(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】刺激出力システム、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
A61M 21/02 20060101AFI20230915BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20230915BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20230915BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20230915BHJP
A61B 5/16 20060101ALI20230915BHJP
A61B 5/374 20210101ALI20230915BHJP
A61B 5/377 20210101ALI20230915BHJP
A61B 5/256 20210101ALN20230915BHJP
【FI】
A61M21/02 J
A61B5/02 310G
A61B5/0245 A
A61B5/11 200
A61B5/16 110
A61B5/16 130
A61B5/16 200
A61B5/374
A61B5/377
A61B5/256 130
(21)【出願番号】P 2021553536
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(86)【国際出願番号】 JP2020039792
(87)【国際公開番号】W WO2021079953
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-02-09
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2019192869
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020078983
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】西山 高史
(72)【発明者】
【氏名】松本 秋憲
(72)【発明者】
【氏名】井澤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】平田 昭夫
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】佐々木 一浩
【審判官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-151933(JP,A)
【文献】特開2003-19202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M21/02
A61B5/02
A61B5/0484
A61B5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの脳波および脈波を取得する取得部と、
取得された前記ユーザの前記脳波に基づいて、前記ユーザの覚醒度を推定する第一推定部と、
取得された前記ユーザの前記脈波に基づいて、前記ユーザのリラックス度を推定する第二推定部と、
ユーザをリラックスまたはリフレッシュ状態に導く刺激を前記ユーザに出力する刺激出力部と、
前記刺激の出力が行われた後に、前記ユーザの前記覚醒度の前記刺激の出力が行われる前からの変化と、前記ユーザの前記リラックス度の前記刺激の出力が行われる前からの変化とを評価し、前記評価の結果を、前記刺激の優先度に反映する評価部と、
複数の前記刺激の前記優先度に基づいて、前記ユーザに複数の前記刺激に対応する選択肢を出力する選択肢出力部と、
前記評価の結果を評価結果データとして、前記ユーザ毎または前記ユーザへの刺激提示時毎にデータベース化して記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された、前記ユーザ
及び他のユーザ
それぞれの第1の時点における前記評価結果データ
と、前記ユーザ及び前記他のユーザのそれぞれの前記第1の時点と異なる第2の時点
における前記評価結果データとをプロットする分析部と、を備える、
刺激出力システム。
【請求項2】
前記評価部は、刺激の出力が行われた後のユーザの状態と、前記刺激の出力が行われる前のユーザの状態とを比べて、前記ユーザの前記覚醒度が低下し、かつ、前記ユーザの前記リラックス度が向上したという前記評価の結果が得られた場合に、前記刺激の前記優先度を、前記評価の結果が得られる前よりも高くする、
請求項1に記載の刺激出力システム。
【請求項3】
前記評価部は、刺激の出力が行われた後のユーザの状態と、前記刺激の出力が行われる前のユーザの状態とを比べて、前記ユーザの前記覚醒度が向上したという前記評価の結果が得られた場合に、前記刺激の前記優先度を、前記評価の結果が得られる前よりも高くする、
請求項1に記載の刺激出力システム。
【請求項4】
前記選択肢出力部は、前記優先度の高い前記刺激を示す選択肢ほど、前記ユーザから選ばれやすくなる態様で表示する、
請求項1に記載の刺激出力システム。
【請求項5】
前記選択肢出力部は、前記優先度の高い前記刺激を示す選択肢ほど、選択肢が提示されている画面の中で端部側に表示する、選択肢が表示されている部分の中の他の部分と違う色で表示する、または、優先度の低い選択肢よりも大きく表示し、選択肢が表示されている部分の中の他の部分と違う点滅状態で表示することの少なくとも一つの態様で表示する、
請求項4に記載の刺激出力システム。
【請求項6】
前記刺激出力部は、前記刺激を出力中に、前記ユーザの前記覚醒度の低下が起こらず、かつ、前記ユーザの前記リラックス度の向上も起こらないとき、
前記刺激の出力を停止し、または、別の刺激を出力する、
請求項1~2および4~5のいずれか1項に記載の刺激出力システム。
【請求項7】
前記刺激出力部は、前記刺激を出力中に、前記ユーザの前記覚醒度の向上が見られないとき、
前記刺激の出力を停止し、
別の刺激を出力する、
請求項1および3~6のいずれか1項に記載の刺激出力システム。
【請求項8】
前記ユーザの覚醒度またはリラックス度が変化したか否かを示す主観評価を入手する主観評価入手部と、
前記主観評価と、前記ユーザの前記脳波と前記ユーザの前記脈波から客観的に評価された、前記ユーザの覚醒度またはリラックス度が変化したか否かを示す客観評価結果との整合性を評価する整合性評価部とを、さらに備え、
前記整合性に応じて、前記優先度を変更する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の刺激出力システム。
【請求項9】
前記分析部は、前記ユーザの覚醒度またはリラックス度が変化したか否かを示す主観評価毎、複数のユーザ毎、ならびに、前記覚醒度または前記リラックス度のそれぞれが取得された時点毎に、前記覚醒度および前記リラックス度を分類し、分類された前記覚醒度および前記リラックス度の変化が類似する複数のユーザをカテゴリー化し、
前記選択肢出力部は、前記分析部によってカテゴリー化された結果を出力する、
補正後の請求項1~8のいずれか1項に記載の刺激出力システム。
【請求項10】
前記分析部は、前記ユーザの前記覚醒度または前記ユーザの前記覚醒度の過去の時点の前記ユーザの前記覚醒度からの変化を示す値を、時系列でプロットした結果を前記選択肢出力部に出力する、
補正後の請求項1~9のいずれか1項に記載の刺激出力システム。
【請求項11】
前記分析部は、前記刺激による前記リラックス度または前記刺激による前記リラックス度の過去の時点の前記ユーザの前記リラックス度からの変化を示す値を、時系列でプロットした結果を前記選択肢出力部に出力する、
補正後の請求項1~10のいずれか1項に記載の刺激出力システム。
【請求項12】
前記分析部は、LF/HF比を用いて算出された疲労回復度を複数のユーザ毎、または、前記覚醒度または前記リラックス度が取得された時点毎にプロットした結果を前記選択肢出力部に出力する、
補正後の請求項1~11のいずれか1項に記載の刺激出力システム。
【請求項13】
推定された前記ユーザの前記覚醒度、および、推定された前記ユーザの前記リラックス度、もしくは、前記記憶部に記憶されている前記評価結果データを表示する表示制御部を、さらに備える、
補正後の請求項1~12のいずれか1項に記載の刺激出力システム。
【請求項14】
前記刺激は、音、映像、光、気流、または、香りである、
請求項1~13のいずれか1項に記載の刺激出力システム。
【請求項15】
前記取得部は、前記ユーザの前記脳波および前記ユーザの前記脈波を、ウェアラブルデバイスによって取得する、
請求項1~14のいずれか1項に記載の刺激出力システム。
【請求項16】
前記ウェアラブルデバイスが有する加速度センサによって出力される加速度データに基づいて、前記ウェアラブルデバイスを装着した前記ユーザが静止しているか否かを判定する判定部を、さらに備え、
前記第一推定部は、前記判定部により前記ユーザが静止していると判定された時間区間における前記ユーザの前記脳波に基づいて、前記ユーザの覚醒度を推定し、
前記第二推定部は、前記判定部により前記ユーザが静止していると判定された時間区間における前記ユーザの前記脈波に基づいて、前記ユーザのリラックス度を推定する、
請求項15に記載の刺激出力システム。
【請求項17】
刺激出力方法
をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記刺激出力方法は、
ユーザの脳波および脈波を取得する取得ステップと、
取得された前記ユーザの脳波に基づいて、前記ユーザの覚醒度を推定する第一推定ステップと、
取得された前記ユーザの脈波に基づいて、前記ユーザのリラックス度を推定する第二推定ステップと、
ユーザをリラックスまたはリフレッシュ状態に導く刺激を前記ユーザに出力する刺激出力ステップと、
前記刺激の出力が行われた後に、前記ユーザの前記覚醒度の変化と、前記ユーザの前記リラックス度の変化とを評価し、前記評価の結果を、前記刺激の優先度に反映する評価ステップと、
複数の前記刺激の前記優先度に基づいて、前記ユーザに複数の前記刺激を選択肢として出力する選択肢出力ステップと、
前記評価の結果を評価結果データとして、前記ユーザ毎または前記ユーザへの刺激提示時毎にデータベース化して記憶する記憶ステップと、
前記記憶ステップで記憶された、前記ユーザ
及び他のユーザ
それぞれの第1の時点における前記評価結果データ
と、前記ユーザ及び前記他のユーザのそれぞれの前記第1の時点と異なる第2の時点
における前記評価結果データとをプロットするステップとを含む
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、刺激出力システム、および、刺激出力方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ユーザをリラックスさせてリフレッシュ状態に導くシステムが研究開発され、心拍あるいは脈拍データから副交感神経の状態、指標を見ながら、呼吸を統制する技術が提案されている。特許文献1には、ユーザをリラックス状態に誘導した後に、呼吸センサデータに基づきユーザの呼気期間を統制することでリフレッシュ状態に導く技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来技術では、ユーザの呼気期間、すなわち息を吐く時間がシステムからユーザに対して指示されるため、ユーザの主観的印象としての不快さは否めないと考えられる。
【0005】
そこで本開示は、ユーザの主観的印象での快適さを維持しながら、ユーザを、短時間で効率的にリラックスまたはリフレッシュさせる刺激出力システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る刺激出力システムは、ユーザの脳波および脈波を取得する取得部と、取得された前記ユーザの前記脳波に基づいて、前記ユーザの覚醒度を推定する第一推定部と、取得された前記ユーザの前記脈波に基づいて、前記ユーザのリラックス度を推定する第二推定部と、ユーザをリラックスまたはリフレッシュ状態に導く刺激を前記ユーザに出力する刺激出力部と、前記刺激の出力が行われた後に、前記ユーザの前記覚醒度の前記刺激の出力が行われる前からの変化と、前記ユーザの前記リラックス度の前記刺激の出力が行われる前からの変化とを評価し、前記評価の結果を、前記刺激の優先度に反映する評価部と、複数の前記刺激の前記優先度に基づいて、前記ユーザに複数の前記刺激に対応する選択肢を出力する選択肢出力部と、前記評価の結果を評価結果データとして、前記ユーザ毎または前記ユーザへの刺激提示時毎にデータベース化して記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された、前記ユーザ及び他のユーザそれぞれの第1の時点における前記評価結果データと、前記ユーザ及び前記他のユーザのそれぞれの前記第1の時点と異なる第2の時点における前記評価結果データとをプロットする分析部と、を備える。
【0007】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様に係る刺激出力システム等は、ユーザに対し、リラックス状態へ導く刺激あるいはリフレッシュ状態へ導く刺激を出力しつつ、ユーザから取得する生理的データの脳波と脈波を評価し、ユーザの覚醒度またはリラックス度を、ユーザに出力される上記の刺激の優先度に反映させることで、ユーザを短時間でリラックスまたはリフレッシュ状態に導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る刺激出力システムとユーザの概要を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る刺激出力システムのブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る刺激出力システムにおいて優先度を反映させた刺激の選択肢の出力例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る刺激出力システムの、ユーザの覚醒度およびリラックス度の表示例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る刺激出力システムの、刺激を出力する機器の具体例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る刺激出力システムで使用される刺激リストの例である。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る刺激出力システムの動作例1を表すフローチャートである。
【
図8】
図8は、中枢神経の状態の推定方法を説明するための図である。
【
図9】
図9は、自律神経の状態の推定方法を説明するための図である。
【
図10】
図10は、実施の形態に係る刺激出力システムの動作例2を表すフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施の形態に係る刺激出力システムの動作例3を表すフローチャートである。
【
図12】
図12は、実施の形態に係る刺激出力システムの動作例4を表すフローチャートである。
【
図13】
図13は、実施の形態に係る刺激出力システムの動作例5を表すフローチャートである。
【
図14】
図14は、実施の形態に係る刺激出力システムの動作例6を表すフローチャートである。
【
図15】
図15は、実施の形態に係る刺激出力システムの動作例7を表すフローチャートである。
【
図17】
図17は、複数のユーザの覚醒度およびリラックス度の計測結果を示す図である。
【
図18】
図18は、複数のユーザの覚醒度および疲労度の計測結果を示す図である。
【
図19】
図19は、単独のユーザにおける脳波から算出された仮眠中の睡眠効率の時系列での変化を示すグラフである。
【
図20】
図20は、ユーザにおける脈波から算出された仮眠中の疲労回復度の時系列での変化を示すグラフである。
【
図21】
図21は、実施の形態に係る刺激出力システムの、ウェアラブルデバイスの具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
【0011】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態に係る構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
【0012】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0013】
(実施の形態)
[刺激出力システムの概要]
まず、実施の形態に係る刺激出力システムの概要について説明する。
図1は、実施の形態に係る刺激出力システムとユーザの概要を示す図である。
図2は、実施の形態に係る刺激出力システム10のブロック図である。
【0014】
実施の形態に係る刺激出力システム10は、ウェアラブルデバイス60と、端末40と、を備える。
図2に示されるように、刺激出力システム10は、サーバ装置70を備えてもよい。また、刺激出力システム10は、ウェアラブルデバイス60の代わりに、脳波計および脈波計を備えていてもよい。ここで、脳波計は、脳波計測部62の具体例であり、脈波計は、脈波計測部63の具体例である。刺激出力システム10は、ウェアラブルデバイス60、または、脳波計および脈波計によって計測されるユーザ50の生体信号に基づいて推定されたユーザ50の中枢神経の状態、および、ユーザ50の自律神経の状態を反映した、刺激の優先度に応じて、刺激の選択肢をユーザ50に出力することができる。具体的には、刺激の選択肢は、刺激の優先度に応じて、携帯端末、ディスプレイ等で実現される表示部13に表示される。
【0015】
図3は、実施の形態に係る刺激出力システム10において優先度を反映させた刺激の選択肢の出力例を示す図である。また、ここで、刺激とは、ユーザ50の聴覚、視覚、嗅覚、または、触覚等に作用することができるものとする。例えば、刺激とは、楽曲などの音である。刺激の例としては、他に、映像、光、または、気流、香り等が挙げられる。これらの刺激は、例えば、
図5に示されるような、スマートフォン41、スピーカ42、照明装置43、エアコン(空気調和機)44、扇風機45、または、アロマディフューザー46等によってユーザ50に出力される。
図5は、実施の形態に係る刺激出力システム10の、刺激を出力する機器の具体例を示す図である。
【0016】
端末40の表示部13には、
図3の(a)に示されるように、ユーザ50に出力される刺激の選択肢が優先度に従って表示される。例えば、表示部13に、優先度の高い刺激の選択肢が上から順に並べられて示されてもよい。また、例えば、表示部13に、優先度の高い刺激の選択肢から順に大きく表示されてもよい。また、例えば、優先度が一定以上高い刺激の選択肢が、他の刺激の選択肢と異なる色で表示されてもよいし、異なる字体で表示されてもよいし、異なる点滅方法で表示されてもよい。また、
図3の(b)に示されるように、複数の刺激の選択肢が、各刺激の優先度に関わらず、並列に表示されてもよい。
【0017】
[ウェアラブルデバイス]
以下、このような刺激出力システム10の構成について詳細に説明する。まずウェアラブルデバイス60について説明する。
【0018】
ウェアラブルデバイス60は、イヤーフック型(耳掛け型)のデバイスであり、ユーザ50の生体信号として脳波(EEG:ElectroEncephaloGram)および脈波(PPG:PhotoPlethysmoGram)を計測する。ウェアラブルデバイス60は、加速度センサ61と脳波計測部62と、脈波計測部63と、記憶部64と、制御部65と、通信部66と、スピーカ67とを備える。
【0019】
加速度センサ61は、例えば、3軸加速度センサであり、X、Y、Z軸の各方向の加速度を計測し、計測結果を加速度データとして出力する。加速度データは、ユーザ50が静止状態であるか否かの判定に用いられる。加速度センサ61は、ピエゾ抵抗型の加速度センサであってもよいし、静電容量型の加速度センサであってもよいし、熱検知型の加速度センサであってもよい。
【0020】
脳波計測部62は、ユーザ50の脳波を計測する。脳波計測部62は、具体的には、ユーザ50の耳上部(言い換えれば、側頭部)に接する第1の電極と、ユーザ50の耳たぶに接する第2電極との間の電圧値を計測して脳波データとして出力する回路である。なお、第1の電極および第2の電極の位置は一例であり、特に限定されない。
【0021】
脈波計測部63は、ユーザ50の脈波を計測する。脈波計測部63は、具体的には、光電脈波法を用いて脈波を計測する脈波センサである。光電脈波法は、赤外光または赤色光(反射型の場合は緑色光も使用可能)を体表面に照射し、体内を透過する光の変化量または体内で反射する光の変化量を、血流量の変化としてとらえる脈波の計測方法である。脈波計測部63は、例えば、ユーザ50の耳たぶ付近を対象として脈波を計測し、脈波データを出力する。
【0022】
制御部65は、加速度センサ61によって出力される加速度データ、脳波計測部62によって出力される脳波データ、および、脈波計測部63によって出力される脈波データを通信部66刺激経由で出力システム10へ送信させる。制御部65は、具体的には、マイクロコンピュータによって実現されるが、プロセッサによって実現されてもよい。
【0023】
記憶部64は、加速度データ、脳波データ、および、脈波データを通信部66に送信させるために制御部65が実行するプログラムが記憶される記憶装置である。記憶部64には、加速度データ、脳波データ、および、脈波データが一時的に記憶されてもよい。記憶部64は、例えば、半導体メモリなどによって実現される。
【0024】
通信部66は、制御部65の制御に基づいて、加速度データ、脳波データ、および、脈波データを刺激出力システム10に送信する。通信部66は、具体的には、無線通信を行う無線通信回路であるが、有線通信を行う有線通信回路であってもよい。通信部66によって行われる通信の通信規格は、特に限定されない。
【0025】
スピーカ67は、制御部65の制御に基づいて音を出力する。つまり、ウェアラブルデバイス60は、イヤホン機能を有する。スピーカ67は、一般的なイヤホンに用いられるスピーカであってもよいし、骨伝導スピーカであってもよい。
【0026】
[端末]
端末40は、ウェアラブルデバイス60等から加速度データ、脳波データ、および、脈波データを取得し、これらのデータに基づいて、ユーザ50に出力される刺激の優先度を決定し、ユーザ50に優先度の高い刺激を出力する。また、端末40は、優先度に応じて作成した刺激のリストを、ユーザ50に対して出力する。つまり、端末40は、ウェアラブルデバイス60から取得したデータに基づいて、
図3に示されるような画像を表示する。端末40は、操作受付部11と、通信部12と、表示部13と、情報処理部20とを備える。情報処理部20は、取得部21と、第一推定部22と、第二推定部23と、評価部24と、主観評価入手部25と、整合性評価部26と、判定部27と、刺激出力部28と、選択肢出力部29と表示制御部30と、分析部31とを含む。なお、端末40は、加速度データ、脳波データ、および、脈波データを、ウェアラブルデバイスでないセンサまたは装置等から取得してもよい。
【0027】
操作受付部11は、ユーザ50の操作を受け付ける。操作受付部11は、例えば、タッチパネルによって実現されるが、ハードウェアボタンによって実現されてもよい。
【0028】
通信部12は、加速度データ、脳波データ、および、脈波データをウェアラブルデバイス60の通信部66から受信する。また、通信部12は、スマートフォン41、スピーカ42、照明装置43、エアコン44、扇風機45、アロマディフューザー46等の、ユーザ50に刺激を出力する機器と通信を行う。通信部12は、具体的には、無線通信を行う無線通信回路であるが、有線通信を行う有線通信回路であってもよい。通信部12によって行われる通信の通信規格は、特に限定されない。なお、通信部12は、端末40とサーバ装置70との通信にも用いられる。
【0029】
表示部13は、情報処理部20(より詳細には、表示制御部30)の制御に基づいて画像を表示する。表示部13は、例えば、
図3または
図4に示されるような画像を表示する。表示部13は、例えば、液晶パネルまたは有機ELパネルなどの表示パネルによって実現される。
【0030】
情報処理部20は、通信部12によって受信されたデータを入力として、ユーザ50の状態を可視化するための情報処理を行う。情報処理部20は、具体的には、マイクロコンピュータによって実現されるが、プロセッサによって実現されてもよい。
【0031】
取得部21は、ユーザ50の加速度データ、脳波データ、および、脈波データ等のデータを取得する。
【0032】
第一推定部22は、取得部21が取得したユーザ50の脳波データに基づいて、ユーザ50の覚醒度を推定する処理を行う。
【0033】
第二推定部23は、取得部21が取得したユーザ50の脈波データに基づいて、ユーザ50のリラックス度を推定する処理を行う。
【0034】
評価部24は、第一推定部22が推定したユーザ50の覚醒度の変化と、第二推定部23が推定したユーザ50のリラックス度の変化とを評価し、評価を行って得られた結果を、ユーザ50に刺激出力部28が出力する刺激の優先度に反映する。ユーザ50の覚醒度の変化とは、刺激出力部28がユーザ50に対して刺激の出力を行う直前のユーザ50の覚醒度と、刺激出力部28がユーザ50に対して刺激の出力を行った時点のユーザ50の覚醒度または刺激出力部28がユーザ50に対して刺激の出力を行った効果が表れた時点のユーザ50の覚醒度である。
【0035】
例えば、ユーザ50のリラックス度を向上させる目的で刺激の出力が行われた場合、評価部24は、ユーザ50の覚醒度が低下し、または、ユーザ50のリラックス度が向上したと評価した場合に、刺激の優先度を高めてもよい。このとき、評価部24は、ユーザ50の覚醒度の低下量とユーザ50のリラックス度の増加量とに応じて、刺激の優先度を高めてもよい。また、例えば、ユーザ50のリフレッシュ度を向上させる目的で刺激の出力が行われた場合、評価部24は、ユーザ50の覚醒度が向上した場合に、刺激の優先度を高めてもよい。このとき、評価部24は、ユーザ50の覚醒度の増加量に応じて、刺激の優先度を高く設定してもよい。
【0036】
主観評価入手部25は、刺激の前後において、ユーザ50の覚醒度の変化あるいはリラックス度の変化をユーザ50が主観的に評価した結果を取得する。例えば、主観評価入手部25は、刺激の前後において、ユーザ50のリラックス度が向上したか否かについて、Yes/Noの二者択一でユーザ50が評価した結果を取得してもよい。
【0037】
整合性評価部26は、主観評価入手部25が取得した、刺激前後におけるユーザ50の主観評価と、第一推定部22および第二推定部23によって推定されたユーザ50の、刺激前後における、覚醒度またはリラックス度の変化の方向についての客観評価との整合性を評価する。例えば、整合性評価部26は、主観評価と客観評価との整合性が取れている場合に評価値を高く設定してもよい。
【0038】
判定部27は、ウェアラブルデバイス60が備える加速度センサ61によって取得された加速度データに基づいて、ユーザ50が静止しているか否かを判定する。なお、判定部27は、加速度センサ61によって取得された加速度データに基づいて、ユーザ50が動いているか否かを判定してもよい。
【0039】
刺激出力部28は、
図5に示されるような、スマートフォン41、スピーカ42、照明装置43、エアコン44、扇風機45およびアロマディフューザー46等に、ユーザ50に対して刺激を出力させる。
【0040】
選択肢出力部29は、優先度に基づいて、ユーザ50に複数の刺激の選択肢を出力する。例えば、選択肢出力部29は、表示部13に、
図5に示されるような刺激の選択肢を表示させる。
【0041】
表示制御部30は、表示部13に画像を表示するための制御を行う。
【0042】
分析部31は、記憶部71に格納された評価結果データに基づいて覚醒度およびリラックス度のそれぞれを、他のユーザおよびユーザ50の間で比較したユーザ間比較結果と、ユーザ50の覚醒度またはリラックス度のそれぞれについて、異なる時点の値同士を比較した結果である時系列比較結果とを、優先度に反映する。
【0043】
[刺激出力システムで使用される刺激リスト]
図6は、実施の形態に係る刺激出力システム10で使用される刺激リストの例である。例えば、
図6の(a)に示されるように、刺激出力システム10の備える情報処理部20の評価部24は、ある音楽に付されたIDに対して、再生日時、再生前のユーザ50の覚醒度、再生後のユーザ50の覚醒度、再生前の覚醒度と再生後の覚醒度との変化値、再生前のユーザ50のリラックス度、再生後のユーザ50のリラックス度、再生前のリラックス度と再生後のリラックス度の変化値を紐づけて、データベース72として管理する。なお、上記の処理は、情報処理部20に含まれる他の機能が実行してもよい。データベース72には、再生日時の新しいものが、順に追加される。
図6の(b)に示されるように映像の場合も同様である。映像に関するデータベース73があってもよい。
図6の(c)に示されるように、光刺激の場合も同様である。サーバ装置70に、光刺激に関するデータベース74が記憶されていてもよい。また、
図6の(c)に示されるように、サーバ装置70に、光刺激に付されたIDと対応する照度と色温度との情報を含むデータベース74aが記憶されていてもよい。
図6の(d)に示されるように、香り刺激の場合も同様である。サーバ装置70に、香り刺激に関するデータベース75が記憶されていてもよい。また、
図6の(d)に示されるように、サーバ装置70に、香り刺激に付されたIDと対応する香りの種類の名称の情報を含むデータベース75aが記憶されていてもよい。
【0044】
[動作例1]
次に、刺激出力システム10の動作例1について説明する。
図7は、実施の形態に係る刺激出力システム10の動作例1を表すフローチャートである。ここでは、ユーザ50をリラックスさせる目的で、楽曲等の音の刺激を出力する場合について説明する。
【0045】
まず、取得部21は、ユーザ50の脳波および脈波を取得する(ステップS100)。取得部21は、ウェアラブルデバイス60が備える脳波計測部62が計測した脳波および脈波計測部63が計測した脈波を取得してもよい。また、取得部21は、刺激出力システム10と通信可能な他の装置が計測したユーザ50の脳波および脈波を取得してもよい。
【0046】
次に、第一推定部22は、取得部21が取得したユーザ50の脳波に基づいて、ユーザ50の覚醒度を推定する(ステップS101)。
【0047】
以下、中枢神経の状態の推定方法について具体的に説明する。
図8は、中枢神経の状態の推定方法を説明するための図である。第一推定部22は、
図8の(a)に示される脳波データを周波数分析することにより、δ波、θ波、α波、β波、γ波などの各周波数成分のパワーを算出する。これにより、第一推定部22は、
図8の(b)に示されるように各周波数成分のパワー比率の時間変化を求めることができる。
【0048】
そして、第一推定部22は、例えば、全ての成分に占めるα波成分(つまり、周波数帯域8Hz~13Hzの成分)の比率に基づいて、ユーザ50の中枢神経の状態を示す覚醒度を決定する。この場合、第一推定部22は、全ての成分に占めるα波成分の比率が小さいほど、ユーザ50の覚醒度が高いと推定する。なお、このような覚醒度の推定方法は一例であり、既存の他の方法が用いられてもよい。
【0049】
続いて、第二推定部23は、取得部21が取得したユーザ50の脈波に基づいて、ユーザ50のリラックス度を推定する(ステップS102)。
【0050】
以下、自律神経の状態の推定方法について具体的に説明する。
図9は、自律神経の状態の推定方法を説明するための図である。第二推定部23は、
図9の(a)に示される脈波データの時間に関する二階微分波形(加速度脈波の波形)のRR間隔を周波数分析することにより、LF(周波数帯域0.05Hz~0.15Hz)およびHF(周波数帯域0.15Hz~0.40Hz)の成分のパワーを算出する。これにより、第二推定部23は、
図9の(b)に示されるようにLF/HFのパワー比率(以下、単にLF/HF比とも記載される)の時間変化を求めることができる。
【0051】
そして、第二推定部23は、例えば、LF/HF比に基づいて、ユーザ50の自律神経の状態を示すリラックス度を決定する。リラックス度が高いとは、副交感神経の働きが交感神経の働きよりも優位であることを示す。この場合、第二推定部23は、全ての成分に占めるLF/HF比が小さいほど、ユーザ50のリラックス度が高いと推定する。なお、このようなリラックス度の推定方法は一例であり、既存の他の方法が用いられてもよい。例えば、RMSSD(ms)と呼ばれる、連続して隣接するRR間隔の差の2乗の平均値の平方根をとり、その値が大きいほど、リラックス度が高いとしても良い。
【0052】
そして、刺激出力部28は、ユーザ50をリラックス状態へ導く刺激またはリフレッシュ状態へ導く刺激を、ユーザ50に出力する(ステップS103)。このとき、刺激出力部28は、ユーザ50をリラックス状態へ導く目的において優先度が高く設定された刺激をユーザ50に出力してもよい。その際、刺激出力部28は、通信部12を介して、サーバ装置70と通信し、サーバ装置70が備える記憶部71に記憶されたデータベース72にアクセスする。データベース72には、上述の刺激リストが含まれる。刺激リストにおいては、各楽曲のIDと紐づけられて、各楽曲の優先度が格納されており、刺激出力部28は、データベース72から優先度の高い楽曲を選択することができる。そして、刺激出力部28は、選択した楽曲をダウンロードし、通信部12を介してスピーカ67またはスピーカ42に送信することで、選択した楽曲をスピーカ67またはスピーカ42から出力させる。つまり、刺激出力部28は、音の刺激を出力する。
【0053】
次に、評価部24は、第一推定部22が推定したユーザ50の覚醒度における、刺激出力前と刺激出力後の変化と、第二推定部23が推定したユーザ50のリラックス度における、刺激出力前と刺激出力後の変化とを評価し、楽曲の優先度に反映させる(ステップS104)。具体的には、評価部24は、サーバ16のデータベース72に含まれる刺激リストの優先度を更新する。更新方法としては、古い優先度を新しい優先度で上書きしてもよいし、古い優先度と新しい優先度の平均値を、更新値として採用してもよい。ここで、古い優先度とは、評価部24による評価の前に、ある楽曲に対して付されていた優先度のことを指す。また、新しい優先度とは、評価部24が評価して算出した、当該楽曲に対して付される優先度のことを指す。
【0054】
ここで、評価部24は、
図4の(a)に示されるように、リラックス度の増加量と、覚醒度の低下量とによって、ユーザ50のリラックス状態の向上の度合いを評価する。評価部24は、ある楽曲が出力されたときのユーザ50の、リラックス度の増加量と覚醒度の低下量とによって規定されるベクトルの大きさが大きいほど、当該楽曲の優先度を高く設定する。つまり、評価部24は、ある楽曲が出力されたときの、ユーザ50のリラックス度の増加量が大きいほど、また、ユーザ50の覚醒度の低下量が大きいほど、当該楽曲の優先度を高く設定する。
【0055】
続いて、選択肢出力部29は、ユーザ50に対して、複数の楽曲の選択肢を、それぞれの楽曲の優先度に基づいて出力する(ステップS105)。上述したように、サーバ装置70が備える記憶部71には、各楽曲を表すIDと紐づけられて、各刺激の優先度が格納されているデータベース72が記憶されている。選択肢出力部29は、通信部12を介して、サーバ16と通信し、記憶部71に記憶されているデータベース72にアクセスすることで、優先度の高い楽曲に関する情報を複数取得する。このとき、優先度の高い楽曲から順に複数の楽曲に関する情報を取得してもよい。そして、取得した複数の楽曲に関する情報をもとに、表示部13に、優先度に応じた方法で、複数の楽曲の選択肢を出力する。優先度に応じた方法とは、例えば、優先度の最も高い楽曲の選択肢から順に、表示部13の上部から並べて表示する方法でもよいし、表示部13内で、優先度の最も高い楽曲の選択肢から順に、大きく表示する方法でもよい。
【0056】
[動作例2]
次に、ユーザ50をリフレッシュ状態へ導く目的で、楽曲等の音の刺激を出力する場合について説明する。ここで、リフレッシュとは、ユーザ50の覚醒度を向上させることをいう。
図10は、実施の形態に係る刺激出力システム10の動作例2を表すフローチャートである。
【0057】
まず、
図2における取得部21は、ユーザ50の脳波を取得する(ステップS200)。取得部21は、ウェアラブルデバイス60が備える脳波計測部62が計測した脳波を取得してもよい。また、取得部21は、刺激出力システム10と通信可能な他の装置が計測したユーザ50の脳波を取得してもよい。
【0058】
次に、第一推定部22は、取得部21が取得したユーザ50の脳波に基づいて、ユーザ50の覚醒度を推定する(ステップS201)。
【0059】
中枢神経の状態の推定方法については、上述した通りである。
【0060】
そして、刺激出力部28は、ユーザ50の覚醒度を向上させるための刺激を、ユーザ50に出力する(ステップS202)。このとき、刺激出力部28は、ユーザ50の覚醒度を向上させる目的において優先度が高く設定された刺激をユーザ50に出力してもよい。その際、刺激出力部28は、通信部12を介して、サーバ装置70と通信し、サーバ装置70が備える記憶部71に記憶されたデータベース72にアクセスする。データベース72には、上述の刺激リストが含まれる。刺激リストにおいては、各楽曲のIDと紐づけられて、各楽曲の優先度が格納されており、刺激出力部28は、データベース72から優先度の高い楽曲を選択することができる。そして、刺激出力部28は、選択した楽曲をダウンロードし、通信部12を介してスピーカ67またはスピーカ42に送信することで、選択した楽曲をスピーカ67またはスピーカ42から出力させる。つまり、刺激出力部28は、音の刺激を出力する。
【0061】
次に、評価部24は、第一推定部22が推定したユーザ50の覚醒度における、刺激出力前と刺激出力後の変化を評価し、楽曲の優先度に反映させる(ステップS203)。具体的には、評価部24は、サーバ16のデータベース72に含まれる刺激リストの優先度を更新する。更新方法としては、古い優先度を新しい優先度で上書きしてもよいし、古い優先度と新しい優先度の平均値を、更新値として採用してもよい。ここで、古い優先度とは、評価部24による評価の前に、ある楽曲に対して付されていた優先度のことを指す。また、新しい優先度とは、評価部24が評価して算出した、当該楽曲に対して付される優先度のことを指す。
【0062】
ここで、評価部24は、
図4の(b)に示されるように、覚醒度の増加量によって、ユーザ50の覚醒度の向上の度合いを評価する。評価部24は、ある楽曲が出力されたときのユーザ50の、覚醒度の増加量によって規定されるベクトルの大きさが大きいほど、当該楽曲の優先度を高く設定する。つまり、評価部24は、ある楽曲が出力されたときの、ユーザ50の覚醒度の増加量が大きいほど、当該楽曲の優先度を高く設定する。
【0063】
続いて、選択肢出力部29は、ユーザ50に対して、複数の楽曲の選択肢を、それぞれの楽曲の優先度に基づいて出力する(ステップS204)。上述したように、サーバ装置70が備える記憶部71には、各楽曲を表すIDと紐づけられて、各刺激の優先度が格納されているデータベース72が記憶されている。選択肢出力部29は、通信部12を介して、サーバ装置70と通信し、記憶部71に記憶されているデータベース72にアクセスすることで、優先度の高い楽曲に関する情報を複数取得する。このとき、優先度の高い楽曲から順に複数の楽曲に関する情報を取得してもよい。そして、取得した複数の楽曲に関する情報をもとに、表示部13に、優先度に応じた方法で、複数の楽曲の選択肢を出力する。優先度に応じた方法とは、例えば、優先度の最も高い楽曲の選択肢から順に、表示部13の上部から並べて表示する方法でもよいし、表示部13内で、優先度の最も高い楽曲の選択肢から順に、大きく表示する方法でもよい。
【0064】
以上説明したように、刺激出力システム10は、ユーザ50に刺激を出力し、刺激出力前と刺激出力後のユーザ50の生体信号に基づいて、ユーザ50に出力される刺激の優先度を決定し、決定された優先度に応じて、ユーザ50に刺激の選択肢を出力することができる。リラックス効果またはリフレッシュ効果が高い楽曲の選択肢が優先的に表示されれば、このような楽曲が選ばれる頻度が高くなる効果が得られる。
【0065】
[動作例3]
刺激出力システム10は、刺激出力前と刺激出力後を比較して、ユーザ50の覚醒度またはリラックス度が変化したか否かに応じて、刺激の出力を継続、停止、または、出力する刺激の種類を変更することにより、ユーザ50を短時間でリラックスさせることができる。
図11は、実施の形態に係る刺激出力システム10の動作例3を表すフローチャートである。ここでは、ユーザ50のリラックス度を向上させる目的で、楽曲等の音の刺激を出力する場合について説明する。
【0066】
まず、刺激出力部28は、ユーザ50に楽曲を出力する(ステップS300)。ここで出力される楽曲は、ユーザ50の覚醒度を低下させるための楽曲、または、ユーザ50のリラックス度を向上させるための楽曲である。
【0067】
次に、刺激出力部28は、当該楽曲を出力したことにより、ユーザ50の覚醒度が低下したか、またはユーザ50のリラックス度が向上したか否かを判断する(ステップS301)。ここで、刺激出力部28は、第一推定部22および第二推定部23が推定した、ユーザ50の覚醒度およびリラックス度の情報を用いる。
【0068】
刺激出力部28が、ユーザ50の覚醒度が低下した、またはユーザ50のリラックス度が向上したと判断した場合(ステップS301でYes)、刺激出力部28は、ユーザ50に対して、当該楽曲の出力を継続する(ステップS302)。
【0069】
刺激出力部28が、ユーザ50の覚醒度が低下しておらず、かつ、ユーザ50のリラックス度が向上していないと判断した場合(ステップS301でNo)、刺激出力部28は、ユーザ50に対して当該楽曲の出力を停止、または、ユーザ50に対して当該楽曲と異なる楽曲を出力する(ステップS303)。ここで、ユーザ50に対して出力される当該楽曲と異なる楽曲は、ユーザ50の覚醒度を低下させるための楽曲、または、ユーザ50のリラックス度を向上させるための楽曲であることが望ましい。
【0070】
以上説明したように、刺激出力システム10は、楽曲出力前と楽曲出力後を比較して、ユーザ50の覚醒度またはリラックス度が変化したか否かに応じて、楽曲の出力を継続、停止、または、出力する楽曲の種類を変更することができる。ユーザ50の状態に応じて、常に適切な楽曲が出力されれば、ユーザ50を短時間でリラックスさせることができる。
【0071】
なお、ここでは、ユーザ50のリラックス度を向上させる目的で、楽曲等の音の刺激を出力する場合について説明した。ユーザ50のリフレッシュ度を向上させる目的で、楽曲等の音の刺激を出力する場合については以下の動作例4に述べる。
【0072】
[動作例4]
刺激出力システム10は、楽曲出力前と楽曲出力後を比較して、ユーザ50の覚醒度が向上したか否かに応じて、楽曲の出力を継続、停止、または、出力する楽曲の種類を変更することにより、ユーザ50を短時間でリフレッシュさせることができる。
図12は、実施の形態に係る刺激出力システム10の動作例4を表すフローチャートである。ここでは、ユーザ50の覚醒度を向上させる目的で、楽曲等の音の刺激を出力する場合について説明する。
【0073】
まず、刺激出力部28は、ユーザ50に楽曲を出力する(ステップS400)。ここで、出力される楽曲は、ユーザ50の覚醒度を向上させるための楽曲である。
【0074】
次に、刺激出力部28は、当該楽曲を出力したことにより、ユーザ50の覚醒度が向上したか否かを判断する(ステップS401)。ここで、刺激出力部28は、第一推定部22および第二推定部23が推定した、ユーザ50の覚醒度およびリラックス度の情報を用いる。
【0075】
刺激出力部28が、ユーザ50の覚醒度が向上したと判断した場合(ステップS401でYes)、刺激出力部28は、ユーザ50に対して、当該楽曲の出力を継続する(ステップS402)。
【0076】
刺激出力部28が、ユーザ50の覚醒度が向上していないと判断した場合(ステップS401でNo)、刺激出力部28は、ユーザ50に対して当該楽曲の出力を停止する、または、ユーザ50に対して当該楽曲と異なる楽曲を出力する(ステップS403)。
【0077】
以上説明したように、刺激出力システム10は、楽曲出力前と楽曲出力後を比較して、ユーザ50の覚醒度が向上したか否かに応じて、楽曲の出力を継続、停止、または、出力する楽曲の種類を変更することができる。ユーザ50の状態に応じて、常に適切な楽曲が出力されれば、ユーザ50の覚醒度を短時間で高めることができる。
【0078】
[動作例5]
刺激出力システム10は、推定したユーザ50の覚醒度とリラックス度を可視化することができる。
図13は、実施の形態に係る刺激出力システム10の動作例5を表すフローチャートである。
【0079】
まず、取得部21は、ユーザ50の脳波および脈波を取得する(ステップS500)。取得部21は、ウェアラブルデバイス60が備える脳波計測部62が計測した脳波および脈波計測部63が計測した脈波を取得してもよい。また、取得部21は、刺激出力システム10と通信可能な他の装置が計測したユーザ50の脳波および脈波を取得してもよい。
【0080】
次に、第一推定部22は、取得部21が取得したユーザ50の脳波に基づいて、ユーザ50の覚醒度を推定する(ステップS501)。覚醒度の評価方法は、上述した通りである。
【0081】
続いて、第二推定部23は、取得部21が取得したユーザ50の脈波に基づいて、ユーザ50のリラックス度を推定する(ステップS502)。リラックス度の評価方法は、上述した通りである。
【0082】
そして、表示制御部30は、第一推定部22が推定したユーザ50の覚醒度と、第二推定部23が推定したユーザ50のリラックス度とを、可視化する(ステップS503)。ここで、可視化とは、表示制御部30が、ユーザ50の覚醒度およびリラックス度を、ディスプレイ等で実現される表示部13に、グラフ等の形式で表示することである。具体的には、表示制御部30は、表示部13に、
図4で示されるような図を表示してもよい。
【0083】
[動作例6]
刺激出力システム10は、ユーザ50の快適性向上についてのユーザ50の主観評価を取得し、楽曲の選択肢の優先度に反映させることができる。
図14は、実施の形態に係る刺激出力システム10の動作例6を表すフローチャートである。ここでは、ユーザ50のリラックス度を向上させる目的で、楽曲等の音の刺激を出力する場合について説明する。
【0084】
まず、取得部21は、ユーザ50の脳波および脈波を取得する(ステップS600)。
【0085】
次に、第一推定部22は、取得部21が取得したユーザ50の脳波に基づいて、ユーザ50の覚醒度を推定する(ステップS601)。覚醒度の推定方法は上述した通りである。
【0086】
続いて、第二推定部23は、取得部21が取得したユーザ50の脈波に基づいて、ユーザ50のリラックス度を推定する(ステップS602)。リラックス度の推定方法は上述した通りである。
【0087】
そして、刺激出力部28は、ユーザ50に対して、ユーザ50の覚醒度を低下、またはリラックス度を向上させるための楽曲を出力する(ステップS603)。
【0088】
次に、評価部24は、ユーザ50の覚醒度の変化と、ユーザ50のリラックス度の変化とについて、客観的に評価を行う(ステップS604)。客観的に評価を行うとは、評価部24が、第一推定部22および第二推定部23の推定した結果に基づいて、リラックス度の変化を算出、または算出した結果をもとに評価値を決定することをいう。
【0089】
続いて、主観評価入手部25は、ユーザ50の覚醒度の変化と、ユーザ50のリラックス度の変化とについて、ユーザ50が主観的に評価した結果を取得する(ステップS605)。具体的には、主観評価入手部25は、操作受付部11を通じて、ユーザ50の主観評価の結果を受け付ける。主観評価は、あらかじめ定められた数値で表されてもよいし、数段階の評価に対応した語句で表されてもよい。また、主観評価入手部25は、ユーザ50が任意で入力した語句を解析して、当該語句をあらかじめ定められた数段階の評価のいずれかに対応するものとして判定する機能を有していてもよい。
【0090】
そして、整合性評価部26は、評価部24が評価した、ユーザ50の覚醒度の低下あるいはリラックス度の向上の有無についての客観評価と、主観評価入手部25が取得した、ユーザ50が評価したユーザ50の覚醒度低下またはリラックス度向上の有無についての主観評価の整合性が取れているか否かを評価する(ステップS606)。ここで、整合性評価部26は、客観評価と主観評価の整合性が取れていた場合、評価対象となっている楽曲の選択肢に対する評価値を高くしてもよい。覚醒度の低下とリラックス度の向上のいずれか一方について、客観評価とユーザ50の主観評価が一致している場合、客観評価と主観評価との整合性が取れているとみなす。覚醒度の低下とリラックス度の向上とのいずれもについて、客観評価とユーザ50の主観評価が一致している場合に、最も客観評価と主観評価とが一致しているみなし、出力されている楽曲の評価値を、最も高くしてもよい。
【0091】
選択肢出力部29は、整合性評価部26が評価した結果を、複数の楽曲の選択肢の優先度それぞれに反映し、整合性評価部26の評価が反映された優先度に基づいて、複数の楽曲の選択肢を、ユーザ50に出力する(ステップS607)。このとき、選択肢出力部29は、整合性評価部26が評価した整合性が高い楽曲の選択肢ほど、優先度を高く設定してもよい。また、選択肢出力部29は、整合性評価部26が評価した整合性が低い楽曲の選択肢の優先度を減じてもよい。例えば、刺激出力システム10が、ユーザ50のリラックス度向上に対する客観評価が高くても、主観評価が低い場合、客観評価の評価値を、数%~10%程度減じた結果を反映した優先度に応じて、楽曲の選択肢を出力してもよい。また、例えば、選択肢出力部29は、刺激出力システム10が、ユーザ50のリラックス度向上に対する客観評価が高く、主観評価が低い場合、客観評価を楽曲の選択肢の優先度に反映してもよい。なお、選択肢出力部29が行う、整合性評価部26の評価結果に応じた刺激の選択肢の優先度の調整方法は、これに限らない。
【0092】
ステップS607において、選択肢出力部29は、サーバ装置70の記憶部71にアクセスし、データベース72から音IDと音IDに対応する優先度に関する情報を取得する。そして、選択肢出力部29は、表示制御部30を通じて、表示部13に、取得した情報をもとに、音IDに対応する優先度に応じて音IDを表示する。このとき、表示部13に表示されるのは、音IDそのものでなく、音IDと紐づけられた楽曲名などの普通名詞でもよい。
【0093】
なお、ここでは、ユーザ50のリラックス度を向上させる目的で、楽曲等の音の刺激を出力する場合について説明したが、動作例2に示されるような、ユーザ50のリフレッシュ度を向上させる目的で、楽曲等の音の刺激を出力する場合についても、動作例6で説明された内容と同様の考え方が適用される。
【0094】
[動作例7]
刺激出力システム10は、ユーザ50が静止している時間区間の脳波および脈波を用いて、ユーザ50の覚醒度またはリラックス度を推定することができる。
図15は、実施の形態に係る刺激出力システム10の動作例7を表すフローチャートである。ここでは、ユーザ50のリラックス度を向上させる目的で、楽曲等の音の刺激を出力する場合について説明する。
【0095】
まず、判定部27は、ウェアラブルデバイス60の備える加速度センサ61が計測した加速度データに基づいて、ユーザ50が静止しているか否かを判定する(ステップS700)。
【0096】
図16は、加速度データの一例を示す図である。なお、
図16は、立っている状態のユーザ50が座って静止したときの加速度データを示している。Z軸方向は上下方向であり、X軸方向は前後方向であり、Y軸方向は左右方向である。
【0097】
判定部27は、加速度データに含まれるX軸方向の加速度の大きさ、Y軸方向の加速度の大きさ、および、Z軸方向の加速度の大きさの全てが所定値未満であるときに、ユーザ50が静止していると判定する。一方、判定部27は、X軸方向の加速度の大きさ、Y軸方向の加速度の大きさ、および、Z軸方向の加速度の大きさの少なくとも1つが所定値以上であるときには、ユーザ50が静止していないと判定する。なお、
図16に示されるような加速度データの波形によれば、立っている状態のユーザ50が座って静止したか、座っている状態のユーザ50が立って静止したかを区別することも可能である。
【0098】
また、判定部27は、加速度センサ61以外のセンサが計測した加速度データに基づいて、ユーザ50が静止しているか否かを判定してもよい。加速度センサ61以外のセンサとは、例えば、ジャイロセンサ等でもよい。また、判定部27は、ユーザ50を撮影した画像を解析することで、ユーザ50が静止しているか否かを判定してもよい。画像解析にはAI(Artificial Intelligence)技術が使用されてもよく、より具体的には、機械学習またはディープラーニング等が用いられてもよい。
【0099】
次に、第一推定部22は、判定部27が、ユーザ50が静止していると判定した時間区間の、ユーザ50の脳波に基づいて、ユーザ50の覚醒度を推定し、かつ、第二推定部23は、判定部27が、ユーザ50が静止していると判定した時間区間の、ユーザ50の脈波に基づいて、ユーザ50のリラックス度を推定する(ステップS701)。つまり、第一推定部22は、判定部27が、ユーザ50が静止していないと判定した時間区間の、ユーザ50の脳波を、推定に利用しない。また、第二推定部23は、判定部27が、ユーザ50が静止していないと判定した時間区間の、ユーザ50の脈波を推定に利用しない。これにより、推定精度が高められる。
【0100】
なお、刺激出力システム10が、ユーザ50をリフレッシュさせる目的で、楽曲等の音の刺激を出力する場合、ステップS701において、第一推定部22は、判定部27が、ユーザ50が静止していると判定した時間区間の、ユーザ50の脳波に基づいて、ユーザ50の覚醒度を推定することを行えばよい。
【0101】
なお、動作例1から動作例6では、刺激として楽曲が出力される例を示したが、出力される刺激はこれに限らない。出力される刺激は、映像、光、または、気流、香り等でもよい。
【0102】
[変形例1]
刺激出力システム10は、クライアントサーバシステムとして実現されてもよい。例えば、上記実施の形態において、端末40で行われた処理の一部または全部がサーバ装置70によって行われてもよい。
【0103】
より具体的には、サーバ装置70は、上記実施の形態における判定部27、第一推定部22、第二推定部23、評価部24および整合性評価部26に相当する構成要素を備え、端末40は、判定部27、第一推定部22、第二推定部23、評価部24および整合性評価部26を備えなくてもよい。なお、このような構成要素の振り分けは一例であり、上記実施の形態で説明された構成要素(認証部31を含む)は、端末40およびサーバ装置70に同様に振り分けられてもよい。
【0104】
[変形例2]
刺激出力システム10は、ユーザ50が仮眠を取っているときにデータを取得し、ユーザ50に関するデータを時系列で比較、または、複数のユーザ間でデータを比較した結果を用いて、出力する刺激を決定してもよい。例えば、刺激出力システム10は、ユーザ50が所定時間仮眠を取る際に、刺激を与える。ここで、刺激とは、例えば、光である。また、刺激は音であってもよい。また、所定時間とは、20分または90分であるが、この時間に限定されず、いかなる時間でもよい。刺激出力システム10は、ユーザ50が所定時間仮眠を取る間、ユーザ50の脳波および脈波を取得する。そして、刺激出力システム10は、取得したユーザ50の脳波および脈波を、サーバ装置70の備える記憶部71に記憶する。
【0105】
具体的には、刺激出力システム10は、ユーザ50の仮眠時間を20分とする。例えば、ユーザ50は、リクライニングチェア等の椅子に座り、一人で仮眠が取れるような空間で、20分間の仮眠を取る。刺激出力システム10がユーザ50に仮眠を取らせる目的は、ユーザ50の覚醒度の向上またはリラックス度の向上である。
【0106】
刺激出力システム10は、仮眠時間のうち最初の18分は、刺激を出力しない。例えば、ユーザ50は、仮眠時間の最初の18分間は、光刺激の無い暗い環境で仮眠を取る。次に、刺激出力システム10は、20分の仮眠時間の最後の2分間に、一般的なオフィスでの光に相当する光の刺激を出力する。一般的なオフィスでの光に相当する光としては、白色灯の発する光等が想定される。ここで、一般的なオフィスでの光に相当する光の刺激を、光刺激パターンAと呼ぶ。刺激出力システム10は、ユーザ50に対して光の刺激を出力している間、ユーザ50の脳波および脈波を取得する。そして、刺激出力システム10は、取得したユーザ50の脳波および脈波を、サーバ装置70の備える記憶部71に記憶する。
【0107】
次に、刺激出力システム10が取得したユーザ50の脳波および脈波の分析について説明する。まず、脳波から覚醒度を推定する方法について説明する。一般的に、脳波は、人が覚醒して眼を開けている状態にあると、β波が優位であり、仮眠を始めた時期に相当するような、人が安静にして眼を閉じている状態にあると、α波が優位になる。そして、脳波は、人が、安静にして眼を閉じている状態よりさらに覚醒水準が下がった状態にあると、θ波が優位になる。θ波は、α波より周波数帯域が低い。また、脳波は、人が、脳波においてθ波が優位になっている状態より、さらに覚醒水準が下がった状態にあると、δ波が優位になる。δ波は、θ波より周波数帯域が低い。
【0108】
刺激出力システム10では、以上の事実に基づき、ユーザ50の仮眠時の脳波に基づいた覚醒度の指標の一つとして、θ/β値が採用される。θ/β値は、θ波とβ波の周波数成分のパワー比率を示す値である。刺激出力システム10は、ユーザ50が仮眠を取っている所定時間の間に、ユーザ50の脳波に基づいて、θ/β値を、覚醒度として、時系列に沿ってプロットする。当該プロットは、分析部31が行うが、刺激出力システム10が備える他の機能が行ってもよい。
【0109】
次に、脈波からリラックス度を推定する方法について説明する。リラックス度は、副交感神経が優位になっているか否かを示す指標を用いて推定される。脈波からは、既に説明したように、脈波データの時間に関する二階微分波形(加速度脈波の波形)を算出する。ここで、刺激出力システム10は、RMSSD値を算出することで、リラックス度を推定する。ここで、刺激出力システム10は、RMSSD値の代わりに、RMSSD/RR間隔の平均値を算出して、リラックス度を推定してもよい。
【0110】
RMSSD/RR間隔の平均値とは、RMSSD値を、RMSSD値を算出する時間間隔(例えば、10秒間)の間にあるRR間隔の平均値で割った値である。RMSSD/RR間隔という比を算出して、リラックス度の推定に用いることで、生理量の正味の変化をRR間隔で規格化したことによる効果をリラックス度の推定に反映させることができる。
【0111】
なお、刺激出力システム10は、脈拍数の減少度を計測してもよい。
【0112】
以上のような、脳波を用いた覚醒度の推定と、脈波を用いたリラックス度の推定を、複数のユーザに対して実施する。刺激出力システム10は、複数のユーザのそれぞれにIDを与える。例えば、刺激出力システム10は、ユーザ50のIDを、「001」とする。例えば、複数のユーザのそれぞれを、IDを用いて、ユーザ001等と表現してもよい。
【0113】
続いて、刺激出力システム10が、複数のユーザの覚醒度およびリラックス度を比較する場合について説明する。
【0114】
刺激出力システム10が、複数のユーザに対して、複数のユーザの仮眠時にそれぞれの脳波および脈波を取得して分析を行い、それぞれのユーザの覚醒度およびリラックス度を推定して、推定した結果をプロットする。推定した結果をプロットした図は、
図17に示される。
図17は、複数のユーザの計測結果を示す図である。
図17では、複数のユーザの推定結果をプロットした図が、ユーザの睡眠の状態毎に分類して示されている。
【0115】
例えば、
図17の線101および線102は、ユーザ001が主観評価で眠れたと評価した時の、ユーザ001の覚醒度とリラックス度との変化を表している。線101および線102のそれぞれは、別の日時に計測された結果を表している。同様に、線103および線104は、ユーザ001が主観評価で眠れなかったと評価した時の、ユーザ001の覚醒度とリラックス度との変化を表している。線103および線104のそれぞれは、別の日時に計測された結果を表している。
【0116】
刺激出力システム10が、同様の刺激を出力したときの他のユーザの覚醒度とリラックス度との変化が、線105から線114に示されている。例えば、線105から線108が示すユーザ002の覚醒度とリラックス度との変化は、線101から線104が示すユーザ001の覚醒度とリラックス度との変化と類似している。ところが、線109から線112が示すユーザ003の覚醒度とリラックス度との変化は、線101から線104が示すユーザ001の覚醒度とリラックス度との変化と類似していない。線109から線112が示すユーザ003の覚醒度とリラックス度とは、緊張側に偏っており、ユーザ003は緊張気味であると評価される。
【0117】
また、線113から線114は、ユーザ004が主観評価で眠れなかったと評価した時の、ユーザ004の覚醒度とリラックス度との変化を表している。線113または線114は睡眠状態を表す眠気を示す象限に存在せず、ユーザ001からユーザ003に対して出力されたものと同じ刺激では、ユーザ004が睡眠状態に至らなかったことを示している。
【0118】
このように、
図17に示される例では、2日間に渡って、同一の刺激パターンを与えられたときのユーザ001からユーザ004の覚醒度とリラックス度との変化を比較している。
【0119】
なお、刺激出力システム10は、複数のユーザの覚醒度とリラックス度との変化をプロットせずに、複数のユーザの覚醒度とリラックス度とに関する数値分析を行ってもよい。例えば、刺激出力システム10は、覚醒度に関する指標に対して、数値分析を行う。具体的には、刺激出力システム10は、数値分析として、仮眠開始時点から仮眠終了時点における、複数のユーザの同時刻のθ/β値で構成されるデータ群毎の相関係数を算出してもよい。また、刺激出力システム10は、仮眠開始時点から仮眠終了時点における、複数のユーザの同時刻のθ/β値で構成されるデータ群毎の差分を算出してもよい。ここで、刺激出力システム10は、複数のユーザから取得される脳波に基づいたデータを用いた統計的な数値分析であれば、いかなる数値分析を行ってもよい。
【0120】
また、刺激出力システム10は、リラックス度に関する指標に対しても、数値分析を行ってもよい。具体的には、刺激出力システム10は、数値分析として、仮眠開始時点から仮眠終了時点における、複数のユーザの同時刻のRMSSD値またはRMSSD/RR間隔の平均値で構成されるデータ群毎の相関係数を算出してもよい。刺激出力システム10は、当該相関係数を各ユーザ同士の覚醒度およびリラックス度の類似度を求めるのに用いる。また、刺激出力システム10は、仮眠開始時点から仮眠終了時点における、複数のユーザの同時刻のRMSSD値またはRMSSD/RR間隔の平均値で構成されるデータ群毎の差分を算出してもよい。ここで、刺激出力システム10は、複数のユーザから取得される脈波に基づいたデータを用いた統計的な数値分析であれば、いかなる数値分析を行ってもよい。
【0121】
また、刺激出力システム10は、ユーザ001からユーザ004毎に、各ユーザが主観評価で眠れたと評価した日時毎、または、各ユーザが主観評価で眠れなかったと評価した日時毎に、上述の数値分析を行って、各ユーザ間の覚醒度およびリラックス度の類似度を求めてもよい。
【0122】
例えば、刺激出力システム10は、ユーザ001とユーザ002とについて、ユーザ毎に、異なる時点のデータ間の相関係数等を算出し、当該相関係数を比較等することで、それぞれのユーザが、主観評価で眠れたと評価した日時の覚醒度およびリラックス度の類似度を求める。
【0123】
これにより、刺激出力システム10が複数のユーザに対して同一の刺激を出力したときに、脳波と脈波とにおいて、類似の反応を見せるユーザ毎に複数のユーザを群に分類するクラスタリングを、刺激出力システム10が行うことができる。
【0124】
ここで、覚醒度とリラックス度とを用いた評価とは別の評価方法について、説明する。具体的には、リラックス度の代わりに、仮眠を行うユーザへの訴求力がより高いと想定される疲労度を用いる方法について説明する。つまり、刺激出力システム10は、複数のユーザの覚醒度と疲労度とを算出し、
図18に示されるように、縦軸を覚醒度、横軸を疲労度として、プロットを行う。
図18は、複数のユーザの覚醒度および疲労度の計測結果を示す図である。
【0125】
ここで、疲労度は、脈波データのRR間隔に基づいて算出されるLF/HF値を用いて表される。刺激出力システム10は、LF/HF値が高いほど、疲労度を高く設定し、LF/HF値が低いほど、疲労度を低く設定する。
【0126】
刺激出力システムは、
図18に示されるような、覚醒度と疲労度との変化をプロットする。例えば、ユーザ001が仮眠を取る前は、線115および線116は、グラフの左下の象限を指し示している。グラフの左下の象限は、疲労と眠気がある状態を示す。その後、ユーザ001が仮眠を取りユーザ001の疲労と眠気とが解消されると、線115および線116は、グラフの右上の象限を指し示す。
【0127】
線118および線119は、ユーザ002が主観評価で眠れたと評価したときの、ユーザ002の覚醒度および疲労度を示している。ユーザ001と同様に、線118および線119は、グラフの左下の象限を指し示している。その後、ユーザ002が仮眠を取りユーザ002の疲労と眠気とが解消されると、線119および線120は、グラフの右上の象限を指し示す。
【0128】
反対に、ユーザ001およびユーザ002が主観評価で眠れなかったと評価したときの、ユーザ001およびユーザ002それぞれの覚醒度および疲労度の変化を示すのが、線117および線118、ならびに、線121および線122である。線117および線118、ならびに、線121および線122は、ほとんど常に、疲労と眠気がある状態を示すグラフの左下の象限を指し示している。
【0129】
次に、刺激出力システム10が、単独のユーザの覚醒度および疲労度のそれぞれを時系列で分析する場合について説明する。具体的には、ユーザ50が20分仮眠を取る場合について説明する。
【0130】
まず、刺激出力システム10は、ユーザ50が仮眠を取っている間のユーザ50の脳波を取得することで、ユーザ50が睡眠状態にはないが眠気を感じている状態、および、睡眠状態にある状態を判別することができる。上記の判別には、仮眠効率を示す指標として、上述のθ/β値が用いられる。さらに、刺激出力システム10は、ユーザ50の睡眠の深さについても、数段階で判別することができる。例えば、刺激出力システム10は、ユーザ50が睡眠状態にあるとき、ユーザ50の睡眠段階を睡眠ステージ1および睡眠ステージ2の2段階で判別してもよい。ここで、睡眠ステージ2は睡眠ステージ1よりも覚醒度が低いものとする。
【0131】
具体的には、刺激出力システム10は、θ/β値が1以下のときに、睡眠ステージ1と判別し、θ/β値が1を超えているときに、睡眠ステージ2と判別する。なお、刺激出力システム10が、睡眠ステージ1および睡眠ステージ2を判別する際に用いるθ/β値の値は1に限らず、ほかの値でもよい。また、刺激出力システム10は、睡眠ステージ1および睡眠ステージ2を判別する際にθ/β値の値を用いず、θ/β値から導かれる別の指標を用いてもよいし、各種の脳波を示す値から算出される別の指標を用いてもよい。20分の仮眠においては、一般に、睡眠ステージ2の時間が長ければ長いほど、仮眠効率が良いとされるため、刺激出力システム10は、20分の仮眠における睡眠効率を表す指標として、仮眠時間全体に占める睡眠ステージ2の時間の比率を用いる。そして、刺激出力システム10は、ユーザ50について、仮眠時間に占める睡眠ステージ2の時間の比率を、仮眠を取った日時毎に、時系列に沿ってプロットする。
図19は、ユーザ50における脳波から算出された仮眠中の睡眠効率の時系列での変化を示すグラフである。
【0132】
次に、刺激出力システム10は、ユーザ50が仮眠を取っている間のユーザ50の脈波を取得することで、ユーザ50の疲労度を判定することができる。刺激出力システム10は、ユーザ50の脈波データを用いて、ユーザ50の疲労が回復したか否かを判定する。具体的には、刺激出力システム10は、適切な時間間隔毎に、LF/HF値を算出して、プロットして、可視化する。ここで、適切な時間間隔とは、2分などの数分単位、または、数秒単位でもよい。また、刺激出力システム10は、ユーザ50の仮眠前と仮眠後で、ユーザ50のLF/HF値が低下した割合、または、差分を算出する。そして、刺激出力システム10は、上記の算出を行って、仮眠後のユーザ50のLF/HF値が、仮眠前のユーザ50のLF/HF値より低下していれば、ユーザ50の疲労度が低下したと判定する。
【0133】
図20は、ユーザ50における脈波から算出された仮眠中の疲労回復度の時系列での変化を示すグラフである。ここでは、刺激出力システム10は、ΔLF/HF値を、疲労回復度を示す指標として用いている。ΔLF/HF値は以下の式で表される。
【0134】
(式)ΔLF/HF=仮眠前のLF/HF値―仮眠後のLF/HF値
図20では、刺激出力システム10が、ΔLF/HFを、毎日算出してプロットしたグラフが示される。
【0135】
以上、ある特定の光刺激を複数のユーザに出力した場合の複数のユーザ間での相互比較、および、単独のユーザ50に対して、ある特定の光刺激を繰り返し出力した場合に得られるユーザ50の脳波および脈波の分析について説明した。
【0136】
次に、刺激出力システム10が行う、ユーザ50に対する適切な刺激の探索について説明する。刺激出力システム10は、ユーザ50の脳波および脈波から算出される、上述の各種指標を用いて、ユーザ50にとって適切な刺激を探索する。具体的には、刺激出力システム10は、
図19で説明された仮眠効率および
図20で説明された疲労回復度等の各種評価値に基づいて、影響度を総合的に算出する。影響度は、ユーザ50に対して、ある刺激パターンが与えた効果の大きさを示す指標である。例えば、刺激出力システム10は、仮眠効率および疲労回復度を正規化して、和を算出することで影響度を算出してもよい。なお、影響度は、仮眠効率および疲労回復度を用いて算出されるのであれば、いかなる算出方法で算出されてもよい。影響度は、仮眠効率および疲労回復度が大きいほど、大きな値になるように設定されてもよいし、反対に、仮眠効率および疲労回復度が大きいほど、小さな値になるように設定されてもよい。刺激出力システム10は、複数の刺激パターンのそれぞれについて、当該それぞれの刺激パターンをユーザ50に対して出力したときの、影響度を算出する。
【0137】
そして、刺激出力システム10は、仮眠効率および疲労回復度が大きいほど、大きな値になるように設定されている場合は、影響度が所定値以上である刺激パターンをユーザ50に対して出力する。なお、影響度が、仮眠効率および疲労回復度が大きいほど、小さな値になるように設定されている場合は、刺激出力システム10は、影響度が所定値以下である刺激パターンをユーザ50に対して出力する。
【0138】
以下、仮眠効率および疲労回復度が大きいほど、大きな値になるように設定されている場合について、説明する。刺激出力システム10は、刺激パターンをユーザ50に対して出力した際に、当該刺激パターンの影響度が所定値以下である場合、出力する刺激パターンを変更する。変更に際して、刺激出力システム10は、ユーザ50の仮眠効率または疲労回復度を参照する。なお、刺激出力システム10は、当該刺激を複数のユーザに出力した場合の複数のユーザ間での相互比較で用いられたデータを参照してもよい。
【0139】
そして、参照した仮眠効率または疲労回復度の値に応じて、刺激出力システム10は、光刺激の色温度または照度等を変更する。例えば、刺激出力システム10は、参照した疲労回復度が閾値よりも低い場合、仮眠開始直後は、色温度および照度が低い照明を短時間出力し、仮眠終了直後には、仮眠開始直後よりも色温度および照度が高い照明を出力する刺激パターンに変更する。
【0140】
そして、刺激出力システム10は、変更した刺激パターンをユーザ50に対して出力したときの、ユーザ50の脳波および脈波を取得し、当該脳波または当該脈波から仮眠効率または疲労回復度を算出する。刺激出力システム10は、算出した仮眠効率または疲労回復度に基づいて、影響度を算出し、当該影響度が所定値以上であるかを判定する。刺激出力システム10は、当該影響度が所定値以上であった場合、その刺激パターンの出力を継続し、当該影響度が所定値以下であった場合、再び刺激パターンを変更して、上記の処理を行う。刺激パターンの変更方法は、たとえば、疲労回復度が低い場合に、照明の色温度または照度を低くするような変更方法でもよいし、照明の点灯時間を短くするような変更方法でもよい。
【0141】
なお、仮眠効率および疲労回復度が大きいほど、小さな値になるように設定されている場合については、刺激出力システム10が行う判定が、影響度が所定値以下であるか否かに変更される。
【0142】
このように、刺激出力システム10は、ユーザ50への刺激パターンの出力、ユーザ50の脳波および脈波の取得と、それらに基づいて算出される各種指標の分析および評価、評価に基づいた刺激パターンの変更を繰り返し、ユーザ50にとって適切な刺激パターンを探索する。なお、
図17から
図20を用いて説明された刺激出力システム10の処理は、ユーザ50が20分または90分の仮眠を取る際に適用されるのに限らない。
図17から
図20を用いて説明された刺激出力システム10の処理は、ユーザ50がオフィス等での勤務中に、疲労感じた際にリラックスさせるために、刺激出力システム10が光、音または香り等の刺激パターンを出力する際にも適用可能である。
【0143】
[変形例2]
ところで、脈波計測部63または脈波計によって計測される脈波の波形は、人によって異なる。そこで、脈波の波形は、個人認証に用いられてもよい。端末40の認証部31は、例えば、脈波計測部63が計測した脈波の波形と、記憶部64にあらかじめ記憶(登録)された基準波形(つまり、端末40の所有者の脈波の波形)とを照合することにより、ウェアラブルデバイス60のユーザ50が端末40の所有者と一致するか否かの認証処理を行うことができる。このような認証処理は、例えば、端末40のロック画面の解除に用いられる。また、変形例1のように刺激出力システム10による刺激出力サービスがサーバ装置70を介して提供される場合、上記認証処理は、ログイン認証に用いられてもよい。
【0144】
[変形例3]
ウェアラブルデバイス60はイヤーフック型に限定されない。
図21は、ウェアラブルデバイス60の変形例を示す図である。
図21に示されるウェアラブルデバイス60aは、メガネ型(言い換えれば、アイウェア型)であり、
図21に示されるウェアラブルデバイス60bは、ヘッドセット型(言い換えれば、ヘッドフォン型)である。
図21に示されるウェアラブルデバイス60cは、帽子型(
図21ではキャップ型であるが、ニット帽型なども含む)であり、
図21に示されるウェアラブルデバイス60dは、ネックバンド型である。
【0145】
このように、刺激出力システム10に用いられるウェアラブルデバイス60は、例えば、ユーザ50の頭部または首に装着される。
【0146】
[効果等]
刺激出力システム10は、ユーザ50の脳波および脈波を取得する取得部21と、取得されたユーザ50の脳波に基づいて、ユーザ50の覚醒度を推定する第一推定部22と、取得されたユーザ50の脈波に基づいて、ユーザ50のリラックス度を推定する第二推定部23と、ユーザ50をリラックスまたはリフレッシュさせるための刺激をユーザ50に出力する刺激出力部28と、刺激の出力が行われた後に、ユーザ50の覚醒度の変化と、ユーザ50のリラックス度の変化とを評価し、評価の結果を、刺激の優先度に反映する評価部24と、複数の刺激の優先度に基づいて、ユーザ50に複数の刺激を選択肢として出力する選択肢出力部29と、を備える。
【0147】
これにより、刺激出力システム10は、センサによる生体信号の測定結果を用いて、ユーザ50の覚醒度またはリラックス度を推定し、推定した結果を優先度に反映させた刺激の選択肢をユーザ50に出力することができる。よって、刺激出力システム10は、ユーザ50を効果的にリラックスまたはリフレッシュしている状態に導くことができる。
【0148】
また、例えば、刺激出力システム10は、評価の結果を評価結果データとして、ユーザ毎またはユーザ50への刺激提示時毎にデータベース化して記憶する記憶部71をさらに備える。
【0149】
これにより、刺激出力システム10は、ユーザ50に対して出力した刺激の評価の結果を保持し、より効果的な刺激の出力につなげることができる。
【0150】
また、例えば、刺激出力システム10は、記憶部71に格納された評価結果データに基づいて覚醒度およびリラックス度のそれぞれを、他のユーザおよびユーザ50の間で比較したユーザ間比較結果と、ユーザ50の覚醒度またはリラックス度のそれぞれについて、異なる時点の値同士を比較した結果である時系列比較結果とを、優先度に反映する分析部31をさらに備える。
【0151】
これにより、刺激出力システム10は、ユーザ50に対する出力した刺激のユーザ50に対する効果を、出力する刺激の優先度に反映することで、より効果的な刺激の出力につなげることができる。
【0152】
また、例えば、刺激出力システム10において、評価部24は、刺激の出力が行われた後のユーザ50の状態と、刺激の出力が行われる前のユーザ50の状態とを比べて、ユーザ50の覚醒度が低下し、かつ、ユーザ50のリラックス度が向上した場合に、評価の結果を高くしてもよい。
【0153】
これにより、刺激出力システム10は、適切な刺激をユーザ50に提示することができる。
【0154】
また、例えば、評価部24は、刺激の出力が行われた後のユーザ50の状態と、刺激の出力が行われる前のユーザ50の状態とを比べて、ユーザ50の覚醒度が向上した場合に、評価の結果を高くしてもよい。
【0155】
これにより、刺激出力システム10は、適切な刺激をユーザ50に提示することができる。
【0156】
また、例えば、刺激出力システム10において、選択肢出力部29は、優先度の高い刺激を示す選択肢ほど、ユーザ50から選ばれやすくなる態様で表示してもよい。
【0157】
これにより、刺激出力システム10は、センサによる測定結果に基づいて決定された優先度の高い刺激を、ユーザ50に対して出力しやすくなる。よって、刺激出力システム10は、ユーザ50に、優先度の高い刺激を選ばせることができる可能性が高い。
【0158】
また、例えば、刺激出力システム10において、選択肢出力部29は、優先度の高い刺激を示す選択肢ほど、選択肢が表示されている部分の中で上に表示し、選択肢が表示されている部分の中の他の部分と違う色で表示し、または、選択肢が表示されている部分の中の他の部分と違う点滅状態で表示してもよい。
【0159】
これにより、刺激出力システム10は、センサによる測定結果に基づいて決定された優先度の高い刺激を、ユーザ50に対して、視認しやすい態様で出力することができる。よって、刺激出力システム10は、ユーザ50に、優先度の高い刺激を選ばせることができる可能性が高い。
【0160】
また、例えば、刺激出力システム10において、刺激出力部28は、ユーザ50のリラックス度を向上させるための刺激を出力中に、ユーザ50の覚醒度の低下が起こらず、かつ、ユーザ50のリラックス度の向上も起こらないとき、刺激の出力を停止し、または、ユーザ50のリラックス度を向上させるための別の刺激を出力してもよい。
【0161】
これにより、刺激出力システム10は、ユーザ50を短時間でリラックスな状態に導くことができる。
【0162】
また、例えば、刺激出力システム10において、刺激出力部28は、ユーザ50の覚醒度を向上させるための刺激を出力中に、ユーザ50の覚醒度の向上が見られないとき、刺激の出力を停止し、ユーザ50の覚醒度を向上させるための別の刺激を出力してもよい。
【0163】
これにより、刺激出力システム10は、ユーザ50を短時間でリフレッシュな状態に導くことができる。
【0164】
また、例えば、刺激出力システム10は、推定された前記ユーザの前記覚醒度、および、推定された前記ユーザの前記リラックス度,もしくは、記憶部71に記憶されている評価結果データを表示する表示制御部30を、さらに備える。
【0165】
また、例えば、刺激出力システム10は、ユーザ50の覚醒度またはリラックス度が変化したか否かを示す主観評価結果を入手する主観評価入手部25と、主観評価と、ユーザ50の脳波とユーザ50の脈波から客観的に評価された、ユーザ50の覚醒度またはリラックス度が変化したか否かを示す客観評価結果との整合性を評価する整合性評価部26とを、さらに備え、整合性に応じて、優先度を変更してもよい。
【0166】
これにより、刺激出力システム10は、センサによる測定結果だけでなく、ユーザ50の主観評価の結果も、ユーザ50に出力される刺激の優先度に反映することができる。
【0167】
また、例えば、刺激出力システム10において、分析部31は、主観評価毎、複数のユーザ毎、ならびに、覚醒度またはリラックス度のそれぞれが取得された時点毎に、覚醒度およびリラックス度を分類し、分類された覚醒度およびリラックス度の変化が類似する複数のユーザをカテゴリー化し、カテゴリー化された結果を選択肢出力部29に出力する。
【0168】
これにより、刺激出力システム10は、複数のユーザに対する刺激の効果を可視化することで、より効果的な刺激の出力につなげることができる。
【0169】
また、例えば、刺激出力システム10において、分析部31は、ユーザ50の覚醒度またはユーザ50の覚醒度の過去の時点のユーザ50の覚醒度からの変化を示す値を、時系列でプロットした結果を選択肢出力部29に出力する。
【0170】
これにより、刺激出力システム10は、ユーザ50に対する刺激の効果を時系列で可視化することで、より効果的な刺激の出力につなげることができる。
【0171】
また、例えば、刺激出力システム10において、分析部31は、刺激によるリラックス度または刺激によるリラックス度の過去の時点のユーザ50のリラックス度からの変化を示す値を、時系列でプロットした結果を選択肢出力部29に出力する。
【0172】
これにより、刺激出力システム10は、ユーザ50に対する刺激の効果を時系列で可視化することで、より効果的な刺激の出力につなげることができる。
【0173】
また、例えば、刺激出力システム10において、分析部31は、LF/HF比を含む値を用いて表される疲労回復度を複数のユーザ毎、または、覚醒度またはリラックス度が取得された時点毎にプロットした結果を選択肢出力部29に出力する。
【0174】
これにより、刺激出力システム10は、ユーザ50または複数のユーザの疲労回復度を可視化することで、より効果的な刺激の出力につなげることができる。
【0175】
また、例えば、刺激出力システム10において、刺激は、音、映像、光、気流、または、香りである。
【0176】
これにより、刺激出力システム10は、多様な刺激をユーザ50に出力することができる。よって、刺激出力システム10は、より効果的に、ユーザ50をリラックスまたはリフレッシュさせることができる。
【0177】
また、例えば、刺激出力システム10は、取得部21は、ユーザ50の脳波およびユーザ50の脈波を、ウェアラブルデバイス60によって取得してもよい。
【0178】
これにより、刺激出力システム10は、ウェアラブルデバイス60による生体信号の測定結果を用いて、ユーザ50の覚醒度またはリラックス度を推定し、推定した結果を優先度に反映させた刺激の選択肢をユーザ50に出力することができる。よって、刺激出力システム10は、ユーザ50にとって簡便な方法で、ユーザ50をリラックスまたはリフレッシュさせることができる。
【0179】
また、例えば、刺激出力システム10は、ウェアラブルデバイス60が有する加速度センサ61によって出力される加速度データに基づいて、ウェアラブルデバイス60を装着したユーザ50が静止しているか否かを判定する判定部27を、さらに備え、第一推定部22は、判定部27によりユーザ50が静止していると判定された時間区間におけるユーザ50の脳波に基づいて、ユーザ50の覚醒度を推定し、第二推定部23は、判定部27によりユーザ50が静止していると判定された時間区間におけるユーザ50の脈波に基づいて、ユーザ50のリラックス度を推定してもよい。
【0180】
これにより、刺激出力システム10は、ユーザ50の動きを検知することができる。また、刺激出力システム10は、ユーザ50の状態に応じて、ユーザ50の覚醒度またはリラックス度を算出するか否かを決定することができる。よって、刺激出力システム10は、ユーザ50が静止していると判定される期間に計測されたノイズが少ないと考えられる脳波および脈波を使用して中枢神経と自律神経の状態が推定されるため、より適切なユーザ50の状態において、ユーザ50の覚醒度またはリラックス度を算出することができる。すなわち、刺激出力システム10は、ユーザ50の覚醒度またはリラックス度の精度を高めることができる。
【0181】
また、例えば、本開示の一態様に係る刺激出力方法は、ユーザ50の脳波および脈波を取得する取得ステップと、取得されたユーザ50の脳波に基づいて、ユーザ50の覚醒度を推定する第一推定ステップと、取得されたユーザ50の脈波に基づいて、ユーザ50のリラックス度を推定する第二推定ステップと、ユーザ50をリラックスまたはリフレッシュさせるための刺激をユーザ50に出力する刺激出力ステップと、刺激の出力が行われた後に、ユーザ50の覚醒度の変化と、ユーザ50のリラックス度の変化とを評価し、評価の結果を、刺激の優先度に反映する評価ステップと、複数の刺激の優先度に基づいて、ユーザ50に複数の刺激を選択肢として出力する選択肢出力ステップと、を含む。
【0182】
これにより、本開示の一態様に係る刺激出力方法は、上記刺激出力システムと同様の効果を奏する。
【0183】
また、例えば、本開示の一態様に係るプログラムは、上述の刺激出力方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0184】
これにより、本開示の一態様に係るプログラムは、上記刺激出力システムと同様の効果を奏する。
【0185】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0186】
例えば、上記実施の形態では、ユーザ50の状態が二次元座標によって表示されたが、ユーザ50の状態の表示態様は特に限定されない。ユーザ50の状態は、例えば、数値(つまり、文字)で表示されてもよい。
【0187】
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。また、複数の処理の順序が変更されてもよいし、複数の処理が並行して実行されてもよい。
【0188】
また、上記実施の形態において、各構成要素は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0189】
また、各構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。各構成要素は、回路(または集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0190】
また、本発明の全般的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0191】
例えば、本発明は、上記実施の形態の端末として実現されてもよいし、端末に相当するシステムとして実現されてもよい。また、本発明は、刺激出力方法として実現されてもよいし、刺激出力方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよいし、このようなプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。なお、プログラムには、汎用の携帯端末を上記実施の形態の携帯端末として動作させるためのアプリケーションプログラムが含まれる。
【0192】
また、上記実施の形態では、刺激出力システム10は、複数の装置によって実現されたが、単一の装置として実現されてもよい。刺激出力システム10が複数の装置によって実現される場合、上記実施の形態で説明された刺激出力システム10が備える構成要素は、複数の装置にどのように振り分けられてもよい。
【0193】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素および機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0194】
10 刺激出力システム
21 取得部
22 第一推定部
23 第二推定部
24 評価部
25 主観評価入手部
26 整合性評価部
27 判定部
28 刺激出力部
29 選択肢出力部
30 表示制御部
31 分析部
50 ユーザ
60、60a、60b、60c、60d ウェアラブルデバイス
61 加速度センサ
62 脳波計測部
63 脈波計測部