(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】ヒドロキシベンジルアミンの合成方法
(51)【国際特許分類】
C07C 213/00 20060101AFI20230915BHJP
C07C 215/50 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
C07C213/00
C07C215/50
(21)【出願番号】P 2022521159
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(86)【国際出願番号】 CN2020112960
(87)【国際公開番号】W WO2021093426
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】201911106922.X
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522138962
【氏名又は名称】台州市創源工業技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】徐 昌平
(72)【発明者】
【氏名】賈 彦栄
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-507023(JP,A)
【文献】米国特許第04507499(US,A)
【文献】Katsuhide Kamei,Synthesis, SAR syudies, and evaluation of 1,4-benzoxazepine derivatives as selective 5-HT1A receptor agonists with neuroprotective effect: Discovery of Piclozotan,Bioorganic & Medical Chemistry,2006年,vol.14,p.1978-1992
【文献】Sudipta Basu,Biology-oriented synthesis of a natural-product inspired oxepane collection yields a small-molecule activator of the Wnt-pathway,Proceeding of the National Academy of Sciences,2011年04月26日,Vol.108 No.17,p.6805-6810
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度計、滴下漏斗、電力調整可能な加熱マントル、撹拌機及び蒸留装置を備えた反応器に臭化水素酸を加え、撹拌しながらメトキシベンジルアミンを滴下し、前記メトキシベンジルアミンの滴下が完了したら加熱し始めて蒸留によって余分な水を除去するステップS1と、
留去温度が120℃以上に達する時に、加熱速度を下げて、還流状態にして前記反応器内の温度を126℃以上に保持し
て、過剰の水を除去し、生じたガスを有機溶剤で吸収し又は凍結回収し、前記ガスが生じなくなるまで観察するステップS2と、
前記ステップS2における材料を蒸留し続け、過剰の臭化水素酸を回収し、前記反応器内の温度が132℃以上に達したら停止するステップS3と、
前記ステップS3の前記反応器を冷却し、その中に水を加え、冷却しながら水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、沈殿物を生成させ、沈殿物が完全に消えるまで滴下し続けるステップS4と、
前記ステップS4でアルカリ不溶性有機物を抽出剤で抽出し、次に有機相で前記抽出剤を回収し、水相を保留するステップS5と、
冷却状態で、前記ステップS5の前記水相のpH値を塩酸で調整し、氷水で冷却して結晶化し、吸引濾過し、洗浄し、真空乾燥することによって完成品を得るステップS6と、を含むことを特徴とする、ヒドロキシベンジルアミンの合成方法。
【請求項2】
前記ステップS1において、前記臭化水素酸の質量濃度は1%以上であることを特徴とする、請求項1に記載のヒドロキシベンジルアミンの合成方法。
【請求項3】
前記ステップS1において、前記臭化水素酸の質量濃度は10%~48%であることを特徴とする、請求項1に記載のヒドロキシベンジルアミンの合成方法。
【請求項4】
前記ステップS1において、メトキシベンジルアミンは、2-メトキシベンジルアミン、3-メトキシベンジルアミン及び4-メトキシベンジルアミンのうち1種であることを特徴とする、請求項1に記載のヒドロキシベンジルアミンの合成方法。
【請求項5】
前記ステップS1において、仕込みモル比は、メトキシベンジルアミン:臭化水素酸=1:2~1:4であることを特徴とする、請求項1に記載のヒドロキシベンジルアミンの合成方法。
【請求項6】
前記ステップS1において、仕込みモル比は、メトキシベンジルアミン:臭化水素酸=1:2.5~1:4であることを特徴とする、請求項1に記載のヒドロキシベンジルアミンの合成方法。
【請求項7】
前記ステップS4において、滴下した水酸化ナトリウムの濃度は1%~60%であることを特徴とする、請求項1に記載のヒドロキシベンジルアミンの合成方法。
【請求項8】
前記ステップS4において、滴下した水酸化ナトリウムの濃度は10%~50%であることを特徴とする、請求項1に記載のヒドロキシベンジルアミンの合成方法。
【請求項9】
前記ステップS5において、前記アルカリ不溶性有機物を抽出するための前記抽出剤は、エーテル系物質又はベンゼンの同族体であることを特徴とする、請求項1に記載のヒドロキシベンジルアミンの合成方法。
【請求項10】
前記ステップS5において、前記アルカリ不溶性有機物を抽出するための前記抽出剤は、エーテル系物質又はベンゼンの同族体であり、前記エーテル系物質は、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ジブチルエーテル又はメチルtert-ブチルエーテルであり、前記ベンゼンの同族体は、ベンゼン、トルエン又はキシレンであることを特徴とする、請求項1に記載のヒドロキシベンジルアミンの合成方法。
【請求項11】
前記ステップS6において、前記塩酸の濃度は1%~37.5%であることを特徴とする、請求項1に記載のヒドロキシベンジルアミンの合成方法。
【請求項12】
前記ステップS6において、前記塩酸の濃度は10%~37.5%であることを特徴とする、請求項1に記載のヒドロキシベンジルアミンの合成方法。
【請求項13】
前記ステップS6において、pH値を9~10に調整することを特徴とする、請求項1に記載のヒドロキシベンジルアミンの合成方法。
【請求項14】
前記ステップS6において、真空乾燥条件は、絶対圧が10mmHg未満であり、室温で2時間回転して真空乾燥した後、10℃/時間の加熱速度で熱媒体の水を80℃まで加熱し、恒量になるまでベーキングすることを特徴とする、請求項1に記載のヒドロキシベンジルアミンの合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機合成の分野に属し、具体的にはヒドロキシベンジルアミンの合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシベンジルアミンは、アミノメチルフェノールと呼ばれ、重要な有機中間体であり、多くの分野で適用される。例えば、2-ヒドロキシベンジルアミンは、近年、絹織物の染色、アテローム性動脈硬化症及び高血圧症を治療するための薬物などの研究に適用され、3-ヒドロキシベンジルアミンは、染毛剤、抗菌剤、抗腫瘍薬などの研究に適用され、4-ヒドロキシベンジルアミンは、消化器系の薬物のイトプリドの重要な中間体である。
【0003】
従来のヒドロキシベンジルアミンの合成法は、原料の観点からすると、おおよそヒドロキシベンズアルデヒド法、ヒドロキシベンゾニトリル法及びメトキシベンジルアミン法に分けられる。前の2つの方法のほとんどには独自の利点を有するが、いくつかの不十分な欠点もあり、例えば、高圧が必要であり、触媒が高価であり、製品の分離と精製が容易でない。メトキシベンジルアミン法では、三臭化ホウ素脱メチル化法を用いてヒドロキシベンジルアミンを合成する人もいるが収率は低く、臭化水素酸脱メチル化法を用いて合成する人もいるが反応時に余分な水を蒸留して除去せず、過剰の臭化水素酸を回収しないため、反応温度が低く、反応速度と転化率が理想的ではない。この不足を補うために、市販の最高濃度48%の臭化水素酸を使用し、且つ投与量を上げると、原料の消費量が大きく、処理負荷が大きく、後続の中和における水酸化ナトリウムの投与量が増加するという欠陥を直接もたらすにも関わらず、効果はまだ理想的ではなく、収率は90%未満である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術に存在する問題に鑑み、本発明の目的は、触媒なしで常圧下で完了することができる合成方法を提供することであり、それは、プロセスが容易であり、原料の消費量が低く、反応時間が短いという特徴を有し、最終的に得られる生成物は、純度及び収率が高い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実験原理は、臭化水素酸の作用下でのメトキシベンジルアミンの脱メチル化反応であり、3-ヒドロキシベンジルアミンを一例とすると、その反応式は以下のとおりである。
【化1】
【0006】
上記の反応式から分かるように、臭化水素酸を反応器に滴下する時に、まず塩形成反応が起きる。この反応ステップでは、1当量の臭化水素酸を消費するため、1当量の該臭化水素酸に対応する水は余分になる。脱メチル化反応が起きる時に、1当量の臭化水素酸をゆっくりと消費するため、1当量の該臭化水素酸に対応する水は余分になる。それによって系内の臭化水素酸の濃度が低下し、同時に反応時の還流温度も低下し、最終的に臭化水素酸の脱メチル化作用を弱め、反応時間が長くなり、生成物の収率が低下することをもたらした。従って、過去には、化学者は市販の最高濃度48%の臭化水素酸を使用し、投与量を増やした。それは、原料の消費量の増加、処理負荷の増加及びその後の中和における水酸化ナトリウムの投与量の増加をもたらすが、その効果は限られた。本出願発明は、その問題に対処する。
【0007】
ヒドロキシベンジルアミンの合成方法は、
温度計、滴下漏斗、電力調整可能な加熱マントル、撹拌機及び蒸留装置を備えた反応器に臭化水素酸を加え、撹拌しながらメトキシベンジルアミンを滴下し、前記メトキシベンジルアミンの滴下が完了するまで加熱し始めて蒸留して余分な水を除去するステップS1と、
留去温度が120℃以上に達する時に、加熱速度を下げて、還流状態にし又は非常に遅い速度で留去して前記反応器内の温度を126℃以上に保持し、生じたガスを有機溶剤で吸収し又は凍結回収し、前記ガスが生じなくなるまで観察するステップS2と、
前記ステップS2における材料を蒸留し続け、過剰の臭化水素酸を回収し、前記反応器内の温度が132℃以上に達したら停止するステップS3と、
前記ステップS3の反応器を少し冷却し、その中に水を加え、冷却しながら水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、沈殿物を生成させ、沈殿物が完全に消えるまで滴下し続けるステップであって、加えられる水の量は多すぎると不適であり、後続の冷却過程において、結晶化のために撹拌が困難にならないようにすれば十分である、ステップS4と、
前記ステップS4でアルカリ不溶性有機物を抽出剤で抽出し、次に有機相で前記抽出剤を回収し、水相を保留するステップS5と、
冷却状態で、前記ステップS5の前記水相のpH値を塩酸で調整し、氷水で冷却して結晶化し、吸引濾過し、洗浄し、真空乾燥することによって完成品を得るステップS6と、を含む。
【0008】
前記ヒドロキシベンジルアミンの合成方法は、前記ステップS1において、臭化水素酸の質量濃度は1%以上であり、好ましくは10%~48%であることを特徴とする。
【0009】
前記ヒドロキシベンジルアミンの合成方法は、前記ステップS1において、メトキシベンジルアミンは、2-メトキシベンジルアミン、3-メトキシベンジルアミン及び4-メトキシベンジルアミンのうち一種であることを特徴とする。ここで、2-メトキシベンジルアミンから得られる標的生成物は2-ヒドロキシベンジルアミンであり、3-メトキシベンジルアミンから得られる標的生成物は3-ヒドロキシベンジルアミンであり、4-メトキシベンジルアミンから得られる標的生成物は4-ヒドロキシベンジルアミン一水和物であり、それは1分子の水を失いやすいため、後続の真空乾燥時の温度及び真空度をよく制御すると、ほぼ無水状態の4-ヒドロキシベンジルアミンを得ることができる。
【0010】
前記ヒドロキシベンジルアミンの合成方法は、前記ステップS1において、仕込みモル比は、メトキシベンジルアミン:臭化水素酸=1:2~1:4であり、好ましくは1:2.5~1:4であることを特徴とする。
【0011】
前記ヒドロキシベンジルアミンの合成方法は、前記ステップS1及びステップS2において、蒸留して余分な水を除去し、留去温度が120℃以上に達する時に、加熱電力を下げて、還流状態にし又は非常に遅い速度で留去する。この操作の目的は、反応混合物中の臭化水素酸の濃度を増加させ、反応温度を上げて、反応器内の温度を126℃以上に保持し、より徹底的な反応に役立ち、且つ反応速度を向上させ、反応時間を短縮することである。ステップS3で蒸留し続ける目的は、反応温度を更に向上させ、より徹底的な反応を実現し、同時に過剰の臭化水素酸を回収し、原料の臭化水素酸の消費量、後続のステップの処理負荷及び水酸化ナトリウムの消費量を低減させることである。
【0012】
前記ヒドロキシベンジルアミンの合成方法は、前記ステップS4において、滴下する水酸化ナトリウムの濃度は1%~60%であり、好ましくは10%~50%であることを特徴とする。
【0013】
前記ヒドロキシベンジルアミンの合成方法は、前記ステップS5において、アルカリ不溶性有機物を抽出するための抽出剤は、エーテル系物質又はベンゼンの同族体であり、前記エーテル系物質は、好ましくはエチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ジブチルエーテル又はメチルtert-ブチルエーテルであり、前記ベンゼンの同族体は、好ましくはベンゼン、トルエン又はキシレンであることを特徴とする。
【0014】
前記ヒドロキシベンジルアミンの合成方法は、前記ステップS6において、前記塩酸の濃度は1%~37.5%であり、好ましくは10%~37.5%であることを特徴とする。
前記ヒドロキシベンジルアミンの合成方法は、前記ステップS6において、pH値を9~10に調整することを特徴とする。
【0015】
前記ヒドロキシベンジルアミンの合成方法は、前記ステップS6において、真空乾燥条件は、絶対圧が10mmHg未満であり、室温で2時間回転して真空乾燥した後、10℃/時間の加熱速度で熱媒体の水を80℃まで加熱し、恒量になるまでベーキングすることを特徴とする。
【0016】
【発明の効果】
【0017】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0018】
前記ステップS2において、還流状態で、メトキシベンジルアミンと臭化水素酸を加熱して蒸留することによって過剰の水を除去する目的は、反応混合物中の臭化水素酸の濃度を増加させ、反応温度を上げ、それにより臭化水素酸がメトキシベンジルアミンへの脱メチル化作用を促進し、それによって反応時間を短縮し、転化率を高めることである。本発明の別の利点は、高濃度の臭化水素酸の代わりに低濃度の臭化水素酸を使用できることである。
【0019】
有機溶媒でステップS2で生じた臭化メチルガスを吸収し又は凍結回収することは、環境保護及び資源の再利用に役立つ。
【0020】
前記ステップS3において、ガスが生じないことを観察するときまで、蒸留し続けると、反応温度を更に上げ、より徹底的な反応を実現し、同時に過剰の臭化水素酸を回収して原料の臭化水素酸の消費量を低減させ、且つ後続のステップの処理負荷及び原料の水酸化ナトリウムの消費量を低減させる。
【0021】
従って、本発明は、プロセスが容易であり、反応時間が短く、生成物が精製しやすく、原料の消費量が少なく、反応収率が高いという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】実施例1の2-ヒドロキシベンジルアミンのガスクロマトグラム。
【
図3】実施例1の2-ヒドロキシベンジルアミンの核磁気スペクトル。
【
図4】実施例2の3-ヒドロキシベンジルアミンのガスクロマトグラム。
【
図5】実施例2の3-ヒドロキシベンジルアミンの核磁気スペクトル。
【
図6】実施例3の4-ヒドロキシベンジルアミンの液体クロマトグラム。
【
図7】実施例3の4-ヒドロキシベンジルアミンの核磁気スペクトル。
【
図8】実施例4の4-ヒドロキシベンジルアミンの液体クロマトグラム。
【
図9】実施例4の4-ヒドロキシベンジルアミンの核磁気スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面及び具体的な実施例を参照しながら本発明を更に説明するが、本発明の保護範囲はその範囲に限定されない。
【0024】
実施例1:2-ヒドロキシベンジルアミンの合成
【0025】
温度計、滴下漏斗、電力調整可能な加熱マントル、撹拌機及び蒸留装置を備えた0.5L反応器に252.8グラム(1.5モル)の48%臭化水素酸を加え、撹拌機で撹拌しながら、滴下漏斗を用いて68.6グラム(0.5モル)の2-メトキシベンジルアミンをゆっくりと滴下した。滴下が完了したら、留去温度が120℃以上(この時、反応器内の温度は126℃以上)に達するまで加熱して蒸留して余分な水を除去した。次に加熱速度を下げて、還流状態にし又は非常に遅い速度で留去し、反応器内の温度を126℃以上に保持し、生じたガスを溶剤で吸収し又は凍結回収し、それによって環境を保護した。ガスが生じないことが観察されたら、改めて加熱速度を上げて、反応器内の温度が132℃以上になるまで蒸留し続け、過剰の臭化水素酸を回収した。少し冷却し、80mlの水を加え、水冷下で予冷した質量濃度33.3%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、沈殿物を生成させ、沈殿物が完全に消えるまで滴下し続けた。イソプロピルエーテルで抽出し、2回洗浄し、毎回30ミリリットルのイソプロピルエーテルを使用して抽出して洗浄した。有機相でイソプロピルエーテルを回収し、水相を氷水冷却下30.0%塩酸でpH9-10に調整し、撹拌して結晶化し、吸引濾過し、120mlの水で濾過ケーキを洗浄した後に水気を切り、真空乾燥し、即ち絶対圧が10mmHg未満の状態であり、室温で2時間回転して真空乾燥した後、10℃/時間の加熱速度で熱媒体の水を80℃まで加熱し、恒量になるまでベーキングし、合計58.3グラムの完成品を得た。カールフィッシャー法で測定した含水量は0.43%であり、モル収率は94.0%であった。
図2と
図3から分かるように、得られた製品は確かに2-ヒドロキシベンジルアミンであり、ガスクロマトグラムの含有量は99.0%以上に達した。
図2のガスクロマトグラムの各成分のデータは以下のとおりである。
【0026】
【0027】
実施例2:3-ヒドロキシベンジルアミンの合成
【0028】
温度計、滴下漏斗、電力調整可能な加熱マントル、撹拌機及び蒸留装置を備えた1L反応器に708.0グラム(3.5モル)の40%臭化水素酸を加え、撹拌機で撹拌しながら、滴下漏斗を用いて137.2グラム(1.0モル)の3-メトキシベンジルアミンをゆっくりと滴下し、滴下が完了したら、留去温度が120℃以上(この時、反応器内の温度は126℃以上)に達するまで加熱して蒸留して余分な水を除去した。加熱速度を下げて、還流状態にし又は非常に遅い速度で留去し、反応器内の温度を126℃以上に保持し、生じたガスを溶剤で吸収し又は凍結回収し、それによって環境を保護した。ガスが生じないことが観察されたら、改めて加熱速度を上げて、反応器内の温度が132℃以上になるまで蒸留し続け、過剰の臭化水素酸を回収した。少し冷却し、0ミリリットルの水を加え、水冷下で予冷した質量濃度30%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、沈殿物を生成させ、沈殿物が完全に消えるまで滴下し続けた。ベンゼンで抽出し、2回洗浄し、毎回50ミリリットルのベンゼンを使用して抽出して洗浄した。有機相でベンゼンを回収し、水相を氷水冷却下36.5%塩酸でpH9-10に調整し、撹拌して結晶化し、吸引濾過し、250ミリリットルの水で濾過ケーキを洗浄した後に水気を切り、真空乾燥し、即ち絶対圧が10mmHg未満の状態であり、室温で2時間回転して真空乾燥した後、10℃/時間の加熱速度で熱媒体の水を80℃まで加熱し、恒量になるまでベーキングし、合計119.3グラムの完成品を得た。カールフィッシャー法で測定した含水量は1.53%であり、モル収率は95.4%であった。
図4と
図5から分かるように、得られた製品は確かに3-ヒドロキシベンジルアミンであり、ガスクロマトグラムの含有量は99.0%以上に達した。
図4のガスクロマトグラムの各成分のデータは以下のとおりである。
【0029】
【0030】
実施例3:4-ヒドロキシベンジルアミンの合成
【0031】
温度計、滴下漏斗、電力調整可能な加熱マントル、撹拌機及び蒸留装置を備えた1L反応器に970.9グラム(3.0モル)の25%臭化水素酸を加え、撹拌機で撹拌しながら、滴下漏斗を用いて103.7グラム(0.7558モル)の4-メトキシベンジルアミンをゆっくりと滴下した。滴下が完了したら、留去温度が120℃以上(この時、反応器内の温度は126℃以上)に達するまで加熱して蒸留して余分な水を除去し、加熱速度を下げて、還流状態にし又は非常に遅い速度で留去し、反応器内の温度を126℃以上に保持し、生じたガスを溶剤で吸収し又は凍結回収し、それによって環境を保護した。ガスが生じないことが観察されたら、改めて加熱速度を上げて、反応器内の温度が132℃以上になるまで蒸留し続け、過剰の臭化水素酸を回収した。少し冷却し、200ミリリットルの水を加え、水冷下で予冷した質量濃度40%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、沈殿物を生成させ、沈殿物が完全に消えるまで滴下し続けた。トルエンで抽出し、2回洗浄し、毎回50ミリリットルのトルエンを使用して抽出して洗浄した。ベンゼンで抽出した有機相でトルエンを回収し、水相を氷水冷却下30.0%塩酸でpH9-10に調整し、撹拌して結晶化し、吸引濾過し、240ミリリットルの水で濾過ケーキを洗浄した後に水気を切り、真空乾燥し、即ち絶対圧が10mmHg未満の状態であり、室温で2時間回転して真空乾燥した後、10℃/時間の加熱速度で熱媒体の水を80℃まで加熱し、恒量になるまでベーキングし、合計86.9グラムの完成品を得た。カールフィッシャー法で測定した含水量は0.2%であり、モル収率は92.5%であった。
図6と
図7から分かるように、得られた製品は確かに4-ヒドロキシベンジルアミンであり、液体クロマトグラムの含有量は99.0%以上に達した。
図6の液体クロマトグラムの各成分のデータは以下のとおりである。
【0032】
【0033】
実施例4:4-ヒドロキシベンジルアミンの合成
【0034】
温度計、滴下漏斗、電力調整可能な加熱マントル、撹拌機及び蒸留装置を備えた0.5L反応器に実施例3で回収された231グラム(1.27モル)の44.5%臭化水素酸を加え、撹拌機で撹拌しながら、滴下漏斗を用いて43.56グラム(0.3175モル)の4-メトキシベンジルアミンをゆっくりと滴下した。滴下が完了したら、留去温度が120℃以上(この時、反応器内の温度は126℃以上)に達するまで加熱して蒸留して余分な水を除去した。加熱速度を下げて、還流状態にし又は非常に遅い速度で留去し、反応器内の温度を126℃以上に保持し、生じたガスを溶剤で吸収し又は凍結回収し、それによって環境を保護した。ガスの発生が観察されなくなったら、改めて加熱速度を上げて、反応器内の温度が132℃以上になるまで蒸留し続け、過剰の臭化水素酸を回収した。少し冷却し、60ミリリットルの水を加え、水冷下で予冷した質量濃度25%の水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、沈殿物を生成させ、沈殿物が完全に消えるまで滴下し続けた。メチルtert-ブチルエーテルで抽出し、2回洗浄し、毎回30ミリリットルのメチルtert-ブチルエーテルを使用して抽出して洗浄した。有機相でメチルtert-ブチルエーテルを回収し、水相を氷水冷却下で30.0%塩酸でpH9-10に調整し、撹拌して結晶化し、吸引濾過し、200ミリリットルの水で濾過ケーキを洗浄した後に水気を切り、真空乾燥し、即ち絶対圧が10mmHg未満の状態であり、室温で2時間回転して真空乾燥した後、10℃/時間の加熱速度で熱媒体の水を80℃まで加熱し、恒量になるまでベーキングし、合計37.7グラムの完成品を得た。カールフィッシャー法で測定した含水量は3.56%であり、モル収率は92.4%であった。
図8と
図9から分かるように、得られた製品は確かに4-ヒドロキシベンジルアミンであり、液体クロマトグラムの含有量は99.0%以上に達した。
図8の液体クロマトグラムの各成分のデータは以下のとおりである。
【0035】
【0036】
上記実施例では、電力調整可能な加熱マントル、撹拌機、反応器などの関連する機器及び器具はいずれも従来技術の常用の機器及び器具である。
【0037】
(付記)
(付記1)
温度計、滴下漏斗、電力調整可能な加熱マントル、撹拌機及び蒸留装置を備えた反応器に臭化水素酸を加え、撹拌しながらメトキシベンジルアミンを滴下し、前記メトキシベンジルアミンの滴下が完了したら加熱し始めて蒸留によって余分な水を除去するステップS1と、
留去温度が120℃以上に達する時に、加熱速度を下げて、還流状態にし又は非常に遅い速度で留去して前記反応器内の温度を126℃以上に保持し、生じたガスを有機溶剤で吸収し又は凍結回収し、前記ガスが生じなくなるまで観察するステップS2と、
前記ステップS2における材料を蒸留し続け、過剰の臭化水素酸を回収し、前記反応器内の温度が132℃以上に達したら停止するステップS3と、
前記ステップS3の前記反応器を少し冷却し、その中に水を加え、冷却しながら水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、沈殿物を生成させ、沈殿物が完全に消えるまで滴下し続けるステップS4と、
前記ステップS4でアルカリ不溶性有機物を抽出剤で抽出し、次に有機相で前記抽出剤を回収し、水相を保留するステップS5と、
冷却状態で、前記ステップS5の前記水相のpH値を塩酸で調整し、氷水で冷却して結晶化し、吸引濾過し、洗浄し、真空乾燥することによって完成品を得るステップS6と、を含むことを特徴とする、ヒドロキシベンジルアミンの合成方法。
【0038】
(付記2)
前記ステップS1において、前記臭化水素酸の質量濃度は1%以上であり、好ましくは10%~48%であることを特徴とする、付記1に記載のヒドロキシベンジルアミンの合成方法。
【0039】
(付記3)
前記ステップS1において、メトキシベンジルアミンは、2-メトキシベンジルアミン、3-メトキシベンジルアミン及び4-メトキシベンジルアミンのうち1種であることを特徴とする、付記1に記載のヒドロキシベンジルアミンの合成方法。
【0040】
(付記4)
前記ステップS1において、仕込みモル比は、メトキシベンジルアミン:臭化水素酸=1:2~1:4であり、好ましくは1:2.5~1:4であることを特徴とする、付記1に記載のヒドロキシベンジルアミンの合成方法。
【0041】
(付記5)
前記ステップS4において、滴下した水酸化ナトリウムの濃度は1%~60%であり、好ましくは10%~50%であることを特徴とする、付記1に記載のヒドロキシベンジルアミンの合成方法。
【0042】
(付記6)
前記ステップS5において、前記アルカリ不溶性有機物を抽出するための前記抽出剤は、エーテル系物質又はベンゼンの同族体であり、前記エーテル系物質は、好ましくはエチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ジブチルエーテル又はメチルtert-ブチルエーテルであり、前記ベンゼンの同族体は、好ましくはベンゼン、トルエン又はキシレンであることを特徴とする、付記1に記載のヒドロキシベンジルアミンの合成方法。
【0043】
(付記7)
前記ステップS6において、前記塩酸の濃度は1%~37.5%であり、好ましくは10%~37.5%であることを特徴とする、付記1に記載のヒドロキシベンジルアミンの合成方法。
【0044】
(付記8)
前記ステップS6において、pH値を9~10に調整することを特徴とする、付記1に記載のヒドロキシベンジルアミンの合成方法。
【0045】
(付記9)
前記ステップS6において、真空乾燥条件は、絶対圧が10mmHg未満であり、室温で2時間回転して真空乾燥した後、10℃/時間の加熱速度で熱媒体の水を80℃まで加熱し、恒量になるまでベーキングすることを特徴とする、付記1に記載のヒドロキシベンジルアミンの合成方法。