(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】電動自転車及び電動自転車の制御装置
(51)【国際特許分類】
B62M 6/50 20100101AFI20230915BHJP
【FI】
B62M6/50
(21)【出願番号】P 2019222938
(22)【出願日】2019-12-10
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】山澤 貴史
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-042434(JP,A)
【文献】国際公開第2017/175529(WO,A1)
【文献】特開2019-155963(JP,A)
【文献】国際公開第2018/123162(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0086417(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/45-6/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
車体への押力に、前記電動モータによる補助駆動力を付加して押し歩く、又は、前記補助駆動力を付加して自走させるモードを実行する制御部と、
前記モードの実行時に、前記車体の加速度に関する情報を出力する第1センサとを備え、
前記制御部は、前記モードの実行時に、
前記加速度に関する情報に基づく前記車体の加速度が第1閾値以上
の場合に付加する単位時間あたりの前記補助駆動力の増加値を
、前記車体の加速度が前記第1閾値未満の場合に付加する単位時間あたりの前記補助駆動力の増加値よりも小さくするように前記電動モータを制御し、
前記車体の加速度が前記第1閾値未満
の場合に付加する単位時間あたりの前記補助駆動力の増加値を
、前記車体の加速度が前記第1閾値以上の場合に付加する単位時間あたりの前記補助駆動力の増加値よりも大きくするように前記電動モータを制御する
電動自転車。
【請求項2】
前記制御部は、前記モードの実行時に、前記車体の前記加速度が前記第1閾値よりも大きい第2閾値以上となると、前記第1閾値以上前記第2閾値未満の場合に前記電動モータが前記車体に付与する前記補助駆動力よりも、前記電動モータの前記補助駆動力を小さくする、又は、前記電動モータを停止させる
請求項1に記載の電動自転車。
【請求項3】
前記第1センサは、前記電動モータの単位時間当たりの回転数を検出し、モータ回転数情報を出力するホールICセンサであり、
前記モータ回転数情報は、前記車体の加速度に関する情報に含まれる
請求項1又は2に記載の電動自転車。
【請求項4】
前記第1センサは、前記車体の加速度を検出し、加速度情報を出力する加速度センサであり、
前記加速度情報は、前記車体の加速度に関する情報に含まれる
請求項1又は2に記載の電動自転車。
【請求項5】
さらに、前記モードの実行時に、前記車体の速度を検出して出力する第2センサを備え、
前記制御部は、前記モードの実行時に、前記第2センサが検出した前記車体の速度に基づいて、前記車体の加速度を補正する
請求項1~4のいずれか1項に記載の電動自転車。
【請求項6】
さらに、前記モードの実行時に、クランクの回転数を検出して出力する第3センサを備え、
前記制御部は、前記モードの実行時に、前記第3センサが検出した前記クランクの回転数から算出した前記車体の速度に基づいて、前記車体の加速度を補正する
請求項1~4のいずれか1項に記載の電動自転車。
【請求項7】
車体への押力に、電動モータによる補助駆動力を付加して押し歩く、又は、前記補助駆動力を付加して自走させるモードを実行する制御部と、
前記モードの実行時に、前記車体の加速度に関する情報を出力する出力部とを備え、
前記制御部は、前記モードの実行時に、
前記加速度に関する情報に基づく前記車体の加速度が第1閾値以上
の場合に付加する単位時間あたりの前記補助駆動力の増加値を
、前記車体の加速度が前記第1閾値未満の場合に付加する単位時間あたりの前記補助駆動力の増加値よりも小さくするように前記電動モータを制御し、
前記車体の加速度が前記第1閾値未満
の場合に付加する単位時間あたりの前記補助駆動力の増加値を
、前記車体の加速度が前記第1閾値以上の場合に付加する単位時間あたりの前記補助駆動力の増加値よりも大きくするように前記電動モータを制御する
電動自転車の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動自転車及び電動自転車の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動モータと、車体の押し歩き時に電動モータのアシスト動力発揮を可能にする押し歩き操作手段と、押し歩き操作手段の操作に応じて電動モータのアシスト動力を制御するコントローラとを備える電動自転車が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、従来の電動自転車では、力強く車体を押す場合等の高負荷が電動自転車に加えられると、電動モータの出力が十分に上昇する前に高負荷によって電動自転車が目標速度に到達してしまう。このため、電動モータの出力が不足するという懸念がある。そこで、電動モータの出力が不足しないように、電動モータの出力の上昇レートを上げることが考えられる。しかし、この場合、弱い力で押す場合等の低負荷が電動自転車に加わっても、急加速したり、急発進したりする等の目標速度に対するオーバーシュートが発生してしまうことがある。
【0005】
そこで、本開示は、電動自転車の押し歩き又は支え歩き時における電動モータの出力を適切にすることができる電動自転車及び電動自転車の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一態様に係る電動自転車は、電動モータと、車体への押力に、前記電動モータによる補助駆動力を付加して押し歩く、又は、前記補助駆動力を付加して自走させるモードを実行する制御部と、前記モードの実行時に、前記車体の加速度に関する情報を出力する第1センサとを備え、前記制御部は、前記モードの実行時に、前記加速度に関する情報に基づく前記車体の加速度が第1閾値以上の場合に付加する単位時間あたりの前記補助駆動力の増加値を、前記車体の加速度が前記第1閾値未満の場合に付加する単位時間あたりの前記補助駆動力の増加値よりも小さくするように前記電動モータを制御し、前記車体の加速度が前記第1閾値未満の場合に付加する単位時間あたりの前記補助駆動力の増加値を、前記車体の加速度が前記第1閾値以上の場合に付加する単位時間あたりの前記補助駆動力の増加値よりも大きくするように前記電動モータを制御する。
【0007】
また、本開示の一態様に係る電動自転車の制御装置は、車体への押力に、電動モータによる補助駆動力を付加して押し歩く、又は、前記補助駆動力を付加して自走させるモードを実行する制御部と、前記モードの実行時に、前記車体の加速度に関する情報を出力する出力部とを備え、前記制御部は、前記モードの実行時に、前記加速度に関する情報に基づく前記車体の加速度が第1閾値以上の場合に付加する単位時間あたりの前記補助駆動力の増加値を、前記車体の加速度が前記第1閾値未満の場合に付加する単位時間あたりの前記補助駆動力の増加値よりも小さくするように前記電動モータを制御し、前記車体の前記加速度が前記第1閾値未満の場合に付加する単位時間あたりの前記補助駆動力の増加値を、前記車体の加速度が前記第1閾値以上の場合に付加する単位時間あたりの前記補助駆動力の増加値よりも大きくするように前記電動モータを制御する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る電動自転車等によれば、電動自転車の押し歩き又は支え歩き時における電動モータの出力を適切にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る電動自転車の側面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る電動自転車の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る電動自転車のハンドル及び操作部の斜視図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る電動自転車が第2モードで動作する場合を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、電動自転車の速度と時間との関係、及び、電動モータの出力と時間との関係を示す図である。
【
図6】
図6は、比較例における電動自転車において、電動モータの出力を平地に設定した場合の、電動自転車の速度と時間との関係、及び、電動モータの出力と時間との関係を示す図である。
【
図7】
図7は、比較例における電動自転車において、電動モータの出力を登坂時に設定した場合の、電動自転車の速度と時間との関係、及び、電動モータの出力と時間との関係を示す図である。
【
図8】
図8は、実施の形態2に係る電動自転車の構成を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、実施の形態2に係る電動自転車が第2モードで動作する場合を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本開示の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺等は必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0012】
以下、本実施の形態に係る電動自転車及び電動自転車の制御装置について説明する。
【0013】
(実施の形態1)
<構成>
図1は、実施の形態1に係る電動自転車1の側面図である。
【0014】
図1に示すように、電動自転車1は、第1モードと、第2モードとを有する。第1モードは、例えばアシストモードであり、ペダル17への人(ユーザ)の踏力に基づく電動自転車1の前進を補助する。第2モードには、例えば押し歩きモード及び自走モードの少なくとも一方が含まれる。押し歩きモードでは、ユーザが電動自転車1を押して歩くときに、ユーザによる車体10を前へ押す力に基づいて、電動自転車1の前進が補助される。自走モードでは、人が電動自転車1を支えながら歩くときの電動自転車1の前進が補助される。
【0015】
図2は、実施の形態1に係る電動自転車1の構成を示すブロック図である。
【0016】
図1及び
図2に示すように、電動自転車1は、車体10と、操作部21と、手動スイッチ22と、クランク回転センサ31と、モータ回転センサ32と、踏力センサ33と、車速センサ34と、変速機計測部35と、モータ駆動ユニット40と、バッテリー50と、前照灯60と、変速機70とを備える。
【0017】
[車体10]
車体10は、フレーム11と、前輪12と、後輪13と、サドル15と、ハンドル14と、クランク16と、ペダル17と、図示しないスプロケットと、チェーン19とを備える。
【0018】
フレーム11は、ヘッドパイプ111と、メインフレーム112と、立パイプ113と、フォーク114と、チェーンステー115とを備える。ヘッドパイプ111は、前輪12を支持するフォーク114及びハンドル14を、ヘッドパイプ111の軸を中心に回転自在に支持する。ハンドル14を左右に回すことで、フォーク114に支持された前輪12の向きを左右に回転させることができる。
【0019】
メインフレーム112は、ヘッドパイプ111と立パイプ113とを連結する部分である。メインフレーム112の下端部には、クランク16及びモータ駆動ユニット40が取り付けられる。本実施の形態に係る電動自転車1は、クランク16とモータ駆動ユニット40とが一体化された、いわゆるセンターユニット方式の電動自転車1であるが、センターユニット方式に限定されない。
【0020】
立パイプ113は、サドル15を着脱可能に支持する。具体的には、立パイプ113には、サドル15を支持するシートポストが挿入されて固定される。本実施の形態では、立パイプ113に、バッテリー50が着脱可能に取り付けられる。
【0021】
フォーク114は、前輪12を回転自在に支持する。前輪12を支持するフォーク114には、前照灯60が取り付けられる。
【0022】
チェーンステー115は、後輪13を回転自在に支持する。
【0023】
サドル15は、人が適切な姿勢で乗車した場合に、人が座る部分である。
【0024】
ハンドル14には、一対のグリップ141、及び、一対のブレーキレバー142が左右に設けられる。
【0025】
一対のグリップ141は、適切な姿勢で乗車された場合に、手で握られる部分である。また、一対のグリップ141は、電動自転車1を押して又は支えて歩く際にも手で握られて、前方への押力を受ける。一対のグリップ141の少なくとも一方には、握る力又は押力を検知するグリップセンサが設けられてもよい。
【0026】
一対のブレーキレバー142は、前輪12及び後輪13の各々に取り付けられた、図示しないブレーキ装置の動作レバーである。一方のブレーキレバー142を操作することで、前輪12に取り付けられたブレーキ装置が駆動され、前輪12に対して機械的な制動力を与える。他方のブレーキレバー142を操作することで、後輪13に取り付けられたブレーキ装置が駆動され、後輪13に対して機械的な制動力を与える。
【0027】
ブレーキレバー142には、ブレーキセンサが設けられており、このブレーキセンサがブレーキレバー142に対する操作を検出するようになっている。
【0028】
クランク16は、クランク軸161と、一対のクランクアーム162とを有する。クランクアーム162は、メインフレーム112の両側に1つずつ設けられており、左右方向に延びるクランク軸161の両端に固定される。クランクアーム162の一方端がクランク軸161に固定され、他方端には、ペダル17が回転自在に固定される。ペダル17に踏力が加えられた場合、クランクアーム162がクランク軸161を中心に回転し、当該回転による人力駆動力がスプロケット及びチェーン19を介して後輪13に伝達される。第1モードで動作する場合には、踏力に基づく人力駆動力と、当該人力駆動力に付加された電動モータ41による第1補助駆動力とが後輪13に伝達される。
【0029】
[操作部21]
図3は、実施の形態1に係る電動自転車1のハンドル及び操作部21の斜視図である。
【0030】
図2及び
図3に示すように、操作部21は、一対のブレーキレバー142の一方(本実施の形態では左側のブレーキレバー142)の近傍に設けられる。操作部21は、前照灯60を点灯させるライトスイッチ(図示省略)等を備えた端末装置である。操作部21は、人による操作を受け付けるためボタン等を有する。ボタンは、タッチパネルディスプレイ、機械式のボタン等である。
【0031】
また、操作部21は、例えば
図1の後輪13に空転が起こっていることを表示する表示部44を備える。表示部44は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等である。
【0032】
[手動スイッチ22]
手動スイッチ22は、第2モードを実行するための押し歩き操作又は自走させる操作を受け付ける機械式のスイッチである。手動スイッチ22は、例えばモーメンタリ型のスイッチである。具体的には、人によって手動スイッチ22が押下されている期間では、操作部21は、第2モードを実行するための第2モードオン信号を制御装置42(後述)に出力し続ける。一方、手動スイッチ22が押下されていない期間には、操作部21は、第2モードオン信号を制御装置42に出力しない。
【0033】
なお、手動スイッチ22を1回押下した場合に、その後、手動スイッチ22を押し続けなくても、第2モードが実行されてもよい。第2モードの実行中に、再び手動スイッチ22を押下した場合に、第2モードが停止されてもよい。この場合、手動スイッチ22を押し続けなくてよいので、人は、車体10を押すことに専念する。
【0034】
また、手動スイッチ22には、第2モードの押し歩きモードを実行するための押し歩きスイッチと、第2モードの自走モードを実行するための自走スイッチとの2つの異なるスイッチが含まれてもよい。この場合、制御部43は、押し歩きスイッチが押下されたとき、押し歩きモードを実行し、自走スイッチが押下されたとき、自走モードを実行してもよい。
【0035】
[クランク回転センサ31]
図1及び
図3に示すように、クランク回転センサ31は、第1モード及び第2モードの実行時に、単位時間当たりのクランク16の回転数を検出する。クランク回転センサ31は、歯車状の回転体と、回転体の歯を挟むように配置された光出射部と受光部とを有する光検出器とを有することで実現する。クランク回転センサ31は、検出したクランク16の回転数を示すクランク回転数情報を制御装置42に出力する。なお、クランク回転センサ31は、クランク16の回転数を検出することができればいかなる構成でもよい。クランク回転センサ31は、第3センサの一例である。
【0036】
また、クランク回転センサ31は、クランク軸161の近傍に配置される。
【0037】
[モータ回転センサ32]
モータ回転センサ32は、電動モータ41の回転軸の近傍に配置される。モータ回転センサ32は、第1モード及び第2モードの実行時に、電動自転車1の加速度に関する情報を出力する。モータ回転センサ32は、電動モータ41の単位時間当たりの回転数を検出し、モータ回転数情報を出力するホールICセンサである。モータ回転数情報は、電動モータ41の単位時間当たりの回転数に基づいて電動自転車1の加速度を算出することができる情報であり、電動自転車1の加速度に関する情報に含まれる。本実施の形態では、電動自転車1の加速度とは、主に第2モード実行時における車体10の加速度である。モータ回転センサ32は、第1センサの一例であり、出力部の一例でもある。
【0038】
具体的には、モータ回転センサ32は、電動モータ41の回転軸と一体的に回転する磁石と、ホールICとを有する。ホールICは、磁石の回転に応じて変化する磁界の変化を検出することで、単位時間当たりの磁石の回転数、すなわち、電動モータ41の回転数を検出する。なお、モータ回転センサ32は、電動モータ41の回転数を検出することができればいかなる構成でもよい。モータ回転センサ32は、電動モータ41の回転数を示すモータ回転数情報を制御装置42に出力する。
【0039】
[踏力センサ33]
踏力センサ33は、磁歪式のトルクセンサであり、ペダル17への人力駆動力に基づいてクランク軸161が回転することにより発生する人力駆動力を検出する。踏力センサ33は、コイルと、磁歪発生部とを有する。例えば、ペダル17に踏力が加えられて人力駆動力が発生した場合に、磁歪発生部に歪みが発生する。磁歪発生部には、透磁率が増加する部位と減少する部位とが発生する。踏力センサ33は、このコイルのインダクタンス差を検出することで、人力駆動力を検出する。踏力センサ33は、検出した人力駆動力を示す踏力情報を制御装置42に出力する。なお、踏力センサ33の構成は特に限定されず、ペダル17への人力駆動力が検出できればいかなる構成でもよい。
【0040】
また、踏力センサ33は、クランク軸161の近傍に配置される。
【0041】
[車速センサ34]
車速センサ34は、第1モード及び第2モードの実行時に、電動自転車1の速度を検出する。車速センサ34は、検出した電動自転車1の速度を示す速度情報を制御装置42に出力する。例えば車速センサ34は、前輪12又は後輪13の回転から電動自転車1の速度を検出し、速度を示す速度情報を制御装置42に出力するホイルセンサ等の速度センサである。車速センサ34は、第2センサの一例である。
【0042】
なお、車速センサ34は、ホイルセンサ、マグネットセンサ等であってもよいが、対地速度により算出するサイクルコンピュータであってもよく、電動自転車1の速度を検知することができればいかなる構成でもよい。
【0043】
車速センサ34は、例えば、フォーク114の下端部に設けられ、速度を測定し易い位置に配置される。
【0044】
[変速機計測部35]
変速機計測部35は、後輪13の変速機70の段を計測し、変速機70の段を示す情報を制御装置42へ送信する。変速機70の段の計測は、例えば、変速機切替装置が出力する変速機70の段を示す情報を制御装置42に出力することで実現してもよい。
【0045】
[モータ駆動ユニット40]
モータ駆動ユニット40は、車体10に取り付けられ、電動モータ41と、制御装置42とを有する。モータ駆動ユニット40は、電動モータ41及び制御装置42を、樹脂製又は金属製の筐体に収納してユニット化される。筐体の内部には、クランク回転センサ31、モータ回転センサ32及び踏力センサ33等が設けられる。
【0046】
電動モータ41は、制御装置42による制御に基づいて、バッテリー50からの電力を受けて駆動する。電動モータ41の回転トルクは後輪13のスプロケットに伝達されて、後輪13が回転する。回転トルクは、第1補助駆動力及び第2補助駆動力を意味する。
【0047】
電動モータ41は、第1補助駆動力及び第2補助駆動力となるモータである。電動モータ41は、第1モードを実行中に、ペダル17への踏力に基づく人力駆動力に、第1補助駆動力を付加する。また、電動モータ41は、第2モードを実行中に、電動自転車1に対する押し歩く力に、第2補助駆動力を付加する。また、電動モータ41は、第2モードを実行中に、電動自転車1が人に支えられながら自走する第2補助駆動力を付加する。
【0048】
図2に示すように、制御装置42には、電動モータ41、クランク回転センサ31、モータ回転センサ32、踏力センサ33、車速センサ34、変速機計測部35、手動スイッチ22、操作部21、バッテリー50及び前照灯60が電気的に接続される。制御装置42は、クランク回転センサ31、踏力センサ33、モータ回転センサ32、車速センサ34、変速機計測部35等のセンサによるセンシング情報に基づいて、電動モータ41の動作を制御する。また、制御装置42には、操作部21及び手動スイッチ22による操作信号、及び、各センサによる検知結果であるセンシング情報が入力される。センシング情報は、クランク回転数情報、モータ回転数情報、踏力情報、速度情報、及び、変速機70の段を示す情報を含む総称である。
【0049】
制御装置42は、制御部43を有する。制御部43は、電動自転車1の動作モードに応じて、電動モータ41を駆動する。具体的には、制御部43は、第1モードと第2モードとを有し、第1モードと第2モードとを切り替えてそれぞれのモードを実行する。例えば、制御部43は、第2モードが停止された後、踏力センサ33によってペダル17への踏力が検出されない場合、再度第2モードを開始する指示を受け付けたときに、第2モードを再開する。具体的には、制御部43は、第2モードが停止された後、手動スイッチ22が押下されたとき、第2モードを再開する。また、制御部43は、踏力センサ33によってペダル17への踏力が検出された場合、手動スイッチ22が押下されても第2モードを再開しない。
【0050】
第1モードは、ペダル17への踏力に基づく人力駆動力に、電動モータ41による第1補助駆動力を付加して走行するアシストモードである。第1モードは、手動スイッチ22が押下されて電源がオンされた後、人が電動自転車1に乗車している場合に実行される。具体的には、第1モードは、踏力センサ33で検知したペダル17への踏力が所定値より大きい場合に実行される。
【0051】
制御部43は、第1モードを実行する場合、ペダル17への踏力と電動自転車1の速度とに基づいて、電動モータ41が生成する第1補助駆動力の大きさを決定する。ペダル17への踏力は、踏力センサ33による検知結果から得られる。例えば、電動自転車1の速度は、前輪12の単位時間当たりの回転数と前輪12の大きさとに基づいて算出される、又は、後輪13の単位時間当たりの回転数と、後輪13の大きさとに基づいて算出される。
【0052】
なお、前輪12又は後輪13の単位時間当たりの回転数と電動自転車1の速度とを予め対応付けたテーブルが、制御装置42のメモリに記憶されていてもよい。制御部43は、当該テーブルを参照することで、前輪12又は後輪13の回転数から電動自転車1の速度を決定してもよい。
【0053】
第1モードにおける第1補助駆動力は、電動自転車1の走行速度に応じて異なるが、例えば、ペダル17への踏力の2倍以下の大きさである。例えば、制御部43は、電動自転車1の走行速度が時速10km未満の場合に、電動モータ41を駆動することで、ペダル17への踏力の2倍以下の第1補助駆動力を発生させる。制御部43は、速度が時速24km以上の場合は、電動モータ41に第1補助駆動力を発生させない。制御部43は、速度が時速10km以上24km未満の場合には、電動モータ41を駆動することで、速度に応じて定められた第1補助駆動力を発生させる。
【0054】
第2モードは、車体10を押力に電動モータ41による第2補助駆動力を付加して押し歩く、又は、支えられた車体10に第2補助駆動力を付加して自走させる(支え歩く)モード(押し歩きモード又は自走モード)である。第2モードは、モードの一例である。
【0055】
押し歩きモードは、電源がオン状態で、人が電動自転車1の車体10を押し歩く際に、電動モータ41による第2補助駆動力を車体10に付加するモードである。押し歩きモードは、人が電動自転車1に乗車しておらず、車体10を押しながら歩く場合に実行される。
【0056】
自走モードは、電動自転車1を人が支えた状態で、電動モータ41による第2補助駆動力を車体10に付加して自走させるモードである。自走モードは、押し歩きモードと同様に、人が電動自転車1に乗車しておらず、電動自転車1の車体10を支えながら歩く場合に実行される。自走モードにおいて、人は、車体10を前方に押す力を加えていない。
【0057】
制御部43は、車体10に対する前方への押す力の有無によって、押し歩きモード及び自走モードのいずれのモードを実行するか判別可能である。例えば、制御部43は、グリップ141等に設けられたグリップセンサ等によって車体10を前方への押す力の有無を検知し、検知結果に応じて押し歩きモードと自走モードとを切り替えて実行してもよい。あるいは、制御部43は、押し歩きモードか自走モードかを判別することなく、第2補助駆動力を付加する第2モードとして実行してもよい。また、制御部43は、人による手動スイッチ22の操作によって、押し歩きモードと自走モードとを切り替えて実行してもよい。
【0058】
本実施の形態では、押し歩きモード及び自走モードのそれぞれは、手動スイッチ22が押下されている期間に実行される。押し歩きモード及び自走モードのそれぞれは、ペダル17への踏力が所定値より大きい場合には実行されなくてもよい。つまり、第1モードと第2モードとは排他的に実行される。また、押し歩きモードと自走モードとも排他的に実行される。
【0059】
また、制御部43は、第2モードの実行時において、電動自転車1の加速度に関する情報をモータ回転センサ32から取得する。電動自転車1の加速度に関する情報は、電動自転車1の加速度を算出可能な電動モータ41の回転数を示すモータ回転数情報等を含む。本実施の形態では、制御部43は、電動自転車1の加速度に関する情報として、モータ回転数情報をモータ回転センサ32から取得する。
【0060】
また、制御部43は、第2モードの実行時において、モータ回転センサ32からモータ回転数情報を取得すると、モータ回転数情報から電動自転車1の加速度を算出する。例えば、制御部43は、電動モータ41の単位時間当たりの回転数の増加値から、電動自転車1の加速度を算出する。
【0061】
制御部43が第2モードを実行する場合において、電動自転車1が平地を走行する場合と、坂道を下る場合と、坂道を上る場合とでは、電動モータ41に加わる負荷が異なる。このため、制御部43が第2モードを実行する場合、電動自転車1を人が押し歩く場所に応じて、電動モータ41が車体10に付与する第2補助駆動力を制御する必要がある。本実施の形態では、制御部43は、加速度に応じて電動モータ41の出力を制御する。
【0062】
具体的には、制御部43は、第2モードの実行時において、算出した電動自転車1の加速度が第1閾値以上であるかどうかを判定する。制御部43は、第2モードの実行時に、加速度に関する情報に基づく電動自転車1の加速度が第1閾値以上となると、第2補助駆動力の増加値を小さくするように電動モータ41を制御する。電動自転車1の加速度が上昇し過ぎれば、例えば、電動自転車1が平地で力強く押されている場合と考えられる。例えば、第2モードで人が電動自転車1を押し歩いて平地を移動する場合では、人が電動自転車1を押し歩いて坂道を上る場合に比べて、電動自転車1の加速度は大きくなり易い。このように電動自転車1の加速度が大きくなりすぎることを抑制するため、制御部43は、電動自転車1の加速度が第1閾値以上のときに付加する電動モータ41による第2補助駆動力の増加値を、第1閾値未満時に電動モータ41が付加する第2補助駆動力の増加値よりも小さくする。ここで、第2補助駆動力の増加値は、第2補助駆動力の増加量又は第2補助駆動力の増加率を含む。
【0063】
ここで、第1閾値は、人の歩行速度の加速度に合わせあらかじめ設定された値である。第1閾値は、1.5m/s2以上4.0m/s2未満の範囲で設定され、例えば2.0m/s2が設定される。
【0064】
また、制御部43は、第2モードの実行時に、電動自転車1の加速度が第1閾値よりも大きい第2閾値以上であるかどうかを判定する。第2閾値は、例えば3.5m/s2以上5.5m/s2以下の範囲で設定され、例えば4.0m/s2が設定される。制御部43は、第2モードの実行時に、電動自転車1の加速度が第1閾値よりも大きい第2閾値以上となると、電動モータ41の第2補助駆動力を大幅に弱める、又は、電動モータ41を停止させる。電動自転車1の加速度が異常に上昇し過ぎれば、例えば、電動自転車1が空転したり、坂道を下ったりしている場合と考えられる。第2モードで人が電動自転車1を押し歩いて坂道を下る場合では、人が電動自転車1を押し歩いて平地を移動する場合に比べて、電動自転車1の加速度は大きくなる。このため、制御部43は、第1閾値以上第2閾値未満の場合に電動モータ41が車体10に付与する第2補助駆動力よりも、第2閾値以上の場合に電動モータ41が車体10に付与する第2補助駆動力を小さくする。例えば、制御部43は、人が電動自転車1を押し歩いて平地を移動する場合の第2補助駆動力よりも、人が電動自転車1を押し歩いて坂道を下る場合の電動モータ41の第2補助駆動力を小さくする。第2閾値以上の場合に車体10に付与する第2補助駆動力は、第1閾値以上第2閾値未満の場合に車体10に付与する第2補助駆動力よりも小さい。
【0065】
また、制御部43は、第2モードの実行時に、電動自転車1の加速度が第1閾値未満となると、第2補助駆動力の増加値を大きくするように電動モータ41を制御する。電動自転車1の加速度の増加値が小さければ、例えば、電動自転車1が坂道を上っている場合と考えられる。第2モードで人が電動自転車1を押し歩いて坂道を上る場合では、人が電動自転車1を押し歩いて平地を移動する場合に比べて、電動自転車1の加速度は小さくなる。このため、制御部43は、電動自転車1の加速度が第1閾値未満のときに付加する電動モータ41による第2補助駆動力の増加値を、電動自転車1の加速度が第1閾値以上第2閾値未満の場合に電動モータ41が付加する第2補助駆動力の増加値よりも大きくする。
【0066】
また、制御部43は、車速センサ34から速度情報を取得すると、第2モードの実行時に、電動自転車1の加速度を補正する。
【0067】
例えば、制御部43は、第2モードの実行時に、車速センサ34から速度情報を取得すると、速度情報に示される速度に基づいて電動自転車1の加速度を補正する。制御部43は、モータ回転センサ32が検知した回転情報に基づいて算出した電動自転車1の加速度が正確でない場合があるため、より精度の高い速度情報に基づいて、電動自転車1の加速度を補正する。
【0068】
また、制御部43は、第2モードの実行時に、クランク回転センサ31からクランク回転数情報を取得すると、クランク回転数情報から電動自転車1の速度を算出し、算出した電動自転車1の速度に基づいて電動自転車1の加速度を補正することもできる。つまり、制御部43は、モータ回転センサ32が検知した回転情報に基づいて算出した電動自転車1の加速度が正確でない場合があるため、クランク回転数情報から算出した電動自転車1の速度に基づいて、電動自転車1の加速度を補正することもできる。
【0069】
また、制御部43は、第2モードを実行する場合、電動自転車1の走行速度が予め定められた上限値を超えないように、電動モータ41に第2補助駆動力を生成させる。第2モードにおける第2補助駆動力は、例えば、電動自転車1の速度が時速6km未満になる大きさである。本実施の形態では、第2モードを実行する場合、電動自転車1の速度の上限値が時速6kmとしたが、時速3~4kmでもよく、特に限定されない。
【0070】
制御装置42は、バッテリー50から供給される電力を、電動モータ41及び前照灯60等に供給する。
【0071】
制御装置42は、例えば、マイコン(マイクロコントローラ)等で実現され、プログラムが格納された不揮発性メモリ、プログラムを実行するための一時的な記憶領域である揮発性メモリ、入出力ポート、プログラムを実行するプロセッサ等で構成される。なお、制御装置42は、専用の電子回路で実現されてもよい。
【0072】
本実施の形態では、制御装置42は、モータ駆動ユニット40の筐体の内部に収納されているが、これに限らない。制御装置42は、モータ駆動ユニット40とは別体で設けられていてもよい。
【0073】
[バッテリー50]
バッテリー50は、電動モータ41の駆動用の電力を貯める蓄電池である。バッテリー50は、例えば、二次電池であるが、キャパシタ等であってもよい。バッテリー50は、電動モータ41に電気的に接続されている。具体的には、バッテリー50は電動モータ41に対して電力を供給する。
【0074】
[前照灯60]
前照灯60は、バッテリー50から供給される電力によって、電動自転車1の進行方向に向けて光を発する照明装置である。前照灯60は、操作部21を介して、人による操作を受け付けることで点灯したり消灯したりする。前照灯60は、操作部21のライトスイッチによって、点灯と消灯とが切り替えられる。
【0075】
[変速機70]
変速機70は、互いにギア比の異なる複数の駆動力伝達経路を有する遊星ギア、多段ギア等の周知の変速機構で構成されている。変速機70は、駆動力伝達経路を切り換えることで、例えば、低速段(Lowギア)、中速段(Middleギア)、高速段(Topギア)等に変速可能である。
【0076】
<動作>
ここでは、予め手動スイッチ22がオンされる場合を想定した、電動自転車1の制御処理について、
図4を用いて説明する。また、以下の説明では、主に電動自転車1を押し歩く場合を想定するが、電動自転車1が自走する場合も同様であるため、その説明を省略する。
【0077】
図4は、実施の形態1に係る電動自転車1が第2モードで動作する場合を示すフローチャートである。
【0078】
図4に示すように、まず、モータ回転センサ32は、第2モードの実行時に、単位時間当たりの電動モータ41の回転数を検出し(S11)、検出した電動モータ41の回転数を示すモータ回転数情報を制御装置42に出力する。
【0079】
制御装置42の制御部43は、モータ回転数情報を取得すると、モータ回転数情報に示されるモータ回転数から電動自転車1の加速度を算出する(S12)。
【0080】
また、車速センサ34は、第2モードの実行時に、電動自転車1の速度を検出し(S13)、検出した電動自転車1の速度を示す速度情報を制御装置42に出力する。
【0081】
制御装置42の制御部43は、車速センサ34から速度情報を取得すると、第2モードの実行時に、電動自転車1の加速度を補正する(S14)。
【0082】
なお、ステップS13、S14は省略してもよい。この場合、車速センサ34も電動自転車1に搭載されていなくてもよく、車速センサ34は必須の構成要件ではない。
【0083】
制御部43は、第2モードの実行時において、算出した電動自転車1の加速度が第1閾値以上であるかどうかを判定する(S15)。
【0084】
電動自転車1の加速度が第1閾値未満である場合(S15でNo)は、例えば電動自転車1が上り坂を上っている場合又は押し歩きを開始した直後の場合であるため、電動自転車1の加速度は小さい。このため、制御部43は、電動自転車1の加速度が第1閾値未満のときに付加する電動モータ41による第2補助駆動力の増加値(以下、第1増加値という)を大きくする(S16)。制御部43は、第1増加値の第2補助駆動力で電動モータ41を制御するそして、制御部43は、処理を終了し、同様の処理を繰り返す。
【0085】
図5は、電動自転車1の速度(車速)と時間との関係、及び、電動モータ41の出力と時間との関係を示す図である。
図5では、平地での車速を実線で示し、平地での電動モータ41の出力を破線で示し、登坂時の車速を一点鎖線で示し、登坂時の電動モータ41の出力を二点鎖線で示す。
【0086】
具体的には、
図5では、二点鎖線の直線Aは電動自転車1の加速度が第1閾値未満のときの接線であり、二点鎖線の直線Bは電動自転車1の加速度が第1閾値以上第2閾値未満のときの接線である。直線Aの傾きは、電動自転車1の加速度が第1閾値未満のときの電動自転車1の加速度を示し、直線Bの傾きは、電動自転車1の加速度が第1閾値以上第2閾値未満のときの電動自転車1の加速度を示す。制御部43は、電動自転車1の加速度が第1閾値未満の場合に、直線Aの傾きが直線Bの傾きよりも大きくなるように、第2補助駆動力の第1増加値を大きくする。
【0087】
このように、電動自転車1の加速度が第1閾値未満の間は、第1増加値で電動自転車1に対する押し歩く力に第2補助駆動力を車体10に付与することで、人が押し歩き時に電動自転車1に加える力を軽減させる。このため、人が第2モード時に電動自転車1に加える力が小さくても、短時間で電動自転車1が目標速度に到達する。目標速度は、予め設定された速度であり、本実施の形態では最大時速6kmである。また、人が電動自転車1を押し歩く又は自走させるときの速さは個人差があるため、目標速度は時速6km以下となる場合がある。なお、同様の路面状況を電動自転車1が走行し続けた状態での、最高車体速度と最低車体速度との中間速度が、目標速度と推定することができる。
【0088】
図4に示すように、制御部43は、電動自転車1の加速度が第1閾値以上である場合(S15でYes)、電動自転車1の加速度が第1閾値よりも大きい第2閾値以上であるかどうかを判定する(S17)。
【0089】
図4及び
図5に示すように、電動自転車1の加速度が第2閾値以上でない場合(S17でNo)、例えば、電動自転車1の速度が目標速度に到達又は近接している場合であり、一定の歩行速度で電動自転車1を押し歩いている。このため、制御部43は、電動自転車1の加速度が第1閾値以上第2閾値未満の場合に電動モータ41が付加する第2補助駆動力の増加値(以下、第2増加値という)を小さくする。制御部43は、第2増加値の第2補助駆動力で電動モータ41を制御する(S18)。また、制御部43は、目標速度を超えると、第2補助駆動力の第2増加値を0又は実質的に0にするように電動モータ41を制御してもよい。つまり、制御部43は、電動自転車1の速度が目標速度に到達する又は目標速度の近傍になると、一定の第2補助駆動力だけを車体10に付与することに留める。具体的には、目標速度が時速3.6kmである場合、第2補助駆動力により付加される第2補助駆動力相当の速度は、時速1km~2.4kmである。例えば、電動モータ41による第2補助駆動力相当の速度は、目標速度の約30%~70%に相当する。また、制御部43は、目標速度時に制御する電動モータ41の目標出力を基準として制御する。このとき電動モータ41の出力は、電動モータ41の出力電流を検出することにより観察できる。なお、目標出力は、坂道を上る場合、平地を移動する場合、坂道を下る場合等によって異なる。そして、制御部43は、処理を終了し、同様の処理を繰り返す。
【0090】
図4に示すように、電動自転車1の加速度が第2閾値以上である場合(S17でYes)、例えば電動自転車1が空転したり、坂道を下ったりしている場合であるため、電動自転車1の加速度が異常に上昇している。このため、制御部43は、電動モータ41の第2補助駆動力を大幅に弱める、又は、電動モータ41を停止させる。なお、電動自転車1の車速が目標速度に到達していなかったとしても、電動自転車1の加速度が第2閾値以上である場合、同様に制御部43は、電動モータ41の第2補助駆動力を大幅に弱める、又は、電動モータ41を停止させる(S19)。そして、制御部43は、処理を終了し、同様の処理を繰り返す。
【0091】
<比較例>
図6は、比較例における電動自転車において、電動モータの出力を平地に設定した場合の、電動自転車の速度(車速)と時間との関係、及び、電動モータの出力と時間との関係を示す図である。
【0092】
図6に示すように、電動モータの出力を平地の設定に合わせた場合、一点鎖線で示す登坂時の車速は、平地で目標速度に到達する第1時間t1よりも目標速度に到達するまでの第2時間t2の方が長くなる(例えば、第1時間t1は、第2時間t2の半分以下の時間である)。
【0093】
このように、押し歩きを開始した直後では、二点鎖線で示す登坂時の電動モータの出力が足りておらず、例えば人が電動自転車を押し歩いて坂を上る場合、人に大きな負担が加わる。
【0094】
図7は、比較例における電動自転車において、電動モータの出力を登坂時に設定した場合の、電動自転車の速度(車速)と時間との関係、及び、電動モータの出力と時間との関係を示す図である。
【0095】
図7に示すように、電動モータの出力を登坂時の設定に合わせた場合、押し歩きを開始した直後では、破線で示す平地での電動モータの出力が大きすぎて、実線で示す平地での車速が目標速度を大きく超えてしまう。
【0096】
このように、押し歩きを開始した直後では、二点鎖線で示す平地での電動モータの出力が大きすぎて、電動自転車が急加速による飛び出しをしてしまう可能性がある。比較例の電動自転車では、急加速したり、急発進したりする等の目標速度に対するオーバーシュートが発生してしまうことがある。
【0097】
[作用効果]
次に、本実施の形態における電動自転車1および電動自転車1の制御装置42の作用効果について説明する。
【0098】
上述したように、本実施の形態に係る電動自転車1は、電動モータ41と、車体10への押力に、電動モータ41による第2補助駆動力(補助駆動力)を付加して押し歩く、又は、第2補助駆動力を付加して自走させる第2モードを実行する制御部43と、第2モードの実行時に、電動自転車1の加速度に関する情報を出力するモータ回転センサ32とを備える。そして、制御部43は、第2モードの実行時に、加速度に関する情報に基づく電動自転車1の加速度が第1閾値以上となると、第2補助駆動力の増加値を小さくするように電動モータ41を制御し、電動自転車1の加速度が第1閾値未満となると、第2補助駆動力の増加値を大きくするように電動モータ41を制御する。
【0099】
これによれば、制御部43は、電動自転車1の加速度が第1閾値未満であれば、第2補助駆動力の増加値を大きくすることで、例えば電動自転車1を押し歩いて坂を上る場合、人に加わる負担を抑制することができる。特に、第2補助駆動力の増加値を大きくするため、電動自転車1の押し歩きを開始した直後に増加値が大きい第2補助駆動力が電動自転車1に付与されるため、電動自転車1を押し歩く場合に、目標速度に到達する時間を短くすることができる。
【0100】
また、制御部43は、電動自転車1の加速度が第1閾値以上であれば、第2補助駆動力の増加値を小さくすることで、例えば電動自転車1を押し歩いて平地を移動する場合、急加速したり、急発進したりする等が抑制される。
【0101】
したがって、電動自転車1は、電動自転車1の押し歩き又は支え歩き時における電動モータ41の出力を適切にすることができる。
【0102】
特に、新たにセンサを設けなくても既存のセンサであるモータ回転センサ32を用いることで、電動自転車1の加速度を得ることができるため、この電動自転車1では、製造コストが高騰化し難い。
【0103】
また、この電動自転車1では、第2モードの実行時に、坂を上る場合でも平地を移動する場合でも、従来の電動自転車に比べて早く目標速度に到達することができるため、電動自転車1を快適に押し歩くことができる。
【0104】
また、本実施の形態に係る電動自転車1の制御装置42は、車体10への押力に、電動モータ41による第2補助駆動力を付加して押し歩く、又は、第2補助駆動力を付加して自走させる第2モードを実行する制御部43と、第2モードの実行時に、電動自転車1の加速度に関する情報を出力する出力部とを備える。制御部43は、第2モードの実行時に、加速度に関する情報に基づく電動自転車1の加速度が第1閾値以上となると、第2補助駆動力の増加値を小さくするように電動モータ41を制御し、電動自転車1の加速度が第1閾値未満となると、第2補助駆動力の増加値を大きくするように電動モータ41を制御する。
【0105】
この制御装置においても、上述と同様の作用効果を奏する。
【0106】
また、本実施の形態に係る電動自転車1において、制御部43は、第2モードの実行時に、電動自転車1の加速度が第1閾値よりも大きい第2閾値以上となると、第1閾値以上第2閾値未満の場合に電動モータ41が車体10に付与する第2補助駆動力よりも、電動モータ41の第2補助駆動力を小さくする、又は、電動モータ41を停止させる。
【0107】
これによれば、制御部43は、電動自転車1の加速度が第2閾値以上であれば、例えば電動自転車1が空転したり、下り坂を下ったりしている場合である。このため、電動自転車1の速度が大きくなり過ぎないように、第2補助駆動力を小さくする、又は、電動モータ41を停止させることで、電動自転車1の安全性が低下することを抑制することができる。
【0108】
また、本実施の形態に係る電動自転車1において、モータ回転センサ32は、電動モータ41の単位時間当たりの回転数を検出し、モータ回転数情報を出力するホールICセンサである。そして、モータ回転数情報は、電動自転車1の加速度に関する情報に含まれる。
【0109】
これによれば、押し歩きの開始時点からの電動モータ41の単位時間当たりの回転数を検出することができるため、電動自転車1の加速度を精度よく算出することができる。このため、押し歩きを開始した直後に、第2補助駆動力を電動自転車1に車体10に付与することができるため、人が電動自転車1を押し歩く際の負担の増大を抑制することができる。
【0110】
また、本実施の形態に係る電動自転車1は、さらに、第2モードの実行時に、電動自転車1の速度を検出して出力する車速センサ34を備える。そして、制御部43は、第2モードの実行時に、車速センサ34が検出した電動自転車1の速度に基づいて、電動自転車1の加速度を補正する。
【0111】
これによれば、車速センサ34が測定した速度から電動自転車1の加速度を補正することで、電動自転車1の加速度の増加値をより精度よく算出することができる。
【0112】
また、本実施の形態に係る電動自転車1は、さらに、第2モードの実行時に、クランク16の回転数を検出して出力するクランク回転センサ31を備える。そして、制御部43は、第2モードの実行時に、クランク回転センサ31が検出したクランク16の回転数から算出した電動自転車1の速度に基づいて、電動自転車1の加速度を補正する。
【0113】
これによれば、クランク16の回転数に基づく速度から電動自転車1の加速度を補正することで、電動自転車1の加速度の増加値をより精度よく算出することができる。
【0114】
(実施の形態2)
<構成>
本実施の形態の電動自転車2および電動自転車2の制御装置42の構成を、
図8を用いて説明する。
【0115】
図8は、実施の形態2に係る電動自転車2の構成を示すブロック図である。
【0116】
実施の形態2では、電動自転車2は、さらに加速度センサ36を有している点で、実施の形態1と相違する。本実施の形態における他の構成は、特に明記しない場合は、実施の形態1と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0117】
[加速度センサ36]
図8に示すように、加速度センサ36は、第1モード及び第2モードの実行時に、電動自転車2の加速度を検出する。加速度センサ36は、検出した電動自転車2の加速度を示す加速度情報を制御装置42に出力する。例えば加速度センサ36は、歪抵抗方式としてピエゾ抵抗を用い、加速時に加わるピエゾ抵抗の変化に応じて、電動自転車2の加速度を検出し、加速度を示す加速度情報を制御装置42に出力する。加速度センサ36は、第1センサの一例である。なお、加速度センサ36は、電動自転車2の加速度を検知することができればいかなる構成でもよい。
【0118】
加速度センサ36は、例えば、メインフレーム112、立パイプ113等に設けられ、電動自転車2の加速度を測定し易い位置に配置される。
【0119】
[制御装置42]
制御装置42の制御部43は、第2モードの実行時において、加速度センサ36から電動自転車2の加速度に関する情報を取得する。電動自転車2の加速度に関する情報は、情報に基づいて電動自転車2の加速度を算出可能な電動モータ41の回転数を示すモータ回転数情報の他に、電動自転車2の実際の加速度を示す加速度情報等を含む。
【0120】
また、制御部43は、第2モードの実行時において、加速度情報を取得すると、車速センサ34から速度情報を取得したり、クランク回転センサ31からクランク回転数情報を取得してクランク回転数情報から電動自転車2の速度を算出したりする。制御部43は、第2モードの実行時に、電動自転車2の速度に基づいて電動自転車2の加速度を補正する。
【0121】
<動作>
ここでは、予め手動スイッチ22がオンされる場合を想定した、電動自転車2の制御処理について、
図9を用いて説明する。
【0122】
図9は、実施の形態2に係る電動自転車2が第2モードで動作する場合を示すフローチャートである。
【0123】
実施の形態1の
図4と同様の処理については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0124】
加速度センサ36は、第2モードの実行時に、電動自転車2の加速度を検出する(S21)。加速度センサ36は、検出した電動自転車2の加速度を示す加速度情報を制御装置42に出力する。
【0125】
制御装置42の制御部43は、加速度センサ36から加速度情報を取得すると、電動自転車2の速度を検出する(S13)、検出した電動自転車2の速度を示す速度情報を制御装置42に出力する。そして、ステップS14からS19までの処理を行う。そして、制御部43は、処理を終了し、同様の処理を繰り返す。
【0126】
[作用効果]
次に、本実施の形態における電動自転車2および電動自転車2の制御装置42の作用効果について説明する。
【0127】
上述したように、本実施の形態に係る電動自転車2において、第1センサは、電動自転車2の加速度を検出し、加速度情報を出力する加速度センサ36である。そして、加速度情報は、電動自転車2の加速度に関する情報に含まれる。
【0128】
これによれば、電動自転車2の加速度を精度よく検知することができる。
【0129】
また、本実施の形態において、実施の形態1と同様の作用効果を奏する。
【0130】
(その他変形例等)
以上、本開示について、実施の形態1、2に基づいて説明したが、本開示は、これら実施の形態1、2等に限定されるものではない。
【0131】
例えば、上記の実施の形態1、2では、押し歩きモード又は自走モードを開始する指示を受け付ける入力部の一例として、手動スイッチを備える例を示したが、これに限らない。例えば、手動スイッチの代わりに、ハンドルのグリップに設けられたグリップセンサを備えてもよい。グリップセンサが前方への押力を検出した場合に、制御部は、押し歩きモード又は自走モードを実行してもよい。グリップセンサが前方への押力を検出しない場合に、制御部は、押し歩きモード又は自走モードを停止してもよい。
【0132】
また、上記各実施の形態1、2に係る電動自転車1の制御装置において、制御装置とモータ回転センサとを電気的に接続するための出力インターフェイス(不図示)が出力部の一例であってもよい。出力インターフェイスは、例えば、制御装置に搭載される。
【0133】
また、上記各実施の形態1、2に係る電動自転車1の制御装置は、コンピュータを用いたプログラムによって実現され、このようなプログラムは、記憶装置に記憶されてもよい。
【0134】
また、上記各実施の形態1、2に係る電動自転車及び電動自転車の制御装置に含まれる各処理部は、典型的に集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。
【0135】
また、集積回路化はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0136】
なお、上記各実施の形態1、2において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0137】
また、上記で用いた数字は、全て本開示を具体的に説明するために例示するものであり、本開示の実施の形態1、2は例示された数字に制限されない。
【0138】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0139】
また、フローチャートにおける各ステップが実行される順序は、本開示を具体的に説明するために例示するためであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよい。
【0140】
その他、実施の形態1、2に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態1、2における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【符号の説明】
【0141】
1、2 電動自転車
10 車体
16 クランク
31 クランク回転センサ(第3センサ)
32 モータ回転センサ(第1センサ、出力部)
34 車速センサ(第2センサ)
36 加速度センサ(第1センサ)
41 電動モータ
42 制御装置
43 制御部