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  • 特許-がんを治療するための薬学的組み合わせ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-14
(45)【発行日】2023-09-25
(54)【発明の名称】がんを治療するための薬学的組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20230915BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20230915BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230915BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230915BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230915BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20230915BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20230915BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230915BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230915BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230915BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230915BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230915BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K31/4439
A61P1/00
A61P1/16
A61P11/00
A61P13/08
A61P13/10
A61P13/12
A61P15/00
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018564408
(86)(22)【出願日】2017-06-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2017063714
(87)【国際公開番号】W WO2017211830
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-05-15
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】16173443.9
(32)【優先日】2016-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517282001
【氏名又は名称】サポート-ヴェンチャー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バウシュ, アレクサンダー
【合議体】
【審判長】原田 隆興
【審判官】岩下 直人
【審判官】田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-525896(JP,A)
【文献】ELROD,H.A.et al.,PPAR research,2008年,Vol.2008,Article ID 704165,pp.1-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-33/44
A61P1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるがんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、6-(2,4-ジフルオロフェノキシ)-2-[3-ヒドロキシ-1-(2-ヒドロキシエチル)-プロピルアミノ]-8-メチル-8H-ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-オン(パマピモド、式III)又は薬学的に許容されるその塩
およびピオグリタゾン又は薬学的に許容されるその塩
とを含む組み合わせ調製物又は薬学的組成物であって、
がんが消化(GI)管のがんである、組み合わせ調製物又は薬学的組成物
【請求項2】
記GI管のがんが食道がん、胃がん、腸がん、結腸直腸がん及び肛門がんから選択される、請求項1に記載の組み合わせ調製物又は薬学的組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象におけるがんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、PPARアゴニストとP38阻害剤とを含む薬学的組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にがん療法、特に組み合わせがん療法の数がますます増え続けているにも関わらず、がんは未だに、心血管疾患及び感染症/寄生虫病に次ぎ、絶対数では世界で3番目に多い死因であり、これは年間7.6百万人の死者数に相当する。WHOは、がんによる死者数は2030年までに13.1百万人に増加すると見積もっており、一方、米国がん協会は、2016年に米国で新たに診断されるがんの症例は1685210件、がんによる死者は595690人を超えると予想している。英国のMcMillan Cancer Supportによる2012年の調査では、全体的ながん患者の生存期間中央値は、1970年代の1年から6年へと増加したことが明らかになった。しかしながら、食道がん、胃がん、肺がん、悪性脳腫瘍、膵臓がん等の多くのがんの生存期間中央値はほとんど改善せず、1年未満に留まっている。
【0003】
これらの統計は、がんが依然として危険な健康状態であり、新規の抗がん薬に対する差し迫ったニーズが存在するという事実を示している。
【0004】
がんにおける組み合わせ化学療法の理論的根拠は、異なる機序で作用する薬物を使用し、それにより耐性がん細胞が発生する可能性を減らすというものである。一方、がんなどの所与の状態を治療するための2種以上の薬物の投与は一般に、薬物間の複雑なin vivo相互作用に起因するいくつかの潜在的な問題を引き起こす。単剤の効果は、その吸収、分布、及び排泄に関連する。2種の薬物が体内に導入されると、各薬物は、他方の薬物の吸収、分布、及び排泄に影響を及ぼし、ゆえに他方の薬物の効果に変化を与える。例えば、ある薬物は、他方の薬物の排泄代謝経路に関与する酵素の産生を阻害、活性化又は誘導することができる。したがって、2種の薬物が同じ状態を治療するために投与される場合、対象において各々が他方の薬物の治療活性を補完するのか、それには影響しないのか、又はそれを阻害するのかは予測不可能である。2種の薬物間の相互作用が各薬物の意図された治療活性に影響を及ぼしうるだけではなく、相互作用が毒性代謝産物のレベルを上昇させることもある。この相互作用はまた、各薬物の副作用を増減させうる。したがって、疾患を治療するために2種の薬物を投与すると、各薬物の副作用プロファイルにどのような変化(低下又は改善)が生じるか予測不可能である。さらに、2種の薬物間の相互作用の影響がいつ表れるかを正確に予測することは困難である。例えば、薬物間の代謝相互作用は、第2の薬物を最初に投与して、双方が定常状態濃度に達した後に、又は薬物の一方を中断した際に明らかになる可能性がある。したがって、2種以上の薬物の組み合わせ療法の効果は容易に予側できない。
【発明の概要】
【0005】
PPARアゴニスト(例えばピオグリタゾン)とP38阻害剤(例えばパマピモド(pamapimod)とを含む組み合わせががん、特に肺がん、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、膀胱がん、肝臓がん、消化管のがん、血液がん又は腎臓がんの予防、進行の遅延又は治療のために有用であることが、予期せず発見された。がん研究で確立されている標準モデルにおいて、前記組み合わせによる治療は、いずれの薬剤単独の効果よりも高い抗腫瘍効果をもたらすことが予想外に見出された。
【0006】
これらの予想外の研究結果を考慮し、本発明者らは、本発明を以下の態様でここに提供する。
【0007】
第1の態様において、本発明は、
(a) PPARアゴニスト;
(b) 式I又はIIの化合物
[式中、
ZはN又はCHであり;
WはNRであり;
は、O、NR(Rは水素又はアルキルである)、S又はCR(R及びRは独立に水素又はアルキルである)又はC=Oであり;
XはO又はNRであり;
Arはアリール又はヘテロアリールであり;
は、水素、アルキル、アシル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアルキルカルボニル、ヘテロアルキルオキシカルボニル又は-R21-R22であり、ここでR21はアルキレン又は-C(=O)-であり、R22はアルキル又はアルコキシであり;
は、水素、アルキル、ハロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアルキル、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル置換シクロアルキル、ヘテロ置換シクロアルキル、シアノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、R12-SO-ヘテロシクロアミノ(R12はハロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又はヘテロアラルキル)、-Y-C(O)-Y-R11(Y及びYは独立に、存在しないか又はアルキレン基であり、R11は水素、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ又はジアルキルアミノである)、(ヘテロシクリル)(シクロアルキル)アルキル又は(ヘテロシクリル)(ヘテロアリール)アルキルであり;
は、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、シアノアルキル、アルキレン-C(O)-R31(R31は水素、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ又はジアルキルアミノである)、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ又はNR32-Y-R33(Yは-C(O)、-C(O)O-、-C(O)NR34、S(O)又はS(O)NR35であり、R32、R34及びR35は独立に、水素又はアルキルであり、R33は水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル又は置換されていてもよいフェニルである)又はアシルであり;
は水素又はアルキルであり;かつ
及びRは独立に、水素、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、-C(O)-R8l(R81はアルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、モノ-若しくはジ-アルキルアミノ、アリールアミノ又はアリール(アルキル)アミノである)であるか、又はR及びRは共に、=CR8283(R82及びR83は独立に水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又は置換されていてもよいフェニルである)を形成する];
又は薬学的に許容されるその塩と、
任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
を含む薬学的組み合わせを提供する。
【0008】
第2の態様において、本発明は、医薬としての使用のための、本明細書に記載の薬学的組み合わせを提供する。
【0009】
第3の態様において、本発明は、対象におけるがんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本明細書に記載の薬学的組み合わせを提供する。
【0010】
第4の態様において、本発明は、
(a) PPARアゴニスト;
(b) p38キナーゼ阻害剤と;任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む、
対象における肺がん又は卵巣がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための薬学的組み合わせを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1に記載の皮下異種移植片A549肺がんモデルにおいて研究の46日目に実施された剖検後の原発腫瘍体積の測定値。ピオグリタゾンHCL及びパマピモドは、双方とも単独で(それぞれ、2群及び3群)、及び組み合わせて(4群)投与された。対ビヒクルコントロール(1群)のデータを示す。データは、平均+SEM(A)として、及び個々のデータ点として、それらの対応する中央値及び四分位範囲(B)と共に示される。P値は、2つの方法、マン・ホイットニー検定及び独立t検定(括弧内)を用い、ビヒクルコントロール(1群)と比較して計算した。
図2】実施例1に記載の皮下異種移植片A549肺がんモデルにおいて研究の46日目に実施された剖検時の測定した原発腫瘍重量。ピオグリタゾンHCL及びパマピモドは、双方とも単独で(それぞれ、2群と3群)、及び組み合わせて(4群)投与された。対ビヒクルコントロール(1群)のデータを示す。データは、平均+SEM(A)として、及び個々のデータ点として、それらの対応する中央値及び四分位範囲(B)と共に示される。P値は、マン・ホイットニー検定及び独立t検定(括弧内)を用い、2つの方法により、ビヒクルコントロール(1群)と比較して計算した。
図3】実施例2に記載の同系同所性結腸がんモデルにおける研究の20日目の剖検後の原発腫瘍体積の測定値。ピオグリタゾンHCL及びパマピモドは、双方とも単独で(それぞれ、2群と3群)、及び組み合わせて(4群)投与された。対ビヒクルコントロール(1群)のデータを示す。データは、平均+SEM(A)として、及び個々のデータ点として、それらの対応する中央値及び四分位範囲(B)と共に示される。P値は、2つの方法、マン・ホイットニー検定及び独立t検定(括弧内)を用い、ビヒクルコントロール(1群)と比較して計算した。
図4】実施例2に記載の同系同所性結腸がんモデルにおける研究の20日目の剖検後の原発腫瘍重量の測定値。ピオグリタゾンHCL及びパマピモドは、双方とも単独で(それぞれ、2群と3群)、及び組み合わせて(4群)投与された。対ビヒクルコントロール(1群)のデータを示す。データは、平均+SEM(A)として、及び個々のデータ点として、それらの対応する中央値及び四分位範囲(B)と共に示される。P値は、マン・ホイットニー検定及び独立t検定(括弧内)を用い、2つの方法により、ビヒクルコントロール(1群)と比較して計算した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上で概説したように、本発明は、例えばピオグリタゾンなどのPPARアゴニストと、例えばパマピモドなどのP38阻害剤とを含む、がんの予防、進行の遅延又は治療に有用な薬学的組み合わせを提供する。
【0013】
したがって、第1の態様において、本発明は、
(a) PPARアゴニスト;
(b) 式I又はIIの化合物
[式中、
ZはN又はCHであり;
WはNRであり;
は、O、NR(Rは水素又はアルキルである)、S又はCR(R及びRは独立に水素又はアルキルである)又はC=Oであり;
XはO又はNRであり;
Arはアリール又はヘテロアリールであり;
は、水素、アルキル、アシル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアルキルカルボニル、ヘテロアルキルオキシカルボニル又は-R21-R22であり、ここでR21はアルキレン又は-C(=O)-であり、R22はアルキル又はアルコキシであり;
は、水素、アルキル、ハロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル置換シクロアルキル、ヘテロ置換シクロアルキル、ヘテロアルキル、シアノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、R12-SO-ヘテロシクロアミノ(R12はハロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又はヘテロアラルキル)、-Y-C(O)-Y-R11(Y及びYは独立に、存在しないか又はアルキレン基であり、R11は水素、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ又はジアルキルアミノである)、(ヘテロシクリル)(シクロアルキル)アルキル又は(ヘテロシクリル)(ヘテロアリール)アルキルであり;
は、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、シアノアルキル、アルキレン-C(O)-R31(R31は水素、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ又はジアルキルアミノである)、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ又はNR32-Y-R33(Yは-C(O)、-C(O)O-、-C(O)NR34、S(O)又はS(O)NR35であり、R32、R34及びR35は独立に、水素又はアルキルであり、R33は水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル又は置換されていてもよいフェニルである)又はアシルであり;
は水素又はアルキルであり;かつ
及びRは独立に、水素、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、-C(O)-R8l(R81はアルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、モノ-若しくはジ-アルキルアミノ、アリールアミノ又はアリール(アルキル)アミノである)であるか、又はR及びRは共に、=CR8283(R82及びR83は独立に水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又は置換されていてもよいフェニルである)を形成する];
又は薬学的に許容されるその塩と、
任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
を含む薬学的組み合わせを提供する。
【0014】
本明細書の説明のために、以下の定義を適用し、適切な場合はいつでも、単数形で用いられる用語は複数形を含み、その逆の場合も同じである。本明細書で用いる用語は、特定の実施態様を説明するためのものであり、限定することを目的としていないことを理解すべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」及び「含む(including)」という用語は、別段の記載がない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「含むが、これに限定されない」を意味する)として解されるものとする。
【0015】
本発明の特定の態様、実施態様又は例に関連して説明される特徴、整数、特性、化合物、化学的部分又は基は、それと両立できない場合を除いて、本明細書に記載の他の態様、実施態様又は例に適用できると理解される。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示される全ての特徴及び/又はそのように開示される方法又はプロセスの全工程は、そのような特徴及び/又は工程のうちの少なくともいくつかが互いに排他的である組み合わせを除いて、いかなる組み合わせで組み合わされてもよい。本発明は、前述の実施態様の詳細に限定されない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示される特徴の新規なもの若しくは新規の組み合わせに、又はそのように開示される方法又はプロセスの工程の新規なもの若しくは新規の組み合わせに及ぶ。
【0016】
「個体」、「対象」又は「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用される。ある実施態様において、対象は哺乳動物である。哺乳動物には、霊長類(ヒト及び非ヒト霊長類を含む)が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施態様では、対象はヒトである。
【0017】
本明細書で使用される用語「がん」及び「がん性」とは、無秩序な細胞増殖によって典型的に特徴付けられる、哺乳動物における生理学的状態を指す。「腫瘍」とは、1つ以上のがん性細胞を含む。がんの例には、限定されないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病又はリンパ性腫瘍が含まれる。このようながんのより具体的な例には、扁平上皮細胞がん(例えば上皮性扁平上皮細胞がん)、小細胞肺がん、非小細胞肺がん(「NSCLC」)、肺の腺癌及び肺の扁平上皮癌を含む肺がん、腹膜のがん、肝細胞がん、胃腸がんを含む胃(gastric又はstomach)がん、膵がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、ヘパトーマ、乳がん、消化(GI)管のがん、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌腫、腎臓(kidney又はrenal)がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝細胞癌、肛門癌、陰茎癌、及び頭頸部がんが含まれる。
【0018】
本明細書で使用される「転移性がん」という用語は、がんの状態、例えばがん細胞が元の部位から体内の1つ以上の他の部位に、血管又はリンパ管によって伝播されて、元の部位又は器官を除く1つ以上の部位又は器官に1つ以上の二次腫瘍を形成する肺がん又は消化(GI)管のがんの状態を意味する。
【0019】
本明細書で使用される「約」という用語は、所与の測定値の+/-10%を意味する。
【0020】
PPARアゴニスト
本明細書で使用される「PPAR」という用語は、例えばPPARガンマ受容体、PPARアルファ受容体、PPARデルタ受容体又はこれらの組み合わせなどのペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)を活性化する薬物を指す。好ましい実施態様において、本発明によるPPARアゴニストは、PPARガンマを活性化する。
【0021】
さらなる実施態様において、前記PPARアゴニストは、ピオグリタゾン、トログリタゾン及びロシグリタゾンを含むリストから選択されるPPARガンマアゴニスト若しくは薬学的に許容されるその塩、又はフィブラート(例えばフェノフィブラート(fenofibric acid/fenofibrate)、コロフィブラート若しくはゲムフィブロジル)を含むリストから選択されるPPARアルファアゴニスト若しくは薬学的に許容されるその塩、又はアレグリタザル、ムラグリタザル、テサグリタザル、ラガグリタザル、サログリタザル、GFT505、及びナベグリタザルを含むリストから選択されるPPARデュアルアゴニスト(PPARアルファ/ガンマ又はPPARアルファ/デルタアゴニスト)若しくは薬学的に許容されるその塩、又はPPARデルタアゴニスト(例えばGW501516)若しくは薬学的に許容されるその塩、又はPPARパンアゴニスト(PPARアルファ/デルタ/ガンマアゴニスト);又は選択的PPARモジュレーター(例えばINT131など)若しくは薬学的に許容されるその塩である。
【0022】
通常、PPARガンマアゴニスト、PPARモジュレーター、PPARアルファアゴニスト及び/又はPPARアルファ/ガンマデュアルアゴニストが、本発明の関連で使用される。特に、PPARガンマアゴニスト、PPARアルファアゴニスト及び/又はPPARアルファ/ガンマデュアルアゴニスト、さらに特定的にはPPARガンマアゴニストが、本発明の関連で使用される。
【0023】
好ましい実施態様において、本発明によるPPARアゴニストは、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、トログリタゾン、INT131からなる群より選択されるPPARガンマアゴニスト若しくはモジュレーター又は薬学的に許容されるその塩である。
【0024】
さらに一層好ましい実施態様では、前記PPARアゴニストは、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン及びトログリタゾンからなる群より選択されるPPARガンマアゴニスト又は薬学的に許容されるその塩である。
【0025】
最も好ましい実施態様では、前記PPARアゴニストは、ピオグリタゾン又は薬学的に許容されるその塩、例えばピオグリタゾン塩酸塩である。
【0026】
さらなる実施態様では、前記PPARアゴニストは、フェノフィブラート、コロフィブラート及びゲムフィブロジル、好ましくはフェノフィブレートからなる群より選択されるPPARアルファアゴニスト又は薬学的に許容されるその塩である。
【0027】
さらに別の実施態様では、前記PPARアゴニストは、アレグリタザル、ムラグリタザル、テサグリタザル、ラガグリタザル、サログリタザル、GFT505及びナベグリタザルからなる群より選択されるPPARアルファ/ガンマデュアルアゴニスト又は薬学的に許容されるその塩、好ましくはムラグリタザル若しくはテサグリタザル又は薬学的に許容されるその塩である。
【0028】
ピオグリタゾンは、例えば米国特許第4687777号、又はDormandy JA, Charbonnel B, Eckland DJ, Erdmann E, Massi-Benedetti M, Moules IK, Skene AM, Tan MH, Lefebvre PJ, Murray GD, Standl E, Wilcox RG, Wilhelmsen L, Betteridge J, Birkeland K, Golay A, Heine RJ, Koranyi L, Laakso M, Mokan M, Norkus A, Pirags V, Podar T, Scheen A, Scherbaum W, Schernthaner G, Schmitz O, Skrha J, Smith U, Taton J; PROactive investigators. Lancet. 2005 Oct 8;366(9493):1279-89に記載されており、また、以下に示す構造式により表される。
【0029】
トログリタゾンは、例えばFlorez JC, Jablonski KA, Sun MW, Bayley N, Kahn SE, Shamoon H, Hamman RF, Knowler WC, Nathan DM, Altshuler D; Diabetes Prevention Program Research Group. J Clin Endocrinol Metab. 2007 Apr;92(4):1502-9に記載されており、また、以下に示す構造式により表される。
【0030】
ロシグリタゾンは、例えばNissen SE, Wolski K. N Engl J Med. 2007 Jun 14;356(24):2457-71. Erratum in: N Engl J Med. 2007 Jul 5;357(1):100に記載されている。フェノフィブレートは、例えばBonds DE, Craven TE, Buse J, Crouse JR, Cuddihy R, Elam M, Ginsberg HN, Kirchner K, Marcovina S, Mychaleckyj JC, O’Connor PJ, Sperl-Hillen JA. Diabetologia. 2012 Jun;55(6):1641-50に記載されており、また、以下に示す構造式により表される。
【0031】
コロフィブラートは、例えばRabkin SW, Hayden M, Frohlich J. Atherosclerosis. 1988 Oct;73(2-3):233-40に記載されており、また、以下に示す構造式により表される。
【0032】
フェノフィブラートは、例えばSchima SM, Maciejewski SR, Hilleman DE, Williams MA, Mohiuddin SM. Expert Opin Pharmacother. 2010 Apr;11(5):731-8に記載されており、また、以下に示す構造式により表される。
【0033】
ゲムフィブロジルは、例えばAdabag AS, Mithani S, Al Aloul B, Collins D, Bertog S, Bloomfield HE; Veterans Affairs High-Density Lipoprotein Cholesterol Intervention Trial Study Group. Am Heart J. 2009 May;157(5):913-8に記載されており、また、以下に示す構造式により表される。
【0034】
アレグリタザルは、例えばLincoff AM, Tardif JC, Schwartz GG, Nicholls SJ, Ryden L, Neal B, Malmberg K, Wedel H, Buse JB, Henry RR, Weichert A, Cannata R, Svensson A, Volz D, Grobbee DE; AleCardio Investigators. JAMA. 2014 Apr 16;311(15):1515-25に記載されており、また、以下に示す構造式により表される。
【0035】
ムラグリタザルは、例えばFernandez M, Gastaldelli A, Triplitt C, Hardies J, Casolaro A, Petz R, Tantiwong P, Musi N, Cersosimo E, Ferrannini E, DeFronzo RA. Diabetes Obes Metab. 2011 Oct;13(10):893-902に記載されており、また、以下に示す構造式により表される。
【0036】
テサグリタザルは、例えばBays H, McElhattan J, Bryzinski BS; GALLANT 6 Study Group. Diab Vasc Dis Res. 2007 Sep;4(3):181-93に記載されており、また、以下に示す構造式により表される。
【0037】
ラガグリタザルは、例えばSaad MF, Greco S, Osei K, Lewin AJ, Edwards C, Nunez M, Reinhardt RR; Ragaglitazar Dose-Ranging Study Group. Diabetes Care. 2004 Jun;27(6):1324-9に記載されており、また、以下に示す構造式により表される。
【0038】
サログリタザルは、例えばAgrawal R. Curr Drug Targets. 2014 Feb;15(2):151-5に記載されており、また、以下に示す構造式により表される。
【0039】
ナベグリタザルは、例えばAhlawat P, Srinivas NR. Eur J Drug Metab Pharmacokinet. 2008 Jul-Sep;33(3):187-90.に記載されている。GW501516は、例えばWang X, Sng MK, Foo S, Chong HC, Lee WL, Tang MB, Ng KW, Luo B, Choong C, Wong MT, Tong BM, Chiba S, Loo SC, Zhu P, Tan NS. J Control Release. 2015 Jan 10;197:138-47に記載されており、また、以下に示す構造式により表される。
【0040】
GFT505は、例えばCariou B, Staels B. Expert Opin Investig Drugs. 2014 Oct;23(10):1441-8に記載されており、また、以下に示す構造式により表される。
【0041】
INT131は、例えば、Taygerly JP, McGee LR, Rubenstein SM, Houze JB, Cushing TD, Li Y, Motani A, Chen JL, Frankmoelle W, Ye G, Learned MR, Jaen J, Miao S, Timmermans PB, Thoolen M, Kearney P, Flygare J, Beckmann H, Weiszmann J, Lindstrom M, Walker N, Liu J, Biermann D, Wang Z, Hagiwara A, Iida T, Aramaki H, Kitao Y, Shinkai H, Furukawa N, Nishiu J, Nakamura M. Bioorg Med Chem. 2013 Feb 15;21(4):979-92に記載されており、また、以下に示す構造式により表される。
【0042】
PPARアゴニストによるPPAR活性化は通常、低ナノモル範囲から低マイクロモル範囲、例えば0.1nMから100μMの範囲で強い。いくつかの実施態様では、PPAR活性化は弱いか又は部分的であり、すなわちPPARアゴニストは、最大のPPAR活性化を引き起こすことが知られている基準PPARアゴニストと比較して10%から100%のレポーターアッセイ系においてPPAR受容体の最大活性化を生じる本発明の方法において使用される。
【0043】
P38阻害剤
本明細書で使用される「p38阻害剤」という用語は、p38マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼ、例えばp38-α(MAPK14)、p38-β(MAPK11)、p38-γ(MAPK12/ERK6)、及び/又はp38-δ(MAPK13/SAPK4)を阻害する薬物を指す。
【0044】
「p38阻害剤」という用語は、例えば以下の式I及びIIの化合物などのp38阻害剤又は薬学的に許容されるその塩を含み、
式中、
ZはN又はCHであり;
WはNRであり;
は、O、NR(Rは水素又はアルキルである)、S又はCR(R及びRは独立に水素又はアルキルである)又はC=Oであり;
XはO又はNRであり;
Arはアリール又はヘテロアリールであり;
は、水素、アルキル、アシル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアルキルカルボニル、ヘテロアルキルオキシカルボニル又は-R21-R22であり、ここでR21はアルキレン又は-C(=O)-であり、R22はアルキル又はアルコキシであり;
は、水素、アルキル、ハロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル置換シクロアルキル、ヘテロ置換シクロアルキル、ヘテロアルキル、シアノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、R12-SO-ヘテロシクロアミノ(R12はハロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又はヘテロアラルキル)、-Y-C(O)-Y-R11(Y及びYは独立に、存在しないか又はアルキレン基であり、R11は水素、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ又はジアルキルアミノである)、(ヘテロシクリル)(シクロアルキル)アルキル又は(ヘテロシクリル)(ヘテロアリール)アルキルであり;
は、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、シアノアルキル、アルキレン-C(O)-R31(R31は水素、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ又はジアルキルアミノである)、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ又はNR32-Y-R33(Yは-C(O)、-C(O)O-、-C(O)NR34、S(O)又はS(O)NR35であり、R32、R34及びR35は独立に、水素又はアルキルであり、R33は水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル又は置換されていてもよいフェニルである)又はアシルであり;
は水素又はアルキルであり;かつ
及びRは独立に、水素、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、-C(O)-R8l(R81はアルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、モノ-若しくはジ-アルキルアミノ、アリールアミノ又はアリール(アルキル)アミノである)であるか、又はR及びRは共に、=CR8283(R82及びR83は独立に水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又は置換されていてもよいフェニルである。
【0045】
別途指定のない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される以下の用語は、以下に示す意味を有する。
【0046】
「アシル」は、Rが水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニル又はフェニルアルキルである基、-C(O)Rを意味し、ここでアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル及びフェニルアルキルは本明細書で定義されている通りである。代表的な例には、ホルミル、アセチル、シクロヘキシルカルボニル、シクロヘキシルメチルカルボニル、ベンゾイル、ベンジルカルボニル等が含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
「アシルアミノ」は、R’が水素又はアルキルであり、Rが水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニル又はフェニルアルキルである-NR’C(O)R基を意味し、ここでアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル及びフェニルアルキルは本明細書で定義されている通りである。代表的な例には、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、シルコヘキシルカルボニルアミノ、シクロヘキシルメチル-カルボニルアミノ、ベンゾイルアミノ、ベンジルカルボニルアミノ等が含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
「アルコキシ」は、Rが本明細書で定義されているアルキルである-OR基を意味する。例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等が含まれる。
【0049】
「アルキル」は、1から6個の炭素原子からなる一価の直鎖状飽和炭化水素基、又は3から6個の炭素原子からなる一価の分岐状飽和炭化水素基を意味する。例としては、メチル、エチル、プロピル、2-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、ペンチル等が含まれる。
【0050】
「アルキレン」は、1から6個の炭素原子からなる二価の直鎖状飽和炭化水素基、又は3から6個の炭素原子からなる二価の分岐状飽和炭化水素基を意味する。例としては、メチレン、エチレン、2,2-ジメチルエチレン、プロピレン、2-メチルプロピレン、ブチレン、ペンチレン等が含まれる。
【0051】
「アリール」は、一価の単環式又は二環式芳香族炭化水素基を意味し、これは独立に、1つ以上の置換基で、好ましくはアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、Y-C(O)-R(Yは存在しないか又はアルキレン基であり、Rは水素、アルキル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ又はジアルキルアミノ)、ヘテロアルキル、ヘテロアルキルオキシ、ヘテロアルキルアミノ、ハロ、ニトロ、シアノ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルスルホニルアミノ、ヘテロアルキルスルホニルアミノ、スルホンアミド、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、ヘテロシクリル又はヘテロシクリルアルキルからなる群より選択される、好ましくは1つ、2つ又は3つの置換基で置換されていてもよい。より具体的には、アリールという用語は、フェニル、クロロフェニル、メトキシフェニル、2-フルオロフェニル、2,4-ジフルオロフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル及びこれらの誘導体を含むが、これらに限定されない。好ましい実施態様において、アリールという用語は、2,4-ジフルオロフェニルを指す。
【0052】
「アリールオキシ」は、Rが本明細書で定義されているアリールである-OR基、例えばフェノキシを意味する。
【0053】
「アリールオキシカルボニル」は、RがアリールオキシであるR-C(=O)-基、例えばフェノキシカルボニルを意味する。
【0054】
「シクロアルキル」は、3から7個の環炭素からなる一価の飽和環状炭化水素基、より具体的には添付の表に列挙されているか又は実施例に記載されている特定の化合物のものを指す。これらの基は当該基のみを含む群にも分類できるが、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル、4-メチル-シクロヘキシル等、1回目若しくは2回目の優先権出願又はこれら双方の優先権出願の基も含む群に分類できることが理解される。
【0055】
「シクロアルキルアルキル」は、-R基を意味し、ここでRはアルキレン基であり、Rはアルキレン基、例えばシクロヘキシルメチル等であり、アルキレン基及びアルキレン基は本明細書で定義されている通りである。
【0056】
「置換シクロアルキル」は、独立にシアノ又は-Y-C(O)R(Yは存在しないか又はアルキレン基であり、Rは水素、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ又は置換されていてもよいフェニルである)で置換されている1、2又は3個(好ましくは1個)の環水素原子を有する、本明細書で定義されているシクロアルキル基、より具体的には添付の表に列挙されているか又は実施例に記載されている特定の化合物のものを意味する。
【0057】
「ジアルキルアミノ」は-NRR’基であり、R及びR’は独立に、本明細書で定義されているアルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキル基を表す。体表的な例としては、ジメチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジ(1-メチルエチル)アミノ、(メチル)(ヒドロキシメチル)アミノ、(シクロヘキシル)(メチル)アミノ、(シクロヘキシル)(エチル)アミノ、(シクロヘキシル)(プロピル)アミノ、(シクロヘキシルメチル)(メチル)アミノ、(シクロヘキシルメチル)(エチル)アミノ等が含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨード、好ましくはフルオロ及びクロロを意味する。
【0059】
「ハロアルキル」は、例えば-CHCl、-CF、-CHCF、-CHCCl等、1つ以上の同じか又は異なるハロ原子で置換されているアルキルを意味する。
【0060】
「ヘテロアルキル」は、ヘテロアルキル基の結合点が炭素原子を貫くという理解の下、1、2又は3個の水素原子が、-OR、-N(O)(R及びRが双方とも独立にアルキル、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルであるとき、nは0又は1であり、そうでないときは、nは0である)及び-S(O)(nは0から2の整数である)からなる群より独立に選択される置換基で置換されている、本明細書で定義されているアルキル基を意味し、ここでRは水素、アシル、アルコキシカルボニル、アルキル、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルであり;R及びRは互いに独立に水素、アシル、アルコキシカルボニル、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、モノ-若しくはジアルキルアミノスルホニル、アミノアルキル、モノ-若しくはジ-アルキルアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキルスルホニル又はアルコキシアルキルスルホニルであり;nが0であるとき、Rは水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又は置換されていてもよいフェニルであり、nが1又は2であるとき、Rはアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、置換されていてもよいフェニル、アミノ、アシルアミノ、モノアルキルアミノ又はジアルキルアミノである。代表的な例としては、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシ-プロピル、3-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシ-1-ヒドロキシメチルエチル、2-ヒドロキシ-1-メチルエチル、2,3-ジヒドロキシプロピル、1-ヒドロキシメチルエチル、3-ヒドロキシブチル、2,3-ジヒドロキシブチル、2-ヒドロキシ-1-メチルプロピル、3-ヒドロキシ-1-(2-ヒドロキシエチル)-プロピル、2-アミノエチル、3-アミノプロピル、2-メチルスルホニルエチル、アミノスルホニルメチル、アミノスルホニルエチル、アミノスルホニルプロピル、メチルアミノスルホニルメチル、メチルアミノスルホニルエチル、メチルアミノスルホニルプロピル等、好ましくは2-ヒドロキシ-プロピル、3-ヒドロキシ-1-(2-ヒドロキシエチル)-プロピル又は2-ヒドロキシ-1-メチルエチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
「ヘテロアルキルカルボニル」は、R-C(=O)-基を意味し、Rはヘテロアルキル基である。代表的な例としては、アセチルオキシメチルカルボニル、アミノメチルカルボニル、4-アセチルオキシ-2,2-ジメチル-ブタン-2-オイル、2-アミノ-4-メチル-ペンタン-2-オイル等が含まれる。
【0062】
「ヘテロアルキルオキシ」は、R-O-基を意味し、Rはヘテロアルキル基である。代表的な例としては、(Me-C(=O)-O-CH-O-等が含まれる。
【0063】
「ヘテロアルキルオキシカルボニル」は、R-C(=O)基を意味し、Rはヘテロアルキルオキシである。代表的な例としては、1-アセチルオキシ-メトキシカルボニル(Me-C(=O)-OCH-O-C(=O)-)等が含まれる。
【0064】
「ヘテロアリール」は、ヘテロアリール基の結合点は芳香族環上にあるとの理解の下、N、O又はSから選択される1、2又は3個の環ヘテロ原子を含有する少なくとも1つの芳香族環を有し、残りの環原子はCである5から12個の環原子からなる一価の単環式又は二環式基を意味する。ヘテロアリール環は、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、ニトロ又はシアノから独立に選択される1つ以上の置換基、好ましくは1つ又は2つの置換基で置換されていてもよい。より具体的には、ヘテロアリールという用語は、限定されないが、ピリジル、フラニル、チエニル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、ピロリル、ピラゾリル、ピリミジニル、ベンゾフラニル、テトラヒドロベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾオキサゾリル、キノリル、テトラヒドロキノリニル、イソキノリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾイソオキサゾリル又はベンゾチエニル、イミダゾ[1,2-a]-ピリジニル、イミダゾ[2,1-b]チアゾリル、及びこれらの誘導体を含む。
【0065】
「ヘテロアラルキル」は、Rがアルキレン基であり、Rがヘテロアリール基である-R基、例えばピリジン-3-イルメチル、イミダゾリルエチル、ピリジニルエチル、3-(ベンゾフラン-2-イル)プロピル等を意味する。
【0066】
「ヘテロアルキル置換シクロアルキル」とは、ヘテロアルキル基が炭素-炭素結合によってシクロアルキル基と結合しているという理解の下、シクロアルキル基中の1、2又は3個の水素原子がヘテロアルキル基で置換されている、本明細書で定義されているシクロアルキル基を意味する。代表的な例としては、限定されないが、1-ヒドロキシメチルシクロペンチル、2-ヒドロキシメチルシクロヘキシル等が含まれる。
【0067】
「ヘテロ置換シクロアルキル」とは、本明細書で定義されているシクロアルキル基を意味し、シクロアルキル基中の1、2又は3個の水素原子は、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アシルアミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、オキソ(C=O)、イミノ、ヒドロキシミノ、(=NOH)、NR’SO(R’は水素又はアルキルであり、Rはアルキル、シクロアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ又はジアルキルアミノである)、-X-Y-C(O)R(XはO又はNR’であり、Yはアルキレン又は存在せず、Rは水素、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ又は置換されていてもよいフェニルであり、R’はH又はアルキルである)、又はnが0であるとき、Rは水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、置換されていてもよいフェニル若しくはチエニルであり、nが1若しくは2であるとき、Rがアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、置換されていてもよいフェニル、チエニル、アミノ、アシルアミノ、モノアルキルアミノ若しくはジアルキルアミノであるような-S(O)R(nは0から2の整数である)からなる群より独立に選択される置換基で置換されている。代表的な例としては、限定されないが、2-、3-若しくは4-ヒドロキシシクロヘキシル、2-、3-若しくは4-アミノシクロヘキシル、2-、3-若しくは4-メタンスルホンアミド-シクロヘキシル等、好ましくは4-ヒドロキシシクロヘキシル、2-アミノシクロヘキシル又は4-メタンスルホンアミド-シクロヘキシルが含まれる。
【0068】
「ヘテロ置換シクロアルキル-アルキル」とは、Rがヘテロ置換シクロアルキル基であり、Rがアルキレン基である基、R-を意味する。
【0069】
「ヘテロシクロアミノ」とは、1個の環原子がNであり、残りの環原子がCである、4から8個の環原子からなる飽和一価環状基を意味する。代表的な例は、ピペリジン及びピロリジンである。
【0070】
「ヘテロシクリル」とは、1又は2個の環原子がN、O又はS(O)(nは0から2の整数である)から選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子がCであり、1又は2個のC原子がカルボニル基で置換されていてもよい、3から8個の環原子からなる飽和又は不飽和非芳香族環状基を意味する。ヘテロシクリル環は、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、ハロ、ニトロ、シアノ、シアノアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アラルキル、-(X)-C(O)R(XはO又はNR’であり、nは0又は1であり、Rは水素、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ(nが0のとき)、アルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ又は置換されていてもよいフェニルであり、R’はH又はアルキルである)、-アルキレン-C(O)R(Rはアルキル、OR又はNR’R”であり、Rは水素、アルキル又はハロアルキルであり、R’及びR”は独立に水素又はアルキルである)、又はnが0のとき、Rは水素、アルキル、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルであり、nが1又は2のとき、Rはアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アミノ、アシルアミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ又はヘテロアルキルであるような-S(O)R(nは0から2の整数である)から独立に選択される1つ、2つ又は3つの置換基で置換されていてもよい。より具体的には、ヘテロシクリルという用語は、限定されないが、テトラヒドロピラニル、ピペリジノ、N-メチルピペリジン-3-イル、ピペラジノ、N-メチルピロリジン-3-イル、3-ピロリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオモルホリノ-1-オキシド、チオモルホリノ-1,1-ジオキシド、4-(1,1-ジオキソ-テトラヒドロ-2H-チオピラニル)、ピロリニル、イミダゾリニル、N-メタンスルホニル-ピペリジン-4-イル、及びこれらの誘導体を含む。
【0071】
「ヘテロシクリルアルキル」とは、例えばテトラヒドロピラン-2-イルメチル、2-又は3-ピペリジニルメチル、3-(4-メチル-ピペラジン-1-イル)プロピル等の、Rがアルキレン基であり、Rがヘテロシクリル基である-R基を意味し、これらの基は上で定義されている通りである。
【0072】
「(ヘテロシクリル)(シクロアルキル)アルキル」とは、2個の水素原子がヘテロシクリル基及びシクロアルキル基で置換されているアルキル基を意味する。
【0073】
「(ヘテロシクリル)(ヘテロアリール)アルキル」とは、2個の水素原子がヘテロシクリル(heterocycyl)基及びヘテロアリール基で置換されているアルキル基を意味する。
【0074】
「ヘテロシクリルスピロシクロアルキル」とは、ヘテロシクリルスピロシクロアルキル基の結合点がシクロアルキル環を通しているという理解の下、各環が5から8個の環原子を有し、2つの環が炭素原子を1つのみ共有するシクロアルキル環及び複素環式環からなるスピロ基を意味する。スピロ基(spiro radical)は、シクロアルキル基の同じ炭素原子からの2個の水素原子が、本明細書で定義されているヘテロシクリル基で置換されるときに形成され、アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル又はオキソで置換されていてもよい。例としては、限定されないが、1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカン-8-イル、1,3-ジアザスピロ[4.5]デカン-8-イル、2,4-ジオン-1,3ジアザ-スピロ[4.5]デカン-8-イル、1,5-ジオキサ-スピロ[5.5]ウンデカン-9-イル、(3-ヒドロキシメチル-3-メチル)-1,5-ジオキサ-スピロ[5.5]ウンデカン-9-イル等を含む。
【0075】
「ヒドロキシアルキル」とは、1個以上、好ましくは1つ、2つ又は3つのヒドロキシ基で置換されている、本明細書で定義されているアルキル基を意味するが、但し同じ炭素原子は1個より多くのヒドロキシ基を有しない。代表的な例には、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、1-(ヒドロキシメチル)-2-メチルプロピル、2-ヒドロキシブチル、3-ヒドロキシブチル、4-ヒドロキシブチル、2,3-ジヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシ-1-ヒドロキシメチルエチル、2,3-ジヒドロキシブチル、3,4-ジヒドロキシブチル及び2-(ヒドロキシメチル)-3-ヒドロキシプロピル、好ましくは2-ヒドロキシエチル、2,3-ジヒドロキシプロピル及び1-(ヒドロキシメチル)2-ヒドロキシエチルが含まれるが、これらに限定されない。したがって、本明細書で用いられているように、「ヒドロキシアルキル」という用語は、ヘテロアルキル基のサブセットを規定するのに用いられる。
【0076】
「モノアルキルアミノ」は、例えばメチルアミノ、(1-メチルエチル)アミノ、ヒドロキシメチルアミノ、シクロヘキシルアミノ、シクロヘキシルメチルアミノ、シクロヘキシルエチルアミノ等、Rが、上で定義されているアルキル、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキル基である基、-NHRを意味する。
【0077】
「置換されていてもよいフェニル」とは、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、ハロ、ニトロ、シアノ、アミノ、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ及びアシルからなる群より独立に選択される、1つ以上の置換基、好ましくは1つ又は2つの置換基で置換されていてもよいフェニル環を意味する。
【0078】
化合物の「薬学的に許容される塩」とは、薬学的に許容され、かつ、親化合物の所望の薬理活性を有する塩を意味する。そのような塩としては、以下が含まれる:(1)無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等により形成されたか;若しくは有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシ-ベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸等により形成された酸付加塩;又は(2)親化合物中に存在する酸性プロトンのいずれかが、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン若しくはアルミニウムイオンなどの金属イオンで置換されるときか、若しくは、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタン、N-メチルグルカミン等の有機塩基と配位するときに形成される塩。
【0079】
一実施態様では、本発明によるp38阻害剤は、式I
[式中、
ZはN又はCHであり;
WはNRであり;
は、O、NR(Rは水素又はアルキルである)、S又はCR(R及びRは独立に水素又はアルキルである)又はC=Oであり;
XはO又はNRであり;
Arはアリール又はヘテロアリールであり;
は、水素、アルキル、アシル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアルキルカルボニル、ヘテロアルキルオキシカルボニル又は-R21-R22であり、ここでR21はアルキレン又は-C(=O)-であり、R22はアルキル又はアルコキシであり;
は、水素、アルキル、ハロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル置換シクロアルキル、ヘテロ置換シクロアルキル、ヘテロアルキル、シアノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、R12-SO-ヘテロシクロアミノ(R12はハロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又はヘテロアラルキル)、-Y-C(O)-Y-R11(Y及びYは独立に、存在しないか又はアルキレン基であり、R11は水素、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ又はジアルキルアミノである)、(ヘテロシクリル)(シクロアルキル)アルキル又は(ヘテロシクリル)(ヘテロアリール)アルキルであり;
は、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、シアノアルキル、アルキレン-C(O)-R31(R31は水素、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ又はジアルキルアミノである)、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ又はNR32-Y-R33(Yは-C(O)、-C(O)O-、-C(O)NR34、S(O)又はS(O)NR35であり、R32、R34及びR35は独立に、水素又はアルキルであり、R33は水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル又は置換されていてもよいフェニルである)又はアシルであり;かつ、
は水素又はアルキルである]
の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、
任意選択的に、1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体である。
【0080】
さらなる実施態様では、本発明によるp38阻害剤は、XがNRであり、XがNR又はXであり、XがそれぞれOである式Iの化合物であり、ここでR及びRは上で定義されている通りである。
【0081】
さらなる実施態様において、本発明によるp38阻害剤は、WがNRである式Iの化合物であり、ここでRは水素、アルキル、アシル又はアルコキシカルボニル、好ましくは水素又はアルキル、さらに好ましくは水素である。
【0082】
さらに別の実施態様では、本発明によるp38阻害剤は、式Iの化合物であり、式中、Rは水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル置換シクロアルキル、ヘテロ置換シクロアルキル、ヘテロアルキル、シアノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル又は(ヘテロシクリル)(シクロアルキル)アルキルである。
【0083】
さらに別の実施態様では、本発明によるp38阻害剤は、Rが水素、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル又はシアノアルキルである式Iの化合物である。
【0084】
さらに別の実施態様では、本発明によるp38阻害剤は、式Iの化合物であり、式中、Rは水素、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル置換シクロアルキル、ヘテロ置換シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル又は(ヘテロシクリル)(シクロアルキル)アルキルである。
【0085】
さらに別の実施態様では、本発明によるp38阻害剤は、式Iの化合物であり、式中、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、シアノアルキル、アルキレン-C(O)-R31(ここでR31は水素、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ又はジアルキルアミノ)又はアシルである。
【0086】
さらに別の実施態様では、本発明によるp38阻害剤は、式Iの化合物であり、式中、Rは水素、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、シアノアルキル、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルである。
【0087】
さらに別の実施態様では、本発明によるp38阻害剤は、式Iの化合物であり、式中、Rは水素、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル又はシアノアルキルである。
【0088】
さらに別の実施態様では、本発明によるp38阻害剤は、式Iの化合物であり、式中、Rはシクロアルキル又はシクロアルキルアルキルである。
【0089】
さらに別の実施態様では、本発明によるp38阻害剤は、X及びXが双方ともOである、式Iの化合物である。
【0090】
さらに別の実施態様では、本発明によるp38阻害剤は、Rがアルキル又はヘテロアルキルである、式Iの化合物である。
【0091】
さらに別の実施態様では、本発明によるp38阻害剤は、式Iの化合物であり、式中、Rはヘテロアルキル、好ましくは3-ヒドロキシ-1-(2-ヒドロキシエチル)-プロピル又は2-ヒドロキシ-1-メチルエチルである。
【0092】
さらに別の実施態様では、本発明によるp38阻害剤は、Rがアルキル又はヘテロアルキルである、式Iの化合物である。
【0093】
さらに別の実施態様では、本発明によるp38阻害剤は、Rがアルキル、好ましくはメチルである、式Iの化合物である。
【0094】
さらに別の実施態様では、本発明によるp38阻害剤は、式Iの化合物であり、式中、Rはヘテロアルキル、好ましくは2-ヒドロキシ-プロピルである。
【0095】
さらに別の実施態様では、本発明によるp38阻害剤は、WがNHである、式Iの化合物である。
【0096】
さらに別の実施態様では、本発明によるp38阻害剤は、ZがNである、式Iの化合物である。
【0097】
さらに別の実施態様では、本発明によるp38阻害剤は、式Iの化合物であり、式中、Arはアリール、好ましくは置換アリール、より好ましくは2つのハロ置換基で置換されているアリール、最も好ましくはオルト位及びパラ位において2つのハロ置換基で置換されているアリールである。
【0098】
さらに別の実施態様では、本発明によるp38阻害剤は式Iの化合物であり、式中、XはNRであり、XはNR又はXであり、XはそれぞれOであり、R及びRは上に定義されている通りであり;かつ、
は、水素、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル置換シクロアルキル、ヘテロ置換シクロアルキル、ヘテロアルキル、シアノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル又は(ヘテロシクリル)(シクロアルキル)アルキルであり;かつ、
は、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、シアノアルキル、アルキレン-C(O)-R31(ここでR31は水素、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ又はジアルキルアミノ)又はアシルであり;かつ
WはNRであり、ここでRは水素、アルキル、アシル又はアルコキシカルボニルであり;かつ、
Arはアリールであり;かつ
ZはNである。
【0099】
好ましい実施態様において、本発明によるp38阻害剤は、式Iの化合物であり、式中、 X及びXは各々Oであり、ZはNであり、WはNHであり、Arは置換アリールであり、Rはヘテロアルキルであり、Rはアルキル又はヘテロアルキルである。
【0100】
特に好ましい実施態様では、本発明によるp38阻害剤は、6-(2,4-ジフルオロフェノキシ)-2-[3-ヒドロキシ-1-(2-ヒドロキシエチル)-プロピルアミノ]-8-メチル-8H-ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-オンという化学名及び化学式IIIを有するパマピモド又は薬学的に許容されるその塩である。
【0101】
さらに別の好ましい実施態様では、本発明によるp38阻害剤は、6-(2,4-ジフルオロフェノキシ)-2-[(S)-2-ヒドロキシ-1-メチル-エチルアミノ]-8-[(S)-2-ヒドロキシ-プロピル]-8H-ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-オンという化学名及び化学式IVを有するR9111又は薬学的に許容されるその塩である。
【0102】
さらに別の好ましい実施態様では、本発明によるp38阻害剤は、パマピモド、ロスマピモド、ジルマピモド(dilmapimod)、AZD7624、ARRY-371797、LY2228820、R9111、PH-797804、BIRB 796、VX-702、VX-745、SB 239063、SB202190、SCIO 469、及びBMS 582949からなる群より選択されるか、又は薬学的に許容されるその塩である。さらに好ましい実施態様では、本発明によるp38阻害剤は、パマピモド、ロスマピモド、ジルマピモド、ARRY-371797、LY2228820、R9111、PH-797804、BIRB 796、VX-702、VX-745、SB 239063、SB202190、SCIO 469、及びBMS 582949からなる群より選択されるか、又は薬学的に許容されるその塩である。
【0103】
パマピモド及びその合成は、例えば国際公開第2008/151992号及び第2002/064594号、例えばHill RJ, Dabbagh K, Phippard D, Li C, Suttmann RT, Welch M, Papp E, Song KW, Chang KC, Leaffer D, Kim Y-N, Roberts RT, Zabka TS, Aud D, Dal Porto J, Manning AM, Peng SL, Goldstein DM, and Wong BR; Pamapimod, a Novel p38 Mitogen-Activated Protein Kinase Inhibitor: Preclinical Analysis of Efficacy and Selectivity J Pharmacol Exp Ther. December 2008 327:610-619に記載されている。
【0104】
ロスマピモドは、例えばCheriyan J, Webb AJ, Sarov-Blat L, Elkhawad M, Wallace SM, Maki-Petaja KM, Collier DJ, Morgan J, Fang Z, Willette RN, Lepore JJ, Cockcroft JR, Sprecher DL, Wilkinson IB. Inhibition of p38 mitogen-activated protein kinase improves nitric oxide-mediated vasodilatation and reduces inflammation in hypercholesterolemia. Circulation. 2011 Feb 8;123(5):515-23に記載されており、以下の構造式によって表される。
【0105】
ジルマピモドは、例えばChristie JD, Vaslef S, Chang PK, May AK, Gunn SR, Yang S, Hardes K, Kahl L, Powley WM, Lipson DA, Bayliffe AI, Lazaar AL. A Randomized Dose-Escalation Study of the Safety and Anti-Inflammatory Activity of the p38 Mitogen-Activated Protein Kinase Inhibitor Dilmapimod in Severe Trauma Subjects at Risk for Acute Respiratory Distress Syndrome. Crit Care Med. 2015 Sep;43(9):1859-69に記載されており、以下の構造式によって表される。
【0106】
LY2228820は、例えばCampbell RM, Anderson BD, Brooks NA, Brooks HB, Chan EM, De Dios A, Gilmour R, Graff JR, Jambrina E, Mader M, McCann D, Na S, Parsons SH, Pratt SE, Shih C, Stancato LF, Starling JJ, Tate C, Velasco JA, Wang Y, Ye XS. Characterization of LY2228820 dimesylate, a potent and selective inhibitor of p38 MAPK with antitumor activity. Mol Cancer Ther. 2014 Feb;13(2):364-74に記載されており、以下の構造式によって表される。
【0107】
AZD7624は、Patel N, Cunoosamy D, Hegelund-Myrback T, Pehrson R, Taib Z, Jansson P, Lundin S, Greenaway S, Clarke G, Siew L. AZD7624, an inhaled p38 inhibitor for COPD, attenuates lung and systemic inflammation after LPS Challenge in humans. Eur Resp J. DOI: 10.1183/13993003.1 Sept 2015に記載されている。
【0108】
ARRY-371797は、例えばMuchir A, Wu W, Choi JC, Iwata S, Morrow J, Homma S, Worman HJ. Abnormal p38α mitogen-activated protein kinase signaling in dilated cardiomyopathy caused by lamin A/C gene mutation. Hum Mol Genet. 2012 Oct 1;21(19):4325-33に記載されており、以下の構造式によって表される。
【0109】
R9111及びその合成は、例えば国際公開第2005/047284号及び、例えばHill RJ, Dabbagh K, Phippard D, Li C, Suttmann RT, Welch M, Papp E, Song KW, Chang KC, Leaffer D, Kim Y-N, Roberts RT, Zabka TS, Aud D, Dal Porto J, Manning AM, Peng SL, Goldstein DM, and Wong BR; Pamapimod, a Novel p38 Mitogen-Activated Protein Kinase Inhibitor: Preclinical Analysis of Efficacy and Selectivity J Pharmacol Exp Ther. December 2008 327:610-619に記載されており、以下の構造式によって表される。
【0110】
PH-797804は、例えばXing L, Devadas B, Devraj RV, Selness SR, Shieh H, Walker JK, Mao M, Messing D, Samas B, Yang JZ, Anderson GD, Webb EG, Monahan JB. Discovery and characterization of atropisomer PH-797804, a p38 MAP kinase inhibitor, as a clinical drug candidate. ChemMedChem. 2012 Feb 6;7(2):273-80に記載されており、以下の構造式によって表される。
【0111】
BIRB 796は、例えばDietrich J, Hulme C, Hurley LH. The design, synthesis, and evaluation of 8 hybrid DFG-out allosteric kinase inhibitors: a structural analysis of the binding interactions of Gleevec, Nexavar, and BIRB-796. Bioorg Med Chem. 2010 Aug 1;18(15):5738-48に記載されており、以下の構造式によって表される。
【0112】
VX-702は、例えばDamjanov N, Kauffman RS, Spencer-Green GT Efficacy, pharmacodynamics, and safety of VX-702, a novel p38 MAPK inhibitor, in rheumatoid arthritis: results of two randomized, double-blind, placebo-controlled clinical studies. Arthritis Rheum. 2009 May;60(5):1232-41に記載されており、以下の構造式によって表される。
【0113】
VX-745は、例えばDuffy JP, Harrington EM, Salituro FG, Cochran JE, Green J, Gao H, Bemis GW, Evindar G, Galullo VP, Ford PJ, Germann UA, Wilson KP, Bellon SF, Chen G, Taslimi P, Jones P, Huang C, Pazhanisamy S, Wang YM, Murcko MA, Su MS. The Discovery of VX-745: A Novel and Selective p38α Kinase Inhibitor. ACS Med Chem Lett. 2011 Jul 28;2(10):758-63に記載されており、以下の構造式によって表される。
【0114】
SB239063は、例えばStrassburger M, Braun H, Reymann KG. Anti-inflammatory treatment with the p38 mitogen-activated protein kinase inhibitor SB239063 is neuroprotective, decreases the number of activated microglia and facilitates neurogenesis in oxygen-glucose-deprived hippocampal slice cultures. Eur J Pharmacol. 2008 Sep 11;592(1-3):55-61に記載されており、以下の構造式によって表される。
【0115】
SB202190は、例えばHirosawa M, Nakahara M, Otosaka R, Imoto A, Okazaki T, Takahashi S. The p38 pathway inhibitor SB202190 activates MEK/MAPK to stimulate the growth of leukemia cells. Leuk Res. 2009 May;33(5):693-9に記載されており、以下の構造式によって表される。
【0116】
SCIO469は、例えばSokol L, Cripe L, Kantarjian H, Sekeres MA, Parmar S, Greenberg P, Goldberg SL, Bhushan V, Shammo J, Hohl R, Verma A, Garcia-Manero G, Li YP, Lowe A, Zhu J, List AF. Randomized, dose-escalation study of the p38α MAPK inhibitor SCIO-469 in patients with myelodysplastic syndrome. Leukemia. 2013 Apr;27(4):977-80に記載されており、以下の構造式によって表される。
【0117】
BMS 582949は、例えばLiu C, Lin J, Wrobleski ST, Lin S, Hynes J, Wu H, Dyckman AJ, Li T, Wityak J, Gillooly KM, Pitt S, Shen DR, Zhang RF, McIntyre KW, Salter-Cid L, Shuster DJ, Zhang H, Marathe PH, Doweyko AM, Sack JS, Kiefer SE, Kish KF, Newitt JA, McKinnon M, Dodd JH, Barrish JC, Schieven GL, Leftheris K. Discovery of 4-(5-(cyclopropylcarbamoyl)-2-methylphenylamino)-5-methyl-N-propylpyrrolo[1,2-f][1,2,4]triazine-6-carboxamide (BMS-582949), a clinical p38α MAP kinase inhibitor for the treatment of inflammatory diseases. J Med Chem. 2010 Sep 23;53(18):6629-39に記載されており、以下の構造式によって表される。
【0118】
さらなる実施態様では、
(a) PPARアゴニストと;
(b) 本明細書で定義されている式Iの化合物と、任意選択的に、
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む薬学的組成物が提供される。
【0119】
さらなる実施態様では、
(a) PPARアゴニストと;
(b) 本明細書で定義されている式Iの化合物と、任意選択的に、
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む薬学的組成物が提供される。
【0120】
さらなる実施態様では、
(a) PPARガンマアゴニストと;
(b) 本明細書で定義されている式Iの化合物と、任意選択的に、
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む薬学的組成物が提供される。
【0121】
さらなる実施態様では、
(a) PPARガンマアゴニストと;
(b) 本明細書で定義されている式Iの化合物と、任意選択的に、
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む薬学的組成物が提供される。
【0122】
好ましい実施態様では、
(a) PPARガンマアゴニストと;
(b) 本明細書で定義されている式Iの化合物と、任意選択的に、
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む薬学的組成物が提供され;
前記PPARガンマアゴニストは、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、トログリタゾン及びINT131からなる群より選択されるか、又は薬学的に許容されるその塩であり;
前記式Iの化合物のX及びXは、各々Oであり;
前記式Iの化合物のZは、Nであり;
前記式Iの化合物のWは、NHであり;
前記式Iの化合物のArは、アリールであり;
前記式Iの化合物のRは、ヘテロアルキルであり;
前記式Iの化合物のRは、アルキルである。
【0123】
さらなる好ましい実施態様では、
(a) PPARガンマアゴニストと;
(b) パマピモド若しくは薬学的に許容されるその塩、又はR9111若しくは薬学的に許容されるその塩、好ましくはパマピモド若しくは薬学的に許容されるその塩と、任意選択的に、
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む薬学的組成物が提供され;
前記PPARガンマアゴニストは、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン及びトログリタゾンからなる群より選択されるか、又は薬学的に許容されるその塩である。
【0124】
特に好ましい実施態様では、
(a) ピオグリタゾン又は薬学的に許容されるその塩と、
(b) パマピモド又は薬学的に許容されるその塩と、任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む薬学的組成物が提供される。
【0125】
さらに特に好ましい実施態様では、
(a) ピオグリタゾン塩酸塩と、
(b) パマピモド又は薬学的に許容されるその塩と、任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む薬学的組成物が提供される。
【0126】
組み合わせ:
上で概説したように、本発明は、PPARアゴニスト(例えばピオグリタゾン又は薬学的に許容されるその塩)と、p38阻害剤(例えばパマピモド又は薬学的に許容されるその塩)とを含む薬学的組み合わせに関する。本発明による薬学的組み合わせは、例えば同時、別々又は逐次の使用のための組み合わせ調製物又は薬学的組成物である。
【0127】
本明細書で使用される「組み合わせ調製物」という用語は特に、前記PPARアゴニスト及び前記p38阻害剤が別個の形態で独立に投与されるか、又は区別できる量の活性成分を有する異なる固定された組み合わせの使用により独立に投与されるという意味で、「部分からなるキット」の意味を明確化する。組み合わせ調製物中の投与されるp38阻害剤の量に対するPPARアゴニストの量の比は、患者の年齢、性別、体重等により異なる、治療すべき患者亜集団のニーズ又は単独の患者のニーズに対処するために変化しうる。組み合わせ調製物(部分からなるキット)の個々の部分は、同時又は逐次的に、すなわち時間的にずらして、例えばキットの任意の部分について、異なる時点で、同じか又は異なる時間間隔で投与されうる。
【0128】
用語「薬学的組成物」は、単一剤形に組み合わされたPPARアゴニスト及びp38阻害剤であって、それぞれの投薬量の所定の組み合わせを有するものを含む固定用量組合せ(FDC)を指す。
【0129】
さらに、薬学的組み合わせは、アドオン治療としても使用される。本明細書で使用されるように、「アドオン」又は「アドオン治療」とは、治療に使用するための試薬の組み合わせを意味し、治療を受ける対象は1種以上の試薬からなる第1の治療レジメンを、1種以上の異なる試薬からなる、最初の治療レジメンに加える第2の治療レジメンに先立って開始し、治療に使用される全ての試薬が同時に開始されるわけではない。例えば、既にPPARアゴニスト療法を受けている患者にp38阻害剤療法を追加する。
【0130】
好ましい実施態様において、本発明の薬学的組み合わせは、薬学的組成物、すなわち固定用量組み合わせである。
【0131】
さらに好ましい実施態様において、本発明の薬学的組み合わせは、組み合わせ調製物である。
【0132】
投与されるPPARアゴニスト及びp38阻害剤の量は、症例を取り巻く個別の状況(例えば投与される特定のPPARアゴニスト、投与経路、治療される状態、治療される標的領域、及び治療される対象又は宿主を含むもの)による要因、例えば特定の化合物、疾患状態及びその重症度に応じて変化する。
【0133】
ある実施態様では、本発明は、PPARアゴニストと式I又はIの化合物とを含む薬学的組み合わせを提供し、前記PPARアゴニスト及び式I又はIIの前記化合物は、治療有効量で存在する。
【0134】
本明細書で使用される表現「有効量」又は「治療有効量」とは、本発明の組合せを受けている対象において、以下の効果の1つ以上を引き起こすことができる量をいう:(i)腫瘍増殖の速度を低下させること又は増殖を完全に停止させることを含む、腫瘍増殖の阻害又は阻止;(ii)腫瘍細胞の数の減少;(iii)腫瘍サイズの縮小;(iv)腫瘍数の減少;(v)末梢器官への腫瘍細胞浸潤の転移の阻害(すなわち減少、減速又は完全停止);(vi)抗腫瘍免疫応答の増強(腫瘍の退行又は消滅をもたらしうるが、必ずしもそうとは限らない);(vii)がんに関連する1つ以上の症状のいくらかの軽減(viii)組み合わせを受ける対象の無増悪生存期間(PFS)及び/又は全生存期間(OS)の増加。
【0135】
別の好ましい実施態様では、本発明は、PPARアゴニストと式I又はIの化合物とを含む薬学的組み合わせを提供し、前記PPARアゴニスト及び式I又はIIの前記化合物は、相加的な治療効果を生じる量で存在する。
【0136】
本明細書で使用されるように、「相加的」という用語は、本発明の薬学的組み合わせによって得られる効果が、抗がん剤、すなわちPPARアゴニストとp38阻害剤を単剤療法として用いることから生じる効果のおよその和であることを意味する。好都合なことに、相加効果は、同じ用量でより大きな効力をもたらし、治療に対する応答持続時間を長くする可能性がある。
【0137】
別の好ましい実施態様では、本発明は、PPARアゴニストと式I又はIの化合物とを含む薬学的組み合わせを提供し、前記PPARアゴニスト及び式I又はIIの前記化合物は、相乗的な治療効果を生じる量で存在する。
【0138】
本明細書で使用されるように、「相乗的」という用語は、本発明の薬学的組み合わせによって得られた効果が、抗がん剤、すなわちPPARアゴニスト及びp38阻害剤を単剤療法として用いることから生じる効果の和より大きいことを意味する。好都合なことに、このような相乗効果は、同じ用量でより大きな効力をもたらし、治療に対する応答持続時間を長くする可能性がある。
【0139】
ある実施態様では、本発明は、p38阻害剤とPPARアゴニストとを含む薬学的組み合わせを提供し、この組み合わせにおける前記PPARアゴニストの量は、約0.1から約50mg、又は約0.1から約45mg、又は約0.1から約30mg、又は約0.1から約15mg、又は約0.8から約10mg、又は約0.1から約5mgである。
【0140】
好ましい実施態様では、本発明は、p38阻害剤とPPARアゴニストとを含む薬学的組み合わせを提供し、この組み合わせにおける前記PPARアゴニストの量は、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、又は約10mgである。
【0141】
特定の実施態様では、本発明は、p38阻害剤とピオグリタゾンとを含む薬学的組み合わせを提供し、この組み合わせにおける前記ピオグリタゾンの量は、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、又は約10mgである。
【0142】
ある実施態様では、PPARアゴニストは、PPARアゴニストを用いる糖尿病の治療に必要な用量よりも少ない用量で対象に投与される。さらなる実施態様では、PPARアゴニストは、糖尿病の治療のために承認された最高用量より8分の1から20分の1の、特にヒトにおける糖尿病の治療について評価及び試験された最高用量よりも8-20分の1倍の用量で対象に投与される。ヒトにおける糖尿病の治療について、例えばピオグリタゾンなどのPPARガンマアゴニストについて評価及び試験された最高用量は、通常約30から45mg/日の範囲である。さらに別の実施態様において、用いられるPPAR用量では、糖尿病の治療に使用される用量で見られる一般的な副作用が軽減されるか又は検出されない。
【0143】
ある実施態様では、PPARアゴニストは、前記PPARアゴニストの抗糖尿病又は抗異脂肪血症効果のための活性用量を下回る用量で、特にヒトにおけるPPARアゴニストの抗糖尿病又は抗異脂肪血症効果のための活性用量を下回る用量で対象に投与される。
【0144】
好ましい実施態様において、本発明は、p38阻害剤とピオグリタゾンとを含む薬学的組み合わせを提供し、この組み合わせにおけるピオグリタゾンの量は、ピオグリタゾンを用いる糖尿病の治療のために通常必要とされる用量を下回る。糖尿病の治療におけるピオグリタゾンの通常の投薬レジメンは、1日1回、ピオグリタゾン15から45mgである。
【0145】
特に好ましい実施態様において、本発明は、p38阻害剤とピオグリタゾンとを含む薬学的組み合わせを提供し、この組み合わせにおけるピオグリタゾンの量は、約5mgである。
【0146】
さらに特に好ましい実施態様において、本発明は、p38阻害剤とピオグリタゾンとを含む薬学的組み合わせを提供し、この組み合わせにおけるピオグリタゾンの量は、約2mgである。
【0147】
ある実施態様では、本発明は、p38阻害剤とPPARアゴニストとを含む薬学的組み合わせを提供し、この組み合わせにおける前記p38阻害剤の量は、約1から約500mg、又は約1から約450mg、又は約1から約400mg、又は約1から約350mg、又は約1から約300mg、又は約1から約250mg、又は約1から約200mg、又は約1から約150mg、又は約1から約125mg、又は約10から約125mg、又は約10から約100mg、又は約20から約100mg、又は約30から約100mg、又は約40から約100mg、又は約50から約100mgである。
【0148】
好ましい実施態様では、本発明は、p38阻害剤とPPARアゴニストとを含む薬学的組み合わせを提供し、この組み合わせにおける前記p38阻害剤の量は、約25mg、約50mg、約75mg、約125mg、約150mg、又は約300mgである。
【0149】
好ましい実施態様では、本発明は、p38阻害剤とPPARアゴニストとを含む薬学的組み合わせを提供し、この組み合わせにおける前記p38阻害剤の量は、約50mg、約75mg、約100mg、又は約150mgである。
【0150】
さらに別の好ましい実施態様において、本発明は、p38阻害剤とPPARアゴニストとを含む薬学的組み合わせを提供し、この組み合わせにおける前記p38阻害剤の量は、約75mgである。
【0151】
ある実施態様では、本発明は、p38阻害剤とPPARアゴニストとを含む薬学的組み合わせを提供し、この組み合わせにおける前記PPARアゴニストの量は約0.1から約50mg、又は約0.1から約45mg、又は約0.1から約30mg、又は約0.1から約15mg、又は約0.8から約10mgであり;この組み合わせにおける前記p38阻害剤の量は約1から約500mg、又は約1から約450mg、又は約1から約400mg、又は約1から約350mg、又は約1から約300mg、又は約1から約250mg、又は約1から約200mg、又は約1から約150mg、又は約1から約125mg、又は約10から約125mg、又は約10から約100mg、又は約20から約100mg、又は約30から約100mg、又は約40から約100mg、又は約50から約100mgである。
【0152】
好ましい実施態様では、本発明は、p38阻害剤とPPARアゴニストとを含む薬学的組み合わせを提供し、この組み合わせにおける前記PPARアゴニストの量は、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、又は約10mgであり;この組み合わせにおける前記p38阻害剤の量は約50mg、約75mg、約100mg、又は約150mgである。
【0153】
特に好ましい実施態様では、本発明は、パマピモドとピオグリタゾンとを含む薬学的組み合わせを提供し、この組み合わせにおけるパマピモドの量は約75mgであり、この組み合わせにおけるピオグリタゾンの量は約2mgから約5mgである。
【0154】
薬学的組成物:
上述の通り、本発明はまた、例えばピオグリタゾンなどのPPARアゴニストと、例えばパマピモドなどのp38阻害剤と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物に関する。
【0155】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、過度の有害な副作用(例えば毒性、刺激及びアレルギー反応など)がなく、妥当な利益/リスク比に見合った、ヒト及び/又は動物との使用に適した担体又は添加剤又は希釈剤を指す。それは、本化合物を対象に送達するための薬学的に許容される溶媒、懸濁化剤又はビヒクルであってもよい。
【0156】
剤形及び投与方式:
好ましくは、本発明による薬学的組み合わせは、対象への経腸投与、例えば経口又は直腸投与などに適しており、治療有効量の活性成分と、1種以上の適切な薬学的に許容される担体とを含む。
【0157】
別段の指示がない限り、本発明の薬学的組み合わせは、それ自体既知の方法で、例えば慣用の混合、造粒、コーティング、溶解又は凍結乾燥プロセスを用いて調製される。経口投与形態のための組み合わせを調製する際には、通常のいかなる薬学的媒体、例えば水、グリコール、油、アルコール、担体、例えばデンプン、糖又は微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等を用いてもよい。錠剤及びカプセル剤は、投与の容易さのために、最も有利な経口投与単位形態であり、この場合、固体の薬学的担体が当然使用される。
【0158】
ある実施態様では、本発明の薬学的組み合わせは、経腸投与のための組み合わせである。好ましいのは、経口投与のための組み合わせである。上述の通り、前記薬学的組み合わせは、好ましくは薬学的組成物、すなわち固定用量組み合わせである。
【0159】
経腸投与のための薬学的組み合わせは、例えば単位投与形態、例えば錠剤、カプセル又は坐剤などである。
【0160】
ある実施態様では、本発明は、PPARアゴニスト(例えばピオグリタゾン)と、p38阻害剤(例えばパマピモド)と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を提供し、該組成物は錠剤又はカプセル、好ましくは錠剤である。
【0161】
好ましい実施態様において、本発明は、PPARアゴニスト(例えばピオグリタゾン)と、p38阻害剤(例えばパマピモド)と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を提供し、該組成物は徐放錠である。
【0162】
さらに好ましい実施態様では、本発明の薬学的組成物は、経口投与用であり、該組成物は有効活性成分(API)の徐放をもたらすように適合される。したがって、該組成物は、即放性組成物と比較して、Tmaxを増加させるか若しくはCmaxを低下させるか、又はTmaxを上昇させることとCmaxを低下させることの双方が可能である。
【0163】
「Cmax」とは、血漿中の薬物のピーク濃度を意味する。「Tmax」とは、投与からCmaxに達するまでの時間を意味する。
【0164】
即放性組成物と比較される徐放性組成物は、APIの放出を延長するように作用する1種以上の薬剤を含み、例えば、APIは、マトリックスに埋め込まれていても、膜によって取り囲まれていてもよく、いずれの場合にもAPIのGl管への拡散速度を制御する(低下させる)。
【0165】
徐放をもたらすために組成物に含まれる付加又は代替材料、例えば代替材料は、疎水性ポリマー、例えばエチルセルロース又はメタクリル酸ポリマー又はこれらの組み合わせである。このようなポリマーは、単独で又は組み合わせて使用されても、コーティングに含まれるか、又はAPIとの混合物に含まれるか、(すなわちマトリックス形成剤として用いられてもよい)、又はコーティングとAPIとの混合物の双方に存在してもよい。
【0166】
徐放をもたらすために組成物に含まれるさらなる付加又は代替材料、例えば代替材料は、不溶性崩壊性材料、例えばワックス若しくは水添植物油又はこれらの組み合わせである。このような材料は、単独で又は組み合わせて使用されても、コーティングに含まれるか、又はAPIとの混合物に含まれるか、(すなわちマトリックス形成剤として用いられてもよい)、又はコーティングとAPIとの混合物の双方に存在してもよい。
【0167】
個々の用量中の活性成分の単位含有量は、複数の投薬単位の投与によってそのような量に達することができるため、治療有効量をそれ自体で構成する必要はない。本発明の組成物は、例えば約10%から約100%の治療有効量の活性成分を含有することができる。
【0168】
本発明の薬学的組み合わせが組み合わせ調製物である場合、前記PPARアゴニストは、前記p38阻害剤と同じ投与形態で投与する必要はない。
【0169】
投与レジメン:
例示的な治療レジメンは、1日1回、1日2回、1日おき、週2回、週1回の投与を伴う。本発明の組み合わせは通常、複数の機会に投与される。単回投与間の間隔は、例えば1日未満、1日ごと、1日おき、週2回又は週ごとでありうる。本発明の組み合わせは、連続的な、中断のない治療として与えられてもよい。本発明の組み合わせはまた、対象が休薬日又は非治療期間によって中断される治療サイクルを受けるレジメンで与えられてもよい。したがって、本発明の組み合わせは、上記の選択された間隔に従って、1週間の連続する期間若しくはその一部、2週間、3週間の4週間、5週間又は6週間にわたって投与され、その後、1週間の期間若しくはその一部、2週間、3週間、4週間、5週間、又は6週間の期間にわたって中断されてもよい。治療間隔と非治療間隔との組み合わせをサイクルと呼ぶ。このサイクルは、1回以上繰り返してもよい。治療を1回以上繰り返すために、2つ以上の異なるサイクルを組み合わせて用いてもよい。間隔は、患者において前記PPARアゴニスト及び/又は前記p38阻害剤の血中濃度を測定することによって指示されるように不規則であってもよい。好ましい実施態様において、本発明による薬学的組み合わせは、1日1回投与される。例示的な治療レジメンでは、PPARアゴニストは1日当たり0.1~100mg投与することができ、P38阻害剤は1日当たり1~300mg投与することができる。
【0170】
がんを治療するための、本発明の組み合わせの使用
第2の態様によると、本発明は、医薬としての使用のための、本明細書に記載の薬学的組み合わせを提供する。
【0171】
第3の態様によると、本発明は、対象におけるがんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本明細書に記載の薬学的組み合わせを提供する。
【0172】
また、対象におけるがんの予防、進行の遅延又は治療のための医薬の製造のための、本明細書に記載の薬学的組み合わせ物の使用が提供される。
【0173】
また、対象におけるがんの予防、進行の遅延又は治療のための、本明細書に記載の薬学的組み合わせの使用も提供される。
【0174】
また、本明細書に記載の薬学的組み合わせの治療有効量を対象に投与することを含む、前記対象におけるがんの予防、進行の遅延又は治療のための方法も提供される。
【0175】
本明細書で使用される「治療/処置」/「治療する(こと)」という用語は、(1)状態、障害若しくは疾患に罹患しているか又は罹患しやすいが、まだ状態、障害若しくは疾患の臨床若しくは潜在症状を経験していないか若しくは見せていない動物、特に哺乳動物、とりわけヒトにおいて発症する状態、障害又は疾患の臨床症状の出現を遅らせること;(2)状態、障害又は疾患を阻害すること(例えば、疾患の発症を(又は維持治療の場合にはその再発を)、疾患の少なくとも1つの臨床若しくは潜在症状の発症を阻止、低減又は遅延させること);;及び/あるいは(3)状態を緩和すること(すなわち、状態、障害若しくは疾患又はその臨床若しくは潜在症状の少なくとも1つの退行を引き起こすこと)を含む。治療される患者への利益は、統計的に有意であるか、又は少なくとも患者若しくは医師に認知可能である。しかし、疾患を治療するために医薬を患者に投与する場合、その結果は、必ずしも有効な治療であるとは限らないことが理解されよう。
【0176】
本明細書で使用される「進行の遅延」は、がんの症状若しくはがんに関連する徴候の発現までの時間の増加、又はがんの症状の重症度の上昇を遅らせることを意味する。さらに、本明細書で使用される「進行の遅延」は、疾患の進行の反転又は阻害を含む。対象における疾患進行又は疾患合併症の「阻害」は、対象における疾患進行及び/又は疾患合併症を予防又は低減することを意味する。
【0177】
予防的治療は、予防処置を含む。予防的用途において、本発明の薬学的組み合わせは、がんを有するか、またはがんを発症するリスクがあると疑われる対象に投与される。治療的用途において、薬学的組み合わせは、既にがんに罹患している患者などの対象に、疾患の症状を治すか又は少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で投与される。この用途の有効量は、疾患の重症度及び経過、既に行われた治療、対象の健康状態及び薬物に対する反応、並びに治療する医師の判断によって決まる。
【0178】
対象の状態が改善しない場合、本発明の薬学的組み合わせは、慢性的に、つまり、対象の寿命全体を含む長期間にわたり、対象の疾患又は状態の症状を改善するか、又はそうでなければ制御若しくは制限するために投与される。
対象の状態が改善する場合、薬学的組み合わせは、連続的に投与されてもよく、あるいは投与される薬物の用量は、一定の期間にわたり一時的に低減されるか又は一時的に停止されてもよい(すなわち休薬日)。
【0179】
患者の状態が改善したら、必要に応じて、本発明の薬学的組み合わせの維持用量が投与される。続いて、投薬量若しくは投与頻度又はその双方を、症状に応じて、改善した疾患が保たれるレベルまで、任意選択的に少なくする。
【0180】
本発明の一実施態様では、対象におけるがんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本発明による薬学的組み合わせが提供され、がんは、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、膀胱がん、肝臓がん、消化(GI)管のがん、血液がん及び腎臓がんからなる群より選択される。
【0181】
本発明の好ましい実施態様では、対象における肺がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本発明による薬学的組み合わせが提供される。
【0182】
本発明の別の好ましい実施態様では、対象における肺がん、卵巣がん又は消化(GI)管のがんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本発明による薬学的組み合わせが提供される。
【0183】
本発明のさらに好ましい実施態様では、対象における肺がん、卵巣がん又は消化(GI)管のがん予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本発明による薬学的組み合わせが提供され、前記肺がんは、非小細胞肺癌及び小細胞肺癌から選択され、好ましくは非小細胞肺癌であり、前記卵巣がんは、好ましくは上皮由来の卵巣がんであり、前記GI管のがんは、食道がん、胃がん、腸がん、結腸直腸がん及び肛門がんから選択され、好ましくは結腸直腸がんである。
【0184】
本発明の別の好ましい実施態様では、対象における肺がん又は消化(GI)管のがんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本発明による薬学的組み合わせが提供される。
【0185】
本発明のさらに好ましい実施態様では、対象における肺がん又は消化(GI)管のがん予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本発明による薬学的組み合わせが提供され、前記肺がんは、非小細胞肺癌及び小細胞肺癌から選択され、好ましくは非小細胞肺癌であり、前記GI管のがんは、食道がん、胃がん、腸がん、結腸直腸がん及び肛門がんから選択され、好ましくは結腸直腸がんである。
【0186】
本発明の一実施態様では、対象における乳がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本発明による薬学的組み合わせが提供される。
【0187】
本発明の一実施態様では、対象における膀胱がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本発明による薬学的組み合わせが提供される。
【0188】
本発明の一実施態様では、対象における肝臓がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本発明による薬学的組み合わせが提供される。
【0189】
本発明の一実施態様では、対象におけるGI管のがんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本発明による薬学的組み合わせが提供される。
【0190】
本発明の一実施態様では、対象における血液がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本発明による薬学的組み合わせが提供される。
【0191】
本発明の一実施態様では、対象における腎臓がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本発明による薬学的組み合わせが提供される。
【0192】
本発明の好ましい実施態様では、対象における肺がん又は消化(GI)管のがんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本発明による薬学的組み合わせが提供され、前記肺がんは、非小細胞肺癌及び小細胞肺癌から選択される。好ましくは、前記肺がんは非小細胞肺癌である。
【0193】
本発明の一実施態様では、対象における卵巣がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本発明による薬学的組み合わせが提供され、前記卵巣がんは好ましくは上皮由来の卵巣がんである。
【0194】
本発明の一実施態様では、対象における前立腺がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本発明による薬学的組み合わせが提供され、前記前立腺がんは、好ましくは腺房腺癌である。
【0195】
本発明の一実施態様では、対象における乳がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本発明による薬学的組み合わせが提供され、前記乳がんは、 非浸潤性乳管癌、浸潤性乳管癌及び浸潤性小葉癌から選択される。
【0196】
本発明の一実施態様では、対象における膀胱がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本発明による薬学的組み合わせが提供され、前記膀胱がんは、移行上皮癌、扁平上皮癌及び肉腫から選択される。
【0197】
本発明の一実施態様では、対象における肝臓がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本発明による薬学的組み合わせが提供され、前記肝臓がんは肝細胞癌、肝芽細胞腫及び胆管細胞癌から選択される。
【0198】
本発明の一実施態様では、対象におけるGI管のがんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本発明による薬学的組み合わせが提供され、前記GI管のがんは、食道がん、胃がん、腸がん、結腸直腸がん及び肛門がんから選択される。この実施態様は、特に好ましい。好ましくは前記GI管のがんは結腸直腸がんである。
【0199】
本発明の一実施態様では、対象における血液がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本発明による薬学的組み合わせが提供され、前記血液がんは、急性骨髄白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、リンパ腫、骨髄異形成症候群(MDS)及び多発性骨髄腫から選択される。
【0200】
本発明の一実施態様では、対象における腎臓がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本発明による薬学的組み合わせが提供され、前記前腎臓がんは、好ましくは腎細胞腺癌である。
【0201】
本発明の好ましい実施態様では、対象における肺がん又は卵巣がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本発明による薬学的組み合わせが提供される。
【0202】
さらに好ましい実施態様では、対象におけるがんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本発明による薬学的組み合わせが提供され、がんは、消化(GI)管のがん、血液がん及び腎臓がんからなる群より選択される。
【0203】
より好ましい実施態様では、対象における転移がん、好ましくは転移性卵巣がん、転移性前立腺がん、転移性乳がん、転移性膀胱がん、転移性肝臓がん、消化(GI)管の転移性がん及び転移性腎臓がんからなる群より選択される転移がん、さらに好ましくは消化(GI)管の転移性がん、転移性卵巣がん又は転移性肺がん、さらに一層好ましくは消化(GI)管の転移性がん又は転移性肺がん、最も好ましくは、転移性食道がん、転移性胃がん、転移性腸がん、転移性結腸直腸がん及び転移性肛門がんから選択される消化(GI)管の転移性がん、特に転移性結腸直腸がん、又は転移性非小細胞肺癌及び転移性小細胞肺癌から選択される転移性肺がん、特に転移性非小細胞肺癌の予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための、本発明による薬学的組み合わせが提供される。
【0204】
第4の態様において、本発明は、
(a) PPARアゴニストと;
(b) p38キナーゼ阻害剤と;任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む、
対象における肺がん又は卵巣がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための薬学的組み合わせを提供する。
【0205】
有用なPPARアゴニストは、上に記載の通りである。好ましい実施態様において、前記PPARアゴニストは、PPARガンマアゴニスト、特にピオグリタゾン、又は薬学的に許容されるその塩である。
【0206】
有用なp38キナーゼ阻害剤は、P38-アルファ、P38-ベータ、P38-ガンマ若しくはP38-デルタ又はこれらの組み合わせを、好ましくはP38-アルファ及び/又はP38-ベータを、さらに好ましくはP38-アルファを阻害するp38キナーゼ阻害剤である。さらに有用なp38キナーゼ阻害剤は、上記の式I又はIIの化合物である。さらに有用なp38キナーゼ阻害剤は、パマピモド、ロスマピモド、ジルマピモド、AZD7624、ARRY-371797、LY2228820、R9111、PH-797804、BIRB 796、VX-702、VX-745 SB 239063、SB202190、SCIO 469及びBMS 582949からなる群より選択されるp38キナーゼ阻害剤、若しくは、パマピモド、ロスマピモド、ジルマピモド、ARRY-371797、LY2228820、R9111、PH-797804、BIRB 796、VX-702、VX-745 SB 239063、SB202190、SCIO 469及びBMS 582949からなる群より選択されるp38キナーゼ阻害剤、特にパマピモド及び/若しくはR9111、とりわけパマピモド、又は薬学的に許容されるその塩である。
【0207】
肺がん又は卵巣がんは、上記の通りである。好適ながんは、非小細胞肺癌又は小細胞肺癌、さらに好ましくは非小細胞肺癌であり、好適な卵巣がんは、上皮由来の卵巣がんである。
【0208】
ある実施態様では、
(a) PPARアゴニストと;
(b) p38キナーゼ阻害剤と;任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
を含む、
対象における肺がん又は卵巣がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための薬学的組み合わせが提供され、前記p38キナーゼ阻害剤は、好ましくはP38-アルファ、P38-ベータ、P38-ガンマ若しくはP38-デルタ又はこれらの組み合わせを阻害し、さらに好ましくはP38-アルファ及び/又はP38-ベータを阻害する。
【0209】
ある実施態様では、
(a) PPARアゴニストと;
(b) p38キナーゼ阻害剤と;任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む、
対象における肺がん又は卵巣がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための薬学的組み合わせが提供され、前記p38キナーゼ阻害剤は、パマピモド、ロスマピモド、ジルマピモド、AZD7624、ARRY-371797、LY2228820、R9111、PH-797804、BIRB 796、VX-702、VX-745 SB 239063、SB202190、SCIO 469及びBMS 582949からなる群より選択されるか若しくは薬学的に許容されるその塩であり、又は前記p38キナーゼ阻害剤は、パマピモド、ロスマピモド、ジルマピモド、ARRY-371797、LY2228820、R9111、PH-797804、BIRB 796、VX-702、VX-745、SB 239063、SB202190、SCIO 469及びBMS 582949から選択されるか若しくは薬学的に許容されるその塩である。
【0210】
好ましい実施態様において、
(a) PPARアゴニストと;
(b) パマピモド又は薬学的に許容されるその塩と;任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む、
対象における肺がん又は卵巣がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための薬学的組み合わせが提供される。
【0211】
特に好ましい実施態様において、
(a) ピオグリタゾン又は薬学的に許容されるその塩、好ましくはピオグリタゾン塩酸塩と;
(b) パマピモド又は薬学的に許容されるその塩と;任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む、
対象における肺がん又は卵巣がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための薬学的組み合わせが提供される。
【0212】
ある実施態様では、
(a) PPARアゴニストと;
(b) p38キナーゼ阻害剤と;任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む、
対象における肺がん又は卵巣がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための薬学的組み合わせが提供され、前記PPARアゴニストはPPARアルファ、PPARガンマ若しくはPPARデルタ又はこれらの組み合わせを活性化する。
【0213】
ある実施態様では、
(a) PPARアゴニストと;
(b) p38キナーゼ阻害剤と;任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む、
対象における肺がん又は卵巣がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための薬学的組み合わせが提供され、前記PPARアゴニストはPPARガンマを活性化する。
【0214】
ある実施態様では、
(a) PPARアゴニストと;
(b) p38キナーゼ阻害剤と;任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む、
対象における肺がん又は卵巣がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための薬学的組み合わせが提供され、前記PPARアゴニストは、ピオグリタゾン、トログリタゾン、ロシグリタゾン、フェノフィブラート、コロフィブラート、ゲムフィブロジル、アレグリタザル、ムラグリタザル、テサグリタザル、ラガグリタザル、サログリタザル、GFT505、ナベグリタザル、GW501516及びINT131から選択されるか、又は薬学的に許容されるその塩である。
【0215】
好ましい実施態様において、
(a) PPARアゴニストと;
(b) p38キナーゼ阻害剤と;任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む、
対象における肺がん又は卵巣がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための薬学的組み合わせが提供され、前記PPARアゴニストはピオグリタゾン又は薬学的に許容されるその塩である。
【0216】
さらに好ましい実施態様では、
(a) ピオグリタゾン又は薬学的に許容されるその塩と、
(b) p38キナーゼ阻害剤と;任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む、
対象における肺がん又は卵巣がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための薬学的組み合わせが提供される。
【0217】
さらに好ましい実施態様では、
(a) ピオグリタゾン塩酸塩と、
(b) p38キナーゼ阻害剤と;任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む、
対象における肺がん又は卵巣がんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための薬学的組み合わせが提供される。
【0218】
第5の態様において、本発明は、
(a) PPARアゴニストと;
(b) p38キナーゼ阻害剤と;任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む、
対象における肺がん又はGI管のがんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための薬学的組み合わせを提供する。
【0219】
有用なPPARアゴニストは上記の通りである。好ましい実施態様において、前記PPARアゴニストは、PPARガンマアゴニスト、特にピオグリタゾン又は薬学的に許容されるその塩である。
【0220】
有用なp38キナーゼ阻害剤は、P38-アルファ、P38-ベータ、P38-ガンマ若しくはP38-デルタ又はこれらの組み合わせを、好ましくはP38-アルファ及び/又はP38-ベータを、さらに好ましくはP38-アルファを阻害するp38キナーゼ阻害剤である。さらに有用なp38キナーゼ阻害剤は、上記の式I又はIIの化合物である。さらに有用なp38キナーゼ阻害剤は、パマピモド、ロスマピモド、ジルマピモド、AZD7624、ARRY-371797、LY2228820、R9111、PH-797804、BIRB 796、VX-702、VX-745 SB 239063、SB202190、SCIO 469及びBMS 582949からなる群より選択されるp38キナーゼ阻害剤、若しくは、パマピモド、ロスマピモド、ジルマピモド、ARRY-371797、LY2228820、R9111、PH-797804、BIRB 796、VX-702、VX-745 SB 239063、SB202190、SCIO 469及びBMS 582949からなる群より選択されるp38キナーゼ阻害剤、特にパマピモド及び/若しくはR9111、とりわけパマピモド、又は薬学的に許容されるその塩である。
【0221】
肺がん又はGI管のがんは、上記の通りである。好適な肺がんは、非小細胞肺癌又は小細胞肺癌、さらに好ましくは非小細胞肺癌であり、好適なGI管のがんは、食道がん、胃がん、腸がん、結腸直腸がん及び肛門がんから選択され、さらに好ましくは結腸直腸がんである。
【0222】
ある実施態様では、
(a) PPARアゴニストと;
(b) p38キナーゼ阻害剤と;任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む、
対象における肺がん又はGI管のがんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための薬学的組み合わせが提供され、前記p38キナーゼ阻害剤は、好ましくはP38-アルファ、P38-ベータ、P38-ガンマ若しくはP38-デルタ又はこれらの組み合わせを阻害し、さらに好ましくはP38-アルファ及び/又はP38-ベータを阻害する。
【0223】
ある実施態様では、
(a) PPARアゴニストと;
(b) p38キナーゼ阻害剤と;任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む、
対象における肺がん又はGI管のがんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための薬学的組み合わせが提供され、前記p38キナーゼ阻害剤は、パマピモド、ロスマピモド、ジルマピモド、AZD7624、ARRY-371797、LY2228820、R9111、PH-797804、BIRB 796、VX-702、VX-745 SB 239063、SB202190、SCIO 469及びBMS 582949からなる群より選択されるか若しくは薬学的に許容されるその塩であり、又はp38キナーゼ阻害剤は、パマピモド、ロスマピモド、ジルマピモド、ARRY-371797、LY2228820、R9111、PH-797804、BIRB 796、VX-702、VX-745、SB 239063、SB202190、SCIO 469及びBMS 582949からなる群より選択されるか若しくは薬学的に許容されるその塩である。
【0224】
好ましい実施態様において、
(a) PPARアゴニストと;
(b) パマピモド又は薬学的に許容されるその塩と;任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む、
対象における肺がん又はGI管のがんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための薬学的組み合わせが提供される。
【0225】
特に好ましい実施態様において、
(a) ピオグリタゾン又は薬学的に許容されるその塩、好ましくはピオグリタゾン塩酸塩と;
(b) パマピモド又は薬学的に許容されるその塩と;任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む、
対象における肺がん又はGI管のがんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための薬学的組み合わせが提供される。
【0226】
ある実施態様では、
(a) PPARアゴニストと;
(b) p38キナーゼ阻害剤と;任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む、
対象における肺がん又はGI管のがんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための薬学的組み合わせが提供され、前記PPARアゴニストはPPARアルファ、PPARガンマ若しくはPPARデルタ又はこれらの組み合わせを活性化する。
【0227】
ある実施態様では、
(a) PPARアゴニストと;
(b) p38キナーゼ阻害剤と;任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む、
対象における肺がん又はGI管のがんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための薬学的組み合わせが提供され、前記PPARアゴニストはPPARガンマを活性化する。
【0228】
ある実施態様では、
(a) PPARアゴニストと;
(b) p38キナーゼ阻害剤;と;任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む、
対象における肺がん又はGI管のがんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための薬学的組み合わせが提供され、前記PPARアゴニストは、ピオグリタゾン、トログリタゾン、ロシグリタゾン、フェノフィブラート、コロフィブラート、ゲムフィブロジル、アレグリタザル、ムラグリタザル、テサグリタザル、ラガグリタザル、サログリタザル、GFT505、ナベグリタザル、GW501516及びINT131から選択されるか、又は薬学的に許容されるその塩である。
【0229】
好ましい実施態様において、
(a) PPARアゴニストと;
(b) p38キナーゼ阻害剤と;任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む、
対象における肺がん又はGI管のがんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための薬学的組み合わせが提供され、前記PPARアゴニストはピオグリタゾン又は薬学的に許容されるその塩である。
【0230】
さらに好ましい実施態様では、
(a) ピオグリタゾン又は薬学的に許容されるその塩と、
(b) p38キナーゼ阻害剤と;任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む、
対象における肺がん又はGI管のがんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための薬学的組み合わせが提供される。
【0231】
さらに好ましい実施態様では、
(a) ピオグリタゾン塩酸塩と、
(b) p38キナーゼ阻害剤と;任意選択的に
(c) 1種以上の薬学的に許容される希釈剤、添加剤又は担体
とを含む、
対象における肺がん又はGI管のがんの予防、進行の遅延又は治療のための方法における使用のための薬学的組み合わせが提供される。
【実施例
【0232】
本実施例は、限定することなく本発明を説明することが意図される。
【0233】
実施例1
メスのインビボ無胸腺ヌードマウスにおけるパマピモド及びピオグリタゾン塩酸塩の、単独及び組み合わせての抗腫瘍効果についての評価
【0234】
試験デザイン概要:
本研究は、各々がランダム化後のメスの無胸腺ヌードマウス10頭を含む4つの実験群により構成される(詳細は下記の表1参照)。0日目、PBS:マトリゲル(1:1)100μl中の2x10個のA549腫瘍細胞を、実験用の全てのメス無胸腺ヌードマウスの左わき腹に皮下移植した。続いて、原発腫瘍サイズをカリパス測定により、週2回(月曜日と金曜日)測定した。21日目、平均原発腫瘍体積が約100‐200mmに達した後、最新の原発腫瘍測定値に従って、40頭の担腫瘍動物を、10頭の動物からなる4つの群にブロックランダム化した(ランク付けに従い4つのブロック)。ブロックランダム化については、個々のブロック内で強固な乱数生成が用いられた(MS-Excel 2003)。翌日(22日目)、全群において処置が開始された(詳細は表1参照)。
ピオグリタゾンHCL(10mg/kg)及びパマピモド(100mg/kg)は、双方とも単独で(それぞれ、2群と3群)、及び組み合わせて(4群)、22-45日目に1日1回p.o.で投与された。1群の動物は、同じ期間1日1回p.o.で、10ml/kgビヒクルコントロール(0.9%NaCl、0.5%メチルセルロース、0.4%ポリソルベート80、0.9%ベンジルアルコール、pH4.8)により処置された。
【0235】
試験は46日目に終了した。全動物を処分し、剖検を行った。
原発腫瘍を収集し、湿重量及び体積を決定した。
【0236】
【0237】
【0238】
A549細胞を、10%FCS、1ml当たり100単位のペニシリン、及び1ml当たり100μgのストレプトマイシンを含むDMEM高Glutamax1中で増殖させた。A549細胞を、90%空気と10%二酸化炭素の加湿雰囲気中、37℃で培養した。培地を3日ごとに定期的に交換した。
【0239】
試験方法(腫瘍移植):
0日目、PBS:マトリゲル(1:1)100μl中の2x10個のA549腫瘍細胞を、54頭のメス無胸腺ヌードマウスの左わき腹に皮下移植した。続いて、週3回、動物の体重を測定した(月水金;秤:Mettler Toledo PB602-L)。原発腫瘍サイズをカリパス測定により、週2回測定した(手動カリパス、OMC Fontana)。腫瘍サイズは、式:WxL/2(L=腫瘍の長さ、W=腫瘍の垂直幅、L>W)により計算された。21日目、平均原発腫瘍体積が約100‐200mmに達した後、最新の原発腫瘍測定値に従って、40頭の担腫瘍動物を、10頭の動物からなる4つの群にブロックランダム化した(ランク付けに従い4つのブロック)。ブロックランダム化については、個々のブロック内で強固な乱数生成が用いられた(MS-Excel 2003)。翌日(22日目)、全群において処置が開始された(詳細は表1参照)。
【0240】
【0241】
【0242】
製剤
ピオグリタゾンHCl及びパマピモドに関するマウスでの前臨床試験ための製剤の製法は、20gのマウス及び0.2mlの経管栄養量に基づいている。製剤は、2週間ごとに新たに調製され、2-8℃で、光から保護して保管された。
【0243】
【0244】
【0245】
剖検:
剖検では、動物を体重測定し、頚椎脱臼により死亡させた。原発腫瘍を収集し、湿重量及び体積を決定した。
【0246】
統計分析:
原発腫瘍体積は、説明的データ分析(平均、SEM、中央値及び四分位範囲)を用いて分析された。有効性データの統計分析は、マン・ホイットニー検定及び独立t検定(括弧内)を用いてなされた。全てのデータ分析は、米国サンディエゴのGraphPad Software,Inc.社製、GraphPad Prism 5を使用して実施された。
【0247】
結果:
本研究は、各々がランダム化後のメスの無胸腺ヌードマウス10頭を含む4つの実験群により構成される。0日目、2x10個のA549腫瘍細胞を全動物に皮下移植した。ランダム化後、22日目に処置を開始した。ピオグリタゾンHCLとパマピモドは、双方とも単独で(それぞれ、2群と3群)及び組み合わせて(4群)投与され、その対応するビヒクルコントロール(1群)と比較して評価された。
46日目に、試験は終了、すなわち全動物が処分され、腫瘍増殖を評価するための剖検が実施された。
【0248】
腫瘍増殖に対する治療の効果
・ 剖検後、原発腫瘍を切除し、腫瘍体積及び湿重量を測定した(図1及び2)。
・ 単独投与されたピオグリタゾンHCL(2群)は、腫瘍体積及び腫瘍重量双方で、統計学的有意性に近い、コントロールと比較して顕著な減少が起こった。
・ 単独投与されたパマピモド(3群)も、腫瘍体積及び腫瘍重量双方で顕著な減少を生じ、それは腫瘍体積では有意であり、腫瘍重量ではほぼ有意であった。
・ ピオグリタゾンHClとパマピモド(4群)との組み合わせは、ビヒクルコントロールと比較して、腫瘍体積及び腫瘍重量の双方を有意に減少させた。さらに、ピオグリタゾンHClとパマピモドとの組み合わせの腫瘍体積及び腫瘍重量を減少させる効果の大きさは、いずれかの薬剤単独の効果よりも大きかった。これらのデータは、2つの試験化合物、ピオグリタゾンHClとパマピモドの抗腫瘍効果が、単剤投与と比較して、組み合わせて投与された場合に明らかに大きいことを示している。
【0249】
実施例2
メスのBALB/cマウス内の同所性同系CT26wt結腸癌のin vivoモデルにおける、パマピモドとピオグリタゾン塩酸塩の単独及び組み合わせでの抗腫瘍効果の評価
【0250】
試験デザイン概要:
本研究は、各々がランダム化後のメスのBALB/cマウス12頭を含む4つの実験群により構成される(詳細は下記の表1参照)。0日目、15μlのPBS:マトリゲル(1:2)に懸濁している0.5x10個のCT26wt_LLN細胞を、全実験動物の盲腸に局所移植した。その後、原発腫瘍増殖を、in vivo生物発光イメージングを使用して、1週間に1回、2、9、15及び20日目にモニターした。2日目、最新のin vivo生物発光イメージング結果にしたがって、48頭の動物を、12頭の動物からなる4つの群にランダム化した(ランク付けに従い4つのブロック)。ブロックランダム化については、個々のブロック内で強固な乱数生成が用いられた(MS-Excel 2016)。したがって、検出されたルシフェラーゼシグナルはランダム化基準として役立った。翌日(3日目)、全群において処置が開始された(詳細は表1参照)。処置は全て、3-20日目に1日1回、10ml/kg、p.o.で実施された。
ピオグリタゾンHCL(25mg/kg)及びパマピモド(100mg/kg)は、双方とも単独で(それぞれ、2群と3群)、及び組み合わせて(4群)、1日1回p.o.で投与された。1群の動物は、1日1回p.o.で、10ml/kgビヒクルコントロール(0.9%NaCl、0.5%メチルセルロース、0.4%ポリソルベート80、0.9%ベンジルアルコール、pH4.8)により処置された。
20日目、腫瘍負荷により試験を終了した。全動物を処分し、剖検を行った。
原発腫瘍を収集し、湿重量及び体積を決定した。
表2:試験設計
1) ここに挙げた動物は全て、共通の接尾辞16を有する; 2) 0.9%NaCl、0.5%メチルセルロース、0.4%ポリソルベート80、0.9%ベンジルアルコール、pH4.8
【0251】
【0252】
【0253】
マウスCT26wt腫瘍細胞は、ホタルルシフェラーゼ発現細胞株CT26wt_LLNを生成するために、予めトランスフェクトされた。CT26wt_LLN細胞を、10%FCS、1ml当たり100単位のペニシリン、及び1ml当たり100μgのストレプトマイシンを補充したRPMI-1640 Glutamax 1中で増殖させた。細胞は、3日ごとに定期的に分割された。
【0254】
試験方法(腫瘍移植):
0日目、手術前、及び手術の24時間後に、全動物に、鎮痛剤メロキシカム(メタカム(登録商標)、1mg/kg)を皮下注射により投与した。手術中、マウスを0.6l/分の酸素流量と組み合わせた2.5体積%のイソフルランで麻酔した後に、マウスの腹腔を切開し、腹腔を露出させた。15μlのPBS:マトリゲル(1:2)に懸濁している0.5x10個のCt26wt_LLN細胞を、60頭のメスBALB/cマウスの盲腸に局所移植した。したがって、盲腸と腸間膜の間に細胞が慎重に注入された。盲腸を再配置した後、皮膚を創傷クリップで閉じた。続いて、週3回、動物の体重を測定した(月水金;秤:Mettler Toledo PB602-L)。原発腫瘍増殖を、in vivo生物発光イメージングを使用して、1週間に1回、2、9、15及び20日目にモニターした。2日目、最新のin vivo生物発光イメージング結果に従って、48頭の動物を、12頭の動物からなる4つの群にランダム化した(ランク付けに従い4つのブロック)。ブロックランダム化については、個々のブロック内で強固な乱数生成が用いられた(MS-Excel 2016)。したがって、検出されたルシフェラーゼシグナルはランダム化基準として役立った。翌日(3日目)、全群において処置が開始された(詳細は表2参照)。
【0255】
【0256】
【0257】
製剤:
ピオグリタゾンHCl及びパマピモドに関するマウスでの前臨床試験ための製剤の製法は、20gのマウス及び0.2mlの経管栄養量に基づいている。製剤は、2週間ごとに新たに調製され、2-8℃で、光から保護して保管された。
【0258】
【0259】
【0260】
インビボ生物発光イメージング:
試験中、腫瘍増殖を、in vivo生物発光イメージングを使用して、1週間に1回、2、9、15及び20日目にモニターした。このために、150mg/kgのD-ルシフェリンを、麻酔の7分前にマウスに腹腔内(i.p.)注射した。注射の10分後に、NightOWL LB 981生物発光イメージングシステム(ドイツのBerthold Technologies)を使用して、CCDカメラで1-5分間、発光を測定した。
【0261】
剖検:
20日目、動物を頚椎脱臼により死亡させた。原発腫瘍を収集し、湿重量及び体積を決定した。
【0262】
統計分析:
原発腫瘍体積は、説明的データ分析(平均、SEM、中央値及び四分位範囲)を用いて分析された。有効性データの統計分析は、マン・ホイットニー検定及び独立t検定(括弧内)を用いてなされた。全てのデータ分析は、米国サンディエゴのGraphPad Software,Inc.社製、GraphPad Prism 5を使用して実施された。
【0263】
結果:
本研究は、各々がランダム化後のメスのBALB/cマウス12頭を含む4つの実験群により構成される。0日目、15μlのPBS:マトリゲル(1:2)に懸濁している0.5x10個のCT26wt_LLN細胞を、全実験動物の盲腸に局所移植した。in vivo生物発光イメージング結果に従って2日目に動物をランダム化した後、翌日(3日目)に処置を開始した。ピオグリタゾンHCLとパマピモドは、双方とも単独で(それぞれ、2群と3群)及び組み合わせて(4群)投与され、その対応するビヒクルコントロール(1群)と比較して評価された。
20日目に、試験は終了、すなわち動物は処分され、腫瘍増殖を評価するための剖検が実施された。
【0264】
腫瘍増殖に対する治療の効果
概説
・ 剖検後、原発腫瘍を切除し、腫瘍体積及び湿重量を測定した(図3及び4)。
・ ピオグリタゾンHCL単独(2群)、パマピモド単独(3群)、及び両化合物の組み合わせ治療(4群)について抗腫瘍効果は認められなかったものの、顕著かつ同等の抗腫瘍効果が観察され、これは原発腫瘍体積の場合(図3)は有意であり、原発腫瘍重量の場合(図4)には有意性をわずかに超えていた。
・ 転移は、コントロールビヒクル群の6頭、ピオグリタゾン群の4頭、パマピモド群の2頭、及びピオグリタゾン(piglitazone)/パマピモド群の1頭に認められた。転移は、主に腹壁及び腸間膜に存在した。
【0265】
ピオグリタゾンHClとパマピモドとの組み合わせ(群4)は、いずれかの薬剤単独と比較して、腫瘍体積と腫瘍重量の双方のより大幅な減少を示したが、これは、ピオグリタゾンがこの特定の腫瘍モデルにおけるパマピモドの効果を強化することを示唆している。驚くべきことに、識別可能な転移を有する動物の数は、いずれかの薬剤単独又はビヒクルコントロールと比較して、組み合わせ群において最も低く、組み合わせの相乗効果をもたらした。これらのデータは、2つの試験化合物、ピオグリタゾンHClとパマピモドの抗腫瘍効果が、単剤投与と比較して、組み合わせて投与された場合に大きいことを示している。
図1
図2
図3
図4