(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】基板情報提供システム及びサーバ装置
(51)【国際特許分類】
H05K 3/00 20060101AFI20230915BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20230915BHJP
G06F 30/30 20200101ALI20230915BHJP
G06Q 10/20 20230101ALI20230915BHJP
G06Q 30/06 20230101ALI20230915BHJP
【FI】
H05K3/00 P
H05K1/02 R
G06F30/30
G06Q10/20
G06Q30/06
(21)【出願番号】P 2019178988
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】591129508
【氏名又は名称】シライ電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大塚 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真也
(72)【発明者】
【氏名】白井 基治
【審査官】甲斐 哲雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-139347(JP,A)
【文献】特開2012-253199(JP,A)
【文献】特開2008-310573(JP,A)
【文献】特開2001-338168(JP,A)
【文献】特開2003-167930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/00
H05K 1/02
G06F 30/00-30/398
G06Q 10/00-99/00
G06F 16/00-16/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線基板に関する基板情報を、前記プリント配線基板を販売した顧客に提供する基板情報提供システムであって、
前記基板情報を管理するサーバ装置と、当該サーバ装置と通信回線を介して接続されるユーザ端末と、
前記プリント配線基板の種類を識別するための識別コード及び前
記基板情報が対応付けて格納された記憶部と、を有し、
前記ユーザ端末は
前記顧客用の端末であって、
前記識別コードを入力する入力部と、
前記基板情報を表示する表示部と、
を備え、
前記サーバ装置は、
前記入力部で入力された前記識別コードを入力し、入力した前記識別コードに対応する前記基板情報を前記記憶部から検索し、検索した前記基板情報を、前記ユーザ端末に出力することを特徴とする基板情報提供システム。
【請求項2】
前記基板情報は、シンボルマークが明記された前記プリント配線基板を表す画像情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の基板情報提供システム。
【請求項3】
前記画像情報は、前記シンボルマークが明記された前記プリント配線基板を撮影した実画像情報、前記プリント配線基板を撮影した実画像に前記シンボルマークの仮想画像を重畳した部分仮想画像情報、及び前記プリント配線基板の仮想画像と前記シンボルマークの仮想画像とを重畳した全仮想画像情報のうちのいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の基板情報提供システム。
【請求項4】
前記基板情報は、前記プリント配線基板に実装されている部品の型番、メーカー及び仕様を表す情報を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の基板情報提供システム。
【請求項5】
プリント配線基板に関する基板情報を、前記プリント配線基板を販売した顧客に提供する基板情報提供システム用のサーバ装置であって、
前記基板情報を管理し、前記顧客用のユーザ端末から
前記プリント配線基板の種類を識別するための識別コードが入力され、前記識別コードと前記プリント配線基板に関する基板情報とが対応付けられて格納された記憶部から、前記識別コードに対応する前記基板情報を検索し、検索した前記基板情報を前記ユーザ端末に出力することを特徴とするサーバ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板情報提供システム及びサーバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板には、半導体チップ、抵抗、及びコンデンサ等の電子部品を実装するための導電性パッドや、電子部品と電気的な接続をなすための配線パターンが形成されている。また、プリント配線基板には、実装される電子部品の位置、大きさ、極性の方向などを示す長方形、丸形の図形及び矢印、並びに電子部品の型番、メーカー、仕様を示すシンボルマークが形成されている。このシンボルマークは、シルクスクリーン印刷や、インクジェット印刷等により、基板に印刷されている。このようなシンボルマークを形成することにより、プリント基板への部品実装及び修理を容易に行うことを可能としている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、市場に出荷済の実装済プリント配線基板に不具合が生じたとしても、必ずしも修理が必要というわけではなく、むしろ修理の際等に、シンボルマークを活用する頻度は僅かである。とはいっても、修理を行う際にシンボルマークを必要とする場合もあるため、シンボルマークをプリント配線基板に印刷しておく必要がある。
また、プリント配線基板を参照すれば、印刷されたシンボルマークから、プリント配線基板に実装されている部品の種別や回路構造等を容易に推測することができるため、第三者による違法コピー等を容易にしている。
そこで、本発明は、上記従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、プリント配線基板の回路構造等が推測されることを抑制し、且つ修理の際等必要とするときには、必要な情報を容易に提供することの可能な基板情報提供システム及びサーバ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、プリント配線基板に関する基板情報を、前記プリント配線基板を販売した顧客に提供する基板情報提供システムであって、前記基板情報を管理するサーバ装置と、当該サーバ装置と通信回線を介して接続されるユーザ端末と、前記プリント配線基板の種類を識別するための識別コード及び前記基板情報が対応付けて格納された記憶部と、を有し、前記ユーザ端末は前記顧客用の端末であって、前記識別コードを入力する入力部と、前記基板情報を表示する表示部と、を備え、前記サーバ装置は、前記入力部で入力された前記識別コードを入力し、入力した前記識別コードに対応する前記基板情報を前記記憶部から検索し、検索した前記基板情報を、前記ユーザ端末に出力する基板情報提供システムが提供される。
【0006】
本発明の他の態様によれば、プリント配線基板に関する基板情報を、前記プリント配線基板を販売した顧客に提供する基板情報提供システム用のサーバ装置であって、前記基板情報を管理し、前記顧客用のユーザ端末から前記プリント配線基板の種類を識別するための識別コードが入力され、前記識別コードと前記プリント配線基板に関する基板情報とが対応付けられて格納された記憶部から、前記識別コードに対応する前記基板情報を検索し、検索した前記基板情報を前記ユーザ端末に出力するサーバ装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、プリント配線基板の回路構造等を推測されることを回避しつつ、必要とするときに、必要な情報を容易に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明を適用した基板情報提供システムの一例を示す構成図である。
【
図2】シンボルマークが重畳表示されたプリント配線基板の画像の一例である。
【
図3】システムへの登録時の、ユーザ端末での処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】システムへの登録時の、サーバ装置での処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】システムへの登録時の、管理者端末での処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】シンボル画像データ表示要求時の、ユーザ端末での処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】シンボル画像データ表示要求時の、サーバ装置での処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】課金管理時の、サーバ装置での処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】プリント配線基板の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
図1は、本発明を適用した基板情報提供システムの一例を示す概略構成図である。この基板情報提供システム1は、通常プリント配線基板に明記される、実装される電子部品の位置、大きさ、極性の方向などを示す長方形、丸形の図形及び矢印、並びに電子部品の型番、メーカー、仕様等を示すシンボルマークをプリント基板に明記せずに、これらシンボルマークを、仮想的にプリント基板に重畳表示するようにしたものである。
基板情報提供システム1は、
図1に示すように、サーバ装置2と、データベース(記憶部)3と、システム管理者用の管理者端末4と、ユーザ端末5と、を備え、管理者端末4及びユーザ端末5は、インターネット等の通信回線6を介してサーバ装置2と通信を行う。
【0011】
管理者端末4は、インターネットに接続可能なパーソナルコンピュータ等で構成され、要求等を入力するための入力部、通知された情報を表示するための表示部、入力部で入力された要求等をサーバ装置2に通知すると共に、サーバ装置2から通知される要求等に対する返答を表示部に表示する処理部と、を備える。
ユーザ端末5は、インターネットに接続可能なスマートホン又はパーソナルコンピュータ等で構成され、タッチスクリーンや操作ボタン等により要求を入力する入力部5a、通知された情報を表示するための表示部5b、入力部で入力された要求等をサーバ装置2に通知すると共に、サーバ装置2から通知される要求等に対する返答を表示部5bに表示する処理部と、を備える。
【0012】
サーバ装置2は、電子計算機等で構成され、管理者端末4又はユーザ端末5から通知される要求を入力し、要求の内容に応じてデータベース3に登録を行うと共に、データベース3から必要な情報を読み出し、要求に対する応答を要求元の端末に通知する処理部を備える。
データベース3は、顧客情報、顧客に提供するプリント基板に関する基板情報、また、顧客に提供する基板情報の管理に要する課金管理を行うための課金情報等が格納されている。
【0013】
顧客情報は、例えば、顧客名と、この顧客に与えたID番号と、顧客が設定したパスワードとが対応付けられている。
基板情報は、例えば、顧客名と、この顧客に販売したプリント配線基板の種類を特定する識別コードと、識別コードで特定されるプリント配線基板に関するデータとが対応付けられている。プリント配線基板に関するデータとしては、例えば、設計データ、CAD(Computer-Aided Design)データ、製造履歴データ、検査履歴データ、MSDS(Material Safety Data Sheet 製品安全データシート)、SPEC(specification)データ、パターンデータ、ソルダーレジストデータ等を含む。さらに、プリント配線基板に関するデータとしてシンボル画像データを含む。このシンボル画像データ(画像情報)は、通常プリント配線基板に明記される、実装される電子部品の位置、大きさ、極性の方向などを示す長方形、丸形の図形及び矢印、並びに電子部品の型番及びメーカー、仕様等を示すシンボルマークが明記されたプリント配線基板を、表示するためのデータである。シンボル画像データは、例えば3種類の中から選択可能に形成されている。一種目は、
図2(a)に示すように、シンボルマークが明記されたプリント配線基板を撮影した実画像を表示するための画像データ(実画像情報)である。二種目は、
図2(b)に示すように、シンボルマークが明記されていないプリント配線基板を撮影した実画像上に、CADデータから生成したバーチャルのシンボルマークを重畳した画像を表示するための画像データ(部分仮想画像情報)である。
図2(b)において、バーチャルのシンボルマークを表し、破線は実画像を表す。三種目は、
図2(c)に示すように、CADデータから生成した、シンボルデータが明記されたプリント配線基板のバーチャルの画像を表示するための画像データ(全仮想画像情報)である。
ユーザが、三種類の中からいずれかを指定することによって、
図2(a)~(c)のいずれかの表示形態の、シンボルマークが明記されたプリント配線基板の画像を、表示するようになっている。
【0014】
次に、ユーザが基板情報提供システム1にID登録を行う際の処理手順の一例を説明する。
ユーザが、ユーザ端末5を操作してID登録要求を行い、審査情報を入力すると、審査情報はサーバ装置2を介して管理者端末4に出力され、審査情報をもとにシステム管理者がID登録要求を行ったユーザを基板情報提供のサービス利用者として許可するかを判断する。そして、サービス利用者として許可すると判断したときには、サーバ装置2がユーザ端末5に対してIDを通知し、サーバ装置2は、顧客名と、ユーザ端末5から入力されたパスワードとIDとを対応付けてデータベース3に格納する。サービス利用者として許可しない場合には、データベース3への登録は行わない。
【0015】
図3~
図5は、ユーザが基板情報提供システム1に登録を行う場合の処理手順の一例を示すフローチャートであって、ユーザ端末5(
図3)と、サーバ装置2(
図4)と、管理者端末4(
図5)での処理手順を示す。
ユーザは、基板情報提供システム1からプリント配線基板に関する情報を取得するためには、まず、ID登録を行う。
具体的には、
図3に示すように、ユーザ端末5において、ID登録要求を行い(ステップS1)、続いて、サーバ装置2から審査情報の入力要求が行われると(ステップS2)、指定された審査情報を入力する。
【0016】
次いで、ステップS3に移行し、サーバ装置2から登録可能であることが通知されると、ステップS4に移行し、サーバ装置2からの要求に対する応答として入力されたパスワードをサーバ装置2に出力する。そして、サーバ装置2から登録完了通知が入力されると、IDの登録時の処理を終了する(ステップS5)
一方、ステップS3の処理で登録不可として通知されたときには、ステップS3からステップS6に移行し、登録不可であることを表示部5bに表示し、処理を終了する。
【0017】
サーバ装置2では、
図4に示すように、ユーザ端末5からID登録要求を受信すると(ステップS11)、登録要求を行ったユーザを登録するか否かを判断するための審査情報の入力要求をユーザ端末5に送信し、その応答として入力された審査情報を管理者端末4に送信する。
そして、ユーザ端末5に対する審査結果を受信し、登録許可が通知されたときには、ステップS13からステップS14に移行し、ユーザ端末5に対してIDを付与すると共に、パスワード入力要求を行う。次いで、ユーザ端末5からパスワードを入力すると、ユーザ端末5の顧客名と、ユーザ端末5に付与したIDと、入力したパスワードとを対応付けて顧客情報としてデータベース3に登録し、登録完了通知をユーザ端末5に通知する(ステップS15)。そして、処理を終了する。
【0018】
一方、ステップS13で登録が不許可であった場合には、ステップS16に移行し、表示部5bに登録不可であることを通知する。そして処理を終了する。
これによって、データベース3には、ID登録要求を行ったユーザ端末5の顧客名と、IDと、パスワードとが新たに登録される。
管理者端末4では、
図5に示すように、サーバ装置2からID登録要求を受信し(ステップS21)、続いて審査情報を入力して、ID登録要求を行った顧客について審査情報をもとに審査を行い、その結果をユーザ端末5に出力する(ステップS23)。
【0019】
次に、ユーザが基板情報提供システム1から基板情報の提供を受ける場合の処理手順の一例を説明する。
ユーザは、ユーザ端末5において、基板情報としてシンボル画像データの表示要求を行い、IDとパスワードとを入力すると、サーバ装置2では、顧客名とIDとパスワードとを照合し、一致するときにのみ、ユーザ端末5から入力された識別コードに対応するシンボルマークの表示情報をよみ出し、ユーザ端末5に出力する。ユーザ端末5ではシンボルマークの表示情報を表示に表示する。
【0020】
図6及び
図7は、ユーザが基板情報提供システム1から基板情報としてシンボルデータの提供を受ける場合の処理手順の一例を示すフローチャートであって、ユーザ端末5(
図6)及びサーバ装置2(
図7)での処理手順の一例を示す。
ユーザ端末5において、ユーザにより基板情報としてシンボル画像データの表示要求が行われると、シンボル画像データの表示要求が行われたことがサーバ装置2に通知され(ステップS31)、続いてユーザにより入力されたID及びパスワードがサーバ装置2に通知される(ステップS32)。続いて、サーバ装置2から識別コードの入力要求が通知されると(ステップS33)、ユーザにより入力された識別コードはサーバ装置2に出力される(ステップS34)。
【0021】
ここで、ユーザにより入力される識別コードは、ユーザがユーザ端末5において手入力してもよく、デジタルカメラで読み取ったり、専用のリーダで読み取ったりする等OCR(Optical Character Recognition 光学文字認識)技術を用いて読み取ってもよい。
次いで、ユーザ端末5は、識別コードに対応する基板情報としてシンボル画像データの表示情報をサーバ装置2から入力し、ユーザ端末5の表示部5bに表示する(ステップS35)。
【0022】
ユーザはユーザ端末5の表示部5bに表示された、
図2に示すようなシンボルマークがプリント配線基板に重畳表示された画像を参照することによって、プリント配線基板の回路構造等を容易に認識することができる。なお、シンボルマークがプリント配線基板に重畳表示された画像として、
図2(a)~(c)に示す、実画像情報からなる画像、部分仮想画像情報からなる画像、全仮想画像情報からなる画像の3種類の画像のうち、いずれを表示するかの選択は、例えば、シンボル画像データの表示要求を行うときに、画像の種類を指定してもよく、また、ユーザ端末5にいずれかの画像を表示した後、ユーザ端末5での操作により3種類の画像を切り替えるように構成してもよい。
【0023】
一方、ステップS33で、サーバ装置2から識別コードの入力要求が通知されない場合には、サービス利用者として登録されていないユーザであると判断されたことからそのまま処理を終了する。
図7は、ユーザ端末5からシンボル画像データの表示要求が行われたときの、サーバ装置2の処理手順の一例を示すフローチャートである。
サーバ装置2は、ユーザ端末5からシンボル画像データの表示要求を受信すると(ステップS41)、ユーザ端末5に対してIDとパスワードの入力要求を行い(ステップS42)、ユーザ端末5から入力されたID及びパスワードを、データベース3に格納されたIDの登録情報と照合し(ステップS43)、照合の結果、不一致である場合には(ステップS44)、ユーザ端末に対して照合結果が不一致であることを通知し(ステップS45)、処理を終了する。
【0024】
一方、照合の結果、一致する場合には、ユーザ端末5に対して識別コードの入力要求を行い(ステップS46)、その応答としてユーザ端末5から識別コードが入力されると(ステップS47)、データベース3に格納されている基板情報を参照し、シンボル画像データの表示要求を行ったユーザに対応付けて通知された識別コードが登録されているか照合を行う(ステップS48)。そして、照合の結果一致しなければ、照合結果が不一致であることを通知し(ステップS49)、処理を終了する。
【0025】
一方、シンボルデータの表示要求を行ったユーザに対応付けて識別コードが登録されていれば、ステップS50に移行し、データベース3に格納されている識別コードで特定される基板に関する基板情報を検索し、検索した各種情報をユーザ端末5に送信する。そして、処理を終了する。
なお、ここでは、基板情報としてシンボル画像データの表示要求を行う場合について説明しているが、パターンデータ、或いは設計データ等を表示する場合には、例えば、基板情報としてシンボル画像データの表示要求を行う代わりに、パターンデータ、設計データ、SPECデータ等、表示させたいデータの表示要求を行い、上記と同様の手順でユーザ端末5に表示させるようにしてもよい。
【0026】
次に、サーバ装置2で実行される課金管理の処理手順の一例を説明する。
サーバ装置2では、サービス利用者として登録されたユーザについて、サービス利用者として登録された日からの経過日数と、販売したプリント配線基板とを対応付けて記憶しておき、経過日数が予め設定した規定日数を経過する毎に課金を行うと共に、ユーザに対して課金通知を行う。
図8は、サーバ装置2で実行される課金管理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0027】
サーバ装置2では、例えばユーザ端末5からID登録要求が行われるタイミングで、要求元のユーザを特定する情報、例えばID及びパスワードと、この要求元のユーザに販売したプリント配線基板の識別コードとを対応付けてデータベース3に格納する。また、サーバ装置2では、ID登録を行った日からの経過日数のカウントを開始する(ステップS51)。
そして、ユーザからサービスの利用登録を解除することが通知されなければステップS52からステップS53に移行し、経過日数がしきい値を超えていなければ、ステップS52に戻る。経過日数がしきい値を超えていれば、ステップS54に移行し、課金することをユーザに通知すると共に、課金を行う等の課金処理を行う。そしてステップS52に戻る。
【0028】
ユーザがサービスの利用登録を解除した場合には、ステップS52からステップS55に移行し、例えば、登録解除時の処理を行う。登録解除時の処理としては、例えば、このユーザに関して記憶している、ID及びパスワードや、販売したプリント配線基板の識別コード、ID登録した日からの経過日数等の各種情報の削除等を行う。そして処理を終了する。
このような基板情報提供システム1において、管理対象となるプリント配線基板PWBの一例を
図9に示す。
【0029】
図9に示すように、プリント配線基板PWBには、実装される電子部品の型番、メーカー、仕様等を示すシンボルマークは形成されていない。また、識別コード50は、デジタルカメラやリーダ等のOCRによって読み取ることの可能な形態で形成される。例えば、エッチングにより例えば8桁数字を形成する方法、又はレーザ等でソルダーレジストを除去することで8桁数字を形成する方法、また、インクジェット印字で8桁数字を印刷する方法等により形成される。識別コード50は、エッチング文字やソルダーレジスト抜き文字で形成されることが好ましい。このようにエッチング文字やソルダーレジスト抜き文字で識別コード50を表すことによって、コストの増加を伴うことなく、識別コード50を明記することができる。また、識別コード50を明記する場合には、OCRで読み取りを行うことのできる様な文字配置にすることが好ましい。このような文字配置にすると、既存のOCRを用いて識別コードを読み取ることができるため、ユーザービリティーの観点から好ましい。
【0030】
また、識別コード50は、例えばQRコード(登録商標)等の二次元コードで表示してもよい。この場合、レーザ刻印機、シンボルインクジェット機などでプリント配線基板に表示すればよい。
このように形成されるプリント配線基板PWBは、このプリント配線基板PWBを参照しただけでは、どこにどの部品が載置されているのかを認識することは困難であり、異常が発生したとき等、解析や修理を行うことが困難である。
【0031】
そこで、ユーザは、例えばスマートホン等のユーザ端末5に搭載されているカメラで、プリント配線基板PWBに印刷された識別コード50を撮影する。具体的には、まず、シンボル画像データの表示要求を行い、IDとパスワードを入力する。サーバ装置2でID及びパスワードの照合が行われ、識別コードの入力要求が行われると、ユーザはユーザ端末5で撮影する。撮影した画像情報から識別コードが解析され、ユーザ端末5からサーバ装置2に送信される。また、ユーザは、シンボル画像データとして、
図2の(a)~(c)に示す、実画像情報からなる画像データ、部分仮想画像情報からなる画像データ、全仮想画像情報からなる画像データのうちのいずれの表示形態で表示するかを指定する。
【0032】
サーバ装置2では、データベース3の基板情報を参照し、受信した識別コードと、ID及びパスワードで特定されるユーザとが対応付けられて登録されているかを判断し、登録されていれば、識別コードで特定されるプリント配線基板に対応する、指定された表示形態の画像データをデータベース3から読み出し、ユーザ端末5に出力する。
これにより、ユーザ端末5の表示画面には、
図2(a)~(c)のいずれかの形態でプリント配線基板にシンボルマークが重畳された画像が表示される。ユーザは表示画面を参照することによって、プリント配線基板においてどの位置にどの部品が実装されるのかを容易に認識することができる。ユーザは、ユーザ端末5において、例えば、拡大、縮小、回転、上下左右移動、A面/B面切り替え等を行うことによって、プリント配線基板内の所望の箇所のシンボルマークを容易に認識することができる。
【0033】
このように、プリント配線基板には、実際にはシンボルマークが記載されていないため、第三者がプリント配線基板を参照してもどの位置にどの部品が実装されているかは容易にはわからない。そのため、第三者がプリント配線基板の回路構造を解析しにくくすることができる。
また、シンボルマークをプリント配線基板に直接記載する必要がないため、シンボルマークを形成する工程が必要ない。その結果、シンボルマークの形成に必要なインクやツール、エネルギー等の使用を低減することができる。これはすなわち、プリント配線基板の作製に要する所要時間の短縮を図ることができると共に、コスト削減や資源の節約を図ることができる。
【0034】
また、プリント配線基板にシンボルマークを形成する必要がないため、シンボルマークの形成工程が不要となり、このシンボルマークの形成工程で不良となり廃棄されるプリント配線基板を低減することができる。その結果、その分コスト削減や資源の節約を図ることができる。なお、大量に生産することが計画されているプリント配線基板においては、試作段階のみプリント配線基板にシンボルマークを形成し、量産段階ではシンボルマーク形成工程を省略するといった、実用例も考えられる。
【0035】
また、近年、プリント配線基板の高密度化に伴い、シンボルマークを形成するスペースが少なくなっており、シンボルマークが部品実装箇所と重なったりするため、設計が困難となっている。本発明によれば、実際のプリント配線基板にはシンボルマークを形成しなくとも、シンボルマークが重畳されたプリント配線基板画像を、ユーザ端末5の表示画面において参照することができる。また、シンボルマークをCADデータ等から読み出して、プリント配線基板の実画像(撮影画像)またはCAD画像に、重畳表示する場合には、全てのシンボルマークを同時に表示することも可能であり、指定したシンボルマークだけを同時に表示させることも可能である。そのため、例えば、ユーザ端末5で指定することによって、シンボルマークのうちの一部のみを重畳表示するようにすることも可能であり、その結果、プリント配線基板に実際にシンボルマークを形成する場合に比較してより多くの情報量を有したシンボルマークを互いに重なり合わずにプリント配線基板上に重畳表示させることができる。また、シンボルマークどうしが重なることによるシンボルマークの形成位置に制限を受けることがないため、シンボルマークの配置位置の設計の自由度を向上させることができる。
【0036】
また、シンボルマークを重畳表示させる場合には、ユーザが識別コードを手入力する必要はなく、スマートホン等のユーザ端末5で、識別コードを撮影するだけでよく、容易に重畳表示させることができる。
また、識別コードを手入力することで、シンボルマークを重畳表示させることができるため、対象となるプリント配線基板が実際に手元になくとも、プリント配線基板にシンボルマークを重畳表示させた画像を、ユーザ端末5に表示させることができる。そのため、例えば、故障が発生したプリント配線基板が手元になくとも、ユーザ端末5を参照することで解析を進めることができ、使い勝手を向上させることができる。
【0037】
また、実際にシンボルマークをプリント配線基板に形成すると、互いにシンボルマークが重なり合い、シンボルを読み取ることが困難であっても、ユーザ端末5において、拡大表示を行うことにより、シンボルが重なり合わず読み取ることが可能となる。したがって、プリント配線基板において高密度に配線等がなされている場合であっても、シンボルマークを読み取ることができ、また、部品実装後は部品の下になって見えなくなる位置に形成されたシンボルマークであっても、確実に読み取ることができ、使い勝手を向上させることができる。
【0038】
また、課金情報により、顧客と顧客が購入したプリント配線基板とを対応付けて管理している。そのため、サービスの利用を解除したユーザに関する情報は、解除した時点或いは、解除後ある程度の期間が経過した時点で削除することによって、その分、不要な情報がデータベース3に記憶され続け、物理メモリーを占有することを回避することができる。
また、シンボルマークは、主に、故障発生時等に必要とされる情報であって、プリント配線基板によっては、一度も参照されないまま、廃棄される可能性もある。このように、一度も参照されることのない可能性のあるシンボルマークをプリント配線基板に形成せずに、必要とするときに、必要とするユーザに対してのみ、プリント配線基板に重畳表示されたシンボルマークを画像情報として提供することによって、効率よくプリント配線基板を生成することができる。
【0039】
また、サーバ装置2では、ユーザのID及びパスワードと、このユーザに販売したプリント配線基板の識別コードとを対応付けて基板情報として管理し、基板情報が要求されたときには、要求元のユーザのID及びパスワードと、通知された識別コードとが対応付けられてデータベース3に記憶されている場合にのみ、通知された識別コードに対応する基板情報を要求元のユーザに出力するようにしている。そのため、識別コードで特定されるプリント配線基板を購入していないユーザに対して、このプリント配線基板に関する基板情報を提供することを回避することができる。すなわち、プリント配線基板を購入していない第三者に不要な情報提供をすることを回避することができる。
【0040】
また、サーバ装置2では、識別コードで特定されるプリント配線基板に対応するシンボルマークだけではなく、検査履歴やSPECデータ等、プリント配線基板に関する情報を基板情報として対応付けている。そのため、シンボルマークだけでなく、通常シンボル印刷では表記できないような情報についても提供することができる。特に、故障発生時に解析を行う場合等には、検査履歴等といったシンボルマーク以外の情報も参照して解析する必要がある。そのため、シンボルマークだけでなく、プリント配線基板に関する情報を容易に参照することができるため、効率よく解析を行うことができる。
【0041】
また、上記実施形態において、例えば故障した場合等に基板情報を参照する場合には、故障解析を行いやすいように、解析に必要な順、或いは修理の順番等をユーザに認識させることができるような形態で、基板情報を提供するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、ある経過日数毎に、ユーザに対して課金を行う場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、情報提供する毎に課金するようにし、さらに、情報提供の内容或いは情報提供した情報の数に応じて課金内容を変更するようにしてもよい。また、シンボルマークのうちの一部或いは、第三者がプリント配線基板の解析を行うことができない情報のみをプリント配線基板に形成し、その他のシンボルマークについてはユーザから要求があったときにのみ、表示するようにしてもよく、この場合も、情報提供の内容或いは情報提供した情報の数に応じて課金内容を変更するようにしてもよい。
【0042】
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0043】
1 基板情報提供システム
2 サーバ装置
3 データベース
4 管理者端末
5 ユーザ端末
6 通信回線