)、精液評価(射精量及び精子の数、密度、形態、及び運動性)
、ならびに臨床病理及び解剖病理に基づいている。予備的代謝解析及び毒物動態評価のた
めに血液試料が採取される。
【0099】
原則的に上述のプロトコールに従ったところ、実施例1の全身曝露は、3から100m
g/kgへの投与レベルの増加とともに増加した。平均Cmax及びAUC0-24時間
の増加は、多くの場合、用量比例未満であった。毒物動態パラメーターにおいて、一貫性
のある性別に関連した差は観察されなかった。イヌにおいて、実施例1の蓄積は、実施例
1の反復投与が行われた後に観察された。
【0100】
すべての動物が、予定のと殺時まで生存した。化合物関連の臨床兆候は、3mg/kg
超を投与された動物における流涙の観察の増加、及び3mg/kg超を投与されたメスに
おける発情周期の低下または消失であった。
【0101】
毒物動態的に重要な差異は、平均体重、体重増加、及び食物消費において記録されなか
った。眼科的異常または神経学的異常も発生しなかった。
【0102】
QT間隔及び補正QT(QTc)間隔の延長が、100mg/kgを投与された両性別
において、投薬フェーズの3日目、86日目、及び359日目の投与前ならびに投与2時
間後に記録された。すべての投薬フェーズ間隔にわたり、100mg/kgを投与された
両性別における平均QTc間隔の増加の程度は、対照動物に対する平均値を超えて、14
~21ミリ秒(6~9%)の範囲であった。100mg/kgを投与された両性別の回復
フェーズの88日目、または3もしくは10mg/kgを投与された動物の投薬フェーズ
の3日目、86日目、もしくは359日目で、QTまたはQTc間隔に対する化合物関連
の変化は記録されなかった。3、10もしくは100mg/kgを投与された動物の投薬
フェーズの3日目、86日目、または359日目で、または100mg/kgを投与され
た動物の回復フェーズの88日目で、PR間隔、QRS時間、RR間隔、または心拍数の
実施例1関連の変化は観察されなかった。心電図の定性的評価の間、実施例1に起因する
調律異常または定性的ECG変化は無かった。
【0103】
すべての投与レベルのオスの投薬フェーズの間に、実施例1に関連した、用量依存性の
総精子数の低下が発生し、射精量の低下に起因していた。52週目の評価時(投薬フェー
ズの355日目及び360日目)に、対照と比較し、3、10、または100mg/kg
を投与されたオスは、それぞれ、総精子数が55%未満、50%未満、及び91%未満に
低下した。総精子数に対する作用は、回復フェーズの間に完全に回復した。平均精子密度
、運動性、または形態に対する実施例1関連効果は、いずれの群に対しても記録されなか
った。
【0104】
3mg/kg超を投与されたオス及びメスにおいて、ホルモン変化が記録された。この
変化は、被験物質の薬理作用と一致しており、顕微鏡的変化と相関していた。オスにおい
て、テストステロンの低下とLHの増加が観察された。メスにおけるLHの増加及びプロ
ゲステロンの低下は、無発情期と一致しており、顕微鏡検査で記録された黄体の減少と一
致していた。ホルモンレベルは回復フェーズの間に対照レベルにまで戻った。
【0105】
化合物関連臨床病理効果は、すべての投与レベルのオス及びメスで、極低度から中程度
のアラニンアミノトランスフェラーゼ活性の上昇(100mg/kgを投与されたメスが
最も影響を受けた)と、3または10mg/kgを投与されたオス及びメスで、極低度か
ら中程度のコレステロールの低下(3mg/kgを投与された動物が最も影響を受けた)
に限定されていた。100mg/kgでのアラニンアミノトランスフェラーゼ活性に対す
る効果は、回復フェーズ後に可逆性を示した。3及び10mg/kgでのコレステロール
濃度に対する効果の可逆性は、これらの投与レベルの動物が回復フェーズに入っていなか
ったために、評価することができなかった。これら効果のいずれも、相関性のある顕微鏡
所見と関連していなかった。
【0106】
薬理学的に予想された化合物関連形態変化が、オス及びメスの生殖組織で記録された。
化合物関連であり、可逆性のある前立腺、精巣上体、及び肝臓/胆嚢の重量の低下はオス
で発生し、それらは、肝臓/胆嚢の変化を除き、顕微鏡所見と相関していた。前立腺にお
いて、3mg/kg超を投与されたオスは、可逆的な前立腺の腺上皮萎縮を有していた。
3mg/kg超を投与されたオスは、可逆的な精巣上体尾(部)の細管直径の低下を有し
ており、100mg/kgを投与されたオスは、可逆的な精巣上体細管上皮の萎縮を有し
ていた。3mg/kg超を投与されたメスは、卵巣において無発情周期段階を伴う黄体の
減少/消失を有していた。この変化は多くの場合、乳腺における小葉発達の欠落が付随し
、ならびに二次生殖組織の無発情期への反応が予測された:子宮、子宮頚、膣及び乳腺が
、段階的に適切な、長い無発情期に応じた萎縮の特徴を有していた。
【0107】
まとめると、これらメスにおける所見は、化合物が関連した正常な生殖周期の崩壊と一
致している。回復フェーズにおいて、100mg/kgを投与されたメスの3分の2が、
発情間期の生殖周期段階、及び乳房小葉発達を有していたことから、回復フェーズの間の
生殖周期の臨床的証拠は記録されなかったが、正常な周期活性に戻ったことが示唆される
。
【0108】
さらに、化合物関連の可逆的な顕微鏡所見が、副腎及び皮膚/皮下組織において観察さ
れた。副腎において、10mg/kg超を投与されたオス、及び100mg/kgを投与
されたメスは、束状帯及び網状帯の空砲形成が低下した。皮膚においては、皮脂腺の空砲
形成の低下が、3mg/kg超を投与された動物において記録された。
【0109】
要約すると、3、10、または100mg/kgの投与レベルで52週間、カプセルに
よりイヌに対し実施例1を毎日投与しても、化合物関連の有害な所見は発生しなかった。
生殖機能における変化は、すべての実施例1治療群のオス(精子数及び射精量の減少)及
びメス(発情周期の低下/無発情周期)で発生し、顕微鏡所見と相関した。これら変化は
、動物の全般的な健康状態には影響を与えず、被験物質の薬理作用と一致しており、可逆
的である。従って、NOAELは100mg/kgである。361日間の投与後、100
mg/kgの投与量は、オス及びメスにおいてそれぞれ、1496ng/mL及び188
5ng/mLの平均C
max値、ならびに22582ng・時/mL及び31505ng
・時/mLのAUC
0-24時値に相当する。
【表10】
【0110】
1~12か月の期間、去勢されていないラットまたはイヌに対し実施例1を用いて治療
を行うことにより、前立腺の大きさに有意な低下が生じたことから、継時的な前立腺過形
成のアンドロゲン性リスクを増大させないことがさらに示唆される。
【0111】
TEの存在下での、実施例1の任意の直接的アンタゴニスト作用を探索するためのin
vivo試験
総数で36匹の精巣摘除された(ORX)Wistarオスラット、及び6匹の偽(s
ham)手術がなされたWistarオスラットを用いる(8週齢で精巣摘除が行われ、
4週間、放置される)。ラットは、22℃、12時間の明/暗サイクルで、食物(0.9
5%Caと0.67%Pを補充したTD 5001、Teklad社、Madison、
WI)と水にはいつでもアクセスできる状態で飼育される。ラットは無作為化され、体重
に基づき治療群(n=6)に配置される。TEを除く全群に対する投与経路は経口である
。TEは皮下に投与される。毎日投与を行った8週間の最後に、ラットを安楽死させ、体
重を計測し、組織を採取する。肛門挙筋、前立腺、及び精嚢が各動物から採取される。結
果は、平均±SEとしてプロットされる。
【0112】
精嚢湿重量の平均の比較
ダネット法を用いた対照との比較
対照群=d-ORX+TE、1mg/kg/日
|d| アルファ
2.69715 0.05
【表11】
【0113】
正の値は、有意に異なる平均の対を示す。
【0114】
エナント酸テストステロン(1mg/Kg-日)と、様々な投与量の実施例1の組み合
わせから、体重(gm)に対して標準化された精嚢湿重量(mg)の減少傾向が示唆され
、
図5及び表11に示されるように、それらはTE単独で誘導されている。
【0115】
前立腺重量の平均の比較
ダネット法を用いた対照との比較
対照群=d-ORX+TE、1mg/kg/日
|d| アルファ
2.69715 0.05
【表12】
【0116】
正の値は、TE単独群とは有意に異なる平均の対を示す。
【0117】
図6及び表12に示されるように、SDラットに対し、1mg/KgのTEと共に実施
例1を共処置することにより、体重(g)に対して標準化された前立腺の湿重量(mg)
において、用量依存性の減少が生じる。
【表13】
【0118】
合成テストステロンであるR1881と実施例1との比較から、ヒト前立腺癌細胞を用
いたin vitro実験で、実施例1はR1881よりもアンドロゲン性が低いことが
示される。対照的に、ヒトアンドロゲン受容体に対する生化学的結合アフィニティ(hA
r:Ki(nM))は、多少低下したのみである。
【0119】
健康なボランティアにおける第Ia相試験
この第I相試験は、無作為化、プラセボ対照、二重盲検、単回投与、不完全クロスオー
バー、用量漸増デザインであり、健康な男性と閉経後の女性からなる、3つの投与量コホ
ートで行われた。30人の対象(コホート当たり10人)が、各投与量コホートに無作為
に割り当てられる。
【0120】
両方の投与量期間中、対象は、臨床研究組織(CRU:Clinical Resea
rch Unit)に一晩、入院する。対象は、1日目の朝食後に経口投与され、投与後
およそ24時間、CRUに滞在する。各コホート内で、投与期間の間の休薬(ウォッシュ
アウト)期間は14~45日の範囲である。試験終了の来院は、最終投与のおよそ5日後
に発生する、第2ピリオド。用量漸増の適切性は、漸増の各工程での安全性の測定値によ
り決定される。対象-治験責任医師の二重盲検クロスオーバーデザインが本試験に用いら
れ、すべての安全性と忍容性の測定に関する対象間のデータが提供される。本デザインは
、AEの客観的評価を支援するものである。
【0121】
原則的に、上述のプロトコールに従った。不完全クロスオーバーデザインの結果として
、有意な安全性または忍容性のシグナルの検出を増強させるために対象のおよそ50%が
実施例1の単回投与とプラセボ投与を受けた。対象のおよそ50%が実施例1を2つの投
与レベルで受け、それにより、PKパラメーター及び他のエンドポイントの用量依存性の
対象内解析が可能となった。治療期間の間の持ち越し効果(carryover eff
ect)を最小化するために、最小で5日の投与間隔期間が選択された。
【0122】
本試験に対し予定された投与範囲は、実施例1が5~1000mgの範囲であり、ラッ
トにおいて80%の骨効果(中央骨幹量及び大腿骨頸部量の平均)を生じさせるために必
要とされる曝露が、ヒトにおいて必要とされる曝露と同じであるという仮定に基づき、ラ
ットにおけるin vivo有効性に基づいた。ヒトの非比例的な予測クリアランス(3
3L/時、90%信頼区間[CI]:24~46L/時)及び生体利用効率(49%)に基
づき、ヒトにおけるかかる反応は、約71mg/日の投与量で発生すると予測される(9
0%CI:29~321mg/日)。
【0123】
これらのデータから、
図7に示されるように、健康なヒトボランティアへの実施例1の
投与後、腓腹筋束(腓腹筋領域)での末梢骨コンピューター断層撮影法に基づいた画像解
析により測定された腓腹筋領域における増加が示される。
【表14】
【表15】
【0124】
これらのデータから、DEXAにより測定された、健康なヒトボランティアに対する実
施例1の投与後の全身除脂肪筋肉量における増加が示される。5mgの投与レベルでの男
性における効果(青いバー)は、
図8及び表14及び表15に示されるように、ダネット
検定(p<0.05)を用いたところ、0mgのプラセボ投与と比較し統計的に有意であ
る。
【表16】
【0125】
図9及び表16に示されるように、これらの図のデータから、いずれの時点でも、また
は実施例1のいずれの投与量でも、プラセボと比較し、前立腺特異抗原(SPA)値にお
ける基準値からの有意な変化はないことが示される。
【0126】
健康なボランティアの第Ib相試験
これは、健康な対象における、無作為化、プラセボ対照、対象及び治験責任医師の盲検
、反復投与、投与量漸増、並行群間比較の実施例1の第I相試験である。この試験は6つ
の治療群で行われ、対象は実施例1またはプラセボのいれかを4週間、毎日投与されるよ
う無作為に割り当てられた。安全性及び忍容性の評価は、各投与量漸増の前に行われる。
本試験の重要な組み入れ基準/除外基準は、対象が年齢30~80歳の健康な男性または
健康な閉経後の女性であることが組み入れ基準であり、肥満度指数(BMI:body
mass index)が18~32kg/m2も組み入れ基準となる。
【0127】
対象は本試験に登録され、スクリーニング後に無作為化される。1日目及び29日目に
対象は臨床研究組織(CRU)に入院する。1、2、及び28日目に、対象は、朝食後、
経口投与される。すべての安全性検査データは、朝食前と、一晩、少なくとも12時間の
断食後に集められる。
【0128】
1日後、予定された手順、朝食及び投与(1日目の投与のおよそ24時間後)が行われ
た後、2日目に対象は退院する。28日目の後、対象は、予定された手順後(28日目の
投与のおよそ24時間後)、29日目に退院する。
【0129】
これらのデータから、性腺機能が正常なヒトボランティアに対する実施例1の投与後の
血清テストステロン値の低下が示される。治療後の低下は、比較的高い血清テストステロ
ン値であった男性においてより顕著である。
図10に示される右側の表に、5mg投与で
のPh1a試験後の曝露評価が反映されている。
【表17】
【0130】
図11及び表16に示されるように、これらのデータから、骨代謝のバイオマーカーであるプロコラーゲン1型のN末端プロペプチド(P1NP)に関する、性腺機能の正常なヒトボランティアに対する実施例1の投与後の正の曝露-反応関係が示される。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
(S)-(7-シアノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)-カルバミン酸イソプロピルエステル、またはその薬学的に受容可能な塩の有効量を、かかる治療を必要としている患者に投与することを含む、アンドロゲン除去療法により誘導された続発性性腺機能低下症の結果としての症状の治療方法。
[2]
前記症状が、骨量、骨強度、筋肉量、または筋力の低下である、[1]に記載の方法。
[3]
前記症状が、性欲の減退及びホットフラッシュである、[1]に記載の方法。
[4]
療法における、(S)-(7-シアノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)-カルバミン酸イソプロピルエステル、またはその薬学的に受容可能な塩の使用。
[5]
アンドロゲン除去療法により誘導された続発性性腺機能低下症の結果としての症状の治療における、(S)-(7-シアノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)-カルバミン酸イソプロピルエステルの化合物、またはその薬学的に受容可能な塩の使用。
[6]
前記症状が、骨量、骨強度、筋肉量、または筋力の低下である、[5]に記載の使用。
[7]
前記症状が、性欲の減退及びホットフラッシュである、[5]に記載の使用。
[8]
アンドロゲン除去療法により誘導された続発性性腺機能低下症の結果としての症状を治療するための医薬の製造のための、(S)-(7-シアノ-4-ピリジン-2-イルメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-シクロペンタ[b]インドール-2-イル)-カルバミン酸イソプロピルエステルの化合物、またはその薬学的に受容可能な塩の使用。
[9]
前記症状が、骨量、骨強度、筋肉量、または筋力の低下である、[8]に記載の使用。
[10]
前記症状が、性欲の減退及びホットフラッシュである、[8]に記載の使用。