(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】超音波ホーン及びボンディング装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20230915BHJP
H01L 21/607 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
H01L21/60 301G
H01L21/607 C
(21)【出願番号】P 2023504640
(86)(22)【出願日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 JP2022038594
(87)【国際公開番号】W WO2023063431
(87)【国際公開日】2023-04-20
【審査請求日】2023-01-23
(32)【優先日】2021-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宗像 広志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄平
(72)【発明者】
【氏名】ディトリ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】テヘラーニ モー
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-506271(JP,A)
【文献】特開平3-124039(JP,A)
【文献】特開平10-116851(JP,A)
【文献】特開平4-372146(JP,A)
【文献】特開2000-138252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 21/607
H01L 21/603
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンディング装置に用いられる超音波ホーンであって、
電圧を印加した際に厚み方向に変形する板状の複数の第1圧電素子を積層した第1積層体が内部に取付けられて前後方向の超音波振動を発生させる縦振動発生部と、
前記縦振動発生部から前方に向かって延びて前端部にボンディングツールが取付けられるホーン部と、
前記縦振動発生部から後方に向かって延びるねじり振動発生部と、を含み、
前記ねじり振動発生部は、
前記縦振動発生部から後方に向かって延びて、角柱状部を含む本体と、
電圧を印加した際にせん断変形する板状の複数の第2圧電素子を積層した第2積層体であって、積層方向が前後方向に直交する幅方向となるように前記角柱状部の両側面にそれぞれ取付けられる2つの第2積層体と、
各前記第2積層体の幅方向外側にそれぞれ積層されたウェイトと、
各前記ウェイトと各前記第2積層体と前記角柱状部とを囲み、各前記ウェイトを介して複数の前記第2圧電素子を前記角柱状部に押しつけて各前記第2圧電素子をそれぞれ厚み方向に与圧する与圧リングと、を備えること、
を特徴とする超音波ホーン。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波ホーンであって、
各前記第2積層体は、高周波電源から高周波電力が印加された際に前後方向及び幅方向に直交する上下方向にせん断変形し、せん断変形の方向が互いに反対となるように前記角柱状部の両側面にそれぞれ取付けられるとともに前記高周波電源に接続されていること、
を特徴とする超音波ホーン。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波ホーンであって、
前記第2積層体は、両端と各前記第2圧電素子の間とに電極板がそれぞれ積層されており、
複数の前記電極板は、積層方向に向かって前記高周波電源の出力端子とグランド端子とに交互に接続されており、
各前記第2圧電素子は、分極方向が交互に反対になるように積層されており、
前記第2積層体は、前記角柱状部に対して幅方向の対称位置に配置される各前記第2圧電素子の分極方向が上下反対となるように前記角柱状部の両側面にそれぞれ取付けられており、前記角柱状部に対して幅方向の対称位置に配置される各前記電極板が前記高周波電源の同一の端子に接続されていること、
を特徴とする超音波ホーン。
【請求項4】
請求項2に記載の超音波ホーンであって、
前記第2積層体は、両端と各前記第2圧電素子の間とに電極板がそれぞれ積層されており、
複数の前記電極板は、積層方向に向かって前記高周波電源の出力端子とグランド端子とに交互に接続されており、
各前記第2圧電素子は、分極方向が交互に反対になるように積層されており、
前記第2積層体は、前記角柱状部に対して幅方向の対称位置に配置される各前記第2圧電素子の分極方向が同一となるように前記角柱状部の両側面にそれぞれ取付けられており、前記角柱状部に対して幅方向の対称位置に配置される各前記電極板が前記高周波電源の異なる端子に接続されていること、
を特徴とする超音波ホーン。
【請求項5】
請求項1に記載の超音波ホーンであって、
前記与圧リングは、熱を印加すると収縮する形状記憶合金で構成されていること、
を特徴とする超音波ホーン。
【請求項6】
請求項2に記載の超音波ホーンであって、
前記与圧リングは、熱を印加すると収縮する形状記憶合金で構成されていること、
を特徴とする超音波ホーン。
【請求項7】
請求項3に記載の超音波ホーンであって、
前記与圧リングは、熱を印加すると収縮する形状記憶合金で構成されていること、
を特徴とする超音波ホーン。
【請求項8】
請求項4に記載の超音波ホーンであって、
前記与圧リングは、熱を印加すると収縮する形状記憶合金で構成されていること、
を特徴とする超音波ホーン。
【請求項9】
請求項1に記載の超音波ホーンであって、
前記縦振動発生部は、
前後方向に延びる四角い枠体で、上下方向に貫通するとともに前後方向に延び、積層方向が前後方向となるように前記第1積層体が取付けられる開口を有するケーシングと、
前記開口の前後方向の端面と前記第1積層体との間に取付けられて複数の前記第1圧電素子を厚み方向に与圧する与圧楔と、を備えること、
を特徴とする超音波ホーン。
【請求項10】
請求項9に記載の超音波ホーンであって、
前記第1積層体は、両端と各前記第1圧電素子の間とに他の電極板がそれぞれ積層されており、
複数の前記他の電極板は、積層方向に向かって他の高周波電源の出力端子とグランド端子とに交互に接続されており、
各前記第1圧電素子は、分極方向が交互に反対になるように積層されていること、
を特徴とする超音波ホーン。
【請求項11】
請求項9に記載の超音波ホーンであって、
前記与圧リングは、熱を印加すると収縮する形状記憶合金で構成されていること、
を特徴とする超音波ホーン。
【請求項12】
請求項10に記載の超音波ホーンであって、
前記与圧リングは、熱を印加すると収縮する形状記憶合金で構成されていること、
を特徴とする超音波ホーン。
【請求項13】
請求項2に記載の超音波ホーンであって、
前記縦振動発生部は、
前後方向に延びる四角い枠体で、上下方向に貫通するとともに前後方向に延び、積層方向が前後方向となるように前記第1積層体が取付けられる開口を有するケーシングと、
前記開口の前後方向の端面と前記第1積層体との間に取付けられて複数の前記第1圧電素子を厚み方向に与圧する与圧楔と、を備え
前記第1積層体は、両端と各前記第1圧電素子の間とに他の電極板がそれぞれ積層されており、
複数の前記他の電極板は、積層方向に向かって他の高周波電源の出力端子とグランド端子とに交互に接続されており、
各前記第1圧電素子は、分極方向が交互に反対になるように積層されていること、
を特徴とする超音波ホーン。
【請求項14】
請求項3に記載の超音波ホーンであって、
前記縦振動発生部は、
前後方向に延びる四角い枠体で、上下方向に貫通するとともに前後方向に延び、積層方向が前後方向となるように前記第1積層体が取付けられる開口を有するケーシングと、
前記開口の前後方向の端面と前記第1積層体との間に取付けられて複数の前記第1圧電素子を厚み方向に与圧する与圧楔と、を備え
前記第1積層体は、両端と各前記第1圧電素子の間とに他の電極板がそれぞれ積層されており、
複数の前記他の電極板は、積層方向に向かって他の高周波電源の出力端子とグランド端子とに交互に接続されており、
各前記第1圧電素子は、分極方向が交互に反対になるように積層されていること、
を特徴とする超音波ホーン。
【請求項15】
請求項4に記載の超音波ホーンであって、
前記縦振動発生部は、
前後方向に延びる四角い枠体で、上下方向に貫通するとともに前後方向に延び、積層方向が前後方向となるように前記第1積層体が取付けられる開口を有するケーシングと、
前記開口の前後方向の端面と前記第1積層体との間に取付けられて複数の前記第1圧電素子を厚み方向に与圧する与圧楔と、を備え
前記第1積層体は、両端と各前記第1圧電素子の間とに他の電極板がそれぞれ積層されており、
複数の前記他の電極板は、積層方向に向かって他の高周波電源の出力端子とグランド端子とに交互に接続されており、
各前記第1圧電素子は、分極方向が交互に反対になるように積層されていること、
を特徴とする超音波ホーン。
【請求項16】
請求項13に記載の超音波ホーンであって、
前記与圧リングは、熱を印加すると収縮する形状記憶合金で構成されていること、
を特徴とする超音波ホーン。
【請求項17】
請求項14に記載の超音波ホーンであって、
前記与圧リングは、熱を印加すると収縮する形状記憶合金で構成されていること、
を特徴とする超音波ホーン。
【請求項18】
請求項15に記載の超音波ホーンであって、
前記与圧リングは、熱を印加すると収縮する形状記憶合金で構成されていること、
を特徴とする超音波ホーン。
【請求項19】
ボンディング装置であって、
Y軸に沿って前後方向の後方から前方の前端部に向かって延びて、前記前端部にボンディングツールが取付けられる、超音波ホーンと、
前記超音波ホーンに沿って位置し、ねじり振動を発生させて前記超音波ホーンに前記Y軸の周りのトルクを発生させる、ねじり振動発生部と、を備え、
前記ねじり振動発生部は、
前記Y軸に垂直なX軸に沿った幅方向に前記Y軸から所定の距離をおいて位置する側面を少なくとも有する本体と、
前記側面に隣接して位置する、少なくとも1つの第2積層体であって、せん断変形してトルクのための往復回転運動を発生させる少なくとも1組の第2圧電素子を有する第2積層体と、を備
え、
前記ねじり振動発生部がさらに、
前記本体内に位置し、前記第2積層体のための前記側面を提供する角柱状部と、
前記第2積層体の近辺に位置するウェイトであって、これにより、前記第2積層体がせん断変形した際に、前記超音波ホーンにおける前記Y軸の周りのトルクを増強するウェイトと、を備えること、
を特徴とするボンディング装置。
【請求項20】
請求項
19に記載のボンディング装置であって、
前記ねじり振動発生部がさらに、前記ウェイトと前記第2積層体と前記角柱状部とを囲み、前記ウェイトを介して前記第2圧電素子を前記角柱状部に押しつけて前記第2圧電素子を厚み方向に与圧する与圧リングを備えること、
を特徴とするボンディング装置。
【請求項21】
請求項
20に記載のボンディング装置であって、
前記与圧リングは、熱を印加すると収縮する形状記憶合金で構成されていること、
を特徴とするボンディング装置。
【請求項22】
請求項
20に記載のボンディング装置であって、
前記与圧リングは、クランプ式与圧リングであること、
を特徴とするボンディング装置。
【請求項23】
ボンディング装置であって、
Y軸に沿って前後方向の後方から前方の前端部に向かって延びて、前記前端部にボンディングツールが取付けられる、超音波ホーンと、
前記超音波ホーンに沿って位置し、ねじり振動を発生させて前記超音波ホーンに前記Y軸の周りのトルクを発生させる、ねじり振動発生部と、を備え、
前記ねじり振動発生部は、
前記Y軸に垂直なX軸に沿った幅方向に前記Y軸から所定の距離をおいて位置する側面を少なくとも有する本体と、
前記側面に隣接して位置する、少なくとも1つの第2積層体であって、せん断変形してトルクのための往復回転運動を発生させる少なくとも1組の第2圧電素子を有する第2積層体と、を備え、
前記超音波ホーンは、前記超音波ホーンに沿って位置する縦振動発生部であって、電圧を印加した際に厚み方向に変形する複数の第1圧電素子を有する第1積層体を少なくとも備え、これにより、前記超音波ホーンにおいて前記前後方向の超音波振動を発生させる縦振動発生部を含
み、
前記縦振動発生部は、斜面を有する与圧楔であって、前記第1積層体の端面に位置し、複数の前記第1圧電素子を厚み方向に与圧する与圧楔を備えること、
を特徴とするボンディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、先端に取付けられたボンディングツールを超音波振動させる超音波ホーンの構造とその超音波ホーンを備えるボンディング装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ダイの電極とリードフレームのリードとの間をワイヤで接続するワイヤボンディング装置が多く用いられている。ワイヤボンディング装置は、キャピラリによってワイヤを電極の上に押し付けた状態でキャピラリを超音波振動させてワイヤと電極とをボンディングした後、ワイヤをリードまで掛け渡し、掛け渡したワイヤをリードの上に押しつけた状態でキャピラリを超音波させてワイヤとリードとをボンディングする。
【0003】
一方、ボンディング品質の向上と、ボンディング強度の向上に対応するため、ボンディングツールの先端を複数の方向に振動させる方法が提案されている。例えば、特許文献1では、ノッチにより電極面と平行な方向に分離された2つの領域が形成された圧電素子を積層した超音波振動子を超音波ホーンに取付け、圧電素子の各領域に異なる周波数の電力を供給して超音波ホーンに取付けられたボンディングツールの先端を複数の方向に振動させてスクラブ運動を発生させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された方法では、超音波振動子の構造や駆動装置が複雑になってしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本開示は、簡便な構造で先端に取り付けたボンディングツールを複数の方向に振動させる超音波ホーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の超音波ホーンは、ボンディング装置に用いられる超音波ホーンであって、電圧を印加した際に厚み方向に変形する板状の複数の第1圧電素子を積層した第1積層体が内部に取付けられて前後方向の超音波振動を発生させる縦振動発生部と、縦振動発生部から前方に向かって延びて前端部にボンディングツールが取付けられるホーン部と、縦振動発生部から後方に向かって延びるねじり振動発生部と、を含み、ねじり振動発生部は、縦振動発生部から後方に向かって延びて、角柱状部を含む本体と、電圧を印加した際にせん断変形する板状の複数の第2圧電素子を積層した第2積層体であって、積層方向が前後方向に直交する幅方向となるように角柱状部の両側面にそれぞれ取付けられる2つの第2積層体と、各第2積層体の幅方向外側にそれぞれ積層されたウェイトと、各ウェイトと各第2積層体と角柱状部とを囲み、各ウェイトを介して複数の第2圧電素子を角柱状部に押しつけて各第2圧電素子をそれぞれ厚み方向に与圧する与圧リングと、を備えること、を特徴とする。
【0008】
このように、縦振動発生部とは別に電圧を印加した際にせん断変形する板状の複数の第2圧電素子を積層した第2積層体とウェイトとを本体の角柱状部の側面に取付けたねじり振動発生部を設けることにより、簡便な構成で先端に取り付けたボンディングツールを複数の方向に振動させることができる。
【0009】
本開示の超音波ホーンにおいて、各第2積層体は、高周波電源から高周波電力が印加された際に前後方向及び幅方向に直交する上下方向にせん断変形し、せん断変形の方向が互いに反対となるように角柱状部の両側面にそれぞれ取付けられるとともに高周波電源に接続されてもよい。
【0010】
これにより、各第2積層体に高周波電力を印加した際に角柱状部の左右の第2積層体が上下方向反対にせん断変形し、各ウェイトをそれぞれ上下方向反対に移動させるので、角柱状部にねじりモーメントを印加し、角柱状部をねじり振動させることができる。
【0011】
本開示の超音波ホーンにおいて、第2積層体は、両端と各第2圧電素子の間とに電極板がそれぞれ積層されており、複数の電極板は、積層方向に向かって高周波電源の出力端子とグランド端子とに交互に接続されており、各第2圧電素子は、分極方向が交互に反対になるように積層されており、第2積層体は、角柱状部に対して幅方向の対称位置に配置される各第2圧電素子の分極方向が上下反対となるように角柱状部の両側面にそれぞれ取付けられており、角柱状部に対して幅方向の対称位置に配置される各電極板が高周波電源の同一の端子に接続されてもよい。
【0012】
このように第2圧電素子と高周波電源とを接続すると電極板を挟んで隣接する2つの第2圧電素子に印加される高周波電力の電流の幅方向の流れの方向が反対方向となる。一方、隣接する2つの第2圧電素子の分極方向は互いに反対になっている。このため、分極方向が反対の2つの第2圧電素子に反対方向の電流が流れる結果、2つの第2圧電素子は、同じ方向にせん断変形する。これにより、第2積層体は一体となってせん断変形する。
【0013】
また、第2積層体は、角柱状部に対して幅方向の対称位置に配置される各第2圧電素子の分極方向が上下反対となるように角柱状部の両側面にそれぞれ取付けられている。一方、電極板は角柱状部に対して対称となるよう配置されている。従って電流の流れ方向は、角柱状部の左右で対称となる。このため、角柱状部に対して幅方向の対称位置に配置される各第2圧電素子のせん断変形の方向が、例えば、左側が上方向、右側が下方向のように上下反対となる。これにより、各第2積層体に高周波電力を印加した際に角柱状部の左右の第2積層体が上下反対方向にせん断変形し、各ウェイトをそれぞれ上下反対方向に移動させるので、角柱状部にねじりモーメントを印加し、角柱状部をねじり振動させることができる。
【0014】
本開示の超音波ホーンにおいて、第2積層体は、両端と各第2圧電素子の間とに電極板がそれぞれ積層されており、複数の電極板は、積層方向に向かって高周波電源の出力端子とグランド端子とに交互に接続されており、各第2圧電素子は、分極方向が交互に反対になるように積層されており、第2積層体は、角柱状部に対して幅方向の対称位置に配置される各第2圧電素子の分極方向が同一となるように角柱状部の両側面にそれぞれ取付けられており、角柱状部に対して幅方向の対称位置に配置される各電極板が高周波電源の異なる端子に接続されてもよい。
【0015】
第2積層体は、角柱状部に対して幅方向の対称位置に配置される各第2圧電素子の分極方向が同一となるように角柱状部の両側面にそれぞれ取付けられている。一方、電極板は角柱状部に対して対称ではなく、角柱状部に対して幅方向の対称位置に配置される各電極が高周波電源の異なる端子に接続されている。このため、角柱状部に対して幅方向の対称位置に配置される各第2圧電素子に流れる電流の方向は反対方向となる。このため、角柱状部に対して幅方向の対称位置に配置される各第2圧電素子のせん断変形の方向が、例えば、左側が上方向、右側が下方向のように上下反対となる。これにより、各第2積層体に高周波電力を印加した際に角柱状部の左右の第2積層体が上下反対方向にせん断変形し、各ウェイトをそれぞれ上下反対方向に移動させるので、角柱状部にねじりモーメントを印加し、角柱状部をねじり振動させることができる。
【0016】
本開示の超音波ホーンにおいて、与圧リングは、熱を印加すると収縮する形状記憶合金で構成されてもよい。
【0017】
これにより、本体の四角形状部の両側に第2積層体とウェイトとを取付けた状態でその外周に与圧リングをはめて熱を印加するという簡単な方法で第2圧電素子を与圧することができる。
【0018】
本開示の超音波ホーンにおいて、縦振動発生部は、前後方向に延びる四角い枠体で、上下方向に貫通するとともに前後方向に延び、積層方向が前後方向となるように第1積層体が取付けられる開口を有するケーシングと、開口の前後方向の端面と第1積層体との間に取付けられて複数の第1圧電素子を厚み方向に与圧する与圧楔と、を備えてもよい。
【0019】
このように、簡便な構成で縦振動発生部を構成することができる。
【0020】
本開示の超音波ホーンにおいて、第1積層体は、両端と各第1圧電素子の間とに他の電極板がそれぞれ積層されており、複数の他の電極板は、積層方向に向かって他の高周波電源の出力端子とグランド端子とに交互に接続されており、各第1圧電素子は、分極方向が交互に反対になるように積層されてもよい。
【0021】
このように第1圧電素子と高周波電源とを接続すると電極板を挟んで隣接する2つの第1圧電素子に印加される高周波電力の電流の流れる方向は反対方向となる。一方、隣接する2つの第1圧電素子の分極方向は互いに反対になっている。このため、2つの第1圧電素子は、厚さ方向に同様に変形する。これにより、縦振動発生部に前後方向の振動を発生させることができる。
【0022】
本開示のボンディング装置は、Y軸に沿って前後方向の後方から前方の前端部に向かって延びて、前端部にボンディングツールが取付けられる、超音波ホーンと、超音波ホーンに沿って位置し、ねじり振動を発生させて超音波ホーンにY軸の周りのトルクを発生させる、ねじり振動発生部と、を備え、ねじり振動発生部は、Y軸に垂直なX軸に沿った幅方向にY軸から所定の距離をおいて位置する側面を少なくとも有する本体と、側面に隣接して位置する、少なくとも1つの第2積層体であって、せん断変形してトルクのための往復回転運動を発生させる少なくとも1組の第2圧電素子を有する第2積層体と、を備え、ねじり振動発生部がさらに、本体内に位置し、第2積層体のための側面を提供する角柱状部と、第2積層体の近辺に位置するウェイトであって、これにより、第2積層体がせん断変形した際に、超音波ホーンにおけるY軸の周りのトルクを増強するウェイトと、を備えること、を特徴とする。
【0024】
本開示のボンディング装置において、ねじり振動発生部がさらに、ウェイトと第2積層体と角柱状部とを囲み、ウェイトを介して第2圧電素子を角柱状部に押しつけて第2圧電素子を厚み方向に与圧する与圧リングを備えてもよい。
【0025】
本開示のボンディング装置において、与圧リングは、熱を印加すると収縮する形状記憶合金で構成されてもよい。
【0026】
本開示のボンディング装置において、与圧リングは、クランプ式与圧リングでもよい。
【0027】
本開示のボンディング装置は、Y軸に沿って前後方向の後方から前方の前端部に向かって延びて、前端部にボンディングツールが取付けられる、超音波ホーンと、超音波ホーンに沿って位置し、ねじり振動を発生させて超音波ホーンにY軸の周りのトルクを発生させる、ねじり振動発生部と、を備え、ねじり振動発生部は、Y軸に垂直なX軸に沿った幅方向にY軸から所定の距離をおいて位置する側面を少なくとも有する本体と、側面に隣接して位置する、少なくとも1つの第2積層体であって、せん断変形してトルクのための往復回転運動を発生させる少なくとも1組の第2圧電素子を有する第2積層体と、を備え、超音波ホーンは、超音波ホーンに沿って位置する縦振動発生部であって、電圧を印加した際に厚み方向に変形する複数の第1圧電素子を有する第1積層体を少なくとも備え、これにより、超音波ホーンにおいて前後方向の超音波振動を発生させる縦振動発生部を含み、縦振動発生部は、斜面を有する与圧楔であって、第1積層体の端面に位置し、複数の第1圧電素子を厚み方向に与圧する与圧楔を備えること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本開示は、簡便な構造で先端に取り付けたボンディングツールを複数の方向に振動させる超音波ホーンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施形態の超音波ホーンを示す平面図である。
【
図2】実施形態の超音波ホーンを前端側から見た立面図である。
【
図3】
図1に示すA-A断面であり、超音波ホーンの縦振動発生部の断面を示す図である。
【
図4】
図1に示すB-B断面であり、超音波ホーンのねじり振動発生部の断面を示す図である。
【
図6】ねじり振動発生部の動作を示す説明図である。
【
図7】他の実施形態の超音波ホーンのねじり振動発生部の断面を示す図である。
【
図8】
図7に示すねじり振動発生部の動作を示す説明図である。
【
図9】他の実施形態の超音波ホーンのねじり振動発生部の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら実施形態の超音波ホーン100について説明する。
図1に示す超音波ホーン100は、ワイヤボンディング装置に取付けられてワイヤボンディングを行うものである。
【0033】
図1に示すように、実施形態の超音波ホーン100は、縦振動発生部10と、ホーン部20と、ねじり振動発生部30とを備えている。尚、以下の説明では、超音波ホーン100の長手方向の中心軸101の延びる方向をY方向又は前後方向、水平面内でY方向と直角方向をX方向又は幅方向、上下方向をZ方向とし、また、ホーン部20の側を前方又はY方向プラス側、ねじり振動発生部30の側を後方又はY方向マイナス側として説明する。尚、中心軸101は仮想軸である。また、Y方向プラス側に向かって右側を超音波ホーン100の右側、反対側を左側として説明する。
【0034】
縦振動発生部10は、ケーシング11と、第1積層体15と、与圧楔16とで構成されている。
【0035】
図1、2に示すように、ケーシング11は、チタン等の金属製の前後方向に延びる四角い枠体で、中央部に上下方向に貫通するとともに前後方向に延びる開口12が設けられている。また、ケーシング11の左右の外側面には、X方向プラス側とX方向マイナス側とにそれぞれ延びる取付けアーム17が設けられている。取付けアーム17には、超音波ホーン100をワイヤボンディング装置に固定するボルト穴17aが設けられている。開口12の中には、複数の第1圧電素子13を積層した第1積層体15が取付けられている。第1積層体15の両端と各第1圧電素子13の間とには電極板14がそれぞれ積層されている。また、開口12の後端面12rと第1積層体15の後面との間には複数の第1圧電素子13を厚み方向に与圧する与圧楔16が取付けられている。
【0036】
ホーン部20は、縦振動発生部10のケーシング11から前方に向かって延びて、縦振動発生部10で発生した前後方向の超音波振動を増幅する部分である。ホーン部20は、縦振動発生部10のケーシング11と一体に形成された金属製で、ケーシング11の前端に接続される根元部から前端部21に向かって幅、或いは直径が細くなっている。
図2に示すように、ホーン部20の前端部21には、ボンディングツールであるキャピラリ51が取付けられている。
【0037】
ねじり振動発生部30は、縦振動発生部10のケーシング11の後端に接続される接続部32と、後端部34と、接続部32と後端部34との中間に設けられた断面が四角い角柱状部33とで構成される本体31と、本体31の角柱状部33の左右の側面331,332に取付けられた第2積層体371,372と、第2積層体371,372の幅方向外側に取付けられたウェイト381,382と、与圧リング39とで構成されている。ここで、左右の側面331,332は幅方向に対象の位置に配置されている面である。
【0038】
次に
図3を参照しながら縦振動発生部10の詳細構造について説明する。先に
図1を参照して説明したように、ケーシング11の開口12の中には、第1積層体15が取付けられており、開口12の後端面12rと第1積層体15の後端面との間には、与圧楔16が取付けられている。
【0039】
第1積層体15は、電圧を印加した際に厚み方向に変形する板状の第1圧電素子13と、各第1圧電素子13の間と両端に積層された電極板14a,14bとで構成されている。
【0040】
第1積層体15の第1圧電素子13は、図中に白抜き矢印で示す分極方向P1が交互に反対になるように積層されている。ここで、分極方向P1は、第1圧電素子13の内部の電位がマイナス側からプラス側に向かう方向である。
図3に示すように、一番前方の第1圧電素子13は、分極方向P1がY方向プラス側、前方から二番目の第1圧電素子13は、分極方向P1がY方向マイナス側となるように電極板14aを挟んで積層されている。同様に、前方から三番目の第1圧電素子13は分極方向P1が前方から二番目の第1圧電素子13の分極方向P1と反対にY方向プラス側となるように電極板14bを挟んで積層されている。このように、第1圧電素子13は、分極方向P1が交互に反対になるように電極板14a,14bを挟んで積層されている。
【0041】
第1圧電素子13の分極方向P1の側に積層されている電極板14bは、第1高周波電源41のグランド端子41Gに接続されており、第1圧電素子13の分極方向P1と反対側に積層されている電極板14aは第1高周波電源41の出力端子41Pに接続されている。このように、複数の電極板14a,14bは、積層方向に向かって第1高周波電源41の出力端子41Pとグランド端子41Gとに交互に接続されている。出力端子41Pの電圧がプラスの場合には、電極板14aの電位は電極板14bの電位よりも高くなり、出力端子41Pの電圧がマイナスの場合には、電極板14aの電位は電極板14bの電位よりも低くなる。
【0042】
図3に示すように、開口12の後端面12rは上から下に向かうにつれて前方に向かって傾斜している。与圧楔16の後面は、後端面12rと同一の傾斜面となっている。与圧楔16は、開口12の後端面12rと第1積層体15の後端面との間に差し込まれると、第1積層体15を開口12の前方面12fに押し付けて、第1圧電素子13を厚み方向に与圧する。
【0043】
次に、
図4を参照しながらねじり振動発生部30の詳細について説明する。先に説明したように、ねじり振動発生部30は、角柱状部33を含む本体31と、第2積層体371,372と、ウェイト381,382と、与圧リング39とで構成されている。
【0044】
本体31の角柱状部33は、本体31の前後方向中央に配置された四角柱状断面部分であり、上面33aと下面33cと左側面331と右側面332とを備えている。角柱状部33の左側面331には、第2圧電素子351、352を積層した左側の第2積層体371が取付けられている。また、角柱状部33の右側面332には、第2圧電素子353、354を積層した第2積層体372が取付けられている。
【0045】
左側の第2積層体371は、電圧を印加した際に上下方向にせん断変形する板状の複数の第2圧電素子351、352と、第2圧電素子351、352の間と両端に積層された電極板361~363とで構成されている。同様に、右側の第2積層体372は、電圧を印加した際に上下方向にせん断変形する板状の複数の第2圧電素子353、354と、第2圧電素子353、354の間と両端に積層された電極板364~366とで構成されている。
【0046】
左の第2積層体371の第2圧電素子351,352は、図中に白抜き矢印で示す分極方向P2が上下反対になるように積層されている。ここで、分極方向P2は、分極方向P1と同様、第2圧電素子351,352の内部の電位がマイナス側からプラス側に向かう方向である。
図4に示すように、左側の第2積層体371の内側の第2圧電素子351は分極方向P2が下方向で、外側の第2圧電素子352は分極方向P2が上方向となるようにそれぞれ積層されている。同様に、右側の第2積層体372の内側の第2圧電素子353は分極方向P2が上方向で、外側の第2圧電素子354は分極方向P2が下方向となるようにそれぞれ積層されている。
【0047】
従って、角柱状部33に対して幅方向の対称位置に配置される内側の各第2圧電素子351、353の分極方向は、左側が下方向、右側が上方向のように上下反対方向となっている。同様に、外側の第2圧電素子352、354の分極方向は、左側が上方向、右側が下方向のように上下反対方向となっている。従って、左右の第2積層体371、372は、角柱状部33に対して幅方向の対称位置に配置される第2圧電素子351~354の分極方向が上下反対となるように角柱状部33の両側面331,332にそれぞれ取付けられている。
【0048】
尚、第2積層体371,372は同一の圧電素子を分極方向P2が反対方向となるように反転させて積層してもよいし、分極方向P2が異なる二種類の圧電素子を分極方向P2が反対となるように積層してもよい。
【0049】
左側の第2積層体371の第2圧電素子351,352の間には、第2高周波電源42の出力端子42Pに接続される電極板362が積層されている。ここで、第2高周波電源42は、先に説明した第1高周波電源41とは別の高周波電源である。また、両端には、第2高周波電源42のグランド端子42Gに接続される電極板361,363が積層されている。このように、電極板361,363及び電極板362は、左側の第2積層体371の両端と第2圧電素子351、352の間とにそれぞれ積層され、積層方向に向かって第2高周波電源42の出力端子42Pとグランド端子42Gとに交互に接続されている。
【0050】
同様に、右側の第2積層体372の第2圧電素子353,354の間には、第2高周波電源42の出力端子42Pに接続される電極板365が積層されている。また、両端には、第2高周波電源42のグランド端子42Gに接続される電極板364,366が積層されている。このように、電極板364,366及び電極板365は、右側の第2積層体372の両端と第2圧電素子353、354の間とにそれぞれ積層され、積層方向に向かって第2高周波電源42の出力端子42Pとグランド端子42Gとに交互に接続されている。
【0051】
このように、角柱状部33に対して幅方向の対称位置に配置される電極板362、365は共に第2高周波電源42の出力端子42Pに接続されており、角柱状部33に対して幅方向の対称位置に配置される電極板361と電極板364及び電極板363と電極板366は共に第2高周波電源42のグランド端子42Gに接続されている。つまり、角柱状部33に対して幅方向の対称位置に配置される電極板362と電極板365、及び電極板361と電極板364、電極板363と電極板366はそれぞれ第2高周波電源42の同一の端子に接続されている。
【0052】
左右の各第2積層体371,372の幅方向外側にはそれぞれ左右のウェイト381,382が取付けられている。与圧リング39は、左右のウェイト381,382と左右の第2積層体371,372と角柱状部33の上面33aと下面33cの外周を囲むように取付けられている。与圧リング39は、熱を印加すると収縮する形状記憶合金で構成されている。与圧リング39は、例えば、ニッケルとチタンを主成分とする形状記憶合金でもよい。与圧リング39は、加熱前の周長が左右のウェイト381,382と左右の第2積層体371,372と角柱状部33の上面33aと下面33cの外周の周長よりも長くなっており、この部分の外周を囲むように後端側から嵌め込まれる。そして、加熱されると、収縮して各ウェイト381,382を介して左右の第2圧電素子351~354を角柱状部33の左右の側面331,332に押しつけて左右の側面331,332に積層されている第2圧電素子351~354をそれぞれ厚み方向に与圧する。
【0053】
次に以上のように構成された超音波ホーン100に高周波電力を印加した場合に動作について
図5、6を参照しながら説明する。尚、
図5、
図6において破線は、高周波電力が印加されていない場合の縦振動発生部、ねじり振動発生部30を示す。最初に
図5を参照しながら縦振動発生部10の動作について説明する。
図5は、2枚の第1圧電素子131、132と、電極板14aと2枚の電極板14bとが積層された第1積層体15の一部を取り出したものである。
【0054】
図5に示すように、第1高周波電源41の出力端子41Pの電位がプラスの場合、電流は出力端子41Pに接続されている電極板14aからグランド端子41Gに接続されている電極板14bに流れる。このため、電流は、前方側の第1圧電素子131の後面131rから前面131fに向かって白抜き矢印71で示す分極方向に流れる。このため、前方側の第1圧電素子131は、矢印95に示すように厚さが厚くなるように変形する。同様に、後方側の第1圧電素子132では、電流は、電極板14aに接する前面132fから後面132rに向かって白抜き矢印72に示す分極方向に流れる。これにより、後方側の第1圧電素子132も矢印95に示すように厚さが厚くなるように変形する。第1高周波電源41の出力端子41Pの電位がマイナスになった場合には、この逆で、前方側の第1圧電素子131、後方側の第1圧電素子132は共に厚さが小さくなるように変形する。
【0055】
このように、縦振動発生部10に第1高周波電源41から高周波電力を印加すると、第1積層体15の複数の第1圧電素子13は、同時に厚さが厚くなったり厚さが小さくなったりする変形を繰り返す。この厚さの変動により前後方向の超音波振動を発生させる。この超音波振動はホーン部20で増幅されて、
図1中の矢印92に示すようにホーン部20の先端に取付けられけたキャピラリ51の先端をY方向或いは前後方向に振動させる。
【0056】
次に
図6を参照しながらねじり振動発生部30の動作について説明する。先の縦振動発生部10と同様、第2高周波電源42の出力端子42Pの電位がプラスの場合について説明する。角柱状部33の左側に取付けられている第2積層体371の内側の第2圧電素子351では、電流は、出力端子42Pに接続されている電極板362から内側に配置されてグランド端子42Gに接続されている電極板361に向かって右方向に流れる。この際、内側の第2圧電素子351は、矢印98aで示すように右側が下方向、矢印98bで示すように左側が上方向にせん断変形する。一方、外側に配置された第2圧電素子352では、電流は、電極板362から外側に配置されてグランド端子42Gに接続されている外側の電極板363に向かって第2圧電素子351と反対方向の左方向に流れる。外側の第2圧電素子352の分極方向は白抜き矢印82で示すように内側の第2圧電素子351の白抜き矢印81で示す分極方向と反対の上方向となっている。このため、外側の第2圧電素子352は、第2圧電素子351と同様、内側の電極板361に接する右側が矢印98cで示すように下方向に変形し、外側の電極板363に接する左側が矢印98dのように上方向に変形するようにせん断変形する。このように、外側の第2圧電素子352は内側の第2圧電素子351分極方向が反対で電流の流れる方向も反対なので、内側の第2圧電素子351と同様の方向にせん断変形する。従って、内側の第2圧電素子351と外側の第2圧電素子352とは、第2高周波電源42の出力端子42Pの電位がプラスの場合には、いずれも左側が上方向に変形するようにせん断変形する。そして、第2圧電素子351、352は、せん断変形により左側のウェイト381を上方向に移動させる。
【0057】
一方、角柱状部33の右側の内側に取付けられている第2積層体372の内側の第2圧電素子353では、電流は電極板365から電極板364に向かって左側の外側の第2圧電素子352と同様左方向に流れる。この際、内側の第2圧電素子353は、左側の外側の第2圧電素子352と同様、白抜き矢印83で示す分極方向が上方向なので、左側の第2圧電素子352と同様、矢印98eで示すように左側が上方向に変形し、右側が矢印98fのように下方向に変形するようにせん断変形する。外側の第2圧電素子354では、電流は電極板365から電極板366に向かって左側の内側の第2圧電素子351と同様右方向に流れる。右側の外側の第2圧電素子354は、左側の内側の第2圧電素子351と同様、白抜き矢印84で示す分極方向が下方向なので、左側の第2圧電素子351と同様、矢印98gで示すように左側が上方向に変形し、右側が矢印98hのように下方向に変形するようにせん断変形する。このため、このため、内側の第2圧電素子353と外側の第2圧電素子354とは、第2高周波電源42の出力端子42Pの電位がプラスの場合には、いずれも外側となる右側が下方向に変形するようにせん断変形する。そして、第2圧電素子353、354は、せん断変形により右側のウェイト382を下方向に移動させる。
【0058】
このように、左側の第2圧電素子351,352は、第2高周波電源42の出力端子42Pの電位がプラスの場合には、左側が上方向に変形するようにせん断変形して左側のウェイト381を上方向に移動させる。一方、右側の第2圧電素子353,354は、第2高周波電源42の出力端子42Pの電位がプラスの場合には、右側が下方向に変形するようにせん断変形して右側のウェイト382を下方向に移動させる。これにより、本体31の角柱状部33に時計周りのトルクを発生させる。第2高周波電源42の出力端子42Pの電位がマイナスになった場合は、上記と逆に、左側の第2圧電素子351,352は、左側が下方向に変形するようにせん断変形して左側のウェイト381を下方向に移動させ、右側の第2圧電素子353,354は、右が上方向に変形するようにせん断変形して右側のウェイト382を上方向に移動させる。これにより、本体31の角柱状部33に反時計周りのトルクを発生させる。そして、ねじり振動発生部30は、超音波ホーン100の長手方向の中心軸101の周りに
図2の矢印94に示すようなねじれ振動を発生させることができる。このねじり振動により、ホーン部20の先端に取付けられけたキャピラリ51の先端をX方向或いは幅方向に振動させることができる。
【0059】
以上、説明したように、左側の第2圧電素子351,352と第2高周波電源42とを接続すると電極板362を挟んで隣接する2つの第2圧電素子351,352に印加される高周波電力の電流の幅方向の流れの方向が反対方向となる。一方、隣接する2つの第2圧電素子351,352の分極方向は互いに上下反対になっている。このため、分極方向が反対の2つの第2圧電素子351,352に反対方向の電流が流れる。この結果、2つの第2圧電素子351,352は、同じ方向に一体となって上下方向にせん断変形する。右側の第2圧電素子353、354、第2積層体372についても同様である。
【0060】
また、左側の第2積層体371と右側の第2積層体372とは、角柱状部33に対して幅方向の対称位置に配置される第2圧電素子351,353及び第2圧電素子352,354の分極方向が上下反対となるように角柱状部33の左右の側面331,332にそれぞれ取付けられている。一方、電極板362、365及び、電極板361と電極板364及び電極板363と電極板366は左右の第2積層体371,372の電流の流れ方向が角柱状部33に対して対称となるように第2高周波電源42に接続されている。先に述べたように、角柱状部33に対して幅方向の対称位置に配置される第2圧電素子351,353及び第2圧電素子352,354の分極方向は上下反対になっている。このため、角柱状部33に対して幅方向の対称位置に配置される第2圧電素子351と第2圧電素子353、第2圧電素子352と第2圧電素子354のせん断変形の方向が上下反対方向となる。これにより、第2積層体371、372に高周波電力を印加した際に角柱状部33の左右の第2積層体371、372が上下反対方向にせん断変形し、各ウェイト381、382をそれぞれ上下反対方向に移動させるので、角柱状部33にねじりモーメントを印加し、角柱状部33をねじり振動させることができる。
【0061】
以上説明したように、超音波ホーン100は、簡便な構造で先端に取り付けたキャピラリ51をXY方向に振動させることができる。
【0062】
次に
図7、8を参照しながら他の実施形態の超音波ホーン200について説明する。先に
図1から
図6を参照して説明した超音波ホーン100と同様の部位には、同様の符号を付して説明は省略する。
【0063】
図7に示すように、超音波ホーン200は、右側の第2積層体372を構成する内側の第2圧電素子353の分極方向を下方向とし、外側の第2圧電素子354の分極方向を上方向とし、第2圧電素子353,354の間に積層されている電極板365を第2高周波電源42のグランド端子42Gに接続し、第2積層体372の両端に積層されている電極板364,366を第2高周波電源42の出力端子42Pに接続したものである。
【0064】
従って、超音波ホーン200は、第2積層体371,372は、角柱状部33に対して幅方向の対称位置に配置される各第2圧電素子351と第2圧電素子353、第2圧電素子352と第2圧電素子354の分極方向が同一となるように角柱状部33左右の側面331、332にそれぞれ取付けられており、角柱状部33に対して幅方向の対称位置に配置される電極板361と電極板364、電極板362と電極板365、電極板363と電極板366が第2高周波電源42の異なる端子、即ち一方が出力端子42P、他方がグランド端子42Gに接続されるように構成したものである。他の構成については、先に説明した超音波ホーン100と同一である。
【0065】
図8を参照しながら、第2高周波電源42の出力端子42Pの電位がプラスの場合の超音波ホーン200の動作について説明する。左側の第2積層体371の変位は先に説明した超音波ホーン100と同一であるので説明は省略する。
【0066】
図8に示すように、第2高周波電源42の出力端子42Pの電位がプラスの場合、右側の内側の第2圧電素子353には電極板364から電極板365に向かって右方向に向かって電流が流れ、分極方向は下方向である。この電流の流れ方向と分極方向は、左側の第2圧電素子351と同様である。従って、右側の内側の第2圧電素子353は、左側の第2圧電素子351と同様、矢印98e,98fに示すように右側が下方向、左側が上方向となるようにせん断変形する。同様に右側の第2圧電素子354に流れる電流の方向と分極方向とは左側の第2圧電素子352と同様となるので、右側の第2圧電素子354は、左側の第2圧電素子352と同様、矢印98g,98hに示すように右側が下方向、左側が上方向となるようにせん断変形する。
【0067】
このように、超音波ホーン200では、超音波ホーン100と同様、内側の第2圧電素子353と外側の第2圧電素子354とは、第2高周波電源42の出力端子42Pの電位がプラスの場合には、いずれも外側となる右側が下方向に変形するようにせん断変形する。そして、第2圧電素子353、354は、せん断変形により右側のウェイト382を下方向に移動させる。
【0068】
これにより、超音波ホーン100と同様、第2積層体371、372に高周波電力を印加した際に角柱状部33の左右の第2積層体371、372が上下反対方向にせん断変形し、各ウェイト381、382をそれぞれ上下反対方向に移動させるので、角柱状部33にねじりモーメントを印加し、角柱状部33をねじり振動させることができる。
【0069】
超音波ホーン200は、超音波ホーン100と同様の作用効果を奏する。
【0070】
次に
図9を参照しながら他の実施形態の超音波ホーン300について説明する。先に
図1~8を参照して説明した超音波ホーン100,200と同一の部位には同一の符号を付して説明は省略する。
【0071】
図9に示す超音波ホーン300は、先に説明した超音波ホーン100,200の形状記憶合金の与圧リング39に代えて、クランプ式与圧リング39aを用いて角柱状部33の左右の側面331,332に積層されている第2圧電素子351~354をそれぞれ厚み方向に与圧するように構成したものである。
【0072】
クランプ式与圧リング39aは、隙間が開いた円環状、或いは、C型状のリング部39bと、隙間の両側でリング部39bから半径方向外側に向かって突出した2つのフランジ部39cと、2つのフランジ部39cに設けられた孔に挿通されてナット39eと共に2つのフランジ部39cを周方向に占め込むボルト39dとで構成されている。
【0073】
クランプ式与圧リング39aは、ボルト39dとナット39eを取り外した状態では、リング部39bの内周の長さは、左右のウェイト381,382と左右の第2積層体371,372と角柱状部33の上面33aと下面33cの外周の長さよりも長くなっている。クランプ式与圧リング39aで第2圧電素子351~354に与圧を掛ける場合には、ボルト39dとナット39eを取り外してリング部39bの内周の長さを左右のウェイト381,382と左右の第2積層体371,372と角柱状部33の上面33aと下面33cの外周の長さよりも長くし、この部分の外周を囲むように後端側からリング部39bを嵌め込む。そして、2つのフランジ部39cの孔にボルト39dを通し、反対側からナット39eを締め込んで、2つのフランジ部39cの間の隙間を小さくする。これにより、リング部39bの内面が各ウェイト381,382を介して左右の第2圧電素子351~354を角柱状部33の左右の側面331,332に押しつける。これにより、リング部39bの内面が左右の側面331,332に積層されている第2圧電素子351~354を厚み方向に与圧する。
【0074】
超音波ホーン300は、簡便な構成で、第2圧電素子351~354を厚み方向に与圧することができる。
【0075】
以上、説明した超音波ホーン100、200、300では、断面が四角い角柱状部33の左側面331と右側面332に第2積層体371,372を取付ける構成として説明したが、角柱状部33は、断面が四角に限らない。左側面331と右側面332とを備えていれば、例えば、断面が6角形、8角形としてもよい。
【0076】
この点に関し、超音波ホーン100、200、300では、1組の第2積層体371,372を有する構成を説明したが、第2積層体371,372の数は2つに限らず、図示しないが請求項に記載されている他の代替実施形態のように、超音波ホーンにおいて、トルクのためのY軸周りの往復回転運動を発生させるために、第2積層体の個数は1つであっても3つ以上であってもよい。
【0077】
また、ウェイト381,382は、第2積層体371,372のせん断変形により発生したトルクを増強するために、超音波ホーン100、200、300の第2積層体371,372の幅方向外側にそれぞれ取付けられる。ウェイト381,382はトルクの増幅を容易にするために鉛又はタングステンなどの重金属から成るため、トルクが効果的に増幅される。
【0078】
一方、ウェイト381,382は、角柱状部33が、長い棒のように長い距離に渡って横方向に延び、第2積層体371,372が、長い棒状の角柱状部33の遠端近辺に配置されるような特定の実施形態においては、任意の構成である。角柱状部33の構造的な構成によって、ウェイト381,382は、超音波ホーン100、200、300の幅方向に沿って、第2積層体371,372の外側又は内側に配置される。
【0079】
超音波ホーン100、200、300では、開示された実施形態において、ねじり振動発生部30が、縦振動発生部10の前後方向後方に位置する構成を説明した。請求の範囲に記載の他の潜在的な応用法においては、ねじり振動発生部30と縦振動発生部10の相対的な位置は、このような位置関係に限定されない。
【符号の説明】
【0080】
10 縦振動発生部、11 ケーシング、12 開口、12f 前方面、12r 後端面、13,131,132 第1圧電素子、14,14a,14b,361~366 電極板、15 第1積層体、16 与圧楔、17 取付けアーム、17a ボルト穴、20 ホーン部、21 前端部、30 ねじり振動発生部、31 本体、32 接続部、33 角柱状部、33a 上面、33c 下面、34 後端部、39 与圧リング、39a クランプ式与圧リング、39b リング部、39c フランジ部、39d ボルト、39e ナット、41 第1高周波電源、41G,42G グランド端子、41P,42P 出力端子、42 第2高周波電源、51 キャピラリ、100,200,300 超音波ホーン、101 中心軸、131f,132f 前面、131r,132r 後面、331 左側面、332 右側面、351~354 第2圧電素子、371,372 第2積層体、381,382 ウェイト。