(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】電動弁および冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 47/02 20060101AFI20230914BHJP
F16K 31/04 20060101ALI20230914BHJP
F25B 41/35 20210101ALI20230914BHJP
【FI】
F16K47/02 D
F16K31/04 Z
F25B41/35
(21)【出願番号】P 2022116132
(22)【出願日】2022-07-21
(62)【分割の表示】P 2021078433の分割
【原出願日】2017-03-10
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 一也
(72)【発明者】
【氏名】松尾 拓也
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-086996(JP,A)
【文献】特開2015-094372(JP,A)
【文献】特開2009-052742(JP,A)
【文献】特開平11-336918(JP,A)
【文献】特開2012-177470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 47/00-47/16
F16K 31/00-31/05
F25B 41/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースの内周に収容されたロータの回転運動を、雄ネジ部材と雌ネジ部材とのネジ螺合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体を軸方向に移動させる電動弁であって、
前記弁本体の側面に開口した第1ポートと、
前記弁体が近接または離間可能な弁ポートが開口された平坦な天面を有する弁座部材と、
前記弁ポートを介して前記第1ポートと連通する第2ポートとを備え、
前記第
1ポートから前記弁本体内の弁室に流入した流体を前記弁本体の前記ロータ側方向と前記第2ポート側方向に分岐するように、前記弁座部材の前記天面の前記軸方向における位置が、前記第1ポートの中心軸よりも前記ロータ側において、前記第1ポートの内径の最上端を超えない高さに位置し、
前記弁本体内の前記弁室には、前記軸方向において前記第1ポートよりも前記ロータ側に形成された第1空間と、前記軸方向において前記第1ポートよりも前記第2ポート側に形成された第2空間とが含まれることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
ケースの内周に収容されたロータの回転運動を、雄ネジ部材と雌ネジ部材とのネジ螺合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体を軸方向に移動させる電動弁であって、
前記弁本体の側面に開口した第1ポートと、
前記弁体が近接または離間可能な弁ポートが開口された平坦な天面を有する弁座部材と、
前記弁ポートを介して前記第1ポートと連通する第2ポートとを備え、
前記弁座部材の前記天面の前記軸方向における位置が、前記第1ポートの中心軸よりも前記ロータ側にあり、かつ前記第1ポートの中心軸の延長線と前記弁座部材の外周面が交差し、前記弁座部材の前記天面の前記軸方向における位置が、前記第1ポートの内径の最上端を超えない高さに位置し、
前記弁本体内の弁室には、前記軸方向において前記第1ポートよりも前記ロータ側に形成された第1空間と、前記軸方向において前記第1ポートよりも前記第2ポート側に形成された第2空間とが含まれ、
前記弁体の着座テーパ面の前記軸方向
における位置が、弁全開時に前記第
1ポートの内径の最上端より前記ロータ側にあることを特徴とする電動弁。
【請求項3】
前記弁本体の内径は、前記第1ポートの内径よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記第1ポートの内径最下端が、前記弁本体の内部底面よりも前記ロータ側に配置されていることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の電動弁。
【請求項5】
前記第
1ポートの中心軸と弁軸ホルダの下端面との間の軸方向の距離が、前記弁座部材の外周面と前記第
1ポートの前記弁室側の端部との間の径方向の距離よりも大きく、かつ、前記第
1ポートの中心軸と前記弁本体の底面との間の軸方向の距離が、前記弁座部材の外周面と前記第
1ポートの前記弁室側の端部との間の径方向の距離よりも大きいことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の電動弁。
【請求項6】
前記弁座部材の前記天面は、円環形状を有し、かつ前記弁座部材の外周縁に接続することを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の電動弁。
【請求項7】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1~6の何れか一項に記載の電動弁を前記膨張弁として用いることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁、および該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、
図5に示すような構造を有する電動弁が知られている(たとえば、特許文献1参照)。すなわち、ステッピングモータが駆動してロータ103が回転すると、雌ネジ131aと雄ネジ121aのネジ送り作用により、弁体114が中心軸L方向に移動する。これにより、弁ポート130bの開度調整がなされ、管継手111から流入して管継手112から流出する流体の流量、または、管継手112から流入して管継手111から流出する流体の流量が制御される。
【0003】
ここで、各種流体の流量制御を行うにあたっては、流体通過音が発生するという問題があるため、静音化が要求される。また、冷媒を用いた家庭用空調機や業務用空調機の冷凍サイクルの室内機において、電動弁100にて冷媒流量を制御する場合は、弁ポート130b通過前後で液冷媒が気液混合二相流となるため、特に、多彩な冷媒状態、運転状況でも静音性を発揮することが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の電動弁100は、図示しない流体配管に管継手111、管継手112を介して固定されており、流路内に弁体114と弁座130の弁ポート130bが露出している。このため、電動弁100において、弁ポート130bの入り口側と出口側の間に高い圧力差が生じた場合などで、特に管継手111から管継手112に流れる場合には、
図6に示すように、管継手111から流入した冷媒などの流体が弁体114に当たり、その衝突力によって弁体114が径方向(C)に振動することがある。この振動による音が発生すると、電動弁100の静音性を維持できなくなる場合がある。
【0006】
ここで、
図7に示すように、弁座130の天面130aの位置を高くすることにより、管継手111から弁室121に流入する流体が直接弁体114に当たらない構造にすることが考えられる。しかしこの場合、弁体114に当たった流体のほとんどが上向きに流れるため、弁体114に上向きの力が加わり、弁体114が上下方向(E)に振動してしまう。したがって、この場合もまた、静音性を維持することが困難になる。
【0007】
本発明の目的は、的確に静音性を維持することができる電動弁、および該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電動弁は、
ケースの内周に収容されたロータの回転運動を、雄ネジ部材と雌ネジ部材とのネジ螺合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体を軸方向に移動させる電動弁であって、
前記弁本体の側面に開口した第1ポートと、
前記弁体が近接または離間可能な弁ポートが開口された平坦な天面を有する弁座部材と、
前記弁ポートを介して前記第1ポートと連通する第2ポートとを備え、
前記第1ポートから前記弁本体内の弁室に流入した流体を前記弁本体の前記ロータ側方向と前記第2ポート側方向に分岐するように、前記弁座部材の前記天面の前記軸方向における位置が、前記第1ポートの中心軸よりも前記ロータ側において、前記第1ポートの内径の最上端を超えない高さに位置し、
前記弁本体内の前記弁室には、前記軸方向において前記第1ポートよりも前記ロータ側に形成された第1空間と、前記軸方向において前記第1ポートよりも前記第2ポート側に形成された第2空間とが含まれることを特徴とする。
また、本発明の電動弁は、
ケースの内周に収容されたロータの回転運動を、雄ネジ部材と雌ネジ部材とのネジ螺合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体を軸方向に移動させる電動弁であって、
前記弁本体の側面に開口した第1ポートと、
前記弁体が近接または離間可能な弁ポートが開口された平坦な天面を有する弁座部材と、
前記弁ポートを介して前記第1ポートと連通する第2ポートとを備え、
前記弁座部材の前記天面の前記軸方向における位置が、前記第1ポートの中心軸よりも前記ロータ側にあり、かつ前記第1ポートの中心軸の延長線と前記弁座部材の外周面が交差し、前記弁座部材の前記天面の前記軸方向における位置が、前記第1ポートの内径の最上端を超えない高さに位置し、
前記弁本体内の弁室には、前記軸方向において前記第1ポートよりも前記ロータ側に形成された第1空間と、前記軸方向において前記第1ポートよりも前記第2ポート側に形成された第2空間とが含まれ、
前記弁体の着座テーパ面の前記軸方向における位置が、弁全開時に前記第1ポートの内径の最上端より前記ロータ側にあることを特徴とする。
【0009】
これによれば、弁座部材の天面の位置を高くすることにより、第1ポートから流入した流体を直接弁体に衝突させないようにすることができ、弁体の径方向の振動を抑制することができる。また、弁本体内において、第1空間の他に第2空間を設けることにより、第1ポートから流入した流体のすべてが上方に流れて弁体に上向きの力が加わり、弁体が軸方向に振動することを抑制することができる。このように、弁体に対する負荷を軽減することにより、弁体の径方向軸方向の振動を低減させ、的確に電動弁の静音性を維持することができる。
また、第1ポートから流入した流体を的確に上下に振り分け、第1空間、第2空間に導くことができる。
【0010】
また、本発明の電動弁は、
前記弁本体の内径が、前記第1ポートの内径よりも大きいことを特徴とする。
これにより、流体の逃げ場を的確に確保することができる。
【0011】
また、本発明の電動弁は、
前記第1ポートの内径最下端が、前記弁本体の内部底面よりも前記ロータ側に配置されていることを特徴とする。
これにより、第1ポートから流入した流体の上方への流れをより的確に抑制することができる。
【0012】
また、本発明の電動弁は、
前記第1ポートの中心軸と弁軸ホルダの下端面との間の軸方向の距離が、前記弁座部材の外周面と前記第1ポートの前記弁室側の端部との間の径方向の距離よりも大きく、かつ、前記第1ポートの中心軸と前記弁本体の底面との間の軸方向の距離が、前記弁座部材の外周面と前記第1ポートの前記弁室側の端部との間の径方向の距離よりも大きいことを特徴とする。
また、本発明の電動弁は、
前記弁座部材の前記天面は、円環形状を有し、かつ前記弁座部材の外周縁に接続することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の冷凍サイクルシステムは、
圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器を含む冷凍サイクルシステムであって、上述の電動弁を前記膨張弁として用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る発明によれば、的確に静音性を維持することができる電動弁、および該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態に係る電動弁の概略断面図である。
【
図2】実施の形態に係る電動弁の要部拡大図である。
【
図3】実施の形態に係る電動弁の要部の側面図である。
【
図4】実施の形態に係る電動弁に接続された第1の管継手の内部から視認される弁座部材の天面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る電動弁について説明する。
図1は、実施の形態に係る電動弁2を示した概略断面図である。なお、本明細書において、「上」あるいは「下」とは
図1の状態で規定したものである。すなわち、ロータ4は弁体17より上方に位置している。
【0017】
この電動弁2では、金属により筒状のカップ形状をなすケース60の開口側の下方に、弁本体30が溶接などにより一体的に接続されている。
ここで、弁本体30は、たとえばステンレス等の金属から成り、内部に弁室11を有している。また、弁本体30には、弁室11に直接連通するたとえばステンレス製や銅製の第1管継手12が固定装着されている。さらに、弁本体30の底面には、断面円形の弁ポート16aが形成された弁座部材16が組み込まれている。弁座部材16には、弁ポート16a、弁室11を介して第1管継手12に連通するたとえばステンレス製や銅製の第2管継手15が固定装着されている。
【0018】
ケース60の内周には、回転可能なロータ4が収容され、ロータ4の軸芯部分には、ブッシュ部材33を介して弁軸41が配置されている。なお、ロータ4は、磁性粉を含有する樹脂材料やフェライト磁石等の磁性を有する素材で形成されている。ブッシュ部材33と弁軸41は、共にたとえばステンレス等の金属で形成されており、ブッシュ部材33で結合された弁軸41とロータ4とは、回転しながら上下方向に一体的に移動する。なお、この弁軸41の中間部付近の外周面には雄ネジ41aが形成されている。本実施の形態では、弁軸41が雄ネジ部材として機能している。また、弁体17は弁ポート16aに対して近接又は離間可能となっている。
【0019】
ケース60の外周には、図示しないヨーク、ボビン、およびコイルなどからなるステータが配置され、ロータ4とステータとでステッピングモータが構成されている。
弁軸41のブッシュ部材33より下方には、後述するように弁軸41との間でネジ送り機構Aを構成するとともに弁軸41の傾きを抑制する機能を有する弁軸ホルダ6が、弁本体30に対して相対的に回転不能に固定されている。
【0020】
この弁軸ホルダ6は、上部側の筒状小径部6aと下部側の筒状大径部6bと弁本体30の内周部側に収容される嵌合部6cとリング状のフランジ部6fとからなる。そして、弁軸ホルダ6のフランジ部6fは、弁本体30の上端に溶接などで固定されている。また、弁軸ホルダ6の内部には、後述する弁ガイド18を収容する収容室6hが形成されている。なお、弁軸ホルダ6は、金属のフランジ部6f以外が樹脂材料で形成されている。
【0021】
また、この弁軸ホルダ6の筒状小径部6aの上部開口部6gから所定の深さまで下方に向かって雌ネジ6dが形成されている。このため、本実施の形態では、弁軸ホルダ6が雌ネジ部材として機能している。そして、弁軸41の外周に形成された雄ネジ41aと、弁軸ホルダ6の筒状小径部6aの内周に形成された雌ネジ6dとにより、ネジ送り機構Aが構成されている。
【0022】
さらに、弁軸ホルダ6の筒状大径部6bの側面には、均圧孔51が穿設され、この均圧孔51により、筒状大径部6b内の弁軸ホルダ室83と、ロータ収容室67(第2の背圧室)との間が連通している。このように均圧孔51を設けることにより、ケース60のロータ4を収容する空間と、弁軸ホルダ6内の空間とを連通することにより、弁体17の移動動作をスムーズに行うことができる。
【0023】
また、弁軸41の下方には、筒状の弁ガイド18が弁軸ホルダ6の収容室6hに対して摺動可能に配置されている。この弁ガイド18は天井部21側がプレス成形により略直角に折り曲げられている。そして、この天井部21には貫通孔18aが形成されている。また、弁軸41の下方には、さらに鍔部41bが形成されている。
【0024】
ここで、弁軸41は、弁ガイド18に対して回転可能、かつ径方向に変位可能となるように弁ガイド18の貫通孔18aに遊貫状態で挿入されており、鍔部41bは、弁ガイド18に対して回転可能、かつ、径方向に変位可能となるように弁ガイド18内に配置されている。また、弁軸41は貫通孔18aを挿通し、鍔部41bの上面が、弁ガイド18の天井部21に対向するように配置されている。なお、鍔部41bが弁ガイド18の貫通孔18aより大径であることにより、弁軸41の抜け止めがなされている。
【0025】
弁軸41と弁ガイド18とが互いに径方向に移動可能であることにより、弁軸ホルダ6および弁軸41の配置位置に関して、さほど高度な同芯取付精度を求められることなく、弁ガイド18および弁体17との同芯性が得られる。
弁ガイド18の天井部21と弁軸41の鍔部41bとの間には、中央部に貫通孔が形成されたワッシャ70が設置されている。
【0026】
次に、実施の形態に係る電動弁2の要部について説明する。
図2は、実施の形態に係る電動弁2の要部を拡大した図である。
図2に示すように、弁本体30には、弁室11が形成されている。本実施の形態において、この弁室11は、以下に説明する三つの空間に三分される。すなわち、弁室11には、軸M方向において、第1管継手12よりも上側(ロータ4側)の位置に形成された第1空間11a、第1管継手12よりも下側(第2管継手15側)の位置に形成された第2空間11b、第1管継手12と同レベルの位置に形成された第3空間11cが含まれている。ここで、第1管継手12よりも上側とは、より具体的には、第1管継手12の外径の最上端X1よりも上側を指している。同様に、第1管継手12よりも下側とは、第1管継手12の外径の最下端X2よりも下側を指している。
【0027】
また、第1空間11aは、略円筒状の空間であり、その上部は、弁軸ホルダ6の下部、弁体17に接している。
また、第2空間11bは、略円環状の空間であり、弁座部材16の周囲に形成されている。この第2空間11bは、第1管継手12の外径最下端X2を弁本体30の底面30aよりも上側に取付けることによって形成される。より好ましくは、第1管継手12は、第2空間11bの深さ(L)が第1管継手の内径の半径(D/2)よりも深くなるように取付けられている(L>D/2)。
【0028】
また、実施の形態に係る電動弁2においては、高さの高い弁座部材16が使用されている。具体的には、弁座部材16としては、第2管継手15に固定装着した状態において、軸M方向における天面16bの位置が第1管継手12の中心軸Nの位置よりも上側に位置するものが用いられる。
【0029】
また、天面16bは、
図3に示すように、第1管継手12内を
図2の(B)矢印方向から視た場合に視認できる高さに位置するのが好ましい。すなわち、軸M方向において、天面16bが、第1管継手12の内径の最上端を超えない位置に弁座部材16が配置されるのが好ましい。この場合、
図4に示すように、第1管継手12の内径の最下端を上下の基準とすると、天面16bの位置(H)は、第1管継手12の中心軸Nの位置(D/2)よりも上側に位置し、第1管継手12の内径の最上端(D)よりも下側に位置することになる(D/2<H<D)。
【0030】
ここで、
図2に示すように、第1管継手12から弁室11内に流入する流体の速度は、中心が最も速く、第1管継手12の内周に近づくほど遅くなる。このため、仮に天面16bを第1管継手12の中心軸Nよりも下側に位置させた場合には、速い速度の流体が弁体17に直撃し、弁体17に大きく径方向の負荷を与え、弁体17を径方向に振動させることになる。
【0031】
これに対し、実施の形態に係る電動弁2のように、天面16bが
図4を用いて説明した位置(D/2<H<D)に位置するようにした場合、
図2に示すように、流体の最も早い部分は、一旦弁座部材16の外周に衝突して速度を低下させ、上下方向に分岐する。上方に分岐した流体は、第1空間11aに導入され、下方に分岐した流体は、第2空間11bに導入される。
【0032】
ここで、実施の形態に係る電動弁2においては、天面16bの高さが上側に位置しすぎないため、上側に分岐した流体によって弁体17に上向きに加えられる力(
図7参照)も低減される。
【0033】
さらに、弁室11の下側には、第2空間11bが設けられているため、下方に分岐した流体の逃げ道が確保される。これにより、下方に分岐した流体が逃げ場を失って上側に流れ込み、弁体17に上向きの力を加えることが抑制される。
【0034】
また、実施の形態に係る電動弁2においては、弁本体30の内径Y(
図2参照)が第1管継手12の内径(D)よりも大きくなるように形成されている(Y>D)。このため、弁室11内に流入した流体の逃げ場を的確に確保することができる。
【0035】
この実施の形態における電動弁2によれば、弁座部材16の天面16bの位置を高くすることにより、第1管継手12から流入した流体を直接弁体17に衝突させないようにすることができ、弁体17の径方向の振動を抑制することができる。また、弁本体30内において、第1空間11aの他に第2空間11bを設けることにより、第1管継手12から流入した流体のすべてが上方に流れて弁体17に上向きの力が加わり、弁体17が軸M方向に振動することを抑制することができる。このように、弁体17に対する負荷を軽減することにより、弁体17の径方向、軸方向の振動を低減させることができ、各種流体制御においても、冷凍サイクルでの多彩な冷媒状態、運転状況においても的確に電動弁2の静音性を維持することができる。
【0036】
また、弁座部材16の天面16bの位置を高くするだけで電動弁2の静音性を維持するため、電動弁2の構造を複雑化することもなく、さらに、吸音部材や消音装置などを用いることもないため、低コストで電動弁2の静音性を維持することができる。
【0037】
また、上述の実施の形態の電動弁2は、たとえば、圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器等から成る冷凍サイクルシステムにおいて、凝縮器と蒸発器との間に設けられる膨張弁として用いられる。
【符号の説明】
【0038】
2 電動弁
6d 雌ネジ
11 弁室
11a 第1空間
11b 第2空間
11c 第3空間
12 第1管継手
15 第2管継手
16 弁座部材
16a 弁ポート
16b 天面
17 弁体
18 弁ガイド
30 弁本体
30a 底面
41a 雄ネジ
M 電動弁2の軸
N 第1管継手12の中心軸
X1 第1管継手12の外径の最上端
X2 第1管継手12の外径の最下端
Y 弁本体30の内径