(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】レンズシフト機構およびそれを備えたプロジェクタ
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20230915BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
G03B21/14 D
H04N5/74 Z
(21)【出願番号】P 2020013864
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】201910139821.6
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】高木 敦史
(72)【発明者】
【氏名】肖 世貴
(72)【発明者】
【氏名】陳 ▲チェン▼
(72)【発明者】
【氏名】張 相林
【審査官】中村 直行
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-175351(JP,A)
【文献】特開2006-133419(JP,A)
【文献】特開2016-045262(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0052627(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00 - 21/64
H04N 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
投射レンズと、
前記投射レンズを支持し、且つ前記投射レンズの光軸延在方向に対して直交する第1の方向にシフト可能に前記ベース部材に取り付けられたレンズ支持部材と、
前記光軸延在方向と前記第1の方向との両方に対して直交する第2の方向に移動可能に前記ベース部材に取り付けられ、且つねじ穴を備える第1のシフト部材と、
前記レンズ支持部材に対して前記第2の方向に移動可能に連結する第1の連結部と前記第1のシフト部材に対して前記第1の方向に移動可能に連結する第2の連結部とを備え、且つ揺動可能に前記ベース部材に取り付けられた連結部材と、
前記第2の方向に延在する第1の回転中心線を中心にして回転可能に前記ベース部材に取り付けられ、且つ前記第1のシフト部材の前記ねじ穴に係合するねじ部を備える第1の送りねじと、
前記第1の送りねじに取り付けられた第1のダイヤルノブと、を有する、レンズシフト機構。
【請求項2】
前記レンズ支持部材が、前記第2の方向にシフト可能に前記ベース部材に取り付けられ、
前記ベース部材に対して前記第2の方向に移動可能に取り付けられ、前記レンズ支持部材に対して前記第1の方向に移動可能に連結し、且つねじ穴を備える第2のシフト部材と、
前記第2の方向に延在する第2の回転中心線を中心にして回転可能に前記ベース部材に取り付けられ、且つ前記第2のシフト部材の前記ねじ穴に係合するねじ部を備える第2の送りねじと、
前記第2の送りねじに取り付けられた第2のダイヤルノブと、をさらに有する、請求項1に記載のレンズシフト機構。
【請求項3】
前記連結部材における前記第1および第2の連結部が、前記光軸延在方向に延在する第1および第2の連結ピンであって、
前記レンズ支持部材が、前記第2の方向に延在する長穴状であって、且つ前記第1の連結ピンと係合する連結穴を備え、
前記第1のシフト部材が、前記第1の方向に延在する長穴状であって、且つ前記第2の連結ピンと係合する連結穴を備える、請求項2に記載のレンズシフト機構。
【請求項4】
前記第1の連結ピン、前記第2の連結ピン、および前記連結部材の揺動中心を結んでなる三角形が、直角三角形である、請求項3に記載のレンズシフト機構。
【請求項5】
前記第1の連結ピン、前記第2の連結ピン、および前記連結部材の揺動中心を結んでなる三角形が、直角二等辺三角形である、請求項4に記載のレンズシフト機構。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のレンズシフト機構と、
前記レンズシフト機構の投射レンズに向かって光を出射する光学系と、を有するプロジェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプロジェクタに搭載されるレンズシフト機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スクリーン上の投影画像の位置を微調整するために、投射レンズをその光軸に対して直交する上下方向および左右方向にシフトさせるレンズシフト機構を備えるプロジェクタが開示されている。プロジェクタの天面に設けられたレンズシフト機構の2つのダイヤルノブをユーザが回すことにより、投射レンズが上下方向および左右方向にシフトする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されたレンズシフト機構の場合、2つのダイヤルノブそれぞれは上下方向に延在する回転中心線を中心にして回転する。一方のダイヤルノブを回すと、投射レンズがそのダイヤルノブの回転中心線の延在方向である上下方向にシフトする。他方のダイヤルノブを回すと、投射レンズがそのダイヤルノブの回転中心線の延在方向に対して直交する方向である左右方向にシフトする。
【0005】
そのため、他方のダイヤルノブの回転を投射レンズの左右方向のシフトに変換する動力伝達機構が必要である。しかしながら、特許文献1の場合、この動力伝達機構は、カサ歯車などの多数の動力伝達要素が複雑に噛み合う構造である。具体的には、上下方向に延在する回転中心線を中心にして回転するダイヤルノブと左右方向に延在する回転中心線を中心にして回転する送りねじとの間に、多数の動力伝達要素が複雑に配置されている。そのために、これらの間における多数の箇所でバックラッシュが発生する。
【0006】
そこで、本発明は、例えばプロジェクタなどに搭載されるレンズシフト機構において、シンプルな構成で、ダイヤルノブの回転中心線の延在方向に対して直交する方向に投射レンズをシフトさせることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様によれば、
ベース部材と、
投射レンズと、
前記投射レンズを支持し、且つ前記投射レンズの光軸延在方向に対して直交する第1の方向にシフト可能に前記ベース部材に取り付けられたレンズ支持部材と、
前記光軸延在方向と前記第1の方向との両方に対して直交する第2の方向に移動可能に前記ベース部材に取り付けられ、且つねじ穴を備える第1のシフト部材と、
前記レンズ支持部材に対して前記第2の方向に移動可能に連結する第1の連結部と前記第1のシフト部材に対して前記第1の方向に移動可能に連結する第2の連結部とを備え、且つ揺動可能に前記ベース部材に取り付けられた連結部材と、
前記第2の方向に延在する第1の回転中心線を中心にして回転可能に前記ベース部材に取り付けられ、且つ前記第1のシフト部材の前記ねじ穴に係合するねじ部を備える第1の送りねじと、
前記第1の送りねじに取り付けられた第1のダイヤルノブと、を有する、レンズシフト機構が提供される。
【0008】
また、本発明の別態様によれば、
上述のレンズシフト機構と、
前記レンズシフト機構の投射レンズに向かって光を出射する光学系と、を有する、プロジェクタが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えばプロジェクタなどに搭載されるレンズシフト機構において、シンプルな構成で、ダイヤルノブの回転中心線の延在方向に対して直交する方向に投射レンズをシフトさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るレンズシフト機構が搭載されたプロジェクタの概略的な斜視図
【
図5】レンズ支持部材および第1のシフト部材の詳細を示す斜視図
【
図6】連結部材を介するレンズ支持部材と第1のシフト部材との連結を示す正面図
【
図8】レンズ支持部材と第2のシフト部材との連結を説明するための分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一態様のレンズシフト機構は、ベース部材と、投射レンズと、前記投射レンズを支持し、且つ前記投射レンズの光軸延在方向に対して直交する第1の方向にシフト可能に前記ベース部材に取り付けられたレンズ支持部材と、前記光軸延在方向と前記第1の方向との両方に対して直交する第2の方向に移動可能に前記ベース部材に取り付けられ、且つねじ穴を備える第1のシフト部材と、前記レンズ支持部材に対して前記第2の方向に移動可能に連結する第1の連結部と前記第1のシフト部材に対して前記第1の方向に移動可能に連結する第2の連結部とを備え、且つ揺動可能に前記ベース部材に取り付けられた連結部材と、前記第2の方向に延在する第1の回転中心線を中心にして回転可能に前記ベース部材に取り付けられ、且つ前記第1のシフト部材の前記ねじ穴に係合するねじ部を備える第1の送りねじと、前記第1の送りねじに取り付けられた第1のダイヤルノブと、を有する。
【0012】
このような態様によれば、例えばプロジェクタなどに搭載されるレンズシフト機構において、シンプルな構成で、ダイヤルノブの回転中心線の延在方向に対して直交する方向に投射レンズをシフトさせることができる。
【0013】
例えば、前記レンズ支持部材が、前記第2の方向にシフト可能に前記ベース部材に取り付けられる。この場合、レンズシフト機構は、前記ベース部材に対して前記第2の方向に移動可能に取り付けられ、前記レンズ支持部材に対して前記第1の方向に移動可能に連結し、且つねじ穴を備える第2のシフト部材と、前記第2の方向に延在する第2の回転中心線を中心にして回転可能に前記ベース部材に取り付けられ、且つ前記第2のシフト部材の前記ねじ穴に係合するねじ部を備える第2の送りねじと、前記第2の送りねじに取り付けられた第2のダイヤルノブと、をさらに有する。
【0014】
例えば、前記連結部材における前記第1および第2の連結部が、前記光軸延在方向に延在する第1および第2の連結ピンであって、前記レンズ支持部材が、前記第2の方向に延在する長穴状であって、且つ前記第1の連結ピンと係合する連結穴を備え、前記第1のシフト部材が、前記第1の方向に延在する長穴状であって、且つ前記第2の連結ピンと係合する連結穴を備える。
【0015】
例えば、前記第1の連結ピン、前記第2の連結ピン、および前記連結部材の揺動中心を結んでなる三角形が、直角三角形である。
【0016】
例えば、前記第1の連結ピン、前記第2の連結ピン、および前記連結部材の揺動中心を結んでなる三角形が、直角二等辺三角形である。
【0017】
本発明の一態様のプロジェクタは、上述のレンズシフト機構と、前記レンズシフト機構の投射レンズに向かって光を出射する光学系と、を有する。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態に係るレンズシフト機構が搭載されたプロジェクタを概略的に示す斜視図ある。また、
図2は、プロジェクタの構成を示す概略図である。なお、図に示すX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向は、発明の理解を容易にするためのものであって、発明を限定するものではない。
【0020】
図1および
図2に示すように、プロジェクタ10は、直方体形状の筐体12を有する。プロジェクタ10は、その筐体12内に、光学系として、光源14と、透過型の液晶パネル16A、16、16Cと、プリズム18と、ダイクロイックミラー20A~20Bと、複数のミラー22A~22Cとを有する。
【0021】
光源14から出射された光は、ダイクロイックミラー20A、20Bによって三つに分光される。ダイクロイックミラー20Aによって反射された光は、ミラー22Aに反射され、赤色用の液晶パネル16Aを通過する。ダイクロイックミラー20Aを通過してダイクロイックミラー20Bによって反射された光は、緑色用の液晶パネル16Bを通過する。そして、ダイクロイックミラー20Bを通過した光は、ミラー22Bとミラー22Cとによって反射され、青色用の液晶パネル16Cを通過する。3つの液晶パネル16A~16Cそれぞれを通過した赤、緑、および青の光(画像)は、プリズム18内で合成される。合成された光(画像)は投射レンズ24に向かって出射され、その光(画像)を投射レンズ24はスクリーン(図示せず)に投影する。
【0022】
スクリーン上の投影画像の位置をユーザが微調整するために、投射レンズ24は、その光軸LCに対してそれぞれ直交するとともに互いに直交し合う第1の方向(Y軸方向)および第2の方向(Z軸方向)にシフト可能にプロジェクタ10に搭載されている。具体的には、投射レンズ24は鏡筒26に組み込まれ、その鏡筒26を第1の方向および第2の方向にシフトさせる、本実施の形態に係るレンズシフト機構30がプロジェクタ10に搭載されている。
【0023】
図3は、本実施の形態に係るレンズシフト機構の斜視図である。
図4は、レンズシフト機構の分解斜視図である。
【0024】
図3および
図4に示すように、レンズシフト機構30は、ベース部材32と、投射レンズ24(すなわち鏡筒26)を支持するレンズ支持部材34と、レンズ支持部材34を第1の方向(Y軸方向)にシフトさせるための第1のシフト部材36と、第1のシフト部材36を移動させるための第1の送りねじ38と、レンズ支持部材34と第1のシフト部材36とを連結する連結部材40とを有する。また、本実施の形態の場合、レンズシフト機構30は、レンズ支持部材34を第2の方向(Z軸方向)にシフトさせるための第2のシフト部材42と、第2のシフト部材42を移動させるための第2の送りねじ44とを有する。
【0025】
ベース部材32は、例えば樹脂材料から作製され、実質的には長方形プレート状の部材である。ベース部材32はまた、プリズム18から出射した光が通過する貫通穴32aを備える。レンズシフト機構30は、このベース部材32を介して、プロジェクタ10の筐体12に固定される。
【0026】
レンズ支持部材34は、投射レンズ24を備える鏡筒26(具体的にはその基端)を支持するプレート状の部材であって、例えば金属材料から作製されている。
【0027】
図5は、レンズ支持部材および第1のシフト部材の詳細を示す斜視図である。
【0028】
図5に示すように、レンズ支持部材34は、プリズム18から出射してベース部材32の貫通穴32aを通過した光が通過する貫通穴34aを備える。
【0029】
また、レンズ支持部材34は、ベース部材32に対して第1の方向(Y軸方向)および第2の方向(Z軸方向)にシフト可能に取り付けられる。本実施の形態の場合、レンズ支持部材34は、ベース部材32に接触した状態で且つ第1の方向(Y軸方向)および第2の方向(Z軸方向)にシフト可能に、ベース部材32に取り付けられる。本実施の形態の場合、複数の固定ねじ50、複数のスプリング52、および複数のワッシャ54を介して、レンズ支持部材34はベース部材32に取り付けられる。
【0030】
具体的には、固定ねじ50それぞれは、頭部50aと、ベース部材32の複数のねじ穴32bに係合するねじ部50bと、頭部50aとねじ部50bとの間に設けられシャフト部50cとを備える。一方、レンズ支持部材34には、光軸LCの延在方向(X軸方向)に貫通する複数の貫通穴34bが形成されている。本実施の形態の場合、貫通穴34bは、角が丸められた正三角形形状である。
【0031】
固定ねじ50それぞれのシャフト部50cは、レンズ支持部材34の貫通穴34b内に配置される。貫通穴34b内でシャフト部50cが第1の方向(Y軸方向)および第2の方向(Z軸方向)に移動可能に、貫通穴34bの断面積はシャフト部50の断面積に比べて大きい。
【0032】
また、固定ねじ50それぞれのシャフト部50cは、スプリング52とワッシャ54とを通過する。これにより、固定ねじ50の頭部50aとレンズ支持部材34との間に、スプリング52とワッシャ54とが配置される。スプリング52は、固定ねじ50とワッシャ54との間に圧縮された状態で配置される。それにより、スプリング52はワッシャ54をレンズ支持部材34に向かって付勢し、その結果、レンズ支持部材34とベース部材32との接触が維持される。
【0033】
このような固定ねじ50、スプリング52、およびワッシャ54により、レンズ支持部材34は、ベース部材32との接触した状態で(すなわち光軸CLの延在方向(X軸方向)の位置について位置決めされた状態で)、第1の方向(Y軸方向)および第2の方向(Z軸方向)にシフト可能にベース部材32に取り付けられる。
【0034】
第1のシフト部材36は、第1の方向(Y軸方向)および第2の方向(Z軸方向)にシフト可能にベース部材32に取り付けられたレンズ支持部材34を、第1の方向にシフトさせるための部材である。
【0035】
第1のシフト部材36は、例えば金属板から作製されたプレート状の部材である。
【0036】
第1のシフト部材36はまた、第2の方向(Z軸方向)に移動可能に、ベース部材32に取り付けられる。本実施の形態の場合、第1のシフト部材36は、ベース部材32に接触した状態で第2の方向に移動可能に、ベース部材32に取り付けられる。本実施の形態の場合、複数の固定ねじ50、複数のスプリング52、および複数のワッシャ54を介して、レンズ支持部材34と同様に、第1のシフト部材36はベース部材32に取り付けられる。そのために、第1のシフト部材36には、光軸LCの延在方向(X軸方向)に貫通して第2の方向に延在する長穴状の複数の貫通穴36aが設けられている。この貫通穴36a内に固定ねじ50のシャフト部50cが配置される。また、ベース部材32に、第1のシフト部材36の複数の貫通穴36aそれぞれを通過した固定ねじ50のねじ部50bと係合する複数のネジ穴32cが形成されている。
【0037】
また、本実施の形態の場合、第1のシフト部材36について第1の方向(Y軸方向)のガタツキを抑制するために、ベース部材32に複数のガイドピン56が設けられている。また、第1のシフト部材36に、ガイドピン56を第2の方向(Z軸方向)にガイドする複数のガイド穴36bが設けられている。
【0038】
第1のシフト部材36は、第1の送りねじ38によって第2の方向(Z軸方向)に移動される(送られる)。
【0039】
本実施の形態の場合、第1のシフト部材36には、光軸延在方向(X軸方向)に延在するひさし状部36cが設けられ、そのひさし状部36cに第2の方向(Z軸方向)に貫通するねじ穴36dが形成されている。
【0040】
一方、第1の送りねじ38は、頭部38aと、第1のシフト部材36のねじ穴36dに係合するねじ部38bとを備える。
【0041】
また、第1の送りねじ38は、その回転中心線(第1の回転中心線)RC1が第2の方向(Z軸方向)に延在するように(
図3参照)、ベース部材32に取り付けられる。具体的には、第1の送りねじ38の先端部38cが、ベース部材32に取り付けられた送りねじ保持機構58によって回転可能に且つ第2の方向に移動しないように保持されている。
【0042】
さらに、第1の送りねじ38の頭部38aには、
図1に示すように、ユーザが第1の送りねじ38を回転中心線RC1を中心にして回転させるときに掴む第1のダイヤルノブ60が取り付けられる。
【0043】
ユーザが第1のダイヤルノブ60を回すと、第1の送りねじ38が回転中心線RC1を中心にして回転する。それにより、第1の送りねじ38のねじ部38bにねじ穴36dが係合している状態の第1のシフト部材36が第2の方向(Z軸方向)に移動する。
【0044】
上述したように、第1のシフト部材36は、レンズ支持部材34を第1の方向(Y軸方向)にシフトさせるための部材である。しかしながら、第1のシフト部材36は、第1の送りねじ38によって第2の方向(Z軸方向)に移動する。そこで、連結部材40が、第1のシフト部材36の第2の方向の移動を、レンズ支持部材34の第1の方向のシフトに変換する。
【0045】
図6は、連結部材を介するレンズ支持部材と第1のシフト部材との連結を示す正面図である。
【0046】
図6に示すように、第1のシフト部材36は、連結部材40を介してレンズ支持部材34に連結されている。
【0047】
図5および
図6に示すように、連結部材40は、レンズ支持部材34に連結する第1の連結部62と、第1のシフト部材36に連結する第2の連結部642とを備える。本実施の形態の場合、第1および第2の連結部62、64は、光軸延在方向(X軸方向)に延在する第1および第2の連結ピン62、64である。
【0048】
本実施の形態の場合、連結部材40の第1の連結ピン62と連結する(係合する)連結穴34cがレンズ支持部材34に形成されている。連結穴34cは、光軸延在方向(X軸方向)に貫通する貫通穴であって、第2の方向(Z軸方向)に延在する長穴状である。したがって、第1の連結ピン62は、第2の方向に移動可能にレンズ支持部材34に連結する。
【0049】
また、本実施の形態の場合、連結部材40の第2の連結ピン64と連結する(係合する)連結穴36eが第1のシフト部材36に形成されている。連結穴36eは、光軸延在方向(X軸方向)に貫通する貫通穴であって、第1の方向(Y軸方向)に延在する長穴状である。したがって、第2の連結ピン64は、第1の方向に移動可能に第1のシフト部材36に連結する。
【0050】
さらに、連結部材40は、揺動可能にベース部材32に取り付けられる。本実施の形態の場合、連結部材40は、光軸延在方向(X軸方向)に貫通する貫通穴40aを備える。一方、ベース部材32には、光軸延在方向に延在し、連結部材40が揺動可能に該連結部材40の貫通穴40aに対して挿入される支持ピン66が設けられている。これにより、連結部材40は、支持ピン66を中心にして、すなわち光軸延在方向に延在する揺動中心線を中心にして揺動する。
【0051】
このような連結部材40を介する第1のシフト部材36によるレンズ支持部材34のシフトについて、
図6を用いて説明する。なお、
図6は、第1の方向(Y軸方向)の位置についての調整可能範囲(第1の方向のストローク)においてレンズ支持部材34が中間位置(基準位置)に存在するときの状態を示している。
【0052】
図6に示す状態において、ユーザによって第1のダイヤルノブ60を介して第1の送りねじ38が回転(正転)されると、第1のシフト部材36が下方向(Z軸負方向)に移動する(頭部38aとねじ穴36dとの間の距離が大きくなる)。それにより、第1のシフト部材36の連結穴36e内において第2の連結ピン64が左方向(Y軸負方向)に移動する(レンズ支持部材34側に移動する)。その結果、連結部材40が支持ピン66を中心にして時計回転方向に回転する。
【0053】
連結部材40が時計回転方向に回転すると、第1の連結ピン62が上方向(Z軸正方向)および右方向(Y軸正方向)に移動する。このとき、第1の連結ピン62は、レンズ支持部材34の連結穴34cにしたがって上方向に移動しつつ、レンズ支持部材34全体を右方向に押し進める。その結果、レンズ支持部材34が右方向にシフトする。
【0054】
一方、
図6に示す状態において、ユーザによって第1のダイヤルノブ60を介して第1の送りねじ38が回転(逆転)されると、第1のシフト部材36が上方向(Z軸正方向)に移動する(頭部38aとねじ穴36dとの間の距離が小さくなる)。それにより、第1のシフト部材36の連結穴36e内において第2の連結ピン64が左方向(Y軸方向)に移動する。その結果、連結部材40が支持ピン66を中心にして反時計回転方向に回転する。
【0055】
連結部材40が反時計回転方向に回転すると、第1の連結ピン62が下方向(Z軸正方向)および左方向(Y軸負方向)に移動する。このとき、第1の連結ピン62は、レンズ支持部材34の連結穴34cにしたがって下方向に移動しつつ、レンズ支持部材34全体を左方向に押し進める。その結果、レンズ支持部材34が左方向にシフトする。
【0056】
本実施の形態の場合、
図6に示すように、連結部材40において、第1の連結ピン62、第2の連結ピン64、および支持ピン66(すなわち連結部材40の揺動中心)を結んでなる三角形Trは、直角二等辺三角形である。すなわち、第1の連結ピン62と支持ピン66との間の距離L1と、第2の連結ピン64と支持ピン66との間の距離L2とが等しい。このような連結部材40によれば、第1のシフト部材36の第2の方向(Z軸方向)の移動量と、レンズ支持部材34の第1の方向(Y軸方向)のシフト量が等しくなる。
【0057】
なお、第1の連結ピン62と支持ピン66との間の距離L1と、第2の連結ピン64と支持ピン66との間の距離L2とは異なっていてもよい。すなわち、三角形Trは、直角の角度を画定する二辺の長さが異なる直角三角形であってもよい。さらに言えば、三角形Trは、直角三角形でなくてもよい。例えば、レンズ支持部材34の第1の方向(Y軸方向)のシフト量を細かい精度で調整することが望まれる場合、第1の連結ピン62と支持ピン66との間の距離L1を、第2の連結ピン64と支持ピン66との間の距離L2に比べて小さくしてもよい。また、例えば、レンズ支持部材34の第1の方向の位置についての調整可能範囲を拡大するために、第1の連結ピン62と支持ピン66との間の距離L1を、第2の連結ピン64と支持ピン66との間の距離L2に比べて大きくしてもよい。
【0058】
このようなレンズ支持部材34、第1のシフト部材36、および連結部材40により、シンプルな構成で、すなわち複数のカサ歯車などの多数の動力伝達要素が複雑に噛み合う構成ではないシンプルな構成で、第1のダイヤルノブ60の回転中心線RC1の延在方向(Z軸方向)に対して直交する方向(Y軸方向)に投射レンズ24をシフトさせることができる。
【0059】
さらに、本実施の形態の場合、レンズ支持部材34は、第1の方向(Y軸方向)のみならず第2の方向(Z軸方向)にもシフトする。そのために、レンズシフト機構30は、
図3および
図4に示すように、第2のシフト部材42を備える。
【0060】
図7は、第2のシフト部材42の詳細を示す斜視図である。
【0061】
図7に示すように、第2のシフト部材42は、例えば金属板から作製されたプレート状の部材である。また、第2のシフト部材42は、レンズ支持部材34に支持された鏡筒26が通過する貫通穴42aを備える。その貫通穴42aは、第1のシフト部材36および第1の送りねじ38によってレンズ支持部材34が第1の方向(Y軸方向)にシフトするときに鏡筒26が第2のシフト部材42に接触しない大きさを備えている。
【0062】
また、第2のシフト部材42は、第2の方向(Z軸方向)に移動可能に、ベース部材32に取り付けられる。本実施の形態の場合、第2のシフト部材42は、ベース部材32に接触した状態で第2の方向に移動可能に、ベース部材32に取り付けられる。本実施の形態の場合、複数の固定ねじ50、複数のスプリング52、および複数のワッシャ54を介して、レンズ支持部材34と同様に、第2のシフト部材42はベース部材32に取り付けられる。そのために、第2のシフト部材42には、光軸延在方向(X軸方向)に貫通して第2の方向に延在する長穴状の複数の貫通穴42bが設けられている。この貫通穴42b内に固定ねじ50のシャフト部50cが配置される。また、ベース部材32
に、第2のシフト部材42の複数の貫通穴42bを通過した固定ねじ50のねじ部50bと係合する複数のねじ穴32dが形成されている。
【0063】
また、本実施の形態の場合、第2のシフト部材42について第1の方向(Y軸方向)のガタツキを抑制するために、ベース部材32に複数のガイドピン68が設けられている。また、第2のシフト部材42に、ガイドピン68を第2の方向(Z軸方向)にガイドする長穴状の複数のガイド穴42cが設けられている。
【0064】
第2のシフト部材42は、第2の送りねじ44によって第2の方向(Z軸方向)に移動される(送られる)。
【0065】
本実施の形態の場合、第2のシフト部材42には、光軸延在方向(X軸方向)に延在するひさし状部42dが設けられ、そのひさし状部42dに第2の方向(Z軸方向)に貫通するねじ穴42eが形成されている。
【0066】
一方、第2の送りねじ44は、頭部44aと、第2のシフト部材42のねじ穴42eに係合するねじ部44bとを備える。
【0067】
また、第2の送りねじ44は、その回転中心線(第2の回転中心線)RC2が第2の方向(Z軸方向)に延在するように(
図3参照)、ベース部材32に取り付けられる。具体的には、第2の送りねじ44の先端部44cが、ベース部材32に取り付けられた送りねじ保持機構70によって回転可能に且つ第2の方向に移動しないように保持されている。
【0068】
さらに、第2の送りねじ44の頭部44aには、
図1に示すように、ユーザが第2の送りねじ44を回転中心線RC2を中心にして回転させるときに掴む第2のダイヤルノブ72が取り付けられる。
【0069】
ユーザが第2のダイヤルノブ72を回すと、第2の送りねじ44が回転中心線RC2を中心にして回転する。それにより、第2の送りねじ44のねじ部44bにねじ穴42eが係合している状態の第2のシフト部材42が第2の方向(Z軸方向)に移動する。
【0070】
上述したように、第2のシフト部材42は、レンズ支持部材34を第2の方向(Z軸方向)にシフトさせるための部材である。そのため、第2のシフト部材42は、レンズ支持部材34に対して連結する。
【0071】
図8は、レンズ支持部材と第2のシフト部材との連結を説明するための分解斜視図である。
【0072】
図8に示すように、本実施の形態の場合、レンズ支持部材34と第2のシフト部材42との連結は、複数の係合ピン74を介して行われる。複数の係合ピン74は、第2のシフト部材42におけるレンズ支持部材34に対向する面に、光軸延在方向(X軸方向)に延在するように設けられている。係合ピン74それぞれの先端部74aと係合する複数の係合穴34dが、レンズ支持部材34に形成されている。これにより、第2の送りねじ44によって第2のシフト部材42が第2の方向(Z軸方向)に移動すると、その第2のシフト部材42に設けられている複数の係合ピン74が、第2のシフト部材42の移動方向と同一の方向にレンズ支持部材34を押し進める。
【0073】
なお、レンズ支持部材34の係合穴34dは、第1の方向(Y軸方向)に延在する長穴状である。これにより、レンズ支持部材34は、係合ピン74を介して第2のシフト部材42に係合した状態であっても、第1の方向にシフトすることができる。すなわち、第2のシフト部材42の位置にかかわらず、第1のシフト部材36および第1の送りねじ38によってレンズ支持部材34を第1の方向にシフトすることができる。これに関連して言えば、
図6および
図8に示すように、レンズ支持部材34の連結穴34cが第2の方向(Z軸方向)に延在する長穴状であるために、第1のシフト部材36の位置や連結部材40の姿勢にかかわらず、第2のシフト部材42および第2の送りねじ44によってレンズ支持部材34を第2の方向にシフトすることができる。
【0074】
また、本実施の形態の場合、
図7に示すように、レンズ支持部材34と第2のシフト部材42は、スプリング76によっても連結されている。スプリング76の一端がレンズ支持部材34に設けられた支持ピン78に引っ掛けられ、他端が第2のシフト部材42に設けられた支持ピン80(本実施の形態の場合、1つの係合ピン74)に引っ掛けられている。第2のシフト部材42は実質的に第1の方向(Y軸方向)に移動しないため、レンズ支持部材34が第1の方向の一方側(Y軸負方向)に付勢される。これにより、第1の送りねじ38からレンズ支持部材34までの動力伝達経路においてバックラッシュの発生を抑制することができる。
【0075】
このような本実施の形態によれば、プロジェクタ10に搭載されるレンズシフト機構30において、シンプルな構成で、第1のダイヤルノブ60の第1の回転中心線RC1の延在方向(Z軸方向)に対して直交する第1の方向(Y軸方向)に投射レンズ24をシフトさせることができる。
【0076】
以上、上述の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明の実施の形態は上述の実施の形態に限らない。
【0077】
例えば、上述の実施の形態の場合、
図5に示すように、連結部材40は、その貫通穴40aにベース部材32に設けられた支持ピン66が挿入されることにより、支持ピン66を中心にして揺動する。すなわち、連結部材40の揺動中心線は固定されている。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限らない。例えば、支持ピン66が、例えばガイド溝などを介して移動可能にベース部材32に設けられてもよい。
【0078】
以上のように、本開示における技術の例示として、上述の実施の形態を説明してきた。そのために、図面および詳細な説明を提供している。したがって、図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上述の技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0079】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略等を行うことができる。
【0080】
すなわち、本発明の実施の形態に係るレンズシフト機構は、広義には、ベース部材と、投射レンズと、前記投射レンズを支持し、且つ前記投射レンズの光軸延在方向に対して直交する第1の方向にシフト可能に前記ベース部材に取り付けられたレンズ支持部材と、前記光軸延在方向と前記第1の方向との両方に対して直交する第2の方向に移動可能に前記ベース部材に取り付けられ、且つねじ穴を備える第1のシフト部材と、前記レンズ支持部材に対して前記第2の方向に移動可能に連結する第1の連結部と前記第1のシフト部材に対して前記第1の方向に移動可能に連結する第2の連結部とを備え、且つ揺動可能に前記ベース部材に取り付けられた連結部材と、前記第2の方向に延在する第1の回転中心線を中心にして回転可能に前記ベース部材に取り付けられ、且つ前記第1のシフト部材の前記ねじ穴に係合するねじ部を備える第1の送りねじと、前記第1の送りねじに取り付けられた第1のダイヤルノブと、を有する。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、レンズをその光軸延在方向に対して直交する方向にシフトする機構に対して適用可能である。
【符号の説明】
【0082】
34 レンズ支持部材
36 第1のシフト部材
36d ねじ穴
38 第1の送りねじ
38b ねじ部
40 連結部材
62 第1の連結部(第1の連結ピン)
64 第2の連結部(第2の連結ピン)