(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】弁装置とこれを用いた減圧弁
(51)【国際特許分類】
F16K 43/00 20060101AFI20230915BHJP
G05D 16/16 20060101ALI20230915BHJP
F16K 51/00 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
F16K43/00
G05D16/16 P
F16K51/00 A
(21)【出願番号】P 2021018718
(22)【出願日】2021-02-09
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(72)【発明者】
【氏名】北邑 有希雄
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-173808(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第111720558(CN,A)
【文献】特開2013-002591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00-3/36
15/00-15/20
17/18-17/34
27/00-27/12
31/00-31/05
39/00-51/02
F16T 1/00-1/48
G05D 16/00-16/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入路と流出路との間を開閉する弁体と、
前記弁体をばね力によって弁シートに着座させる第1のばね体と、
前記弁体を開弁方向に押圧して前記弁シートから離間させるシャフト部材と、
使用中の前記弁体を排出するとともに、新しい弁体を使用位置に設置するバルブ交換ユニットとを備え、
前記バルブ交換ユニットは、前記弁体と前記第1のばね体を収納する複数の弁体収納部と、複数の前記弁体収納部を切り替えて前記弁体を前記使用位置に移動させる弁体切替機構とを有
し、
前記バルブ交換ユニットは、前記弁体の移動時に前記弁体に接触して清掃する清掃エリアを有している弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載の弁装置において、複数の前記弁体収納部は、回転軸心の周方向に離間して配置されている弁装置。
【請求項3】
流体の主通路に配置されて一次側の圧力を二次側の圧力に減圧する減圧弁であって、
前記主通路を開閉する主弁体と、
前記主弁体を開閉させるパイロット弁ユニットと、を備え、
前記パイロット弁ユニットが、
請求項1または2に記載の弁装置と、
前記弁装置の前記シャフト部材を開弁方向に押圧して前記弁体を前記弁シートから離間させる第1の弁駆動部とを有し、
前記第1の弁駆動部は、前進して前記シャフト部材を開弁方向に押圧する第2のばね体と、前記二次側の圧力を受けて前記第2のばね体を、そのばね力に抗して閉弁方向に後退させる閉弁力付加部材とを有し、
さらに、前記流出路の圧力を受けて前記主弁体を開弁させる第2の弁駆動部が設けられ、
前記弁装置の前記流入路が前記主通路の一次側に連通している減圧弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の通路に設けられて通路の開閉により通路の圧力を調節する弁装置とこれを用いた減圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の通路には、通路内の圧力を調節するために種々の弁装置が配置される(例えば、特許文献1)。直動型の減圧弁では1つのメインバルブで開閉が行われており、特許文献1のようなパイロット作動型の減圧弁では1つのメインバルブと1つのパイロットバルブで開閉が行われている。そのため、定期的に分解してバルブの交換、清掃等のメンテナンスを行う必要がある。定期的にメンテナンスを行わないと、バルブにスケールが堆積して蒸気漏れが発生する恐れがあり、2次側の圧力調整ができなくなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、メンテナンスには装置を分解する必要があるから、装置を停止することになる。そのため、機会損失につながり、好ましくない。
【0005】
本発明は、装置を分解することなく、バルブのメンテナンスを行うことができる弁装置とこれを用いた減圧弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の弁装置は、流体の流入路と流出路との間を開閉する弁体と、前記弁体をばね力によって弁シートに着座させる第1のばね体と、前記弁体を開弁方向に押圧して前記弁シートから離間させるシャフト部材と、使用中の前記弁体を排出するとともに、新しい弁体を使用位置に設置するバルブ交換ユニットとを備えている。前記バルブ交換ユニットは、弁体と第1のばね体を収納する複数の弁体収納部と、複数の前記弁体収納部を切り替えて前記弁体を前記使用位置に移動させる弁体切替機構とを有している。
【0007】
この構成によれば、バルブ交換ユニットにより、使用中の弁体を排出するとともに、新しい弁体を設置することができる。これにより、装置を分解することなく、弁体の交換、清掃等のメンテナンスを行うことができる。また、弁体が移動する際に、摩擦により弁体が回転する。これにより、弁体が弁シートに着座する位置が変化するので、弁体の特定箇所にスケールが堆積するのを防ぐことができる。その結果、弁体を廃棄することなく、弁体の交換を行うことができる。
【0008】
本発明において、複数の前記弁体収納部は、回転軸心の周方向に離間して配置されていてもよい。この構成によれば、限られたスペース内に複数の弁体を収納できる。
【0009】
本発明において、前記バルブ交換ユニットは、前記弁体の移動時に前記弁体に接触して清掃する清掃エリアを有していてもよい。この構成によれば、使用済みの弁体を廃棄することなく、交換、清掃を行うことができる。
【0010】
本発明の減圧弁は、流体の主通路に配置されて一次側の圧力を二次側の圧力に減圧する減圧弁であって、前記主通路を開閉する主弁体と、前記主弁体を開閉させるパイロット弁ユニットとを備えている。前記パイロット弁ユニットが、本発明の弁装置と、前記弁装置の前記シャフト部材を開弁方向に押圧して前記弁体を前記弁シートから離間させる第1の弁駆動部とを有している。前記第1の弁駆動部は、前進して前記シャフト部材を開弁方向に押圧する第2のばね体と、前記二次側の圧力を受けて前記第2のばね体を、そのばね力に抗して閉弁方向に後退させる閉弁力付加部材とを有している。さらに、前記流出路の圧力を受けて前記主弁体を開弁させる第2の弁駆動部が設けられ、前記弁装置の前記流入路が前記主通路の一次側に連通している。
【0011】
この構成によれば、バルブ交換ユニットにより、使用中の弁体を排出するとともに、新しい弁体を設置することができるから、装置を分解することなく、弁体のメンテナンスを行うことができる。また、弁体が移動する際に、摩擦により弁体が回転する。これにより、弁体が弁シートに着座する位置が変化するので、弁体の特定箇所にスケールが堆積するのを防ぐことができる。その結果、弁体を廃棄することなく、弁体の交換を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の弁装置および減圧弁によれば、装置を分解することなく、弁体のメンテナンスを行うことができるうえに、弁体を廃棄することなく弁体の交換を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の対象である減圧弁の基本構成を示す縦断面図である。
【
図2】同減圧弁の減圧前の状態を模式的に示す縦断面図である。
【
図3】同減圧弁の圧力調整状態を模式的に示す縦断面図である。
【
図4】同減圧弁の減圧保持状態を模式的に示す縦断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る弁装置の要部を示す縦断面図である。
【
図6】同弁装置の要部の別の状態を示す縦断面図である。
【
図7】(A)~(D)は、同弁装置のバルブ交換ユニットの弁体の交換手順を示す正面図である。
【
図8】同弁装置の弁体時の旋回駆動部を示す側面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る弁装置の要部を示す縦断面図である。
【
図10】同弁装置の清掃エリアを示す正面図である。
【
図11】同清掃エリアを弁体が移動する様子を示す斜視図である。
【
図12】同弁装置の清掃エリアの変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を説明するのに先立って、蒸気通路に用いる減圧弁について説明する。様々な産業において、コスト、利便性、安全性の観点から、蒸気は、熱媒体として用いられている。その最大のメリットとして、単位重量当たりの潜熱量が大きいこと、圧力をコントロールすれば温度も一定に保持できることがあげられる。
【0015】
蒸気を使用する場合、必要な圧力ごとに蒸気を発生させるのではなく、ボイラーで高圧の蒸気を発生させておいて、その蒸気を生産物や用途に応じて必要な圧力に下げて使用する。その場合、蒸気の圧力をほぼ一定に保つ自動弁が減圧弁である。圧力を下げる目的は、蒸気温度を下げて所望の加熱温度に保つためである。
【0016】
減圧の基本原理は、絞り現象と呼ばれるもので、蒸気が管内を流れるとき、蒸気が流れる通路を絞ると、絞られた箇所よりも下流側の蒸気圧力が低くなる。これが蒸気の減圧である。単に絞るだけであれば、バルブを中間開度に固定したり、オリフィスプレートを設けたりする方法があるが、この方法では、流量が変化した際に圧力も変わるという問題がある。そこで、流量や、一次側の圧力(絞り箇所の上流側の圧力)が変わっても、二次側の圧力(絞り箇所の下流側の圧力)が変動しないように、弁を通過する流体のエネルギーを直接利用して自動的に弁開度が変化するように設定されたバルブが減圧弁である。
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の対象である弁装置を用いた減圧弁の一種であるパイロット作動式の減圧弁の基本構成を示す。
図1において、減圧弁は流体の一種である蒸気Sが流れる主通路1に配置されている。減圧弁PRVのケーシング2は、本体ケース4と、上ケース6と下ケース8とを連結してなる。本体ケース4の内部に、一次側通路10と、二次側通路12と、その間にある弁室14とが形成されている。一次側通路10および二次側通路12が、蒸気Sが流れる主通路1の一部を形成する。弁室14には、弁ホルダ16と、その内部を摺動する主弁体18とが配置されている。弁ホルダ16は、その上部が本体ケース4にねじ連結により支持されている。
【0018】
主弁体18は、コイルスプリングからなる主ばね体20により、弁ホルダ16に形成された主弁シート22に接触して閉弁する方向にばね力が付加されている。弁室14の上方には、主弁体18を駆動する主弁駆動部24が配置されている。この主弁駆動部24は、主弁体18に当接するピストン26が、本体ケース4に支持されたシリンダ28に摺動自在に挿入されている。ピストン26の上方が、後述する主弁体駆動室27となっている。ピストン26には主弁体駆動室27の圧力を逃がす逃がし孔29が設けられている。
【0019】
上ケース6の上部に、パイロット弁ユニット30が配置されている。つまり、上ケース6が、パイロット弁ユニット30のケーシングを形成する。このパイロット弁ユニット30は、弁体32を含む弁装置34と、この弁装置34を開閉させるパイロット弁駆動部36とを有する。弁体32は、例えば、ボール形(球体)であるが、これに限定されない。弁装置34は、弁座ブロック37を有し、その先端部(
図1の左端部)に弁シート40が形成されている。弁シート40の中央部に、弁体32により開閉される弁口41が開口している。
【0020】
弁座ブロック37に、シャフト部材42が前後方向(
図1の左右方向)に貫通して挿入されている。シャフト部材42の先端部42aが弁体32に接触し、後端部42bがパイロット弁駆動部36の後述する先端板38に対向している。弁体32は、コイルスプリングからなる第1のばね体44によって弁シート40に押し付けられている。第1のばね体44は、上ケース6に設けた第1のばね受け48との間に介装されている。
【0021】
パイロット弁駆動部36は、先端(
図1の左端)の先端板38が、後方(
図1の右方)から前方(
図1の左方)へ向かって、コイルスプリングからなる第2のばね体54によって押圧されている。第2のばね体54は、先端板38に接触する先端部材56と、カバー部材50の内側に配置された第2のばね受け58との間に介装されている。カバー部材50は、上ケース6(ケーシング)にねじ連結されている。カバー部材50と先端部材56との間にプッシュロッド60が配置され、このプッシュロッド60は第2のばね体54の内側空間を通っている。
【0022】
パイロット弁駆動部36は、圧力調整手段49を有している。圧力調整手段49は、前記先端板38とベローズ43とを有し、第2のばね体54を閉弁方向(右方向)に後退させる。つまり、圧力調整手段49は、第2のばね体54をそのばね力に抗して閉弁方向に後退させる閉弁力付加部材を構成する。
【0023】
先端板38にベローズ43の先端部43aが接続されており、ベローズ43の基端部43bが、上ケース6とカバー部材50との間で固定支持されている。カバー部材50に、圧力調整用の調整ハンドル52が回動自在にねじ連結されている。
【0024】
弁装置34の前側(左側)には第1のばね体44を収納するパイロット室62が配置されている。このパイロット室62に、一次導通路64を介して一次側通路10が連通している。パイロット室62には、異物除去用のスクリーン66が配置されている。また、弁装置34における弁体32の下流側に、弁口41に連通する貫通路68が形成されている。これらパイロット室62と貫通路68とが、パイロット弁ユニット30に対する流入路と流出路をそれぞれ形成している。他方、圧力付加手段49が収納されている圧力導入室70には、二次導通路72を介して二次側通路12が連通している。
【0025】
つぎに上記構成の作動を説明する。
[減圧前]
図2は減圧動作の開始前を示し、主弁体18が閉弁状態にある。この減圧弁に蒸気Sが通気されると、蒸気Sは一次側通路10から一次導通路64を通ってパイロット室62に達する。
【0026】
[圧力調整]
調整ハンドル52を減圧方向(左回り)に回転させると、
図3に示すように、圧力付加手段49のプッシュロッド60が前方(左方向)へ移動する。これに伴い、ベローズ43が伸長して先端板38によりシャフト部材42を前方(左方向)へ移動させ、弁体32を開く。これにより、流出路(貫通路)68に蒸気Sが流れ、ピストン26を押し下げて主弁体18を開弁させる。このとき、圧力付加手段49の先端の押圧板38と弁座ブロック37の背面との間には若干の隙間Gが存在する。主弁体18の開弁により、一次側通路10内の蒸気Sが二次側通路12に流入して減圧される。
【0027】
[減圧の保持]
二次側通路12に流入した蒸気Sの一部が、
図4に示すように、二次導通路72を通って圧力導入室70に達する。圧力導入室70内の蒸気圧力によって圧力付加手段49のベローズ43が押し縮められ、先端板38が右方向へ後退する。これにより、シャフト部材42の後方(右方向)への移動を許容して弁体32を閉弁方向に移動させる。このようにして主弁体駆動室27の圧力が調整されることで、主弁体18の開度が調整され、二次側通路12の圧力が一定に保たれる。
【0028】
つぎに、本発明の第1実施形態の要部である弁装置34について
図5~8により説明する。
図5に示す弁装置34はバルブ交換ユニット80を備えている。バルブ交換ユニット80は、使用中の弁体32を排出するとともに、新しい弁体32を使用位置に設置する。
【0029】
バルブ交換ユニット80は、弁体32を収納する複数の弁体収納部82を有している。本実施形態では、弁体収納部82内に、弁体32に加えて、第1のばね体44が収納されている。
【0030】
図7に示すように、本実施形態では、弁体収納部82は、回転軸心AXの周方向に離間して6つ設けられている。詳細には、バルブ交換ユニット80は、回転軸心AXを中心とする円柱状のシリンダ86と、回転軸心AXを有する軸体88とを備えており、このシリンダ86に、回転軸心AXの周方向に離間して6つの円形の貫通孔が形成されている。この貫通孔で形成された空間が弁体収納部82を構成している。ただし、弁体収納部82の数、配置はこれに限定されない。各弁体収納部82を構成する貫通孔は、
図5に示すように、段付きであり、その段部82aが第1のばね体44のばね受けとなる。
【0031】
バルブ交換ユニット80は、さらに、弁体収納部82を切り替える弁体切替機構84を有している。本実施形態の弁体切替機構84は、回転軸心AX回りにシリンダ86を回転させることで、弁体32(弁体収納部82)を切り替える。
【0032】
詳細には、弁体切替機構84は、シリンダ86を回転させる旋回駆動部90と、ユーザが操作する操作部92と、操作部92の操作力を旋回駆動部90に伝達する操作力伝達部94とを有している。
【0033】
操作部92は、操作力伝達部94を介して旋回駆動部90を操作する。操作部92は、装置の外部に露出しており、ユーザが操作する部位である。操作部92は、ユーザが操作する押しボタン96を有している。押しボタン96は、ばね体98により上方にばね力が付与されている。押しボタン96の下面には、操作力伝達部94が連結される連結部92aが形成されている。
【0034】
操作力伝達部94は、操作部92から上下方向に延びる第1のリンク片100と、第1のリンク片100から前後方向(
図5の左右方向)に延びる第2のリンク片102と、第2のリンク片102から上下方向に延びる第3のリンク片104とを有している。
【0035】
第1のリンク片100は、その上端100aが、左右方向(
図5の紙面に直交する方向)に延びる連結ピンのような第1軸支部材95により操作部92の連結部92aに連結されている。第1のリンク片100の後面(
図5の右側面)には歯部(ギア部)100bが形成されている。
【0036】
第2のリンク片102は、その上面と下面にそれぞれ歯部(ギア部)102a,102bが形成されている。第2のリンク片102は、その前端(
図5の左側)が、第1歯車106により第1のリンク片100の下部に連結されている。
【0037】
第1歯車106は、左右方向(
図5の紙面に直交する方向)に回転軸心を有する軸体106aに連結された円柱状の歯車であり、その外周面に歯部(ギア部)106bが形成されている。この第1歯車106の歯部106bに、第1のリンク片100の歯部100bと第2のリンク片102の上面の歯部102aが噛み合うことで、第1のリンク片100と第2のリンク片102が連結されている。つまり、第1歯車106により、、第1のリンク片100の上下方向の移動が、第2のリンク片102の前後方向(
図5の左右方向)の移動に変換されている。
【0038】
第3のリンク片104は、その前面(
図5の右側面)に歯部(ギア部)104aが形成されている。第3のリンク片104は、その上端部が、第2歯車108により第2のリンク片102の後端部(
図5の左側端)に連結されている。また、第3のリンク片104の下端部104bが、左右方向(
図5の紙面に直交する方向)に延びる連結ピンのような第2軸支部材105により、後述する旋回駆動部90に連結されている。
【0039】
第2歯車108は、前後方向(
図5の紙面に直交する方向)に回転軸心を有する軸体108aに連結された円柱状の歯車であり、その外周面に歯部(ギア部)108bが形成されている。この第2歯車108の歯部108bに、第2のリンク片102の下側の歯部102bと第3のリンク片104の歯部104aが噛み合うことで、第2のリンク片102と第3のリンク片104が連結されている。つまり、第2歯車108により、第2のリンク片102の前後方向(
図5の左右方向)の移動が、第3のリンク片104の上下方向の移動に変換されている。
【0040】
旋回駆動部90は、操作力伝達部94の第3のリンク片104に支持された
図6の係止爪110と、軸体88に支持された第3歯車112とを有している。係止爪110は、棒状であり、その上端部が第3のリンク片104の下端部104bに連結されている。
図5の係止爪110の下端部が後方(
図5の左側)に折り曲げられ、爪部110aが形成されている。
【0041】
第3歯車112は、
図7に示すように、シリンダ86の中心の軸体88に嵌合されている。つまり、第3歯車112は、軸体88の軸心AX回りにシリンダ86と一体に回転する。第3歯車112の外周面にはギア112aが形成されている。ギア112aは、弁体収納部82と同じ数、本実施形態では6つ設けられている。このギア112aに、
図5の係止爪110の爪部110aが係合する。
【0042】
つぎに、本実施形態の弁装置34の弁体32の交換手順を
図5~8を用いて説明する。
図7(A)~(D)において、使用状態にある弁体32が収納された弁体収納部82を第1弁体収納部82-1とし、第1弁体収納部82-1から反時計回りに第2~第6弁体収納部82-2~82-6とする。
【0043】
最初に、
図5の操作部92の押しボタン96を下方(矢印A1の方向)に操作する。これにより、操作力伝達部94の第1のリンク片100が下方に移動し、第1歯車106を介して第2のリンク片102が後方(
図5の右側)に移動し、第2歯車108を介して第3のリンク片104が下方に移動する。第3のリンク片104が下方に移動することにより、旋回駆動部90の係止爪110が下方に移動する。
【0044】
図7(A)は
図5の状態を示している。旋回駆動部90の係止爪110が下方に移動すると、旋回駆動部90の第3歯車112のギア112aが係止爪110に押されて、シリンダ86がA2方向(時計回り)に回転し(
図7(B))、第2弁体収納部82-2が使用位置(最も下方)に移動する(
図7(C))。さらに係止爪110が下方に移動すると、係止爪110が第3歯車112のギア112aから離れる(
図7(D))。
図7(D)は
図6の状態を示している。
【0045】
図5の押しボタン96を離すと、ばね体98のばね力により、押しボタン96が上方(矢印A3の方向)に復帰する。これにより、操作力伝達部94の第1のリンク片100が上方に移動し、第1歯車106を介して第2のリンク片102が前方(
図5の左側)に移動し、第2歯車108を介して第3のリンク片104が上方に移動する。これにより、
図8に示すように、係止爪110は、第3歯車112のギア112aに形成された逃がし面112bに沿って、第2軸支部材105周りに前方(
図8の左側)に回動し、ギア112aから外れて上方に移動する。
【0046】
以上により、
図7(A)の状態に戻る。ただし、第1弁体収納部82-1の代わりに、第2弁体収納部82-2が使用位置(最も下方)に位置する。以降、弁体32を交換する際に、上述の操作を繰り返すことで、第3弁体収納部82-3、第4弁体収納部82-4、第5弁体収納部82-5、第6弁体収納部82-6の順に使用位置に設置される弁体収容部82が変わり、弁体32が交換される。
【0047】
上記構成によれば、バルブ交換ユニット80により、使用中の弁体32を排出するとともに、新しい弁体32を設置することができる。これにより、装置を分解することなく、弁体32の交換等のメンテナンスを行うことができる。また、弁体収納部82内に、弁体32に加えて、第1のばね体44が収納されている。したがって、バルブ交換ユニット80のシリンダ86が回動して弁体32が移動(公転)する際に、第1のばね体44のばね力によって弁体32がケーシング(上ケース)6の弁受け面6aに押し付けられて転動(自転)する。弁受け面6aは、適度な粗面とする。これにより、弁体32が弁シート41に着座する位置が変化するので、弁体32の特定箇所にスケールが堆積するのを防ぐことができる。その結果、弁体32を廃棄することなく、弁体32の交換を行うことができる。
【0048】
複数の弁体収納部82が、回転軸心AXの周方向に離間して配置されている。これにより、複数の弁体32を有するバルブ交換ユニット80を限られたスペース内に設置できる。
【0049】
本発明の第2実施形態に係る弁装置34Aについて
図9~12により説明する。第2実施形態の弁装置34Aでは、バルブ交換ユニット80Aが、弁体32の移動時に弁体32を清掃する清掃エリア114を有している。その他の構成は、第1実施形態の弁装置34と同じである。第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。以下に、第1実施形態との相違点である清掃エリア114を説明する。
【0050】
清掃エリア114は、パイロット弁ユニット30のケーシング(上ケース)6に設けられている。
図10および
図11に示すように、清掃エリア114は、弁体32の軌道に沿った円弧状に形成されている。清掃エリア114は、例えば、樹脂製のブラシまたはスポンジ等である。ただし、清掃エリア114は、これらに限定されない。バルブ交換ユニット80A(
図9)により弁体32が交換される際に、清掃エリア114により弁体32が清掃される。
【0051】
第2実施形態の構成によれば、第1実施形態と同様に、装置を分解することなく、弁体32の交換等のメンテナンスを行うことができるうえに、弁体32を廃棄することなく、弁体32の交換を行うことができる。
【0052】
さらに、バルブ交換ユニット80Aは、弁体32の移動時に弁体32に接触して清掃する清掃エリア114を有しているので、使用済みの弁体32を交換する際に、自動的に弁体32の清掃を行うことができる。
【0053】
図12は、清掃エリア114の変形例を示す。変形例の清掃エリア114Aは、弁体32の軌道に沿って複数の領域124に分かれている。
図12の変形例では、使用中でない弁体32が収納される5つの弁体収納部82に対応して、5つの領域124-1~124-5が設けられている。清掃エリア114Aの領域124は複数であればよく、
図12の変形例に限定されない。
【0054】
清掃エリア114Aに複数の領域124を設けることで、例えば、領域124ごとにブラシ、スポンジ等の目の粗さを変えたり、清掃領域124と非清掃領域124を設けたりして、使用状況に応じた清掃エリア114Aを設けることができる。
【0055】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、上記実施形態では、パイロット作動型の減圧弁について説明したが、本発明のバルブ交換機構は、パイロットバルブを有しない直動型の減圧弁にも適用できる。また、上記実施形態のバルブ交換ユニット80,80Aは、回転軸心AXに対して回転することで弁体収納部82を切り替えていたが、回転軸心AXに直交する方向にスライドさせることで弁体収納部82を切り替えてもよい。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1 主通路
18 主弁体
24 主弁駆動部(第2の弁駆動部)
30 パイロット弁ユニット
32 弁体
34,34A 弁装置
36 パイロット弁駆動部(第1の弁駆動部)
37 弁座ブロック
40 弁シート
42 シャフト部材
44 第1のばね体
49 圧力調整手段(閉弁力付加部材)
54 第2のばね体
62 パイロット室(流入路)
68 貫通路(流出路)
80,80A バルブ交換ユニット
82 弁体収納部
84 弁体切替機構
114,114A 清掃エリア
AX 回転軸心
PRV 減圧弁
S 蒸気(流体)