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特許7349670エンジン制御方法、エンジン制御システム、及び船舶
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】エンジン制御方法、エンジン制御システム、及び船舶
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20230915BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20230915BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
F02D45/00 372
F02D45/00 362
F02D45/00 369
F02D41/04
F02D29/02 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021520884
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(86)【国際出願番号】 JP2020020426
(87)【国際公開番号】W WO2020235689
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2019095769
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】ボンダレンコ オレクシー
(72)【発明者】
【氏名】福田 哲吾
(72)【発明者】
【氏名】北川 泰士
(72)【発明者】
【氏名】出口 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤原 真
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-19783(JP,A)
【文献】米国特許第7006909(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第107989708(CN,A)
【文献】特開2008-248859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 45/00
F02D 41/04
F02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのエンジンモデルを設定するエンジンモデル設定ステップと、
前記エンジンの設定回転数を取得する設定回転数取得ステップと、
前記エンジンの負荷変動を予測するためのパラメータを取得するパラメータ取得ステップと、
前記取得した前記パラメータを前記エンジンモデルに適用し、前記エンジンの前記負荷変動を含む状態観測を行う状態観測ステップと、
前記状態観測による前記負荷変動の予測結果と、前記エンジンの前記設定回転数に基づき前記エンジンを制御するためのフィードフォワード制御パラメータを導出する制御パラメータ導出ステップと、
導出した前記フィードフォワード制御パラメータを前記エンジンの制御に適用するエンジン制御ステップと
を実行することを特徴とするエンジン制御方法。
【請求項2】
前記パラメータ取得ステップで取得する前記パラメータは、エンジン回転数と燃料供給量であることを特徴とする請求項1に記載のエンジン制御方法。
【請求項3】
前記状態観測ステップにおいて、前記パラメータを前記エンジンモデルに適用して得られるエンジン負荷の推定結果に基づいて、前記負荷変動の前記予測結果を得ることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンジン制御方法。
【請求項4】
前記制御パラメータ導出ステップにおいて、システム伝達関数モデルに前記負荷変動の前記予測結果と前記設定回転数を適用し、前記フィードフォワード制御パラメータを導出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエンジン制御方法。
【請求項5】
前記制御パラメータ導出ステップにおいて、前記負荷変動の前記予測結果と前記設定回転数をカルマンフィルターに基づいてフィードフォワード補償をし、前記フィードフォワード制御パラメータを導出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエンジン制御方法。
【請求項6】
前記制御パラメータ導出ステップにおいて、前記負荷変動の前記予測結果と前記設定回転数をファジイ推論に基づいてフィードフォワード補償をし、前記フィードフォワード制御パラメータを導出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエンジン制御方法。
【請求項7】
前記エンジン制御ステップにおいて、前記エンジンに設けたガバナに前記フィードフォワード制御パラメータとして指令回転数を出力することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のエンジン制御方法。
【請求項8】
前記エンジンの前記負荷変動は、前記エンジンに連結されるプロペラの外乱による変動であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のエンジン制御方法。
【請求項9】
エンジンと、前記エンジンの回転数を設定する回転数設定手段と、前記エンジンの負荷変動を予測するためのパラメータを取得するパラメータ取得手段と、前記エンジンのエンジンモデルを設定するエンジンモデル設定部、前記取得した前記パラメータを前記エンジンモデルに適用し前記エンジンの前記負荷変動を含む状態観測を行う状態観測部、及び前記状態観測による前記負荷変動の予測結果と前記回転数設定手段で設定された設定回転数に基づき前記エンジンを制御するためのフィードフォワード制御パラメータを導出する制御パラメータ導出部を有した制御手段とを備え、導出した前記フィードフォワード制御パラメータに基づいて前記エンジンを制御することを特徴とするエンジン制御システム。
【請求項10】
前記パラメータ取得手段は、エンジン回転数センサと燃料供給量センサであることを特徴とする請求項9に記載のエンジン制御システム。
【請求項11】
前記状態観測部において、前記パラメータを前記エンジンモデルに適用して得られるエンジン負荷の推定結果に基づいて、前記負荷変動の前記予測結果を得ることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載のエンジン制御システム。
【請求項12】
前記制御パラメータ導出部において、システム伝達関数モデルに前記負荷変動の前記予測結果と前記設定回転数を適用し、前記フィードフォワード制御パラメータを導出することを特徴とする請求項9から請求項11のいずれか1項に記載のエンジン制御システム。
【請求項13】
前記制御パラメータ導出部において、前記負荷変動の前記予測結果と前記設定回転数をカルマンフィルターに基づいてフィードフォワード補償をし、前記フィードフォワード制御パラメータを導出することを特徴とする請求項9から請求項11のいずれか1項に記載のエンジン制御システム。
【請求項14】
前記制御パラメータ導出部において、前記負荷変動の前記予測結果と前記設定回転数をファジイ推論に基づいてフィードフォワード補償をし、前記フィードフォワード制御パラメータを導出することを特徴とする請求項9から請求項11のいずれか1項に記載のエンジン制御システム。
【請求項15】
前記制御手段は、前記エンジンに設けたガバナを前記フィードフォワード制御パラメータとしての指令回転数で制御することを特徴とする請求項9から請求項14のいずれか1項に記載のエンジン制御システム。
【請求項16】
請求項9から請求項15のいずれか1項に記載のエンジン制御システムを、前記エンジンにより駆動されるプロペラ手段を有した船舶に搭載したことを特徴とする船舶。
【請求項17】
前記プロペラ手段の外乱による変動を前記状態観測部における前記エンジンの前記負荷変動として状態観測を行なうことを特徴とする請求項16に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン性能を改善できるエンジン制御方法、エンジン制御システム、及び船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
EEDI(エネルギー効率設計指標)規制やCO排出規制の強化に応じ、舶用エンジンは船舶の大きさに比べ小型化する傾向にある。エンジンの小型化が更に進むと、現状のガバナによる回転数フィードバック制御だけでは、実海域におけるプロペラ負荷変動によるエンジンへの悪影響を避けることはできない。
従来、負荷変動の大きさに応じて、ガバナのゲインを変えて制御したり、設定回転数を予め下げたりする調整が行われているが、プロペラ負荷変動のエンジンへの影響を小さくし燃費を最適にする制御はできていない。
【0003】
ここで、特許文献1には、主機に連結された主軸の実回転数を検出し、回転数指令及び実回転数の偏差に対し制御演算部においてPID演算を施し、PID演算により得られたガバナ指令をガバナに出力し、主機へ供給される燃料量を制御し、更に、ガバナ指令および実回転数を制御対象のオブザーバに入力しプロペラ流入速度変動を推定し、演算部においてプロペラ流入速度変動に所定ゲインを掛け回転数指令に加算し、回転数指令を補正する舶用エンジン制御システムが開示されている。
また、特許文献2には、様々な波高、波周期、対水船速、船舶の重量等の組合せに対して船体運動を考慮したプロペラ流入速度をシミュレーションにより算出し、算出されたプロペラ流入速度の変動から主機回転数の変動を算出してその標準偏差を求め、これらの結果を基準偏差データベースとし、基準偏差データベースを参照して航行中の波高、波周期、対水船速、船舶の重量から標準偏差を求め許容回転数偏差を算出し、制御部において主機のPID制御を行い、ゲインの異なる複数の制御モードを設け、比較部における回転数偏差と許容回転数偏差の比較に基づいて制御部の制御モードを切り替える船舶の主機制御システムが開示されている。
また、特許文献3には、回転数指令と実測された主軸又は主機の回転数の偏差をPID演算部に入力して燃料噴射装置から主機へ供給される燃料の量をフィードバック制御し、プロペラへのプロペラ流入速度を検出し演算部に入力し、プロペラ流入速度の変動に対応して制御ポイントが効率曲線に沿って移動するように回転数指令を修正する舶用エンジン制御システムが開示されている。
また、特許文献4には、排気弁と燃料調節手段を備えたエンジンをエンジンモデルによりエンジン状態を推定するエンジン状態観測器を用いて制御するエンジン制御方法であって、少なくともエンジンの回転数を検出してエンジン状態観測器に入力し、エンジン状態観測器でエンジン状態として少なくとも空気過剰率を推定し、推定した空気過剰率に基づいて制御対象として少なくとも排気弁を制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-57523号公報
【文献】特開2011-214471号公報
【文献】特開2010-236463号公報
【文献】特開2019-19783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~特許文献3は、いずれもエンジンに対してフィードフォワード制御を行うものではない。
また、特許文献4は、エンジン状態として空気過剰率を推定し、推定した空気過剰率に基づいて排気弁の制御を行うものであるが、フィードフォワード制御についての詳細説明は見当たらない。
そこで本発明は、フィードフォワード制御によりエンジン性能を改善するエンジン制御方法、エンジン制御システム、及びエンジン制御システムを搭載した船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載に対応したエンジン制御方法においては、エンジンのエンジンモデルを設定するエンジンモデル設定ステップと、エンジンの設定回転数を取得する設定回転数取得ステップと、エンジンの負荷変動を予測するためのパラメータを取得するパラメータ取得ステップと、取得したパラメータをエンジンモデルに適用し、エンジンの負荷変動を含む状態観測を行う状態観測ステップと、状態観測による負荷変動の予測結果と、エンジンの設定回転数に基づきエンジンを制御するためのフィードフォワード制御パラメータを導出する制御パラメータ導出ステップと、導出したフィードフォワード制御パラメータをエンジンの制御に適用するエンジン制御ステップとを実行することを特徴とする。
請求項1に記載の本発明によれば、状態観測を行なうことにより負荷変動を予測したフィードフォワード制御をエンジンに対して行い、エンジン性能を改善することができる。
なお、エンジンモデルを設定することには、最初からエンジンモデルの条件を取得し、さらにモデル内変数を取得しエンジンモデルを構築すること、既に設定されたエンジンモデルのモデル内変数を取得すること、既にモデルパラメータも入力された他の装置やコンピュータと連係させること等を含むものとする。
【0007】
請求項2記載の本発明は、パラメータ取得ステップで取得するパラメータは、エンジン回転数と燃料供給量であることを特徴とする。
請求項2に記載の本発明によれば、状態観測による負荷変動の予測結果の精度を向上させ、ひいてはフィードフォワード制御パラメータの精度を向上させることができる。
【0008】
請求項3記載の本発明は、状態観測ステップにおいて、パラメータをエンジンモデルに適用して得られるエンジン負荷の推定結果に基づいて、負荷変動の予測結果を得ることを特徴とする。
請求項3に記載の本発明によれば、推定したエンジン負荷を負荷変動の予測結果に反映することができる。
【0009】
請求項4記載の本発明は、制御パラメータ導出ステップにおいて、システム伝達関数モデルに負荷変動の予測結果と設定回転数を適用し、フィードフォワード制御パラメータを導出することを特徴とする。
請求項4に記載の本発明によれば、システム伝達関数モデルを用いることで、フィードフォワード制御パラメータをより精度よく導出することができる。
【0010】
請求項5記載の本発明は、制御パラメータ導出ステップにおいて、負荷変動の予測結果と設定回転数をカルマンフィルターに基づいてフィードフォワード補償をし、フィードフォワード制御パラメータを導出することを特徴とする。
請求項5に記載の本発明によれば、カルマンフィルターを用いることで、フィードフォワード制御パラメータをより精度よく導出することができる。
【0011】
請求項6記載の本発明は、制御パラメータ導出ステップにおいて、負荷変動の予測結果と設定回転数をファジイ推論に基づいてフィードフォワード補償をし、フィードフォワード制御パラメータを導出することを特徴とする。
請求項6に記載の本発明によれば、ファジイ推論を用いることで、フィードフォワード制御パラメータをより精度よく導出することができる。
【0012】
請求項7記載の本発明は、エンジン制御ステップにおいて、エンジンに設けたガバナにフィードフォワード制御パラメータとして指令回転数を出力することを特徴とする。
請求項7に記載の本発明によれば、負荷変動に対するエンジンの応答を速め、無駄な動きを小さくすることで燃費を向上させる制御を行うことができる。
【0013】
請求項8記載の本発明は、エンジンの負荷変動は、エンジンに連結されるプロペラの外乱による変動であることを特徴とする。
請求項8に記載の本発明によれば、エンジンの負荷変動に影響の大きいプロペラ負荷変動を予測した制御を行うことができる。
なお、請求項1から請求項8のいずれかにおける、エンジンモデル設定ステップ、設定回転数取得ステップ、パラメータ取得ステップ、状態観測ステップ、制御パラメータ導出ステップ、エンジン制御ステップをコンピュータのプログラムとして実行させることもできる。また、プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であっても、コンピュータを機能させることにより、その作用と効果は、同様に発揮できる。
【0014】
請求項9記載に対応したエンジン制御システムにおいては、エンジンと、エンジンの回転数を設定する回転数設定手段と、エンジンの負荷変動を予測するためのパラメータを取得するパラメータ取得手段と、エンジンのエンジンモデルを設定するエンジンモデル設定部、取得したパラメータをエンジンモデルに適用しエンジンの負荷変動を含む状態観測を行う状態観測部、及び状態観測による負荷変動の予測結果と回転数設定手段で設定された設定回転数に基づきエンジンを制御するためのフィードフォワード制御パラメータを導出する制御パラメータ導出部を有した制御手段とを備え、導出したフィードフォワード制御パラメータに基づいてエンジンを制御することを特徴とする。
請求項9に記載の本発明によれば、状態観測を行なうことにより負荷変動を予測したフィードフォワード制御をエンジンに対して行い、エンジン性能を改善することができる。
【0015】
請求項10記載の本発明は、パラメータ取得手段は、エンジン回転数センサと燃料供給量センサであることを特徴とする。
請求項10に記載の本発明によれば、状態観測部における負荷変動の予測結果の精度を向上させ、ひいては制御パラメータ導出部におけるフィードフォワード制御パラメータの導出精度を向上させることができる。
【0016】
請求項11記載の本発明は、状態観測部において、パラメータをエンジンモデルに適用して得られるエンジン負荷の推定結果に基づいて、負荷変動の予測結果を得ることを特徴とする。
請求項11に記載の本発明によれば、推定したエンジン負荷を負荷変動の予測結果に反映することができる。
【0017】
請求項12記載の本発明は、制御パラメータ導出部において、システム伝達関数モデルに負荷変動の予測結果と設定回転数を適用し、フィードフォワード制御パラメータを導出することを特徴とする。
請求項12に記載の本発明によれば、システム伝達関数モデルを用いることで、フィードフォワード制御パラメータをより精度よく導出することができる。
【0018】
請求項13記載の本発明は、制御パラメータ導出部において、負荷変動の予測結果と設定回転数をカルマンフィルターに基づいてフィードフォワード補償をし、フィードフォワード制御パラメータを導出することを特徴とする。
請求項13に記載の本発明によれば、カルマンフィルターを用いることで、フィードフォワード制御パラメータをより精度よく導出することができる。
【0019】
請求項14記載の本発明は、制御パラメータ導出部において、負荷変動の予測結果と設定回転数をファジイ推論に基づいてフィードフォワード補償をし、フィードフォワード制御パラメータを導出することを特徴とする。
請求項14に記載の本発明によれば、ファジイ推論を用いることで、フィードフォワード制御パラメータをより精度よく導出することができる。
【0020】
請求項15記載の本発明は、制御手段は、エンジンに設けたガバナをフィードフォワード制御パラメータとしての指令回転数で制御することを特徴とする。
請求項15に記載の本発明によれば、負荷変動に対するエンジンの応答を速め、無駄な動きを小さくすることで燃費を向上させる制御を行うことができる。
【0021】
請求項16記載に対応した船舶においては、エンジン制御システムを、エンジンにより駆動されるプロペラ手段を有した船舶に搭載したことを特徴とする。
請求項16に記載の本発明によれば、エンジン性能を改善するエンジン制御システムが搭載された船舶を提供することができる。
【0022】
請求項17記載の本発明は、プロペラ手段の外乱による変動を状態観測部におけるエンジンの負荷変動として状態観測を行なうことを特徴とする。
請求項17に記載の本発明によれば、エンジンの負荷変動に影響の大きいプロペラ負荷変動を予測した制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のエンジン制御方法によれば、状態観測を行なうことにより負荷変動を予測したフィードフォワード制御をエンジンに対して行い、エンジン性能を改善することができる。
【0024】
また、パラメータ取得ステップで取得するパラメータは、エンジン回転数と燃料供給量である場合には、状態観測による負荷変動の予測結果の精度を向上させ、ひいてはフィードフォワード制御パラメータの精度を向上させることができる。
【0025】
また、状態観測ステップにおいて、パラメータをエンジンモデルに適用して得られるエンジン負荷の推定結果に基づいて、負荷変動の予測結果を得る場合には、推定したエンジン負荷を負荷変動の予測結果に反映することができる。
【0026】
また、制御パラメータ導出ステップにおいて、システム伝達関数モデルに負荷変動の予測結果と設定回転数を適用し、フィードフォワード制御パラメータを導出する場合には、システム伝達関数モデルを用いることで、フィードフォワード制御パラメータをより精度よく導出することができる。
【0027】
また、制御パラメータ導出ステップにおいて、負荷変動の予測結果と設定回転数をカルマンフィルターに基づいてフィードフォワード補償をし、フィードフォワード制御パラメータを導出する場合には、カルマンフィルターを用いることで、フィードフォワード制御パラメータをより精度よく導出することができる。
【0028】
また、制御パラメータ導出ステップにおいて、負荷変動の予測結果と設定回転数をファジイ推論に基づいてフィードフォワード補償をし、フィードフォワード制御パラメータを導出する場合には、ファジイ推論を用いることで、フィードフォワード制御パラメータをより精度よく導出することができる。
【0029】
また、エンジン制御ステップにおいて、エンジンに設けたガバナにフィードフォワード制御パラメータとして指令回転数を出力する場合には、負荷変動に対するエンジンの応答を速め、無駄な動きを小さくすることで燃費を向上させる制御を行うことができる。
【0030】
また、エンジンの負荷変動は、エンジンに連結されるプロペラの外乱による変動である場合には、エンジンの負荷変動に影響の大きいプロペラ負荷変動を予測した制御を行うことができる。
【0031】
また、本発明のエンジン制御システムによれば、状態観測を行なうことにより負荷変動を予測したフィードフォワード制御をエンジンに対して行い、エンジン性能を改善することができる。
【0032】
また、パラメータ取得手段は、エンジン回転数センサと燃料供給量センサである場合には、状態観測部における負荷変動の予測結果の精度を向上させ、ひいては制御パラメータ導出部におけるフィードフォワード制御パラメータの導出精度を向上させることができる。
【0033】
また、状態観測部において、パラメータをエンジンモデルに適用して得られるエンジン負荷の推定結果に基づいて、負荷変動の予測結果を得る場合には、推定したエンジン負荷を負荷変動の予測結果に反映することができる。
【0034】
また、制御パラメータ導出部において、システム伝達関数モデルに負荷変動の予測結果と設定回転数を適用し、フィードフォワード制御パラメータを導出する場合には、システム伝達関数モデルを用いることで、フィードフォワード制御パラメータをより精度よく導出することができる。
【0035】
また、制御パラメータ導出部において、負荷変動の予測結果と設定回転数をカルマンフィルターに基づいてフィードフォワード補償をし、フィードフォワード制御パラメータを導出する場合には、カルマンフィルターを用いることで、フィードフォワード制御パラメータをより精度よく導出することができる。
【0036】
また、制御パラメータ導出部において、負荷変動の予測結果と設定回転数をファジイ推論に基づいてフィードフォワード補償をし、フィードフォワード制御パラメータを導出する場合には、ファジイ推論を用いることで、フィードフォワード制御パラメータをより精度よく導出することができる。
【0037】
また、制御手段は、エンジンに設けたガバナをフィードフォワード制御パラメータとしての指令回転数で制御する場合には、負荷変動に対するエンジンの応答を速め、無駄な動きを小さくすることで燃費を向上させる制御を行うことができる。
【0038】
また、本発明の船舶によれば、エンジン性能を改善するエンジン制御システムが搭載された船舶を提供することができる。
【0039】
また、プロペラ手段の外乱による変動を状態観測部におけるエンジンの負荷変動として状態観測を行なう場合には、エンジンの負荷変動に影響の大きいプロペラ負荷変動を予測した制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の実施形態によるエンジン制御システムのブロック図
図2】同エンジン制御方法のフロー図
図3】同フィードフォワード制御の例として、システム伝達関数モデルを用いる場合の説明図
図4】同フィードフォワード制御の例として、カルマンフィルターを用いる場合の説明図
図5】同フィードフォワード制御の例として、ファジイ推論を用いる場合の説明図
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に、本発明の実施形態によるエンジン制御方法、エンジン制御システム、及び船舶について説明する。
【0042】
図1は本実施形態によるエンジン制御システムのブロック図である。
エンジン制御システムは、ガバナ11が設けられたエンジン10と、エンジン10の回転数を設定する回転数設定手段20と、エンジン10の負荷変動を予測するためのパラメータを取得するパラメータ取得手段30と、制御手段40を備える。
制御手段40は、エンジン10のエンジンモデル41を設定するエンジンモデル設定部42と、取得したパラメータをエンジンモデル41に適用しエンジン10の負荷変動を含む状態観測を行う状態観測部43と、状態観測による負荷変動の予測結果及び回転数設定手段20で設定された設定回転数に基づきエンジン10を制御するためのフィードフォワード制御パラメータを導出する制御パラメータ導出部44を有する。
エンジン制御システムは、エンジン10により駆動されるプロペラ手段(プロペラ)12を有した船舶に搭載されている。
エンジン制御システムは、制御パラメータ導出部44が導出したフィードフォワード制御パラメータに基づいてエンジン10を制御する。状態観測を行なうことにより負荷変動を予測したフィードフォワード制御をエンジン10に対して行い、エンジン性能を改善することができる。
【0043】
パラメータ取得手段30は、エンジン10のエンジン回転数(エンジン速度)を検出するエンジン回転数センサ31と、エンジン10への燃料供給量を検出する燃料供給量センサ32を有する。なお、燃料供給量の検出には、燃料ポンプラック位置の検出や、燃料流量計測等が含まれる。
【0044】
回転数設定手段20、パラメータ取得手段30及び制御手段40は、エンジン制御プログラムを有するコンピュータ50とインターフェースを介して接続されている。
なお、コンピュータ50は、制御手段40の一部、又は全てを含むことができる。コンピュータ50が、制御手段40の一部を含む場合は、他の部分は他のコンピュータやハード回路を用いて構成される。
【0045】
図2は本実施形態によるエンジン制御方法のフロー図である。
まず、エンジンモデル設定部42を用いて、エンジン10のエンジンモデル41を設定する(エンジンモデル設定ステップS1)。
エンジンモデル41は、エンジン10の構成要素ごとの応答を表す物理モデルを組み合わせたモデルである。物理モデルには、エンジン10の構成要素の状態を数学的に表現した物理数学モデル、機械学習(ML)モデル、非線形回帰(NLR)モデル、伝達関数(TF)モデル等がある。ここで、物理数学モデルは、モデル作成のデータがあればエンジン10を忠実に再現できる。また、機械学習(ML)モデルは、構成が若干複雑であるが、計測手段40の計測精度が十分でありモデル作成のデータがあればエンジン10に忠実である。非線形回帰(NLR)モデルは、構成は簡単であるが、計測手段30による多くの計測値があっても精度がやや劣る。 伝達関数(TF)モデルは、構成は簡単であるが、主機10の構成要素(例えば冷却器等)によっては、これで十分な場合もある。これらモデルは一長一短があるものの、入手できるデータ項目や量に応じて使い分けることが望ましい。
ここでは、代表例として舶用ディーゼルエンジンの物理数学モデルのみで物理モデルを構成する例を述べる。
まず、エンジン回転数の調速のためのガバナ11のモデルが挙げられる。ガバナ11はエンジントルク発生のための燃料投入量を定められた制御設定に応じて決定するものであり、機械式ガバナを対象とする場合は制御上の設定が反映された時定数や比例ゲイン係数を含んだ一次の微分方程式で表されるモデルであることが多く、電子ガバナの場合はPID制御則に則ったモデルとなる。エンジントルク発生モデルは燃料燃焼によるエンジントルク発生をモデル化したものであり、ガバナモデルから出力される燃料投入量やエンジン回転数及び過給機回転数が変数となり、発生したパワートルクと軸系の摩擦を差し引いたモデルとなることが一般的である。過給機回転数が計測されない場合は過給機回転数モデルにより値を計算する。このモデルは過給機のタービントルクとコンプレッサートルクを外力項とした軸運動微分方程式によって求めることが多く、タービントルクやコンプレッサートルクの計算に燃焼室の掃気及び排気を考慮した特性方程式の計算を行う。これらの計算には燃焼問題をシリンダごとに個別に扱う計算法や、全てのシリンダの燃焼問題を1回転サイクルの平均値に代表させて取り扱う計算法もある。エンジン回転数の応答モデルはエンジントルクとプロペラトルク等の外力負荷トルクを外力項とした推進軸系の軸運動微分方程式によって求める。
舶用ディーゼルエンジンの物理モデルを物理数学モデルで構成する場合は以上の構成が一般的である。
なお、エンジンモデル設定部42は、制御手段40に含めずに、他のコンピュータ等で構成し、このエンジンモデル設定部42を用いて、予め制御手段40にエンジンモデル41を設定しておくこともできる。
制御手段40がコンピュータ(コンピュータ50で構成される場合を含む)で構成されている場合、エンジンモデル設定部42は、エンジンモデル41の入力された条件を取得し、さらにモデル内変数を取得しエンジンモデル41を構築して設定すること、既に設定されたエンジンモデル41の入力されたモデル内変数を取得し設定すること、既にモデルパラメータも入力された他のコンピュータや装置のエンジンモデル41と連係させることを含む。
モデル内変数(係数・定数)を同定するためには、エンジン10と同型のエンジンの陸上運転結果などの船舶就航前に収集可能なデータを用いるか、就航後に取得できるデータを用いる。就航後に取得したデータを用いモデル内変数を更新することで、エンジン制御システムの経年劣化に対応できる。
【0046】
次に、回転数設定手段20で設定されたエンジン10の設定回転数を取得する(設定回転数取得ステップS2)。
取得した設定回転数は、制御手段40へ送信される。
【0047】
次に、パラメータ取得手段30を用いて、エンジン10の負荷変動を予測するためのパラメータを取得する(パラメータ取得ステップS3)。
パラメータ取得ステップS3において取得するパラメータは、エンジン回転数センサ31によって取得するエンジン回転数と、燃料供給量センサ32によって取得するエンジン10への燃料供給量であることが好ましい。これにより、状態観測による負荷変動の予測結果の精度を向上させ、ひいてはフィードフォワード制御パラメータの精度を向上させることができる。なお、エンジン回転数センサ31はエンジン10の回転数を直接検出(フォトカプラ、ロータリーエンコーダ等)、また間接的に検出(プロペラ軸回転計等)する各種のセンサが採用し得る。
【0048】
次に、状態観測部43において、パラメータ取得手段30を用いて取得したパラメータをエンジンモデル41に適用し、計算を行ってエンジン10の負荷変動を含む状態観測を行う(状態観測ステップS4)。
状態観測部43においては、パラメータをエンジンモデル41に適用して得られるエンジン負荷の推定結果に基づいて、負荷変動の予測結果を得ることが好ましい。これにより、推定したエンジン負荷を負荷変動の予測結果に反映することができる。
また、本実施形態では、エンジン10の負荷変動は、エンジン10に連結されるプロペラ手段12の外乱による変動としている。これにより、エンジン10の負荷変動に影響の大きいプロペラ負荷変動を予測した制御を行うことができる。
【0049】
次に、制御パラメータ導出部44を用いて、状態観測部43における状態観測による負荷変動の予測結果と、エンジン10の設定回転数に基づき、エンジン10を制御するためのフィードフォワード制御パラメータを導出する(制御パラメータ導出ステップS5)。
【0050】
次に、制御手段40は、導出したフィードフォワード制御パラメータをエンジン10の制御に適用する(エンジン制御ステップS6)。
エンジン10の制御として例えば、制御パラメータ導出部44がフィードフォワード制御パラメータとして指令回転数を導出し、制御手段40は、エンジン10に設けたガバナ11をフィードフォワード制御パラメータとしての指令回転数で制御する。これにより、負荷変動に対するエンジン10の応答を速め、無駄な動きを小さくすることで燃費を向上させる制御を行うことができる。
なお、フィードフォワード制御パラメータとして指令回転数を導出し、ガバナ11を制御することは、回転数設定手段20で設定されたエンジン10の設定回転数を指令回転数に置き換えて予測制御することになる。
【0051】
図3は本実施形態によるフィードフォワード制御の例として、システム伝達関数モデルを用いる場合の説明図である。
図3(a)はエンジン制御システムの構成を示している。なお、プロペラ手段12、回転数設定手段20、パラメータ取得手段30、エンジンモデル設定部42、及びコンピュータ50については図示を省略している。
エンジンモデル41及び状態観測部43には、パラメータ取得手段30で取得したエンジン10のパラメータ(エンジン回転数n、燃料供給量h、過給機回転数nTC、掃気圧P、及び平均有効圧力P)が入力される。なお、過給機回転数nTC、掃気圧P、及び平均有効圧力Pは、エンジンモデル41を用いて推定してもよい。
状態観測部43は、取得したパラメータをエンジンモデル41に適用して状態観測を行い、エンジン10の負荷変動の予測結果としてプロペラ流入速度(プロペラ外乱)の推定値u(「uは上部に「~」付)を出力する。
制御パラメータ導出部44は、システム伝達関数モデルにプロペラ流入速度の推定値u(「uは上部に「~」付)と設定回転数を適用し、フィードフォワード制御パラメータを導出する。システム伝達関数モデルを用いることで、フィードフォワード制御パラメータをより精度よく導出し、燃費の向上等に繋げることができる。
【0052】
図3(b)はシステム伝達関数モデルを示す図である。図3(b)において、「nsp」はエンジン10の設定回転数、「FF」はフィードフォワードフィルタ、「W」はガバナ応答(伝達)機能、「W」はガバナが出力する燃料供給量hからエンジン回転数nへの伝達関数、「W」は外乱u(「uは上部に「~」付)からエンジン回転数nへの伝達関数、「Wnt」は過給機からエンジン回転数nへの伝達関数、「Wne」はエンジン回転数nから過給機への伝達関数、「Wth」はガバナ11から過給機への伝達関数である。
出力Yは、伝達関数Wssに状態Xを乗じることで求められる。また、設定回転数nspの制御値Δnspは、伝達関数Wssの逆数にプロペラ流入速度の推定値u(「uは上部に「~」付)を乗じることで求められる。
【0053】
制御手段40は、フィードフォワード制御パラメータとしての指令回転数norderをガバナ11へ送信する。ガバナ11は指令回転数norderに基づいて燃料供給量hを調整する。これにより、プロペラ流入速度uの変動による外乱を補償して過給機の速度が安定する。このことは、燃料消費量に大きな影響を与える。また、制御手段40は、制御パラメータ導出部44のフィードフォワードフィルタのゲインを調整して、エンジン回転数nへの悪影響を減らすことができる。ここでゲインとは、制御パラメータである制御値Δnspを大きく変えるかどうかを決める値(比例ゲイン)である。
【0054】
図4は本実施形態によるフィードフォワード制御の例として、カルマンフィルターを用いる場合の説明図である。なお、プロペラ手段12、回転数設定手段20、パラメータ取得手段30、エンジンモデル設定部42、及びコンピュータ50については図示を省略している。
エンジンモデル41及び状態観測部43には、パラメータ取得手段30で取得したエンジン10のパラメータ(エンジン回転数n、燃料供給量h、過給機回転数nTC、掃気圧P、及び平均有効圧力P)が入力される。なお、過給機回転数nTC、掃気圧P、及び平均有効圧力Pは、エンジンモデル41による計算結果を用いて推定してもよい。
状態観測部43は、取得したパラメータをエンジンモデル41に適用して計算により状態観測を行い、エンジン10の負荷変動の予測結果としてプロペラ流入速度(プロペラ外乱)の推定値u(「uは上部に「~」付)を出力する。
制御パラメータ導出部44は、プロペラ流入速度の推定値u(「uは上部に「~」付)と設定回転数nspをカルマンフィルターに基づいてフィードフォワード補償をし、フィードフォワード制御パラメータを導出する。カルマンフィルターを用いることで、フィードフォワード制御パラメータをより精度よく導出し、燃費の向上等に繋げることができる。なお、カルマンフィルターとしては、拡張カルマンフィルター(EKF)、又はアンセンテッドカルマンフィルター(UKF)等を用いることができる。
【0055】
フィードフォワード制御パラメータは下式(1)により導出する。
【数1】
ここで、h’は燃料供給量補正値、Kはカルマンゲイン、Pは状態共分散である。
【0056】
制御手段40は、フィードフォワード制御パラメータとしての指令回転数norderをガバナ11へ送信する。ガバナ11は、回転数設定手段20で設定された設定回転数を予測制御指令回転数norderに置き換えて燃料供給量hを調整する。これにより、プロペラ流入速度uの変動による外乱を補償することができる。
【0057】
図5は本実施形態によるフィードフォワード制御の例として、ファジイ推論を用いる場合の説明図である。
図5(a)はエンジン制御システムの構成を示している。なお、プロペラ手段12、回転数設定手段20、パラメータ取得手段30、エンジンモデル設定部42、及びコンピュータ50については図示を省略している。
エンジンモデル41及び状態観測部43には、パラメータ取得手段30で取得したエンジン10のパラメータ(エンジン回転数n、燃料供給量h、過給機回転数nTC、掃気圧P、及び平均有効圧力P)が入力される。なお、過給機回転数nTC、掃気圧P、及び平均有効圧力Pは、エンジンモデル41による計算結果を用いて推定してもよい。
状態観測部43は、取得したパラメータをエンジンモデル41に適用して計算により状態観測を行い、エンジン10の負荷変動の予測結果としてプロペラ流入速度(プロペラ外乱)の推定値u(「uは上部に「~」付)を出力する。
制御パラメータ導出部44は、プロペラ流入速度の推定値u(「uは上部に「~」付)と設定回転数nspをファジイ推論に基づいてフィードフォワード補償をし、フィードフォワード制御パラメータを導出する。ファジイ推論を用いることで、フィードフォワード制御パラメータをより精度よく導出し、燃費の向上等に繋げることができる。
【0058】
図5(b)はファジイ推論に基づくフィードフォワード制御パラメータの導出を示す図である。図5(b)において、「&」はAND演算、「||」はOR演算である。
制御パラメータ導出部44は、エンジントルクとプロペラトルクを組み合わせ、プロペラトルクとエンジントルクとの不均衡に基づいてファジイ推論を使用しフィードフォワード制御パラメータを導出する。
【0059】
制御手段40は、フィードフォワード制御パラメータとしての指令回転数norderをガバナ11へ送信する。ガバナ11は、回転数設定手段20で設定された設定回転数を指令回転数norderに置き換えて燃料供給量hを調整する。指令回転数norderを変更することによってプロペラ流入速度uの変動による外乱を補償することができる。
なお、上記の例ではエンジン10の負荷変動の予測結果としてプロペラ流入速度(プロペラ外乱)の推定値uを用いたが、プロペラ流入速度uを直接計測して用いフィードフォワード制御パラメータを導出することもできる。
【0060】
以上の説明は、本開示による典型的な実施の形態の説明のためのものであり、限定するためのものではない。本開示が、本明細書に明示的に記載された形態と異なる形態で実施されてもよく、請求の範囲と一致する範囲で、様々な修正、最適化及び変形が、当業者によって実現され得る。
【0061】
[付記]
なお、本発明は、次のように表現することも可能である。
(付記1)
コンピュータに、
エンジンのエンジンモデルを設定するエンジンモデル設定ステップと、
前記エンジンの設定回転数を取得する設定回転数取得ステップと、
前記エンジンの負荷変動を予測するためのパラメータを取得するパラメータ取得ステップと、
前記取得した前記パラメータを前記エンジンモデルに適用し、前記エンジンの前記負荷変動を含む状態観測を行う状態観測ステップと、
前記状態観測による前記負荷変動の予測結果と、前記エンジンの前記設定回転数に基づき前記エンジンを制御するためのフィードフォワード制御パラメータを導出する制御パラメータ導出ステップと、
導出した前記フィードフォワード制御パラメータを前記エンジンの制御に適用するエンジン制御ステップと
を実行させることを特徴とするエンジン制御プログラム。
(付記2)
前記パラメータ取得ステップで取得する前記パラメータは、エンジン回転数と燃料供給量であることを特徴とする付記1に記載のエンジン制御プログラム。
(付記3)
前記状態観測ステップにおいて、前記パラメータを前記エンジンモデルに適用して得られるエンジン負荷の推定結果に基づいて、前記負荷変動の前記予測結果を得ることを特徴とする付記1又は付記2に記載のエンジン制御プログラム。
(付記4)
前記制御パラメータ導出ステップにおいて、システム伝達関数モデルに前記負荷変動の前記予測結果と前記設定回転数を適用し、前記フィードフォワード制御パラメータを導出することを特徴とする付記1から付記3のいずれか1項に記載のエンジン制御プログラム。
(付記5)
前記制御パラメータ導出ステップにおいて、前記負荷変動の前記予測結果と前記設定回転数をカルマンフィルターに基づいてフィードフォワード補償をし、前記フィードフォワード制御パラメータを導出することを特徴とする付記1から付記3のいずれか1項に記載のエンジン制御プログラム。
(付記6)
前記制御パラメータ導出ステップにおいて、前記負荷変動の前記予測結果と前記設定回転数をファジイ推論に基づいてフィードフォワード補償をし、前記フィードフォワード制御パラメータを導出することを特徴とする付記1から付記3のいずれか1項に記載のエンジン制御プログラム。
(付記7)
前記エンジン制御ステップにおいて、前記エンジンに設けたガバナに前記フィードフォワード制御パラメータとして指令回転数を出力することを特徴とする付記1から付記6のいずれか1項に記載のエンジン制御プログラム。
(付記8)
前記エンジンの前記負荷変動は、前記エンジンに連結されるプロペラの外乱による変動であることを特徴とする付記1から付記7のいずれか1項に記載のエンジン制御プログラム。
(付記9)
付記1から付記8のいずれか1項に記載のエンジン制御プログラムを記録したことを特徴とするエンジン制御プログラムの記録媒体。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、舶用エンジン又はその他のエンジンについて、フィードフォワード制御により負荷変動を予測して性能を改善し、燃費を向上させることができる。また、本発明は、エンジン制御の方法、システムの他、ブログラム、プログラムを記録した記録媒体として展開可能である。
【符号の説明】
【0063】
10 エンジン
11 ガバナ
12 プロペラ手段(プロペラ)
20 回転数設定手段
30 パラメータ取得手段
31 エンジン回転数センサ
32 燃料供給量センサ
40 制御手段
41 エンジンモデル
42 エンジンモデル設定部
43 状態観測部
44 制御パラメータ導出部
50 コンピュータ
S1 エンジンモデル設定ステップ
S2 設定回転数取得ステップ
S3 パラメータ取得ステップ
S4 状態観測ステップ
S5 制御パラメータ導出ステップ
S6 エンジン制御ステップ
燃料供給量
エンジン回転数
order 指令回転数
sp 設定回転数
図1
図2
図3
図4
図5