(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】樹脂製容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20230915BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20230915BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230915BHJP
B65D 1/34 20060101ALI20230915BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20230915BHJP
B29C 51/14 20060101ALI20230915BHJP
B29C 51/10 20060101ALI20230915BHJP
B65D 25/14 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/20 Z
B32B27/00 H
B65D1/34
B65D1/00 111
B29C51/14
B29C51/10
B65D25/14 Z
(21)【出願番号】P 2018243715
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105821
【氏名又は名称】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 侑哉
(72)【発明者】
【氏名】林 悠也
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-084158(JP,A)
【文献】特開2018-171876(JP,A)
【文献】特開2001-315197(JP,A)
【文献】特開平09-003176(JP,A)
【文献】特開2015-024862(JP,A)
【文献】特開2010-052905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/00-65/46
B65D 1/00- 1/48
B65D 23/00-25/56
B32B 1/00-43/00
B29C 49/72-51/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂系シートから容器を製造する方法であって、
(1)樹脂系シートが、a)樹脂系基材フィルム、b)樹脂系基材フィルムの少なくとも一方の面に形成された下地層及びc)前記下地層上に形成された機能層を含む積層体であって、
a)樹脂系基材フィルムは、厚み100μm以上であり、
b)下地層は、b1)接着性樹脂成分と平均粒径D50が6~50μmである充填粒子とを含み、b2)乾燥重量が1.0~10.0g/m
2であり、
c)機能層は、c1)疎水性微粒子及び疎油性微粒子の少なくとも1種を含有し、c2)乾燥重量が0.3~10g/m
2であり、
(2)前記樹脂系シートを熱板真空圧空成型法によって容器を作製する工程を含み、
前記の熱板真空圧空成型法においては、樹脂系シートを、予め100~230℃に加熱した熱板に空気圧
1~6kgf/cm
2及び時間1秒超えかつ40秒未満で押し付け、その後空気圧0.5~11kgf/cm
2及び時間1秒超えかつ10秒未満で成型金型に押し付けて成型する、
ことを特徴とする樹脂製容器の製造方法。
【請求項2】
容器が、1)底部、2)前記底部の外周上から立ち上がる側壁部、3)前記側壁部の上端部から形成される開口部及び4)前記開口部から容器外周方向に伸びるフランジ部を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
樹脂系基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂の少なくとも1種である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
充填粒子が、融点90~350℃である樹脂ビーズである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
樹脂ビーズの比重が0.93~1.30である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記金型のエッジ部分として底壁と側壁からなる底部隅の最も伸ばされる部分に半径1~30mmの丸みがつけられている、請求項2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂系シートから容器を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、飲料品、医薬品、化粧品等の各種の製品においては、例えばヨーグルト、ゼリー、プリン、液体洗剤、練り歯磨き、レトルト食品、シロップ、ドレッシング、洗顔クリーム等の様々な内容物が包装体により包装されている。これら包装体は、それぞれの内容物に応じた機能を有する包装材料が用いられている。これらの包装材料の中でも、樹脂シート等を成型して得られる樹脂製容器も、包装材料の一形態として汎用されている。
【0003】
食品収容用の樹脂製容器を例にとると、例えばコンビニエンスストア、スーパーマーケット、等で販売されている弁当類、惣菜類、洋菓子・和菓子等の菓子類、アイスクリーム、ペットフード等の加工食品の包装には、種々の樹脂製容器が使用されている。この中でも、例えばみたらし団子の蜜(あん)、おはぎのあんこ等に代表されるように、水分が多く、しかも粘性の高い食材が表面に露出している食品は、それを取り出す際に包装材料に付着して取り出しにくくなるため、予めトレー状等に成型した樹脂製容器に載せた状態で包装材料(袋体)に充填されている。
【0004】
近年、こうした樹脂製容器としては、付着防止性を備えるものが検討されており、例えば疎水性酸化物微粒子を含有するオレフィン系共重合体樹脂からなる撥水層を備えた樹脂製容器が提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、熱可塑性樹脂を含有する層の表面の少なくとも一部に一次粒子平均径3~100nmの疎水性酸化物微粒子が付着している積層体を包装材料として用いる技術が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開WO2014/87695公報
【文献】特開2011-93315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される樹脂製容器は、撥水層に樹脂成分が比較的多量に含まれるため、内容物と樹脂成分との接触が多くなる結果、例えば水分が多くて粘性の高い食材に対しては十分な付着防止効果が得られない。このため、内容物を樹脂製容器から取り出しにくくなるほか、取り出せたとしても内容物の表面の一部が樹脂製容器に付着して脱離し、内容物(食品等)の外観が悪くなってしまうという問題がある。また、樹脂製容器も、内容物を取り出す際に内容物が容器に引っ付いて大きく変形してしまい、摂食中に樹脂製容器を皿代わりに使えないという欠点もある。さらに、容器表面の凹凸形状層の架橋処理のために、電子線を照射する必要があり、製造工程上又はコスト的にも不利となる。
【0008】
特許文献2に記載の包装材料では、保形性のある容器に成型し、粘性の高い食品と常時接触するような状態で当該容器中に収容された場合、そのような粘性の高い食品(食材)が容器側に付着してその一部が容器側に残ってしまいやすくなることから、さらなる改善の余地がある。
【0009】
従って、本発明の主な目的は、良好な保形性とともに、粘性の高い内容物が常に接していても高い付着防止効果を発揮できる樹脂製容器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の構成を有する包装材料を熱成型する方法によって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記の樹脂製容器の製造方法に係る。
1. 樹脂系シートから容器を製造する方法であって、
(1)樹脂系シートが、a)樹脂系基材フィルム、b)樹脂系基材フィルムの少なくとも一方の面に形成された下地層及びc)前記下地層上に形成された機能層を含む積層体であって、
a)樹脂系基材フィルムは、厚み100μm以上であり、
b)下地層は、b1)接着性樹脂成分と平均粒径D50が6~50μmである充填粒子とを含み、b2)乾燥重量が1.0~10.0g/m2であり、
c)機能層は、c1)疎水性微粒子及び疎油性微粒子の少なくとも1種を含有し、c2)乾燥重量が0.3~10g/m2であり、
(2)前記樹脂系シートを熱成型することによって容器を作製する工程を含む
ことを特徴とする樹脂製容器の製造方法。
2. 容器が、1)底部、2)前記底部の外周上から立ち上がる側壁部、3)前記側壁部の上端部から形成される開口部及び4)前記開口部から容器外周方向に伸びるフランジ部を含む、前記項1に記載の製造方法。
3. 樹脂系基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂の少なくとも1種である、前記項1に記載の製造方法。
4. 充填粒子が、融点90~350℃である樹脂ビーズである、前記項1に記載の製造方法。
5. 樹脂ビーズの比重が0.93~1.30である、前記項4に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、良好な保形性とともに、粘性の高い内容物が常に接していても高い付着防止効果を発揮できる樹脂製容器の製造方法を提供することができる。特に、本発明の製造方法では、予め特定の下地層及び機能層を含むシートを熱成型することによって容器を作製しているため、後工程で機能層等を形成する場合に比して、容器全体(特に隅部、細部等)にわたってより均質な撥水性及び/又は撥油性を有する容器を提供することができる。
【0013】
本発明の製造方法で得られた容器は、機能層が内面に形成されているため、粘性の高い内容物が常に接していても高い付着防止効果を発揮できる樹脂製容器を提供することができる。その結果、たとえ粘性の高い食品が常に接触するような状態で容器中に収容されたとしても、食品の樹脂製容器内面への付着を効果的に抑制ないしは防止することができる。つまり、食品(食材)が容器にひっついてしまい、その一部が容器側に残ってしまうよう現象を効果的に抑制することができる。また、本発明の製造方法による容器は、保形性にも優れているため、容器を含む製品の保存時、輸送時及び使用時にわたり、内容物の外観を効果的に保護することができる。
【0014】
このような特徴をもつ樹脂製容器は、例えばそれに食品を載せた状態で袋体に充填する使い方以外にも、例えば弁当のおかず用トレー、店頭販売での大福餅、みたらし団子、たこ焼き等のように食品を容器に載せてそのまま食するような用途、さらには食品以外の医薬品、化粧品、工業製品等を収容するための容器としても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の樹脂系シートの層構成の具体例を示す図である。
【
図2】本発明の樹脂系シートを成型することにより得られた容器の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の製造方法は、樹脂系シートから容器を製造する方法であって、
(1)樹脂系シートが、a)樹脂系基材フィルム、b)樹脂系基材フィルムの少なくとも一方の面に形成された下地層及びc)前記下地層上に形成された機能層を含む積層体であって、
a)樹脂系基材フィルムは、厚み100μm以上であり、
b)下地層は、b1)接着性樹脂成分と平均粒径D50が6~50μmである充填粒子とを含み、b2)乾燥重量が1.0~10.0g/m2であり、
c)機能層は、c1)疎水性微粒子及び疎油性微粒子の少なくとも1種を含有し、c2)乾燥重量が0.3~10g/m2であり、
(2)前記樹脂系シートを熱成型することによって容器を作製する工程(成型工程)を含む
ことを特徴とする。
【0017】
1.成型用樹脂系シート
本発明では、上記a)、b)及びc)の各層を含む樹脂系シートを成型用シートとして用いる。樹脂系シートの層構成の具体例を
図1に示す。樹脂系シート10は、樹脂系基材フィルム1、樹脂系基材フィルムの表面上に積層された下地層2及び下地層の表面上に積層された機能層3を含む積層体から構成されている。特に、機能層3が付着防止層として機能するものである。機能層3は、複数の疎水性粒子及び/又は疎油性粒子が互いに固着して三次元網目上構造を形成してなる多孔質層であることが好ましい。
【0018】
樹脂系シートを構成する各層は互いに直に接した状態で積層されていることが好ましいが、本発明の効果を妨げない範囲内で他の層を含んでいても良い。また、各層は、2層以上積層された層であっても良い。以下、樹脂系シートを構成する各層について説明する。
【0019】
(1)樹脂系基材フィルム
樹脂系基材フィルムの材質としては、特に限定されず、公知の容器に採用されている樹脂材料を採用することができる。従って、例えば合成樹脂フィルムの少なくとも1種を挙げることができる。
【0020】
合成樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート系、ポリブチレンテレフタレート系等のポリエステル系、ポリスチレン系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等のポリオレフィン系、ポリ塩化ビニリデン系、ナイロン等を例示することができる。本発明では、ポリエチレンテレフタレート系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系の少なくとも1種を含んでいることが好ましい。これらは、いずれも公知又は市販のものを用いることもできる。
【0021】
上記のポリスチレン系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等のポリオレフィン系フィルムとしては、オレフィン単量体の共重合体からなるコポリマーを好適に使用することができるが、本発明の効果を妨げない範囲内で他のモノマーとの共重合体を含んでも良い。
【0022】
さらに、樹脂系基材フィルムは、上記のような樹脂成分を主成分として(特に通常50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは95重量%以上)含むフィルムであれば良いが、本発明の効果を妨げない範囲内において他の成分(フィラー、着色剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤等)等が含まれていても良い。また例えば、他の樹脂成分が混合された混合樹脂フィルムのほか、ポリマーアロイフィルム等であっても良い。
【0023】
また、樹脂系基材フィルムは、無延伸又は延伸のいずれでも良い。特に強度、耐熱性等が重視される食品、喫食用途等の場合、延伸されたフィルム(特に二軸延伸フィルム)であることが好ましい。また、成型性の観点からは、無延伸フィルムを用いることが好ましい。従って、例えば、本発明では、無延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルムを好適に用いることができる。
【0024】
樹脂系基材フィルムは、単層タイプであっても良いし、複数の層が積層されてなる多層タイプであっても良い。多層タイプの場合、複数のフィルム(機能性フィルム)が貼り合わせることにより、例えば抗菌性、ガスバリア性、酸素・水分吸収性等を付与することができる結果、より高付加価値化を図ることができる。
【0025】
多層タイプのフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート系フィルム又はポリオレフィン系フィルムの少なくとも一方の面に他の層が1層又は2層以上形成されてなる積層体を樹脂系基材フィルムとして用いることができる。他の層としては、例えば印刷層、オーバーコート層、接着剤層、プライマーコート層、アンカーコート層、防滑剤層、滑剤層、防曇剤層、ガスバリア層等が挙げられる。従って、例えば樹脂系基材フィルムが内容物と接する側の面とは反対の面(すなわち、容器形状に成型された場合に外部に露出する側の面)に、印刷層、オーバーコート層等を積層したり、あるいは各種フィルムを適宜積層することができる。また、多層タイプである場合、その樹脂系基材フィルムの最表面又は中間層として印刷層を備えていても良い。
【0026】
特に、本発明において、樹脂系基材フィルムとして無延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルム、二軸延伸ポリスチレン系フィルムを用いる場合も、単層タイプ又は多層タイプのいずれの形態でも使用することができる。特に、多層タイプのフィルムとしては、例えば無延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルム又はポリスチレン系フィルムとその少なくとも一方の面に形成されているヒートシール層を含む積層体を樹脂系基材フィルムとして好適に用いることができる。例えば、無延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルムを基材とする場合、特に印刷層、接着剤層及び無延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルムを順に含む積層体を樹脂系基材フィルムとして好適に用いることができる。
【0027】
接着剤層を形成する場合、使用できる接着剤としては、特に食品用途で使用できるものであれば限定的ではなく、例えばラミネート接着剤等を好適に用いることができる。ラミネート接着剤の成分としては、例えばポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、ポリウレタン系接着剤等が挙げられる。また、性状も限定的でなく、溶剤型、無溶剤型、水性型等のいずれも使用することができる。例えば、本発明では、2枚以上のポリエチレンテレフタレート系フィルムをポリウレタン系ラミネート接着剤層を介して積層されてなる積層体を樹脂系基材フィルムとして好適に用いることができる。またフィルムは、必要に応じて疎水性粒子及び/又は疎油性粒子を含む塗工液を塗布・乾燥した後に、その面とは反対面を他基材とラミネートしてから成型することもできる。
【0028】
樹脂系基材フィルムの厚みは、通常100μm以上であれば良いが、特に100~2000μmであることが好ましく、その中でも150~800μmであることがより好ましい。樹脂系基材フィルムの厚みが100μm未満であると、成型容器として保形し難くなることがあるほか、載せられた内容物を保形できなくなる。また、前記厚みが2000μmを超える場合は、実用上のコイル巻き長さが短くなるほか、成型に時間が掛かり生産性及び歩留まりを著しく低下させるおそれがある。なお、前記厚みは、樹脂系基材フィルムが多層タイプである場合は、その合計厚みをいう。
【0029】
なお、本発明においてフィルムとは、JISのフィルムの定義として規定される厚さが250μm未満のものに限らず、厚さが250μm以上のシートも含有される。
【0030】
(2)下地層
本発明では、下地層を樹脂系基材フィルムと機能層との間に介在させることによって、比較的平滑な基材フィルム上に微細な凹凸を付与できる結果、内容物と容器内面との接触面積を少なくすることができるので、より高い非付着性を得ることができる。
【0031】
下地層は、接着性樹脂成分と平均粒径D50が6~50μmである充填粒子とを含む組成から形成される。
【0032】
接着性樹脂成分としては、公知の接着性の樹脂成分を含む接着剤を使用することができる。例えば、公知又は市販のシーラントフィルムの構成成分のほか、ラッカータイプ接着剤、イージーピール接着剤、ホットメルト接着剤等の接着剤に用いられる成分を採用することができる。
【0033】
接着性樹脂成分は、限定的でなく、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂等の接着剤等を挙げることができる。より具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマ-樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体、アクリル-塩酢ビ共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマ-、ポリブテンポリマ-、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマ-ル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、その他の熱可塑性樹脂のほか、これらのブレンド樹脂、これらを構成するモノマーの組合せを含む共重合体、変性樹脂等を例示することができる。従って、例えばアクリル樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体との混合物等も好適に用いることができる。
【0034】
下地層中における接着性樹脂成分の含有量としては、用いる接着性樹脂成分の種類等に応じて適宜設定すれば良く、通常は50~97重量%程度とし、さらに60~95重量%とすることができるが、これに限定されない。従って、例えば70~90重量%程度に設定することもできる。
【0035】
充填粒子としては、有機成分及び無機成分の少なくとも1種を含む充填粒子を採用することができる。
【0036】
無機成分としては、例えば1)アルミニウム、銅、鉄、チタン、銀、カルシウム等の金属又はこれらを含む合金又は金属間化合物、2)酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄等の酸化物、3)リン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム等の無機酸塩又は有機酸塩、4)ガラス、5)窒化アルミニウム、窒化硼素、炭化ケイ素、窒化ケイ素等のセラミック等を好適に用いることができる。
【0037】
有機成分としては、例えばアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アミノ系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等の有機高分子成分(又は樹脂成分)を好適に用いることができる。
【0038】
充填粒子は、無機成分からなる粒子あるいは有機成分からなる粒子(粉末)のほか、無機成分及び有機成分の両者を含む粒子(粉末)を用いることができる。これらの中でも、特に、アクリル系樹脂粒子、親水性シリカ粒子、リン酸カルシウム粒子、炭粉、焼成カルシウム粒子、未焼成カルシウム粒子、ステアリン酸カルシウム粒子等の少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0039】
これらの充填粒子の中でも、有機成分からなる充填粒子が好ましく、特に樹脂ビーズを用いることがより好ましい。特に、ポリエチレン系樹脂ビーズ、ポリプロピレン系樹脂ビーズ及びアクリル系樹脂ビーズの少なくとも1種を含み、樹脂ビーズの比重が0.93~1.30であることが好ましい。さらには、アクリル系樹脂ビーズは、成型の際の熱及び圧力で変形し難いという点でより好ましい。また、樹脂ビーズの場合、その樹脂の融点としては、通常90~350℃であることが好ましく、特に150~300℃であることがより好ましい。融点が90℃未満であると成型時の熱により溶解してしまい、所望の凹凸形状による効果が得られなくなることがある。また、融点が350℃を超えると成型性を阻害する要因となるおそれがある。
【0040】
また、充填粒子の平均粒子径(レーザー回折式粒度分布計によって測定した体積平均の粒度分布に基づいて算出された50%累積時の平均粒径、D50)は6μm以上50μm以下であり、15μm以上30μm以下であることがさらに好ましい。6μm未満では隙間形成等の点で十分な性能を発揮できない。他方、50μmを超える場合は、充填粒子の脱落、分散性、成型性の低下、膜割れの発生等の点で不向きである。また、加工上の見地からも、例えば塗工ムラが発生しやすく、外観又は性能に影響を及ぼすおそれがある。充填粒子の形状は限定的でなく、例えば球状、回転楕円体状、不定形状、涙滴状、扁平状、中空状、多孔質状等のいずれであっても良い。
【0041】
下地層中における充填粒子の含有量は、用いる充填粒子の種類・大きさ等に応じて適宜設定すれば良く、通常は固形分含有量で10~50重量%程度とすることが好ましいが、これに限定されない。
【0042】
下地層の形成量は、用いる充填粒子の種類等にもよるが、通常は乾燥重量として通常1.0~10.0g/m2程度とすれば良く、特に2.0~8.0g/m2とすることが好ましい。前記形成量が1.0g/m2未満であると、撥水性の維持効果が低減したり、内容物の保形性の低下を起こすおそれがある。また、前記形成量が10.0g/m2を超えても、凹凸の効果が低減し、内容物が包装体の内側の面に付着する可能性がある。下地層の形成量とは、塗工作業後に乾燥した後の積層体重量から、樹脂系基材フィルム重量を差し引いた重量(単位面積当たりの重量)のことである。
【0043】
(下地層の形成方法)
下地層の形成方法は、限定的ではないが、特に接着性樹脂成分及び充填粒子を含む塗工液(塗工液A)を樹脂系基材フィルムの少なくとも一方の面に塗布し、乾燥する工程を含む方法によって好適に実施することができる。
【0044】
塗工液Aについては、特に限定されないが、例えば有機溶剤に接着性樹脂成分が溶解又は分散してなる溶液又は分散液中に充填粒子が分散した混合液を好適に用いることができる。
【0045】
有機溶剤としては、用いる熱可塑性樹脂の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、アルコール(メタノール、エタノール)、シクロヘキサン、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、メチルシクロヘキサン(MCH)、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチルジグリコール、ペンタメチレングリコール、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ヘキシルアルコール等の有機溶剤の中から適宜選択することができる。
【0046】
塗工液A中における熱可塑性樹脂の含有量は、限定的ではないが、通常は5~40重量%程度とし、好ましくは10~30重量%とすれば良い。
【0047】
また、塗工液A中における充填粒子の含有量は、塗布・乾燥後の含有量が上記で示した範囲内となるようにすれば良い。従って、例えば塗工液中3~30重量%と設定することもできる。
【0048】
なお、塗工液A中には、本発明の効果を妨げない範囲内で、必要に応じて他の添加剤を適宜配合することができる。例えば、分散剤、着色剤、沈降防止剤、粘度調整剤、脱泡剤等を配合することができる。
【0049】
塗工液Aを塗布する方法も、特に限定されず、例えばロールコーティング、各種グラビアコーティング、バーコート、ドクターブレードコーティング、コンマコーター、刷毛塗り等の公知の方法をいずれも採用することができる。例えば、ロールコーティング等を採用する場合は、疎水性微粒子及び/又は疎油性微粒子を溶媒に分散させてなる分散液を用いて下地層上に塗膜を形成することにより付着防止層形成工程を実施することができる。
【0050】
また、塗工液Aを塗布する領域は、少なくとも機能層が形成される面を含むように設定すれば良く、特に機能層が形成される面の全面を塗布することが好ましい。この場合、機能層が形成されない領域に塗布しても良い。
【0051】
塗布後は、塗布面を乾燥することにより、樹脂系基材フィルム上に下地層が形成されたフィルムを得る。
【0052】
乾燥方法は、特に制限されず、自然乾燥又は加熱乾燥のいずれであっても良い。加熱乾燥する場合は、通常は80~200℃、特に100~160℃とすれば良い。加熱時間は、加熱温度等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は3~30秒程度とすれば良い。得られたフィルムは、必要に応じて、熱成型しやすいように、塗膜を形成する前又は後で予め特定の形状に加工(裁断等)を行っても良い。
【0053】
(3)機能層
機能層は、撥水性及び/又は撥油性を発揮することによって付着防止層として機能するものである。そのために、疎水性微粒子及び疎油性微粒子の少なくとも1種を含む(以下、これらを「付着防止性粒子」ともいう。)。これにより、樹脂製成型容器には撥水性及び/又は撥油性が付与され、水分が多くて粘性の高い内容物であっても、付着等をより効果的に抑制ないしは防止することができる。具体的には、容器に載せる内容物が、脂肪分が少なく、水分が多い食品の場合には、樹脂系基材フィルム表面に疎水性微粒子を塗工すれば良い。一方、容器に載せる内容物が、脂肪分が多い食品の場合には、樹脂系基材フィルムに対し、ポリフルオロアルキルメタアクリレート樹脂の被覆層を備える微粒子を疎油性粒子として付与することが好ましい。
【0054】
疎水性粒子としては、特に制限されないが、樹脂製容器を食品容器として使用する場合には、食品用に適するという点より、疎水性酸化物微粒子を好適に用いることができる。疎水性酸化物微粒子としては、特に限定されないが、例えば酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の粒子(粉末)の少なくとも1種を好適に用いることができる。その中でも酸化ケイ素粒子がより好ましい。
【0055】
これらの粒子は、特に平均一次粒子径が5~50nmであることが好ましく、特に7~30nmであることがより好ましい。なお、粒子の一次粒子平均径の測定は、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡を用いて実施することができる。より具体的には、平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡で撮影し、その写真上で200個以上の粒子の直径を測定し、その算術平均値を算出することによって求めることができる。
【0056】
疎水性酸化物微粒子は、三次元網目状構造を有する多孔質層を形成していることが好ましく、その厚みは0.1~5μm程度が好ましく、0.2~2.5μm程度がさらに好ましい。このようなポーラスな層状態で付着することにより、当該層に空気を多く含むことができ、より優れた非付着性を発揮することができる。
【0057】
上記のような疎水性酸化物微粒子は、公知又は市販のものを使用することができる。例えば、シリカとしては、製品名「AEROSIL R972」、「AEROSIL R972V」、「AEROSIL R972CF」、「AEROSIL R974」、「AEROSIL RX200」、「AEROSIL RY50」、「AEROSIL NY50」、「AEROSIL RY200S」、AEROSIL RY300」「AEROSIL RY200」(以上、日本アエロジル株式会社製)、「AEROSIL R202」、「AEROSIL R805」、「AEROSIL R711」、「AEROSIL R7200」、「AEROSIL R812」、「AEROSIL R812S」、(以上、エボニック デグサ社製)、「サイロホービック100」「サイロホービック200」「サイロホービック603」(以上、富士シリシア化学株式会社製)等が挙げられる。チタニアとしては、製品名「AEROXIDE TiO2 T805」(エボニック デグサ社製)等が例示できる。アルミナとしては、製品名「AEROXIDE Alu C」(エボニック デグサ社製)等をシランカップリング剤で処理して粒子表面を疎水性とした微粒子が例示できる。
【0058】
これらの中でも、疎水性シリカ微粒子を好適に用いることができる。特に、より優れた付着防止効果が得られるという点において、表面にトリメチルシリル基を有する疎水性シリカ微粒子が好ましい。これに対応する市販品としては、例えば前記「AEROSIL R972」、「AEROSIL R812」、「AEROSIL R812S」(いずれもエボニック デグサ社製)等が挙げられる。
【0059】
疎油性粒子としては、限定的ではないが、例えば酸化物微粒子(親水性酸化物微粒子等)の表面にポリフルオロアルキルメタアクリレート樹脂を含む被覆層を有する複合粒子を用いることができる。このような複合粒子を用いることにより、例えば脂肪分が多い内容物であっても付着を効果的に低減することができる。
【0060】
複合粒子の粒径としては、上述の疎水性酸化物微粒子とほぼ同程度の範囲のものを好適に用いることができる。すなわち、平均一次粒子径が5~50nmであることが好ましく、特に7~30nmであることがより好ましい。
【0061】
上記のように、複合粒子としては、コア粒子として酸化物微粒子を用い、その表面にポリフルオロアルキルメタアクリレート樹脂等の被覆層が形成されてなる複合粒子を好適に使用することができる。
【0062】
上記の酸化物微粒子としては、例えば酸化ケイ素として、製品名「AEROSIL 200」(「AEROSIL」は登録商標。以下同じ)、「AEROSIL 130」、「AEROSIL 300」、「AEROSIL 50」、「AEROSIL 200FAD」、「AEROSIL 380」(以上、日本アエロジル株式会社製)等が挙げられる。酸化チタンとしては、製品名「AEROXIDE TiO2 T805」(エボニック デグサ社製)等が挙げられる。酸化アルミニウムとしては、例えば製品名「AEROXIDE Alu C 805」(エボニック デグサ社製)等が挙げられる。このような被覆層を有する粒子を用いることによって、酸化物微粒子との親和性に優れるがゆえに比較的密着性の高い強固な被覆層を当該粒子表面上に形成できるととともに、内容物に対する高い非付着性を発現させることができる。
【0063】
また、被覆層を構成するポリフルオロアルキルメタアクリレート樹脂は、特に限定されず、公知又は市販のものを使用することもできる。市販品としては、例えば製品名「CHEMINOX FAMAC-6」(ユニマテック(Japan)社製)、製品名「Zonyl TH Fluoromonomer コード421480」(SIGMA-ALDRICH(USA)社製)、製品名「SCFC-65530-66-7」(Maya High Purity Chem(CHINA)社製)、製品名「FC07-04~10」(Fluory,Inc(USA))、製品名「CBINDEX:58」(Wilshire Chemical Co.,Inc(USA)社製)、製品名「アサヒガードAG-E530」、「アサヒガードAG-E060」(いずれも旭硝子株式会社製)、製品名「TEMAc-N」(Top Fluorochem Co.,LTD(CHINA)社製)、製品名「Zonyl 7950」(SIGMA-RBI (SWITZ)社製)、製品名「6100840~6100842」(Weibo Chemcal Co.,Ltd(CHINA)社製)、製品名「CB INDEX:75」(ABCR GmbH&CO.KG(GERMANY)社製)等を挙げることができる。
【0064】
これらの中でも、より優れた撥水性及び撥油性を達成できるという点より、例えばa)ポリフルオロオクチルメタクリレート、b)2-N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、c)2-ヒドロキシエチルメタクリレート及びd)2,2’-エチレンジオキシジエチルジメタクリレートが共重合したコポリマーを上記樹脂として好適に採用することができる。これらも上記のような市販品を用いることができる。
【0065】
これらの疎油性粒子は、その表面にポリフルオロアルキルメタアクリレート樹脂を備えているので、酸化物微粒子との親和性に優れるがゆえに比較的密着性の高い強固な被覆層を当該粒子表面上に形成できるとともに、内容物に対する高い非付着性を発現させることができる。
【0066】
複合粒子の調製方法は特に限定されず、上記のような酸化物微粒子(粉末)に対して被覆材としてポリフルオロアルキルメタアクリレート樹脂を用い、公知のコーティング方法、造粒方法等に従って被覆層を形成すれば良い。例えば、液状のポリフルオロアルキルメタアクリレート樹脂を溶媒に溶解又は分散させた塗工液を酸化物微粒子にコーティングする工程(被覆工程)を含む製造方法によって好適に調製することができる。
【0067】
上記製造方法では、ポリフルオロアルキルメタアクリレート樹脂として常温(25℃)及び常圧下で液状のものを好適に用いることができる。このようなポリフルオロアルキルメタアクリレート樹脂としては、前記で例示した市販品を使用することもできる。
【0068】
塗工液に使用する溶媒は特に制限されず、水のほか、アルコール、トルエン等の有機溶剤を使用することができるが、本発明では水を用いることが好ましい。すなわち、塗工液としてポリフルオロアルキルメタアクリレート樹脂が水に溶解及び/又は分散した塗工液を使用することが好ましい。
【0069】
上記の塗工液中におけるポリフルオロアルキルメタアクリレート樹脂の含有量は特に制限されないが、一般的には10~80重量%、特に15~70重量%、さらには20~60重量%の範囲内に設定することが好ましい。
【0070】
酸化物微粒子表面に塗工液をコーティングする方法は、公知の方法に従えば良く、例えばスプレー法、浸漬法、攪拌造粒法等のいずれも適用することができる。特に、本発明では、均一性等に優れるという点でスプレー法によるコーティングが特に好ましい。
【0071】
塗工液をコーティングした後、熱処理により溶媒を除去することによって複合粒子を得ることができる。熱処理温度は、通常150~250℃程度とし、特に180~200℃とすることが好ましい。熱処理の雰囲気は限定的ではないが、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス(非酸化性)雰囲気が望ましい。また、例えば、必要に応じて、さらに被覆工程及び熱処理工程からなる一連の工程を1回以上実施することができる。これにより被覆量の制御等を好適に行うことが可能となる。
【0072】
機能層中における疎水性粒子及び疎油性粒子の少なくとも1種の含有量が10~100重量%であることが好ましい。これらの粒子の含有量を100重量%に近づければそれだけ高い撥水性及び/又は撥油性を得ることができる。
【0073】
(機能層の形成方法)
機能層の形成方法は、特に限定されないが、特に溶媒中に疎水性微粒子及び疎油性微粒子の少なくとも1種が分散した分散液(塗工液B)を下地層の表面の一部又は全部に塗布し、乾燥する工程を含む方法によって好適に実施することができる。
【0074】
塗工液Bに使用する溶媒は特に制限されず、水、エタノール等のように食品製造で使用されている溶媒を1種又は2種以上で使用することができる。
【0075】
塗工液B中における疎水性微粒子及び/又は疎油性微粒子の含有量は特に制限されないが、一般的には5~200g/L(リットル)程度の範囲内で適宜設定することが好ましい。
【0076】
また、塗工液B中には、本発明の効果を妨げない範囲内において、必要に応じて分散剤、着色剤、沈降防止剤、粘度調整剤、バインダー剤、脱泡剤等が含まれていても良い。
【0077】
塗工液Bを下地層上に塗布する方法は、特に限定されず、例えばロールコーティング、各種グラビアコーティング、バーコート、ドクターブレードコーティング、コンマコーター、刷毛塗り等の公知の方法を適宜採用することができる。疎水性微粒子及び/又は疎油性微粒子は分散媒中に混ぜられていることによって、より均一に塗工することができる。
【0078】
塗布量(乾燥後重量)は、所望の撥水性又は撥油性に応じて適宜設定できるが、通常は0.3~10g/m2程度とし、特に0.4~1g/m2とすることが好ましい。上記範囲内に設定することによって、より確実に付着防止性粒子からなる多孔質層を形成することができる結果、より優れた非付着性(付着防止効果)が長期にわたって得ることができる上、微粒子の脱落抑制、コスト等の点でもいっそう有利となる。
【0079】
塗布後は、塗布面を乾燥することにより、樹脂系基材フィルム上に付着防止性粒子が付着してなるフィルムを得る。乾燥方法は、特に制限されず、自然乾燥又は加熱乾燥のいずれであっても良い。加熱乾燥する場合は、通常は60~190℃程度とし、特に80~150℃とすることが好ましい。加熱時間は、加熱温度等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は3~30秒程度とすれば良い。
【0080】
塗布面の撥水性は、通常は純水(25℃)の接触角が140度以上であり、特に150度以上であることが好ましい。また、撥油性については、食用油:オリーブ油(25℃)の接触角が130度以上であり、特に140度以上であることが好ましい。さらに、塗膜の落下角(オリーブ油)は限定的ではないが、通常は3~20度であることが好ましい。
【0081】
2.成型工程
本発明では、上記「1.成型用樹脂系シート」で説明した樹脂系シートを成型用シート(出発材料)として熱成型を行う。
【0082】
熱成型する方法自体は、公知の方法を採用することができる。また、公知又は市販の成型機を用いて実施することもできる。例えば、圧空成型(加圧空気のみ)、真空成型(真空引きのみ)、真空圧空成型(加圧空気+真空引き)、プレス成型法等のいずれも採用することができる。また、加熱方式も限定的でなく、例えばa)赤外線による輻射加熱、b)熱板と接触させることによる直接加熱等のいずれも採用することができる。これらの中でも、本発明では、基材となる樹脂系シートの偏肉が少なく、容器隅部まで成型金型の形状を転写できるという点で、特に熱板による真空圧空成型(いわゆる熱板真空圧空成型法)を好適に採用することができる。
【0083】
熱成型する条件は、限定的ではないが、例えば熱板真空圧空成型法による場合は、予め100~230℃に加熱した熱板に、空気圧(圧空及び真空):0.5~6kgf/cm2(例えば1~5kgf/cm2)及び時間:1秒超えかつ40秒未満(例えば2~35秒)で押し付け、その後空気圧(圧空及び真空)0.5~11kgf/cm2(例えば1~8kgf/cm2)及び時間1秒超えかつ10秒未満(例えば2~9秒)で樹脂系シートを成型金型に押し付けて任意の形状に成型することにより成型体を得る。このようにして、底面及び側面から構成されるトレー状容器である成型体を得ることができる。樹脂系シートは、熱板に対してどちらの面を接触させて成型しても良く、熱板に直接に機能層が接触しても良いし、機能層とは反対の面に熱板が直接接触しても良い。得られた成型容器は凹型の形状の内側に付着防止性を付与するのが一般的あるが、凹型の形状の外側に付着防止性を付与して用いることもできる。
【0084】
また、本発明では、容器金型設計でエッジ部分(底壁と側壁からなる底部隅の最も伸ばされる部分)に容器の割れ防止、金型からの離型性の向上、使用者のケガの防止等の目的で丸みをつけることもできる。この場合、その丸みの半径は、容器の大きさ、樹脂系シートの厚み等によって変更でき、限定的でないが、付着防止性の維持等の見地より、例えば1~30mm程度とすることが好ましい。1mm未満であると、付着防止性の維持効果が低減することがある。30mmを超えると、容器強度が不足し、角打ちした際に容器の変形又は割れが発生しやすくなる結果、付着防止性の低下につながるおそれがある。
【0085】
3.食品用容器
本発明の製造方法で得られる容器(本発明容器)は、特に食品用の樹脂製容器として好適に用いることができる。すなわち、食品を収容するために用いられ、かつ、食品が付着しにくい容器を提供することができる。本発明容器は、例えばトレー、ケース、カップ等と呼ばれるものも含む。
【0086】
本発明容器としては、底面及び側面から構成される容器を例示することができる。この容器の基本的な構成を
図2に示す。
図2のように食品用容器20は底部22とその外周上から立ち上がる側壁部23を有し、当該側壁部の上部開口部24と、そこから容器外周方向に伸びるフランジ部25を含む。また、容器スタック時の回転又は付着防止機能の低下を防ぐため、側壁部23等にリブがあっても良い。
【0087】
容器の平面形状は、例えば円形、長円形、楕円形、多角形等のいずれでも良い。従って、例えば底面及び側面から構成されるカップ状容器を例示することができる。このような容器は、洋菓子・和菓子等の菓子類の容器、菓子パン、惣菜パン等のゲストレー、アイスクリームやペットフード等の加工食品の容器として安価で使い易いために大量に生産されて使用することができる。
【0088】
本発明容器では、少なくとも食品と接触する面に付着防止性を有する機能層が形成されている。
図2に示す容器では、樹脂系シート10を熱成型することにより作製されたものであり、機能層3が容器内面の最表面層として配置されている(樹脂系基材フィルム及び下地層の表記は省略する。)。
【0089】
このような本発明容器中に、内容物として食品が収容された場合において、その食品が容器内面に接触しても、機能層3があるため、食品が容器内面に付着しにくくなる。これにより、食品が容器側に残さずに無駄なく食することができるほか、容器の洗浄等も省くことができる等のメリットが得られる。
【0090】
本発明容器は、食品用として用いる限り、その食品の種類は限定されず、生鮮食品のほか、既調理食品(例えば、洋生菓子、洋半生菓子、和生菓子、和半生菓子、菓子パン、惣菜パン、お弁当用惣菜等)にも好適に用いることができる。
【0091】
食品の性状も限定的でなく、例えば固体材料のほか、流動性のある材料等にも適用することができる。また、内容物がゲル状物又は非ゲル状物のいずれであっても良い。さらに、内容物は、水分及び油分(油脂類)の少なくとも一方を含む材料であっても良く、特に本発明包装体は水分及び油分の両方を含む材料にも適用することができる。
【0092】
特に、本発明容器体では、容器内面に引っ付きやすい材料を含む内容物にも好適に用いることができる。このような材料の代表例としては、液状材料(半固体材料、ゲル状物質等を含む。)が挙げられる。この中でも、常温で比較的粘度が高い液状材料(例えば25℃で粘度が1×103~1×105mPa・s程度)は、一般的には容器内面に引っ付きやすいので、このような材料が外部に露出している内容物の包装にも本発明容器は有利である。このような液状材料の具体例としては、例えば生クリーム、カスタードクリーム、ホイップクリーム、あん、シロップ、はちみつ、ジャム等が外部に露出している菓子パン、洋菓子・和菓子等のほか、例えばソース、トマトケチャップ、マヨネーズ等の調味料が外部に露出している惣菜類(惣菜パン、弁当等を含む。)等が挙げられる。
【0093】
食品用容器は、主に食品を載せるための容器をいい、例えばトレー状(カップ状を含む)の容器として好適に用いることができる。載せる対象となる食品は問わないが、上記のようにみたらし団子、おはぎ等のように水分が多くて粘性の高い食品に好適に使用することができる。こうした容器は、食品の下に敷かれて使用され、食品の上部が露出して使用されることが想定されるが、食品用成型容器に食品を載せた状態で、さらに食品用成型容器ごと包装袋に充填されたものにも好適に使用できる。また、お弁当のおかず等の惣菜入れとしても好適に使用できる。特に、こうした容器は保形性を有することで、食品又はその一部が容器から転落もしくは漏れ出ることを防ぐこともできる。
【0094】
トレー状の成型容器としての形状は特に限定されないが、底部とその外周上から立ち上がる側壁部を有し、当該側壁上部から容器外周方向に伸びるフランジ部を有する形状に成型された容器が喫食用食品容器として好適に使用される。
【実施例】
【0095】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0096】
実施例1
(1)下地コート剤の調製と塗工
ポリエステル系熱可塑性樹脂の溶液(溶剤:トルエン、固形分:20重量%)100重量部に対し、充填粒子としてポリメタクリル酸メチルビーズ(製品名「MBX-20」積水化成品工業社製、平均粒径:20μm、融点:250~270℃)10重量部を添加して30分間室温で攪拌して下地コート剤を調製した。このコート剤をバーコーター#8を用いて乾燥後重量で5.0g/m
2となるように市販の厚み200μmの無延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(「PET」と略称)の表面に塗工し、続いて120℃のオーブン中で10秒間加熱乾燥させてトルエンを蒸発させることにより、基材フィルム上に下地層を形成した。
(2)撥水コート液の調製と塗工
エタノール96.5mLに疎水性酸化物微粒子(製品名「AEROSIL R812S」エボニック デグサ(株)製、BET比表面積:220m
2/g、平均一次粒子径:7nm)3.5gを添加して30分間室温で攪拌して撥水コート液を調製した。このコート液を前記で作製された下地層の表面に乾燥後重量0.5g/m
2となるようにバーコーター#3を用いて塗工し、続いて100℃のオーブン中で10秒間加熱乾燥させてエタノールを蒸発させることにより機能層を形成した。このようにして、出発材料となる樹脂系シートを得た。
(3)樹脂系シートの熱成型
得られた樹脂系シートを熱成型することによって容器(食品用トレー)を作製した。熱成型は、熱板真空圧空成型機を用いて実施した。この成型機は、(株)脇坂エンジニアリング製「HPT12-400」を使用した。金型設定温度138℃、成型圧空圧力:0.4MPa、離型圧力:0.1MPa、加熱圧空圧力:0.1MPa、加熱圧空時間:2秒、加熱真空時間:2秒、成型圧空時間:3秒、成型真空時間:3秒 離型時間:1秒の成型条件とした。
成型方法は、上記成型機の設定条件により実施した。まず、通気孔を有する熱板と成型金型(雌型)との間に付着防止層を熱板側に向けて樹脂系シートをセットした。次に、熱板と樹脂系シートをクランプにて固定し、成型金型側から樹脂系シートを圧空で押し込むと同時に、熱板から樹脂系シートを真空で引き込み、樹脂系シートを熱板に押し当て2秒間加熱した。その後、熱板から樹脂系シートを圧空で押し込むと同時に、成型金型から樹脂系シートを引き込み3秒間成型金型に圧着させ、成型金型(雌型)の形状を転写した。このようにして、
図2に示すような容器を作製した。
【0097】
実施例2
実施例1の上記「(1)下地コート剤の調製と塗工」における200μmのPETフィルムを400μmのPETシートに変更して成型したほかは、実施例1と同様にして成型容器を得た。
【0098】
実施例3
実施例1の上記「(2)撥水コート液の調製と塗工」の微粒子を以下の方法で得たほかは、実施例1と同様にして成型容器を得た。平均一次粒子径12nm及びBET比表面積200m2/gの気相法シリカ粉末(製品名「AEROSIL 200」日本アエロジル(株)製)100gを反応槽に入れ、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら市販の表面処理剤500gをスプレーし、次いで200℃で30分間攪拌した後、冷却した。このように表面改質シリカ微粒子(金属酸化物複合微粒子)の粉末を得た。上記の処理剤として、ポリフルオロオクチルメタクリレート、2-N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート及び2,2’-エチレンジオキシジエチルジメタクリレートのコポリマーの水分散液(固形分濃度:20重量%)を処理剤として用いた。
【0099】
実施例4
塗工基材を200μmのPETフィルムから50μmのPETフィルムとし、次いで付着防止性フィルムを熱板圧空成型機にて成型する前にラミネート加工して多層にしたほかは、実施例1と同様にして成型容器を得た。具体的には、市販の厚み350μmのPETシートにポリウレタン系ドライラミネート接着剤(乾燥後重量3.5g/m2;「D」と略称)を塗工し、前記の50μmのPETの付着防止面の反対面と貼り合わせ、「350PET/D/50PET/微粒子含有下地樹脂/疎水性酸化物微粒子」なる基材シートを作製した。
【0100】
比較例1
200μmのPETフィルムを75μmのPETフィルムに変更し、下地コート剤の乾燥後重量を12.0g/m2となるようにしたほかは、実施例1と同様にして成型容器を得た。
【0101】
比較例2
疎水性酸化物微粒子を3.5gから0.5gとし、エタノール96.5mLから99.5mLとし、乾燥後重量で0.1g/m2となるようにしたほかは、実施例1と同様にして成型容器を得た。
【0102】
比較例3
ポリメタクリル酸メチルビーズを平均粒子径が20μmの「MBX-20」から平均粒子径が5μmの「MBX-30X-5」としたほかは、実施例1と同様にして成型容器を得た。
【0103】
試験例1
各実施例及び比較例で得られた各成型容器サンプルについて以下のとおり評価を行った。表1には各サンプルの層構成等を示す。表2には試験結果を示す。
(1)成型状態の確認
実施例及び比較例で得られた各成型容器サンプルの成型状態を目視で確認した。具体的には成型容器側面・底面・底部エッジ部分の周辺に割れ・破れ・偏肉・反りの不具合がないか確認し、さらに成型容器が成型金型と同じ形状で保形できているか否か(保形性)を確認した。前記不具合がなく、保形性も良好である場合は「○」、前記不具合がある場合及び/又は保形性に問題がある場合は「×」と評価した。
(2)付着防止性の確認
マイクロピペット(pipetman P20、GILSON社製)にマイクロピペットチップ(アイビスピペットチップ、アイビス社製)40を装着して、純水を成型容器サンプルに静かに滴下した。傾けて側面・底面・底部エッジ部分を滞りなく滑落するサンプルは「○」、一部でも付着するサンプルは「×」と評価した。
(3)みたらし団子の付着有無確認
市販の1串4玉×4本入りのみたらし団子を用意し、1玉を串から取り外した。これを箸で持ち、実施例及び比較例で得られた各成型容器サンプルの底面と側面との境界部に沿って2周し、みたらし団子をこすりつけた。その後、容器上に付着したみたらし団子のみつの数をカウントした。見た目にみたらし団子のみつ(あん)の付着が気にならない程度として付着数が10点未満のサンプルを「○」、10点以上のサンプルを「×」として評価した。
【0104】
【0105】
【0106】
以上の結果からも明らかなように、本発明の製造方法によって得られた樹脂製容器は、保形性を有するとともに、水分が多くて粘性の高い内容物に対しても容器への付着防止効果を発揮できることがわかる。