(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】ファン付きウェアのウェア本体及びファン付きウェア
(51)【国際特許分類】
A41D 13/002 20060101AFI20230915BHJP
【FI】
A41D13/002 105
(21)【出願番号】P 2021195037
(22)【出願日】2021-12-01
【審査請求日】2022-10-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592171005
【氏名又は名称】株式会社セフト研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】593168798
【氏名又は名称】株式会社Asahicho
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】市ヶ谷 弘司
(72)【発明者】
【氏名】児玉 賢士
(72)【発明者】
【氏名】石岡 利文
(72)【発明者】
【氏名】神田 千秋
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-186483(JP,A)
【文献】特開2006-307354(JP,A)
【文献】特開2020-147887(JP,A)
【文献】特開2020-070502(JP,A)
【文献】特開2008-240214(JP,A)
【文献】特開2021-113374(JP,A)
【文献】特開2021-167494(JP,A)
【文献】国際公開第2021/201212(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/002
A41D27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファン付きウェアのウェア本体であって、
ファンを取り付けるためのファン取付部が形成された裏地と、
前記裏地の前記ファン取付部が形成された部分の外面側を覆う表地と、
を備え、
前記表地と前記裏地との間の空間と、外部空間と、を繋ぐ開口部である空気取込部と、
前記表地と前記裏地との間の空間と
、前記ウェア本体の内部空間と、を繋ぐ、前記ファン取付部及び前記空気取込部と別個の開口部である隙間部と、
が形成され、
前記隙間部は、
前記裏地と前記表地とが接続されていない部分を設けることにより前記裏地と前記表地との間に形成され、
前記裏地と前記表地とが接続されていない部分に、前記裏地と前記表地との間に隙間が生じ易くする間隔確保手段を備えることを特徴とするファン付きウェアのウェア本体。
【請求項2】
前記間隔確保手段は、前記表地と前記裏地との対向する部分の長さを
、前記裏地の長さよりも前記表地の長さを長くするようにして形成されていることを特徴とする請求項1に記載のファン付きウェアのウェア本体。
【請求項3】
前記間隔確保手段は、
前記裏地と前記表地とが接続されていない部分における前記表地と前記裏地との間に筒状の部材を通すようにして形成されていることを特徴とする請求項1に記載のファン付きウェアのウェア本体。
【請求項4】
ファン付きウェアのウェア本体であって、
ファンを取り付けるためのファン取付部が形成された裏地と、
前記裏地の前記ファン取付部が形成された部分の外面側を覆う表地と、
を備え、
前記表地と前記裏地との間の空間と、外部空間と、を繋ぐ開口部である空気取込部と、
前記表地と前記裏地との間の空間と
、前記ウェア本体の内部空間と、を繋ぐ、前記ファン取付部及び前記空気取込部と別個の開口部である隙間部と、
が形成され、
前記隙間部は
、前記裏地の端部の一部に前記表地と接続されていない部分を設けると共に、当該部分の裏地を縮めた状態で固定することによって形成されていることを特徴とするファン付きウェアのウェア本体。
【請求項5】
ファン付きウェアのウェア本体であって、
ファンを取り付けるためのファン取付部が形成された裏地と、
前記裏地の前記ファン取付部が形成された部分の外面側を覆う表地と、
を備え、
前記表地と前記裏地との間の空間と、外部空間と、を繋ぐ開口部である空気取込部と、
前記表地と前記裏地との間の空間と
、前記ウェア本体の内部空間と、を繋ぐ、前記ファン取付部及び前記空気取込部と別個の開口部である隙間部と、
が形成され、
前記隙間部は
、前記裏地の上端部と、前記表地との間に形成されていることを特徴とするファン付きウェアのウェア本体。
【請求項6】
前記空気取込部は、前記裏地の下端部と、前記表地との間に形成されていることを特徴とする請求項1から
5のいずれか一項に記載のファン付きウェアのウェア本体。
【請求項7】
前記裏地には複数の前記ファン取付部が形成され、
前記隙間部は、前記ファン取付部それぞれの上方に位置するように配置されていることを特徴とする請求項1から
6のいずれか一項に記載のファン付きウェアのウェア本体。
【請求項8】
前記表地の裾周りに、前記表地の裾周りの形状を保つための芯材を備えることを特徴とする請求項1から
7のいずれか一項に記載のファン付きウェアのウェア本体。
【請求項9】
前記裏地の前記ファン取付部が形成された部分の外面側に、前記ファンを前記ファン取付部に取り付けた際に前記ファンと前記表地との間の空間を保持するためのファン用スペーサーを備えることを特徴とする請求項1から
8のいずれか一項に記載のファン付きウェアのウェア本体。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれか一項に記載のウェア本体と、
前記ファン取付部に取り付けられたファンと、
を備えることを特徴とするファン付きウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン付きウェアのウェア本体及びファン付きウェアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、身体を冷却するファン付きウェアが実用化され、急速に普及しつつある。ファン付きウェアは、例えば、通気性の低い素材で形成されたウェア本体と、ウェア本体の後側に取り付けられた2つのファンと、2つのファンに電力を供給するための電源部と、電源部と2つのファンとを電気的に接続するための接続ケーブルと、を備える。
【0003】
ファンを作動させると、大量の空気がファンからウェア本体内に取り込まれ、取り込まれた空気の圧力により、ウェア本体と着用者の身体との間に空気が流通する空間が自動的に形成される。取り込まれた空気は、形成された空間内を、着用者の身体又はウェア本体の下に着用した下着の表面に沿って流通し、例えば、襟部や袖部の開口部に形成された空気排出部から外部に排出される。
そして、取り込まれた空気が、ウェア本体と着用者の身体又は下着との間の空間内を流通する間に、身体から出た汗を蒸発させ、蒸発する際の気化熱により身体が冷却される。
(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなファン付きウェアは、ファンがファン付きウェアの外側(着用時において着用者に向く側と反対側の外部空間を向く側)に露出していると、例えば、雨天時に使用すると雨に濡れて故障の原因となり易いといった問題や、ファン付きウェアであることが一見して分かってしまい外見上好ましくないといった問題が生じることがある。
【0006】
そこで、ウェア本体のファンが取り付けられる部分を、2枚の服地(表地及び裏地)を有する二重構造とした上で、裏地にファンを取り付け、ファンの外側(ファン付きウェアの外側を向く空気の取込み部が設けられた側)が表地によって覆われるようにすることで、ファンがファン付きウェアの外側に露出しないようにすることが考えられる。
【0007】
しかし、このような構造とした場合、ファンの外側に設けられた空気の取込み部が表地と裏地との間の空間内に存在することから、当該空間に外部から十分に空気が供給されないと、表地がファンの外側に張り付いてしまい、ファンへの空気の取り込み、ひいては、ウェア本体内への空気の取り込みが阻害され、ファン付きウェアが十分に冷却機能を発揮できなくなるおそれがある。
【0008】
本発明の課題は、ファン付きウェアについて、ファンが外側に露出しないようにしつつ、ファンへの空気の取込みが阻害され難くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、ファン付きウェアのウェア本体において、
ファンを取り付けるためのファン取付部が形成された裏地と、
前記裏地の前記ファン取付部が形成された部分の外面側を覆う表地と、
を備え、
前記表地と前記裏地との間の空間と、外部空間と、を繋ぐ開口部である空気取込部と、
前記表地と前記裏地との間の空間と、前記ウェア本体の内部空間と、を繋ぐ、前記ファン取付部及び前記空気取込部と別個の開口部である隙間部と、
が形成され、
前記隙間部は、
前記裏地と前記表地とが接続されていない部分を設けることにより前記裏地と前記表地との間に形成され、
前記裏地と前記表地とが接続されていない部分に、前記裏地と前記表地との間に隙間が生じ易くする間隔確保手段を備えることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のファン付きウェアのウェア本体において、
前記間隔確保手段は、前記表地と前記裏地との対向する部分の長さを、前記裏地の長さよりも前記表地の長さを長くするようにして形成されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のファン付きウェアのウェア本体において、
前記間隔確保手段は、前記裏地と前記表地とが接続されていない部分における前記表地と前記裏地との間に筒状の部材を通すようにして形成されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、ファン付きウェアのウェア本体において、
ファンを取り付けるためのファン取付部が形成された裏地と、
前記裏地の前記ファン取付部が形成された部分の外面側を覆う表地と、
を備え、
前記表地と前記裏地との間の空間と、外部空間と、を繋ぐ開口部である空気取込部と、
前記表地と前記裏地との間の空間と、前記ウェア本体の内部空間と、を繋ぐ、前記ファン取付部及び前記空気取込部と別個の開口部である隙間部と、
が形成され、
前記隙間部は、前記裏地の端部の一部に前記表地と接続されていない部分を設けると共に、当該部分の裏地を縮めた状態で固定することによって形成されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、ファン付きウェアのウェア本体において、
ファンを取り付けるためのファン取付部が形成された裏地と、
前記裏地の前記ファン取付部が形成された部分の外面側を覆う表地と、
を備え、
前記表地と前記裏地との間の空間と、外部空間と、を繋ぐ開口部である空気取込部と、
前記表地と前記裏地との間の空間と、前記ウェア本体の内部空間と、を繋ぐ、前記ファン取付部及び前記空気取込部と別個の開口部である隙間部と、
が形成され、
前記隙間部は、前記裏地の上端部と、前記表地との間に形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載のファン付きウェアのウェア本体において、
前記空気取込部は、前記裏地の下端部と、前記表地との間に形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載のファン付きウェアのウェア本体において、
前記裏地には複数の前記ファン取付部が形成され、
前記隙間部は、前記ファン取付部それぞれの上方に位置するように配置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載のファン付きウェアのウェア本体において、
前記表地の裾周りに、前記表地の裾周りの形状を保つための芯材を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載のファン付きウェアのウェア本体において、
前記裏地の前記ファン取付部が形成された部分の外面側に、前記ファンを前記ファン取付部に取り付けた際に前記ファンと前記表地との間の空間を保持するためのファン用スペーサーを備えることを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、ファン付きウェアにおいて、
請求項1から9のいずれか一項に記載のウェア本体と、
前記ファン取付部に取り付けられたファンと、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ファン付きウェアについて、ファンが外側に露出しないようにしつつ、ファンへの空気の取込みが阻害され難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係るファン付きウェアの前身頃開閉手段を開いた状態における正面図である。
【
図2】実施形態に係るファン付きウェアを着用者が着用した状態を示す正面図である。
【
図3】実施形態に係るファン付きウェアを着用者が着用した状態を示す背面図である。
【
図4】実施形態に係るファン付きウェアのウェア本体の前身頃開閉手段を開いた状態における正面図である。
【
図5】実施形態に係るファン付きウェアのウェア本体の隙間部を示す図であり、(a)は上端部縫合部のみを形成した作製途中の図であり、(b)は完成した隙間部を示す図である。
【
図6】
図3のVI-VI部における断面図である。なお、矢印は空気の流れる方向を表している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、
図1から
図6に基づいて説明する。ただし、本発明の技術的範囲は図示例に限定されるものではなく、以下説明する実施の形態には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更を加えることが可能である。
【0021】
また、以下においては、着用者Wがファン付きウェア100を着用した状態を基準として、着用者Wの前方向を前、着用者Wの後方向を後、着用者Wの上方向を上、着用者Wの下方向を下、着用者Wの右方向を右、着用者Wの左方向を左と定めて説明する。
なお、ウェア本体1の前身頃開閉手段13を開いた状態においては、
図1及び
図4に示すように、ウェア本体1の内面(着用時に着用者W側に向く面)が向く方向を前、その反対方向を後と定めて説明する。
【0022】
[1 実施形態の構成]
実施形態に係るファン付きウェア100は、
図1に示すように、ウェア本体1と、ウェア本体1内に空気を導入するためのファン2と、ファン2に電力を供給する電源部3と、電源部3とファン2との間を接続する接続ケーブル4と、を備え、ファン2によってウェア本体1内に取り込まれた空気を、着用者Wの身体又はウェア本体1の下に着用した下着の表面に沿って流通させた後に、ウェア本体1の襟部及び袖部に形成された空気排出部19から排出することで、身体から出た汗を蒸発させ、蒸発する際の気化熱により身体を冷却するものである。
【0023】
[(1) ウェア本体]
ウェア本体1は、ファン付きウェア100の内、ファン2、電源部3、接続ケーブル4等の電気部品を除いた衣服部分であり、
図1から
図4に示すように、着用者Wの胴部及び腕部を覆うブルゾン型の上衣の形状に形成されている。なお、ウェア本体1の形状はこれに限られず、例えば、着用者Wの胴部のみを覆うベスト型に形成してもよい。
【0024】
なお、ウェア本体1の内、着用時に着用者W側に向く面をウェア本体1の内面、その反対側の面をウェア本体1の外面とする。
また、表地11及び裏地12についても、着用時において着用者W側に向く面を表地11又は裏地12の内面、その反対側の面を表地11又は裏地12の外面とする。
【0025】
ウェア本体1は、
図1から
図4及び
図6に示すように、ウェア本体1の外面側に配置された表地11と、ウェア本体1の内面側に配置された裏地12と、前身頃開閉手段13と、空気漏れ防止手段14と、前身頃接続部15と、電源部保持手段16と、を備える。
また、ウェア本体1の裏地12の下端部には空気取込部17が形成され、ウェア本体1の裏地12の上端部には隙間部18が形成され、ウェア本体1の襟部及び袖部の端部には空気排出部19が形成されている。
【0026】
[a 表地]
表地11は、
図1から
図4に示すように、通気性のない又はファン2による空気の導入によって膨らませることができる程度の通気性を有する服地によって、着用者Wの胴部及び腕部を覆う形状となるように形成されている。
【0027】
[b 裏地]
裏地12は、表地11と同様の服地によって形成され、
図1及び
図4に示すように、表地11の下部の内面側を、後身頃から前身頃に至る範囲を連続して覆うようにして備えられている。
【0028】
裏地12は、
図1及び
図4に示すように、上端部の隙間部18以外の部分及び左右両端部の上部(前身頃接続部15が形成されていない部分)において、表地11に対し縫合され、隙間なく接続されている。なお、裏地12の上端部と表地11との縫合部を上端部縫合部S1といい、裏地12の左右の端部と表地11との縫合部を左右端部縫合部S2という。
【0029】
これに対し、裏地12の下端部及び左右両端部の下部(前身頃接続部15が形成されている部分)は、表地11に接続されていない。
【0030】
裏地12には、
図4に示すように、後身頃に位置する、着用者Wの腰の左右に対応する位置に、ファン取付部121が形成されている。ファン取付部121は、
図4及び
図6に示すように、ウェア本体1の表地11と裏地12との間の空間と、ウェア本体1の内部空間と、を繋ぐ孔部である。
なお、ウェア本体1の内部空間とは、ウェア本体1の内面側に位置する空間(着用者Wによる着用時にウェア本体1と着用者Wの身体との間に位置する空間)のうち、裏地12の下端部よりも上方に位置する部分のことをいう。
【0031】
ファン取付部121は、直径が後述のファン2の直径と略同一となる円形に形成され、ファン取付部121を挿通するようにしてファン2を取り付けることで、ファン取付部121を介して、ウェア本体1の表地11と裏地12との間の空間の空気を、ウェア本体1の内部空間へと取り込むことができる。
【0032】
ファン取付部121の周囲は、例えばプラスチック等によって形成された扁平な環状の部材を取り付ける、裏地12を構成する服地のファン取付部121周囲の部分を折り返して縫合する等の方法で、補強されていることが好ましい。
【0033】
[c 空気取込部]
上記のように、裏地12が下端部において表地11に接続されていないことによって、裏地12の下端部と、表地11との間には、
図1、
図4及び
図6に示すように、表地11と裏地12との間の空間と、外部空間と、を繋ぐ開口部である空気取込部17が形成されている。
なお、外部空間とは、ウェア本体1の表地11と裏地12との間の空間及びウェア本体1の内部空間以外の空間のことを言う。
【0034】
[d 隙間部]
裏地12の上端部は、ファン取付部121それぞれの上方に位置する部分を除いて表地11に接続されており、
図1及び
図4に示すように、ファン取付部121それぞれの上方には、裏地12の上端部と表地11との間に、表地11と裏地12との間の空間と、ウェア本体1の内部空間と、を繋ぐ開口部である隙間部18が形成されている。
【0035】
隙間部18は、以下のようにして形成されている。
すなわち、まず、表地11と裏地12とを共に平坦にした状態で重ね、裏地12の上端部と表地11とを、隙間部18を形成する箇所に縫合されていない部分を残して左右方向に縫合し、上端部縫合部S1を形成することで、
図5(a)に示す状態とする。
続いて、上記の縫合されていない部分の裏地12の中央部を上下方向の折り目で折り畳んで左右方向に縮めた上で、当該部分を、縮めた状態のまま上下方向に縫合(当該縫合による縫合部を隙間部縫合部S3とする。)して固定することで、
図5(b)に示すように隙間部18を形成することができる。
【0036】
これによって、隙間部18が形成されている部分においては、裏地12の左右方向の長さよりも表地11の左右方向の長さの方が長くなることから、表地11に撓みが生じ、表地11と裏地12との間の空間と、ウェア本体1の内部空間と、を繋ぐ空気の流通路が形成され易くなる。
【0037】
[e 前身頃開閉手段]
前身頃開閉手段13は、ウェア本体1を前開きとし、着用者Wがファン付きウェア100を着用する際に、ウェア本体1の前部を開閉するための手段であり、
図1、
図2及び
図4に示すように、表地11の前身頃を左右方向中央部で左右に分割すると共に、その両側に例えば線ファスナー等を備えて、当該分割部分を着脱自在とすることにより形成されている。
【0038】
[f 前身頃接続部]
前身頃接続部15は、裏地12の左右方向の両端部を接続するための手段であり、例えば、
図1及び
図4に示すように、裏地12の左右両端部の下部を延長すると共に、当該部分にスナップボタン等を備えて構成されている。これによって、前身頃接続部15を用いて裏地12の右端部と左端部とを固定することで、
図2及び
図3に示すように裏地12が着用者Wの腰の周りを周回する状態とすることができる。
【0039】
[g 空気漏れ防止手段]
空気漏れ防止手段14は、
図1から
図4及び
図6に示すように、裏地12の下端部近傍に備えられた、ファン付きウェア100を着用者Wが着用した際に、ウェア本体1の内部空間内の空気が裏地12の下端部から外部空間に漏れることを防止するための手段であり、例えば、裏地12の下端部近傍に、ゴム紐等の伸縮性のある部材を、左右の前身頃接続部15を接続した際に着用者Wの身体を周回するように備えることによって構成されている。
【0040】
これによって、前身頃接続部15が接続され、裏地12が着用者Wの腰の周りを周回する状態となった際に、ゴム紐等の伸縮性によって、裏地12の下端部を絞り込んで着用者Wの身体に密着させ、裏地12下端部から内部空間内の空気が外部空間に漏れることを防止することができる。
【0041】
なお、空気漏れ防止手段14の構成は、裏地12の下端部を絞り込んで着用者Wの身体に密着させ、裏地12の下端部から内部空間内の空気が外部空間に漏れることを防止することができるものであればよく、上記のゴム紐等の伸縮性を利用するものに限られない。
例えば、裏地12の下端部近傍に、着用者Wの身体を周回するように形成された筒状の紐通しと、紐通しに通された紐状部材と、紐状部材の紐通しから出ている部分に備えられたコードストッパーと、を備え、ファン付きウェア100を着用者Wが着用した際に、紐状部材の紐通しから出ている部分を引っ張った上でコードストッパーを固定することで、裏地12の下端部を絞り込んで着用者Wの身体に密着させるようにしてもよい。
【0042】
[h 電源部保持手段]
電源部保持手段16は、電源部3を、接続ケーブル4を通じてファン2へと電力を供給可能な位置において保持するための手段であり、例えば、
図1及び
図4に示すように、ウェア本体1の前身頃の内面側に備えられた電源部3を収納可能なポケットを用いることができる。
電源部保持手段16の具体的な構成は、電源部3を、接続ケーブル4を通じてファン2へと電力を供給可能な位置において保持することができるものであればよく、これに限られない。
【0043】
[i 空気排出部]
空気排出部19は、ファン2によって、ウェア本体1の内部空間に導入された空気を、着用者Wの身体又はウェア本体1の下に着用した下着に沿って流通させた後に排出するための開口部であり、
図1から
図4に示すように、着用者Wの首とウェア本体1の襟部の端部との間の開口部と、着用者Wの腕とウェア本体1の袖部の端部との間の開口部と、に形成されている。
【0044】
[(2) ファン]
ファン2は、
図1、
図3及び
図6に示すように、ウェア本体1の着用者Wの腰部の左右に対応する位置に、
図6に示すように裏地12に形成されたファン取付部121を挿通するようにして取り付けられ、ファン取付部121を介して、ウェア本体1の表地11と裏地12との間の空間から、ウェア本体1の内部空間へと送風し、ウェア本体1の内部空間に空気を導入するための手段である。
ファン2には、電源部3より、接続ケーブル4を通じて稼働に必要な電力が供給される。
【0045】
ファン2は、ファン取付部121を挿通するようにしてウェア本体1の裏地12に取り付けられ、表地11と裏地12との間の空間から、ウェア本体1の内部空間へと送風し、ウェア本体1の内部空間へと空気を導入できるものであればよく、その具体的な構成は特に限定されない。
また、本実施形態の場合、裏地12の着用者Wの腰部に対応する位置に備えられた2つのファン取付部121に2つのファン2を取り付けるようにしており、このような配置が最も好ましいものの、ファン2を取り付ける位置及び取り付ける個数はこれに限られるものではない。
【0046】
[(3) 電源部]
電源部3は、ファン2に電力を供給するための手段であり、例えば、安全保護回路が付加されたリチウムイオン組電池が内蔵され、接続ケーブル4を介してファン2と接続される。また、電源部3は、ファン2に供給する電力のオン/オフを切り替えるスイッチを備える。
電源部3は、ファン2に電力を供給することができるものであれば、その具体的な構成は特に限定されない。
【0047】
電源部3は、
図1に示すように、ウェア本体1の内面側に備えられたポケットである電源部保持手段16内に収納されて、ウェア本体1に取り付けられる。
【0048】
[(4) 接続ケーブル]
接続ケーブル4は、電源部3とファン2とを接続するケーブルであり、接続ケーブル4を通じて、電源部3からファン2に対して、ファン2の稼働に必要な電力が供給される。
接続ケーブル4は、電源部3からファン2に対して、ファン2の稼働に必要な電力を供給できるものであればよく、その具体的な構成は特に限定されない。
【0049】
[2 実施形態の効果]
本実施形態に係るファン付きウェア100によれば、ウェア本体1が、ファン2を取り付けるためのファン取付部121が形成された裏地12と、裏地12のファン取付部121が形成された部分の外面側を覆う表地11と、を備え、表地11と裏地12との間の空間と、外部空間と、を繋ぐ開口部である空気取込部17と、表地11と裏地12との間の空間と、ウェア本体1の内部空間と、を繋ぐ、ファン取付部121及び空気取込部17と別個の開口部である隙間部18と、が形成されている。
【0050】
これによって、
図6に示すように、ウェア本体1の裏地12に形成されたファン取付部121にファン2を取り付け、これを稼働させると、ファン2によって、表地11と裏地12との間の空間から、ウェア本体1の内部空間へと送風されることとなる。この際、表地11と裏地12との間の空間には、主に空気取込部17から外部空間の空気が供給されるが、これに加えて、隙間部18からも、僅かにウェア本体1の内部空間の空気が供給されることとなる。
【0051】
空気取込部17のみから表地11と裏地12との間の空間に空気が供給される場合、
ウェア本体1の裾が外部から押されて着用者Wの身体に近づいた際等に、空気取込部17からの空気の供給が十分なものでなくなると、表地11と裏地12との間の空間の空気がファン2によって吸い尽くされて、表地11がファン2に張り付き、ファン2への空気の取り込みが困難となってしまう。
【0052】
これに対し、本実施形態のように、隙間部18からも表地11と裏地12との間の空間に空気が供給される場合、当該空間への空気の供給路が複数となり、空気取込部17からの空気の供給が滞っても、隙間部18から空気が供給されることから、表地11と裏地12との間の空間の空気がファン2によって吸い尽くされ難くなる。
これによって、表地11がファン2に張り付き難くなることから、表地11によってファン2を覆い、ファン2が外部に露出しないようにしても、表地11によってファン2への空気の取り込みが阻害され難くなる。
【0053】
また、隙間部18が、表地11と裏地12との間の空間と、ウェア本体1の内部空間と、を繋ぐことで、表地11と裏地12との間の空間に、外部空間のみならず、ウェア本体1の内部空間からも空気が供給されることとなる。
これによって、表地11と裏地12との間の空間への空気の供給源が多様化されると共に、ファン2による送風によって膨らんでいるウェア本体1の内部空間からの空気の供給は、外部空間からの空気の供給よりも途絶えるおそれが小さいことから、表地11と裏地12との間の空間への空気の供給が安定し、さらにファン2への空気の取込みが阻害され難くなる。
【0054】
さらに、隙間部18が外部空間に繋がらないことで、雨天時に隙間部18からウェア本体1の内部空間に雨が侵入することを防止することもできる。
【0055】
なお、ファン2によってウェア本体1の内部空間に導入された空気のうち、隙間部18から表地11と裏地12との間の空間へと供給される空気の割合は多くなく、ウェア本体1の内部空間に導入された空気の多くは、
図6に示すように上方へと流通して空気排出部19から排出されることから、隙間部18を設けたことによって、着用者Wの身体の上部(隙間部18よりも上方に位置する部分)に対する冷却機能が阻害されることはない。
【0056】
また、隙間部18が、裏地12の上端部の一部に上端部縫合部S1によって表地11と接続されていない部分を設けると共に、当該部分の裏地12を縮めた状態で隙間部縫合部S3で固定することによって形成されていることで、当該部分において、裏地12よりも表地11の左右方向の長さが長くなり、表地11に撓みが生じることとなる。
これによって、隙間部18において表地11と裏地12とが張り付いてしまうことを防止でき、表地11と裏地12との間の空間と、ウェア本体1の内部空間と、を繋ぐ空気の流通路が形成され易くなることから、さらに表地11と裏地12との間の空間への空気の供給を安定させることができる。
【0057】
また、隙間部18が裏地12の上端部と表地11との間に形成され、空気取込部17が裏地12の下端部と表地11との間に形成されていることによって、隙間部18と空気取込部17とを上下方向に離れた位置に配置することができ、両者が同時に塞がってしまうおそれを低減できることから、さらに表地11と裏地12との間の空間への空気の供給を安定させることができる。
また、外部空間に通じる空気取込部17が下方に向くことで、雨天時に、空気取込部17から表地11と裏地12との間の空間に雨が侵入し難くなる。
【0058】
また、隙間部18が、ファン取付部121と同数(2個)形成され、ファン取付部121それぞれの上方に位置するように配置されていることで、それぞれのファン2の近傍に隙間部18が配置され、ファン2の周囲に隙間部18から空気が供給され易くなることから、表地11がファン2に張り付いて空気の取込みが阻害されるおそれをさらに低減できる。
【0059】
[3 変形例]
以下、上記実施形態の変形例について説明する。
【0060】
[(1) 隙間部の構成の変更]
上記構成の説明においては、隙間部18が、裏地12の上端部の一部に上端部縫合部S1によって表地11と接続されていない部分を設けると共に、当該部分の裏地12を縮めた状態で隙間部縫合部S3で固定することによって形成されている場合について説明した。
隙間部18の構成は、部品の追加を要することなく、塞がり難く空気の流通路が形成され易い開口部を形成できる点で、このような構成が最も好ましいが、これに限られるものではない。
【0061】
例えば、裏地12の上端部の一部に上端部縫合部S1によって表地11と接続されていない部分を設けると共に、当該部分に樹脂材料等の硬質な材料で形成された筒状の部材を通すことで、表地11と裏地12との間の空間と、ウェア本体1の内部空間と、を繋ぐ空気の流通路が塞がらないようにしてもよい。
【0062】
[(2) 隙間部の配置の変更]
上記構成の説明においては、隙間部18が、裏地12の上端部と表地11との間に形成され、表地11と裏地12との間の空間と、ウェア本体1の内部空間と、を繋ぐ場合について説明した、
隙間部18は、上記のようにこのように配置されることが最も好ましいが、これに限られるものではない。
【0063】
例えば、裏地12に、ファン取付部121とは別個の孔部を設けることによって、表地11と裏地12との間の空間と、ウェア本体1の内部空間と、を繋ぐ開口部を形成するようにしてもよい。
【0064】
また、雨が侵入する可能性がある点等で好ましくはないものの、隙間部18を、表地11と裏地12との間の空間と、外部空間と、を繋ぐように形成することも一応可能である。
【0065】
この場合、例えば、表地11の、内面側が裏地12によって覆われた部分に孔部を設けることによって、表地11と裏地12との間の空間と、外部空間と、を繋ぐ開口部を形成するようにすればよい。
【0066】
[(3) 芯材の取り付け]
表地11がファン2の外側に設けられた空気の取込み部に張り付くことを防止するための手段として、隙間部18を形成することに加えて、表地11の裾周りを折り返す(下端部を上方へと折り返す)ことで、着用者の身体を周回するように袋状の空間を形成し、当該空間内に、表地11を形成する服地と比較して硬質な材料によって形成された細長い部材である芯材(不図示)を配するようにしてもよい。
芯材は、適度な剛性を有することが好ましく、例えばプラスチックによって構成してもよいし、ある程度の厚みを有する布材から構成してもよい。
【0067】
表地11の裾回りに芯材を配することによって、表地11の裾周りの形状を保つことができ、表地11と裏地12との間の空間を確保し易くなることから、さらに表地11がファン2の外側に設けられた空気の取込み部に張り付き難くすることができる。
【0068】
なお、芯材は、上記のように表地11の裾回りを折り返して形成された袋状の空間に収納するのではなく、表地11の裾回りに、縫合等の方法で固着させるようにしてもよい。
【0069】
[(4) ファン用スペーサーの取り付け]
表地11がファン2の外側に設けられた空気の取込み部に張り付くことを防止するための手段として、隙間部18を形成することに加えて、裏地12のファン取付部121が形成された部分の外面側に、ファン2をファン取付部121に取り付けた際にファン2と表地11との間の空間を保持するためのファン用スペーサー(不図示)を設けてもよい。
【0070】
ファン用スペーサーは、例えば、厚手の布地、プラスチック等の表地11及び裏地12と比較して硬質な材料によって、ファン2の裏地12の外面側に突出する部分を、ファン2の空気の取込み部との間に空間を確保しつつ覆うと共に、左右方向等に裏地12に接続されていない部分を設けて空気の流通路とすることにより形成すればよい。
【0071】
ファン用スペーサーは、裏地12の外面側のファン取付部121の周囲の部分に縫合等の方法で固着してもよいし、スナップボタン、面ファスナー等を用いて、裏地12の外面側のファン取付部121の周囲の部分に取り外し可能に取り付けられるようにしてもよい。
また、ファン用スペーサーの一端を裏地12の外面側のファン取付部121の周辺の部分に固着し、他端をスナップボタン、面ファスナー等により取り外し可能としてもよい。
【符号の説明】
【0072】
100 ファン付きウェア
1 ウェア本体
11 表地
12 裏地
121 ファン取付部
17 空気取込部
18 隙間部
2 ファン