(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】仮設手摺の支柱構造
(51)【国際特許分類】
E04G 5/14 20060101AFI20230915BHJP
E04G 21/32 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
E04G5/14 302A
E04G21/32 C
(21)【出願番号】P 2019121650
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592225191
【氏名又は名称】藤本工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】柳 毅
(72)【発明者】
【氏名】片山 智裕
(72)【発明者】
【氏名】藤本 公彦
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-185185(JP,A)
【文献】特開2014-101659(JP,A)
【文献】特開2010-071042(JP,A)
【文献】特開平11-229629(JP,A)
【文献】実開平04-010660(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/14
E04G 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に雄ネジ部が形成され、下部に梁に形成された梁貫通孔に挿入される挿入部が形成されるシャフトと、
前記シャフトの前記雄ネジ部が挿入される挿入孔が形成される接合部と、
前記シャフトの前記雄ネジ部に螺合し、前記接合部の一部を挟持する一対の挟持ナットと、
前記接合部に下端が固定される支柱本体と、
を備え
、
前記シャフトの前記雄ネジ部に螺合する下ナットを更に備え、
前記接合部は、水平な上板と、前記上板に平行で前記梁の上面に当接する下板と、当該上板及び当該下板を連結する鉛直板と、を有し、
前記上板及び前記下板の上方から見て重なる位置に前記挿入孔が形成され、
前記雄ネジ部に螺合する前記一対の挟持ナットが前記上板を挟持するとともに、前記下ナットが前記下板の上面に圧接することを特徴とする仮設手摺の支柱構造。
【請求項2】
前記鉛直板は前記梁の幅方向の中央よりも屋外側に形成されるものであり、
前記下板は前記鉛直板の下端から屋外側に延びるとともに、前記上板は前記鉛直板の上端の屋内側及び屋外側に延びて形成されており、
前記梁と前記上板との間の距離は、前記梁上に配置される床版の厚さ以上であり、
前記上板の前記鉛直板よりも屋内側の位置に前記支柱本体が固定されることを特徴とする
請求項1に記載の仮設手摺の支柱構造。
【請求項3】
前記支柱本体の下端は前記上板の上面に固定されるとともに、
前記上板の一端が上方に折れ曲がって立ち上がり部を形成し、
前記支柱本体と前記立ち上がり部との間に幅木が挿入されるものであって、
前記立ち上がり部に固定されて、前記支柱本体に圧接する弾性体が設けられることを特徴とする
請求項1又は請求項2に記載の仮設手摺の支柱構造。
【請求項4】
前記支柱本体は、水平材を保持するクランプを有し、
前記支柱本体は、上方から見て前記梁に重なる位置に立設されるとともに、前記クランプは、上方から見て前記梁に重ならないように前記支柱本体から突出することを特徴とする
請求項1から請求項3のいずれかに記載の仮設手摺の支柱構造。
【請求項5】
上部に雄ネジ部が形成され、下部に梁に形成された梁貫通孔に挿入される挿入部が形成されるシャフトと、
前記シャフトの前記雄ネジ部が挿入される挿入孔が形成される接合部と、
前記シャフトの前記雄ネジ部に螺合し、前記接合部の一部を挟持する一対の挟持ナットと、
前記接合部に下端が固定される支柱本体と、
を備え、
前記支柱本体は、水平材を保持するクランプを有し、
前記支柱本体は、上方から見て前記梁に重なる位置に立設されるとともに、前記クランプは、上方から見て前記梁に重ならないように前記支柱本体から突出することを特徴とする仮設手摺の支柱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として多層階建築物の建築現場において、建物外周部周辺、階段施工部や吹き抜け施工部等の開口部周辺、その他の墜転落危険部位周辺に設置する仮設手摺に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、2階建て以上の多層階建築物において、作業員の転墜落を防止する為に建物の周縁となる部分に仮設手摺が設けられる。このような仮設手摺の施工性や安全性を向上させる為に、H形鋼の梁に着脱可能に立設される手摺支柱と、手摺支柱の間に差し渡される手摺パイプとを備えた仮設手摺であって、手摺支柱の下端部に梁のフランジに取り付けるための取付体が一体に形成されており、取付体は、梁上に載置されるプレートと、このプレートから下方に向かって突出して梁の上下のフランジに形成された梁穴に跨って挿脱可能に差し込まれる差し込みシャフトと、を備えた構成が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような手摺支柱の下端に形成されたシャフトを梁穴に差し込むことで手摺支柱を立設させる構成においては、作業員が仮設手摺に当るなどして手摺支柱に加わわった荷重が、梁穴を支点としてシャフトに大きな荷重として作用する。そのため手摺支柱の下端に形成されているシャフトが特に変形しやすいが、手摺支柱の本体とシャフトとは一体にに形成されているので、シャフトが変形した場合には、手摺支柱の全体を交換する必要があった。また、手摺支柱の下端には幅木を設置する必要があるが、幅木を設置するための金具を取り付ける必要があるなど、作業が煩わしかった。また、手摺パイプが梁の上に配置されることとなり、梁上に設置される他の部材と干渉して、手摺パイプを取り付けることが困難となる場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、シャフトが変形した場合に手摺支柱全体を交換する必要がなく、また、幅木の設置が容易であり、手摺パイプを他の部材と干渉することなく配置することができる仮設手摺の支柱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の仮設手摺の支柱構造は、上部に雄ネジ部が形成され、下部に梁に形成された梁貫通孔に挿入される挿入部が形成されるシャフトと、前記シャフトの前記雄ネジ部が挿入される挿入孔が形成される接合部と、前記シャフトの前記雄ネジ部に螺合し、前記接合部の一部を挟持する一対の挟持ナットと、前記接合部に下端が固定される支柱本体と、を備え、前記シャフトの前記雄ネジ部に螺合する下ナットを更に備え、前記接合部は、水平な上板と、前記上板に平行で前記梁の上面に当接する下板と、当該上板及び当該下板を連結する鉛直板と、を有し、前記上板及び前記下板の上方から見て重なる位置に前記挿入孔が形成され、前記雄ネジ部に螺合する前記一対の挟持ナットが前記上板を挟持するとともに、前記下ナットが前記下板の上面に圧接することを特徴としている。
【0008】
本発明の仮設手摺の支柱構造は、前記鉛直板は前記梁の幅方向の中央よりも屋外側に形成されるものであり、前記下板は前記鉛直板の下端から屋外側に延びるとともに、前記上板は前記鉛直板の上端の屋内側及び屋外側に延びて形成されており、前記梁と前記上板との間の距離は、前記梁上に配置される床版の厚さ以上であり、前記上板の前記鉛直板よりも屋内側の位置に前記支柱本体が固定されることを特徴としている。
【0009】
本発明の仮設手摺の支柱構造は、前記支柱本体の下端は前記上板の上面に固定されるとともに、前記上板の一端が上方に折れ曲がって立ち上がり部を形成し、前記支柱本体と前記立ち上がり部との間に幅木が挿入されるものであって、前記立ち上がり部に固定されて、前記支柱本体に圧接する弾性体が設けられることを特徴としている。
【0010】
本発明の仮設手摺の支柱構造は、前記支柱本体は、水平材を保持するクランプを有し、前記支柱本体は、上方から見て前記梁に重なる位置に立設されるとともに、前記クランプは、上方から見て前記梁に重ならないように前記支柱本体から突出することを特徴としている。
さらに、本発明の仮設手摺の支柱構造は、上部に雄ネジ部が形成され、下部に梁に形成された梁貫通孔に挿入される挿入部が形成されるシャフトと、前記シャフトの前記雄ネジ部が挿入される挿入孔が形成される接合部と、前記シャフトの前記雄ネジ部に螺合し、前記接合部の一部を挟持する一対の挟持ナットと、前記接合部に下端が固定される支柱本体と、を備え、前記支柱本体は、水平材を保持するクランプを有し、前記支柱本体は、上方から見て前記梁に重なる位置に立設されるとともに、前記クランプは、上方から見て前記梁に重ならないように前記支柱本体から突出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の仮設手摺の支柱構造によると、支柱本体の下端が固定される接合部を挟持ナットが挟持することによって、シャフトが接合部に固定される構成であるので、挟持ナットを緩めることで接合部からシャフトを取り外すことができ、シャフトを支柱本体に対して着脱自在とすることができる。したがって、仮設手摺の手摺パイプや支柱本体に作業者や作業治具が当って、支柱本体に荷重が加わり、梁の梁貫通孔に挿入されているシャフトが変形した場合でも、接合部からシャフトを取り外してシャフトのみ交換することができ、支柱本体全体を交換する必要がない。
【0012】
本発明の仮設手摺の支柱構造によると、接合部が水平な上板と下板とを鉛直板で連結して形成されており、上板及び下板の上方から見て重なる位置に形成された挿入孔にシャフトの雄ネジ部が差し込まれて、雄ネジ部に螺合する挟持ナットが上板を挟持するとともに、下ナットが下板の上面に圧接するので、シャフトを接合部に安定的に接合することができ、支柱本体を強固に立設させることができる。
【0013】
本発明の仮設手摺の支柱構造によると、鉛直板が梁の幅方向の中央よりも屋外側に形成されており、下板は鉛直板の下端から屋外側に延びるとともに、上板は鉛直板の上端の屋内側及び屋外側に延びて形成されており、梁と上板との間の距離は、梁上に配置される床版の厚さ以上であり、上板の鉛直板よりも屋内側の位置に支柱本体が固定されるので、梁の幅方向の中央よりも屋内側には床版の端縁部を載置するスペースが形成されることとなり、支柱の下端が床版に干渉することなく、床版の上に支柱を立設させることができる。
【0014】
本発明の仮設手摺の支柱構造によると、支柱本体の下端は上板の上面に固定されており、上板の一端が上方に折れ曲がって立ち上がり部を形成し、支柱本体と立ち上がり部との間に幅木が挿入されるものであって、立ち上がり部に固定されて、支柱本体に圧接する弾性体が設けられるので、幅木を簡単にがたつき無く固定することができる。また、上板から折れ曲がる立ち上がり部と支柱本体とで幅木を挿入する間隙が形成されているので、別途幅木を固定するための部材を取り付ける必要がなく、施工性を高めることができる。
【0015】
本発明の仮設手摺の支柱構造によると、支柱本体には、水平材を保持するクランプが設けられており、支柱本体は、上方から見て梁に重なる位置に立設されるとともに、クランプは、上方から見て梁に重ならないように支柱本体から突出して形成されているので、水平材が梁とは重ならないように配置されることとなり、梁上に設置される柱などの他の部材と水平材とが干渉することなく、単純な構成で水平材を配置することができ、部品点数の削減や施工省力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】仮設手摺の支柱構造の全体構成を示す側面図。
【
図2】仮設手摺の支柱構造の全体構成を示す斜視図。
【
図3】仮設手摺の支柱構造のクランプ、接合部、及びシャフトの構成を説明する拡大図。
【
図4】仮設手摺の支柱構造の接合部からシャフトを取り外した状態を説明する側面図。
【
図5】仮設手摺の支柱構造の接合部からシャフトを取り外した状態を説明する拡大図。
【
図6】仮設手摺の支柱構造のシャフトを梁に設けられた梁貫通孔に挿入する状態を説明する斜視図。
【
図7】仮設手摺の支柱構造を梁に固定した状態を説明する側面図。
【
図8】仮設手摺の支柱構造を梁に固定した状態を説明する斜視図。
【
図9】仮設手摺の支柱構造に幅木を取り付ける状態を説明する図。
【
図10】支柱本体のクランプに水平材を固定して仮設手摺を完成させた状態を説明する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の仮設手摺の支柱構造1の実施形態について、各図を参照しつつ説明する。本実施形態の仮設手摺の支柱構造1は、たとえば住宅などの多層階建築物の建築現場において、建物外周部周辺、階段施工部や吹き抜け施工部等の開口部周辺、その他の墜転落危険部位に架設されている梁2の上に設置される仮設手摺3に用いられる支柱構造である。仮設手摺3が設置される梁2は、
図6に示すように、フランジ4a,4bを上下に水平に配置し、長手方向に沿った中央部同士をウエブ5で連結したH形鋼からなる。梁2の上下のフランジ4a,4bにはウエブ5を挟んで両側に長手方向に沿って間隔をあけた複数の梁貫通孔2aが形成されている。上側のフランジ4aの梁貫通孔2aと下側のフランジ4bの梁貫通孔2aとは、上方から見て重なる位置にそれぞれ形成されている。
【0018】
仮設手摺の支柱構造1は、
図1及び
図2に示すように、フランジ4a,4bの梁貫通孔2aに挿入されるシャフト6と、シャフト6の上部に固定される接合部7と、接合部7に下端が固定されて接合部7から上方に立設される支柱本体8とを備えている。また、仮設手摺の支柱構造1は、支柱本体8の下端に沿って幅木9を挿入して固定する幅木挿入部10が設けられている。
【0019】
シャフト6は、
図3から
図5に示すように、上部に雄ネジ部6aが形成され、下部に梁2に形成された梁貫通孔2aに挿入される挿入部6bが形成された円柱形状の金属製丸棒材である。シャフト6の挿入部6bは梁2の上下のフランジ4a,4bの間の距離よりも長く形成されており、挿入部6bを上下のフランジ4a,4bに形成された梁貫通孔2aに差し込んだときに、当該挿入部6bの下端が下側のフランジ4bよりも下方へ突出する。
【0020】
接合部7は、水平な上板70と、前記上板70に平行で梁2の上側のフランジ4aに当接する下板71と、当該上板70及び下板71を連結する鉛直板72と、を有している。鉛直板72は梁2上に固定される際に、梁2の幅方向の中央よりも屋外側に配置される平板状であり、この鉛直板72の下端から屋外側に向かって下板71が延びている。また、鉛直板72の上端には、上板70が屋内側及び屋外側に延びて形成されている。梁2の上側のフランジ4aと上板70との間の距離は梁2に載置される床版11の厚さよりも長く、梁2の上側のフランジ4aの屋内側の部分に床版11を設置したときに、上板70が床版11に干渉することがない。上板70及び下板71の上方から見て重なる位置にはそれぞれ挿入孔73が形成され、シャフト6の雄ネジ部6aが挿入可能となっている。
【0021】
雄ネジ部6aには一対の挟持ナット12a,12bと下ナット12cとが螺合している。一対の挟持ナット12a,12bは、接合部7の雄ネジ部6aに螺着されて上板70に上下から挟着して、上板70とシャフト6とを接合している。また、下ナット12cは雄ネジ部6aに螺着されて下板71の上面に圧接している。このように、一対の挟持ナット12a,12b及び下ナット12cによって雄ネジ部6aが上板70及び下板71の挿入孔73に挿入された状態で固定されることで、シャフト6と接合部7とを強固に接合することができ、支柱本体8をガタツキ無く安全に固定することができる。そして、挟持ナット12a,12b及び下ナット12cによってネジ固定されているので、挟持ナット12a,12b及び下ナット12cを緩めることで、シャフト6と接合部7との接合を解除し、接合部7からシャフト6を取り外すことができる。したがって、仮設手摺3の手摺や中桟などの水平材13や支柱本体8に作業者や作業治具が当って、支柱本体8に荷重が加わり、梁2の梁貫通孔2aに挿入されているシャフト6が変形した場合でも、接合部7からシャフト6を取り外してシャフト6のみ交換することができ、支柱本体8全体を交換する必要がない。
【0022】
支柱本体8は、本実施形態においては、金属製丸パイプで形成された長尺な鉛直材である。なお、支柱本体8の形状は丸パイプに限定されるものではなく、例えば角パイプであっても良い。また、本実施形態においては支柱本体8は1本の丸パイプで形成したが、一方が他方に挿入可能な2本の長尺な筒材として、一方の筒材を出し入れすることで支柱本体8を伸縮させる構成としてもよい。支柱本体8は、接合部7の上板70の鉛直板72よりも屋内側の位置に下端が溶接によって固定されて立設されている。支柱本体8の屋外側で上板70の上面には平板状の補強プレート14が溶接されており、支柱本体8と接合部7との間の接合を補強している。
【0023】
支柱本体8は、
図1及び
図2に示すように、高さ方向の中間位置と、高さ方向の上端部とにそれぞれクランプ15を有する。クランプ15は
図3に示すように、支柱本体8の丸パイプに固定され半円形の受け部15dを有する基材15aと、基材15aに下端がヒンジを介して開閉自在に固定されたC型の固定片15bと、固定片15bの上端と基材15aとを連結する着脱可能なボルト15cとを有しており、ボルト15cを締めて固定片15bの上端を基材15aに固定したときに受け部15dと固定片15bとで円形孔15eが形成される。支柱本体8は、
図6に示すように、上下方向に梁2に重なる位置における接合部7の上板70に立設されており、クランプ15は梁2の屋内側に突出している。円形孔15eには、
図10に示すように、円筒状の水平材13が挿入されて固定され、上下2本の水平材13で手摺及び中桟を形成している。クランプ15が上下方向に梁2に重なることが無く梁2の屋内側に突出していることで、梁2の上に設置される図示しない柱や外壁パネルを梁2にとめ付ける外壁ファスナーなどの部材が水平材13と干渉することがなく、水平材13を単純な構成の円筒状に形成することができ、部品点数の削減や施工省力化を図ることができる。
【0024】
接合部7の上板70の屋内側の端部は、
図3に示すように、上方に折れ曲がって立ち上がり部16を形成している。立ち上がり部16には弾性体17が固定されており、当該弾性体17は支柱本体8に圧接している。弾性体17はトーションバネであり、立ち上がり部16から支柱本体8に向かって斜め下方に延びて形成されている。この支柱本体8と立ち上がり部16との間隙が平板状の幅木9を挿入する幅木挿入部10となっている。幅木挿入部10に挿入される幅木9は、
図9及び
図10に示すように、弾性体17によって支柱本体8側に押し付けられることとなり、挿入するだけでがたつき無く簡単に固定することができ、例えば図示しない建材や施工冶具の落下を防止することができる。なお、幅木挿入部10は、支柱本体8の屋内側であり、梁2よりも屋内側に配置されており、幅木挿入部10に挿入された幅木9が、梁2の上に設置される図示しない柱や外壁パネルを梁2にとめ付ける外壁ファスナーなどの部材と干渉することがなく、幅木9を単純な平板状に形成しても簡単にとめ付けることができ、部品点数の削減や施工省力化を図ることができる。また、幅木挿入部10が上板70の立ち上がり部16と支柱本体8とで形成されているので、別途、幅木9を固定するための部材を支柱や梁2に固定する必要がなく、施工性に優れる。
【0025】
以上のような仮設手摺の支柱構造1を施工する際には、
図1及び
図2に示すように、予め接合部7の上板70及び下板71の挿入孔73にシャフト6の雄ネジ部6aを挿入して挟持ナット12a,12b及び下ナット12cで固定しておく。そして、
図6に示すように、H形鋼の梁2の上下のフランジ4a,4bに形成されている梁貫通孔2aにシャフト6の挿入部6bを挿入し、
図7及び
図8に示すように、接合部7の下板71を梁2の上側のフランジ4aの上面に載置させる。シャフト6の挿入部6bの下端は下側のフランジ4bよりも下方に突出し、上下の梁貫通孔2aに挿入されるので、シャフト6に接合された接合部7の上に立設されている支柱本体8ががたつき無く立設される。
【0026】
その後、
図9に示すように、平板状に形成された幅木9を支柱本体8と立ち上がり部16との間に形成された幅木挿入部10に挿入することで、弾性体17によって幅木9が支柱本体8側に押し付けられて固定される。幅木挿入部10は梁2よりも屋内側に配置されており、幅木9が梁2の上に固定される他の部材を干渉することがない。そして、クランプ15の固定片15bを開放させて水平材13を受け部15dに挿入し、固定片15bをボルト15cを締めて閉塞させて水平材13をクランプ15の円形孔に挿入する。図示していないが、梁2の上には所定の間隔で仮設手摺の支柱構造1が複数設けられており、水平材13を複数の支柱本体8のクランプ15に架設させて仮設手摺3を完成させる。
図7及び
図9に示すように、クランプ15は梁2よりも屋内側に配置されているので、水平材13が梁2の上に固定される他の部材を干渉することがなく、水平材13を直線的に配置することができ、部品点数の削減や施工省力化を図ることができる。
【0027】
図9及び
図10に示すように、梁2の上側のフランジ4aと接合部7の上板70との鉛直方向の距離は、梁2の上に載置される床版11の厚さよりも長く形成されており、梁2の上側のフランジ4a上に床版11が載置される。床版11の上には接合部7の上板70が延びており、支柱本体8は床版11と干渉することなく当該床版11の上に立設される。
【0028】
仮設手摺3は建築現場において、図示しない作業員、建材、及び施工冶具が手摺や中桟などの水平材13や支柱本体8に当った場合に、作業員の転落や建材及び施工冶具の落下を防止するためのものであり、梁2との接続箇所であるシャフト6に大きな加重が加わって、シャフト6が湾曲し又は損傷することがある。
【0029】
このような場合には、
図4及び
図5に示すように、上側の挟持ナット12aをシャフト6の雄ネジ部6aから緩めて外すとともに、下側の挟持ナット12b及び下ナット12cを緩めて外しつつ、シャフト6を接合部7の上板70及び下板71に形成された挿入孔73から抜き取る。そして、新たなシャフト6の雄ネジ部6aを接合部7の下板71に形成された挿入孔73に挿入し、上板70と下板71との間で雄ネジ部6aに下ナット12c及び下側の挟持ナット12bを螺合させる。そして、雄ネジ部6aを上板70に形成された挿入孔73に挿入して上側の挟持ナット12aを雄ネジ部6aに螺合させて、挟持ナット12a,12bを接合部7の上板70を挟持するように締め付けるとともに、下ナット12cを接合部7の下板71に圧接するように締め付けて、シャフト6の交換作業を完了する。このように、シャフト6が変形した場合でも、接合部7からシャフト6を取り外してシャフト6のみ交換することができ、容易に交換することができる。
【0030】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る仮設手摺の支柱構造1は、多層階建築物の建築現場において転落を防止する仮設手摺の支柱構造1として好適である。
【符号の説明】
【0032】
1 仮設手摺の支持構造
2 梁
2a 梁貫通孔
3 仮設手摺
6 シャフト
6a 雄ネジ部
6b 挿入部
7 接合部
8 支柱本体
9 幅木
11 床版
12a,12b 挟持ナット
12c 下ナット
13 水平材
15 クランプ
16 立ち上がり部
17 弾性体
70 上板
71 下板
72 鉛直板