IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社コムビックの特許一覧

<>
  • 特許-非接触測定装置 図1
  • 特許-非接触測定装置 図2
  • 特許-非接触測定装置 図3
  • 特許-非接触測定装置 図4
  • 特許-非接触測定装置 図5
  • 特許-非接触測定装置 図6
  • 特許-非接触測定装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】非接触測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20230915BHJP
【FI】
G01B11/24 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019112505
(22)【出願日】2019-06-18
(65)【公開番号】P2020056777
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2018186346
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518348953
【氏名又は名称】株式会社コムビック
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100094248
【弁理士】
【氏名又は名称】楠本 高義
(72)【発明者】
【氏名】松村 繁
(72)【発明者】
【氏名】寺坂 法喜
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 太平
(72)【発明者】
【氏名】岡本 貴
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-008704(JP,U)
【文献】特開2011-257267(JP,A)
【文献】特開平05-322527(JP,A)
【文献】特表2016-509199(JP,A)
【文献】国際公開第2015/008587(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を備えた筐体と、
前記筐体の中に収納され、前記開口を通して被照射物にレーザーを照射するレーザー装置と、
前記筐体の中に収納され、前記開口を通して被照射物に照射されたレーザーを撮影するカメラモジュールと、
前記筐体とは別体のコンピュータと、
前記レーザー装置、カメラモジュールおよびメモリを前記コンピュータに接続するケーブルと、
前記筐体の中に収納され、前記レーザー装置と前記カメラモジュールの位置関係のパラメータデータと、前記ケーブルに接続された前記コンピュータに、このパラメータデータに基づいて前記カメラモジュールで撮影されたデータを画像処理する手段として機能させるためのプログラムとを記憶したメモリと
を備えた非接触測定装置。
【請求項2】
前記カメラモジュールは基板にレンズ、撮像素子および該撮像素子からデータを読み出す周辺回路を搭載しており、
前記基板を固定する台座と、
前記台座から突出し、基板の側部に接するピンと、
軸部と該軸部の一端に配置された頭部とを有し、該軸部の中心軸と頭部の中心軸が一致せず、該軸部が前記台座に取り付けられ、該頭部が前記基板の側部に接する偏芯部材と、
を備えた請求項1の非接触測定装置。
【請求項3】
前記レーザー装置を保持する保持部材を備え、
前記保持部材が前記台座に取り付けられ、または前記保持部材が前記台座と一体に形成された請求項2の非接触測定装置。
【請求項4】
前記被照射物または被照射物の測定箇所の少なくとも1つの情報が含められた識別記号を備え、
前記コンピュータが
前記カメラモジュールで撮影された識別記号から情報を取得する手段と、
前記識別記号の情報と撮影された被照射物のデータを紐づけする手段
として機能する請求項1から3のいずれかの非接触測定装置。
【請求項5】
被照射物にレーザーを照射するレーザ装置と、そのレーザーが照射された被照射物を撮影するカメラモジュールと、メモリとを内蔵した非接触測定装置用の筐体であって、
前記メモリは、前記筐体とは別体のコンピュータに接続できるように構成されており、
前記メモリには、前記レーザー装置と前記カメラモジュールの位置関係のパラメータデータとともに、前記メモリに接続された前記コンピュータに、このパラメータデータに基づいて前記カメラモジュールで撮影されたデータを画像処理する手段として機能させるためのプログラムが記憶されている非接触測定装置用の筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品等の外形を非接触で測定するための非接触測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ラインレーザーを物品等に照射してカメラで撮影し、画像処理によって物品等の外形を求める非接触測定装置が開発および開示されている(下記特許文献1参照)。たとえば非接触測定装置は、レーザー装置、カメラモジュール、それらを制御して取得したデータを画像処理するコンピュータ、電源が含まれる。それらの部品を1つの筐体に収納し、持ち運べるようにすることで、非接触測定装置を種々の場所で使用することができる。
【0003】
しかし、1つの筐体の中にすべての部品を収納すると、非接触測定装置が非常に高価になり、使用をためらう場合がある。また、持ち運ぶときに非接触測定装置を何かにぶつけてしまうと、レーザー装置とカメラの位置がずれて、正確な測定ができなくなるおそれもある。このため、携行可能な非接触測定装置は非常に使いづらくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-47637
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は安価で正確な測定ができる非接触測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の非接触測定装置は、筐体、レーザー装置、カメラモジュール、コンピュータ、メモリ、ケーブルを備える。筐体は開口を有し、レーザーが開口を通して被照射物に照射される。被照射物で反射されたレーザーをカメラモジュールで受光する。カメラモジュールからコンピュータにデータが送信され、コンピュータで画像処理される。コンピュータで画像処理するためのプログラムおよびレーザー装置とカメラモジュールの位置関係をキャリブレーションによって求めたパラメータデーターをメモリに記憶しておき、コンピュータはケーブルを介してメモリにアクセスする。
【0007】
カメラモジュールは基板にレンズ、撮像素子および該撮像素子からデータを読み出す周辺回路を搭載している。基板は台座に固定され、ピンと偏芯部材の頭部で基板が挟み込まれる。
【0008】
保持部材がレーザー装置を保持する。その保持部材は台座に取り付けられ、または保持部材が台座と一体に形成されている。
【0009】
前記被照射物または被照射物の測定箇所の少なくとも1つの情報が含められた識別記号を備えても良い。コンピュータは、カメラモジュールで撮影された識別記号から情報を取得する手段と、識別記号の情報と撮影された被照射物のデータを紐づけする手段として機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、レーザー装置、カメラモジュール、メモリを筐体に収納するが、コンピュータは筐体の外でケーブルで接続するため、筐体には必要最小限の構成しか収納されていない。非接触測定装置を安価に製造することができる。
【0011】
さらに、画像処理(外形計測処理)するプログラムとキャリブレーションにより求めたレーザー装置とカメラモジュールの位置関係を記録したパラメータデーターを収納したメモリを収納している。非接触測定装置の個体毎に異なるデータの設定などを行うことなく、コンピュータにケーブルを差し込むだけで使用できる。プログラムをインストールしていないコンピュータであっても接続しセットアップ処理を行うだけで利用できる。
【0012】
カメラモジュールを構成する基板をピンと偏芯部材で挟み込んでいるため、偏芯部材によって基板に力をかけることができる。基板が固定され、カメラモジュールの位置ずれがおきない。また、レーザー装置を保持する保持部材が台座に固定されたり、一体になったりするため、カメラモジュールとレーザー装置の相対的な位置もずれず、正確な測定が可能になる。
【0013】
識別記号を利用して測定した箇所を管理することができ、データの管理が容易である。レーザー装置とカメラモジュールを備えているため、新たに識別記号を読み取るための装置を備える必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本願発明の非接触測定装置の構成を示す図である。
図2】非接触測定装置の筐体の外観を示す図である。
図3】レーザー装置とカメラモジュールの筐体内での収納状態を示す図である。
図4】レーザー装置を保持部材に取り付け、カメラモジュールを台座に固定した図である。
図5】カメラモジュールの基板とピンおよび偏芯部材の関係を示す図であり、(a)は基板がピント偏芯部材で挟まれている図であり、(b)は偏芯部材の頭部で基板を押す状態の図である。
図6】コンピュータの画像処理によって生成される画像であり、(a)は撮像したデータから得られる画像データの画像であり、(b)は(a)の画像データから生成した被照射物の断面の図である。
図7】曲線を含む被照射物の断面の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(全体構成)
図1に示す非接触測定装置10は、筐体12に収められた部品が筐体12の外のコンピュータ14にケーブル16で有線接続されている。レーザー装置18、カメラモジュール20、メモリ22、制御回路24およびハブ26が筐体12の中に収納され、LED28とトリガスイッチ30が筐体12の外に見えるように取り付けられている。筐体12には必要最小限の部品のみを収納している。
【0016】
(筐体)
図2に示すように、筐体12は光学部品収納部32とグリップ部34を備えている。筐体12は樹脂で形成されている。図3に示すように、筐体12の内部は空間になっており、光学部品収納部32にレーザー装置18とカメラモジュール20が納められている。なお、図3において筐体12の中に収納される部品の中でレーザー装置18とカメラモジュール20以外の部品を省略している。光学部品収納部32に2つの開口36、38が設けられている。レーザー装置18で発振されたレーザーは開口36を通過して被照射物に照射され、被照射物で反射されたレーザーが開口38を通過してカメラモジュール20で受光される。なお、2つの開口36、38は1つにつながっていてもよい。
【0017】
グリップ部34は手で把持する部分である。レーザーを遮らなければグリップ部34の形状と位置は任意である。メモリ22、制御回路24およびハブ26がグリップ部34に収納されるが、それらの部品は筐体12の形状に応じて光学部品収納部32に収納されてもよい。
【0018】
光学部品収納部32とグリップ部34の境界またはグリップ部34にトリガスイッチ30が配置されている。トリガスイッチ30は制御回路24の動作を制御する部品である。トリガスイッチ30を押すと制御回路24がレーザー装置18とLED28をオンにし、トリガスイッチ30を離すと制御回路24がレーザー装置18とLED28をオフにする。また、トリガスイッチ30が離されたとき、コンピュータ14に信号を送り、コンピュータ14は画像処理によって被照射物の外形を求める。
【0019】
光学部品収納部32に一直線の棒状体40を取り付けてもよい。筐体12において、レーザー装置18の周辺かつレーザー装置18におけるカメラモジュール20の反対側に棒状体40が固定されている。棒状体40がカメラモジュール20の撮影の邪魔にならないようにするためである。レーザーの中心軸Aとカメラモジュール20のレンズの光軸Bとの交点Xにレンズの焦点が合うようになっている。その交点Xと棒状体40の先端を結ぶ線Cは、レーザーの中心軸Aに対して直交する。棒状体40の先端を被照射物の表面に接触させたとき、被照射物に照射されるレーザーにレンズの焦点が合う。素早く被照射物の形状を測定するための画像データを取得できる。被照射物の種類によっては、被照射物に触れないで測定したい場合もあるため、棒状体40は筐体12に着脱可能になるようにしてもよい。
【0020】
筐体12におけるケーブル16の出入口42に柔軟性の有る樹脂製の保護カバー44を取り付けてもよい(図2図3)。保護カバー42は出入口42でケーブル16が鋭角に折れ曲がって断線するのを防止できる。
【0021】
(レーザー装置)
レーザー装置18は被照射物に対してラインレーザーを照射する装置である。たとえばレーザー装置18は半導体レーザーとロッドレンズを備える。半導体レーザーで発振された点状のレーザーがロッドレンズを通過することで直線状に広がり、被照射物に一直線のレーザーを照射できる。レーザーは被照射物と異なる色の波長を選択する。レーザーを見分けやすくし、さらに画像処理によって画像データからレーザーを抽出しやすくするためである。レーザー出力を1mW以下にするのが安全のために好ましい。
【0022】
なお、被照射物は種々の物品および建築物を含み、レーザーが照射されて撮影できるものであれば限定されない。また、被照射物の全体および部分のいずれの外形を測定してもよく、レーザーが照射される範囲で外形を測定する。
【0023】
図4に示すように、レーザー装置18は保持部材46に取り付けられる。保持部材46が筐体12に固定されることで、レーザー装置18が筐体12に固定される。保持部材46は1枚の板体をJ字形状に形成してレーザー装置18を挟みこんでいる。保持部材46の端部48を保持部材46の任意の位置にねじ止めし、レーザー装置18が外れないようにレーザー装置18に力をかけておく。図3に示すように、レーザー装置18の前に保護ガラス50を配置してもよい。
【0024】
(カメラモジュール)
カメラモジュール20はボードカメラを使用する(図4)。具体的な構成は、レンズ52、CCDまたはCMOSの撮像素子、その撮像素子からデータを読み出す周辺回路、および基板54を備える。基板54にレンズ52、撮像素子および周辺回路が搭載されている。被照射物に照射されたレーザーの反射光がレンズ52を通して撮像素子で受光される。レンズ52は固定焦点であり、筐体12を動かして被照射物に対する焦点を合わせる(画像データ内で被照射物を鮮明にする)必要がある。周辺回路が撮像素子から受光量に応じたデータを読み出してコンピュータ14に送信する。読み出したデータを画像データにしたり、画像処理したりせずにコンピュータ14に送信し、コンピュータ14で画像データに加工し、所定の画像処理をおこなう。カメラモジュール20の構成を単純にして、筐体12に収納される部品を増やさず、簡単な構成にする。レンズ52の絞りも固定であり(または絞りを有さず)、撮像素子が画像データを取得する際のシャッター速度とゲイン(感度)を調節する。また、シャッター速度が遅くなるとフレームレートが下がるため、シャッター速度は一定速度(たとえば1/30秒)よりも遅くならないようにして、シャッター速度を遅くせずにゲインを上げるようにする。
【0025】
カメラモジュール20のレンズ52の前にレーザーと同じ波長の光を透過させるフィルター56を備える(図3)。上記のように被照射物の色と異なる波長のレーザーを用いれば、撮像素子にレーザーの反射光のみが受光される。画像データがレーザーとそれ以外のみになり、画像データからレーザーを抽出して、被照射物の形状を求める画像処理が容易になり、コンピュータ14に対する負荷が軽くなる。
【0026】
カメラモジュール20の基板54が台座58に固定される(図4)。台座58が筐体12に固定されることで、カメラモジュール20が筐体12に固定される。基板54を台座58に固定するために、スペーサー60を介して台座58に固定してもよい。図4図5(a)に示すように、基板54は方形になっており、基板54の側部62に台座58から突出するピン64が接する。図5(a)、(b)に示すように、偏芯クランプボルトまたは偏芯ピンなどの頭部66と軸部68を有する偏芯部材70を台座58に取り付け、その頭部66が基板54の側部72に接するようにする。基板54はピン64と偏芯部材70によって挟まれた構成になっている。図5(b)に示すように、偏芯部材70の頭部66と中心軸Mと軸部68の中心軸Nは不一致である。軸部68の中心軸Nと頭部66の中心軸Mが基板54の側部72に対して垂直方向に並んでおり、かつ、軸部68の中心軸Nが頭部66の中心軸Mよりも基板54側に配置される。図5(b)は偏芯部材70が台座58にゆるみなく取り付けられた状態であり、偏芯部材70の軸部68がゆるもうとして回転しようとすると、図5(a)の矢印Pのように頭部66がピン64に向けて基板54を押すことになり、基板54の位置を固定できる。頭部66は基板54に当たって回転できないため、偏芯部材70がゆるまない。
【0027】
カメラモジュール20は周辺回路をハブ26に接続するためのコネクタ74を備える(図4)。コネクタ74は基板54におけるレンズ52の反対側に配置されている。台座58の一部に切り欠き76を設け、この切り欠き76にコネクタ74が配置される。コネクタ74と切り欠き76によって台座58に対するカメラモジュール20の位置合わせができる。
【0028】
台座58にレーザー装置18の保持部材46が取り付けられている。保持部材46は台座58と一体的に形成されていてもよいし、溶接やねじ止めで取り付けられていてもよい。たとえば、上記偏芯部材70によって台座58に保持部材46を固定する。上記のように偏芯部材70がゆるまないため、台座58と保持部材46を強固に固定することができる。台座58に対する保持部材46の位置がずれないため、カメラモジュール20とレーザー装置18の相対位置を固定することができ、カメラモジュール20が、一定の角度でレーザーを撮影できる。カメラモジュール20とレーザー装置18の相対位置の位置関係は、後述するパラメータデーターとしてメモリ22に記憶する。
【0029】
(メモリ)
メモリ22はUSBメモリ(USBフラッシュドライブ)を使用する。ケーブル16とハブ26を介してメモリ22がコンピュータ14に接続されると、コンピュータ14からメモリ22にアクセスできるようになる。コンピュータ14に記憶(インストール)させるプログラム(ソフトウェア)とレーザー装置18とカメラモジュール20の位置関係を示すパラメータデーターがメモリ22に記憶されている。CD-ROMなどの記憶媒体を使用していないので、コンピュータ14に簡単にプログラムとパラメータデーターを記憶させることができる。コンピュータ14にプログラムとパラメータデーターを記憶させず、コンピュータ14がメモリ22にアクセスすることでプログラムとパラメータデーターを使用できるようにしてもよい。また、メモリ22に認証キーなどのセキュリティーにかかわるデータを記憶し、特定のコンピュータ14で使用できるようにしてもよい。
【0030】
(制御回路)
制御回路24はトリガスイッチ30の操作によって動作する回路であり、ICなどの素子を使用する。図1に示すように、レーザー装置18とLED28はFET(スイッチ)Q1、Q2を介してハブ26に接続されており、それらのFETQ1、Q2のゲートが制御回路24に接続されている。トリガスイッチ30が押されている間、制御回路24はFETQ1のゲートに電圧を印加し、レーザー装置18をハブ26に接続する。レーザー装置18に電力が供給され、レーザー装置18でレーザーが発振される。また、トリガスイッチ30が押されている間、制御回路24はFETQ2のゲートにパルス電圧を印加し、LED28とハブ26を間欠的に接続する。LED28に間欠的に電力が供給され、LED28が点滅する。さらに、カメラモジュール20のピントが合わせられた信号をコンピュータ14から受信すると、制御回路24はFETQ2のゲートに一定の電圧を印加する。FETQ2が常時オンになるため、LED28に常時電力が供給されて点灯される。トリガスイッチ30が離されるとFETQ1、Q2をオフにして、コンピュータ14に信号を送信する。コンピュータ14は信号を受信すると画像処理して被照射物の外形を求める。なお、カメラモジュール20は制御回路24に電源制御されず、カメラモジュール20には常にコンピュータ14から電力供給される。
【0031】
(LED)
LED28は筐体12の中から外に見えるように取り付けられている。LED28が点灯や点滅することでレーザーの発振やピント合わせの終了を操作者に知らせることができる。たとえば、レーザーが発振されるとLED28を点滅させ、ピント合わせができるとLED28を点灯させる。
【0032】
(ハブ)
ハブ26はUSBハブを使用する。レーザー装置18、カメラモジュール20、メモリ22、制御回路24およびLED28がハブ26に接続されている。ハブ26とコンピュータ14とを接続するケーブル16はUSBケーブルである。ケーブル16は電力供給およびデータ転送が可能なUSBケーブルを使用する。ハブ26によって1本のケーブル16から複数の部品に分配されるようにし、ケーブル16の本数を最低限にする。
【0033】
(コンピュータ)
コンピュータ14は持ち運びできるタブレット型コンピュータ、スマートフォンまたはラップトップ型コンピュータを使用する。筐体12に収められた部品とコンピュータ14がケーブル16で接続されており、コンピュータ14を持ち運ぶ必要があるためである。
【0034】
コンピュータ14はカメラモジュール20からコンピュータ14に送られたデータを画像処理する手段として機能する。そのように機能させるために、コンピュータ14はメモリ22に記憶されたプログラムをインストールして実行する。画像処理は、撮像素子から読み出されたデータを画像データに変換する処理、被照射物の外形を求める処理が可能な画像データであるか否かを判断する処理、画像データからレーザーの照射された被照射物の外形を求める処理が含まれる。
【0035】
(画像データに変換する処理)
カメラモジュール20のレンズ52の前にフィルター56が有り、レーザーと同じ波長の光のみをカメラモジュール20が受光しているため、撮像素子から読み出したデータを画像データ80に変換するとレーザー82とそれ以外の部分84に分けられる(図6(a))。
【0036】
なお、撮像素子から読み出したデータをそのまま画像データにすると、レーザー装置18から見て被照射物を斜め方向(カメラモジュール20の方向)から見た画像データ80である。被照射物の外形を求めるために、レーザー装置18から被照射物を見た画像に変換する処理をおこなう。レーザー装置18(半導体レーザー)とカメラモジュール20(撮像素子)の距離、レーザーの中心軸Aとレンズ52の光軸Bとの角度θ、レーザー装置18から被照射物までの距離(レーザーの中心軸Aの長さ)、カメラモジュール20から被照射物までの距離(光軸Bの長さ)が決まっており、それらを測定(キャリブレーション)し、パラメータデーターとしてメモリ22に記憶している。それらの値を使用して、画像データ80を被照射物86の断面形状(レーザー装置18から見た被照射物の表面形状)の画像データ88に変換する(図6(b))。なお、パラメータデーターは、少なくともレーザー装置18とカメラモジュール20の距離、およびレーザーの中心軸Aとレンズ52の光軸Bとの角度θを含むようにする。また、角度θの代わりにレーザー装置18とカメラモジュール20の相対的な角度であってもよい。メモリ22に予めパラメータデーターを記憶しておくことで、装置10ごとの個体差によって生じるレーザー装置18とカメラモジュール20の位置関係を求めてコンピュータ14に入力する必要がない。同一のコンピュータ14に異なる装置10を接続しても、装置10ごとにパラメータデーターを自動的に使用して外形測定できる。レンズ52のゆがみの値をパラメータデーターに含め、画像データ88に変化する際に、その値を用いてレンズ52のゆがみを除去した画像データ88にすることが好ましい。
【0037】
(外形測定の可否の判断)
被照射物の外形を求める処理が可能な画像データであるか否かを判断するために、(a)画像データ80のレーザー82とそれ以外の部分84とのコントラストの差の最大を求め、(b)レーザー82が連続していることの確認し、(c)レーザー82が画像データ80の中心またはその付近に入っていることを確認して判断する。上記のようにLED28の点滅している間、筐体12のグリップ部34を手で持って動かすことで、時間と共に画像データ80が変化する。上記(a)は画像データ80の中心およびその付近におけるレーザー82とそれ以外の部分84のコントラストの差が時間と共に変化する。そのコントラストの差が最も大きくなった時に被照射物の外形を求める処理が可能(一般のカメラでピントが合って画像が鮮明になる状態)になるためである。上記(b)はレーザー82が連続していなければ被照射物の外形が求められないためである。画像データ80はレーザー82とそれ以外の部分84になっており、輝度の高い部分がレーザー82になっているため、輝度の高い部分が連続しているか分断されているかによって判断する。上記(c)はレーザー82が画像データ80の中心またはその付近になければ被照射物にレーザーが照射されていない恐れがあるためである。
【0038】
(被照射物の外形計測処理)
上記のように被照射物86の外形を示す画像データ88が生成されているので、外形の直線90a、90b、90cの長さ、直線90a、90b、90cの角度などから被照射物86の外形寸法を求める。外形を求めるとき、パラメータデーターを使用する。直線90a、90b、90cが折れ曲がった部分92a、92bは特徴点として抽出してもよい。直線90a、90cを延長し、延長した部分同士の交点94を特徴点として抽出し、延長した部分の長さおよび特徴点の角度を求めてもよい。
【0039】
(コンピュータのその他の機能)
コンピュータ14は得られた被照射物86の外形を他のプログラムで使用してもよい。たとえば、得られたデータを表計算ソフトに自動入力したり、CADソフトに自動入力したりする。
【0040】
コンピュータ14はレーザー装置18、カメラモジュール20、制御回路24、メモリ22、LED28に電力を供給する手段として機能する。筐体12の中には電源を備えず、コンピュータ14からケーブル16を介して電力を供給する。
【0041】
(非接触測定装置の動作)
予めコンピュータ14にケーブル16を接続し、コンピュータ14の記憶装置にメモリ22に記憶されたソフトウェアをインストールし、パラメータデーターも記憶しておく。コンピュータ14とケーブル16を接続した状態で、操作者は筐体12のグリップ部34を持ちながら開口36を被照射物に向けた状態でトリガスイッチ30を押す。トリガスイッチ30が押されている間、制御回路24はFETQ1をオンにし、レーザー装置18に電力を供給する。FETQ2のゲートにパルス電圧を印加することでLED28を点滅させる。また、トリガスイッチ30が押されている間、コンピュータ14はカメラモジュール20で得られたデータから画像データ80を生成しており、画像処理によってレンズ52のピントが被照射物に合わせられているかをチェックする。ピントが合っているときに、コンピュータ14から制御回路24に信号を送信する。
【0042】
コンピュータ14から制御回路24に信号が受信されると、制御回路24はFETQ2のゲートに常時電圧を印加し、LED28を常時点灯させる。これによって、操作者はピントが合わせられたことを確認できる。操作者はピントが合わせられるまでグリップ部34を持ちながら筐体12を動かしてピントを調節するが、ピントが合わせられたら手を固定して、トリガスイッチ30を離す。トリガスイッチ30が離されると、制御回路22からコンピュータ14に信号を送り、FETQ1、Q2をオフにする。レーザー装置18とLED28への電源供給が断たれる。コンピュータ14はソフトウェアによる機能によって、その信号が送られたときにカメラモジュール20で得られたデータおよびパラメータデーターを使用して画像データ80、88を生成し、上記の被照射物の外形を求めるための画像処理をする。画像処理した結果はコンピュータ14のディスプレイに表示させる。
【0043】
以上のように、本願は筐体12の中に必要最低限の部品のみを収納しており、安価な非接触測定装置10である。筐体12を何かにぶつけたりしてもカメラモジュール20とレーザー装置18の相対的な位置ずれを防止でき、正確な測定が可能である。
【0044】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。たとえば、上述したLED28の点灯と点滅は逆であってもよい。また、異なる色のLEDを2つ備え、レーザーを発振したときと外形計測が可能なったときで発光するLEDを異ならせてもよい。
【0045】
カメラモジュール20とハブ26の間にFETを設けてもよい。トリガスイッチ30が押されている間、そのFETをオンにしてカメラモジュール20に電力を供給するようにする。
【0046】
図7の画像データ96に示されるように、被照射物98に曲線100を含む外形を測定してもよい。曲線100を形成する円弧の長さを求めたり、直線90a、90bと曲線100の変化する部分102a、102bを特徴点として抽出したりしてもよい。
【0047】
カメラモジュール20は固定焦点のカメラに限定されず、ステレオカメラや焦点を変えられるカメラを使用してもよい。
【0048】
本願は被照射物86または測定箇所の少なくとも1つの情報を含む識別記号(バーコード)を備えても良い。メモリ22に記憶されたソフトウェアに識別記号を読み込む機能および識別記号の情報を測定された形状の画像データに紐づけする機能を備えさせておく。コンピュータ14はカメラモジュール20で撮影された識別記号を読み込む手段および識別記号と測定した形状を紐づけする手段として機能する。操作者は、識別記号にレーザーを照射してカメラモジュール20で識別記号を撮影し、その後に被照射物86にレーザーを照射して形状を測定する。識別記号と被照射物86が順番にカメラモジュール20で撮影される。コンピュータ14は撮影された識別記号から情報を取得し、取得した識別記号の情報と測定された形状の画像データを紐づけ(関連付け)する。測定された形状の画像データに識別記号の情報が追加される。操作者は測定された画像データに対して測定箇所などの情報を追加する必要はなく、測定された画像データの管理が容易になる。
【0049】
識別記号にレーザーを照射する場合、レーザーが線状になっているため、識別記号はバーコードを使用することが好ましい。識別記号として二次元コードを使用する場合、レーザーを照射しない状態で識別記号を撮影する。識別記号は、バーコードおよび二次元コード以外の文字、記号、図形などであってもよく、コンピュータ14は撮影された識別記号から情報を取得する手段として機能する。識別記号は測定される箇所ごとに設けられてもよいし、被照射物86ごとに設けられてもよい。識別記号は紙またはフィルムなどに印刷され、被照射物86の測定箇所の近傍に貼り付けられても良い。識別記号は上記した情報以外の情報、たとえば日付、操作者名などの情報をさらに含めても良い。
【0050】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【符号の説明】
【0051】
10:非接触測定装置
12:筐体
14:コンピュータ
16:ケーブル
18:レーザー装置
20:カメラモジュール
22:メモリ
24:制御回路
26:ハブ
28:LED
30:トリガスイッチ
32:光学部品収納部
34:グリップ部
36、38:開口
40:棒状体
42:筐体におけるケーブルの出入口
44:保護部材
46:保持部材
48:保持部材の一端
50:保護レンズ
52:レンズ
54:基板
56:フィルター
58:台座
60:スペーサー
62、72:基板の側部
64:ピン
66:頭部
68:軸部
70:偏芯部材
74:コネクタ
76:切り欠き
80、88、96:画像データ
82:レーザー
84:レーザー以外の部分
86、98:被照射物
90a、90b、90c:直線
92a、92b、102a、102b:特徴点
94:交点
100:曲線
Q1、Q2:FET
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7