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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】光触媒電極及び光触媒電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/745 20060101AFI20230915BHJP
   B01J 27/185 20060101ALI20230915BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20230915BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20230915BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20230915BHJP
   C25B 11/052 20210101ALI20230915BHJP
   C25B 11/054 20210101ALI20230915BHJP
   C25B 11/087 20210101ALI20230915BHJP
   C25B 11/091 20210101ALI20230915BHJP
【FI】
B01J23/745 M
B01J27/185 M
B01J35/02 J
B01J37/04 102
B01J37/08
C25B11/052
C25B11/054
C25B11/087
C25B11/091
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020518284
(86)(22)【出願日】2019-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2019018064
(87)【国際公開番号】W WO2019216284
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2018089446
(32)【優先日】2018-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018157598
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100201455
【弁理士】
【氏名又は名称】横尾 宏治
(72)【発明者】
【氏名】立川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】戸澤 友和
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107051465(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103693861(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104150541(CN,A)
【文献】国際公開第2014/119117(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107268022(CN,A)
【文献】Nicola DALLE CARBONARE et al.,“Hematite Photoanodes Modified with an FeIII Water Oxidation Catalyst”,ChemPhysChem,2014年03月18日,Vol. 15,No. 6,p.1164-1174,DOI: 10.1002/cphc.201301143
【文献】Chong ZHENG et al.,“NaF-assisted hydrothermal synthesis of Ti-doped hematite nanocubes with enhanced photoelectrochemical activity for water splitting”,Applied Surface Science,2015年10月31日,Vol. 359,p.805-811,DOI: 10.1016/j.apsusc.2015.10.170
【文献】Jiaguo YU et al.,“Hydrothermal Synthesis and Visible-light Photocatalytic Activity of Novel Cage-like Ferric Oxide Hollow Spheres”,Crystal Growth & Design,2009年01月16日,Vol. 9,No. 3,p.1474-1480,DOI: 10.1021/cg800941d
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C25B 11/00 - 11/097
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の第1主面上に複数のヘマタイト系結晶粒子が積重した光触媒電極の製造方法であって、
ヘマタイト原料を原料溶媒に分散させた原料溶液を密閉容器内で前記原料溶媒の沸点以上の温度で12時間超過加熱し、仕掛粒子を形成する仕掛粒子形成工程と、
前記仕掛粒子を分散溶媒に分散させて分散溶液を形成し、前記分散溶液を前記基材上に塗布する塗布工程と、
前記仕掛粒子を焼成する焼成工程と、を含み、
前記焼成工程では、前記塗布工程において前記基材上に塗布された前記仕掛粒子を焼成するものであり、
前記原料溶媒は、水又はアルコールを含み、
前記複数のヘマタイト系結晶粒子は、メソ結晶である、光触媒電極の製造方法。
【請求項2】
基材の第1主面上に複数のヘマタイト系結晶粒子が積重した光触媒電極の製造方法であって、
ヘマタイト原料を原料溶媒に分散させた原料溶液を密閉容器内で前記原料溶媒の沸点以上の温度で12時間超過加熱し、仕掛粒子を形成する仕掛粒子形成工程と、
前記仕掛粒子を焼成する焼成工程を含み、
前記仕掛粒子形成工程では、前記密閉容器に前記原料溶液を導入し、前記密閉容器内の前記原料溶液に前記基材の一部又は全部を浸漬した状態で加熱し、
前記焼成工程では、前記原料溶液から前記基材を取り出して前記密閉容器の外部で焼成するものであり、
前記原料溶媒は、水又はアルコールを含み、
前記複数のヘマタイト系結晶粒子は、メソ結晶である、光触媒電極の製造方法。
【請求項3】
前記ヘマタイト原料は、チタン含有化合物を含む、請求項1又は2に記載の光触媒電極の製造方法。
【請求項4】
前記原料溶媒は、アルコールである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光触媒電極の製造方法。
【請求項5】
前記原料溶媒は、水である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光触媒電極の製造方法。
【請求項6】
基材の第1主面上に複数のヘマタイト系結晶粒子が積重した光触媒電極であって、
前記複数のヘマタイト系結晶粒子は、球状又は角部に丸みがある形状であって、前記基材の前記第1主面を被覆するヘマタイト層を形成しており、
前記複数のヘマタイト系結晶粒子は、メソ結晶であり、
前記複数のヘマタイト系結晶粒子の中には、隣接する第1ヘマタイト系結晶粒子と第2ヘマタイト系結晶粒子があり、
前記第1ヘマタイト系結晶粒子の外面の一部は、前記第2ヘマタイト系結晶粒子の外面と固着しており、
前記第1ヘマタイト系結晶粒子は、内部に空洞を有する、光触媒電極。
【請求項7】
前記第1ヘマタイト系結晶粒子と前記第2ヘマタイト系結晶粒子は、前記第1主面に対する直交方向に対して交差する方向に固着している、請求項に記載の光触媒電極。
【請求項8】
前記複数のヘマタイト系結晶粒子の中には、前記第1ヘマタイト系結晶粒子と隣接する第3ヘマタイト系結晶粒子があり、
前記第1ヘマタイト系結晶粒子の外面は、前記第2ヘマタイト系結晶粒子とは異なる部分で、前記第3ヘマタイト系結晶粒子の外面の一部と固着している、請求項又はに記載の光触媒電極。
【請求項9】
前記第1ヘマタイト系結晶粒子は、内部に空洞を2つ以上有する、請求項6乃至8のいずれか1項に記載の光触媒電極。
【請求項10】
前記空洞は、外部と連通している、請求項6乃至9のいずれか1項に記載の光触媒電極。
【請求項11】
前記ヘマタイト層は、前記基材の前記第1主面に対して直交する断面において、500nm四方の範囲にヘマタイト系結晶粒子の内部に設けられた空洞が4コ以上存在する、請求項6乃至10のいずれか1項に記載の光触媒電極。
【請求項12】
前記ヘマタイト層は、ヘマタイト系結晶粒子の間を通過し、外面から前記基材に向かって延びる空隙がある、請求項6乃至11のいずれか1項に記載の光触媒電極。
【請求項13】
前記複数のヘマタイト系結晶粒子は、一つの結晶集合体を構成しており、
前記結晶集合体は、隣接するヘマタイト系結晶粒子間の界面に穴が形成されている、請求項6乃至12のいずれか1項に記載の光触媒電極。
【請求項14】
前記ヘマタイト系結晶粒子は、チタンがドーピングされている、請求項6乃至13のいずれか1項に記載の光触媒電極。
【請求項15】
前記ヘマタイト層は、平均厚みが1.0μm以上である、請求項6乃至14のいずれか1項に記載の光触媒電極。
【請求項16】
走査型電子顕微鏡で観察される前記ヘマタイト系結晶粒子の数平均粒子径と、X線回折測定における回折ピークの半値幅に基づいてシェラー式によって算出される結晶子径と、が相違しており、
前記結晶子径に対する前記ヘマタイト系結晶粒子の数平均粒子径の比率が3以上20以下である、請求項6乃至15のいずれか1項に記載の光触媒電極。
【請求項17】
前記基材は、透明基板上に透明導電層が積層された透明導電性基板であり、
前記透明導電層は、表面に凹凸があり、
前記複数のヘマタイト系結晶粒子の中には、前記透明導電層の凹部の深さよりも粒径が小さく、かつ前記凹部内で前記透明導電層と固着しているヘマタイト系結晶粒子が存在する、請求項6乃至16のいずれか1項に記載の光触媒電極。
【請求項18】
対極とともに水に浸漬させた状態で光を照射することで水を酸化する、請求項乃至17のいずれか1項に記載の光触媒電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘマタイト系結晶粒子が積重した光触媒電極及び光触媒電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素ガス燃料を製造するにあたって、太陽光を使用して水を電気分解し、水素ガス燃料を生成する光触媒電極の開発がなされている。
この光触媒電極としては、例えば、ヘマタイト触媒を用いたものがある。このヘマタイト触媒は、酸化タングステン(WO3)やバナジン酸ビスマス(BiVO4)などの他の光触媒に比べて吸収波長域が広く、可視光を吸収し、さらに理論限界効率が高いことから、盛んに研究がなされている。
本発明に関連する文献として、特許文献1,2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2004-504934号公報
【文献】国際公開第2013/115213号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のヘマタイト触媒の研究では、個々の粒子単位での結晶構造を制御することで、ヘマタイト触媒を構成する粒子そのものの電荷分離効率を向上させ、触媒活性の向上を図っていた。
【0005】
しかし、従来のヘマタイト触媒の構造では、ヘマタイト粒子間で粒子界面の不整合が生じ、粒界抵抗が大きくなってしまう。そのため、従来のヘマタイト触媒では、光を照射して電子と正孔に分離しても、分離された電子がヘマタイト粒子間を移動して導電性基板に至る前に、ヘマタイト粒子内で正孔と再結合してしまい、十分な触媒活性が得られなかった。
【0006】
また、従来のヘマタイト触媒では、個々の粒子内で電荷分離効率を向上できても、実際に光触媒電極としてヘマタイト触媒を導電性基板上に積層した場合に、導電性基板とヘマタイト触媒の接合強度が十分でなく、光電流密度を測定した後に導電性基板から剥がれてしまう問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、従来に比べて、ヘマタイト系結晶粒子が基材から剥がれにくく、粒界抵抗が小さい光触媒電極及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために本発明者らが、ヘマタイト系の光触媒において、基材からの剥がれ及び触媒活性の観点から、鋭意検討を重ねた。その結果、ソルボサーマル法を用いて、所定時間加熱することで良質の仕掛粒子が形成され、さらに仕掛粒子を焼成することで、従来に比べて基材から剥がれにくく、高い触媒活性をもつヘマタイト系結晶粒子を製造できることを発見した。
【0009】
この発見のもとに導き出された本発明の一つの様相は、基材の第1主面上に複数のヘマタイト系結晶粒子が積重した光触媒電極の製造方法であって、ヘマタイト原料を原料溶媒に分散させた原料溶液を密閉容器内で前記原料溶媒の沸点以上の温度で12時間超過加熱し、仕掛粒子を形成する仕掛粒子形成工程と、前記仕掛粒子を焼成する焼成工程を含む、光触媒電極の製造方法である。
【0010】
ここでいう「ヘマタイト系結晶粒子」とは、ヘマタイト(α-Fe23)の結晶構造を基本骨格とする結晶粒子をいい、ヘマタイトだけではなく、ヘマタイトにFe以外の金属がドーピングされているものも含む。
ここでいう「仕掛粒子」には、最終製品の製造途中に生じる粒子であり、前駆体の粒子やアニール等の焼成前の粒子を含む。
【0011】
好ましい様相は、前記仕掛粒子を分散溶媒に分散させて分散溶液を形成し、前記分散溶液を前記基材上に塗布する塗布工程をさらに含み、前記焼成工程では、前記塗布工程において前記基材上に塗布された前記仕掛粒子を焼成することである。
【0012】
本様相によれば、あらかじめ別途密閉容器で仕掛粒子を形成し、形成したヘマタイト系結晶粒子を別体の基材上で焼結するので、合成手順が簡便で、工業的に大量生産が可能である。
【0013】
好ましい様相は、前記仕掛粒子形成工程では、前記密閉容器に前記原料溶液を導入し、前記密閉容器内の前記原料溶液に前記基材の一部又は全部を浸漬した状態で加熱し、前記焼成工程では、前記原料溶液から前記基材を取り出して前記密閉容器の外部で焼成することである。
【0014】
本様相によれば、基材を原料溶液に浸漬し、密閉状態で加熱し反応させるため、基材上に規則的に仕掛粒子が積重した状態で加熱でき、ヘマタイト系結晶粒子が規則的に配列した状態で基材上に積重できる。
【0015】
好ましい様相は、前記ヘマタイト原料は、チタン含有化合物を含むことである。
【0016】
ここでいう「チタン含有化合物」とは、化学式内にチタンを含む化合物をいい、例えば、チタン含有ハロゲン化物、チタン含有硝酸化合物、チタン含有硫酸化合物、チタン含有アルコキシド、チタン含有錯体化合物などをいう。
【0017】
好ましい様相は、前記原料溶媒は、アルコールである。
【0018】
好ましい様相は、前記原料溶媒は、水である。
【0019】
本発明の一つの様相は、基材の第1主面上に複数のヘマタイト系結晶粒子が積重した光触媒電極であって、前記複数のヘマタイト系結晶粒子は、球状又は角部に丸みがある形状であって、前記基材の前記第1主面を被覆するヘマタイト層を形成しており、前記複数のヘマタイト系結晶粒子の中には、隣接する第1ヘマタイト系結晶粒子と第2ヘマタイト系結晶粒子があり、前記第1ヘマタイト系結晶粒子の外面の一部は、前記第2ヘマタイト系結晶粒子の外面と固着している、光触媒電極である。
【0020】
ここでいう「角部に丸みがある形状」とは、角部が丸まって曲面が形成された形状をいう。すなわち、「角部に丸みがある形状」は、角張っておらず、角部が尖っていない。
【0021】
本様相によれば、基材の第1主面がヘマタイト系結晶粒子で層状に覆われているため、単位面積当たりの触媒活性を向上できる。
本様相によれば、隣接する第1ヘマタイト系結晶粒子と第2ヘマタイト系結晶粒子の外面が固着しているため、結着性が良好で従来に比べて粒界抵抗を小さくできる。
このように、本様相によれば、例えば、水に晒した状態で光を照射し、水を分解する際に、従来に比べて高活性な光触媒となる。
【0022】
好ましい様相は、前記第1ヘマタイト系結晶粒子と前記第2ヘマタイト系結晶粒子は、前記第1主面に対する直交方向に対して交差する方向に固着していることである。
【0023】
好ましい様相は、前記複数のヘマタイト系結晶粒子の中には、前記第1ヘマタイト系結晶粒子と隣接する第3ヘマタイト系結晶粒子があり、前記第1ヘマタイト系結晶粒子の外面は、前記第2ヘマタイト系結晶粒子とは異なる部分で、前記第3ヘマタイト系結晶粒子の外面の一部と固着していることである。
【0024】
好ましい様相は、前記第1ヘマタイト系結晶粒子は、内部に空洞を有することである。
【0025】
より好ましい様相は、前記第1ヘマタイト系結晶粒子は、内部に空洞を2つ以上有することである。
【0026】
より好ましい様相は、前記空洞は、外部と連通していることである。
【0027】
好ましい様相は、前記ヘマタイト層は、前記基材の前記第1主面に対して直交する断面において、500nm四方の範囲にヘマタイト系結晶粒子の内部に設けられた空洞が4コ以上存在することである。
【0028】
好ましい様相は、前記ヘマタイト層は、前記ヘマタイト系結晶粒子の間を通過し、外面から前記基材に向かって延びる空隙があることである。
【0029】
好ましい様相は、前記複数のヘマタイト系結晶粒子は、一つの結晶集合体を構成しており、前記結晶集合体は、隣接するヘマタイト系結晶粒子間の界面に穴が形成されていることである。
【0030】
好ましい様相は、前記ヘマタイト系結晶粒子は、チタンがドーピングされていることである。
【0031】
好ましい様相は、前記ヘマタイト層は、平均厚みが1μm以上である。
【0032】
好ましい様相は、走査型電子顕微鏡で観察される前記ヘマタイト系結晶粒子の数平均粒子径と、X線回折測定における回折ピークの半値幅に基づいてシェラー式によって算出される結晶子径と、が相違しており、前記結晶子径に対する前記ヘマタイト系結晶粒子の数平均粒子径の比率が3以上20以下であることである。
【0033】
好ましい様相は、前記基材は、透明基板上に透明導電層が積層された透明導電性基板であり、前記透明導電層は、表面に凹凸があり、前記複数のヘマタイト系結晶粒子の中には、前記透明導電層の凹部の深さよりも粒径が小さく、かつ前記凹部内で前記透明導電層と固着しているヘマタイト系結晶粒子が存在することである。
【0034】
好ましい様相は、対極とともに水に浸漬させた状態で光を照射することで水を酸化することである。
【0035】
本発明の一つの様相は、基材の第1主面上に複数のヘマタイト系結晶粒子が積重した光触媒電極であって、前記複数のヘマタイト系結晶粒子は、前記基材の前記第1主面を被覆するヘマタイト層を形成しており、前記ヘマタイト系結晶粒子は、複数の結晶性粒子が凝集し、前記結晶性粒子が面状に固着したものであり、走査型電子顕微鏡で観察される前記ヘマタイト系結晶粒子の数平均粒子径と、X線回折測定における回折ピークの半値幅に基づいてシェラー式によって算出される結晶子径と、が相違しており、前記ヘマタイト系結晶粒子の数平均粒子径は、200nm以下であり、前記結晶子径は、25nm以下である、光触媒電極である。
【発明の効果】
【0036】
本発明の光触媒電極の製造方法によれば、従来に比べて、基材から剥がれにくく高触媒活性の光触媒電極を製造できる。
本発明の光触媒電極によれば、従来に比べて、基材から剥がれにくく触媒活性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の第1実施形態の光触媒電極を模式的に示した断面図である。
図2図1のヘマタイト系結晶粒子の説明図であり、(a)はヘマタイト層の一部の斜視図であり、(b)はヘマタイト系結晶粒子の断面斜視図である。
図3】本発明の第2実施形態の光触媒電極の説明図であり、(a)は側面図であり、(b)はヘマタイト層の斜視図である。
図4】本発明の第3実施形態の光触媒電極を模式的に示した断面図である。
図5図4のヘマタイト系結晶粒子の説明図であり、(a)はヘマタイト層の一部の斜視図であり、(b)はヘマタイト系結晶粒子の断面斜視図である。
図6】本発明の第4実施形態の光触媒電極の一部を模式的に示した斜視図である。
図7】本発明の第5実施形態の光触媒電極の一部を模式的に示した斜視図である。
図8】本発明の第6実施形態の光触媒電極の一部を模式的に示した斜視図である。
図9】実験例1-1,2及び比較例1の光触媒電極の粉末X線回折測定で得られたX線回折チャートをそれぞれミラー指数(102)面のピークで規格化したチャートであり、(a)は実験例1-1を表し、(b)は実験例2を表し、(c)は比較例1を表す。
図10】実験例3,4の光触媒電極の粉末X線回折測定で得られたX線回折チャートであり、(a)は実験例3を表し、(b)は実験例4を表す。
図11】実験例5,6,12及び比較例3の光触媒電極の粉末X線回折測定で得られたX線回折チャートであり、(a)は実験例5を表し、(b)は実験2を表し、(c)は実験例6を表し、(d)は比較例3を表す。
図12】実験例1-1の光触媒電極の断面の走査型電子顕微鏡像であり、15000倍に拡大した画像である。
図13】実験例1-2の光触媒電極をブロードイオンビーム(BIB)で光触媒電極を切断した切断面の走査型電子顕微鏡像であり、(a)は実験例1-2を15000倍に拡大した画像であり、(b)は(a)をスケッチした図である。
図14】実験例3の光触媒電極をブロードイオンビーム(BIB)で光触媒電極を切断した切断面の走査型電子顕微鏡像であり、(a)は実験例3を15000倍に拡大した画像であり、(b)は(a)をスケッチした図である。
図15】実験例1-2及び実験例2の光触媒電極の走査型電子顕微鏡像であり、(a)は実験例1-2の光触媒電極を2万倍に拡大した画像であり、(b)実験例2の光触媒電極を2万倍に拡大した画像である。
図16】実験例1-2の光触媒電極に用いるヘマタイト系結晶粒子の走査型電子顕微鏡像であり、(a)は10万倍に拡大した画像であり、(b)は(a)の画像をスケッチした図である。
図17】実験例2の光触媒電極に用いるヘマタイト系結晶粒子の走査型電子顕微鏡像であり、(a)は10万倍に拡大した画像であり、(b)は(a)の画像をスケッチした図である。
図18】比較例1の光触媒電極に用いるヘマタイト系結晶粒子の走査型電子顕微鏡像であり、22000倍に拡大した画像である。
図19】実験例3の光触媒電極に用いるヘマタイト系結晶粒子の走査型電子顕微鏡像であり、(a)は5万倍に拡大した画像であり、(b)は(a)の画像をスケッチした図である。
図20】実験例3の光触媒電極に用いるヘマタイト系結晶粒子の走査型電子顕微鏡像であり、(a)は10万倍に拡大した画像であり、(b)は(a)の画像をスケッチした図である。
図21】実験例4の光触媒電極に用いるヘマタイト系結晶粒子の走査型電子顕微鏡像であり、(a)は5万倍に拡大した画像であり、(b)は(a)の画像をスケッチした図である。
図22】実験例4の光触媒電極に用いるヘマタイト系結晶粒子の走査型電子顕微鏡像であり、(a)は10万倍に拡大した画像であり、(b)は(a)の画像をスケッチした図である。
図23】実験例5の光触媒電極の走査型電子顕微鏡像であり、(1)は2000倍に拡大した画像であり、(2)は18000倍に拡大した画像であり、(3)は15000倍に拡大した画像であり、(4)は10000倍に拡大した画像である。
図24】実験例5の光触媒電極に用いるヘマタイト系結晶粒子の走査型電子顕微鏡像であり、(a)は10万倍に拡大した画像であり、(b)は(a)の画像をスケッチした図である。
図25】実験例6の光触媒電極の走査型電子顕微鏡像であり、(a)は600倍に拡大した画像であり、(b)は16000倍に拡大した画像である。
図26】実験例6の光触媒電極に用いるヘマタイト系結晶粒子の走査型電子顕微鏡像であり、(a)は10万倍に拡大した画像であり、(b)は(a)の画像をスケッチした図である。
図27】比較例3の光触媒電極に用いるヘマタイト系結晶粒子の走査型電子顕微鏡像であり、(a)は15000倍に拡大した画像であり、(b)は5万倍に拡大した画像である。
図28】実験例1-1におけるヘマタイト系結晶粒子の焼成前後の表面の透過電子顕微鏡像と制限視野電子回折像であり、(a)はヘマタイト系結晶粒子の焼成前の画像であり、(b)はヘマタイト系結晶粒子の焼成後の画像である。
図29】実験例1-1におけるヘマタイト系結晶粒子の焼成前後の表面を透過電子顕微鏡で観察し、エネルギー分散型X線分析測定で元素マッピングを行った画像であり、(a)はヘマタイト系結晶粒子の焼成前の画像であり、(b)はヘマタイト系結晶粒子の焼成後の画像である。
図30】実験例1-1,2及び比較例1の光触媒電極のナイキストプロットである。
図31図30のナイキストプロットのフィッティングに用いた等価回路である。
図32】実験例1-1,2及び比較例1の光触媒電極のMott-Schottkyプロットである。
図33】実験例1-1,2及び比較例1の光触媒電極の各電位に対する光電流密度を表すグラフである。
図34】実験例3,4,8及び比較例1の光触媒電極の各電位に対する光電流密度を表すグラフである。
図35】実験例5,6,12及び比較例3の光触媒電極の各電位に対する光電流密度を表すグラフである。
図36】実験例1-2,2,7及び比較例1の光触媒電極の各電位に対する光電流密度を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、特に断りのない限り、物性については、25℃、1気圧の標準状態を基準とする。
【0039】
本発明の第1実施形態の光触媒電極1は、主に水の分解に使用される光水分解用の光触媒電極であり、光水分解セルの電極を構成するものである。
光触媒電極1は、対極のカソード電極とともに分解対象たる水に浸漬し、光を照射することにより、水を酸化して酸素を形成するアノード電極を構成するものである。すなわち、光触媒電極1は、光を照射することで触媒活性を示し、光が照射されない状態では触媒活性を示さないものである。
光触媒電極1とカソード電極は、光水分解セルの外部で、それぞれ太陽電池等の補助電源と接続されており、光を光触媒電極1と太陽電池に照射することで、カソード電極において水を還元して水素を形成する。
【0040】
光触媒電極1は、図1のように、基材2の第1主面上に規則的に配向したヘマタイト系結晶粒子5で構成されるヘマタイト層3を有するものである。そして、本実施形態の光触媒電極1は、ヘマタイト系結晶粒子5の構造に主な特徴の一つを有している。
このことを踏まえて、以下、光触媒電極1の各部位の構成について詳細に説明する。
【0041】
(基材2)
基材2は、導電性を有し、光を透過可能な透明導電性基材であり、面状に広がりをもった板状の基板である。基材2は、焼結後のヘマタイト系結晶粒子5を支持する支持基材である。
【0042】
本実施形態の基材2は、図1のように、透明基板10上に透明導電層11が積層された透明導電性基板であり、第1主面が透明導電層11で構成されており、第2主面が透明基板10で構成されている。
透明基板10は、透明性を有するものであれば、特に限定されるものではない。透明基板10は、例えば、ガラス基板等の透明絶縁基板が使用できる。
透明導電層11は、透明性と導電性を有する透明導電層であれば、特に限定されるものではない。透明導電層11は、例えば、酸化インジウム錫(ITO)やフッ素ドープ酸化錫(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)などの透明導電性酸化物で形成された透明導電性酸化物層とできる。
【0043】
(ヘマタイト層3)
ヘマタイト層3は、多数のヘマタイト系結晶粒子5が集まって構成される光触媒層であり、ヘマタイト系結晶粒子5が基材2を起点として三次元的に規則的に配列した層である。すなわち、ヘマタイト層3は、図2のように、ヘマタイト系結晶粒子5が三次元的に積重し、ヘマタイト系結晶粒子5が部分的に固着して立体構造を構成したものである。
【0044】
ヘマタイト層3は、図1のように、基材2の広がり方向においてヘマタイト系結晶粒子5間に空隙6が複数形成されており、各空隙6は、ヘマタイト層3の外面から基材2の第1主面に向かって延びている。すなわち、ヘマタイト層3は、水に浸漬したときに空隙6から水が進入し、空隙6の内壁をなすヘマタイト系結晶粒子5に接触することが可能となっている。
【0045】
ヘマタイト層3の平均厚みは、1.0μm以上2.0μm以下であることが好ましい。
この範囲であれば、水を分解する際に、水に各ヘマタイト系結晶粒子5が晒されやすく、高い触媒活性を発揮できる。
【0046】
(ヘマタイト系結晶粒子5)
ヘマタイト系結晶粒子5は、複数の結晶性ナノ粒子(結晶性粒子)が凝集して成長し形成されるものであり、結晶性ナノ粒子が規則的に配向したものである。具体的には、ヘマタイト系結晶粒子5は、結晶性ナノ粒子同士が互いに面状に固着して形成されたものであり、コランダム型の結晶構造を有するメソ結晶である。
ここでいう「メソ結晶」とは、結晶性ナノ粒子を高密度かつ規則的に集積させた結晶性ナノ粒子集合体をいう。
本実施形態のヘマタイト系結晶粒子5は、結晶性ナノ粒子が主に(104)面に配向したものである。
【0047】
本実施形態のヘマタイト系結晶粒子5は、ヘマタイトに対してチタンがドープされたものである。
一つのヘマタイト系結晶粒子5に対して、エネルギー分散型X線分析(EDX)測定を行ったときのヘマタイト系結晶粒子5内のチタンのドープ量は、0%超過10%以下であることが好ましい。
【0048】
ヘマタイト系結晶粒子5は、図2のように、外郭形状が扁平状をしており、断面形状が略オーバル形状又は楕円状となっている。
ヘマタイト系結晶粒子5は、板状であって、平面視したときに略円形状、略楕円形状、又は略オーバル形状であり、厚みに対して縦横の大きさが大きい。すなわち、ヘマタイト系結晶粒子5は、厚みに対して短径の長さ(縦横方向における最短距離)が大きい。
ヘマタイト系結晶粒子5は、厚みに対する短径の長さが2倍以上であることが好ましく、2.5倍以上であることがより好ましい。
ここでいう「略円形状、略楕円形状、略オーバル形状」とは、全体として概ね円形状、概ね楕円形状、概ねオーバル形状であることをいい、角が取れた4角形以上の多角形状も含む。具体的には、低倍率(例えば、1万倍)で視たときに円形状、楕円形状、オーバル形状とみなせる程度に円形状、楕円形状、オーバル形状であることをいう。
【0049】
ヘマタイト系結晶粒子5は、図2のように、厚み方向(基材2の主面に対して直交方向)に積重し、段状となっており、少なくとも片面の一部が厚み方向に隣接する他のヘマタイト系結晶粒子5と面状に固着している。すなわち、ヘマタイト系結晶粒子5は、厚み方向(基材2の主面に対して直交方向)から視たときに他のヘマタイト系結晶粒子5と重なり部分がある。
言い換えると、ヘマタイト系結晶粒子5は、他のヘマタイト系結晶粒子5と基材2の主面に対して直交する方向にヘマタイト系結晶粒子5が重なっている。
本実施形態のヘマタイト系結晶粒子5の中には、図2のように、厚み方向に隣接する他のヘマタイト系結晶粒子5b,5c(第2ヘマタイト系結晶粒子,第3ヘマタイト系結晶粒子)によって挟まれたヘマタイト系結晶粒子5a(第1ヘマタイト系結晶粒子)が存在しており、当該ヘマタイト系結晶粒子5aでは両面の一部がそれぞれ他のヘマタイト系結晶粒子5b,5cと面状に固着している。
【0050】
本実施形態のヘマタイト系結晶粒子5の中には、図1のように、基材2の広がり方向においても一部が他のヘマタイト系結晶粒子5と固着したものも存在する。すなわち、ヘマタイト系結晶粒子5は、基材2から厚み方向だけではなく、基材2の広がり方向にも成長して形成されている。
ヘマタイト系結晶粒子5は、厚み方向(基材2に対して垂直方向)から視たときに、厚み方向に隣接する他のヘマタイト系結晶粒子5との重畳面積が、自己の全面積の10%以上50%以下であることが好ましい。
この範囲であれば、ヘマタイト系結晶粒子5間の十分な接触面積を確保でき、ヘマタイト層3内での電荷移動抵抗、特にヘマタイト系結晶粒子5間の粒界抵抗を小さくできる。
【0051】
走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察されるヘマタイト系結晶粒子5の数平均粒子径は、100nm以上であることが好ましく、200nm以上であることがより好ましい。また、当該ヘマタイト系結晶粒子5の数平均粒子径は、500nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましい。
これらの範囲であれば、反応時の劣化を抑制しつつ、高い触媒活性を維持できる。
ここでいう「数平均粒子径」とは、SEMによって観察されるヘマタイト系結晶粒子5を20個抽出し、20個の平均の粒子径をいう。
【0052】
X線回折(XRD)測定により、下記(1)のシェラー式を用いて求められるヘマタイト系結晶粒子5の結晶子径は、25nm以上35nm以下であることが好ましい。
ヘマタイト系結晶粒子5は、SEMで観察される数平均粒子径と、XRD測定によって求められる結晶子径が相違することが好ましい。
ヘマタイト系結晶粒子5は、結晶子径に対する数平均粒子径の比率が5以上であることが好ましい。またヘマタイト系結晶粒子5は、当該比率が10以下であることが好ましい。
【0053】
結晶子径(Å)=K・λ/(βcosθ)・・・(1)
K:シェラー定数
λ:使用X線の波長
β:回折ピークにおける半値幅
θ:ブラッグ角(回折角2θの半分)
【0054】
ヘマタイト系結晶粒子5は、図1図2(b)のように、内部に小さな空洞23を有している。
空洞23は、開口形状が円形状の空洞であり、最小包含円の直径が5nm以上50nm以下であることが好ましい。
ここでいう「最小包含円」とは、全ての頂点又は辺を含む最小の仮想円をいう。
ヘマタイト系結晶粒子5の中には、表面に穴が形成されたものがあり、穴が空洞23と連通している。すなわち、ヘマタイト系結晶粒子5の中には、光触媒電極1を水に浸したときに、穴を介して空洞23に水が進入するものがある。
【0055】
続いて、本実施形態の光触媒電極1の製造方法について説明する。
【0056】
まず、ヘマタイト原料と、原料溶媒と、ドープ原料とを密閉容器に入れて混合し、原料溶液を形成する。そして、原料溶液を密閉容器に密閉した状態で、所定時間、所定の温度で加熱し、結晶成長させて仕掛粒子(焼成前ヘマタイト系結晶粒子)を形成する(仕掛粒子形成工程)。
【0057】
このとき使用されるヘマタイト原料は、鉄原子を骨格にもつものであれば、特に限定されるものではない。ヘマタイト原料としては、例えば、フッ化鉄や塩化鉄などのハロゲン化鉄(III)、硝酸鉄(III)、硫酸鉄(III)、鉄アルコキシドや鉄アセチルアセトンなどの鉄錯体化合物などが使用できる。
このとき使用される原料溶媒は、N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジエチルホルムアミド(DEF)、ギ酸、酢酸、メタノール、エタノールなどの有機溶媒や、水、これらの混合物などが使用でき、その中でもメタノールやエタノール等のアルコールであることが好ましい。
このとき使用されるドープ原料は、鉄以外の金属を含む、金属ハロゲン化物塩、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属アルコキシド、及び金属錯体化合物などが使用できる。これらの中でもドープ原料としては、チタンを含むチタン含有化合物、例えば、金属ハロゲン化物塩、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属アルコキシド、及び金属錯体化合物が好ましく、チタン含有ハロゲン化物たるTiF4であることがより好ましい。
このとき、ドープ原料の配合量は、特に限定されるものではないが、ヘマタイト原料の鉄1モルに対してドープ原料の金属が0.001モル以上0.5モル以下であることが好ましい。
この範囲であれば、ドープ原料の金属をヘマタイトにドープしつつ、不反応のドープ原料が生じにくい。
このときの加熱時間は、加熱温度に昇温してから、12時間超過であり、15時間以上であることがより好ましい。また、当該加熱時間は、50時間以下であることが好ましく、30時間以下であることがより好ましい。
この範囲であれば、良質な仕掛粒子を形成できる。
このときの加熱温度は、沸点以上であることが好ましく、100℃以上200℃以下であることが好ましい。
これらの範囲であれば、効率良くヘマタイト系結晶粒子を形成できる。
【0058】
続いて、仕掛粒子形成工程で形成された仕掛粒子を分散溶媒に分散させて分散溶液を形成し、分散溶液を基材2上に塗布し乾燥させて基材2上に仕掛粒子を積層させる(塗布工程)。
【0059】
このときに使用される分散溶媒としては、仕掛粒子を均一に分散でき、乾燥させたときに揮発して成分が実質的に残らないものであれば、特に限定されない。分散溶媒としては、例えば、メタノールやエタノール等の揮発性の有機溶媒や水、有機溶媒と水の混合液が使用できる。
また、分散溶液の基材2への塗布方法は、特に限定されるものではない。分散溶液の基材2への塗布方法としては、例えば、スピンコート法やキャスト法、スプレー法、ディップ法、印刷法などが使用できる。
【0060】
分散溶液が塗布され仕掛粒子が積層された基材2を所定の焼成時間、所定の焼成温度で焼成し、ヘマタイト系結晶粒子5で構成されるヘマタイト層3を形成し(焼成工程)、光触媒電極1が完成する。
【0061】
このときの焼成温度は、400℃以上であることが好ましく、500℃以上であることがより好ましい。また、当該焼成温度は、1000℃以下であることが好ましく、900℃以下であることがより好ましく、800℃以下であることが特に好ましい。
このときの焼成時間は、焼成温度に昇温してから1分以上48時間以下であることが好ましく、10分以上1時間以下であることがより好ましい。
これらの範囲であれば、十分に結晶化が可能であり、基材2を構成する透明導電層11として、透明導電性酸化物を使用したときでも、昇温による透明導電性酸化物の劣化が生じにくい。
【0062】
本実施形態の光触媒電極1の製造方法によれば、ソルボサーマル合成によって仕掛粒子を合成し、基材2上に合成した仕掛粒子を分散させて固着・焼結する。すなわち、間接製膜法で合成するので、合成手順が簡便で、工業的に大量生産が可能である。また、後処理を必要としない。
【0063】
本実施形態の光触媒電極1によれば、一のヘマタイト系結晶粒子5が隣接する他のヘマタイト系結晶粒子5と固着しているので、結晶性が良好で従来に比べて電荷移動抵抗を小さくできる。そのため、従来の光触媒電極に比べて、電子と正孔の再結合が起こりにくく、触媒活性が高い。
【0064】
本実施形態の光触媒電極1によれば、第1主面に対する直交方向に対して交差する方向に隣接するヘマタイト系結晶粒子5,5が固着しているため、ヘマタイト系結晶粒子5,5間の電荷移動抵抗を低減できる。
【0065】
本実施形態の光触媒電極1によれば、ヘマタイト系結晶粒子5aの外郭形状が扁平形状であり、厚み方向に隣接する他のヘマタイト系結晶粒子5b,5cと面状に固着している。そのため、ヘマタイト系結晶粒子5a,5b(5a,5c)間の接触面積を大きくでき、十分な導電パスを確保できる。その結果、ヘマタイト系結晶粒子5間の電荷移動抵抗を抑制できる。
【0066】
本実施形態の光触媒電極1によれば、複数のヘマタイト系結晶粒子5の中に、内部に複数の空洞23があるヘマタイト系結晶粒子5が存在するので、体積当たりの光電流密度を大きくできる。
【0067】
本実施形態の光触媒電極1によれば、複数のヘマタイト系結晶粒子5の中に、内部に空洞23があり、表面に空洞23と連通する穴を有するヘマタイト系結晶粒子が存在する。そのため、空洞23内が水で晒され、光が空洞23内で散乱するため、反応面積が増加し、触媒活性を向上できる。
【0068】
本実施形態の光触媒電極1によれば、ヘマタイト層3が、基材2の第1主面に対して直交する断面において、500nm四方の範囲にヘマタイト系結晶粒子5の内部に設けられた空洞が4コ以上存在することが好ましい。こうすることで、単位重量当たりの反応面積が増加し、触媒活性を向上できる。
【0069】
本実施形態の光触媒電極1によれば、ヘマタイト層3は、ヘマタイト系結晶粒子5,5の間を通過し、外面から基材2の透明導電層11に向かって延びる空隙6があるため、水が空隙6に進入しやすく、光もより深い位置まで届きやすい。その結果、単位重量当たりの反応面積が増加し、触媒活性を向上できる。
【0070】
本実施形態の光触媒電極1によれば、ヘマタイト系結晶粒子5は、チタンがドーピングされている。そのため、高い触媒活性を奏しつつ、界面抵抗も低減できる。
【0071】
本実施形態の光触媒電極1によれば、ヘマタイト層3の平均厚みを1.0μm以上とすることができ、このような従来の光触媒電極に比べて極めて厚いヘマタイト層3であっても、高い触媒活性を発揮でき、機械強度も確保できる。
【0072】
続いて、本発明の第2実施形態の光触媒電極100について説明する。なお、第1実施形態の光触媒電極1と同様の構成については、同様の付番をして説明を省略する。以下、同様とする。
【0073】
第2実施形態の光触媒電極100は、ヘマタイト層103にチタンをドープしない点で第1実施形態のヘマタイト層3と異なる。すなわち、光触媒電極100は、図3(a)のように、基材2上にヘマタイト層103が積層されたものである。
ヘマタイト層103は、第1実施形態のヘマタイト層3と同様、多数のヘマタイト系結晶粒子105が集まって構成される光触媒層であり、複数の空隙6を備えている。
【0074】
ヘマタイト系結晶粒子105は、図3(b)のように、基材2上を厚み方向に積重しており、一部が厚み方向に隣接する他のヘマタイト系結晶粒子105と面状に固着している。
本実施形態のヘマタイト系結晶粒子105の中には、図3(b)のように、厚み方向に隣接する他のヘマタイト系結晶粒子105b,105c(第2ヘマタイト系結晶粒子,第3ヘマタイト系結晶粒子)によって挟まれたヘマタイト系結晶粒子105a(第1ヘマタイト系結晶粒子)が存在しており、当該ヘマタイト系結晶粒子105aでは両面の一部がそれぞれ他のヘマタイト系結晶粒子105b,105cと固着している。
また、本実施形態のヘマタイト系結晶粒子105の中にも、図3(a)のように第1実施形態のヘマタイト系結晶粒子5と同様、基材2の広がり方向においても一部が他のヘマタイト系結晶粒子105と固着したものも存在する。
【0075】
SEMによって観察されるヘマタイト系結晶粒子105の数平均粒子径は、200nm以上であることが好ましく、300nm以上であることがより好ましく、400nm以上であることが特に好ましい。また、当該数平均粒子径は、800nm以下であることが好ましく、700nm以下であることがより好ましく、600nm以下であることが特に好ましい。
この範囲であれば、反応時の劣化を抑制しつつ、高い触媒活性を維持できる。
XRDによって求められるヘマタイト系結晶粒子105の結晶子径は、25nm以上35nm以下であることが好ましい。
ヘマタイト系結晶粒子105は、結晶子径に対する数平均粒子径の比率が15以上であることが好ましい。またヘマタイト系結晶粒子105は、当該比率が20以下であることが好ましい。
【0076】
ヘマタイト系結晶粒子105は、第1実施形態のヘマタイト系結晶粒子5と同様、複数の結晶性ナノ粒子が凝集して成長し形成されるものである。
ヘマタイト系結晶粒子105の外面は、略球状又は略長球状をしており、概ね曲面で構成されている。
ここでいう「略球状又は略長球状」とは、全体として概ね球状、概ね長球状であることをいい、角が取れた4面体以上の多面体形状も含む。具体的には、低倍率(例えば、1万倍)で視たときに、球状、長球状とみなせる程度に球状、長球状であることをいう。
【0077】
第2実施形態の光触媒電極100の製造方法では、仕掛粒子形成工程において、ドープ原料を密閉容器に入れないところが第1実施形態の光触媒電極1の製造方法と異なり、それ以外は、第1実施形態の光触媒電極1の製造方法と同様であるため、説明を省略する。
【0078】
続いて、本発明の第3実施形態の光触媒電極200について説明する。
【0079】
第3実施形態の光触媒電極200は、第1実施形態の光触媒電極1とヘマタイト系結晶粒子の積層形状が異なる。すなわち、第3実施形態のヘマタイト層203を構成するヘマタイト系結晶粒子205は、第1実施形態のヘマタイト系結晶粒子5に比べて、結晶性ナノ粒子が主に(110)面に配向したものである。
ヘマタイト層203は、図4のように、多数のヘマタイト系結晶粒子205が集まって構成される光触媒層であり、複数の空隙6を備えている。
ヘマタイト系結晶粒子205は、断面形状が概ね円形であって、他のヘマタイト結晶粒子との固着部分以外が概ね球状であり、角部に丸みがある。
【0080】
走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察されるヘマタイト系結晶粒子205の数平均粒子径は、50nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましい。また、当該ヘマタイト系結晶粒子5の数平均粒子径は、300nm以下であることが好ましく、250nm以下であることがより好ましい。
これらの範囲であれば、反応時の劣化を抑制しつつ、高い触媒活性を維持できる。
X線回折(XRD)測定によって求められるヘマタイト系結晶粒子5の結晶子径は、15nm以上25nm以下であることが好ましい。
ヘマタイト系結晶粒子205は、結晶子径に対する数平均粒子径の比率が3以上であることが好ましい。またヘマタイト系結晶粒子205は、当該比率が8以下であることが好ましい。
【0081】
ヘマタイト系結晶粒子205は、図5のように、厚み方向から視たときに他のヘマタイト系結晶粒子205と重なり部分がある。
ヘマタイト層203は、粒径が異なるヘマタイト系結晶粒子205が重なっており、粒径が大きなヘマタイト系結晶粒子205に粒径が小さなヘマタイト系結晶粒子205が固着した部分がある。
本実施形態のヘマタイト層203は、第1実施形態のヘマタイト層3に比べて、基材2の広がり方向においてヘマタイト系結晶粒子205同士が固着した部分が多い。
【0082】
ヘマタイト系結晶粒子205は、図4図5(b)のように、内部に小さな空洞223を有している。
空洞223は、開口形状が円形状の空洞であり、最小包含円の直径が5nm以上50nm以下であることが好ましい。
ヘマタイト系結晶粒子205の中には、表面に穴225が形成されたものがあり、穴225が空洞223と連通している。すなわち、ヘマタイト系結晶粒子205の中には、光触媒電極200を水に浸したときに、穴225を介して空洞223に水が進入するものがある。
穴225の最小包含円の直径は、1nm以上50nm以下であることが好ましい。
【0083】
また、光触媒電極200は、透明基板10上の透明導電層11の表面粗さが粗く、表面凹凸が形成されている。
ヘマタイト系結晶粒子205の中には、図4のように、透明導電層11の凹部211内で透明導電層11と固着しているものが存在する。
【0084】
続いて、第3実施形態の光触媒電極200の製造方法について説明する。
【0085】
第3実施形態の光触媒電極200の製造では、原料が第1実施形態と異なる。
具体的には、まず、第1実施形態と同様、仕掛粒子形成工程を行い、仕掛粒子を形成する。
本実施形態では、この仕掛粒子形成工程において、ヘマタイト原料として、トリス(2,4-ペンタンジオナト)鉄(III)(Fe(acac)3)を使用し、ドープ原料として、TiF4を使用し、原料溶媒としてエタノール等のアルコールを使用する。
仕掛粒子形成工程における残りの条件については、第1実施形態の光触媒電極1の仕掛粒子形成工程と同様のものとすることができる。
仕掛粒子形成工程後には、必要に応じてアセトンや水、メタノール等で洗浄し、第1実施形態と同様、塗布工程及び焼成工程を行って光触媒電極200を形成する。
【0086】
第3実施形態の光触媒電極200によれば、基材2上にミラー指数が(110)面に配向したものである
面に配向したヘマタイト系結晶粒子205が積重するため、高い光触媒活性を呈することができる。
【0087】
第3実施形態の光触媒電極200によれば、ヘマタイト系結晶粒子205の中には、基材2の透明導電層11の凹部211の深さよりも粒径が小さく、かつ凹部211内で透明導電層11と固着しているヘマタイト系結晶粒子205が存在する。そのため、透明導電層11とヘマタイト層203の界面抵抗を低減できる。
【0088】
続いて、本発明の第4実施形態の光触媒電極300について説明する。
【0089】
第4実施形態の光触媒電極300のヘマタイト層303は、図6のように、基材2上を厚み方向に積重しており、一部が厚み方向に隣接する他のヘマタイト系結晶粒子305と面状に固着している。
ヘマタイト層303は、ヘマタイト系結晶粒子305の粒径が概ね揃っており、基材2の第1主面に対する直交方向に対して交差する方向に隣接するヘマタイト系結晶粒子205同士が優先的に固着している。すなわち、ヘマタイト層303は、第1主面の広がり方向においてヘマタイト系結晶粒子205の固着部分が多い。
【0090】
SEMによって観察されるヘマタイト系結晶粒子305の数平均粒子径は、50nm以上であることが好ましく、75nm以上であることがより好ましい。また、当該数平均粒子径は、200nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましい。
この範囲であれば、反応時の劣化を抑制しつつ、高い触媒活性を維持できる。
XRDによって求められるヘマタイト系結晶粒子105の結晶子径は、15nm以上25nm以下であることが好ましい。
ヘマタイト系結晶粒子305は、結晶子径に対する数平均粒子径の比率が3以上であることが好ましい。またヘマタイト系結晶粒子305は、当該比率が8以下であることが好ましい。
【0091】
第4実施形態の光触媒電極300の製造方法では、仕掛粒子形成工程において、ドープ原料を密閉容器に入れないところが第3実施形態の光触媒電極200の製造方法と異なり、それ以外は、第3実施形態の光触媒電極200の製造方法と同様であるため、説明を省略する。
【0092】
続いて、本発明の第5実施形態の光触媒電極400について説明する。
【0093】
本発明の第5実施形態の光触媒電極400は、ソルボサーマル法の一つである水熱合成法によって製造されるものであり、製造方法及びその構造が第1~4実施形態と異なる。
【0094】
光触媒電極400は、図7のように、基材2上にヘマタイト層403が積層したものである。
ヘマタイト層403は、結晶集合体406が集まって構成される光触媒層であり、基材2の広がり方向において結晶集合体406間に空隙6が複数形成されている。
結晶集合体406は、多数のヘマタイト系結晶粒子405が凝集し、ヘマタイト系結晶粒子405が隣接するヘマタイト系結晶粒子405と固着したものである。
結晶集合体406は、多数のヘマタイト系結晶粒子405が密集しており、隣接するヘマタイト系結晶粒子405,405間でわずかに隙間が空いた部分があるものの、ヘマタイト系結晶粒子405が概ね充填するように配されている。
結晶集合体406は、ヘマタイト系結晶粒子405間の界面に細孔409が形成されている。すなわち、細孔409は、ヘマタイト系結晶粒子405間の空隙に由来する孔である。
細孔409は、2nm以上50nm以下であることが好ましい。
【0095】
結晶集合体406は、表面に凹凸をもった略球状、又は略角部を有し当該角部が丸まって曲面状となっている。すなわち、結晶集合体406は、全体として角張っておらず、端部が曲線的である。
ヘマタイト系結晶粒子405は、ヘマタイトメソ結晶であり、ナノ粒子が成長して結晶前駆体になり、結晶前駆体がトポタクティック転移することで、結晶性ナノ粒子が配向して得られるものである。
【0096】
ヘマタイト系結晶粒子405は、側面視したときに、角丸四角形状又はダンベル状の粒子である。ヘマタイト系結晶粒子405の中には、直線状に延びるものだけではなく、中間部が折れ曲がったものも存在している。
【0097】
SEMによって観察される結晶集合体406の数平均粒子径は、3μm以上であることが好ましく、4μm以上であることがより好ましい。また、当該数平均粒子径は、7μm以下であることが好ましく、6μm以下であることがより好ましい。
この範囲であれば、表面の欠陥が発生しにくく、立ち上がり電位を卑の電位にシフトできる。
XRDによって求められるヘマタイト系結晶粒子405の結晶子径は、25nm以上35nm以下であることが好ましい。
【0098】
続いて、本実施形態の光触媒電極400の製造方法について説明する。
【0099】
本実施形態では、反応工程たる水熱合成工程と、焼成工程によって光触媒電極400を製造する。以下、各工程について具体的に説明する。
【0100】
まず、密閉容器にヘマタイト原料、アンモニウム塩、ドープ原料、界面活性剤、及び水(溶媒)を含む溶液を入れ、当該溶液に基材2を浸漬し、密閉して加熱し、仕掛粒子を形成する(仕掛粒子形成工程,水熱合成工程)。
【0101】
このとき、水熱合成工程の水熱反応により、ナノ粒子が生成・成長し、基材上に結晶前駆体であるオキシ水酸化鉄(FeOOH)が吸着し、基材2上にヘマタイト結晶前駆体であるオキシ水酸化鉄の結晶を析出する。
【0102】
このとき、ヘマタイト原料としては、第1実施形態の仕掛粒子形成工程で使用したヘマタイト原料と同様のものが使用できる。
アンモニウム塩としては、オキシ水酸化鉄の結晶化を促進する作用を有するものであれば、特に限定されるものではない。アンモニウム塩としては、例えば、フッ化アンモニウムや塩化アンモニウムなどのハロゲン化アンモニウム、硝酸アンモニウム、過塩素酸アンモニウム、炭酸アンモニウムなどが使用できる。なお、アンモニウム塩は1種のみ用いてもよいし、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0103】
アンモニウム塩の使用量は、ヘマタイト原料1モルに対して1モル以上50モル以下であることが好ましい。
【0104】
ドープ原料は、金属酸化物前駆体であり、第1実施形態の仕掛粒子形成工程で使用したドープ原料と同様のものが使用できる。
ドープ原料の使用量は、ヘマタイト原料に含まれる鉄1モルに対して0.001モル以上0.5モル以下であることが好ましい。
【0105】
界面活性剤としては、特に制限されず、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び天然に存在する界面活性材(バイオサーファクタント)のいずれでもよい。
【0106】
加熱温度は、沸点以上、すなわち、100℃以上であることが好ましく、100℃超過であることがより好ましい。また、加熱温度は、200℃以下であることが好ましい。
100℃超で加熱する場合には、水の消失を防ぐために密閉容器中で加熱することが好ましい。
【0107】
加熱時間は、加熱温度に昇温してから12時間超過であることが好ましく、15時間以上であることがより好ましい。また、加熱時間は、加熱温度に昇温してから50時間以下であることが好ましく、25時間以下であることがより好ましい。 この範囲であれば、水熱反応を十分に行うことができ、基材2上にオキシ酸化鉄を十分に析出することができる。延いては基材2上にヘマタイト層403を十分密に形成することが可能になる。
【0108】
続いて、水溶液を放冷し、基材を水溶液から取り出し、取り出した基材を焼成する(焼成工程)。なお、水溶液から取り出した基材は、そのまま焼成してもよいし、焼成する前にいったん乾燥してもよい。
【0109】
焼成工程により、基材2上に析出した仕掛粒子たるオキシ水酸化鉄を下記(2)の反応によりヘマタイト(α-Fe23)にしつつ、ヘマタイト結晶をトポタクティックエピタキシャル成長させる。
2FeOOH → Fe23 + H2O・・・(2)
【0110】
ここでいう「トポタクティック」とは、基本骨格が維持されたままといった意味である。
ここでいう「エピタキシャル成長」とは、同一方位に結晶を成長させるといった意味である。
すなわち、焼成工程では、基材2上に析出したオキシ水酸化鉄の特に表面の結晶を(110)面の方位に成長させる。
【0111】
このとき、焼成温度は、400℃以上であることが好ましく、500℃以上であることがより好ましく、600℃以上であることが特に好ましい。
また焼成温度は、1000℃以下であることが好ましく、900℃以下であることがより好ましく、800℃以下であることが特に好ましい。
焼成時間は、焼成温度まで昇温してから、1分間以上48時間以下であることが好ましく、1時間以下であることがより好ましい。
【0112】
本実施形態の光触媒電極400の製造方法によれば、水熱反応工程によりオキシ酸化鉄が基材2上に十分に密に析出する。そのため、焼結工程で得られるヘマタイト層403も十分に密なものとできる。
本実施形態の光触媒電極400の製造方法によれば、水熱合成工程において、トポタクティックエピタキシャル成長させて、結晶を同一方位に成長させる。そのため、ヘマタイト層403を構成するヘマタイト系結晶粒子405を基材2上に規則的に集積できる。
【0113】
本実施形態の光触媒電極400の製造方法によれば、仕掛粒子形成工程たる水熱合成工程において、密閉容器内にヘマタイト原料と共に基材2も存在させて仕掛粒子を形成し、その後、基材2上の仕掛粒子を焼結する。
すなわち、本実施形態の光触媒電極400は、直接製膜法で合成するため、基材2上に得られるヘマタイト系結晶粒子405を基材2に対して規則正しく配向できる。そのため、粒界抵抗や界面抵抗を低減できる。
【0114】
本実施形態の光触媒電極400の製造方法によれば、水熱合成法により仕掛粒子を製造するので、比較的低温で製造することができ、従来に比べて低コストで且つ効率的に製造できる。
【0115】
本実施形態の光触媒電極400によれば、複数のヘマタイト系結晶粒子405は、一つの結晶集合体406を構成しており、結晶集合体406は、隣接するヘマタイト系結晶粒子405,405間の界面に細孔409が形成されている。そのため、細孔409に水が進入しやすく、触媒活性を向上できる。
【0116】
続いて、本発明の第6実施形態の光触媒電極500について説明する。
【0117】
第6実施形態の光触媒電極500は、ヘマタイト層503にチタンをドープしない点で第5実施形態のヘマタイト層403と異なる。すなわち、光触媒電極500は、図8のように、基材2上にヘマタイト層503が積層されたものである。
ヘマタイト層503は、第5実施形態のヘマタイト層403と同様、結晶集合体506が集まって構成される光触媒層である。
結晶集合体506は、多数のヘマタイト系結晶粒子505が凝集し、ヘマタイト系結晶粒子505が隣接するヘマタイト系結晶粒子505と固着したものである。
結晶集合体506は、表面に凹凸をもった略球状、略多面体状、又は略角部を有し、当該角部が丸まって曲面状となっている。すなわち、結晶集合体506は、角張っておらず、端部が曲線的である。
結晶集合体506は、多数のヘマタイト系結晶粒子505が密集しており、隣接するヘマタイト系結晶粒子505,505間でわずかに隙間が空いた部分があるものの、ヘマタイト系結晶粒子505が概ね充填するように配されている。
結晶集合体506は、表面に細孔たる細孔509が形成されている。すなわち、細孔509は、ヘマタイト系結晶粒子505間の空隙に由来する孔である。
細孔509の最小包含円の直径は、2nm以上50nm以下であることが好ましい。
【0118】
SEMによって観察される結晶集合体506の数平均粒子径は、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。また、当該数平均粒子径は、5μm以下であることが好ましい。
この範囲であれば、表面の欠陥が発生しにくく、立ち上がり電位を卑の電位にシフトできる。
XRDによって求められるヘマタイト系結晶粒子505の結晶子径は、25nm以上35nm以下であることが好ましい。
【0119】
第6実施形態の光触媒電極500の製造方法では、水熱合成工程において、ドープ原料を密閉容器に入れないところが第5実施形態の光触媒電極400の製造方法と異なり、それ以外は、第5実施形態の光触媒電極400の製造方法と同様であるため、説明を省略する。
【0120】
上記した実施形態では、基材2として透明基板10上に透明導電層11が積層された透明導電性基材を使用していたが、本発明はこれに限定されるものではない。金属板や金属酸化物板等の導電板であってもよい。すなわち、ヘマタイト層等に光が照射できれば、基材2は、透明でなくてもよい。
【0121】
上記した第1,3,5実施形態では、ヘマタイト系結晶粒子5,205,405は、チタンがドープされていたが、本発明はこれに限定されるものではない。他の金属がドープされていてもよい。例えば、Si、Ge、Pb、Zr、Hf、Sb、Bi、V、Nb、Ta、Mo、Tc、Re、Sn、Pb、N、P、As、及びCからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上のn型ドーパントをドープしていてもよいし、Ca、Be、Mg、Sr、及びBaからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上のp型ドーパントをドープしていてもよい。
【0122】
上記した実施形態では、光触媒電極を光水分解セルのアノード電極として使用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。光触媒電極は、他の用途に使用してもよい。例えば、太陽電池や燃料電池、二次電池等の電極として使用してもよい。
【0123】
上記した第5,6実施形態では、溶媒として水を使用する水熱合成法により、光触媒電極を製造したが、本発明はこれに限定されるものではない。溶媒として水以外を使用する他のソルボサーマル法によって光触媒電極を製造してもよい。
【0124】
上記した実施形態の応用例として、光触媒電極に助触媒を担持してもよい。助触媒としては、例えば、リン酸コバルト(Co-Pi)などが好適に使用できる。
助触媒を担持させることで、立ち上がり電位を卑な電位にシフトでき、触媒活性も向上できる。
【0125】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【0126】
以下、実験例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実験例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施できる。
【0127】
(実験例1-1)
100mLのポリテトラフルオロエチレン容器(以下、PTFE容器ともいう)に1.0mmolのFe(NO33・9H2O(和光純薬工業株式会社製,99.9%)と0.1mmolのTiF4(Aldrich社製,99.9%)を40mLのDMF(和光純薬工業株式会社製,99.9%)と10mLのメタノール(ナカライテスク株式会社製,99.8%)を入れて撹拌し混合した。そして、PTFE容器を耐圧ステンレス製の密閉容器に入れて密閉し、24時間、180℃で加熱し、その後、自然冷却して仕掛粒子(焼成前ヘマタイト系結晶粒子)を形成した。
形成した仕掛粒子をメタノール及び水に分散させて分散溶液を形成し、分散溶液をスピンコーターによって、ガラス基板上にフッ素ドープ酸化錫が積層された基材(以下、FTO基材ともいう)に対して乾燥膜厚が1.2μmとなるように塗布し、乾燥させた。
そして、当該仕掛粒子が積層されたFTO基材を20分、700℃で焼成してヘマタイト層を製膜し、光触媒電極を形成した。このようにして得られた光触媒電極を実験例1-1とした。
【0128】
(実験例1-2)
実験例1-1において、形成した仕掛粒子をメタノール及び水に分散させて分散溶液を形成し、分散溶液をスピンコーターによって、FTO基材に対して乾燥膜厚が1.6μmとなるように塗布し、乾燥させたこと以外は、同様にしてこれを実験例1-2とした。
【0129】
(実験例2)
実験例1-1において、PTFE容器にTiF4を入れずに、1.0mmolのFe(NO33・9H2Oと、40mLのDMFと、10mLのメタノールを入れて混合したこと以外は同様にし、光触媒電極を形成した。このようにして得られた光触媒電極を実験例2とした。
【0130】
(比較例1)
実験例2において、PTFE容器に1.0mmolのFe(NO33・9H2Oと、48mLのDMFと、2mLのメタノールを入れて混合したこと以外は同様とし、光触媒電極を形成した。
このようにして得られた光触媒電極を比較例1とした。
【0131】
(実験例3)
PTFE容器に1.0mmolのFe(acac)3(富士フィルム和光純薬株式会社製)と、19.95mLのエタノールと、12.4mgのTiF4を加え、50μLの蒸留水を入れて混合した。そして、PTFE容器を耐圧ステンレス製の密閉容器に入れて密閉し、24時間、180℃で加熱し、その後、自然冷却して仕掛粒子(焼成前ヘマタイト系結晶粒子)を形成した。
形成した仕掛粒子をアセトン、水、及びメタノールで洗浄し、メタノールに分散させて分散溶液を形成し、分散溶液をスピンコーターによって、FTO基材に対して乾燥膜厚が1.6μmとなるように塗布し、乾燥させた。
そして、当該仕掛粒子が積層されたFTO基材を20分、700℃で焼成してヘマタイト層を製膜し、光触媒電極を形成した。このようにして得られた光触媒電極を実験例3とした。
【0132】
(実験例4)
実験例3において、PTFE容器にTiF4を入れずに、1.0mmolのFe(acac)3と、19.95mLのエタノールを加え、50μLの蒸留水を入れて混合したこと以外は同様にし、光触媒電極を形成した。このようにして得られた光触媒電極を実験例4とした。
【0133】
(実験例5)
PTFE容器に0.5mmolのFeCl3(富士フィルム和光純薬会社製)と6mmolのNH4F(富士フィルム和光純薬会社製)と3mmolのNH4NO3(富士フィルム和光純薬会社製)と10mLの蒸留水を入れて混合した。そして、PTFE容器を耐圧ステンレス製の密閉容器に入れて密閉し、100℃で18時間加熱しFTO基材上にヘマタイト系結晶粒子の前駆体(仕掛粒子)を形成した。その後、FTO基材をPTFE容器から取り出し、700℃で10分間焼成してFTO基材上にヘマタイト層を製膜し、光触媒電極を形成した。このようにして得られた光触媒電極を実験例5とした。
【0134】
実験2)
100℃での水熱反応の時間を18時間から12時間に変更した以外は、実験例5と同様にして、光触媒電極を形成した。このようにして得られた光触媒電極を実験2とした。
【0135】
(実験例6)
PTFE容器に0.45mmolのFeCl3と6mmolのNH4Fと3mmolのNH4NO3と0.05mmolのTiF4と10mLの蒸留水を入れて混合したこと以外は、実験例5と同様にして、光触媒電極を形成した。このようにして得られた光触媒電極を実験例6とした。
【0136】
(比較例3)
Fe(NO33・6H2O、NH4F、およびNH4NO3をモル比で1:12:6となるようにメノウ製乳鉢の中にステンレス製スパチュラで加え、乳棒で白色に変色するまで粉砕・混合し、白色ペーストを得た。スピンコーターにてFTO基材を回転させ、調製した白色ペーストをFTO基材に滴下し、ペーストの薄膜をFTO基材上に形成した。これを電気炉で10℃/minで昇温しながら550℃で2時間焼成し、光触媒電極を形成した。このようにして得られた光触媒電極を比較例3とした。
【0137】
(実験例7)
実験例1-2の光触媒電極に対して助触媒としてCo-Piを担持し、光触媒電極を形成した。このようにして得られた光触媒電極を実験例7とした。
【0138】
(実験例8)
実験例3の光触媒電極に対して助触媒としてCo-Piを担持し、光触媒電極を形成した。このようにして得られた光触媒電極を実験例8とした。
【0139】
(表面構造評価)
(a)XRD回析測定
実験例1~6,12及び比較例1,3の光触媒電極に対して、CuKα線(CuKα=1.542Å)を用いたX線回折(XRD)により、X線回折ピークを測定し、得られたX線回折ピークから結晶構造を評価し、さらにX線回折ピークから上記(1)のシェラー式を用いて結晶子径の評価をした。
【0140】
(b)走査型電子顕微鏡観察
実験例1-1、実験例1-2、及び実験例3における光触媒電極の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した。実験例1-2,2~6,12及び比較例1のヘマタイト層の表面をSEMによって観察した。
【0141】
(c)透過型電子顕微鏡観察
実験例1におけるヘマタイト系結晶粒子の焼成前後の表面を透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察し、制限視野電子回折(SAED)像も併せて観察した。さらに、ヘマタイト系結晶粒子及びヘマタイト系結晶粒子の1粒子に対してEDX測定によってFe、O、Tiのそれぞれの元素マッピングを行った。
【0142】
表面構造評価の結果を表1に示す。
表1の結晶子径は、実験例1-1,2,5,6,12及び比較例13については(104)面のX線回折ピークから算出し、実験例3,4について(110)面のX線回折ピークから算出した。
また、実験例1-1,2~6,12及び比較例13の光触媒電極において粉末XRD測定で得られた結果を図9図11に示す。
実験例1-1の光触媒電極の断面を図12に示し、実験例1-2の光触媒電極の断面を図13に示し、実験例3の光触媒電極の断面を図14に示す。
実験例1-2,2~6及び比較例1,3の光触媒電極のSEM像を図15図27に示す。
実験例1のヘマタイト系結晶粒子のTEM像及びSEAD像を図28に示し、EDX測定によるマッピングの結果を図29に示す。
【0143】
【表1】
【0144】
(a)XRD回析測定の結果
実験例1-1,2~6、12及び比較例13では、図9図11のように、ヘマタイトに由来するピークとして、2θが23°~24°の範囲に(012)面、32°~33°に(104)面、35°~36°に(110)面、40°~41°に(113)面、49°~50°に(024)面、53.5°~54°に(116)面に対応するピークがそれぞれ検出された。なお、(abc)は、ミラー指数を表す。
また、実験例1~6,12及び比較例1では、FTO基材に由来するピークとして、2θが26°~27°、33°~34°、37°~38°、51°~52°、54°~55°、57°~58°、61°~62°、65°~66°にそれぞれ一つのピークが検出された。
このことから、実験例1~6,12及び比較例13のいずれもヘマタイト層が形成されており、実験例1~6,12及び比較例1ではFTO基板上にヘマタイトを基本骨格とするヘマタイト層が積層されていることが確認された。
【0145】
実験例1-1,2のヘマタイト層は、表1のように、(110)面/(104)面のピーク強度比が単結晶である比較例1に比べて小さく、(104)面に配向していることが分かった。一方、実験例3,4のヘマタイト層は、(110)面/(104)面のピーク強度比が単結晶である比較例1に比べて大きく、(110)面に配向していることが分かった。
【0146】
実験例5,6のヘマタイト層は、(110)面/(104)面のピーク強度比が加熱時間12時間の実験2に比べて大きく、(110)面に配向していることが分かった。
チタンをドープした実験例1-1では、ヘマタイト系結晶粒子の(110)面/(104)面のピーク強度比がチタンをドープしていない実験例2に比べて大きかった。
一方、チタンをドープした実験例3では、ヘマタイト系結晶粒子の(110)面/(104)面のピーク強度比がチタンをドープしていない実験例4に比べて小さかった。
また、チタンをドープした実験例6では、ヘマタイト系結晶粒子の(110)面/(104)面のピーク強度比がチタンをドープしていない実験例5に比べて大きかった。
【0147】
実験例1-1,2の結晶子径は、主に(110)面に配向した実験例3,4のヘマタイト層の結晶子径に比べて大きく、水熱合成法で形成した実験例5,6の結晶子径と同程度であった。
【0148】
(b)走査型電子顕微鏡観察の結果
実験例1-1の光触媒電極は、図12のように多数のヘマタイト系結晶粒子がFTO基材上に積層されてヘマタイト層が形成されており、ヘマタイト層の平均厚みが約1.2μmであった。
【0149】
実験例1-2の光触媒電極は、図13のように、多数の扁平状のヘマタイト系結晶粒子がFTO基材上に積層されてヘマタイト層が形成されており、ヘマタイト層の平均厚みが約1.6μmであった。実験例1-2のヘマタイト層は、ヘマタイト系結晶粒子の厚み方向がFTO基材に対する直交方向を向くように概ね規則的に積重しており、隣接するヘマタイト系結晶粒子が主に厚み方向に重なって固着していた。
実験例1-2の光触媒電極は、一断面である図13においても、大部分のヘマタイト系結晶粒子において、内部に空洞が形成されていた。実験例1-2の光触媒電極は、例えば、図13で拡大された縦横500nm四方の範囲において、複数のヘマタイト系結晶粒子が存在し、ヘマタイト系結晶粒子の内部に形成された空洞の数が8コあった。
【0150】
実験例3の光触媒電極は、図14のように、多数の略円形状の断面をもつヘマタイト系結晶粒子がFTO基材上に積層されてヘマタイト層が形成されており、ヘマタイト層の平均厚みが約1.6μmであった。実験例3のヘマタイト層は、厚み方向に概ね規則的に積重しており、隣接するヘマタイト系結晶粒子が主にFTO基材に対する直交方向に対して交差する方向に優先的に固着していた。
実験例3の光触媒電極は、一断面である図14においても、大部分のヘマタイト系結晶粒子において、内部に空洞が形成されていた。実験例3の光触媒電極は、例えば、図14で拡大された縦横500nm四方の範囲において、複数のヘマタイト系結晶粒子が存在し、ヘマタイト系結晶粒子の内部に形成された空洞の数が15コあった。
【0151】
単結晶の比較例1では、表1,図18のように、XRD測定で算出される結晶子径とSEMで観察されるヘマタイト系結晶粒子の粒径が概ね一致していた。
一方、実験例1-1,2の光触媒電極では、表1のようにXRD測定で算出される結晶子径が30nm程度であるのに対し、図16図17に示されるSEM像では一次粒径が300~600nm程度のヘマタイト系結晶粒子のみが確認された。
実験例3,4の光触媒電極では、表1のようにXRD測定で算出される結晶子径が20nm程度であるのに対し、図20図22に示されるSEM像では一次粒径が50nm~200nm程度のヘマタイト系結晶粒子のみが確認された。
実験例5,6の光触媒電極では、表1のようにXRD測定で算出される結晶子径が30nm程度であるのに対し、図23図25に示されるSEM像では一次粒径が2μm~6μm程度の結晶集合体が確認され、図24図26のように結晶集合体が100nm~200nm程度のヘマタイト系結晶粒子が凝集して構成されていることが確認された。
すなわち、メソ結晶化した実験例1-1,2~6は、いずれもXRD測定の結晶子径とSEMで観察されるヘマタイト系結晶粒子の粒径が大きく相違していた。
【0152】
これは、ヘマタイト系結晶粒子が焼結する際にナノ粒子が融着し、SEM像では、結晶性ナノ粒子が一つの結晶となったためと考えられる。言い換えると、実験例1-1,2~6のヘマタイト層は、単結晶の比較例1に比べて、ヘマタイト系結晶粒子の結晶性が高く、ヘマタイト系結晶粒子のバルク抵抗が小さくなっていることが示唆される。
【0153】
実験例1-2では、図13図16のように、ヘマタイト系結晶粒子がそれぞれ扁平状となっており、厚み方向において、ヘマタイト系結晶粒子が重畳部分をもって積み重なっていた。また、積み重なったヘマタイト系結晶粒子が厚み方向に面接触して粒子間界面を形成していた。実験例1-2の特定のヘマタイト系結晶粒子では、一部が厚み方向以外の方向において他のヘマタイト系結晶粒子と固着しており、粒子間界面を形成していた。実験例1-2の特定のヘマタイト系結晶粒子には、表面に内部に向かって深さをもつ穴が形成されていた。
【0154】
実験例2では、図17のように、ヘマタイト系結晶粒子が略球状又は略長球状をしており、外面が概ね一律の曲面を構成していた。実験例2のヘマタイト系結晶粒子は、厚み方向においてヘマタイト系結晶粒子が重畳部分をもって積み重なっており、積み重なったヘマタイト系結晶粒子が厚み方向に面接触して粒子間界面を形成していた。
【0155】
また、実験例1-2と実験例2のヘマタイト系結晶粒子の形状を比較すると、上記したように、実験例2のヘマタイト系結晶粒子では、図17のように、略球状又は略長球状をしており、外面が概ね一律の曲面を構成していた。一方、チタンをドープした実験例1-2のヘマタイト系結晶粒子では、図13図15(a),図16のように、実験例2のヘマタイト系結晶粒子が厚み方向に圧縮した扁平形状となっており、長さ及び幅に対して厚みが薄くなっていた。また、チタンをドープした実験例1-2のヘマタイト系結晶粒子では、実験例2のヘマタイト系結晶粒子に比べて一次粒径も小さくなっていた。
【0156】
このことから、実験例1-1では、チタンがドープされることで結晶構造に歪が生じており、結晶が歪な構造となったと考えられる。
【0157】
実験例3の光触媒電極は、図14のように、ヘマタイト系結晶粒子の断面形状が略円形状で、図19のようにヘマタイト系結晶粒子の外形が略球状又は略長球状をしており、外面が概ね一律の曲面を構成していた。
実験例3のヘマタイト系結晶粒子は、厚み方向においてヘマタイト系結晶粒子が重畳部分をもって積み重なっており、積み重なったヘマタイト系結晶粒子が厚み方向に面接触して粒子間界面を形成していた。
実験例3の光触媒電極は、一のヘマタイト系結晶粒子に対して複数のヘマタイト系結晶粒子がFTO基材の広がり方向に優先的に固着していた。
実験例3のヘマタイト系結晶粒子の中には、図20のように、表面に最小包含円の直径が40nm程度の穴が形成されているものが存在した。
また、実験例3の光触媒電極は、ヘマタイト系結晶粒子がFTO基材の表面の凹部に入り込み、凹部内でFTOと固着しているものが存在した。
【0158】
実験例4の光触媒電極は、図21図22のように、ヘマタイト系結晶粒子が略球状又は略長球状をしており、外面が概ね一律の曲面を構成していた。実験例4のヘマタイト系結晶粒子は、厚み方向においてヘマタイト系結晶粒子が重畳部分をもって積み重なっており、積み重なったヘマタイト系結晶粒子が厚み方向に面接触して粒子間界面を形成していた。
実験例4の光触媒電極は、一のヘマタイト系結晶粒子に対して複数のヘマタイト系結晶粒子がFTO基材の広がり方向に優先的に固着していた。
【0159】
実験例3と実験例4を比較すると、実験例3では、実験例4に比べて粒径が小さなヘマタイト系結晶粒子が多く存在し、ヘマタイト系結晶粒子の表面に穴が形成されているものが存在した。また、実験例4では、実験例3に比べて、FTO基材を平面視したときに、一つのヘマタイト系結晶粒子と固着するヘマタイト系結晶粒子の数が多かった。
【0160】
実験例5の光触媒電極は、図23のように、結晶集合体が積重している。実験例5の光触媒電極は、複数のヘマタイト系結晶粒子が規則的に配列して固着して結晶集合体となっており、端部が曲線的な形をしていた。
実験例5の結晶集合体では、図24のように、各ヘマタイト系結晶粒子の固着界面が確認できず、隣接するヘマタイト系結晶粒子の外面が連続していた。
実験例5の結晶集合体は、図24のように、表面に複数の細孔が形成されていた。
実験例5の細孔は、大部分が略円形又は略楕円形であって、個々に独立して形成されていた。細孔の最小包含円の直径は、5nm~50nm程度であった。
【0161】
実験例6の光触媒電極は、図25のように、結晶集合体が積重している。実験例6の光触媒電極は、複数のヘマタイト系結晶粒子が規則的に配列して固着して結晶集合体がとなっており、端部が曲線的な形をしていた。
実験例6の結晶集合体では、図26のように、隣接するヘマタイト系結晶粒子間に細孔が形成されていた。
実験例6の細孔は、図26のように、一部が略円形又は略楕円形であって、大部分が脳溝のようにヘマタイト系結晶粒子の界面に沿って延びた長穴又は溝であった。
細孔の幅は、2nm~50nm程度であった。
【0162】
また、実験例5と実験例6を比較すると、チタンをドープした実験例6では、実験例5に比べて細孔の深さが深く、結晶集合体の大きさや結晶集合体を構成するヘマタイト系結晶粒子の大きさも小さかった。
【0163】
比較例3の光触媒電極は、図27のように、直方体状又は立方体状の粒子がランダムに積重しており、各粒子が角張っていた。
【0164】
(c)透過型電子顕微鏡観察の結果
実験例1-1では、図28のように、ヘマタイト系結晶粒子の焼成前後の表面、すなわち、ヘマタイト系結晶粒子(焼結前)及びヘマタイト系結晶粒子(焼結後)において、ともにTEM像から(104)面の格子縞が確認され、SAED像から結晶性ナノ粒子の配向が揃っていることが確認された。
さらにEDX測定では、図29のように、1コのヘマタイト系結晶粒子及びヘマタイト系結晶粒子の表面においてFe、O、Tiのそれぞれ元素が均等に分布して検出され、Ti濃度は、8.5%であった。また、Fe、Oのマッピングにおいて、一部にFe、Oを検出しない円形状の穴が複数確認された。
実験例3でも、実験例1-1と同様、EDX測定において、1コのヘマタイト系結晶粒子及びヘマタイト系結晶粒子の表面においてFe、O、Tiのそれぞれ元素が均等に分布して検出され、Fe、Oのマッピングにおいて、一部にFe、Oを検出しない円形状の穴が複数確認された。
【0165】
(インピーダンス測定)
pH13.6で電解質たる1.0Mの水酸化ナトリウム水溶液に作用極、対極、及び参照極を浸漬させ、電気化学セルを形成し、ソーラーシミュレーターによって擬似太陽光(AM1.5G、1000W/m2、25℃)を作用極に対して照射して交流インピーダンス測定を行った。また、交流インピーダンス測定で得られたナイキストプロットをフィッティングし、直列抵抗、ヘマタイト層内での電荷移動抵抗、及びヘマタイト層と電解質界面での電荷移動抵抗(以下、単に界面抵抗ともいう)を評価した。さらに、ヘマタイト層/電解質界面における欠乏層・電気二重層の直列容量Cbulkから10kHzにおけるドナー密度を評価した。
なお、作用極として実験例1-1,2~4及び比較例1の光触媒電極、対極として白金メッシュ、参照極としてAg/AgClを使用した。また、フィッティングに使用する等価回路は、図31に示される等価回路を使用した。
【0166】
実験例1-1,2及び比較例1の光触媒電極におけるナイキストプロットを図30に示し、Mott-Schottkyプロットを図32に示す。また、実験例1-1,2~4及び比較例1の光触媒電極における各種抵抗及びMott-Schottkyプロットの傾きから求めたドナー密度を表2に示す。
【0167】
【表2】
【0168】
表2のように、メソ結晶である実験例1-1,2~4では、単結晶の比較例1に比べて直列抵抗、ヘマタイト層内での電荷移動抵抗、及びヘマタイト層/電解質界面の界面抵抗のいずれにおいても抵抗値が小さくなり、特にヘマタイト層内での電荷移動抵抗及びヘマタイト層/電解質界面の界面抵抗が小さくなった。
【0169】
実験例2では、ヘマタイト層内での電荷移動抵抗が比較例1に比べて21%以下に抑えられ、ヘマタイト層/電解質界面の界面抵抗が比較例1に比べて72%以下に抑えられた。
実験例4では、ヘマタイト層内での電荷移動抵抗が比較例1に比べて16%以下に抑えられ、ヘマタイト層/電解質界面の界面抵抗が比較例1に比べて9%以下に抑えられた。
また、ドナー密度においても、実験例2では、ドナー密度が比較例1に比べて1.68倍に向上し、実験例4では、ドナー密度が比較例1に比べて63倍に向上した。
【0170】
このように、同一のヘマタイトによって構成される光触媒電極でも、メソ結晶化により、ヘマタイト層内での電荷移動抵抗及びヘマタイト層/電解質界面の界面抵抗を低減でき、ドナー密度が向上することがわかった。
これは、メソ結晶化により、ヘマタイト系結晶粒子の配列が規則的になり、電荷移動特性が向上するとともに、ヘマタイト系結晶粒子間の固着面積が増え結晶性が向上し粒界抵抗が低下したためと考えられる。
【0171】
チタンをドープした実験例1-1では、チタンをドープしていない実験例2に比べて直列抵抗、ヘマタイト層内での電荷移動抵抗、及びヘマタイト層/電解質界面の界面抵抗のいずれにおいても抵抗値が小さくなった。
特に実験例1-1では、ヘマタイト層内での電荷移動抵抗が実験例2のヘマタイト層内での電荷移動抵抗の64%以下に抑えられ、ヘマタイト層/電解質界面の界面抵抗が実験例2のヘマタイト層/電解質界面の界面抵抗の20%以下に抑えられた。
チタンをドープした実験例3では、チタンをドープしていない実験例4に比べて直列抵抗及びヘマタイト層内での電荷移動抵抗の抵抗値が小さくなった。
特に実験例3では、ヘマタイト層内での電荷移動抵抗が実験例4のヘマタイト層内での電荷移動抵抗の2%以下に抑えられた。
また、ドナー密度においても、実験例1-1では、ドナー密度が実験例2に比べて6.25倍に向上し、実験例3では、ドナー密度が実験例4に比べて3.33倍に向上した。
【0172】
これらのことから、チタンをドープすることにより、ドナー密度がさらに増加し、ヘマタイト層内での電荷移動特性が向上することがわかった。
【0173】
(電気化学評価)
交流インピーダンス測定と同様、pH13.6で1.0Mの水酸化ナトリウム水溶液に作用極、対極、及び参照極を浸漬させ、ソーラーシミュレーターによって擬似太陽光(AM1.5G、1000W/m2、25℃)を作用極に対して照射して各電位に対する電流値を測定し、各電位に対する光電流密度を算出した。また、作用極として実験例1-1,1-2,2~8,12及び比較例13の光触媒電極、対極として白金メッシュ、参照極としてAg/AgClを使用した。また、電流値の測定後、光触媒電極を溶液から取り出し、FTO基材からのヘマタイト層の剥がれの有無を観察した。
電気化学評価には、電気化学アナライザーとしてビー・エー・エス株式会社製のALS600E、分光器として日本分光株式会社製のCT-10、光源として朝日分光株式会社製のMAX-303(300W キセノン光源)を使用した。
【0174】
電気化学評価の結果をそれぞれ図33図36(各電位に対する光電流密度)及び表3に示す。なお、電圧は、可逆水素電極(RHE)基準である。
【0175】
【表3】
【0176】
実験例1-1,1-2,2~8,12及び比較例1の光触媒電極は、光電流測定後でもヘマタイト系結晶粒子の剥離が観察されなかったが、比較例3の光触媒電極は、光電流測定後にヘマタイト系結晶粒子の剥離が観察された。
また、実験例1-1,1-2,2~8,12及び比較例1では、図33図36のように、光を照射しないときに光電流密度が生じず、光を照射したときに光電流密度が生じた。一方、比較例3では、光を照射しないとき及び光を照射したときのいずれも光電流密度がほとんど生じず、実質的に光触媒として機能しないことがわかった。
このことから、ソルボサーマル法を用いて仕掛粒子を形成し、仕掛粒子を焼成することで、実験例1~8,12及び比較例1において光触媒として機能し、かつ、FTO基材から剥がれにくいことがわかった。
【0177】
実験例2では、表3及び図33のように、単結晶である比較例1に比べて、立ち上がり電位が約0.18V、卑な電位となっており、1.23V vs.RHEにおける光電流密度が2.74倍に向上した。
実験例4では、表3及び図34のように、単結晶である比較例1に比べて、立ち上がり電位が0.20V、卑な電位となり、1.23V vs.RHEにおける光電流密度が14.85倍に向上した。
実験例5では、表3及び図35のように、単結晶である比較例1に比べて、立ち上がり電位が0.31V、卑な電位となり、1.23V vs.RHEにおける光電流密度が2.12倍に向上した。
【0178】
このように、同一のヘマタイトによって構成される光触媒電極でも、メソ結晶化により、立ち上がり電位及び光電流密度が向上し、触媒活性が向上することがわかった。
これは、メソ結晶化によってナノ粒子が規則正しく配列してヘマタイト系結晶粒子内のバルク抵抗が低下したとともに、ヘマタイト系結晶粒子同士の接触面積が増加したため、ヘマタイト層内での電荷移動抵抗が低減したことによるものと考えられる。
なお、実験2では、表3及び図35のように、単結晶である比較例1に比べて、立ち上がり電位が0.26V卑な電位となったものの、メソ結晶化したにもかかわらず、1.23V vs.RHEにおける光電流密度が0.71倍に低下した。これは、実験2では、加熱時間が不十分で仕掛粒子として良質なメソ結晶が形成されなかったためと考えられる。
また、単結晶である比較例1では、ヘマタイト系結晶粒子の大きさがナノサイズであり、配向がランダムである。そのため、ヘマタイト系結晶粒子内で正孔と電子が再結合してしまい、光電流を有効に取り出すことができず、光触媒としての特性が十分でなかったと考えられる。
【0179】
チタンをドープした実験例1-1では、表3及び図33のように、チタンをドープしていない実験例2に比べて、立ち上がり電位がわずかに卑な電位となり、1.23V vs.RHEにおける光電流密度が2.22倍に向上した。
チタンをドープした実験例3では、表3及び図34のように、チタンをドープしていない実験例4に比べて、1.23V vs.RHEにおける光電流密度が2.61倍に向上した。
チタンをドープした実験例6では、表3及び図35のように、チタンをドープしていない実験例5に比べて、立ち上がり電位が卑な電位となり、1.23V vs.RHEにおける光電流密度が2.51倍に向上した。
【0180】
このように、チタンをドープすることにより、立ち上がり電位及び光電流密度が向上し、触媒活性が向上することがわかった。
これは、チタンをドープすることにより、電子構造及び結晶構造が変化して導電パスが増え、総抵抗が減少したことにより、触媒活性が向上したと考えられる。
実験例1-1,3においては、ヘマタイト系結晶粒子内に空隙が形成されたため、その内部の空隙に水が浸透したり、光が通過して散乱したりすることにより、反応面積が増加したことも一因であると考えられる。
実験例6においては、細孔の深さが深くなったため、細孔内に水が進入し、ヘマタイト系結晶粒子の表面での水との反応面積が増加したことも一因であると考えられる。
【0181】
助触媒を担持した実験例7では、表3及び図36のように、助触媒を担持していない実験例1-2に比べて、立ち上がり電位が卑な電位となり、1.23V vs.RHEにおける光電流密度が1.52倍に向上した。
助触媒を担持した実験例8では、表3及び図34のように、助触媒を担持していない実験例3に比べて、立ち上がり電位が卑な電位となり、1.23V vs.RHEにおける光電流密度が1.19倍に向上した。
【0182】
このように、助触媒を担持することで立ち上がり電位及び光電流密度が向上し、触媒活性が向上することがわかった。
これは、助触媒により導電性が向上したことと、助触媒にキャリアが移動して反応点となったことが一因であると考えられる。
【0183】
実験例3では、表3のように、主に(104)面に配向する実験例1-2に比べて、1.23V vs.RHEにおける光電流密度が1.71倍に向上した。
実験例4では、表3のように、主に(104)面に配向する実験例2に比べて、1.23V vs.RHEにおける光電流密度が1.77倍に向上した。
これは、(104)面に対する(110)面の比率が大きくなり、界面酸素欠陥が多く、導電性が向上したことが一因であると考えられる。
【0184】
仕掛粒子の形成に水を溶媒とした実験例5は、仕掛粒子の形成にアルコールを溶媒とした実験例1-1,4に比べて、立ち上がり電位がいずれも卑な電位となった。
これは、実験例5ではヘマタイト系結晶粒子が凝集して結晶集合体を構成し、全体として一次粒子径が大きく、結晶性が高いので、表面での欠陥が少なくなったためと考えられる。
【0185】
ところで、通常、ヘマタイト層を透過する光の範囲は、数百nmとされており、光の照射側から1μm以上離れた位置では、密にパッキングするため、ほとんど光が当たらないと考えられていた。
しかしながら、ヘマタイト層の平均膜厚が1.6μmの実験例1-2では、1.2μmの実験例1-1に比べて、1.23V vs.RHEにおける光電流密度が1.22倍に上昇した。すなわち、光が直接当たらない部分でも触媒活性を示した。
これは、電荷が拡散できる領域が増え、再結合が抑制された結果であり、ヘマタイト層の粒界抵抗が小さいこと、ヘマタイト系結晶粒子内に空洞が形成され、当該空洞が水で満たされて空洞内部でも触媒反応が生じること、当該空洞内を光が散乱しながら通過し、より深い位置まで光が届くことなどが一因であると考えられる。
【0186】
以上のように、メソ結晶化を行うことで、単結晶のヘマタイト層に比べて、ヘマタイト系結晶粒子が規則的に配向し、基材とヘマタイト結晶粒子との接合性が向上する。その結果、ヘマタイト層内の直列抵抗、電荷移動抵抗、及び界面抵抗が低減され、触媒活性を向上することがわかった。
チタンをドープすることで、立ち上がり電位及び光電流密度が向上し、触媒活性が向上することがわかった。
助触媒を担持することで立ち上がり電位及び光電流密度が向上し、触媒活性が向上することがわかった。
(104)面に対する(110)面の比率を増加させることで、導電性が向上し、触媒活性が向上することがわかった。
溶媒を水とする水熱合成によって製造することで、結晶性が向上し、立ち上がり電位が卑な電位にシフトすることがわかった。
【符号の説明】
【0187】
1,100,200,300,400,500 光触媒電極
2 基材
3,103,203,303,403,503 ヘマタイト層
5,105,205,305,405,505 ヘマタイト系結晶粒子
6 空隙
10 透明基板
11 透明導電層
23,223 空洞
211 凹部
225 穴
406,506 結晶集合体
409,509 細孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
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