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特許7349715流量調整機構、締付トルク発生機構、油圧式パルスレンチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】流量調整機構、締付トルク発生機構、油圧式パルスレンチ
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/02 20060101AFI20230915BHJP
【FI】
B25B21/02 K
B25B21/02 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019163059
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2021041467
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000236698
【氏名又は名称】不二空機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】三藤 亮
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健次
(72)【発明者】
【氏名】蔭山 真一
(72)【発明者】
【氏名】ダミアン コステ
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-066946(JP,A)
【文献】特開2011-094806(JP,A)
【文献】特開2019-042919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B21/00-23/18
B25F1/00-5/02
F16K3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に作動油が充填されるオイルシリンダと、
オイルシリンダに対して相対回転可能に挿入される主軸と、
主軸に取り付けられるブレードとを備え、
オイルシリンダを主軸に対して相対回転させ、ブレードと、オイルシリンダの内面に設けられた隔壁とによってオイルシリンダ内に高圧室と低圧室とを形成することで、主軸に対して打撃トルクを与える締付トルク発生機構において、
高圧室と低圧室とを連通するバイパス路の流量調整に、隔壁に挿入された、バイパス路と連通する連通孔が形成されたライナーと、連通孔を横切るようにしてライナー内に挿入された軸断面円形の調節部材とを備え、調節部材を軸方向にスライドさせることで連通孔の流路面積を変える流量調整機構を用いており、
ライナーと隔壁調節部材とにそれぞれ切欠が設けられており、
ライナーの切欠と隔壁の切欠と調節部材の切欠とに跨って、ライナーと隔壁調節部材との相対的な回転を規制する回り止め材が配置されており、
オイルシリンダが、シリンダ本体とエンドプレートとを備え、
回り止め材の端部を隔壁の切欠から突出させ、その突出させた端部をエンドプレートに差し込むことで、回り止め材が、シリンダ本体とエンドプレートとに跨っている、締付トルク発生機構。
【請求項2】
調節部材のスライド方向と回り止め材の軸方向とが平行である、請求項1記載の締付トルク発生機構
【請求項3】
ライナーの切欠と調節部材の切欠と隔壁の切欠とがそれぞれ調節部材の軸方向に延びており、
ライナーの切欠と調節部材の切欠と隔壁の切欠とを重ね合わせることで形成される収容孔の軸断面が円形であり、収容孔に挿入される回り止め材の軸断面が円形とされている、請求項1または2記載の締付トルク発生機構
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の締付トルク発生機構を備えた油圧式パルスレンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弁をスライドさせることで流路の面積を調整する流量調整機構と、この流量調整機構を用いた締付トルク発生機構と、この締付トルク発生機構を用いた油圧式パルスレンチに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図5には、締付トルク発生機構を備えた油圧式パルスレンチが開示されている。締付トルク発生機構は、内部に作動油が充填されたオイルシリンダと、オイルシリンダ内に相対回転可能に挿入された主軸と、主軸に装着された一対の羽根とによって構成されている。そして、オイルシリンダを主軸に対して相対回転させ、羽根と、オイルシリンダの内面に設けられたシール部とによってオイルシリンダ内に高圧室と低圧室とを形成することで、主軸に対して間欠的な締付トルクを与える仕組みとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-117650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、締付トルクの大きさは、高圧室の圧力の大きさによって変化する。具体的には、高圧室の圧力が高いと締付トルクは大きくなり、高圧室の圧力が低いと締付トルクは小さくなる。そこで、高圧室の圧力を調整するため、シール部には、作動油を高圧室から低圧室に流すためのバイパス路と、高圧室から低圧室への作動油の流量を調節するための流量調整機構が設けられている。流量調整機構は、バイパス路を横切るように穿設されたバルブ軸挿入孔と、このバルブ軸挿入孔に挿入されたバルブ軸とを備えており、バルブ軸を軸方向にスライドさせることで、バイパス路と、バルブ軸に設けられた凹溝との位置(重なり合う量)を調整し、バイパス路の流路面積を変えることができるようになっている。
【0005】
しかし、上記構成の流量調整機構では、流量の微調整が困難な場合があった。具体的に説明すると、バルブ軸が軸周りに回転すると、それまでバイパス路に面していた部分とは異なる部分がバイパス路と面することになり、バルブ軸の加工精度によっては、バルブ軸を軸方向にスライドさせなくても、軸周りに回転させただけで流路面積が変わることがあった。
【0006】
そこで本発明は、流量の調整を高精度に行える流量調整機構の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の流量調整機構は、流路2a(21c1、25a)が形成された弁体2(21c、25)と、流路2a(21c1、25a)を横切るようにして弁体2(21c、25)内に挿入された軸断面円形の弁3(26)とを備え、弁3(26)を軸方向にスライドさせることで流路2a(21c1、25a)の流路面積を変える流量調整機構1であって、弁体2(21c、25)と弁3(26)とにそれぞれ切欠2c、3b(21c3、25b、26b)が設けられており、弁体2(21c、25)の切欠2c(21c3、25b)と弁3(26)の切欠3b(26b)とに跨って、弁体2(21c、25)と弁3(26)との相対的な回転を規制する回り止め材4が配置されていることを特徴としている。
【0008】
上記流量調整機構においては、弁3(26)のスライド方向と回り止め材4の軸方向とが平行であることが好ましい。
【0009】
また、弁体2(21c、25)の切欠2c(21c3)と弁3(26)の切欠3b(26b)とがそれぞれ弁3(26)の軸方向に延びており、弁体2(21c、25)の切欠2c(21c3、25b)の軸断面と弁3(26)の切欠3b(26b)の軸断面とがそれぞれ略半円形とされ、弁体2(21c、25)の切欠2c(21c3、25b)と弁3(26)の切欠3b(26b)とを重ね合わせることで形成される収容孔5の軸断面が円形であり、収容孔5に挿入される回り止め材4の軸断面が円形とされていることが好ましい。
【0010】
さらに、弁体が、弁(26)を挿入するためのライナー25と、ライナー25を挿入するための本体(隔壁21c)とを備え、ライナー25と本体(隔壁21c)とにそれぞれ切欠21c3、25bが設けられていることが好ましい。
【0011】
本発明の締付トルク発生機構は、内部に作動油が充填されるオイルシリンダ21と、オイルシリンダ21に対して相対回転可能に挿入される主軸22と、主軸22に取り付けられるブレード23とを備え、オイルシリンダ21を主軸22に対して相対回転させ、ブレード23と、オイルシリンダ21の内面に設けられた隔壁21cとによってオイルシリンダ21内に高圧室HRと低圧室LRとを形成することで、主軸22に対して打撃トルクを与える締付トルク発生機構20において、高圧室HRと低圧室LRとを連通するバイパス路21c1(25a)の流量調整に、上記いずれかの流量調整機構1を用いていることを特徴としている。オイルシリンダ21が、シリンダ本体21aとエンドプレート21bとを備え、回り止め材4が、シリンダ本体21aとエンドプレート21bとに跨っていてもよい。
【0012】
また、本発明の油圧式パルスレンチは、上記締付トルク発生機構20を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
この発明の流量調整機構は、弁体と弁とにそれぞれ切欠が設けられており、弁体の切欠と弁の切欠とに跨って、弁体と弁との相対的な回転を規制する回り止め材が配置されていることから、弁の回転による流路の流路面積の変化を抑制することができ、流量の調整を高精度に行うことができる。
【0014】
上記流量調整機構において、弁のスライド方向と回り止め材の軸方向とが平行である場合、回り止め材が弁のスライドを邪魔することがなく、弁のスムーズなスライドが可能となる。
【0015】
弁体の切欠と弁の切欠とがそれぞれ弁の軸方向に延びており、弁体の切欠の軸断面と弁の切欠の軸断面とがそれぞれ略半円形とされ、弁体の切欠と弁の切欠とを重ね合わせることで形成される収容孔の軸断面が円形であり、収容孔に挿入される回り止め材の軸断面が円形とされている場合、切欠や回り止め材の製造が簡単である。
【0016】
弁体が、弁を挿入するためのライナーと、ライナーを挿入するための本体とを備え、ライナーと本体とにそれぞれ切欠が設けられている場合、弁とライナーと本体のそれぞれの相対的な回転を規制することができる。
【0017】
この発明の締付トルク発生装置と油圧パルスレンチとは、上記いずれかの流量調整機構を用いているため、弁の回転によるバイパス路の流路面積の変化を抑制することができ、締付トルクの調整を高精度に行うことができる。オイルシリンダが、シリンダ本体とエンドプレートとを備え、回り止め材が、シリンダ本体とエンドプレートとに跨っている場合、回り止め材を、シリンダ本体とエンドプレートとの位置決めや固定部材としても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る流量調整機構を示す概略図であって、図1Aが側断面、図1Bが平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る締付トルク発生機構を備えた油圧式パルスレンチを示す断面図である。
図3】主軸の軸方向と直交する方向での締付トルク発生機構の断面図である。
図4】高圧室と低圧室とを形成した状態を示す締付トルク発生機構の断面図である。
図5図5Aはオイルシリンダと調節部材を示す断面分解斜視図、図5Bは、図5Aを組み立てた状態を示す断面斜視図である。
図6】ライナーを備えた締付トルク発生機構の断面図である。
図7図7Aはオイルシリンダとライナーと調節部材を示す断面分解斜視図、図7Bは、図7Aを組み立てた状態を示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、この発明の流量調整機構1の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示すように、流量調整機構1は、弁体2と弁3とを備えている。弁体2には、弁体2を貫通する流路2aが設けられている。また、この流路2aを横切るようにして挿入孔2bが設けられている。弁3は、軸断面が円形の略円柱状であって、軸方向の略中央に凹溝3aが設けられている。凹溝3aが設けられている部分を細部とし、凹溝3aが設けられていない部分を太部とした場合、太部の外径は、挿入孔2bの内径とほぼ等しい。そして、弁3は挿入孔2bにスライド自在に挿入されている。
【0020】
この流量調整機構1は、弁3を弁体2に対してスライドさせることで流路2aの流路面積を変化させることができる。具体的には、弁3を軸方向にスライドさせ、流路2aと凹溝3aとの重なり合う量(長さ)を増減させることで流路面積を増減させる。なお、弁3をスライドさせると、弁3が軸周りに回転することがある。そこで、この発明の流量調整機構1では、弁体2と弁3との相対的な回転を規制するための回り止め手段を備えている。回り止め手段は、弁体2と弁3とにそれぞれ設けられた切欠2c、3bと、弁体2の切欠2cと弁3の切欠3bとに跨って配置される回り止め材4とによって構成されている。
【0021】
図1Aに示すように、弁体2の切欠2cと弁3の切欠3bとは、それぞれ弁3の軸方向に延びている。また、弁体2の切欠2cの軸断面と弁3の切欠3bの軸断面とは、それぞれ略半円形とされている。そして、弁体2の切欠2cと弁3の切欠3bとを重ね合わせる(軸周りの方向を合わせる)ことで、軸断面が円形の収容孔5が形成されている(図1B参照)。収容孔5の全体形状は円柱状である。回り止め材4の軸断面は円形であって全体形状は円柱状である。そして、この回り止め材4が収容孔5に挿入されている。
【0022】
上記構成の流量調整機構1は回り止め手段を備えているため、弁3の回転による流路2aの流路面積の変化を抑制することができ、流量の調整を高精度に行うことができる。また、弁体2の切欠2cに回り止め材4を位置させていれば、回り止め材4の移動が制限されることから、流量調整機構1を組み立てたり、分解する際に回り止め材4を固定する必要が無く、作業を簡単に行うことができる。また、弁3のスライド方向と回り止め材4の軸方向とが平行になるため、回り止め材4によって弁3のスライドが阻害されるのを防止することができる。さらに、挿入孔2b、弁3、回り止め材4、収容孔5の各軸断面が全て円形であるため、製造が容易となる。なお、回り止め材4や収容孔5の断面形状については必ずしも円形にする必要はなく、三角形、矩形、多角形や楕円を採用することもできる。
【0023】
次に、この発明の流量調整機構1を用いた締付トルク発生機構20および油圧式パルスレンチ10について詳細に説明する。図2は、油圧式パルスレンチ10の断面図を示している。この油圧式パルスレンチ10は、把持部11と、この把持部11の上端において前後方向に延びる本体ケーシング12とを備えている。把持部11には、給気口13と、操作レバー14とが設けられている。また、本体ケーシング12の後部側には、例えばベーン式のエアモータ15が収納され、エアモータ15の前部側には、締付トルク発生機構20が収納されている。
【0024】
締付トルク発生機構20は、内部に作動油が充填されるオイルシリンダ21と、オイルシリンダ21に対して相対回転可能に挿入される主軸22と、主軸22に取り付けられるブレード23とを備えている。
【0025】
オイルシリンダ21は、一方端部が塞がれた有底筒状のシリンダ本体21aと、シリンダ本体21aの他方端部を塞ぐエンドプレート21bとを備えている。なお、一般的には、オイルシリンダは別体のシリンダケースによって覆われているが、このオイルシリンダ21は、シリンダケースの機能をも備えている。換言すれば、シリンダケース一体型のオイルシリンダとされている。エンドプレート21bは、エアモータ15のロータ15aと連結されており、オイルシリンダ21がエアモータ15によって回転駆動されるようになっている。このオイルシリンダ21の内部には作動油が満たされている。
【0026】
主軸22は、シリンダ本体21aの底部と、エンドプレート21bとによって相対回転自在に保持されている。主軸22は、その先端側がオイルシリンダ21から突出しつつ、さらに本体ケーシング12からも突出している。突出する先端部には、ボルトやナットなどを回すためのソケット(図示せず)等を取り付けるための取付部22aが形成されている。一方、オイルシリンダ21内に位置する基端側には、ブレード23を収容するための溝孔22bが形成されている(図3参照)。また、溝孔22bに挿入されたブレード23を付勢するバネ24を装着するために、バネ装着孔22cが形成されている。
【0027】
ブレード23は2枚設けられており、主軸22の周方向で互いに180度位相を異ならせるようにして溝孔22bに挿入されている。そして、この一対のブレード23、23は、バネ24によって主軸22から突出する方向に付勢されており、オイルシリンダ21の内面に常に摺接しつつ、オイルシリンダ21の内面形状に合わせて出退自在とされている。
【0028】
図3は、主軸22の軸方向に直交する方向での締付トルク発生機構20の断面図である。図に示すように、シリンダ本体21aの内面形状は、中央がくびれた繭状若しくは略ひょうたん状とされている。くびれた部分は、シリンダ本体21aの中心(主軸22の中心)に向かって突出する一対の隔壁21c、21cによって形成されている。また、隔壁21cから周方向に約90度位相を進ませた位置に、シリンダ本体21aの中心(主軸22の中心)に向かって突出するシール突起21dが設けられている。主軸22についても、溝孔22bから周方向に約90度位相を進ませた位置に、シリンダ本体21aの内面(径外方向)に向かって突出する主軸側シール突起22dが設けられている。そして、隔壁21cと主軸側シール突起22dとが油密状態で密接し、シール突起21dとブレード23の先端面とが油密状態で密接することで、オイルシリンダ21内が周方向において4つの部屋に区画されるようになっている。なお、ブレード23の先端面が摺接する最内面F1は、シリンダ本体21aの内面側に環状に設けられた例えばリブ21eの先端面によって構成されている。この最内面F1は、複数(3つ)の円を、シール突起21d、11d同士を結ぶ仮想線と平行に僅かにずらしながら配置することで形成された略小判状(略トラック状)であって、隔壁21c及びシール突起21dに内接している。
【0029】
上記構成の締付トルク発生機構20は、エアモータ15によってオイルシリンダ21が回転駆動されると、オイルシリンダ21に充填されている作動油(図示せず)を介してブレード23にオイルシリンダ21の回転力が伝わり、主軸22が回転する。なお、この回転を利用してボルトやナットを締め付ける。ボルトやナットなどがある程度締め付けられて締付負荷が大となると、主軸22の回転が鈍る。一方で、オイルシリンダ21は回転し続けるため、主軸22とオイルシリンダ21との相対回転位置が変化していく。その過程において、隔壁21cが主軸側シール突起22dに密接するとともに、ブレード23の先端面がシール突起21dに密接する。すなわち、オイルシリンダ21内が回転方向において4つの部屋に区画される特定位置に至る(図4)。そして、部屋内に封じ込められた作動油が、相対的に近づいてくるブレード23によって圧縮される(高圧室HRが形成される)。一方、ブレード23を挟んで高圧室HRの反対側の部屋では作動油は圧縮されず、この部屋は低圧室LRとなる。オイルシリンダ21は高速で回転していることから、この高圧室HRと低圧室LRとが短時間に連続して形成される。その結果、ブレード23を介して主軸22に間欠的な締付トルク(パルス状の打撃トルク)が付与される。
【0030】
ところで、上記締付トルク発生機構20は、高圧室HRと低圧室LRとを連通するバイパス路21c1を備えている。そして、このバイパス路21c1の流路面積を可変とする流量調整機構1を備えている。
【0031】
バイパス路21c1は、オイルシリンダ21の隔壁21cを貫通するようにして設けられている。隔壁21cには、バイパス路21c1を横切るようにして挿入孔21c2が設けられている。挿入孔21c2には、調節部材26が挿入されている。調節部材26は、その軸断面が円形であって、全体形状は略円柱形である。また、軸方向の略中央には軸周りに連続する環状の凹溝26aが設けられている。そして、この調節部材26を挿入孔21c2で軸方向にスライドさせることで、バイパス路21c1と凹溝26aとの重なり合う量(長さ)が変化して、バイパス路21c1の流路面積が変化する。すなわち、流量調整機構1として機能するのである。従って、この流量調整機構1における流路はバイパス路21c1であり、弁体は隔壁21cであり、弁は調節部材26である。
【0032】
なお、この流量調整機構1では、調節部材26をスライドさせる方法として調節ネジ27を用いている。具体的には、調節部材26の軸方向端部に設けられた雌ネジに調節ネジ27を螺合し、調節ネジ27を回すことで調節部材26の軸方向位置を変えられる(スライドさせられる)ようにしている。
【0033】
上記流量調整機構1は、さらに隔壁21cと調節部材26との相対的な回転を規制する回り止め手段を備えている。この回り止め手段は、隔壁21cと調節部材26とにそれぞれ設けられた切欠21c3、26bと、隔壁21cの切欠21c3と調節部材26の切欠26bとに跨って配置される回り止め材4とによって構成されている。
【0034】
隔壁21cの切欠21c3と調節部材26の切欠26bとは、それぞれ調節部材26の軸方向に延びている。また、隔壁21cの切欠21c3の軸断面と調節部材26の切欠26bの軸断面とは、それぞれ略半円形とされている。そして、隔壁21cの切欠21c3と調節部材26の切欠26bとを重ね合わせることで、軸断面が円形の収容孔5が形成されている。収容孔5の全体形状は円柱状である。回り止め材4の軸断面は円形であって全体形状は円柱状である。そして、この回り止め材4が収容孔5に挿入されている。このような回り止め手段を設けることにより、調節部材26の回転が規制され、バイパス路21c1を流れる作動油の流量を高精度に調整することができる。
【0035】
なお、調節部材26には、凹溝26aとは別に、バイパス路21c1と連通する側孔26cと、側孔26cと連通する軸孔26dとが設けられている(図5A参照)。これら側孔26cと軸孔26dは、リリーフバルブ30を介して下流に位置するピストン31に作動油の圧力を作用させ、ピストン31の背部に配置したロッド32によってパイロットバルブ33を操作し、エアモータ15へのエア供給を遮断する、所謂シャットオフバルブ機構Sへ作動油を供給するための通路である(図2参照)。また、図5Bに示すように、回り止め材4は、シリンダ本体21aとエンドプレート21bとに跨っている。すなわち、回り止め材4の端部をシリンダ本体21aから突出させ、その突出させた端部をエンドプレート21bの差込孔21b1に差し込んでいる。これにより、回り止め材4をシリンダ本体21aとエンドプレート21bとの位置決め(角度決め)や固定部材としても用いることができる。
【0036】
図6及び図7は、隔壁21cと調節部材26との間にライナー25を設けた状態を示している。このライナー25は、隔壁21cに対して着脱可能とされた別部材である。ライナー25は略円筒状であって、内部空間は、調節部材26をスライド自在に挿入するための挿入孔25cとされている。また、ライナー25には、隔壁21cのバイパス路21c1よりも小とされ、バイパス路21c1と連通する連通孔25aが設けられている。このようなライナー25を用いると、ライナー25の連通孔25aさえ精度良く形成すれば、バイパス路21c1を精度良く形成する必要が無くなり、オイルシリンダ21の製造が容易になるといった利点が生じる。
【0037】
ライナー25を設けた場合、流量調整機構1の弁体は、隔壁(本体)21cとライナー25とから構成される。流路は、バイパス路21c1と連通孔25aとから構成される。弁は、調節部材26である。調節部材26は、ライナー25の挿入孔25cにスライド自在に挿入されている。ライナー25は、隔壁21cの挿入孔21c2に挿入されている。切欠は、隔壁21cとライナー25と調節部材26とにそれぞれ跨っており、全体として円柱状の空間(収容孔)5を形成している。換言すれば、隔壁21cとライナー25と調節部材26とにそれぞれ切欠21c3、25b、26bが設けられており、これら切欠21c3、25b、26bを重ね合わせることで収容孔5が形成されるといえる。そして、この収容孔4に円柱状の回り止め材4が挿入されている。
【0038】
上記構成の流路調整機構1についても、調節部材26の回転による流路の流路面積の変化を抑制することができるため、流量の調整を高精度に行うことができる。
【0039】
以上に、この発明の具体的な実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施形態においては、シリンダケース一体型のオイルシリンダ21を用いていたが、シリンダケースとオイルシリンダとが別体とされていても良い。
【0040】
また、断面円形のライナー25を用いていたが、三角形、矩形、多角形や楕円など種々の断面形状のものを採用し得る。この場合、隔壁21cとライナー25との回転は規制されるため、回り止め材4はライナー25と調節部材26とに跨るように配置すればよい。すなわち、ライナー25が弁体となり、調節部材26が弁となる。
【0041】
調節部材26をスライドさせる方法としては、ネジによるものの他、流体圧(油圧等)によるもの、モータを利用したもの等、種々の公知のものを採用し得る。また、連通孔25aを孔ではなく溝で設けても良い。凹溝26aについても、溝ではなく調節部材26に孔を設けることで流路を確保するようにしても良い。また、回り止め材4を、シリンダ本体21aとエンドプレート21bとの位置決めとして利用していたが、他の専用の部材で位置決めを行ってもよいし、回り止め材4と他の専用の部材とで位置決めを行ってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 流量調整機構
2 弁体
2a 流路
2b 挿入孔
2c 切欠
3 弁
3a 凹溝
3b 切欠
4 回り止め材
5 収容孔
10 油圧式パルスレンチ
11 把持部
12 本体ケーシング
13 給気口
14 操作レバー
15 エアモータ
15a ロータ
20 締付トルク発生機構
21 オイルシリンダ
21a シリンダ本体
21b エンドプレート
21b1 差込孔
21c 隔壁(弁体)
21c1 バイパス路(流路)
21c2 挿入孔
21c3 切欠
21d シール突起
21e リブ
22 主軸
22a 取付部
22b 溝孔
22c バネ装着孔
22d 主軸側シール突起
23 ブレード
24 バネ
25 ライナー(弁体)
25a 連通孔(流路)
25b 切欠
25c 挿入孔
26 調節部材(弁)
26a 凹溝
26b 切欠
26c 側孔
26d 軸孔
27 調節ネジ
30 リリーフバルブ
31 ピストン
32 ロッド
33 パイロットバルブ
HR 高圧室
LR 低圧室
S シャットオフバルブ機構
F1 最内面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7