(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】3D物体のモデル化された曲げ部品の展開部品を計算する方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20230915BHJP
G06F 30/15 20200101ALI20230915BHJP
【FI】
G06F30/10 100
G06F30/15
(21)【出願番号】P 2018237441
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2021-12-08
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500102435
【氏名又は名称】ダッソー システムズ
【氏名又は名称原語表記】DASSAULT SYSTEMES
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピエール ドニ ヴォアラン
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0297263(US,A1)
【文献】特開2003-022285(JP,A)
【文献】特開2004-258804(JP,A)
【文献】特開2007-172058(JP,A)
【文献】特開2013-246829(JP,A)
【文献】特開2017-205783(JP,A)
【文献】特開平10-187793(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0161296(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0106463(US,A1)
【文献】米国特許第06545680(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算機支援設計システムの3Dシーンでのモデル化された曲げ3D物体の展開部品を計算するためのコンピュータ実施方法であって、
a)前記3D物体を提供するステップと、
b)前記3D物体の固定部分(FP)を選択するステップと、
c)前記3D物体の可動部分(MP)を選択するステップと、
d)前記固定部分(FP)と前記可動部分との間の交差を形成する1D界面(INT)を決定するステップと
を含み、
e)前記可動部分(MP)の線形変換の結果として得られる変換後部分を計算するステップ
であって、
e1)前記1D界面(INT)を3Dポイント(PO)のセットに噛み合わせるサブステップと、
e2)各3Dポイント(PO)において、前記1D界面(INT)に対する法線
【数1】
と、弧平面(AP)と呼ばれる平面とを作成するサブステップであって、前記弧平面(AP)は、前記法線
【数2】
および方位ベクトル
【数3】
によって定義される、サブステップと、
e3)各3Dポイントにおいて、その中心角(β)が前記モデル化された曲げ3D物体の引抜き方向(DD)に依存する、前記弧平面(AP)内の円弧(CA)を計算するサブステップと、
e4)すべての前記円弧(CA)の長さの平均値を計算するサブステップと、
e5)すべての前記円弧の平均長さにその長さが最も近い前記円弧(CA)を、主円弧(PCA)として記憶するサブステップと、
e6)前記主円弧(PCA)のベンドアローアンスに応じた長さで、前記主円弧(PCA)の前記弧平面(AP)と前記可動部分(MP)との間の交差曲線(IC)上に配置された初期軸系(IAS)を決定するサブステップと、
e7)その原点が前記主円弧(PCA)の端点であるターゲット軸系(TAS)を決定するサブステップと、
e8)前記初期軸系(IAS)の前記ターゲット軸系(TAS)への変換として前記線形変換を定義するサブステップと
を含む、ステップと、
f)前記1D界面(INT)の近傍の前記変換後部分をトリミングし、それによってトリミングした変換後部分(TTP)を形成するステップと、
g)前記1D界面(INT)と前記トリミングした変換後部分(TTP)との間にフィレット(FI)を作成するステップと、
h)前記固定部分(FP)、前記トリミングした変換後部分(TTP)、および作成したフィレット(FI)の結合として展開部品を定義するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記方位ベクトル
【数4】
は、前記3Dポイント(PO)に接する平面内の前記1D界面(INT)に対する法線である請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記方位ベクトル
【数5】
は、3Dポイント(PO)の前記セットのうちの2つの末端3Dポイント(PO1、POn)を結ぶ線分に対する、前記3Dポイント(PO)での法線である請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記方位ベクトル
【数6】
は前記引抜き方向(DD)に基づいて計算される請求項
2または
3に記載の方法。
【請求項5】
前記変換後部分をトリミングするステップf)は、
f1)各円弧(CA)について、前記3Dポイント(PO)と反対側の前記円弧(CA)の末端である円弧端点(EP)を決定するサブステップと、
f2)すべての前記円弧端点(EP)を結ぶ端部曲線(EC)を計算するサブステップと、
f3)前記変換後部分上の前記端部曲線(EC)の投影である投影曲線(PC)を計算するサブステップであって、前記投影曲線(PC)は、前記変換後部分を2つの変換後部分構成要素(TPC1、TTP)に分割する、サブステップと、
f4)前記投影曲線(PC)に沿って、前記1D界面(INT)に最も近い前記変換後部分構成要素(TPC1)をトリミングするサブステップと
を含む請求項
1ないし
4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
フィレットを作成するステップg)は、前記トリミングした変換後部分(TTP)の境界(BO)に対する前記円弧(CA)の適合を含む請求項
1ないし
5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
コンピュータモデル化3D物体に基づいてワイピングダイ曲げを通じて物体を製造する方法であって、少なくとも折返しステップを含み、
請求項1ないし
6のいずれか1つに記載の方法を通じて前記3D物体の折返し部品の展開を計算するステップと、
前記折返し部品の展開による前記3D物体の寸法の修正を決定するステップと、
前記折返し部品の展開による前記3D物体の寸法の前記修正を考慮して、前記コンピュータモデル化3D物体に基づいて前記物体を物理的に製造するステップと
をさらに含む方法。
【請求項8】
コンピュータに請求項1ないし
7のいずれか1つに記載の方法を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項
8記載のコンピュータプログラムを記録したことを特徴とする非一過性コンピュータ可読媒体。
【請求項10】
メモリ(MEM1ないしMEM4)およびグラフィカルユーザインターフェース(KB、PD、DC、DY)に結合されたプロセッサを備えるコンピュータシステムであって、前記メモリは、請求項1ないし
7のいずれか1つに記載の方法をコンピュータシステムに実施させるコンピュータ実行可能命令(EXP)を記憶するコンピュータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3D物体のモデル化された曲げ部品の展開部品を計算するための方法に関する。それは、CAD(計算機支援設計)、CAM(計算機支援製造)、またはCAE(計算機支援エンジニアリング)システムを使用することによるワイヤフレームおよび表面設計の分野に関する。それは、より厳密には薄板金形成工程に適用される。
【背景技術】
【0002】
ダイ製造は、業界、より具体的には自動車業界で広く使用されている製造工程である。
図1は、生薄板金部品(OP0)から最終部品(OP5の結果)までの、金属工作物のダイ製造の様々なステップ(OP0ないしOP5)の一例を示す。ダイ製造は、例えば、ダイスタンピングステップ(OP1の結果)、ダイ切断ステップ(OP2ないしOP4の結果)、およびワイピングダイ曲げステップ(OP5の結果)を含むことができる。ダイスタンピングステップおよびワイピングダイ曲げは、プラスチック変形工程と見なされる。ワイピングダイ曲げの結果は展開可能であるのに対して、ダイスタンピングの結果は展開可能ではないことがある。
図2は、ワイピングダイ曲げステップの詳細な図を示す。以下でダイ曲げと呼ばれる、ワイピングダイ曲げ工程は、上側プレッシャーパッドと下側ポストとの間に物体の薄板金部品を維持するものである。上側プレッシャーパッドは、圧力を加えて、薄板金部品の固定部分を下側ポストに対してしっかりと保持する。以下で可動部分と呼ばれる、薄板金部品のカンチレバー部品が、上側パンチの圧力の下にある。上側パンチは、引抜き方向に従って、上側プレスラムと共に下方に移動する。ワイピングダイ曲げ工程は、金属板の伸長または局所的収縮を生み出す。物体のフラットパターンの展開中に、これらの機械的変形を考慮に入れなければならない。
【0003】
CADシステムでのダイ製造工程を定義するために、CADシステムのユーザは一般に、最終部品(
図1および2のOP5の結果)から開始して、工程内を逆方向に進み、各ステップから得られる、異なる幾何形状を生成する。したがって、ダイ曲げステップを定義するとき、ユーザは、対応する物理的物体のダイ曲げステップ中に行なわれることになる機械的変形を考慮しながら、CADシステムで3D物体のダイ曲げ表面を展開する必要がある。さらに、
図2で示される例に示されるように、ユーザは、折返し/展開表面のいくつかの幾何形状を未変更のまま保つために、可動部分の一部だけを展開したいことがある。
【0004】
現在のところ、表面の部分的展開/折返しを計算する3つの方式がある。
【0005】
第1の方式は、シミュレーションを通じて行なわれることができる。ユーザは、表面を展開する/折り返すことを専門とするシミュレーションソフトウェアを使用することによって部分的展開表面を計算する。実際の折返し/展開工程のモデルが、シミュレーションソフトウェアで有限要素法を使用することによって計算される。折返し表面全体の噛合いが実施され、したがって計算は非常に時間がかかる。
【0006】
表面の部分的展開/折返しの計算はまた、CADシステムで手動幾何形状測定を使用することを通じて実施されることができる。ユーザは、展開/折返しをシミュレートする目的で、展開するための表面の特定の回転を計算することによって展開表面の推定を計算し、次いで、CADシステムの利用可能な表面設計ツールを使用して、折返しエリアを手動で設計する。この解決策は冗長である。それは、多くの計算および対話をユーザに要求するからである。
【0007】
第3の方式によれば、CADシステムのユーザは、展開するための各表面に対する展開情報を統合する。部分的展開/折返し表面が、統合された展開情報に基づいて、CADシステムによって自動的に計算される。この解決策は、設計中に展開情報が記憶されなかった表面上には当てはまらない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の目的は、ユーザとの冗長な対話を必要とせず、統合された展開情報を必要としない、モデル化された曲げ3D物体の部分的展開を迅速に計算するための方法を提供することである。
【0009】
本発明の一態様によれば、計算機支援設計システムの3Dシーンでのモデル化された曲げ3D物体の展開部品を計算するためのコンピュータ実施方法が提供され、方法は、
a)3D物体を提供するステップと、
b)3D物体の固定部分を選択するステップと、
c)3D物体の可動部分(MP)を選択するステップと、
d)固定部分と可動部分との間の交差を形成する1D界面を決定するステップと、
e)可動部分の線形変換の結果として得られる変換後部分を計算するステップと、
f)1D界面の近傍の変換後部分をトリミングし、それによってトリミングした変換後部分を形成するステップと、
g)1D界面とトリミングした変換後部分との間にフィレットを作成するステップと、
h)固定部分、トリミングした変換後部分、および作成したフィレットの結合(union)として展開部品を定義するステップと
を含む。
【0010】
本発明の特定の実施形態によれば、
変換後部分を計算するステップe)は、
e1)1D界面を3Dポイントのセットに噛み合わせるサブステップと、
e2)各3Dポイントで、1D界面と、および弧平面と呼ばれる平面と、に対する法線を作成するサブステップであって、前記弧平面が、前記法線によっておよび方位ベクトルによって定義されるサブステップと、
e3)各3Dポイントで、その中心角がモデル化された曲げ3D物体の引抜き方向に依存する、弧平面内の円弧を計算するサブステップと、
e4)すべての円弧の長さの平均値を計算するサブステップと、
e5)すべての円弧の平均長さにその長さが最も近い円弧を、主円弧として記憶するサブステップと、
e6)主円弧のベンドアローアンスに応じた長さで、主円弧の弧平面と可動部分との間の交差曲線上に配置された初期軸系を決定するサブステップと、
e7)その原点が主円弧の端点であるターゲット軸系を決定するサブステップと、
e8)初期軸系のターゲット軸系への変換として線形変換を定義するサブステップと
を含むことができる。
【0011】
方位ベクトルは、3Dポイントに接する平面内の1D界面に対する法線でよい。
【0012】
あるいは、方位ベクトルは、3Dポイントのセットのうちの2つの末端3Dポイントを結ぶ線分に対する、3Dポイントでの法線でよい。
【0013】
あるいは、方位ベクトルは、引抜き方向に基づいて計算されることができる。
【0014】
変換後部分をトリミングするステップf)は、
f1)各円弧について、3Dポイントと反対側の円弧の末端である円弧端点を決定するサブステップと、
f2)すべての円弧端点を結ぶ端部曲線を計算するサブステップと、
f3)変換後部分上の端部曲線の投影である投影曲線を計算するサブステップであって、前記投影曲線が、変換後部分を2つの変換後部分構成要素に分割するサブステップと、
f4)投影曲線に沿って、1D界面(INT)に最も近い変換後部分構成要素をトリミングするサブステップと
を含むことができる。
【0015】
フィレットを作成するステップg)は、トリミングした変換後部分の境界に対する円弧の適合を含むことができる。
【0016】
本発明の別の目的は、コンピュータモデル化3D物体に基づいて、ワイピングダイ曲げを通じて物体を製造する方法であり、方法は少なくとも折返しステップを含み、前記方法はまた、
事前定義された方法を通じて前記3D物体の折返し部品の展開を計算するステップと、
折返し部品の展開による3D物体の寸法の修正を決定するステップと、
折返し部品の展開による前記3D物体の寸法の修正を考慮して、コンピュータモデル化3D物体に基づいて前記物体を物理的に製造するステップと
をも含む。
【0017】
本発明の別の目的は、事前定義された方法をコンピュータシステムに実施させるためのコンピュータ実行可能命令を含む、非一時的コンピュータ可読データ記憶媒体上に記憶されたコンピュータプログラム製品である。
【0018】
本発明の別の目的は、事前定義された方法をコンピュータシステムに実施させるためのコンピュータ実行可能命令を含む非一時的コンピュータ可読データ記憶媒体である。
【0019】
本発明の別の目的は、メモリおよびグラフィカルユーザインターフェースに結合されたプロセッサを備えるコンピュータシステムであり、メモリは、事前定義された方法をコンピュータシステムに実施させるコンピュータ実行可能命令を記憶する。
【0020】
非限定的な例として説明され、添付の図面によって示されるいくつかの実施形態の助けにより、本発明がより良く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】3D物体に関するダイ製造工程の様々なステップを示す図である。
【
図2】3D物体に関するワイピングダイ曲げのステップを示す図である。
【
図3】モデル化された曲げ3D物体の可動部分を示す図である。
【
図4】モデル化された曲げ3D物体の展開部品の計算の異なるステップを概略的に示す図である。
【
図5A】モデル化された曲げ3D物体の展開部品の計算の異なるステップを概略的に示す図である。
【
図5B】モデル化された曲げ3D物体の展開部品の計算の異なるステップを概略的に示す図である。
【
図5C】モデル化された曲げ3D物体の展開部品の計算の異なるステップを概略的に示す図である。
【
図5D】モデル化された曲げ3D物体の展開部品の計算の異なるステップを概略的に示す図である。
【
図6】モデル化された曲げ3D物体の展開部品の計算の異なるステップを概略的に示す図である。
【
図7】モデル化された曲げ3D物体の展開部品の計算の異なるステップを概略的に示す図である。
【
図8】モデル化された曲げ3D物体の展開部品の計算の異なるステップを概略的に示す図である。
【
図9】モデル化された曲げ3D物体の展開部品の計算の異なるステップを概略的に示す図である。
【
図10】モデル化された曲げ3D物体の展開部品の計算の異なるステップを概略的に示す図である。
【
図11】モデル化された曲げ3D物体の展開部品の計算の異なるステップを概略的に示す図である。
【
図12】モデル化された曲げ3D物体の展開部品の計算の異なるステップを概略的に示す図である。
【
図13】モデル化された曲げ3D物体の展開部品の計算の異なるステップを概略的に示す図である。
【
図14】モデル化された曲げ3D物体の展開部品の計算の異なるステップを概略的に示す図である。
【
図15】モデル化された曲げ3D物体の展開部品の計算の異なるステップを概略的に示す図である。
【
図16】モデル化された曲げ3D物体の展開部品の計算の異なるステップを概略的に示す図である。
【
図17】本発明による方法の様々なステップを示す図である。
【
図18】本発明の様々な実施形態による方法を実施するのに適したコンピュータシステムのブロック図である。
【
図19】本発明の様々な実施形態による方法を実施するのに適したコンピュータシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図3は、3D物体の斜視図を示す。3D物体は、固定部分FPと可動部分MPとを備える。物理的ダイ製造工程において、可動部分MPは、上側パンチの圧力下にあることになる。方法の第1のステップにおいて、ユーザは、固定部分FPと可動部分MPとの間の1D界面を定義するように、ポインティング要素をドラッグする。ポインティング要素のドラッギングは、直線を描く間に、マウス押下で実現されることができる。次いで、システムは、1D界面INTを3DポイントPOのセットに噛み合わせる。3DポイントPOは、1D界面INTの可動部分MPとの各交差について作成される。したがって、1D界面INTの離散化が行なわれる。
【0023】
本発明は、各3DポイントPOについて円弧CAを計算するステップを含む。
図4ないし6は、そのようなステップを示す。
図4は、固定部分FPおよび可動部分MPの側面図を示す。1D界面INTは図に対して垂直である。各3DポイントPOで、可動部分MPの表面に対する法線
【0024】
【0025】
が計算される。次いで、各3DポイントPOについて弧平面APが計算される。弧平面APの原点は3DポイントPOである。可動部分MPの表面に対する法線
【0026】
【0027】
は、弧平面APの第1のベクトルである。方位ベクトル
【0028】
【0029】
が、弧平面APを定義する第2のベクトルを定義する。
【0030】
【0031】
【0032】
の決定の第1の実施形態を示す。第1の実施形態によれば、3DポイントPOに対する接平面が計算される。構成により、1D界面は接平面に属する。方位ベクトル
【0033】
【0034】
は、接平面において3DポイントPOで1D界面と直交する。
【0035】
【0036】
【0037】
の決定の第2の実施形態を示す。第2の実施形態によれば、3DポイントPOに対する接平面が計算される。構成により、1D界面は接平面に属する。ベクトル
【0038】
【0039】
は、接平面において3DポイントPOで1D界面と直交する。次いで、ベクトル
【0040】
【0041】
が、事前定義された引抜き方向DDに垂直であり、3DポイントPOを通じて通過し、方位ベクトル
【0042】
【0043】
という結果となる平面上に投影される。引抜き方向DDは、ダイ曲げ工程でのダイ曲げパンチの方向であり、引抜き方向DDは、ユーザによって定義されることのできるパラメータである。
【0044】
【0045】
【0046】
の第3の実施形態を示す。1D界面の第1の3DポイントPO1および最後の3DポイントPOnによって作成される直線が計算される。「第1」および「最後」の3Dポイントは、1D界面の末端3Dポイントを中立的に指す。次いで、直線に対する3DポイントPOの投影が計算される。方位ベクトル
【0047】
【0048】
は、3DポイントPOの投影と、3DポイントPOとによって定義される。
【0049】
【0050】
【0051】
の決定の第4の実施形態を示す。両方の末端3Dポイントによって定義される直線に対する3DポイントPOの投影が、第3の実施形態と同様に計算される。3Dポイントの投影と、3Dポイントとによって定義されるベクトルが、引抜き方向DDに垂直な平面上に投影され、方位ベクトル
【0052】
【0053】
という結果となる。事前定義された引抜き方向が、先に第2の実施形態について定義されている。
【0054】
各3DポイントPOについて、方位ベクトル
【0055】
【0056】
が、ユーザによって選択される実施形態のうちの1つに従って計算される。方位ベクトル
【0057】
【0058】
および法線
【0059】
【0060】
が、各3DポイントPOについての弧平面APを定義する。各弧平面APにおいて、円弧CAが計算される。
図6は、弧平面APの垂直図である。最初に、可動部分MPの表面に対する法線
【0061】
【0062】
と、事前定義された基準方向との間の角度αが計算される。展開角γがユーザによって与えられ、またはそれは自動的に事前定義されることができる。円弧CAに対する接線
【0063】
【0064】
が、引抜き方向DDを表すベクトルと、展開角γとから計算される。円弧CAの中心角βは、展開角γと角度αとの間の差に等しい。中心角βは、各3DポイントPOについて計算される。
【0065】
第1の実施形態によれば、弧半径Rがシステムによって計算される。そのために、最小弧長(LCAmin)および最大弧長(LCAmax)が必要とされる。これらの値は、初期ステップにおいてユーザによって入力されることができる。最小中心角β(βmin)および最大中心角β(βmax)が決定される。次いで、各3DポイントPOについて、弧半径Rが各3Dポイントについて以下のように計算される。
【0066】
β=βmaxである場合、R=LCAmax/β
β=βminである場合、R=LCAmin/β
他のケースでは、R=LCAmax-c*LCAmax-LCAmin)、
ただしc=(β-βmin)/(βmax-βmin)
第2の実施形態によれば、ユーザは、各3DポイントPOについて弧半径Rを指定することができる。
【0067】
各3DポイントPOについて、システムは、(すなわち、第1の実施形態に従って)弧半径Rの自動的に計算された値と、(すなわち、第2の実施形態に従って)弧半径Rの手動で入力された値とを記憶することができる。ユーザのどんな入力も伴わない、弧半径のデフォルト値は、自動的に計算された値である。
【0068】
したがって、各3DポイントPOについて、中心角βおよび弧半径Rが計算され、それによって円弧CAのセットを定義する。各円弧CAの中心は、3DポイントPOを通過する法線
【0069】
【0070】
によって定義される直線上の、3DポイントPOから距離Rに配置される。
【0071】
以下のステップでは、システムは、初期軸系IASの、ターゲット軸系TASへの線形変換を計算するために、ターゲット軸系TASおよび初期軸系IASを計算する。
【0072】
そのために、すべての円弧の長さの平均値が計算される。次いで、
図7で示されるように、すべての円弧の平均長さにその長さが最も近い円弧CAが定義され、主円弧PCAとして記憶される。3DポイントPOに対向する、主円弧PCAの端点は、ターゲット軸系TASの原点と呼ばれる。Y軸は、主円弧PCAの端点上の、主円弧PCAの接線方向と定義される。Z軸は、主円弧PCAの弧平面AP内の、主円弧PCAの端点上の、主円弧PCAの法線方向と定義され、3DポイントPOに対する法線
【0073】
【0074】
と同じ方向に向けられる。X軸はZ軸とY軸のクロス乗積である。
【0075】
図8から10は、初期軸系IASの計算を示す。主円弧PCAの長さL1が計算される。次いで、等価展開長さ(すなわち、それが完全に展開されたときの、直線としての主円弧PCAの長さ)が、K因子および薄板金厚さを使用して計算される。K因子は、金属加工の技術者に知られており、所与の材料について容易に取り出されることのできる比率である。それは、フラットパターンを計算するために使用される。それは、曲げの間にどれほど材料が引き伸ばされるかに直接関係するからである。ユーザは薄板金厚さを指定する。ユーザは、K因子値を手動で指定し、または自動モードを使用することができ、自動モードでは、システムは、可動部分MPを展開する/折り返すときの最良のK因子を計算する。次いで、主円弧PCAのベンドアローアンス(bend allowance)が計算される。ベンドアローアンスは、フラットパターンを展開するために主円弧PCAの長さに追加しなければならない材料と定義される。ベンドアローアンスの公式も、金属加工の技術者には知られている。
【0076】
主円弧PCAの弧平面APと可動部分MPとの間の交差曲線ICが計算される。交差曲線ICの長さは、前述の等価展開長さ(L2)である。次いで、後者は、交差曲線ICの長さから主円弧PCAの長さを推論することによって、交差曲線IC上の等価折返し長さに変換される。等価折返し長さでの交差曲線ICの端部は、初期軸系IASの原点と定義される。初期軸系IASのY軸は、軸系の原点での、交差曲線ICに対する接線である。Z軸は、初期軸系IASの原点での、可動部分MPの法線である。X軸はZ軸とY軸のクロス乗積である。
【0077】
初期軸系IASの、ターゲット軸系TASへの線形変換(回転および並進)が、全体の可動部分MPに適用される。
図10は、線形変換前の可動部分MPを示し、
図11は、線形変換後の可動部分MPを示す。
【0078】
図12で示されるように、各円弧CAは、3DポイントPOと、端点EPとによって区切られる。端点EPは、円弧CA上の、長さL=β×Rに位置する点であり、βは中心角であり、Rは弧半径である。端部曲線ECは連続的ポリラインであり、連続的ポリラインは、端点EP1つを互いに結ぶすべての線分から構成される。一実施形態によれば、ポリラインは曲線フィットされることができる。
【0079】
次いで、システムは、線形変換に従って変換された可動部分MPに対する端部曲線ECの垂直投影を実施する。
図13で示されるように、投影曲線PCは、両方の末端で、投影される端部曲線PCの末端に接する直線LEXによって延長される。
【0080】
次いで、
図14で示されるように、線形変換に従って変換された可動部分MPが、投影曲線PCによって2つの構成要素(TPC1、TTP)に分割される。それらの2つの構成要素(TPC1、TTP)のうち、1D界面INTの近傍の構成要素、すなわち1D界面INTに最も近い構成要素が除去される。他方の構成要素が記憶され、それは、トリミングされた変換後部分TTPとして定義される。
【0081】
図15では、円弧CAが、1D界面での固定部分FPの末端境界EBOに適合され、それによってフィレットFIを形成する。適合は、1D界面での円弧と固定部分FPとの間の最大の接触を保証するために実施される。末端境界EBOとは、1D界面の最初と最後の3DポイントPOを指す。円弧CAはまた、トリミングされた変換後部分TTPのすべての境界に適合される。トリミングされた変換後部分TTPの境界BOは、各弧平面AP内の投影曲線PCの点である。円弧CAの適合はまた、境界BOでの円弧とトリミングされた変換後部分TTPとの間の最大の接触を保証するように実施される。境界BOでの接触を保証するために円弧CAを適合するこのステップは、制約ソルバ(solver)によって実施されることができる。制約ソルバは、非線形代数方程式のシステムを解決するソフトウェアアルゴリズムのセットである。それは通常、異なる幾何形状の間の関係(制約)を満たすためにCADアプリケーションにおいて使用される。制約ソルバ入力は、幾何形状(2Dまたは3D)、幾何学的制約(運動学的接合、または接触および一致などの基本的制約)、変数、および方程式として定義される。いくつかのタイプの解決が実施されることができる。結果は一般に、(幾何形状に適用してシステムを解決するための)変換のセットおよび値として与えられる。フィレットFIの形状およびサイズも、3DポイントPOのそれぞれの弧半径Rの手動修正を通じて、ユーザによって修正されることができる。
【0082】
図16で示される最後のステップでは、固定部分FP(図示せず)、フィレットFI、およびトリミングされた変換後部分TTPが組み立てられる。このアセンブリの計算された表面は、モデル化された曲げ3D物体の展開部品である。
【0083】
【0084】
a)3D物体を提供すること、
b)3D物体の固定部分(FP)を選択すること、
c)3D物体の可動部分(MP)を選択すること、
d)固定部分(FP)と可動部分との間の交差を形成する1D界面(INT)を決定すること、
e)可動部分(MP)の線形変換の結果として得られる変換後部分を計算すること、
f)1D界面(INT)の近傍の変換後部分をトリミングすること、
g)1D界面(INT)とトリミングした変換後部分(TTP)との間にフィレット(FI)を作成すること、
h)固定部分、トリミングした変換後部分(TTP)、および作成したフィレット(FI)の結合として展開部品を定義すること。
【0085】
本発明の方法は、恐らくはコンピュータネットワークを含み、ハードディスク、ソリッドステートディスク、CD-ROMなどのコンピュータ可読媒体上に不揮発性の形態で適切なプログラムを記憶し、そのマイクロプロセッサおよびメモリを使用してプログラムを実行する、適切にプログラムされた汎用コンピュータまたはコンピュータシステムによって実施されることができる。
【0086】
本発明の例示的実施形態による方法を実施するのに適したコンピュータが、
図18を参照して説明される。
図18では、コンピュータは、RAM MEM1、ROM MEM2、ハードディスクドライブ(HDD)MEM3、DVD/CDドライブMEM4などのメモリ装置内に記憶され、またはリモートに記憶された実行可能プログラム、すなわちコンピュータ可読命令のセットを実行中に前述の方法ステップを実施する中央演算処理装置(CP)を含む。さらに、曲げ3D物体を定義する1つまたは複数のコンピュータファイルが、メモリ装置MEM1ないしMEM4のうちの1つまたは複数の上に、あるいはリモートに記憶されることができる。
【0087】
特許請求される発明は、本発明の工程のコンピュータ可読命令が格納されるコンピュータ可読媒体の形態によって限定されない。例えば、命令およびファイルは、CD、DVD上に、フラッシュメモリ、RAM、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、ハードディスク、またはサーバやコンピュータなどのコンピュータが通信する任意の他の情報処理装置内に格納されることができる。プログラムは、同じメモリ装置または異なるメモリ装置上に格納されることができる。
【0088】
さらに、本発明の方法を実施するのに適したコンピュータプログラムは、CPU CPと、Microsoft VISTA、Microsoft Windows 8、UNIX、Solaris、LINUX、Apple MAC-OS、当業者に周知の他のシステムなどのオペレーティングシステムと共に実行する、ユーティリティアプリケーション、バックグラウンドデーモン、もしくはオペレーティングシステムの構成要素、またはそれらの組合せとして提供されることができる。
【0089】
中央演算処理装置CPは、アメリカのIntelのXenonプロセッサ、またはアメリカのAMDのOpteronプロセッサでよく、あるいはアメリカのFreescale CorporationのFreescale ColdFire、IMX、ARMプロセッサなどの他のプロセッサタイプでよい。あるいは、当業者なら理解するであろうが、CPUは、アメリカのIntel CorporationのCore2 Duoなどのプロセッサでよく、またはFPGA、ASIC、PLD上に、もしくはディスクリートロジック回路を使用して実装されることができる。さらに、CPUは、前述の本発明の工程のコンピュータ可読命令を実施するように協働して働く複数のプロセッサとして実装されることができる。
【0090】
図18のコンピュータはまた、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、インターネットなどのネットワークとインターフェースするために、アメリカのIntel CorporationのIntel Ethernet PROネットワークインターフェースカードなどのネットワークインターフェースNIをも含む。コンピュータは、Hewlett Packard HPL2445w LCDモニタなどのディスプレイDYとインターフェースするために、アメリカのNVIDIA CorporationのNVIDIA GeForce GTXグラフィックスアダプタなどのディスプレイコントローラDCをさらに含む。汎用I/OインターフェースIFが、キーボードKB、およびローラボール、マウス、タッチパッドなどのポインティングデバイスPDとインターフェースする。ディスプレイ、キーボード、タッチモード用の感応性表面、およびポインティングデバイスは、ディスプレイコントローラおよびI/Oインターフェースと共に、入力コマンドを与えるために、例えばポインタを移動するためにユーザによって使用され、3次元シーンおよびグラフィカルツールを表示するためにコンピュータによって使用されるグラフィカルユーザインターフェースを形成する。
【0091】
ディスクコントローラDKCが、HDD MEM3およびDVD/CD MEM4を通信バスCBSと接続し、通信バスCBSは、コンピュータの構成要素のすべてを相互接続するための、ISA、EISA、VESA、PCIなどでよい。
【0092】
ディスプレイ、キーボード、ポインティングデバイス、ならびにディスプレイコントローラ、ディスクコントローラ、ネットワークインターフェース、およびI/Oインターフェースの一般的特徴および機能の説明は、これらの特徴が周知であるので、簡潔のために本明細書では省略される。
【0093】
図19は、本発明の異なる例示的実施形態による方法を実施するのに適したコンピュータシステムのブロック図である。
【0094】
図19では、曲げ3D物体を定義する実行可能プログラムおよびコンピュータファイルが、サーバSCに接続されたメモリ装置上に記憶される。メモリ装置と、サーバの全アーキテクチャとは、ディスプレイコントローラ、感応性表面、ディスプレイ、キーボード、および/またはポインティングデバイスがサーバ内に欠けていてよいことを除いて、
図18を参照して上記で論じられたものと同じでよい。
【0095】
次いで、サーバSCは、ネットワークNWを介して管理者システムADSおよびエンドユーザコンピュータEUCに接続される。
【0096】
管理者システムおよびエンドユーザコンピュータの全アーキテクチャは、管理者システムおよびエンドユーザコンピュータのメモリ装置が曲げ3D物体を定義する実行可能プログラムおよび/またはコンピュータファイルを記憶しないことを除いて、
図18を参照して上記で論じられたものと同じでよい。しかしながら、エンドユーザコンピュータは、以下で論じられるように、サーバの実行可能プログラムと共に協働するように設計されたクライアントプログラムを記憶する。
【0097】
理解できるように、ネットワークNWは、インターネットなどの公衆ネットワーク、またはLANネットワークやWANネットワークなどのプライベートネットワーク、あるいはそれらの任意の組合せでよく、PSTNまたはISDNサブネットワークをも含むことができる。ネットワークNWはまた、イーサネットネットワークなどのワイヤードでもよく、EDGE、3G、および4G無線セルラシステムを含むセルラネットワークなどの無線でよい。無線ネットワークはまた、Wi-Fi、Bluetooth、または周知の任意の他の無線形態の通信でもよい。したがって、ネットワークNWは例示的なものに過ぎず、この進歩の範囲を決して限定するものではない。
【0098】
エンドユーザコンピュータのメモリ装置内に記憶され、エンドユーザコンピュータのCPUによって実行されるクライアントプログラムが、ネットワークNWを介して、サーバSCによって記憶され、モデル化された曲げ3D物体を定義するファイルを含むデータベースDBにアクセスする。サーバは、前述のように処理を実施し、展開部品を含むシーンの所望の表現に対応するファイルを、やはりネットワークNWを使用してエンドユーザコンピュータに送信する。
【0099】
ただ1つの管理者システムADSおよび1つのエンドユーザシステムEUCが示されているが、システムは、限定なしに任意の数の管理者システムおよび/またはエンドユーザシステムをサポートすることができる。同様に、本発明の範囲から逸脱することなく、複数のサーバもシステム内に実装されることができる。
【0100】
本明細書で説明された任意の方法ステップは、工程内の特定の論理機能またはステップを実装するための1つまたは複数の実行可能命令を含むコードのモジュール、セグメント、または部分と理解されるべきであり、代替実装が本発明の例示的実施形態の範囲内に含まれる。