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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】器具ホルダー
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/50 20160101AFI20230914BHJP
   A61B 17/34 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
A61B90/50
A61B17/34
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022101827
(22)【出願日】2022-06-24
(62)【分割の表示】P 2019504947の分割
【原出願日】2017-07-28
(65)【公開番号】P2022126816
(43)【公開日】2022-08-30
【審査請求日】2022-07-04
(31)【優先権主張番号】16181765.5
(32)【優先日】2016-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519027291
【氏名又は名称】タイズ,トム
(73)【特許権者】
【識別番号】519027305
【氏名又は名称】タイズ,アンドレ
(73)【特許権者】
【識別番号】519027316
【氏名又は名称】タイズ,アンディ
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 緑
(72)【発明者】
【氏名】タイズ,トム
(72)【発明者】
【氏名】タイズ,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】タイズ,アンディ
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-534080(JP,A)
【文献】特表2013-517068(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0091066(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/50
A61B 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔運動中心(8)の周りに移動する外部物体(300)と組み合わせられる必要があるホルダーであって、
ベアリングを有する本体(14)と、
前記外部物体(300)の前記遠隔運動中心(8)を起点とする軸(1)と一致するように配向され、長手軸および前記軸(1)周りに回転可能なように前記ベアリングを有する本体(14)に収容されている第1の部材(100)と、
一方の端部において、旋回可能なコネクタ(2)によって前記第1の部材(100)に接続され、他方の端部において、前記外部物体(300)を保持するカップリング手段(5)を有する、第2の部材(200)と、を備え、
前記第2の部材(200)は、一端が前記旋回可能なコネクタ(2)によって前記第1の部材(100)に接続され、他端が前記カップリング手段(5)によって外部物体(300)に接続されるように構成された単一部品からなる部分を有し、
前記第1の部材(100)は、該第1の部材(100)の前記軸(1)に沿った前記旋回可能なコネクタ(2)の直線変位が可能なように構成されていると共に、前記軸(1)周りで前記第1の部材(100)が回転可能なように構成されている、ホルダー。
【請求項2】
前記第1の部材(100)は、ガイド(11)をさらに備え、前記第1の部材(100)の前記軸(1)に沿った前記旋回可能なコネクタ(2)の前記直線変位は、前記旋回可能なコネクタ(2)が前記第1の部材(100)の前記ガイド(11)内でスライド可能であることで実現される、請求項1に記載のホルダー。
【請求項3】
前記第1の部材(100)は、前記第1の部材(100)の前記軸(1)に沿った前記旋回可能なコネクタ(2)の直線変位および周方向変位を可能にするように構成されている、請求項1または請求項2に記載のホルダー。
【請求項4】
前記第1の部材(100)のガイド(11)は、前記旋回可能なコネクタ(2)の凹状湾曲変位(4)を可能にする凹状湾曲を含み、前記凹状湾曲の変曲点は、前記軸(1)から離れる方に配向されている、請求項2に記載のホルダー。
【請求項5】
前記第2の部材(200)は、更なるガイドコネクタ(13)を備える、請求項1に記載のホルダー。
【請求項6】
前記第1の部材(100)は、凹状湾曲ガイド(12)をさらに備え、
更なるガイドコネクタ(13)の前記軸(1)に沿った凹状湾曲変位(4)は、前記更なるガイドコネクタ(13)が前記第1の部材(100)の前記凹状湾曲ガイド(12)内でスライド可能であることで実現される、請求項5に記載のホルダー。
【請求項7】
前記遠隔運動中心(8)の周りでの前記外部物体(300)の回転は、前記第1の部材(100)の前記旋回可能なコネクタ(2)の前記直線変位と、更なるガイドコネクタ(13)の凹状湾曲変位(4)とによってもたらされる、請求項6に記載のホルダー。
【請求項8】
前記カップリング手段(5)は、フレキシブルである、請求項1に記載のホルダー。
【請求項9】
前記カップリング手段は、少なくとも2つの平面における回転を許容する、請求項8に記載のホルダー。
【請求項10】
前記カップリング手段(5)は、前記第2の部材(200)によって、前記軸(1)に対して横方向に変位される、請求項9に記載のホルダー。
【請求項11】
前記カップリング手段(5)は、交換可能である、請求項8~10のいずれか1項に記載のホルダー。
【請求項12】
前記外部物体(300)は、医療器具又は医療ツール(例えば、カニューレ、トロカール)である、請求項1に記載のホルダー。
【請求項13】
前記第1の部材(100)及び/又は前記第2の部材(200)をロックする手段が備え付けられている、請求項1に記載のホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部物体が遠隔運動中心の周りに移動するように外部物体と組み合わせられる必要があるホルダーに関する。外部物体は、好ましくは、カニューレ又はトロカール等の医療器具であり、したがって、遠隔運動中心は、患者の腹部における切開部である。ホルダーは、ビデオ補助胸腔鏡手術、腹腔鏡手術及び関節鏡手術を含む内視鏡手術を実施するために便利な別の物体、特定の一実施形態ではカメラを支持するために使用することができる。また、ホルダーには、XYZ座標に従う長手方向運動及び回転運動の両方を発生させる手段が備え付けられている。本発明のホルダーは、ほんの僅かなベッドサイド空間しか占めないので、ホルダーに取り付けられた器具の機能上の作業領域を犠牲にすることなく、小さな領域内での作業に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
標準的な腹腔鏡腹部手術では、腹部に切開部が形成された後、患者の腹部に、カニューレを通して小さな(略1/2インチの)切開部を介してガスが注入され、腹腔鏡手術器具の侵入ポートが設けられる。腹腔鏡手術器具には、一般に、手術野を観察するための腹腔鏡と、クランプ、グラスパー、はさみ、ステープラー及び針ホルダー等の作業ツールとが含まれる。作業ツールは、従来の(開腹)手術に使用されているものと同様であるが、ただし、作業ツールは、多くの場合に細長く、一方の端部に、手術野において作用するツールを有し、他方の端部に、外科医によって操作されるハンドルとを有する。手術手順を実施するために、外科医は、器具をカニューレに通し、腹部内で、器具をカニューレに通して内方及び外方に滑らせたり、器具をカニューレの中で回転させたり、腹壁の筋肉における切開部によって略規定される回転中心の周りに器具を「てこ運動(levering)」(旋回)させたりすることによって、器具を操作する。この点は、一般に遠隔運動中心(RCM)と称される。手術時、器具の正確な位置制御を維持するために、外科医は、切開部と一致するRCMの周りに旋回するように器具を手で拘束する必要がある場合がある。旋回点を手で支持することは、外科医が腹腔鏡又は他の重い器具を使用する場合に特に重要である。器具を固定された向きに支持するために機械的なクランプ装置が使用されるが、これらの装置は、器具をRCMの周りに位置決めするための遠隔回転中心を提供しない。
【0003】
したがって、遠隔回転中心を提供するとともに最小侵襲手術において外科医を支援するために、種々のアプローチに依拠して様々なRCMポジショナーが開発されている。器具をRCMの周りにガイドすることに関する現在のアプローチは、用いられる運動学的機構に従って分類することができる。最もよく知られている機構のうちの1つは、daVinci(商標)手術システムのRCMアーム(特許文献1)において用いられている機構であり、これは、手術器具を固定された回転中心の周りに移動させるように拘束する、二重の平行四辺形に依拠する。この二重の平行四辺形機構の主な不都合点は、患者の上方に大きな作業空間を必要とすることである。
【0004】
他のシステムは、円形トラッキングアーク(レンセラー工科大学のEndoBot等)、固定アイソセンター(アルベール・ボニオ研究所(InstitutAlbert Bonniot)のCLEM等)、球面リンク機構(ワシントン大学のRAVEN等)、非常に複雑なギア列(ネブラスカ大学リンカーン校のCoBRASurge等)、同期ベルトシステム(天津大学のMicroHand A等)、又は、遠隔運動中心から固定距離を置いてグリッパーに旋回可能に接続される1組の平行リンク機構(特許文献2に記載されているVESALIUSシステム等)を利用する。非特許文献1の総説論文に記載されているように、平坦な遠隔運動中心装置に基づく別のロボットシステムが、特許文献3に記載されている。
【0005】
本発明の目的は、固定された遠隔運動中心を必ずしも有する必要はないが、特にビデオ補助胸腔鏡手術、腹腔鏡手術及び関節鏡手術時、その中でも特に腹腔鏡手術時に、外部物体がRCM(固定又は非固定)の周りに移動するように外部物体(例えば、カニューレ、トロカール等)と組み合わせる必要がある、器具ホルダーを提供することである。特許文献4は、医療、軍事及び宇宙用途を有するロボティクスのインテリジェントな自動カメラ制御を記載しているが、これには、カメラの完全な空間的位置決めを可能にするために上記部材間の多数のカップリングのタイプを有する複数の部材が必要とされている。この特許文献4とは大きく異なり、本器具ホルダーは、外部物体がRCMの周りに移動することを可能にするためにたった2つのベース部材を備える、はるかに単純な設計である。特許文献4に記載されているシステムと比較して、本発明は、第1の部材が、第2の部材との接続部の長手方向変位を可能にするように構成されるだけでなく、第1の部材が長手軸の周りに回転することを可能にするように均等に構成されている点が異なる。特許文献4では、その代わりに更なる肩部材が必要とされる。これは、器具ホルダーが専める空間に影響を与えるだけでなく、特許文献4において存在する上記肩部材と更なるエルボー部材との間に、より複雑なカップリングが必要であることを意味する。本発明の器具ホルダーでは、このような更なる中間肩部材は必要とされないので、専められる空間が大幅に低減され、また、第1の部材が、長手軸に沿った第2の部材との接続部の長手方向運動及び回転運動の両方を可能にするように構成されることに依拠して、機能性を損なうことなく設計が更に大幅に単純化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第7,108,688号
【文献】米国特許出願公開第2012/0132018号
【文献】米国特許出願公開第2013/123798号
【文献】米国特許出願公開第2013/331644号
【非特許文献】
【0007】
【文献】"International Symposium on History of Machines and Mechanisms",Springer Netherlands, ISBN: 978-1-4020-9484-2; pages 343-351のKuo & Dai, 2009 "Robotics for Minimally Invasive Surgery: AHistorical Review from the Perspective of Kinematics"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
概して、本発明の目的は、腹腔鏡手術又は他の高精度手術時、すなわちビデオ補助胸腔鏡手術及び関節鏡手術等の最小侵襲手術手順時の物体のホルダー、特定の一実施形態ではカメラのホルダーであって、別の物体、特定の一実施形態では、遠隔運動中心(患者における切開部、例えば、腹腔鏡手術の場合には患者の腹部における切開部)の周りに移動するカニューレ又はトロカールと組み合わせられる必要がある、ホルダーを提供することである。換言すると、外部物体は、アイソセンター(外部物体の遠隔運動中心)において保持されるとともにホルダーに接続され、ホルダーは、アイソセンターの周りでの(遠隔運動中心の周りでの)外部物体の運動に追従するように構成される。RCMは、固定RCM又は非固定RCMとすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様において、本発明は、遠隔運動中心を起点とする軸、例えばXYZ座標のX軸と一致して配向される第1の部材を備えるホルダーを提供する。ホルダーは、一方の端部において、第1の部材に旋回可能に接続され(旋回可能なコネクタ)、他方の端部において、遠隔運動中心の周りに移動可能な或る特定の物体(外部物体)、好ましくはカニューレ又はトロカール等の医療器具を接続するカップリング手段を有する、第2の部材を更に備える。上記カップリング手段は、フレキシブルとすることができ、上記カップリング手段は、少なくとも2つの平面における回転を許容し、上記カップリング手段は、上記第2の部材によって上記X軸に対して横方向に変位される。さらに、ホルダーの第1の部材は、上記軸に沿った旋回可能なコネクタの長手方向変位を可能にするように構成される。換言すると、ホルダーは、遠隔運動中心を起点とする軸、例えばXYZ座標のX軸と一致して配向される第1の部材を備え、一方の端部において、第1の部材に旋回可能に接続され(旋回可能なコネクタ)、他方の端部において、遠隔運動中心の周りに移動可能な或る特定の物体(外部物体)を接続するフレキシブルカップリングを有する、第2の部材を備え、第1の部材が、上記軸に沿った旋回可能なコネクタの長手方向変位を可能にするとともに、上記旋回可能なコネクタが上記軸の周りに回転することを可能にするように構成されることを特徴とする。
【0010】
以下の例示的な実施形態を参照すると、1つの実施形態において、第1の部材の長手軸に沿った旋回可能なコネクタの長手方向変位及び周方向変位は、第1の部材における旋回可能なコネクタの固定された位置と、長手軸に沿った第1の部材の長手方向変位を可能にするとともに長手軸に沿った第1の部材の回転を可能にする構成要素とによって実現される。別の実施形態において、第1の部材の長手軸に沿った旋回可能なコネクタの長手方向変位及び周方向変位は、第1の部材における旋回可能なコネクタのスライド可能な位置と、長手軸に沿った旋回可能なコネクタのガイドを含む第1の部材における構成要素及び長手軸に沿った第1の部材の回転を可能にする構成要素とによって実現される。
【0011】
特定の一実施形態において、フレキシブルカップリングは、交換可能である。この実施形態において、第2の部材は、上記フレキシブルカップリングが第2の部材の自由端部に配置されることを可能にするアダプターを備える。
【0012】
上述した構成によって、ホルダーが遠隔運動中心の周りでの外部物体の運動に追従することが可能にされる場合、本発明の更なる目的は、外部物体を所望の位置に固定することにホルダーを使用することである。したがって、更なる実施形態において、ホルダーは、遠隔運動中心の周りでの外部物体の操作の間にホルダーの可動部材をロックする手段を備える。可動部材は、上記X軸に沿った旋回可能なコネクタの長手方向変位を可能にするとともに上記旋回可能なコネクタが上記X軸の周りに回転することを可能にする、第1の部材の構成要素を含み、この構成要素は、第1の部材100の長手軸に沿った旋回可能な接続部2の直線変位(3)及び/又は凹状湾曲変位(4)を可能にすることができる。可動部材は、第1の部材と第2の部材との間の旋回可能な接続部と、最終的には第2の部材と外部物体との間のフレキシブルカップリングとを更に含む。1つの実施形態において、ホルダーは、ホルダーの可動部材のうちの1つ以上をロックする手段を備え、上記可動部材は、上記X軸に沿った旋回可能なコネクタの長手方向変位を可能にする第1の部材の構成要素、上記X軸の周りでの旋回可能なコネクタの回転を可能にする第1の部材の構成要素、第1の部材と第2の部材との間の旋回可能な接続部、及び、第2の部材と外部物体との間のフレキシブルカップリングから選択される。特定の一実施形態において、ホルダーは、上記X軸に沿った旋回可能なコネクタの長手方向変位を可能にする第1の部材の構成要素、上記X軸の周りでの旋回可能なコネクタの回転を可能にする第1の部材の構成要素、及び任意に、第1の部材と第2の部材との間の旋回可能な接続部をロックする手段を備える。別の特定の実施形態において、ホルダーは、上記X軸に沿った旋回可能なコネクタの長手方向変位を可能にする第1の部材の構成要素、上記X軸の周りでの旋回可能なコネクタの回転を可能にする第1の部材の構成要素、第1の部材と第2の部材との間の旋回可能な接続部、及び任意に、第2の部材と外部物体との間のフレキシブルカップリングをロックする手段を備える。
【0013】
当業者には明らかであるように、ホルダーは、受動的に使用することができ、ここで、ホルダーの移動は、アイソセンターの周りでの外部物体の操作に受動的に追従する。代替的には、ホルダーは、能動的に使用され、アイソセンターの周りでの外部物体の運動を制御する。したがって、本発明の更なる実施形態において、この装置は、XYZ座標に従う長手方向運動及び回転運動の両方を発生させる手段を備え、それによってカメラ等の所与の物体を保持する。
【0014】
以下で図面を具体的に参照するが、図示の細部は例示であり、単に本発明の様々な実施形態の説明的な論述を目的とするものであることが強調される。図面は、本発明の原理の最も有用で簡単な記載及び概念的態様と考えられるものを提供するために示されている。これに関して、本発明の根本的な理解のために必要である以上に詳細な本発明の構造の細部を示すことは試みられていない。図面と併せた記載により、本発明の複数の形態が実現され得る方法が当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る器具ホルダーの一実施形態の概略的な全体図である。ベアリングとともに固定された本体14に収容される第1の部材100と、第2の部材200と、第2の部材200に結合されるとともに、アイソセンター8において空間的に拘束して保持される外部物体300(例えば、トロカール、カニューレ等)とが示されている。この実施形態において、フレキシブルカップリング手段5と外部物体300とは、互いに固定される。外部物体300には腹腔鏡(laparoscope)10を挿入することができる。この実施形態において、第1の部材100は、固定された本体14内で長手軸の周りに、すなわち、この図に示されているX軸1の周りに回転可能である。さらに、第1の部材100と第2の部材200との間の旋回可能な接続部2は、第1の部材100の構成要素(リニアガイド11)を介して、X軸1に沿った長手方向の変位を辿り、第1の部材100の長手軸に沿った直線変位(3)を可能にする。外部物体は、アイソセンター8において空間的に拘束された状態で、上記アイソセンター8の周りの球状空間を辿ることが可能であるべきであり、したがって、第1の方向(矢印6で示す)及び第2の方向(矢印7で示す)の周りに回転運動する能力が必要とされる。器具ホルダーの本実施形態において、回転運動(6)は、リニアガイド11における旋回可能な接続部2の長手方向変位とともに旋回可能な接続部2及びフレキシブルカップリング5によってもたらされる運動によって可能にされ、一方で、回転運動(7)は、固定された本体14内での長手軸1に沿った第1の部材100の回転運動によって可能にされる。総合して、これらの構成要素により、回転運動(6)及び(7)に従うフレキシブルカップリングの運動が可能になる。
図2】本発明に係る器具ホルダーの一実施形態の概略的な全体図である。ベアリングとともに固定された本体14に収容される第1の部材100と、第2の部材200と、第2の部材200に結合されるとともに、アイソセンター8において空間的に拘束して保持される外部物体300(例えば、トロカール、カニューレ等)とが示されている。この実施形態において、接続部(特に解除可能な接続部)5は、フレキシブルな接続部(例えば、ボールジョイント)である。この実施形態において、フレキシブルカップリング5と外部物体300とは、互いに固定されない。外部物体300には腹腔鏡10を挿入することができ、ここで、外部物体300のアクセス領域は、患者の臓器9である。この実施形態において、第1の部材100は、固定された本体14内で長手軸の周りに、例えば、X軸1の周りに回転可能である。さらに、第1の部材100と第2の部材200との間の旋回可能な接続部2は、第1の部材100における第1の構成要素(リニアガイド11)を介してX軸1に沿った長手方向変位を辿り、第1の部材100の長手軸に沿った直線変位(3)を可能にする。加えて、この実施形態において、第2の部材は、更なるガイドコネクタ13を備え、更なるガイドコネクタ13は、第1の部材100における第2の構成要素12(凹状湾曲ガイド12)の中に嵌まり、第1の部材100の長手軸に沿った湾曲変位(4)を主に辿る。したがって、この実施形態において、回転運動(6)は、旋回可能な接続部2とガイドコネクタ13とフレキシブルカップリング5とによってもたらされる運動によって可能にされ、一方で、回転運動(7)は、固定された本体14内での長手軸1に沿った第1の部材100の回転運動によって可能にされ、それにより、上述した構成要素とともに、回転運動(6)及び(7)に従うフレキシブルカップリングの運動が可能になる。
図3】ホルダーの第1の部材100における構成要素(11、12)に沿った第2の部材200の長手方向変位によってもたらされる、本発明に係る器具ホルダーの3つの位置(A、B及びC)を示す、概略的な全体図である。Aは、完全に後退した位置を示している。Bは、中間位置を示している。Cは、完全に延出した位置を示している。
図4】本発明に係る器具ホルダーの一実施形態の概略的な全体図である。ベアリングとともに固定された本体14に収容される第1の部材100と、第2の部材200と、第2の部材200に結合されるとともに、固定されたアイソセンター8において空間的に拘束して保持される外部物体300(例えば、トロカール、カニューレ等)とが示されている。この実施形態において、第2の部材200は、2つのアーム、すなわち上側アームX及び下側アームYを備え、上側アームX及び下側アームYはそれぞれ、第1の部材におけるリニアガイド11X及び11Yを備える。下側アームのガイド11Yは、凹状湾曲ガイド12及びガイドコネクタ13を更に備える。さらに、各アームは、固有のカップリング手段5X及び5Yを備え、このカップリング手段は、外部物体300に一緒に固定される。外部物体300には腹腔鏡10を挿入することができる。この実施形態において、第1の部材100は、固定された本体14内で長手軸の周りに、すなわち、この図に示されているアイソセンター8を横切る軸1の周りに回転可能である。さらに、第1の部材100と第2の部材200との間の旋回可能な接続部2は、第1の部材100における構成要素(リニアガイド11Y)を介して、X軸1に沿った長手方向変位を辿る。さらに、固定された本体14の近位にフレキシブル手段を備える上側アームXは、移動の角度を強制的に定める。外部物体は、アイソセンター8において空間的に拘束された状態で、上記アイソセンター8の周りで球状空間を辿る(前方、後方、側方等)ことが可能であるべきであり、したがって、第1の方向の周りに(矢印6X及び6Yで示されている)回転運動する能力を必要とする。器具ホルダーのこの実施形態において、回転運動(6X及び6Y)は、リニアガイド11X及び11Yにおける旋回可能な接続部2の長手方向変位とともに旋回可能な接続部2及びカップリング手段5X及び5Yによってもたらされる運動によって可能にされる。この動作中、下側アームは、回転運動を辿り、一方、上側アームは、固定されたアイソセンター8の生成を可能にする。第1の部材内に収容される両方のアームの速度は、回転運動及び上側アームと下側アームとの間の距離と相関するので、運動中に変化することは明らかである。
図5】本発明に係る器具ホルダーの代替的な実施形態の概略的な全体図である。ベアリングとともに固定された本体14に収容される第1の部材100と、第2の部材200と、第2の部材200に結合されるとともに、アイソセンター8において空間的に拘束して保持される外部物体300(例えば、トロカール、カニューレ等)とが示されている。この実施形態において、第1の部材は、長手軸に沿って回転するように構成され、また、2つのアーム15X及び15Yを備え、これらの2つのアーム15X及び15Yは、互いに平行に或る距離を置いて配置されるとともに、第1の部材に対して固定比率で第1の部材の長手軸に沿った長手方向変位を可能にするように構成されている。これらの第1のアーム及び第2のアームは、第1の部材に対する2つのアームの並進変位の比率と等しい比率でアイソセンター2X及び2Yからそれぞれの距離を置いた第2の部材に旋回可能に結合され、外部物体がフレキシブルカップリング5によって第2の部材に結合されることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、(外部)物体300のホルダー、特定の一実施形態では、最小侵襲手術手順用のカニューレ又はトロカールのホルダーを提供し、このホルダーは、2つの部材を備える。図1は、ホルダーの一実施形態の概略的な全体図である。この実施形態において、ホルダー自体は、遠隔運動中心を有する必要はなく、したがって、最小侵襲手術手順中に使用されるときに、別の物体300、特定の一実施形態では、遠隔運動中心(患者における切開部)8の周りに移動するカニューレ又はトロカールと組み合わされる必要がある。本願の器具ホルダーは、ビデオ補助胸腔鏡手術、腹腔鏡手術及び関節鏡手術から選択される最小侵襲手術手段時、その中でも特に腹腔鏡手術時に使用することができる。この最後の実施形態において、遠隔運動中心は、患者の腹部における切開部と一致する。腹腔鏡手術に限定されないが、腹腔鏡手術又は他の高精度手術における狭い侵入点のような遠隔運動中心を有するカニューレ及びトロカールのような種々のツール又は器具を、本発明によって支持することができる。物体がカニューレ又はトロカールである上記実施形態において、腹腔鏡10のような種々のツールを上記カニューレ又はトロカールに挿入し、したがって本願のホルダーによって保持することができる。
【0017】
本明細書において上記で既に概説したように、本発明のホルダーは、固定された本体14内に収容することができる第1の部材100と、旋回可能なコネクタ2によって互いに旋回可能に接続される第2の部材200とを備える。第2の部材は、アイソセンター8を有する(外部)物体300にホルダーを接続するカップリング(物体カップリング)5を有し、第1の部材は、物体カップリング5がアイソセンターの周りでの外部物体の運動に追従することを可能にする可動部材を備える。
【0018】
このために、第1の部材100は、外部物体300の遠隔運動中心8を起点とするXYZ座標のX軸1と概ね一致するように配向される。上記X軸に沿った第1の部材の初期配向に関して、ホルダーは、通例は、外部物体のアイソセンターの近位にあるトライポッド又は取り付け具において取り付けられる。
【0019】
第2の部材200は、一方の端部において、第1の部材100に旋回可能に接続され(旋回可能な接続部2)、他方の端部において、(外部)物体300、特にカニューレ又はトロカールのような医療器具に係合するカップリング手段5を有する。さらに、上記カップリング手段は、フレキシブルとすることができ、それにより、少なくとも2つの平面における回転及び上記第2の部材による上記X軸に対して横方向の変位を許容する。
【0020】
さらに、ホルダーの第1の部材100は、第1の部材の長手軸に沿った旋回可能なコネクタ2の長手方向変位を可能にするとともに、上記旋回可能なコネクタが上記軸の周りで回転することを可能にするように構成される。
【0021】
或る特定の実施形態において、第1の部材100の長手軸に沿った旋回可能なコネクタ2の長手方向変位及び周方向変位は、第1の部材100における旋回可能なコネクタ2の固定された位置と、長手軸に沿った第1の部材100の長手方向変位を可能にするとともに長手軸に沿った第1の部材100の回転を可能にする構成要素とによって実現される。
【0022】
別の実施形態において、第1の部材100の長手軸に沿った旋回可能なコネクタ2の長手方向変位及び周方向変位は、第1の部材100における旋回可能なコネクタ2のスライド可能な位置と、長手軸に沿った旋回可能なコネクタ2のガイドを含む第1の部材100における構成要素及び長手軸に沿った第1の部材100の回転を可能にする構成要素とによって実現される。第1の部材におけるガイドの形状に応じて、これらのガイドは、直線(11)、凹状湾曲(12)又はそれらの組合せ(後述)での長手方向変位を可能にすることができる。
【0023】
特定の一実施形態において、ホルダーには、遠隔運動中心8の周りでの外部物体の操作の間にホルダーの可動部材をロックする手段、例えば、第1の部材100と第2の部材200との間の旋回点2のためのフリクションカップリング、並びに、X軸1に沿った旋回可能なコネクタ2の長手方向変位及び回転変位を可能にする第1の部材100の構成要素(例えば、ガイド)のためのフリクションカップリング等が備え付けられている。器具ホルダーを操作する人の要求に応じて第1の部材100及び第2の部材200の配向が選択されたら、マニピュレーターを使用して、これらのフリクションカップリングをロックすることができる。特定の一実施形態において、マニピュレーターは、フリクションカップリングをロックするのに空気圧を用いる。外部物体が更なる器具(例えば、トロカールに挿入される腹腔鏡10等)を収納する上記例において、外部物体は、上記更なる器具を外部物体内で所望の位置に保持する解除可能な係合手段を備えることができる。上記実施形態において、外部物体のこれらの解除可能な係合手段は、均等にフリクションカップリングからなることができ、好ましい一実施形態において、ホルダー上に存在するフリクションカップリングを解除及び係合するのに用いるのと同じマニピュレーターによって制御される。したがって、フリクション構成部材を解除すると、マニピュレーターは、本願のホルダーに結合された外部物体300の運動中心の周りでの更なる器具の位置決めを完全に制御する。ホルダーの可用性を高めるために、別の実施形態において、フレキシブルカップリング5は、交換可能である。この実施形態において、第2の部材は、上記フレキシブルカップリングが第2の部材の自由端部に配置されることを可能にするアダプターを備える。
【0024】
さらに、或る特定の実施形態において、第1の部材100と第2の部材200との間の旋回可能な接続部2は、X軸1に沿った長手方向変位において直線変位を辿るが、この直線変位は、ホルダーの第1の部材100におけるリニア構成要素、すなわちリニアガイド11によってもたらされる。別の実施形態において、第2の部材を第1の部材に接続する旋回点2は、上記軸に沿って長手方向に変位するとき、上記物体300の遠隔運動中心を起点とするXYZ座標のX軸に沿った直線を単に辿るのではない。特定の一実施形態において、上記旋回点の長手方向変位は、凹状湾曲変位(4)を含み、ここで、凹状の変曲点は、上記X軸から離れる方に配向されている。この実施形態において、第2の部材200は、第1の直線変位する旋回可能な接続部2の他に、更なるガイドコネクタ13を備え、更なるガイドコネクタ13は、第1の部材における第2の構成要素12(凹状湾曲ガイド12)の中に嵌まり、第1の部材の長手軸に沿って湾曲変位(4)を主に辿る。この実施形態は、直線変位のみを有する実施形態と比較してより拘束されたホルダーの運動をもたらし、マニピュレーターが、外部物体300を第2の部材200に接続する物体カップリング5の、外部物体の遠隔運動中心8の周りでのより球面的な回転(前方、後方、側方)を実行することをより簡単にする。特定の一実施形態において、ガイドコネクタ13と旋回可能な接続部2とは、同一である。
【0025】
最後に、ホルダーは、維持可能な材料で作成され、或る特定の実施形態では、耐熱性であり、したがって加熱滅菌に適している。
【0026】
要約すると、本発明は、最小侵襲手術手順における器具(カメラ)ホルダーとして特に有用なホルダーを提供し、ホルダー自体がRCMを有する必要がない点において、現行のRCMマニピュレーターとは異なる。RCMは、その代わりに、ホルダーによって保持される物体(本明細書において外部物体とも称される)に存在する。好ましい一実施形態において、この外部物体は、患者の腹部又は胸部の切開部に挿入される、腹腔鏡又はビデオ補助胸腔鏡手術のためのトロカールである。このトロカールは、挿入されると、上記切開点において空間的に拘束され、この切開点が、トロカールの遠隔運動中心として機能することになる。物体を本願のホルダーに結合することで、物体の操作が更に拘束されることはない。したがって、ホルダーは、操作作業領域を妥協することなく、腹腔鏡又は内視鏡を所望の向きに維持するためのコンパクトな解決策を提供する。この大きな操作作業領域は、例えば、トロカールの上記例において、外部物体300の患者の臓器9へのアクセス領域を示している図2において明らかである。
【符号の説明】
【0027】
(3):長手軸に沿った直線変位
(4):長手軸に沿った湾曲変位
(4):湾曲変位
(6):回転運動
(7):回転運動
1:X軸
1:長手軸
10:腹腔鏡(laparoscope)
100:第1の部材
11,12:第1の部材100における構成要素
11:リニアガイド
11X,11Y:リニアガイド
12:第2の構成要素(凹状湾曲ガイド)
13:ガイドコネクタ
14:本体
15X,15Y:アーム
2:コネクタ
2:接続部
2:旋回点
200:第2の部材
2X,2Y:アイソセンター
3:直線変位
300:外部物体
5:フレキシブルカップリング手段
5:接続部(特に解除可能な接続部)
5X,5Y:カップリング手段
6:第1の方向(矢印)
6X,6Y:(矢印)回転運動
7:第2の方向(矢印)
8:アイソセンター
8:遠隔運動中心
9:患者の臓器
図1
図2
図3
図4
図5