(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】負極材料、並びに、それを含む電気化学装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20230914BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230914BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20230914BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20230914BHJP
H01G 11/30 20130101ALI20230914BHJP
H01G 11/38 20130101ALI20230914BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 B
H01M4/36 C
H01M4/48
H01M4/36 E
H01G11/06
H01G11/30
H01G11/38
(21)【出願番号】P 2021536247
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 CN2019118584
(87)【国際公開番号】W WO2021092868
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2021-06-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳志煥
(72)【発明者】
【氏名】姜道義
(72)【発明者】
【氏名】崔航
(72)【発明者】
【氏名】謝遠森
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109638254(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109841823(CN,A)
【文献】国際公開第2016/035274(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/150513(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/077268(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/05-10/0587
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素含有粒子を含む負極材料であって、
前記ケイ素含有粒子は、ケイ素複合物マトリックスと酸化物MeOy層とを含み、
前記酸化物MeOy層は、前記ケイ素複合物マトリックスの少なくとも一部を被覆し、
Meは、Al、Si、Ti、Mn、V、Cr、Co及びZrからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、yは、0.5~3であり、且つ、
前記酸化物MeOy層は、炭素材料を含み、
前記負極材料の全重量に対して、Me元素の重量分率は、0.01wt%~0.9wt%であ
り、
前記ケイ素含有粒子の粒子径分布は、0.3≦Dn10/Dv50≦0.6を満たす、負極材料。
【請求項2】
前記ケイ素複合物マトリックスは、SiOxを含み、且つ、0.6≦x≦1.5である、請求項1に記載の負極材料。
【請求項3】
前記ケイ素複合物マトリックスは、Siナノ粒子、SiO、SiO2又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の負極材料。
【請求項4】
前記Siナノ粒子のサイズは、100nm未満である、請求項3に記載の負極材料。
【請求項5】
前記酸化物MeOy層の厚さは、1nm~900nmである、請求項1に記載の負極材料。
【請求項6】
前記負極材料の全重量に対して、前記酸化物MeOy層中の炭素材料の重量分率は、0.02wt%~1wt%である、請求項1に記載の負極材料。
【請求項7】
前記ケイ素含有粒子は、ポリマー層をさらに含み、前記ポリマー層は、前記酸化物MeOy層の少なくとも一部を被覆し、且つ、前記ポリマー層は、炭素材料を含む、請求項1に記載の負極材料。
【請求項8】
前記ポリマー層は、ポリフッ化ビニリデンとその誘導体、カルボキシメチルセルロースとその誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウムとその誘導体、ポリビニルピロリドンとその誘導体、ポリアクリル酸とその誘導体、ポリスチレンブタジエンゴム、ポリアクリルアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項7に記載の負極材料。
【請求項9】
前記酸化物MeOy層に含まれる前記炭素材料又は前記ポリマー層に含まれる前記炭素材料は、それぞれ独立して、カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、カーボンファイバー、グラフェン又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1又は7に記載の負極材料。
【請求項10】
前記負極材料の全重量に対して、前記ポリマー層の重量分率は、0.05~9wt%である、請求項7に記載の負極材料。
【請求項11】
前記ポリマー層の厚さは、1nm~150nmである、請求項7に記載の負極材料。
【請求項12】
X線回折パターンにおいて、2θが28.0°~29.5°の範囲にある最大強度値をI
2とし、2θが20.0°~21.5°の範囲にある最大強度値をI
1とし、0<I
2/I
1≦1である、請求項7に記載の負極材料。
【請求項13】
前記ケイ素含有粒子のDv50の範囲は、2μm~10μmであ
る、請求項12に記載の負極材料。
【請求項14】
X線回折パターンにおいて、2θが28.0°~29.5°の範囲にある最大強度値をI
2とし、2θが20.0°~21.5°の範囲にある最大強度値をI
1とし、0<I
2/I
1≦1である、請求項1に記載の負極材料。
【請求項15】
比表面積は、1m
2/g~50m
2/gである、請求項1に記載の負極材料。
【請求項16】
ケイ素酸化物SiOx粉末、炭素材料及び酸化物前駆体MeTnを有機溶媒と脱イオン水との存在下で混合溶液に形成すること、
前記混合溶液を乾燥させて粉末を得ること、及び
前記粉末を200℃~1000℃で0.5~25時間焼成して、表面に酸化物MeOy層を有するケイ素化合物SiOx粒子を得ること、を含み、
xは、0.5~1.5であり
、
Tは、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、且つ、
nは、1、2、3又は4である、請求項1に記載する負極材料の調製方法。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか1項に記載の負極材料を含む、負極。
【請求項18】
請求項17に記載の負極を含む、電気化学装置。
【請求項19】
リチウムイオン電池である、請求項18に記載の電気化学装置。
【請求項20】
請求項18に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵分野に関し、具体的には、負極材料、並びに、それを含む電気化学装置及び電子装置、特にリチウムイオン電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノートパソコン、携帯電話、タブレット、モバイルパワー、ドローンなどのコンシューマエレクトロニクスの普及に伴い、その中にある電気化学装置への要求は、ますます厳しくなっている。例えば、電池に対して、軽量であることが求められているだけでなく、高容量及び長寿命であることも求められている。リチウムイオン電池は、高エネルギー密度、高安全性、メモリー効果なし及び長寿命などの利点により、市場で主要な地位を占めている。
【発明の概要】
【0003】
本発明の実施例は、負極材料及びこの負極材料を調製する方法を提供することにより、少なくともある程度で、関連分野における少なくとも一つの問題を解決しようとする。本発明の実施例は、この負極材料を用いた負極、電気化学装置及び電子装置をさらに提供する。
【0004】
一つの実施例において、本発明は、ケイ素含有粒子を含む負極材料であって、前記ケイ素含有粒子は、ケイ素複合物マトリックスと酸化物MeOy層とを含み、前記酸化物MeOy層は、前記ケイ素複合物マトリックスの少なくとも一部を被覆し、Meは、Al、Si、Ti、Mn、V、Cr、Co及びZrからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、yは、0.5~3であり、且つ、前記酸化物MeOy層は、炭素材料を含む負極材料を提供する。
【0005】
他の実施例において、本発明は、ケイ素酸化物SiOx粉末、炭素材料及び酸化物前駆体MeTnを有機溶媒と脱イオン水との存在下で混合溶液に形成すること、
前記混合溶液を乾燥させて粉末を得ること、及び
前記粉末を200℃~1000℃で0.5時間~25時間焼成して、表面に酸化物MeOy層を有するケイ素化合物SiOx粒子を得ること、を含み、
xは、0.5~1.5であり、yは、0.5~3であり、
Meは、Al、Si、Ti、Mn、Cr、V、Co及びZrからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
Tは、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、且つ、
nは、1、2、3又は4である負極材料の調製方法を提供する。
【0006】
他の実施例において、本発明は、本発明の実施例に記載の負極材料を含む負極を提供する。
【0007】
他の実施例において、本発明は、本発明の実施例に記載の負極を含む電気化学装置を提供する。
【0008】
他の実施例において、本発明は、本発明の実施例に記載の電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0009】
本発明の負極活性材料は、良好なサイクル特性を備え、また、この負極活性材料により調製したリチウムイオン電池は、良好なレート特性及び低い膨張率を備える。
【0010】
本発明の実施例の他の態様及び利点について、一部的に以下で説明され、例示され、又は本発明の実施例の実施を通じて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下では、本発明の実施例を説明するために、本発明の実施例又は従来技術を説明するための必要な図面を概要的に説明する。明らかなことに、以下に説明される図面は、本出願の実施例の一部にすぎない。当業者であれば、創造的な労働なしに、依然として、これらの図面に例示される構造から、他の実施例の図面を得ることができる。
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一つの実施例に係る負極活性材料の構造模式図を示す。
【0013】
【
図2】
図2は、本発明の他の実施例に係る負極活性材料の構造模式図を示す。
【0014】
【
図3】
図3は、本発明の実施例22に係る負極活性材料のX線回折(XRD)パターンを示す。
【0015】
【
図4】
図4は、本発明の比較例2に係る負極活性材料のX線回折(XRD)パターンを示す。
【0016】
【
図5】
図5は、本発明の実施例25に係る負極活性材料の体積基準の粒度分布曲線を示す。
【0017】
【
図6】
図6は、本発明の比較例3に係る負極活性材料の体積基準の粒度分布曲線を示す。
【0018】
【
図7】
図7は、本発明の実施例25に係る負極活性材料の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【0019】
【
図8】
図8は、本発明の比較例3に係る負極活性材料の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。本発明の実施例は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0021】
本発明において、Dv50は、負極活性材料の累積体積分率が50%に達した時の粒子径であり、単位がμmである。
【0022】
本発明において、Dn10は、負極活性材料の累積数量分率が10%に達した時の粒子径であり、単位がμmである。
【0023】
本発明において、ケイ素複合物は、ケイ素単体、ケイ素化合物、ケイ素単体とケイ素化合物との混合物、又は異なるケイ素化合物の混合物を含む。
【0024】
なお、本明細書において、数量、比率、及びその他の数値を範囲形式で呈する場合がある。このような範囲形式は、便宜及び簡潔を目的としており、柔軟に理解すべきである。当該範囲形式は、範囲制限として明確に指定される数値を含むだけでなく、前記範囲に含まれるすべての各々の数値又はサブ範囲も含み、それは、各々の数値又はサブ範囲を明確に指定されることに相当する。
【0025】
発明を実施するための形態及び請求の範囲において、「からなる群より選ばれる一方」、「からなる群より選ばれる一つ」、「からなる群より選ばれる一種」という用語又はその他の似てる用語によって接続される項のリストは、リストされる項の何れか一方を意味する。例えば、項A及び項Bがリストされる場合、「A及びBからなる群より選ばれる一方」という短句は、Aのみ又はBのみを意味する。他の実例では、項A、項B、及び項Cがリストされる場合、「A、B、及びCからなる群より選ばれる一方」という短句は、Aのみ、Bのみ、Cのみを意味する。項Aは、単一の要素又は複数の要素を含んでいてもよい。項Bは、単一の要素又は複数の要素を含んでいてもよい。項Cは、単一の要素又は複数の要素を含んでいてもよい。
【0026】
発明を実施するための形態及び請求の範囲において、「からなる群より選ばれる少なくとも一方」、「からなる群より選ばれる少なくとも一つ」、「からなる群より選ばれる少なくとも一種」という用語又はその他の似てる用語によって接続される項のリストは、リストされる項の任意の組み合わせを意味する。例えば、項A及び項Bがリストされる場合、「A及びBからなる群より選ばれる少なくとも一方」という短句は、Aのみ、Bのみ、又はA及びBを意味する。他の実例では、項A、項B、及び項Cがリストされる場合、「A、B及びCからなる群より選ばれる少なくとも一方」という短句は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びB(Cを除く)、A及びC(Bを除く)、B及びC(Aを除く)、又はA、B及びCのすべてを意味する。項Aは、単一の要素又は複数の要素を含んでいてもよい。項Bは、単一の要素又は複数の要素を含んでいてもよい。項Cは、単一の要素又は複数の要素を含んでいてもよい。
【0027】
一、負極材料
本発明の実施例は、ケイ素含有粒子を含む負極材料であって、前記ケイ素含有粒子は、ケイ素複合物マトリックスと酸化物MeOy層とを含み、前記酸化物MeOy層は、前記ケイ素複合物マトリックスの少なくとも一部を被覆し、Meは、Al、Si、Ti、Mn、V、Cr、Co及びZrからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、yは、0.5~3であり、且つ、前記酸化物MeOy層は、炭素材料を含む負極材料を提供する。
【0028】
いくつかの実施例において、前記ケイ素複合物マトリックスは、ケイ素含有物質を含み、前記ケイ素複合物マトリックスにおける前記ケイ素含有物質と前記負極材料における前記ケイ素含有物質以外の他の物質の一種又は複数種とが複合物を形成してもよい。いくつかの実施例において、前記ケイ素複合物マトリックスは、リチウムイオンの粒子を吸蔵及び放出することができる。
【0029】
いくつかの実施例において、前記ケイ素複合物マトリックスは、SiOxを含み、且つ、0.6≦x≦1.5である。
【0030】
いくつかの実施例において、前記ケイ素複合物マトリックスは、Siナノ粒子、SiO、SiO2又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0031】
いくつかの実施例において、前記Siナノ粒子のサイズは、100nm未満である。いくつかの実施例において、前記Siナノ粒子のサイズは、50nm未満である。いくつかの実施例において、前記Siナノ粒子のサイズは、20nm未満である。いくつかの実施例において、前記Siナノ粒子のサイズは、5nm未満である。いくつかの実施例において、前記Siナノ粒子のサイズは、2nm未満である。
【0032】
いくつかの実施例において、前記酸化物MeOyは、Al2O3、SiO2、TiO2、Mn2O3、MnO2、CrO3、Cr2O3、CrO2、V2O5、VO、CoO、Co2O3、Co3O4、ZrO2又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0033】
いくつかの実施例において、前記酸化物MeOy層での炭素材料は、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、カーボンファイバー、グラフェン又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施例において、前記アモルファスカーボンは、炭素前駆体を高温で焼成して得られた炭素材料である。いくつかの実施例において、前記炭素前駆体は、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、酸性フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリアクリル樹脂又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0034】
いくつかの実施例において、前記酸化物MeOy層の厚さは、0.5nm~1000nmである。いくつかの実施例において、前記酸化物MeOy層の厚さは、1nm~900nmである。いくつかの実施例において、前記酸化物MeOy層の厚さは、5nm~900nmである。いくつかの実施例において、前記酸化物MeOy層の厚さは、10nm~100nmである。いくつかの実施例において、前記酸化物MeOy層の厚さは、1nm~20nmである。いくつかの実施例において、前記酸化物MeOy層の厚さは、2nm、10nm、20nm、50nm、200nm、300nm又は500nmである。
【0035】
いくつかの実施例において、前記負極材料の全重量に対して、Me元素の重量分率は、0.005wt%~1.5wt%である。いくつかの実施例において、前記負極材料の全重量に対して、Me元素の重量分率は、0.005wt%~1wt%である。いくつかの実施例において、前記負極材料の全重量に対して、Me元素の重量分率は、0.01wt%~0.9wt%である。いくつかの実施例において、前記負極材料の全重量に対して、Me元素の重量分率は、0.02wt%~0.8wt%である。いくつかの実施例において、前記負極材料の全重量に対して、Me元素の重量分率は、0.05wt%、0.1wt%、0.2wt%、0.3wt%、0.4wt%、0.5wt%、0.6wt%、0.7wt%又は0.8wt%である。
【0036】
いくつかの実施例において、前記負極材料の全重量に対して、前記酸化物MeOy層での炭素材料の重量分率は、0.01wt%~1wt%である。いくつかの実施例において、前記負極材料の全重量に対して、前記酸化物MeOy層での炭素材料の重量分率は、0.02wt%~1wt%である。いくつかの実施例において、前記負極材料の全重量に対して、前記酸化物MeOy層での炭素材料の重量分率は、0.1wt%~0.9wt%である。いくつかの実施例において、前記負極材料の全重量に対して、前記酸化物MeOy層での炭素材料の重量分率は、0.3wt%~0.8wt%である。いくつかの実施例において、前記負極材料の全重量に対して、前記酸化物MeOy層での炭素材料の重量分率は、0.2wt%、0.3wt%、0.4wt%、0.5wt%、0.6wt%又は0.7wt%である。
【0037】
いくつかの実施例において、前記負極材料は、ポリマー層をさらに含み、前記ポリマー層は、前記酸化物MeOy層の少なくとも一部を被覆し、且つ、前記ポリマー層は、炭素材料を含む。
【0038】
いくつかの実施例において、前記ポリマー層は、ポリフッ化ビニリデンとその誘導体、カルボキシメチルセルロースとその誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウムとその誘導体、ポリビニルピロリドンとその誘導体、ポリアクリル酸とその誘導体、ポリスチレンブタジエンゴム、ポリアクリルアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0039】
いくつかの実施例において、前記ポリマー層での炭素材料は、カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、カーボンファイバー、グラフェン又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0040】
いくつかの実施例において、前記負極材料の全重量に対して、前記ポリマー層の重量分率は、0.05wt%~9wt%である。いくつかの実施例において、前記負極材料の全重量に対して、前記ポリマー層の重量分率は、0.05wt%~8wt%である。いくつかの実施例において、前記負極材料の全重量に対して、前記ポリマー層の重量分率は、0.1wt%~5wt%である。いくつかの実施例において、前記負極材料の全重量に対して、前記ポリマー層の重量分率は、1wt%~4wt%である。いくつかの実施例において、前記負極材料の全重量に対して、前記ポリマー層の重量分率は、0.5wt%、1wt%、1.5wt%、2wt%又は3wt%である。
【0041】
いくつかの実施例において、前記ポリマー層の厚さは、1nm~150nmである。いくつかの実施例において、前記ポリマー層の厚さは、5nm~100nmである。いくつかの実施例において、前記ポリマー層の厚さは、15nm~90nmである。いくつかの実施例において、前記ポリマー層の厚さは、20nm~80nmである。いくつかの実施例において、前記ポリマー層の厚さは、5nm、20nm、30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、60nm又は70nmである。
【0042】
いくつかの実施例において、前記負極材料の比表面積は、1m
2
/g~50m
2
/gである。いくつかの実施例において、前記負極材料の比表面積は、5m
2
/g~40m
2
/gである。いくつかの実施例において、前記負極材料の比表面積は、10m
2
/g~30m
2
/gである。いくつかの実施例において、前記負極材料の比表面積は、1m
2
/g、5m
2
/g又は10m
2
/gである。
【0043】
いくつかの実施例において、前記負極材料は、X線回折パターンにおいて、2θが28.0°~29.5°の範囲にある最大強度値をI2とし、2θが20.0°~21.5°の範囲にある最大強度値をI1とし、0<I
2
/I
1
≦1である。
【0044】
いくつかの実施例において、前記負極材料は、X線回折パターンにおいて、2θが28.4°にある最大強度値をI2とし、2θが21.0°にある最大強度値をI1とし、0<I
2
/I
1
≦1である。
【0045】
いくつかの実施例において、前記ケイ素含有粒子のDv50の範囲は、2μm~10μmであり、且つ、前記ケイ素含有粒子の粒子径分布は、0.2≦Dn10/Dv50≦0.6を満たす。
【0046】
いくつかの実施例において、前記ケイ素含有粒子の粒子径分布は、0.3≦Dn10/Dv50≦0.5を満たす。いくつかの実施例において、前記ケイ素含有粒子の粒子径分布は、Dn10/Dv50が0.4又は0.5であることを満たす。
【0047】
いくつかの実施例において、前記ケイ素含有粒子のDv50の範囲は、2μm~10μmである。いくつかの実施例において、前記ケイ素複合物マトリックスのDv50の範囲は、3μm~8μmである。いくつかの実施例において、前記ケイ素複合物マトリックスのDv50の範囲は、4.5μm~7μmである。
【0048】
二、負極材料の調製方法
本発明の実施例は、前記の負極材料の何れかを調製する方法を提供し、前記方法は、
(1)ケイ素酸化物SiOx粉末、炭素材料及び酸化物前駆体MeTnを有機溶媒と脱イオン水との存在下で混合溶液に形成すること、
(2)前記混合溶液を乾燥させて粉末を得ること、及び
(3)前記粉末を250℃~1000℃で0.5時間~25時間焼成して表面に酸化物MeOy層を有するケイ素化合物SiOx粒子を得ること、を含み、
xは、0.5~1.5であり、yは、0.5~3であり、
Meは、Al、Si、Ti、Mn、Cr、V、Co及びZrからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
Tは、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、且つ、
nは、1、2、3又は4である。
【0049】
いくつかの実施例において、前記酸化物前駆体MeTnは、チタン酸イソプロピル、アルミニウムイソプロポキシド又はそれらの組み合わせを含む。
【0050】
いくつかの実施例において、前記炭素材料は、カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、カーボンファイバー、グラフェン、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、酸性フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリアクリル樹脂又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0051】
いくつかの実施例において、焼成温度は、250℃~900℃である。いくつかの実施例において、焼成温度は、300℃~850℃である。いくつかの実施例において、焼成温度は、350℃~650℃である。いくつかの実施例において、焼成温度は、400℃、500℃、600℃又は700℃である。
【0052】
いくつかの実施例において、焼成時間は、1時間~25時間である。いくつかの実施例において、焼成時間は、1時間~19時間である。いくつかの実施例において、焼成時間は、1時間~14時間である。いくつかの実施例において、焼成時間は、1.5時間~5時間である。いくつかの実施例において、焼成時間は、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間又は10時間である。
【0053】
いくつかの実施例において、前記有機溶媒は、エタノール、メタノール、n-ヘキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、ピロリドン、アセトン、トルエン、イソプロパノール又はn-プロパノールからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む。いくつかの実施例において、前記有機溶媒は、エタノールである。
【0054】
いくつかの実施例において、ハロゲンは、F、Cl、Br又はそれらの組み合わせを含む。
【0055】
いくつかの実施例において、焼成は、不活性ガス雰囲気で行う。いくつかの実施例において、前記不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス又はそれらの組み合わせを含む。
【0056】
いくつかの実施例において、乾燥は、噴霧乾燥であり、乾燥温度は、100℃~300℃である。
【0057】
いくつかの実施例において、前記方法は、ポリマー層を被覆するステップをさらに含み、前記ポリマー層を被覆するステップは、
(1)前記表面に酸化物MeOy層を有するケイ素化合物SiOx粒子と炭素材料及びポリマーとを溶媒に1時間~20時間高速分散して懸濁液を得ること、及び
(2)前記懸濁液における溶媒を除去すること、を含む。
【0058】
いくつかの実施例において、前記ポリマーは、ポリフッ化ビニリデンとその誘導体、カルボキシメチルセルロースとその誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウムとその誘導体、ポリビニルピロリドンとその誘導体、ポリアクリル酸とその誘導体、ポリスチレンブタジエンゴム、ポリアクリルアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0059】
いくつかの実施例において、前記炭素材料は、カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、カーボンファイバー、グラフェン又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0060】
いくつかの実施例において、前記溶媒は、水、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、クロロホルム、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、キシレン又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0061】
いくつかの実施例において、前記ケイ素酸化物SiOxは、市販ケイ素酸化物であってもよく、本発明の方法によって調製して得られたケイ素酸化物SiOxであってもよい。本発明の方法によって調製して得られたケイ素酸化物SiOxは、X線回折パターンにおいて、2θが28.0°~29.5°の範囲にある最大強度値をI2とし、2θが20.0°~21.5°の範囲にある最大強度値をI1とし、0<I
2
/I
1
≦1である。いくつかの実施例において、I2/I1は、0.2、0.4又は0.5である。
【0062】
本発明において、0<I
2
/I
1
≦1を満たすケイ素酸化物SiOxの調製方法は、
(1)二酸化ケイ素と金属ケイ素粉末とを1:5~5:1のモル比で混合して混合材料を得ること、
(2)10
-4
kPa~10
-1
kPaの圧力範囲で、1000℃~1600℃の温度範囲内に、前記混合材料を0.5時間~20時間加熱してガスを得ること、
(3)得られた前記ガスを凝縮させて固体を得ること、
(4)前記固体を粉砕して、篩分すること、及び
(5)300℃~1200℃の範囲内に、前記固体を0.5時間~20時間熱処理し、熱処理された前記固体を冷却して、0<I
2
/I
1
≦1を満たすケイ素酸化物SiOxを得ること、を含む。
【0063】
いくつかの実施例において、前記二酸化ケイ素と前記金属ケイ素粉末とのモル比は、1:4~4:1である。いくつかの実施例において、前記二酸化ケイ素と前記金属ケイ素粉末とのモル比は、1:3~3:1である。いくつかの実施例において、前記二酸化ケイ素と前記金属ケイ素粉末とのモル比は、1:2~2:1である。いくつかの実施例において、前記二酸化ケイ素と前記金属ケイ素粉末とのモル比は、1:1、1:1、1.5:1、2.5:1又は3.5:1である。
【0064】
いくつかの実施例において、前記圧力範囲は、10
-4
kPa~10
-1
kPaである。いくつかの実施例において、前記圧力は、1Pa、5Pa、10Pa、20Pa、30Pa、40Pa、50Pa、60Pa、70Pa、80Pa、90Pa又は100Paである。
【0065】
いくつかの実施例において、前記加熱温度は、1000℃~1600℃である。いくつかの実施例において、前記加熱温度は、1000℃~1500℃である。いくつかの実施例において、前記加熱温度は、1200℃、1300℃、1350℃又は1400℃である。
【0066】
いくつかの実施例において、前記加熱時間は、0.5時間~20時間である。いくつかの実施例において、前記加熱時間は、5時間~15時間である。いくつかの実施例において、前記加熱時間は、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間又は18時間である。
【0067】
いくつかの実施例において、混合は、ボールミル、V型混合機、三次元混合機、気流混合機又は水平ミキサーで行う。
【0068】
いくつかの実施例において、加熱和熱処理は、不活性ガス雰囲気で行う。いくつかの実施例において、前記不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス又はそれらの組み合わせを含む。
【0069】
いくつかの実施例において、前記方法は、篩分した後に、熱処理するステップをさらに含む。
【0070】
いくつかの実施例において、前記熱処理の温度は、300℃~1600℃である。いくつかの実施例において、前記熱処理の温度は、300℃~1200℃である。いくつかの実施例において、前記熱処理の温度は、600℃、800℃、1000℃又は1300℃である。
【0071】
いくつかの実施例において、前記熱処理の時間は、1時間~24時間である。いくつかの実施例において、前記熱処理の時間は、2時間~12時間である。いくつかの実施例において、前記熱処理の時間は、5時間、10時間又は15時間である。
【0072】
いくつかの実施例において、前記負極材料の調製方法は、表面に酸化物MeOy層又はポリマー層を有する前記ケイ素化合物SiOx粒子を篩分及び分級するステップをさらに含む。篩分及び分級を経った後、得られた表面に酸化物MeOy層又はポリマー層を有するケイ素化合物SiOx粒子のDv50の範囲は、2μm~10μmであり、また、その粒子径分布は、0.2≦Dn10/Dv50≦0.6を満たす。
【0073】
図1は、本発明の一つの実施例に係る負極活性材料の構造模式図を示す。ここで、内層1は、ケイ素複合物マトリックスであり、外層2は、炭素材料を含む酸化物MeO
y層である。前記ケイ素複合物マトリックスを被覆する酸化物MeO
y層は、HF捕捉剤として機能することができる。前記酸化物が電解液におけるHFと反応してサイクル中の電解液におけるHFの含有量を低減させ、HFのケイ素材料表面へのエッチングを低減させて、材料のサイクル特性をさらに向上させることができる。酸化物MeO
y層に炭素材料をドープすることは、初回充放電過程においてリチウムを吸蔵した後にリチウムイオン導体を形成するのに有利であり、イオンの伝導を達成するのは有利である。なお、酸化物MeO
y層に一定量の炭素をドープすることによって、負極活性材料の導電性を高めることができる。
【0074】
図2は、本発明の他の実施例に係る負極活性材料の構造模式図を示す。ここで、内層1は、ケイ素複合物マトリックスであり、中間層2は、炭素材料を含む酸化物MeO
y層であり、外層3は、炭素材料を含むポリマー層である。本発明の負極活性材料は、MeO
y層を有さず、ケイ素複合物マトリックス及びポリマー層のみを有してもよい。即ち、本発明のポリマー層は、直接的にケイ素複合物マトリックスの表面に被覆されてもよい。カーボンナノチューブ(CNT)を含有するポリマー層が負極活性材料の表面に被覆されることは、CNTをポリマーで負極活性材料の表面に収まることができるため、CNTの負極活性材料の表面での界面安定性を向上させて、そのサイクル特性を向上させるのに有利である。
【0075】
図3は、本発明の実施例22に係る負極活性材料のX線回折(XRD)パターンを示す。
図3から分かるように、この負極活性材料は、X線回折パターンにおいて、2θが
28.0°~29.0°の範囲にある最大強度値をI
2とし、2θが
20.5°~21.5°の範囲にある最大強度値をI
1とし、
0<I
2
/I
1
≦1である。I
2/I
1の数値の大きさは、材料が不均化による影響を受ける程度を反映する。I
2/I
1の数値が大きいほど、負極活性材料の内部のケイ素ナノ粒子のサイズが大きいである。I
2/I
1の数値が1より大きいであると、負極活性材料は、リチウムを吸蔵する過程において局所的に応力が急激に増加し、サイクル過程において、負極活性材料の構造の劣化につながる。また、ナノ結晶分布が生じるため、粒界拡散の能力は、イオン拡散過程において、影響を受ける。本発明者は、I
2/I
1の数値が
0<I
2
/I
1
≦1を満たすと、負極活性材料が良好なサイクル特性を備え、また、それにより調製したリチウムイオン電池が良好な膨張防止特性を備えることを見出した。
【0076】
図4は、本発明の比較例2に係る負極活性材料のX線回折(XRD)パターンを示す。
図4から分かるように、比較例2の負極活性材料のI
2/I
1の数値は、明らかに1より大きいである。実施例22に係る負極活性材料と比べて、比較例2に係る負極活性材料のサイクル特性が劣り、それにより調製したリチウムイオン電池の膨張率が高く、且つレート特性が劣る。
【0077】
図5は、実施例25に係る負極活性材料の体積基準の粒度分布曲線を示す。
図5から分かるように、実施例25に係る負極活性材料粒子の粒度分布は、比較的に均一で狭いである。実施例25に係る負極活性材料により調製したリチウムイオン電池は、良好なサイクル特性及び膨張防止特性を示す。
【0078】
図6は、比較例3に係る負極活性材料の体積基準の粒度分布曲線を示す。
図6から分かるように、比較例3に係る負極活性材料には、一定量の小さな粒子を存在するため、サイクル特性が劣る。小さな粒子の存在は、電解液の粒子へのエッチングを加速して、サイクル特性の悪化を加速する。一方、小さな粒子が電解液によって素早くエッチングされ、その表面に大量の副生成物が生じるため、実施例25に係る負極活性材料により調製したリチウムイオン電池の膨張防止特性と比べて、それにより調製したリチウムイオン電池の膨張防止特性が劣る。
【0079】
図7及び
図8は、それぞれ、実施例25及び比較例3に係る負極活性材料の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
図7及び
図8から、粒子のサイズ分布を直接に観察することができる。
図8は、比較例3に係る負極活性材料に一定量の小さな粒子を存在することを示す。
【0080】
三、負極
本発明の実施例は、負極を提供する。前記負極は、集電体とこの集電体上に位置する負極活性材料層とを含む。前記負極活性材料層は、本発明の実施例に係る負極材料を含む。
【0081】
いくつかの実施例において、負極活性材料層は、粘着剤を含む。いくつかの実施例において、粘着剤は、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシド含有ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル(エステル)化スチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂又はナイロンを含むが、これらに限定されない。
【0082】
いくつかの実施例において、負極活性材料層は、導電材を含む。いくつかの実施例において、導電材は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー、金属粉末、金属繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀又はポリフェニレン誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0083】
いくつかの実施例において、集電体は、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、発泡ニッケル、発泡銅又は導電性金属で被覆されたポリマー基板を含むが、これらに限定されない。
【0084】
いくつかの実施例において、負極は、溶媒に活性材料、導電材及び粘着剤を混合し、活性材料組成物を調製して、この活性材料組成物を集電体上に塗布することにより得られる。
【0085】
いくつかの実施例において、溶媒は、N-メチルピロリドンを含むが、これらに限定されない。
【0086】
四、正極
本発明の実施例に用いられる正極の材料、構成及びその製造方法は、任意の従来技術に開示された技術を含む。いくつかの実施例において、正極は、米国特許出願US9812739Bに記載されている正極であり、この特許出願の明細書全体が引用される形で本発明に組み込まれる。
【0087】
いくつかの実施例において、正極は、集電体とこの集電体上に位置する正極活性材料層とを含む。
【0088】
いくつかの実施例において、正極活性材料は、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、リチウムニッケルコバルトマンガン(NCM)三元材料、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)又はマンガン酸リチウム(LiMn2O4)を含むが、これらに限定されない。
【0089】
いくつかの実施例において、正極活性材料層は、粘着剤をさらに含み、また、導電材を任意に含む。粘着剤は、正極活性材料粒子同士の結着性を向上させるとともに、正極活性材料と集電体との結着性を向上させる。
【0090】
いくつかの実施例において、粘着剤は、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシド含有ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル(エステル)化スチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂又はナイロンなどを含むが、これらに限定されない。
【0091】
いくつかの実施例において、導電材は、炭素による材料、金属による材料、導電性ポリマー及びそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、炭素による材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施例において、金属による材料は、金属粉末、金属繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、及び銀からなる群より選択される。いくつかの実施例において、導電性ポリマーは、ポリフェニレン誘導体である。
【0092】
いくつかの実施例において、集電体は、アルミニウムを含むが、これらに限定されない。
【0093】
正極は、本分野の公知の調製方法によって調製することができる。例えば、正極は、溶媒に活性材料、導電材及び粘着剤を混合し、活性材料組成物を調製して、この活性材料組成物を集電体上に塗布することにより得られる。いくつかの実施例において、溶媒は、N-メチルピロリドンを含むが、これらに限定されない。
【0094】
五、電解液
本発明の実施例に用いられる電解液は、従来技術で既知の電解液であってもよい。
【0095】
いくつかの実施例において、前記電解液は、有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含む。本発明に係る電解液における有機溶媒は、従来技術で既知の任意の、電解液の溶媒として用いられる有機溶媒であってもよい。本発明に係る電解液に用いられる電解質は、特に限定されず、従来技術で既知の任意の電解質であってもよい。本発明に係る電解液の添加剤は、従来技術で既知の任意の、電解液添加剤として使用できる添加剤であってもよい。
【0096】
いくつかの実施例において、前記有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、炭酸プロピレン又はプロピオン酸エチルを含むが、これらに限定されない。
【0097】
いくつかの実施例において、前記リチウム塩は、有機リチウム塩及び無機リチウム塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む。
【0098】
いくつかの実施例において、前記リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムLiN(CF3SO2)2(LiTFSI)、ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウムLi(N(SO2F)2)(LiFSI)、リチウムビスオキサラトボラートLiB(C2O4)2(LiBOB)又はリチウムジフルオロオキサラトボラートLiBF2(C2O4)(LiDFOB)を含むが、これらに限定されない。
【0099】
いくつかの実施例において、前記電解液中のリチウム塩の濃度は、0.5mol/L~3mol/L、0.5mol/L~2mol/L又は0.8mol/L~1.5mol/Lである。
【0100】
六、セパレータ
いくつかの実施例において、正極と負極との間には、短絡を防止するためにセパレータが設けられる。本発明の実施例に用いられるセパレータの材料及び形状は、特に制限されなく、従来技術に開示された任意のものであってもよい。いくつかの実施例において、セパレータは、本発明の電解液に対して安定である材料から形成されたポリマー又は無機物などを含む。
【0101】
例えば、セパレータは、基材層及び表面処理層を含んでもよい。基材層は、多孔質構造を有する不織布、膜又は複合膜であり、基材層の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート及びポリイミドからなる群より選ばれる少なくとも一種である。具体的には、ポリプロピレン多孔質膜、ポリエチレン多孔質膜、ポリプロピレン不織布、ポリエチレン不織布又はポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン多孔質複合膜を選択して使用してもよい。
【0102】
基材層の少なくとも一つの表面に表面処理層が設けられており、表面処理層は、ポリマー層又は無機物層であってもよく、ポリマーと無機物とを混合してなる層であってもよい。
【0103】
無機物層は、無機粒子とバインダーとを含み、無機粒子は、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、酸化チタン、二酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム及び硫酸バリウムからなる群より選ばれる一種或いは複数種の組み合わせである。バインダーは、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン及びポリヘキサフルオロプロピレンからなる群より選ばれる一種或いは複数種の組み合わせである。
【0104】
ポリマー層は、ポリマーを含み、ポリマーの材料は、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン、及びポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)からなる群より選ばれる少なくとも一種である。
【0105】
七、電気化学装置
本発明の実施例は、電気化学装置を提供し、前記電気化学装置は、電気化学反応が発生する任意の装置を含む。
【0106】
いくつかの実施例において、本発明的電気化学装置は、金属イオンを吸蔵や放出可能な正極活物質を有する正極、本発明の実施例に係る負極、電解液、及び正極と負極との間に設けられるセパレータを含む。
【0107】
いくつかの実施例において、本発明の電気化学装置は、すべての種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池又はコンデンサを含むが、これらに限定されない。
【0108】
いくつかの実施例において、前記電気化学装置は、リチウム二次電池である。
【0109】
いくつかの実施例において、リチウム二次電池は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池又はリチウムイオンポリマー二次電池を含むが、これらに限定されない。
【0110】
八、電子装置
本発明の電子装置は、本発明の実施例に係る電気化学装置を用いる任意の装置であってもよい。
【0111】
いくつかの実施例において、前記電子装置は、ノートパソコン、ペン入力型コンピューター、モバイルコンピューター、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯型ファクシミリ、携帯型コピー機、携帯型プリンター、ステレオヘッドセット、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、携帯型CDプレーヤー、ミニCD、トランシーバー、電子ノートブック、計算機、メモリーカード、ポータブルテープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、補助自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、閃光灯、カメラ、大型家庭用ストレージバッテリー又はリチウムイオンコンデンサーなどを含むが、これらに限定されない。
【0112】
以下では、リチウムイオン電池を例として挙げ、具体的な実施例を参照して、リチウムイオン電池の調製について説明する。当業者は、本発明に記載される調製方法が単なる例示であり、他の任意の好適な調製方法が本発明の範囲にあることを理解すべきである。
【0113】
実施例
以下では、本発明に係るリチウムイオン電池の実施例及び比較例について説明して、特性評価を行う。
【0114】
一、負極活性材料の特性評価方法
1、負極活性材料粉末の性質測定方法
(1)粉末粒子のミクロ形態の観察:走査型電子顕微鏡を利用して粉末のミクロ形態観察を行い、材料表面の被覆状況を確認する。選られた測定機器は、OXFORD EDS(X-max-20mm2)であり、加速電圧が15KVであり、焦点距離を調節し、50Kの観察倍率から高倍率観察を行い、500~2000の低倍率で粒子の凝集を主に観察した。
【0115】
(2)比表面積の測定:一定の低温で、異なる相対圧力での固体表面へガスの吸着量を測定した後、ブルナウアー-エメット-テラー吸着原理及びその式(BET式)に基づいて、試料の単分子層吸着量を求めて、固体の比表面積を計算した。
約1.5g~3.5gの粉末サンプルを量って、TriStar II 3020の測定用サンプル管に入れ、200℃で120分間脱気して測定を行った。
【0116】
(3)粒度の測定:50mlのクリーンビーカーに0.02gの粉末サンプルを加え、20mlの脱イオン水を加え、さらに、1%の界面活性剤を数滴滴下し、粉末を完全に水に分散させ、120Wの超音波クリーナーで5分間の超音波を受け、MasterSizer 2000を利用して粒度分布を測定した。
【0117】
(4)炭素含有量の測定:サンプルを酸素の豊富な条件下で高周波炉によって高温加熱して、燃焼させて、炭素と硫黄をそれぞれ二酸化炭素と二酸化硫黄に酸化させ、このガスを処理した後、対応する吸収プールに入り、対応する赤外線輻射を吸収して検出器によって対応するシグナルに変換された。このシグナルをコンピューターによって採取し、直線性校正を行った後、二酸化炭素及び二酸化硫黄の濃度と正比例する数値に変換され、そして、分析過程の全体の数値を累加して、分析が完了した後、コンピューターを利用して累積値を重量値で割算し、校正係数をかけて、ブランクを差し引いて、サンプルでの炭素、硫黄の含有量分率を得た。高周波赤外線炭素硫黄分析装置(上海徳凱HCS-140)を利用してサンプルの測定を行った。
【0118】
(5)XRDの測定:1.0g~2.0gのサンプルを量ってガラスサンプルホルダーの溝に入れ、ガラスシートでしっかり圧縮して平らにした。X線回折装置(ブルカー、D8)を用いてJIS K 0131-1996『X線回折分析通則』に従って測定し、測定電圧を40kV、電流を30mA、走査角度範囲を10~85°、走査ステップ幅を0.0167°、各走査ステップ幅に設置される時間を0.24sに設定して、XRD回折パターンを得た。図面から、2θが28.4°にある最大強度値I2、2θが21.0°にある最大強度値I1を得て、I2/I1の比を算出した。
【0119】
(6)金属元素の測定:一定量のサンプルを量り、一定量の濃硝酸を加え、マイクロ波分解を行い、溶液を得て、得られた溶液とろ過残留物とを数回洗浄し、一定の体積に希釈し、ICP-OESでその中の金属元素のプラズマ強度を測定し、測定された金属の標準曲線に従って溶液中の金属含有量を算出して、材料に含まれる金属元素の量を算出した。
【0120】
以下の表において、各物質の重量分率は、負極活性材料の全重量に対して算出されるものである。
【0121】
二、負極活性材料の電気特性測定方法
1、ボタン型電池の測定方法
乾燥したアルゴンガス雰囲気で、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)(重量比1:1:1)を混合してなる溶媒に、LiPF6(濃度が1.15mol/Lである)を加え、均一に混合した後、7.5wt%のフルオロエチレンカルボナート(FEC)をさらに加え、均一に混合して、電解液を得た。
【0122】
実施例及び比較例に得られた負極活性材料、導電性カーボンブラック及びバインダーであるPAA(変性ポリアクリル酸,PAA)を80:10:10との重量比で脱イオン水に加え、攪拌して、スラリーを形成し、ドクターブレードを利用して、厚さが100μmであるコーティングを形成し、真空乾燥ボックスに85℃で12時間乾燥させ、乾燥環境で打ち抜き機を使用して、直径が1cmであるウェーハを切り出し、グローブボックスで、金属リチウムシートを対電極とし、セパレータとしてceglard複合膜を選び、電解液を加えてボタン型電池に組み立てた。藍電(LAND)シリーズ電池測定システムで電池に対して充放電測定を行い、その充放電容量を測定し、その初回クーロン効率が充電容量と放電容量との比であった。
【0123】
2、全電池の測定
(1)リチウムイオン電池の調製
正極の調製
LiCoO2、導電性カーボンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)を95%:2.5%:2.5%の重量比でN-メチルピロリドン溶媒系に十分に攪拌し、均一に混合して、正極スラリーを得た。得られた正極スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔の上に塗布し、乾燥させ、冷間プレスして、正極を得た。
【0124】
負極の調製
黒鉛、実施例及び比較例に調製された負極活性材料、導電剤(導電性カーボンブラック,Super P(r))及びバインダーであるPAAを70%:15%:5%:10%の重量比で混合し、適量の水を加え、固形分濃度55wt%~70wt%程度で混練した。適量の水を加え、スラリーの粘度が4000Pa・s~6000Pa・sであるように調整して、負極スラリーを得た。
得られた負極スラリーを負極集電体である銅箔の上に塗布し、乾燥させ、冷間プレスして、負極を得た。
【0125】
電解液の調製
乾燥したアルゴンガス雰囲気で、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)(重量比1:1:1)を混合してなる溶媒に、LiPF6(濃度が1.15mol/Lである)を加え、均一に混合した後、7.5wt%のフルオロエチレンカルボナート(FEC)をさらに加え、均一に混合して、電解液を得た。
【0126】
セパレータ的調製
PE多孔質ポリマーフィルムをセパレータとした。
【0127】
リチウムイオン電池の調製
セパレータが正極と負極との間に介在して隔離の役割を果たすように、正極、セパレータ、負極を順に積層し、巻回して、ベアセルを得た。ベアセルを包材外装に置き、電解液を注入し、封止した。化成、脱気、整形などのプロセスによりリチウムイオン電池を得た。
【0128】
(2)サイクル特性の測定
測定温度が25℃/45℃であり、0.7Cで定電流法にて4.4Vまで充電し、定電圧法にて0.025Cまで充電し、5分間静置してから、0.5Cで3.0Vまで放電した。このステップで取得された容量を初期容量とし、0.7C充電/0.5C放電をしてサイクル測定を行い、各ステップの容量と初期容量との比により、容量減衰曲線を取得した。25℃で容量維持率が90%になるまでのサイクル回数を電池の室温サイクル特性をとし、45℃で容量維持率が80%になるまでのサイクル回数を電池の高温サイクル特性とし、前記二つ状況でのサイクル回数を比較することにより、材料のサイクル特性を比較した。
【0129】
(3)放電レートの測定
25℃で、0.2Cにて3.0Vまで放電し、5分間静置し、0.5Cにて4.45Vまで充電し、定電圧法にて0.05Cまで充電してから、5分間静置し、放電レートを調節し、それぞれ0.2C、0.5C、1C、1.5C、2.0Cで、放電測定を行い、それぞれ放電容量を取得し、各レートで取得された容量と0.2Cで取得された容量とを比較し、2C及び0.2Cでの比を比較するによりレート特性を比較した。
【0130】
(4)電池の満充電膨張率の測定
スパイラルマイクロメータを用いて半分充電されたとき(50%充電状態(SOC))の新しい電池の厚さを測定し、400サイクルをした後、電池が満充電(100%SOC)となる状態で、スパイラルマイクロメータを用いてこのときの電池の厚さをさらに測定し、それを初期の半分充電されたとき(50%SOC)の新しい電池の厚さと比較して、このときの満充電(100%SOC)電池膨張率を取得した。
【0131】
三、負極活性材料の調製
1、表面に酸化物MeOy層を有する負極活性材料の調製
以下の方法で実施例1~実施例9に係る負極活性材料を調製した。
(1)市販ケイ素酸化物SiOx(0.5<x<1.5,Dv50=5μm)、炭素前駆体及び酸化物前駆体であるMeTnを150mLのエタノール及び1.47mLの脱イオン水に加え、均一な懸濁液を形成するまで4時間攪拌した。
(2)前記懸濁液を噴霧乾燥(入口温度220℃、出口温度110℃)させて粉末を得た。
(3)前記粉末を200℃~1000℃で0.5~25時間焼成して表面に酸化物MeOy層を有するケイ素化合物SiOx粒子を得た。
【0132】
表1は、実施例1~実施例9に係る負極活性材料を調製するプロセス条件を示す。
【0133】
【0134】
表2及び表3は、実施例1~実施例9に係る負極活性材料及び比較例1(前記市販ケイ素酸化物SiOx)の特性測定結果を示す。
【0135】
【0136】
【0137】
比較例1及び実施例1~実施例9の測定結果から分かるように、ケイ素酸化物SiOxに酸化物MeOy層を被覆することにより、リチウムイオン電池のサイクル特性及びレート特性を著しく向上させることができ、しかも、初回效率及び電池膨張率が大きく変化しなかった。
【0138】
2、表面にポリマー層を有する負極活性材料の調製
以下の方法で実施例10~実施例14及び実施例17~実施例18に係る負極活性材料を調製した。
(1)炭素材料(単層カーボンナノチューブ(SCNT)及び/又は多層カーボンナノチューブ(MCNT))とポリマーとを水に12時間高速分散して、均一に混合されたスラリーを得た。
(2)実施例1に係る負極活性材料を(1)で均一に混合されたスラリーに入れ、4時間攪拌して、均一に混合された分散液を得た。
(3)前記分散液を噴霧乾燥(入口温度200℃、出口温度110℃)させて粉末を得た。
【0139】
実施例15及び実施例16に係る負極活性材料の調製方法は、実施例15及び実施例16の第一ステップの溶媒がN-ビニルピロリドンであることを除いて、前記方法と同様であった。
【0140】
表4は、実施例10~実施例18に係る負極活性材料の組成を示す。
【0141】
【0142】
表4での英語略語及びその名称は、以下の通りである。
SCNT:単層カーボンナノチューブ
MCNT:多層カーボンナノチューブ
CMC-Na:カルボキシメチルセルロースナトリウム
PVP:ポリビニルピロリドン
PVDF:ポリフッ化ビニリデン
PAANa:ポリアクリル酸ナトリウム
【0143】
表5は、実施例1及び実施例10~実施例18に係る負極活性材料の特性測定結果を示す。
【0144】
【0145】
実施例1及び実施例10~実施例18の測定結果から分かるように、実施例1に係る負極活性材料を基礎として、一定量のCNTを含有するポリマー層を被覆することにより、リチウムイオン電池のサイクル特性及びレート特性を著しく向上させることができる。
【0146】
3、以下の方法で実施例19~実施例21及び比較例2に係る負極活性材料を調製した。
(1)二酸化ケイ素及び金属ケイ素粉末を1:1のモル比でそれぞれ機械的乾式混合及びボールミル混合により混合して混合材料を得た。
(2)Ar2雰囲気、10
-3
kPa~10
-1
kPa圧力範囲、1000℃~1600℃の温度範囲内で、前記混合材料を0.5時間~20時間加熱してガスを得た。
(3)得られた前記ガスを凝縮させて固体を得た。
(4)前記固体を粉砕して、篩分した。
(5)窒素ガス雰囲気、300℃~1200℃の範囲内で、前記固体を0.5時間~20時間熱処理し、熱処理された前記固体を冷却して分級処理を行った。
(6)分級処理を行った後に得られた固体の表面に炭素材料を含有する酸化物MeOy層を被覆し、具体的な被覆ステップは、前記した表面に酸化物MeOy層を有する負極活性材料の調製方法を参照した。
(7)ステップ(6)で得られた固体をさらに炭素材料を含有するポリマー層を被覆し、具体的な被覆ステップは、前記した表面にポリマー層を有する負極活性材料を調製するステップを参照した。
【0147】
表6は、ステップ(1)~ステップ(5)での具体的なプロセスパラメータを示し、表7は、ステップ(6)での具体的なプロセスパラメータを示す。
【0148】
【0149】
【0150】
表8は、実施例19~実施例21及び比較例2に係る負極活性材料の組成を示す。
【0151】
【0152】
表9は、実施例19~実施例21及び比較例2に係る負極活性材料により調製したリチウムイオン電池の特性パラメータを示す。
【0153】
【0154】
実施例19~実施例21及び比較例2の測定結果から分かるように、同様に金属酸化物被覆層及びポリマー被覆層を存在する場合、0<I2/I1≦1を満たすケイ素酸化物により調製したリチウムイオン電池のサイクル特性及びレート特性は、1<I2/I1を満たすケイ素酸化物により調製したリチウムイオン電池のサイクル特性及びレート特性より良い。
【0155】
4、以下の方法で実施例22~実施例24及び比較例3に係る負極活性材料を調製した。
実施例20に係る負極活性材料に対して篩分及び分級処理を行い、実施例22~実施例24及び比較例3に係る負極活性材料を得た。
【0156】
表10は、実施例22~実施例24及び比較例3に係る負極活性材料の組成を示す。
【0157】
【0158】
表11は、実施例22~実施例24及び比較例3に係る負極活性材料により調製したリチウムイオン電池の特性測定結果を示す。
【0159】
【0160】
実施例22~実施例24及び比較例3の測定結果から分かるように、同様に金属酸化物被覆層及びポリマー被覆層を存在し且つケイ素酸化物が0<I2/I1≦1という条件を満たす場合、0.3≦Dn10/Dv50≦0.6を満たすケイ素酸化物により調製したリチウムイオン電池のサイクル特性及びレート特性は、Dn10/Dv50<0.3を満たすケイ素酸化物により調製したリチウムイオン電池のサイクル特性及びレート特性より良い。
【0161】
5、以下の方法で実施例25~実施例27及び比較例4に係る負極活性材料を調製した。
実施例25~実施例27及び比較例4に係る負極活性材料の調製方法は、実施例25~実施例27及び比較例4の調製方法がステップ(7)を含まないことを除いて、それぞれ実施例19~実施例21及び比較例2の調製方法と同様であった。即ち、実施例25~実施例27及び比較例4に係る負極活性材料は、金属酸化物被覆層のみを備え、ポリマー被覆層を備えない。
【0162】
表12は、実施例25~実施例27及び比較例4に係る負極活性材料の組成を示す。
【0163】
【0164】
表13は、実施例25~実施例27及び比較例4に係る負極活性材料の特性測定結果を示す。
【0165】
【0166】
実施例25~実施例27及び比較例4の測定結果から分かるように、同様に金属酸化物被覆層を存在する場合、0<I2/I1≦1を満たすケイ素酸化物により調製したリチウムイオン電池のサイクル特性及びレート特性は、1<I2/I1を満たすケイ素酸化物により調製したリチウムイオン電池のサイクル特性及びレート特性より良い。
【0167】
明細書全体では、「いくつかの実施例」、「実施例の一部」、「一つの実施例」、「別の一例」、「例」、「具体例」又は「例の一部」による引用は、本発明の少なくとも一つの実施例又は例は、当該実施例又は例に記載された特定の特徴、構造、材料又は特性を含むことを意味する。従って、明細書全体の各箇所に記載された、例えば「いくつかの実施例において」、「実施例において」、「一つの実施例において」、「別の例において」、「一つの例において」、「特定の例において」又は「例」は、必ずしも本発明での同じ実施例又は例を引用するわけではない。また、本明細書での特定の特徴、構造、材料、又は特性は、一つ又は複数の実施例又は例において、いかなる好適な方法で組み合わせることができる。
【0168】
例示的な実施例が開示及び説明されたが、当業者は、前記した実施例が本発明を限定するものとして解釈されないこと、かつ、本発明の技術思想、原理、及び範囲から逸脱しない場合に実施例への変更、置換及び変更が可能であること、を理解すべきである。