(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】内視鏡処置具の進退補助具
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20230915BHJP
A61B 1/018 20060101ALI20230915BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
A61B1/00 650
A61B1/018 515
G02B23/24 A
(21)【出願番号】P 2019021958
(22)【出願日】2019-02-08
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】500557048
【氏名又は名称】学校法人日本医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】中楯 龍
(72)【発明者】
【氏名】村田 正治
(72)【発明者】
【氏名】江藤 正俊
(72)【発明者】
【氏名】千原 直人
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/087958(WO,A1)
【文献】特開2007-151595(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0316203(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0182292(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00
G02B 23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡に着脱自在に取り付けられ、前記内視鏡の処置具挿入口から前記内視鏡の内部に挿入され挿入部の先端部から突出している処置具の先端部が前記処置具の長手軸方向に沿って進退することを補助する内視鏡処置具の進退補助具であって、
略L字状の回転部材と、
前記内視鏡の前記処置具挿入口近傍において前記処置具挿入口の中心軸から離れた位置
を通る回転軸まわりに、前記回転部材を回動可能または回転可能に支持する支持部材と、
を有し、
前記回転部材は、
前記回転軸から前記中心軸に向かって延びる第1辺の端部に設けられ、
前記中心軸上で前記処置具のシースを支持可能な処置具固定部と、
前記回転軸及び前記第1辺に略直交する方向に沿って、前記回転軸から離れる方向に延びる第2辺の端部に設けられ、操作者が操作を入力するための操作入力部と、を有し、
前
記回転軸を中心として、所定の角度範囲で回転または回動
することで、前記長手軸方向に沿って前記処置具固定部を前記処置具挿入口に対して離間・近接させる、進退補助具。
【請求項2】
円筒形状であって、その側面から内面に貫通するスリットを有し、その内径が前記処置具の前記シースよりも小さいゴム部材をさらに有し、
前記処置具固定部は、断面が略C字状で一部開放している開放円筒部を有し、前記シースに対して同軸となるように取り付けられた前記ゴム部材を、前記開放円筒部の内面に圧入することで、前記処置具の前記シースを支持可能である、請求項1に記載の進退補助具。
【請求項3】
前記支持部材は、
少なくとも片端が脱着可能で、その両端が前記回転部材に対して取り付けられたゴムベルトを含み、前記ゴムベルトにより前記第1辺と前記第2辺との連結部分が前記内視鏡の表面に当接した状態で前記回転部材を回転または回動可能に支持する、請求項1または2に記載の進退補助具。
【請求項4】
前記支持部材は、
前記回転部材を回転可能に支持すると共に、前記内視鏡の前記処置具挿入口近傍において前記処置具挿入口の中心軸から離れた位置で、前記内視鏡に対して固定されるベース部材を有する、請求項1または2に記載の進退補助具。
【請求項5】
前記操作入力部は、前記操作者の指を置くことが可能な略鞍型である、請求項1~4のいずれか一項に記載の進退補助具。
【請求項6】
前記操作入力部は、前前記回転部材の回転軸と直交し前記処置具固定部の中心を通る平面上とは異なる位置に設けられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の進退補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡処置具の進退補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の処置具は、内視鏡の把持部側に配設されている処置具挿入口から内視鏡の内部に挿入され、内視鏡の先端部に配設されている先端開口部から外部に向けて突出している。術者は、内視鏡の把持部を左手で把持すると共に内視鏡の挿入部を右手で把持する。また、処置具の進退動作を操作する際は、一般的に術者は、右手を内視鏡の挿入部から離し、把持部側に配設されている処置具の基端部側を操作する。しかしながら、挿入部から手を放す動作は、挿入部の移動や術者が手の位置を変える動作時間などのため、処置の効率を低下させる可能性がある。
【0003】
これに対して、例えば特許文献1及び特許文献2に示すように、内視鏡の処置具挿入口に着脱可能な器具であって、内視鏡の把持部を把持した左手の指のうち空いている小指等によって操作可能な、処置具の進退を補助する進退補助具が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014/132673号
【文献】特開2003-265406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の進退補助具は、操作入力部が処置具の軸と同軸で回転し、当該回転運動を、処置具の軸に沿った直線運動に変換する機構を具備する。このため、装置の構成が複雑になり、部品点数も多くなるという問題があった。
【0006】
また特許文献2に記載の進退補助具は、操作入力部が処置具の軸と直交する軸で回転し、当該回転運動が直接、処置具を挟む2個のローラを回転させ、摩擦により処置具を進退させる機構を具備する。しかし、ローラの材質や処置具を挟む力を適切に設計しないと、ローラに対して処置具が滑ってしまい、正確な動作ができない可能性がある。そのため、進退補助具の設計や材料にかかるコストが高くなるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、内視鏡挿入部を把持する手を離さずに処置具の進退動作が可能な構成が、小型且つ低コストで実現された内視鏡処置具の進退補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る進退補助具は、内視鏡に着脱自在に取り付けられ、前記内視鏡の処置具挿入口から前記内視鏡の内部に挿入され挿入部の先端部から突出している処置具の先端部が前記処置具の長手軸方向に沿って進退することを補助する内視鏡処置具の進退補助具であって、略L字状の回転部材と、前記内視鏡の前記処置具挿入口近傍において前記処置具挿入口の中心軸から離れた位置で、前記回転部材を回動可能または回転可能に支持する支持部材と、を有し、前記回転部材は、第1の方向に延びる第1辺の端部に設けられ、前記処置具のシースを支持可能な処置具固定部と、前記第1の方向に対して交差する第2の方向に延びる第2辺の端部に設けられ、操作者が操作を入力するため操作入力部と、を有し、前記第1辺と前記第2辺との連結部分近傍に設けられて前記第1辺及び前記第2辺に対して略直交する回転軸を中心として、所定の角度範囲で回転または回動可能である。
【0009】
上記の進退補助具によれば、回転部材の第2辺に設けられた操作入力部に対して操作者が操作を入力すると、回転部材は回転または回動し、回転部材の第1辺に設けられた処置具固定部において支持された処置具のシースを長手軸方向に沿って進退させることができる。操作入力部は処置具挿入口の近傍にあり、操作者が内視鏡挿入部を把持する手を離さなくても、処置具の進退動作を制御することが可能となる。また、上記の進退補助具は、複雑な機構等を有しないので、簡単な部品で製造することができるため、小型且つ低コストを実現可能である。
【0010】
ここで、円筒形状であって、その側面から内面に貫通するスリットを有し、その内径が前記処置具の前記シースよりも小さいゴム部材をさらに有し、前記処置具固定部は、断面が略C字状で一部開放している開放円筒部を有し、前記シースに対して同軸となるように取り付けられた前記ゴム部材を、前記開放円筒部の内面に圧入することで、前記処置具の前記シースを支持可能である態様とすることができる。
【0011】
上記のように、ゴム部材をシースに取り付けると共に、このゴム部材を処置具固定部の開放円筒部に圧入して支持する構成とした場合、ゴム部材を介して処置具のシースを処置具固定部に対してより強固に固定することができる。したがって、誤動作を防ぐことができると共に、処置具の進退をより精度良く制御することができる。
【0012】
前記支持部材は、少なくとも片端が脱着可能で、その両端が前記回転部材に対して取り付けられたゴムベルトを含み、前記ゴムベルトにより前記第1辺と前記第2辺との連結部分が前記内視鏡の表面に当接した状態で前記回転部材を回転または回動可能に支持する、態様とすることができる。
【0013】
上記のように、ゴムベルトによって回転部材の第1辺と第2辺との連結部分が内視鏡の表面に当接した状態で回転部材を回転または回動可能に支持する構成とすることで、より簡単な構成で処置具の進退を制御することが可能となる。
【0014】
前記支持部材は、前記回転部材を回転可能に支持すると共に、前記内視鏡の前記処置具挿入口近傍において前記処置具挿入口の中心軸から離れた位置で、前記内視鏡に対して固定されるベース部材を有する態様とすることができる。
【0015】
上記のように、内視鏡に対して固定されるベース部材を有し、当該ベース部材が回転部材を回転可能に支持する構成とすることで、回転部材を安定した状態で動作させることができる。
【0016】
前記操作入力部は、前記操作者の指を置くことが可能な略鞍型状である態様とすることができる。
【0017】
操作入力部が略鞍型状であることにより、操作者の指を操作入力部から外さなくても操作の入力を行うことが可能となる。
【0018】
前記操作入力部は、前記回転部材の回転軸と直交し前記処置具固定部の中心を通る平面上とは異なる位置に設けられる態様とすることができる。
【0019】
上記のように操作入力部が設けられる位置を回転部材の回転軸と直交し処置具固定部の中心を通る平面上とは異なる位置とすることで、例えば、操作者の指が届きやすい位置に操作入力部を設けることが可能となり、進退補助具の操作性を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、内視鏡挿入部を把持する手を放さずに処置具の進退動作が可能な構成が、小型且つ低コストで実現された内視鏡処置具の進退補助具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る進退補助具が内視鏡に取り付けられた状態の概略図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る進退補助具の斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る進退補助具を術者が操作している状態の概略図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る進退補助具の斜視図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態に係る進退補助具の斜視図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態に係る進退補助具の斜視図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態に係る進退補助具が内視鏡に取り付けられた状態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。なお一部の図面では、図示の明瞭化のために、部材の一部の図示を省略している。
【0023】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る進退補助具について説明する。まず、第1実施形態に係る進退補助具20が取り付けられる内視鏡10及び処置具14(内視鏡処置具)について
図1を参照しながら説明する。
【0024】
内視鏡10は、所謂一般的な内視鏡である。内視鏡10は、術者(操作者)が手に持ち各種操作を行うためのダイヤルやボタンが配置された長尺状の把持部16(内視鏡挿入部)と、把持部16から延出し、柔軟な細長いチューブ状をなし患者の体内に挿入される部分である挿入部11と、を有する。以下の説明では、内視鏡10の把持部16側を基端側、挿入部11の一端(把持部16側とは逆側の端部)を先端側という場合がある。
【0025】
挿入部11の先端部17(先端側の端部)にはカメラや光源などが装備されている。内視鏡10の把持部16には、処置具挿入口12が設けられる。処置具挿入口12から、先端部17に設けられた先端開口部13まで、把持部16及び挿入部11の内部を貫通する処置具挿通管路が設けられている。この処置具挿通管路を通して処置具14を患者の体内に導くことが可能になっている。処置具14としては、例えば、電気メスや把持鉗子など体内で治療や処置を行うための器具が挙げられるがこれらに限定されるものではない。処置具14は内視鏡10と同様に細長い形状をなしており、先端に電気メスや鉗子などを具備した処置具14のシース15を含んで構成される。術者は一般に、処置具のシース15を指でつまんで処置具挿入口12に対して長手軸方向に沿って進退動作させることにより、内視鏡10の挿入部11の先端部17に設けられた先端開口部13からの処置具14の突出量を調整しながら、治療や処置を行う。
【0026】
本実施形態に係る進退補助具20は、内視鏡10の把持部16近傍に取り付けられると共に、処置具14のシース15を支持して、処置具14の長手軸方向に沿った進退を補助する器具である。
【0027】
図2を参照して進退補助具20について説明する。進退補助具20は、回転部材21及びゴムベルト22の2つの部品を含んで構成される。ゴムベルト22は、進退補助具20を内視鏡10に対して固定する部材である。ゴムベルト22には穴26が2つ空いている。2つの穴26は、回転部材21に対してゴムベルト22を取り付ける際に用いられる。
【0028】
回転部材21は、略L字状の部材である。すなわち、回転部材21は、棒状の部材を中程で折り曲げたような形状である。回転部材21は、2つの辺、すなわち、第1辺211と第2辺212とを含む。第1辺211の延在方向と第2辺212の延在方向とは異なり、連結部分で所定の角度を有して交差している。第1辺211は第1の方向に延び、第2辺は第2の方向に延びる。第1の方向と第2の方向とは互いに異なる。第1辺211と第2辺212とのなす角度は適宜変更することができるが、例えば、30°~150°とすることができる。
【0029】
第1辺211の先端は処置具14のシース15を固定可能な処置具固定部24となっている。処置具固定部24は、一般的な処置具のシース15の径よりも幅が小さく、且つ、図示上下方向に延びるスリット241を有していて、スリット241により先端が2つに分割されている。スリット241は、第1辺211の中心軸及び第2辺212の中心軸を含む平面に沿って図示上下方向に延びている。
【0030】
また、スリット241の一部に、その幅が他の領域よりも大きく且つシース15の径よりも小さいシース支持部242を有する。処置具固定部24は、プラスチック等の弾性材料を用いて作られている。このスリット241の開閉を利用し、シース支持部242に対して処置具のシース15を圧入すると、摩擦により処置具のシース15上の一点が処置具固定部24に対して滑らないように、シース支持部242において支持可能とされている。
【0031】
略L字状の回転部材21における第2辺の先端は、操作入力部23となっている。操作入力部23は、術者の指が操作のために触れる部分となっている。略L字状の回転部材21における処置具固定部24側の第1辺211と操作入力部23側の第2辺212との連結部分であって、これらが交差する角の部分の外側(背面側)は略円弧状に加工されている。略円弧状に加工された部分は、内視鏡10の把持部16に対して所定の回転軸を中心として所定の角度範囲で回動する回動面27として機能するが詳細は後述する。また、回動面27が設けられる角の部分には、回動面27を挟んで両端に一対のフック25が設けられている。ゴムベルト22の2つの穴26それぞれに対して、2つのフック25をそれぞれ挿入することにより、回転部材21に対してゴムベルト22を係止させることができる。なお、
図2では、一方(図示奥側)のフック25のみが、ゴムベルト22の穴26内に挿入している状態を示している。
【0032】
図1において、進退補助具20を内視鏡10及び処置具14に装着した状態を示している。使用時には、進退補助具20の回転部材21は、ゴムベルト22を多少引張した状態でフック25に対して係止する。これにより、進退補助具20は、内視鏡10の把持部16に対して強固に装着される。このように、ゴムベルト22は、内視鏡10の処置具挿入口12の近傍であって処置具挿入口12の中心軸(すなわちシース15の延在する長手軸)から離れた位置で、回転部材21を回動可能または回転可能に支持する支持部材としての機能を有する。
【0033】
ここで、略L字状の回転部材21の2つのフック25に対してゴムベルト22が係止されるため、一対のフック25を結ぶ軸線(
図2において破線Xとして示す)が、回転部材21の回転軸の役割を果たす。一対の一対のフック25はそれぞれ内視鏡10の把持部16に対してゴムベルト22によって引っ張られているため、回動面27を利用したスムーズな回動を実現するためには、一対のフック25を結ぶ直線が回動面27(回転部材21の角の部分の背面側)と重なるように配置する態様とすることが考えられる。また、処置具固定部24と処置具挿入口12とが同一軸(処置具挿入口12近傍におけるシース15の長手軸方向)で接した状態で、回転部材21を内視鏡10の把持部16に装着する態様とすることができる。
【0034】
図3を用いて本実施例の進退補助具20が内視鏡10の把持部16に装着された状態での動作を説明する。内視鏡の把持部16は一般に術者の左手100で把持される。このとき、術者の左手100の親指はダイヤルに対して常に接し、人差し指及び中指はそれぞれ吸引ボタン及び送気ボタンに常に接して操作がなされる。左手100の薬指は内視鏡10の把持部16の把持またはダイヤル操作に使われる。
【0035】
このとき、内視鏡10の操作に使われない術者の左手100の小指を、進退補助具20の操作に充てることができる。左手100の小指101により進退補助具20の操作入力部23を左手100側に引く(図示上方に移動させる)と、回転部材21は、一対のフック25による回転軸を軸心として、回動面27が把持部16に対して当接した状態で、
図3において右方向へ回動(すなわち、把持部16に沿って上方の基端側へ向かうように回動)する。この結果、処置具固定部24が、内視鏡10の処置具挿入口12から離間する方向に移動する。処置具固定部24の移動に伴い、処置具14のシース15が処置具挿入口12から引き出されるため、処置具14の先端開口部13からの突出量が減少する。
【0036】
同様に術者の左手100の小指101により操作入力部23を左手100側から押す(図示下方に移動させる)と、回転部材21は、一対のフック25による回転軸を軸心として、回動面27が把持部16に対して当接した状態で、
図3において左方向へ回動(把持部16に沿って下方の先端側へ向かうように回動)する。この結果、処置具固定部24が、内視鏡10の処置具挿入口12に近接する方向に移動する。処置具固定部24の移動に伴い、処置具14のシース15が処置具挿入口12から繰り出されるため、処置具14の先端開口部13からの突出量が増加する。
図3中の破線Aは操作入力部23の動作軌跡を示している。同様に、破線Bは処置具固定部24の動作軌跡を示し、破線Cは先端開口部13における処置具14の動作軌跡を示している。
図3の破線A,Bに示すように、回転部材21は、把持部16と処置具挿入口12との間で所定の角度範囲で回動することになる。
【0037】
本実施形態で説明した進退補助具20によれば、回転部材21の第2辺212に設けられた操作入力部23に対して操作者(術者)が操作を入力すると、回転部材21は回転または回動し、回転部材21の第1辺211に設けられた処置具固定部24において支持された処置具14のシース15を長手軸方向に沿って進退させることができる。回転部材21の操作入力部23は処置具挿入口12の近傍にあり、操作者が内視鏡挿入部となる把持部16を把持する手を離さなくても、処置具14の進退動作を制御することが可能となる。また、上記の進退補助具20は、複雑な機構等を有しないので、簡単な部品で製造することができるため、小型且つ低コストを実現可能である。
【0038】
また、進退補助具20では、ゴムベルト22によって回転部材21の第1辺211と第2辺212との連結部分が内視鏡10の把持部16の表面に当接した状態で回転部材21を回転または回動可能に支持する。このような構成とすることで、より簡単な構成で処置具14の進退を制御することが可能となる。
【0039】
(第2実施形態)
図4及び
図5を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る進退補助具について説明する。第2実施形態に係る進退補助具20Aは、第1実施形態で説明した進退補助具20と比較して、処置具14のシース15の回転部材21への固定方法が相違する。第2実施形態に係る進退補助具20Aは、回転部材21A、ゴムベルト22と、及び、ゴム部材28の3つの部品から構成される。
【0040】
回転部材21Aの処置具固定部24Aは、断面が略C字状であり、一部が開放された開放円筒状となっている。すなわち、処置具固定部24A自体が開放円筒部であるともいえる。
【0041】
ゴム部材28は内径が一般的な処置具14のシース15の径より若干小さく、外径が処置具固定部24Aの円筒部分の上端内径と同一の円筒形状をなしている。また、ゴム部材28は、円筒外面33から円筒内面32に貫通するスリット30を有している。このスリット30を利用して処置具14のシース15をゴム部材28の円筒内面32に押し入れることが可能とされている。また、ゴム部材28の一方側の端部には、その一部が円筒形のゴム部材28の延在方向に沿って(
図5における上方に)突出した凸部29を有する。凸部29は、ゴム部材28の取り扱い性を高める機能を有する。
【0042】
シース15が押し入れた後は摩擦により、処置具14のシース15上の一点にゴム部材28が固定される。また、ゴム部材28が処置具14のシース15に固定された状態で、ゴム部材28を処置具固定部24AのC字状の開放円筒部の内側に上側(操作入力部23が設けられている側)から圧入すると、摩擦によってゴム部材28が処置具固定部24Aの内面に対して固定される。また、ゴム部材28の凸部29が上側となる状態でゴム部材28を処置具固定部24Aに対して固定した場合、凸部29をつまんで引くことにより処置具固定部24Aからゴム部材28を容易に引き抜くことができる。
【0043】
上記ではシース15に対してゴム部材28を取り付けた後に、シース15が取り付けられたゴム部材28を回転部材21の処置具固定部24Aに対して取り付ける場合について説明した。しかしながら、ゴム部材28を回転部材21の処置具固定部24Aに対して取り付けた後に、シース15をゴム部材28の円筒内面32に対して挿入して取り付けてもよい。処置具固定部24Aは円筒形状をなしているが、上述のように略C字状であり、その一部に切り欠きが設けられている。したがって、切り欠きを利用して処置具14のシース15を処置具固定部24Aの円筒内部のゴム部材28の円筒内面32に入れることができる。
【0044】
なお、
図4及び
図5に示すように、ゴム部材28のスリット30の円筒外面33側が面取りしてあると、処置具のシース15を押し入れる動作を行いやすくなる。また、処置具固定部24Aの円筒内面は、上端より下端の径が狭くなるテーパ形状をなしていると、ゴム部材28を圧入したときに固定されやすくなる。また、処置具固定部24Aの内径(内面の径)は、上端が最も小さくされていてもよい。
【0045】
(第3実施形態)
図6~
図8を参照しながら、本発明の第3実施形態に係る進退補助具について説明する。
【0046】
第3実施形態に係る進退補助具20Bは、ベース部材を有する点が第2実施形態に係る進退補助具20Aと相違する。すなわち、進退補助具20Bは、回転部材21B、ゴムベルト22、ゴム部材28、及び、ベース部材40の4つの部品を含んで構成される。ベース部材40は、ゴムベルト22と共に、内視鏡10の処置具挿入口12近傍において処置具挿入口12の中心軸から離れた位置で、回転部材21Bを回動可能または回転可能に支持する支持部材としての機能を有する。
【0047】
回転部材21Bは、回転部材21,21Aと同様に略L字状であるが、二辺の角の部分に回転軸41を有している。回転部材21Bの処置具固定部24Bの形状及び機能等は、進退補助具20Aの処置具固定部24Aと同様である。
【0048】
ベース部材40は、回転軸41を受ける軸受部42を有している。回転軸41が軸受部42に対して収容されることで、回転部材21は回転軸41を軸としてベース部材40に対して回転可能に接合されている。回転軸41を利用した回転部材21Bの回転方向は、進退補助具20,20Aと同様に、把持部16に沿った上下方向、すなわち、基端側に向かう方向と先端側に向かう方向である。したがって、回転軸41の延在方向は、進退補助具20Bを内視鏡10に対して取り付けた際に、把持部16に沿った上下方向に対して交差する方向とされる。
【0049】
ベース部材40には凹部43が設けられている。進退補助具20Bは、凹部43と内視鏡10の処置具挿入口12の外面とが密に接触するように、ゴムベルト22を用いてベース部材40を内視鏡10の把持部16に対して装着する。ゴムベルト22を用いた装着方法は、第1実施形態で説明した進退補助具20と同様であるが、進退補助具20Bでは、フック25がベース部材40に対して取り付けられている。すなわち、ベース部材40に設けられた一対のフック25に対してゴムベルト22の両端の穴26を係止することにより、ベース部材40が内視鏡10の把持部16に対して固定された状態となる。
【0050】
進退補助具20Bのベース部材40は、把持部16との対向面44に、把持部16の外形に対応した円弧状の傾斜が付けられている(
図6参照)。また、ベース部材40の把持部16との対向面44とは逆側に、処置具挿入口12の外形に対応した凹部43が設けられている(
図7参照)。この傾斜を有する対向面44と、凹部43とによって、ベース部材40が内視鏡10の把持部16に対して固定され、滑りにくい状態となる。この内視鏡10の把持部16に対する移動が規制されたベース部材40に対して回転軸41を介して回転部材21が回転可能に取り付けられている。そのため、第1実施形態で説明した、一対のフック25が回転軸として機能していた進退補助具20と比較して、回転部材21の動作が安定する。
【0051】
また、第1実施形態の進退補助具20では、処置具固定部24と処置具挿入口12とが同一軸で接するよう、術者が装着位置を調整する必要があったが、進退補助具20Bの場合はベース部材40の形状に基づいてベース部材40を含む進退補助具20Bの位置決めを行うことができる。すなわち、ベース部材40を内視鏡10の把持部16に対する装着時に、処置具挿入口12の位置を基準とした位置決めを自動的に行うことができる。そのため、進退補助具20Bの装着が容易となり且つその動作が安定する。なお、ベース部材40の下面等、凹部43及び対向面44以外の面についても、内視鏡10の把持部16の表面形状に対応した形状とするように設計されていると、ベース部材40の固定がより強固になり好適である。
【0052】
また、進退補助具20Bの回転部材21Bでは、操作入力部23Bの形状が進退補助具20の回転部材21から変更されている。具体的には、
図6及び
図7に示すように、操作入力部23Bは、術者の左手の小指にフィットする凹部を有する略鞍型状とされている。進退補助具20Bにおいても、進退補助具20と同様に、術者の左手の小指により操作入力部23Bを操作して回転部材21Bを回転させる。
【0053】
進退補助具20Bの操作入力部23Bは、略鞍型状とされているため、左手の小指を利用した操作を効率よく行うことができる。
【0054】
進退補助具20では操作入力部23が折れ曲がっていない直線の棒状であるため、進退補助具20の操作入力部23を引く(図示上方に移動させる)場合には操作入力部23の下側に小指を配置させて操作入力部23を上方に押す必要があり、進退補助具20の操作入力部23を押す(図示下方に移動させる)場合には、操作入力部23の上側に小指を配置させて操作入力部23を下方に押す必要があった。このように、操作入力部23が棒状であると回転部材21を回転させる方向に応じて、小指を操作入力部23から離して移動させることになる。
【0055】
これに対して、進退補助具20Bの操作入力部23Bは、進退補助具20の操作入力部23Bを引く(図示上方に移動させる)場合も、進退補助具20の操作入力部23Bを押す(図示下方に移動させる)場合も、凹部内に小指を入れた状態で操作を行うことができる。したがって、常に小指を操作入力部23Bの凹部内に配置させた状態とすることができるため、操作に係る効率が向上する。また、術者は内視鏡10を操作する際には内視鏡画像を常時見ていることから、小指が操作入力部23Bに触れた状態を保持できることで、回転部材21Bの回転に係る微小な操作も精度良く行うことが可能となる。
【0056】
なお、操作入力部23Bのように、小指を配置しやすい形状の操作入力部を設ける場合、小指によって、操作入力部23Bを引く方向、及び、操作入力部23Bを押す方向の両方に対して力をかけることが可能な形状とすることで、操作入力部23から小指を離すことなく回転部材21の回転を制御することが可能となる。これを実現するためには、操作入力部23Bを引く方向の力を受けることができる面、及び、操作入力部23Bを押す方向の力を受けることができる面の両方を操作入力部23Bに設けることになる。操作入力部23Bの場合には略鞍型とすることで、上記の2つの面が形成されている。ただし、操作入力部の形状は上記の略鞍型に限定されず、適宜変更することができる。
【0057】
また、進退補助具20では、操作入力部23及び処置具固定部24は、一対のフック25により形成される回転軸に対して直交する同一の平面に設けられている。換言すると、一対のフック25により形成される回転軸と直交し、処置具固定部24の中心(シース15が固定される箇所)を通る平面上に操作入力部23の中心が位置するように操作入力部23が設けられている。これに対して、進退補助具20Bでは、操作入力部23B及び処置具固定部24は、回転軸41に対して直交する互いに異なる平面に設けられている。換言すると、回転軸41と直交し処置具固定部24の中心(シース15が固定される箇所)を通る平面上とは異なる位置に、操作入力部23Bの中心が位置するように、操作入力部23Bが設けられている。
図8に示すように、進退補助具20Bでは、回転軸41と直交し処置具固定部24の中心(シース15が固定される箇所)を通る平面よりも、小指に近くなる側(
図3も参照)に操作入力部23Bが設けられている。このように、操作入力部23Bを設ける位置は適宜変更することができる。また、操作入力部23Bを設ける位置に応じて、小指を利用した操作入力部23Bの操作が容易となるように、操作入力部23Bの形状を変更してもよい。
【0058】
本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。
【0059】
例えば、進退補助具の回転部材を回転または回動可能に支持する支持部材の構成は、上記実施形態で説明したゴムベルト、または、ゴムベルト及びベース部材の組み合わせに限定されない。
【0060】
また、進退補助具の回転部材は回転軸を中心として回転しても回動してもよい。何れの場合でも、操作入力部における操作者の入力に対応して処置具固定部が回動し、処置具の進退の制御を行うことが可能となる。したがって、回転部材の回転または回動の軸心となる回転軸が設けられる位置は上記実施形態で説明した構成に限定されない。
【0061】
また、進退補助具の回転部材、ベース部材、ゴムベルト、及び、ゴム部材等は、それぞれ1つの部材から構成されていてもよいし、複数の部材の組み合わせによって構成されていてもよい。例えば、回転部材は、処置具固定部の周辺のみ弾性を有する部材から構成され、そのほかは、弾性を有しない部材から構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…内視鏡、12…処置具挿入口、13…先端開口部、14…処置具、15…シース、16…把持部、17…先端部、20,20A,20B…進退補助具、21,21A,21B…回転部材、22…ゴムベルト、24,24A,24B…処置具固定部、23、23B…操作入力部、25…フック、26…穴、27…回動面、40…ベース部材、41…回転軸、42…軸受部、43…凹部、44…対向面、100…左手、101…小指、211…第1辺、212…第2辺、241…スリット、242…シース支持部。