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特許7349551含フッ素ピリミジン化合物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】含フッ素ピリミジン化合物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/04 20060101AFI20230914BHJP
   C07D 403/04 20060101ALI20230914BHJP
   C07D 405/04 20060101ALI20230914BHJP
   C07D 417/04 20060101ALI20230914BHJP
   C07D 471/04 20060101ALI20230914BHJP
   A01N 43/90 20060101ALN20230914BHJP
   A01P 3/00 20060101ALN20230914BHJP
   A61P 9/00 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
C07D401/04
C07D403/04 CSP
C07D405/04
C07D417/04
C07D471/04 113
A01N43/90 103
A01P3/00
A61P9/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022500244
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2020046908
(87)【国際公開番号】W WO2021161648
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2020021837
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502145313
【氏名又は名称】ユニマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】清野 淳弥
(72)【発明者】
【氏名】青津 理恵
(72)【発明者】
【氏名】小金 敬介
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-515688(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0342954(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D、A01N、A01P、A61K、A61P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される、含フッ素ピリミジン化合物であって、
【化1】
(上記一般式(1)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、環Zはヘテロ原子を含む縮合複素環を表す。)
前記ヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子からなる群から選択される少なくとも一種の原子であり、
ヘテロ原子数は1個、2個、3個または4個であり、
縮合複素環を構成する環原子数は5個、6個、8個、9個、10個、13個または14個であり、
前記ヘテロ原子が2個の窒素原子であり縮合複素環を構成する環原子数が9個の時、前記環Zはベンズイミダゾリル基である、
前記含フッ素ピリミジン化合物。
【請求項2】
前記環Zは、ベンゾトリアゾル基、メチルインドリル基、インドリル基、イソインドリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジル基、ベンゾフリル基、インドリジニル基、ベンゾチエニル基、イソベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、クロメニル基、プリニル基、プテリジニル基、キノリジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、シンノリニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズイソチアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ピリドピリミジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、テトラヒドロキノリル基、テトラヒドロイソキノリル基、テトラヒドロキノキサリニル基、ジヒドロフタラジニル基、カルバゾリル基、フェナジニル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、チアントレニル基、フェノキサジニル基、またはフェノチアジニル基である、請求項1に記載の含フッ素ピリミジン化合物。
【請求項3】
下記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピリミジン化合物を得る工程を有する、含フッ素ピリミジン化合物の製造方法であって、
【化2】
(上記一般式(1)~(3)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、環Zはヘテロ原子を含む縮合複素環を表す。)
前記ヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子からなる群から選択される少なくとも一種の原子であり、
ヘテロ原子数は1個、2個、3個または4個であり、
縮合複素環を構成する環原子数は5個、6個、8個、9個、10個、13個または14個であり、
前記ヘテロ原子が2個の窒素原子であり縮合複素環を構成する環原子数が9個の時、前記環Zはベンズイミダゾリル基である、
前記含フッ素ピリミジン化合物の製造方法。
【請求項4】
下記一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピリミジン化合物を得る工程を有する、含フッ素ピリミジン化合物の製造方法であって、
【化3】
(上記一般式(1)、(3)および(4)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、または-NAを表し、A、Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表し、環Zはヘテロ原子を含む縮合複素環を表す。)
前記ヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子からなる群から選択される少なくとも一種の原子であり、
ヘテロ原子数は1個、2個、3個または4個であり、
縮合複素環を構成する環原子数は5個、6個、8個、9個、10個、13個または14個であり、
前記ヘテロ原子が2個の窒素原子であり縮合複素環を構成する環原子数が9個の時、前記環Zはベンズイミダゾリル基である、
前記含フッ素ピリミジン化合物の製造方法。
【請求項5】
前記環Zは、ベンゾトリアゾル基、メチルインドリル基、インドリル基、イソインドリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジル基、ベンゾフリル基、インドリジニル基、ベンゾチエニル基、イソベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、クロメニル基、プリニル基、プテリジニル基、キノリジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、シンノリニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズイソチアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ピリドピリミジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、テトラヒドロキノリル基、テトラヒドロイソキノリル基、テトラヒドロキノキサリニル基、ジヒドロフタラジニル基、カルバゾリル基、フェナジニル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、チアントレニル基、フェノキサジニル基、またはフェノチアジニル基である、請求項3または4に記載の含フッ素ピリミジン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素ピリミジン化合物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、含フッ素ピリミジン化合物は種々の生物活性を有することが報告されている。なかでも、ピリミジン環の2位に、ヘテロ原子を含む縮合複素環を置換基として有する化合物について、医薬・農薬分野においての使用が有望視されている。
【0003】
より具体的には、特許文献1において、ピリミジン環の2位にベンゾトリアゾール環を置換基として有する化合物が、ULK1阻害作用を有することが報告されている。
また、特許文献2おいて、ピリミジン環の2位にインドール環を置換基として有する化合物が、アオゲイトウおよびヒマワリに対する除草作用を有することが報告されている。
さらに、特許文献3において、ピリミジン環の2位にキノリン環を置換基として有する化合物が、心血管疾患や腎疾患の治療および予防に有効であることが報告されている。
【0004】
そこで、含フッ素ピリミジン化合物のさらなる活性向上を期待して、ピリミジン環の4、5、6位の修飾に興味が持たれている。一方、ピリミジン環の5位にトリフルオロメチル基を有し、4位および6位に置換基を有するピリミジン化合物の合成法は、非特許文献1~3に開示されている。より具体的には、非特許文献1にはトリフルオロメタンスルフィン酸ナトリウム(Langlois試薬)を使用した合成法、非特許文献2にはトリフルオロ酢酸誘導体を使用した合成法、非特許文献3には無水トリフルオロメタンスルホン酸を使用した合成法、がそれぞれ報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/033100号
【文献】国際公開第2014/151005号
【文献】国際公開第2015/036560号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Tetrahedron,2016年、72巻、3250~3255頁
【文献】ACS Catalysis,2018年、8巻、2839~2843頁
【文献】Angewandte Chemie International Edition,2018年、57巻、6926~6929頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来、ピリミジン環の5位に含フッ素置換基を、2位に置換基として、ヘテロ原子を含む縮合複素環を有し、4位および6位に置換基を有する含フッ素ピリミジン化合物の製造は、反応性および選択性の面から困難であり、このような含フッ素ピリミジン化合物は報告されていなかった。該含フッ素ピリミジン化合物は、様々な生物活性を有することが期待されている。
【0008】
一方で、非特許文献1に報告されている製造方法では、トリフルオロメチル基導入時の位置選択性が低いことから、複素環が置換したピリミジン化合物といった、複数の複素環を有する基質に対しては、トリフルオロメチル基の導入効率を大幅に向上する必要があった。また、基質に対してトリフルオロメチル化剤としてLanglois試薬を3倍量使用する必要がある上に、別途酸化剤として有害な酢酸マンガン(III)水和物をも基質の3倍量、使用する必要があった。
【0009】
また、非特許文献2および3に報告されている製造方法により得られた化合物をさらに修飾・誘導体化することにより、ピリミジン環の2位に置換基として、ヘテロ原子を含む縮合複素環を有する含フッ素ピリミジン化合物へと変換することが考えられる。しかしながら、工程数の増加による煩雑化および効率の低下が避けられないか、または該含フッ素ピリミジン化合物の製造自体が困難な場合があった。また、非特許文献2および3の製造方法では、ルテニウム錯体触媒存在下での光照射が必要であった。さらに、非特許文献2の製造方法では基質に対してトリフルオロメチル化剤を2.5~3倍量使用する必要があり、非特許文献3の製造方法では基質に対してトリフルオロメチル化剤を3倍量使用する必要があった。
【0010】
このため、ピリミジン環の4位および6位に置換基を有し、2位に置換基として、ヘテロ原子を含む縮合複素環を有する新規な含フッ素ピリミジン化合物、およびその製造方法を確立することが望まれていた。そこで、本発明者らは、特定の原料を、特定の方法により反応させることにより、ピリミジン環上の2つの窒素原子の間の2位にヘテロ原子を含む縮合複素環から構成される基を導入できるとの知見を得て、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、従来から知られていなかった、5位に含フッ素置換基を有し、4位および6位に置換基を有し、2位に置換基として、ヘテロ原子を含む縮合複素環を有する新規な含フッ素ピリミジン化合物、および、該含フッ素ピリミジン化合物を簡易的に製造することが可能な製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1]下記一般式(1)で表される、含フッ素ピリミジン化合物。
【化1】
(上記一般式(1)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、環Zはヘテロ原子を含む縮合複素環を表す。)
[2]前記ヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子からなる群から選択される少なくとも一種の原子であり、
前記縮合複素環は芳香族の縮合複素環である、上記[1]に記載の含フッ素ピリミジン化合物。
[3]前記環Zを構成するπ電子数が10個、14個または18個である、上記[1]または[2]に記載の含フッ素ピリミジン化合物。
[4]下記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピリミジン化合物を得る工程を有する、含フッ素ピリミジン化合物の製造方法。
【化2】
(上記一般式(1)~(3)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、環Zはヘテロ原子を含む縮合複素環を表す。)
[5]下記一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピリミジン化合物を得る工程を有する、含フッ素ピリミジン化合物の製造方法。
【化3】
(上記一般式(1)、(3)および(4)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、または-NAを表し、A、Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表し、環Zはヘテロ原子を含む縮合複素環を表す。)
[6]前記ヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子からなる群から選択される少なくとも一種の原子であり、
前記縮合複素環は芳香族の縮合複素環である、上記[4]または[5]に記載の含フッ素ピリミジン化合物の製造方法。
[7]前記環Zを構成するπ電子数が10個、14個または18個である、上記[4]から[6]までの何れか1項に記載の含フッ素ピリミジン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
5位に含フッ素置換基を有し、4位および6位に置換基を有し、2位に置換基として、ヘテロ原子を含む縮合複素環を有する新規な含フッ素ピリミジン化合物、および、該含フッ素ピリミジン化合物を簡易的に製造することが可能な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(含フッ素ピリミジン化合物)
一実施形態の含フッ素ピリミジン化合物は下記一般式(1)で表される。
【化4】
(上記一般式(1)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、環Zはヘテロ原子を含む縮合複素環を表す。)
【0014】
Rは炭素数1~12の、炭素原子および水素原子からなる炭化水素基であれば特に限定されず、鎖状炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基などを挙げることができる。鎖状炭化水素基は合計の炭素数が1~12であれば特に限定されず、分岐した鎖状炭化水素基であっても、分岐していない鎖状炭化水素基であってもよい。芳香族炭化水素基は合計の炭素数が6~12であれば特に限定されず、置換基を有する芳香族炭化水素基であっても、置換基を有さない芳香族炭化水素基であってもよい。また、芳香族炭化水素基は、縮合多環構造を有していてもよい。脂環式炭化水素基は合計の炭素数が3~12であれば特に限定されず、置換基を有する脂環式炭化水素基であっても、置換基を有さない脂環式炭化水素基であってもよい。また、脂環式炭化水素基は、橋かけ環構造を有していてもよい。
【0015】
鎖状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基等のアルキニル基等を挙げることができる。
【0016】
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。
【0017】
脂環式炭化水素基としては、飽和又は不飽和の環状の炭化水素基が挙げられ、環状の炭化水素基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等を挙げることができる。
【0018】
好ましくはRは、炭素数1~10のアルキル基であるのがよい。Rが炭素数1~10のアルキル基であることにより、含フッ素ピリミジン化合物の原料である一般式(2)のフルオロイソブチレン誘導体、および一般式(4)のフルオロイソブタン誘導体を容易に調製することができる。
【0019】
ヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子からなる群から選択される少なくとも一種の原子であることが好ましい。縮合複素環を構成する環原子であるヘテロ原子の数は特に限定されず、例えばヘテロ原子数は1個、2個、3個、または4個とすることができる。縮合複素環を構成する環原子であるヘテロ原子の種類は窒素原子、酸素原子、および硫黄原子からなる群から選択される少なくとも一種の原子であれば特に限定されず、該ヘテロ原子は1種類、2種類、または3種類の何れであってもよい。なお、縮合複素環を構成する環原子が1種類の場合は、環原子として窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を用いることができる。縮合複素環を構成する環原子が2種類の場合は、環原子として窒素原子と硫黄原子、窒素原子と酸素原子、または、酸素原子と硫黄原子を用いることができる。縮合複素環を構成する環原子が3種類の場合は、環原子として窒素原子、硫黄原子、および酸素原子を用いることができる。縮合複素環を構成する環原子数は特に限定されず、例えば環原子数は5個、6個、8個、10個、13個、14個、16個、18個、20個、22個とすることができる。縮合複素環は多環構造を有し2つ以上であれば環の数は特に限定されないが、例えば環の数を2つ、3つ、4つ、または5つとすることができる。環Zを構成する縮合複素環は芳香族の縮合複素環であっても、脂環式の縮合複素環であってもよいが、環Zを構成する縮合複素環は芳香族の縮合複素環であることが好ましく、環Zを構成するπ電子数が10個、14個または18個であることがより好ましい。環Zがこれらの条件を満たすことによって、動態を制御しながら、多環性芳香族炭化水素をリガンドとした受容体への親和性を向上させることができる。このため、含フッ素ピリミジン化合物に、より有効な生物活性を付与することができる。
【0020】
環Zから構成される基としては、ヘテロ原子を含む縮合複素環から構成される基であれば特に限定されない。環Zから構成される基としては例えば、環原子数が9個または10個であり、ヘテロ原子(環原子)として1個、2個、3個、または4個の窒素原子を含み、かつ2つの環から構成される複素縮合環を挙げることができる。また、環Zから構成される基としては例えば、環原子数が13個であり、1個、2個、3個、または4個のヘテロ原子(環原子)を含み、かつ3つの環から構成される複素縮合環を挙げることができる。より具体的には環Zから構成される基として、ベンゾトリアゾル基、メチルインドリル基、インドリル基、イソインドリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジル基、ベンゾフリル基、ピロリジル基、インドリジニル基、ベンゾチエニル基、イソベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、クロメニル基、インダゾリル基、プリニル基、プテリジニル基、キノリジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、シンノリニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズイソチアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ピリドピリミジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、テトラヒドロキノリル基、テトラヒドロイソキノリル基、テトラヒドロキノキサリニル基、ジヒドロフタラジニル基、カルバゾリル基、フェナジニル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、チアントレニル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基などを挙げることができる。好ましくは、環Zから構成される基は、ベンゾトリアゾル基、メチルインドリル基、キノリル基、ナフチリジル基、ベンゾチアゾリル基、ジベンゾフラニル基であるのがよい。
【0021】
一実施形態の含フッ素ピリミジン化合物は、ピリミジン環の2位に特定の置換基(ヘテロ原子を含む縮合複素環から構成される基)、ピリミジン環の4位、5位、および6位上に特定の置換基(-OR、-CF、-F)を有するため、構造拡張性の観点から優れた効果を有することができる。特に、所望の生物活性(例えば、ホルモンや酵素の阻害活性、有害生物の防除活性)を期待できる。防除活性としては例えば、イネいもち病菌に対する防除活性を挙げることができる。ピリミジン環の2位上に位置するヘテロ原子を含む縮合複素環から構成される構造はさらに置換基を有していても、有していなくてもよい。ヘテロ原子を含む縮合複素環の置換基を有することにより、一実施形態の含フッ素ピリミジン化合物に更なる特性を付与することができる。また、ピリミジン環の4位および6位上の置換基は異なる基(-ORと-F)であるため、非対称な構造へ容易に誘導体化を行うことができ、中間体としての使用も期待することができる。より具体的には、酸性条件下で含フッ素ピリミジン化合物を反応させることにより-ORを修飾して誘導体を得ることができる。また、塩基性条件下で含フッ素ピリミジン化合物を反応させることにより-Fを修飾して誘導体を得ることができる。一実施形態の含フッ素ピリミジン化合物は例えば、有機半導体、液晶などの電子材料の分野において有用である。
【0022】
(含フッ素ピリミジン化合物の製造方法)
一実施形態の含フッ素ピリミジン化合物の製造方法は、(a)下記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピリミジン化合物を得る工程を有する。
【化5】
(上記一般式(1)~(3)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、環Zはヘテロ原子を含む縮合複素環を表す。)
【0023】
一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、一般式(3)で表される化合物との、上記工程(a)の反応は、下記反応式(A)として表される。
【化6】
【0024】
上記反応式(A)において、一般式(3)の化合物はそれぞれ、塩の形態であってもよい。塩の形態となる場合、一般式(3)の化合物のアミジノ基を構成するアミノ部分(-NH)およびイミノ部分(=NH)のうち少なくとも一方の部分が、カチオン化され(-NH )および(=NH )となり、対イオンと塩を形成する形態を挙げることができる。対イオンは1価のアニオンであれば特に限定されず、例えば、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン化物イオンを挙げることができる。
【0025】
一実施形態の含フッ素ピリミジン化合物の製造方法では例えば、ハロゲン化水素捕捉剤の存在下で上記工程(a)の反応を一段階で行うことができる。このため、簡易的に上記一般式(1)の含フッ素ピリミジン化合物を得ることができる。なお、上記工程(a)の反応では、フルオロイソブチレン誘導体と、一般式(3)の化合物のアミジノ基との間で環状のピリミジン構造が形成される。該ピリミジン構造の2位には、一般式(3)の化合物の環Zに由来する基が位置する。また、該ピリミジン構造の4位、5位および6位にはそれぞれ、フルオロイソブチレン誘導体に由来する-OR、CF、およびFが位置する。
【0026】
ハロゲン化水素捕捉剤は、上記(A)の反応式において一般式(3)の化合物中のアミジノ基に由来する水素原子と、一般式(2)のフルオロイソブチレン誘導体に由来するフッ素原子とから形成されるフッ化水素(HF)を捕捉する機能を有する物質である。ハロゲン化水素捕捉剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウムや、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン、メチルトリアザビシクロデセン、ジアザビシクロオクタンといった有機窒素誘導体を用いることができる。
また、上記(A)の含フッ素ピリミジン化合物を得る工程は、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で行われることが好ましい。上記一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、上記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを、フッ化物イオン捕捉剤の存在下で反応させることが好ましい。フッ化物イオン捕捉剤の存在下で上記(A)の反応を行うことにより、反応を効率的に行わせて高い収率で含フッ素ピリミジン化合物を得ることができる。フッ化物イオン捕捉剤としては、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウムまたはテトラメチルアンモニウムのカチオンと、トリフルオロ酢酸、ヘプタフルオロ酪酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド、N,N-ヘキサフルオロプロパン-1,3-ジスルホニルイミド、テトラフェニルホウ酸、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸またはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸のアニオンとの塩を挙げることができる。これらの中でも、カチオンとしてカリウムまたはナトリウムを用いたカリウム塩またはナトリウム塩の使用が好ましく、カチオンとしてナトリウムを用いたナトリウム塩の使用がより好ましい。フッ化物イオン捕捉剤に由来するカチオンは、反応中に一般式(2)で表されるフルオロイソブチレン誘導体から遊離したフッ素イオンを捕捉し、有機溶媒への溶解性の低い塩として析出されることで反応が促進され、高い収率で、上記一般式(1)で表される含フッ素ピリミジン化合物を得ることができるものと考えられる。
【0027】
上記工程(a)の反応時の反応温度は、0~100℃が好ましく、5~50℃がより好ましく、10~20℃がさらに好ましい。上記工程(a)の反応時の反応時間は、1~48時間が好ましく、2~36時間がより好ましく、4~24時間がさらに好ましい。
【0028】
上記工程(a)の反応で使用する溶媒としては、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルピロリドン、ジメチルエチレン尿素、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシド、スルホランといった非プロトン性極性溶媒、または、水といったプロトン性極性溶媒とジクロロメタン、トルエン、ジエチルエーテルといった非水溶性溶媒との二相系溶媒などを挙げることができる。また、上記工程(a)の反応の触媒として、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリドといった第四級アンモニウムハライド、第四級ホスホニウムハライド、クラウンエーテル類などを使用することができる。
【0029】
他の実施形態の含フッ素ピリミジン化合物の製造方法は、(b)下記一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(3)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピリミジン化合物を得る工程を有する。
【化7】
(上記一般式(1)、(3)および(4)において、Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、Xはハロゲン原子、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、または-NAを表し、A、Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表し、環Zはヘテロ原子を含む縮合複素環を表す。)
【0030】
Xである-OA、-SO(mは0~3の整数である)に含まれるAは水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。Xである-NAに含まれるA、Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。A、Aが炭素数1~10の炭化水素基を表す場合、例えば、上記Rの中で炭素数が1~10の炭化水素基とすることができる。
【0031】
一般式(4)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、一般式(3)で表される化合物との、上記工程(b)の反応は、下記反応式(B)として表される。
【化8】
【0032】
上記反応式(B)において、一般式(3)の化合物はそれぞれ、塩の形態であってもよい。塩の形態となる場合、一般式(3)の化合物のアミジノ基を構成するアミノ部分(-NH)およびイミノ部分(=NH)のうち少なくとも一方の部分が、カチオン化され(-NH )および(=NH )となり、対イオンと塩を形成する形態を挙げることができる。対イオンは1価のアニオンであれば特に限定されず、例えば、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン化物イオンを挙げることができる。
【0033】
他の実施形態の含フッ素ピリミジン化合物の製造方法では例えば、上記(B)の反応を一段階で行うことができる。このため、簡易的に上記一般式(1)の含フッ素ピリミジン化合物を得ることができる。なお、上記工程(b)の反応では、フルオロイソブタン誘導体と、一般式(3)の化合物のアミジノ基との間で環状のピリミジン構造が形成される。該ピリミジン構造の2位には一般式(3)の化合物の環Zに由来する基が位置する。また、該ピリミジン構造の4位、5位および6位にはそれぞれ、フルオロイソブタン誘導体に由来する-OR、CF、およびFが位置する。
【0034】
上記工程(b)の反応時の反応温度は、0~100℃が好ましく、5~50℃がより好ましく、10~20℃がさらに好ましい。上記工程(b)の反応時の反応時間は、1~48時間が好ましく、3~36時間がより好ましく、4~24時間がさらに好ましい。上記工程(b)の反応では、上記工程(a)と同様のハロゲン化水素捕捉剤を使用できる。
【0035】
上記工程(b)の反応で使用する溶媒としては、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルピロリドン、ジメチルエチレン尿素、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシド、スルホランといった非プロトン性極性溶媒、または、水といったプロトン性極性溶媒とジクロロメタン、トルエン、ジエチルエーテルといった非水溶性溶媒との二相系溶媒などを挙げることができる。また、上記工程(b)の反応の触媒として、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリドといった第四級アンモニウムハライド、第四級ホスホニウムハライド、クラウンエーテル類などを使用することができる。
【0036】
上記工程(a)および(b)において、ヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子からなる群から選択される少なくとも一種の原子であることが好ましい。また、環Zを構成する縮合複素環は芳香族の縮合複素環であることが好ましく、環Zを構成するπ電子数が10個、14個または18個であることがより好ましい。
【0037】
上記工程(a)および(b)において、一般式(1)、(2)および(4)におけるRは炭素数1~10のアルキル基を表すことが好ましい。また、上記工程(a)および(b)において、一般式(1)および(3)における環Zから構成される基としては、ヘテロ原子を含む縮合複素環から構成される基であれば特に限定されない。環Zから構成される基としては例えば、環原子数が9個または10個であり、ヘテロ原子(環原子)として1個、2個、3個、または4個の窒素原子を含み、かつ2つの環から構成される複素縮合環を挙げることができる。また、環Zから構成される基としては例えば、環原子数が13個であり、1個、2個、3個、または4個のヘテロ原子(環原子)を含み、かつ3つの環から構成される複素縮合環を挙げることができる。より具体的には環Zから構成される基として、ベンゾトリアゾル基、メチルインドリル基、インドリル基、イソインドリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジル基、ベンゾフリル基、ピロリジル基、インドリジニル基、ベンゾチエニル基、イソベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、クロメニル基、インダゾリル基、プリニル基、プテリジニル基、キノリジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、シンノリニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズイソチアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ピリドピリミジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、テトラヒドロキノリル基、テトラヒドロイソキノリル基、テトラヒドロキノキサリニル基、ジヒドロフタラジニル基、カルバゾリル基、フェナジニル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、チアントレニル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基などを挙げることができる。好ましくは、環Zから構成される基は、ベンゾトリアゾル基、メチルインドリル基、キノリル基、ナフチリジル基、ベンゾチアゾリル基、ジベンゾフラニル基であるのがよい。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例
【0039】
次に、本発明の効果をさらに明確にするために、実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
2-(1-ベンゾトリアゾリル)-6-フルオロ-4-メトキシ-5-トリフルオロメチルピリミジンの製造
氷水冷下、テトラヒドロフラン 35gに1-アミジノベンゾトリアゾール トルエンスルホン酸塩 6.7g(20mmol)、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド 25.5g(80mmol)、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン 4.9g(23mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン 13.4g(104mmol)とテトラヒドロフラン 15gの混合溶液を滴下し、室温まで昇温した。約24時間後、内容物のカラム精製を行い、下記式(5)で示される化合物(化学式:C12O、分子量:313.22g/mol)0.13gを得た。下記式(5)で示される化合物の単離収率は2%であった。
【化9】
得られた化合物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCI、m/z):313([M]
H-NMR(400MHz、CDCl) δppm:8.49(d,1H)、8.21(d,1H)、7.72(t,1H)、7.56(t,1H)、4.39(s,3H)
19F-NMR(400MHz、C) δppm:-57.8(m,1F)、-58.6(d,3F)
【0041】
(実施例2)
6-フルオロ-2-(4-(1-メチル)インドリル)-4-メトキシ-5-トリフルオロメチルピリミジンの製造
氷水冷下、アセトニトリル 10gに4-アミジノ-1-メチルインドール塩酸塩 4.2g(20mmol)、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン 4.9g(23mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン 13.4g(104mmol)とアセトニトリル 15gの混合溶液を滴下し、室温まで昇温した。約16時間後、内容物のカラム精製を行い、下記式(6)で示される化合物(化学式:C1511O、分子量:325.27g/mol)1.1gを得た。下記式(6)で示される化合物の単離収率は17%であった。
【化10】
得られた化合物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCI、m/z):325([M]
H-NMR(400MHz、CDCl) δppm:8.32(dd,1H)、7.53(dd,1H)、7.46(t,1H)、7.31(ddd,1H)、7.23(dd,1H)、4.29(s,3H)、3.86(s,3H)
19F-NMR(400MHz、C) δppm:-58.2(d,3F)、-61.2(dd,1F)
【0042】
(実施例3)
6-フルオロ-4-メトキシ-2-(2-キノリノ)-5-トリフルオロメチルピリミジンの製造
氷水冷下、アセトニトリル 10gに2-アミジノキノリン塩酸塩 4.2g(20mmol)、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン 4.9g(23mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン 13.4g(104mmol)とアセトニトリル 15gの混合溶液を滴下し、室温まで昇温した。約16時間後、内容物のカラム精製を行い、下記式(7)で示される化合物(化学式:C15O、分子量:323.25g/mol)2.1gを得た。下記式(7)で示される化合物の単離収率は33%であった。
【化11】
得られた化合物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCI、m/z):323([M]
H-NMR(400MHz、CDCl) δppm:8.55(d,1H)、8.36(dd,2H)、7.90(d,1H)、7.80(ddd,1H)、7.65(ddd,1H)、4.33(s,3H)
19F-NMR(400MHz、C) δppm:-58.7(d,3F)、-59.3(dd,3F)
【0043】
(実施例4)
6-フルオロ-4-メトキシ-2-(2-(1,6-ナフチリジル))-5-トリフルオロメチルピリミジンの製造
氷水冷下、アセトニトリル 10gに2-アミジノ-1,6-ナフチリジン塩酸塩 4.2g(20mmol)、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン 4.9g(23mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン 13.4g(104mmol)とアセトニトリル 15gの混合溶液を滴下し、室温まで昇温した。約16時間後、内容物のカラム精製を行い、下記式(8)で示される化合物(化学式:C14O、分子量:324.24g/mol)0.4gを得た。下記式(8)で示される化合物の単離収率は6%であった。
【化12】
得られた化合物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCI、m/z):324([M]
H-NMR(400MHz、CDCl) δppm:9.42(d,1H)、8.88(m,1H)、8.70(m,1H)、8.54(dd,1H)、8.20(dd,1H)、4.38(m,3H)
19F-NMR(400MHz、C) δppm:-58.8(m,4F)
【0044】
(実施例5)
実施例1の1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペンの代わりに、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-トリフルオロメチル-プロパンを使用した、2-(1-ベンゾトリアゾリル)-6-フルオロ-4-メトキシ-5-トリフルオロメチルピリミジンの製造
氷水冷下、テトラヒドロフラン 35gに1-アミジノベンゾトリアゾール塩酸塩 4.0g(20mmol)、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド 32g(100mmol)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-トリフルオロメチル-プロパン 5.4g(23mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン 16.8g(130mmol)とテトラヒドロフラン 15gの混合溶液を滴下し、室温まで昇温した。約24時間後、内容物のカラム精製を行った。得られた化合物の分析結果は、実施例1の生成物と同様であった。
【0045】
(実施例6)
実施例2の1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペンの代わりに、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-トリフルオロメチル-プロパンを使用した、6-フルオロ-2-(4-(1-メチル)インドリル)-4-メトキシ-5-トリフルオロメチルピリミジンの製造
氷水冷下、アセトニトリル 10gに4-アミジノ-1-メチルインドール塩酸塩 4.2g(20mmol)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-トリフルオロメチル-プロパン 5.4g(23mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン 16.8g(130mmol)とアセトニトリル 15gの混合溶液を滴下し、室温まで昇温した。約16時間後、内容物のカラム精製を行った。得られた化合物の分析結果は、実施例2の生成物と同様であった。
【0046】
(実施例7)
実施例3の1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペンの代わりに、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-トリフルオロメチル-プロパンを使用した、6-フルオロ-4-メトキシ-2-(2-キノリノ)-5-トリフルオロメチルピリミジンの製造
氷水冷下、アセトニトリル 10gに2-アミジノキノリン塩酸塩 4.2g(20mmol)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-トリフルオロメチル-プロパン 5.4g(23mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン 16.8g(130mmol)とアセトニトリル 15gの混合溶液を滴下し、室温まで昇温した。約16時間後、内容物のカラム精製を行った。得られた化合物の分析結果は、実施例3の生成物と同様であった。
【0047】
(実施例8)
実施例4の1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペンの代わりに、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-トリフルオロメチル-プロパンを使用した、6-フルオロ-4-メトキシ-2-(2-(1,6-ナフチリジル))-5-トリフルオロメチルピリミジンの製造
氷水冷下、アセトニトリル 10gに2-アミジノ-1,6-ナフチリジン塩酸塩 4.2g(20mmol)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-トリフルオロメチル-プロパン 5.4g(23mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン 16.8g(130mmol)とアセトニトリル 15gの混合溶液を滴下し、室温まで昇温した。約16時間後、内容物のカラム精製を行った。得られた化合物の分析結果は、実施例4の生成物と同様であった。
【0048】
(実施例9)
2-(2-ベンゾチアゾリル)-6-フルオロ-4-メトキシ-5-(トリフルオロメチル)ピリミジンの製造
氷水冷下、アセトニトリル 10gに2-アミジノ-ベンゾチアゾール塩酸塩0.5g(2.3mmol)、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン 0.6g(2.7mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン1.6g(12mmol)とアセトニトリル 5gの混合溶液を滴下し、室温まで昇温した。約16時間後、内容物のカラム精製を行い、下記式(9)で示される2-(2-ベンゾチアゾリル)-6-フルオロ-4-メトキシ-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン(化学式:C13OS、分子量:329.27g/mol)0.2gを得た。下記式(9)で示される化合物の収率は23%であった。
【化13】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCI、m/z):328.9([M]-
【0049】
(実施例10)
2-(2-ジベンゾフラニル)-6-フルオロ-4-メトキシ-5-(トリフルオロメチル)ピリミジンの製造
氷水冷下、アセトニトリル10gに2-アミジノ-ジベンゾフラン塩酸塩 0.5g(2mmol)、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン0.5g(2.3mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないようにジイソプロピルエチルアミン 1.4g(11mmol)とアセトニトリル 5gの混合溶液を滴下し、室温まで昇温した。約16時間後、内容物のカラム精製を行い、下記式(10)で示される2-(2-ジベンゾフラニル)-6-フルオロ-4-メトキシ-5-(トリフルオロメチル)ピリミジン(化学式:C1810、分子量:362.28g/mol)0.1gを得た。下記式(10)で示される化合物の収率は18%であった。
【化14】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCI、m/z):362.5([M]
【0050】
(イネいもち病に対する防除試験)
実施例4で作製した6-フルオロ-4-メトキシ-2-(2-(1,6-ナフチリジル))-5-トリフルオロメチルピリミジンをアセトンに溶かし、6-フルオロ-4-メトキシ-2-(2-(1,6-ナフチリジル))-5-トリフルオロメチルピリミジンの濃度が100,000ppmのアセトン溶液を調製した。このアセトン溶液1mlに滅菌水を加え50mlとし、2000ppm被験液を調製した。次いで、2000ppm被験液10mlに滅菌水を加えて20mlとし、1000ppm被験液を調製した。2000ppm被験液、1000ppm被験液をそれぞれ、別途作製したオートミール培地に1000μl滴下処理し風乾させた。続いて、8mmのイネいもち病ディスクを、菌叢がオートミール培地の処理面に接するように設置した。その後、オートミール培地を25℃の恒温室に7日間静置した後、菌糸の伸長長さを調査した。下記式(A)に従って算出した防除価を、下記表1に示す。
防除価={(無処理の菌糸伸長長さ平均-処理済の菌糸伸長長さ平均)/ 無処理の菌糸伸長長さ平均 }×100 (A)
なお、上記式(A)において「無処理」とは、被験液としてアセトン1mlを滅菌水で50mlに希釈したものを作成し、培地に滴下処理したことを表す。
「処理済」とは、2000ppm被験液または1000ppm被験液を培地に滴下処理したことを表す。
【表1】

表1の結果から、6-フルオロ-4-メトキシ-2-(2-(1,6-ナフチリジル))-5-トリフルオロメチルピリミジンは、イネいもち病菌に対する防除活性を有することを確認できた。