IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-成形体及び成形体の製造方法 図1
  • 特許-成形体及び成形体の製造方法 図2
  • 特許-成形体及び成形体の製造方法 図3
  • 特許-成形体及び成形体の製造方法 図4
  • 特許-成形体及び成形体の製造方法 図5
  • 特許-成形体及び成形体の製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】成形体及び成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/16 20060101AFI20230915BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20230915BHJP
   E04F 15/00 20060101ALI20230915BHJP
   E04F 15/02 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
B29C59/16
B23K26/00 B
E04F15/00 F
E04F15/02 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022516944
(86)(22)【出願日】2021-04-06
(86)【国際出願番号】 JP2021014675
(87)【国際公開番号】W WO2021215243
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2020077353
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】村田 敦史
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-064754(JP,A)
【文献】国際公開第2013/191169(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/128092(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
B29C 59/16
E04F 15/00,15/02,15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に沿って、複数の凹部と複数の凸部とがそれぞれ交互に所定のピッチで平面状に配置されたマーキング面を表面の一部に有する成形体であって、
前記マーキング面は、当該マーキング面以外の領域に比べて光吸収率が高く、かつ、水接触角が120°以上180°未満の撥水面または水接触角が0°より大きく60°以下の親水面である
成形体。
【請求項2】
前記凹部の深さと前記凸部の幅との関係が、前記深さ/前記幅≦1である
請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記表面には、前記所定のピッチ以上の幅を有する溝が形成されており、
前記マーキング面は、前記溝の内部に形成されている
請求項1または2に記載の成形体。
【請求項4】
樹脂からなる
請求項1~3のいずれか一項に記載の成形体。
【請求項5】
熱硬化性樹脂を含む
請求項4に記載の成形体。
【請求項6】
フィラー、ガラス繊維、カーボン繊維、着色剤の少なくとも1つを含む
請求項4または5に記載の成形体。
【請求項7】
前記マーキング面は、レーザ加工によって形成されている
請求項1~5のいずれか一項に記載の成形体。
【請求項8】
基材の表面の一部に対して、所定方向に沿って複数の凹部と複数の凸部とがそれぞれ交互に所定のピッチで平面状に配置されるようにレーザ加工を施すことでマーキング面を形成し、
前記マーキング面は、当該マーキング面以外の領域に比べて光吸収率が高く、かつ、水接触角が120°以上180°未満の撥水面または水接触角が0°より大きく60°以下の親水面である、
成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体及び成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、成形体の一つである樹脂成形体においては、その表面の一部に他の部分との視覚的な違いがあるマーキング面が形成された樹脂成形体が知られている。このような樹脂成形体では、表面の一部にレーザ加工を施すことで、文字や図形を有するマーキング面が形成されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-283669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水にさらされる環境下に樹脂成形体が設置された場合、マーキング面が水に覆われて視認性が低下してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、水に濡れたとしても視認性が低下しにくい成形体などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る成形体によれば、所定方向に沿って、複数の凹部と複数の凸部とがそれぞれ交互に所定のピッチで平面状に配置されたマーキング面を表面の一部に有する成形体であって、マーキング面は、当該マーキング面以外の領域に比べて光吸収率が高く、かつ、水接触角が120°以上の撥水面または水接触角が60°以下の親水面である。
【0007】
また、本発明の一態様に係る成形体の製造方法は、基材の表面の一部に対して、所定方向に沿って複数の凹部と複数の凸部とがそれぞれ交互に所定のピッチで平面状に配置されるようにレーザ加工を施すことでマーキング面を形成し、前記マーキング面は、当該マーキング面以外の領域に比べて光吸収率が高く、かつ、水接触角が120°以上の撥水面または水接触角が60°以下の親水面である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水に濡れたとしても視認性が低下しにくい成形体などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態1に係る樹脂成形体が用いられた浴室を示す斜視図である。
図2図2は、実施の形態1に係る床の一部を示す説明図である。
図3図3は、実施の形態1に係るマーキング面を拡大して示す断面図である。
図4図4は、実施の形態2に係るマーキング面を拡大して示す断面図である。
図5図5は、実施の形態3に係る凹凸構造を示す平面図である。
図6図6は、実施の形態4に係る樹脂成形体が用いられた看板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本発明の実施の形態に係る樹脂成形体について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、工程、工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0012】
また、本明細書において、平行又は直交などの要素間の関係性を示す用語及び正方形又は長方形などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0013】
(実施の形態1)
[成形体]
まず、実施の形態1に係る成形体である樹脂成形体1の適用例について、図1を用いて説明する。図1は、実施の形態1に係る樹脂成形体1が用いられた浴室100を示す斜視図である。
【0014】
図1に示すように、浴室100は、排水口102を有する床101と、壁103と、浴槽104とを有している。床101、壁103及び浴槽104の少なくとも一つが樹脂成形体1で形成されていればよいが、本実施の形態では、床101が樹脂成形体1で形成されている場合を例示して説明する。
【0015】
図2は、実施の形態1に係る床101の一部を示す説明図である。具体的には、図2の(a)は、床101の表面を示す平面図である。図2の(b)は、床101の断面図である。図2の(c)は、床101の背面を示す平面図である。床101の表面及び背面は、それぞれ基材である樹脂成形体1の表面が全体的に露出している。つまり、樹脂成形体1の表面には、コーティング層等が積層されていない。
【0016】
図2の(a)及び(b)に示すように、床101の表面は、溝状の目地10と、目地10によって区画された複数の面状部20とを備えている。
【0017】
目地10は、床101の表面に、格子状に設けられた溝である。目地10は、排水用の溝である。目地10は、例えば、通し目地(「いも目地」とも言う)状の溝である。目地10をなす各溝の幅Wは、ミリメートルオーダーであり、それぞれ均等である。
【0018】
複数の面状部20は、それぞれ平面視正方形状に形成されており、マトリクス状に配置されている。複数の面状部20のうち、少なくとも一つの面状部20には、その表面にラベル21が設けられている。ラベル21には種々の情報(メーカ名、ブランド名、注意書き等)が記載されている。
【0019】
目地10及び各面状部20の表面には、微細な凹凸構造30が形成されている。図2の(a)では、目地10の表面と、面状部20の表面とのそれぞれの凹凸構造30を拡大して示している。本実施の形態では、目地10の表面の凹凸構造30と、面状部20の表面の凹凸構造30とが同じ構造である場合を例示するが、異なっていてもよい。なお、ここでは、目地10の表面とは、目地10をなす溝の底面のことである。つまり、溝の側面(あるいは面状部20の側面とも言える)にはマーキング面39は形成されていない。なお、溝の断面形状が、上方が広がる台形状である場合には、溝の側面に対してもマーキング面39を形成することが可能である。
【0020】
凹凸構造30は、平面視においてマトリクス状に配置された複数の凹部31を有している。凹部31は平面視において略正方形状である。所定方向において複数の凹部31の間の部分が凸部32をなす。凸部32は、全体的に見ると格子状であり連続しているために一つの凸部32と言えるが、所定方向のみで見ると各凹部31に分断されるために複数の凸部32と言える。つまり、縦方向においても、横方向においても、複数の凹部31と複数の凸部32とが所定のピッチで交互に配列されている。このような微細な凹凸構造30を有する面をマーキング面39と称す。
【0021】
図2の(c)に示すように、床101の背面は、マーキング面39を有さない全体として平坦な面となっている。つまり、床101の表面には、マーキング面39が目地10及び各面状部20の表面に形成されているために、床101の背面よりも光吸収率が高くなっている。
【0022】
以下、具体的にマーキング面39について詳細に説明する。図3は、実施の形態1に係るマーキング面39を拡大して示す断面図である。具体的には、図3は、図2の(a)におけるIII-III線を含む切断面を見た断面図である。
【0023】
図3に示すように、所定方向における凸部32の幅w2と、凹部31の幅w1との合計が所定のピッチ(p=w1+w2)である。所定のピッチpと、幅w1、w2とを一定の関係を満たすように設定しておくことで、マーキング面39を撥水面とすることができる。具体的には、マーキング面39に対する水接触角を120°以上とすることができる。
【0024】
例えば、幅w2/幅w1<0.5とし、所定のピッチpを200nm以上300μm以下とすれば、マーキング面39に対する水接触角を120°以上とすることが可能である。なお、所定のピッチpは、200nm以上100μm以下であればよりよい。また、所定のピッチpは、200nm以上50μm以下であればさらによい。所定のピッチpは、目地10を各溝の幅Wよりも小さい。
【0025】
この関係性を満たすのであれば、マーキング面39内において凹凸構造30が不均一であってもよい。つまり、凹凸構造30に密な部分と疎な部分とを形成することで、マーキング面39内に光吸収性の異なる箇所を形成することができる。例えば、図2の(a)におけるラベル21では、他の部分よりも凹凸構造30を密にしている。これにより、光吸収性が高まるために、他の部分とに視認性の違いが発現される。つまり、塗料等を用いなくとも、種々の情報を表示することが可能である。
【0026】
さらに、凹部の深さdと、幅w2との関係は、深さd/幅w2≦1であれば、凸部32の強度を高めることができ、凸部32が損傷してしまうことを抑制することが可能である。
【0027】
次に、樹脂成形体1の製造方法について説明する。
【0028】
まず、平板状の基材を準備する。この基材は、レーザ加工が可能であれば、如何なる樹脂から形成されていてもよい。レーザ加工可能な樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エラストマー系(スチレン系、オレフィン系、ポリ塩化ビニル(PVC)系、ウレタン系、エステル系、アミド系)樹脂、ポリエステル系樹脂、エンジニアリングプラスチック、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリル樹脂、エチレンアクリレート樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルエラストマー樹脂、ポリアミドエラストマー樹脂、液晶ポリマー、ポリブチレンテレフタレート樹脂、アセチルセルロース、ポリ酢酸ビニル等も挙げられる。これらのうちの一種単独であってもよく、これらの樹脂が主成分とされる複数の樹脂の混合体であってもよい。
【0029】
また、基材には、熱硬化性樹脂が含有されていてもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、マレイミド樹脂、シアン酸エステル樹脂、アルキド樹脂、付加硬化型ポリイミド樹脂、熱硬化性アクリル樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂は、これらのうちの一種単独が含有されていてもよく、これらの樹脂が主成分とされる複数の樹脂の混合体が含有されていてもよい。これにより、樹脂成形体1の耐熱性を高めることができる。特に、基材は、フィラー、ガラス繊維、カーボン繊維、着色剤の少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0030】
次いで、基材に対してプレス加工を施すことで、表面に目地10及び複数の面状部20が形成される。
【0031】
次いで、基材の表面に対して、レーザ加工を施すことでマーキング面39を形成する。具体的には、基材の表面の一部(目地10及び複数の面状部20の表面)に対して、所定方向に沿って複数の凹部31と複数の凸部32とがそれぞれ交互に所定のピッチで平面状に配置されるようにレーザ加工を施すことでマーキング面を形成する。レーザを照射するレーザ照射装置からは、短パルスレーザが基材の表面に照射される。短パルスレーザのパルス幅はナノ秒以下が好ましい。
【0032】
レーザが照射されることでマーキング面39が形成されるが、この際、基材におけるマーキング面39以外の領域(背面または側面)と比べるとマーキング面39の光吸収率は高くなる。これは、以下の種々の要因があるものと考えられる。例えば、1)レーザが照射されることにより、基材の表面が炭化し、濃色化する。2)レーザが照射されることにより、基材の表面の分子密度が高まり、凝縮されて濃色化する。3)レーザが照射されることにより、基材の表面で金属酸化物の不純物準位が形成され濃色化する。現時点では、いずれの要因の信憑性が高いかは不明であるが、結果的にレーザ加工によってマーキング面39は、他の領域と比べて濃色化され、光吸収率が高くなっている。
【0033】
ここで、フィラー、ガラス繊維、カーボン繊維、着色剤の少なくとも1つの添加物が基材に含まれている場合には、レーザの照射によって添加物が化学反応するので、より光吸収率を高くすることが可能である。
【0034】
以上のことにより、水接触角が120°以上の撥水面であって、他の領域よりも光吸収率の高いマーキング面39を有する樹脂成形体1が製造される。なお、マーキング面39を分析することにより、当該マーキング面39がレーザ加工によって形成されていることを特定することは可能である。
【0035】
[効果など]
以上のように、樹脂成形体1のマーキング面39は、当該マーキング面39以外の領域に比べて光吸収率が高く、かつ、水接触角が120°以上の撥水面である。つまり、マーキング面39は、その凹凸構造30を起因として、前述した特性を発揮している。凹凸構造30は樹脂成形体1の表面自体に刻まれている。このため、水に濡れたとしても凹凸構造30自体は残存しやすい。例えば、凹凸構造を備えたシート体を樹脂成形体の表面に貼付した構造や、樹脂成形体の表面にフッ素層をコーティングした構造であっても一定の撥水性を発揮することは可能である。しかしながら、長期的に使用していると、シート体やフッ素層は樹脂成形体から剥がれるおそれがあるが、本実施の形態では樹脂成形体1の表面自体に刻まれた凹凸構造30でマーキング面39の撥水性を実現している。したがって、マーキング面39が有する特性を長期的に安定して維持することが可能である。
【0036】
特に、マーキング面39は、水接触角が120°以上の撥水面であるので、水をはじきやすい。これにより、水に濡れることでマーキング面39の視認性が低下することを抑制できる。
【0037】
以上のことにより、水に濡れたとしても視認性が低下しにくい樹脂成形体1を提供することができる。
【0038】
また、複数の凹部31と複数の凸部32とが所定のピッチpで交互に配列されているので、凹凸構造30によって反射光が干渉、分光することになり、マーキング面39の少なくとも一部に構造色が出現する。すなわち、マーキング面39の一部に反射スペクトルのピーク波長の角度依存性が発生する。これにより、マーキング面39では、見る角度によって色が変化することとなり、より視認性が高まることとなる。
【0039】
また、凹部31の深さDと凸部32の幅w2との関係が、深さd/幅w2≦1であるので、凸部32の強度を高めることができ、凸部32が損傷してしまうことを抑制することが可能である。
【0040】
また、樹脂成形体1の表面には、所定のピッチp以上の幅W1を有する溝(目地10をなす溝)が形成されており、マーキング面39は、この溝の内部に形成されている。これにより、溝の内部の視認性を高めることが可能である。また、溝内の撥水性も長期的に維持することが可能である。
【0041】
また、成形体が樹脂成形体1であるので、レーザ加工に対して好適である。
【0042】
また、樹脂成形体1は熱硬化性樹脂を含むので、樹脂成形体1の耐熱性を高めることが可能である。
【0043】
また、樹脂成形体1が、フィラー、ガラス繊維、カーボン繊維、着色剤の少なくとも1つを含んでいるので、樹脂成形体1の強度を高めることができる。これにより、凹凸構造30の形状をより長期的に維持することが可能である。また、これらの添加物は、レーザの照射によって化学反応するので、より光吸収率を高くすることが可能である。
【0044】
また、マーキング面39は、レーザ加工によって形成されているので、環境に影響を及ぼしやすい有機材料等を用いなくとも凹凸構造30を形成できる。
【0045】
(実施の形態2)
実施の形態1では、マーキング面39が撥水面である場合を例示した。この実施の形態2では、マーキング面39aが親水面である場合について説明する。図4は、実施の形態2に係るマーキング面39aを拡大して示す断面図である。具体的には、図4は、図3に対応する図である。なお、以降の説明において、実施の形態1と同等の部分については同等の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0046】
図4に示すように、マーキング面39aには、複数の凹部31と複数の凸部32とが所定のピッチで平面状に配列された微細な凹凸構造39が形成されている。所定方向における凸部32の幅w2と、凹部31の幅w1との合計が所定のピッチ(p=w1+w2)である。所定のピッチpと、幅w1、w2とを一定の関係を満たすように設定しておくことで、マーキング面39を親水面とすることができる。具体的には、マーキング面39に対する水接触角を60°以下とすることができる。
【0047】
例えば、幅w2/幅w1≧0.5とし、所定のピッチpを1μm以上、1000μm以下とすれば、マーキング面39に対する水接触角を60°以下とすることが可能である。この場合においても、所定のピッチpは、目地10を各溝の幅W1よりも小さい。
【0048】
さらに、凹部の深さdと、幅w2との関係は、深さd/幅w2≦1であれば、凸部32の強度を高めることができ、凸部32が損傷してしまうことを抑制することが可能である。
【0049】
このように、樹脂成形体1Aのマーキング面39aは、当該マーキング面39a以外の領域に比べて光吸収率が高く、かつ、水接触角が60°以下の親水面である。つまり、マーキング面39aは、その凹凸構造30を起因として、前述した特性を発揮している。凹凸構造30は樹脂成形体1Aの表面自体に刻まれている。このため、水に濡れたとしても凹凸構造30自体は残存しやすく、マーキング面39aが有する特性を長期的に安定して維持することが可能である。
【0050】
特に、マーキング面39aは、水接触角が60°以下の親水面であるので、水が水滴にならず、濡れ広がる。これにより、でマーキング面39Aの視認性が低下することを抑制できる。
【0051】
以上のことにより、水に濡れたとしても視認性が低下しにくい樹脂成形体1Aを提供することができる。
【0052】
(実施の形態3)
実施の形態1では、複数の凹部31がマトリクス状に配列された凹凸構造30を例示した。この実施の形態3では、複数の凹部31bが縞状に配列された凹凸構造30bを例示する。図5は、実施の形態3に係る凹凸構造30bを示す平面図である。具体的には、図5は、図2の(a)に対応する図である。図5に示すように、各凹部31bと、各凸部32bは、それぞれ直線状に形成されている。複数の凹部31bと、複数の凸部32bとは、複数の凹部31と複数の凸部32とが所定のピッチで交互に配列されている。この場合において、上記の条件を満たせば、マーキング面39bを撥水面としたり、親水面としたりすることが可能である。
【0053】
なお、凹部と凸部とは、所定のピッチで交互に配列されているのであれば、その平面視形状は如何様でもよい。また、マーキング面は、1つの面内において複数、設けられていてもよい。また、凹部と凸部のレイアウトが異なる複数のマーキング面を重ねて形成することも可能である。この場合、上述した1)~3)の要因がより顕著となるために、重なっていない領域と比べて光吸収率が高くなる。また、1つのマーキング面内において、凹部と凸部とのレイアウト、形状、大きさが異なっていてもよい。
【0054】
(実施の形態4)
また、実施の形態1では、樹脂成形体1が浴室100に適用された場合を例示した。しかしながら、樹脂成形体1は、水に濡れうる構造体であれば如何なるものに適用可能である。その他の適用対象としては、屋外に設置される照明器具(街灯、ネオンサイン等)の表面材、噴水やプールにおける照明機器、車両のヘッドランプ、デジタルサイネージ、街頭テレビ、標識、看板などが挙げられる。
【0055】
例えば、図6では、実施の形態4に係る樹脂成形体1が看板200Cに適用された場合を示している。図6に示すように、看板200Cの表面は、複数のマーキング面39cと、マーキング面39以外の領域39dとを有している。複数のマーキング面39cは、図示しない凹凸構造によって領域39dよりも光吸収率が高められている。一方、領域39dには、凹凸構造は形成されていない。具体的には、各マーキング面39cは、「A」という文字をなしている。この場合においても、マーキング面39cは、撥水面あるいは親水面であるので、水に濡れたとしてもその水がマーキング面39cを遮りにくい。したがって、看板200Aにおける表示内容の視認性を維持することが可能である。
【0056】
(その他)
以上、本発明に係る水廻り部材について、上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0057】
例えば、各面状部20の上面視形状は、正方形、長方形、平行四辺形又は菱形などの四角形でなくてもよい。各面状部20の上面視形状は、三角形又は六角形などの多角形でもよく、少なくとも一部に曲線を含む非対称な図形であってもよい。例えば、各面状部20の上面視形状は、互いに異なる非対称な形状であってもよい。
【0058】
また、上記実施の形態では、面状部20が撥水性を有したマーキング面39のみを有している場合を例示した。しかしながら、面状部の同一面内に、撥水性を有したマーキング面と、親水性を有したマーキング面とを混在させてもよい。例えば、撥水性を有するマーキング面と親水性を有するマーキング面とが交互に並んでいる(結果的に凹凸構造30は同一面内で不均一である。)と、平面であってもマランゴニ効果により、面状部の同一面内から水滴が転がり、視認性が高まるといった効果が発現する。
【0059】
また、上記各実施の形態では、樹脂成形体1が目地10をなす溝を有する場合を例示したが、溝を有していない樹脂成形体であっても本発明の構成を適用することが可能である。
【0060】
また、上記各実施の形態では、成形体として樹脂成形体1を例示したが、レーザ加工が可能な素材であれば如何なる素材で成形体を形成してもよい。その他の素材としては、金属などが挙げられる。
【0061】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1 樹脂成形体(成形体)
10 目地(溝)
31、31b 凹部
32、32b 凸部
39、39a、39b、39c マーキング面
39d 領域
p 所定のピッチ
W、w1、w2 幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6