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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】投射装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/09 20060101AFI20230915BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20230915BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20230915BHJP
   G02B 5/04 20060101ALI20230915BHJP
   G01S 7/481 20060101ALN20230915BHJP
【FI】
G02B27/09
G02B5/00 Z
G02B5/02 C
G02B5/04 B
G01S7/481 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019099493
(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公開番号】P2020194083
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 厚司
(72)【発明者】
【氏名】高田 和政
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-115071(JP,A)
【文献】特開2007-227142(JP,A)
【文献】特開2011-203649(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0029717(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/09
G02B 5/00
G02B 5/02
G02B 5/04
G01S 7/481
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のX軸方向に光を射出する光源と、
前記X軸方向に直交する2つの方向をそれぞれY軸方向及びZ軸方向としたときに、XY面内で断面が三角形状のプリズムと、を備え、
前記プリズムのYZ面に平行で前記光源からの光が入射する面を第1面とし、前記第1面とは異なる2つの斜面をそれぞれ第2面及び第3面とし、
前記プリズムの前記第2面及び前記第3面にそれぞれ対向して配置された2つの拡散板を備え、
前記プリズムの前記第2面及び前記第3面がなす頂角は、5°以上90°以下であり、
前記第2面で全反射した光を前記第3面に入射させる一方、前記第3面で全反射した光を前記第2面に入射させることで、前記光源からの光が2つに分かれるようにし、
前記第2面及び前記第3面にそれぞれ対向する2つの前記拡散板に光を入射させて拡散透過させ、拡散した2つの光を重ね合わせる
ことを特徴とする投射装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記拡散板の拡散面は、前記プリズムと対向する側に設けられ、
前記拡散板における前記拡散面と反対側の面は、平面状に形成されていることを特徴とする投射装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記拡散板の拡散面は、凹部と凸部とが隣接して複数配置された溝状に形成されていることを特徴とする投射装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記プリズムは、断面形状が一定となった押し出し形状に形成され、
前記拡散板の拡散面の溝部は、前記プリズムの押し出し方向と略平行に延びていることを特徴とする投射装置。
【請求項5】
請求項3又は4において、
前記拡散板の溝方向に略平行な方向の光拡散角が、該拡散板の溝方向に略垂直な方向の光拡散角よりも小さいことを特徴とする投射装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうち何れか1つにおいて、
前記2つの拡散板は、所定の隙間をあけて配置されていることを特徴とする投射装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のうち何れか1つにおいて、
前記2つの拡散板の光の広がり角は、それぞれ90°以上であることを特徴とする投射装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のうち何れか1つにおいて、
前記光源、前記プリズム、及び前記2つの拡散板の外側に配置された透明カバーを備え、
前記透明カバーは、前記拡散板の射出光が入射し且つ該拡散板と対向する略平行な面を有することを特徴とする投射装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のうち何れか1つにおいて、
前記光源は、レーザ光源であることを特徴とする投射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離測定のための投射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、距離測定方式として、光源の光に振幅変調を行い被測定物からの反射光と光源との位相差を測定する位相差検出方式や、極短パルスの光を照射して被測定物の反射光の到達時間を測定することで距離を測定するTOF(Time Of Flight)方式が知られている。
【0003】
ここで、測定可能な距離を長くするとともに測定精度を高めようとすると、小型高出力で、高周波の変調又は非常に短いパルス波形を得るために、光源として半導体レーザを使用する必要がある。
【0004】
レーザ光源の使用については、人体や目に対する安全性の観点から、日本国内では、JIS-C6802で規定されている。特に、人の目に光が入る可能性がある場合には、一般的に、クラス1の条件を満たす必要がある。
【0005】
ここで、クラス1の条件を満たして、レーザ光源の出力を上げるためには、投射装置の射出面に配置された拡散板において、レーザ光のビーム径を大きくする必要がある。
【0006】
具体的に、投射装置の射出面におけるビーム径が小さい場合には、人が投射装置を見たときに、目の網膜にできる光源像も小さくなって光集中が高くなり、目に損傷を与えやすい。これを防ぐためには、投射装置の射出面のビーム径を大きくすることで、網膜にできる光源像を大きくすればよい。これにより、目に損傷を与えることなく、レーザ光源の光出力の最大値を大きくすることができる。
【0007】
ところで、従来のレーザ投射装置として、半導体レーザの射出部の窓に拡散板が配置された構成のものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
特許文献1の発明では、レーザ光源からの射出光は、凹レンズで拡散拡大され、拡散板に光が投射される。拡散板では、光が等方向に拡散される。凹レンズを用いることで、拡散板でのビーム径が大きくなるようにしている。
【0009】
ここで、レーザ光源のビーム径は、数μmと非常に小さいが、凹レンズと拡散板を用いることで、拡散板上にレーザ光源の射出面でのビーム径より非常に大きなビーム径を形成することになる。
【0010】
これにより、人がレーザをのぞいたときに、目の網膜に形成される光源の像が大きくなるので、目に損傷を与えることなく、レーザ出力の上限を大きくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平9-307174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、従来の発明では、レーザ光源の射出光を凹レンズで広げて拡散板に照射しているため、レーザ光源の見掛けのビーム径を大きくするには、拡散板の拡散性を非常に高くする必要がある。
【0013】
具体的に、拡散板の中央部分では、拡散板の入射面に略垂直に光が入射するが、周辺部では、拡散板の入射面に斜めに入射する。そのため、拡散板の中央部と周辺部で同様な拡散光を射出させるには、入射光の角度に依存しないぐらいに拡散性を強くしないといけない。
【0014】
また、レーザ光源の拡散板上での見掛けのビーム径が小さいと、光源の輝度が高くなり、人が投射装置を見たときに、目に損傷を与えてしまうことになる。そのため、投射装置のレーザ安全性を確保するには、非常に拡散性の高い拡散板を用いて、拡散板の面での見掛けのビーム径を大きくする必要がある。
【0015】
しかしながら、一般的なスリガラス状の拡散板では、光をスリガラス部分で多重反射させることで光拡散を行うため、光拡散性を高くすると拡散面からレーザ光源側へ戻る光の割合が大きくなり、光利用効率が大幅に低下してしまう。
【0016】
また、拡散性の高い拡散板の拡散特性は、一般的にはランバート拡散となり、斜め方向への光が弱くなってしまう。さらに、平板の拡散面であるので、180°以上の光拡散が行えないという課題を有している。
【0017】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、拡散板での光ロスが小さく、均一で広い放射角の光を射出できる投射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
第1の発明は、投射装置を対象とし、第1面、第2面、及び第3面を有する三角形状のプリズムと、前記プリズムの前記第1面に光を射出する光源と、前記プリズムの前記第2面及び前記第3面にそれぞれ対向して配置された2つの拡散板とを備え、前記プリズムの前記第2面及び前記第3面がなす頂角は、5°以上90°以下であることを特徴とするものである。
【0019】
第2の発明は、第1の発明において、前記拡散板の拡散面は、前記プリズムと対向する側に設けられ、前記拡散板における前記拡散面と反対側の面は、平面状に形成されていることを特徴とするものである。
【0020】
第3の発明は、第2の発明において、前記拡散板の拡散面は、凹部と凸部とが隣接して複数配置された溝状に形成されていることを特徴とするものである。
【0021】
第4の発明は、第3の発明において、前記プリズムは、断面形状が一定となった押し出し形状に形成され、前記拡散板の拡散面の溝部は、前記プリズムの押し出し方向と略平行に延びていることを特徴とするものである。
【0022】
第5の発明は、第3又は第4の発明において、前記拡散板の溝方向に略平行な方向の光拡散角が、該拡散板の溝方向に略垂直な方向の光拡散角よりも小さいことを特徴とするものである。
【0023】
第6の発明は、第1乃至第5の発明のうち何れか1つにおいて、前記2つの拡散板は、所定の隙間をあけて配置されていることを特徴とするものである。
【0024】
第7の発明は、第1乃至第6の発明のうち何れか1つにおいて、前記2つの拡散板の光の広がり角は、それぞれ90°以上であることを特徴とするものである。
【0025】
第8の発明は、第1乃至第7の発明のうち何れか1つにおいて、前記光源、前記プリズム、及び前記2つの拡散板の外側に配置された透明カバーを備え、前記透明カバーは、前記拡散板の射出光が入射し且つ該拡散板と対向する略平行な面を有することを特徴とするものである。
【0026】
第9の発明は、第1乃至第8の発明のうち何れか1つにおいて、前記光源は、レーザ光源であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、拡散板での光ロスが小さく、均一で広い放射角の光を射出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態に係るレーザ投射装置の構成を示す模式図である。
図2】拡散板の構成を一部拡大して示す断面図である。
図3】レーザ投射装置の光線を示す図である。
図4】拡散板での屈折による光拡散を示す図である。
図5A】プリズムの斜面からの射出光の放射角分布を示す図である。
図5B】拡散板の射出光の放射角分布を示す図である。
図5C】拡散板の光束を重ね合わせたときの、レーザ投射装置としての放射角分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0030】
図1は、本実施形態に係るレーザ投射装置の模式図である。図1において、紙面右手方向をX軸、上方向をY軸、紙面奥行き方向をZ軸とする。
【0031】
図1に示すように、レーザ投射装置100は、レーザ光源101と、プリズム102と、拡散板106及び拡散板111と、透明ケース112とを備えている。
【0032】
レーザ光源101は、X軸正方向に光を射出する。射出する光の分布は、放射分布の中心がX軸と平行でガウシアン分布に近い放射分布を持つ。レーザ光源101の広がり角は、半値全角で5°以上で且つ、40°以下が望ましい。できれば、30°以下がよい。
【0033】
レーザ光源101の波長は、近赤外の単色の波長であり、発光時には人の目に感知されない。レーザ光源101は、YZ面内に複数のレーザ発光素子(図示省略)を近接して配列したものである。レーザ発光素子を複数配列して配置することで、空間的な干渉性を弱め、スペックルノイズを低減することができる。
【0034】
また、光源にレーザを用いることで、LEDよりも応答性を高くすることができ、発光時間の短いパルス状の光を形成することができる。これにより、平均エネルギーが同じでも、ピーク光強度を高くすることで、距離計測等において、遠くの物体まで照射し計測することができる。
【0035】
プリズム102は、XY面内で断面が三角形であり、Z軸方向に断面形状が一定となった押し出し形状である。つまり、プリズム102の三角形の頂点を含む辺は、任意の頂角部のZ軸方向と平行である。
【0036】
プリズム102の底面103は、レーザ光源101と対向するように配置され、YZ面と平行である。プリズム102の斜面104と斜面105からなる頂角θは、90°以下で、レーザ光源101からの光を全反射する角度で設定される。なお、頂角θは、あまり小さくすると強度が不足して破損しやすくなるため、5°以上が望ましい。
【0037】
プリズム102は、レーザ光源101の波長において透明であり、材質は、例えば、ポリカーボネートやアクリル等の樹脂や、あるいはガラスでもよい。
【0038】
レーザ光源101の発光中心に対して、プリズム102の底面の中心位置とプリズム102の頂点を結ぶラインは、若干ずれて配置されている。
【0039】
拡散板106は、薄い平板状の部材で構成されている。拡散板106は、プリズム102の斜面104と対向するように配置される。拡散板106の溝部108は、プリズム102側にあり、溝部108の反対面は、平面部107である。
【0040】
拡散板111は、拡散板106と同様な拡散板であり、プリズム102の斜面105と対向するように配置され、拡散板111の溝部は、プリズム102側にある。
【0041】
拡散板106及び拡散板111は、レーザ光源101の波長において、透明である。材質は、例えば、ポリカーボネートやアクリル等の樹脂や、あるいはガラスでもよい。
【0042】
拡散板106と拡散板111とは、所定の隙間dをあけて配置される。隙間dの間隔は、少なくとも0.05mm以上である。隙間dをあけることで、拡散板106及び拡散板111同士の接触によるゴミの発生や破損のリスクを低減できる。
【0043】
光量中心140は、プリズム102を射出する光の放射分布の光量中心を示す。拡散板106の面法線141は、光量中心140に対して、Z軸回りに時計回りに角度φをずらして配置される。角度φは、レーザ光源101の広がり角の1/2程度とする。
【0044】
透明ケース112は、XY面内の断面形状が三角形状に形成されている。透明ケース112と拡散板106、及び透明ケース112と拡散板111とは、対向する面が略平行である。
【0045】
図2は、図1に示す仮想円Aで囲まれた部分を拡大した図である。図2に示すように、拡散板106の溝部108は、凹部109と凸部110が隣接して配置され、凹部109と凸部110の組み合わせが周期pで繰り返された形状となっている。
【0046】
溝部108は、Z軸方向に断面形状が一定となった押し出し形状である。つまり、三角形状の頂点を含む辺は、任意の頂角部の溝部108の溝方向と平行である。
【0047】
凹部109と凸部110は、非球面形状であり、凹部109と凸部110とが接する部分の傾斜角は同じで、凹部109と凸部110とは、滑らかに接合されている。凹部109をZ軸中心に180度回転させた形状は、凸部110と相似形である。XY面において、凹部109と凸部110との接続部を通るライン145は、溝部108の法線方向と垂直である。なお、拡散板111の溝形状は、拡散板106と同様である。
【0048】
以下、レーザ投射装置100の動作について説明する。図3に示すように、レーザ光源101の射出光120は、プリズム102の底面103より入射して屈折し、光線121となる。プリズム102の頂角θは90°より小さく、斜面105で全反射するように設定されているので、光線121の大部分の光は、斜面105で全反射し、斜面105と対向する斜面104に入射する。
【0049】
光線121は、斜面104の法線方向に近い角度で入射するため、大部分の光が斜面104を透過し、プリズム102から射出する。プリズム102の斜面104から射出した光線121は、拡散板106の溝部108に入射する。
【0050】
図4は、図3に示す仮想円Bで囲まれた部分を拡大した図である。図4に示すように、溝部108は、凹部109と凸部110から構成されている。凹部109に入射した光線122は、凹レンズ効果によって拡散する。凸部110に入射した光線123は、一旦集光するが、その後、拡散する。
【0051】
拡散板106の溝部108で拡散した光は、拡散板106の平面部107で屈折して射出する。拡散板106の屈折率は、空気より大きいので、拡散板106から射出する光は、さらに広がり角が広くなる。よって、凹部109と凸部110が配列された溝部108に入射した光線121は、屈折作用により光拡散させられる。なお、プリズム102の斜面104で全反射し、斜面105を透過し、拡散板111で拡散する光も同様である。
【0052】
図5A図5Cは、レーザ投射装置100からの射出光の図1におけるXY面での放射角分布を示す図である。角度は、図1においてZ軸回りにY軸からX軸へ回転する方向を正としている。
【0053】
図5Aは、プリズム102の斜面104及び斜面105からの射出光の放射角分布を示す図である。図5Aに示すように、レーザ光源101の射出光は、プリズム102により、斜面104と斜面105からの射出光に対応した2つの光束130及び光束131に分かれる。
【0054】
図5Bは、拡散板106及び拡散板111の射出光の放射角分布を示す図である。プリズム102の斜面104及び斜面105から射出した光は、拡散板106及び拡散板111で拡散することで、光束132及び光束133となる。
【0055】
拡散板106から拡散した光である光束132は、放射角分布の負方向に広がりを持つが、わずかに正方向に跨がるように拡散板106の広がり角を設定する。同様に、拡散板111から拡散した光である光束133は、放射角分布の正方向に広がりを持つが、わずかに負方向に跨がるように拡散板111の広がり角を設定する。
【0056】
拡散板106からの射出光の光束134の放射角分布は、負方向側の光強度が高く、角度0°方向の光強度が低くなるようになっている(図5C参照)。これは、図2において、プリズム102の射出光の光量中心140が、拡散板106の溝部108の面法線141に対してXY面内で、角度φで入射することで生じる。
【0057】
プリズム102の射出光の光量中心140が、溝部108に対して角度φで入射することで、溝部108の斜面146に対しては、入射角が小さくなることで、屈折による光線角度変化が小さくなる。すなわち、拡散板106での拡散が小さくなる。溝部108の斜面146での屈折光は、放射角分布の負方向に拡散する光であるので、負方向の角度の広がりが小さくなる(図5Bの符号150参照)。
【0058】
一方、斜面147に対しては、入射角が大きくなることで、屈折による光線角度変化が大きくなる。すなわち、拡散板106での拡散が大きくなる。溝部108の斜面147での屈折光は、放射角分布の正方向側に拡散する光であるので、正方向側の角度の広がりが大きくなる(図5Bの符号151参照)。
【0059】
光量中心140が面法線141に対して角度φ傾斜していると、斜面146への光量は、斜面147より多くなり、かつ光拡散が小さくなるので、放射角度分布において、負方向の光強度は大きくなる。このため、拡散板106の射出光の放射角度分布は負方向の光強度が強くなる。なお、拡散板111からの射出光において、正方向側の光強度が強くなるのも同様である。
【0060】
図5Cは、拡散板106の光束132と拡散板111の光束133を重ね合わせたときの、レーザ投射装置100としての放射角分布である。拡散板106から拡散した光束132は、角度マイナス方向だけでなく、一部、正方向の角度まで広がるように設定される(図5B参照)。同様に、拡散板111からの拡散した光束133は、角度方向正方向だけでなく、一部、負方向の角度まで広がるように設定される(図5B参照)。
【0061】
このため、図5Cに示すように、光束132と光束133とを重ね合わせることで、光束134のように、0°近傍の光量が少し低く、正方向と負方向で光強度の高い放射分布を得ることができる。
【0062】
このような放射分布とすることで、0°方向、すなわち、レーザ投射装置100の正面方向より正方向と負方向、すなわち、周辺部を観察したときに有利になる。拡散板106及び拡散板111の拡散による広がり角を、それぞれ90°以上とすることで、合成される広がり角を180°以上とすることができる。
【0063】
一方、XZ面内の放射分布は、レーザ光源101の広がり角のままである。自動車等にレーザ投射装置100を搭載する場合、XZ面を垂直方向に、XY面を水平方向とすることで、垂直方向にはあまり光を広げずに、水平面内に広げることで、光を効率良く照射することができる。
【0064】
ところで、レーザ光源101のレーザクラスを算出する際には、投射光学系の拡散板でのビーム径が、レーザクラス計算に関与してくる。本実施形態では、プリズム102で光を2分割して、それぞれを拡散させる構成としているので、見かけ上、レーザ光源101を2つに分けたことになり、レーザクラス計算においてレーザクラス1となるレーザ光源出力の上限を向上させることができる。
【0065】
拡散板106及び拡散板111は、金型を用いた射出成型により製作することができる。本実施形態では、拡散板106及び拡散板111の溝部108は、滑らかな曲線で、押し出し形状をしているので、例えば、シェーパー加工で容易に短時間での機械加工で金型を製作し、射出成型により安価に拡散板を製作することができる。また、拡散板106及び拡散板111の製造工程での摩耗、成形の転写不良による変形の影響を受けにくい。
【0066】
また、拡散板106及び拡散板111の溝部108は、滑らかな曲線で形成されているので、例えば、エッジなどで局所的に傾斜角が大きくなって、エッジ付近での不要な反射や迷光となることがない。また、エッジ部分の摩耗により予期しない拡散の広がりができ、拡散板の光効率が低下しやすくなることもない。
【0067】
拡散板106と拡散板111とは、隙間dをあけて配置されるが、レーザ光源101からの光は、プリズム102で2つに分けられて角度を持った光となるため、プリズム102からの射出光は、0°方向への光はほとんど生じない(図5A参照)。このため、拡散板106と拡散板111との隙間dからの漏れ光はほとんど生じない。
【0068】
ところで、一般的に、組み立て時に誤差が生じてしまうと、レーザ光源101の放射分布中心とプリズム102の対称軸とを一致させることが難しい。
【0069】
これに対し、本実施形態では、レーザ光源101の放射分布がガウシアン分布で少なくとも半値全角で5°以上の広がりを持ち、拡散板106と拡散板111の放射分布が角度0°において、重なっている。
【0070】
そのため、レーザ光源101の放射分布中心と、プリズム102の対称軸とがずれても、角度0°方向の光強度が0となりにくい構成となっている。ここで、レーザ光源101の放射分布の広がり角を大きくするほど、レーザ光源101の放射分布中心と、プリズム102の対称軸のずれの許容値を大きくとることができる。
【0071】
このような構成によれば、レーザ光源101の射出光を、プリズム102で2つに分け、2つの屈折を用いる拡散板106及び拡散板111で拡散させ、拡散光を重ね合わせることで、拡散板106及び拡散板111での光ロスが小さく、180°以上の広がり角の光を射出することができる。
【0072】
また、レーザ光源101の光源像を2つに分けることで、見掛けの光源発光サイズを大きくし、レーザクラス1となるレーザ出力を高くすることができるので、明るい照明が可能なレーザ投射装置を提供することができる。
【0073】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0074】
本実施形態では、レーザ光源101は、レーザ発光素子を複数配列し、空間的な干渉性を下げたものを用いたが、マルチモードタイプの半導体レーザなどの空間的な干渉性の低いものを用いてもよい。また、発光ダイオードや発光径の小さな発光ダイオード(SLD)を用いてもよい。
【0075】
なお、スペックルノイズが増えても構わなければ、シングルモードタイプの半導体レーザでもよい。また、装置が大型化してもよければ、HeNe、アルゴンガスレーザなどを用いてもよい。
【0076】
また、本実施形態では、レーザ光源101の波長を近赤外としたが、測定光が見えても構わないときは、可視光を用いてもよい。あるいは、紫外光を用いても構わない。なお、光源をレーザ光源101としたが、応答特性が悪くなるが、LEDを用いてもよい。
【0077】
また、本実施形態において、拡散板106及び拡散板111の平面部107に反射防止膜を形成し、表面反射を低減させてもよい。
【0078】
また、本実施形態において、拡散板106と拡散板111とは、同じ広がり角でもよいし、溝部108の凹部109と凸部110の形状を変更して、異なる広がり角としてもよい。
【0079】
また、本実施形態において、プリズム102の断面形状は、二等辺三角形でもよいし、不等辺三角形でもよい。
【0080】
また、本実施形態では、透明ケース112の断面を三角形状としたが、この形態に限定するものではない。例えば、レンズ効果で放射角分布が若干変化するが、図1のXY面内において半円となる円筒形状でもよい。
【0081】
また、本実施形態において、XZ面方向に光を広げるために、レーザ光源101の直後にXZ面内で光を拡散させる拡散板を配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の投射装置は、拡散板での光ロスが小さく、広い放射角の光を射出でき、投射装置の射出面における見かけのビームを分けて、レーザクラス1の範囲内でレーザ光源出力を高くすることができるので、屋外での車載センサや防犯センサ、屋内でのエアコンや照明等の家電の距離センサ用光源にも適用できる。
【符号の説明】
【0083】
100 レーザ投射装置
101 レーザ光源
102 プリズム
103 底面(第1面)
104 斜面(第2面)
105 斜面(第3面)
106 拡散板
108 溝部
109 凹部
110 凸部
111 拡散板
112 透明ケース
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C