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特許7349621サンプリングバッグの洗浄方法、サンプリングバッグの洗浄装置並びに当該方法及び装置で使用する液体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】サンプリングバッグの洗浄方法、サンプリングバッグの洗浄装置並びに当該方法及び装置で使用する液体
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20230915BHJP
【FI】
G01N1/00 101X
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019166749
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021043125
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】512165293
【氏名又は名称】株式会社テクロム
(73)【特許権者】
【識別番号】391048049
【氏名又は名称】滋賀県
(74)【代理人】
【識別番号】100145953
【弁理士】
【氏名又は名称】真柴 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】服部 良平
(72)【発明者】
【氏名】土田 裕也
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-166851(JP,A)
【文献】特開2007-232646(JP,A)
【文献】特開2006-341183(JP,A)
【文献】特開2017-142082(JP,A)
【文献】特開平07-151651(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0188887(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106525999(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と有機溶媒とを含む液体を蒸発させて得られる加湿ガスをサンプリングバッグ内に供給する工程を含み、前記液体中における水に対する有機溶媒の量が、水100質量部に対して、有機溶媒が3~50質量部であることを特徴とする、サンプリングバッグの洗浄方法。
【請求項2】
前記液体中に含まれる有機溶媒が、1又は2以上の極性溶媒である、請求項1に記載の洗浄方法。
【請求項3】
前記液体中に含まれる有機溶媒が、ケトン又は1価アルコールから選択される1又は2以上の溶媒である、請求項1又は2に記載の洗浄方法。
【請求項4】
前記加湿ガスを供給する工程の後に、前記サンプリングバッグ内に乾燥ガスを供給する工程を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の洗浄方法。
【請求項5】
水と有機溶媒とを含む液体であって、前記液体中における水に対する有機溶媒の量が、水100質量部に対して、有機溶媒が3~50質量部である液体を蒸発させることにより加湿ガスを発生させる加湿装置と、
前記加湿装置から得られる加湿ガスをサンプリングバッグ内に供給するための加湿ガスチューブと、並びに
サンプリングバッグに設けられた接続口に接続され、前記加湿ガスチューブが装着されており、サンプリングバッグの接続口に接続された状態でサンプリングバッグ内が接続口を通して外部と連通する排気口を備えた接続アタッチメントと、
を有することを特徴とするサンプリングバッグの洗浄装置。
【請求項6】
さらに、乾燥ガスを供給するための乾燥ガスチューブを有する、請求項に記載の洗浄装置。
【請求項7】
水と有機溶媒とを含む液体であって、前記液体中における水に対する有機溶媒の量が、水100質量部に対して、有機溶媒が3~50質量部である、請求項1~のいずれか1項に記載の洗浄方法又は請求項若しくはの装置において使用するための液体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプリングバッグの洗浄方法、サンプリングバッグの洗浄装置並びに当該方法及び装置で使用する液体に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスを捕集してその量や成分を分析するためにサンプリングバッグが使用されている。このサンプリングバッグは、環境雰囲気のガスなどを捕集して分析するだけでなく、自動車の内装材などの部品から放散されるガスを捕集して検査・分析するためにも使用されている。
【0003】
例えば、自動車の内装材を構成する物質から揮発性有機化合物(以下、「VOC」とする)が放散されると、いわゆるシックカー症候群が引き起こされるおそれがある。このため、自動車の内装材は放散されるVOCの種類と量が厳しく規制されており、内装材メーカーが内装材を自動車メーカーに納入する際に、内装材から放散されるガスを検査することが求められる。このように自動車内装材などの部品から放散されるガスを検査するにあたっては、検査する部品をサンプリングバッグに入れて密閉し、これを乾燥機などの加熱装置にセットして所定温度で所定時間加熱し、検査部品から放散されるガスをサンプリングバッグ内に捕集する。そしてサンプリングバッグ内に捕集したガスをガスクロマトグラフなどの分析機で分析することによって、検査部品から放散されるVOCなどのガスを検査できる。
【0004】
ここで、サンプリングバッグは、ポリビニルアルコール系フィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリフッ化ビニル(テドラー:登録商標)フィルムなど、各種の樹脂フィルムで形成されている。サンプリングバッグを構成する樹脂フィルムからガスが放散されると、このガスが検査をするガスに混入するおそれがある。特に自動車内装材などの部品を検査する場合、サンプリングバッグを切断して検査する部品を入れ、切断した部分をヒートシール、クリップ止め、テープ止め等して密閉した後、サンプリングバッグを乾燥機などの加熱装置に入れて、サンプリングバッグ内の検査部品を加熱することによってガスを放散させるようにしている。従って、この加熱でサンプリングバッグを構成する樹脂フィルムからもガスが放散され易くなり、このガスが検査をするガスに混入して、正確な検査をすることができなくなるおそれがある。
【0005】
そこで、サンプリングバッグにガスを捕集して分析する検査を行なう前に、サンプリングバッグの洗浄が行なわれている。特許文献1及び2は、サンプリングバッグを洗浄する技術の内、本発明者が発明した技術を開示している。特許文献1は、サンプリングバッグ内に加湿したガスを供給してサンプリングバッグを加湿ガスで洗浄するための加湿ガスチューブと、サンプリングバッグ内に乾燥ガスを供給して加湿ガスを追い出すと共にサンプリングバッグ内を乾燥する乾燥ガスチューブと、加湿ガスチューブ及び/又は乾燥ガスチューブを装着して形成され、サンプリングバッグに設けられた接続口に接続して使用される接続アタッチメントとを備え、接続アタッチメントをサンプリングバッグの接続口に接続した状態で加湿ガスチューブや乾燥ガスチューブがサンプリングバッグ内に差し込まれるように加湿ガスチューブや乾燥ガスチューブの各先部は接続アタッチメントより突出しており、接続アタッチメントをサンプリングバッグの接続口に接続した状態でサンプリングバッグ内が接続口を通して外部と連通する排気口が接続アタッチメントに設けられていることを特徴とする洗浄装置並びにこのような機構を用いたサンプリングバッグの洗浄方法を開示している。
【0006】
また、特許文献2は、サンプリングバッグ内に洗浄ガスを充填し、サンプリングバッグを加熱することによってサンプリングバッグから揮発性化学物質を洗浄ガス中に揮発させ、化学物質の揮発ガスを含む洗浄ガスをサンプリングバッグ内から排出することによって、サンプリングバッグを洗浄するにあたって、サンプリングバッグを加熱しながら、サンプリングバッグに設けられた接続口を通して洗浄ガスをサンプリングバッグ内に継続的に供給し続けることによって、サンプリングバッグ内に洗浄ガスを充填すると共に、この充填された洗浄ガスを後からサンプリングバッグ内に供給される洗浄ガスで押し出すことで接続口を通して継続的に排出することを特徴とするサンプリングバッグの洗浄方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-166851号公報
【文献】特開2017-142082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者が開発した上記技術によって、サンプリングバッグの高い洗浄効果が得られている。一方で、測定で使用する前のサンプリングバッグ内におけるVOC等(以下、「洗浄対象」とする)の量を洗浄によってより低減することができれば、サンプリングバッグを用いたVOC等(以下、「測定対象」とする)の分析をより正確に行うことができる。また、一度検査に使用したサンプリングバッグであっても、洗浄効果のより高い方法によりその内部をより清浄な状態にまで洗浄することができれば、当該サンプリングバッグの再利用をさらに促進できる。従って、このようなより洗浄効果の高い技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、特定の工程を有する方法、前記方法を実施するための装置並びに前記方法及び装置において使用する液体により上記課題が解決できることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
[1]水と有機溶媒とを含む液体を蒸発させて得られる加湿ガスをサンプリングバッグ内に供給する工程を含むことを特徴とする、サンプリングバッグの洗浄方法、
[2]前記液体中に含まれる有機溶媒が、1又は2以上の極性溶媒である、[1]に記載の洗浄方法、
[3]前記液体中に含まれる有機溶媒が、ケトン又は1価アルコールから選択される1又は2以上の溶媒である、[1]又は[2]に記載の洗浄方法、
[4]前記液体中における水に対する有機溶媒の量が、水100質量部に対して、有機溶媒が3~50質量部である、[1]~[3]のいずれかに記載の洗浄方法、
[5]前記加湿ガスを供給する工程の後に、前記サンプリングバッグ内に乾燥ガスを供給する工程を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の洗浄方法、
[6]水と有機溶媒とを含む液体を蒸発させることにより加湿ガスを発生させる加湿装置と、
前記加湿装置から得られる加湿ガスをサンプリングバッグ内に供給するための加湿ガスチューブと、並びに
サンプリングバッグに設けられた接続口に接続され、前記加湿ガスチューブが装着されており、サンプリングバッグの接続口に接続された状態でサンプリングバッグ内が接続口を通して外部と連通する排気口を備えた接続アタッチメントと、
を有することを特徴とするサンプリングバッグの洗浄装置、
[7]さらに、乾燥ガスを供給するための乾燥ガスチューブを有する、[6]に記載の洗浄装置、並びに
[8]水と有機溶媒とを含む、[1]~[5]のいずれかに記載の洗浄方法又は[6]若しくは[7]の装置において使用するための液体、
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、サンプリングバッグを用いた分析を行う際に障害となり得る洗浄対象のより高い洗浄効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の洗浄装置の一形態を説明する図面である。
図2】結露液トラップを備えた加湿装置を説明する図面である。
図3】加湿瓶を加熱する実施の一形態を説明する図面である。
図4図1の装置で使用する接続アタッチメントの一形態を説明する図面である。
図5】加湿ガスチューブを挿通した図4の接続アタッチメントを説明する図面である。
図6図1の装置によりサンプリングバッグに加湿ガスを供給した際の加湿ガスの流れを説明する図面である。
図7】さらに乾燥ガスチューブを備えた本発明の洗浄装置の一形態を説明する図面である。
図8】乾燥ガスチューブを備えた本発明の洗浄装置の別形態を説明する図面である。
図9図8の装置で使用する接続アタッチメントの一形態を説明する図面である。
図10】乾燥ガスチューブ及び加湿ガスチューブを挿通した図9の接続アタッチメントを説明する図面である。
図11図8の装置によりサンプリングバッグに加湿ガス次いで乾燥ガスを供給した際の加湿ガス及び乾燥ガスの流れを説明する図面である。
図12】本発明の洗浄装置を用いた洗浄システムを説明する図面である。
図13】実施例1~6、比較例1及び参考例1の数値をグラフ化した図面である。
図14】比較例2及び実施例7~12の数値をグラフ化した図面である。
図15】サンプリングバッグの例を示す図面である。
図16】サンプリングバッグ内における空気の流れを説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態そのままに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲内で種々の変更が可能であることは言うまでも無い。
【0013】
図1は、本発明の方法を実施するための装置の一形態を示している。図1の洗浄装置1は、
水と有機溶媒とを含む液体を蒸発させることにより加湿ガスを発生させる加湿装置2と、
前記加湿装置2から得られる加湿ガスをサンプリングバッグX内に供給するための加湿ガスチューブ3と、並びに
サンプリングバッグXに設けられた接続口X1に接続され、前記加湿ガスチューブ3が装着されており、サンプリングバッグXの接続口X1に接続された状態でサンプリングバッグX内が接続口X1を通して外部と連通する排気口を備えた接続アタッチメント4と、
を有する。
【0014】
加湿装置2
本発明において加湿ガスは、空気や窒素ガス等のガス中に後述する水と有機溶媒とを含む液体を蒸発させて得られる。前記液体を蒸発させる方法に特に制限は無く、熱源を用いた直接又は間接的な加熱により蒸発させる方法、超音波等を用いて物理的に蒸発させる方法、窒素や空気等のガスにより前記液体をバブリングして蒸発させる方法等、液体を蒸発させる際に一般的に用いられるいかなる手段も用いることができる。図1の実施の形態において洗浄装置1は、加湿瓶21などで形成される加湿装置2を有している。加湿瓶21は、後述する液体22を入れて蓋23で密閉したものであり、一方の端部を接続アタッチメント4に挿通して装着した加湿ガスチューブ3の他方の端部が蓋23に挿通して取り付けてある。この加湿ガスチューブ3の端部は加湿瓶21内において液体22の水面よりも上方の空間に位置するようにしてある。加湿装置2には窒素ガスや空気などのガスを供給するガスチューブ24が接続してある。このガスチューブ24は蓋23に挿通して取り付けてあり、その先端部を液体22の中に浸漬してある。そしてガスチューブ24を通してガスを送ると、ガスはガスチューブ24の先端から液体22中を潜って加湿装置2内に供給される。このようにガスを液体22中を潜らせてバブリングすることによって、前記液体22に含まれる水及び有機溶媒が蒸発して蒸気としてガスに含まれることになり、加湿ガスが得られる。この加湿ガスは加湿装置2から加湿ガスチューブ3へと送り出される。
【0015】
本発明において使用する前記液体22は、水と有機溶媒とを含む液体である。前記有機溶媒は、サンプリングバッグの素材を過度に劣化させることがなく、且つサンプリングバッグ内部に存在する及び/又はサンプリングバッグを形成するフィルムから放散される洗浄対象を洗浄できる溶媒であれば特に制限無く使用できる。
【0016】
このような有機溶媒の具体例として、極性溶媒が挙げられる。極性溶媒を使用することで、これを含む液体22を蒸発させて得られる加湿ガスによる洗浄効果をより向上させることができる。これら極性溶媒として、1又は2以上の極性溶媒を組み合わせて使用しても良い。
このような極性溶媒の具体例として、ケトン又は1価アルコールから選択される溶媒が挙げられる。極性溶媒としてこれら溶媒を選択することにより、洗浄対象を洗浄する効果がより向上される。ケトンの具体的な例として、アセトン、エチルメチルケトン及びジエチルケトン等が挙げられる。1価アルコールの具体例として、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール及びter-ブチルアルコール等が挙げられる。
【0017】
前記液体22における水に対する有機溶媒の量に特に制限は無く、サンプリングバッグ内の洗浄対象を洗浄できる程度の加湿ガスが得られる量であれば特に制限されない。水に対する有機溶媒の量は、具体的に例えば、水100質量部に対して、有機溶媒が3~50質量部、好ましくは5~50質量部、より好ましくは5~30質量部、さらに好ましくは10~30質量部である。水に対する有機溶媒の量を前記のような範囲とすることにより、過剰な有機溶媒の使用を避けつつ、サンプリングバッグ内の洗浄対象を洗浄する効果をより高めることができる。
【0018】
図1の実施の形態では、ガスチューブ24の途中に逆流防止瓶などで形成される逆流防止容器25を設けるようにしてある。すなわち、ガスチューブ24の途中を切断して、各切断した端部を逆流防止容器25の蓋26を通して、逆流防止容器25の中に差し込んで取り付けるようしてある。加湿ガスチューブ3を通してサンプリングバッグXに供給される加湿ガスが加湿ガスチューブ3を逆流すると、加湿瓶21内の圧力が高くなるので、加湿瓶21内の液体22がガスチューブ24内を逆流するおそれがある。このように液体22がガスチューブ24を逆流しても液体22は逆流防止容器25内に流れ込んで貯まり、これ以上ガスチューブ24を逆流することを防ぐことができる。尚、逆流防止容器25内に活性炭などを入れておけば、ガスチューブ24を通して供給されるガス中の不純成分などを活性炭に吸着させることができ、ガスを清浄化した状態で加湿ガスチューブ3に送ることができる。
【0019】
加湿装置2により発生した蒸気が、温度や気圧の変化に応じて結露し、結露により発生した液体(以下、「結露液」という)がサンプリングバッグX内に流れ込む場合もある。サンプリングバッグX内に結露液が供給されると、当該結露液に含まれる水により測定対象が吸収されたり、当該結露液に含まれる有機溶媒が測定ノイズとなり得るため、測定対象の正確な分析を阻害する場合がある。このような場合には、加湿装置2は、例えば、このような結露液に対するトラップ(以下、「結露液トラップ」とする)を備えても良い。このように、結露液トラップを備えることにより、加湿瓶21で発生した蒸気がガスチューブ24内部で結露したとしても、結露液は結露液トラップにて回収される。従って、当該結露液がサンプリングバッグXに供給されることはなく、加湿ガスのみをサンプリングバッグXに供給することができる。図2は、このような結露液トラップを備えた加湿装置2の一例を示している。図2の加湿装置2は、ガスチューブ24にて連結された逆流防止容器25、加湿瓶21及び結露液トラップ27を備えている。加湿瓶21及び逆流防止容器25は、前記説明の通りである。図2において、結露液トラップ27は、加湿瓶21や逆流防止容器25と同じように瓶状の容器であり、蓋28により密閉されている。
【0020】
図1の形態では、蓋23を通して加湿瓶21に加湿ガスチューブ3が差し込まれている。これに対して、図2の加湿装置2においては、加湿瓶21の蓋23を通して、加湿ガスチューブ3の代わりにガスチューブ24の一端部が加湿瓶21の中に差し込まれている。前記ガスチューブ24の加湿瓶21に差し込まれた端部と反対側の端部が、蓋28を通して結露液トラップ27の中に差し込まれている。前記結露液トラップ27に差し込まれたガスチューブ24の端部は、結露液トラップ27の底部近くまで差し込まれている。さらに、結露液トラップ27の蓋28を通して加湿ガスチューブ3の一端部が結露液トラップ27の中に差し込まれている。前記結露液トラップ27に差し込まれた加湿ガスチューブ3の端部は、蓋28の裏面から突出しない、言い換えれば、加湿ガスチューブ3の下端を蓋28の裏面下端に合わせるか、又は加湿ガスチューブ3の下端が蓋28の内部にとどまっていることが好ましい。このような構造とすることにより、結露液トラップ27に回収された結露液が蒸発して再度蓋28の裏面において結露したとしても、結露液が加湿ガスチューブ3に入り込む可能性を極力低減できる。また、図2に示すように、結露液トラップ27中におけるガスチューブ24の下端と加湿ガスチューブ3の下端との距離をできるだけ長く取ることにより、ガスチューブ24から流れ込む結露液が加湿ガスチューブ3に入り込む可能性を極力低減できる。
【0021】
また、加湿装置2を使用する環境、例えば気温が低い状況下で使用する場合、前記液体22の蒸発量が少なくなり加湿ガスによる洗浄効果が低下する場合もある。また、低温環境下でなくとも、より多くの蒸気を得て加湿ガスによる洗浄効果を向上させたい場合もある。このような場合には、加湿装置2を加熱する手段を備えても良い。図3は、このような加熱手段の具体例を示している。図3は、加湿瓶21を加熱するための加熱具29を説明している。加熱具29は、加熱容器291及びその内周にリング状の電気ヒーター292を取り付けて形成してある。加湿瓶21は、電気ヒーター292の内周に加湿瓶21の下部を差し込んでセットすることによって、電気ヒーター292で加湿瓶21内の液体22を加熱することができるようにしてある。このような加熱具29を用い、電気ヒーター292の加熱温度を調整することによって、液体22の蒸発量を増加させ、加湿ガス中における液体22の蒸気の量を増加させることが出来、その結果サンプリングバッグX内部の洗浄効果をより高めることができる。なお、加熱具29の形態は図3のようなものに限定されず、例えば加湿瓶21内にヒーターを内蔵して、液体22を直接加熱するように形成してもよい。
【0022】
加湿ガスチューブ3
加湿ガスチューブ3は、前記加湿装置2から、後述する接続アタッチメント4を介してサンプリングバッグX内に挿通される。加湿ガスチューブ3としては、可撓性を有する樹脂(例えば、フッ素系樹脂又はポリプロピレン若しくはポリエチレン等のポリオレフィン樹脂等)などで可撓性を有する円管状に成形した直径1.5~3mm程度のものを使用することができる。
【0023】
接続アタッチメント4
図4は接続アタッチメント4の一例を示しており、フッ素系樹脂などで図4(a)のように全体として円柱状に形成してある。接続アタッチメント4の一方の端部は、図4(b)に示すように、一方の端面のみで開口する空洞部41aを内周に設けた円筒状の筒状接続部41として形成してあり、またこの筒状接続部41の先端部は径の小さい接続用フランジ42として形成してある。接続用アタッチメント4の一か所に半径方向で孔が穿設してあり、この孔は筒状接続部41の内周の空洞部41aに連通していて、排気口43として接続用アタッチメント4の外周面に開口している。
【0024】
また接続アタッチメント4の筒状接続部41と反対側の端部には断面円形のチューブ挿通孔44が穿設してある。チューブ挿通孔44は図4(c)に示すように接続アタッチメント4の中央部に配置して設けてあり、チューブ挿通孔44は一方の端部が接続アタッチメント4の端面で、他方の端部が筒状接続部41の空洞部41aの端面で、それぞれ開口するように形成してある。
【0025】
図4の実施の形態では、接続アタッチメント4の端面に円形のOリング収容凹部45が凹設してあり、チューブ挿通孔44はこのOリング収容凹部45の底面の中央で開口するようにしてある。
【0026】
ここで、上記のチューブ挿通孔44の内径は加湿ガスチューブ3の直径より僅かに大きい寸法に形成されており、また上記の筒状接続部41の空洞部41aの内径は加湿ガスチューブ3の直径よりも大きい寸法に形成されている。
【0027】
そして加湿ガスチューブ3をチューブ挿通孔44に差し込んで挿通し、筒状接続部41内を通して導出させることによって、図5のように接続アタッチメント4に加湿ガスチューブ3が装着される。加湿ガスチューブ3は、チューブ挿通孔44内をスライドさせることによって、図5の矢印のようにチューブ長手方向に移動させることができる。このとき、弾性を有するOリング46がOリング収容凹部45に嵌め込んであり、加湿ガスチューブ3はこのOリング46の内周に通してあって、加湿ガスチューブ3の外周がOリング46に弾性的に接している。従って、加湿ガスチューブ3をチューブ挿通孔44内に沿ってスライドさせるときには、この弾接による抵抗を受けるため、不用意に加湿ガスチューブ3がスライド移動してしまうことを防ぐことができる。またこのOリング46によって加湿ガスチューブ3とチューブ挿通孔44との間の気密性が確保されている。
【0028】
以下に、図1の装置を用いたサンプリングバッグXの洗浄方法について説明する。本発明の方法は、水と有機溶媒とを含む液体を蒸発させて得られる加湿ガスをサンプリングバッグ内に供給する工程を含むことを特徴とする。
【0029】
サンプリングバッグXとしては、市販の任意のものを使用することができる。サンプリングバッグXは、使用前のものでも良いし、一度測定に使用したものでも良い。洗浄対象は、例えば、サンプリングバッグXを形成するフィルムを製造する際に使用される溶媒等が挙げられる。例えば、ポリフッ化ビニルフィルムを作成する際に、アミド系溶媒、例えばジメチルアセトアミドが使用される場合がある。本発明の方法では、このようなアミド系溶媒を洗浄対象として洗浄できる。
【0030】
サンプリングバッグXは各種の大きさ且つ種々の形状のものが市販されているので、サンプリングバッグXの大きさや形状に合わせて、加湿ガスチューブ3が接続アタッチメント4の筒状接続部41から突出する長さを調節する。本明細書の図面では、矩形のサンプリングバッグXを洗浄する場合を例として説明する。上記のように加湿ガスチューブ3は、チューブ挿通孔44内をスライドさせることによって、チューブ長手方向に移動させることができる。従って、接続アタッチメント4の筒状接続部41から加湿ガスチューブ3が突出する長さを容易に調節することができる。調節する長さは、サンプリングバッグXの接続口X1から、矩形に形成されるサンプリングバッグXの接続口X1から最も遠い角の端部までの距離にほぼ合うようにするのが望ましいが、通常は加湿ガスチューブ3の先端がサンプリングバッグXの中央部付近あるいはそれより奥にまで差し込まれる長さに調節すれば十分である。つまり、加湿ガスチューブ3は、その先端がサンプリングバッグXの少なくとも中央部に位置する長さで接続アタッチメント4から突出するようにすればよい。このように各種の大きさのサンプリングバッグXにおいて接続口X1から最も遠い角の端部までの距離にほぼ合うよう長さ調節ができるように、加湿ガスチューブ3はそれ自体が十分な長さを有するものが用いられ、使用する最も大きなサンプリングバッグXの対角線よりも長い寸法に加湿ガスチューブ3を用いる必要がある。
【0031】
そしてまず、加湿ガスチューブ3をサンプリングバッグXの円筒状の接続口X1の内周を通してサンプリングバッグX内に差し込む。ここで、接続アタッチメント4から加湿ガスチューブ3が突出する長さが短いときや長過ぎるときは、加湿ガスチューブ3をサンプリングバッグXに差し込んだ状態で、加湿ガスチューブ3をスライドさせて接続アタッチメント4から突出する長さを調整するようにすればよい。
【0032】
このように加湿ガスチューブ3をサンプリングバッグX内に差し込んだ状態で、サンプリングバッグXの接続口X1に接続アタッチメント4を接続して固定する。接続口X1と接続アタッチメント4の接続は、シリコンなど弾性を有する材料で円筒形に形成したジョイント筒6を用い、図1(b)のように、ジョイント筒6の両側の内周に接続口X1と接続アタッチメント4の筒状接続部41の接続用フランジ42をそれぞれ差し込んで篏合することによって行なうことができる。サンプリングバッグXの接続口X1はその外径寸法がメーカー毎に若干異なるので、接続口X1の外径寸法の相違を吸収しつつ、接続口X1と接続アタッチメント4の筒状接続部41とを接続するために、弾性を有するジョイント筒6を用いるようにしている。
【0033】
ここで、図15(a)のように一つの接続口X1を設けたサンプリングバッグXを洗浄する場合には、接続口X1に接続アタッチメント4を接続することによって、サンプリングバッグX内を密閉することができるが、図15(b)のように複数の接続口X1を設けたサンプリングバッグXを洗浄する場合には、接続アタッチメント4を接続しない接続口X1に栓をするなどして閉じることにより、サンプリングバッグX内を密閉状態にする。
【0034】
次に、ガスチューブ24を通して窒素ガスや空気などのガスを送り出す。このガスは加湿装置2の加湿瓶21を通過する際に、加湿瓶21内で水と有機溶媒とを含む前記液体22をバブリングすることにより前記液体22を蒸発させ、加湿ガスとなって加湿ガスチューブ3を通して送られてサンプリングバッグX内に供給される。加湿ガスは加湿ガスチューブ3の先端からサンプリングバッグX内に吹き込まれる。加湿ガスチューブ3の先端はサンプリングバッグX内に深く差し込まれているので、加湿ガスはサンプリングバッグXの接続口X1から遠く離れた箇所に吹き込まれる。このようにサンプリングバッグX内の奥深くに加湿ガスチューブ3の先端から加湿ガスが吹き込まれると、加湿ガスはサンプリングバッグXの端部へ送られてサンプリングバッグXの端部が膨らみ、次に接続口X1の側へ向かって膨らむ部分が広がるように、加湿ガスはサンプリングバッグX内を流れる。すなわち図6に実線矢印で示すように、加湿ガスはサンプリングバッグXの奥の端部から接続口X1の方向に向かってサンプリングバッグX内の全域を流れる。そしてサンプリングバッグXの容量を超える量の加湿ガスが吹き込まれると、容量を超える分の加湿ガスは接続口X1から接続アタッチメント4の筒状接続部41の空洞部41a内に流れ出し、接続アタッチメント4に設けた排気口43を通して排気される。
【0035】
排気口43から加湿ガスを排出しながら、加湿ガスチューブ3を通して加湿ガスをサンプリングバッグX内に吹き込み続けることによって、サンプリングバッグX内に加湿ガスを流し続けることができ、サンプリングバッグX内に流す加湿ガスでサンプリングバッグX内を洗浄できる。ここで、加湿ガスは水蒸気及び有機溶媒の蒸気を多く含み、サンプリングバッグX内の洗浄対象はこれら蒸気に吸着され易いので、サンプリングバッグX内の洗浄対象を加湿ガスに吸着した状態で、加湿ガスと共に排気口43から排出することができる。従って、サンプリングバッグXを洗浄するガスとして前記のような加湿ガスを用いて加湿洗浄することによって、効率良く、且つ高い効果で洗浄を行なうことができる。
【0036】
しかも上記のように加湿ガスチューブ3からサンプリングバッグXの奥に向けて加湿ガスを吹き込むようにすることによって、加湿ガスは図6の実線矢印のようにサンプリングバッグXの奥から接続口X1の方向に向かって流れた後、接続口X1を通って排出される。従って、図16(a)の破線矢印cのように接続口X1からサンプリングバッグXに流入した加湿ガスが直ちに短絡的に接続口X1から排出されるようなことはない。従って、加湿ガスはサンプリングバッグX内の全面を流れた後に排出され、サンプリングバッグX内に加湿ガスが充満された状態にすることができるので、加湿ガスでサンプリングバッグX内の全面を均一に加湿洗浄することができる。
【0037】
上記のように加湿ガスをサンプリングバッグX内に通して洗浄するにあたって、後述するようにサンプリングバッグXを加熱しながら行なっても良い。そして例えば容量が10LのサンプリングバッグXの場合、例えば、加熱温度を80℃且つ加湿ガスの流量を200~600mL/minに設定して加湿洗浄を行なうときには、加湿ガスを1~5時間程度サンプリングバッグX内に通すことによって加湿洗浄を完了することができる。
【0038】
加湿洗浄を終了した後、サンプリングバッグX内の加湿ガスをサンプリングバッグX外に排出する。サンプリングバッグXから加湿ガスを排出する方法に特に制限は無く、例えば、サンプリングバッグXの外側を押して強制的に排出する方法、サンプリングバッグXの排出口X1にチューブを接続してポンプ等により吸引する方法、及び後述するように、サンプリングバッグXの排出口X1にチューブを接続して乾燥ガス等のガスを供給することにより加湿ガスをサンプリングバッグX1から追い出す方法等が採用可能である。
【0039】
乾燥ガスチューブ5
本発明の洗浄装置1は、必要に応じて乾燥ガスチューブ5を有しても良い。乾燥ガスチューブ5は、接続アタッチメント4を介してサンプリングバッグX内に挿通される。乾燥ガスチューブ5としては、可撓性を有する樹脂(例えば、フッ素系樹脂又はポリプロピレン若しくはポリエチレン等のポリオレフィン樹脂等)などで可撓性を有する円管状に成形した直径1.5~3mm程度のものを使用することができる。
【0040】
サンプリングバッグXが図15(b)に示すように接続口X1を2つ以上有する場合には、図7に示すように、一の接続口X1に加湿ガスチューブ3を挿通した接続アタッチメント4を接続し、別の接続口X1に乾燥ガスチューブ5を挿通した別の接続アタッチメント4を接続しても良い。
【0041】
一方で、サンプリングバッグXが図15(a)に示すように接続口X1が一つしか無い場合や、接続口X1が2つ以上あっても作業効率をより向上させるために、乾燥ガスチューブ5を、加湿ガスチューブ3を挿通した接続アタッチメント4と同じ接続アタッチメント4に挿通して良い。図8は、加湿ガスチューブ3と乾燥ガスチューブ5とを同一の接続アタッチメント4に挿通した洗浄装置1の一形態を示している。図8の実施形態は、乾燥ガスチューブ5が、加湿ガスチューブ3の挿通された接続アタッチメント4と同じ接続アタッチメント4に挿通されている以外は、図1の実施形態と同じである。
【0042】
図9は、加湿ガスチューブ3と乾燥ガスチューブ5との両方のチューブを挿通できる接続アタッチメント4の形態を説明する図である。図9の実施の形態では、チューブ挿通孔44は接続アタッチメント4に一対設けるようにしてあり、各チューブ挿通孔44a,44bは近接して平行に配置してある。接続アタッチメント4の端面には一対の円形のOリング収容凹部45,45が凹設してあり、各チューブ挿通孔44a,44bはこのOリング収容凹部45,45の底面の中央で開口するようにしてある。
【0043】
ここで、上記のチューブ挿通孔44a,44bの内径は加湿ガスチューブ3や乾燥ガスチューブ5の直径より僅かに大きい寸法に形成されている。また、上記の筒状接続部41の空洞部41aの内径は、加湿ガスチューブ3の直径と乾燥ガスチューブ5の直径とを合わせた大きさよりも大きい寸法に形成されている。
【0044】
そして加湿ガスチューブ3をチューブ挿通孔44aに、乾燥ガスチューブ5をチューブ挿通孔44bに差し込んで挿通し、筒状接続部41内を通して導出させることによって、図10のように接続アタッチメント4に加湿ガスチューブ3と乾燥ガスチューブ5とが装着される。加湿ガスチューブ3や乾燥ガスチューブ5は、チューブ挿通孔44a,44b内をスライドさせることによって、図10の矢印のようにチューブ長手方向に移動させることができる。このとき、弾性を有するOリング46,46が各Oリング収容凹部45,45に嵌め込んであり、加湿ガスチューブ3や乾燥ガスチューブ5はこのOリング46,46の内周に通してあって、加湿ガスチューブ3や乾燥ガスチューブ5の外周がOリング46,46に弾性的に接している。従って、加湿ガスチューブ3や乾燥ガスチューブ5をチューブ挿通孔44a,44b内に沿ってスライドさせるときには、この弾接による抵抗を受けるため、不用意に加湿ガスチューブ3や乾燥ガスチューブ5がスライド移動してしまうことを防ぐことができる。またこのOリング46,46によって加湿ガスチューブ3や乾燥ガスチューブ5とチューブ挿通孔44a,44bとの間の気密性が確保されている。
【0045】
本発明の方法は、さらに加湿ガスを供給した後に、乾燥ガスを供給する工程を含んでも良い。以下に、図8の実施形態を用いて、加湿ガスを供給する工程を含む洗浄方法を説明する。
【0046】
前記のようにして加湿ガスでサンプリングバッグX内を洗浄した後、加湿ガスチューブ3による加湿ガスの供給を停止し、次いで乾燥ガスチューブ5を通して乾燥ガスをサンプリングバッグXに供給する。なお、乾燥ガスの供給は、加湿ガスをサンプリングバッグXから排出した後に行って(バッチ式)も良いし、加湿ガスがサンプリングバッグX内に残っている状態で行って(連続式)もよい。以下に、連続式で乾燥ガスを供給する例に基づいて本発明の方法を説明する。
【0047】
乾燥ガスは乾燥ガスチューブ5の先端からサンプリングバッグX内に吹き込まれるものであり、乾燥ガスチューブ5の先端はサンプリングバッグXの奥に差し込まれているので、乾燥ガスはサンプリングバッグXの接続口X1から遠い位置に吹き込まれる。このようにサンプリングバッグX内に乾燥ガスチューブ5の先端から乾燥ガスが吹き込まれると、乾燥ガスはサンプリングバッグXの端部へ送られ、図11に実線矢印で示すように、サンプリングバッグXの端部から接続口X1の側へ向かって流れる。そしてサンプリングバッグX内の加湿ガスはこの乾燥ガスの流れによって、図11に鎖線矢印で示すように接続口X1に向けて押され、接続口X1から接続アタッチメント4の筒状接続部41を通過して、排気口43から排出される。このとき、乾燥ガスは実線矢印のようにサンプリングバッグXの奥から接続口X1の方向に向かって流れた後、接続口X1を通って排出され、図16(b)の破線矢印fのように接続口X1からサンプリングバッグXに流入した乾燥ガスが直ちに短絡的に接続口X1から排出されるようなことはない。従って、サンプリングバッグX内に加湿ガスが残るようなことなく、サンプリングバッグX内から加湿ガスを乾燥ガスで追い出して排出することができ、サンプリングバッグX内をより効率よく乾燥することができる。
【0048】
また、乾燥ガスはサンプリングバッグXの奥に差し込まれている乾燥ガスチューブ5の先端から吹き込まれるので、サンプリングバッグXの端部内での乾燥ガスのガス圧が高い。サンプリングバッグXの端部内のガス圧が低いと、サンプリングバッグXの端部での膨らみがなくなって内面同士が重なり合い、この重なって密着した部分に加湿ガスから出た結露水分が毛細管現象で浸透し、サンプリングバッグX内を乾燥することが困難になる場合がある。しかしながら、前記のように、乾燥ガスをサンプリングバッグXの奥に差し込まれた乾燥ガスチューブ5の先端から吹き込むことにより、サンプリングバッグXの端部内での乾燥ガスのガス圧を高く確保できるので、サンプリングバッグXの内面同士が重なり合って密着することを防ぐことができ、結露水分が毛細管現象で残留するようなことを未然に防ぐことができる。
【0049】
上記のように乾燥ガスをサンプリングバッグXに通してサンプリングバッグX内を乾燥する場合も、サンプリングバッグXを加熱しながら行ってもよい。そして例えば容量が10LのサンプリングバッグXの場合、加熱温度を80℃、乾燥ガスの流量を200~600mL/minに設定して乾燥を行なうときには、乾燥ガスを20~40分間程度サンプリングバッグX内に通すことによって乾燥を完了することができる。上記のようにして、加湿ガスと乾燥ガスを使用したサンプリングバッグXの洗浄工程を終了することができる。
【0050】
図12は本発明のサンプリングバッグ洗浄装置1を用いた洗浄システムを示している。7は制御装置であり、内部にガス配管、制御弁、制御部などが組み込まれており、ガス配管にはガスボンベなどが接続できるようになっている。加湿ガスチューブ3や乾燥ガスチューブ5は制御装置7のガス配管に接続してあり、上記のように加湿ガスチューブ3を通してサンプリングバッグXに加湿ガスを供給して行なう洗浄や、乾燥ガスチューブ5を通してサンプリングバッグXに乾燥ガスを供給して行なう洗浄は、制御装置7で自動的に制御して行なうことができるようにしてある。
【0051】
またこのシステムでは、加熱装置8を用いるようにしている。加熱装置8としては一般に使用されている乾燥機をそのまま用いることができる。乾燥機の側壁には通常、配管取り入れ用の開口が設けられているので、この開口を開いて加湿ガスチューブ3や乾燥ガスチューブ5を通し、接続アタッチメント4を加熱装置8内に配置することができる。そして加熱装置8内において、接続アタッチメント4にサンプリングバッグXを接続することによって、加熱装置8内で所定の温度に加熱しながら、上記の加湿ガスと乾燥ガスによるサンプリングバッグXの洗浄を行なうことができる。このようにサンプリングバッグXを加熱すると、サンプリングバッグXからガスが放散され易くなるので、サンプリングバッグXの洗浄の効率を高めることができる。
【0052】
ここで、図12の実施の形態では、加湿装置2は加熱装置8の外側に配置するようにしてあるが、加湿装置2を加熱装置8の中に配置するようにしてもよい。このように加湿装置2を加熱装置8の中に配置すると、加湿装置2内の液体22が加熱されて前記液体22が蒸発し、加湿装置2内で生成される加湿ガス中の蒸気含有量を高め、高い濃度で蒸気を含む加湿ガスを生成することができ、加湿ガスによる洗浄効果をより向上できる。尚、図12の実施の形態では逆流防止容器25、結露液トラップ27及び加熱具29の使用を省略しているが、加湿装置2がこれらをさらに有していても良いことは言うまでも無い。
【実施例
【0053】
1.溶媒の種類による洗浄効果の確認
加熱具29を加湿瓶21に装着した加湿装置2を有する図12の洗浄システムを用いて、洗浄前且つ未使用のポリフッ化ビニルバッグ(テドラー(登録商標)バッグ)10Lの洗浄試験を行った。前記ポリフッ化ビニルバッグを80℃に設定した乾燥機に入れ、ガス流量0.5mL/minにて加湿ガスを90分、次いで乾燥ガスを30分連続式で流した。加湿ガスを発生させる加湿瓶21の加熱温度は30℃とした。加湿ガスは、加湿瓶に水と、アセトン(実施例1)、tert-ブタノール(実施例2)、メタノール(実施例3)、エタノール(実施例4)、2-プロパノール(実施例5)又はアセトンとエタノールの1:1混合溶媒(実施例6)とを含む液体を入れて、バブリングすることにより前記液体を蒸発させて発生させた。なお、水100質量部に対する前記有機溶媒の添加量を10質量部とした。さらに、加湿瓶21に水だけを入れて(有機溶媒を加えずに)加湿ガスを発生させて同様に洗浄を行い、比較例1とした。
【0054】
洗浄後のポリフッ化ビニルバッグに、窒素ガスを4L供給し、密閉した状態で65℃に設定した乾燥機中で2時間静置させた後、ポリフッ化ビニルバッグ内のジメチルアセトアミドの量を測定した。なお、洗浄前且つ未使用のポリフッ化ビニルバッグ内のジメチルアセトアミドの量を測定し、参考例1とした。
【0055】
試験の結果が、以下の表及び図13のグラフに示されている。
【0056】
【表1】
【0057】
上記表及びグラフから明らかなように、有機溶媒を含まない水から得られた加湿ガスによる洗浄を行った比較例1は、洗浄を行っていない参考例1と比較してポリフッ化ビニルバッグ内のジメチルアセトアミド量が減少している。しかしながら、本発明の方法により洗浄した実施例1~6において、ポリフッ化ビニルバッグ内のジメチルアセトアミドの量が比較例1と比べてさらに減少している。従って、本発明の方法が優れた洗浄効果を有していることが明らかである。
【0058】
2.溶媒の濃度による洗浄効果の確認
溶媒としてエタノールを使用し、エタノールの添加量を、水100質量部に対して、0質量部(比較例2)、1質量部(実施例7)、3質量(実施例8)、5質量部(実施例9)、10質量部(実施例10)、30質量部(実施例11)、50質量部(実施例12)とした以外、実施例1~6と同様の試験を行った。試験による結果が、以下の表2及び図14のグラフに示されている。
【0059】
【表2】
【0060】
上記表及びグラフから、水100質量部に対する有機溶媒の添加量が3質量部を超えた当たりから、ジメチルアセトアミドの洗浄効果がより高くなっていることがわかる。
【符号の説明】
【0061】
1:洗浄装置
2:加湿装置、21:加湿瓶、22:液体、23:蓋、24:ガスチューブ、25:逆流防止容器、26:蓋、27:結露液トラップ、28:蓋、29:加熱具、291:加熱容器、292:電気ヒーター
3:加湿ガスチューブ
4:接続アタッチメント、41:筒状接続部、41a:空洞部、42:接続用フランジ、43:排気口、44:チューブ挿通孔、45:Oリング収容凹部、46:Oリング
5:乾燥ガスチューブ
6:ジョイント筒
7:制御装置
8:加熱装置
X:サンプリングバッグ、X1:接続口



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16