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特許7349585媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/12 20060101AFI20230914BHJP
   B41J 15/04 20060101ALI20230914BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20230914BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
B65H7/12
B41J15/04
G03G15/00 481
H04N1/00 567J
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022556854
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(86)【国際出願番号】 JP2020039393
(87)【国際公開番号】W WO2022085071
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000136136
【氏名又は名称】株式会社PFU
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】堺 雅晃
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-170945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/12
B41J 15/04
G03G 15/00
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される媒体内の複数の位置において当該媒体を透過する超音波の透過情報又は当該媒体の厚さ情報を検出する検出部と、
前記複数の位置毎に、前記透過情報又は前記厚さ情報に基づく値と閾値とを比較することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定する判定部と、
媒体の重送が発生したと判定された場合に異常処理を実行する制御部と、を有し、
前記判定部は、前記検出部が前記透過情報又は前記厚さ情報を検出した媒体内の位置に関わらず、媒体の重送が発生したか否かを判定しつつ、前記検出部が前記透過情報又は前記厚さ情報を検出した媒体内の位置に応じて、媒体の重送が発生したか否かの判定感度を変更する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記検出部が前記透過情報又は前記厚さ情報を検出した媒体内の位置に応じて、前記閾値を変更することにより、前記判定感度を変更する、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
前記判定部は、
所定間隔で前記検出部が検出した前記透過情報又は前記厚さ情報に基づく値と前記閾値とを比較することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定し、
前記検出部が前記透過情報又は前記厚さ情報を検出した媒体内の位置に応じて、前記所定間隔を変更することにより、前記判定感度を変更する、請求項1または2に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
前記判定部は、
所定時間内に前記検出部が検出した前記透過情報又は前記厚さ情報の統計値と前記閾値とを比較することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定し、
前記検出部が前記透過情報又は前記厚さ情報を検出した媒体内の位置に応じて、前記所定時間を変更することにより、前記判定感度を変更する、請求項1~3の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項5】
前記判定部は、
前記検出部が検出した前記透過情報又は前記厚さ情報に基づく値と前記閾値とを比較することにより、所定期間連続して媒体の重なりを検出した場合に、媒体の重送が発生したと判定し、
前記検出部が前記透過情報又は前記厚さ情報を検出した媒体内の位置に応じて、前記所定期間を変更することにより、前記判定感度を変更する、請求項1~4の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項6】
前記判定部は、媒体搬送方向において、媒体の端部における前記判定感度が、媒体の中央部における前記判定感度より高くなるように、前記判定感度を変更する、請求項1~5の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項7】
前記判定部は、媒体搬送方向と直交する方向において、媒体の端部における前記判定感度が、媒体の中央部における前記判定感度より高くなるように、前記判定感度を変更する、請求項1~6の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項8】
利用者から、前記判定部による媒体の重送の判定結果が正しかったか否かを示す結果情報を受け付ける受付部をさらに有し、
前記判定部は、前記結果情報に基づいて、媒体内の各位置における前記判定感度を補正する、請求項1~7の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項9】
媒体を搬送する搬送部を有する媒体搬送装置の制御方法であって、
前記搬送部により搬送される媒体内の複数の位置において当該媒体を透過する超音波の透過情報又は当該媒体の厚さ情報を検出し、
前記複数の位置毎に、前記透過情報又は前記厚さ情報に基づく値と閾値とを比較することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定し、
媒体の重送が発生したと判定された場合に異常処理を実行することを含み、
前記判定において、前記透過情報又は前記厚さ情報が検出された媒体内の位置に関わらず、媒体の重送が発生したか否かを判定しつつ、前記透過情報又は前記厚さ情報が検出された媒体内の位置に応じて、媒体の重送が発生したか否かの判定感度を変更する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項10】
媒体を搬送する搬送部を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、
前記搬送部により搬送される媒体内の複数の位置において当該媒体を透過する超音波の透過情報又は当該媒体の厚さ情報を検出し、
前記複数の位置毎に、前記透過情報又は前記厚さ情報に基づく値と閾値とを比較することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定し、
媒体の重送が発生したと判定された場合に異常処理を実行することを前記媒体搬送装置に実行させ、
前記判定において、前記透過情報又は前記厚さ情報が検出された媒体内の位置に関わらず、媒体の重送が発生したか否かを判定しつつ、前記透過情報又は前記厚さ情報が検出された媒体内の位置に応じて、媒体の重送が発生したか否かの判定感度を変更する、
ことを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、媒体搬送装置に関し、特に、媒体の重送が発生したか否かを判定する媒体搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スキャナ等の媒体搬送装置は、複数の媒体が重なって搬送される重送が発生したか否かを検出し、重送が発生した際には媒体の搬送を自動的に停止する機能を有している。しかしながら、履歴書のような写真が貼付された媒体が搬送された場合にも、媒体搬送装置は、重送が発生したと判定してしまい、搬送を停止させる可能性がある。そのため、利用者は、写真が貼付された媒体をスキャンさせる際には、重送の検出機能をOFFに設定してから媒体を搬送させる必要があり、利用者の利便性が損なわれていた。
【0003】
原稿を搬送するための搬送ローラと搬送ローラに所定の付勢力で圧接されるとともに原稿厚さに応じて変位可能な従動ローラとを有する重送検知装置が開示されている(特許文献1を参照)。この重送検知装置は、両ローラ間を原稿が通過する間に検出した従動ローラの変位量の増加時間が所定時間よりも短い場合は重送判定を禁止するよう制御する。
【0004】
処理する物品を受け取り、物品の重送を検出する方法が開示されている(特許文献2を参照)。この方法では、物品の重送の重なり位置が許容範囲内であるか否かが判定され、その位置が所定の重なり基準内である場合、物品の処理は継続され、その位置が所定の重なり基準内でない場合、物品の処理は中止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-291485号公報
【文献】米国特許第2005/0228535号明細書
【発明の概要】
【0006】
媒体搬送装置では、媒体の重送が発生したか否かをより高精度に判定することが望まれている。
【0007】
媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムの目的は、媒体の重送が発生したか否かをより高精度に判定することを可能とすることにある。
【0008】
実施形態の一側面に係る媒体搬送装置は、媒体を搬送する搬送部と、搬送部により搬送される媒体内の複数の位置において当該媒体を透過する超音波の透過情報又は当該媒体の厚さ情報を検出する検出部と、複数の位置毎に、透過情報又は厚さ情報に基づく値と閾値とを比較することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定する判定部と、媒体の重送が発生したと判定された場合に異常処理を実行する制御部と、を有し、判定部は、検出部が透過情報又は厚さ情報を検出した媒体内の位置に応じて、媒体の重送が発生したか否かの判定感度を変更する。
【0009】
また、実施形態の一側面に係る制御方法は、媒体を搬送する搬送部を有する媒体搬送装置の制御方法であって、搬送部により搬送される媒体内の複数の位置において当該媒体を透過する超音波の透過情報又は当該媒体の厚さ情報を検出し、複数の位置毎に、透過情報又は厚さ情報に基づく値と閾値とを比較することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定し、媒体の重送が発生したと判定された場合に異常処理を実行することを含み、判定において、透過情報又は厚さ情報が検出された媒体内の位置に応じて、媒体の重送が発生したか否かの判定感度を変更する。
【0010】
また、実施形態の一側面に係る制御プログラムは、媒体を搬送する搬送部を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、搬送部により搬送される媒体内の複数の位置において当該媒体を透過する超音波の透過情報又は当該媒体の厚さ情報を検出し、複数の位置毎に、透過情報又は厚さ情報に基づく値と閾値とを比較することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定し、媒体の重送が発生したと判定された場合に異常処理を実行することを媒体搬送装置に実行させ、判定において、透過情報又は厚さ情報が検出された媒体内の位置に応じて、媒体の重送が発生したか否かの判定感度を変更する。
【0011】
本実施形態によれば、媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムは、媒体の重送が発生したか否かをより高精度に判定することが可能となる。
【0012】
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるだろう。前述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る媒体搬送装置100を示す斜視図である。
図2】媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
図3】超音波センサ116の配置について説明するための模式図である。
図4】媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
図5】記憶装置140及び処理回路150の概略構成を示す図である。
図6】設定テーブルのデータ構造の一例を示す図である。
図7】判定感度が設定される媒体内の領域について説明するための模式図である。
図8】媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
図9】重送判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
図10】技術的意義について説明するための模式図である
図11】他の媒体搬送装置200内部の搬送経路を説明するための図である。
図12】他の重送判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
図13】技術的意義について説明するための模式図である。
図14】他の媒体搬送装置における処理回路350の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の一側面に係る媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムについて図を参照しつつ説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0015】
図1は、イメージスキャナとして構成された媒体搬送装置100を示す斜視図である。媒体搬送装置100は、原稿である媒体を搬送し、撮像する。媒体は、用紙、厚紙又はカード等である。媒体搬送装置100は、ファクシミリ、複写機、プリンタ複合機(MFP、Multifunction Peripheral)等でもよい。なお、搬送される媒体は、原稿でなく印刷対象物等でもよく、媒体搬送装置100はプリンタ等でもよい。
【0016】
媒体搬送装置100は、第1筐体101、第2筐体102、載置台103、排出台104、操作装置105及び表示装置106等を備える。
【0017】
第1筐体101は、媒体搬送装置100の上側に配置され、媒体つまり時、媒体搬送装置100内部の清掃時等に開閉可能なようにヒンジにより第2筐体102に係合している。
【0018】
載置台103は、搬送される媒体を載置可能に第2筐体102に係合している。載置台103は、第2筐体102の媒体供給側の側面に、不図示のモータによって略鉛直方向(高さ方向)A1に移動可能に設けられる。載置台103は、媒体を搬送していないときは媒体が容易に載置されるように下端の位置に配置され、媒体を搬送するときは最も上側に載置された媒体が後述するピックローラと接触する位置まで上昇する。排出台104は、排出された媒体を保持可能に第1筐体101上に形成され、排出された媒体を積載する。
【0019】
操作装置105は、ボタン等の入力デバイス及び入力デバイスから信号を取得するインタフェース回路を有し、利用者による入力操作を受け付け、利用者の入力操作に応じた操作信号を出力する。表示装置106は、液晶、有機EL(Electro-Luminescence)等を含むディスプレイ及びディスプレイに画像データを出力するインタフェース回路を有し、画像データをディスプレイに表示する。
【0020】
図1において矢印A2は媒体搬送方向を示し、矢印A3は媒体排出方向を示し、矢印A4は媒体搬送方向と直交する幅方向を示す。以下では、上流とは媒体搬送方向A2又は媒体排出方向A3の上流のことをいい、下流とは媒体搬送方向A2又は媒体排出方向A3の下流のことをいう。
【0021】
図2は、媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
【0022】
媒体搬送装置100内部の搬送経路は、第1媒体センサ111、ピックローラ112、給送ローラ113、ブレーキローラ114、第2媒体センサ115、超音波発信器116a、超音波受信器116b、第1~第8搬送ローラ117a~h、第1~第8従動ローラ118a~h、第1撮像装置119a及び第2撮像装置119b等を有している。
【0023】
ピックローラ112、給送ローラ113、ブレーキローラ114、第1~第8搬送ローラ117a~h及び第1~第8従動ローラ118a~hは、媒体を搬送する搬送部の一例である。なお、ピックローラ112、給送ローラ113、ブレーキローラ114、第1~第8搬送ローラ117a~h及び/又は第1~第8従動ローラ118a~hのそれぞれの数は一つに限定されず、複数でもよい。その場合、複数のピックローラ112、給送ローラ113、ブレーキローラ114、第1~第8搬送ローラ117a~h及び/又は第1~第8従動ローラ118a~hは、それぞれ幅方向A4に間隔を空けて並べて配置される。以下では、第1撮像装置119a及び第2撮像装置119bをまとめて撮像装置119と称する場合がある。
【0024】
第1筐体101の、第2筐体102と対向する面は媒体の搬送路の第1ガイド101aを形成し、第2筐体102の、第1筐体101と対向する面は媒体の搬送路の第2ガイド102aを形成する。
【0025】
第1媒体センサ111は、載置台103に、即ち給送ローラ113及びブレーキローラ114より上流側に配置され、載置台103における媒体の載置状態を検出する。第1媒体センサ111は、媒体が接触している場合、又は、媒体が接触していない場合に所定の電流を流す接触検知センサにより、載置台103に媒体が載置されているか否かを判別する。第1媒体センサ111は、載置台103に媒体が載置されている状態と載置されていない状態とで信号値が変化する第1媒体信号を生成して出力する。
【0026】
ピックローラ112は、第1筐体101に設けられ、媒体搬送路と略同一の高さまで上昇した載置台103に載置された媒体と接触して、その媒体を下流側に向けて給送する。
【0027】
給送ローラ113は、第1筐体101内に、ピックローラ112より下流側に設けられ、載置台103に載置されてピックローラ112により給送された媒体をさらに下流側に向けて給送する。ブレーキローラ114は、第2筐体102内に、給送ローラ113と対向して配置される。給送ローラ113及びブレーキローラ114は、媒体の分離動作を行い、媒体を分離して一枚ずつ給送する。給送ローラ113は、ブレーキローラ114に対して上側に配置されており、媒体搬送装置100は、いわゆる上取り方式により媒体を給送する。
【0028】
第2媒体センサ115は、給送ローラ113及びブレーキローラ114より下流側且つ超音波発信器116a及び超音波受信器116bより上流側に配置される。第2媒体センサ115は、その位置に媒体が存在するか否かを検出する。第2媒体センサ115は、媒体の搬送路に対して一方の側に設けられた発光器及び受光器と、搬送路を挟んで発光器及び受光器と対向する位置に設けられたミラー等の反射部材とを含む。発光器は、搬送路に向けて光を照射する。一方、受光器は、発光器により照射され、反射部材により反射された光を受光し、受光した光の強度に応じた電気信号である第2媒体信号を生成して出力する。第2媒体センサ115の位置に媒体が存在する場合、発光器により照射された光はその媒体により遮光されるため、第2媒体センサ115の位置に媒体が存在する状態と存在しない状態とで第2媒体信号の信号値は変化する。なお、発光器及び受光器は、搬送路を挟んで相互に対向する位置に設けられ、反射部材は省略されてもよい。
【0029】
超音波発信器116a及び超音波受信器116bは、給送ローラ113及びブレーキローラ114より下流側且つ第1~第8搬送ローラ117a~h及び第1~第8従動ローラ118a~hより上流側に配置される。超音波発信器116a及び超音波受信器116bは、媒体の搬送路の近傍に、搬送路を挟んで対向して配置される。超音波発信器116aは、超音波を発信する。一方、超音波受信器116bは、超音波発信器116aにより発信され、媒体を通過した超音波を受信し、受信した超音波に応じた電気信号である超音波信号を生成して出力する。超音波信号は、搬送部により搬送される媒体内の複数の位置においてその媒体を透過する超音波の透過情報を示す。透過情報は、超音波受信器116bが受信した超音波の大きさを示す。以下では、超音波発信器116a及び超音波受信器116bを総じて超音波センサ116と称する場合がある。
【0030】
第1~第8搬送ローラ117a~h及び第1~第8従動ローラ118a~hは、給送ローラ113及びブレーキローラ114より下流側に設けられ、給送ローラ113及びブレーキローラ114により給送された媒体を下流側に向けて搬送する。第1~第8搬送ローラ117a~h及び第1~第8従動ローラ118a~hは、それぞれ媒体搬送路を挟んで相互に対向して配置される。
【0031】
第1撮像装置119aは、撮像部の一例であり、媒体搬送方向A2において第1搬送ローラ117a及び第1従動ローラ118aより下流側、即ち超音波センサ116より下流側に設けられる。第1撮像装置119aは、主走査方向に直線状に配列されたCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)による撮像素子を有する等倍光学系タイプのCIS(Contact Image Sensor)によるラインセンサを有する。また、第1撮像装置119aは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第1撮像装置119aは、搬送される媒体の表面を撮像して入力画像を生成し、出力する。
【0032】
同様に、第2撮像装置119bは、撮像部の一例であり、媒体搬送方向A2において第1搬送ローラ117a及び第1従動ローラ118aより下流側に設けられる。第2撮像装置119bは、主走査方向に直線状に配列されたCMOSによる撮像素子を有する等倍光学系タイプのCISによるラインセンサを有する。また、第2撮像装置119bは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、A/D変換するA/D変換器とを有する。第2撮像装置119bは、搬送される媒体の裏面を撮像して入力画像を生成し、出力する。
【0033】
媒体搬送装置100は、第1撮像装置119a及び第2撮像装置119bを一方だけ配置し、媒体の片面だけを読み取ってもよい。また、CMOSによる撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサの代わりに、CCD(Charge Coupled Device)による撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサが利用されてもよい。また、CMOS又はCCDによる撮像素子を備える縮小光学系タイプのラインセンサが利用されてもよい。
【0034】
載置台103に載置された媒体は、ピックローラ112、給送ローラ113がそれぞれ媒体給送方向A5、A6に回転することによって、第1ガイド101aと第2ガイド102aの間を媒体搬送方向A2に向かって搬送される。一方、ブレーキローラ114が媒体給送方向の反対方向A7に回転することによって、載置台103に複数の媒体が載置されている場合、載置台103に載置されている媒体のうち給送ローラ113と接触している媒体のみが分離される。
【0035】
媒体は、第1ガイド101aと第2ガイド102aによりガイドされながら、第1~第2搬送ローラ117a~bが矢印A8~A9の方向に回転することによって、撮像装置119の撮像位置に送り込まれ、撮像装置119によって撮像される。さらに、媒体は、第3~第8搬送ローラ117c~hがそれぞれ矢印A10~A15の方向に回転することによって排出台104上に排出される。排出台104は、第8搬送ローラ117hによって排出された媒体を積載する。
【0036】
図3は、超音波センサ116の配置について説明するための模式図である。図3は、第1筐体101を開いた状態で第2筐体102を上方から見た模式図である。
【0037】
図3に示す例では、複数の超音波センサ116が、それぞれ幅方向A4に間隔を空けて並べて配置されている。中央の超音波センサ116は、幅方向A4の略中央位置に配置され、両端の超音波センサ116は、幅方向A4において撮像装置119の両端部と重なる位置に配置されている。なお、各超音波センサ116の配置位置は上記に限定されず、各超音波センサ116は、幅方向A4において重複していなければ任意の位置に配置されてよい。また、超音波センサ116の数は、3つに限定されず、1つ以上の任意の数でよい。
【0038】
図4は、媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
【0039】
媒体搬送装置100は、前述した構成に加えて、モータ131、インタフェース装置132、記憶装置140及び処理回路150等をさらに有する。
【0040】
モータ131は、一又は複数のモータを含み、処理回路150からの制御信号によって、ピックローラ112、給送ローラ113、ブレーキローラ114及び第1~第8搬送ローラ117a~hを回転させて媒体を給送及び搬送させる。なお、第1~第8従動ローラ118a~hは、各搬送ローラの回転に従って従動回転するのでなく、モータからの駆動力によって回転するように設けられてもよい。
【0041】
インタフェース装置132は、例えばUSB等のシリアルバスに準じるインタフェース回路を有し、不図示の情報処理装置(例えば、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末等)と電気的に接続して読取画像及び各種の情報を送受信する。また、インタフェース装置132の代わりに、無線信号を送受信するアンテナと、所定の通信プロトコルに従って、無線通信回線を通じて信号の送受信を行うための無線通信インタフェース回路とを有する通信部が用いられてもよい。所定の通信プロトコルは、例えば無線LAN(Local Area Network)である。
【0042】
記憶装置140は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。また、記憶装置140には、媒体搬送装置100の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース、テーブル等が格納される。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶装置140にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM(compact disc read only memory)、DVD-ROM(digital versatile disc read only memory)等である。
【0043】
また、記憶装置140には、データとして、媒体の重送の判定感度を設定するための設定テーブルが格納される。設定テーブルの詳細については後述する。記憶装置140は、記憶部の一例である。
【0044】
処理回路150は、予め記憶装置140に記憶されているプログラムに基づいて動作する。処理回路150は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。処理回路150として、DSP(digital signal processor)、LSI(large scale integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等が用いられてもよい。
【0045】
処理回路150は、操作装置105、表示装置106、第1媒体センサ111、第2媒体センサ115、超音波センサ116、撮像装置119、モータ131、インタフェース装置132及び記憶装置140等と接続され、これらの各部を制御する。処理回路150は、モータ131を制御して媒体を搬送し、撮像装置119を制御して入力画像を取得し、取得した入力画像を、インタフェース装置132を介して情報処理装置に送信する。また、処理回路150は、超音波センサ116から受信する超音波信号に基づいて媒体の重送が発生したか否かを判定する。特に、処理回路150は、媒体内の位置に応じて媒体の重送が発生したか否かの判定感度を変更する。
【0046】
図5は、記憶装置140及び処理回路150の概略構成を示す図である。
【0047】
図5に示すように、記憶装置140には、制御プログラム141、判定プログラム142、検出プログラム143及び受付プログラム144等の各プログラムが記憶される。これらの各プログラムは、プロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールである。処理回路150は、記憶装置140に記憶された各プログラムを読み取り、読み取った各プログラムに従って動作することにより、制御部151、判定部152、検出部153及び受付部154として機能する。
【0048】
図6は、設定テーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【0049】
図6に示すように、設定テーブルには、搬送される媒体内の複数の領域毎に、感度設定値及び感度初期値が関連付けて記憶される。媒体内の各領域は、例えば媒体搬送方向A2及び幅方向A4を座標軸とし、媒体の特定の角を原点とする座標系における座標で規定される。各領域は、例えば矩形領域であり、媒体内の特定の角及びその特定の角の対角の位置で示される。搬送される媒体のサイズは、必ずしも一定ではないため、各位置は媒体の何れかの端部に対する相対位置で規定される。なお、各領域は、三角形、円形、楕円形のような他の任意の形状の領域でもよい。その場合、各領域は、各領域内の各位置に対応する座標群で示される。また、各領域は、相互に接していてもよいし、離間していてもよい。
【0050】
感度設定値は、媒体の重送が発生したか否かを判定するための判定感度を変更するためのパラメータの設定値である。判定感度を変更するためのパラメータには、判定閾値、判定間隔、算出時間及び判定期間等が含まれる。判定閾値は、閾値の一例であり、搬送される媒体について測定された値又は測定された値から算出された統計値と比較して媒体の重送が発生したか否かを判定するための閾値である。判定間隔は、所定間隔の一例であり、搬送される媒体について測定された値と判定閾値とを比較する処理の実行間隔である。即ち、判定間隔は、超音波発信器116aが超音波を発信する間隔であり、処理回路150が超音波センサ116から超音波信号を受信する間隔である。算出時間は、所定時間の一例であり、その時間内に測定された値から統計値を算出する時間である。判定期間は、所定期間の一例であり、その期間連続して媒体の重なりを検出した場合に媒体の重送が発生したと判定する期間である。判定期間は、媒体の重送が発生しているとみなされる媒体の媒体搬送方向A2の長さに相当する期間に設定される。
【0051】
感度初期値は、感度設定値の初期値である。媒体搬送装置100の出荷直後、又は、利用者により設定がリセットされた場合、感度設定値は、感度初期値に設定される。
【0052】
図7は、判定感度が設定される媒体内の領域について説明するための模式図である。
【0053】
図7は、第1筐体101を開いた状態で第2筐体102を上方から見た模式図である。図7に示す例では、超音波センサ116の上流側に媒体Mが配置されている。図7に示すように、媒体M内の領域は、幅方向A4において、一端側端部の領域R1、R2、R3と、他端側端部の領域R4、R5、R6と、中央部の領域R7、R8、R9と、に分類される。一端側端部の領域R1、R2、R3は、一端側の超音波センサ116の配置位置に対応する(重なる)領域に設定される。他端側端部の領域R4、R5、R6は、他端側の超音波センサ116の配置位置に対応する領域に設定される。中央部の領域R7、R8、R9は、中央の超音波センサ116の配置位置に対応する領域に設定される。
【0054】
また、媒体M内の領域は、媒体搬送方向A2において、先端側(下流側)端部の領域R1、R4、R7と、後端側(上流側)端部の領域R2、R5、R8と、中央部の領域R3、R6、R9と、に分類される。先端側端部の領域R1、R4、R7は、媒体の先端から所定範囲内に設定され、後端側端部の領域R2、R5、R8は、媒体の後端から所定範囲内に設定され、中央部の領域R3、R6、R9は、先端側端部の領域と後端側端部の領域の間に設定される。所定範囲は、連続して給送される二つの媒体の端部が分離されずに重なってしまう可能性が高い範囲に設定される。なお、媒体M内で設定される領域の数は、9つに限定されず、2つ以上であればよい。各領域は、利用者により操作装置105又は情報処理装置を用いて設定されてもよい。
【0055】
設定された複数の領域R1~R9毎に、判定感度が設定される。例えば、ステイプルにより綴じられた媒体、又は、先端が折れ曲がった媒体が搬送された場合、媒体が搬送され続けると媒体が損傷する可能性がある。また、ステイプルにより綴じられた媒体が搬送された場合、媒体搬送装置100がステイプルにより損傷する可能性がある。そのため、ステイプルにより綴じられた媒体が搬送された場合、又は、先端が折れ曲がった媒体が搬送された場合、媒体搬送装置100は、媒体の重送を早期に検出し、媒体の搬送を停止する必要がある。そのため、各領域の判定感度は、媒体搬送方向A2において、媒体の先端側の端部における判定感度が、媒体の中央部及び/又は媒体の後端側の端部における判定感度より高くなるように、即ち媒体の重送が発生したと判定しやすくなるように設定される。
【0056】
また、給送ローラ113及びブレーキローラ114によって先端が良好に分離された後、給送された媒体とその媒体に接触する媒体の間の摩擦力が給送ローラ113及びブレーキローラ114による分離力より大きくなり、重送が発生する可能性がある。その場合、給送された媒体の中央部では重送が発生せず、媒体の後端でのみ重送が発生する可能性がある。そのような重送を確実に検出するために、各領域の判定感度は、媒体搬送方向A2において、媒体の後端側の端部における判定感度が、媒体の中央部における判定感度より高くなるように、即ち媒体の重送が発生したと判定しやすくなるように設定される。
【0057】
また、ラベル(シール)又は小型紙片(写真、切り抜き、切手等)が貼付された媒体が搬送される場合、媒体搬送装置100は、重送が発生したと誤って判定する可能性がある。一般に、そのような媒体でラベル又は小型紙片等が貼付される貼付位置は中央側であり、端部の周辺にラベル又は小型紙片等が貼付される可能性は低い。そのため、各領域の判定感度は、媒体搬送方向A2において、媒体の端部における判定感度が、媒体の中央部における判定感度より高くなるように、即ち媒体の重送が発生したと判定しやすくなるように設定される。また、各領域の判定感度は、媒体搬送方向と直交する幅方向A4において、媒体の端部における判定感度が、媒体の中央部における判定感度より高くなるように、即ち媒体の重送が発生したと判定しやすくなるように設定される。
【0058】
媒体搬送装置100は、透過情報(超音波の大きさ)に基づいて媒体の重送が発生したか否かを判定する場合、判定閾値を高くすることにより、判定感度を高くする。また、媒体搬送装置100は、判定期間(一定期間)連続して媒体の重なりを検出したときに媒体の重送が発生したと判定する場合、判定間隔を長くすることにより、判定感度を高くする。一方、媒体搬送装置100は、一回以上の所定回数、媒体の重なりを検出した場合に媒体の重送が発生したと判定する場合、判定間隔を短くすることにより、判定感度を高くする。また、媒体搬送装置100は、算出時間内に測定された値から統計値を算出する場合、算出時間を短くすることにより、判定感度を高くする。また、媒体搬送装置100は、判定期間連続して媒体の重なりを検出したときに媒体の重送が発生したと判定する場合、判定期間を短くすることにより、判定感度を高くする。
【0059】
なお、判定閾値、判定間隔、算出時間及び判定期間の内、少なくとも一つのパラメータが媒体内の位置に応じて変更されればよく、他のパラメータとして固定値が使用されてもよい。その場合、媒体内の位置に応じて変更されるパラメータは、利用者により操作装置105又は情報処理装置を用いて指定されてもよい。
【0060】
図8は、媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0061】
以下、図8に示したフローチャートを参照しつつ、媒体搬送装置100の媒体読取処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置140に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路150により媒体搬送装置100の各要素と協働して実行される。
【0062】
最初に、制御部151は、利用者により操作装置105又は情報処理装置を用いて媒体の読み取りの指示が入力されて、媒体の読み取りを指示する操作信号を操作装置105又はインタフェース装置132から受信するまで待機する(ステップS101)。操作信号には、利用者により指定されたジョブに関する情報が含まれる。ジョブは、画像読取処理に関する設定であり、例えば読み取らせる媒体の種類(一般用紙/名刺/写真等)毎に設定される。ジョブには、搬送される媒体のサイズ、生成される入力画像の色設定(カラー/グレースケール/白黒等)、解像度(200dpi/300dpi/600dpi等)又は読取面(両面/片面)等の設定が含まれる。載置台103に複数の媒体が載置され、まとめて搬送される場合、各媒体について、同一のジョブが設定されてもよいし、異なるジョブが設定されてもよい。
【0063】
次に、制御部151は、第1媒体センサ111から媒体信号を取得し、取得した媒体信号に基づいて、載置台103に媒体が載置されているか否かを判定する(ステップS102)。載置台103に媒体が載置されていない場合、制御部151は、処理をステップS101へ戻し、操作装置105又はインタフェース装置132から新たに操作信号を受信するまで待機する。
【0064】
一方、載置台103に媒体が載置されている場合、制御部151は、載置台103を移動させるためのモータを駆動し、媒体を給送可能な位置に載置台103を移動させる。制御部151は、モータ131を駆動し、ピックローラ112、給送ローラ113、ブレーキローラ114及び第1~第8搬送ローラ117a~hを回転させ、載置台103に載置された媒体を給送及び搬送させる(ステップS103)。
【0065】
次に、判定部152は、搬送される媒体の先端が超音波センサ116の位置に到達するまで待機する(ステップS104)。判定部152は、第2媒体センサ115から定期的に第2媒体信号を取得し、第2媒体信号の信号値が、媒体が存在しないことを示す値から媒体が存在することを示す値に変化したときに、媒体の先端が第2媒体センサ115の位置を通過したと判定する。そして、判定部152は、媒体の先端が第2媒体センサ115の位置を通過したと判定してから所定時間が経過した時に、媒体の先端が超音波センサ116の位置に到達したと判定する。なお、判定部152は、媒体の給送を開始してから所定時間が経過した時に、媒体の先端が超音波センサ116の位置に到達したと判定してもよい。
【0066】
次に、判定部152は、搬送される媒体内で、現在、超音波センサ116と対向している媒体搬送方向A2の位置を特定する(ステップS105)。判定部152は、媒体の先端が超音波センサ116の位置に到達したと判定してから経過した時間(又はモータ131を駆動させたステップ数)に基づいて、媒体の先端から、超音波センサ116と対向している位置までの距離を特定する。また、判定部152は、特定した距離と、利用者により指定されたジョブに含まれる媒体のサイズとに基づいて、媒体の後端から、超音波センサ116と対向している位置までの距離を特定する。媒体読取処理と並列に実行される後述の重送判定処理において、検出部153は、超音波センサ116から受信した超音波信号に基づいて、搬送部により搬送される媒体内の複数の位置においてその媒体を透過する超音波の透過情報を検出する。即ち、搬送される媒体内で、現在、超音波センサ116と対向している位置は、検出部153が透過情報を検出した媒体内の位置に対応している。
【0067】
次に、判定部152は、搬送される媒体内で、現在、超音波センサ116と対向している位置に応じて、媒体の重送が発生したか否かの判定感度を変更する(ステップS106)。判定部152は、感度テーブルを読み出し、複数の超音波センサ116に対応する幅方向A4の位置毎に、特定した媒体搬送方向A2の位置に対応する感度設定値を特定し、判定感度の各パラメータに、特定した感度設定値を設定する。即ち、判定部152は、搬送される媒体内で、現在、超音波センサ116と対向している位置に応じて、判定閾値、判定間隔、算出時間、及び/又は、判定期間を変更することにより、判定感度を変更する。特に、判定部152は、媒体搬送方向A2、及び/又は、媒体搬送方向と直交する幅方向A4において、媒体の端部における判定感度が、媒体の中央部における判定感度より高くなるように、判定感度を変更する。
【0068】
判定部152は、媒体内の位置に応じて各パラメータを変更することにより、媒体の重送の発生の判定精度を向上させることができる。
【0069】
次に、判定部152は、重送判定処理において媒体の重送が発生したと判定されたか否かを判定する(ステップS107)。
【0070】
重送判定処理において媒体の重送が発生したと判定された場合、制御部151は、異常処理を実行する(ステップS108)。制御部151は、異常処理として、モータ131を停止して、搬送部による媒体の給送及び搬送を停止する。また、制御部151は、異常処理として、媒体の重送が発生したことを示す情報を表示装置106に表示し又はインタフェース装置132を介して情報処理装置に送信することにより利用者に通知する。なお、制御部151は、異常処理として、現在搬送中の媒体を排出してから媒体読取処理を停止させてもよい。また、制御部151は、異常処理として、モータ131を駆動し、媒体を逆送させて載置台103に一旦戻してから再給送するように搬送部を制御してもよい。これにより、利用者は、媒体を載置台103に再載置して再給送する必要がなくなり、制御部151は、利用者の利便性を向上させることが可能となる。
【0071】
次に、受付部154は、利用者から、判定部152による媒体の重送の判定結果が正しかったか否かを示す結果情報を受け付ける(ステップS109)。受付部154は、利用者により操作装置105又は情報処理装置を用いて入力された結果情報を操作装置105又はインタフェース装置132から受信する。受付部154は、受け付けた結果情報を重送が発生したと判定された領域と関連付けて記憶装置140に記憶する。
【0072】
次に、判定部152は、結果情報に基づいて、媒体内の各位置における判定感度を補正し(ステップS110)、一連のステップを終了する。例えば、判定部152は、結果情報が媒体の重送の判定結果が誤っていたことを示す場合、重送が発生したと判定された領域の判定感度が現在の判定感度より低くなるように各感度設定値を補正する。なお、判定部152は、各感度設定値が最後に更新された後に受け付けた二つ以上の結果情報に基づいて判定感度を補正してもよい。その場合、判定部152は、その領域についての直近の所定回数の結果情報の中で、媒体の重送の判定結果が誤っていたことを示す結果情報の数又は割合が所定閾値を超える場合に、その領域の判定感度が現在の判定感度より低くなるように各感度設定値を補正する。これにより、媒体搬送装置100は、自装置が頻繁に搬送する種類の媒体に対して判定感度を適切に設定することが可能となる。
【0073】
なお、判定部152は、結果情報が媒体の重送の判定結果が正しかったことを示す場合、重送が発生したと判定された領域の判定感度が現在の判定感度より高くなるように各感度設定値を補正してもよい。但し、判定感度が高すぎると、頻繁に媒体の重送が発生したと誤って判定する可能性があるため、各感度設定値には上限値が設けられてもよい。
【0074】
また、所定閾値は、利用者により設定されてもよい。これにより、媒体搬送装置100は、重送の発生を確実に検出すること、又は、媒体読取処理の処理時間を低減させることの何れを重視するかを、利用者の用途に応じて変更することが可能となり、利用者の利便性を向上させることが可能となる。また、判定部152は、全ての感度設定値を補正するのでなく、一部の感度設定値のみを補正してもよい。また、媒体搬送装置100は、結果情報及びその結果情報に対応する領域、又は、各領域の補正後の感度設定値を他の媒体搬送装置に送信し、他の媒体搬送装置は、それらの情報に基づいて、自装置の感度設定値を補正してもよい。これにより、媒体搬送装置100は、重送の判定結果を他の媒体搬送装置と共有して、媒体の重送の判定精度をより向上させることが可能となる。
【0075】
一方、ステップS107で、重送判定処理において媒体の重送が発生していないと判定された場合、制御部151は、媒体全体が撮像されたか否かを判定する(ステップS111)。制御部151は、例えば、第2媒体センサ115から受信する第2媒体信号に基づいて媒体の後端が第2媒体センサ115の位置を通過したか否かを判定する。制御部151は、第2媒体センサ115から定期的に第2媒体信号を取得し、第2媒体信号の信号値が、媒体が存在することを示す値から媒体が存在しないことを示す値に変化したときに、媒体の後端が第2媒体センサ115の位置を通過したと判定する。制御部151は、媒体の後端が第2媒体センサ115の位置を通過してから所定時間が経過した時に媒体の後端が撮像装置119の撮像位置を通過し、媒体全体が撮像されたと判定する。なお、制御部151は、媒体の給送を開始してから所定時間が経過した時に、搬送された媒体の全体が撮像されたと判定してもよい。
【0076】
まだ搬送された媒体の全体が撮像されていない場合、制御部151は、処理をステップS105へ戻し、ステップS105~S111の処理を繰り返す。
【0077】
一方、搬送された媒体の全体が撮像された場合、制御部151は、撮像装置119から入力画像を取得し、取得した入力画像をインタフェース装置132を介して情報処理装置に送信することにより出力する(ステップS112)。
【0078】
次に、制御部151は、第1媒体センサ111から受信する第1媒体信号に基づいて載置台103に媒体が残っているか否かを判定する(ステップS113)。載置台103に媒体が残っている場合、制御部151は、ステップS104へ処理を戻し、ステップS104~S113の処理を繰り返す。
【0079】
一方、載置台103に媒体が残っていない場合、制御部151は、モータ131を停止する(ステップS114)。
【0080】
次に、受付部154は、ステップS109の処理と同様にして、利用者から、判定部152による媒体の重送の判定結果が正しかったか否かを示す結果情報を受け付ける(ステップS115)。媒体の重送の判定結果が誤っていた場合、受付部154は、利用者から、媒体の重送が発生していた媒体内の領域(位置)の指定をさらに受け付ける。受付部154は、受け付けた結果情報を重送が発生していた領域と関連付けて記憶装置140に記憶する。
【0081】
次に、判定部152は、結果情報に基づいて、媒体内の各位置における判定感度を補正し(ステップS116)、一連のステップを終了する。例えば、判定部152は、結果情報が媒体の重送の判定結果が誤っていたことを示す場合、重送が発生していた領域の判定感度が現在の判定感度より高くなるように各感度設定値を補正する。即ち、判定部152は、重送が発生していたにも関わらず、媒体の重送が発生していないと判定した場合に、感度設定値を補正する。なお、判定部152は、各感度設定値が最後に更新された後に受け付けた二つ以上の結果情報に基づいて判定感度を補正してもよい。その場合、判定部152は、その領域についての直近の所定回数の結果情報の中で、媒体の重送の判定結果が誤っていたことを示す結果情報の数又は割合が所定閾値を超える場合に、その領域の判定感度が現在の判定感度より高くなるように各感度設定値を補正する。これにより、媒体搬送装置100は、自装置が頻繁に搬送する種類の媒体に対して判定感度を適切に設定することが可能となる。
【0082】
なお、ステップS109~S110及びステップS115~S116の内の何れか一方又は両方は省略されてもよい。
【0083】
図9は、媒体搬送装置100の重送判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0084】
以下、図9に示したフローチャートを参照しつつ、媒体搬送装置100の重送判定処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置140に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路150により媒体搬送装置100の各要素と協働して実行される。図9に示す動作のフローは、媒体搬送中に定期的に実行される。図9に示す動作のフローは、複数の超音波センサ116のそれぞれに対応して、独立して実行される。
【0085】
最初に、検出部153は、前回重送が発生したか否かを判定してから判定間隔分の時間が経過したか否かを判定する(ステップS201)。この判定間隔は、最新のステップS106の処理において、搬送される媒体内で、現在、対応する超音波センサ116と対向している位置について設定された判定間隔である。検出部153は、前回重送が発生したか否かを判定してから判定間隔分の時間が経過するまで待機する。なお、媒体搬送直後(初回)の場合、判定部152は、ステップS201の処理を省略し、処理をステップS202へ移行する。
【0086】
前回重送が発生したか否かを判定してから判定間隔分の時間が経過した場合、検出部153は、超音波センサ116から超音波信号を受信する。検出部153は、受信した超音波信号に示される透過情報を、搬送される媒体内で、現在、対応する超音波センサ116と対向している位置において、その媒体を透過する超音波の透過情報として検出し、記憶装置140に記憶する(ステップS202)。
【0087】
このように、検出部153は、媒体搬送中に判定間隔毎に各超音波センサ116による各透過情報を検出しており、搬送部により搬送される媒体内の複数の位置においてその媒体を透過する超音波の透過情報を検出している。
【0088】
次に、判定部152は、算出時間内に検出部153が検出した透過情報の統計値を算出する(ステップS203)。この算出時間は、最新のステップS106の処理において、搬送される媒体内で、現在、対応する超音波センサ116と対向している位置について設定された算出時間である。判定部152は、記憶装置140から、算出時間内に検出された透過情報を読み出し、読み出した透過情報の平均値、中央値、最大値又は最小値を統計値として算出する。算出時間内に検出部153が検出した透過情報の統計値は、透過情報に基づく値の一例である。
【0089】
次に、判定部152は、算出した統計値が判定閾値未満であるか否かを判定する(ステップS204)。この判定閾値は、最新のステップS106の処理において、搬送される媒体内で、現在、対応する超音波センサ116と対向している位置について設定された判定閾値である。
【0090】
統計値が判定閾値以上である場合、判定部152は、媒体の重送が発生していないと判定し(ステップS205)、処理をステップS201へ戻す。
【0091】
一方、統計値が判定閾値未満である場合、判定部152は、搬送される媒体内で、現在、対応する超音波センサ116と対向している位置において、媒体の重なりが存在すると判定する(ステップS206)。
【0092】
次に、判定部152は、判定期間連続して媒体の重なりが存在すると判定したか否かを判定する(ステップS207)。即ち、判定部152は、媒体が重なっている領域の長さが、判定期間に対応する所定長さ以上であるか否かを判定する。この判定期間は、最新のステップS106の処理において、搬送される媒体内で、現在、対応する超音波センサ116と対向している位置について設定された判定期間である。
【0093】
媒体の重なりが存在する期間が判定期間未満である場合、判定部152は、媒体の重送が発生していないと判定し(ステップS205)、処理をステップS201へ戻す。
【0094】
一方、判定期間連続して媒体の重なりが存在すると判定した場合、即ち、判定期間連続して媒体の重なりを検出した場合、判定部152は、媒体の重送が発生したと判定し(ステップS208)、処理をステップS201へ戻す。この場合、図8のステップS107で重送が発生したと判定され、ステップS108で異常処理が実行される。
【0095】
このように、判定部152は、検出部153が透過情報を検出した媒体内の複数の位置毎に、所定間隔で検出部153が検出した透過情報の統計値と閾値とを比較することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定する。特に、判定部152は、検出部153が透過情報を検出した媒体内の複数の位置毎に、所定間隔で検出部153が検出した透過情報の統計値と閾値とを比較することにより、媒体の重なりが存在するか否かを判定する。判定部152は、所定期間連続して媒体の重なりが存在すると判定した場合に、媒体の重送が発生したと判定する。
【0096】
なお、ステップS203の処理が省略され、ステップS204において、判定部152は、透過情報自体と判定閾値とを比較することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定してもよい。その場合は、透過情報が透過情報に基づく値の一例である。また、ステップS207の処理が省略され、判定部152は、一回でも媒体の重なりを検出した場合に媒体の重送が発生したと判定してもよい。また、判定閾値、判定間隔、算出時間及び判定期間の内の何れかのパラメータとして固定値が使用されている場合、ステップS201、S203、S204又はS207において、そのパラメータとして固定値が使用される。
【0097】
また、透過情報は、超音波受信器116bが受信した超音波の大きさでなく、超音波発信器116aが発信した超音波の位相に対する、超音波受信器116bが受信した超音波の位相のずれの大きさを示してもよい。媒体が重なっている場合は、媒体が重なっていない場合より、媒体を通過する超音波の位相のずれが大きくなる。そのため、透過情報として超音波の位相のずれの大きさが使用される場合、媒体搬送装置100は、判定閾値を低くすることにより、判定感度を高くする。また、ステップS204において、判定部152は、統計値が判定閾値未満である場合、重送が発生していないと判定し、統計値が判定閾値以上である場合、媒体の重なりが存在すると判定する。
【0098】
また、図8のステップS105において、判定部152は、媒体のサイズを、利用者により指定されたジョブに基づいて特定するのでなく、公知の画像処理技術を用いて入力画像から特定してもよい。または、媒体搬送装置100が、幅方向A4に間隔を空けて並べて配置された複数の第2媒体センサ115を有し、判定部152は、各第2媒体センサ115から受信する第2媒体信号に基づいて媒体のサイズを特定してもよい。または、判定部152は、幅方向A4に間隔を空けて並べて配置された複数の超音波センサ116から受信する透過情報に基づいて媒体のサイズを特定してもよい。それらの場合、ステップS105~S110の処理は、ステップS112で入力画像が取得されてから実行される。また、重送判定処理において、検出部153は、透過情報を定期的に取得し、その透過情報を検出した媒体内の位置(先端からの位置)と関連付けて記憶装置140に記憶しておく。判定部152は、媒体のサイズが特定されてから、記憶装置140に記憶された媒体内の各位置における透過情報に基づいて、各位置に対応する判定感度に従って、媒体の重送が発生したか否かを判定する。
【0099】
図10は、透過情報に基づいて媒体の重送が発生したか否かを判定する場合に、媒体内の位置に応じて判定感度を変更することの技術的意義について説明するための模式図である。
【0100】
図10は、透過情報(超音波の大きさ)の特性を示すグラフ1000である。グラフ1000において、実線1001は用紙M1及び用紙M2が重なって搬送された時の透過情報(超音波の大きさ)の特性を示す。用紙M1は写真Pが貼付された用紙であり、用紙M1の後端側の端部Lは、用紙M2の先端側の端部と重なって搬送されている。グラフ1000の横軸は時間を示し、縦軸は透過情報の値を示す。用紙M1内で写真Pが貼付された領域では透過情報の値が低下している。同様に、用紙M1と用紙M2が重なっている部分Lでも透過情報の値が低下している。
【0101】
用紙が一枚存在する領域における透過情報の値U1と、用紙内で写真が貼付された領域における透過情報の値U2の間に判定閾値が設定された場合、用紙内で写真が貼付された領域において重送が発生したと誤って判定される可能性がある。但し、用紙内で写真が貼付された領域における透過情報の値U2と、二枚の用紙が重なっている領域における透過情報の値U3とは近似している。そのため、用紙内で写真が貼付された領域における透過情報の値U2より低い値に判定閾値が設定された場合、二枚の用紙が重なって搬送されたときに媒体の重送が発生していないと誤って判定される可能性がある。
【0102】
媒体搬送装置100は、写真が貼付される可能性が低い媒体の端部では判定感度を高くし、写真が貼付される可能性が高い媒体の中央部では判定感度を低くしている。これにより、媒体搬送装置100は、用紙内で写真が貼付された領域において重送が発生したと誤って判定することを抑制しつつ、二枚の用紙が重なって搬送された場合には、用紙の端部において重送の発生を確実に検出することができる。また、媒体搬送装置100は、媒体の先端側の端部では判定感度を高くしている。これにより、媒体搬送装置100は、ステイプルにより綴じられた媒体又は先端が折れ曲がった媒体が搬送された場合に、媒体の重送の発生を早期に検出し、媒体又は媒体搬送装置100の損傷の発生を抑制することができる。
【0103】
以上詳述したように、媒体搬送装置100は、搬送される媒体内の複数の位置で検出した超音波の透過情報に基づいて媒体の重送が発生したか否かを判定し、媒体内の位置に応じて重送の判定感度を変更する。これにより、媒体搬送装置100は、媒体の重送が発生したか否かをより高精度に判定することが可能となった。
【0104】
特に、媒体搬送装置100は、ラベル又は小型紙片が貼付された媒体が搬送された場合に、重送が発生したと誤って判定し、媒体の搬送を停止させてしまうことを抑制することが可能となった。これにより、媒体搬送装置100は、媒体読取処理にかかるトータル時間の増大を抑制することが可能となった。また、利用者は、媒体を載置台103に再載置して再搬送させる必要がなくなり、媒体搬送装置100は、利用者の利便性を向上させることが可能となった。
【0105】
また、媒体搬送装置100は、媒体の中央部等の特定の位置において媒体の重送が発生したか否かの判定を省略する(実行しない)のでなく、媒体内の位置に応じて重送の判定感度を変更する。そのため、例えばPPC(Plain Paper Copier)用紙等が搬送される際に、その中央部においてのみ名刺、レシート等の小型媒体が重なって搬送された場合でも、媒体搬送装置100は、媒体の重送の発生を検出することが可能となった。
【0106】
図11は、他の実施形態に係る媒体搬送装置200内部の搬送経路を説明するための図である。
【0107】
図11に示すように、媒体搬送装置200は、媒体搬送装置100が有する各部を有する。但し、媒体搬送装置200は、超音波センサ116の代わりに、厚さセンサ216を有する。
【0108】
厚さセンサ216は、給送ローラ113及びブレーキローラ114より下流側且つ第1~第8搬送ローラ117a~h及び第1~第8従動ローラ118a~hより上流側に配置される。厚さセンサ216は、発光器216a及び受光器216bを含む。発光器216a及び受光器216bは、媒体の搬送路の近傍に、搬送路を挟んで対向して配置される。発光器216aは、受光器216bに向けて光(赤外光又は可視光)を照射する。一方、受光器216bは、発光器216aにより照射された光を受光し、受光した光の強度に応じた電気信号である厚さ信号を生成して出力する。厚さセンサ216の位置に媒体が存在する場合、発光器216aにより照射された光はその媒体により減衰するため、厚さ信号の信号値は、媒体の厚さが大きい程、小さくなる。厚さ信号は、搬送部により搬送される媒体内の複数の位置におけるその媒体の厚さ情報を示す。また、超音波センサ116と同様に、複数の厚さセンサ216が、それぞれ幅方向A4に間隔を空けて並べて配置されてもよい。
【0109】
なお、厚さセンサ216として、反射光センサ、圧力センサ又は機械式センサが用いられてもよい。反射光センサは、媒体の搬送路に対して一方の側に設けられた発光器及び受光器のペアと、他方の側に設けられた発光器及び受光器のペアとを含む。反射光センサは、一方のペアが媒体の一方の面に光を照射してから反射光を受光するまでの時間と、他方のペアが媒体の他方の面に光を照射してから反射光を受光するまでの時間とから、各ペアと媒体の各面までの距離を検出する。反射光センサは、二つのペアの間の距離から、検出した各距離を減算した減算値を厚さ情報として示す厚さ信号を生成する。圧力センサは、媒体の厚さに応じて変化する圧力を検出し、検出した圧力を厚さ情報として示す厚さ信号を生成する。機械式センサは、媒体に接するローラの移動量を検出し、検出した移動量を厚さ情報として示す厚さ信号を生成する。
【0110】
媒体搬送装置200は、厚さ情報(媒体の厚さ)に基づいて媒体の重送を判定する場合、判定閾値を低くすることにより、判定感度を高くする。
【0111】
媒体搬送装置200は、媒体搬送装置100と同様に、図8に示した媒体読取処理を実行する。但し、ステップS104において、判定部152は、搬送される媒体の先端が厚さセンサ216の位置に到達するまで待機する。また、ステップS105において、判定部152は、搬送される媒体内で、現在、厚さセンサ216と対向している媒体搬送方向A2の位置を特定する。搬送される媒体内で、現在、厚さセンサ216と対向している位置は、検出部153が厚さ情報を検出した媒体内の位置に対応している。また、ステップS106において、判定部152は、搬送される媒体内で、現在、厚さセンサ216と対向している位置に応じて、判定閾値、判定間隔、算出時間、及び/又は、判定期間を変更することにより、判定感度を変更する。
【0112】
図12は、媒体搬送装置200の重送判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0113】
図12に示すフローチャートは、図9に示したフローチャートの代わりに実行される。図9に示した動作のフローと同様に、図12に示す動作のフローは、媒体搬送中に定期的に実行される。また、図12に示す動作のフローは、複数の厚さセンサ216のそれぞれに対応して、独立して実行される。
【0114】
最初に、検出部153は、前回重送が発生したか否かを判定してから判定間隔分の時間が経過したか否かを判定する(ステップS301)。この判定間隔は、最新のステップS106の処理において、搬送される媒体内で、現在、対応する厚さセンサ216と対向している位置について設定された判定間隔である。検出部153は、前回重送が発生したか否かを判定してから判定間隔分の時間が経過するまで待機する。なお、媒体搬送直後(初回)の場合、判定部152は、ステップS301の処理を省略し、処理をステップS302へ移行する。
【0115】
前回重送が発生したか否かを判定してから判定間隔分の時間が経過した場合、検出部153は、厚さセンサ216から厚さ信号を取得する。検出部153は、取得した厚さ信号に示される厚さ情報を、搬送される媒体内で、現在、対応する厚さセンサ216と対向している位置における、その媒体の厚さ情報として検出し、記憶装置140に記憶する(ステップS302)。
【0116】
このように、検出部153は、媒体搬送中に判定間隔毎に各厚さセンサ216による各厚さ情報を検出しており、搬送部により搬送される媒体内の複数の位置においてその媒体の厚さ情報を検出している。
【0117】
次に、判定部152は、算出時間内に検出部153が検出した厚さ情報の統計値を算出する(ステップS303)。この算出時間は、最新のステップS106の処理において、搬送される媒体内で、現在、対応する厚さセンサ216と対向している位置について設定された算出時間である。判定部152は、記憶装置140から、算出時間内に検出された厚さ情報を読み出し、読み出した厚さ情報の平均値、中央値、最大値又は最小値を統計値として算出する。算出時間内に検出部153が検出した厚さ情報の統計値は、厚さ情報に基づく値の一例である。
【0118】
次に、判定部152は、算出した統計値が判定閾値未満であるか否かを判定する(ステップS304)。この判定閾値は、最新のステップS106の処理において、搬送される媒体内で、現在、対応する厚さセンサ216と対向している位置について設定された判定閾値である。
【0119】
統計値が判定閾値未満である場合、判定部152は、媒体の重送が発生していないと判定し(ステップS305)、処理をステップS301へ戻す。
【0120】
一方、統計値が判定閾値以上である場合、判定部152は、搬送される媒体内で、現在、対応する厚さセンサ216と対向している位置において、媒体の重なりが存在すると判定する(ステップS306)。
【0121】
次に、判定部152は、判定期間連続して媒体の重なりが存在すると判定したか否かを判定する(ステップS307)。この判定期間は、最新のステップS106の処理において、搬送される媒体内で、現在、対応する厚さセンサ216と対向している位置について設定された判定期間である。
【0122】
媒体の重なりが存在する期間が判定期間未満である場合、判定部152は、媒体の重送が発生していないと判定し(ステップS305)、処理をステップS301へ戻す。
【0123】
一方、判定期間連続して媒体の重なりが存在すると判定した場合、判定部152は、媒体の重送が発生したと判定し(ステップS308)、処理をステップS301へ戻す。
【0124】
このように、判定部152は、検出部153が厚さ情報を検出した媒体内の複数の位置毎に、所定間隔で検出部153が検出した厚さ情報の統計値と閾値とを比較することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定する。特に、判定部152は、検出部153が厚さ情報を検出した媒体内の複数の位置毎に、所定間隔で検出部153が検出した厚さ情報の統計値と閾値とを比較することにより、媒体の重なりが存在するか否かを判定する。判定部152は、所定期間連続して媒体の重なりが存在すると判定した場合に、媒体の重送が発生したと判定する。
【0125】
なお、ステップS303の処理が省略され、ステップS304において、判定部152は、厚さ情報自体と判定閾値とを比較することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定してもよい。その場合、厚さ情報が厚さ情報に基づく値の一例である。また、ステップS307の処理が省略され、判定部152は、一回でも媒体の重なりを検出した場合に媒体の重送が発生したと判定してもよい。また、判定閾値、判定間隔、算出時間及び判定期間の内の何れかのパラメータとして固定値が使用されている場合、ステップS301、S303、S304又はS307において、そのパラメータとして固定値が使用される。
【0126】
図13は、厚さ情報に基づいて媒体の重送が発生したか否かを判定する場合に、媒体内の位置に応じて判定感度を変更することの技術的意義について説明するための模式図である。
【0127】
図13は、厚さ情報(媒体の厚さ)の特性を示すグラフ1300である。グラフ1300において、実線1301は図10に示した用紙M1及び用紙M2が重なって搬送された時の厚さ情報の特性を示す。グラフ1300の横軸は時間を示し、縦軸は厚さ情報の値を示す。用紙M1内で写真Pが貼付された領域では厚さ情報の値が増大している。同様に、用紙M1と用紙M2が重なっている部分Lでも透過情報の値が増大している。
【0128】
用紙が一枚存在する領域における厚さ情報の値V1と、用紙内で写真が貼付された領域における厚さ情報の値V2の間に判定閾値が設定された場合、用紙内で写真が貼付された領域において重送が発生したと誤って判定される可能性がある。但し、用紙内で写真が貼付された領域における厚さ情報の値V2と、二枚の用紙が重なっている領域における厚さ情報の値V3とは近似している。そのため、用紙内で写真が貼付された領域における透過情報の値V2より高い値に判定閾値が設定された場合、二枚の用紙が重なって搬送されたときに媒体の重送が発生していないと誤って判定される可能性がある。
【0129】
媒体搬送装置100は、写真が貼付される可能性が低い媒体の端部では判定感度を高くし、写真が貼付される可能性が高い媒体の中央部では判定感度を低くしている。これにより、媒体搬送装置100は、用紙内で写真が貼付された領域において重送が発生したと誤って判定することを抑制しつつ、二枚の用紙が重なって搬送された場合には、用紙の端部において重送の発生を確実に検出することができる。また、媒体搬送装置100は、媒体の先端側の端部では判定感度を高くしている。これにより、媒体搬送装置100は、ステイプルにより綴じられた媒体又は先端が折れ曲がった媒体が搬送された場合に、媒体の重送の発生を早期に検出し、媒体又は媒体搬送装置100の損傷の発生を抑制することができる。
【0130】
以上詳述したように、媒体搬送装置200は、搬送される媒体内の複数の位置で検出した媒体の厚さ情報に基づいて媒体の重送が発生したか否かを判定し、媒体内の位置に応じて重送の判定感度を変更する。これにより、媒体搬送装置100は、媒体の重送が発生したか否かをより高精度に判定することが可能となった。
【0131】
図14は、他の実施形態に係る媒体搬送装置の処理回路350の概略構成を示す図である。
【0132】
処理回路350は、処理回路150の代わりに使用され、処理回路150の代わりに、媒体読取処理等を実行する。処理回路350は、制御回路351、判定回路352、検出回路353及び受付回路354等を有する。なお、これらの各部は、それぞれ独立した集積回路、マイクロプロセッサ、ファームウェア等で構成されてもよい。
【0133】
制御回路351は、制御部の一例であり、制御部151と同様の機能を有する。制御回路351は、操作装置105又はインタフェース装置132から操作信号を、第1媒体センサ111から媒体信号を受信し、受信した各信号に基づいて、モータ131を制御して媒体を搬送する。制御回路351は、撮像装置119から入力画像を取得し、インタフェース装置132に出力する。また、制御回路351は、記憶装置140から重送が発生したか否かの判定結果を読み出し、媒体の重送が発生したと判定された場合に異常処理を実行する。
【0134】
判定回路352は、判定部の一例であり、判定部152と同様の機能を有する。判定回路352は、記憶装置140から媒体内の複数の位置における透過情報又は厚さ情報の検出結果と、重送の判定感度とを読み出し、読み出した検出結果及び判定感度に基づいて媒体の重送が発生したか否かを判定し、判定結果を記憶装置140に記憶する。
【0135】
検出回路353は、検出部の一例であり、検出部153と同様の機能を有する。検出回路353は、超音波センサ116から超音波信号を、又は、厚さセンサ216から厚さ信号を受信し、受信した信号に基づいて媒体内の複数の位置における透過情報又は厚さ情報を検出し、検出結果を記憶装置140に記憶する。
【0136】
受付回路354は、受付部の一例であり、受付部154と同様の機能を有する。受付回路354は、操作装置105又はインタフェース装置132から結果情報を受信し、記憶装置140から重送の判定感度を読み出し、受信した結果情報に基づいて重送の判定感度を補正し、記憶装置140に記憶する。
【0137】
以上詳述したように、媒体搬送装置は、処理回路350によって媒体読取処理及び重送判定処理を実行する場合も、媒体の重送が発生したか否かをより高精度に判定することが可能となった。
【符号の説明】
【0138】
100、200 媒体搬送装置、112 ピックローラ、113 給送ローラ、114 ブレーキローラ、117a~h 第1~第8搬送ローラ、118a~h 第1~第8従動ローラ、151 制御部、152 判定部、153 検出部、154 受付部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14