(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】表示システム、カメラモニタリングシステム、表示方法、及び表示プログラム
(51)【国際特許分類】
B60R 1/20 20220101AFI20230915BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20230915BHJP
B60R 1/26 20220101ALI20230915BHJP
【FI】
B60R1/20 100
G02B27/01
B60R1/26 200
(21)【出願番号】P 2020019008
(22)【出願日】2020-02-06
【審査請求日】2022-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴之
(72)【発明者】
【氏名】亀山 徹
(72)【発明者】
【氏名】山下 明俊
(72)【発明者】
【氏名】竹下 雅史
(72)【発明者】
【氏名】金澤 裕
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-124393(JP,A)
【文献】特開2019-151314(JP,A)
【文献】特開2019-047296(JP,A)
【文献】特開2017-165218(JP,A)
【文献】特開2019-192090(JP,A)
【文献】特開2008-018798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/00
B60R 11/02
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置され、前記車両の周辺を撮像する撮像部から映像を取得する映像取得部と、
前記車両に設置され、前記撮像部により撮像された映像を表示する表示部と、
前記車両の乗員が降車することが予測されるとき、本表示システムのモードを、前記乗員の視認性が向上するモードに切り替える制御部と、
を備え
、
前記表示部は、筐体内に表示器と複数の反射面を有し、
前記表示器から出射される光が前記複数の反射面に反射して前記筐体の外部に出射されることにより、前記乗員から前記表示器までの視距離が延長されており、
前記制御部は、前記乗員が降車することが予測されるとき、前記筐体内の前記表示器を、前記筐体外に露出させる、
表示システム。
【請求項2】
車両に設置され、前記車両の周辺を撮像する撮像部から映像を取得する映像取得部と、
前記車両に設置され、前記撮像部により撮像された映像を表示する表示部と、
前記車両の乗員が降車することが予測されるとき、本表示システムのモードを、前記乗員の視認性が向上するモードに切り替える制御部と、
を備え、
前記表示部は、筐体内に表示器と複数の反射面を有し、
前記表示器から出射される光が前記複数の反射面に反射して前記筐体の外部に出射されることにより、前記乗員から前記表示器までの視距離が延長されており、
前記表示部は、前記筐体の開口部に取り付けられ、入射光の一部を透過し一部を反射する反射鏡を有し、
前記複数の反射面は、前記反射鏡の反射面を含み、
前記制御部は、前記乗員が降車することが予測されるとき、
前記筐体内において、表示面が前記反射鏡に対向する方向を向くように前記表示器の向きを回転させる、
表示システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記乗員が降車することが予測されるとき、前記表示部に表示される映像を、広角映像に切り替える、
請求項1
または2に記載の表示システム。
【請求項4】
前記表示システムの前記表示部は、運転席側と助手席側にそれぞれ設置されており、
前記助手席側の前記表示システムの向きは、前記運転席に座った運転者の視点位置に応じた角度に調整されており、
前記乗員は、前記車両の助手席に座っている同乗者であり、
前記制御部は、前記乗員が降車することが予測されるとき、前記助手席側の前記表示システムの向きを、前記助手席に座っている同乗者の視点位置に応じた角度に調整する、
請求項1から
3のいずれか1項に記載の表示システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記乗員が着用していたシートベルトが外されたことを示す検知信号を受信したとき、前記乗員が降車すると予測する、
請求項1から
4のいずれか1項に記載の表示システム。
【請求項6】
前記撮像部により撮像された映像を解析する映像解析部をさらに備え、
前記制御部は、前記映像の解析結果をもとに、前記車両に後方から接近する対象物が存在するか否か判定し、前記車両に後方から接近する対象物が存在しない場合、前記乗員が降車することが予測されるときでも、前記表示システムのモードを切り替えない、
請求項1から
5のいずれか1項に記載の表示システム。
【請求項7】
前記乗員は、前記車両の後部座席に座っている同乗者であり、
前記表示部は、後部座席用の表示部であり、
前記制御部は、前記乗員が降車することが予測されるとき、前記後部座席用の表示部に、前記撮像部により撮像された映像を表示する、
請求項1
または2に記載の表示システム。
【請求項8】
車両に設置され、前記車両の周辺を撮像する撮像部と、
前記車両に設置され、前記撮像部により撮像された映像を表示する表示部と、
前記車両の乗員が降車することが予測されるとき、表示システムのモードを、前記乗員の視認性が向上するモードに切り替える制御部と、
を備え
、
前記表示部は、筐体内に表示器と複数の反射面を有し、
前記表示器から出射される光が前記複数の反射面に反射して前記筐体の外部に出射されることにより、前記乗員から前記表示器までの視距離が延長されており、
前記制御部は、前記乗員が降車することが予測されるとき、前記筐体内の前記表示器を、前記筐体外に露出させる、
カメラモニタリングシステム。
【請求項9】
車両に設置され、前記車両の周辺を撮像する撮像部と、
前記車両に設置され、前記撮像部により撮像された映像を表示する表示部と、
前記車両の乗員が降車することが予測されるとき、表示システムのモードを、前記乗員の視認性が向上するモードに切り替える制御部と、
を備え、
前記表示部は、筐体内に表示器と複数の反射面を有し、
前記表示器から出射される光が前記複数の反射面に反射して前記筐体の外部に出射されることにより、前記乗員から前記表示器までの視距離が延長されており、
前記表示部は、前記筐体の開口部に取り付けられ、入射光の一部を透過し一部を反射する反射鏡を有し、
前記複数の反射面は、前記反射鏡の反射面を含み、
前記制御部は、前記乗員が降車することが予測されるとき、前記筐体内において、表示面が前記反射鏡に対向する方向を向くように前記表示器の向きを回転させる、
カメラモニタリングシステム。
【請求項10】
車両に設置され、前記車両の周辺を撮像する撮像部から映像を取得するステップと、
前記車両に設置された表示部に、前記撮像部により撮像された映像を表示するステップと、
前記車両の乗員が降車することが予測されるとき、表示システムのモードを、前記乗員の視認性が向上するモードに切り替えるステップと、
を有
し、
前記表示部は、筐体内に表示器と複数の反射面を有し、
前記表示器から出射される光が前記複数の反射面に反射して前記筐体の外部に出射されることにより、前記乗員から前記表示器までの視距離が延長されており、
前記切り替えるステップは、前記乗員が降車することが予測されるとき、前記筐体内の前記表示器を、前記筐体外に露出させる、
表示方法。
【請求項11】
車両に設置され、前記車両の周辺を撮像する撮像部から映像を取得するステップと、
前記車両に設置された表示部に、前記撮像部により撮像された映像を表示するステップと、
前記車両の乗員が降車することが予測されるとき、表示システムのモードを、前記乗員の視認性が向上するモードに切り替えるステップと、
を有し、
前記表示部は、筐体内に表示器と複数の反射面を有し、
前記表示器から出射される光が前記複数の反射面に反射して前記筐体の外部に出射されることにより、前記乗員から前記表示器までの視距離が延長されており、
前記表示部は、前記筐体の開口部に取り付けられ、入射光の一部を透過し一部を反射する反射鏡を有し、
前記複数の反射面は、前記反射鏡の反射面を含み、
前記切り替えるステップは、前記乗員が降車することが予測されるとき、前記筐体内において、表示面が前記反射鏡に対向する方向を向くように前記表示器の向きを回転させる、
表示方法。
【請求項12】
車両に設置され、前記車両の周辺を撮像する撮像部から映像を取得する処理と、
前記車両に設置された表示部に、前記撮像部により撮像された映像を表示する処理と、
前記車両の乗員が降車することが予測されるとき、表示システムのモードを、前記乗員の視認性が向上するモードに切り替える処理と、
をコンピュータに実行させ
、
前記表示部は、筐体内に表示器と複数の反射面を有し、
前記表示器から出射される光が前記複数の反射面に反射して前記筐体の外部に出射されることにより、前記乗員から前記表示器までの視距離が延長されており、
前記切り替える処理は、前記乗員が降車することが予測されるとき、前記筐体内の前記表示器を、前記筐体外に露出させる、
表示プログラム。
【請求項13】
車両に設置され、前記車両の周辺を撮像する撮像部から映像を取得する処理と、
前記車両に設置された表示部に、前記撮像部により撮像された映像を表示する処理と、
前記車両の乗員が降車することが予測されるとき、表示システムのモードを、前記乗員の視認性が向上するモードに切り替える処理と、
をコンピュータに実行させ、
前記表示部は、筐体内に表示器と複数の反射面を有し、
前記表示器から出射される光が前記複数の反射面に反射して前記筐体の外部に出射されることにより、前記乗員から前記表示器までの視距離が延長されており、
前記表示部は、前記筐体の開口部に取り付けられ、入射光の一部を透過し一部を反射する反射鏡を有し、
前記複数の反射面は、前記反射鏡の反射面を含み、
前記切り替える処理は、前記乗員が降車することが予測されるとき、前記筐体内において、表示面が前記反射鏡に対向する方向を向くように前記表示器の向きを回転させる、
表示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載される表示システム、カメラモニタリングシステム、表示方法、及び表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の助手席から同乗者が降車するために助手席のドアを開けた時に、後方から接近するバイクや自転車などと衝突する事故が多発している。この衝突事故の殆どが、同乗者が安全確認を怠ったことが原因とされている。現在の車両には、運転者以外が後方を確認するためのミラーがなく、同乗者は降車時に目視で安全確認を行うことが必要とされている。今後、都市部を中心にレンタサイクルが普及すると、上記の衝突事故がさらに増加することが予想される。
【0003】
そんな中、近年、通常のサイドミラーの代わりにカメラを設置し、カメラで撮像される車両の後側方の映像を車室内に設置された左右一対のモニタに表示させるカメラモニタリングシステム(CMS;Camera Monitoring System)が実用化されている(例えば、特許文献1参照)。一般的なカメラモニタリングシステムでは、モニタの筐体の設置角度、及びモニタに表示される映像の画角または表示範囲が、運転者の視点を基準に、運転者が見やすいように調整されている。一方、同乗者が降車する際にも、カメラモニタリングシステムを使用したいというニーズが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、カメラモニタリングシステムの降車時の視認性を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の表示システムは、車両に設置され、前記車両の周辺を撮像する撮像部から映像を取得する映像取得部と、前記車両に設置され、前記撮像部により撮像された映像を表示する表示部と、前記車両の乗員が降車することが予測されるとき、本表示システムのモードを、前記乗員の視認性が向上するモードに切り替える制御部と、を備える。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本開示の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、カメラモニタリングシステムの降車時の視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る、カメラモニタリングシステムを説明するための図である。
【
図2】実施の形態に係るカメラモニタリングシステムのシステム構成例を示す図である。
【
図3】
図2に示した構成例1に係るモード制御部によるモード切替制御の流れを示すフローチャートである。
【
図4】実施の形態に係る表示システムの構成例を示す図である。
【
図5】降車視点モードに対応した表示システムの構成例1を示す図である。
【
図6】降車視点モードに対応した表示システムの構成例2を示す図である。
【
図7】実施の形態に係る、カメラモニタリングシステムの撮像部と表示システムの設置位置を車両の上から見た図である。
【
図8】助手席側の表示システムの向きを調整した後のカメラモニタリングシステムを示す図である。
【
図9】標準レンズと広角レンズを搭載した撮像部を含むカメラモニタリングシステムを示す図である。
【
図10】ボンネットの助手席側の前方に別の撮像部が設置されているカメラモニタリングシステムを示す図である。
【
図11】撮像部から取得した映像のフレームから切り出す範囲の一例を示す図である。
【
図12】実施の形態に係るカメラモニタリングシステムの構成例2を示す図である。
【
図13】
図12に示した構成例2に係るモード制御部によるモード切替制御の流れを示すフローチャートである。
【
図14】右後部座席用の表示部と、左後部座席用の表示部の設置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施の形態に係る、カメラモニタリングシステムを説明するための図である。
図1に示すカメラモニタリングシステムは、一般的な光学式のサイドミラーを、撮像部10R、10Lと表示システム20R、20Lを含むカメラモニタリングシステム(電子式のサイドミラー)に置き換えたものである。
図1に示す例では、一般的な光学式のサイドミラー(ドアミラー)の位置に撮像部10R、10Lが設置されている。
図1に示す、撮像部10R、10Lを車外に固定するための取付部材4R、4Lの形状は一例であり、任意の形状の取付部材を用いることができる。例えば撮像部10R、10Lは、車体により近い位置に固定されてもよい。その場合、取付部材4R、4Lが小型化することにより空気抵抗が低減され、車両の燃費が改善される。
【0011】
右側の撮像部10Rは、車両の右後側方を撮像し、撮像した映像を右側の表示システム20Rに送信する。左側の撮像部10Lは、車両の左後側方を撮像し、撮像した映像を左側の表示システム20Lに送信する。
図1に示す例では、右側の表示システム20Rは、車室内の右側のAピラー3Rの付け根部分に設置され、左側の表示システム20Lは、左側のAピラー3Lの付け根部分に設置される。
【0012】
光学式のサイドミラーの場合、運転者の視線の焦点は、後側方に存在する実際の対象物に合う。これに対して通常のカメラモニタリングシステムでは、運転者の視線の焦点が、表示システム20R、20Lの画面に合うことになる。したがって、運転者が車両の前方を見る視線から、右側の表示システム20Rまたは左側の表示システム20Lを見る視線に切り替えたとき、運転者の目の焦点距離が大きく変化する。
【0013】
一般的に、運転者は数十m先の前方を見て運転している。
図1に示す例では、運転者の視点と右側の表示システム20Rまでの距離は約50cm~60cmである。焦点距離の大きな変化が頻繁に繰り返されると、運転者の目に疲労感を与える。また、高齢者など、焦点調節能力が低い運転者の場合、視線を切り替えてから新たな対象物に焦点が合うまでに時間がかかる。
図1では、右ハンドル車の例を示しているが、左ハンドル車の場合は、運転者の視点と左側の表示システム20Lまでの距離が約50cm~60cmとなる。
【0014】
そこで本実施の形態では表示システム20R、20Lに、遠視点ディスプレイを使用する。遠視点ディスプレイは、筐体内の表示器から出射される光が、筐体内の複数の反射面に反射して筐体の外部に出射されることにより、観察者から表示器までの視距離が延長される。
図1に示す例では、右側の表示システム20Rで表示される映像が、運転者から見て表示システム20Rより奥の位置に虚像VIRとして見える。例えば、運転者の視点と右側の虚像VIRまでの距離は1m~2mの範囲に設定される。同様に、左側の表示システム20Lで表示される映像が、運転者から見て表示システム20Lより奥の位置に虚像VILとして見える。
【0015】
表示システム20R、20Lに遠視点ディスプレイを使用することにより、運転者の運転中の焦点距離の変化を小さくすることができ、焦点調整を少なくすることができる。これにより、運転者の目の疲労感を緩和することができる。また、高齢運転者の事故防止にも貢献する。また、従来の光学式のサイドミラーの設置位置の近傍に、後方映像の虚像VIR、VILを表示させれば、従来と同様の車幅感で運転することができる。
【0016】
しかしながら、遠視点ディスプレイは視野角が狭く、ほぼ正面から見る必要がある。表示システム20R、20Lに遠視点ディスプレイを使用する場合において、助手席の同乗者が遠視点ディスプレイで表示される映像を見るには、遠視点ディスプレイの正面に正対する位置まで頭を動かす必要がある。上述のように、同乗者の降車時にも後方の安全確認が必要であり、同乗者の降車時にも、カメラモニタリングシステムを有効活用することが望まれる。
【0017】
図2は、実施の形態に係るカメラモニタリングシステムのシステム構成例を示す図である。カメラモニタリングシステムは、撮像部10及び表示システム20を備える。表示システム20は、表示部21及び制御部30を有する。表示部21は、表示器22及び光学部材23を含む。表示システム20の内部構成例は後述する。制御部30は、映像取得・処理部31及びモード制御部32を含む。
図2に示すカメラモニタリングシステムの構成は片側の構成であり、車両1には右側用のカメラモニタリングシステムと左側用のカメラモニタリングシステムの2つが搭載される。撮像部10と表示システム20間はケーブルで接続される。なお、データ伝送の信頼性が確保されれば無線伝送も可能である。
【0018】
撮像部10は、固体撮像素子と処理部を含む。固体撮像素子には例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ又はCCD(Charge Coupled Devices)イメージセンサを使用することができる。固体撮像素子は、レンズを介して入射される光を電気的な映像信号に変換し、処理部に出力する。処理部は、固体撮像素子から入力される映像信号に対して、A/D変換、ノイズ除去などの信号処理を施す。処理部は、信号処理された映像信号に対して、階調補正、色補正、輪郭補正などの各種の映像処理を施すことができる。処理部は、映像処理を施した映像信号を所定の圧縮方式に基づき圧縮し、圧縮した映像信号を表示システム20の制御部30に送信する。
【0019】
制御部30はハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、又はハードウェア資源のみにより実現できる。ハードウェア資源として、CPU、ROM、RAM、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてファームウェア等のプログラムを利用できる。
図2に示す例では制御部30が実装される制御基板が、表示システム20の筐体内に設置される例を描いているが、制御部30が実装される制御基板は、別の筐体内に設置されてもよい。すなわち、表示システム20は1つの筐体の装置として構成されてもよいし、複数の筐体に分散された装置の機能を組み合わせて実現されるように構成されてもよい。
【0020】
制御部30の映像取得・処理部31は、撮像部10から映像信号を受信し、受信した映像信号を、上記圧縮方式に対応した伸張方式で伸張する。映像取得・処理部31は、撮像部10から取得した映像の各フレームから、表示器22に表示させるべき範囲の映像を切り出す。映像取得・処理部31は切り出した映像を表示器22に出力する。
【0021】
モード制御部32は、助手席の同乗者が降車することが予測されるとき、表示部21の表示モードを、遠視点モードから降車視点モードに切り替える。遠視点モードは、表示部21の物理的な設置位置より遠方に映像が見えるモードであり、運転者が運転しやすいモードである。降車視点モードは、遠視点モードより、降車時の視認性が向上するモードである。遠視点モードと降車視点モードの具体例は後述する。
【0022】
モード制御部32は、助手席の同乗者が降車するか否かを、車両1内の各種センサからの信号をもとに予測する。例えば、モード制御部32は、助手席のシートベルトの着脱を検知するためのシートベルトセンサ51からの検知信号をもとに同乗者が降車するか否かを予測する。具体的にはモード制御部32は、シートベルトセンサ51から、助手席のシートベルトが外されたことを示す検知信号を受信したとき、同乗者が降車すると予測する。
【0023】
モード制御部32は、ドアセンサ52からの検知信号をもとに同乗者が降車するか否かを予測することもできる。例えば、モード制御部32は、ドアロックの状態を検知するためのドアセンサ52から、ドアロックが解除されたことを示す検知信号を受信したとき、同乗者が降車すると予測してもよい。また、モード制御部32は、ドアノブへの手の接触を検知するためのドアセンサ52から、ドアノブへの手の接触が発生したことを示す検知信号を受信したとき、同乗者が降車すると予測してもよい。また、モード制御部32は、ドアの開閉を検知するためのドアセンサ52から、ドアオープンを示す検知信号を受信したとき、同乗者が降車すると予測してもよい。
【0024】
遠視点モードと降車視点モード間のモード切替制御は、常に実行される必要はなく、所定の条件下で実行される。例えば、助手席に同乗者が座っていない場合は、モード切替制御が実行される必要がない。モード制御部32は、助手席の下に設置された重量センサ(不図示)から検出値を受信し、受信した検出値をもとに助手席に同乗者が座っているか否か判定する。同乗者が座っていない場合、モード制御部32は、モード切替制御を発動しない。
【0025】
また、モード制御部32は、車室内を撮影するためのカメラ(不図示)で撮像された車室内の映像をもとに、助手席に同乗者が座っているか否かを判定してもよい。具体的には、モード制御部32又はカメラ内の画像認識エンジンは、車室内の映像に対して所定の画像認識アルゴリズムを適用して、当該映像内の助手席の位置に人物が検出されるか否かを判定する。カメラ内の画像認識エンジンで判定する場合、モード制御部32は、カメラから判定結果を取得する。
【0026】
上記モード切替制御は、基本的に車両1の停止中に実行される。車両1の走行中は遠視点モードに固定される。モード制御部32は、車両ECU(Electronic Control Unit)5からシフト位置信号を受信することにより、車両1の走行状態を検知することができる。例えば、シフトがパーキング位置にある場合、モード制御部32は、車両1が停止中であると判定する。シフトがドライブ又はバックにある場合、モード制御部32は、ブレーキ開度センサ、アクセル開度センサ、及び車速センサの少なくとも一つから検出値を受信することにより、車両1が一時停止中であるか否か判定する。一時停止中でも、上記モード切替制御が実行される。なお、車両1が停止直前の徐行中に、同乗者が降車の準備をするためにシートベルトを外した場合も、上記モード切替制御が実行されてもよい。
【0027】
なお、車両1が駐車場などの安全な場所に停車している場合、後方から接近するバイクや自転車などと衝突する危険性が低いため、上記モード切替制御が停止されてもよい。例えば、モード制御部32は、車両1の周囲に設置された複数のソナー(不図示)からの検出値をもとに、車両1が安全な場所に停車しているか否か判定する。例えば、車両1の左側に固定対象物(例えば、壁、縁石、他の車両)が存在し、当該固定対象物との距離が所定値未満のとき、バイクや自転車が入ってこられないため安全と判定する。
【0028】
モード制御部32は、車両ECU5からイグニッション信号を受信する。運転者によりイグニッションオンされると、モード制御部32は、表示システム20を降車視点モードで起動する。カメラモニタリングシステムの起動直後は、走行前であるため、遠視点モードのメリットが少なく、車両周辺の安全確認に有利な降車視点モードのほうがメリットが大きい。運転者が車両1の走行を開始すると、モード制御部32は、降車視点モードから遠視点モードに切り替える。
【0029】
運転者によりイグニッションオフされると、モード制御部32は、表示システム20を遠視点モードから降車視点モードに切り替える。モード制御部32は、乗員全員の降車を確認するとカメラモニタリングシステムをオフする。例えば、モード制御部32は、各座席の下に設置された重量センサからの検出値をもとに乗員全員が降車したか否かを判定する。また、全てのドアのドアセンサ52から、ドアロックがかかったことを示す信号を受信したとき、乗員全員が降車したと判定してもよい。また、モード制御部32は、乗員全員の降車を確認するのではなく、遠視点モードから降車視点モードに切り替えた時刻から所定時間の経過後に、カメラモニタリングシステムをオフしてもよい。
【0030】
モード制御部32は、遠視点モードから降車視点モードに切り替える際、助手席の同乗者に助手席側の表示システム20を見るように促す通知を行ってもよい。通常、助手席の同乗者は、カメラモニタリングの助手席側の表示システム20に表示される映像を見る習慣がない。したがって、降車時に、助手席側の表示システム20に後方の映像を表示していても、同乗者が見ていないことが多い。
【0031】
例えば、表示システム20の筐体にLEDランプ(不図示)を設け、モード制御部32は、遠視点モードから降車視点モードに切り替える際、当該LEDランプを点滅させてもよい。また、モード制御部32は、遠視点モードから降車視点モードに切り替える際、当該LEDランプの発光色を、目立つ色(例えば、赤色)に変更してもよい。
【0032】
また、例えば、表示システム20にスピーカ(不図示)を設け、モード制御部32は、遠視点モードから降車視点モードに切り替える際、当該スピーカから警告音または警告メッセージを出力させてもよい。
【0033】
また、モード制御部32は、遠視点モードから降車視点モードに切り替える際、表示システム20に表示される映像内に、助手席の同乗者に注意喚起を促すためのメッセージを含めてもよい。また、モード制御部32は、遠視点モードから降車視点モードに切り替える際、表示システム20に表示される映像の輝度を向上させてもよい。
【0034】
以上の説明においてモード制御部32は、車両1内の各種センサやECU5から、車載ネットワーク(例えば、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network))を介して各種の信号を受信することができる。なお、特定のセンサとモード制御部32間を専用の配線で接続してもよい。なお、制御部30の機能を車両ECU5に統合するシステム構成も可能である。
【0035】
図3は、
図2に示した構成例1に係るモード制御部32によるモード切替制御の流れを示すフローチャートである。モード制御部32は、助手席に同乗者が座っているか否か判定する(S10)。座っていない場合(S10のN)、モード制御部32は、モード切替制御を停止する。座っている場合(S10のY)、モード制御部32は、同乗者の降車を予測するためのセンサ情報を取得する(S12)。モード制御部32は、取得したセンサ情報をもとに同乗者が降車するか否か予測する(S14)。降車が予測されない場合(S14のN)、モード制御部32は遠視点モードを選択する(S16)。降車が予測される場合(S14のY)、モード制御部32は降車視点モードを選択する(S18)。以上のステップS10-ステップS18の処理が、カメラモニタリングシステムの起動中、実行される。
【0036】
図4は、実施の形態に係る表示システム20の構成例を示す図である。表示システム20の筐体内には、表示器22、第1反射鏡23a、第2反射鏡23b、第3反射鏡23c、及び制御部30が含まれる。表示器22と、表示器22から出射された光を表示システム20の外部に向かって反射する第3反射鏡23cとの間の光路に、第1反射鏡23a及び第2反射鏡23bが設置される。
【0037】
表示器22は光源となるディスプレイであり、例えば、小型の液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、マイクロLEDディスプレイを使用することができる。表示器22は、筐体内の下部に、表示面を上側に向けた状態で配置されている。第1反射鏡23aは、例えば平面鏡であり、筐体内の上部に、反射面を下側に向けた状態で配置されている。
【0038】
第2反射鏡23bは、平面状に形成されたビームスプリッタで構成されており、光透過性を有する。第2反射鏡23bは、入射光の一部を透過し、一部を反射する機能を有している。
図4に示す例では、光の透過率と反射率とが50%ずつのハーフミラーを使用している。第2反射鏡23bは、筐体の開口部に取り付けられており、表示器22の表示面と第1反射鏡23aの反射面にそれぞれ隣接する位置に配置されている。第2反射鏡23bは、第1反射鏡23aからの反射光の入射方向(
図4では、光路A12と平行な方向)、及び第3反射鏡23cからの反射光の入射方向(
図4では、光路A14と平行な方向)に対して、反射面の法線方向がそれぞれ斜めに交差するように配置されている。
【0039】
第3反射鏡23cは、例えば凹面鏡であり、筐体内において、表示器22の表示面と第1反射鏡23aの反射面にそれぞれ隣接する位置に配置されている。第3反射鏡23cは筐体内において、第3反射鏡23cの反射面と第2反射鏡23bの反射面とが対向するように配置されている。
【0040】
第1反射鏡23aは、表示器22から出射された光を第2反射鏡23bに向かって反射する。第2反射鏡23bは、第1反射鏡23aからの反射光を第3反射鏡23cに向かって反射する。すなわち、表示器22から出射された光は、第1反射鏡23a、第2反射鏡23bの順に反射された後、第3反射鏡23cに入射する。第3反射鏡23cは、第2反射鏡23bからの反射光を、第2反射鏡23bに向かって反射する。第3反射鏡23cからの反射光は、第2反射鏡23bを透過して表示システム20の外部に出力される。
【0041】
表示器22に画像が表示されると、第3反射鏡23cで反射された画像が、第2反射鏡23bを構成するビームスプリッタを透過して、観察者(例えば、運転者)に虚像として視認される。観察者は、第1反射鏡23a、第2反射鏡23b及び第3反射鏡23cにより反射された画像を見ることになる。観察者は、第2反射鏡23bを通して第3反射鏡23cを見る方向の、第3反射鏡23cより奥の位置に、画像が表示されているように見える。
【0042】
図4に示す構成では、表示器22から出射された光が第3反射鏡23cに到達するまでに、表示器22から第1反射鏡23aに光が伝達される光路A11と、第2反射鏡23bから第3反射鏡23cに光が伝達される光路A13とが交差する。このように、光路A11と光路A13が交差しているため、表示器22から第3反射鏡23cまでの光路長を長くしつつ、第2反射鏡23bから第3反射鏡23cまでの距離を短くすることができる。すなわち、虚像までの視距離を長くしつつ、表示システム20の筐体を小型化することができる。
【0043】
制御基板に実装されている制御部30は、表示器22に、撮像部10から取得した映像信号を供給する。なお、当該制御基板は、表示システム20の筐体外に設置されていてもよい。
【0044】
以下、降車視点モードにおいて実行される具体的な制御内容について説明する。一般のカメラモニタリングシステムのように、表示システム20に通常のモニタを使用した場合、モニタの画面を斜め方向から見ても画面を視認することができる。例えば、助手席側のモニタが運転者が見やすい角度に設置されていても、助手席の同乗者は、助手席側のモニタの画面を視認することができる。特に、広視野角のディスプレイを使用している場合、助手席の同乗者からも、助手席側のモニタの画面を明瞭に視認することができる。したがって、本実施の形態において表示システム20に使用している遠視点ディスプレイを、通常のディスプレイの状態に近づければ、助手席の同乗者からも、助手席側の表示システム20の画面を明瞭に視認することができるようになる。そこで降車視点モードでは、助手席の同乗者から表示器22までの視距離が、遠視点モードのときより短くなるように設定することが考えられる。
【0045】
図5は、降車視点モードに対応した表示システム20の構成例1を示す図である。
図5に示す構成例1では、表示システム20の筐体の下面が開口し、表示器22が筐体の外部に露出させる機構を有する。
図5に示す構成例1では、表示システム20の筐体の下面が開口した後、表示面が観察者(例えば、同乗者)に対向する方向に、表示器22が下側に90°回転し、筐体の下側に露出する。この状態では、観察者は、表示器22に表示された映像を直接、見ることになる。これにより、観察者から表示器22までの視距離が短くなり、第1反射鏡23a、第2反射鏡23b及び第3反射鏡23cにより反射された画像を虚像として見る場合より、サイズが大きく・明るい映像を見ることができる。また、視認可能な視野角が広がり、表示器22に表示された映像を斜め方向からも視認することができるようになる。
【0046】
表示器22の外部への露出は、助手席の同乗者に助手席側の表示システム20を見るように促す通知機能としての役割も果たす。助手席側の表示システム20の筐体から表示器22を外部に露出させれば、同乗者の注意を助手席側の表示システム20に惹き付けることができる。
【0047】
なお、
図5に示す表示システム20を上下反対に構成した場合、表示システム20の筐体の上面が開口し、表示面が観察者に対向する方向に、表示器22が上側に90°回転し、筐体の上側に露出する。なお、
図5に示した表示システム20の構成は一例であり、観察者から表示器22までの視距離を調整できる構成であれば、どのような構成を採用してもよい。
【0048】
図6は、降車視点モードに対応した表示システム20の構成例2を示す図である。
図6に示す構成例2では、筐体内において、表示面が第2反射鏡23bに対向する方向に、表示器22を起立させる。
図6に示す例では、表示器22が、第2反射鏡23bと平行な位置までリフトアップし、上側に90°回転する。なお、表示器22が、第2反射鏡23bと平行に対面する位置まで回転してもよい。これにより、観察者から表示器22までの視距離が短くなる。また、視認可能な視野角も広がる。
【0049】
なお、観察者から表示器22までの視距離を、表示器22以外の内部機構の切り替えにより短くすることも可能である。例えば、第1反射鏡23aを光路A14の位置まで移動させ、表示器22から出射された光を第2反射鏡23bに向けて反射するように、第1反射鏡23aの角度を調整する。これにより、反射回数が減り、観察者から表示器22までの視距離が短くなる。
【0050】
図7は、実施の形態に係る、カメラモニタリングシステムの撮像部10と表示システム20の設置位置を車両1の上から見た図である。
図1で示したように右側の撮像部10Rと左側の撮像部10Lは、一般的な光学式のドアミラーの設置位置と同様の位置に設置されている。右側の表示システム20Rは、車室内の右側のAピラーの付け根部分に設置され、左側の表示システム20Lは、左側のAピラーの付け根部分に設置される。右側の表示システム20R及び左側の表示システム20Lは、運転者の視点EP1から見やすい角度に調整されている。この状態では、助手席の同乗者は、左側の表示システム20Lに表示された映像を見ることが難しい。そこで降車視点モードでは、助手席側の表示システム20Lの向きを、助手席に座っている同乗者の視点位置に応じた角度に調整する。
【0051】
図8は、助手席側の表示システム20Lの向きを調整した後のカメラモニタリングシステムを示す図である。
図8に示すように降車視点モードでは、モード制御部32は、左側の表示システム20Lを助手席の方向に所定の角度、回転させる。これにより、左側の表示システム20Lの表示面と、助手席に座っている同乗者を正対させることができ、左側の表示システム20Lに表示されている映像の、同乗者の視点EP2からの視認性を向上させることができる。
【0052】
降車する同乗者が後方の安全を広範囲に確認できるように、降車視点モードでは、助手席側の表示システム20Lに、より広角の映像を表示させることが望ましい。広角の映像を表示させるには、広角の映像を撮像することが有効である。例えば、助手席側の撮像部10Lに標準レンズと広角レンズを搭載し、降車視点モードでは、広角レンズを介して撮像された映像を、助手席側の表示システム20Lに表示させてもよい。
【0053】
図9は、標準レンズと広角レンズを搭載した撮像部10Lを含むカメラモニタリングシステムを示す図である。
図9において、助手席側の撮像部10Lの第1画角範囲Vsは標準レンズを介して撮像可能な画角範囲を示し、第2画角範囲Vwは広角レンズを介して撮像可能な画角範囲を示す。降車視点モードでは、モード制御部32は、助手席側の撮像部10Lの向きを所定の角度、車両1の外側に向けて回転させるとともに、助手席側の撮像部10Lに、広角レンズを使用して撮像させる。
【0054】
降車する同乗者が後方の安全を広範囲に確認できるようにするには、車両1の前方の位置に設置された撮像部10で撮像した映像を表示することも有効である。
【0055】
図10は、ボンネットの助手席側の前方に別の撮像部10Laが設置されているカメラモニタリングシステムを示す図である。
図10において、別の撮像部10Laは、フェンダーミラーが設置される位置の近傍に設置されている。降車視点モードでは、モード制御部32は、前方に設置された撮像部10Laに車両1の後方映像を撮像させ、撮像した映像を助手席の表示システム20Lに送信させる。これにより、降車する同乗者がより広範囲の映像を見ることができ、降車時の安全性が向上する。
【0056】
降車する同乗者が後方の安全を広範囲に確認できるように、降車視点モードでは、映像取得・処理部31が、撮像部10Lから取得した映像の各フレームから切り出す範囲を拡大させてもよい。
【0057】
図11は、撮像部10Lから取得した映像のフレームから切り出す範囲の一例を示す図である。撮像部10Lから映像取得・処理部31が取得した映像のフレームF1の範囲は、固体撮像素子の撮像範囲に対応する範囲であってもよいし、撮像範囲より狭い範囲であってもよい。遠視点モードでは、映像取得・処理部31は、取得した映像のフレームF1の範囲から、所定の切り出し範囲Rcの映像を切り出し、切り出した映像のサイズを調整して表示器22に出力する。降車視点モードでは、映像取得・処理部31は、切り出し範囲Rcより広い範囲の映像を切り出して、切り出した映像のサイズを調整して表示器22に出力する。なお、降車視点モードでは、映像取得・処理部31は、撮像部10Lから取得した映像をそのまま表示器22に出力してもよい。
図11に示す例では、切り出し範囲Rcを拡大することにより、後方から接近する自転車O1の全体が映像に含まれるようになる。
【0058】
また、降車視点モードでは、映像取得・処理部31は、切り出し範囲Rcを車両1の外側の方向にシフトさせてもよい。また、降車視点モードでは、映像取得・処理部31は、切り出し範囲Rcを車両1の下側の方向にシフトさせてもよい。また、降車視点モードでは、映像取得・処理部31は、切り出し範囲Rcを車両1の外側かつ下側の方向にシフトさせてもよい。いずれの場合も、降車する同乗者が見る映像の死角を減らすことができ、降車時の安全性が向上する。
【0059】
モード制御部32は、遠視点モードから降車視点モードに切り替える際、上記した、表示システム20の向きを調整する制御、同乗者から表示器22までの視距離を短くする制御、表示映像を広角に切り替える制御、及び切り出し範囲Rcを変更する制御の少なくとも一つを実行する。これらの制御の全てを実行してもよいし、一部を実行してもよい。
【0060】
図12は、実施の形態に係るカメラモニタリングシステムの構成例2を示す図である。構成例2では、
図2に示した表示システム20に音出力部40が追加され、制御部30に映像解析部33が追加される。音出力部40はスピーカを含む。映像解析部33は、画像認識エンジンを含む。
【0061】
映像解析部33は、撮像部10から取得された映像に対して所定の画像認識アルゴリズムを適用して、車両1の後方に存在する対象物(例えば、他車、自転車、バイク)を検出する。映像解析部33は、撮像部10から取得された映像内から、車両1の後方に存在する対象物を検出した場合、車両1と、車両1の後方に存在する対象物との距離を推定する。モード制御部32は、推定された距離が所定値未満の場合、当該対象物の存在を運転者に知らせて注意喚起を促すための警告音または警告メッセージを音出力部40に出力させる。これにより、走行中の安全性を高めることができる。
【0062】
図13は、
図12に示した構成例2に係るモード制御部32によるモード切替制御の流れを示すフローチャートである。モード制御部32は、助手席に同乗者が座っているか否か判定する(S10)。座っていない場合(S10のN)、モード制御部32は、モード切替制御を停止する。座っている場合(S10のY)、モード制御部32は、同乗者の降車を予測するためのセンサ情報を取得する(S12)。映像解析部33は、撮像部10から取得された映像内から、車両1の後方から接近する対象物の有無を検出する(S13)。モード制御部32は、取得したセンサ情報をもとに同乗者が降車するか否か予測する(S14)。降車が予測されない場合(S14のN)、モード制御部32は遠視点モードを選択する(S16)。
【0063】
降車が予測される場合(S14のY)、モード制御部32は、映像解析部33による解析結果をもとに、後方から車両1に接近する対象物があるか否か判定する(S15)。対象物が車両1に接近しているか否かは、対象物の動きベクトルをもとに判定することができる。後方から接近する対象物がない場合(S15のN)、モード制御部32は遠視点モードを選択する(S16)。後方から接近する対象物がある場合(S15のY)、モード制御部32は、対象物の接近を助手席の同乗者に知らせて注意喚起を促すための警告音または警告メッセージを音出力部40に出力させる(S17)。モード制御部32は降車視点モードを選択する(S18)。以上のステップS10-ステップS18の処理が、カメラモニタリングシステムの起動中、実行される。
【0064】
このようにカメラモニタリングシステムの構成例2では、後方から車両1に接近する対象物が存在しない場合、助手席の同乗者が降車することが予測されるときでも、降車視点モードに切り替えず、遠視点モードを維持する。後方から接近する対象物が存在しない場合、後方から接近するバイクや自転車などと衝突する危険性が低いため、降車視点モードへの切り替えを省略することが許容される。
【0065】
以上説明したように本実施の形態によれば、助手席の同乗者の降車時に、表示システム20を遠視点モードから降車視点モードに切り替えることにより、同乗者の視認性を向上させることができる。これにより、同乗者が降車するときの安全性を向上させることができる。
【0066】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素または各処理プロセスの組み合わせに、いろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0067】
上記の実施の形態では、助手席の同乗者が降車するときの助手席側の表示システム20の視認性を向上させて、降車時の安全性を向上させる例を説明した。この点、本開示は、後部座席の同乗者が降車するときの安全性を向上させることにも応用可能である。
【0068】
図14は、右後部座席用の表示部21RRと、左後部座席用の表示部21RLの設置例を示す図である。近年、RSE(Rear Seat Entertainment)を搭載する車両1が増加している。
図14に示す例では、RSEとして、運転席のヘッドレストの後部に右後部座席用の表示部21RRが設置され、助手席のヘッドレストの後部に左後部座席用の表示部21RLが設置されている。
【0069】
モード制御部32は、右後部座席の同乗者が降車することが予測されるとき、右後部座席用の表示部21RRに、右側の撮像部10Rで撮像された映像を表示させる。また、モード制御部32は、左後部座席の同乗者が降車することが予測されるとき、左後部座席用の表示部21RLに、左側の撮像部10Lで撮像された映像を表示させる。これにより、後部座席の同乗者が降車するときの安全性を向上させることができる。
【0070】
上記の実施の形態では、助手席の同乗者が降車するときの助手席側の表示システム20を遠視点モードから降車視点モードに切り替える制御を説明した。この点、運転者が降車するときも、運転席側の表示システム20を遠視点モードから降車視点モードに切り替えてもよい。この場合、
図8に示した表示システム20の向きを調整する制御は対象外となるが、運転者から表示器22までの視距離を短くする制御、表示映像を広角に切り替える制御、及び切り出し範囲Rcを変更する制御は、対象となる。
【0071】
上記の実施の形態では、表示システム20に遠視点ディスプレイを使用する例を説明した。この点、表示システム20にHUD(Head-up Display)を使用してもよい。コンバイナ型HUDを使用する場合、コンバイナの位置および角度を調整することにより、同乗者または運転者から見える虚像の視認性を調整することができる。例えば、降車視点モードにおいて、モード制御部32は、コンバイナの位置を同乗者または運転者に近づけることにより、同乗者または運転者から見える虚像の視認性を向上させることができる。また、降車視点モードにおいて、モード制御部32は、助手席側のコンバイナを助手席の方向に所定の角度、回転させることにより、助手席側のコンバイナと、助手席の同乗者を正対させることができ、同乗者から見える虚像の視認性を向上させることができる。表示システム20にHUDを使用する場合も、モード制御部32は、表示映像を広角に切り替える制御、及び切り出し範囲Rcを変更する制御を実行可能である。
【0072】
上記の実施の形態では、表示システム20に遠視点ディスプレイを使用する例を説明した。この点、表示システム20に通常のモニタを使用することを排除するものではない。通常のモニタを使用した場合でも、モード制御部32は、同乗者の降車時に、表示システム20の向きを調整する制御、表示映像を広角に切り替える制御、及び切り出し範囲Rcを変更する制御を実行可能である。また、モード制御部32は、運転者の降車時に、表示映像を広角に切り替える制御、及び切り出し範囲Rcを変更する制御を実行可能である。
【0073】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0074】
[項目1]
車両(1)に設置され、前記車両(1)の周辺を撮像する撮像部(10)から映像を取得する映像取得部(31)と、
前記車両(1)に設置され、前記撮像部(10)により撮像された映像を表示する表示部(21)と、
前記車両(1)の乗員が降車することが予測されるとき、本表示システム(20)のモードを、前記乗員の視認性が向上するモードに切り替える制御部(32)と、
を備える表示システム(20)。
これによれば、乗員が降車するときの安全性を向上させることができる。
[項目2]
前記表示部(21)は、筐体内に表示器(22)と複数の反射面(23)を有し、
前記表示器(22)から出射される光が前記複数の反射面(23)に反射して前記筐体の外部に出射されることにより、前記乗員から前記表示器(22)までの視距離が延長されている、
項目1に記載の表示システム(20)。
これによれば、運転者の運転中の焦点距離の変化を小さくすることができる。
[項目3]
前記制御部(32)は、前記乗員が降車することが予測されるとき、前記視認性が向上するモードとして、前記乗員から前記表示器(22)までの視距離が短いモードに切り替える、
項目2に記載の表示システム(20)。
これによれば、降車する乗員の視認性を向上させることができる。
[項目4]
前記制御部(32)は、前記乗員が降車することが予測されるとき、前記筐体内の前記表示器(22)を、前記筐体外に露出させる、
項目3に記載の表示システム(20)。
これによれば、乗員から表示器(22)までの視距離を短くすることができる。また、視認可能な視野角を広げることができる。
[項目5]
前記制御部(32)は、前記乗員が降車することが予測されるとき、前記筐体内の前記表示器(22)の配置を、前記乗員から前記表示器(22)までの視距離が短くなるように移動させる、
項目3に記載の表示システム(20)。
これによれば、乗員から表示器(22)までの視距離を短くすることができる。
[項目6]
前記制御部(32)は、前記乗員が降車することが予測されるとき、前記表示部(21)に表示される映像を、広角映像に切り替える、
項目1から5のいずれか1項に記載の表示システム(20)。
これによれば、降車する乗員の視認性を向上させることができる。
[項目7]
前記表示システム(20)の前記表示部(21)は、運転席側と助手席側にそれぞれ設置されており、
前記助手席側の前記表示システム(20L)の向きは、前記運転席に座った運転者の視点位置に応じた角度に調整されており、
前記乗員は、前記車両(1)の助手席に座っている同乗者であり、
前記制御部(32)は、前記乗員が降車することが予測されるとき、前記助手席側の前記表示システム(20L)の向きを、前記助手席に座っている同乗者の視点位置に応じた角度に調整する、
項目1から6のいずれか1項に記載の表示システム(20)。
これによれば、助手席から降車する同乗者の視認性を向上させることができる。
[項目8]
前記制御部(32)は、前記乗員が着用していたシートベルトが外されたことを示す検知信号を受信したとき、前記乗員が降車すると予測する、
項目1から7のいずれか1項に記載の表示システム(20)。
これによれば、乗員の降車を的確に予測することができる。
[項目9]
前記撮像部(10)により撮像された映像を解析する映像解析部(33)をさらに備え、
前記制御部(32)は、前記映像の解析結果をもとに、前記車両(1)に後方から接近する対象物が存在するか否か判定し、前記車両(1)に後方から接近する対象物が存在しない場合、前記乗員が降車することが予測されるときでも、前記表示システム(20)のモードを切り替えない、
項目1から8のいずれか1項に記載の表示システム(20)。
これによれば、安全性を確保しつつ、モード切り替えの頻度を減らすことができる。
[項目10]
前記乗員は、前記車両(1)の後部座席に座っている同乗者であり、
前記表示部(21)は、後部座席用の表示部(21)であり、
前記制御部(32)は、前記乗員が降車することが予測されるとき、前記後部座席用の表示部(21)に、前記撮像部(10)により撮像された映像を表示する、
項目1に記載の表示システム(20)。
これによれば、後部座席から降車する同乗者の安全性を向上させることができる。
[項目11]
車両(1)に設置され、前記車両(1)の周辺を撮像する撮像部(10)と、
前記車両(1)に設置され、前記撮像部(10)により撮像された映像を表示する表示部(21)と、
前記車両(1)の乗員が降車することが予測されるとき、表示システム(20)のモードを、前記乗員の視認性が向上するモードに切り替える制御部(32)と、
を備えるカメラモニタリングシステム。
これによれば、乗員が降車するときの安全性を向上させることができる。
[項目12]
車両(1)に設置され、前記車両(1)の周辺を撮像する撮像部(10)から映像を取得するステップと、
前記車両(1)に設置された表示部(21)に、前記撮像部(10)により撮像された映像を表示するステップと、
前記車両(1)の乗員が降車することが予測されるとき、表示システム(20)のモードを、前記乗員の視認性が向上するモードに切り替えるステップと、
を有する表示方法。
これによれば、乗員が降車するときの安全性を向上させることができる。
[項目13]
車両(1)に設置され、前記車両(1)の周辺を撮像する撮像部(10)から映像を取得する処理と、
前記車両(1)に設置された表示部(21)に、前記撮像部(10)により撮像された映像を表示する処理と、
前記車両(1)の乗員が降車することが予測されるとき、表示システム(20)のモードを、前記乗員の視認性が向上するモードに切り替える処理と、
をコンピュータに実行させる表示プログラム。
これによれば、乗員が降車するときの安全性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0075】
1 車両、 3 Aピラー、 4 取付部材、 5 車両ECU、 10 撮像部、 20 表示システム、 21 表示部、 22 表示器、 23 光学部材、 23a 第1反射鏡、 23b 第2反射鏡、 23c 第3反射鏡、 30 制御部、 31 映像取得・処理部、 32 モード制御部、 33 映像解析部、 40 音出力部、 50 車両ECU、 51 シートベルトセンサ、 52 ドアセンサ、 EP1 運転者視点、 EP2 同乗者視点、 VI 虚像。