(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】資材用基布およびその製法
(51)【国際特許分類】
D03D 1/02 20060101AFI20230914BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20230914BHJP
D06C 7/02 20060101ALI20230914BHJP
B60R 21/235 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
D03D1/02
D03D15/283
D06C7/02
B60R21/235
(21)【出願番号】P 2022510770
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2021013109
(87)【国際公開番号】W WO2021193966
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-07-04
(31)【優先権主張番号】P 2020056760
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】田中 剛
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/115864(WO,A1)
【文献】特開2012-52280(JP,A)
【文献】国際公開第2015/025842(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/137495(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 1/02
D03D 15/283
D06C 7/02
B60R 21/235
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
資材用織物基布において基布を解体した糸の強度が6.6cN/dtex~8.5cN/dtexである繊維で構成され、布表面に樹脂コート、ラミネート又は樹脂含浸処理が施されていない資材用織物基布であって、ASTM D6479に規定されたEdgecomb Resistance測定で得られる構成繊維の強力伸度特性(FS)曲線において、経緯糸共に、25℃環境下と150℃環境下のいずれでも、伸度0.4%~4.4%の範囲で増加した強力量を測定方向の繊維総断面積で割った値であるE1が、3MPa~25MPaであり、かつ、繊維切断点より伸度-4.8%~-0.8%の範囲で増加した強力量の比を測定方向の繊維総断面積で割った値であるE2が、10MPa~30MPaであることを特徴とする資材用織物基布。
【請求項2】
ASTM 6476に準拠し、初期圧を100±5kPaとし、30kPa~70kPa間で測定した基布部の動的通気度が、400mm/s以下である、請求項1に記載の資材用織物基布。
【請求項3】
残留油剤量が、該基布に対して200重量ppm以上800重量ppm以下である、請求項1又は2に記載の資材用織物基布。
【請求項4】
織組織が平織である、請求項1~3のいずれか1項に記載の資材用織物基布。
【請求項5】
基布を構成する繊維の素材がポリヘキサメチレンアジパミドである、請求項1~4のいずれか1項に記載の資材用織物基布。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の資材用織物基布で作製されたエアバッグ。
【請求項7】
以下の工程:
製織工程;
精練なし又は70℃以下で精練する工程;
乾燥なし又は70℃以下で乾燥を行う工程;
150℃以上で熱処理を行う工程であって、熱処理終段で熱処理での最小幅に対して1%以上の引締幅出をする工程;
を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の資材用織物基布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、資材用基布およびその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エアバッグは車両の乗員保護用安全装置として不可欠なものとなっている。エアバッグに必要な特性としては作動時の衝撃、周辺部材の擦過に耐える強度、必要な時間内に安定した展開を得るための気密性、限られた収納スペースに格納できる柔軟性、コンパクト性が要求されている。特に昨今の傾向としては斜め衝突に対するAピラー部への保護の強化、自動運転による任意な乗員姿勢への対応が検討され、より広範囲の保護が求められ、これよりエアバッグ容量は増加する。一方で、車内デザインによるエアバッグ収納部はより制限される。したがって、エアバッグの容積増大により、展開ガス量が増え、膨張部と非膨張部の境界部分の大きな応力に耐え、気密性を発揮する特性の要求が高まった。さらに、エアバッグの容積増大と収納性改善という、相反する特性を達成することがより必要になってきている。また、ユニットコスト低減のために、パイロテクニックインフレ―タでは構造の簡易化によるガス高温化の傾向もあり、上記特性をより高温の環境下での展開にて満足することも必要である。
【0003】
これらの問題を解決すべく、以下の特許文献1では、繊維表面に特定の物質を特定量存在させることで単糸間の摩擦を低減せしめ、製織時の糸条にかかる応力を利用し、糸条の扁平化を促進させ、基布としたとしたときの気密性の増加と柔軟性付与により収納性向上させる技術が開示されている。しかしながら、当該文献には高温時における効果の記述はない。また、昨今のエアバッグの大型化による膨張部と非膨張部境界にかかるより強い応力発生や、より高温化されたガスを発生するインフレ―タ適用の気密性維持は、この技術では十分といえない場合がある。
【0004】
また、以下の特許文献2では、繊維表面に芳香族を含有する物質を特定量存在させることにより、織物としたときの経緯糸間の摩擦を増大させることで、膨張部と非膨張部の目開きを常温のみならず、高温時においても抑制させられる技術が開示されている。しかしながら、この技術でも、大型化したバッグの膨張部と非膨張部にかかる応力に対し高温化では十分といえない場合があり、また、収納性に関しては繊維間摩擦増大によって損なわれる場合がある。
このように、大型化するエアバッグと高温化するインフレ―タ使用時にも安定した展開性、気密性、収納性を有したエアバッグ用基布は未だ開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-183309号公報
【文献】国際公開第2014/123090号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した技術水準に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、袋体としたときの膨張部と非膨張部の境界部分の目開きが抑制され、動的通気度が低く、かつ、バーストしにくい特性を高温時においても発揮できる資材用基布、例えば、エアバッグ用基布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、前記課題を解決すべく鋭意研究し実験を重ねた結果、以下の構成とすることで、かかる課題を解決しうることを予想外に見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]資材用織物基布において基布を解体した糸の強度が6.6cN/dtex~8.5cN/dtexである繊維で構成され、布表面に樹脂コート、ラミネート又は樹脂含浸処理が施されていない資材用織物基布であって、ASTM D6479に規定されたEdgecomb Resistance測定で得られる構成繊維の強力伸度特性(FS)曲線において、経緯糸共に、25℃環境下と150℃環境下のいずれでも、伸度0.4%~4.4%の範囲で増加した強力量を測定方向の繊維総断面積で割った値であるE1が、3MPa~25MPaであり、かつ、繊維切断点より伸度-4.8%~-0.8%の範囲で増加した強力量の比を測定方向の繊維総断面積で割った値であるE2が、10MPa~30MPaであることを特徴とする資材用織物基布。
[2]ASTM 6476に準拠し、初期圧を100±5kPaとし、30kPa~70kPa間で測定した基布部の動的通気度が、400mm/s以下である、前記[1]に記載の資材用織物基布。
[3]残留油剤量が、該基布に対して200重量ppm以上800重量ppm以下である、前記[1]又は[2]に記載の資材用織物基布。
[4]織組織が平織である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の資材用織物基布。
[5]基布を構成する繊維の素材がポリヘキサメチレンアジパミドである、前記[1]~[4]のいずれかに記載の資材用織物基布。
[6]前記[1]~[5]のいずれかに記載の資材用織物基布で作製されたエアバッグ。
[7]以下の工程:
製織工程;
精練なし又は70℃以下で精練する工程;
乾燥なし又は70℃以下で乾燥を行う工程;
150℃以上で熱処理を行う工程であって、熱処理終段で熱処理での最小幅に対して1%以上の引締幅出をする工程;
を含む、前記[1]~[5]のいずれかに記載の資材用織物基布の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る資材用織物基布は、袋体としたときの膨張部と非膨張部の境界部分の目開きが抑制され、動的通気度が低く、かつ、バーストしにくい特性を高温時においても発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ASTM_D6479にて計測されたFS曲線とE1、E2のイメージを説明するグラフである。
【
図4】テンターでの熱セット(熱処理)工程の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明の1の実施形態は、基布を解体した糸の強度が6.6cN/dtex~8.5cN/dtexである繊維で構成され、布表面に樹脂コート、ラミネート又は樹脂含浸処理が施されていない資材用織物基布であって、ASTM D6479に規定されたEdgecomb Resistance測定で得られる構成繊維の強力伸度特性(FS)曲線において、経緯糸共に、25℃環境下と150℃環境下のいずれでも、伸度0.4%~4.4%の範囲で増加した強力量を測定方向の繊維総断面積で割った値であるE1が、3MPa~25MPaであり、かつ、繊維切断点より伸度-4.8%~-0.8%の範囲で増加した強力量を測定方向の繊維総断面積で割った値であるE2が、10MPa~30MPaであることを特徴とする資材用織物基布である。
【0012】
本実施形態の資材用織物基布は、かかる構成により、袋体としたときに低温から高温まで気密性を維持でき、膨張部と非膨張部の境界部分の目開きが抑制されるため、バーストしにくい特性を高温時においても発揮できる。
【0013】
本実施形態の資材用織物基布において基布を解体した糸(解体糸)の強度は6.6cN/dtex~8.5cN/dtexである。解体糸強度が6.6cN/dtex以上であると、袋体を作製し展開した場合に、膨張部と非膨張部の境界部分に加わる応力に耐え、機械特性でバーストすることが回避できる。より好ましくは、6.8cN/dtex以上であり、一層好ましくは、7.0cN/dtex以上である。糸の強度が高いことは糸の配向が高いことあり、基布を構成する繊維の伸びが少ないため、基布の通気度を低く抑え、さらに、縫い目で目開きすることを抑制できる。他方、解体糸強度が8.5cN/dtexを超えると、単糸が切れ、毛羽が発生することにより基布の品位が悪化する場合がある。より好ましくは、8.0cN/dtex以下であり、一層好ましくは、7.5cN/dtex以下である。
【0014】
本実施形態の資材用織物基布を構成する繊維の総繊度は、特に制限はないが、基布の柔軟性及び収納性の観点から、135dtex~800dtexが好ましく、215dtex~500dtexがより好ましく、230dtex~490dtexがより好ましい。
【0015】
本実施形態の資材用織物基布を構成する繊維の単糸繊度も、特に制限はないが、柔軟性の観点から、0.5dtex~10dtexが好ましく、2dtex~7dtexがより好ましく、3dtex~6dtexがさらに好ましい。
【0016】
本実施形態の資材用織物基布は、ASTM D6479に規定されたEdgecomb Resistance測定を行う際に得られる強力伸度特性(FS)曲線において、経緯糸共に、25℃環境下と150℃環境下のいずれでも、伸度0.4%~4.4%の範囲で増加した強力量を測定方向の繊維総断面積で割った値であるE1が、3MPa~25MPaであり、かつ、繊維切断点より伸度-4.8%~-0.8%の範囲で増加した強力量を測定方向の繊維総断面積で割った値であるE2が、10MPa~30MPaである。
E1は、基布の織糸がずれ始める抵抗力である。E1が3MPa以上であれば、基布の織糸がずれにくくなり、袋体としたときの膨張部と非膨張部の境界部分、すなわち、縫い目における目開きが起こりにくくなる。目開きによる気密性の低下や熱ガス通過によるバースト発生が抑制される。他方、E1が25MPa以下であれば、局所的な目開きが起こりにくくなる。さらに、E1の値が小さいほど、基布が硬くなって収納性が損なわれることがない。すなわち、E1は、縫い目開きに対して適正な領域がある。E1は、より好ましくは、5MPa~22MPaである。E2は、基布の織糸がずれるときの最大の抵抗力である。E2が10MPa以上であれば、高圧で基布への応力が大きくなった際の、基布そのものの通気性を抑えることができ、基布の高圧下の気密性が維持できる。E2が30MPa以下であれば、局所的な目開きが起こりにくくなる。特に、150℃環境下のE2が経緯ともに高い値であれば、高温高圧環境下にある袋体が、衝撃吸収時に高い到達圧に至りつつ、バーストせず機能することができる。E2は、より好ましくは、15MPa~25MPaである。
【0017】
本明細書中、用語伸度「ASTM D6479に規定されたEdgecomb Resistance測定で得られる基布の強力伸度特性(FS)曲線における伸度」とは、原長に対する引張伸びの比率を意味する。
【0018】
本明細書中、用語伸度「測定方向の繊維総断面積」とは、原糸繊度から算出した真円断面の面積を意味する。
【0019】
本実施形態の資材用織物基布は、動的通気度がASTM 6476に準拠し、初期圧を100±5kPaとし、30kPa~70kPa間で測定した基布部の動的通気度が、400mm/s以下であることが好ましく、350mm/s以下であればより好ましい。動的通気度が400mm/s以下で少ないほど、エアバッグ袋体の気密性がよく、展開到達圧が高まる。動的通気度の下限は特に限定されないが、100mm/s以上であってもよい。
【0020】
本実施形態の資材用織物基布では、基布に柔軟性を付与させる観点から、仕上げ完了後の残留油剤量が、該基布に対して200重量ppm以上800重量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは400重量ppm以上600重量ppm以下である。残留油剤とは、紡糸油剤、製経油剤、柔軟化仕上げ剤等を含み、例えば、平滑剤、乳化剤及び制電剤で構成されるものである。残留油剤量は、800重量ppm以下で少ないほうが、目開き抑制し、通気度抑制となる。他方、200重量ppm以上有することで、基布の柔軟性がよく、袋体成形に有利である。
【0021】
平滑剤の例としては、ジオクチルアジペート、ジ(2-オクチルドデシル)アジペート、1,6-ヘキサンジオールジオレート、ジオレイルセバケート、ジラウリルアゼレート、ジオレイルアジペート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジオレイルチオジプロピオネート、ビスフェノールAジラウレート、エチレングリコールジオレート、ポリエチレングライコールジラウレート、1,4ブタンジオールジオレート、グリセリントリラウレート、グリセリントリオレート、ソルビタントリオレート、ソルビタンテトラオレート、トリメチロールプロパントリラウレート、ペンタエリスリトールテトラオレートが挙げられる。
【0022】
乳化剤及び制電剤としては、硬化ひまし油トリオレート等、これらのAO付加物、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニールフェノールエーテル、硬化ひまし油のエチレンオキサイド付加物、硬化ひまし油のエチレンオキサイド付加物トリラウレート、硬化ひまし油のエチレンオキサイド付加物トリオレートが挙げられる。
【0023】
また、乳化剤としてアニオン界面活性剤としては、例えば、高級アルコール硫酸エステルソーダ、アルキル燐酸エステルカリ等の無機、有機の塩類等が使用できる。
【0024】
残留油剤は、紡糸時に専用ノズルやタッチロール等を用いた方法で付与できる。
残留油剤は、整経時、精練、水洗時に浸漬して付与することも可能であり、この後に水洗や精練にて所定の残存量に調整する。
【0025】
本発明の他の実施形態は、以下の工程:
製織工程;
精練なし又は70℃以下で精練する工程;
乾燥なし又は70℃以下で乾燥を行う工程;
150℃以上で熱処理を行う工程であって、熱処理終段で熱処理での最小幅に対して1%以上の引締幅出をする工程;
を含む、前記資材用織物基布の製造方法である。
【0026】
本実施形態の資材用織物基布の製造における、製織後の加工工程が、好ましい基布特性を得るに重要である。
製織が、ウォータージェット織機であれば、水流によって基布織物への残留油剤成分が好ましい油剤量となる場合があり、精練を行わずに次工程に進むのも好ましい。また、精練を行って基布織物への残留油剤成分量を適正にする場合、過剰に精練するとE1、E2が増加しすぎる場合があるため、注意が必要である。その際、精練温度は、70℃以下室温以上が好ましく、より好ましくは60℃以下室温以上である。無精練または精練が70℃以下であれば、織糸の収縮力を発現しきることなく、加工の最終工程で基布織物の組織引締めを十分発現する熱セットができる。それにより、E1が見かけだけ高過ぎるが縫い目開きするということがなくなる。精練は水洗でよく、さらに精練剤を用いてもよい。精練剤を用いる場合、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等が使用可能である。また、キレート剤、界面活性剤を用いる場合もある。精練工程で経方向に張力をかけるのは、織物搬送を安定化させるため有用であるが、温度を上げた場合は、湿潤状態で織物に張力を与えていても織糸の収縮力発現を抑止することにはならない。
【0027】
次に、精練後の布は、そのまま熱セットすることが好ましい。ここで、精練後の布を乾燥させて、次工程に備える場合、乾燥温度は70℃以下で室温までが好ましい。無乾燥または乾燥が70℃以下であれば、織糸の収縮力を発現しきることなく、加工の最終工程で基布織物の組織引締めを十分発現する熱セットができる。それにより、E1が見かけだけ高過ぎるが縫い目開きするということがなくなる。
【0028】
精練後、または、乾燥後に引き続く熱セット(熱処理)工程では、熱セット温度は150℃から190℃が好ましい。熱セット温度が150℃以上であれば、セットは十分となり、E1もE2も高い基布となり、目開き少なく高圧でも低通気である。セット不十分な場合にみられるような、織物緊張形態でE2高く、高圧下での通気度は低いものの、E1が高過ぎで、縫い目開きするということがなくなる。
熱セット工程では、テンターを用いるが、乾燥には乾燥ドラムを用いない方が、E1、E2の過剰な低下を防ぐ観点から好ましい。これは、湿潤状態の基布を乾燥ドラムにて乾燥するときの、幅(緯)方向への収縮により、E1、E2の低下や、乾燥過程での幅固定の不安定化による物性斑が発生する場合があるためである。
テンターにて熱セットする場合、経方向のオーバーフィードは0~5%が好ましく、0~2%がより好ましい。オーバーフィードを調整することで、25℃と150℃環境下でのE1が3MPa~25MPaの範囲の中央に、また、E2が10MPa~30MPaの範囲の中央に、それぞれ近づく。
【0029】
また、テンターにて熱セットする場合、下記式で表される熱セット最大幅入が0~8%であることが好ましい。
熱セット最大幅入(%)=[(熱セット入口幅-熱セット最小幅)/熱セット入口幅]×100
{式中、「熱セット入口幅」は、
図4の符号(1)で示す熱セット加熱炉入口での生機の幅で(熱セット入口幅)であり、「熱セット最小幅」は、
図4の符号(2)で示す熱セット加熱炉内での生機の最小幅(熱セット最小幅)である。}。
構成繊維の熱収縮力によって織物構造を引き締めるためには、自由に収縮させて幅入れしてしまうのではなく、収縮幅入れ率を規制して制御する。好ましくは熱セット最大幅入8%以下で小さいほうが、E1やE2を高めにしやすい。熱セット最大幅入は、より好ましくは6%以下であり、一層好ましくは4%以下である。
【0030】
さらに、熱セット加工は、多段階で行うことが好ましい。とりわけ、熱セット加工の最終段階での基布織組織の引き締めが重要である。
下記式で表される熱セット最終幅入が0~6%であることが好ましい。
熱セット最終幅入(%)=[(熱セット入口幅-熱セット出口幅)/熱セット入口幅]×100
{式中、「熱セット出口幅」は、
図4の符号(3)で示す熱セット加熱炉出口での生機の幅(熱セット出口幅)であり、「熱セット入口幅」は、前記した
図4の符号(1)で示す熱セット加熱炉入口での生機の幅で(熱セット入口幅)である。}。
【0031】
さらに、{熱セット最大幅入(%)―熱セット最終幅入(%)}により定義される引締め量が1~4%であることが好ましい。熱セット最終幅(熱セット出口幅(3))を、熱セット最小幅(熱セット最小幅(2))よりも大きくすることで、基布の構造ゆるみが抑えられる。これが引締め幅出しとなる。引締め量が1%以上であることで、E1、E2ともに高くでき、低目開き、低通気の基布が得られる。引締め量は、より好ましくは2%以上である。熱セット最終幅入(熱セット出口幅(3))を熱セット最小幅入(熱セット最小幅(2))よりも大きくすることによる基布の引締め効果は、前段の熱セット工程が十分な温度であって、収縮力発現により織組織が十分に緊張構造となったうえで有効になるものである。引締めが4%以下であれば、織物仕上がりが均一である。
【0032】
本実施形態の資材用織物基布の織組織は、平織構造が基布強力的に有利であるため、好ましいが、他の織組織、又は組み合わせデザインも使用可能である。
【0033】
本実施形態の資材用織物基布の構成繊維の素材(材料)としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド6、610、46、66、ポリエチレンナフタレート等が挙げられるが、耐熱性、強力、コストの観点から、ポリアミド66、ポリエチレンテレフタレートが好ましく、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)が特に好ましい。
【実施例】
【0034】
以下、実施例、比較例にて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
まず、実施例等に用いた測定、評価方法を説明する。
【0035】
(1)原糸、解体糸(マルチフィラメント)の繊度(dtex)、強力(N)、強度(cN/dtex)
繊維の繊度、強力、強度は、JIS_L1013に従って測定した。
【0036】
(2)原糸の油剤量
原糸が有する紡糸油剤等の油剤量(wt%)は、JIS_L1013(8.27)に則り計測した。但し、抽出溶媒はシクロヘキサン溶剤を用いた。
【0037】
(3)基布の残留油剤量
残留油剤量(油剤付着量)は、基布を切り出し、これをシクロヘキサンにてソックスレー抽出を実施し、その後、抽出液の溶媒を蒸発させ、残留油分を仕込み基布重量で割った値で求めた。
【0038】
(4)原糸の糸糸間摩擦力
原糸の糸糸間摩擦力は、
図2に示すように、原糸を3回撚りかけし互いに接触させ、給糸側の荷重(錘T1)を140gとして、撚りかけ後の引き取り張力(ロードセルT2)を測定し、T2/T1を糸糸間摩擦力fとした。
【0039】
(5)基布の強力(N)、伸度(%)
基布強力、伸度は、JIS_L1096のストリップ法にて測定した。
【0040】
(6)経緯糸の織密度
経緯糸の織密度は、TEXTEST社製FX3255を用いて経緯それぞれ5点を測定し、その平均とした。
【0041】
(7)E1
E1は、ASTM_D6479の方法で25℃(室温)及び150℃環境下にて測定し、伸度0.4%~4.4%の範囲で増加した強力量を、以下の式1に示す測定方向の繊維総断面積を算出した値で割った値とした。サンプル幅は5cmとした。試料は、梳き刃と把持具で20cmの間隔にて取り付け、これを試料原長として引張伸びの比率を伸度とした。
A=(d*D*(5/2.54))/(ρ*10^10)…式1
{式中、Aは、繊維総断面積(m^2)であり、dは、繊維繊度(dtex)であり、Dは、試料の把持幅方向の織密度で2.54cm当たりの糸本数であり、そしてρは、ナイロン66の密度1.14(g/cm^3)である。}。
【0042】
(8)E2
E2は、上記E1でのASTM_D6479の方法で25℃(室温)及び150℃環境下にて測定し、切断点(計測負荷が急落する点)より伸度-4.8%~-0.8%の範囲で増加した強力量を、E1と同じ計算式で算出した。サンプル幅は5cmとした。
【0043】
(9)目開き
図3に示すように、幅8cm×長さ10cmのガス導入口を有した直径30cmのバッグを1350dtexの撚糸からなる縫い糸にて65針/dmの本縫いで、基布を縫合し作製し、これを表裏反転させエアバッグを得、得られたエアバッグを150℃の熱風乾燥機に入れ10分間放置後、乾燥機に入れたままでマイクロシス社製CGSシステムにて圧力5MPa、オリフィス0.6インチ、タンク容量250ccの条件下でヘリウムガスを瞬時に供給し展開した後に取り出し、十分冷却させた後、バッグの縫製部の最大の目開きをノギスにて測定した。
【0044】
(10)基布の動的通気量
基布部の動的通気量は、ASTM_D6476に準拠して実施し、初期圧を100±5kPaとして計測し、30~70kPa間の動的通気量の平均として計測した。
【0045】
(11)高温近接展開評価(耐高温バースト性)
ドライバーエアバッグ内容積60Lをベントホールなしで縫製し、これに、パイロインフレーターでタンク圧200kPa有するものを装着した。全体を80℃オーブンで加熱した後、すぐに、評価台に設置した。降温しないうちに点火した。15cm距離の近接板に向けて展開した。破袋が無く縫製部に変化なきものを「○」評価とした。破袋が無く縫製部に基布ほつれなどの乱れが認められるものを「△」とした。破袋の生じたものを「×」とした。
【0046】
[実施例1]
90%蟻酸相対粘度80のポリアミド66樹脂を300℃で溶融紡糸し、冷却しながら紡糸油剤をタッチロールにて繊維に対し0.8重量%付与し、その後200℃の延伸ロールにて4.9倍に延伸し、圧縮空気にて交絡を付与後、繊度470dtex、フィラメント数136本の原糸を得た。原糸の強力は40.5Nであった。この原糸を用い、糊付けすることなく豊田自動織機社製LWT710を用い、幅220cmの通し幅、製織経糸張力0.24cN/dtex、両耳部の絡み糸には22dtexナイロン6モノフィラメント各2本、増し糸は地糸と同じナイロン66を両端に各10本用いて製織し経緯密度47本/inchの平織生機を得た。その後に3段浴にて30-30-30℃にて計40sec間水洗を行った後、乾燥ドラムを使用することなく連続してピンテンターにて入口80℃、熱セット時190℃、最終130℃でトータル50sec間、オーバーフィード0%、熱セット最大幅入6%、熱セット最終幅入4%、引締め量2%のセット処理を行った。目的の経緯49本/inchの基布を得た。得られた解体糸強度と基布の各種物性等を以下の表1、2に示す。
【0047】
[実施例2]
実施例1と同じ繊維を用い、製織時の経緯密度を51本/inchとした以外は製織条件を同じとし、実施例1と同じ条件でのセットを行い、目的の経緯53本/inchの基布を得た。得られた解体糸強度と基布の各種物性等を以下の表1、2に示す。
【0048】
[実施例3]
実施例1と同じ繊維を用い、製織の経緯密度を53本/inchとした以外は製織条件を同じとし、実施例1と同じ条件でのセットを行い、目的の経緯55本/inchの基布を得た。得られた解体糸強度と基布の各種物性等を以下の表1、2に示す。
【0049】
[実施例4]
90%蟻酸相対粘度80のポリアミド66樹脂を300℃で溶融紡糸し、冷却しながら紡糸油剤をタッチロールにて繊維に対し0.8重量%付与し、その後200℃の延伸ロールにて4.8倍に延伸し、圧縮空気にて交絡を付与後、繊度350dtex、フィラメント数136本の原糸を得た。原糸の強力は30.0Nであった。この原糸を用い、糊付けすることなく豊田自動織機社製LWT710を用い、幅220cmの通し幅、製織経糸張力0.24cN/dtex、両耳部の絡み糸には22dtexナイロン6モノフィラメント各2本、増し糸は地糸と同じナイロン66を両端に各10本用いて製織し経緯密度58本/inchの平織生機を得た。以降は実施例1と同様な加工を行い、目的の経緯60本/inchの基布を得た。得られた解体糸強度と基布の各種物性等を以下の表1、2に示す。
【0050】
[実施例5]
90%蟻酸相対粘度80のポリアミド66樹脂を300℃で溶融紡糸し、冷却しながら紡糸油剤をタッチロールにて繊維に対し0.8重量%付与し、その後200℃の延伸ロールにて4.7倍に延伸し、圧縮空気にて交絡を付与後、繊度235dtex、フィラメント数72本の原糸を得た。原糸の強力は20.0Nであった。この原糸を用い、糊付けすることなく豊田自動織機社製LWT710を用い、幅220cmの通し幅、製織経糸張力0.24cN/dtex、両耳部の絡み糸には22dtexナイロン6モノフィラメント各2本、増し糸は地糸と同じナイロン66を両端に各10本用いて製織し経緯密度69本/inchの平織生機を得た。以降は実施例1と同様な加工を行い、目的の74本/inchの基布を得た。得られた解体糸強度と基布の各種物性等を以下の表1、2に示す。
【0051】
【0052】
【0053】
[比較例1]
実施例1と同じ繊維を用い、同様な製織を行った。その後に3段浴にて30-30-30℃にて計40sec間水洗を行い110℃のドラム乾燥を60sec実施して乾燥後一旦巻き取った。次に固形分1500ppmのシリコン樹脂エマルション浴に浸漬し、その後ピンテンターにて入口80℃、熱セット温度190℃、セット最終130℃としてトータル50sec間、オーバーフィード4%、熱セット最大幅入2%、熱セット最終幅入2%、引締め量0%のセット処理を行い、目的の基布を得た。得られた解体糸強度と基布の各種物性等を以下の表3、4に示す。E1、E2ともに低く、高圧通気が多く、縫い目開きが大きい。高温近接展開評価は△となった。
【0054】
[比較例2]
90%蟻酸相対粘度80のポリアミド66樹脂を300℃で溶融紡糸し、冷却しながら、実施例1の紡糸油剤にビスフェノールAジラウレートを30重量%含有させた油剤をタッチロールにて繊維に対し0.8重量%付与し、その後200℃の延伸ロールにて4.9倍に延伸し、圧縮空気にて交絡を付与後、繊度470dtex、フィラメント数136本の原糸を得た。原糸の強力は40.5Nであった。この原糸を用い、糊付けすることなく豊田自動織機社製LWT710を用い、幅220cmの通し幅、製織経糸張力0.24cN/dtex、両耳部の絡み糸には22dtexナイロン6モノフィラメント各2本、増し糸は地糸と同じナイロン66を両端に各10本用いて製織し経緯密度51本/inchの平織生機を得た。その後に3段浴にて80-80-80℃にて計40sec間水洗を行った後、110℃の乾燥ドラムにて40sec間乾燥し一旦巻き取ることなくピンテンターにて100℃、トータル50sec間、オーバーフィード4%、熱セット最大幅入2%、熱セット最終幅入2%、引締め量0%のセット処理を行い、目的の53本/inchの基布を得た。得られた解体糸強度と基布の各種物性等を以下の表3、4に示す。E2は高すぎ、高圧通気が多く、縫い目開きが大きい。高温近接展開評価は△となった。
【0055】
[比較例3]
90%蟻酸相対粘度80のポリアミド66樹脂を300℃で溶融紡糸し、冷却しながら紡糸油剤をタッチロールにて繊維に対し0.8重量%付与し、その後200℃の延伸ロールにて4.0倍に延伸し、圧縮空気にて交絡を付与後、繊度470dtex、フィラメント数136本の原糸を得た。原糸の強力は35.0Nであった。この原糸を用い、実施例1と同様な加工を行い、目的の基布を得た。得られた解体糸強度と基布の各種物性等を以下の表3、4に示す。E1、E2とも低く、高圧通気が多く、縫い目開きがやや大きい。高温近接展開評価は×となった。
【0056】
[比較例4]
90%蟻酸相対粘度80のポリアミド66樹脂を300℃で溶融紡糸し、冷却しながら紡糸油剤をタッチロールにて繊維に対し1.5重量%付与し、その後200℃の延伸ロールにて4.9倍に延伸し、圧縮空気にて交絡を付与後、繊度470dtex、フィラメント数136本の原糸を得た。原糸の強力は40.5Nであった。この原糸を用い、糊付けすることなく豊田自動織機社製LWT710を用い、幅220cmの通し幅、製織経糸張力0.24cN/dtex、両耳部の絡み糸には22dtexナイロン6モノフィラメント各2本、増し糸は地糸と同じナイロン66を両端に各10本用いて製織し経緯密度51本/inchの平織生機を得た。その後、浴槽にて水洗することなくピンテンターにて入口80℃、熱セット時190℃、最終130℃としてトータル50sec間、オーバーフィード0%、熱セット最大幅入6%、熱セット最終幅入4%、引締め量2%のセット処理を行い目的の53本/inch基布を得た。得られた解体糸強度と基布の各種物性等を以下の表3、4に示す。E1、E2ともに低く、高圧通気が多く、縫い目開きが大きい。高温近接展開評価は△となった。
【0057】
[比較例5]
90%蟻酸相対粘度80のポリアミド66樹脂を300℃で溶融紡糸し、冷却しながら紡糸油剤をタッチロールにて繊維に対し0.5重量%付与し、その後200℃の延伸ロールにて4.9倍に延伸し、圧縮空気にて交絡を付与後、繊度470dtex、フィラメント数136本の原糸を得た。原糸の強力は40.5Nであった。この原糸を用い、糊付けすることなく豊田自動織機社製LWT710を用い、幅220cmの通し幅、製織経糸張力0.24cN/dtex、両耳部の絡み糸には22dtexナイロン6モノフィラメント各2本、増し糸は地糸と同じナイロン66を両端に各10本用いて製織し経緯密度49本/inchの平織生機を得た。その後に非イオン系界面活性剤を含んだ第1段浴にて30℃で10sec浸漬した後、2~3段目にて90-90℃にて計30sec間水洗を行った後、乾燥ドラムを使用することなく連続してピンテンターにて入口80℃、セット時190℃、最終130℃としてトータル50sec間セット、オーバーフィード0%、熱セット最大幅入6%、熱セット最終幅入4%、引締め量2%の条件でセットを行い、目的の53本/inchの基布を得た。得られた解体糸強度と基布の各種物性等を以下の表3、4に示す。E2は高すぎ、高圧通気が多く、縫い目開きが大きい。高温近接展開評価は×となった。
【0058】
[比較例6]
実施例1と同じ原糸を用い、同様な製織を実施し、一旦生機を作製後、3段浴にて30-30-30℃にて計40sec間水洗を行った後、乾燥ドラムを使用することなく連続してピンテンターの入口80℃、セット時190℃、最終130℃としてトータル50sec間セット、オーバーフィード0%、熱セット最大幅入6%、熱セット最終幅入6%、引締め量0%の条件でセットを行い、目的の基布を得た。得られた解体糸強度と基布の各種物性等を以下の表3、4に示す。E1、E2ともに低く、高圧通気が多く、縫い目開きが大きい。高温近接展開評価は△となった。
【0059】
[比較例7]
実施例2と同様な製織を実施し、一旦生機を作製後、3段浴にて60-90-90℃にて計40sec間水洗を行った後、乾燥ドラムを使用することなく連続してピンテンターの入口80℃、セット時190℃、最終130℃としてトータル50sec間セット、オーバーフィード0%、熱セット最大幅入6%、熱セット最終幅入4%、引締め量2%の条件でセットを行い、目的の53本/inchの基布を得た。得られた解体糸強度と基布の各種物性等を以下の表3、4に示す。E2は高すぎ、高圧通気が多く、縫い目開きが大きい。高温近接展開評価は×となった。
【0060】
[比較例8]
実施例2と同様な製織を実施し、一旦生機を作製後、3段浴にて30-30-30℃にて計40sec間水洗を行った後、110℃のドラム乾燥を60sec実施して乾燥後一旦巻き取った。次いで、ピンテンターの入口80℃、セット時190℃、最終130℃としてトータル50sec間セット、オーバーフィード0%、熱セット最大幅入6%、熱セット最終幅入4%、引締め量2%の条件でセットを行い、目的の53本/inchの基布を得た。得られた解体糸強度と基布の各種物性等を以下の表3、4に示す。E2は高すぎ、高圧通気が多く、縫い目開きが大きい。高温近接展開評価は×となった。
【0061】
[比較例9]
実施例2と同様な製織を実施し、一旦生機を作製後、3段浴にて30-30-30℃にて計40sec間水洗を行った後、乾燥ドラムを使用することなく連続してピンテンターの入口80℃、セット時130℃、最終130℃としてトータル50sec間セット、オーバーフィード0%、熱セット最大幅入6%、熱セット最終幅入4%、引締め量2%の条件でセットを行い、目的の53本/inchの基布を得た。得られた解体糸強度と基布の各種物性等を以下の表3、4に示す。E2は高すぎ、高圧通気が多く、縫い目開きが大きい。高温近接展開評価は×となった。
【0062】
【0063】
【0064】
実施例1~5の基布は、E1とE2が所定範囲内にあり、袋体としたときの膨張部と非膨張部の境界部分である縫製部の目開きが抑制され、基布部の動的通気度が400mm/s以下と低く、バーストしにくい特性を高温時においても発揮できた。これに反し、比較例1~9の基布では、E1とE2が所定範囲内になく、袋体としたときの膨張部と非膨張部の境界部分である縫製部の目開きが大きく、基布部の動的通気度も低くならず、バーストしにくい特性を高温時において発揮できないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
発明に関する資材用織物基布は、袋体としたときの膨張部と非膨張部の境界部分である縫製部の目開きが抑制され、動的通気度が低く、かつ、バーストしにくい特性を高温時においても発揮できるため、資材用基布、特にエアバッグ用基布として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 糸
2 錘(T1)
3 ロードセル(T2)
4 滑車
(1) 熱セット入口幅
(2) 熱セット最小幅
(3) 熱セット出口幅