(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/633 20140101AFI20230915BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20230915BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20230915BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20230915BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20230915BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20230915BHJP
H01M 10/6551 20140101ALI20230915BHJP
H01M 10/663 20140101ALI20230915BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20230915BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20230915BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230915BHJP
H01M 10/617 20140101ALI20230915BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
H01M10/633
H01M10/651
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6568
H01M10/6556
H01M10/6551
H01M10/663
H01M10/6554
H01M10/44 P
H01M10/48 301
H01M10/617
H02J7/04 L
(21)【出願番号】P 2020525331
(86)(22)【出願日】2019-05-08
(86)【国際出願番号】 JP2019018319
(87)【国際公開番号】W WO2019244489
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2018118770
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018118771
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】藤川 洋史
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 真一
(72)【発明者】
【氏名】加賀 義人
(72)【発明者】
【氏名】内藤 圭亮
【審査官】岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-141558(JP,A)
【文献】特開2014-137890(JP,A)
【文献】特開2014-026825(JP,A)
【文献】国際公開第2013/008882(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42-10/667
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルを含む電池モジュールと、
前記電池モジュールの充放電と前記電池モジュール内の温度を管理する管理部と、を備え、
前記管理部は、前記電池モジュール内の測定された温度をもとに前記電池モジュール内のセルの内部の最高温度を推定し、前記電池モジュールの充放電中、前記推定した最高温度が上限温度を超えないように、前記電池モジュールの充放電電流、及び/又は前記電池モジュールの冷却を制御
し、
内部を冷却液が通り、前記電池モジュール内の複数のセルの一部分を冷却する冷却部材と、
前記複数のセルのいずれかのセルの表面に設置される第1温度センサと、
前記電池モジュール内、または前記電池モジュールを含む電池パック内の環境温度を測定する第2温度センサと、
前記冷却液の温度を測定する第3温度センサと、をさらに備え、
前記管理部は、予め作成された、前記セルの表面の測定温度、前記電池モジュール内/前記電池パック内の環境温度及び前記冷却液の温度を含む複数の条件と、前記最高温度との関係を規定したテーブル又は関数を保持し、当該テーブル又は当該関数を使用して、前記最高温度を推定することを特徴とする電池システム。
【請求項2】
複数のセルを含む電池モジュールと、
前記電池モジュールの充放電と前記電池モジュール内の温度を管理する管理部と、を備え、
前記管理部は、前記電池モジュール内の測定された温度をもとに前記電池モジュール内のセルの内部の最高温度を推定し、前記電池モジュールの充放電の終了後において、前記推定した最高温度が上限温度を超える場合、推定した最高温度が前記上限温度以下になるまで、前記電池モジュールを冷却
し、
内部を冷却液が通り、前記電池モジュール内の複数のセルの一部分を冷却する冷却部材と、
前記複数のセルのいずれかのセルの表面に設置される第1温度センサと、
前記電池モジュール内、または前記電池モジュールを含む電池パック内の環境温度を測定する第2温度センサと、
前記冷却液の温度を測定する第3温度センサと、をさらに備え、
前記管理部は、予め作成された、前記セルの表面の測定温度、前記電池モジュール内/前記電池パック内の環境温度及び前記冷却液の温度を含む複数の条件と、前記最高温度との関係を規定したテーブル又は関数を保持し、当該テーブル又は当該関数を使用して、前記最高温度を推定することを特徴とする電池システム。
【請求項3】
前記電池モジュールを流れる電流を測定する電流センサをさらに備え、
前記管理部は、予め作成された、前記セルの表面の測定温度、前記電池モジュール内/前記電池パック内の環境温度、前記冷却液の温度及び前記電池モジュールを流れる電流を含む複数の条件と、前記最高温度との関係を規定したテーブル又は関数を保持し、当該テーブル又は当該関数を使用して、前記最高温度を推定することを特徴とする請求項
1または2に記載の電池システム。
【請求項4】
前記第1温度センサは、前記内部の温度が前記電池モジュール内の最高温度であるセルの表面に設置されることを特徴とする請求項
1から3のいずれか1項に記載の電池システム。
【請求項5】
前記電池システムは、電動車両に搭載され、
前記管理部は、前記推定した最高温度が前記上限温度を超えるとき、前記電池モジュールから前記電動車両内の走行用モータに供給される電流量を低下させることを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の電池システム。
【請求項6】
前記電池システムは、電動車両に搭載され、
前記管理部は、前記推定した最高温度が前記上限温度を超えるとき、前記電動車両内の冷却システムに、前記電池モジュールに供給する冷却液の流量を増加させる指示信号を送信することを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の電池システム。
【請求項7】
前記管理部は、前記電動車両のパワーオフ後において、前記推定した最高温度が前記上限温度を超える場合、前記推定した最高温度が前記上限温度以下になるまで、前記電池モジュールを冷却することを特徴とする請求項
6に記載の電池システム。
【請求項8】
前記管理部は、前記電動車両の外部に設置された充電器からの充電終了後において、前記推定した最高温度が前記上限温度を超える場合、前記推定した最高温度が前記上限温度以下になるまで、前記電池モジュールを冷却することを特徴とする請求項
6に記載の電池システム。
【請求項9】
前記管理部は、前記充電器からの充電終了後において、前記推定した最高温度が前記上限温度以下になるまで、前記冷却システムに前記充電器から電源供給されるように制御することを特徴とする請求項
8に記載の電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセルを含む電池モジュールを備える電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)が普及してきている。これらの電動車両にはキーデバイスとして二次電池が搭載される。車載用の二次電池としては主に、ニッケル水素電池およびリチウムイオン電池が普及している。今後、エネルギー密度が高いリチウムイオン電池の普及が加速すると予想される。
【0003】
二次電池の劣化は保存劣化とサイクル劣化の和で近似できる。このうち、保存劣化はSOC(State Of Charge)と温度に依存する。サイクル劣化は、使用するSOC範囲、温度、電流レートに依存する。保存劣化もサイクル劣化も、温度が高いほど劣化が進行しやすくなる。
【0004】
そこで二次電池の温度上昇を抑制することが求められる。例えば、組電池の表面最高温度より充放電制御回路の測定温度が高いとき電流を絞る方法(例えば、特許文献1参照)や、モジュールの外壁温度を測定し、1次元解析からコア温度を推定する方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【0005】
また、例えば、ニッケル水素電池において、電池の測定温度から推定されるイグニッションオフ後の電池の発熱量と酸素吸収反応継続期間をもとに電池の温度上昇を推定し、温度上昇が大きいとき、イグニッションオフ後も電動冷却ファンで電池を冷却する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-080598号公報
【文献】特開2014-531711号公報
【文献】特開2016-173957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常の電池システムでは劣化を抑制するために、セルの表面温度を測定し、測定温度が上限温度を超えないように、電流制限、充放電停止、冷却などの制御を行っている。しかしながら、電池の構造や使用方法によっては、セルの表面温度よりセル内部の電極体の温度の方が大幅に高くなるときがある。例えば、大電流が流れているときはジュール熱により、セル内の電極体の温度が大きく上昇する。
【0008】
また、通常の電池システムの冷却システムでは、電池モジュールの一部分(例えば、底面)しか冷却することができないため、充放電中の電池モジュールに温度むらが発生する。単セル内においても同様に温度むらが発生する。
【0009】
そのため、電池モジュールに含まれるセルは、測定される温度より大幅に高くなる部位が存在することによって適切な温度管理が行われずに劣化が進行する。
【0010】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、電池モジュールに含まれるセルの劣化を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電池システムは、複数のセルを含む電池モジュールと、前記電池モジュールの充放電と前記電池モジュール内の温度を管理する管理部と、を備える。前記管理部は、前記電池モジュール内の測定された温度をもとに前記電池モジュール内のセルの内部の最高温度を推定し、前記電池モジュールの充放電中、前記推定した最高温度が上限温度を超えないように、前記電池モジュールの充放電電流、及び/又は前記電池モジュールの冷却を制御する。
【0012】
また、本発明のある態様の電池システムは、複数のセルを含む電池モジュールと、前記電池モジュールの充放電と前記電池モジュール内の温度を管理する管理部と、を備える。前記管理部は、前記電池モジュール内の測定された温度をもとに前記電池モジュール内のセルの内部の最高温度を推定し、前記電池モジュールの充放電の終了後において、前記推定した最高温度が上限温度を超える場合、推定した最高温度が前記上限温度以下になるまで、前記電池モジュールを冷却する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電池モジュールに含まれるセルの劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電池システムを説明するための図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る電池システムを搭載した電動車両を説明するための図である。
【
図3】
図3(a)、(b)は、複数の角型セルを含む電池モジュールを模式的に示した斜視図である。
【
図4】
図4(a)、(b)は、複数の円筒型セルを含む電池モジュールを模式的に示した斜視図である。
【
図5】
図4(a)、(b)に示した1つの円筒型セルの温度分布を示す図である。
【
図6】セルの表面の測定点温度、電池モジュール内の環境温度及び冷却液温度と、電池モジュール内の最高温度との関係を規定したテーブルを示す図である。
【
図7】
図6に示したテーブルの一部を示す温度マップの具体例を示す図である。
【
図8】制御部による電池モジュールの温度制御例1を示すフローチャートである。
【
図9】制御部による電池モジュールの温度制御例2を示すフローチャートである。
【
図10】
図10(a)、(b)は、それぞれ従来技術と本発明とにおける測定点温度Tcが上限温度を超えないようにする温度制御が実行された場合の測定点温度と最高温度の推移の具体的なイメージを示した図である。
【
図11】セルの表面の測定点温度、電池モジュール内の環境温度、冷却液温度、冷却液の流量及び電池モジュールに流れる電流と、電池モジュール内の最高温度との関係を規定したテーブルを示す図である。
【
図12】制御部による電池モジュールの温度制御例3を示すフローチャートである。
【
図13】制御部による電池モジュールの温度制御例4を示すフローチャートである。
【
図14】
図14(a)、(b)は、それぞれ従来技術と本発明とにおける電池モジュール11の充放電終了前後の測定点温度と最高温度の推移の具体的なイメージを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る電池システム10を説明するための図である。電池システム10は1つの電池パック内に構成され、電池モジュール11と管理部12を含む。
図1では電池モジュール11が1つしか描かれていないが、通常、1つの電池パック内に複数の電池モジュール11が直列接続/直並列接続されて構成される。複数の電池モジュール11を直列接続することにより高電圧化することができ、複数の電池モジュール11を並列接続することにより大容量化することができる。
【0016】
本実施の形態では電池システム10を冷却するために、液冷式の冷却システム20と連携する。冷却システム20は電動ポンプ21、管理部22を含む。電動ポンプ21と電池システム10間は、注入パイプ5aと排出パイプ5bで接続される。電動ポンプ21はモータを含み、注入パイプ5a及び排出パイプ5bに冷却液(例えば、水、クーラント液)を循環させる。冷却システム20は、図示しない放熱フィン等の放熱器を有し、排出パイプ5bを経由して戻ってきた冷却液を冷却する。なお、電動ファン又はエアーコンディショナからの冷却風により当該冷却液を冷却してもよい。
【0017】
電池システム10の管理部12は、主に電池モジュール11の充放電と電池モジュール11内の温度を管理する。冷却システム20の管理部22は、電動ポンプ21の稼働/停止と、電動ポンプ21から送出される冷却液の流量を管理する。送出される冷却液の流量は、電動ポンプ21に含まれるモータの回転数により制御することができる。なお、電動ファン又はエアーコンディショナが搭載される場合、電動ファンの回転数又はエアーコンディショナの設定温度を制御することにより、冷却液の温度を制御することもできる。
【0018】
電池システム10の管理部12と、冷却システム20の管理部22は通信線で接続される。例えば、電池システム10と冷却システム20が車両に搭載される場合、電池システム10の管理部12と冷却システム20の管理部22間は、車載ネットワーク(例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network))で接続される。
【0019】
図2は、本発明の実施の形態に係る電池システム10を搭載した電動車両1を説明するための図である。電動車両1は、外部に設置された充電器2から充電が可能なEV/PHVを想定する。
【0020】
電池システム10は、第1リレー32及びインバータ31を介してモータ30に接続される。インバータ31は力行時、電池システム10から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ30に供給する。回生時、モータ30から供給される交流電力を直流電力に変換して電池システム10に供給する。モータ30は三相交流モータであり、力行時、インバータ31から供給される交流電力に応じて回転する。回生時、減速による回転エネルギーを交流電力に変換してインバータ31に供給する。
【0021】
第1リレー32は、電池モジュール11とインバータ31を繋ぐ配線間に挿入される。電池システム10の管理部12は走行時、第1リレー32をオン状態(閉状態)に制御し、電池システム10と電動車両1の動力系を電気的に接続する。管理部12は非走行時、原則として第1リレー32をオフ状態(開状態)に制御し、電池システム10と電動車両1の動力系を電気的に遮断する。なおリレーの代わりに、半導体スイッチなどの他の種類のスイッチを用いてもよい。
【0022】
電池システム10は、電動車両1の外に設置された充電器2と充電ケーブル4で接続することにより商用電力系統3から充電することができる。充電器2は、家庭、カーディーラ、サービスエリア、商業施設、公共施設などに設置される。充電器2は商用電力系統3に接続され、充電ケーブル4を介して電動車両1内の電池システム10を充電する。車両内において、電池システム10と充電器2を繋ぐ配線間に第2リレー40が挿入される。なおリレーの代わりに、半導体スイッチなどの他の種類のスイッチを用いてもよい。電池システム10の管理部12は充電開始前に、第2リレー40をオン状態(閉状態)に制御し、充電終了後にオフ状態(開状態)に制御する。
【0023】
一般的に、普通充電の場合は交流で、急速充電の場合は直流で充電される。交流で充電される場合、第2リレー40と電池システム10との間に挿入されるAC/DCコンバータ(不図示)により、交流電力が直流電力に変換される。
【0024】
電池システム10とインバータ31間を繋ぐ主電流路から、冷却システム20に電源を供給するための電流路が分岐されている。分岐された電流路上にDC/DCコンバータ25が挿入される。DC/DCコンバータ25は、主電流路の電圧である電池システム10の電圧を降圧して冷却システム20に供給する。なお冷却システム20の電源が、電池システム10からではなく、図示しない補機電池(通常、12V出力の鉛電池)から供給される構成でもよい。
【0025】
電池モジュール11は複数のセルE1-Enを含む。セルには、リチウムイオン電池セル、ニッケル水素電池セル、鉛電池セル等の二次電池を用いることができる。以下、本明細書ではリチウムイオン電池セル(公称電圧:3.6-3.7V)を使用する例を想定する。
図2では複数のセルE1-Enが直列接続されている例を示しているが、複数のセルが直並列接続されていてもよい。また
図2では電池モジュール11が1つしか描かれていないが、上述したように複数の電池モジュール11が直列接続/直並列接続されて構成されていてもよい。
【0026】
管理部12は、電圧測定部12a、電流測定部12b及び制御部12cを備える。電圧測定部12aと、直列接続された複数のセルE1-Enの各ノードとの間が複数の電圧線で接続される。電圧測定部12aは、隣接する2本の電圧線間の電圧をそれぞれ測定することにより、各セルE1-Enの電圧を測定する。電圧測定部12aは、測定した各セルE1-Enの電圧を制御部12cに送信する。
【0027】
電池モジュール11の電流路にシャント抵抗Rsが接続される。シャント抵抗Rsは電流検出素子として機能する。なおシャント抵抗Rsの代わりにホール素子を用いてもよい。電流測定部12bはシャント抵抗Rsの両端電圧を増幅して制御部12cに出力する。制御部12cは電流測定部12bから入力される電圧値をもとに、電池モジュール11に流れる電流値を推定する。
【0028】
第1温度センサT1は、複数のセルE1-Enの少なくとも1つの表面に設置される。例えば第1温度センサT1は、数個のセルごとに設置されてもよい。その際、電池モジュール11内において、できるだけ分散された位置のセルに、第1温度センサT1がそれぞれ設置されることが望ましい。なおコストが許容されれば、電池モジュール11内の全てのセルE1-Enに第1温度センサT1がそれぞれ設置されてもよい。
図2では簡略化のため、代表的にセルEnにのみ第1温度センサT1が設置されている図を描いている。第1温度センサT1は、測定点であるセルEnの表面の温度を測定して、制御部12cに出力する。
【0029】
第2温度センサT2は、電池モジュール11内の環境温度を測定する温度センサであり、複数のセルE1-Enと非接触の状態で電池モジュール11内に設置される。なお第2温度センサT2は、電池モジュール11の近傍であれば、電池パック内において電池モジュール11の外に設置されてもよい。第2温度センサT2は、電池モジュール11/電池パック内の環境温度を測定して、制御部12cに出力する。第1温度センサT1及び第2温度センサT2には、サーミスタや熱電対を使用することができる。
【0030】
第3温度センサT3は、冷却システム20から電池モジュール11に冷却液が送り込まれる注入パイプ5a内に設置される。第3温度センサT3は、注入パイプ5a内に流れている冷却液の温度を測定して、制御部12cに出力する。第3温度センサT3には一般的な水温計を使用することができる。
【0031】
流量センサF1は、注入パイプ5a内に流れている冷却液の流量を測定して、制御部12cに出力する。流量センサF1には、クランプオン式、電磁式、コリオリ式、羽根車式などの流量センサを使用することができる。なお流量センサF1と第3温度センサT3が一体化されたセンサを使用してもよい。
【0032】
制御部12cは、マイクロコンピュータ及び不揮発メモリ(例えば、EEPROM、フラッシュメモリ)により構成することができる。制御部12cは、電圧測定部12aにより測定された複数のセルE1-Enの電圧、電流測定部12bにより測定された電池モジュール11に流れる電流、第1温度センサT1により測定された複数のセルE1-Enの温度をもとに電池モジュール11内の複数のセルE1-Enの状態を管理する。
【0033】
制御部12cは、複数のセルE1-EnのそれぞれのSOC及びSOH(State Of Health)を推定する。SOCは、OCV法または電流積算法により推定できる。OCV法は、電圧測定部12aにより測定される各セルE1-EnのOCVと、不揮発メモリに保持されるSOC-OCVカーブの特性データをもとにSOCを推定する方法である。電流積算法は、電圧測定部12aにより測定される各セルE1-Enの充放電開始時のOCVと、電流測定部12bにより測定される電流の積算値をもとにSOCを推定する方法である。
【0034】
SOHは、初期の満充電容量に対する現在の満充電容量の比率で規定され、数値が低いほど(0%に近いほど)劣化が進行していることを示す。SOHは、完全充放電による容量測定により求めてもよいし、保存劣化とサイクル劣化を合算することにより求めてもよい。保存劣化はSOC、温度、及び保存劣化速度をもとに推定することができる。サイクル劣化は、使用するSOC範囲、温度、電流レート、及びサイクル劣化速度をもとに推定することができる。保存劣化速度およびサイクル劣化速度は、予め実験やシミュレーションにより導出することができる。SOC、温度、SOC範囲、及び電流レートは測定により求めることができる。
【0035】
またSOHは、セルの内部抵抗との相関関係をもとに推定することもできる。内部抵抗は、セルに所定の電流を所定時間流した際に発生する電圧降下を、当該電流値で割ることにより推定することができる。内部抵抗は温度が上がるほど低下する関係にあり、SOHが低下するほど増加する関係にある。
【0036】
制御部12cは、複数のセルE1-Enの少なくとも1つに異常(例えば、過電圧、過小電圧、過電流、温度異常)が発生すると、第1リレー32をターンオフさせて当該セルを保護する。
【0037】
制御部12cは、電池モジュール11内の温度を管理する。第1温度センサT1により測定されるセルの表面温度、及び第2温度センサT2により測定される電池モジュール11内の環境温度はいずれも、電池モジュール11内の真の最高温度を示すものではない。電池モジュール11内の真の最高温度は、いずれかのセルの内部の温度である。しかしながら、セルの内部に温度センサを入れ込むことは困難であるため、外部の温度から推定する必要がある。
【0038】
図3(a)、(b)は、複数の角型セルを含む電池モジュール11を模式的に示した斜視図である。
図3(a)は上から見た斜視図であり、
図3(b)は下から見た斜視図である。複数の角型セルは、冷却板13の上に整列されて配置されている。なお
図3(a)、(b)では、複数の角型セルを固定するためのホルダやバインダ、角型セルの電極端子、複数の電極端子間を電気的に接続するバスバー等の部材を省略して描いている。
【0039】
冷却板13には、冷却システム20から供給される冷却液が通る流路が形成されている。冷却板13は金属製であってもよいし、樹脂製であってもよい。金属製の方が熱伝導性が高くなる。冷却板13のインレット13iは注入パイプ5aに接続され、冷却板13のアウトレット13oは排出パイプ5bに接続される。冷却板13内の流路はU字状に形成され、U字の内部に複数(
図3(b)では2本)のショートカット流路が形成されている。
【0040】
一般的にセルの外装缶は、金属(例えば、アルミニウムやアルミニウム合金)で構成される。上述のように冷却板13が金属製の場合、冷却板13と複数の角型セルの底面との間に絶縁性の熱伝導シートを挟む必要がある。セルの外装缶と冷却板13の少なくとも一方が絶縁材で構成されている場合、絶縁性の熱伝導シートを挟む必要はない。
【0041】
冷却板13内の流路を流れる冷却液の温度は、インレット13iに入った直後が最も低く、アウトレット13oから出る直前が最も高くなる。従って、冷却板13はアウトレット13o付近の冷却能力が一番低くなり、アウトレット13oに最も近い位置のセルEnの温度が最も高くなりやすい。
【0042】
図3(a)、(b)では、アウトレット13oに最も近い位置のセルEnに第1温度センサT1が取り付けられている。
図3(a)、(b)に示す第1温度センサT1は、電池モジュール11内において最も高温となるセルに取り付けられた温度センサを示している。電池モジュール11内において最も高温となるセルは、事前の数値シミュレーションや実験により特定される。
図3(a)、(b)では、アウトレット13oに最も近い位置のセルEnが最も高温となるセルである例を示しているが、複数のセルの配置によっては熱が溜まりやすい場所が発生し、その場所に最も近いセルが最も高温となるセルになる場合もある。
【0043】
なお上述したように実際には、セルの保護のために、最も高温となるセル以外のセルにも、数個おきに第1温度センサT1が取り付けられる。また、最も高温となるセルに第1温度センサT1を取り付けるのが物理的に困難な場合、第1温度センサT1は最も高温となるセルの最高温度を推定可能なセルに取り付けられる。
図3(a)、(b)では、電池モジュール11内の真の最高温度を推定する基礎データとなる、最も高温となるセルの表面に取り付けられた第1温度センサT1のみを描いている。
【0044】
図4(a)、(b)は、複数の円筒型セルを含む電池モジュール11を模式的に示した斜視図である。
図4(a)は上から見た斜視図であり、
図4(b)は下から見た斜視図である。複数の円筒型セルは、冷却板13の上に整列されて配置されている。一般的に円筒型セルの外装缶は、鉄で構成される。なお
図4(a)、(b)に示す複数の円筒型セルを含む電池モジュール11は、
図3(a)、(b)に示した複数の角型セルを含む電池モジュール11と、電池の形状以外は基本的に同じであり、
図3(a)、(b)に示した考察が
図4(a)、(b)にもあてはまる。
【0045】
図5は、
図4(a)、(b)に示した1つの円筒型セルEnの温度分布を示す図である。1つのセルEnは、電極体14eを外装缶14oで覆うように形成される。電極体14eは正極、セパレータ、負極を含む。
図5に示す例ではセルEnの底面に冷却板13が設置されているため、セルEnの底面に近いほど温度が低くなり、セルEnの上面に近いほど温度が高くなる。このようにセルEnは、その一部分(
図5に示す例では底面)だけが冷却されているため、セルEnの内部に温度の勾配が発生する。第1温度センサT1は、外装缶14oの外側の表面に取り付けられている。
【0046】
セルEnの使用方法によっては、セルEnの表面の測定点の温度Tcに対して、セルEnの内部の電極体14eの最高温度Tmが大幅に高くなる場合がある。例えば、セルEnに大電流が流れているときセルEnの内部で大きなジュール熱が発生し、セルEnの外側の表面温度に対して、内部の電極体14eの温度が大幅に高くなる。また近年、大容量化のためセルEnのサイズが大きくなる傾向にあり、セルEnのサイズが大きいほど、電流が流れた際の内部の電極体14eの温度と、外側の表面温度との差が大きくなる。
【0047】
図6は、セルEnの表面の測定点温度Tc、電池モジュール11内の環境温度Te及び冷却液温度Twと、電池モジュール11内の最高温度Tmとの関係を規定したテーブル12tを示す。設計者は、事前に数値シミュレーションや実験をもとに、測定点温度Tc、環境温度Te及び冷却液温度Twの3つのパラメータの種々の組み合わせごとに最高温度Tmを導出し、それらの関係をデータベース化する。データベースをもとに作成されたテーブル12tは、制御部12c内の不揮発メモリに登録される。なお、測定点温度Tc、環境温度Te及び冷却液温度Twの3つのパラメータと、最高温度Tmとの関係は関数化されて定義されてもよい。その場合も、導出された関数が制御部12c内の不揮発メモリに登録される。
【0048】
図7は、
図6に示したテーブル12tの一部を示す温度マップの具体例を示す図である。
図7に示す温度マップは、環境温度Teが25℃の場合のテーブル12tの一部である。この例において、後述の上限温度とする電池モジュール11内の最高温度Tmが50℃を超える条件は、冷却液温度Twが15℃で測定点温度Tcが38℃の組み合わせ、冷却液温度Twが16℃で測定点温度Tcが37℃の組み合わせ、冷却液温度Twが16℃で測定点温度Tcが38℃の組み合わせ、冷却液温度Twが17℃で測定点温度Tcが37℃の組み合わせ、冷却液温度Twが17℃で測定点温度Tcが38℃の組み合わせである。
【0049】
このように制御部12cは、第1温度センサT1により測定された測定点温度Tc、第2温度センサT2により測定された環境温度Te、及び第3温度センサT3により測定された冷却液温度Twをもとに、事前に作成されたテーブル12tを参照して、電池モジュール11内の最高温度Tmを推定することができる。
【0050】
図8は、制御部12cによる電池モジュール11の温度制御例1を示すフローチャートである。制御部12cは、電動車両1がパワーオンされると第1リレー32をターンオンして、電池システム10とモータ30を導通させ、電池モジュール11の充放電を開始する(S10のY)。制御部12cは、第1温度センサT1からセルEnの表面の測定点温度Tc、第2温度センサT2から電池モジュール11内の環境温度Te、第3温度センサT3から冷却液温度Tw、流量センサF1から冷却液の流量Q、電流測定部12bから電池モジュール11に流れている電流Iをそれぞれ取得する(S11)。
【0051】
制御部12cは、取得した測定点温度Tc、環境温度Te及び冷却液温度Twをもとに、上記テーブル12tを参照して、電池モジュール11内の最高温度Tmを推定する(S12)。制御部12cは、推定した最高温度Tmと所定の上限温度(例えば、50℃)を比較する(S13)。
【0052】
最高温度Tmが上限温度を超える場合(S13のY)、制御部12cは、インバータ31に、電流測定部12bから取得した電流Iより低い電流指令値を設定して、電池モジュール11に流れる電流Iを減少させる(S14)。例えば制御部12cは、取得した電流Iより5%~10%減少させた電流指令値を設定する。なお、電池モジュール11とインバータ31の間に別のDC/DCコンバータを設け、当該DC/DCコンバータにより電池モジュール11に流れる電流Iを調整してもよい。最高温度Tmが上限温度を超える期間は、制御部12cによる温度制御に基づく電流制限が、アクセルペダルの開度や自動運転コントローラによる速度制御に基づく電流制御に対して優先する。
【0053】
ステップS13において最高温度Tmが上限温度以下の場合(S13のN)、ステップS14はスキップされる。また制御部12cによる温度制御に基づく電流制限がかかっている場合は、当該電流制限が解除される(S15)。当該電流制限が解除されると、アクセルペダルの開度や自動運転コントローラによる速度制御に基づく電流制御が優先権を取り戻す。
【0054】
制御部12cは、電動車両1が走行状態から停止してパワーオフされると第1リレー32をターンオフして、電池システム10とモータ30を遮断させ、電池モジュール11の充放電を終了する(S16のY)。電動車両1の走行中は(S16のN)、ステップS11に遷移し、ステップS11からステップS15までの処理を繰り返す。
【0055】
図9は、制御部12cによる電池モジュール11の温度制御例2を示すフローチャートである。温度制御例2は、電流Iではなく、冷却液の流量Qを制御して電池モジュール11の温度を制御する例である。以下、
図8に示した温度制御例1のフローチャートとの相違点を説明する。
【0056】
ステップS13において最高温度Tmが上限温度を超える場合(S13のY)、制御部12cは、冷却システム20の管理部22に指示信号を送信して、冷却液の流量Qを増加させるよう指示する(14a)。
【0057】
ステップS13において最高温度Tmが上限温度以下の場合(S13のN)、ステップS14aはスキップされる。また制御部12cは、冷却システム20の管理部22に指示信号を送信して、冷却液の流量Qを規定値に戻すよう指示する(15a)。これら以外の処理は、
図8のフローチャートに示した処理と同じである。
【0058】
温度制御例2では、流量センサF1から流量Qを取得する機能、及び冷却システム20の電動ポンプ21が流量Qを調整する機能が必須となる。これに対して温度制御例1では、流量センサF1から流量Qを取得する機能、及び電動ポンプ21が流量Qを調整する機能は必須ではない。温度制御例1では、流量センサF1を設けない構成も可能である。また冷却システム20から送出される流量Qが常に固定であってもよい。
【0059】
また温度制御例1に示した電流Iの制御と、温度制御例2に示した流量Qの制御を併用してもよい。この場合、より早期に電池モジュール11の温度を低下させることができる。
【0060】
また冷却システム20が冷却液の温度を調整する機能を有する場合において、最高温度Tmが上限温度を超える場合、制御部12cは、冷却システム20の管理部22に指示信号を送信して、冷却液の温度Twを低下させるよう指示してもよい。この冷却液の温度Twの制御と、電流Iの制御および/または冷却液の流量Qの制御を併用することも可能である。
【0061】
図10(a)、(b)は、測定点温度Tcと最高温度Tmの推移の具体的なイメージを示した図である。
図10(a)は、従来技術に係る、測定点温度Tcが上限温度を超えないようにする温度制御が実行された場合における測定点温度Tcと最高温度Tmの推移を示している。
図10(b)は、本実施の形態に係る、最高温度Tmが上限温度を超えないようにする温度制御が実行された場合における測定点温度Tcと最高温度Tmの推移を示している。
【0062】
図10(a)に示す例では、測定点温度Tcが上限温度を超えると電流制限が開始されるが、電流制限が開始されるタイミングでは、電池モジュール11内の最高温度Tmが既に上限温度を超えている。測定点温度Tcが上限温度に維持されている状態でも、電池モジュール11内の最高温度Tmは上限温度を超えている。一方、
図10(b)に示す例では、測定点温度Tcから推定される最高温度Tmが上限温度を超えると電流制限が開始されるため、最高温度Tmが上限温度を超えることがない。
【0063】
以上説明したように本実施の形態によれば、測定点温度Tcを含む複数のパラメータ値から電池モジュール11内の最高温度Tmを推定し、推定した最高温度Tmが上限温度を超えないように電流を制限および/または冷却システム20を制御する。これにより、電池モジュール11内のセルEnの劣化を抑制し、電池システム10を長寿命化することができる。
【0064】
図12は、制御部12cによる電池モジュール11の温度制御例3を示すフローチャートである。制御部12cは、電動車両1が走行状態から停止してパワーオフされると第1リレー32をターンオフして、電池システム10とモータ30を遮断させ、電池モジュール11の充放電を終了する(S100のY)。電動車両1がパワーオフされても電池システム10の管理部22は直ぐにパワーオフせずに動作を継続する。制御部12cは、第1温度センサT1からセルEnの表面の測定点温度Tc、第2温度センサT2から電池モジュール11内の環境温度Te、第3温度センサT3から冷却液温度Twをそれぞれ取得する(S110)。
【0065】
制御部12cは、取得した測定点温度Tc、環境温度Te及び冷却液温度Twをもとに、上記テーブル12tを参照して、電池モジュール11内の最高温度Tmを推定する(S120)。制御部12cは、推定した最高温度Tmと所定の上限温度(例えば、50℃)を比較する(S130)。
【0066】
最高温度Tmが上限温度を超える場合(S130のY)、制御部12cは、冷却システム20の管理部22に制御信号を送信して、冷却システム20を稼働させる(S140)。電動車両1のパワーオフ以前から冷却システム20が稼働している場合は、そのまま冷却システム20の稼働を継続させる。
【0067】
なお電動車両1のパワーオフ以前に電動ポンプ21から送出されていた冷却液の流量が最大でない場合、制御部12cは、冷却システム20の管理部22に指示信号を送信して、冷却液の流量Qを増加させるよう指示してもよい。例えば、冷却液の流量Qを最大にするよう指示してもよい。
【0068】
また冷却システム20が冷却液の温度を調整する機能を有する場合において、電動車両1のパワーオフ以前に電動ポンプ21から送出されていた冷却液の温度Twが最低温度でない場合、制御部12cは、冷却システム20の管理部22に指示信号を送信して、冷却液の温度Twを低下させるよう指示してもよい。例えば、冷却液の温度Twを最低にする
よう指示してもよい。
【0069】
ステップS130において最高温度Tmが上限温度以下の場合(S130のN)、制御部12cは、冷却システム20の管理部22に指示信号を送信して、冷却システム20を停止させる(S150)。その後、電池システム10の管理部22はシャットダウン/スタンバイに移行する(S160)。
【0070】
図13は、制御部12cによる電池モジュール11の温度制御例4を示すフローチャートである。温度制御例4は、電動車両1の走行終了後のパワーオフ後の制御ではなく、充電器2から電池システム10への急速充電完了後の制御である。急速充電中は、制御部12cは第2リレー40をオン状態に制御する。急速充電が完了しても(S100aのY)、ユーザは充電ケーブル4を外さず、制御部12cは第2リレー40のオン状態を維持する。
【0071】
ステップS110からステップS150までの処理は、
図12に示した温度制御例3の処理と同じである。急速充電の完了後も、電池システム10とインバータ31間を繋ぐ主電流路が充電器2と導通しているため、冷却システム20の電源は充電器2を介して商用電力系統3から賄われる。従って、急速充電の完了後の冷却システム20の稼働により、電池モジュール11の容量が減少することを防止することができる。
【0072】
冷却システム20が停止すると(S150)、制御部12cは第2リレー40をターンオフする(S155)。その後、電池システム10の管理部22はシャットダウン/スタンバイに移行する(S160)。ユーザは、電動車両1から充電ケーブル4を取り外す。
【0073】
図14(a)、(b)は、測定点温度Tcと最高温度Tmの推移の具体的なイメージを示した図である。
図14(a)は、従来技術に係る、電池モジュール11の充放電終了前後における測定点温度Tcと最高温度Tmの推移を示している。
図14(a)では、電池モジュール11の充放電終了後に冷却システム20が稼働しない。
図14(b)は、本実施の形態に係る、電池モジュール11の充放電終了前後における測定点温度Tcと最高温度Tmの推移を示している。
図14(b)では、電池モジュール11の充放電終了後に冷却システム20が稼働する。両者を比較すると、
図14(b)に示す例の方が、測定点温度Tcと最高温度Tmが早く低下する。
【0074】
以上説明したように本実施の形態によれば、電池モジュール11の充放電終了後も、一定の時間、電池モジュール11の冷却を継続することにより、電池モジュール11内のセルが高温状態を維持する時間を短縮することができる。これにより、電池モジュール11内のセルの保存劣化を抑制し、電池システム10を長寿命化することができる。また、測定点温度Tcを含む複数のパラメータ値から電池モジュール11内の最高温度Tmを推定し、推定した最高温度Tmをもとに充放電終了後の冷却を制御することにより、測定点温度Tcをもとに充放電終了後の冷却を制御する場合より、電池モジュール11内のセルの保存劣化を抑制することができる。
【0075】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0076】
上記
図6では、測定点温度Tc、環境温度Te及び冷却液温度Twの3つのパラメータと、最高温度Tmとの関係を数値シミュレーションや実験をもとに導出し、データベース化または関数化する例を説明した。この点、最高温度Tmを推定するためのパラメータは、上記3つのパラメータに限るものではない。
【0077】
図11は、セルEnの表面の測定点温度Tc、電池モジュール11内の環境温度Te、冷却液温度Tw、冷却液の流量Q及び電池モジュール11に流れる電流Iと、電池モジュール11内の最高温度Tmとの関係を規定したテーブル12tを示す。設計者は、事前に数値シミュレーションや実験をもとに、測定点温度Tc、環境温度Te、冷却液温度Tw、流量Q及び電流Iの5つのパラメータの種々の組み合わせごとに最高温度Tmを導出し、それらの関係をデータベース化する。特に電流Iは、セル内部の温度に大きな影響を与えるためパラメータに電流Iを含めることが好ましい。
【0078】
なお、測定点温度Tc、環境温度Te、冷却液温度Tw及び電流Iの4つのパラメータの種々の組み合わせごとに最高温度Tmを導出してもよいし、測定点温度Tc、環境温度Te、冷却液温度Tw及び流量Qの4つのパラメータの種々の組み合わせごとに最高温度Tmを導出してもよい。
【0079】
なお、測定点温度Tc、環境温度Te、冷却液温度Tw及びセルのSOHの4つのパラメータの種々の組み合わせごとに最高温度Tmを導出してもよい。セルは、SOHが低下するほど(劣化が進行するほど)、温度が上昇しやすくなる性質があるため、パラメータにSOHを含めると、より正確に最高温度Tmを推定することができる。
【0080】
また簡易な推定モデルとして、環境温度Te及び冷却液温度Twの2つのパラメータの種々の組み合わせごとに最高温度Tmを導出してもよいし、測定点温度Tc及び冷却液温度Twの2つのパラメータの種々の組み合わせごとに最高温度Tmを導出してもよい。また最も簡易な推定モデルとして、環境温度Teの種々の値ごとに最高温度Tmを導出してもよいし、測定点温度Tcの種々の値ごとに最高温度Tmを導出してもよい。例えば、発熱が小さい種類の電池を使用している場合や上限温度を低く設定している場合、このような簡易モデルに基づく電池モジュール11の温度制御も可能である。
【0081】
また測定点温度Tcは、電池モジュール11内の複数の第1温度センサT1により測定された温度のうち、最も高いものを使用する運用でもよい。即ち、測定点温度Tcとして採用する第1温度センサT1を動的に切り替える運用でもよい。
【0082】
上述の実施の形態では液冷式の冷却システム20を説明したが、空冷式の冷却システムを採用してもよい。この場合、上述の実施の形態における冷却液を冷却風に読み替える。即ち、制御部12cは冷却液の温度Twの代わりに冷却風の温度を取得する。制御部12cは、推定した最高温度Tmが上限温度を超える場合、冷却システム20の管理部22に、冷却風量の増加及び/又は冷却風の温度低下を要求することができる。
【0083】
上記
図8、
図9に示すフローチャートの説明では、電池システム10の充放電中の期間として、電動車両1の走行期間を想定したが、電動車両1の充電器2からの充電中の期間であってもよい。特に大電流で急速充電する場合は、電池モジュール11が発熱するため、冷却システム20による冷却および/または一時的な充電電流の制限が有効である。
【0084】
上述の実施の形態では車載用途の電池システム10において上述の温度制御を使用する例を説明したが、定置型蓄電用途の電池システム10においても、上述の温度制御を使用することができる。またノート型PCやスマートフォンなどの電子機器用途の電池システム10においても、上述の温度制限を使用することができる。
【0085】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
[項目1]
複数のセル(E1-En)を含む電池モジュール(11)と、
前記電池モジュール(11)の充放電と前記電池モジュール(11)内の温度を管理する管理部(12)と、を備え、
前記管理部(12)は、前記電池モジュール(11)内の測定された温度をもとに前記電池モジュール(11)内のセル(En)の内部の最高温度を推定し、前記電池モジュール(11)の充放電中、前記推定した最高温度が上限温度を超えないように、前記電池モジュール(11)の充放電電流、及び/又は前記電池モジュール(11)の冷却を制御することを特徴とする電池システム(10)。
これによれば、推定した電池モジュール(11)内のセル(En)の内部の最高温度をもとに電池モジュール(11)の温度を制御するため、複数のセル(E1-En)の劣化を抑制することができる。
【0086】
[項目2]
複数のセル(E1-En)を含む電池モジュール(11)と、
前記電池モジュール(11)の充放電と前記電池モジュール(11)内の温度を管理する管理部(12)と、を備え、
前記管理部(12)は、前記電池モジュール(11)内の測定された温度をもとに前記電池モジュール(11)内のセル(En)の内部の最高温度を推定し、前記電池モジュール(11)の充放電の終了後において、前記推定した最高温度が上限温度を超える場合、推定した最高温度が前記上限温度以下になるまで、前記電池モジュール(11)を冷却することを特徴とする電池システム(10)。
これによれば、電池モジュール(11)の充放電の終了後において、電池モジュール(11)を冷却するため、複数のセル(E1-En)の保存劣化を抑制することができる。
【0087】
[項目3]
内部を冷却液が通り、前記電池モジュール(11)内の複数のセル(E1-En)の一部分を冷却する冷却部材(13)と、
前記複数のセル(E1-En)のいずれかのセル(En)の表面に設置される第1温度センサ(T1)と、
前記電池モジュール(11)内、または前記電池モジュール(11)を含む電池パック内の環境温度を測定する第2温度センサ(T2)と、
前記冷却液の温度を測定する第3温度センサ(T3)と、をさらに備え、
前記管理部(12)は、予め作成された、前記セル(En)の表面の測定温度、前記電池モジュール(11)内/前記電池パック内の環境温度及び前記冷却液の温度を含む複数の条件と、前記最高温度との関係を規定したテーブル(12t)又は関数を保持し、当該テーブル(12t)又は当該関数を使用して、前記最高温度を推定することを特徴とする項目1または2に記載の電池システム(10)。
これによれば、電池モジュール(11)内のセル(En)の内部の最高温度を高精度に推定することができる。
【0088】
[項目4]
前記電池モジュール(11)を流れる電流を測定する電流センサ(13b)をさらに備え、
前記管理部(12)は、予め作成された、前記セル(En)の表面の測定温度、前記電池モジュール(11)内/前記電池パック内の環境温度、前記冷却液の温度及び前記電池モジュール(11)を流れる電流を含む複数の条件と、前記最高温度との関係を規定したテーブル(12t)又は関数を保持し、当該テーブル(12t)又は当該関数を使用して、前記最高温度を推定することを特徴とする項目2に記載の電池システム(10)。
これによれば、電池モジュール(11)内のセル(En)の内部の最高温度を、さらに高精度に推定することができる。
【0089】
[項目5]
前記第1温度センサ(T1)は、前記内部の温度が前記電池モジュール(11)内の最高温度であるセル(En)の表面に設置されることを特徴とする項目3または4に記載の電池システム(10)。
これによれば、電池モジュール(11)内のセル(En)の内部の最高温度を、セル(En)の外部の表面に設置された第1温度センサ(T1)の測定温度をもとに推定することができる。
【0090】
[項目6]
前記電池システム(10)は、電動車両(1)に搭載され、
前記管理部(12)は、前記推定した最高温度が前記上限温度を超えるとき、前記電池モジュール(11)から前記電動車両(1)内の走行用モータ(30)に供給される電流量を低下させることを特徴とする項目1から5のいずれか1項に記載の電池システム(10)。
これによれば、電動車両(1)に搭載された電池モジュール(11)の温度を低下させることができる。
【0091】
[項目7]
前記電池システム(10)は、電動車両(1)に搭載され、
前記管理部(12)は、前記推定した最高温度が前記上限温度を超えるとき、前記電動車両(1)内の冷却システム(20)に、前記電池モジュール(11)に供給する冷却液の流量を増加させる指示信号を送信することを特徴とする項目1から5のいずれか1項に記載の電池システム(10)。
これによれば、電動車両(1)に搭載された電池モジュール(11)の温度を低下させることができる。
【0092】
[項目8]
前記管理部(12)は、前記電動車両(1)のパワーオフ後において、前記推定した最高温度が前記上限温度を超える場合、前記推定した最高温度が前記上限温度以下になるまで、前記電池モジュール(11)を冷却することを特徴とする項目7に記載の電池システム(10)。
これによれば、電動車両(1)のパワーオフ後において、電池モジュール(11)の温度を早期に低下させることができる。
【0093】
[項目9]
前記管理部(12)は、前記電動車両(1)の外部に設置された充電器(2)からの充電終了後において、前記推定した最高温度が前記上限温度を超える場合、前記推定した最高温度が前記上限温度以下になるまで、前記電池モジュール(11)を冷却することを特徴とする項目7に記載の電池システム(10)。
これによれば、電動車両(1)の外部充電後において、電池モジュール(11)の温度を早期に低下させることができる。
【0094】
[項目10]
前記管理部(12)は、前記充電器(2)からの充電終了後において、前記推定した最高温度が前記上限温度以下になるまで、前記冷却システム(20)に前記充電器(2)から電源供給されるように制御することを特徴とする項目9に記載の電池システム(10)。
これによれば、電動車両(1)の外部充電後の冷却システム(20)の稼働により、電池モジュール(11)の容量が減少することを防止することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 電動車両、 2 充電器、 3 商用電力系統、 4 充電ケーブル、 5a 注入パイプ、 5b 排出パイプ、 10 電池システム、 11 電池モジュール、 12 管理部、 12a 電圧測定部、 12b 電流測定部、 12c 制御部、 E1,E2,En セル、 Rs シャント抵抗、 T1 第1温度センサ、 T2 第2温度センサ、 T3 第3温度センサ、 F1 流量センサ、 13 冷却板、 13i インレット、 13o アウトレット、 14o 外装缶、 14e 電極体、 20 冷却システム、 21 電動ポンプ、 22 管理部、 25 DC/DCコンバータ、 30 モータ、 31 インバータ、 32 第1リレー、 40 第2リレー。