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特許7349483温度検知により最適化された液体測定システム、装置、及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】温度検知により最適化された液体測定システム、装置、及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20230914BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20230914BHJP
   G16H 20/13 20180101ALI20230914BHJP
【FI】
A61M5/32 500
A61M5/24
G16H20/13
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021193266
(22)【出願日】2021-11-29
(62)【分割の表示】P 2020121999の分割
【原出願日】2015-08-03
(65)【公開番号】P2022024149
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】62/032,017
(32)【優先日】2014-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514296629
【氏名又は名称】コモン センシング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ホエーリー,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】シフラニック,ケビン
(72)【発明者】
【氏名】ルグラン,マシュー
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0310756(US,A1)
【文献】米国特許第05452076(US,A)
【文献】特開2013-126532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61M 5/24
G16H 20/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤容器内に残存している、又は薬剤容器から投与される、液体体積又は投与量を測定する装置であって、
前記薬剤容器に向かって電磁放射を放出するように配置され構成された複数の光源と、
前記複数の光源に光学的に結合可能であり、各センサが前記複数の光源の少なくとも一部によって放出された前記電磁放射を検出するように配置され構成された複数のセンサと、
前記薬剤容器内の液体に関連する少なくとも1つの温度を測定するように配置され構成された温度センサと、
前記複数のセンサの各々から前記検出された電磁放射の部分を表すセンサデータと、前記温度センサから前記少なくとも1つの測定された温度と、を受信するように構成され、前記複数のセンサによって検出された前記電磁放射を表す信号シグネチャに少なくとも基づいて、前記薬剤容器内に残存している、又は前記薬剤容器から投与される、前記液体体積又は前記投与量を判定するよう動作可能な少なくとも1つのプロセッサと、
前記薬剤容器内に残存している、又は前記薬剤容器から投与される、前記液体体積又は前記投与量をユーザに伝達するように構成された通信インタフェースと、を備え、
前記プロセッサが、
前記受信したデータに関連する温度事象を特定するために前記少なくとも1つの測定された温度を温度指針と比較し、
前記受信したセンサデータに関連する温度事象に基づいて、前記液体に関連する効能のレベル、安全性のレベル、及び有効期限状態のうち少なくとも1つを判定し、
前記少なくとも1つの測定された温度に基づいて、前記受信したデータを正規化し、
前記正規化されたセンサデータを前記複数のセンサによって検出された前記電磁放射を表す前記信号シグネチャに変換する、ように動作可能であること、並びに
前記通信インタフェースが、前記液体に関連する前記効能のレベル、前記安全性のレベル、及び前記有効期限状態のうち前記少なくとも1つに関連する情報を伝達するようにさらに構成されること、
を特徴とする、装置。
【請求項2】
前記温度指針は、ベースライン温度、最高温度、及び最低温度のうち少なくとも1つを含み、前記温度指針は、前記最高温度を上回る1回の曝露の量、前記最低温度を下回る1回の曝露の量、前記最高温度を上回る累積曝露の量、前記最低温度を下回る累積曝露の量、最大温度変化率、及び、温度変動の最大頻度、のうち少なくとも1つをさらに含む、請求項1の装置。
【請求項3】
前記温度指針は、特定の液体に特有である、請求項1の装置。
【請求項4】
前記温度事象は、前記少なくとも1つの測定された温度と前記温度指針との間の関係及び差のうち少なくとも1つを含む、請求項1の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの測定された温度と、前記温度指針と、のうち少なくとも1つを記憶するように構成されたメモリをさらに備える、請求項1の装置。
【請求項6】
被検体の血糖を測定するように構成された血糖計をさらに備え、
前記少なくとも1つのプロセッサはさらに、
血糖測定値を受信し、
前記血糖測定値に関連する温度事象に基づいて前記血糖測定値を正規化する、
ように構成されている、請求項1の装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記信号シグネチャを複数の基準シグネチャと比較することにより、前記薬剤容器内に残存している、又は前記薬剤容器から投与される、前記液体体積又は前記投与量を判定するように動作可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記プロセッサはさらに、正のオフセット又は負のオフセットを前記少なくとも1つの測定された温度に加算することにより、最終的な温度読み取りを計算するように動作可能であり、前記正のオフセット又は前記負のオフセットは、外部較正温度と前記温度センサによって測定された内部温度との間の差に基づいて生成される、請求項1の装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記受信したセンサデータに相関係数を適用することにより、前記少なくとも1つの測定された温度に基づいて、前記受信したセンサデータを正規化するように動作可能であり、前記相関係数は、スケーリング定数と、前記少なくとも1つの測定された温度とベースライン温度との間の差と、に少なくとも基づく、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
薬剤容器内に残存している、又は薬剤容器から投与される、液体の体積又は投与量を推定する、液体測定システムによって実行される方法であって、
複数の光源に前記薬剤容器に向かって電磁放射を放出させることと、
前記薬剤容器を通過した前記放出された電磁放射を複数のセンサによって検出することと、
前記薬剤容器内の前記液体に関連する少なくとも1つの温度を温度センサによって測定することと、
前記検出された電磁放射の部分を表すセンサデータを前記複数のセンサの各々から受信するとともに、前記少なくとも1つの測定された温度を前記温度センサから受信することと、
前記複数のセンサによって検出された前記電磁放射を表す信号シグネチャに少なくとも基づいて、前記薬剤容器内に残存している、又は前記薬剤容器から投与される、前記液体の体積又は前記投与量を判定することと、
前記薬剤容器内に残存している、又は前記薬剤容器から投与される、前記液体体積又は前記投与量をユーザに伝達することと、を備え、
前記検出された電磁放射に関連する温度事象を特定するために前記少なくとも1つの測定された温度を温度指針と比較することと、
前記受信したセンサデータに関連する温度事象に基づいて、前記液体に関連する効能のレベル、安全性のレベル、及び有効期限状態のうち少なくとも1つを判定することと、
前記複数のセンサの各々から前記検出された電磁放射の部分を表すセンサデータを前記少なくとも1つの測定された温度に基づいて正規化することと、
前記正規化されたセンサデータを前記複数のセンサによって検出された前記電磁放射を表すシグネチャに変換することと、
前記液体に関連する前記効能のレベル、前記安全性のレベル、及び前記有効期限状態のうち前記少なくとも1つに関連する情報を伝達することと、
を特徴とする、方法。
【請求項11】
前記温度指針は、ベースライン温度、最高温度、及び最低温度のうち少なくとも1つを含み、前記温度指針は、前記最高温度上回る1回の曝露の量、前記最低温度を下回る1回の曝露の量、前記最高温度を上回る累積曝露の量、前記最低温度を下回る累積曝露の量、最大温度変化率、及び、温度変動の最大頻度、のうち少なくとも1つをさらに含む、請求項10の方法。
【請求項12】
前記温度指針は、特定の液体に特有である、請求項10の方法。
【請求項13】
前記温度事象は、前記少なくとも1つの測定された温度と前記温度指針との間の関係及び差のうち少なくとも1つを含む、請求項10の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの測定された温度と、前記温度指針と、のうち少なくとも1つを記憶することをさらに備える、請求項10の方法。
【請求項15】
被検体の血糖測定値を受信することと、
前記血糖測定値に関連する温度事象に基づいて前記血糖測定値を正規化することと、
をさらに備える、請求項10の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本願は、2014年8月1日に提出された、「温度センサを備えた液体測定システム」と題された米国仮出願第62/032,017号の優先権及び利益を主張する。同出願の開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本開示は、概して、投与デバイス内に配置された液体の量及び/又は液体の温度を測定するシステム、装置、及び方法に係り、特に、温度センサを含む注射ペンキャップに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 多くの慢性病患者が、注射ペン又は類似の薬剤投与デバイスを用いて自己投与されるか、介護者によって投与されるか、又は自動化されもしくは半自動化された投与システムによって投与される必要のある投薬を処方される。例えば、I型又はII型糖尿病と診断された患者は、定期的に自身の血糖値を確認し、適切な投与量のインスリンを注射ペンを用いて投与しなければならない。投薬の効能を監視するために、投与量情報が記録されなければならない。投与量情報を手動で記録するプロセスは、特に設定が規制されていない場合には、退屈で間違いを起こしやすい。患者はしばしば、薬を投与する際に投与量情報の記録をとるのを忘れる。また、多くのそのような患者は、投与量情報を効率的に及び/又は正確に追跡することのできない未成年者又は高齢者であり得る。
【0004】
[0004] 不完全な投薬量記録は、患者が病状を自己管理する能力を妨害するとともに、介護者が行動に関する洞察に基づいて介護計画を調整するのを妨害する。注射薬の目標服薬スケジュールが厳守されないと、救命救急の必要が増大するかもしれず、その結果、世界中の国々で医療費の大幅な増大がもたらされる。
【0005】
[0005] したがって、改良された技術的援助、特に、患者が薬剤投与デバイスを用いて病気治療を自己管理する能力を高めること及び介護者が患者の健康を監視することの両方をより良好に支援するための新たな投与デバイスの必要性が存在する。とりわけ、患者行動についてのデータ収集を容易にするとともに、そのデータが来院(例えば再入院)の発生率を低減させるためならびに患者、介護提供者、家族、及び金融サービス提供者に周知徹底及び教育するために用いられることを可能にするシステム、装置、及び方法の必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006] 本明細書に記載された実施形態は、概して、投与デバイス内に配置された液体の量及び/又は液体の温度を測定するシステム、装置、及び方法に係り、特に、温度センサを含む注射ペンキャップに関する。発明者は、本明細書に記載されたシステム、装置、及び方法の実施形態の特性に温度が影響を及ぼし得ることを認識及び察知した。特に、温度は、いくつかの実施形態を用いて行われる液体の量の測定に影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態においては、温度は、グルコース計試験片など、1つ以上の追加的な構成要素の特性にも影響し得る。
【0007】
[0007] 温度は、薬剤投与デバイス内に配置された薬剤の品質にも影響を及ぼし得る。投薬――インスリンを含むがこれに限られない――の効能及び保存期間は、特定の投薬が曝される温度及び/又は特定の投薬が保管される温度によって強く影響を受ける。そのような投薬を収容する注射ペンは、患者によって、例えば患者のポケット、バックパック、ハンドバック、旅行鞄などに入れて持ち運ばれることが多い。よって、投薬は幅広く変動する周囲温度に曝されるかもしれず、これは投薬の有効期限状態、及び/又は最終的に患者に投与される投薬の生物学的利用能、投薬の生物有効性、及び/又はその投薬によって提供される安楽に影響し得る。また、温度曝露の具体的な影響を知ることは、患者、介護提供者、及び家族の安全性の懸念及び不安を和らげ得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008] いくつかの実施形態においては、容器内の液体体積を測定する投与量測定システムは、容器に向かって電磁放射を放出するように配置され構成された複数の光源を含む。複数のセンサがこの複数の光源に光学的に結合可能である。センサは、光源の少なくとも一部によって放出された電磁放射を検出するように配置され構成されている。装置は、容器内に配置された液体の温度を測定するように構成された温度センサを含む。装置は、検出された電磁放射の部分を表すデータを複数のセンサの各々から受信するように、且つ、受信したデータを、複数のセンサによって検出された電磁放射を表すシグネチャに変換するように構成された処理ユニットも含む。処理ユニットは、温度センサから温度情報を受信するとともに、センサ値を正規化し、液体の効能を判定し、液体の有効期限状態を判定し、投与の安楽度を判定するなどするようにも構成されている。いくつかの実施形態においては、温度センサは、液体を取り巻く環境の温度を測定するようにも構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】[0009] いくつかの実施形態による投与量測定システムの概略ブロック図である。
図2】[0010] いくつかの実施形態による投与量測定システムの斜視図である。
図3】[0011] いくつかの実施形態による図2の投与量測定システムの分解斜視図である。
図4】[0012] いくつかの実施形態による図2の投与量測定システムの分解上面図である。
図5】[0013] いくつかの実施形態による図2の投与量測定システムに含まれ得る通信インタフェースの概略図である。
図6】[0014] いくつかの実施形態による第1の媒体と第2の媒体との間での異なるモードの光の透過の概略光線図である。
図7】[0015] いくつかの実施形態による投与量測定システムの断面図である。
図8】[0016] いくつかの実施形態による投与量測定システムの断面図である。
図9】[0017] いくつかの実施形態による投与量測定システムの断面図である。
図10】[0018] いくつかの実施形態による投与量測定システムの側部断面図である。
図11A】[0019] いくつかの実施形態による第1の構成の投与量測定システムの断面図である。
図11B】[0019] いくつかの実施形態による第2の構成の投与量測定システムの断面図である。
図11C】[0019] いくつかの実施形態による第3の構成の投与量測定システムの断面図である。
図12】[0020] いくつかの実施形態による図11Aの投与量測定システムの線A-Aに沿った断面図である。
図13】[0021] いくつかの実施形態による図11Cの投与量測定システムの線B-Bに沿った断面図である。
図14】[0022] いくつかの実施形態による投与量測定システムのセンサの基準シグネチャ信号を示すグラフ。
図15】[0023] いくつかの実施形態による投与量測定システムの動作方法のフロー図である。
図16】[0024] いくつかの実施形態による投与量測定システムの動作方法のフロー図である。
図17】[0025] いくつかの実施形態による投与量測定システムと関連付けられた健康管理システムの概略ブロック図である。
図18】[0026] いくつかの実施形態による温度検知モジュールを備えた液体測定システムの概略ブロック図である。
図19】[0027] いくつかの実施形態による温度検知モジュールを備えた液体測定システムの斜視図である。
図20】[0028] いくつかの実施形態による図19の液体測定システムの分解斜視図である。
図21】[0029] いくつかの実施形態による図20の液体測定システムに含まれた下側ハウジングの背面斜視図である。
図22】[0030] いくつかの実施形態による図21の液体測定システムの検知アセンブリに含まれたPCBの底面図である。
図23】[0031] いくつかの実施形態による、液体測定システムの代表センサの補償された測定値及び補償されていない測定値を温度の関数として示すグラフである。
図24】[0032] いくつかの実施形態による温度センサを含む液体測定システムの一部の図である。
図25】[0033] いくつかの実施形態による1つ以上の液体測定システムを監視するためのユーザインタフェース表示のスクリーンショットである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0034] 本明細書に記載された実施形態は、概して、投与デバイス内に配置された液体の量及び/又は液体の温度を測定するシステム、装置、及び方法に係り、特に、温度センサを含む注射ペンキャップに関する。多くの慢性病患者が、注射ペン又は類似の薬剤投与デバイスを用いて自己投与されるか、介護者によって投与されるか、又は自動化されもしくは半自動化された投与システムによって投与される必要のある投薬を処方される。例えば、I型又はII型糖尿病と診断された患者は、定期的に自身の血糖値を確認し、適切な投与量のインスリンを注射ペンを用いて投与しなければならない。投薬の効能を監視するために、投与量情報が記録されなければならない。投与量情報を手動で記録するプロセスは、特に設定が規制されていない場合には、退屈で間違いを起こしやすい。
【0011】
[0035] さらに、温度が、いくつかの実施形態の測定特性及びいくつかの実施形態に含まれる薬剤の品質特性に影響を及ぼし得る。投薬――インスリンを含むがこれに限られない――の効能及び保存期間は、特定の投薬が曝される温度及び/又は特定の投薬が保管される温度によって強く影響を受ける。そのような投薬を収容する注射ペンは、患者によって、例えば患者のポケット、バックパック、ハンドバック、旅行鞄などに入れて持ち運ばれることが多い。したがって、投薬は幅広く変動する周囲温度に曝されるかもしれず、これは投薬の有効期限状態、及び/又は最終的に患者に投与される投薬の生物学的利用能、投薬の生物有効性、及び/又はその投薬によって提供される安楽に影響し得る。また、温度曝露の具体的な影響を知ることは、患者、介護提供者、及び家族の安全性の懸念及び不安を和らげ得る。
【0012】
[0036] 本明細書に記載されたシステム、装置、及び方法の実施形態は、容器内に配置された液体の温度及び/又は注射ペンのような液体を収容する容器を含むがこれに限られない液体の周囲の環境の温度を測定するように構成された1つ以上の温度センサを含む。
【0013】
[0037] いくつかの実施形態においては、容器内の液体体積を測定する投与量測定システムは、容器に向かって電磁放射を放出するように配置され構成された複数の光源を含む。複数の光源は、例えば複数の発光ダイオード(LED)を含んでいてもよい。代替的には、単一光源(例えば単一のLED)が電磁放射をライトパイプ内へと放出するために用いられ、このライトパイプが、放出された電磁放射を、容器に向かって電磁放射を放出するように配置され構成された複数の光源へと分割してもよい。いくつかの実施形態においては、複数のセンサは複数の光源に光学的に結合可能であり、光源の少なくとも一部により放出された電磁放射を検出するように配置され構成されている。装置は、検出された電磁放射の部分を表すデータを複数のセンサの各々から受信するように、且つ、受信したデータを、複数のセンサによって検出された電磁放射を表すシグネチャに変換するように構成された処理ユニットも含む。1つ以上の温度センサは、容器内に配置された液体の温度及び/又は容器を取り巻く環境の温度を測定するように配置され構成されている。この温度情報は、残存している液体の生物学的利用能及び/又は生物有効性のレベルを含む様々な指標を判定するために用いられ得る。
【0014】
[0038] いくつかの実施形態においては、薬剤投与デバイス内の液体の体積を推定する方法は、複数の光源に薬剤容器に向かって電磁放射を放出させることと、薬剤容器を通過した放出された電磁放射のシグネチャを複数のセンサによって検出することとを含む。検出されたシグネチャは次いで、薬剤容器内の液体の体積を判定するために、複数の基準シグネチャと比較される。複数の基準シグネチャの各々は、薬剤容器内に残存している体積レベルに対応する。いくつかの実施形態においては、薬剤容器を通過した放出された電磁放射のシグネチャを検出することは、複数の光源の少なくとも一部から放出された電磁放射の少なくとも一部を検出することを含む。電磁放射の、複数のセンサデバイスの各々によって検出された部分は、信号シグネチャに組み込まれてもよい。いくつかの実施形態においては、方法は、薬剤、容器、及び/又は容器を取り巻く環境の1つ以上の温度を検出することをさらに含む。検出された1つ以上の温度は、薬剤に関連する品質を表示するために用いられ得る。1つ以上の温度は、体積測定特性に関連する品質を表示するため及び/又は堆積測定特性を調整するためにも用いられ得る。
【0015】
[0039] いくつかの実施形態においては、方法は、薬剤容器内の液体の体積に基づいて患者に投与された投与量を計算することも含む。いくつかの実施形態においては、患者に投与された投与量は、遵守状況を監視するために、患者の投薬スケジュールと比較される。方法は、背景光に関して信号シグネチャを補正することをさらに含んでいてもよく、これはノイズに寄与し得る。この補正は、信号シグネチャを、複数の光源の各々が暗状態であるときに、複数のセンサによって検出された背景シグネチャと比較することを含んでいてもよい。方法は、温度の影響に関して信号シグネチャを補正することをさらに含んでいてもよい。この補正は、信号シグネチャを、複数の光源の各々が好適な温度状態であるときに、複数のセンサによって検出された背景シグネチャと比較することを含んでいてもよい。いくつかの実施形態においては、方法は、薬剤容器内のある範囲の投与量体積のシグネチャを記録することによって複数の基準シグネチャを生成することも含む。方法は、投与量容器内に残存している液体の体積を判定するために、確率的マッチングを用いて信号を基準シグネチャと関連付けることも含み得る。
【0016】
[0040] いくつかの実施形態においては、薬剤測定システムを用いて注射ペンにより投与される投与量を判定する方法は、複数の光源に注射ペンに向かって電磁放射を初めて放出させることと、注射ペンを通過した放出された電磁放射の第1のシグネチャを複数のセンサによって検出することとを含む。第1のシグネチャは次いで、注射ペン内の液体の第1の体積を判定するために、複数の基準シグネチャと比較される。方法は、1回目の後で複数の光源に注射ペンに向かって電磁放射を再度放出させることと、注射ペンを通過した放出された電磁放射の第2のシグネチャを複数のセンサによって検出することとをさらに含む。第2のシグネチャは次いで、注射ペン内の液体の第2の体積を判定するために、複数の基準シグネチャと比較される。注射ペンから投与される投与量を判定するために、第2の体積が第1の体積から差し引かれてもよい。
【0017】
[0041] いくつかの実施形態においては、複数の光源及び複数のセンサは注射ペンキャップ内に配置される。いくつかの実施形態においては、方法は、注射ペンキャップが注射ペンから取り外される前に第1のシグネチャを検出することと、注射ペンキャップが注射ペンに戻された後に第2のシグネチャを検出することとを含む。方法は、投与済投与量情報を外部デバイスに伝達することも含み得る。いくつかの実施形態においては、方法は、ペンキャップの所定の無活動期間の後でペンキャップを省電力モードに切り替えることを含む。いくつかの実施形態においては、方法は、薬剤容器内に残存している液体の体積が極めて低い場合及び/又は投薬の投与量を投与する時刻である場合にユーザに警告することをさらに含む。
【0018】
[0042] いくつかの実施形態においては、健康管理システムは、薬剤貯蔵器を含む薬剤投与デバイスと、薬剤投与デバイスに取り外し可能に結合可能であるように構成された投与量測定システムとを含む。投与量測定システムは、薬剤貯蔵器に向かって電磁放射を放出するように配置され構成された複数の光源と、複数の光源に光学的に結合可能な、薬剤貯蔵器を通過して伝達された電磁放射の量を検出するように配置され構成された複数のセンサとを含む。電磁放射の量は、薬剤貯蔵器内に残存している液体の体積を表すシグネチャとして役立つ。健康管理システムは、薬剤貯蔵器内に残存している液体の体積を示す情報をユーザに提示するように構成された表示部も含む。投与量測定システムは、例えば遠隔デバイスが患者に投与された投与量を計算することを可能にするために、薬剤貯蔵器内に残存している液体の体積を表すデータを遠隔デバイスに伝達するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態においては、投与量管理システムは、遠隔デバイスから、例えばユーザの血糖値、ユーザの食事制限、ユーザの運動、及び/又はユーザの在宅健康監視データを含み得るユーザの健康データを受信するように構成される。
【0019】
[0043] 図1は、いくつかの実施形態による薬剤投与デバイス110における投与量を測定するための投与量測定システム100の概略ブロック図である。投与量測定システム100は、照明モジュール140と、検知モジュール150と、処理ユニット160と、通信モジュール170とを含む。投与量測定システム100は、例えば人間の患者などのターゲットTに薬剤投与量を投与するために用いられる薬剤投与デバイス110に取り外し可能に結合可能であるように構成されていてもよい。
【0020】
[0044] 薬剤投与デバイス110は、患者に投薬を注入するために使用可能な任意の薬剤投与デバイス110であり得る。例えば、薬剤投与デバイス110は、注射ペン(例えばインスリン注射ペン)、シリンジ、ポンプ(例えばインスリン投与ポンプ)、アンプル、又はバイアルであってもよい。投与量測定システム100は、幅広く様々な薬剤投与デバイス110(例えば異なる形状、大きさ及び薬剤体積)に結合可能であるように構成され得る。いくつかの実施形態においては、投与量測定システム100は、薬剤投与デバイス110の一部(例えば、薬剤を収容している内部体積を定義する部分、インジェクタ、及び/又はプランジャ)を受容するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態においては、投与量測定システム100は、ユーザが投与量をターゲットTに投与しているときには薬剤投与デバイス110から取り外し可能であるように構成される。いくつかの実施形態においては、投与量測定システム110は、ユーザが投与量をターゲットTに投与しているときに薬剤投与デバイス110に取り付けられたままであってもよい。いくつかの実施形態においては、投与量測定システム100は再利用可能であるように構成されている。いくつかの実施形態においては、投与量測定システム110は薬剤投与デバイス110に永久的に結合され、例えば薬剤投与デバイスの本体に統合されていてもよい。そのような実施形態においては、投与量測定システム100は使い捨てであってもよい。
【0021】
[0045] 照明モジュール140は、薬剤投与デバイス110に向かって電磁放射を放出するように構成された複数の光源を含む。いくつかの実施形態においては、複数の光源は、薬剤投与デバイス110の薬剤貯蔵器(図示しない)に向かって電磁放射を放出するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態においては、複数の光源の各々は発光ダイオード(LED)であってもよい。いくつかの実施形態においては、複数の光源は、電磁放射が薬剤投与デバイス110のハウジング及び任意の内部構成要素、及び/又はその中に収容された液体薬剤を貫通し得るように放射を行うように構成されていてもよい。いくつかの実施形態においては、複数の光源は、予め定義された期間にわたって連続電磁放射を放出するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態においては、複数の光源は、電磁放射のパルス(例えば一連の100マイクロ秒未満のパルス)を放出するように構成されていてもよい。
【0022】
[0046] 検知モジュール150は、照明モジュール140の複数の光源に光学的に結合可能な複数のセンサを含む。いくつかの実施形態においては、複数のセンサの各々は受光素子である。複数のセンサは、光源の少なくとも一部によって放出された電磁放射を検出するように配置され構成されている。いくつかの実施形態においては、検出された電磁放射は、電磁放射の透過部分、屈折部分、及び反射部分を含む。いくつかの実施形態においては、屈折された電磁放射は、薬剤投与デバイス110のハウジング及び/又は薬剤貯蔵器の曲面のレンズ効果によって引き起こされた多方向屈折を含み得る。
【0023】
[0047] 処理ユニット160は、検知モジュール150(すなわち複数のセンサの各々)から電磁放射信号を受信し、受信したデータを、複数のセンサの各々によって検出された電磁放射を表す信号シグネチャに変換するように構成されている。処理ユニット160は、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、ASICチップ、ARMチップ、アナログ・デジタル変換器(ADC)、及び/又はプログラマブルロジックコントローラ(PLC)を含むがこれらに限られないプロセッサを含み得る。いくつかの実施形態においては、処理ユニット160は、複数のセンサの各々によって検出された電磁放射データとその電磁放射データから生成された信号シグネチャとのうち少なくとも一方を一時的に記憶するように構成されたメモリを含んでいてもよい。いくつかの実施形態においては、メモリは、複数の基準シグネチャを記憶するようにも構成され得る。複数の基準シグネチャの各々は、薬剤投与デバイス110内の薬剤体積を表し得る。いくつかの実施形態においては、処理ユニット160は、情報(例えば残存投与量情報)を記憶するように且つ記憶された情報を近距離通信(NFC)デバイスが読み取ることを可能にするように構成されたRFIDチップも含む。いくつかの実施形態においては、処理ユニット160は、薬剤投与デバイス110内に残存している投与量体積及び/又は薬剤投与デバイス110によって注入された投与量を判定するために、信号シグネチャを基準シグネチャと関連付けるように構成されている。いくつかの実施形態においては、処理ユニット160は、投与量測定システム100の現在地を判定するための全地球測位、赤外線放射、及び/又はマイクロ波放射ナビゲーションシステム(例えばGPS)も含む。
【0024】
[0048] 通信モジュール170は、スマートフォン、ローカルコンピュータ、及び/又は遠隔サーバを含むがこれらに限られない外部デバイスとの双方向通信を可能にするように構成されていてもよい。いくつかの実施形態においては、通信モジュール170は、Wi-Fi、Bluetooth(登録商標)、省電力Bluetooth(登録商標)、ZigBeeなどを含むがこれらに限られない、外部デバイスとの無線通信のための手段を含む。いくつかの実施形態においては、通信モジュール170は、外部デバイスとの有線通信を提供するための通信インタフェース(例えばUSB又はfirewireインタフェース)を含む。いくつかの実施形態においては、通信インタフェースは、充電式電池のような電源を充電するためにも用いられる。
【0025】
[0049] いくつかの実施形態においては、通信モジュール170は、残存投与量、使用履歴、電池残量、無線接続状態、及び/又はユーザ注意喚起を含むがこれらに限られない投与量測定システム100の状態をユーザに伝達するように構成された表示部を含む。いくつかの実施形態においては、通信モジュールは、音声及び/又は触覚警報を伝えるためのスピーカ及び/又は振動機構も含む。いくつかの実施形態においては、通信モジュール170は、システムの電源オン、システムの電源オフ、システムのリセット、患者行動の詳細の手動入力、薬剤投与デバイス110の使用の詳細の手動入力、及び/又は投与量測定システム100と遠隔デバイスとの間の通信の手動開始を含むがこれらに限られない情報又は命令をユーザが投与量測定システム100に入力することを可能にするためのユーザ入力インタフェース(例えばボタン、スイッチ、英数字キーパッド、タッチスクリーン、カメラ、及び/又はマイク)を含む。
【0026】
[0050] 投与量測定システム100は、薬剤投与デバイス110に取り外し可能に結合可能であるように構成されたハウジング(図示しない)内に配置されてもよい。例えば、照明モジュール140、検知モジュール150、処理ユニット160及び通信モジュール170はハウジングに組み込まれていてもよく、あるいは、投与量測定システム100の個々の構成要素(例えば照明モジュール140及び検知モジュール150)は第1のハウジングに組み込まれ、他の構成要素(例えば処理ユニット160及び通信モジュール170)は分かれているか又は第2のハウジングに組み込まれていてもよい。いくつかの実施形態においては、ハウジングは、薬剤投与デバイス110の少なくとも一部に取り外し可能に結合されるように構成される(例えば形状及び大きさを決められる)。例えば、ハウジングは凹部を有し及び/又は穴を定義していてもよく、その内部に薬剤投与デバイス110の一部が収容され得る。ハウジングは、投与量測定システム100が所定の径方向配向で薬剤投与デバイス110に結合されることを可能にするための整列フィーチャを有していてもよい。ハウジングは不透明であってもよく、例えば信号品質を高めるべく、周囲の電磁放射からの干渉を防止するための絶縁構造を含んでいてもよい。例えば、絶縁構造は、投与量測定システム100の電子部品を外部電磁放射から遮蔽するように構成された金属ライニングであってもよい。いくつかの実施形態においては、ハウジングは、例えばペンキャップにかなり似ており、薬剤投与デバイス110(すなわち注射ペン)の交換キャップとして作用する。
【0027】
[0051] いくつかの実施形態においては、照明モジュール140及び検知モジュール150は、複数の光源が薬剤投与デバイス110の第1の側に配置され複数のセンサが薬剤投与デバイス110の第2の側に配置されるように、投与量測定システム100のハウジング内に配置及び/又は配向される。いくつかの実施形態においては、複数の光源は薬剤投与デバイス110に対して第1の径方向位置に配置され、複数のセンサは第1の径方向位置とは異なる第2の径方向位置に配置される(例えば、第2の径方向位置は、第1の径方向位置から約180度であってもよい)。換言すれば、投与量管理システム100は、複数の光源が薬剤貯蔵器の一方側に配置され、複数のセンサが薬剤貯蔵器の反対側に配置されるように構成され得る。いくつかの実施形態においては、複数の光源及び複数のセンサの各々は、略一直線に配置される。いくつかの実施形態においては、複数の光源は、各光源が少なくとも1つのセンサに隣接して位置し、各光源が少なくとも1つのセンサに平行に且つその見通し線内に位置するように、配置される。いくつかの実施形態においては、複数の光源のうち少なくとも1つ及び/又は複数のセンサのうち少なくとも1つは、薬剤投与デバイス110の長手軸について傾斜配向で位置している。いくつかの実施形態においては、複数のセンサの数は、複数の光源の数と等しいか、それよりも多いか、又はそれよりも少ない。いくつかの実施形態においては、複数の光源及び複数のセンサは、投与量測定システム110が薬剤投与デバイス110内の薬剤の体積を1単位以下の薬剤(例えば0.1単位、0.2単位、0.5単位などといった端数単位の薬剤)の分解能で検出することができるように構成されている。いくつかの実施形態においては、複数の光源及び複数のセンサは、投与量測定システム110が薬剤投与デバイス110内に配置されたアクチュエータのプランジャ部の位置を、10マイクロメートル、20マイクロメートル、30マイクロメートル、40マイクロメートル、50マイクロメートル、60マイクロメートル、70マイクロメートル、80マイクロメートル、90マイクロメートル、100マイクロメートル、110マイクロメートル、120マイクロメートル、130マイクロメートル、140マイクロメートル、150マイクロメートル、160マイクロメートル、170マイクロメートル、180マイクロメートル、又は200マイクロメートル、及びこれらの間の範囲をすべて含む分解能で検出することができるように構成される。
【0028】
[0052] 以上、様々な一般原理を説明したが、次にこれらの概念のいくつかの例示的な実施形態を説明する。これらの実施形態は例に過ぎず、薬剤投与デバイスによって投与された投与量及び患者の健康全般を測定する単数又は複数の投与量測定システム及び/又は方法の多くの他の構成が予想される。
【0029】
[0053] ここで図2乃至4を参照すると、いくつかの実施形態によれば、投与量測定システム200は、照明モジュール240と、検知モジュール250と、処理ユニット260と、通信モジュール270と、電源286とを含み得る。投与量測定システム200は、薬剤投与デバイス210(本明細書においては「注射ペン210」とも称される)に取り外し可能に結合可能であるように構成されていてもよい。薬剤投与デバイス210は、予め定義された薬剤量(例えば投与量)を患者に投与するように構成されていてもよい。薬剤投与デバイス210の例には、インスリンを自己投与するために患者によって用いられ得るインスリン注射ペンが含まれる。本明細書に記載されているように、薬剤投与デバイス210は、ハウジング212と、アクチュエータ214と、インジェクタ216とを含んでいてもよい。ハウジング212は、電磁放射の選択波長(例えば赤外又はマイクロ波放射)のみを透過させ得るように、比較的不透明であってもよい。ハウジング212は、薬剤を貯蔵するための内部体積(例えば貯蔵器)を定義する。アクチュエータ214は、薬剤と流体連通し予め定義された量の薬剤を患者に伝達するように構成されたプランジャ部を含んでいてもよい。アクチュエータ214は、例えばユーザによって、可変量の薬剤を分配投与するように構成可能であってもよい。インジェクタ216は、薬剤の筋肉内、皮下、及び/又は静脈内投与のために、ユーザの皮膚を貫通するように構成されている。
【0030】
[0054] 投与量測定システム200は、上側ハウジング部222(本明細書においては「上側ハウジング222」とも称される)と下側ハウジング部224(本明細書においては「下側ハウジング224」とも称される)とを備えたハウジング220を含む。上側ハウジング部222及び下側ハウジング部224は、例えば糊付け、熱溶着、及び/又はスナップフィット機構の使用、ねじの使用、又は任意の他の適切な結合手段によって、取り外し可能に又は固定的に連結されていてもよい。ハウジング220は、ポリテトラフルオロエチレン、高密度ポリエチレン、ポリカーボネート、他のプラスチック、アクリル、板金、及び任意の他の適切な材料又はこれらの組み合わせを含むがこれらに限られない、剛性、軽量、及び/又は不透明の材料から作製され得る。ハウジング220は、投与量測定システム200の内部電子部品を環境電磁ノイズから遮蔽するようにも構成され得る。例えば、ハウジングは、例えば電磁遮蔽体として役立つことのできるアルミニウムライニング又は任意の他の金属のシートもしくは箔のような絶縁構造(図示しない)を含んでいてもよい。
【0031】
[0055] 図3に示されるように、上側ハウジング部222は、いくつかの実施形態によれば、照明モジュール240と、検知モジュール250と、処理ユニット260と、通信モジュール270と、電源286とを実質的に収納する内部体積を定義する。下側ハウジング部224は、薬剤投与デバイス210の少なくとも一部を受容するように形状及び大きさを決められた穴226を含み定義する。例えば、穴226は、ハウジング212及びインジェクタ216の薬剤収容部分のみを受容するように形状及び大きさを決められていてもよい。穴226は、好適な径方向配向など、好適な配向で薬剤投与デバイス210を受容するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態においては、穴226は、例えば薬剤投与デバイス210との摩擦嵌合を形成するように、薬剤投与デバイス210の直径と精密公差を有する。いくつかの実施形態においては、穴226は、薬剤投与デバイス210を下側ハウジング224に取り外し可能に結合するために、1つ以上の切込み、溝、戻り止め、任意の他のスナップフィット機構、又はねじ山を含む。いくつかの実施形態においては、下側ハウジング部224は、薬剤投与デバイス210が所定の径方向配向で投与量測定システム200と結合可能となることを可能にするための1つ以上の整列フィーチャを含む。
【0032】
[0056] いくつかの実施形態においては、下側ハウジング224は、照明モジュール240の複数の光源244及び/又は検知モジュール250のセンサ254のうち少なくとも一部を受容するための1つ以上の窓孔228を含む。窓孔228は、光源244及び/又はセンサ254のための機械的支持を提供するように構成されていてもよく、あるいは照明モジュール240及び/又は検知モジュール250のための整列機構として役立ってもよい。
【0033】
[0057] 図4に示されるように、上側ハウジング222は、いくつかの実施形態によれば、例えば外部デバイスとの有線通信を提供するための通信インタフェース及び/又は電源286を充電するためのインタフェースなど、通信モジュール270の少なくとも一部を受容するための開口230を含む。いくつかの実施形態においては、上側ハウジング222は、インジェクタ216など、薬剤投与デバイス210の一部を受容するための1つ以上のフィーチャ(例えば凹部、窓孔、空洞など)も含む。いくつかの実施形態においては、ハウジング220は、薬剤投与デバイス210が投与量測定システム200に結合されているかどうかを検出する検出機構(図示しない)も含む。検出機構は、押圧スイッチ、運動センサ、位置センサ、光学センサ、圧電センサ、インピーダンスセンサ、又は任意の他の適切なセンサを含み得るがこれらに限定されはしない。ハウジング220は比較的滑らかで、鋭い縁を有さなくてもよい。いくつかの実施形態においては、ハウジング220は、最小のスペースを占める形状因子を有する(例えばユーザのポケットに収まる)ペンキャップに似せて形状を決められる。いくつかの実施形態においては、ハウジング220は、装着フィーチャ(例えばユーザのポケット又はベルトに装着するためのクリップ)及び/又は装飾フィーチャも含む。いくつかの実施形態においては、投与量測定システム200は、薬剤投与デバイス210のための交換キャップとしても役立つ。
【0034】
[0058] 引き続き図3及び4を参照すると、照明モジュール240の複数の光源244(例えば、複数のLED又は放出された電磁放射を複数の光源へと分割するライトパイプに接続された単一のLED)は、プリント回路基板(PCB)242上に搭載され、又はそうでなければ配置される。PCB242は、任意の一般的に知られたプロセスによって作製された任意の標準的なPCBであってもよい。いくつかの実施形態においては、複数の光源244は、薬剤投与デバイス210のうち薬剤を保持しているハウジング212の内部体積を定義する部分が投与量測定システム200と結合されるときに光源244が内部体積全体を照明するように、一直線に且つ等間隔で配列される。いくつかの実施形態においては、光源244は、ジグザグの構成、不等間隔の構成、千鳥状の構成、光源244がセンサ254と互い違いに配置された構成、及び/又は本明細書に移載されている任意の他の構成を含むがこれらに限られない、任意の他の構成で設置される。
【0035】
[0059] いくつかの実施形態においては、光源244は、薬剤投与デバイス210のハウジング212、その内部に収容された薬剤、及び/又はハウジング220の一部を貫通することのできる波長の電磁放射を生成するように構成される。例えば、赤外線放射又はマイクロ波放射は、薬剤投与デバイス(例えば注射ペン)の製造に一般的に用いられるプラスチック材料の多くを貫通することができる。いくつかの実施形態においては、電磁放射は、薬剤投与デバイス210の内部構成要素(例えばアクチュエータ214のプランジャ部)も貫通する周波数を有する。いくつかの実施形態においては、光源244の各々は、電磁放射の広角ビームを生成するように構成されている(例えば、複数の広角LED又は複数の広角電磁放射ビームを生成するように構成されたライトパイプに接続された単一のLED)。別の言い方をすれば、単一光源244の電磁放射錐が広角を有していてもよく、隣接する光源244の電磁放射錐が重複していてもよい。いくつかの実施形態においては、複数の光源244は、電磁放射のパルス(例えば一連の100マイクロ秒未満のパルス)を放出するように構成されている。
【0036】
[0060] 検知モジュール250の複数のセンサ254は、PCB252上に搭載され、又はそうでなければ配置される。PCB252は、任意の一般的に知られたプロセスによって作製された任意の標準的なPCBであってもよい。複数のセンサ254は、複数の光源244と光学的に結合可能であり且つ複数の光源244によって放出された電磁放射の少なくとも一部を検出するように構成された任意の光学センサ(例えばフォトダイオード)であり得る。電磁放射は、(例えば空気、薬剤、及び/又は薬剤投与デバイス210の本体を透過した)透過放射線、(例えば空気、薬剤、及び/又は薬剤投与デバイス210の本体によって屈折された)屈折放射線、(例えばハウジング220の壁から反射した、又は薬剤投与デバイス210の壁から内面反射した)反射放射線、及び/又はハウジング212及び/又は薬剤貯蔵器の曲面のレンズ効果によって引き起こされた多方向屈折/反射であってもよい。複数のセンサ254によって受信された透過、屈折、及び/又は反射された電磁信号は、(例えば処理ユニット260によって)信号シグネチャを創出するために用いられ得る。例えば、信号シグネチャはその後、薬剤投与デバイス210内の残存投与量を判定するために、基準シグネチャと関連付けられ得る。いくつかの実施形態においては、センサ254の信号応答は、例えば、薬剤投与デバイス210のインジェクタ216の有無の判定、及び/又は薬剤投与デバイス210が投与量測定システム200に結合されているか/結合されていないかの判定など、有用性指標を測定するために用いられてもよい。いくつかの実施形態においては、センサ254は、光源244と略同様の構成で配列される。いくつかの実施形態においては、センサ254の数は、光源244の数よりも多いか又は少ない。いくつかの実施形態においては、光源244及びセンサ254は、各PCB244,254が(例えば互い違いに配列された)光源244とセンサ254との組み合わせを含むように配列される。いくつかの実施形態においては、光源244及び/又はセンサ254は傾斜配向で配列される。
【0037】
[0061] 処理ユニット260は、PCB262と、プロセッサ264とを含んでいてもよい。PCB262は、任意の一般的に知られたプロセスによって作製された任意の標準的なPCBであってもよく、必要に応じて増幅器、トランジスタ、及び/又は任意の他の電子回路を含み得る。プロセッサ264は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、PLC、ASICチップ、ARMチップ、ADC、又は任意の他の適切なプロセッサを含むがこれらに限られない任意のプロセッサであり得る。処理ユニット260は、照明モジュール240及び検知モジュール250が処理ユニット260に垂直に且つ互いに平行に配向されるように、電子結合266を用いて照明モジュール240及び検知モジュール250に結合されてもよい。いくつかの実施形態においては、処理ユニット260は、信号シグネチャ、基準シグネチャデータベース、投与量情報、ユーザの健康データ(例えば血糖値)、(例えば投与量測定システム200に任意選択的に含まれるGPS受信器からの、又は血糖計又は携帯電話のようなシステム200と通信可能に結合された別のGPS対応デバイスからの)デバイス位置データ、及び患者にとって自身の健康を管理するのに便利であろう任意の他のデータを少なくとも一時的に記憶するためのオンボードメモリを含む。いくつかの実施形態においては、処理ユニット260は、情報を記憶するように且つN記憶された情報をFCデバイスが読み取ることを可能にするように構成されたRFIDチップを含む。処理ユニット260は、例えば光源244の起動及びタイミング、及び/又はセンサ254からの電磁放射データの読み取り及び処理など、投与量測定システム200の動作を制御するように構成可能であってもよい。例えば、処理ユニット260は、薬剤投与デバイス210内の残存投与量又は薬剤投与デバイス210のアクチュエータ214(例えばプランジャ)の位置を判定するために、複数のセンサ254から得られた電磁放射信号シグネチャを比較し、それを基準シグネチャデータベースと関連付けるように構成されていてもよい。
【0038】
[0062] いくつかの実施形態においては、処理ユニット260は、背景ノイズに関して信号シグネチャを補正するように構成される。例えば、処理ユニット260は、照明モジュールが暗状態であるとき、すなわち複数の光源244の各々がオフにされているときに、背景シグネチャを検出するべく検知モジュール250を動作させるように構成されていてもよい。背景シグネチャは、背景ノイズを補正するために、信号シグネチャと関連付けられてもよい。いくつかの実施形態においては、処理ユニット260は、ノイズを低減させ信号品質を高めるために、フーリエ変換、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ、ハイパスフィルタ、ベッセルフィルタ、及び/又は任意の他のデジタルフィルタを含むがこれらに限られない電子信号フィルタリングアルゴリズムも含む。処理ユニット260は、代表的な薬剤投与デバイス210内のある範囲の投与量体積について、検知モジュール250によって検出された電磁放射信号を記憶することによって基準シグネチャを取得するように構成されていてもよく、この範囲は満杯、空、及びその間の一連の区間(例えば、薬剤投与デバイスから分配投与される投与量の単位毎、及び/又は薬剤投与デバイス210に含まれるアクチュエータ214のプランジャ部が170マイクロメートル変位する毎)を含むがこれらに限られない。
【0039】
[0063] いくつかの実施形態においては、処理ユニット260は、薬剤投与デバイス210内の液体の体積を判定するべく信号シグネチャを基準シグネチャと関連付けるために使用可能な確率的マッチングアルゴリズムを含むように構成される。処理ユニット260は、通信モジュール270を制御し動作させるようにも構成され得る。いくつかの実施形態においては、処理ユニット260は、電力効率の良い手法でシステムを動作させるように構成される。例えば、処理ユニット260は、光源244に給電する電子機器のうち少なくともいくつか(例えば演算増幅器)を、必要でないときにはオフにしてもよい。処理ユニット260は、例えば省電力化及び/又は信号対ノイズ比の向上のために、光源244を短期間高電流でパルス変調してもよい。処理ユニット260は、通信モジュール270を定期的に起動させるように構成されていてもよく、これは1日あたり所定の回数(例えば10回)及び/又は投与量測定システム200が薬剤投与デバイス210に取り付けられたときを含むがこれらに限られない。処理ユニット260は、必要とされないときには通信モジュール270を非作動にするようにも構成され得る。いくつかの実施形態においては、処理ユニット260は、例えば投与量測定システム200の現在地を判定するために、全地球測位/ナビゲーションシステム(例えばGPS)も含む。
【0040】
[0064] 通信モジュール270は、ユーザ及び/又は例えばスマートフォンのアプリケーション、ローカルコンピュータ、及び/又は遠隔サーバといった外部デバイスにデータを伝達するように構成されていてもよい。伝達されるデータは、初期システム起動、システムのオン/オフ、薬剤投与デバイスの結合/離脱、残存投与量、投与量履歴、時刻、システム及び/又は薬剤温度、システム位置(例えばGPS)、薬剤投与デバイス210のデータ、薬剤使用期限データ、薬剤が投与される速度、デバイス衝突(device collisions)、残存デバイス電力、歩数、システムのみだりな変更、及び/又は任意の他のユーザ健康情報もしくは他の使用可能データを含んでいてもよいがこれらに限られない。いくつかの実施形態においては、通信モジュール270は、データ、例えば新たな較正データ、ファームウェアの更新、ユーザ健康情報(例えば血糖、食事制限、運動、及び/又は投与量情報)、及び/又はユーザにより入力される及び/又は外部デバイスから伝達される任意の他の情報を受信するようにも構成され得る。通信モジュール270は、従来のデータ通信用電子機器を含んでいてもよく、Wi-Fi、Bluetooth(登録商標)、省電力Bluetooth(登録商標)、ZigBee、USB、firewire、及び/又はNFC(例えば赤外線)を含むがこれらに限られない標準的な通信プロトコルを使用してもよい。いくつかの実施形態においては、通信モジュール270は、オンボードメモリに記憶された任意の投与量データを記録するために、外部デバイス(例えばスマートフォン)に定期的に(例えば1日あたり10回)接続するように構成される。いくつかの実施形態においては、通信モジュール270は、ユーザによってオンデマンドで起動される/非作動にされる。
【0041】
[0065] ここで図5も参照すると、通信モジュール270は、いくつかの実施形態によれば、ユーザと通信するために、投与量測定システム200のハウジング210の外面に位置する通信インタフェース271を含んでいてもよい。通信インタフェース271は、手動で外部デバイスとの通信を開始する(例えばBluetooth(登録商標)を起動する)ためのスイッチ272(例えば電源スイッチ、リセットボタン、及び/又は別の通信スイッチ)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態においては、通信インタフェース271は、例えば投与量測定システム200がオン/オフである場合、又は通信モジュール270が作動中である場合にユーザに示すための光源(例えばLED)などのインジケータ274も含む。いくつかの実施形態においては、通信インタフェース271は、薬剤投与デバイス210内の残存投与量278、現在時刻280、システムの残存電力282、投与量履歴284(例えば平均投与量使用、最後に投与量が服用された時刻など)、及び/又は無線接続状態を含むがこれらに限られない情報のユーザへの視覚的伝達のための表示部276を含む。いくつかの実施形態においては、通信インタフェース271は、ユーザが情報(例えば食物摂取、運動データなど)を投与量測定システム200に入力することを可能にするための入力構成要素(例えば英数字キーパッド及び/又はタッチスクリーン)を含む。いくつかの実施形態においては、通信モジュール270は、可聴の警報又はメッセージ(例えば投与量注意喚起及び/又は補強メッセージ(reinforcement messages))をユーザに提供するためのスピーカ及び/又はユーザからの音声入力を受信するためのマイクを含む。いくつかの実施形態においては、通信モジュール270は、触覚警報のための手段(例えば振動機構)を含む。いくつかの実施形態においては、通信モジュール270は、ユーザの健康に関する他の情報(例えば歩数、消費カロリー、血糖値など)を伝達する。
【0042】
[0066] 電源286は、投与量測定システム200に給電するために使用可能な任意の電源であり得る。いくつかの実施形態においては、電源286は使い捨て電池を含む。いくつかの実施形態においては、電源286は、充電式電池(例えばニカド電池、Liイオン電池、Liポリマ電池、又は携帯電話において用いられる種類のような小さな形状因子を有する任意の他の電池)を含み、及び/又は頻繁には充電されない(例えば1月あたり1回)。いくつかの実施形態においては、電源286は、外部電源を用いて(例えば、ハウジング220上に位置する電源ソケットを通じて、又は有線USBインタフェースもしくは無線充電を介するなど、通信モジュール270の通信インタフェースを通じて)充電される。いくつかの実施形態においては、電源286は、太陽エネルギを用いて充電され、太陽光パネルを含む。いくつかの実施形態においては、電源286は、運動エネルギを用いて充電され、機械エネルギ変換素子を含む。
【0043】
[0067] 上述のように、検知モジュール250の複数のセンサ254は、透過放射線、(例えば空気、液体薬剤、薬剤投与デバイス210のハウジング212により屈折された)屈折放射線、(例えばハウジング220の壁から反射された、又は薬剤投与デバイス210の内部体積の壁から内部反射された)反射放射線、及び薬剤投与デバイス210のハウジング212の曲面のレンズ効果によって引き起こされた多方向反射/屈折のうち少なくとも1つを受信するように構成されている。
【0044】
[0068] ここで図6を参照すると、いくつかの実施形態によれば、光源L(例えば広角光源)は、光源から発出して広がる複数の光線を生成し得る。光源Lは、第1の屈折率n1を有する第1の媒体M1(例えば空気)中にある。第2の屈折率n2を有する第2の媒体M2(例えば液体薬剤)は、両側を第1の媒体M1によって境界付けられている。第2の屈折率n2は第1の屈折率n1よりも大きい(すなわちn2>n1)。第2の媒体M2は、不透明な面(例えば側壁)も含む。
【0045】
[0069] 光源Lによって放出された第1の光線L1は、第1の媒体M1と第2の媒体M2との境界面に第1の角度で入射する。この光線は、第2の媒体M2を貫通して当初の入射角で再び第1の媒体M1へと透過する際に、曲がらない(すなわち透過光)。
【0046】
[0070] 第2の光線L2は、第1の媒体M1と第2の媒体M2との境界面に、ゼロ度よりも大きな第2の角度で入射する。第2の光線L2は、第2の媒体M2を貫通する際に曲がり又は屈折し、その後、第1の媒体M1に再進入する際に再び曲がって、放出された光線L2と平行だがこの光線からオフセットされた当初の入射角度となる(すなわち屈折光)。
【0047】
[0071] 第3の光線L3は、第1の媒体M1と第2の媒体M2との境界面に、第2の角度よりも大きな第3の角度で入射する。この入射角では、光線L3は第2の媒体M2には進入せずに反射されて第1の媒体M1へと戻り、反射の角度は入射の角度と等しい(すなわち反射光)。
【0048】
[0072] 第4の光線L4は、光線L4が第2の媒体M2において屈折するように、しかし直ちに第2の媒体M2に含まれる不透明な面に入射するように、第1の媒体M1と第2の媒体M2との境界面に、第3の角度よりも小さな第4の角度で入射する(すなわち不透明な面からの反射)。光線L4の少なくとも一部は反射して第2の媒体M2へと戻って、その後第5の角度で第1の媒体M1に再進入し、第5の角度は第4の角度と等しくない。
【0049】
[0073] 本明細書に記載されているように、検知モジュール250の複数のセンサ254によって受信される電磁放射信号は、電磁放射の透過部分、屈折部分、及び反射部分の組み合わせを含み得る。異なる残存投与量体積及び/又は薬剤投与デバイス210のアクチュエータ216の位置における電磁放射の部分の組み合わせによって、固有の信号シグネチャが生成される。この信号シグネチャは、本明細書にさらに詳細に記載されるように、薬剤投与デバイス210内の残存投与量の体積を得るために、基準信号シグネチャデータベースと比較されてもよい(本明細書においては「検量線」とも称される)。
【0050】
[0074] ここで図7乃至10を参照すると、いくつかの実施形態よる光源及びセンサの様々な構成が示され説明されている。光源によって放出された電磁放射の透過部分及び反射部分が示されている一方で、屈折部分は分かりやすくするために示されていない。図7に示されるように、投与量測定システム300は複数の光源344及び複数のセンサ354を含む。薬剤投与デバイス310は、いくつかの実施形態によれば、投与量測定システム300に結合されている。薬剤投与デバイス310は、薬剤を収容するための内部体積(例えば貯蔵器)を集合的に定義するハウジング312及びアクチュエータ314を含む。薬剤投与デバイス310は、薬剤を患者に投与するためのインジェクタ316も含む。投与量測定システム300は、複数の光源344がハウジングの第1の側に薬剤投与デバイス310に向かって配向されて配置され、複数のセンサ354がハウジングの第2の側に、複数のセンサ354の各々が複数の光源344のうち少なくとも1つと対向し且つ光通信するべく配置されるように、構成される。いくつかの実施形態においては、複数の光源344及び/又は複数のセンサ354は、互いに対して略線形関係(例えば一直線)に配置される。複数のセンサ354の各々は、複数の光源344によって放出された、透過、屈折、及び/又は反射電磁放射の組み合わせを受信する。電磁放射の反射部分は、アクチュエータ314のプランジャ部から反射されてもよく、及び/又は投与量測定システム300のハウジングもしくは薬剤投与デバイス310のハウジング312から反射されてもよい。屈折は、ハウジング312からであってもよく、及び/又は薬剤投与デバイス310内に配置された液体薬剤からであってもよい。複数のセンサの各々によって検出された電磁放射の透過部分、反射部分、及び屈折部分は、薬剤投与デバイス310内に残存しているある範囲内の投与量体積について固有の信号シグネチャをもたらす。
【0051】
[0075] いくつかの実施形態においては、複数の光源及び複数のセンサは、薬剤投与デバイスの両側に交互に配置される。図8に示されるように、投与量測定システム400は、いくつかの実施形態によれば、複数の光源444及び複数のセンサ454を含み得る。薬剤投与デバイス410は、薬剤を収容するための内部体積(例えば貯蔵器)を集合的に定義するハウジング412及びアクチュエータ414を含む。薬剤投与デバイス410は、薬剤を患者に伝達するためのインジェクタ416も含む。投与量測定システム400は、複数の光源444及び複数のセンサ454が薬剤投与デバイスの両側に配置されるように構成されている。換言すれば、薬剤投与デバイス410の各側が複数の光源444及び複数のセンサ454を有する。電磁放射の放出及び検出が薬剤投与デバイス410の両側から実施され、それが例えば偏りを取り除くため、これは有利であり得る。
【0052】
[0076] いくつかの実施形態においては、複数の光源及び/又は複数のセンサのうち少なくとも一部が角度配向で配列される。図9に示されるように、投与量測定システム500は、いくつかの実施形態によれば、複数の光源544及び複数のセンサ554を含む。薬剤投与デバイス510は、薬剤を収容するための内部体積(例えば貯蔵器)を集合的に定義するハウジング512及びアクチュエータ514を含む。薬剤投与デバイス510は、薬剤を患者に伝達するためのインジェクタ516も含む。投与量測定システム500は、複数の光源544及び複数のセンサ554が薬剤投与デバイス510の両側に配置され且つ投与量測定システム500及び薬剤投与デバイス510の長手軸に対して角度配向を有するように構成されている。この配向は、複数の光源544によって放出された電磁放射が、薬剤投与デバイス510の、一直線に配向された光源544によって到達可能であるよりも大きな部分に入射することを確実にし得る。同様に、複数のセンサ554も、電磁放射のより大きな部分を検出し得る。これは、例えば、センサ554のより高い分解能をもたらすことができ、及び/又は所望の分解能を達成するために必要な光源544及び/又はセンサ554の量を減らすことができる。
【0053】
[0077] いくつかの実施形態においては、例えば、複数の光源544によって放出された電磁放射が、薬剤投与デバイス510の、より狭いビームの光源544によって到達可能であるよりも大きな部分に入射することを確実にするために、より広角の光源(例えば、広角LED又は放出された電磁放射を複数の広角ビームに分割するライトパイプに接続された単一のLED)が用いられてもよい。換言すれば、光源544によって放出されるビームがより幅広いと、薬剤投与デバイス510全体(又は薬剤貯蔵器)のうちより大きな部分が光源544と光通信する。投与デバイス510のうちより大きな部分が光源544と光通信するので、薬剤投与デバイスを通じて透過され、反射され、及び/又は屈折されている電磁放射のスペクトルがより広くなり、複数のセンサ554によって検出可能な信号強度を高めることができる。別の言い方をすれば、信号シグネチャの可変性は(センサに入射する光の強度の増大とは対照的に)投与デバイスに入射する光のビームの広がりとともに増大するので、投与量測定システム500の分解能が高められる。例えば、角度が広くなると、光の全体強度は低くなるかもしれないが、薬剤投与デバイスの状態を区別する能力は高まり得る。これは、状態を区別することは、光の絶対強度に関するよりも、光の強度が状態毎にどのように変化するかを最適化することに関するためである。
【0054】
[0078] いくつかの実施形態においては、投与量測定システムは、薬剤投与デバイスのアクチュエータの位置から信号シグネチャを検出するように構成されており、これは、薬剤投与デバイス内の残存投与量を推定するために用いられ得る。図10に示されるように、投与量測定システム600は、いくつかの実施形態によれば、複数の光源644及び複数のセンサ654を含む。薬剤投与デバイス610が投与量測定システム600に結合されている。薬剤投与デバイス610は、薬剤を収容するための内側体積(例えば貯蔵器)を集合的に定義するハウジング612及びアクチュエータ614を含む。投与量測定システム600は、図7乃至9に示された概ね薬剤貯蔵器を中心として配置される投与量測定システム300,400及び500とは対照的に、概ね薬剤投与デバイス610のアクチュエータ614部分を中心として配置されている。複数の光源644及びセンサ654は、図7を参照して上述したのと略同様の手法で構成され配列されている。複数の光源644によって放出された電磁放射は、アクチュエータ614によってブロックされることなく透過され、アクチュエータ614のプランジャ部によってブロックされ、アクチュエータ614の本体又はプランジャ部によって反射され、及び/又は薬剤投与デバイス610のハウジングによって反射/屈折されてもよい。複数のセンサ654によって検出された電磁放射の透過部分、反射部分、及び屈折部分の組み合わせは、その後、アクチュエータ614の所与の位置において信号シグネチャを生成するために用いられる。第1の位置から第2の位置へのアクチュエータ614の変位は、センサ654によって検出される電磁放射の透過、反射、及び屈折パターンを変化させ、アクチュエータ614の各位置において固有の信号シグネチャを創出する。このシグネチャは、(例えば基準シグネチャとの関連付けにより)薬剤投与デバイス610内に残存している投与量体積と相関されてもよい。
【0055】
[0079] ここで図11A乃至11Cを参照すると、投与量測定システムの複数のセンサの各センサは複数の光源のうち少なくとも一部によって放出された電磁放射を検出し得るものであり、検出される電磁放射は透過、反射、及び屈折電磁放射の組み合わせであり得る。図示されるように、投与量測定システム700は、分かりやすくするため、2つの光源744a及び744bと、2つのセンサ754a及び754bとを含む。投与量測定システム700は、液体薬剤を収容するための内部体積(例えば貯蔵器)を集合的に定義するハウジング712及びアクチュエータ714を含む薬剤投与デバイス710に結合されている。薬剤貯蔵器と、アクチュエータ714の少なくともプランジャ部とは、実質的に投与量測定システム700の内側の、光源744a,744bとセンサ754a,754bとの間に配置されている。
【0056】
[0080] 図11Aに示されるように、アクチュエータ714のプランジャ部は、いくつかの実施形態によれば、プランジャ部が光源744a及び744bとセンサ754a及び754bとの見通し線内に存在しないように、第1の位置(「位置1」)にある。光源744a及び744bによって電磁放射が薬剤投与デバイス710に向かって放出されるとき、その電磁放射の大部分は、位置1にあるセンサ754a及び754bによって検出される。電磁放射は、以下でより詳細に説明するように、透過放射線、(例えば薬剤投与デバイス710のハウジング712によって反射された)反射放射線、及び(例えば液体薬剤及び/又はハウジング712によって屈折された)屈折放射線、及び(例えば薬剤投与デバイス710のハウジング712の曲面によって引き起こされた)多方向反射/屈折放射線を含み得る。本例において示されるように、センサ754aの値は15.3、センサ754bの値は13.7であり、これは、電磁放射の大部分がセンサ754a及び754bによって検出されることを示している。
【0057】
[0081] 図11Bに示されるように、アクチュエータ714は、いくつかの実施形態によれば、プランジャ部が光源744bとセンサ754bとの間の見通し線を部分的にブロックするように、第2の位置(「位置2」)に変位される。位置2においては、光源744bによって放出された電磁放射の大部分がアクチュエータ714によってセンサ754bに到達するのをブロックされているが、光源744aによって放出された電磁放射の少なくとも一部はまだ、多方向反射/屈折電磁放射とともに、センサ754bに到達できる。また、センサ754aは、センサ744bからの屈折電磁放射及びセンサ744aからの透過され屈折された放射線を受信することができる。センサ754aは、薬剤貯蔵器を少なくとも部分的に定義するプランジャの表面によって反射された電磁放射も受信する。したがって、位置2においては、センサ754aは(位置1におけるよりも大きい)15.5という電磁放射値を検出し、センサ754bは(位置1におけるよりも小さい)8.8という電磁放射値を検出する。位置2で測定された固有値は、位置2についての信号シグネチャ値として役立ち得る。
【0058】
[0082] 図11Cに示されるように、アクチュエータ714のプランジャ部は、いくつかの実施形態によれば、アクチュエータ714のプランジャ部がセンサ754aの見通し線を光源744aによって放出された電磁放射から完全にブロックするように第3の位置(「位置3」)にあり、光源744aからの透過及び/又は反射放射線は略全くセンサ754aに到達することができない。光源744bによって放出された透過電磁放射の一部もまた、アクチュエータ714の少なくとも一部により、センサ754bに到達するのをブロックされる。それでも、センサ754a及び754bはいずれも、光源744a及び/又は744bのいずれかにより放出された電磁放射の反射部分及び屈折部分の少なくとも一部を受信することができる。したがって、位置3においては、センサ754aは(位置1及び2におけるよりも小さい)2.2という電磁放射値を検出し、センサ754bは(位置1におけるよりも小さいが位置2におけるよりも大きい)12.0という電磁放射値を検出する。位置3で測定された固有値は、位置3についての信号シグネチャ値として役立ち得る。
【0059】
[0083] ここで図12を参照すると、いくつかの実施形態によれば、図11Aの線AAに沿った投与量測定システム700の断面が、薬剤貯蔵器の湾曲によって引き起こされるレンズ効果を示している。図示されるように、光源744bによってゼロ度の角度で放出された光線は、曲がることなくセンサ754bに向かって透過される。透過光線から離れた角度で光源744bによって放出されたさらに2つの光線は、液体薬剤が空気よりも高い屈折率を有するため、薬剤貯蔵器に進入する際に、透過光線に向かって屈折させられる(すなわち曲げられる)。この現象は、本明細書においては「レンズ効果」と称され、センサ754bに向かう光線の合焦をもたらし得る。第4の光線は、空気/薬剤境界面で屈折するように、透過光線からさらに離れた角度で放出され、その後さらに、センサ754bに入射するように、薬剤投与システム710のハウジング712の内面によって反射される。第5の光線はある角度で放出され、屈折の後でもセンサ754bに入射しない。上述のように、これらの光線の組み合わせは、センサ754aによれば15.3、センサ754bによれば13.7という電磁放射検出値をもたらす。位置1で測定されたこれらの固有値は、位置1についての信号シグネチャ値として役立ち得る。
【0060】
[0084] ここで図13を参照すると、いくつかの実施形態によれば、図11Cの線BBに沿った投与量測定システム700の断面が、光の透過に対するアクチュエータ714の影響を示している。図示されるように、光源744bによってゼロ度の角度で放出された光線は、アクチュエータ714の一部によってブロックされる。透過光線から離れた角度で光源744bによって放出されたさらに2つの光線は、作用されることなく(ハウジングを通じた屈折は無視される)薬剤投与デバイス710のハウジング712の一部を通過し(すなわち、デバイス710のこの部分には薬剤が存在しない)、センサ754bに入射する。第4の光線は、光源744bによってある角度で放出され、ハウジング712によって内面反射されてセンサ754bに入射し、その一方で第5の光線は、ハウジング712によって内面反射されるがセンサ754bには入射しない。これらの光線の組み合わせは、センサ754aによれば2.2、センサ754bによれば12.0という電磁放射検出値をもたらす。位置3で測定されたこれらの固有値は、位置3についての信号シグネチャ値として役立ち得る。なお、センサ754aの見通し線は光源744aから完全にブロックされるが、それでも電磁放射の反射部分及び屈折部分は正の値の生成に寄与する。
【0061】
[0085] 特定の位置についてのセンサ値を絶対値として記載しているが、他のセンサ値と相対的な個々のセンサ値は、薬剤貯蔵器内に残存している液体の体積を推測及び/又は判定するために用いられてもよい。例えば、センサ754aがある一定の量又は一定の割合だけセンサ754bの値と異なる特定の値を有する場合には、その値は位置/薬剤投与デバイス内に残存している薬剤体積を表し得る。また、2つ以上の他のセンサ値と相対的なあるセンサ値は、薬剤投与デバイスの検量線を生成するために用いられてもよい。
【0062】
[0086] 薬剤投与デバイスによって分配投与された投与量の体積に関する様々な構成で得られた固有信号シグネチャは、投与量測定システムの基準シグネチャ(検量線)を得るために用いられ得る。図14は、いくつかの実施形態による、合計で7つのセンサを含む投与量測定システムを用いる薬剤投与デバイスに関して得られた基準信号シグネチャの例を示すグラフである。投与量測定システムは、本明細書に記載されているいずれの投与量測定システムであってもよい。複数のセンサの各々によってある範囲の分配投与された投与量体積について検出された電磁放射シグネチャは、記憶され、基準シグネチャを創出するために用いられる。基準シグネチャからわかるように、薬剤投与デバイスがほとんど満杯であるときには、センサ1は低振幅の電磁放射を記録し、その一方でセンサ7は非常に高振幅の電極を記録し、他のすべてのセンサは中間的な信号シグネチャを検出する。逆に、薬剤投与が完全に空であるときには、センサ1は非常に高振幅の電磁放射を記録し、その一方でセンサ7は低振幅を記録し、他のすべてのセンサは中間的な信号シグネチャを検出する。
【0063】
[0087] センサ8は、ほとんどすべての投与量が投与されるか又は薬剤投与デバイスがほとんど空になるまで、投与される投与量のかなりの部分について均一なセンサ信号を検出する。いくつかの実施形態においては、センサ8は、(例えば薬剤投与デバイスが完全に空であることを示すための)極低体積センサとして使用される。いくつかの実施形態においては、センサ8は、例えば、薬剤投与デバイスが投与量測定システムに結合されているかどうか及び/又は薬剤投与デバイスに含まれるべき構成要素(例えばインジェクタ)の有無を検出するための有用性指標センサとしても使用される。
【0064】
[0088] したがって、このようにして、ある範囲の残存薬剤体積についてすべてのセンサから記録された信号値は、薬剤投与デバイス内の薬剤の全体積についての信号シグネチャをもたらす。信号シグネチャを得るために用いられる薬剤体積の範囲は、完全に満杯、完全に空、及び/又は(例えば、分配投与された流体全体の単位毎に得られる、及び/又はその間のすべての割合を含む)十分な数の中間的なシグネチャを含み得るがこれらに限られない。
【0065】
[0089] いくつかの実施形態においては、基準シグネチャが背景光に関して補正されてもよい。例えば、背景シグネチャは、複数の光源が暗状態であるときに複数のセンサから信号シグネチャを検出することによって検出されてもよい。信号シグネチャは、背景ノイズを除去するために、背景シグネチャと比較され得る。いくつかの実施形態においては、信号シグネチャは、薬剤投与デバイス内の薬剤体積を判定するために、確率的マッチングアルゴリズムを用いて、基準シグネチャと関連付けられる。いくつかの実施形態においては、複数の光源及び複数のセンサは、投与量測定システムが、薬剤投与デバイス内の薬剤の体積を1単位の薬剤の分解能で、及び/又は薬剤投与デバイス内に配置されたアクチュエータのプランジャ部の位置を100マイクロメートル、110マイクロメートル、120マイクロメートル、130マイクロメートル、140マイクロメートル、150マイクロメートル、160マイクロメートル、170マイクロメートル、180マイクロメートル、又は200マイクロメートル、及びこれらの間の範囲をすべて含む分解能で検出することができるように構成される。
【0066】
[0090] 図15は、いくつかの実施形態による、本明細書に記載された投与量測定システムのいずれかを用いて薬剤投与デバイス内の残存投与量を測定する方法800を示すフロー図である。ステップ802において、ユーザは投与量測定システムを薬剤投与デバイスに取り付ける。ステップ804において、投与量測定システム内に配置された複数のセンサが、残存投与量を判定するために薬剤投与デバイスを走査する。例えば、投与量測定システムの処理ユニットが、残存投与量を判定するために、複数のセンサによって検出された信号シグネチャを基準シグネチャと関連付けてもよい。ステップ806において、センサデータはオンボードメモリ(例えばRFIDチップ及び/又は投与量測定システムの処理ユニットの一部であるメモリ)に記録され得る。ステップ808において、投与量測定システムは、残存投与量が極めて低い場合、ユーザに警告し得る。音声、視覚、及び/又は触覚による表示がユーザに警告を行うために用いられ得る。
【0067】
[0091] ステップ810において、投与量測定システムの通信モジュールは、外部デバイス(例えばスマートフォン、ローカルコンピュータ、遠隔サーバなど)を探索し得る。例えば、外部デバイスを探索するために、Bluetooth(登録商標)接続が起動されてもよい。ステップ812において、投与量測定システムが外部デバイスとペアリングする場合には、システムは、外部デバイスに残存投与量データを記録してもよく、及び/又はファームウェアの更新を受信してもよい。
【0068】
[0092] 任意選択的には、投与量測定システムは、ステップ814のように、投与量を服用する時刻が来たときにもユーザに警告を行い得る。投与量データが記録され外部デバイスに送信された後、ユーザはステップ816において、投与量測定システムを薬剤投与デバイスから取り外すことができる。その後、ユーザはステップ818において、所定の体積の投与量を薬剤投与デバイスを用いて投与(例えば注入)し得る。ステップ820において、ユーザは最後に薬剤投与デバイス上の投与量測定システムを交換する。この時点で、方法800は繰り返されてもよい。
【0069】
[0093] 図16は、いくつかの実施形態による、投与量測定システムが使用されていないときに電力を節約する方法900を示すフロー図である。本明細書に記載された方法900は、本明細書に記載された投与量測定システムのいずれかとともに用いられ得る。第1のステップでは、投与量測定システムの検出機構が薬剤投与デバイスをチェックする902。薬剤投与デバイスは投与量測定システムに結合されていてもよく、あるいは結合されていなくてもよい904。薬剤投与デバイスが取り付けられていない場合には、投与量測定システムが外部デバイスに記録されるべきメモリ内の未処理データを自動的にチェックするか、又はユーザが投与量測定システムの通信モジュールを起動し得る906。いくつかの実施形態においては、通信モジュールは、投与量測定システムが薬剤投与デバイスに取り付けられたときにのみ起動される。投与量測定システムはその後、記録されるべきオンボードデータがあるかどうか及び外部デバイスが発見されたかどうかを判定する908。記録されるべきオンボードデータがなく、外部デバイスが発見されなかった場合には、投与量測定システムは予め定義された期間「X」の間、省電力モードに入る910。例えば、システムの処理ユニットが、投与量測定システムの通信モジュールをオフにすることができ、及び/又は投与量測定システムの複数の光源及び/又は複数のセンサを制御する電子機器をオフにすることができる。期間「X}は、例えば1分、10分、1時間、又はその間の任意の時間であり得る。代替的には、記録されるべきデータがあり、外部デバイスが発見された場合には、投与量測定システムはその外部デバイスとペアリングし、データをその外部デバイスに記録し、及び/又はその外部デバイスからファームウェアの更新を受信する912。投与量測定システムはその後、省電力モードに入ってもよい910。あるいは、薬剤投与デバイスが投与量測定システムに取り付けられていることがわかった場合には904、投与量測定システムは薬剤投与デバイスを走査し、複数のセンサのすべてから信号を収集する914。複数のセンサの各々からの信号は、薬剤投与デバイス内の残存投与量に対応する信号シグネチャを創出するために用いられ得る。投与量測定システムの処理ユニットが、薬剤投与デバイス内の残存投与量を推定するために、信号シグネチャを基準シグネチャと比較する916。投与量測定システムは、注入された投与量がゼロよりも大きかったかどうかを判定する918。注入された投与量がゼロよりも大きかった場合には、投与量測定システムは、オンボードメモリに時刻を記録するとともに投与量を記憶する920。投与量測定システムはその後、期間「X」にわたり省電力モードに入る910。注入された投与量がゼロ以下であった場合には918、投与量測定システムは直接、期間「X」にわたり省電力モードに入る910。
【0070】
[0094] いくつかの実施形態においては、本明細書に記載された投与量測定システムのいずれかが、I型又はII型糖尿病を患う患者の健康を管理するために、健康管理システムと関連付けられてもよい。図17は、いくつかの実施形態による、糖尿病のユーザUの健康を管理する健康管理システム1000の概略ブロック図を示す。健康管理システムは、例えばスマートフォン、タブレット、又は携帯型コンピュータで用いられるモバイルアプリケーションであってもよい。いくつかの実施形態においては、健康管理システムはローカルコンピュータ又は遠隔サーバである。
【0071】
[0095] 健康管理システムは、薬剤投与デバイス1110に可逆的に結合された投与量測定システム1100と双方向通信を行い得る。薬剤投与デバイス1110は、インスリン注射ペン又はインスリンをユーザUに投与するためのシリンジであってもよい。投与量測定システムはまた、ユーザに情報を伝達するか、又はユーザからの入力を受信してもよい。健康管理システム1000は、ユーザの運動データE及び食事制限データDを受信するように構成され得る。健康管理システム1000は、血糖センサ1200から血糖データを受信するようにも構成され得る。健康管理システム1000はさらに、在宅健康モニタ1300から、例えば体重、血圧、心電図、酸素飽和度、オートグラフィ測定値(autography measure)、肺機能、保水性、温度などといったユーザの健康データを受信するように構成されていてもよい。健康管理システム1000はネットワーク1400と双方向通信してもよい。
【0072】
[0096] ネットワークは、例えば遠隔サーバ又はコールセンタであってもよい。ネットワーク1400は、モニタM及び認可された薬剤ディスペンサDDと双方向通信してもよい。モニタMは、例えば医師、介護者、薬局、及び/又は治験管理者であってもよい。認可された薬剤ディスペンサDDは、例えば薬局又は治験管理者であってもよい。
【0073】
[0097] いくつかの実施形態においては、投与量測定システム1100は健康管理システムに、薬剤投与デバイス1110内のインスリン残存投与量及び/又は薬剤投与デバイス1110によってユーザUに投与されたインスリン投与量を伝達する。いくつかの実施形態においては、健康管理システムは、ユーザUのインスリン投与量レジメン及び/又は任意の他の投薬スケジュールを記憶するためのメモリも含む。ユーザUの投薬レジメンは、例えばモニタM及び/又は認可された薬剤ディスペンサDDによりネットワーク1400を通じて、健康管理システム1100に伝達されてもよい。いくつかの実施形態においては、健康管理システム1100は、患者の健康の状態を判定するべく、ユーザUの健康データ、例えばユーザUの血糖値、運動データE、食事制限データD、及び/又は在宅健康監視データを処理するためにも用いられ得る。いくつかの実施形態においては、健康管理システム1000は、遵守状況を監視するために、患者に投与された投与量を患者の投薬スケジュールと比較するようにも構成される。
【0074】
[0098] いくつかの実施形態においては、健康管理システムは、ユーザの健康及び投与量情報を、ネットワーク1400を通じてモニタMに伝達することができる。モニタMは、ユーザUの健康データを分析して、患者の投薬計画、例えばインスリン及び/又は任意の他の投薬の投薬量に変更がなされる必要があるかどうかを判定することができる。変更を要する場合には、いくつかの実施形態においては、モニタMが、ユーザUの投薬レジメンへの変更を、認可された薬剤ディスペンサDDに伝達し得る。いくつかの実施形態においては、モニタMはこの情報を、ネットワーク1400を通じて健康管理システム1100にも伝達する。いくつかの実施形態においては、健康管理システム1100は、ユーザUの投薬レジメンを更新及び記憶することができるとともに、ユーザUの新たな投薬レジメンを投与量測定システム1100に伝達することもできる。ユーザUはその後、新たな測定計画、例えば新たなインスリン投薬量を得るために、投与量測定システム1400にアクセスし得る。
【0075】
[0099] このようにしてユーザUの健康が管理されてもよく、ユーザUの糖尿病が管理されてもよく、ユーザUの投薬スケジュールが動的にユーザUに個別化されてもよい。いくつかの実施形態においては、健康管理システムは、ユーザUの健康及び投薬履歴も定期的に伝達する。健康及び投薬履歴は、例えば、ユーザUの健康全般を改善するためになされる必要のある変更をユーザUに知らせるために用いられ得る。投薬履歴は、ユーザUの漸進的な健康(progressive health)を分析するために、モニタMに伝達されてもよい。
【0076】
[0100] 本明細書に記載された液体測定システムの実施形態は、液体の温度、及び/又は例えば容器(例えば注射ペン)内に収容された薬剤又は投薬(例えばインスリン)、容器、及び/又は容器を中心とした周囲空気の温度といった液体の周囲の環境の温度を測定するように構成された1つ以上の温度センサを含んでいてもよい。液体の温度を知ることは、液体の1つ以上の有効成分の生物学的利用能及び/又は生物有効性のレベル、液体の有効期限状態、及び液体の使い易さ(例えば薬剤の投与又は投薬の最中及び後の安楽)を含むがこれらに限られない液体の1つ以上の特性を判定することを可能にし得るとともに、温度の変化又は変動に起因する液体体積の変化又は変動を補償するための液量データの正規化を可能にし得る。本明細書に記載された1つ以上の温度センサを含む液体測定システムは、例えば注射ペン(例えばインスリン注射ペン)とともに用いられるように構成された注射ペンキャップなど、任意の適切な液体測定システムであり得る。そのような液体測定システムの例は以下の情報源に記載されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
1.2013年3月12日に米国特許出願第13/796,889号として提出され、2014年8月26日に発行された、「投与量測定システム及び方法」と題された米国特許第8,817,258号;
2.2014年7月17に提出された、「投与量測定システム及び方法」と題された米国特許出願第14/334,181号;
3.2014年8月1日に提出された、「温度センサを備えた液体測定システム」と題された米国特許出願第62/032,017号;及び
4.2014年11月20日に提出された、「投与量測定システム及び方法」と題された米国特許出願第14/548,679号
【0077】
[0101] 本明細書に記載された液体測定システムの実施形態は:(1)例えば投薬など液体容器内に配置された液体及び/又はそれを取り巻く環境の温度の実時間測定を可能にすること;(2)例えば液体の効能、有効期限状態、投与のし易さ、又は任意の他の物理的及び/又は化学的特性を含む、液体容器内に配置された液体の1つ以上の特性を判定するために温度情報を用いること;(3)温度が所定の、推奨される、及び/又は許容される範囲を上回るか又は下回る場合に1つ以上の表示又は警報を提供すること;(4)熱は有効化学成分の分解の反応速度論に関係することから、液体の1つ以上の有効化学成分の熱への累積曝露を追跡すること;及び(5)例えばデータに温度の乱れが実質的に無いことを保証するべく実時間の温度測定に基づいてデータを正規化するなど、温度の乱れを補償することによって、測定値(例えば投与量体積データ又は血糖データ)を最適化することを含むがこれらに限られない、いくつかの利点を提供する。
【0078】
[0102] いくつかの実施形態においては、容器内の液体体積を測定する液体測定システムは、容器に向かって電磁放射を放出するように配置され構成された複数の光源を含む。複数のセンサがこの複数の光源に光学的に結合可能であり、光源の少なくとも一部によって放出された電磁放射を検出するように配置され構成されている。装置は、容器内に配置された液体の温度を測定するように構成された温度センサを含む。装置は、検出された電磁放射の部分を表すデータを複数のセンサの各々から受信するように、且つ、受信したデータを、複数のセンサによって検出された電磁放射を表すシグネチャに変換するように構成された処理ユニットも含む。上述した装置の処理ユニットは、温度センサから温度情報を受信するように、且つ、センサ値を正規化すること、液体の効能を判定すること、液体の有効期限状態を判定すること、及び投与の安楽度を判定することのうち少なくとも1つを行うようにも構成されている。いくつかの実施形態においては、温度センサは、液体を取り巻く環境の温度を測定するようにも構成されている。
【0079】
[0103] 図18は、いくつかの実施形態による、薬剤投与デバイス1802内に残存している液体の体積(本明細書においては「投与量」とも称される)を測定する液体測定システム1800(本明細書においては「投与量測定システム」とも称される)の概略ブロック図である。投与量測定システム1800は、照明モジュール1804と、検知モジュール1806と、処理ユニット1808と、温度検知モジュール1810と、通信モジュール1812とを含む。投与量測定システム1800は、例えば人間の患者などのターゲットTに薬剤投与量を投与するために用いられる薬剤投与デバイス1802に取り外し可能に結合可能であるように構成されていてもよい。
【0080】
[0104] 薬剤投与デバイス1802は、被検体に投薬を投与するために使用可能な任意の薬剤投与デバイスであり得る。例えば、薬剤投与デバイス1802は、注射ペン(例えばインスリン注射ペン)、シリンジ、ポンプ(例えばインスリン投与ポンプ)、アンプル、及び/又はバイアルであってもよい。投与量測定システム1800は、例えば異なる形状、大きさ、及び薬剤体積を有する幅広く様々な薬剤投与デバイスに結合可能であるように構成され得る。いくつかの実施形態においては、投与量測定システム1800は、薬剤投与デバイス1802の一部、薬剤を含む内部体積を定義する部分、インジェクタ、及び/又はプランジャを受容するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態においては、投与量測定システム1800は、ユーザが投与量をターゲットTに投与しているときに薬剤投与デバイス1802から取り外し可能であるように構成される。いくつかの実施形態においては、投与量測定システム1800は、ユーザが投与量をターゲットTに投与しているときに薬剤投与デバイス1802に取り付けられたままであってもよい。いくつかの実施形態においては、投与量測定システム1800は再利用可能であるように構成されている。いくつかの実施形態においては、投与量測定システム1800は薬剤投与デバイス1802に永久的に結合され、例えば薬剤投与デバイスの本体に統合される。そのような実施形態においては、投与量測定システム1800は使い捨てであってもよい。
【0081】
[0105] 照明モジュール1804及び検知モジュール1806は、いくつかの実施形態によれば、上述のように構成され得る。例えば、照明モジュール1804は、薬剤投与デバイス1802に向かって電磁放射を放出するように構成された複数の光源を含んでいてもよい。検知モジュール1806は、照明モジュール1804の複数の光源に光学的に結合可能な複数のセンサを含んでいてもよい。
【0082】
[0106] 処理ユニット1808は、いくつかの実施形態によれば、上述のように構成され得る。例えば、処理ユニット1808は、検知モジュール1806から(すなわち複数のセンサの各々から)電磁放射信号を受信し、受信したデータを、複数のセンサの各々によって検出された電磁放射を表す信号シグネチャに変換するように構成されていてもよい。
【0083】
[0107] 温度検知モジュール1810は、薬剤投与デバイス1802内に配置された液体の温度、及び/又は液体を取り巻く環境、例えば、本明細書に記載されているように、中に投与量測定システム1800の構成要素と薬剤投与デバイス1802の少なくとも一部とが配置されているハウジングの内部体積の温度を測定するように構成されていてもよい。温度検知モジュール1810は、熱電対、抵抗温度デバイス(RTD)、サーミスタ、バイメタル温度センサ、及び/又はシリコンダイオードを含むがこれらに限られない1つ以上の適切な温度センサを含み得る。
【0084】
[0108] 液体及び/又は液体を取り巻く環境の略正確な温度読み取りのために、1つ以上の温度センサが位置決めされ、構成され、投与量測定システム1800に取り付けられ、及び/又はその内部に配置され得る。例えば、温度センサは、(例えば処理ユニット1808内に含まれる)より高温の電子機器、電源(例えば充電式電池)、及び/又は任意の他の発熱電子機器など、温度読み取りに影響を及ぼす可能性のある投与量測定システム1800の1つ以上の構成要素から十分に距離を置いて位置決めされ得る。また、温度センサは、温度センサと液体とが略同じ温度になるように熱が温度センサ及び液体に均等に拡散することを可能にするべく、薬剤投与デバイス1802内に配置された液体に十分に近接して位置決めされ得る。
【0085】
[0109] いくつかの実施形態においては、温度検知モジュール1810は単一の温度センサを含む。他の実施形態においては、温度検知モジュール1810は、一直線の列、長方形アレイ、正方形アレイ、円形アレイ、及び/又は任意の他の適切な構成を含むがこれら限られない任意の適切な構成で位置決めされた複数の温度センサを含む。いくつかの実施形態においては、温度検知モジュール1810は、実質的に液体の温度を測定するように位置決めされ及び/又は構成された第1の温度センサもしくは第1組の温度センサと、実質的に液体を取り巻く環境の温度を測定するように位置決めされ及び/又は構成された第2の温度センサもしくは第2組の温度センサとを含む。
【0086】
[0110] いくつかの実施形態においては、温度検知モジュール1810は、温度測定値を処理するように、及び/又はさらなる処理のために温度情報を例えば処理ユニット1808及び/又は通信モジュール1812に伝達するように、及び/又は温度測定値をユーザに伝達するように構成されたプリント回路基板(PCB)及び/又は他の電子機器を含む。
【0087】
[0111] いくつかの実施形態においては、温度検知モジュール1810、処理ユニット1808、及び/又は外部演算装置が温度データを処理する。温度データは、本明細書に記載されているシステム、装置、及び方法の実施形態の1つ以上の特性を含む、投与量測定システム1800内の液体及び/又は液体を取り巻く環境の1つ以上の特性を判定するために用いられ得る。
【0088】
[0112] 特に、いくつかの実施形態によれば、温度は信号品質(例えば検知モジュール1806を用いた液体の量の測定)に影響を及ぼし得る。温度データは、センサデータが極端な温度及び/又は温度の変更もしくは変動によって引き起こされた乱れ又は寄与を実質的に有さないように、検知モジュール1806から受信されたデータを正規化するために用いられてもよい。温度による構成要素の変化に起因して、光学測定センサの読み取りは温度によってドリフトする。いくつかの実施形態においては、この温度によるセンサのドリフトは、略直線である。いくつかの実施形態においては、照明モジュール1804及び検知モジュール1806は、略直線の温度によるセンサのドリフトを維持するように最適化される。
【0089】
[0113] いくつかの実施形態においては、温度検知モジュール1810、処理ユニット1808、及び/又は外部演算装置が、温度較正を実施するために用いられ得る。例えば、較正温度を得るために、独立した温度センサを含む外部温度測定システムが用いられてもよい。外部較正温度と温度検知モジュール1810内の温度センサによって測定された内部温度との間の差に基づいて、正のオフセット又は負のオフセットが計算されてもよい。正のオフセット又は負のオフセットは、将来の内部温度読み取りに加算されてもよい。
【0090】
[0114] 極端な温度及び/又は温度の変化もしくは変動は、測定中の液体又は液体の成分の1つ以上の特性、ならびにいくつかの実施形態の又はいくつかの実施形態に関連した追加的な構成要素の1つ以上の特性、例えばグルコース計試験片又は血糖計の精度などにも影響を及ぼし得る。例えば、投薬の生物学的利用能、生物有効性、及び保存期間は、その投薬が曝される温度及び/又はその投薬が保管される温度に大きく依存する。そのような投薬を収容する薬剤投与デバイス、特に注射ペン、又は追加的な構成要素は、患者によって、例えば患者のポケット、バックパック、ハンドバック、旅行鞄などに入れて持ち運ばれることが多い。したがって、投薬は幅広く変動する周囲温度に曝されるかもしれず、これは少なくとも前述の投薬に関連する投与、コスト、及び安全性への影響を伴う。
【0091】
[0115] 例えば、インスリンの有効性は高い温度によって低減され得る。患者は、効果の無いインスリンを投与された場合、高血糖になるかもしれない。製造業者は、そのような高い温度に曝されたことのあるインスリンは処分するように、ユーザに指示するが、これはしばしば偶発的に起こることである。たとえ周囲温度が品質を保持するための最高閾値温度(例えば約37℃又は98.6°Fよりも高い)を下回っていても、容器が日光や輻射熱に曝されるときには、インスリン自体の温度は周囲温度を超過し得る。品質を保持するための最高閾値温度は、容器が一旦開封されれば変化し(例えば低くなり)得る(例えば約30℃又は86°Fよりも高い)。同様に、インスリンの品質は、低い温度による影響を受け得る。例えば、製造業者は、一旦容器を開けたらインスリンを冷蔵庫に保管しないように、ユーザに指示する。
【0092】
[0116] いくつかの実施形態によれば、最高閾値温度、最低閾値温度、温度の範囲、温度変化率、温度変動の頻度、及び/又は温度曝露の期間のような指針が、特定の液体測定システム(例えば投与量測定システム1800)、特定の液体容器(例えば薬剤投与デバイス1802)、及び特定の液体(例えばインスリン)のうち少なくとも1つに基づいて、許容可能なものとして推奨され、許可され、及び/又は判定される。温度検知モジュール1810、処理ユニット1808、及び/又は外部演算装置は、液体及び/又はその環境からの1つ以上の温度読み取りをこれらの指標と比較して、ユーザが例えば表示、警報、及び/又はアラームを介して(例えば通信モジュール1812を介して)、例えば所定回数の温度読み取りが:(1)推奨され、許可され、及び/又は判定された最高閾値温度値を超過したこと;(2)推奨され、許可され、及び/又は判定された最低閾値温度値を下回ったこと;(3)推奨され、許可され、及び/又は判定された温度値の範囲の外にあること;(4)推奨され、許可され、及び/又は判定された率を超過する温度変化率を示すこと;(5)推奨され、許可され、及び/又は判定された頻度を超過する温度変動の頻度を示すこと;及び/又は(6)許容可能なものとして推奨され、許可され、及び/又は判定されたよりも長い温度曝露の期間を示すことを通知されるべきであるかどうかを判定するように構成されていてもよい。
【0093】
[0117] 通信モジュール1812は、いくつかの実施形態によれば、上述のように構成され得る。例えば、通信モジュール1812は、ユーザ及び/又は外部デバイスとの双方向通信を可能にするように構成されていてもよい。いくつかの実施形態においては、通信モジュール1812は、残存投与量、使用履歴、電池残量、無線接続状態、薬剤の温度、投与量測定システム1800の温度、薬剤投与デバイス1802の温度、薬剤の効能、薬剤の有効期限状態、薬剤の品質、及び/又は薬剤を投与せよという注意喚起を含むがこれらに限られない投与量測定システム1800の状態をユーザに伝達するように構成された表示部を含む。
【0094】
[0118] 投与量測定システム1800は、薬剤投与デバイス1802に取り外し可能に結合可能であるように構成可能なハウジング内に配置されてもよい。例えば、照明モジュール1804、検知モジュール1806、処理ユニット1808、温度検知モジュール1810、及び通信モジュール1812は、ハウジングに組み込まれてもよい。代替的には、投与量測定システム1800の個々の構成要素(例えば照明モジュール1804及び検知モジュール1806)は第1のハウジングに組み込まれ、他の構成要素(例えば処理ユニット1808、温度検知モジュール1810、及び通信モジュール170)は分かれているか又は第2のハウジングに組み込まれてもよい。いくつかの実施形態においては、ハウジングは、薬剤投与デバイス1802の少なくとも一部に取り外し可能に結合されるように構成される(例えば形状及び大きさを決められる)。例えば、ハウジングは凹部を有し及び/又は穴を定義していてもよく、その内部に薬剤投与デバイス1802の少なくとも一部が受容され得る。
【0095】
[0119] 以上、様々な一般原理を説明したが、次にこれらの概念のいくつかの例示的な実施形態を説明する。これらの実施形態は例に過ぎず、温度の影響を考慮した多くの他の構成の液体測定システム、特に患者に投与された及び/又は薬剤投与デバイス内に残存している投与量を測定する投与量測定システムが想像される。
【0096】
[0120] ここで図19乃至22を参照すると、いくつかの実施形態によれば、液体測定システム2000(本明細書においては「投与量測定システム2000」とも称される)は、検知アセンブリ2002と、温度検知モジュール2004と、通信モジュール2006と、電源2008とを含み得る。図19は液体測定システム2000の斜視図である。図20は分解斜視図、図21は下側ハウジングの背面斜視図、そして図22は投与量測定システム2000の検知アセンブリ2002に含まれたPCBの底面図である。
【0097】
[0121] 投与量測定システム2000は、薬剤投与デバイス2010(本明細書においては「注射ペン2010」とも称される)に取り外し可能に結合可能であるように構成されていてもよい。薬剤投与デバイス2010は、予め定義された量(すなわち投与量)の液体薬剤(例えばインスリン)を患者に投与するように構成されていてもよい。薬剤投与デバイス2010の例には、インスリンを投与するために患者によって用いられ得るインスリン注射ペンが含まれる。いくつかの実施形態によれば、図20に示されるように、薬剤投与デバイス2010は、ハウジング2012と、アクチュエータ2014と、インジェクタ2016とを含む。ハウジング2012は、電磁放射の選択波長(例えば赤外又はマイクロ波放射)のみを透過させ得るように、比較的不透明であってもよい。ハウジング2012は、薬剤を貯蔵するための内部体積(例えば貯蔵器)を定義し得る。アクチュエータ2014は、薬剤と流体連通し予め定義された量の薬剤を患者に伝達するように構成されたプランジャ部を含んでいてもよい。アクチュエータ2014は、例えばユーザによって、可変量の薬剤を分配投与するように構成可能であってもよい。インジェクタ2016(例えば針)は、薬剤の筋肉内、皮下、及び/又は静脈内投与のために、ユーザの組織を貫通するように構成され得る。ハウジング2012は、温度検知モジュール2004が薬剤の温度を直接的にあるいはハウジング2012、アクチュエータ2014、及び/又はインジェクタ2016を介して間接的に測定することができるように構成されていてもよい。
【0098】
[0122] いくつかの実施形態においては、図19に示されるように、投与量測定システム2000は、上側ハウジング部2020(本明細書においては「上側ハウジング2020」とも称される)と下側ハウジング部2022(本明細書においては「下側ハウジング2022」とも称される)とを備えたハウジング2018を含む。上側ハウジング部2020は第1の部分2020aと第2の部分2020bとを含み、これらは上部2020を形成するべく連結され得る。第1の部分2020a及び第2の部分2020bは、例えば糊付け、熱溶着、スナップフィット機構、1つ以上のねじによって、及び/又は任意の他の適切な手段によって、取り外し可能に又は固定的に連結されていてもよい。また、上側ハウジング2020及び下側ハウジング2022は、例えば糊付け、熱溶着、機械的結合(例えば1つ以上のスナップフィット機構又はねじ)によって、及び/又は任意の他の適切な結合手段によって、取り外し可能に又は固定的に連結されていてもよい。
【0099】
[0123] ハウジング2018は、ポリテトラフルオロエチレン、高密度ポリエチレン、ポリカーボネート、他のプラスチック、アクリル、板金、任意の他の適切な材料又はこれらの組み合わせを含むがこれらに限られない、剛性、軽量、及び/又は不透明の材料から作製され得る。ハウジング2018は、投与量測定システム2000の内部電子部品を環境電磁ノイズから遮蔽するようにも構成され得る。例えば、ハウジング2018は、例えば電磁遮蔽体として役立つことのできるアルミニウムライニング又は任意の他の金属のシートもしくは箔のような絶縁構造を含んでいてもよい。
【0100】
[0124] 図19に示されるように、第1のハウジング部2022a及び第2のハウジング部2022bは、検知アセンブリ2002、温度検知モジュール2004、通信モジュール2006、及び電源2008を実質的に収納する内部体積を定義し得る。図21に示されるように、下側ハウジング部2022は穴2024を定義していてもよい。穴2024は、薬剤投与デバイス2010の少なくとも一部を受容するように形状及び大きさを決められていてもよい。例えば、穴2024は、ハウジング2012の薬剤収容部分及びインジェクタ2016のみを受容するように形状及び大きさを決められていてもよい。穴2024は、薬剤投与デバイス2010を特定の配向(例えば径方向配向)で受容するように構成され得る。いくつかの実施形態においては、穴2024は、例えば薬剤投与デバイス2010との摩擦嵌合を形成するように、薬剤投与デバイス2010の直径と精密公差を有する。いくつかの実施形態においては、穴2024は、薬剤投与デバイス2010を下側ハウジング2022に取り外し可能に結合するために、1つ以上の切込み、溝、戻り止め、スナップフィット機構、ねじ山、及び/又は他の結合機構を含む。いくつかの実施形態においては、下側ハウジング部2022は、所定の径方向配向で投与量測定システム2000と結合可能となるように薬剤投与デバイス2010を取り外し可能に結合するための1つ以上の整列フィーチャを含む。
【0101】
[0125] いくつかの実施形態においては、下側ハウジング2022は、検知アセンブリ2002の照明モジュールに含まれ得る複数の光源及び/又は検知アセンブリ2002の検知モジュールに含まれるセンサのうち少なくとも一部を受容するための1つ以上の窓孔2026を定義する。1つ以上の窓孔2026は、光源及び/又はセンサのための機械的支持を提供するように構成されていてもよく、照明モジュール及び/又は検知モジュールのための整列機構として役立ってもよい。
【0102】
[0126] 図19に示されるように、上側ハウジング2020は、例えば外部デバイスとの有線通信を提供するための通信インタフェース及び/又は電源2008を充電するためのインタフェースなど、通信モジュール2006の少なくとも一部を受容するための開口2028を定義し得る。図19及び20に示されるように、上側ハウジング2020は、本明細書に記載された通信モジュール2006に含まれる表示部2032を見るためのスロット2030を定義していてもよい。例えばガラス、アクリル(例えばPlexiglas(登録商標))、又はプラスチックシートなどの透明層2034が、表示部2032を保護するため及び表示部2032の観察用の窓を提供するために、スロット2030の下に配置されてもよい。
【0103】
[0127] いくつかの実施形態においては、ハウジング2018は、薬剤投与デバイス2010が投与量測定システム2000に結合されているかどうかを検出するための検出機構(図示しない)も含む。検出機構は、例えば押圧スイッチ、運動センサ、位置センサ、光学センサ、圧電センサ、インピーダンスセンサ、及び/又は任意の他の適切なセンサを含み得る。ハウジング2018は比較的滑らかで、鋭い縁を有さなくてもよい。いくつかの実施形態においては、ハウジング2018は、最小のスペースを占める形状因子を有する、例えばユーザのポケットに収まることが可能なペンキャップに似せて形状を決められる。いくつかの実施形態においては、ハウジング2018は、例えばユーザのシャツのポケットに取り付けるためのクリップなどのフィーチャ及び/又は他の装飾フィーチャも含む。いくつかの実施形態においては、投与量測定システム2000は、薬剤投与デバイス2010のための交換キャップとしても役立つ。
【0104】
[0128] 検知アセンブリ2002は、照明モジュールと、検知モジュールと、薬剤投与デバイス2010内の残存投与量を判定するように構成され得る処理ユニットとを含んでいてもよい。検知アセンブリはプリント回路基板(PCB)2034を含んでいてもよく、その上に、図22に示されるように、照明モジュール、検知モジュール、及び処理ユニットが搭載されてもよい。照明モジュール及び検知モジュールは、上述の投与量測定システム1800に関して説明された照明モジュール1804及び検知モジュール1806と略同様であってもよい。また、処理ユニットは、上述の処理ユニット1808と略同様であってもよい。
【0105】
[0129] いくつかの実施形態においては、照明モジュールはPCB2034の上に配置された複数の光源2036を含み、これらの光源は、薬剤投与デバイス2010のハウジング2012、その内部に収容された薬剤、及び/又はハウジング2018の一部を貫通することのできる波長の電磁放射を生成するように構成され得る。例えば、赤外線放射又はマイクロ波放射は、薬剤投与デバイス(例えば注射ペン)の製造に一般的に用いられるプラスチック材料の多くを貫通することができる。いくつかの実施形態においては、電磁放射は、薬剤投与デバイス2010の内部構成要素、例えばアクチュエータ2014のプランジャ部を貫通することのできる周波数を有する。いくつかの実施形態においては、光源244は、電磁放射の広ビームを生成するように構成されている(例えば、広角LED又は放出された電磁放射を複数の広角ビームに分割するライトパイプに接続された単一のLED)。別の言い方をすれば、単一光源244の電磁放射錐は広角を有していてもよく、隣接する光源244の電磁放射錐は重複し得る。いくつかの実施形態においては、複数の光源2036は、電磁放射のパルス(例えば一連の100マイクロ秒未満のパルス)を放出するように構成されている。
【0106】
[0130] 検知モジュールは、図5に示されるように、検知モジュール230内に含まれるPCB2034上に搭載され又はそうでなければ配置され得る複数のセンサ2038を含んでいてもよい。PCB252は、任意の一般的に知られたプロセスによって作製された任意の標準的なPCBであってもよい。複数のセンサ2038は、複数の光源2036と光学的に結合可能であり且つ複数の光源2036によって放出された電磁放射の少なくとも一部を検出するように構成された任意の光学センサ(例えばフォトダイオード)であり得る。電磁放射は、透過放射線、(例えば空気、薬剤、及び/又は薬剤投与デバイス2010の本体によって屈折された)屈折放射線、(例えばハウジング2018の壁から反射した、又は薬剤投与デバイス2010の壁から内面反射した)反射放射線、及び/又は(例えばハウジング2012の曲面のレンズ効果によって引き起こされた)多方向屈折/反射であってもよい。複数のセンサ2038によって受信された透過、屈折、及び/又は反射された電磁信号は、(例えば処理ユニットによって)信号シグネチャを創出するために用いられ得る。信号シグネチャは、薬剤投与デバイス2010内の残存投与量を判定するために、基準シグネチャと関連付けられ得る。いくつかの実施形態においては、センサ2038の信号応答は、例えば、薬剤投与デバイス2010のインジェクタ2016の有無の判定、及び/又は薬剤投与デバイス2010が投与量測定システム2000に結合されているか又は結合されていないかの判定など、有用性指標を測定するために用いられてもよい。いくつかの実施形態においては、センサ2038の信号応答は、温度データに基づいてさらに処理(例えば較正)され得る。
【0107】
[0131] 温度検知モジュール2004は、薬剤投与デバイス2010内に配置された液体の温度、及び/又は液体を取り巻く環境、例えば、中に薬剤投与デバイス2010の少なくとも一部が配置され得る下側ハウジング2022の穴2024の内部体積の温度を測定するように構成された1つ以上の温度センサを含んでいてもよい。この1つ以上の温度センサは、1つ以上の熱電対、RTD、サーミスタ、バイメタル温度センサ、シリコンダイオード、及び/又は任意の他の適切な温度センサを含み得る。1つ以上の温度センサは、液体体積及び/又は液体を取り巻く環境の略正確な温度読み取りを可能にするべく、上側ハウジング2020aによって定義された内部体積内に位置決めされ及び/又は配置され得る。例えば、1つ以上の温度センサは、下側ハウジング2020bの側壁の外面に沿って配置されてもよい。
【0108】
[0132] また、1つ以上の温度センサは、例えば図20に示されるより高温の電子部品2040(例えば蓄電器又は抵抗器)又は電源2008など、温度読み取りに影響を及ぼす可能性のある投与量測定システム2000の構成要素から十分に距離を置いて位置決めされ得る。さらに、1つ以上の温度センサは、1つ以上の温度センサ及び液体への熱の拡散が略均等になり1つ以上のセンサが液体の温度を正確に反映するように、薬剤投与デバイス2010内に配置された液体体積に十分に近接して配置され得る。いくつかの実施形態においては、温度検知モジュール2004は、液体の温度のみを測定するように構成された第1の温度センサ又は第1組の温度センサと、液体を取り巻く環境の温度のみを測定するように構成された第2の温度センサ又は第2組の温度センサとを含む。いくつかの実施形態においては、温度検知モジュール2004は単一の温度センサからなる。他の実施形態においては、温度検知モジュール2004は、例えば一直線の列、長方形アレイ、正方形アレイ、円形アレイ、又は任意の他の適切な構成で配置された複数の温度センサを含む。いくつかの実施形態においては、温度検知モジュール2004は、データを処理するように及び/又は温度データを例えば通信モジュール2006に伝達するように構成されたプリント回路基板(PCB)及び/又は他の電子機器を含む。
【0109】
[0133] いくつかの実施形態においては、温度検知モジュール2004は処理ユニットを含む。いくつかの実施形態においては、温度検知モジュール2004は、温度データを、検知アセンブリ2002内に含まれる処理ユニットに伝達するように構成されている。少なくとも1つの処理ユニットは、液体の品質(例えば1つ以上の成分の生物学的利用能、生物有効性、及び/又は有効期限状態)及び/又は投与の質(例えば容易性及び/又は安楽度)を判定するために温度データを用いるように構成される。例えば、薬剤投与デバイス2010内に配置された液体薬剤の熱安定性及び効能についての情報が、処理ユニットに結合されたメモリに記憶されてもよい。処理ユニットは、薬剤の物理的及び/又は化学的な状態/品質を判定するために、温度検知モジュール2004によって提供された液体薬剤及び/又は薬剤を取り巻く環境の実時間温度を、特定の薬剤の熱安定性情報と比較し得る。いくつかの実施形態においては、多数の薬剤(例えばインスリン、エピネフリンなど)の又は特定の薬剤のみの熱安定性情報が、プロセッサに通信可能に結合された外部又は内部メモリデバイスに記憶されてもよく、それによって投与量測定システム2000に、異なる薬剤を収容し得る異なる薬剤投与デバイス、異なる薬剤を収容し得る特定の薬剤投与デバイス、略同様の薬剤を収容する薬剤投与デバイス、又は略同様の薬剤を収容する特定の薬剤投与デバイスとの互換性をもたせることができる。
【0110】
[0134] いくつかの実施形態においては、温度データは、センサデータ(すなわち信号シグネチャ)が極端な温度、温度の変化、及び/又は温度の変動によって引き起こされた乱れ又は寄与を実質的に有さないように、検知モジュールから受信されたデータを正規化又は補正するために用いられる。
【0111】
[0135] 図23は、いくつかの実施形態による、液体測定システムの代表センサの補償された測定値2300及び補償されていない測定値2302を温度の関数として示すグラフである。補償されていないセンサ測定値2302は、実際の温度が変化及び/又は変動するにつれて、実際の温度からかなり離れ得る。いくつかの実施形態においては、残存している液体の実際の温度をより正確に監視するために、実際の温度が変化及び/又は変動するにつれて温度測定値を調整し、それによって、補償された測定値2300を生成するのが好適であろう。
【0112】
[0136] いくつかの実施形態においては、温度変化の補償は以下の補正係数を適用することによって行われる。
A×ΔT×Sraw (1)
ただし、Aは個々のセンサ設計によって変化し得るスケーリング係数、Srawは未処理のセンサ読み取り値、及びΔTは測定された温度とベースライン温度との間の差であり、これは一定である限りは任意の温度(例えば0℃)であり得る。
ΔT=Tmeas-Tbase (2)
よって、補償されたセンサ値は、
comp=Sraw+A×ΔT×Sraw (3)
によって決定され得る。
【0113】
[0137] いくつかの実施形態においては、スケーリング係数は飽和エッジの場合を考慮する。特定のセンサが既に飽和している場合、そのセンサは温度補償に起因して不飽和となり得ないかもしれない。
【0114】
[0138] 温度データは、例えば、較正が第1の温度で実施され、信号シグネチャが第1の温度とは異なる第2の温度で測定される場合には、較正シグネチャを正規化するためにも用いられ得る。いくつかの実施形態においては、センサデータは、薬剤の熱膨張係数に関して温度データを用いて正規化される。このようにして、液体薬剤の体積の膨張又は収縮に起因するエラー又は他の温度に関係するセンサとの干渉が補正され得る。
【0115】
[0139] いくつかの実施形態においては、処理ユニットは温度較正を実施するように構成されている。例えば、そのような実施形態においては、処理ユニットは、独立した温度センサを含む外部温度測定システムによって測定された較正温度を受信するように構成されていてもよい。外部較正温度と温度検知モジュール2004内に含まれる温度センサによって測定された内部温度との間の差に基づいて、正のオフセット又は負のオフセットが生成されてもよい。将来の温度検知に関しては、処理ユニットがその後、正のオフセット又は負のオフセットを内部温度に加算することによって、最終的な温度読み取りを計算することができる。
【0116】
[0140] 正確な温度補償及び/又は較正には温度センサの配置が重要である。いくつかの実施形態においては、温度センサは、温度によって最も変化する構成要素に極近接して設置される。いくつかの実施形態においては、温度によって最も変化する構成要素は、エミッタ又は光源である。図24において、投与量測定システムの一部の図は、いくつかの実施形態による、光源2402(例えば複数のLED又は放出された電磁放射を複数の光源に分割するライトパイプに接続された単一のLED)に極近接して設置された温度センサ2400を示す。
【0117】
[0141] 温度は血糖測定に影響を及ぼす鍵となる要因でもある。試験片が保管される温度及びグルコース計又は血糖計が動作される温度は、いずれも重要である。特に、温度は、上述の投与量測定システムと同様、血糖計内の電子機器の反応に影響し得る。温度は、試験片における化学反応の速度論にも影響し得る。したがって、いくつかの実施形態によれば、血糖計及び/又は試験片に極近接して設置された温度センサは重要である。
【0118】
[0142] いくつかの実施形態においては、血糖計は投与量測定システムと通信可能に結合され及び/又は物理的に結合されている(例えばハウジング内に統合されている)。1つ以上の温度センサが、温度によるドリフトに関して血糖測定値を補償するために、血糖計に近接して設置されてもよい。いくつかの実施形態においては、取り外し可能及び/又は詰め替え可能な試験片保管デバイスが、(例えばハウジング内に統合された)投与量測定システム、及び/又は投与量測定システムと通信可能に結合され及び/又は物理的に結合された血糖計と、通信可能に結合され及び/又は物理的に結合される。試験片温度曝露に関係する品質の問題を特定するために、1つ以上の温度センサが保管デバイス上に又は保管デバイスに近接して設置されてもよい。
【0119】
[0143] いくつかの実施形態においては、投与量測定システム上又は投与量測定システムと通信可能に結合された外部デバイス上の通信インタフェースは、残存投与量、使用履歴、電池残量、無線接続状態、ユーザ注意喚起、及び/又は温度測定値を含むがこれらに限られない投与量測定システムの状態をユーザに伝達するように構成されている。表示部、スピーカ、及び/又は振動機構が、視覚、音声及び/又は触覚による表示又は警報をユーザに伝えるために用いられてもよい。いくつかの実施形態においては、ユーザ入力インタフェース(例えばボタン、スイッチ、英数字キーパッド、タッチスクリーン、カメラ、及び/又はマイク)が、システムと遠隔デバイスとの間の通信の開始又は終了、システムの電源オン、システムの電源オフ、システムのリセット、患者行動の詳細の手動入力、及び/又は薬剤投与デバイスの使用の詳細の手動入力を含むがこれらに限られない情報又は命令をユーザが投与量測定システムに入力することを可能にする。
【0120】
[0144] 図25は、いくつかの実施形態による、デバイスと1つ以上の投与量測定システムとの間の通信を開始又は終了するため、そして一旦通信が開始されれば1つ以上の投与量測定システムの各々の残存体積、電池寿命、及び温度を監視するための、遠隔デバイス(例えばスマートフォン)上のユーザインタフェース表示のスクリーンショットである。
【0121】
[0145] いくつかの実施形態においては、温度が薬剤の推奨され、許容され、及び/又は判定された動作範囲を超過するとき、ユーザは、システムから又はシステムと通信可能に結合された外部デバイスから、通知を受信し得る。通知を停止するにはユーザによるアクションが必要であるかもしれない。いくつかの実施形態においては、時刻表示部が、いつ温度事象が発生したかを追跡する。したがって、ユーザは、システムを再較正したり薬剤又は試験片を捨てたりするために温度事象を特定するべく、通知及び/又は時刻表示部を確認し得る。
【0122】
[0146] 結論
本明細書においては本発明の様々な実施形態が記載され説明されてきたが、当該技術分野における通常の技能を有する者は、本明細書に記載された機能を実施するため、ならびに/あるいは、結果及び/又は1つ以上の利点を得るための、様々な他の手段及び/又は構造を容易に想像するであろうし、そのような変形及び/又は変更の各々は、本明細書に記載された本発明の実施形態の範囲内にあるものと見なされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載されたすべてのパラメータ、寸法、材料、及び構成は例示的であることを意図されていること、及び実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成は本発明の教示が用いられる具体的な用途に依存するであろうことを容易に察知するであろう。当業者は、単に型通りの実験を用いるだけで、本明細書に記載された具体的な本発明の実施形態と均等な多くの実施形態を認識するか、又は確認できるであろう。したがって、前述の実施形態は例として提示されているに過ぎないこと、そして、本発明の実施形態は、具体的に記載され特許を請求されている以外に、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内で実施され得ることが理解されるべきである。本開示における本発明の実施形態は、本明細書に記載された個々の特徴、システム、部品、材料、キット、及び/又は方法を対象とするものである。また、2つ以上のそのような特徴、システム、部品、材料、キット、及び/又は方法の任意の組み合わせは、そのような特徴、システム、部品、材料、キット、及び/又は方法が相互に矛盾しない場合には、本開示における本発明の範囲内に含まれる。
【0123】
[0147] 上述の方法及びステップがある順序で起こるある事象を示す場合には、本開示の利益を有する当該技術分野における通常の技能を有する者は、あるステップの順序付けは変更されてもよく、そのような変更は本発明の変形によるものであることを認識するであろう。また、ステップのうちあるものは、可能なときには並行処理で同時に実施されてもよいし、上述のように順次実施されてもよい。実施形態が具体的に示され記載されているが、形及び詳細の様々な変更がなされ得ることは理解されるであろう。
【0124】
[0148] 例えば、様々な実施形態が特定の特徴及び/又は構成要素の組み合わせを有するものとして記載されているが、本明細書に記載された実施形態のうち任意のものの任意の特徴及び/又は構成要素の任意の組み合わせ又は下位組み合わせを有する他の実施形態が可能である。例えば、いくつかの実施形態はペンキャップに似た投与量測定システムを有するものとして記載されたが、投与量測定システムは薬剤投与デバイスと一体であってもよい。いくつかの実施形態においては、信号シグネチャを生成するために、電磁放射の代わりに振動及び/又は超音波が用いられる。また、様々な構成要素の具体的な構成も変更され得る。例えば、様々な構成要素の大きさ及び具体的な形状は、図示された実施形態と異なり得るが、依然として本明細書に記載された機能を提供する。
【0125】
[0149] 上述の実施形態は、多くの手法のうちいずれでも実現可能である。例えば、本明細書に開示される実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、又はこれらの組み合わせを用いて実現され得る。ソフトウェアで実現されるときには、ソフトウェアコードは、単一のコンピュータ内で提供されても複数のコンピュータ間に配信されても、任意の適切なプロセッサ又はプロセッサの集合で実行可能である。
【0126】
[0150] また、コンピュータは、ラックマウント型コンピュータ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、又はタブレットコンピュータなど、多数の形のうちいずれでも具体化され得ることが察知されるべきである。さらに、コンピュータは、携帯情報端末(PDA)、スマートフォン、又は任意の他の適切な可搬型又は固定型の電子デバイスを含む、一般的にコンピュータとは見なされないが適切な処理能力を備えたデバイスに埋め込まれてもよい。
【0127】
[0151] また、コンピュータは、1つ以上の入力デバイス及び出力デバイスを有し得る。これらのデバイスは、とりわけ、ユーザインタフェースをもたらすために用いられ得る。ユーザインタフェースを提供するために用いられ得る出力デバイスの例には、出力の視覚的提示のためのプリンタ又は表示画面及び出力の可聴提示のためのスピーカ又は他の音発生デバイスが含まれる。ユーザインタフェースのために使用可能な入力デバイスの例には、キーボードや、マウス、タッチパッドのようなポインティングデバイス、及びデジタイジングタブレットが含まれる。別の一例として、コンピュータは、音声認識を通じて又は他の可聴フォーマットで入力情報を受信してもよい。
【0128】
[0152] そのようなコンピュータは、企業ネットワークなどのローカルエリアネットワークもしくは広域ネットワーク及びインテリジェントネットワーク(IN)もしくはインターネットを含む任意の適当な形の1つ以上のネットワークにより相互接続され得る。そのようなネットワークは、任意の適切な技術に基づいていてもよく、任意の適切なプロトコルに従って動作してもよく、また無線ネットワーク、有線ネットワーク、又は光ファイバネットワークを含んでいてもよい。
【0129】
[0153] 本明細書において概説された様々な方法又はプロセスは、様々なオペレーティングシステム又はプラットフォームのうちいずれか1つを採用する1つ以上のプロセッサ上で実行可能なソフトウェアとして符号化されてもよい。また、そのようなソフトウェアは、多数の適切なプログラミング言語及び/又はプログラミングもしくはスクリプティングツールのうちいずれを用いて記述されてもよく、フレームワークもしくは仮想マシン上で実行される実行可能な機械語コード又は中間コードとしてコンパイルされてもよい。
【0130】
[0154] また、様々な本発明の概念は1つ以上の方法として具体化されてもよく、その一例が提供されている。方法の一部として実施される行為は、任意の適切な手法で順序付けされ得る。したがって、説明されたものとは異なる順序で行為が実施される実施形態が構成されてもよく、これは、例示的実施形態においては連続的な行為として示されていても、いくつかの行為を同時に実施することを含み得る。
【0131】
[0155] 本明細書において言及されたすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0132】
[0156] 本明細書において定義され用いられるすべての定義は、辞書的定義、参照により組み込まれた文献における定義、及び/又は定義された用語の通常の意味を支配するものと理解されるべきである。
【0133】
[0157] 不定冠詞「a」及び「an」は、本願の明細書及び特許請求の範囲において用いられる場合、そうでないと明確に表示されない限りは、「少なくとも1つ」を意味するものと理解されるべきである。
【0134】
[0158] 「及び/又は」という文言は、本願の明細書及び特許請求の範囲において用いられる場合、そのように結合された要素、すなわち、ある場合には結合して存在し別の場合には分離して存在する要素の「一方又は両方」を意味するものと理解されるべきである。「及び/又は」と共に列挙された複数の要素は、同じように、すなわち、そのように結合された要素のうち「1つ以上」と解釈されるべきである。「及び/又は」節によって具体的に特定された要素以外の要素が、その具体的に特定された要素と関係があるかないかにかかわらず、任意選択的に存在していてもよい。よって、非制限的な一例として、「A及び/又はB」という場合、「~を備える(comprising)」などの開放形式の言い回しと組み合わせて用いられるときには、一実施形態においてはAのみ(任意選択的にB以外の要素を含む)を;別の一実施形態においてはBのみ(任意選択的にA以外の要素を含む)を;さらに別の一実施形態においてはA及びBの両方(任意選択的に他の要素を含む)を参照し得る、といった具合である。
【0135】
[0159] 本願の明細書及び特許請求の範囲において用いられる場合、「又は」は、上記で定義された「及び/又は」と同一の意味を有するものと理解されるべきである。例えば、一覧の中の項目を分けるとき、「又は」又は「及び/又は」は、包括的である、すなわち多数の要素又は要素の一覧のうち少なくとも1つを含むが、2つ以上も含み、また任意選択的にはさらに列挙されていない項目をも含むものと解釈されるものとする。「~のうち1つだけ」もしくは「~のうちただ1つだけ」、又は、特許請求の範囲において用いられるときには「~からなる」など、そうでないと明確に示された用語のみが、多数の要素又は要素の一覧のうちただ1つの要素を含むことを指す。概して、本明細書において用いられる「又は」という用語は、「どちらか一方」、「~のうち1つ」、「~のうち1つだけ」、又は「~のうちただ1つだけ」のような排他性の用語が前にあるときには、排他的な選択肢(すなわち「一方又は他方だが両方ではない」)としてのみ解釈されるものとする。「本質的に~からなる」は、特許請求の範囲において用いられるとき、特許法の分野において用いられるその通常の意味を有するものとする。
【0136】
[0160] 本願の明細書及び特許請求の範囲において用いられる場合、1つ以上の要素の一覧に関連する「少なくとも1つ」という文言は、要素の一覧にある要素のうちいずれか1つ以上から選択された少なくとも1つの要素を意味するものと理解されるべきであるが、要素の一覧の中に具体的に列挙された1つ1つの要素のうち少なくとも1つを必ずしも含まず、要素の一覧の中の要素のどんな組み合わせも排除しない。この定義は、「少なくとも1つ」という文言が参照する要素の一覧の中に具体的に特定された要素以外の要素が、その具体的に特定された要素と関係があるかないかにかかわらず、任意選択的に存在し得ることも可能にする。よって、非制限的な一例として、「A及びBのうち少なくとも1つ」(又は同様に「A又はBのうち少なくとも1つ」、又は同様に「A及び/又はBのうち少なくとも1つ」)は、一実施形態においては、少なくとも1つ、任意選択的には2つ以上のAを含み、Bは存在しない(そして任意選択的にB以外の要素を含む)ことを;別の一実施形態においては、少なくとも1つ、任意選択的には2つ以上のBを含み、Aは存在しない(そして任意選択的にA以外の要素を含む)ことを;さらに別の一実施形態においては、少なくとも1つ、任意選択的には2つ以上のAを含み、少なくとも1つ、任意選択的には2つ以上のBを含む(そして任意選択的に他の要素を含む)ことを参照し得る、といった具合である。
【0137】
[0161] 特許請求の範囲において、ならびに上述の明細書において、「備える(comprising)」、「含む(including)」、「持ち運ぶ(carrying)」、「有する(having)」、「収容する(containing)」、「伴う(involving)」、「保持する(holding)」、「~で構成される(composed of)」などといったすべての移行句は開放形式、すなわち、含むが限られないことを意味するものと理解されるべきである。「~からなる(consisting of)」及び「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という移行句のみが、合衆国特許庁特許審査便覧(United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures)のセクション2111.03に示されているように、それぞれ閉鎖形式又は準閉鎖形式の移行句であるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12
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図14
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図25