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特許7349735接触帯電部材、摩擦帯電発電機及びプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】接触帯電部材、摩擦帯電発電機及びプロセス
(51)【国際特許分類】
   H02N 1/04 20060101AFI20230915BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
H02N1/04
B81B3/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020521351
(86)(22)【出願日】2018-10-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 EP2018078640
(87)【国際公開番号】W WO2019077077
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-08-31
(31)【優先権主張番号】LU100485
(32)【優先日】2017-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(73)【特許権者】
【識別番号】518008275
【氏名又は名称】ルクセンブルク インスティトゥート オブ サイエンス アンド テクノロジー(リスト)
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ポレゼル-マリス,ジェロウム
(72)【発明者】
【氏名】ルノーブル,ダミアン
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-220191(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0187306(US,A1)
【文献】特開平04-340371(JP,A)
【文献】特表2016-529868(JP,A)
【文献】特表2016-525858(JP,A)
【文献】特開2011-159340(JP,A)
【文献】特表2016-526866(JP,A)
【文献】国際公開第2015/001939(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦帯電発電機のための接触帯電部材(2、16)であって、前記接触帯電部材は、
接触イベントにより電子を交換する性質を示す摩擦帯電列に含まれる誘電材料により作製された、接触面(2.2)および裏面(2.1)を有する接触層(2)、および
前記接触層(2)の前記裏面(2.1)に沿って配置される電極層(16)を含み、
前記接触層(2)の前記接触面(2.2)は、連続したキャビティ(4)を示すためにパターン加工されており、各々のキャビティは、開口部および開口部にまで伸縮変形するために可撓性の底部を有し、
前記裏面(2.1)は、前記キャビティ(4)に対してネガティブ形状にパターン加工され、接触面(2.2)に対応している、
接触帯電部材(2、16)。
【請求項2】
摩擦帯電発電機のための接触帯電部材(2、16)であって、前記接触帯電部材は、
接触イベントにより電子を交換する性質を示す摩擦帯電列に含まれる誘電材料により作製された、接触面(2.2)および裏面(2.1)を有する接触層(2)、および
前記接触層(2)の前記裏面(2.1)に沿って配置される電極層(16)を含み、
前記接触層(2)の前記接触面(2.2)は、連続したキャビティ(4)を示すためにパターン加工されており、各々のキャビティは、開口部および開口部にまで伸縮変形するために可撓性の底部を有し、
前記パターン加工がハチの巣形状である、
接触帯電部材(2、16)。
【請求項3】
前記キャビティ(4)が、円形、六角形、長方形のうちの少なくとも1つの形状を示す、請求項1に記載の接触帯電部材(2、16)。
【請求項4】
前記接触層(2)は、20μm超および50μm未満の厚さを有する、請求項1~3のうちいずれか一項に記載の接触帯電部材(2、16)。
【請求項5】
前記接触層(2)の前記誘電材料は、PTFE、PFA、FEP、PVDF、PVDF、trFEのフッ化炭素、ポリエーテルエーテルケトンPEEK、ポリエーテルケトンPEK、ポリイミドPI、ポリアミドイミドPAI、ポリアミドPA、ポリエチレンPE、ポリエチレンテレフタレートPETマイラ、ポリエーテルスルホンPES、ポリフェニレンサルファイドPPSからなる群より選択され得る熱可塑性物質である、請求項1~4のうちいずれか一項に記載の接触帯電部材(2、16)。
【請求項6】
前記キャビティ(4)が、2mm以下および0.5mm以上の平均半径aを示す、請求項1~5のうちいずれか一項に記載の接触帯電部材(2、16)。
【請求項7】
前記キャビティ(4)が、50μm超および140μm未満の定深度を示す、請求項1~6のうちいずれか一項に記載の接触帯電部材(2、16)。
【請求項8】
前記キャビティ(4)の底部の前記接触面(2.2)が、サブミクロン構造またはナノ構造を示し、それによって特定の接触面を増加する、請求項1~7のうちいずれか一項に記載の接触帯電部材(2、16)。
【請求項9】
摩擦帯電発電機(12)であって、
接触イベントにより電子を交換する性質を示す摩擦帯電列に含まれる誘電材料により作製された、接触面(2.2)および裏面(2.1)を有する接触層(2)、並びに接触層(2)の裏面(2.1)に沿って配置された電極層(16)を含む、第1の接触帯電部材(2、16)と、
接触イベントにより電子を交換する性質を示す摩擦帯電列に含まれる誘電材料により作製された、接触面(14.2)および裏面(14.1)を有する接触層(14)、並びに接触層(14)の裏面(14.1)に沿って配置された電極層(18)を含む、第2の接触帯電部材(14、18)と、を備え、
前記第1の接触帯電部材(2、16)および前記第2の接触帯電部材(14、18)は、お互いの前にそれぞれの接触面(2.2、14.2)を有し、前記接触面の間に押圧および/または摺動接触を可能にするように構成され、
前記第1の接触帯電部材(2、16)が、請求項1~8のうちいずれか一項に記載されており、
前記第1の接触帯電部材の前記接触層(2)の前記キャビティ(4)は、開口部にまで変形した場合の底部の機械的な力Fmecaが、前記接触層(14)と前記第2の接触帯電部材の前記接触層との間の静電力Felecよりも少なくとも5倍大きくなるような平均半径aを示す、
摩擦帯電発電機(12)。
【請求項10】
前記第2の接触帯電部材(14、18)が、扁平な接触面(14.2)を示す、請求項9に記載の摩擦帯電発電機(12)。
【請求項11】
前記第1の接触帯電部材(2、16)の前記誘電材料は、ふっ素化エチレンプロピレンFEPであり、前記第1の接触帯電部材(2、16)の前記接触面(2.2)は、超疎水性の挙動を示し、前記第2の接触帯電部材(14、18)の前記誘電材料はポリイミドPIであり、前記第2の接触帯電部材(14、18)の接触面(14.2)は、超親水性の挙動を示す、請求項9または10に記載の摩擦帯電発電機(12)。
【請求項12】
前記機械的な力Fmecaが、
meca==-k・Wavg
であり、式中、kは前記第1の接触帯電部材の前記接触層(2)の材料の剛性であり、Wavgは、底部の最大変形を3で割ったものである、請求項9~11のいずれか一項に記載の摩擦帯電発電機(12)。
【請求項13】
前記静電力Felecが、
【数1】
であり、式中、σは前記第1の接触帯電部材の前記接触層(2)の材料の最大電荷密度であり、Wavgは、底部の最大変形を3で割ったものであり、Cは前記第1および第2の接触帯電部材の前記接触層(2、14)のキャパシタンスである、請求項9~12のいずれか一項に記載の摩擦帯電発電機(12)。
【請求項14】
σが50μC/m以下である、請求項13に記載の摩擦帯電発電機(12)。
【請求項15】
前記キャパシタンスCが、
【数2】
であり、式中εは空気の誘電率であり、gは、前記第2の接触帯電部材の前記接触層(14)の前記接触面(14.2)と前記キャビティ(4)の底部との間の距離である、請求項13または14に記載の摩擦帯電発電機(12)。
【請求項16】
請求項9~15のいずれか1項に記載される摩擦帯電発電機(12)の前記第1の接触帯電部材(2、16)を寸法取りするプロセスであって、前記第1の接触帯電部材の前記接触層(2)の前記キャビティ(4)の平均半径aは、開口部にまで変形した場合の底部の機械的な力Fmecaが、前記接触層(14)と前記第2の接触帯電部材の前記接触層との間の静電力Felecよりも少なくとも5倍大きくなるように選択される、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は摩擦帯電発電機の分野に関し、より詳細には、摩擦帯電発電機で使用される接触帯電部材の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦帯電発電機の運転は、性質の異なる第1の材料および第2の材料を接触させることに基づき、第1の材料は、電子を供与する性質を有し、第2の材料は、好ましくは、電子を捕獲する性質を有する。異なる摩擦帯電性質を接触させることによって、これらの2つの材料の間に電荷の移動が生じ、異なる電位または電荷の形成に反映される。摩擦帯電の効果はお互いを擦り合わせることによって増加し得る。
【0003】
米国特許第3086131号明細書は、摩擦帯電発電機が開示され、電力を発生させるために2つの異なる絶縁材料を擦り合わせる原理を開示している。
【0004】
米国特許出願公開第2017/0187307号明細書は、第1の接触帯電部材および第2の接触帯電部材を有する摩擦帯電発電機を開示している。第1の接触帯電部材は、第1の接触層および導電電極層を含む。第1の接触層は、接触イベントにより電子を増す性質を示す摩擦帯電直列規格材料を含む。導電電極層は、接触層の裏面に沿って配置される。第2の接触帯電部材は、第1の接触帯電部材から離間して、かつ第1の接触帯電部材から反対の位置に配置される。接触イベント中に第1の接触層によって接触された時に電子を失うことを示す、摩擦帯電直列規格を有する導電性材料層を含む。導電性材料は電極の働きをする。機構により第1の接触帯電部材と第2の接触帯電部材との間にスペースが維持されるが、そこに力が加わるときは除く。発電機の接触表面は、摩擦帯電効果を向上させるためにパターン加工またはテクスチャ加工することができる。そのために、接触表面はピラミッド構造の配列またはボックス様構造を示すことができる。
【0005】
米国特許出願公開第2016/0028327号明細書もまた、摩擦帯電発電機を開示しており、接触部材のうちの1つは粗面が提供されており、ポリマー材料を熱処理することによって得られる円錐マイクロチップ形状構造を有する。
【0006】
Donghyeon Yoo,Dongwhi Choi,Dong Sung Kim,“Comb-shaped electrode-based triboelectric nanogenerators for bidirectional mechanical energyharvesting”,Microelectronic Engineering,2017,Vol.174,p.46-51の刊行物は、くし形の電極を有する摩擦帯電発電機が提案されており、これはシンプルな熱ナノインプリント方法で作製され、市販の金属メッシュをスタンプとして使用して単純に摩擦帯電発電機上でマイクロトポグラフィーを付与し、電気出力性能を高めるものである。くし形の電極を有する作製された発電機は、双方向性機械エネルギー(縦および横両方の接触/分離を含む)を回収することを可能にし、複雑な実際の機械的動作から効率的にエネルギーを回収するための新しい戦略となり得る。
【0007】
Emre lseri,Senol Mutlu,“Realization of Triboelectric Energy Harvesters Using Steel-Polymer Microfabrication Methods”,Conference paper: The 30th International Conference on Micro Electro Mechanical Systems(MEMS2017),At Las Vegas,USA,DOl:10.1109/MEMSYS.2017.7863533の刊行物は、ワイヤレスおよびバッテリーレスキーボード用途として開発された摩擦帯電ナノ発電機(TENG)の実現について記述しており、リソグラフィ、電気化学エッチング、ホットエンボスおよび熱圧着結合を含む鋼-ポリマー微細加工方法が使用されている。伝導体-絶縁体接触モード型のTENGを実現するために、微細加工された鋼電極およびポリマーフィルム(ポリエチレンナフタレート(PEN))が初めて使用された。
【0008】
上述した先行技術では、摩擦帯電発電機の接触帯電部材をパターン加工するために、精巧かつ費用のかかる方法が提供されている。摩擦帯電発電機の2つの接触帯電部材間に的確かつ適正なギャップを提供することの必要性も認められている。しかし、依然として欠点および改良すべき点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第3086131号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0187307号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0028327号明細書
【非特許文献】
【0010】
【文献】Donghyeon Yoo,Dongwhi Choi,Dong Sung Kim,“Comb-shaped electrode-based triboelectric nanogenerators for bidirectional mechanical energyharvesting”,Microelectronic Engineering,2017,Vol.174,p.46-51
【文献】Emre lseri,Senol Mutlu,“Realization of Triboelectric Energy Harvesters Using Steel-Polymer Microfabrication Methods”,Conference paper: The 30th International Conference on Micro Electro Mechanical Systems(MEMS2017),At Las Vegas,USA,DOl:10.1109/MEMSYS.2017.7863533
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、技術的課題として、効率的かつ耐久性のある摩擦帯電発電機を提供し、またそれはコストを低減して作製することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、摩擦帯電発電機のための接触帯電部材に関し、接触面および裏面を有し、接触イベントにより電子を交換する性質を示す摩擦電気直列規格を有する誘電材料で作られた接触層と、接触層の裏面に沿って配置された電極層とを含み、接触層の接触面は、連続したキャビティを示すためにパターン加工されており、各々のキャビティは、開口部および開口部にまで伸縮変形するために可撓性の底部を有する。
【0013】
好ましい実施形態では、キャビティは、円形、六角形、長方形のうちの少なくとも1つの形状を示す。
【0014】
好ましい実施形態では、裏面は、ネガティブでパターン加工され、接触面に対応する。
【0015】
有利に、キャビティの底部は略扁平である。
【0016】
好ましい実施形態では、接触面および/または裏面のパターン形成は、接触層をエンボス加工することによって実現される。
【0017】
好ましい実施形態では、接触層は、20μm超および/または50μm未満の厚さを有する。
【0018】
好ましい実施形態では、接触層の誘電材料は、PTFE、PFA、FEP、PVDF、PVDF、trFE等のフッ化炭素、ポリエーテルエーテルケトンPEEK、ポリエーテルケトンPEK、ポリイミドPI、ポリアミドイミドPAI、ポリアミドPA、ポリエチレンPE、ポリエチレンテレフタレートPET、マイラ、ポリエーテルスルホンPES、ポリフェニレンサルファイドPPSからなる群より選択され得る熱可塑性物質であり、好ましくは、ふっ素化エチレンプロピレンFEPまたはポリイミドPlである。
【0019】
好ましい実施形態では、キャビティは、2mm以下および/または0.5mm以上の平均半径を示す。
【0020】
好ましい実施形態では、キャビティは、50μm超および/または140μm未満の定深度を示す。
【0021】
好ましい実施形態では、パターンはハチの巣形状をしている。
【0022】
好ましい実施形態では、キャビティ底部の接触面は、サブミクロンまたはナノ構造を示し、それによって特定の接触面を増加する。
【0023】
本発明は、また摩擦帯電発電機に関し、本摩擦帯電発電機は、接触面および裏面を有し、接触イベントにより電子を交換する性質を示す摩擦電気直列規格の誘電材料で作られた接触層および接触層の裏面に沿って配置された電極層を含む第1の接触帯電部材と、接触面および裏面を有し、接触イベントにより電子を交換する性質を示す摩擦電気直列規格の誘電材料で作られた接触層および接触層の裏面に沿って配置された電極層を含む第2の接触帯電部材と、を含み、第1および第2の接触帯電部材は、お互いの前に接触する面を有し、その接触面間に押圧および/または摺動接触を可能とし、第1の接触帯電部材は、本発明に記載される。
【0024】
好ましい実施形態では、第2の接触帯電部材は、扁平な接触面を示し、好ましくは、サブミクロンおよび/またはナノ構造を有する。
【0025】
好ましい実施形態では、第1の接触帯電部材の誘電材料は、ふっ素化エチレンプロピレンFEPであり、当該部材の接触面は、超疎水性の挙動を示し、第2の接触帯電部材の誘電材料はポリイミドPIであり、当該部材の接触面は、超親水性の挙動を示す。
【0026】
好ましい実施形態では、第1の接触帯電部材の接触層のキャビティは、平均半径aを示し、開口部にまで変形した場合の底部の機械的な力Fmecaは、接触層と第2の接触帯電部材の接触層の間の静電力Felecよりも少なくとも5倍、好ましくは、10倍大きい。
【0027】
好ましい実施形態では、機械的な力Fmecaは、
meca==-k.Wavg
であり、式中、kは第1の接触帯電部材の接触層の材料の剛性であり、Wavgは、底部の最大変形を3で割ったものである。
【0028】
好ましい実施形態では、静電力Felecは、
【0029】
【数1】
であり、式中、σは、第1の接触帯電部材の接触層の材料における最大電荷密度であり、Wavgは、底部の最大変形を3で割ったものであり、Cは、第1および第2の接触帯電部材の接触層のキャパシタンスである。
【0030】
好ましい実施形態では、σは50μC/m以下である。
【0031】
好ましい実施形態では、キャパシタンスCは、
【0032】
【数2】
であり、式中、εは空気の誘電率であり、gは、第2の接触帯電部材の接触層の接触面とキャビティの底部との間の距離である。
【0033】
本発明は、また、接触面および裏面を有し、接触イベントにより電子を交換する性質を示す摩擦電気直列規格の誘電材料で作られた接触層を有する接触帯電部材を製造するプロセスに関し、本プロセスは、接触層の接触面および裏面をパターン加工する工程を含み、本工程は、連続したキャビティを形成するために接触層をエンボス加工することを含む。
【0034】
好ましい実施形態では、工程は、接触層の裏面上に電極層を適用する工程をさらに含み、接触帯電部材は本発明に記載される。
【0035】
好ましい実施形態では、電極層を適用する工程は、接触層の裏面を金属被覆することを含み、好ましくは、物理蒸着スパッタリングによるものである。
【0036】
好ましい実施形態では、エンボス加工によるパターン加工工程は、次のサブ工程を含む:ポジティブ金型およびネガティブ金型の間の接触層を押圧する工程、少なくとも1つの金型を、接触層の熱可塑性誘電材料のガラス温度Tよりも高い温度にまで加熱する工程、金型および接触層を、ガラス温度Tを下回る温度まで冷却する工程、金型を分離しエンボス加工された接触層を離型する工程。
【0037】
好ましい実施形態では、工程は、接触層の接触面上のキャビティの底部にてサブミクロンおよび/またはナノ構造を形成する工程をさらに含む。
【0038】
好ましい実施形態では、サブミクロンおよび/またはナノ構造を形成する工程は、粒の付加製造堆積および/または粒子の噴霧堆積および/または原子層堆積による。
【0039】
好ましい実施形態では、サブミクロンおよび/またはナノ構造を形成する工程は、反応性イオンエッチングによる。
【0040】
本発明は、また、本発明をエンボス加工することによるパターン加工工程における金型を製造するプロセスに関し、本プロセスは、次の工程を含む:第1の金属板および第2の金属板を提供する工程(金属は好ましくは銅またはアルミニウムである)、第1の金属板の主面をパターンのネガ型フォトレジストマスクでコーティングし、第2の金属板の主面をパターンのポジ型フォトレジストマスクでコーティングする工程、マスクが提供された第1および第2の金属板の主面にフォトリソグラフを適用する工程、第1のおよび第2の金属板上のマスクを除去する工程、前回フォトレジストマスクによってカバーされていなかった領域において金属板の深さで湿式化学エッチングによって金型の凹凸を構成する工程。
【0041】
本発明は、また、本発明による摩擦帯電発電機の接触帯電部材を寸法取りするプロセスに関し、第1の接触帯電部材の接触層のキャビティにおける平均半径aは、開口部にまで変形した場合の底部の機械的な力Fmecaが、接触層と第2の接触帯電部材の接触層との間の静電力Felecの少なくとも5倍、好ましくは、10倍大きくなるように選択される。
【発明の効果】
【0042】
本発明は特に、効率的かつ安価な摩擦帯電発電機の構造を可能にするパターン加工された接触帯電部材に関心がある。本発明のパターン加工は、増加した電力出力を提供する一方で、望まれないスティクションまたはスティッキング現象を防止する。キャビティの底部の変形は、開口部にまで弾性変形することができ、キャビティの外にまでもおよぶことも可能であり、第2の電荷接触部材に接触して、2つの接触面間におけるスティクションを防止するのに十分に高い剛性を示しながら、摩擦帯電を生成する。さらに、パターン加工は、接触帯電部材の耐久性および安定性を増加させる。接触層のエンボス加工による製造プロセスは、シンプルであり経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】摩擦帯電発電機のポリマー接触層のさまざまな図であり、層はハチの巣エンボス加工されている。
図2図1のポリマー接触層をエンボス加工におけるさまざまな工程の図である。
図3図1のポリマー接触層をエンボス加工し、ナノ構造を形成する異さまざまな工程の図である。
図4】摩擦帯電発電機の絶縁体接触帯電層の変形を表す概略図であり、層は半径aを示しており、その外周でエンボス加工されている。
図5図4の概略的発電機のキャパシタンスC対異なる半径aの値における平均変形Wavgのグラフである。
図6図4の概略的発電機の電圧量対異なる電荷密度σの値における平均変形Wavgのグラフである。
図7図4の概略的発電機の絶縁体接触帯電層における静電力およびばね力対異なる半径aの値における平均変形Wavgのグラフである。
図8図4の概略的発電機の絶縁体接触帯電層におけるエネルギー対異なる半径aの値における平均変形Wavgのグラフである。
図9】従来の平坦な摩擦帯電発電機の電圧出力対時間のグラフである。
図10】接触モードでの、4つの異なる摩擦帯電発電機における電圧出力対時間のグラフである。
図11】接触モードでの、図10の4つの異なる摩擦帯電発電機における電力出力対時間のグラフである。
図12】摺動モードでの、4つの異なる摩擦帯電発電機における電圧出力対時間のグラフである。
図13】摺動モードでの、図12の4つの異なる摩擦帯電発電機における電力出力対時間のグラフである。
【発明の詳細な説明】
【0044】
図1は、摩擦帯電発電機における接触層を形成するエンボス加工されたポリマーフィルムのさまざまな図を含む。接触層2は、有利に20μm超および/または50μm未満の厚さを有する絶縁体膜である。層2の材料は、接触イベントにより電子を交換する性質を示す摩擦電気直列規格を有するものの中から選択される。
【0045】
2つの異なる材料を一緒にプレスまたは擦り合わせた場合、一方の材料の表面が一般的にはいくつかの電子を他方の材料の表面から捕獲する。電子を捕獲する材料は、その2つの材料の負電荷に対してより強い親和性を有し、その表面は材料が分離された後に負電荷を得る。当然、他方の材料は同量の正電荷を有すことになる。さまざまな絶縁材料を一緒にプレスまたは擦り合わせた場合は、各表面の量および電荷の極性は個別に測定され、非常に再生可能なパターンが現れる。絶縁体に関しては、摩擦帯電表が次のurlリンクにて一般公開されており、https://www.trifield.com/content/tribo-electric-series/、どれが正になるか負になるかを予測したり、効果がどれほど強いかを予測したりするのに使用することができる。http://www.trifield.com/content/tribo-electric-series/
【0046】
好ましくは、接触層2の材料は、フッ化炭(PTFE、PFA、FEP、PVDF、PVDF trFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAl)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET、マイラ)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、好ましくは、ふっ素化エチレンプロピレンFEPからなる群より選択されるポリマーであり得る。層2はエンボス加工され、ハチの巣パターンを示す。より詳細には、図a)およびb)は、層2の裏面2.1を示し、すなわち電極に接触することが意図される側である。図c)およびd)は、層2の接触面2.2を示し、すなわち電力を生成するために他の材料に対してプレスおよび/または擦り合わせることが意図される層である。理解されるように、ハチの巣パターンは連続したキャビティ4を形成し、例えば、6角形であり、互いにずれ重なっている。言うまでもなく、パターンは正確な6角形を有するハチの巣状である必要はなく、例えば円形状でも同様の働きをする。
【0047】
さらに図1を参照すると、キャビティ4の平均半径は、1mm以下であることができる。キャビティの深度は、50μm超および/または140μm未満であることができる。
【0048】
図2および3は、図1の接触層のエンボス加工製造プロセスを例証する。
【0049】
図2を参照すると、膜2が2つの金型(すなわちポジティブ金型6およびネガティブ金型8)の間にプレスされ配置されている。どちらか一方の金型(例えばネガティブ金型8)と熱接触する場合には加熱板10が提供される。最初に、ポリマーフィルムがポジティブおよびネガティブの金型6および8の間に挟まれ、例えば約15kPaの圧力が加えられる。次に、加熱板10が、303℃のセットポイント(ポリマーのガラス温度Tよりも高い)に、(例えば14℃/分)の温度傾斜に沿ってゆっくりと加熱される。次に加圧力が、例えば約47kPaまで増加される。したがって、この加圧力で303℃での定常期が10分間保持される。その後、冷却傾斜(例えば-11℃/分)に沿って100℃(ポリマーのTgよりも下)となるように加熱が止められ、そこで圧力は取り除かれポリマーフィルムを取り出す。
【0050】
次にエンボス加工されたポリマーフィルムを洗浄し(例えば、アセトン、イソプロパノールIPAおよび5分間超音波処理された脱イオン水を用いて)、120℃のホットプレート上またはオーブン内で乾燥して水残留物を除去する。
【0051】
加えて、摩擦帯電発電機の2つの接触層をシールする前に、2つの層の間の接触する特定の内面積を増加させ、膜のユニット内の総ネット電荷密度を、同様に、出力電圧V=Q/Cを増加させることを検討することができる。誘電材料2および14(誘電率はそれぞれεおよびε)の間の接触する特定の内面積を増加させる1つの方法は、ナノ構造または少なくともサブミクロン構造を提供することである。
【0052】
図3は、代替的なエンボス加工製造プロセスを例証しており、図2のうちの1つとは、ネガティブ金型8’がナノ構造のキャビティ9を示す点で本質的に異なる。係るキャビティは、金型を陽極酸化処理または化学エッチングすることにより得ることができる。加えられる圧力は、図2におけるプロセスのものよりも高い可能性がある。
【0053】
代替的に、または図3の代替的プロセスに加えて、接触層の内側は、ポリマーの仕様(すなわち分解温度より低い)に対応するプロセス温度でナノ粒子を堆積させることによる付加製造に供することができる。例えば、ナノワイヤのスピンコーティング(例えば、ジアゾニウム塩によるグラフト化もしくはポリドーパミンによるグラフト化などの特定の化学作用により、またはALD(Atomic Layer Deposition-原子層堆積)によりポリマー上にグラフトしたカーボンナノチューブ)、80℃~180℃のポリマーの低温度の相溶性にて、AI、TiO、ZnOなどの絶縁体。ALDによって堆積したZnO、AIN、GaN、CdSなどのウルツ鉱型材料もまた、デバイス上に付与された機械的歪みによって引き起こされた電圧出力に非常に有利な圧電性の効果を与える。ALDプロセスのパラメータによっては、自由担体濃度を1020cm-3~1014cm-3、導電率を0.01ohm.cm~2000ohm.cm、に制御することができ、ZnOの優先低導電率構造によって摩擦によって生成された帯電を保持する。
【0054】
誘電材料の選択的なエッチングによりサブトラクティブ製造プロセスを使用することもできる。例えば、ICP/RIE(誘導結合プラズマ/反応性イオンエッチング)によるドライエッチングは、ナノピラーのドライエッチングの後に化学エッチングによって除去された保護犠牲金属ドットの最初の堆積無しまたは有りで、ポリマーのナノピラーの高いアスペクト比を引き起こすことができる。実現化の実施例を例証するために、プラズマRIEドライエッチング(02:Ar、P=400Watts、p=20m Torr)を適用し、摩擦帯電発電機のポリマー性接触層(FEPおよびポリイミドPI)の内部のサブマイクロメートルの粒(約500nmの直径)を得る。これらのナノ構造の巨視的な証明は、脱イオン水の液滴に対する得られたFEPの超疎水性の挙動およびPI超親水性の挙動である。
【0055】
各接触層の裏面(プラズマにより活性化)は、金属(金、アルミニウム、銅、ニッケル、銀、白銀)のPVD(物理蒸着)スパッタリングによって金属被覆して電極を実現することができる。優先的には、金属は酸化または腐食に対するその耐薬品性によって金であるか、または低価格であるニッケルもしくはアルミニウムである。
【0056】
図4は、摩擦帯電発電機12が、第1の変形可能な絶縁体接触層接触層2(例えば上述されるような)、および第2の絶縁体接触層14を含むことを概略的な方法で例証する。第1の接触層の裏面2.1上に、第1の電極16および、同様に第2の接触層14の裏面14.1に第2の電極18が提供される。明らかなように、第1の接触層2は変形可能であり、外側で固定されるかまたは埋め込まれる。この固定されるまたは埋め込まれた高みは、上述したエンボス加工された膜のキャビティ4の外周に対応する。言い換えると、図4に例証される接触層2の1部分はエンボス加工された膜のキャビティ4のうちの1つの底壁に対応し、層の1部分の材料は単一であり、層のその他の部分と連続している。
【0057】
接触層2の1部分は、反対の電荷(例えば、第1の層2の接触面2.2上の正電荷および第2の層14の接触面14.2上の負電荷)の蓄積により、外力の下でおよび引力の下で変形可能である。第2の層14は剛性であると理解される。したがって半径aは、キャビティ4の平均半径に対応する(図1~3)。2つの接触層2および14の間のギャップは、gと記される。層2のピーク変形は、Wpkと記される。発電機は、電気的に、直列の3つのコンデンサC1、C、およびCと理解される。キャパシタンスCおよびCは、固定され、接触層2および14とそれぞれ対応すると理解される。それらは従って、ジオメトリおよび2つの層のそれぞれの誘電率εおよびεによって決定される。キャパシタンスCは、接触層2および14の間の空気ギャップにより変動する。平衡での電荷補償効果によって、Q=C.V=Q=C.V=-Qの電荷Qに起因して2つの電極16および18の間の合計電圧Vtotalを測定することができる。また、層の変形に対応するキャパシタンスの変動は次のように表すことができる。
【0058】
【数3】
式中、π.a=Sは、膜の表面積を表す。I.O.Wygant, M.Kupnik,B.T.Khuri-Yakub,“Analytically Calculating Membrane Displacement and the Equivalent Circuit Model of a Circular CMUT Cell”,2008 IEEE International Ultrasonics Symposium Proceedings,pp.2111-2114,DOl:10.1109/ULTSYM.2008.0522,later designated Wygantが、本明細書で参照される。
【0059】
また、Wygantによると、プレート領域全体の偏差を平均化すると、平均プレート偏差はピーク偏差の1/3となることを以下のように示す。
【0060】
【数4】
【0061】
アップデートされたキャパシタンスの発現では、
【0062】
【数5】
【0063】
【数6】
を得る。
【0064】
異なる半径aの値について、キャパシタンスCおよび電圧Vtotalの変動対層2の変形は、図5および6のグラフにて例証される。
【0065】
その一方で、摩擦によって絶縁体上に生成された電荷密度σは、誘電材料εおよびεの層2および14の間の引力を引き起こす静電力を生成する。相対静電エネルギーは、次の式によって求められる。
【0066】
【数7】
【0067】
対応する静電力と:
【0068】
【数8】
【0069】
この力は、
【0070】
【数9】
の空気ギャップキャパシタンスの逆の一次導関数に依存する。
【0071】
したがって、この静電引力を相殺する、同様に2つの誘電材料2および14粘着(スティクション)を相殺するためには、粘着を防止するために接触層のジオメトリは、機械的な力を有する高機械的剛性が得られるように設計される。変形可能層の寸法は、2つの誘電材料の機械的接触による摩擦帯電性電荷密度を生成するためにその上に加えられた機械的圧力に対してソフト変形可能にするために設定される必要がある。このように、トレードオフを見出す必要がある。したがって、変形可能層の剛性を次のように表現することができる。Wygantにしたがって、
【0072】
【数10】
E、t、v、はそれぞれ変形可能層のヤング率、厚さおよびポアソン比である。これによりススプリングの機械的エネルギーを得ることができる。
【0073】
【数11】
【0074】
スプリングの関連する機械的な力では、つねに偏差Wavgの方向とは反対である。
【0075】
【数12】
【0076】
システムの総エネルギーは次のように定義される:
total=Eelec+Emeca
【0077】
そしてシステムの総力は:
total=Felec+Fmeca
【0078】
異なる半径aの値について、力FtotalおよびエネルギーEtotal対層2の変形に変動は図7および8のグラフにて例証される。偏差Wavgの平衡ポイントについて総力は0に等しい。もしこの平衡ポイントの第1の導関数(または勾配)が正であれば、偏差位置Wavgは安定であり、もし勾配が負であれば偏差位置Wavg不安定である。これは図8における総エネルギーグラフに相当し、最小は偏差位置Wavgが安定であることを意味し、最高は偏差位置Wavgが不安定であることを意味する。
【0079】
図8で見られるように、膜半径0.5mm≦a≦2mm、好ましくは0.5mm≦a≦1mm、より好ましくはa=1mmについて機械的な力と静電引力との間におけるトレードオフが得られ、摩擦帯電電荷を生成するために2つの材料の間の接触面積を最大化する。エンボス加工された各キャビティのデザインは、10以上スプリングの機械的な力Fmecaの静電力Felecに対する比を得るために、深さおよび面積の点から決定される。
【0080】
この例のトレードオフを計算する例について、電荷密度を50μC/mで固定し、これはここで検討される(εにFEPおよびεにポリイミド)材料で達成可能な最大閾値であり、文献のデータに従っている。
【0081】
本発明の利点を論証するために、以下の4つの摩擦帯電発電機を作製した:
-構成(1):「扁平」すなわち、ポリマー接触層にエンボス加工は無く、内面にプラズマ処理が無い。
-構成(2):「扁平+プラズマ処理」すなわち、ポリマー接触層にエンボス加工は無いが、2つの内面にプラズマ処理がある。
-構成(3):「エンボス加工される」すなわち、FEP接触層にエンボス加工はあるが、内面にプラズマ処理が無い。
-構成(4):「エンボス加工+プラズマ処理」すなわち、FEP接触層にエンボス加工があり、2つの内面にプラズマ処理がある。
【0082】
摩擦帯電発電機の各構成は、10MOhm入力インピーダンスにてオシロスコープのプローブ1/10と接続され、発電機の負荷電荷に対応する。
【0083】
図9は、連続的接触モード(すなわち、断続的な指タップによって)で運転されている間の従来の平「扁平」摩擦帯電発電機の電圧出力を示す。10回実施後に、電圧出力の振幅が有意に減少したことを記録することができる。実際、2つの絶縁体材料の連続的な接触は、摩擦による静電電荷を生成する。2つのポリマー接触層の内面におけるこれらの反対の電極各は、スティクションと呼ばれる2つの層が準静的凝集するまで、接触層の間の空気ギャップ距離を減少させ静電引力を生成する。この問題はエンボス加工されたポリマー接触層を使用する本発明で解決される。
【0084】
図10および11は、上述される4つの摩擦帯電発電機の各構成についての出力電圧および瞬間出力電力をそれぞれ示す。電気出力は、指先で数回優しく機械的にタップし、数秒間のタッピングにおける振幅が安定した後に生成される。明確にするために、曲線はY軸に沿ってシフトする。構成1による「扁平」発電機について、2ボルトの最大振幅が計測された。構成2のプラズマ処理では、構成1と比較して電圧出力のこのレベルの向上はなかった。実際、特に電荷密度が高いため、2つの扁平な接触層間の引力による静的凝集が、この小さな振幅の原点にある。エンボス加工された発電機(構成3)について、エンボス加工されたポリマー接触層(ここではFEP)と扁平なポリマー接触層(ここではポリイミド)との間に維持された一定の空気ギャップのおかげで8ボルトの最大振幅に電圧出力が安定する改善が観察できる。
【0085】
内面にプラズマ処理を追加することで、電荷密度σおよびその結果として出力電圧(16ボルトの最大振幅まで)を前述した方程式に従って増加することができる。
【0086】
【数13】
【0087】
図12および13は、図10および11と同様に、上述される4つの摩擦帯電発電機の各構成についての出力電圧および瞬間出力電力を例証しており、指の先端で優しく横に擦る摺動モードで運転されている。出力レベルは、接触モードを比較して一般的に低くはあるが、エンボス加工された構造がより高い出力電圧を安定する、特にポリマー接触層の内面をプラズマ処理した電荷密度σを改善するという同様の傾向を観察した。
図1
図2
図3
図4a)】
図4b)】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13