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▶ 竹原 健一の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】工芸品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B44C 5/00 20060101AFI20230915BHJP
【FI】
B44C5/00 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019143782
(22)【出願日】2019-08-05
(65)【公開番号】P2021024191
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】519285558
【氏名又は名称】竹原 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100190702
【弁理士】
【氏名又は名称】筧田 博章
(72)【発明者】
【氏名】竹原 健一
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-004012(JP,U)
【文献】特開平06-124604(JP,A)
【文献】実開平07-019909(JP,U)
【文献】登録実用新案第3050893(JP,U)
【文献】実開平06-024597(JP,U)
【文献】実公昭48-024549(JP,Y1)
【文献】特開昭58-214551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠状の枠部と、
前記枠部の枠内において、架け渡される複数の捻じれ部と、
を備え、
各前記捻じれ部は、長手方向において捻じれた帯状のものであり、
前記複数の捻じれ部の少なくとも1つは、長手方向において幅が変わるものであることを特徴とする工芸品
【請求項2】
枠状の枠部と、
前記枠部の枠内において、架け渡される複数の捻じれ部と、
を備え、
各前記捻じれ部は、長手方向において捻じれた帯状のものであり、
前記複数の捻じれ部の少なくとも1つは、長手方向において捻じれのピッチが変わることを特徴とする工芸品
【請求項3】
枠状の枠部と、
前記枠部の枠内において、架け渡される複数の捻じれ部と、
を備え、
各前記捻じれ部は、長手方向において捻じれた帯状のものであり、
前記枠部に、前記捻じれ部に張力を付与する張力部を備えることを特徴とする工芸品
【請求項4】
枠状の枠部と、
前記枠部の枠内において、架け渡される複数の捻じれ部と、
を備え、
各前記捻じれ部は、長手方向において捻じれた帯状のものであり、
複数の前記枠部が回転可能に連結され、それぞれの前記枠部に前記複数の捻じれ部が架け渡されているいることを特徴とする工芸品
【請求項5】
前記複数の捻じれ部の少なくとも1つは、両面または片面の全体または一部に光沢、色彩および模様の少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の工芸品。
【請求項6】
前記捻じれ部は、長手方向において光沢、色彩および模様の少なくとも1つが変わることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の工芸品。
【請求項7】
前記複数の捻じれ部の全部または一部により、文字,記号および模様の少なくとも1つを表現することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の工芸品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工芸品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工芸や美術の分野においては、特許文献1および特許文献2記載の発明など、様々な発明がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3209818号公報
【文献】実用新案登録第3197052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願人は、鋭意研究開発を行った結果、従来にはない新たな工芸品を発明するに至った。
本発明は、従来にはない斬新で、審美性に優れ、意匠性の高い工芸品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
工芸品は、枠状の枠部と、枠部の枠内において、架け渡される複数の捻じれ部とを備え、各捻じれ部は、長手方向において捻じれた帯状のものである。
【0006】
また、複数の捻じれ部の少なくとも1つは、長手方向において幅が変わるものであってもよい。
【0007】
また、複数の捻じれ部の少なくとも1つは、長手方向において捻じれのピッチが変わるものであってもよい。
【0008】
また、複数の捻じれ部の少なくとも1つは、両面または片面の全体または一部に光沢、色彩および模様の少なくとも1つを有するものであってもよい。
【0009】
また、捻じれ部は、長手方向において光沢、色彩および模様の少なくとも1つが変わるものであってもよい。
【0010】
また、工芸品は、複数の捻じれ部の全部または一部により、文字,記号および模様の少なくとも1つを表現するものであってもよい。
【0011】
また、枠部に、捻じれ部に張力を付与する張力部を備えるものであってもよい。
【0012】
また、工芸品は、複数の枠部が回転可能に連結され、それぞれの枠部に複数の捻じれ部が架け渡されているものであってもよい。
【0013】
工芸品の製造方法は、複数の帯状の部材を長手方向に捻じることにより複数の捻じれ部を製造する工程と、枠状の枠部内に複数の捻じれ部を架け渡す工程とを備えている。
【発明の効果】
【0014】
工芸品およびその製造方法によると、枠部の枠内に複数の捻じれ部を架け渡すことにより、従来にない斬新で、審美性に優れ、意匠性の高い工芸品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態の工芸品を示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態の工芸品を示す正面図である。
図3】Aは第1捻じれ部のもととなる帯状の部材を示す模式図であり、Bは帯状の部材を捻じって形成した第1捻じれ部を示す模式図である。
図4】Aは第2捻じれ部のもととなる帯状の部材を示す模式図であり、Bは帯状の部材を捻じって形成した第2捻じれ部を示す模式図である。
図5図3のV-V線断面図である。
図6】枠部への捻じれ部の取り付けの一態様を示す一部縦断面図である。
図7図6のVII-VII線における貫通部を示す断面図である。
図8図6のVIII-VIII線端面図である。
図9】枠部への捻じれ部の取り付けの別の態様を示す一部縦断面図である。
図10】本発明の第2実施形態の工芸品を示す図であって、外枠部と内枠部との角度を小さくした状態を示す斜視図。
図11図10に対応する正面図である。
図12】本発明の第2実施形態の工芸品を示す図であって、外枠部と内枠部との角度を大きくした状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1および図2に示すように、第1実施形態の工芸品は、枠部10と、捻じれ部20と、を備えている。
【0017】
枠部10は、枠状のものである。本実施形態では、枠部10は、図1および図2に示すように、左右方向に延びる上枠材11および下枠材13ならびに上下方向に延びる左枠材15および右枠材17を矩形状に枠組みすることにより構成され、枠内が矩形状に開口(貫通)している。上枠材11、下枠材13、左枠材15および右枠材17は、それぞれほぼ角柱状のものであり、木材からなる。
【0018】
なお、枠部10およびその開口の形状は、どのような形状であってもよい。また、枠部10は、枠内を完全に囲むものでなくてもよく、不連続な部分があるものであってもよい。また、枠部10の素材もどのようなものであってもよい。
【0019】
捻じれ部20は、枠部10の枠内に複数架け渡されている。各捻じれ部20は、長手方向において捻じれた帯状のものである。複数の捻じれ部20は、その長手方向において、幅が一様のものだけで構成されてもよいし、幅が変わるものだけで構成されてもよいし、幅が一様のものと幅が変わるものとの組み合わせで構成されてもよい。また、捻じれ部20は、上下方向、左右方向および斜め方向のいずれかに架け渡されるものであってもよいし、これらの方向のうち複数の方向に架け渡されるものであってもよく、どの方向に架け渡されてもよい。また、捻じれ部20は、枠内において、張り渡されるものであってもよいし、たるんだ状態で架け渡されるものであってもよい。また、複数の捻じれ部20は、間隔をあけて枠内に架け渡されていてもよく、その間隔は等間隔、不等間隔またはこれらの組み合わせであってもよい。また、複数の捻じれ部20の少なくとも1つは、長手方向において、捻じれのピッチが変わるものであってもよい。
【0020】
また、複数の捻じれ部20の少なくとも1つは、両面または片面の全体または一部に、光沢、色彩および模様の少なくとも1つを有するものであってもよい。この場合、捻じれ部20は、長手方向において、光沢、色彩および模様の少なくとも1つが変わるものであってもよい。また、複数の捻じれ部20の少なくとも1つは、全体または一部が透明または半透明であってもよい。
【0021】
また、複数の捻じれ部20の全部または一部が、文字,記号および模様の少なくとも1つを表現するものであってもよい。表現する模様には、図形や絵なども含まれる。複数の捻じれ部20の全部または一部により表現される文字,記号および模様の少なくとも1つは、枠部10の枠内において、どの位置で表現されてもよい。文字,記号および模様の少なくとも1つを表現する場合、例えば、複数の捻じれ部20のうち、表現しようとする対象に交差するものは、長手方向において、幅、捻じれのピッチ、光沢、色彩もしくは模様の少なくとも一つが変わるものとすることができる。また、この場合、表現しようとする対象のうち少なくとも一部の捻じれ部20に交差する部分は、その対象のパーツごとに2つ存在する、すなわち捻じれ部20の長手方向において、その対象のパーツが幅を有する。また、この場合、表現しようとする対象に交差する捻じれ部20は、表現しようとする対象の輪郭に、幅、捻じれのピッチ、光沢、色彩もしくは模様の少なくとも一つが変わる境界または遷移する遷移部35が位置し、表現しようとする対象またはその各パーツの内外において、幅、捻じれのピッチ、光沢、色彩もしくは模様の少なくとも一つが異なる。複数の捻じれ部20が間隔をあけて枠部10の枠内に架け渡されている場合には、表現しようとする対象に交差するまたは表現しようとする対象の付近に架け渡される捻じれ部20の間隔は、それ以外に架け渡される捻じれ部20の間隔より、間隔が細かいものであってもよい。
【0022】
また、捻じれ部20の枠部10への取り付けは、捻じれ部20が枠部10に取り付けられるのであればどの様なものであってもよく、例えば、捻じれ部20を枠部10に直接または間接的に取り付けることができる。また、捻じれ部20は、その両方または一方の端部側に接続し、その長手方向において張力を付与する張力部60を介して枠部10に取り付けられてもよい。
【0023】
本実施形態では、各捻じれ部20は、図1および図2に示すように、その長手方向が左右方向に平行となるように枠部10の枠内に張り渡されている。また、複数の捻じれ部20は、上下方向において間隔をあけて、張り渡されている。複数の捻じれ部20は、複数の第1捻じれ部30と、複数の第2捻じれ部40とにより構成されている。
【0024】
各第1捻じれ部30は、長手方向に捻じれた帯状のものであり、長手方向において幅が変化している。各第1捻じれ部30は、幅広部31と、基本幅部33と、遷移部35と、を備えている。幅広部31は、左右方向(長手方向)において幅が一定であり、その幅は基本幅部33の幅(基本幅)より広くなっている。基本幅部33は、2つ備えられ、それぞれ幅広部31から遷移部35を介して左右方向に延びている。基本幅部33は、左右方向(長手方向)において幅が基本幅で一定となっている。遷移部35は、幅広部31と基本幅部33を滑らかにつなぐためのものであり、幅広部31と基本幅部33の間において、その幅が幅広部31の幅から基本幅に滑らかに遷移している。第1捻じれ部30は、幅広部31、遷移部35および基本幅部33において連続的に捻じれている。
【0025】
複数の第1捻じれ部30には、後述する模様を表現するため、幅広部31および基本幅部33の長さが異なるものが含まれている。
【0026】
第1捻じれ部30は、図3に示すように、一定の幅で延び、その幅が基本幅より広い幅広部31と、幅が基本幅で一定であり、幅広部31の両端から幅が遷移する遷移部35を介してそれぞれ幅広部31の長手方向に延びる2つの基本幅部33とを備える帯状の部材37をその長手方向周りに捻じることにより形成される。このように第1捻じれ部30を形成することにより、第1捻じれ部30は、長手方向において捻じれのピッチが変わる。具体的には、第1捻じれ部30は、帯状の部材37の幅が広い部分ほど捻じれのピッチが長くなる。本実施形態では、第1捻じれ部30の捻じれのピッチは、幅広部31、遷移部35および基本幅部33の順に長くなっている。
【0027】
なお、第1捻じれ部30は、幅広部31の代わりに、基本幅より幅が狭くなる幅狭部を備えるものであってもよいし、幅広部31および幅狭部の両方を備えるものであってもよい。また、第1捻じれ部30は、幅広部31および幅狭部の両方および一方を複数備えるものであってもよい。第1捻じれ部30は、その長手方向において、幅広部31、幅狭部および基本幅部33の幅が一定ではなく変化するものであってもよい。また、第1捻じれ部30は、遷移部35を備えないものであってもよい。すなわち、第1捻じれ部30は、その長手方向において幅が変化し、かつ捻じれているものであれば、幅広部31、幅狭部および基本幅部33の有無を問わずどのようなものであってもよい。
【0028】
各第2捻じれ部40は、長手方向に捻じれた帯状のものであり、その幅は長手方向(左右方向)において一定となっている。第2捻じれ部40の幅はどのようなものであってもよいが、本実施形態では第1捻じれ部30の基本幅部33と同じく基本幅となっている。第2捻じれ部40は、捻じれのピッチがほぼ一定となっている。
【0029】
第2捻じれ部40は、図4に示すように、長手方向において幅が基本幅で一定である帯状の部材41をその長手方向周りに捻じることにより形成される。このように第2捻じれ部40を形成することにより、第2捻じれ部40は、捻じれのピッチが、ほぼ一定になる。
【0030】
なお、捻じれ部20(第1捻じれ部30および第2捻じれ部40)の形成は、どのようなものであってもよく、例えば金型等を用いて形成してもよい。
【0031】
第1捻じれ部30および第2捻じれ部40(捻じれ部20)の素材は、紙、繊維、樹脂、金属もしくはガラスまたはこれらの組み合わせなど、どのようなものであっても構わないが、本実施形態では、図5に示すように、和紙50の両面に光沢層51を積層したものが用いられている。光沢層51は、光沢を放つものであればどのようなものであってもよいが、例えば、金箔、銀箔またはプラチナ箔その他の金属箔とすることができる。
【0032】
第1捻じれ部30および第2捻じれ部40の素材に和紙50を用いると、和紙50の強靭性やしなやかさやにより、捻じれ部20の強度が高くなり、また捻じれ部20の枠部10への取付も容易になる。
【0033】
なお、捻じれ部20の全体または一部を透明または半透明とする場合には、例えば捻じれ部20の全体または一部を透明または半透明なガラスまたは樹脂等により形成することができる。
【0034】
捻じれ部20の枠部10への取り付けについては、本実施形態では、各捻じれ部20、すなわち第1捻じれ部30および第2捻じれ部40の両端が、張力部60を介して枠部10に取り付けられている。張力部60は、例えば、弾性体63を含み、弾性体63の圧縮または引張に対する復元力により捻じれ部20に張力を付与する。
【0035】
本実施形態では、張力部60は、図6図8に示すように、貫通部61と、弾性体63と、固定部65と、回転規制部67とを備えている。
【0036】
貫通部61は、各捻じれ部20が架け渡される位置おいて、各捻じれ部20の長手方向(左右方向)に枠部10を貫通している。本実施形態では、貫通部61は、各捻じれ部20が架け渡される位置おいて、左枠材15および右枠材17を左右方向に貫通している。貫通部61は、その長手方向において、左枠材15および右枠材17の内側から外側に向かって順に、第1貫通部61aと、第2貫通部61bとにより構成されている。第1貫通部61aおよび第2貫通部61bは、ともに横断面がほぼ円形で、捻じれ部20の長手方向(左右方向)に延びる孔であり、同軸で接続している。また、第2貫通部61bの径は、第1貫通部61aの径より大きいものとなっている。第2貫通部61bは、その長手方向において、その周縁から外側(上方)に窪む溝部67aを備えている。溝部67aは、回転規制部67の構成の1つである。
【0037】
各第2貫通部61b内には、第1貫通部61a内を通過しない大きさの弾性体63が備えられている。弾性体63は、第2貫通部61bの長手方向において復元力が働くものとなっている。本実施形態では、弾性体63として、第2貫通部61bの長手方向(左右方向)において伸縮するコイルバネが用いられている。弾性体63は、第1貫通部61a側への移動が規制され、第1貫通部61aと第2貫通部61bの境界を基準として伸縮する。
【0038】
各第2貫通部61b内において、弾性体63の外側には、固定部65が設けられている。固定部65は、ほぼ円柱状のものであり、その軸方向が貫通部の長手方向に平行となっている。固定部65には、貫通部61の長手方向(左右方向)において、その周縁から外側(上方)に突出する突出部67bが設けられており、突出部67bは、溝部67aに通されている。突出部67bも、回転規制部67の構成の1つである。固定部65は、第2貫通部61bの長手方向(左右方向)に移動可能となっている。また、固定部65は、回転規制部67(溝部67aおよび突出部67b)により、その軸(左右方向)周りに回転しないようになっている。固定部65には、固定部65が弾性体63に接した状態または弾性体63を圧縮した状態で、第1貫通部61a内に通され、さらに第2貫通部61b内において弾性体63内(コイルバネ内)に通された捻じれ部20(第1捻じれ部30および第2捻じれ部40)の端部が固定されている。固定部65への捻じれ部20の固定の仕方は、どのようなものであっても構わないが、本実施形態では、固定部65に、貫通部61の長手方向(左右方向)に貫通する貫通孔65aが設けられており、捻じれ部20の端部が貫通孔65aに通されて折り曲げられ、固定部65の外側の端部に接着剤等の固定手段により固定されている。
【0039】
上記張力部60の構成により、各捻じれ部20は、両端がそれぞれ張力部60を介して枠部10に取り付けられ、張力部60によりその長手方向の外側に向かう張力がかけられる。
【0040】
なお、回転規制部67は、捻じれ部20の長手方向周りに固定部65を回転しないようにするものであればどのような構成であってもよい。また、張力部60も、捻じれ部20に対しその長手方向の外側に向かう張力をかけられるものであれば、どのような構成であってもよい。
【0041】
捻じれ部20の枠部10への取り付けの別の態様としては、図9に示すように、捻じれ部20に連結した固定部65が、捻じれ部20の長手方向において一様に貫通する貫通部61内において、移動不能および回転不能に固定される。
【0042】
なお、捻じれ部20は、一端側が上記張力部60に取り付けられ、他端側が上記取り付けの別の態様により固定されるものであってもよい。
【0043】
貫通部61の外側および内側の開口の両方または一方には、開口を塞ぐ蓋部70を備えるものであってもよい。本実施形態では、図1および図6図9に示すように、蓋部70が、左枠材15および右枠材17の第2貫通部61bに嵌め込まれて、溝部67aを含む第2貫通部61bの開口を塞いでいる。蓋部70の外側の面は、左枠材15および右枠材17の側面と面一となっている。蓋部70は、枠部10と同一の素材で形成されている。
【0044】
なお、貫通部61の開口のうち内側の開口、すなわち第1貫通部61aの開口にも、開口を塞ぐ蓋部70を備えてもよい。この場合、蓋部70には、捻じれ部20を通すための貫通孔や溝などが設けられる。
【0045】
蓋部70を備えることにより、貫通部61を隠すことができ、工芸品の審美性や意匠性を高めることができる。
【0046】
工芸品は、本実施形態では、図1および図2に示すように、枠部10の枠内に間隔をあけて張り渡される複数の捻じれ部20のうち第1捻じれ部30により、枠部10の枠内の中心に模様として前後方向に直交する円Cを表現するものとなっている。具体的には、捻じれ部20の幅の中央において長手方向に延びる仮想の線を中央線とすると、中央線が表示しようとする円Cと交差する位置には、複数の第1捻じれ部30が、枠部10の枠内で、上下方向に間隔をあけて左右方向に張り渡されている。各第1捻じれ部30は、中央線において、円Cと交差する位置、すなわち円Cの輪郭(線)に、基本幅部33と遷移部35との境界が位置するように、幅広部31、基本幅部33および遷移部35の長さが設定されている。各第1捻じれ部30の遷移部35および幅広部31は、表示しようとする円C内に位置し、基本幅部33は円C外に位置している。
【0047】
捻じれ部20の中央線が表示しようとする円Cと交差しない位置、言い換えれば表示しようとする円Cの外側(上方および下方)には、複数の第2捻じれ部40が、枠部10の枠内で上下方向において間隔をあけて左右方向に張り渡されている。
【0048】
表示しようとする円Cに中央線が交差する捻じれ部20(第1捻じれ部30)または円Cの付近に張り渡される捻じれ部20(第2捻じれ部40)の間隔は、それ以外において張り渡される捻じれ部20(第2捻じれ部40)の間隔より、間隔が狭くなっている。
【0049】
捻じれ部20は、その中央線が、表現しようとする対象の輪郭に点で接する場合と線で接する場合がある。この場合、第1捻じれ部30と第2捻じれ部40を適宜使い分ける。例えば、点で接する場合には、第2捻じれ部40を張り渡し(架け渡し)、線で接する場合には、第1捻じれ部30を張り渡す(架け渡す)ことができる。
【0050】
なお、捻じれ部20による対象の表現において、対象の外側に架け渡される第2捻じれ部40を、第1捻じれ部30としてもよい。
【0051】
捻じれ部20により、枠部10の枠内に文字,記号および模様の少なくとも1つを表現する場合の他の例としては、枠部10の枠内に張り渡される第1捻じれ部30もしくは第2捻じれ部40またはこれらの組み合わせのうち表現しようとする対象にその中央線が交差するものの両面または片面を、その長手方向において、光沢、色彩および模様の少なくとも1つが変化するものとすることができる。この場合、表現しようとする対象に交差する捻じれ部20は、その中央線が表現しようとする対象(表現しようとする対象の輪郭)と交差する位置に、光沢、色彩および模様の1つが変化する境界または遷移する部分が位置する。そして、複数の捻じれ部20は、全て第2捻じれ部40とし、表現しようとする対象に中央線が交差する各第2捻じれ部40は、表現しようとする対象の外側に位置する部分の両面をある1の色とし、表現しようとする対象の内側に位置する部分の両面をある1の色とは別の色とする。また、表現しようとする対象に中央線が交差しない各第2捻じれ部40はその両面を上記ある1の色とする。このような構成でも、表現しようとする対象を枠部10の枠内において捻じれ部20により表現することができる。
【0052】
また、捻じれ部20により、枠部10の枠内に文字,記号および模様の少なくとも1つを表現する場合の他の例としては、枠部10の枠内に張り渡される第1捻じれ部30もしくは第2捻じれ部40またはこれらの組み合わせのうち中央線が表現しようとする対象に交差するものを、長手方向において捻じれのピッチが変わるものとすることができる。この場合、表現しようとする対象に中央線が交差する捻じれ部20は、表現しようとする対象と中央線が交差する位置に、ピッチが変化する境界または遷移する部分が位置する。そして、表現しようとする対象に中央線が交差する捻じれ部20は、表現しようとする対象の内外でピッチが異なる。
【0053】
次に、第2実施形態の工芸品について、図10図12に基づいて説明する。第2実施形態の工芸品は、複数の枠部10が回転可能に連結されている。
【0054】
第2実施形態の工芸品は、外側体80と、内側体90とを備えている。外側体80および内側体90は、それぞれ枠部10と、捻じれ部20とを備えている。外側体80および内側体90の枠部10の構成は、第1実施形態の枠部10の構成と同じである。外側体80の枠部10の内周縁と内側体90の枠部10の外周縁は、ほぼ一致しており、内側体90の枠部10は、外側体80の枠部10の枠内に収まる大きさとなっている。外側体80の枠部10の上枠材11および下枠材13には、左右方向の中央において上下に貫通する横断面が円形の貫通孔81が設けられている。また、内側体90の枠部10の上枠材11の上面のうち左右方向の中央には、上方に延びる円柱状のシャフト91が設けられており、外側体80の枠部10の上枠材11の貫通孔81に通されている。同様に、内側体90の枠部10の下枠材13の下面のうち左右方向の中央には、下方に延びる円柱状のシャフト91が設けられており、外側体80の枠部10の下枠材13の貫通孔81に通されている。シャフト91の径は、貫通孔81の径とほぼ同じ大きさとなっている。このような構成により、外側体80および内側体90の枠部10は、上下方向を軸として相対的に回転可能となっている。
【0055】
なお、枠部10を複数備える場合、回転可能に枠部10同士を連結する方法はどのようなものであってもよく、例えば、複数の枠部10がヒンジ等により開閉するように連結するものであってもよい。
【0056】
外側体80および内側体90のそれぞれの枠部10の枠内には、第1実施形態と同様に、第1捻じれ部30および第2捻じれ部40からなる複数の捻じれ部20が、上下方向において間隔をあけて、左右方向に張り渡されている。また、外側体80および内側体90の捻じれ部20は、上下方向において間隔をあけて交互に張り渡されている。また、外側体80および内側体90の各捻じれ部20は、第1実施形態と同様に、その両端が張力部60を介して枠部10に取り付けられている。また、外側体80および内側体90のそれぞれの第2貫通部61bには、第2貫通部61bの開口を塞ぐように蓋部70が嵌め込まれている。
【0057】
また、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、外側体80および内側体90において、第1捻じれ部30によりそれぞれの枠部10の枠内の中心に模様として、前後方向に直交する円Cを表現している。
【0058】
外側体80および内側体90のそれぞれの枠部10の枠内において、捻じれ部20の中央線が表示しようとする円Cと交差する位置には、複数の第1捻じれ部30が上下方向に間隔をあけて左右方向に張り渡されている。外側体80および内側体90の各第1捻じれ部30は、中央線が表現しようとする円Cと交差する位置、すなわち円Cの輪郭(線)に、左右の基本幅部33と遷移部35との境界が位置するように、幅広部31、基本幅部33および遷移部35の長さが設定されている。そして、外側体80および内側体90の各第1捻じれ部30の遷移部35および幅広部31は、表示しようとする円C内に位置し、基本幅部33は円C外に位置している。
【0059】
また、外側体80および内側体90のそれぞれの枠部10の枠内において、捻じれ部20の中央線が表示しようとする円Cと交差しない位置、言い換えれば表示しようとする円Cの外側(上方および下方)には、複数の第2捻じれ部40が上下方向に間隔をあけて張り渡されている。
【0060】
表示しようとする円Cに交差するまたは円Cの付近に張り渡されている外側体80および内側体90のそれぞれの捻じれ部20(第1捻じれ部30および第2捻じれ部40)の間隔は、それ以外に張り渡される捻じれ部20(第2捻じれ部40)の間隔より、間隔が狭くなっている。その結果、表示しようとする円Cに交差するまたは円Cの付近に張り渡されている外側体80の捻じれ部20と内側体90の捻じれ部20との間隔も、それ以外において張り渡される外側体80の捻じれ部20と内側体90の捻じれ部20との間隔より、狭くなっている。
【0061】
なお、第2実施形態の工芸品は、外側体80および内側体90の捻じれ部20が、交互に架け渡されていない区間があるものであってもよい。
【0062】
第2実施形態の工芸品は、図10図12に示すように、外側体80の枠部10と内側体90の枠部10とのなす角度、より具体的には外側体80の枠部10の上枠材11(下枠材13)と内側体90の枠部10の上枠材11(下枠材13)とのなす角度により、工芸品の見え方が変化する。さらに、第2実施形態の工芸品は、その回転軸周りにおける見る方向によっても、見え方が変化する。また、第2実施形態の工芸品は、図10および図11に示すように、外側体80と内側体90とのなす角度が小さくなると、表現しようとする模様としての円Cがよりはっきりと見えるようになる。
【0063】
なお、外側体80および内側体90のなす角度は、一方の枠部10が、他方の枠部10に張り渡される捻じれ部20より回転が規制されるため、0°および180°にはならない。
【0064】
工芸品の製造方法の一態様としては、上記のように、第1捻じれ部30および第2捻じれ部40のもととなる帯状の部材37,41を捻じって捻じれ部20を複数形成し、次いで、各捻じれ部20を、上記のように枠部10の枠内に張り渡す(架け渡す)。
【0065】
上記第1実施形態および第2実施形態の工芸品は、枠部10に取り付けられる紐等により壁に掛けたり、枠部10に取り付けられる土台により卓上等に置いたりして使用する。
【0066】
上記工芸品およびその製造方法によると、枠部10の枠内に複数の捻じれ部20を架け渡すことにより、従来にない斬新で、審美性に優れ、意匠性の高い工芸品を提供することができる。
【0067】
また、工芸品は、複数の捻じれ部20の少なくとも1つを、長手方向において幅が変わるものとすることにより、より一層斬新で、審美性に優れ、意匠性が高いものとなる。
【0068】
また、工芸品は、捻じれ部20に、長手方向において捻じれのピッチが異なるものを含むことにより、より一層斬新で、審美性に優れ、意匠性が高いものとなる。
【0069】
また、工芸品は、捻じれ部20の両面または片面の全体または一部に光沢、色彩および模様の少なくとも1つを有するものとすることにより、捻じれ部20の捻じれと、光沢、色彩および模様の少なくとも1つとが相まって、より一層斬新で、審美性に優れ、意匠性の高いものとなる。
【0070】
また、工芸品は、捻じれ部20を、長手方向において、光沢、色彩および模様の少なくとも1つが変わるものとすることにより、捻じれ部20の捻じれと、光沢、色彩および模様の少なくとも1つを有することと、それが長手方向において変わることとが相まって、より一層斬新で、審美性に優れ、意匠性の高いものとなる。
【0071】
また、工芸品は、複数の捻じれ部20の全部または一部により、文字,記号および模様の少なくとも1つを表現することにより、さらに異なった美感や見た目の面白さを観者に提供することができるので、より一層斬新で、審美性に優れ、意匠性の高いものとなる。
【0072】
また、工芸品は、間隔をあけて枠内に架け渡されている複数の捻じれ部20により、文字,記号および模様の少なくとも1つを表現する場合において、表現する対象に交差するまたは表現する対象の付近に架け渡される捻じれ部20を、それ以外に架け渡されている捻じれ部20より、間隔を細かくすることにより、その対象をより一層はっきりと表現することができる。
【0073】
また、工芸品は、捻じれ部20に張力を付与する張力部60を備えることにより、経年劣化による捻じれ部20のたるみを防止し、捻じれ部20を枠部10内に張り渡し続けることができる。
【0074】
また、工芸品は、回転規制部67を備えることにより、固定部65およびこれに固定される捻じれ部20がその長手方向周りにおいて回転が規制されるので、捻じれ部20の捻じれが強まったり弱まったりすることがなく、捻じれ部20の捻じれのピッチを初期の状態に保ち続けることができる。
【0075】
また、工芸品は、複数の枠部10を回転可能に連結し、それぞれの枠部10に捻じれ部20を架け渡すことにより、枠部10同士のなす角度および観者の見る角度により見え方が異り、さらに異なった美感や見た目の面白さを観者に提供することができるので、より一層斬新で、審美性に優れ、意匠性の高いものとなる。
【0076】
また、工芸品の製造方法は、複数の帯状の部材に長手方向において幅が変わるものが含まれる場合には、これを捻じることにより、帯状の部材の幅に応じて捻じれのピッチが変わるので、捻じれのピッチが長手方向において変わる捻じれ部20を有する工芸品を製造することができる。
【符号の説明】
【0077】
10 枠部
11 上枠材
13 下枠材
15 左枠材
17 右枠材
20 捻じれ部
30 第1捻じれ部
31 幅広部
33 基本幅部
35 遷移部
37 帯状の部材
40 第2捻じれ部
41 帯状の部材
50 和紙
51 光沢層
60 張力部
61 貫通部
61a 第1貫通部
61b 第2貫通部
63 弾性体
65 固定部
65a 貫通孔
67 回転規制部
67a 溝部
67b 突出部
70 蓋部
80 外側体
81 貫通孔
90 内側体
91 シャフト
C 円
図1
図2
図3
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図10
図11
図12